2019-700859
有機エレクトロルミネッセンス積層体
- 審判番号
- 2019-700859
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-143496外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2019年10月29日
- 審決日
- 2020年09月25日
- 公報発行日
- 2020年12月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】大日本印刷株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人 安富国際特許事務所
- 【異議申立人】丸岡 慎司
- 【異議申立人】萩原 真紀
- 分類
- P1651.113-YAA(B32B) / P1651.121-YAA(B32B) / P1651.536-YAA(B32B) / P1651.537-YAA(B32B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第113条第2号、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
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結論
理由
目次 ▾ 22項目
第1 手続の経緯
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特許第6547481号の請求項1~8に係る特許についての出願は、平成27年7月17日を出願日とする出願であって、令和元年7月5日にその特許権の設定登録がされ、令和元年7月24日に特許掲載公報が発行された。
本件特許異議申立て以降の経緯は次のとおりである。
令和元年10月29日 特許異議申立人丸岡慎司(以下「申立人1」という。また、提出された特許異議申立書を、以下「申立書1」という。)による特許異議の申立て。(以下「申立て1」という。)
令和2年1月24日 特許異議申立人萩原真紀(以下「申立人2」という。また、提出された特許異議申立書を、以下「申立書2」という。)による特許異議の申立て。(以下「申立て2」という。)
令和2年3月30日付け 取消理由通知
令和2年5月29日 特許権者による意見書の提出及び訂正請求書の提出。
令和2年7月6日 申立人1による意見書の提出
令和2年7月10日 申立人2による意見書の提出
第2 訂正の適否
1. 訂正の内容
特許権者が令和2年5月29日に提出した訂正請求書(以下「本件訂正請求書」といい、訂正自体を「本件訂正」という。)の内容は、訂正箇所に下線を引いて示すと次のとおりである。
(1) 訂正事項1
訂正前の請求項1を削除する。
(2) 訂正事項2
訂正前の請求項2を、
「有機エレクトロルミネッセンス層の一方の面上に、光学積層体が積層された有機エレクトロルミネッセンス用積層体であって、前記光学積層体は、基材フィルムがポリイミドフィルム又はアラミドフィルムであり、前記基材フィルムの前記有機エレクトロルミネッセンス層と反対側面上に設けられた第一ハードコート層を有し、前記第一ハードコート層は、シリカ微粒子を含有し、20mmの間隔で前記有機エレクトロルミネッセンス用積層体の全面を180°折り畳む試験を10万回繰り返し行った場合に割れ又は破断が生じないものであり、前記有機エレクトロルミネッセンス用積層体の全面を180°折り畳む試験は、前記有機エレクトロルミネッセンス用積層体の一の辺と、該一の辺に対向する他の辺とを、20mmの間隔で平行に配置された上固定部と下固定部とにそれぞれ固定し、前記下固定部を左方に移動させることで、前記有機エレクトロルミネッセンス用積層体の屈曲部位を前記下固定部に固定された他の辺付近まで移動させ、更に、前記下固定部を右方に移動させることで、前記有機エレクトロルミネッセンス用積層体の屈曲部位を前記上固定部に固定された一の辺付近まで移動させるものであることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス用積層体。」と訂正する。これは、以下の訂正事項2-1~訂正事項2-4からなるものである。
ア. 訂正事項2-1: 訂正前の請求項1の記載を引用する請求項2の記載を、請求項1の記載を引用しないものとする。
イ. 訂正事項2-2: 訂正前の請求項2に、前記光学積層体は、「基材フィルムの前記有機エレクトロルミネッセンス層と反対側面上に設けられた第一ハードコート層を有し、前記第一ハードコート層は、シリカ微粒子を含有し、」との記載を加える。
ウ. 訂正事項2-3: 訂正前の請求項1の記載を引用する請求項2の「20mmの間隔で前記有機エレクトロルミネッセンス積層体の全面を180°折り畳む試験を10万回繰り返し行った場合に割れ又は破断が生じない」という記載の「有機エレクトロルミネッセンス積層体」を、「有機エレクトロルミネッセンス用積層体」と訂正する。
