2020-700043
タッチパネル用積層体、及び、折り畳み式画像表示装置
- 審判番号
- 2020-700043
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2015-143495外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2020年01月28日
- 審決日
- 2020年08月31日
- 公報発行日
- 2020年10月30日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】大日本印刷株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人 安富国際特許事務所
- 【異議申立人】丸岡 慎司
- 【異議申立人】萩原 真紀
- 分類
- P1651.121-Y (G06F) / P1651.536-Y (G06F) / P1651.537-Y (G06F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条、特許法第36条第4項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
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結論
理由
目次 ▾ 16項目
第1 手続の経緯
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特許第6578780号(請求項の数11。以下,「本件特許」という。)に係る出願は,平成27年7月17日に出願されたものであって,令和元年9月6日にその特許権の設定登録がされ,令和元年9月25日に本件特許について特許掲載公報が発行された。その後,その特許に対し,令和2年1月28日に特許異議申立人丸岡慎司(以下,「申立人1」という。)が請求項1ないし11に係る特許について特許異議の申立て(以下,「申立1」という。)を行い,さらに,令和2年3月24日に特許異議申立人萩原真紀(以下,「申立人2」という。)が請求項1ないし11に係る特許について特許異議の申立て(以下,「申立2」という。)を行った。
第2 本件特許の各請求項に係る発明について
本件特許の請求項1ないし11に係る発明(以下,それぞれを「本件特許発明1」ないし「本件特許発明11」といい,これらを総称して「本件特許発明」という。)は,それぞれ,特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】タッチパネルの表面材として用いられ,耐屈曲性を備えた樹脂基材と少なくとも1層の樹脂硬化層とを有するタッチパネル用積層体であって,下記(条件1)及び(条件2)を充足することを特徴とするタッチパネル用積層体。(条件1)3mmの間隔で前記タッチパネル用積層体の全面を180°折り畳む試験を10万回繰り返し行った場合に割れ又は破断が生じない続きを表示(全25行)(条件2)波長400nm~700nmの領域における前記タッチパネル用積層体の分光反射率を求め,任意の50nmの範囲における前記分光反射率の標準偏差が0.045未満である【請求項2】耐屈曲性を備えた樹脂基材は,ポリイミドフィルム又はアラミドフィルムである請求項1記載のタッチパネル用積層体。【請求項3】耐屈曲性を備えた樹脂基材の厚みが10~55μmである請求項1又は2記載のタッチパネル用積層体。【請求項4】単官能モノマーの硬化層を更に有する請求項1,2,又は3記載のタッチパネル用積層体。【請求項5】単官能モノマーの硬化層を,耐屈曲性を備えた樹脂基材の樹脂硬化層側に有する請求項4記載のタッチパネル用積層体。【請求項6】樹脂硬化層は,耐屈曲性を備えた樹脂基材側に設けられた第一ハードコート層と,前記第一ハードコート層の前記耐屈曲性を備えた樹脂基材側と反対側面上に設けられた第二ハードコート層とを有する請求項1,2,3,4,又は5記載のタッチパネル用積層体。【請求項7】第二ハードコート層は,樹脂成分として多官能(メタ)アクリレートモノマーの硬化物を含有し,第一ハードコート層は,樹脂成分として多官能(メタ)アクリレートの硬化物を含有するとともに,前記樹脂成分中に分散されたシリカ微粒子とを含有する請求項6記載のタッチパネル用積層体。【請求項8】シリカ微粒子は,反応性シリカ微粒子である請求項7記載のタッチパネル用積層体。【請求項9】防汚性能を更に有する請求項1,2,3,4,5,6,7,又は8記載のタッチパネル用積層体。【請求項10】導電性層を更に有する請求項1,2,3,4,5,6,7,8,又は9記載のタッチパネル用積層体。【請求項11】請求項1,2,3,4,5,6,7,8,9又は10記載のタッチパネル用積層体を用いてなることを特徴とする折り畳み式画像表示装置。」
第3 申立ての理由の概要
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1 申立1の理由概要
申立人1は,特許異議申立書(以下,「申立書1」という。)において,以下の理由1-1ないし1-4により,本件特許発明1ないし11についての特許を,取り消すべきである旨主張している。
(1)理由1-1(進歩性)
申立人1は,主たる証拠である甲第1号証(以下,「文献1」という。),および,従たる証拠である甲第2号証ないし甲第8号証(以下,それぞれ,「文献2ないし8」という。)を提出して,本件特許発明1ないし11についての特許は特許法29条2項の規定に違反してされたものである旨主張している。(申立書1第12頁第17行~第23頁第16行)
甲第1号証(文献1):特開2013-209481号公報
甲第2号証(文献2):特開2006-289627号公報
甲第3号証(文献3):特開2015-127124号公報
甲第4号証(文献4):特開2003-177209号公報(周知慣用技術であることを示すもの。他の周知文献として,特開2006-231846号公報,特開2012-35560号公報,特開2012-187823号公報(以下,それぞれ,「文献4a~文献4c」という。)を例示している。)
甲第5号証(文献5):特表2015-508345号公報
甲第6号証(文献6):特開2015- 69197号公報
甲第7号証(文献7):特開2013-210976号公報
甲第8号証(文献8):特開2009- 26290号公報
(2)理由1-2(実施可能要件)
申立人1は,本件特許請求項1は,(条件2)として,「波長400nm~700nmの領域における前記タッチパネル用積層体の分光反射率を求め,任意の50nmの範囲における前記分光反射率の標準偏差が0.045未満である」という条件を要件としているところ,一般的に,標準偏差の値は,測定値の数(データ数)や,測定幅(測定波長幅)によって大きく依存し,その値も大きく変化するが,本件特許明細書の上記段落や実施例の欄にも,任意の50nmの範囲において,どのような波長間隔(例えば,1nm間隔,10nm間隔,50nm間隔なのか)で,何点のデータ(例えば,50点,5点,1点なのか)で,標準偏差を算出すればよいのか,明細書には一切記載されておらず,測定条件が不明確であり,実施例欄などにおいても,具体的な算出経過や測定反射率データが示されていないから,当業者は,本件特許発明1を実施(製造)することが困難であり,本件特許発明2ないし11についても,本件特許発明1を実施することが困難である以上,同様に,実施することが困難である旨主張している。(申立書1第23頁第17行~第24頁第18行)
(3)理由1-3(サポート要件)
申立人1は,本件特許発明1は,達成すべき結果により規定された発明(具体的には,所望の折り畳み試験条件および分光反射率の標準偏差により規定されたタッチパネル用積層体の発明)であるが,本件特許明細書の発明の詳細な説明には,特定の第1ハードコート層,特定の第2層ハードコート層,および,特定の単官能モノマーの硬化層を備える積層体のみが開示されており,また,本件特許請求項1の「(条件2)波長400nm~700nmの領域における前記タッチパネル用積層体の分光反射率を求め,任意の50nmの範囲における前記分光反射率の標準偏差が0.045未満である」について,その発明特定事項の効果としては,段落0045から,干渉縞防止であるとされているが,実施例(段落0150の表1)において,標準偏差が0.045付近(例えば,0.020~0.045)では,干渉縞が防止されている実験データは存在しておらず,干渉縞防止が達成されているのは,実施例1~14を見ると,標準偏差が0.018以下のものに限られる一方,比較例2を見ると,0.045にごく近い0.050では干渉縞が防止されておらず,0.018で干渉縞が防止されているため,標準偏差0.045未満付近では,干渉縞を防止できていない蓋然性が極めて高く,また,標準偏差の境界を0.045という数値に設定した技術的意義や根拠も不明であるから,技術常識を考慮しても,本件特許発明1に係る発明の範囲まで,発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえず,本件特許発明2ないし11についても,同様に,これらの発明の範囲まで,発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない旨主張している。(申立書1第24頁第19行~第26頁第2行)
(4)理由1-4(明確性要件)
申立人1は,本件特許請求項1では,分光反射率の標準偏差が,0.045未満であると記載されており,標準偏差の単位は,通常,その標準偏差の測定対象の単位と一致するから,分光反射率の標準偏差の単位は,分光反射率(%)の単位と一致するはずであるところ,本件請求項1では,分光反射率の標準偏差の単位は,分光反射率の単位(%)ではなく,無単位となっており,両者は一致しておらず,技術的意義が理解できないから,本件特許発明1は,不明確であり,本件特許発明2ないし11についても,本件特許発明1が不明確である以上,同様に,不明確である旨主張している。(申立書1第26頁第3行~第13行)
2 申立2の理由概要
申立人2は,特許異議申立書(以下,「申立書2」という。)において,以下の理由2-1ないし2-3により,本件特許発明1ないし11についての特許を,取り消すべきである旨主張している。
(1)理由2-1(進歩性)
申立人2は,主たる証拠である甲第1号証(申立1の甲第8号証と同じ。),および,従たる証拠である甲第2号証(以下,「文献9」という。),甲第3号証(申立て1の「文献4」と同じ。),甲第4号証(以下,「文献10」という。),甲第5号証(以下,「文献11」という。),甲第6号証(以下,「文献12」という。),ならびに,甲第7号証(以下,「文献13」という。)を提出して,本件特許発明1ないし11についての特許は特許法29条2項の規定に違反してされたものである旨主張している。(申立書2第15頁第19行~第23頁最終行)
甲第1号証(文献8):特開2009- 26290号公報 (申立1の甲第8号証と同じ)
甲第2号証(文献9):特開2012-230200号公報
甲第3号証(文献4):特開2003-177209号公報 (申立1の甲第4号証と同じ)
甲第4号証(文献10):特表2016-521216号公報
甲第5号証(文献11):月舘和人『耐熱透明フイルム市場の現状と今後の展開』
甲第6号証(文献12):国際公開第2015/098495号公報
甲第7号証(文献13):特表2015-523202号公報
(2)理由2-2(実施可能要件)
申立人2は,当業者は,本件請求項1に規定されている,耐屈曲性を備えた樹脂基材と少なくとも1層の樹脂硬化層とを有するタッチパネル用積層体であって,(条件1)及び(条件2)を充足するもののうちで,実施例に記載されていないものを製造するためには,当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤をする必要があり,請求項1に従属する請求項2~11も同様であって,本件請求項1~11に係る発明は,実施可能でない発明を含んでいるから,本件明細書の記載は実施可能要件に違反している旨主張している。(申立書2第24頁第1行~第25頁第5行)
(3)理由2-3(サポート要件)
申立人2は,当業者は,実施例を除き,本件請求項1に規定されている,耐屈曲性を備えた樹脂基材と少なくとも1層の樹脂硬化層とを有するタッチパネル用積層体であって(条件1)及び(条件2)を充足するものが,本件発明の課題を解決できるとは,認識できず,請求項1に従属する請求項2~11も同様であって,本件特許発明1~11は,明細書の記載から発明の課題が解決できると認識することができる範囲を超えるものであるから,本件特許請求の範囲の記載はサポート要件に違反している旨主張している。(申立書2第25頁第6行~第26頁第20行)
第4 文献の記載
後記1では,申立人1が主たる証拠である甲第1号証として提出した文献1(特開2013-209481号公報)の記載に基づいて,引用発明1を認定し,後記2では,申立人2が甲第1号証として提出した文献8(特開2009-26290号公報)の記載に基づいて,引用発明2を認定し,後記3では,申立人1および申立人2が従たる証拠として提出した文献に記載された技術的事項を認定するとともに,申立人1が周知技術を示すものとして,従たる証拠として提出した文献4,および,例示した文献4a~4cに基づいて周知技術を認定する。
1 文献1の記載事項および引用発明1
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(1)文献1の記載事項
申立人1が主たる証拠である甲第1号証として提出した文献1(特開2013-209481号公報)には,以下の事項が記載されている。(下線は,当審で付加した。以下同様。)
ア「【技術分野】
【0001】
本発明は,高い視認性および良好な硬度を有すると共に,伸長性をも有するハードコート層を提供する,ハードコーティング組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置(液晶ディスプレイ)は,薄型,軽量,低消費電力などの利点を有しており,コンピュータ,ワードプロセッサ,テレビジョン,携帯電話,携帯情報端末機器等の様々な分野で使用されている。またこれらの液晶表示装置において,画面上の表示を押さえることによって機器を操作する機構を有する,いわゆるタッチパネルが急速に普及している。このようなタッチパネルは,その優れた操作性により,例えば,スマートフォンなどの携帯電話,タブレットPC,携帯情報端末機器,銀行ATM,自動販売機,携帯情報端末(PDA),複写機,ファクシミリ,ゲーム機,博物館およびデパートなどの施設に設置される案内表示装置,カーナビゲーション,マルチメディアステーション(コンビニエンスストアに設置される多機能端末機),鉄道車両のモニタ装置などにおいて広く用いられている。
【0003】
タッチパネルにおいては,一般に,透明基材上に設けられた透明導電層を有する透明導電性積層体が一般に用いられている。透明導電層の形成は,一般に,インジウム-スズ酸化物(ITO)などが用いられている。
【0004】
透明導電層を有するフィルムを構成する基材フィルムとしては,透明性の高さおよび価格などの点から,PETフィルム,ポリカーボネートフィルムなどのフィルムが用いられることが多い。そしてこれらの基材フィルムには,耐擦傷性および耐久性などを向上させることを目的として,透明ハードコート層が設けられることがある。一方で,透明基材フィルム上に透明ハードコート層を設けることによって,干渉縞が発生するという問題がある。この干渉縞の発生は,視認性の低下をもたらす。
【0005】
干渉縞の発生は,透明基材フィルムと透明ハードコート層との間における屈折率差,そして透明ハードコート層の膜厚の極めて微々たるばらつきに依存している。このような干渉縞の発生は,理論の上では,透明ハードコート層の膜厚のばらつきを完全に無くすことによって解消される。しかしながらこのような手段は,現状の技術においては非現実的であり,実施が極めて困難な手段である。
【0006】
干渉縞の発生を防止する他の手段として,透明基材フィルムの屈折率と透明ハードコート層の屈折率との屈折率差を小さくする手法が挙げられる。このような手法においては,従来は,屈折率の高い金属酸化物などの高屈折率剤を,透明ハードコート層中に含めることによって,透明ハードコート層の屈折率を高くし,透明基材フィルムの屈折率に近づける手法が取られていた。例えば,特開2009-265590号公報(特許文献1)には,ジルコニア,酸化チタン,ITO,ATO,ZnO,酸化スズ,アンチモン酸亜鉛などの金属酸化物の微粒子を高屈折率剤としてハードコート剤に配合することによって,ハードコート層の屈折率を調節する手法が記載されている。しかしながら,金属酸化物などの高屈折率剤を透明ハードコート層に含めることによって,ハードコート層の伸長性および耐屈曲性が低下するという問題がある。」
イ「【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は上記従来技術の問題点を解決することを課題とする。より特定すれば,本発明は,高い視認性および良好な硬度を有すると共に,伸長性をも有するハードコート層を形成する,ハードコーティング組成物を提供することを課題とする。」
ウ「【発明の効果】
【0027】
本発明のハードコーティング組成物は,透明高分子基材の上に設けられる透明ハードコート層を提供する。そして本発明のハードコーティング組成物によって形成される透明ハードコート層は,良好な硬度を有すると共に,高い視認性および伸長性を有することを特徴とする。本発明のハードコーティング組成物によって形成される透明ハードコート層は,屈折率が高いことを特徴とする。そのため,PETフィルムまたはポリカーボネートフィルムなどの屈折率が高い基材フィルム上に,本発明における透明ハードコート層を設けた場合であっても,干渉縞が発生しないという利点がある。
本発明のハードコーティング組成物はさらに,金属酸化物などの高屈折率剤を含まなくても屈折率が高いことを特徴とする。そのため,得られる透明ハードコート層は,硬度および屈折率が高いことに加えて,高い伸長性を有するという特徴がある。
本発明のハードコーティング組成物を用いることによって,PETフィルムまたはポリカーボネートフィルムなどの屈折率が高い基材フィルム上に透明ハードコート層を形成した場合であっても,高い視認性および良好な硬度を有すると共に,伸長性をも有するハードコート層が提供されるという利点がある。」
エ「【0029】
ハードコーティング組成物
本発明のハードコーティング組成物は,
(A)2またはそれ以上のアクリレート基を有する,フェノールノボラック型アクリレート,および
(B)炭素数2または3のアルキレンオキシド構造を分子中に1~2mol有する,芳香族基含有モノまたはポリ(メタ)アクリレート化合物
を含む。そして上記ハードコーティング組成物中に含まれる樹脂成分100質量部に対して,フェノールノボラック型アクリレート(A)は40~90質量部および(メタ)アクリレート(B)は10~30質量部含まれる。」
オ「【0056】
ハードコートフィルム
本発明はさらに,上記ハードコーティング組成物を用いて形成されるハードコートフィルムも提供する。このハードコートフィルムは,透明高分子基材,および,上記ハードコーティング組成物を,基材に塗装することによって形成されるハードコート層,を有する。そして本発明におけるハードコート層は,1.565~1.620という高い屈折率を有することを特徴とする。
【0057】
本発明のハードコートフィルムにおいては,透明高分子基材として,PETフィルムまたはポリカーボネートフィルムが好ましく用いられる。PETフィルムおよびポリカーボネートフィルムは,フィルム強度および透明性が高く,かつ安価であるなどの点から,タッチパネルを構成する,透明導電層を有するフィルムの基材フィルムとして好適に用いられるためである。一方で,これらのフィルムは,一般に,1.5以上と高い屈折率を有する。これらのフィルムの屈折率は,通常用いられるハードコートフィルムを構成する樹脂成分の屈折率と比較して高いため,ハードコート層との屈折率差が大きくなり,干渉縞の発生頻度が高くなるという問題がある。
【0058】
ここで干渉縞とは,透明フィルムおよび透明コート層などから構成される多層体において,各界面で反射する光が干渉しあうことによって生じる虹彩状反射をいう。この干渉縞は,特に,3波長発光型蛍光灯の照射下において,顕著に現れる傾向がある。3波長発光型蛍光灯は,ものがハッキリクッキリ見えるということを特徴とする特定の波長の発光強度が強いことを特徴とする蛍光灯である。
【0059】
本発明のハードコーティング組成物は,高い屈折率を有するハードコート層を形成することができることを特徴とする。そのため,PETフィルムまたはポリカーボネートフィルムなどの透明基材フィルム上に透明ハードコート層を形成しても,干渉縞が発生しないという特徴がある。」
カ「【0061】
透明高分子基材の厚さは,用途に応じて適時選択することができるが,一般に20~300μm程で用いられる。」
キ「【0072】
本発明におけるハードコートフィルムには,用途に応じて透明導電層,光学干渉により反射率を制御する光学干渉層を必要に応じて適切な順に,組み合わせて用いることができる。これら透明導電層,光学干渉層,ハードコート層の積層順は用途に応じて発現を期待される機能を果たしていれば特に限定するものではない。これらの積層順を例えばタッチパネル用基板として用いる場合,透明導電層をA,光学干渉層をB,本発明の対象となるハードコート層をC,透明高分子基材をD,本発明の対象外となるハードコート層をEとすると,例えばA/B/C/D/E,A/B/C/D/C,A/B/B/C/D/E,A/B/B/C/D/C,A/C/D/E/B,A/C/D/C/B,A/C/D/E/B/B,A/C/D/C/B/Bなどとすることができる。」
ク「【0078】
また,ハードコートフィルムを構成する透明高分子基材が,ポリカーボネートフィルムである場合は,ハードコートフィルムの耐屈曲性を検証することによって,形成されたハードコート層の伸長性能を評価することができる。ポリカーボネートは,耐熱性および耐衝撃性などの物理的性能が優れる素材である一方で,特にフィルム厚が薄いポリカーボネートフィルムの場合においては,折り曲げなどの応力によって,クラック(割れ)が発生することがある。このようにフィルム厚が薄いポリカーボネートフィルムを基材フィルムとして用いる場合において,この基材フィルム上に形成されるハードコート層の伸長性が高い場合は,ハードコート層を設けることによって,基材フィルムのクラックの発生を防ぐことが可能となる。本発明のハードコーティング組成物によって形成されるハードコート層は,高い伸長性を有している。そのため,フィルム厚が薄いポリカーボネートを基材フィルムとして用いるハードコートフィルムにおいて,曲げ応力に対する靱性を向上させることができるという利点がある。より具体的には,ハードコーティング組成物が塗装される透明高分子基材が,厚さ30~200μmのポリカーボネートフィルムであるハードコートフィルムの場合において,このハードコートフィルムを,25℃および60度/秒の条件において180°折り曲げた場合であっても,ハードコート層および基材の何れにおいてもクラックが発生しない状態が挙げられる。ここで,ハードコート層の膜厚として,例えば0.05~10μmある場合が挙げられる。
【0079】
本発明のハードコーティング組成物を用いて形成されるハードコート層は,良好な硬度を有すると共に,高い視認性および伸長性を有することを特徴とする。本発明のハードコーティング組成物によって形成される透明ハードコート層は,屈折率が高いことを特徴とする。そのため,PETフィルムまたはポリカーボネートフィルムなどの屈折率が高い基材フィルム上に,本発明における透明ハードコート層を設けた場合であっても,干渉縞が発生しないという利点がある。本発明におけるハードコート層は,特に,タッチパネル電極を構成する,透明導電層を有するフィルムにおいて好適に用いることができる。」
ケ「【0097】
耐屈曲試験方法
試料を50mm×50mmに調整し,試料を180°折り曲げた時の評価を行った。下記の評価基準に基づき,目視にて行った。
○ : 塗膜・基材にクラックは生じない。
△ : 塗膜にのみクラック発生が確認できる。
× : 塗膜・基材共にクラック発生が確認できる。
【0098】
干渉縞評価方法
干渉縞(外観評価)
試験片を100×100mmの黒色アクリル板に光学フィルム用粘着剤を用い塗工面が表面にくるように貼り合せた。スタンド式3波長蛍光灯(TWINBARD製 SLH-399型)の蛍光管から垂直下10cmの距離にサンプルを設置して目視観察をし,評価結果が○以上のサンプルについては,更に太陽光下での目視観察を実施し,下記の評価基準に基づき,判定した。
◎ : 干渉縞(干渉模様)が3波長蛍光灯下でも太陽光下でも視認されない。
○ : 3波長蛍光灯下で干渉縞(干渉模様)が視認されないが太陽光下では僅かに視認される
△ : 干渉縞(干渉模様)が僅かに視認される
× : 干渉縞(干渉模様)がはっきりと視認される
【0099】
干渉縞(透過スペクトル振幅)
試験片の光線透過率を紫外可視分光光度計(島津製作所製UV-2450)によって測定し,500~750nmの範囲における透過率の振幅に対し,下記評価基準に基づき,判定した。
○ : 透過率の最大値と最小値の差が0.5%未満△ : 透過率の最大値と最小値の差が0.5%以上1.0%未満× : 透過率の最大値と最小値の差が1.0%以上」
コ「【0103】
実施例のハードコーティング組成物を用いて形成されたハードコート層を有するハードコーティングフィルムは,何れも,干渉縞の発生がなく,かつ,高い屈折率,良好な硬度を有していた。さらに得られたハードコーティングフィルムは,伸長性および耐屈曲性も高いものであった。」
(2)引用発明1
上記(1)ア~コより,文献1には,以下の引用発明1が記載されていると認められる。
「タッチパネルにおいて,一般に用いられている,透明基材上に設けられた透明導電層を有する透明導電性積層体であって,透明導電層を有するフィルムを構成する基材フィルムとしては,透明性の高さおよび価格などの点から,PETフィルム,ポリカーボネートフィルムなどのフィルムが用いられており,これらの基材フィルムには,耐擦傷性および耐久性などを向上させることを目的として,透明ハードコート層が設けられており,高い視認性および良好な硬度を有すると共に,伸長性をも有するハードコート層を形成する,ハードコーティング組成物であって,続きを表示(全17行)ハードコーティング組成物は,(A)2またはそれ以上のアクリレート基を有する,フェノールノボラック型アクリレート,および(B)炭素数2または3のアルキレンオキシド構造を分子中に1~2mol有する,芳香族基含有モノまたはポリ(メタ)アクリレート化合物を含んでおり,上記ハードコーティング組成物を用いて形成されるハードコートフィルムであって,このハードコートフィルムは,透明高分子基材,および,上記ハードコーティング組成物を,基材に塗装することによって形成されるハードコート層,を有しており,ハードコート層は,1.565~1.620という高い屈折率を有しており,ハードコートフィルムにおいては,透明高分子基材として,PETフィルムまたはポリカーボネートフィルムが好ましく用いられており,PETフィルムおよびポリカーボネートフィルムは,フィルム強度および透明性が高く,かつ安価であるなどの点から,タッチパネルを構成する,透明導電層を有するフィルムの基材フィルムとして好適に用いられ,一方で,これらのフィルムは,一般に,1.5以上と高い屈折率を有しており,これらのフィルムの屈折率は,通常用いられるハードコートフィルムを構成する樹脂成分の屈折率と比較して高いため,ハードコート層との屈折率差が大きくなり,干渉縞の発生頻度が高くなるという問題があり,ハードコーティング組成物は,高い屈折率を有するハードコート層を形成することができることを特徴とするため,PETフィルムまたはポリカーボネートフィルムなどの透明基材フィルム上に透明ハードコート層を形成しても,干渉縞が発生せず,ハードコーティング組成物を用いて形成されたハードコート層を有するハードコーティングフィルムは,干渉縞の発生がなく,かつ,高い屈折率,良好な硬度を有しており,さらに得られたハードコーティングフィルムは,伸長性および耐屈曲性も高いものである透明導電性積層体。」
2 文献8の記載事項および引用発明2
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(1)文献8の記載事項
申立人1が従たる証拠である甲第8号証として提出し,申立人2が主たる証拠である甲第1号証として提出した文献8(特開2009-26290号公報)には,以下の事項が記載されている。
ア「【技術分野】
【0001】
本発明は,額縁部分の内側の入力エリア内でギャップが形成されるように,対向配置されて貼り合わされている固定側基板と操作側基板とを備え,入力エリア内で操作側基板が押されることにより任意の接触点を2次元座標として検出することができるタッチパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年,タッチパネルの適用範囲は広がり,携帯可能な情報機器への搭載も増えてきている。携帯可能な情報機器である携帯電話や小型ゲーム機などは,当然のことながら軽量,薄型が望まれ,さらに落下衝撃に対しても破損しない構造が望まれている。このため,従来のフィルム-ガラス系のタッチパネルに代わり,耐久性の高いFFP,FF,FPといったプラスチック系のタッチパネルが用いられるようになってきている。
【0003】
一方で,携帯電話や小型ゲーム機など機器は,全体を小型化するために,折り畳み構造を採用するものが多くなってきている。従来の折り畳み構造の機器では,二つ折りにした一方の面を表示画面とし,他方の面を操作面とし,操作面にキースイッチやポインティングデバイスなどが配列された構造を有しているものが多かった。そして,このような機器にタッチパネルが適用される場合は,一方の面である表示画面にのみ設けられていた。しかしながら,最近では,両面が表示画面としての機能をもつ機器が登場し,その需要が拡大している。このため,二つの表示画面にタッチパネルを適用することが試みられている。
【0004】
両面が表示画面である機器にタッチパネルを適用するには,図14に示すように,2枚のタッチパネル70,80が必要になる。これにより,タッチパネル用のフレキシブル回路体71,81などを2セット要し,タッチパネルの構造が複雑化するという問題があった。そこで,本出願人は,二つ折りにできる1シートのタッチパネルで2画面の入力操作領域を形成できるものを模索し続けてきた。」
イ「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の抵抗膜式タッチパネルでは,導電膜としてITO膜が形成されている。ITO膜は,薄いガラスのようなものであり,硬く脆い性質があるため,ITO膜を小さなRで曲げると膜にクラックが発生し,導電性が損なわれるという問題があった。すなわち,屈曲部分のITO膜に作用するストレスによって,ITO膜が破損するという問題があった。例えば,コーナ半径R1.0でフィルムを折り返すように曲げた場合,数回ないしは数10回で抵抗変化を生ずることが確認されている(図9参照)。
【0008】
本発明は,上記した点に鑑み,屈曲性に優れ,耐久性が高く,長期に亘り電気的接続の信頼性を維持することができるタッチパネルを提供することを目的とする。」
ウ「【0030】
以下に本発明の実施の形態の具体例を図面を用いて詳細に説明する。図1は,本発明に係るタッチパネルの一実施形態を示すものである。
【0031】
図1に示すように,本実施形態の抵抗膜式タッチパネル10は,液晶画面に貼り合わされる下側の基板である固定側基板(フィルム)11と,固定側基板11に対向配置されて指やペン等で押圧される側の基板である操作側基板(フィルム)12と,両基板11,12と装置本体とを電気的に相互接続するFPCコネクタ13とから構成されている。このタッチパネル10は,二つの液晶画面領域を有する折り畳み式の情報機器50(図4)に適用されるものであり,一体形成された1枚のシートに二つの入力操作領域14,15と,この二つの入力操作領域14,15の間の屈曲領域(屈曲部)16とを有している。このため,一方の入力操作領域15は屈曲領域16を支点として屈曲可能になっている。
【0032】
本実施形態のタッチパネル10について詳細に説明する。両基板11,12は,固定側基板11にドットスぺーサ18が形成されている点を除き略同様の構成となっている。両基板11,12は,フレーム部分の内側で100μm程度のギャップ(対向間隔)を有して貼り合わされる。ドットスぺーサ18はエポキシ樹脂などで形成され,φ40μm,高さ数μmの寸法で所定のピッチで設けられている。隣り合うドットスぺーサ18のピッチは,二つの入力操作領域14,15で広く,二つの入力操作領域14,15の間の屈曲領域16で狭くなっている。例えば,二つの入力操作領域14,15のドットスぺーサ18のピッチを2mm,屈曲領域16のドットスぺーサ18のピッチを1mm~0.5mmとすることができる。屈曲領域16のピッチを狭ピッチに形成することで,タッチパネル10を曲げたときに,相対向する一対の導電膜(抵抗膜シート)20,21間のギャップの均一性が保たれる。また,図2に示すように,屈曲領域16に形成された絶縁膜22と狭ピッチのドットスぺーサ18との協働により,屈曲領域16がショートすることを防止することができる。
【0033】
両基板11,12は,それぞれ,厚み100~200μm,好ましくは175μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)を基材45,46としている。なお,基材45,46には,PET以外に可撓性を有する種々のプラスチック材料を適用することができ,例えば,ポリエーテルサルフォン(PES),ポリエーテルエーテルケトン(PEEK),ポリカーボネイト(PC),ポリプロピレン(PP),ポリアミド(PA)などを適用することもできる。
【0034】
両基板11,12の対向面には,導電膜20,21としての導電性ポリマーが成膜されている。本実施形態の導電性ポリマーは,ポリチオフェン系のポリマーであり,非常に透明性(光透過性)が高い。タッチパネルでの光透過率は,透過率80%以上で好ましいとされているが,厚みが500nm程度のものは,光透過率が90%以上になるとされている。なお,導電性ポリマーとして透明性が高いものであれば,他のポリマーを使用することができ,例えば,ポリアセチレン系,ポリビロール系,ポリフェニレンピニレン系などを適用することもできる。
【0035】
膜厚は,特に制限はなく,目的に応じて適宜選択することができ,例えば,0.01~10μmが好ましく,0.1~1μmがより好ましい。厚みが,0.01μm未満であると,膜の抵抗が不安定化することがあり,10μmを超えると,基材45,46との密着性が低下することがあるためである。また,0.1μm未満であると,60℃/95%RHなどの厳しい耐湿性試験で膜の抵抗が不安定になり,1μmを越えると光線透過率が低くタッチパネルとしては好ましくないためである。
【0036】
導電性ポリマーの表面抵抗率(値)としては,特に制限はなく,目的に応じて適宜選択することができ,例えば,5,000Ω/□(ohm/square)以下であることが必要であり,3,000Ω/□以下であるのが好ましく,1,500Ω/□以下であるのがより好ましい。表面抵抗率(値)が,5,000Ω/□を超えると,情報入力時の応答性が低下することがあるためである。なお,表面抵抗率(値)は,例えば,JISK6911,ASTMD257,などに準拠して測定することができる。
【0037】
導電性ポリマーの成膜方法としては,特に制限はなく,公知の方法の中から適宜選択することができ,例えば,スピンコート法,ローラコート法,バーコート法,ディップコート法,グラビアコート法,カーテンコート法,ダイコート法,スプレーコート法,ドクターコート法,ニーダーコート法,などが挙げられる。印刷法を採用する場合も,特に制限はなく,公知の方法の中から適宜選択することができ,例えば,スクリーン印刷法,スプレー印刷法,インクジェット印刷法,凸版印刷法,凹版印刷法,平版印刷法,などが挙げられる。
【0038】
以上のように,両基板11,12が可撓性を有するPETを基材45,46とし,導電性ポリマーを導電膜20,21とすることで,タッチパネル10は屈曲領域16を支点として屈曲できるようになる。本実施形態の屈曲に対する耐久性は非常に高く,コーナ半径R1.0mmで曲げを10000回繰り返しても,クラックを生ずることがなく,また,電気抵抗の変化が非常に小さいことが実験的に確認されている(図9)。これに対して,ガラス質のITO膜が成膜された従来のタッチパネルでは,繰り返しの初期段階で電気抵抗の変化が非常に大きくなり,屈曲に耐えうるものではないことが判明している。また,タッチパネル10の画面を筆記具で押したときの応力集中が導電性ポリマーの弾性により緩和されると共に,導電性ポリマー自身の弾力性により,タッチパネル10の筆記耐久性が高められるようになっている。なお,曲げ試験については後述する。」
エ「【0044】
次に,従来のITO膜を有するフィルムと,本発明の有機導電性ポリマーを有するフィルムの曲げ試験について説明する。
図5には,曲げ試験に使用されたテストフィルム60の概略図が示されている。テストフィルム60は,所定厚み及び所定の長さを有し,長手方向の両端には抵抗を測定するための一対の電極62,62が設けられている。
【0045】
図6(a)~(c)には,図5のテストフィルム60のA-A線に沿って切断した断面図が示されている。(a)は下面に有機導電ポリマー20を有する本発明のポリマーフィルム60a,(b)は下面にITO膜43を有する従来のITOフィルム60b,(c)は(b)と同じく下面にITO膜43を有する従来の改良型ITOフィルム60cの断面図である。個々のテストフィルム60a~60cは,PET樹脂からなる基材45と,PET樹脂45の上面にコーティングされたハードコート層42と,PET樹脂45の下面にコーティングされた透明導電層20,43と有し,積層構造をなしている。(a)において,PET樹脂45の厚みa2は120~200μm,ハードコート層42の厚みa1は3~4μm,有機導電ポリマー20の厚みa3は100~200nmに設定されている。(b)において,PET樹脂45の厚みb2は100~200μm,ハードコート層42の厚みb1は3~4μm,ITO膜43の厚みb3は20~50nmに設定されている。(c)はPET樹脂45がサンドイッチ構造をなしているものである。上層のPET樹脂45aと下層のPET樹脂45bとは,軟質の接着材44で貼りあわされている。このように,PET樹脂45を上下二層とすることで,フィルム60cの曲げに対する耐久性が高められている。(c)において,上層のPET樹脂45aの厚みc2は100~200μm,接着材44の厚みc3は数μm,下層のPET樹脂45bの厚みc4は約25μm,ハードコート層42の厚みc1は3~4μm,ITO膜43の厚みc5は20~50nmに設定されている。
【0046】