エ.訂正事項2-4: 訂正前の請求項1の記載を引用する請求項2の「前記有機エレクトロルミネッセンス積層体の全面を180°折り畳む試験を10万回繰り返し行った場合に割れ又は破談が生じない」について、さらに「前記有機エレクトロルミネッセンス用積層体の全面を180°折り畳む試験は、前記有機エレクトロルミネッセンス用積層体の一の辺と、該一の辺に対向する他の辺とを、20mmの間隔で平行に配置された上固定部と下固定部とにそれぞれ固定し、前記下固定部を左方に移動させることで、前記有機エレクトロルミネッセンス用積層体の屈曲部位を前記下固定部に固定された他の辺付近まで移動させ、更に、前記下固定部を右方に移動させることで、前記有機エレクトロルミネッセンス用積層体の屈曲部位を前記上固定部に固定された一の辺付近まで移動させるものである」との記載を加える。
また、請求項2を引用する請求項3~8も同様に訂正する。
(3) 訂正事項3
訂正前の請求項3に「請求項1又は2記載の有機エレクトロルミネッセンス用積層体」とあるのを、「請求項2記載の有機エレクトロルミネッセンス用積層体」に訂正する。
また、請求項3を引用する請求項4~8も同様に訂正する。
(4) 訂正事項4
訂正前の請求項4に「請求項1、2又は3記載の有機エレクトロルミネッセンス用積層体」とあるのを、「請求項2又は3記載の有機エレクトロルミネッセンス用積層体」に訂正する。
また、請求項4を引用する請求項5~8も同様に訂正する。
(5) 訂正事項5
訂正前の請求項7に「請求項1、2、3、4、5又は6記載の有機エレクトロルミネッセンス積層体」とあるのを、「請求項2、3、4、5又は6記載の有機エレクトロルミネッセンス用積層体」に訂正する。
また、請求項7を引用する請求項8も同様に訂正する。
(6) 訂正事項6
訂正前の請求項8に「請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の有機エレクトロルミネッセンス用積層体」とあるのを、「請求項2、3、4、5、6又は7記載の有機エレクトロルミネッセンス用積層体」に訂正する。
(7) 訂正事項7
訂正前の本件特許明細書の【0041】に「図1は、520mmの間隔で本発明の有機EL用積層体の全面を180°折り畳む試験(以下、耐久折り畳み試験とも言う)を模式的に示す断面図である。本発明において、上記520mmの間隔とは、対向する有機EL積層体間の距離が520mmであることを意味する。」とあるのを、「図1は、20mmの間隔で本発明の有機EL用積層体の全面を180°折り畳む試験(以下、耐久折り畳み試験とも言う)を模式的に示す断面図である。本発明において、上記20mmの間隔とは、対向する有機EL積層体間の距離が20mmであることを意味する。」に訂正する。
2. 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 訂正事項1について
訂正事項1は、請求項1を削除する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
訂正事項1が、新規事項を追加するものではなく、特許請求の範囲の拡張・変更するものではないことは明らかである。
(2) 訂正事項2について
上記1.(2)に示した、訂正事項2-1~訂正事項2-4のそれぞれについて検討する。
ア. 訂正事項2-1について
訂正事項2-1は、訂正事項1により請求項1が削除されたので、請求項1の記載を引用する請求項2の記載を、請求項1を引用しないものとするものとする訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第4号に規定した他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを、目的とするものに該当する。
訂正事項2-1が、新規事項を追加するものではなく、特許請求の範囲の拡張・変更をするものでもないことは明らかである。
イ. 訂正事項2-2について
訂正事項2-2は、訂正前の請求項1の「光学積層体」を、「前記基材フィルムの前記有機エレクトロルミネッセンス層と反対側面上に設けられた第一ハードコート層を有し、前記第一ハードコート層は、シリカ微粒子を含有」するものに限定する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
訂正前の本件特許明細書【0050】~【0053】には、「シリカ微粒子」を含有する「第一ハードコート層」を含む「光学積層体」が記載されているから、訂正事項2-2は、新規事項を追加するものではなく、特許請求の範囲の拡張・変更するものでもない。
ウ. 訂正事項2-3について