図7には,曲げ試験用の治具63の先端を屈曲点として,テストフィルム60a~60cを繰り返し曲げる様子が示されている。この試験では,テストフィルム60a~60cを治具63の先端を屈曲点として曲げ伸ばすことにより,テストフィルム60a~60cに機械的なストレスを与え,曲げた状態で一対の電極62,62間の抵抗変化を調べたものである。
【0047】
図8には,治具63先端のコーナ半径Rと,このコーナ半径Rでテストフィルム60a~60cを曲げたときに測定された抵抗値との関係が示されている。従来のITOフィルム60bは,屈曲性が極めて悪く,コーナ半径R8でも抵抗変化がみられた。改良型ITOフィルム60cは,コーナ半径R8では抵抗変化が見られないものの,コーナ半径R2で抵抗変化がみられ,屈曲部にクラックが発生していることが判明した。一方,ポリマーフィルム60aは,コーナ半径R1の曲げでも抵抗変化がみられず,屈曲部が柔軟に曲げ伸ばしに追従することが判明した。ポリマーフィルム60aのこのような特質は,タッチパネルのようにフィルムに直接打点,ペン筆記などの機械的ストレスを印加する使い方をする際には,極めて有利なものとなる。
【0048】
図9には,治具63先端のコーナ半径をR2.0として,テストフィルム60a~60cを繰り返し曲げたときの,曲げ回数とテストフィルム60a~60cを曲げたときに測定された抵抗値との関係を示されている。ITOフィルム60bは,1回の曲げで抵抗変化を生じ,それ以上の曲げでは大きい抵抗変化を生じた。改良型ITOフィルム60cは,1回の曲げでは抵抗変化はみられないものの,10回の曲げで抵抗変化がみられるようになり,100回以上の曲げでは大きい抵抗変化がみられた。一方,ポリマーフィルム60aは,100回の曲げで抵抗変化が全くみられず,10000回の曲げで僅かに抵抗変化がみられることが判明した。
【0049】
このように,ポリマーフィルム60aは,有機導電ポリマー膜20が高分子材料の特質である柔軟性を有しており,高分子材料でPET基材45との相性も良いため,屈曲を繰り返しても構造の破壊による導電性低下などの不具合を発生することが少ないことが判った。これに対し,従来のITOフィルム60b,60cは,ITO膜43が真空スパッタリングなどの方法で成膜され,PET基材45に薄く脆いセラミックス膜が形成されたものであり,屈曲による耐久性が弱いことが判った。」
オ「【0050】
次に,図10~13に基づいて,タッチパネルの変形例について説明する。図面では,構成が理解され易いように,厚み方向の寸法が拡大されている。図10~12には,導電膜20,21としての導電性ポリマーの青色を補正するための色調補正膜41を有するタッチパネル40A~40Cが示されている。色調補正膜41は,基板11,12の最外層に形成されているハードコート層42が黄色顔料を含んだものとして形成されている。黄色顔料は,例えば,ニッケルイエロー,アゾ系イエローとすることができる。通常のハードコート層42は,基板11,12の表面硬度や耐擦傷性等を高めるために,数μmの厚さで形成されるものである。本発明の色調補正膜41は,ハードコート層42に色調補正機能が付加されたものとされている。
【0051】
図10では,色調補正膜41が固定側基板11と操作側基板12とに設けられている態様が示されている。各基板11,12において,ハードコート層41,42は上下二層構造をなしており,下層が色調補正膜41として機能するようになっている。上層は色調補正機能を有しない通常のハードコート層42である。色調補正膜41により,タッチパネル40Aの青色味が減少し,やや黄色味を帯びているタッチパネルに慣れている人の違和感を少なくすることができ,タッチパネル40Aの品位を高めることができる。
【0052】
図11では,色調補正膜41が操作側基板12だけに設けられている態様が示されている。操作側基板12の側で,ハードコート層41,42は上下二層構造をなしており,下層が色調補正膜41であり,上層が色調補正機能を有しない通常のハードコート層42である点は,図10と同様である。このように,色調補正膜41を操作側基板12だけに設けた場合でも効果があることが確認されている。
【0053】
図12では,図11と同様に色調補正膜41が操作側基板12だけに設けられ,固定側基板11の導電膜がITO膜43であり,操作側基板12の導電膜が導電性ポリマーであるタッチパネル40Cが示されている。このタッチパネル40Cでは,固定側基板11におけるITO膜43の屈曲領域16をエッチングで除去することで,屈曲領域16を支点として曲げることができる。この変形例においても,操作側基板12に成膜された導電性ポリマーによりタッチパネル40Cの筆記耐久性は損なわれないようになっている。
【0054】
図13では,色調補正膜を有しないタッチパネル40Dが示されている。このタッチパネル40Dでは,固定側基板11に導電性ポリマーが形成され,操作側基板12にITO膜43が形成されている。したがって,このタッチパネル40Dは,今まで説明したタッチパネル10,40A,40B,40Cのように屈曲領域16を支点として曲げることはできない。このタッチパネル40Dの有利な点は,固定側基板11のITO膜43を導電性ポリマーに変えることで,タッチパネル40Dの耐久性が高まることと,ITO膜43の黄色味により導電性ポリマーの青色の補正も同時に行えることである。」
カ 図8
キ 図9
(2)引用発明2
上記(1)ア~エより,文献8には,以下の引用発明2が記載されていると認められる。
「抵抗膜式タッチパネル10は,液晶画面に貼り合わされる下側の基板である固定側基板(フィルム)11と,固定側基板11に対向配置されて指やペン等で押圧される側の基板である操作側基板(フィルム)12と,両基板11,12と装置本体とを電気的に相互接続するFPCコネクタ13とから構成されており,タッチパネル10は,二つの液晶画面領域を有する折り畳み式の情報機器50に適用されるものであり,一体形成された1枚のシートに二つの入力操作領域14,15と,この二つの入力操作領域14,15の間の屈曲領域(屈曲部)16とを有しているため,一方の入力操作領域15は屈曲領域16を支点として屈曲可能になっており,両基板11,12は,それぞれ,厚み100~200μm,好ましくは175μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)を基材45,46としており,両基板11,12が可撓性を有するPETを基材45,46とし,導電性ポリマーを導電膜20,21とすることで,タッチパネル10は屈曲領域16を支点として屈曲できるようになるタッチパネル10であり,タッチパネル10は,屈曲に対する耐久性は非常に高く,コーナ半径R1.0mmで曲げを10000回繰り返しても,クラックを生ずることがなく,また,電気抵抗の変化が非常に小さいタッチパネル10における有機導電性ポリマーを有するポリマーフィルム60aであって,ポリマーフィルム60aは,PET樹脂からなる基材45と,PET樹脂45の上面にコーティングされたハードコート層42と,PET樹脂45の下面にコーティングされた透明導電層20,43と有し,積層構造をなしており,PET樹脂45の厚みa2は120~200μm,ハードコート層42の厚みa1は3~4μm,有機導電ポリマー20の厚みa3は100~200nmに設定されており,曲げ試験用の治具63の先端を屈曲点として,テストフィルム60a~60cを繰り返し曲げる試験では,テストフィルム60a~60cを治具63の先端を屈曲点として曲げ伸ばすことにより,テストフィルム60a~60cに機械的なストレスを与え,曲げた状態で一対の電極62,62間の抵抗変化を調べたものであり,ポリマーフィルム60aは,100回の曲げで抵抗変化が全くみられず,10000回の曲げで僅かに抵抗変化がみられるポリマーフィルム60a」
3 その他の文献について
(1)文献2記載事項
折りたたみ中(クリックで表示)
申立人1が従たる証拠である甲第2号証として提出した文献2(特開2006-289627号公報)には,以下の事項が記載されている。
ア「【技術分野】
【0001】
本発明は,優れたガスバリア性を有するフィルム,および該フィルムを用いることで寿命が大幅に改善され,さらに曲げ耐性にも優れているフレキシブルな有機デバイス,特に有機エレクトロルミネッセンス素子(以下,「有機EL素子」という)に関するものである。」
イ「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり,本発明の目的は屈曲しても優れたガスバリア性を維持することで長寿命を達成できる有機EL素子等の有機デバイスを提供することにある。また,本発明の目的は,そのような有機デバイスの製造に効果的に用いられるガスバリアフィルムを提供することにもある。」
ウ「【発明の効果】
【0008】
本発明のガスバリアフィルムは,ガスバリア性が極めて高い。また,該ガスバリアフィルムを用いて製造される本発明の有機デバイス,特に有機EL素子は,フレキシブルで且つ長寿命である。」
エ「【0010】
[ガスバリアフィルム]
(1)積層バリアユニット
本発明のガスバリアフィルムは,プラスチックフィルム基材上に,少なくとも一層の無機バリア層と少なくとも一層のポリマー層からなる積層バリアユニットを少なくとも一つ有する。
次に積層バリアユニットの各構成部材について説明する。
【0011】
(無機バリア層)
積層バリアユニットを構成する無機バリア層の少なくとも1層は,2種以上の金属酸化物より構成される。このような無機バリア層は,2種以上の金属酸化物を同時にフィルム上に堆積させることにより形成することができる。
金属酸化物としては,Si,Al,In,Sn,Zn,Ti,Cu,Ce,Ta等の酸化物が挙げられるが,これらに限定されない。コストおよび膜を形成した際の光線透過性の観点から,好ましくは,酸化珪素と酸化アルミニウムである。」
オ「【0014】
(ポリマー層)
積層バリアユニットを構成するポリマー層にはいずれのポリマーでも使用することができるが,好ましくは真空チャンバー内で成膜できるものである。」
カ「【0026】
(2)プラスチックフィルム基材
本発明のガスバリアフィルムに使用されるプラスチックフィルム基材は上記の各層を保持しうるフィルムであれば特に制限はなく,ガスバリアフィルムの使用目的等から適宜選択することができる。具体的にはポリエステル樹脂,メタクリル樹脂,メタクリル酸-マレイン酸共重合体,ポリスチレン,透明フッ素樹脂,ポリイミド樹脂,フッ素化ポリイミド樹脂,ポリアミド樹脂,ポリアミドイミド樹脂,ポリエーテルイミド樹脂,セルロースアシレート樹脂,ポリウレタン樹脂,ポリエーテルエーテルケトン樹脂,ポリカーボネート樹脂,脂環式ポリオレフィン樹脂,ポリアリレート樹脂,ポリエーテルスルホン樹脂,ポリスルホン樹脂,シクロオレフィンコポリマー,フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂,脂環変性ポリカーボネート樹脂,アクリロイル化合物などの熱可塑性樹脂が挙げられる。
【0027】
これら樹脂のうち,好ましい例としては,ポリエステル樹脂,ポリアリレート樹脂(PAr),ポリエーテルスルホン樹脂(PES),フルオレン環変性ポリカーボネート樹脂(BCF-PC:特開2000-227603号公報の実施例-4の化合物),脂環変性ポリカーボネート樹脂(IP-PC:特開2000-227603号公報の実施例-5の化合物),アクリロイル化合物(特開2002-80616号公報の実施例-1の化合物)が挙げられる。また,スピロビインダン,スピロビクロマンを含む縮合ポリマーを用いるのも好ましい。
ポリエステル樹脂の中でも,二軸延伸を施したポリエチレンテレフタレート(PET),同じく二軸延伸したポリエチレンナフタレート(PEN)は,熱的寸度安定性に優れるため,本発明においてプラスチックフィルム基材として好ましく用いられる。」
キ「【0040】
(4)ガスバリアフィルムの性質
こうして得られた本発明のガスバリアフィルムの水蒸気透過率は,0.005g/m2/day以下であり,1×10-4g/m2/day以下であることが好ましく,1×10-5g/m2/dayであることが特に好ましい。また,同様に酸素透過性は0.005cm3/m2/day/atm以下であり,1×10-4cm3/m2/day/atm以下であることが特に好ましい。
フレキシブルで透明な有機EL素子の作製に使用する場合は,ガスバリアフィルムの光線透過率は重要な性能である。光線透過率の値は,波長550nmで80%以上であることが好ましく,85%以上であることが特に好ましい。
フレキシブル性としては,曲率100mmで1日曲げていても表面に亀裂等何ら変化が無いことが必要であるが,さらに好ましくは曲率10mmでも耐えられることである。」
ク「【0075】
(ガスバリア性の評価)
各試料のバリア性の評価はカルシウム腐食法により実施した。カルシウム腐食法はG.Nisatoらの方法(2001IDWConferenceProceedings)に従った。即ち,ガスバリアフィルム試料上に真空蒸発法により金属カルシウム薄膜を作製し,これを直ちにガラス板とエポキシ系接着剤XNR-5516-HV(ナガセケムテックス製)で封止ししてテストセルを作製した。このテストセルを相対湿度90%において各種温度で保存し,光透過率の変化からカルシウムの腐食量を求め,これを38℃における水蒸気透過率(WVTR)の値に換算した。
また,これらのガスバリアフィルムについて,25℃において繰り返し屈曲試験を行った。屈曲試験はIPC規格TM-650に従ったIPC屈曲試験にて行った。これは固定版と可動板の間にバリア面が凸になるように曲げた状態で挟み,可動板を繰り返し移動するものである。フィルムのRは10mm,ストロークは60mmに設定し,繰り返し回数は50回と500回行った。
こうして,繰り返し屈曲試験を行ったガスバリアフィルムについても,屈強試験を行う前のものと同様にカルシウムテストセルを作製し,同様に保存テストによるWVTR評価を実施した。
これらの結果を表1にまとめた。
【0076】
【表1】(表1省略)
【0077】
表1の結果から,無機バリア層がSiOxのみからなるガスバリアフィルム(-D)は多層積層しても水蒸気バリア性は不十分であり,一方,無機バリア層がAlOxのみからなるガスバリアフィルム(-E)では曲げない場合には比較的良いバリア性を示すが,繰り返し屈曲試験により著しく劣化することが明らかになった。
また,SiO2とAl2O3を共蒸着した食品用を想定したガスバリアフィルム(1F)についても,水蒸気バリア性,繰り返し屈曲耐性ともに全く不十分であった。
これに対し,無機バリア層がSiOx/AlOxの混合膜である本発明のガスバリアフィルムは,屈曲試験前の水蒸気バリア性が高く,繰り返し屈曲試験後でもその高いバリア性が保たれることが明らかになった。」
ケ 文献2に記載された技術的事項
上記エ~クより,文献2には,以下の技術的事項が記載されていると認められる。
「ガスバリアフィルムは,プラスチックフィルム基材上に,少なくとも一層の無機バリア層と少なくとも一層のポリマー層からなる積層バリアユニットを少なくとも一つ有するガスバリアフィルムであって,ガスバリアフィルムのフレキシブル性としては,曲率100mmで1日曲げていても表面に亀裂等何ら変化が無いことが必要であるが,さらに好ましくは曲率10mmでも耐えられることが必要とされており,ガスバリア性の評価として,ガスバリアフィルムについて,25℃において繰り返し屈曲試験を行っており,屈曲試験はIPC規格TM-650に従ったIPC屈曲試験にて行っており,これは固定版と可動板の間にバリア面が凸になるように曲げた状態で挟み,可動板を繰り返し移動するものであって,フィルムのRは10mm,ストロークは60mmに設定し,繰り返し回数は50回と500回行い,ガスバリアフィルムは,屈曲試験前の水蒸気バリア性が高く,繰り返し屈曲試験後でもその高いバリア性が保たれることが明らかになったガスバリアフィルム。」
(2)文献3記載事項
折りたたみ中(クリックで表示)
申立人1が甲第3号証として提出した文献3(特開2015-127124号公報)には,以下の事項が記載されている。
ア「【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスバリアフィルム及びガスバリアフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子デバイス(device)用のフレキシブル基板として、ガスバリアフィルムが用いられている。ガスバリアフィルムは、基板上に金属酸化物等からなるガスバリア層と有機層(バインダ層)とを交互に積層したものである。ガスバリアフィルムの用途は、従来、食品等の包装であったが、近年、電子デバイスに用いられるようになってきている。このため、水分や酸素等のガス分子に対するガスバリア性能及び耐熱性の飛躍的な向上が求められていた。」
イ「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来のガスバリアフィルムの製造方法では、溶剤(溶媒)に溶けないポリイミドを用いて有機層を形成していた。具体的には、酸二無水物及びジアミンを溶媒に溶解し、溶媒中でこれらを反応させることでポリアミック酸を形成する。そして、ポリアミック酸(polyamic acid)の溶液をガスバリア層上に塗工することで塗工層を形成する。そして、塗工層を加熱することで、溶媒を除去する(すなわち塗工層を乾燥する)とともに、ポリアミック酸を脱水閉環させる。これにより、ポリイミドからなる有機層を形成する。
【0006】
したがって、従来のガスバリアフィルムの製造方法では、溶媒を除去しながらポリアミック酸を脱水閉環させるので、ポリアミック酸は固体、すなわちポリアミック酸の分子運動が制限された状態となっていた。このため、ポリアミック酸を脱水閉環させるために多大なエネルギーが必要であった。具体的には、塗工層の加熱温度を非常に高く(例えば300℃以上)する必要があった。この結果、有機層が熱収縮し、これによって生じた応力によってガスバリア層にクラック(crack)が発生しうる。このクラックは、ガス(gas)の通り道となる。したがって、ガスバリアフィルムのガスバリア性が低下する。
【0007】
一方、特許文献2~4に開示されているように、アクリル(acryl)系樹脂を有機層として用いたガスバリアフィルムも知られている。しかし、アクリル系樹脂は耐熱性に劣るので、これを用いたガスバリアフィルムは耐熱性に問題があった。具体的には、ガスバリアフィルムを電子デバイスに実装する際のプロセス(process)温度が少なくとも100℃以上になった場合、有機層内のアクリル系樹脂が分解する。なお、プロセス温度が100℃以上となる場合としては、ガスバリアフィルムを有機ELのガスバリアフィルムとして使用する場合等が挙げられる。この場合、基板にガスバリアフィルムを積層し、ガスバリアフィルム上にTFT、OLEDを順次積層していくが、TFTをガスバリアフィルム上に積層する際にガスバリアフィルムが100℃以上の高温に曝される。アクリル系樹脂の熱分解は、ガスバリアフィルムの透明性の劣化、ガスバリア性の低下の原因となる。したがって、アクリル系樹脂を有機層として用いたガスバリアフィルムは、要求された水準を満足するものではなかった。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、ポリイミドが有する高い耐熱性を利用しつつ、ガスバリア性を向上することが可能な、新規かつ改良されたガスバリアフィルム及びガスバリアフィルムの製造方法を提供することにある。」
ウ「【0035】
(1.ガスバリアフィルムの構成)
まず、図1に基づいて、本実施形態に係るガスバリアフィルム10の構成について説明する。ガスバリアフィルム10は、基板100上に有機層11及びガスバリア層12を交互に積層したものである。積層数(有機層11及びガスバリア層12からなるユニット10aの数)は特に制限はない。なお、図1では、基板100上に有機層11、ガスバリア層12をこの順番で形成しているが、図2に示すように、積層の順番は逆でも構わない。
【0036】
(1-1.有機層の構成)
有機層11は、ガスバリア層12同士、またはガスバリア層12と基板100とを決着させるバインダとして機能する。有機層11は、溶剤可溶性ポリイミドを含む。溶剤可溶性ポリイミドは、溶剤(溶媒)に溶解するポリイミドである。
【0037】
(1-2.ガスバリア層の構成)
ガスバリア層12は、ガスバリア性を有する層である。ガスバリア層12は、ガスバリア性を有する金属酸化物、金属窒化物、及び金属からなる群のうち少なくとも一種を含む。」
エ「【0045】
(1-3.基板の構成)
基板100は特に制限されず、従来のガスバリアフィルムの基板として使用可能なものであれば本実施形態でも好適に使用可能である。基板100としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、及びポリイミド(PI)等が挙げられる。なお、基板100は、有機層11及びガスバリア層12を積層する前に帯電処理を施しておくことが好ましい。基板100と有機層11及びガスバリア層12との結着力を向上させるためである。」
オ「【0098】
(実施例1)
実施例1では、基板上に可溶性ポリイミドからなる有機層と酸化ケイ素(SiO2)からなるガスバリア層とを交互積層した。
【0099】
1)基板(樹脂フィルム)の洗浄
基板として宇部興産社製(0.125mm厚のポリイミドフィルム)を用意した。」
カ「【0106】
(実施例2)
実施例2では、基板上に可溶性ポリイミドからなる有機層と酸化ケイ素(SiO2)からなるガスバリア層とを交互積層した。」
キ「【0112】
(実施例3)
上記4)、5)を繰り返さず、積層膜を1ペア形成した以外は、実施例2と全く同様の処理を行った。
【0113】
(実施例4)
可溶性ポリイミドを膜厚200nm、及びガスバリア層SiO2を400nmで形成し、基板上の有機層、ガスバリア層の積層膜を2ペア形成する以外は、実施例2と全く同様の処理を行った。
【0114】
(実施例5)
可溶性ポリイミドを膜厚1000nmで形成し、基板上の有機層、ガスバリア層の積層膜を2ペア形成する以外は、実施例2と全く同様の処理を行った。
【0115】
(実施例6)
ガスバリア層の膜厚800nmで形成し、基板上の有機層、ガスバリア層の積層膜を1ペア形成する以外は、実施例2と全く同様の処理を行った。
【0116】
(実施例7)
上記4)、5)の工程を入れ替えて、ガスバリア層、有機層の順に形成すること以外は実施例2と全く同様の処理を行った。
【0117】
(実施例8)
上記4)、5)の工程を入れ替えて、ガスバリア層、有機層の順に形成すること以外は実施例3と全く同様の処理を行った。
【0118】
(実施例9)
上記4)、5)の工程を入れ替えて、ガスバリア層、有機層の順に形成し、ガスバリア層の膜厚を400nm、及び有機層の膜厚を10000nmで形成すること以外はと全く同様の処理を行った。
【0119】
(実施例10)
実施例2では、基板上に可溶性ポリイミドからなる有機層とSiO2/SiNからなるガスバリア層とを交互積層した。」
ク「【0125】
(実施例11)
実施例11では、基板上に可溶性ポリイミドからなる有機層とAl2O3からなるガスバリア層とを交互積層した。具体的には、実施例2の工程5)と6)を以下のようにしたこと以外は、実施例2と全く同様の処理を行った。」
ケ「【0139】
(ガスバリア性測定)
(WVTR測定)
MOCON社製水蒸気透過率測定装置AQUATRANを用いて、バリアフィルムのWVTRを測定した。
検出下限が5×10-4(g/m2/day)であるため、WVTR値が非常に低いものについては、5×10-4(g/m2/day)とした。
【0140】
(耐熱性測定)
(株)リガク社製熱分析装置(TG-DTA)を用いて,室温から500℃までの重量減少を測定した。【0141】
(屈曲性測定)
自動マンドレル試験機を用いて、半径1、3、5、10、20mmのそれぞれの心棒を支えに10万回屈曲した後、屈曲付近でガスバリア層の破壊がないか光学顕微鏡で観察した。破壊がなかった心棒の半径を破壊限界とした。評価結果を表1にまとめて示す。」
コ 表1
サ「【0143】
表1によれば、本実施例に係るガスバリアフィルムは、ガスバリア性、耐熱性、及び屈曲性のいずれも優れていることがわかる。」
シ 文献3に記載された技術的事項
上記ウ~ケより,文献3には,以下の技術的事項が記載されていると認められる。
「ガスバリアフィルム10は、基板100上に有機層11及びガスバリア層12を交互に積層したガスバリアフィルムであって,有機層11は、ガスバリア層12同士、またはガスバリア層12と基板100とを決着させるバインダとして機能し,溶剤可溶性ポリイミドを含んでおり,ガスバリア層12は、ガスバリア性を有する層であり,ガスバリア性を有する金属酸化物、金属窒化物、及び金属からなる群のうち少なくとも一種を含んでおり,基板100は特に制限されず、従来のガスバリアフィルムの基板として使用可能なものであれば好適に使用可能であり,例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエーテルスルホン(PES)、及びポリイミド(PI)等であり,屈曲性測定において,自動マンドレル試験機を用いて、半径1、3、5、10、20mmのそれぞれの心棒を支えに10万回屈曲した後、屈曲付近でガスバリア層の破壊がないか光学顕微鏡で観察し,破壊がなかった心棒の半径を破壊限界として評価したガスバリアフィルム。」
(3)文献4等記載事項および周知技術
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申立人1は,従たる証拠である甲第4号証として文献4を提出するとともに,文献4aないし4cを例示して,干渉縞(すなわち、光干渉による悪化)抑制の手段として、分光反射率の標準偏差を規定すること(特定波長範囲内の反射率のばらつきを低減して干渉縞の発生を抑制すること)は,周知慣用技術である旨主張している。(申立書1第14頁第19~23行,第15頁第10~14行)
まず,後記アないしエで,文献4および文献4aないし4cの記載事項を検討し,後記オで,干渉縞(すなわち、光干渉による悪化)抑制の手段として、分光反射率の標準偏差を規定すること(特定波長範囲内の反射率のばらつきを低減して干渉縞の発生を抑制すること)が周知慣用技術であるか否か検討する。
ア 文献4記載事項
申立人1が従たる証拠である甲第4号証として提出し,申立人2が従たる証拠である甲第3号証として提出した文献4(特開2003-177209号公報)には,以下の事項が記載されている。
(ア)「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は干渉による外観の悪化を抑制した減反射フィルム、並びに電子画像表示装置等に貼合する際に使用する接着層と基材フィルムとの間に生じる界面反射を低減させた減反射フィルム及びそれらを用いた電子画像表示装置に関するものである。【0002】【従来の技術】一般に、透明基材の最外層に、基材よりも低屈折率の物質からなる低屈折率層(減反射層)を可視光波長の1/4の膜厚(約100nm)で形成すると、干渉効果により表面反射が低減し、透過率が向上することが知られている。この原理を用いたフィルムは、電気製品、光学製品、建材等の透明基材部分における表面反射の低減が必要とされる分野において、減反射材として応用されている。続きを表示(全17行)【0003】減反射層の形成方法としては、フッ化マグネシウム等を蒸着又はスパッタリングするいわゆるドライコーティング法(例えば特許文献1参照)、及び低屈折率材料を溶液や分散液などの液状で基材に塗布し、乾燥させ、必要に応じて硬化させるウェットコーティング法(例えば特許文献2参照)などが知られている。【0004】減反射材料の中で、基材樹脂として透明樹脂フィルムを用いた、いわゆる減反射フィルムではフィルム自体の硬度が低いためにキズが付きやすいといった問題が生じる。そのため、減反射フィルムでは一般的にアクリレートや珪素化合物からなる厚さ5~20μm程度のハードコート層を形成した上に減反射層を形成して表面硬度を向上させている。【0005】これらハードコート層は一般的に屈折率が1.5程度であり、ハードコート層に対して屈折率が大きく異なるようなポリエチレンテレフタレート(屈折率約1.65)などのフィルムに塗工した場合には、該フィルムとハードコート層との干渉により水上の油膜のような模様が生じ、外観を損なうといった問題があった。特に、ハードコート層の膜厚が10μm以下のときに重大な問題となる。【0006】その問題に対して、透明樹脂フィルムの表面に凹凸を付け、干渉を消す方法(例えば特許文献3参照)、ハードコートの屈折率を透明樹脂フィルムに合わせる方法(例えば特許文献4参照)が提案されている。【0007】【特許文献1】特開昭63-261646号公報【特許文献2】特開平2-19801号公報【特許文献3】特開平08-197670号公報【特許文献4】特開平07-151902号公報【0008】【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前者の場合には光の散乱を利用するためヘイズが発生して外観が悪化し、後者の場合には反射率が大きくなって光学性能に悪影響が生じるという問題があった。【0009】また、こうした減反射フィルムは、通常、接着層を介して電子画像表示装置等に接着した形態で使用されることが多い。これら接着層はアクリル樹脂系の接着層が利用されることが一般的であり、この場合、接着層の屈折率が1.45~1.50程度である。そのため、基材にPETフィルムを用いた場合、上記と同じ理由で、PET層と接着層との間で干渉が生じる。但し、接着層は通常20~50μm程度の厚みで塗工されるので、上記ハードコート層を塗工したときのような油膜模様は観測されないが、PET層と接着層間の界面反射の影響により、電子画像表示装置等に接着するときの反射率が上昇してしまうという問題があった。【0010】そこで本発明は、光の干渉による外観の悪化を抑制できるとともに、反射率を低下させることができる減反射フィルム及びそれを用いた電子画像表示装置を提供することにある。」
(イ)「【0021】【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。本実施形態の減反射フィルムは、最外層から順に少なくとも低屈折率層と高屈折率層からなる減反射層、ハードコート層及び第一の干渉層からなる多層構造を透明樹脂フィルムの片面又は両面に設けたものである。さらに減反射フィルムは、500~650nmにおける反射率の振幅の差の最大値が1.0%以下である。【0022】上記の透明樹脂フィルムを形成する透明樹脂基材は、屈折率が1.55~1.70の範囲内のものが好ましい。この透明樹脂基材としては、具体的には例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン及びポリエーテルイミド等を好ましく挙げることができる。」
(ウ)「【0025】前記透明樹脂フィルム上に、第一の干渉層及びハードコート層を積層することにより、干渉ムラを低減させることが必要である。そのために透明樹脂フィルムに、屈折率1.50~1.65かつ光学膜厚が125~160nmである第一の干渉層、屈折率1.45~1.55かつ膜厚が2~25μmであるハードコート層を順次積層することが好ましい。ここで光学膜厚とは層の屈折率(n)と層の厚み(d)の積(n×d)である。【0026】第一の干渉層の屈折率及び光学膜厚が上記範囲外である場合には、光の干渉ムラの低減効果が低くなるため好ましくない。また、ハードコート層の屈折率が1.45未満の場合には十分な硬度を得ることが難しくなるため好ましくない。一方、屈折率が1.55を超える場合には透明樹脂フィルムとの屈折率差が小さくなって減反射効果が弱くなり、好ましくない。ハードコート層の膜厚についても2~25μmの範囲外の場合には同様の理由で好ましくない。【0027】この場合、500~650nmにおける反射率の振幅の差の最大値が1.0%以下、すなわち、フィルム表面の反射スペクトルを測定した際の可視光線の範囲にある500~650nmにおけるハードコート層と透明樹脂フィルム間の干渉光に起因する反射率の振幅の最大値が、1.0%以下の差にならなければならない。振幅の差の最大値は、さらに好ましくは0.5%以下である。反射率の振幅の最大値が1.0%を超えると干渉ムラが目立ってしまい本発明の目的に適さない。【0028】第一の干渉層の屈折率は、好ましくは{(透明樹脂フィルムの屈折率)×(ハードコート層の屈折率)}1/2±0.03の範囲内、さらに好ましくは{(透明樹脂フィルムの屈折率)×(ハードコート層の屈折率)}1/2±0.02の範囲内である。第一の干渉層の屈折率は、{(透明樹脂フィルムの屈折率)×(ハードコート層の屈折率)}1/2であるときに最も干渉ムラを低減でき、さらにその±0.03の範囲内であれば、干渉ムラを効果的に低減させることができる。かつ、各層の屈折率が透明樹脂フィルムの屈折率>第一の干渉層の屈折率>ハードコート層の屈折率の関係にあると、干渉ムラをさらに低減させることができる。【0029】第一の干渉層は屈折率、厚みが前記範囲内であれば良く、その材料、層の形成方法は特に限定されない。層を形成する材料は例えば有機物、無機物の単独又は混合物を用いることができ、有機物としては例えばアクリレートなどの反応性単量体やその重合体が、無機物としては例えば珪素化合物や金属、金属酸化物などが挙げられる。」
(エ)「【0067】本実施形態の減反射フィルムは、光の干渉抑制効果及び減反射効果を必要とする用途に用いることができる。特に、電子画像表示装置における画面の表面反射を抑えることができる。電子画像表示装置としては、例えば、ブラウン管(以後、CRTと略記する。)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、液晶表示装置等を挙げることができる。」
(オ)文献4記載の技術的事項
上記(イ)~(エ)より,文献4には,以下の技術的事項が記載されていると認められる。
「最外層から順に少なくとも低屈折率層と高屈折率層からなる減反射層、ハードコート層及び第一の干渉層からなる多層構造を透明樹脂フィルムの片面又は両面に設けた減反射フィルムであって,透明樹脂フィルムを形成する透明樹脂基材は、屈折率が1.55~1.70の範囲内のものが好ましく,透明樹脂基材としては、具体的には例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン及びポリエーテルイミド等が好ましく,前記透明樹脂フィルム上に、第一の干渉層及びハードコート層を積層することにより、干渉ムラを低減させることが必要であり,そのために透明樹脂フィルムに、屈折率1.50~1.65かつ光学膜厚が125~160nmである第一の干渉層、屈折率1.45~1.55かつ膜厚が2~25μmであるハードコート層を順次積層することが好ましく,500~650nmにおける反射率の振幅の差の最大値が1.0%以下、すなわち、フィルム表面の反射スペクトルを測定した際の可視光線の範囲にある500~650nmにおけるハードコート層と透明樹脂フィルム間の干渉光に起因する反射率の振幅の最大値が、1.0%以下の差にならなければならず,振幅の差の最大値は、さらに好ましくは0.5%以下であり,反射率の振幅の最大値が1.0%を超えると干渉ムラが目立ってしまう,第一の干渉層の屈折率は、好ましくは{(透明樹脂フィルムの屈折率)×(ハードコート層の屈折率)}1/2±0.03の範囲内、さらに好ましくは{(透明樹脂フィルムの屈折率)×(ハードコート層の屈折率)}1/2±0.02の範囲内であり,第一の干渉層の屈折率は、{(透明樹脂フィルムの屈折率)×(ハードコート層の屈折率)}1/2であるときに最も干渉ムラを低減でき、さらにその±0.03の範囲内であれば、干渉ムラを効果的に低減させることができる減反射フィルムであって,光の干渉抑制効果及び減反射効果を必要とする用途に用いることができ,特に、電子画像表示装置における画面の表面反射を抑えることができ,電子画像表示装置は、例えば、ブラウン管(CRT)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、液晶表示装置等である減反射フィルム」
イ 文献4a記載事項
申立人1が甲第4号証の他の周知文献として例示した文献4a(特開2006-231846号公報)には,以下の事項が記載されている。
(ア)「【技術分野】【0001】本発明は、ハードコートフィルムに関し、更に詳しくはハードコート組成物起因の異物数が少なく、かつ表面硬度が高く、耐摩耗性に優れ、ハードコート層と基材の密着性が良好で、虹彩模様発生が抑制され視認性に優れ、耐紫外線性に優れたハードコートフィルムに関するものである。【背景技術】続きを表示(全15行)【0002】近年、液晶、プラズマ、リアプロダクションなどの技術を用いたモニターや大型薄型テレビの市場は著しい拡大をみせている。これらに適用される部材も要求に応じた高機能フィルムが開発されている。その中で画面表面の反射を防止する反射防止フィルムはトリアセテートフィルムやポリエステルフィルムを基材として傷付防止のためのハードコート層、その上に高屈折率層、更に低屈折率層が設けられ、層間の界面反射を相殺して反射防止機能を付与するものが中心となっている。【0003】これらの用途に使用するためには基材フィルムはもちろんのこと、ハードコート層、高屈折率層、低屈折率層の各層において輝点となるような異物欠点は著しくその品位を添加させ、画像を見づらくする原因となる。【0004】またポリエステルフィルムにハードコート層を積層する場合、プライマー層を設けた易接着処理フィルム上にハードコート層が設けられる方法が行われていた。しかしながらプライマー層を設けた場合には、基材ポリエステルフィルムとプライマー層と屈折率が異なる場合が多く、更にはハードコート層とプライマー層との屈折率差が生じるために干渉縞が発生し、ある角度から見た時にぎらつきや部分的な虹彩状反射が発生し、ディスプレイ用途に用いる場合には極めて視認性の悪いものとなる。この現象を改善するために、塗膜厚み精度を向上したり、ハードコート層の屈折率高くし、屈折率差を少なくする方法(特許文献1参照)、基材フィルムの表面を熱プレスにより粗面化し、その面にハードコート層を設ける方法(特許文献2)、基材フィルムを溶解する溶剤を用いてハードコート剤を塗布し、基材を溶解または膨潤させることで反射界面レスとして干渉縞を低減する方法(特許文献3)などが提案されている。しかしながら塗膜厚み精度にも限界があり、樹脂成分のみで高屈折率化するにも限度がある。また熱プレスによる方法では干渉縞は低減できても視認性の悪いものになったりする。更に溶解、膨潤法では適用できる樹脂が限定され高度に二軸配向したポリエステルフィルムなどではオルトクロロフェノールのような特殊な溶剤に限定され、作業環境が極めて悪い。またディスプレイ用途に使用する場合においては、太陽光や蛍光灯などの紫外線に晒されるため、接着層が劣化して黄変したりハードコート層が剥離したりする問題が発生する。【0005】更にハードコートフィルムをディスプレイ用途に用いる場合には、太陽光や蛍光灯から発せされる紫外線、あるいはプラズマ発光により放出される紫外線などの環境に暴露されるため、紫外線により劣化するポリエステルフィルムでは長期の使用において黄変したり強度が低下したりする問題がある。またディスプレイ用途においては鮮明な画像を得るために無色で透明性が要求される。更にプラズマディスプレイの場合には、その発光原理から600nm付近を中心とするネオンオレンジ光や近赤外線を発光するため、これを補正したりカットする目的で色素が使用されているが、この色素が紫外線に弱くこれらの劣化を防止する意味でも前面フィルターとして使用するフィルムとする場合には紫外線吸収機能を付与することは極めて重要である。我々は上記の欠点を改良するためにプライマー層を設けることなくフィルム製膜工程中でハードコート層を塗布し、熱処理工程で硬化させることにより直接接着する方法を提案した(特許文献4)。それに用いるハードコート層形成組成物として多官能アクリレートを主成分とし、接着性を付与するためにメラミン架橋剤を添加すること、およびメラミンを架橋するために酸触媒が有効であることも提案している(特許文献5)。【0006】しかしながら本処方では硬化後の塗膜に少量の塗剤起因の異物が発生し、輝点が少なく極めてクリーンな表面が要求されつつある高度なディスプレイ用途においては更なる改良が要求されていた。」