訂正事項2-3は、訂正前の請求項1の「20mmの間隔で前記有機エレクトロルミネッセンス積層体の全面を」の「前記有機エレクトロルミネッセンス積層体」という記載を、「前記有機エレクトロルミネッセンス用積層体」と訂正するものであるところ、当該「前記有機エレクトロルミネッセンス積層体」より「前記」されているのは、「有機エレクトロルミネッセンス積層体」ではなく「有機エレクトロルミネッセンス用積層体」であり、さらに【請求項1】は、「有機エレクトロルミネッセンス層の一方の面上に、光学積層体が積層された有機エレクトロルミネッセンス用積層体であって」と記載されたあと、【請求項1】の末尾は、「・・・ことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス用積層体。」と記載されていることに鑑みると、上記「有機エレクトロルミネッセンス積層体」という記載は、本来、「有機エレクトロルミネッセンス用積層体」と記載すべきものの誤記であることが明らかである。
そうすると、訂正事項2-3は、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に規定される誤記の訂正を目的とするものに該当する。
そして、訂正事項2-3が、新規事項を追加するものではなく、特許請求の範囲の拡張・変更をするものもないことは明らかである。
エ. 訂正事項2-4について
訂正事項2-4は、訂正前の請求項2が引用する請求項1の「前記有機エレクトロルミネッセンス積層体の全面を180°折り畳む試験を10万回繰り返し行った場合に割れ又は破断が生じない」について、さらに限定する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
訂正事項2-4に係る「180°折り畳む試験」についての記載は、本件明細書【0041】及び【0042】に基づくものであるから、訂正事項2-4は、新規事項を追加するものではなく、特許請求の範囲の拡張・変更するものでもない。
(3) 訂正事項3、4、6について
訂正事項3、4、6は、訂正事項1によって請求項1を削除する訂正に対応して、訂正前の請求項3、4、8がそれぞれ引用する請求項から請求項1を削除する訂正であるから、特許法第120条の5第2項ただし書き第3号に規定される、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。
訂正事項3、4、6が、新規事項を追加するものではなく、特許請求の範囲の拡張・変更するものではないことは明らかである。
(4) 訂正事項5について
訂正事項5は、訂正事項1によって請求項1を削除する訂正に対応して、訂正前の請求項5がそれぞれ引用する請求項から請求項1を削除する訂正事項と、上記(2)ウ.に示した訂正事項2-3と同様に訂正前の「有機エレクトロルミネッセンス積層体」を「有機エレクトロルミネッセンス用積層体」と訂正する訂正事項からなるものである。
引用する請求項から請求項1を削除する訂正事項は、上記(3)に示したのと同様に、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定される、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当する。そして、この訂正事項が、新規事項を追加するものではなく、特許請求の範囲の拡張・変更するものではないことは明らかである。
「有機エレクトロルミネッセンス積層体」を、「有機エレクトロルミネッセンス用積層体」と訂正する訂正事項は、上記(2)ウ.に示したように、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に規定される、誤記の訂正を目的とするものに該当し、新規事項を追加するものではないし、特許請求の範囲の拡張・変更をするものではない。
(5) 訂正事項7について
訂正事項7は、訂正前の本件特許明細書の【0041】に折り畳み試験における有機EL積層体の全面を180°折り畳む試験における積層体間の間隔について、「520mm」(3箇所)と記載されていたのを、「20mm」と訂正するものである。【0041】には、上記3カ所の訂正箇所の前に、「本発明の有機EL用積層体は、20mmの間隔で上記有機EL用積層体の全面を180°折り畳む試験を10万回繰り返し行った場合に割れ又は破断が生じない。
本発明の有機EL用積層体は、15mmの間隔で上記有機EL用積層体の全面を180°折り畳む試験を10万回繰り返し行った場合に割れ又は破断が生じないことが好ましいく、10mmの間隔で上記有機EL用積層体の全面を180°折り畳む試験を10万回繰り返し行った場合に割れ又は破断が生じないことがより好ましい。」という記載があり、【0009】に、「課題を解決するための手段」として、「本発明は、有機エレクトロルミネッセンス層の一方の面上に、光学積層体が積層された有機エレクトロルミネッセンス用積層体であって、20mmの間隔で上記有機エレクトロルミネッセンス積層体の全面を180°折り畳む試験を10万回繰り返し行った場合に割れ又は破断が生じないことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス用積層体である。」という記載がある。さらに、訂正前の本件特許の【請求項1】には「20mmの間隔で前記有機エレクトロルミネッセンス積層体の全面を180°折り畳む試験を10万回繰り返し行った場合に割れ又は破断が生じない」という特定がある。加えて、本件特許明細書【0115】の「・・・本発明の有機EL用積層体は、折り畳み式スマートフォンや折り畳み式タブレット等の用途として用いられる部材であるため、抗菌性を有するものであることが好ましい。」という記載から、通常用いられる「折り畳み式スマートフォン」の大きさに鑑みると、折り畳み式スマートフォンにおいては有機EL積層体の全面を180°折り畳む時の積層体間の間隔は「520mm」よりもずっと小さいであろうといえる。
そうすると、本件訂正前の本件特許明細書の【0041】の3箇所の「520mm」との記載は、「20mm」の誤記であると理解できるから、訂正事項7は、特許法第120条の5第2項ただし書き第2号に規定される誤記の訂正を目的とするものに該当する。また、上記のとおり、訂正事項7は、新規事項を追加するものでもない。さらに、特許請求の範囲を拡張・変更するものでもないことは明らかである。
(6) 一群の請求項について
本件訂正前の請求項2~8は、直接的あるいは間接的に請求項1を引用するものであるから、請求項1の訂正に連動して訂正されるものである。よって、本件訂正は特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項に対して請求されたものである。
(7) 明細書又は図面の訂正と関係する請求項について
訂正事項7は、本件特許明細書についてする訂正であるところ、訂正事項7は、本件訂正前の請求項1に「20mmの間隔で前記有機エレクトロルミネッセンス積層体の全面を180°折り畳む試験を10万回繰り返し行った場合に割れ又は破談が生じない」に関係する本件特許明細書の【0041】を訂正するものであるから、訂正事項7と関係する請求項は、請求項1と、請求項1を引用する請求項2~8からなる一群の請求項である。
3. 訂正についての小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号~第4号に規定された事項を目的とするものに該当し、かつ、同条第4項、並びに、同条第9項において準用する同法第126条第4項、第5項及び第6項の規定に適合する。
よって、本件明細書及び特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、本件訂正後の請求項1~8について訂正することを認める。
第3 本件訂正後の本件発明
上記第2に示したとおり、本件訂正請求は認められたから、本件特許の請求項2~8に係る発明(以下「本件発明2」等という。)は、本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項2~8に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項2】有機エレクトロルミネッセンス層の一方の面上に、光学積層体が積層された有機エレクトロルミネッセンス用積層体であって、前記光学積層体は、基材フィルムがポリイミドフィルム又はアラミドフィルムであり、前記基材フィルムの前記有機エレクトロルミネッセンス層と反対側面上に設けられた第一ハードコート層を有し、前記第一ハードコート層は、シリカ微粒子を含有し、20mmの間隔で前記有機エレクトロルミネッセンス用積層体の全面を180°折り畳む試験を10万回繰り返し行った場合に割れ又は破断が生じないものであり、続きを表示(全18行)前記有機エレクトロルミネッセンス用積層体の全面を180°折り畳む試験は、前記有機エレクトロルミネッセンス用積層体の一の辺と、該一の辺に対向する他の辺とを、20mmの間隔で平行に配置された上固定部と下固定部とにそれぞれ固定し、前記下固定部を左方に移動させることで、前記有機エレクトロルミネッセンス用積層体の屈曲部位を前記下固定部に固定された他の辺付近まで移動させ、更に、前記下固定部を右方に移動させることで、前記有機エレクトロルミネッセンス用積層体の屈曲部位を前記上固定部に固定された一の辺付近まで移動させるものであることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス用積層体。【請求項3】光学積層体は、基材フィルムの厚みが10~55μmである請求項2記載の有機エレクトロルミネッセンス用積層体。【請求項4】光学積層体は、基材フィルムの有機エレクトロルミネッセンス層と反対側面上に設けられた第一ハードコート層と、前記第一ハードコート層の前記基材フィルム側と反対側面上に設けられた第二ハードコート層とを有する請求項2又は3記載の有機エレクトロルミネッセンス用積層体。【請求項5】第二ハードコート層は、樹脂成分として多官能(メタ)アクリレートモノマーの硬化物を含有し、第一ハードコート層は、樹脂成分として多官能(メタ)アクリレートの硬化物を含有するとともに、前記樹脂成分中に分散されたシリカ微粒子とを含有する請求項4記載の有機エレクトロルミネッセンス用積層体。