(イ)「【発明が解決しようとする課題】【0007】本発明は、輝点となる表面欠点が少なく、基材フィルムとの接着性に優れ、かつ干渉縞が小さく視認性に優れ、更には耐紫外線性を有するハードコートフィルムを提供することを目的とするものである。【課題を解決するための手段】【0008】本発明は、輝点の原因となるハードコート層中における塗剤組成異物数が2個/m2以下であるハードコートフィルムであって、ハードコート層側から測定した波長400~600nmでの反射率の平均うねり振幅が1%以下であるハードコートフィルム、更には紫外線カット機能を有するディスプレイ用反射防止フィルムに有用なハードコートフィルムを提供するものである。【発明の効果】【0009】本発明のハードコートフィルムの構成にすることにより、画像を見づらくする輝点がほとんどなく、干渉縞が小さく、視認性が良く、基材とハードコート層との接着性が良く、紫外線などによる劣化が小さく、ディスプレイの反射防止フィルム部材として好適に用いられるハードコートフィルムを提供することができる。」
(ウ)「【0010】本発明のハードコートフィルムは、基材フィルムの少なくとも片面にハードコート層のみが積層された構成を有するものである。ここで言うハードコート層とは硬度が高く、耐傷性、耐摩耗性に優れた薄膜であればよく特に限定されるものではない。【0011】本発明における基材フィルムは、溶融製膜や溶液製膜可能なフィルムである。その具体例としては、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミドおよびポリカーボネートなどからなるフィルムを挙げることができる。これらの内、特に透明性、機械的強度および寸法安定性などに優れた熱可塑性樹脂、特にポリエステルからなるフィルムが好ましく用いられる。」
(エ)「【0050】また、本発明のハードコートフィルムは、ハードコート層側から測定した波長400~600nmでの反射率の平均うねり振幅が1%以下である必要があり、好ましくは0.8%以下、更に好ましくは0.6%以下であるのが干渉縞を低減できるので好ましい。【0051】本発明で述べる波長400~600nmでの反射率の平均うねり振幅とは、以下の方法で測定される。まずハードコートフィルムのハードコート面を測定面とし、その反対面を60℃光沢度(JIS Z 8741)が10以下になるようにサンドペーパーなどで粗面化する。次に粗面化した部分について波長400~600nmにおける可視光線平均透過率が5%以下となるように黒色に着色して測定サンプルとする。測定面を分光光度計にて入射角10度で測定した時に観測される結果を図1に示す。図1において曲線(c)が波長と測定された反射率との関係を表した結果である。反射率において、波長400~600nmでのうねり、すなわち波長の変化に伴って反射率が上下に波打つ変動の微積分学的意味での極大値(一次微分係数=0、二次微分係数<0)と極小値(一次微分係数=0、 二次微分係数>0)の差をうねり振幅(a)と定義する。図1で示すように波長400~600nmにおける反射率のうねりの山頂部分頂点(極大点)を結んだ線(山頂線(b))とうねりの谷底部分(極小点)を結んだ線(谷底線(d))の2つの反射率の折れ線グラフの差、すなわち、うねり振幅(a)を境界点(400、600nm)を含めて20nm間隔のサンプル点11箇所(波長が(400+20*i(i=0~10の整数))nmとなる箇所)で求め、この11個の値を平均した値を平均うねり振幅と定義する。」
(オ)図1
(オ)文献4a記載の技術的事項
上記(ウ)~(エ)より,文献4aには,以下の技術的事項が記載されていると認められる。
「基材フィルムの少なくとも片面にハードコート層のみが積層された構成を有するハードコートフィルムであって,ハードコート層は硬度が高く、耐傷性、耐摩耗性に優れた薄膜であればよく特に限定されるものではなく,基材フィルムは、溶融製膜や溶液製膜可能なフィルムであり,具体例としては、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミドおよびポリカーボネートなどからなるフィルムである,ハードコートフィルムであって,ハードコート層側から測定した波長400~600nmでの反射率の平均うねり振幅が1%以下である必要があり、好ましくは0.8%以下、更に好ましくは0.6%以下であるのが干渉縞を低減できるので好ましいハードコートフィルム。」
ウ 文献4b記載事項
申立人1が甲第4号証の他の周知文献として例示した文献4b(特開2012-35560号公報)には,以下の事項が記載されている。
(ア)「【技術分野】【0001】本発明は、ポリエステルフィルム上に易接着層を介してハードコート層が積層されたハードコートフィルム、及び前記ハードコートフィルムのハードコート層上に反射防止層が設けられた反射防止フィルムに関し、詳しくは干渉縞の発生が高いレベルにまで抑制されたハードコートフィルム及び反射防止フィルムに関する。【背景技術】続きを表示(全13行)【0002】液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等の画像表示装置、あるいはタッチパネルにおける画像表示面には、耐擦傷性を向上させるために基材フィルムにハードコート層を設けたハードコートフィルムやハードコート層上に反射防止層が設けられた反射防止フィルムが通常装着されている。【0003】上記のハードコートフィルムや反射防止フィルムに用いられる基材フィルムとして、ポリエステルフィルムやトリアセチルセルロースフィルムが一般的に知られている。ポリエステルフィルムはトリアセチルセルロースフィルムに比べて、機械的特性、寸法安定性、耐熱性等に優れているが、その反面、ハードコート層との接着性に劣るという欠点がある。そのため、ハードコートフィルムや反射防止フィルムに用いられるポリエステルフィルムには、ハードコート層との接着性を向上させるための易接着層が通常設けられている。【0004】上記したハードコート層は、紫外線硬化性のアクリル樹脂が一般的に用いられており、その屈折率は、通常1.49~1.53程度である。基材フィルムとしてポリエステルフィルムを用いた場合、ポリエステルフィルムの屈折率(通常1.62~1.68程度)とアクリル樹脂からなるハードコート層の屈折率(1.49~1.53程度)との差が大きいことが、干渉縞を発生させる1つの要因となっていた。そこで、ポリエステルフィルムとハードコート層との間に、ポリエステルフィルムの屈折率とハードコート層の屈折率との中間の屈折率を有する中間層(易接着層、干渉層、プライマー層とも言う)を設けることによって干渉縞を抑制することが提案されている(特許文献1~7)。【0005】また、ポリエステルフィルム上に易接着層(プライマー層)を介在させずにハードコート層を直接に設けることによって、反射率の振幅の差の最大値を1%以下とし、干渉縞を低減することが提案されている(特許文献8、9)。」
(イ)「【発明が解決しようとする課題】【0007】上記した特許文献1~7に具体的に開示されているハードコートフィルムや反射防止フィルムでは、干渉縞の抑制効果は十分ではなかった。【0008】続きを表示(全11行)特許文献8の発明は、ポリエステルフィルムの延伸過程でポリイソシアネート化合物を含むハードコート層を直接に積層することによって、ポリエステルフィルムとハードコート層との界面に微細な不連続な突起が形成され、それによって反射率の平均うねり振幅を1%以下にして干渉縞を低減させるというものである。しかしながら、ポリエステルフィルムとハードコート層との界面の微細突起は、ハードコートフィルムのヘイズを上げる要因となり、透明性が低下する場合がある。【0009】特許文献9の発明は、ポリエステルフィルムに易接着性のプライマー層を介在せずに直接に、金属酸化物の含有量が20体積%~42体積%のハードコート層を設けて、ポリエステルフィルムとハードコート層の屈折率を0.03以内にすることによって、380~780nmにおける反射率の振幅の差の最大値を1%以下とし、干渉縞を低減するというものである。しかしながら、ハードコート層の屈折率をポリエステルフィルムの屈折率(1.62~1.70程度)に近づけるためにハードコート層に金属化合物を比較的多量に含有させると、ハードコート層のヘイズが高くなり透明性が低下したり、ハードコート層の塗工安定性が低下したり、あるいはハードコート層塗工液の経時安定性が低下するなどの不都合が生じる場合があり、またハードコート層がコスト増になる。また更に、ポリエステルフィルムと同程度の屈折率を有するハードコート層を積層した場合、ハードコート層面の視感反射率が高くなると言う不都合があった。【0010】また、特許文献8、9のように、ポリエステルフィルム上に易接着層を介在せずにハードコート層を設けた場合、ハードコート層の接着性が低下する懸念がある。【0011】従って、本発明の目的は、接着性が良好で、視感反射率が低く、かつ干渉縞が十分に抑制されたハードコートフィルム及び反射防止フィルムを提供することにある。」
(ウ)「【発明の効果】【0013】本発明によれば、接着性が良好で、視感反射率が低く、かつ干渉縞が十分に抑制されたハードコートフィルム及び反射防止フィルムを提供することができる。また、本発明は、従来の一般的なハードコート層、即ち、アクリル樹脂を主体とした屈折率が比較的小さい(金属酸化物微粒子の含有量が比較的小さい)ハードコート層を用いたときの干渉縞を低減することによって、干渉縞の低減と同時に、ハードコート層が金属酸化物微粒子を比較的多量に含む場合の課題、即ち透明性の低下やハードコート層の塗工安定性低下等が改良される。」
(エ)「【0015】本発明にかかるハードコートフィルムは、ポリエステルフィルム上に中間層1を介してハードコート層が積層されたものであり、前記ポリエステルフィルムの屈折率に対して前記ハードコート層の屈折率が0.05以上小さく、かつ前記ハードコート層面の波長450~700nmにおける反射率のうねり振幅の最大値が0.6%以下であることを特徴とする。【0016】ポリエステルフィルム上に中間層を介在させてハードコート層を積層することによって、ハードコート層の接着性が良好となり、かつハードコート層面の波長450~700nmにおける反射率のうねり振幅の最大値が0.6%以下であることによって、干渉縞の抑制効果が大幅に向上する。続きを表示(全12行)【0017】従来、ポリエステルフィルム上に中間層(易接着層、干渉層、プライマー層)を介在して、ポリエステルフィルムに対して屈折率が0.05以上小さいハードコート層が積層されたハードコートフィルムにおいて、干渉縞が十分に抑制されたハードコート層は提案されていなかった。【0018】本発明において、ハードコート層面の波長450~700nmにおける反射率のうねり振幅の最大値は0.6%以下であるが、好ましくは0.5%以下であり、より好ましくは0.4%以下であり、特に0.3%以下であることが好ましい。反射率のうねり振幅の最大値の下限は、0%である。【0019】本発明にかかるハードコート層面の波長450~700nmにおける反射率のうねり振幅の最大値について、図1を用いて説明する。図1は、ハードコートフィルムの測定面(ハードコート層面)を分光光度計にて、測定面から5度の入射角で測定された表面反射スペクトルのうちの450~700nmにおけるスペクトル曲線を、横軸を波長、縦軸を反射率として描いたものである。ここで、うねりとは、波長の変化に伴って反射率が上下に振動することをいい、リップルとも呼ぶ。うねりの振幅値が小さいほど干渉縞が目立たなくなる。うねり振幅とは、ある1つのうねりの山頂Aとその両隣の谷のうちの深い方の谷Bの縦軸方向距離Cであり、波長450~700nmにおける反射率のうねり振幅の最大値とは、上記で求めたうねり振幅の最大値である。【0020】本発明にかかるハードコートフィルムは、上記と同様にして求められるうねり振幅において、更に500~650nmおけるうねり振幅の最大値が0.5%未満が好ましく、0.4%以下がより好ましく、更に0.3%以下が好ましく、特に0.2%以下が好ましい。これによって、更に干渉縞が抑制されたハードコートフィルムが得られる。」
(オ)図1
(カ)文献4b記載の技術的事項
上記(エ)より,文献4bには,以下の技術的事項が記載されていると認められる。
「ポリエステルフィルム上に中間層1を介してハードコート層が積層されたハードコートフィルムであって,前記ポリエステルフィルムの屈折率に対して前記ハードコート層の屈折率が0.05以上小さく、かつ前記ハードコート層面の波長450~700nmにおける反射率のうねり振幅の最大値が0.6%以下であることによって、干渉縞の抑制効果が大幅に向上したハードコートフィルム。」
エ 文献4c記載事項
申立人1が甲第4号証の他の周知文献として例示した文献4c(特開2012-187823号公報)には,以下の事項が記載されている。
(ア)「【技術分野】【0001】本発明は、タッチパネルなどのハードコート用光学フィルムの基材として用いたときに、干渉縞の抑制および活性線硬化型樹脂からなるハードコート剤との接着性が良好な積層ポリエステルフィルムおよび該積層ポリエステルフィルムを用いたフィルムロールに関す続きを表示(全12行)る。【背景技術】【0002】ハードコート用光学フィルムは、表面の耐擦傷性や防汚性などの機能が要求されるため、易接着層を積層したポリエチレンテレフタレート等のフィルム基材にハードコート層を設ける方法が行われている。このような構成のフィルムでは、ポリエチレンテレフタレートからなる基材フィルムとその表面に設けられる易接着層あるいはハードコート層との間に、屈折率差のある明確な界面が存在するために、視認性の問題、すなわち、ある角度から見た時に部分的な虹彩状反射が発生し視認性に支障をきたすという問題があった。【0003】このような積層ポリエステルフィルムにハードコート層を設けたときに生じる干渉縞の抑制方法については、易接着層と基材層およびハードコート層との屈折率差を起因とする光学的界面をなくすことが最良である。これを解決する方法として易接着層内に屈折率の異なる2種類の樹脂を用い、易接着層の表層から基材層へ向かって屈折率を連続的に向上させる方法がある(特許文献1)。しかし、この方法では高屈折率樹脂の屈折率が十分に高くなく、易接着層と基材層との界面における干渉縞の抑制が不十分である。そこで本発明者は、高屈折率樹脂にフルオレン基などの芳香族置換基を含むモノマーを共重合して、樹脂自体の屈折率を高める検討を行ってきた(特願2010-179287)。【0004】また、接着性を向上させるためにポリエステルフィルムに易接着層を設ける方法として、結晶配向が完了する前のポリエステルフィルムに必要に応じてコロナ放電処理を施し、水を分散媒とした易接着塗剤を塗布、乾燥後、延伸、熱処理を施して結晶配向を完了させる方法、いわゆる水系インラインコート法がある。水系インラインコート法では、易接着塗剤を基材層に均一に塗布するために易接着塗剤に添加する親水性の高い界面活性剤が、高温高湿度環境下での接着性を低下させるという問題があった。一方、この問題を解決するために易接着塗剤の界面活性剤を低減した場合もしくは無くした場合、水系インラインコート法での塗布均一性が劣り、易接着層の厚みが場所によって変化するため、干渉縞の原因となる表面反射率のバラツキが測定点によって大きくなるなどの問題点があった。」
(イ)「【発明が解決しようとする課題】【0006】本発明の目的は、ハードコート用光学フィルムの基材として用いたときの干渉縞の抑制およびハードコート層との接着性に優れた光学用フィルムであって、特に高温高湿度環境下での接着性およびインラインコート法での塗布性による表面反射率のバラツキ低減を高いレベルで実現する特性を併せ持つ積層ポリエステルフィルムおよびフィルムロールを提供することである。」
(ウ)「【発明の効果】【0017】本発明は、ハードコート用積層ポリエステルフィルムに関するもので、ハードコート層を積層する際に加工適正が良好であり、特に広範囲における干渉縞および色むら低減に優れると共にハードコート層との高温高湿度環境下の耐湿熱接着性に優れた積層ポリエステルフィルムを提供する。本発明によれば、表面外観および耐擦傷性に優れた光学フィルムを提供することが可能であり、タッチパネル等光学用フィルムの高性能化を図ることが可能となる。」
(エ)「【0019】本発明において、積層ポリエステルフィルムは、基材層となるポリエステルフィルムの少なくとも片側表面に積層膜(C層)を有し、積層膜(C層)側の500nmから650nmにおける分光反射率の最小値が4.0%以上6.0%以下であることが好ましく、4.5%以上5.7%以下であることがより好ましく、4.7%以上5.5%以下であることが特に好ましい。また、分光反射率の変化量(Δr)が1.0%以下であることが好ましく、0.7%以下であることがより好ましく、更に0.4%以下であることが特に好ましい。積層膜(C層)の光学特性は、基材となるポリエステルフィルムおよび、その上に積層されるハードコート層との屈折率差が小さい光学特性をとることが好ましく、干渉縞抑制のためには分光反射率を上記の範囲とすることが好ましい。分光反射率が上記範囲外の場合には、光学積層フィルムとしたときの干渉縞が悪化する恐れがある。このような範囲の分光反射率を達成する方法は特に限定されないが、積層膜(C層)の屈折率を表層のハードコート層から基材層へ向かって屈折率を連続的に向上させ基材層とハードコート層に近い屈折率とするなどの方法を用いることで、上記範囲の分光反射率が達成される。」
(オ)「【0119】上記のような光学積層フィルムの各界面で生じる干渉縞は、ハードコート層側の分光反射率スペクトルのうねり振幅を小さくすることで低減させることができる。以下に述べる基材フィルムとハードコート層との積層構成を用いることで、干渉縞のない光学積層フィルムを形成することができるのでより好ましい。【0120】波長500~600nmでの反射率の平均うねり振幅とは、以下のようにして測定される。まず、光学積層フィルムのハードコート層を積層した面を測定面とし、その反対面を波長500~600nmにおける可視光線平均透過率が5%以下となるように50mm幅の黒色光沢テープ(ヤマト(株)製 ビニ-ルテープNo.200-50-21:黒)を気泡を噛みこまないように貼り合わせ測定試料とする。光学積層フィルムの測定面を、分光光度計にて、測定面から5度の入射角で測定したときに観測される結果を図5に示す。図5において曲線が、波長と測定された反射率との関係を表した結果である。反射率において、波長500~650nmでのうねり、すなわち、波長の変化に伴って反射率が上下に波打つ変動の微積分学的意味での極大値(一次微分係数=0、二次微分係数<0)と極小値(一次微分係数=0、二次微分係数>0)の差をうねり振幅(a)と定義する。図5で示すように、波長500~600nmにおける反射率のうねりの山頂部分頂点(極大点)を結んだ線(山頂線(b))とうねりの谷底部分(極小点)を結んだ線(谷底線(d))の2つの反射率の折れ線グラフの差、すなわち、うねり振幅(a)を、境界点(500nm、600nm)を含めて10nm間隔のサンプル点11箇所(波長が(500+10×i(i=0~10の整数))nmとなる箇所)で求め、この11個の値を平均した値を平均うねり振幅と定義する。【0121】光学積層フィルムは、ハードコート層側の反射率の平均うねり振幅が1.0%以下であることが好ましい。平均うねり振幅は、より好ましくは0.7%以下、さらに好ましくは0.4%以下である。ハードコート層側の反射率の平均うねり振幅が1.0%より大きくなると、蛍光灯などの波長強度分布を有する光が反射したときに虹彩模様が発生し、視認性が悪化する。」