【請求項6】シリカ微粒子は、反応性シリカ微粒子である請求項5記載の有機エレクトロルミネッセンス用積層体。【請求項7】光学積層体は、単官能モノマーの硬化層を更に有する請求項2、3、4、5又は6記載の有機エレクトロルミネッセンス用積層体。【請求項8】有機エレクトロルミネッセンス層は、基板がポリイミドフィルム、アラミドフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、シクロオレフィンフィルム又はアクリルフィルムである請求項2、3、4、5、6又は7記載の有機エレクトロルミネッセンス用積層体。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由の概要
令和2年3月30日付けで、本件発明2~8について、当審が通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。
1. 【理由1】 本件特許は、明細書又は特許請求の範囲の記載が以下の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号、同条第6項第1号及び同項同条第2号に規定する要件を満たしていない。
(1) 特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)
折り畳む試験を10万回繰り返し行った場合に割れ又は破断が生じない有機エレクトロルミネッセンス用積層体を得るための「有機エレクトロルミネッセンス層」は、その具体的構成が本件明細書になんら記載されておらず、かつ周知のものでもない。
(2) 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)
ア. 本件特許の請求項2~8に係る発明には、本件発明の課題を解決する手段のうち、硬度及び透明性に関する構成要件が反映されていない。
イ. 本件特許の発明の詳細な説明には、特定の第一ハードコート層、及び、第二ハードコート層を備える積層体のみが開示されているが、技術常識を考慮しても、請求項に係る発明にまで、発明の詳細な説明における開示内容を拡張ないし一般化できない。
ウ. 本件特許明細書に記載された「参考例5」は、本件特許の請求項2~3に含まれるが、「硬度」についての本件発明の課題を達成しないから、請求項2~3は、当該課題を解決しないものを含んでいる。
エ. 本件特許明細書に記載された「比較例1~4」は、その構成からみて、請求項3~8に含まれるが、しかし、「硬度」についての本件発明の課題を達成しないから、本件特許の請求項3~8は、当該課題を解決しないものを含んでいる。
(3) 特許法第36条第6項第2号(明確性要件)
ア. 本件特許の請求項8に係る発明の、有機エレクトロルミネッセンス層の基板は、特定のフィルムであるが、有機エレクトロルミネッセンス層がどのような層構成を備えるか、不明確である。
イ. 本件特許の請求項2~8には、「20mm間隔で前記有機エレクトロルミネッセンス積層体の全面を180°折り畳む試験を10万回繰り返し行った場合」という記載があるが当該「試験」の構成が不明瞭であるので、ある折り畳み試験が、請求項1に特定されたものを充足するか否か不明となるから、第三者に不測の不利益を生じることとなる。
2. 【理由3】(進歩性)
本件特許の以下の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(1) 本件発明2、3について
本件発明2、3は、引用発明及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2) 本件発明4について
本件発明4は、引用発明、引用文献2に記載された事項及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4) 本件発明5及び6について
本件発明5及び6は、引用発明、引用文献2、4に記載された事項、及び、従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5) 本件発明7について
本件発明7は、引用発明、引用文献2、4、5に記載された事項、及び、従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(6) 本件発明8について
本件発明8は、引用発明、引用文献2、4、5、6に記載された事項、及び、従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
<引 用 文 献 等 一 覧>
以下、特許異議の申立書に添付された甲第1号証を甲1等という。
1. Ryu Komatsu et.al., “Repeatedly Foldable Book-Type AMOLED Display”, SID 2014 DIGEST, Volume 45, Issue 1, 25.2,San Diego, CA, June 1-6, 2014, Page 326-329.(申立て2の甲1)
2. 特表2016-521216号公報(申立て2の甲3)
3. 月舘和人「耐熱透明フイルム市場の現状と今後の展開」、テクノ・クリエイト マンスリージャーナル Vol.2 (2012)、1~3ページ(申立て2の甲4)
4. 国際公開第2015/098495号(申立て2の甲5)
5. 特開2012-230200号公報(申立て2の甲6)
6. 国際公開第2010/090087号(申立て2の甲7)
7. 特開2006-289627号公報(申立て1の甲2)
第5 当審の判断
1. 【理由1】について
(1) 特許法第36条第4項第1号(実施可能要件)について
有機エレクトロルミネッセンス層は、引用文献1にも示されたとおり、ある程度の耐久折り畳み性能を有することは、技術常識であるといえるから、有機エレクトロルミネッセンス層が具体的に特定されずとも、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載から、本件発明2に特定された折り畳む試験を10万回繰り返し行った場合に割れ又は破断が生じなものを得るために、過度な試行錯誤が必要であるとまではいえない。
よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定された要件を満たしていないとまではいえない。
(2) 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
ア. 上記第4の1.(2)ア.について
本件発明2~8は、「シリカ微粒子」を含有する「第一ハードコート層」を有するものであり、本件特許明細書の「上記第一ハードコート層とは硬度を付与するための層であり」(【0051】)、及び、第一ハードコート層のマルテンス硬さが上記第二ハードコート層のマルテンス硬さよりも大きくする方法としては、例えば、後述するシリカ微粒子の含有量を第一ハードコート層側により多く含有するよう制御する方法等が挙げられる」(【0052】)という記載から、本件発明2~8に「硬度」に関する構成要件が反映されていない、とまではいえない。
また、本件発明2~8の「有機エレクトロルミネッセンス用積層体」は、「有機エレクトロルミネッセンス層」が発光し、その光が「有機エレクトロルミネッセンス用積層体」外部に放射されることが自明であるから、当該積層体は、当然に、ある程度の透明性を備えたものであるといえる。そうすると、本件発明2~8が「透明性」に関する構成要件が反映されていない、とまではいえない。
イ. 上記第4の1.(2)イ.について
本件特許明細書には、「第一ハードコート層」については、
「上記第一ハードコート層とは、硬度を付与するための層であり、断面中央におけるマルテンス硬さが500MPa以上1000MPa未満であることが好ましい。上記第一ハードコート層のマルテンス硬さを上記範囲とすることにより、上記ハードコート層のJIS K5600-5-4(1999)に規定する鉛筆硬度試験(750g荷重)の硬度が、4H以上とすることができ、また、本発明の有機EL用積層体に充分な耐久折り畳み性能を付与することができる。上記第一ハードコート層の断面中央におけるマルテンス硬さのより好ましい下限は600MPa、より好ましい上限は950MPaである。」(【0051】)という記載があり、
「第二ハードコート層」について、
「また、上記第二ハードコート層とは、上述した耐久折り畳み性と耐擦傷性を付与するための層であり、断面中央におけるマルテンス硬さが350MPa以上600MPa以下であることが好ましい。上記第二ハードコート層のマルテンス硬さを上記範囲とすることにより、充分な耐久折り畳み性能を有するとともに、#0000番のスチールウールで1kg/cm2の荷重をかけながら、上記ハードコート層の表面を3500回往復摩擦させる耐スチールウール試験において傷が生じないといった極めて優れた耐擦傷性を付与することができる。上記第二ハードコート層の断面中央におけるマルテンス硬さのより好ましい下限は375MPa、より好ましい上限は575MPaである。」(【0052】)という記載があり、
同じく【0052】には、「本発明の有機EL用積層体において、上記ハードコート層は単一構造であってもよ」いとも記載されている。
そうすると、第一ハードコート層を備えることにより、本件発明2~8が解決しようとする課題である「耐久折り畳み性能」(【0008】)を付与することができると認識し得るといえるから、本件特許の特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定される要件を満たしていないとはいえない。
ウ. 上記第4の1.(2)ウ.について
本件訂正によって、本件発明2は、シリカ微粒子を含有する第一ハードコート層を有するものとなり、参考例5に係る有機エレクトロルミネッセンス用積層体は含まれないものとなったため、上記第4の1.(2)ウ.の取消理由は解消した。