(カ)図5
(キ)文献4c記載の技術的事項
上記(エ)~(オ)より,文献4cには,以下の技術的事項が記載されていると認められる。
「基材層となるポリエステルフィルムの少なくとも片側表面に積層膜(C層)を有した積層ポリエステルフィルムであって,積層膜(C層)側の500nmから650nmにおける分光反射率の最小値が4.0%以上6.0%以下であることが好ましく、4.5%以上5.7%以下であることがより好ましく、4.7%以上5.5%以下であることが特に好ましく,また、分光反射率の変化量(Δr)が1.0%以下であることが好ましく、0.7%以下であることがより好ましく、更に0.4%以下であることが特に好ましく,積層膜(C層)の光学特性は、基材となるポリエステルフィルムおよび、その上に積層されるハードコート層との屈折率差が小さい光学特性をとることが好ましく、干渉縞抑制のためには分光反射率を上記の範囲とすることが好ましい積層ポリエステルフィルムであって光学積層フィルムの各界面で生じる干渉縞は、ハードコート層側の分光反射率スペクトルのうねり振幅を小さくすることで低減させることができる積層ポリエステルフィルム。」
オ 周知技術について
上記ア~エより,分光反射率と干渉縞の関係に着目すると,以下の技術的事項が,本願出願日前に周知であったと認められる。(以下,「周知技術1」という。)
「基材層となるフィルムの少なくとも片側にハードコート層を積層した積層フィルムにおいて,積層フィルムの各界面で生じる干渉縞は、ハードコート層側の分光反射率スペクトルのうねり振幅を小さくすることで低減させることができること。」
(4)文献5記載事項
折りたたみ中(クリックで表示)
申立人1が,本件特許発明2の進歩性の検討に際して,従たる証拠である甲第5号証として提出した文献5(特表2015-508345号公報)には,以下の事項が記載されている。
ア「【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック基板、およびこれを含むタッチスクリーンパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、ディスプレー方式が従来のCRT(CathodeRayTube)方式から平板ディスプレー方式、例えばプラズマディスプレー(PlasmaDisplayPanel、PDP)、液晶ディスプレー(LiquidCrystalDisplay、LCD)、有機EL(OrganicLightEmittingDiodes、OLED)などへ転換されている。特に、このような平板ディスプレーをフレキシブルディスプレーとして実現することができるように、全世界的に研究が盛んに行われている。
【0003】
上述したような平板ディスプレーでは、基本的に基板の素材としてガラスを用いる。一般な平板ディスプレーでは、TFT(薄膜トランジスタ)を形成させるための条件として高温熱処理が求められるので、これに最適な素材としてガラス基板が使われているのである。
【0004】
ところが、ガラス基板は、基本的に非常に硬い特性を持つので、可撓性が劣っており、フレキシブルディスプレーの基板には適さないという問題点がある。
【0005】
このため、フレキシブルディスプレー基板の素材として、ガラス基板と比較して重さ、成形性、非破壊性、デザインなどに優れるうえ、特にロールツーロール(Roll-to-Roll)生産方式で生産できて製造コストが節減できるプラスチック素材を用いる技術に関する研究が盛んに行われているが、未だ商用化に向けたプラスチック素材のフレキシブルディスプレー基板が開発されていない実情である。
【0006】
一方、タッチスクリーンパネル(TSP)は、電子手帳、液晶ディスプレー(LiquidCrystalDisplay、LCD)、PDP(PlasmaDisplayPanel)、EL(Electroluminescence
)などの平板ディスプレー装置と、CRT(CathodeRayTube)の様々な利点を持つフラットパネルディスプレー(Flat-Panel-Display)の機能を有し、ユーザーがディスプレーを介して所望の情報を選択するのに使われる道具であって、抵抗膜方式(ResistiveType)、静電容量方式(CapacityType)、抵抗膜-マルチタッチ方式(Resistive-MultiType)などに大別される。
【0007】
抵抗膜方式(ResistiveType)は、ガラスまたはプラスチック板上に抵抗成分の物質を塗布し、その上にポリエチレンフィルムをかぶせた形となっており、両面が互いに接しないように一定の間隔で絶縁棒が設置されている。作動原理は、抵抗膜の両端から一定の電流を流すと、抵抗膜が抵抗成分を有する抵抗体のように作用するため、両端に電圧がかかるというものである。手指で接触すると、上側表面のポリエステルフィルムが撓んで両面が接することになる。よって、両面の抵抗成分のため抵抗の並列接続のような形になり、抵抗値の変化が起こる。この際、両端に流れる電流によって電圧の変化も起こるが、このような電圧の変化程度から接触した指の位置が確認できる。抵抗膜方式は表面の圧力による作動を利用するもので解像度が高く応答速度が最も速いが、1ポイントしか駆動できないため、破損の危険性が大きいという欠点を持っている。
【0008】
静電容量方式(CapacitiveType)は、熱処理の施されているガラス両面に透明な特殊伝導性金属(TAO)をコートすることにより作られる。スクリーンの四隅に電圧をかけると、高周波がセンサーの全面に広がることになり、この際、スクリーンに手指が接触すると、電子の流れが変化し、このような変化を感知して座標を把握する。静電容量方式は、多数のポイントを同時に押して駆動可能であり、解像度が高く耐久性が良いという利点を持つものの、反応速度が遅く装着が難しいという欠点を持っている。
【0009】
最後に、抵抗膜-マルチタッチ方式(Resistive-Multi-TouchType)は、1ポイントしか駆動できない抵抗膜方式の最大欠点を補完して改善させることにより、静電容量方式と同様に実行可能に実現した方式のことをいう。
【0010】
また、タッチスクリーンパネル(TSP)は、信号増幅の問題、解像度の差、設計および加工技術の難易度だけでなく、それぞれのタッチスクリーンパネルの特徴的な光学特性、電気特性、機械特性、耐環境特性、入力特性、耐久性および経済性などを考慮して個々の電子製品に選択して用いられており、特に電子手帳、PDA、携帯用PCおよびモバイルフォン(携帯電話)などにおいては抵抗膜方式(ResistiveType)と静電容量方式(CapacitiveType)が広く用いられる。
【0011】
タッチスクリーン製造技術の今後の方向は、従来の複雑な工程を最大限減らしても十分な耐久性を持つようにタッチスクリーンパネルの厚さをさらに薄くする必要がある。その理由は、光透過率を高めてディスプレー輝度を低めても、既存の製品などの性能を実現するようにすることにより、消費電力を減少させてバッテリーの利用時間を増やすことができるようにするためである。
【0012】
一般な抵抗膜方式(ResistiveType)のタッチスクリーンが提案されたことがある。
【0013】
これを考察すると、液晶ディスプレーの一面に設けられるウィンドウフィルム(またはOverlayFilm)と、ウィンドウフィルムの下面に付着し、液晶ディスプレーモジュールに情報を電気的に入力するために設けられる第1/第2ITOフィルムを含み、ウィンドウフィルムは第1ITOフィルムを保護するために備えられるものである。これは一般なPET(PolyEthyleneTerephthalate)フィルムで製作され、第1ITOフィルムはOCA(OpticalClearAdhesive)によってウィンドウフィルム(またはOverlayFilm)と接着される。第1ITOフィルムおよび第2ITOフィルムは、それぞれ、銀を用いた第1/第2電極層の縁部(Edge)にプリントされており、第1/第2電極層間には絶縁のために両面テープが付着し、DotSpacerによって一定の間隔で離れて、手指またはタッチペンなどを用いた外部からの圧力(タッチ)印加の際に電気的に相互接続されることにより、正確なタッチ位置を感知することになる。
【0014】
このような場合、ウィンドウフィルム101と第1ITOフィルムとの間に光透明接着剤(OpticalClearAdhesive、OCA)を用いるラミネート工程によって、光透過率が低下するうえ、ウィンドウフィルムを配置し、OCAによって第1ITOフィルムを付着させる別個の工程を行わなければならないので、工程処理が複雑であり、工程費用が上昇するという問題点がある。
【0015】
また、この技術は、ITOフィルムの形成されているITO膜をレーザーウェットエッチングによってパターニングするので、ウィンドウフィルム(或いはPETフィルム)の所望の領域にITOを選択的にコートすることができない。
【0016】
一般に、タッチスクリーン(TouchScreen)の製造において、透明基板としてはPET(polyethyleneterephthalate)フィルムを最も多く使用する。特に、PETフィルムは、費用が低廉であるという利点はあるが、130℃以上で変形を起こすほど熱に弱いという不利益がある。
【0017】
よって、PETフィルムにITO(IndiumTinOxide)薄膜が蒸着された状態で後続の熱処理工程を行うと、PETフィルムが膨張または収縮することにより、ITO薄膜に浮き上がりまたは割れ(Crack)が発生する。上述したような不良現象を防止するために、最近、1次工程として透明基板を予め高温に長時間晒した後、後続の工程を行う方法が採用されている。ところが、このような前処理工程は、結果的にタッチスクリーン製造時間の遅延につながって生産率を低下させるという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、光透過度に優れるうえ、高硬度特性、ITO工程性および柔軟性を満たすプラスチック基板を提供しようとする。
【0019】
本発明は、ウィンドウフィルムと電極フィルムの機能を共に行うことが可能なプラスチック基板を提供しようとする。
【0020】
本発明は、このようなプラスチック基板を含むことにより、積層されるフィルムの数を減らしてより薄膜化が可能となったタッチスクリーンパネルを提供しようとする。」
イ「【発明の効果】
【0036】
本発明は、透明性を確保し、ITO工程中にも黄変などの変形がなく、薄い厚さでも高硬度特性を有し、低い面抵抗の実現が可能であって、例えばタッチスクリーンパネルへの適用の際に構造の簡素化を実現することが可能なプラスチック基板を提供する。」
ウ「【0037】
本発明に係るプラスチック基板は、ジアンヒドリド類とジアミン類との重合、またはジアンヒドリド類と芳香族ジカルボニル化合物とジアミン類との重合によるポリイミド系樹脂前駆体のイミド化物を含み、黄色度が5以下であり、UV分光計で透過度を測定するときに550nmでの透過度が80%以上を満足するポリイミド系フィルムと;前記ポリイミド系フィルムの一面上に形成されたハードコート層と;ポリイミドフィルムの残りの一面上に形成された透明電極層とを含んでなる。このようなハードコート層は、プラスチック基板の高硬度のための層であり、これによりタッチスクリーンパネル形成の際にウィンドウフィルムを省略することができる。」
エ 文献5に記載された技術的事項
上記イ~ウより,文献5には,以下の技術的事項が記載されていると認められる。
「透明性を確保し、ITO工程中にも黄変などの変形がなく、薄い厚さでも高硬度特性を有し、低い面抵抗の実現が可能であって、例えばタッチスクリーンパネルへの適用の際に構造の簡素化を実現することが可能なプラスチック基板であって,プラスチック基板は、ジアンヒドリド類とジアミン類との重合、またはジアンヒドリド類と芳香族ジカルボニル化合物とジアミン類との重合によるポリイミド系樹脂前駆体のイミド化物を含み、黄色度が5以下であり、UV分光計で透過度を測定するときに550nmでの透過度が80%以上を満足するポリイミド系フィルムと;前記ポリイミド系フィルムの一面上に形成されたハードコート層と;ポリイミドフィルムの残りの一面上に形成された透明電極層とを含んでなり,ハードコート層は、プラスチック基板の高硬度のための層であり、これによりタッチスクリーンパネル形成の際にウィンドウフィルムを省略することができるプラスチック基板。」
(5)文献6記載事項
折りたたみ中(クリックで表示)
申立人1が,本件特許発明6の進歩性の検討に際して,従たる証拠である甲第6号証として提出した文献6(特開2015-69197号公報)には,以下の事項が記載されている。
ア「【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードコートフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
モバイル用パソコン、電子手帳、携帯電話等に搭載される画像表示部としては、いわゆるタッチパネル機能の搭載されたものが知られている。
【0003】
前記タッチパネル機能を搭載した画像表示部の表面には、一般に、指やタッチペン等を用いて操作した際の傷つきや破損を防止することを目的として、ハードコートフィルム等が設置されている場合が多い。
【0004】
前記ハードコートフィルムとしては、例えば透明性高分子を主成分として含む位相差フィルムと、この位相差フィルムの一方の面側に形成される第一ハードコート層と、この第一ハードコート層の一方の面側に形成される第二ハードコート層とを備え、上記第二ハードコート層の鉛筆硬度が3H以上であり、上記第一ハードコート層の鉛筆硬度が第二ハードコート層の鉛筆硬度よりも低く、上記第二ハードコート層の厚みが1μm以上10μm以下であり、上記第一ハードコート層の厚みが第二ハードコート層の厚みの4倍以上20倍以下である光学シートといったハードコート層を2層以上積層した構造を有するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
一方、近年、屈曲することのできるフレキシブルディスプレイの開発が盛んになるなかで、その表面に設置されるハードコートフィルムにも、優れた屈曲性が求められつつある。
【0006】
しかし、前記したような従来のハードコートフィルムは、画像表示部の傷つきや破損を防止すべく、比較的高硬度なものが多いため、屈曲性の点で十分でない場合があった。
【0007】
このように、傷つき等を防止可能なレベルの優れた表面硬度と、優れた屈曲性とを両立したハードコートフィルムは、未だ見出されていない状況であった。」
イ「【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、傷つき等を防止可能なレベルの表面硬度を有し、屈曲性に優れたハードコートフィルムを提供することである。」
ウ「【発明の効果】
【0012】
本発明のハードコートフィルムは、傷つき等を防止可能なレベルの表面硬度を有し、屈曲性に優れることから、例えば湾曲することのできる、いわゆるフレキシブルディスプレイ等の表面に設置するハードコートフィルム、保護フィルム等に使用することができる。」
エ「【0013】
本発明のハードコートフィルムは、基材の少なくとも片面に、第一のハードコート層(A1)を有し、前記第一のハードコート層(A1)の表面に第二のハードコート層(A2)を有するハードコートフィルムであって、前記第一のハードコート層(A1)の表面に稜間角136°のビッカース圧子を荷重15mN押し込んで測定されるマルテンス硬さが200N/mm2以上であり、かつ、前記第二のハードコート層(A2)の表面に稜間角136°のビッカース圧子を荷重15mN押し込んで測定されるマルテンス硬さが200N/mm2未満であることを特徴とする。
【0014】
前記ハードコート層(A1)及び前記ハードコート層(A2)のマルテンス硬さは、前記ハードコート層(A1)及び(A2)を形成できるハードコート剤を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの表面に厚さ10μmとなるように塗布し硬化させることによって形成された各ハードコート層の表面に、稜間角136°のビッカース圧子を荷重15mN押し込んで測定されるマルテンス硬さの値である。
【0015】
前記測定方法で測定して得られるハードコート層(A1)のマルテンス硬さは、200N/mm2以上であり、200N/mm2以上300N/mm2未満であることが好ましく、230N/mm2以上280N/mm2未満であることがより好ましい。
【0016】
一方、本発明は、単に上記マルテンス硬さを備えたハードコート層(A1)を設けることによって前記課題を解決しようとするものではなく、前記特定のマルテンス硬さを備えたハードコート層(A1)の表面に、200N/mm2未満、好ましくは100N/mm2以上200N/mm2未満、より好ましくは130N/mm2以上180N/mm2未満のハードコート層(A2)を組み合わせ使用するものである。
【0017】
前記ハードコート層(A1)としては、前記ハードコート層(A2)よりも大きいマルテンス硬さを備えたものを使用する。
【0018】
ここで、従来のハードコートフィルムは、その表面硬度を高めるべく、基材の少なくとも片面に、相対的に表面硬度の低いハードコート層を設け、そのハードコート層の表面に、相対的に高硬度のハードコート層を設けたものが多い。本発明では、相対的に高硬度のハードコート層(A1)の表面に、相対的に低硬度のハードコート層(A2)を設けることによって、高硬度で優れた屈曲性を備えたハードコートフィルムを見出したものである。」
オ 文献6に記載された技術的事項
上記ア~エより,文献6には,以下の技術的事項が記載されていると認められる。
「タッチパネル機能を搭載した画像表示部の表面に、指やタッチペン等を用いて操作した際の傷つきや破損を防止することを目的として、設置されているハードコートフィルムであって,傷つき等を防止可能なレベルの表面硬度を有し、屈曲性に優れることから、例えば湾曲することのできる、いわゆるフレキシブルディスプレイ等の表面に設置するハードコートフィルムであり,ハードコートフィルムは、基材の少なくとも片面に、第一のハードコート層(A1)を有し、前記第一のハードコート層(A1)の表面に第二のハードコート層(A2)を有するハードコートフィルムであって、前記第一のハードコート層(A1)の表面に稜間角136°のビッカース圧子を荷重15mN押し込んで測定されるマルテンス硬さが200N/mm2以上であり、かつ、前記第二のハードコート層(A2)の表面に稜間角136°のビッカース圧子を荷重15mN押し込んで測定されるマルテンス硬さが200N/mm2未満であり,相対的に高硬度のハードコート層(A1)の表面に、相対的に低硬度のハードコート層(A2)を設けることによって、高硬度で優れた屈曲性を備えたハードコートフィルム。」