エ. 上記第4の1.(2)エ.について
本件訂正によって、本件発明3~8は、基材フィルムをポリイミドフィルム又はアラミドフィルムに限定したものとなり、比較例1~4に係る有機エレクトロルミネッセンス用積層体は含まれないものとなったため、上記第4の1.(2)エ.の取消理由は解消した。
(3) 特許法第36条第6項第2号(明確性要件)について
ア. 上記第4の1.(3)ア.について
本件発明8は、有機エレクトロルミネッセンス層の基板が特定のフィルムであることが特定され、さらに本件発明2を引用し、本件発明2に特定される「180°折り畳む試験を10万回繰り返し行った場合に割れ又は破断が生じないもの」であるから、有機エレクトロルミネッセンス層がどのような層構成を備えているか特定されなくとも、本件発明8の外延は明確であって、第三者に不測の不利益が生じるものであるとはいえず、本件特許の特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定に適合しないとまではいえない。
イ. 上記第4の1.(3)イ.について
本件訂正によって、請求項2~8の「20mm間隔で前記有機エレクトロルミネッセンス積層体の全面を180°折り畳む試験を10万回繰り返し行った場合」について、「20mmの間隔で前記有機エレクトロルミネッセンス用積層体の全面を180°折り畳む試験を10万回繰り返し行った場合に割れ又は破断が生じないものであり、
前記有機エレクトロルミネッセンス用積層体の全面を180°折り畳む試験は、前記有機エレクトロルミネッセンス用積層体の一の辺と、該一の辺に対抗する他の辺とを、20mmの間隔で平行に配置された上固定部と下固定部とにそれぞれ固定し、前記下固定部を左方に移動させることで、前記有機エレクトロルミネッセンス用積層体の屈曲部位を前記下固定部に固定された他の辺付近まで移動させ、更に、前記下固定部を右方に移動させることで、前記有機エレクトロルミネッセンス用積層体の屈曲部位を前記上固定部に固定された一の辺付近まで移動させるものである」と特定されたから、上記第4の1.(3)イ.についての取消理由は解消した。
(4) 【理由1】についてのまとめ
よって、本件発明2~8は、特許法第36条第4項第1号、同条第6項第1号及び同条同項第2号の規定に適合しない発明であるとはいえない。
2. 【理由3】(進歩性について)について
(1) 引用文献1
引用文献1には、326ページ左欄1~5行、326ページ右欄下から9行~327ページ左欄9行、図2、372ページ左欄下から7~6行、327ページ右欄7~16行、327ページ右欄19~末行、328ページ表2の記載があり、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「OLED層の一方の面状に、カラーフィルタ(CF層)が積層されたOLED用積層体であって、折り畳み湾曲半径を5mm及び2mmとして、それぞれ180°折り畳んでは開く試験を10万回耐えるOLED用積層体。」
(2) 本件発明2について
ア. 対比
本件発明2と引用発明とを対比すると、以下の点で少なくとも相違する。
<相違点>
本件発明2の「有機エレクトロルミネッセンス用積層体」は、「有機エレクトロルミネッセンス層の一方の面上に、光学積層体が積層されたものであって、前記光学積層体は、基材フィルムがポリイミドフィルム又はアラミドフィルムであり、前記基材フィルムの前記有機エレクトロルミネッセンス層と反対側面上に設けられた第一ハードコート層を有し、前記第一ハードコート層は、シリカ微粒子を含有」するものであって、
「20mmの間隔で前記有機エレクトロルミネッセンス用積層体の全面を180°折り畳む試験を10万回繰り返し行った場合に割れ又は破断が生じないものであり、前記有機エレクトロルミネッセンス用積層体の全面を180°折り畳む試験は、前記有機エレクトロルミネッセンス用積層体の一の辺と、該一の辺に対抗する他の辺とを、20mmの間隔で平行に配置された上固定部と下固定部とにそれぞれ固定し、前記下固定部を左方に移動させることで、前記有機エレクトロルミネッセンス用積層体の屈曲部位を前記下固定部に固定された他の辺付近まで移動させ、更に、前記下固定部を右方に移動させることで、前記有機エレクトロルミネッセンス用積層体の屈曲部位を前記上固定部に固定された一の辺付近まで移動させるものである」のに対し、
引用発明の「OLED用積層体」は、「折り畳み湾曲半径を5mm及び2mmとして、それぞれ180°折り畳んでは開く試験を10万回耐える」ものではあるものの、本件発明2の上記試験について10万回繰り返し行っても、割れや破断が生じないものであるか、明らかではない点。
イ. 相違点についての検討
(ア) 引用文献1には、OLED用積層体であって、OLED層の一方の面上に設けたカラーフィルタを、ポリイミドフィルム又はアラミドフィルムである基材フィルムを有し、前記基材フィルムの前記OLED層と反対側面上に、シリカ微粒子を含有する第一ハードコート層を有し、かつ、本件発明2の試験を10万回繰り返し行った場合にも、割れ又は破断が生じないことは、記載されていないし、示唆する記載もない。
また、このことは、上記引用文献2~7にも記載されていないし、示唆する記載もない。そして、他の甲号証にも記載はないし、示唆する記載もない。
(イ) 本件発明2は、基材フィルムとしてポリイミドフィルム又はアラミドフィルムを用いることで、耐久折り畳み試験において割れ又は破断が発生せず、近年要求される優れた耐久折り畳み性能を有するだけでなく、優れた高度及び透明性をも有するものとなり(本件特許明細書【0012】)、シリカ微粒子を含有する第一ハードコート層を有することで硬度を付与し、優れた硬度と、本件発明2に特定される「有機エレクトロルミネッセンス用積層体の屈曲部位」が、「下固定部に固定された他の辺付近まで移動させ」、さらに「前記上固定部に固定された一の辺付近まで移動させる」ような試験を10万回繰り返し行った場合にも、割れ又は破断が生じない、との格別な作用効果を奏する。一方、引用発明の試験は、単にフィルムの特定箇所を180°折り畳んでは開く試験であり、一の辺や他の辺に向けて屈曲部位が移動するような試験を10万回繰り返した際にの結果について、引用文献1には記載されていないし、示唆する記載もない。
(ウ) よって、引用発明に上記相違点に係る本件発明2の構成を備えたものとすることは、当業者が容易になし得たものであるとはいえない。
ウ. 小括
以上のとおりであるから、本件発明2は、引用発明、他の引用文献に記載された事項及び従来周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明ではない。
(3) 本件発明3~8について
本件発明3~8は、本件発明2を直接的あるいは間接的に引用する発明である。
そうすると、本件発明3~8は、本件発明2の発明特定事項を全て含むものであるところ、本件発明2が、上記(2)ウ.に示したように、引用発明、他の引用文献に記載された事項及び従来周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができないものであったから、本件発明2の発明特定事項をすべて含む本件発明3~8も、引用発明、他の引用文献に記載された事項及び従来周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明ではない。
(4) 【理由3】についてのまとめ
よって、本件発明2~8は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではないから、本件発明2~8に係る特許は、特許法第113条第2号の規定に該当する事を理由として、取り消すことはできない。
第6 取消理由通知で通知しなかった申立理由
1. 申立人1が主張する申立理由の概要
申立人1は、訂正前の本件発明1~7は、申立書1に添付した甲1に記載の発明、申立書1に添付した甲2~5に記載された事項、及び、従来周知の事項から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるので、それらの特許は、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものであると、大要、主張している。
2. しかし、上記申立書1に添付した甲1、そしてその他の甲号証においても、OLED用積層体であって、OLED層の一方の面上に設けたカラーフィルタを、ポリイミドフィルム又はアラミドフィルムである基材フィルムを有し、前記基材フィルムの前記OLED層と反対側面上に、シリカ微粒子を含有する第一ハードコート層を有し、かつ、本件発明2の試験を10万回繰り返し行った場合にも、割れ又は破断が生じないことは、記載されていないし、示唆する記載もない。
3. よって、申立人1が主張する上記1.に示した申立て理由によっては、本件発明2~8を取り消すことはできない。
第7 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び申立書1又は2に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項2~8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項2~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、請求項1に係る特許は、上記第2の1.(1)に記載したとおり、本件訂正により削除されたから、申立人1又は2による特許異議の申立てについて、請求項1に係る申立ては、いずれも不適法であって、その補正をすることができないものであるから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2019-700859