(6)文献7記載事項
折りたたみ中(クリックで表示)
申立人1が,本件特許発明7の進歩性の検討に際して,従たる証拠である甲第7号証として提出した文献7(特開2013-210976号公報)には,以下の事項が記載されている。
ア「【技術分野】
【0001】
本発明は、反りの発生を抑制でき、耐擦傷性、防汚性および印刷性が良好な保護体に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばタッチパネルの前面板には、従来、強化ガラスが使用されてきたが、強化ガラスは重い、割れる等の問題を有する。そのため、強化ガラスから透明樹脂板への変更が検討されている。一方、透明樹脂板は軽い、割れにくいという利点を有するが、表面が傷つきやすいという欠点を有する。
【0003】
ところで、樹脂フィルムまたは樹脂シートの表面にハードコート層(硬化層)を形成し、耐擦傷性を向上させる技術が知られている。例えば、特許文献1には、透明基材フィルムの一面側に、反応性シリカ微粒子、反応性異形シリカ微粒子およびバインダ成分を有する硬化性樹脂組成物の硬化物からなるハードコート層を設けたハードコートフィルムが開示されている。また、特許文献2には、ポリカーボネート樹脂基板シートの少なくとも片面にアクリル系樹脂層を有し、更にアクリル系樹脂層の少なくとも片面にハードコート層を有するディスプレイ面板用透明多層シートが開示されている。また、特許文献3には、透明基材フィルム上に、少なくとも1層以上の樹脂層を積層し、最上層を凹凸を有する防眩層としたディスプレイ用防眩フィルムであって、防眩層が防汚性を有することを特徴とするディスプレイ用防眩フィルムが開示されている。」
イ「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
透明樹脂板の一方の面側にハードコート層を設けると、透明樹脂板およびハードコート層の膨張率、すなわち熱膨張率、吸湿膨張率の違いにより、反りが生じやすいという問題がある。さらに、タッチパネルの前面板に代表される保護体には、耐擦傷性、防汚性および印刷性が良好であることが求められている。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、反りの発生を抑制でき、耐擦傷性、防汚性および印刷性が良好な保護体を提供することを主目的とする。」
ウ「【発明の効果】
【0011】
本発明の保護体は、反りの発生を抑制でき、耐擦傷性、防汚性および印刷性が良好であるという効果を奏する。」
エ「【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の保護体およびタッチパネルモジュールについて詳細に説明する。
【0014】
A.保護体
本発明の保護体は、透明樹脂板と、上記透明樹脂板の一方の面側に形成された第1ハードコート層と、上記透明樹脂板の他方の面側に形成された第2ハードコート層とを有し、上記第1ハードコート層は、反応性シリカ微粒子および第1バインダ成分を含有する重合体、ならびに防汚性を付与する第1界面活性剤を有し、上記第2ハードコート層は、第2バインダ成分を含有する重合体、および印刷性を付与する第2界面活性剤を有することを特徴とするものである。
【0015】
図1は、本発明の保護体の一例を示す概略断面図である。図1に示すように、本発明の保護体は、透明樹脂板1と、透明樹脂板1の一方の面側に形成された第1ハードコート層2aと、透明樹脂板1の他方の面側に形成された第2ハードコート層2bとを有するものである。第1ハードコート層2aは、反応性シリカ微粒子および第1バインダ成分を含有する重合体、ならびに防汚性を付与する第1界面活性剤を有する。また、第2ハードコート層2bは、第2バインダ成分を含有する重合体、および印刷性を付与する第2界面活性剤を有する。
【0016】
本発明によれば、透明樹脂板に第1ハードコート層および第2ハードコート層を設けることで、反りの発生を抑制した保護体とすることができる。さらに、第1ハードコート層が、反応性シリカ微粒子および第1界面活性剤を用いて形成されているため、耐擦傷性および防汚性が良好な保護体とすることができる。また、第2ハードコート層が、第2界面活性剤を用いて形成されているため、印刷性が良好な保護体とすることができる。このように、反りの発生を抑制しつつ、第1ハードコート層および第2ハードコート層に異なる特性を付与することで、耐擦傷性、防汚性および印刷性が同時に達成できるという利点がある。」
オ「【0021】
また、第1ハードコート層は、通常、反応性シリカ微粒子、第1バインダ成分および第1界面活性剤を含有する第1硬化性樹脂組成物の硬化物から構成されるものである。以下、第1硬化性樹脂組成物について詳細に説明する。
【0022】
(1)反応性シリカ微粒子
第1硬化性樹脂組成物に含まれる反応性シリカ微粒子は、第1ハードコート層の硬度向上に寄与する成分である。反応性シリカ微粒子は、通常、反応性官能基を有する。上記反応性官能基としては、重合性不飽和基が好適に用いられ、好ましくは光硬化性不飽和基であり、特に好ましくは電離放射線硬化性不飽和基である。その具体例としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合及びエポキシ基等が挙げられる。」
カ「(2)第1バインダ成分
第1硬化性樹脂組成物に含まれる第1バインダ成分は、第1ハードコート層のマトリクスとなる成分である。第1バインダ成分は、通常、反応性官能基を有する。上記反応性官能基としては、重合性不飽和基が好適に用いられ、好ましくは光硬化性不飽和基であり、特に好ましくは電離放射線硬化性不飽和基である。その具体例としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合及びエポキシ基等が挙げられる。
【0077】
第1バインダ成分としては、硬化性有機樹脂が好ましく、塗膜とした時に光が透過する透光性のものが好ましく、紫外線又は電子線で代表される電離放射線により硬化する樹脂である電離放射線硬化性樹脂、その他公知の硬化性樹脂などを要求性能などに応じて適宜採用すればよい。電離放射線硬化性樹脂としては、アクリレート系、オキセタン系、シリコーン系などが挙げられる。また、第1バインダ成分は、モノマー、オリゴマー、プレポリマーの少なくとも一つであることが好ましい。第1バインダ成分として、1種又は2種以上の第1バインダ成分を用いることができる。
【0078】
第1ハードコート層における第1バインダ成分の割合は、例えば3重量%~60重量%の範囲内であることが好ましい。
【0079】
第1バインダ成分は、反応性官能基を3つ以上有することが、架橋密度を高められる点から好ましい。
【0080】
反応性官能基を3つ以上有する(3官能以上の)第1バインダ成分としては、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート、及びこれらの変性体が挙げられる。
尚、変性体としては、EO(エチレンオキサイド)変性体、PO(プロピレンオキサイド)変性体、CL(カプロラクトン)変性体、及びイソシアヌル酸変性体等が挙げられる。
【0081】
また、後述する2つ以上の反応性官能基を有する分子量が10,000未満の化合物(E)と類似の骨格で分子量が10,000以上且つ3つ以上の官能基を有する化合物も用いることができる。この様な化合物としては、例えば、荒川化学工業(株)製、商品名ビームセット371が挙げられる。
【0082】
第1バインダ成分としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、及びジペンタエリスリトールペンタアクリレートが好ましく用いられ、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、及びジペンタエリスリトールペンタアクリレートが特に好ましく用いられる。
キ 文献7に記載された技術的事項
上記ア~カより,文献7には,以下の技術的事項が記載されていると認められる。
「タッチパネルの前面板に代表される保護体であって,保護体は、透明樹脂板と、上記透明樹脂板の一方の面側に形成された第1ハードコート層と、上記透明樹脂板の他方の面側に形成された第2ハードコート層とを有しており、上記第1ハードコート層は、反応性シリカ微粒子および第1バインダ成分を含有する重合体、ならびに防汚性を付与する第1界面活性剤を有しており、上記第2ハードコート層は、第2バインダ成分を含有する重合体、および印刷性を付与する第2界面活性剤を有しており,第1ハードコート層は、反応性シリカ微粒子、第1バインダ成分および第1界面活性剤を含有する第1硬化性樹脂組成物の硬化物から構成されており,第1硬化性樹脂組成物に含まれる反応性シリカ微粒子は、第1ハードコート層の硬度向上に寄与する成分であり,第1バインダ成分としては、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、及びジペンタエリスリトールペンタアクリレートが好ましく用いられ、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、及びジペンタエリスリトールペンタアクリレートが特に好ましく用いられている保護体。」
(7)文献9記載事項
折りたたみ中(クリックで表示)
申立人2が,本件特許発明1の進歩性の検討に際して,従たる証拠である甲第2号証として提出した文献9(特開2012-230200号公報)には,以下の事項が記載されている。
ア「【技術分野】
【0001】
本発明は、干渉縞の発生が抑制され、ハードコート層などの透明機能層を有する光学積層体及び干渉縞の抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示(LCD)装置、プラズマディスプレイパネル(PDP)、有機又は無機エレクトロルミネッセンス(EL)ディスプレイ、電子ペーパー、タッチパネル付き表示装置などの光学表示装置に用いられる光学シートや眼鏡レンズは、通常、ガラスやプラスチックの透明基板の上に、反射防止などの光学特性の改良や、耐擦傷性などの表面保護の目的から、ハードコート層などの機能層が形成されている。しかし、機能層を形成すると、厚みのバラツキや透明基板との屈折率差などにより、干渉縞が発生し、表示装置や眼鏡レンズの視認性が低下する。なお、基板フィルムとハードコート層との接着性を改良する目的などのために、易接着層などの中間層を形成する方法がある。しかし、単に接着改善のために極薄の易接着層を形成しても干渉縞の改善には影響しない。そこで、ハードコート層を形成した光学シートや眼鏡レンズにおいて、干渉縞を抑制する方法が検討されている。」
イ「【発明が解決しようとする課題】
【0012】
従って、本発明の目的は、干渉縞の発生を抑制できる光学積層体(積層シート又は積層フィルム)及び干渉縞の抑制方法を提供することにある。」
ウ「【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、基材の上に透明中間層を介して透明機能層が積層された光学積層体において、前記透明機能層の厚み、前記透明中間層の光学厚み、540nm波長近辺の反射率の振幅、及び前記透明機能層の最小厚みが特定の範囲に調整することにより、干渉縞の発生を抑制できることを見出し、本発明を完成した。
【0016】
すなわち、本発明の光学積層体は、基材の上に透明中間層を介して透明機能層が積層された光学積層体において、前記透明機能層の厚み、最小厚み及び屈折率をそれぞれd1(μm),d1m(μm),n1、前記透明中間層の厚み及び屈折率をそれぞれd2(μm),n2、前記基材の屈折率をn3とするとき、下記(1)~(4)の特性を充足する。
(1)透明機能層の厚みが、1μm≦d1≦20μmである
(2)透明中間層の光学厚みn2d2が、440nm≦4n2d2≦640nmである
(3)透過機能層側の反射率の波長分散を干渉の理論式で4n2d2=540nmとして計算された波長540nmにおける反射率の振幅fが1%以下である
(4)透明機能層の最小厚みが、d1m≧(|n1-n3|/0.12)×{(1000-875f)×[4n2d2-(540/1000)]2+(3.6f+1)}を充足する。」
エ「【発明の効果】
【0022】
本発明では、基材の上に透明中間層を介して透明機能層が積層された光学積層体において、前記透明機能層の厚み、前記透明中間層の光学厚み、540nm波長近辺の反射率の振幅、及び前記透明機能層の最小厚みを特定の範囲になるように、前記透明中間層及び前記透明機能層の厚み及び屈折率を調整することにより、干渉縞の発生を有効に抑制できる。例えば、各層は、厚みを均一化するための精密な方法を用いることなく、慣用の方法で成膜することにより、蛍光灯やLEDなどの光源にしても干渉縞を有効に抑制できる。特に、厚みの均一化で干渉縞を抑制するためには、厚みのばらつきを±0.05μm以下の範囲にする必要があるが、本発明によれば、厚みの大きなばらつきがあっても干渉縞発生の強度因子を抑制しているので強い干渉縞が生成しない。そのため、容易に、干渉縞の発生が抑制された光学積層シートを設計できる。」
オ「【0024】
[干渉縞の抑制方法]
本発明では、基材の上に透明中間層を介して透明機能層が積層された光学積層体の干渉縞を抑制するために、前記透明機能層の厚み、最小厚み及び屈折率をそれぞれd1,d1m,n1、前記透明中間層の厚み及び屈折率をそれぞれd2,n2、前記基材の屈折率をn3とするとき、前記特性(1)~(4)、すなわち、前記透明機能層の厚み、前記透明中間層の光学厚み、540nm波長における反射率の振幅、及び前記透明機能層の最小厚みが特定の範囲となるように、前記厚み及び屈折率を調整することを特徴とする。特に、特性(2)~(4)は理論値として求められ、各層の材料の屈折率に応じて厚みを調整することにより、干渉縞が抑制された光学積層体を設計できる。
【0025】
(1)透明機能層の厚み
透明機能層の厚みd1は2~20μmに調整することが必要であり、好ましくは3~20μm、さらに好ましくは4~20μm(特に5~15μm)程度に調整してもよい。透明機能層の厚みが大きすぎると、外観に優れた透明機能層を形成するのが困難となり、小さすぎると、油膜の干渉縞のように干渉縞が不可避的に強くなるため、干渉縞が発生する。
【0026】
(2)透明中間層の光学厚み
透明中間層の厚みは、材質の屈折率に応じて採用する厚みが異なる。すなわち、4n2d2(4×n2×d2)=540nmとすることにより反射率の波長分散の振幅が最も少ない波長を540nmに調整できる。この波長分散の位置は、特に透明機能層の微小な厚みの相異により変化する。このことは、干渉縞を評価するときに用いる3波長管の強い540nmのG線による視覚認識が、透明機能層の微小な厚みの相異により変化することを表す。
【0027】
本発明者らは、これらの透明中間層や透明機能層の変化による波長分散、それにより生じる色差を詳細にシミュレーションし、また実験で確認することにより、干渉縞低減にはこの透明中間層の厚みを精密に設計することが重要であることを見出した。従って、透明中間層の厚みはその屈折率の変化に伴い、4n2d2=540nmとなる近辺に定められる必要がある。
【0028】
その範囲として、透明中間層の光学厚み4n2d2は440~640nmに調整することが必要であり、好ましくは470~610nm、さらに好ましくは500~580nm(特に520~560nm)程度に調整してもよい。透明中間層の光学厚みが大きすぎると、540nmでの反射率の波長分散の振幅が大きくなり、小さすぎると、同様に540nmでの反射率の波長分散の振幅が大きくなるため、強い干渉縞が発生する。
【0029】
すなわち、例えば、前述の透明機能層の厚みが幅数十mm隣り合う位置で透明中間層の光学厚みが大きすぎる(或いは小さすぎる)部分があると、540nm近辺の反射率が変化し、540nmのG線による視覚認識が異なり、干渉縞として観測されることになる。このような現象は、色彩表現的には、後述するように、隣り合う位置でY値の他、X、Z値も異なり、すなわちL*a*b*が異なり、隣り合う位置でΔEが発生し、その大きさが大きいと干渉縞が観測されることを意味する。
【0030】
(3)540nm波長における反射率の振幅
540nm波長における透明機能層側の反射率の振幅fは、波長540nmの前後における反射率の極大値と極小値との差である。なお、540nmの前後における極大値、極小値とは、反射率の波形の極大値及び極小値のうち、540nmの短波長側及び長波長側のいずれかにおいて、最も540nmに近接する極大値及び極小値を意味する。」
カ「【0059】
(f値を求める方法)
f値を具体的に求める方法を図1に示す。図1は、後述する比較例1の反射率の波長分散を例としてf値を算出する方法を示した図であり、比較例1で測定した全波長域の波長分散に対して540nm近辺を拡大した図である。波長540nmより低い波長側の(約537nm)に540nmに最も近い極大値があり、高い側(約543nm)に540nmに最も近い極小値がある。この極大値と極小値の差(%)をf値として算出する。」
キ 図1
ク「【0148】
実施例3
2軸延伸PETフィルム(OPET2)の易接着層が形成されていない面に、透明中間層として、単官能アクリレート100重量部及び開始剤3重量部を、溶剤3000重量部に溶解した溶液をワイヤーバー♯200により乾燥厚みが83.7nmとなるように塗工し、70℃で60秒間乾燥した。乾燥後の組成物に、紫外線照射装置を用いて、照射量800mJ/cm2、5m/分の速度で1回照射し、塗膜を硬化した。得られた硬化塗膜の上に、透明機能層として、単官能アクリレート50重量部及び2官能アクリレート50重量部及び開始剤3重量部を、溶剤67重量部に溶解した溶液をワイヤーバー♯28により乾燥厚みが5μmとなるように塗工し、70℃で60秒間乾燥した。乾燥後の組成物に、紫外線照射装置を用いて、照射量800mJ/cm2、5m/分の速度で3回照射し、塗膜を硬化し、積層体を作製した。」
ケ 表2
上記表2の評価欄の項目「反射率振幅(実測値)」を参照して,実施例3の光学積層体のf値は0.05%であり,評価欄の項目「干渉縞」を参照して,実施例3の光学積層体の干渉縞抑制性能は,「◎:干渉縞が目立たない」であると認められるが,比較例1や比較例3,比較例4などを参照すると,「反射率振幅(実測値)」の値が1%以下であっても,評価欄の項目「干渉縞」の値が「×」であると認められる。
コ 文献9に記載された技術的事項
上記ア及びウより,文献9には,以下の技術的事項が記載されていると認められる。
「タッチパネル付き表示装置などの光学表示装置に用いられる光学シートであって,ハードコート層を形成した光学シートにおいて、干渉縞を抑制する方法であり,基材の上に透明中間層を介して透明機能層が積層された光学積層体において、540nm波長近辺の反射率の振幅などを特定の範囲に調整することにより、干渉縞の発生を抑制でき,光学積層体は、基材の上に透明中間層を介して透明機能層が積層された光学積層体において、前記透明機能層の厚み、最小厚み及び屈折率をそれぞれd1(μm),d1m(μm),n1、前記透明中間層の厚み及び屈折率をそれぞれd2(μm),n2、前記基材の屈折率をn3とするとき、下記(1)~(4)の特性を充足する場合に,(1)透明機能層の厚みが、1μm≦d1≦20μmである(2)透明中間層の光学厚みn2d2が、440nm≦4n2d2≦640nmである(3)透過機能層側の反射率の波長分散を干渉の理論式で4n2d2=540nmとして計算された波長540nmにおける反射率の振幅fが1%以下である(4)透明機能層の最小厚みが、d1m≧(|n1-n3|/0.12)×{(1000-875f)×[4n2d2-(540/1000)]2+(3.6f+1)}を充足する干渉縞を抑制する方法。」
(8)文献10記載事項
折りたたみ中(クリックで表示)
申立人2が,本件特許発明2の進歩性の検討に際して,従たる証拠である甲第4号証として提出した文献10(特表2016-521216号公報)には,以下の事項が記載されている。
ア「【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル電子機器においてカバー基板として有用なポリイミドカバー基板に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、撓曲または屈曲可能な次世代の電子ディスプレイ装置として、フレキシブルOLEDを含むフレキシブル光電素子、軽量ディスプレイ、フレキシブルシーラント、カラーEPD、プラスチックLCD、TSP、OPVなどのフレキシブル電子機器が注目を受けている。このような屈曲または撓曲可能なフレキシブル型のディスプレイを実現するとともに下部素子を保護するためには、既存のガラスカバー基板の代わりをする新しいタイプのフレキシブルカバー基板が必要である。さらに、このような基板は、ディスプレイ装置に含まれる部品を保護するために、高硬度、低透湿性、優れた耐化学性及び光透過度を維持しなければならない。
このようなフレキシブルディスプレイ用カバー基板の素材としては、様々な高硬度のプラスチック基板が候補として検討されている。特に、薄厚でも高硬度の実現が可能な透明ポリイミドフィルムが主要な候補として考えられている。
フレキシブル電子機器用カバー基板の素材として検討されるフィルムは、硬度を向上させるために、従来ではアクリル系またはエポキシ系有機硬化膜を透明フィルムの表面に形成する方法で製造されたが、このような有機硬化膜は、フレキシブルではないため、曲げ特性や耐衝撃性などの評価時に表面が割れるという問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
そこで、本発明は、上述した従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、優れた曲げ特性および耐衝撃性を有し、フレキシブル電子機器用カバー基板として有用な透明ポリイミドカバー基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態は、ポリイミドフィルムと、前記ポリイミドフィルムの少なくとも一面上にウレタンアクリレート化合物から形成された素子保護層とを含むポリイミドカバー基板を提供する。」
イ「【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、透明なポリイミドカバー基板は、優れた曲げ特性および耐衝撃性を有し、耐溶剤性、光学特性、水分透過度および耐スクラッチ性を有する透明ポリイミドカバー基板を提供することができ、このような透明ポリイミドカバー基板は、フレキシブル電子機器のカバー基板として有用に使用することができる。」
ウ「【0029】
本発明に係るポリイミドカバー基板は、素子保護層50、透明電極層40、シリコン酸化物層20、ポリイミドフィルム10、シリコン酸化物層20およびハードコート層30が順次積層されるように構成されてもよい(図1)。」
エ 図1
オ 文献10に記載された技術的事項
上記ア~ウより,文献10には,以下の技術的事項が記載されていると認められる。
「フレキシブル電子機器においてカバー基板として有用なポリイミドカバー基板であって,ポリイミドフィルムと、前記ポリイミドフィルムの少なくとも一面上にウレタンアクリレート化合物から形成された素子保護層とを含むポリイミドカバー基板であり,ポリイミドカバー基板は、素子保護層50、透明電極層40、シリコン酸化物層20、ポリイミドフィルム10、シリコン酸化物層20およびハードコート層30が順次積層されるように構成されており,フレキシブル電子機器のカバー基板として有用に使用することができる透明ポリイミドカバー基板」
(9)文献11記載事項
折りたたみ中(クリックで表示)
申立人2が,本件特許発明2の進歩性の検討に際して,従たる証拠である甲第5号証として提出した文献11(月舘和人『耐熱透明フイルム市場の現状と今後の展開』)には,以下の事項が記載されている。
ア「現在注目されている耐熱透明フイルム市場について,主要用途,各社の動向,市場動向などをレポートする。」(要旨第5~6行)
イ「1.耐熱透明フイルムの主要用途
フレキシブルディスプレイ及びタッチパネル市場において,耐熱性と透明性を兼ね備えた基板が求められている。耐熱性は製造工程での高熱に耐えられるため,また透明性は画面がクリアであるために必要である。この両方の特性を兼ね備えた耐熱透明フイルムの用途としては以下の4つが挙げられる。
(1)タッチパネル用透明導電性基材
(2)フレキシブル回路基板及びその工程紙
(3)フレキシブルティスプレイ用基材
(4)有機EL,LED照明基材」(第1頁,左欄,第1~11行)(当審注:(1)~(4)は,丸内に1~4の代替表記。)
ウ 表-1
上記表記1の「樹脂」列を参照すると,フィルム製造各社(「企業」列に列挙された各社)の耐熱透明フィルムを構成する樹脂として,PI(ポリイミド),アラミド,PES(ポリエーテルスルホン),PS(ポリスチレン),PA(ポリアミド)が示されていることが認められる。
エ 文献11に記載された技術的事項
上記ア~ウより,文献11には,以下の技術的事項が記載されていると認められる。
「耐熱透明フイルムの主要用途には,タッチパネル用透明導電性基材が含まれており,耐熱透明フィルムを構成する樹脂として,PI(ポリイミド),アラミド,PES(ポリエーテルスルホン),PS(ポリスチレン),PA(ポリアミド)が採用されている。」
(10)文献12記載事項
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申立人2が,本件特許発明7の進歩性の検討に際して,従たる証拠である甲第6号証として提出した文献12(国際公開第2015/098495号公報)には,以下の事項が記載されている。
ア「技術分野
[0001] 本発明は、例えば情報表示装置等の製造場面をはじめとする分野で使用可能なハードコートフィルムに関する。
背景技術
[0002] モバイル用コンピュータ、電子手帳、携帯電話等の小型電子端末には、より一層の小型化及び薄型化が求められている。それに伴って、前記小型電子端末に設置される情報表示装置にも小型化及び薄型化が求められている。
[0003] 前記情報表示装置のうち、いわゆるタッチパネル機能が搭載された情報表示装置は、通常、タッチペン等を用いて操作した際に生じうる情報表示部の傷つきや破損等を防止することを目的として、前記情報表示部の上面にハードコートフィルム等を有する場合が多い。
[0004] 前記ハードコートフィルムとしては、例えば、分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート(A)、分子中に2個の(メタ)アクリロイル基を有するウレタン(メタ)アクリレート(B-1)及び/又はエポキシ(メタ)アクリレート(B-2)及び一次粒径が1nm以上200nm以下のコロイダルシリカ(C)を含有するフィルム用の紫外線硬化型ハードコート樹脂組成物を用いて得られるハードコートフィルムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
[0005] しかし、前記タッチペン等による操作が繰り返し行われた場合に、前記情報表示部の凹みや傷つき等を引き起こす場合があった。」
イ「発明が解決しようとする課題
[0007] 本発明が解決しようとする課題は、例えばタッチペン等を用いた操作が繰り返しされた場合であっても、情報表示部の凹み等を引き起こさないレベルの硬度を備え、かつ、耐擦傷性に優れたハードコートフィルムを提供することである。
課題を解決するための手段
[0008] 本発明は、透明基材の少なくとも一方の面に、フィラーを含有する第一のハードコート層(A)と、フッ素原子及びケイ素原子を有する活性エネルギー線硬化性化合物(b1)を含有するハードコート剤(b2)を用いて形成された第二のハードコート層(B)とが順に積層されたものであることを特徴とするハードコートフィルムに関するものである。
発明の効果
[0009] 本発明のハードコートフィルムは、上記構成を有することで、例えばタッチペン等による操作が繰り返しされた場合であっても、情報表示部等の凹み等を引き起こさないレベルの硬度を備え、かつ、優れた耐擦傷性を備えたものであるから、例えばスクリーンパネルや電子端末を構成する情報表示装置の製造に使用することが可能である。
[0010] また、本発明のハードコートフィルムは、優れた滑り性や防汚性を長期間保持できることから、スクリーンパネルや電子端末を構成する情報表示装置の製造に使用することが可能である。」
ウ「[0018] 前記透明基材としては、弾性率が3GPa~7GPaの範囲の基材を使用することが好ましく、3GPa~5GPaの範囲のフィルム基材を使用することがより好ましい。前記範囲の弾性率を備えた透明基材を使用することによって、フィルム基材の変形に起因したハードコート層の割れを抑制でき、かつ、ハードコートフィルムの表面硬度の低下を抑制することができる。また、前記弾性率を備えた基材を使用することによって、良好な柔軟性を確保できるため、本発明のハードコートフィルムを、緩やかな曲面部に貼付することが可能となる。
[0019] [第一のハードコート層(A)]
第一のハードコート層(A)は、前記透明基材の少なくとも一方の面に積層される層であり、フィラーを含有する層である。
[0020] 前記第一のハードコート層(A)は、本発明のハードコートフィルムに高硬度を付与する。
[0021] 前記第一のハードコート層(A)は、5μm~30μmの範囲の厚さであることが好ましく、10μm~25μmの範囲の厚さであることが、より一層高硬度のハードコートフィルムを得るうえでより好ましい。
[0022] 前記第一のハードコート層(A)は、フィラーを含有するハードコート剤(a1)を使用することによって形成することができる。
[0023] 前記ハードコート剤(a1)としては、例えばフィラーと、活性エネルギー線硬化性化合物とを含有するものを使用することができる。
[0024] 前記フィラーとしては、例えばシリカ、ジルコニア、酸化チタン、五酸化アンチモン、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、有機ビーズ等を使用することができる。なかでも、前記フィラーとしては、シリカを使用することが、ハードコートフィルムの硬度をより一層向上させるうえで好ましい。
[0025] 前記シリカとしては、一般に反応性シリカ、非反応性シリカといわれるものを単独または組み合わせ使用することができる。
[0026] 前記反応性シリカとしては、例えばシリカ粒子の表面に(メタ)アクリロイル基等の反応性基を付与したものが挙げられる。」
エ「[0032] 前記ハードコート層(A)の形成に使用可能なハードコート剤(a1)としては、前記フィラーの他に活性エネルギー線硬化性化合物を含有するものを使用することができる。
[0033] 前記活性エネルギー線硬化性化合物としては、例えばウレタン(メタ)アクリレート、前記ウレタン(メタ)アクリレート以外の3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート等を使用することができる。なお、本発明において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートとメタクリレートの一方又は両方をいい、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基とメタクリロイル基の一方または両方をいう。」
オ「[0045] 前記多官能(メタ)アクリレートとしては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリス(2-(メタ)アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等を、単独または2種以上組み合わせ使用することができる。」
カ「[0057] [第二のハードコート層(B)]
前記第二のハードコート層(B)は、本発明のハードコートフィルムを構成する前記第一のハードコート層(A)の表面に積層された層である。
[0057] 前記第二のハードコート層(B)は、本発明のハードコートフィルムに優れた滑り性を付与し、その結果、優れた耐擦傷性を付与する。」
キ「[0082] 前記第二のハードコート層(B)の形成に使用可能なハードコート剤(b2)としては、前記フッ素原子及びケイ素原子を有する活性エネルギー線硬化性化合物(b1)の他に、必要に応じてその他の活性エネルギー線硬化性化合物を使用することができる。
[0083] 前記その他の活性エネルギー線硬化性化合物としては、例えばウレタン(メタ)アクリレート、3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート等を使用することができる。」
ク 文献12に記載された技術的事項
上記ア~キより,文献12には,以下の技術的事項が記載されていると認められる。
「情報表示装置等の製造場面をはじめとする分野で使用可能なハードコートフィルムであって,前記情報表示装置のうち、いわゆるタッチパネル機能が搭載された情報表示装置は、通常、タッチペン等を用いて操作した際に生じうる情報表示部の傷つきや破損等を防止することを目的として、前記情報表示部の上面にハードコートフィルム等を有しており,タッチペン等を用いた操作が繰り返しされた場合であっても、情報表示部の凹み等を引き起こさないレベルの硬度を備え、かつ、耐擦傷性に優れたハードコートフィルムであり,透明基材の少なくとも一方の面に、フィラーを含有する第一のハードコート層(A)と、フッ素原子及びケイ素原子を有する活性エネルギー線硬化性化合物(b1)を含有するハードコート剤(b2)を用いて形成された第二のハードコート層(B)とが順に積層されたものであり,続きを表示(全18行)前記透明基材としては、弾性率が3GPa~7GPaの範囲の基材を使用することが好ましく、前記弾性率を備えた基材を使用することによって、良好な柔軟性を確保できるため、本発明のハードコートフィルムを、緩やかな曲面部に貼付することが可能となり,前記第一のハードコート層(A)は、本発明のハードコートフィルムに高硬度を付与しており,前記第一のハードコート層(A)は、フィラーを含有するハードコート剤(a1)を使用することによって形成することができ,前記ハードコート剤(a1)としては、例えばフィラーと、活性エネルギー線硬化性化合物とを含有しており,前記フィラーとしては、シリカを使用することが、ハードコートフィルムの硬度をより一層向上させるうえで好ましく,前記シリカとしては、一般に反応性シリカといわれるものを使用することができ,前記反応性シリカとしては、例えばシリカ粒子の表面に(メタ)アクリロイル基等の反応性基を付与したものが挙げられ,前記ハードコート層(A)の形成に使用可能なハードコート剤(a1)としては、活性エネルギー線硬化性化合物を含有するものを使用することができ,前記活性エネルギー線硬化性化合物としては、例えばウレタン(メタ)アクリレート、前記ウレタン(メタ)アクリレート以外の3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート等を使用することができ,前記多官能(メタ)アクリレートとしては、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等を、単独または2種以上組み合わせ使用することができ,前記第二のハードコート層(B)は、本発明のハードコートフィルムに優れた滑り性を付与し、その結果、優れた耐擦傷性を付与しており,前記第二のハードコート層(B)の形成に使用可能なハードコート剤(b2)としては、活性エネルギー線硬化性化合物を使用することができ,前記活性エネルギー線硬化性化合物としては、例えばウレタン(メタ)アクリレート、3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート等を使用することができるハードコートフィルム。」
(11)文献13記載事項
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申立人2が,本件特許発明9の進歩性の検討に際して,従たる証拠である甲第7号証として提出した文献13(特表2015-523202号公報)には,以下の事項が記載されている。
ア「【技術分野】
【0001】
本発明は、ハードコーティングフィルムの製造方法に関するものである。より詳細には、高硬度のハードコーティングフィルムを製造する方法に関するものである。」
イ「【背景技術】
【0003】
最近、スマートフォン、タブレットPCのようなモバイル機器の発展に伴い、ディスプレイ用基材の薄膜化およびスリム化が要求されている。このようなモバイル機器のディスプレイ用ウィンドウまたは前面板には、機械的特性に優れた素材としてガラスまたは強化ガラスが一般に使用されている。しかし、ガラスは、自体の重量によるモバイル装置が高重量化される原因となり、外部衝撃による破損の問題がある。
【0004】
そこで、ガラスを代替可能な素材としてプラスチック樹脂が研究されている。プラスチック樹脂フィルムは、軽量でありながらも、壊れる恐れが少なく、より軽いモバイル機器を追求する傾向に適合する。特に、高硬度および耐摩耗性の特性を有するフィルムを達成するために、支持基材にハードコーティング層をコーティングするフィルムが提案されている。
【0005】
ハードコーティング層の表面硬度を向上させる方法として、ハードコーティング層の厚さを増加させる方法が考えられる。ガラスを代替可能な程度の表面硬度を確保するためには、一定のハードコーティング層の厚さを実現する必要がある。しかし、ハードコーティング層の厚さを増加させるほど表面硬度は高くなるが、ハードコーティング層の硬化収縮によってシワやカール(curl)が大きくなると同時に、ハードコーティング層の亀裂や剥離が生じやすくなることから、実用的に適用することは容易でない。
【0006】
近来、ハードコーティングフィルムの高硬度化を実現すると同時に、ハードコーティング層の亀裂や硬化収縮によるカールの課題を解決する方法がいくつか提案されている。
【0007】
韓国公開特許第2010-0041992号(特許文献1)は、モノマーを排除し、紫外線硬化性ポリウレタンアクリレート系オリゴマーを含むバインダー樹脂を用いるハードコーティングフィルム組成物を開示している。しかし、前記開示されたハードコーティングフィルムは、鉛筆硬度が3H程度で、ディスプレイのガラスパネルを代替するには強度が十分でない。」
ウ「【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、高硬度を示しながらも、カールや撓み、またはクラックの発生が少ないハードコーティングフィルムの製造方法を提供する。」
エ「【発明の効果】
【0011】
本発明のハードコーティングフィルムの製造方法によれば、カールの発生を少なくしながら、高硬度のハードコーティングフィルムを容易に製造することができる。
【0012】
本発明の製造方法によって得られたハードコーティングフィルムは、高硬度、耐擦傷性、高透明度を示し、優れた加工性でカールまたはクラックの発生が少なく、モバイル機器、ディスプレイ機器、各種計器盤の前面板、表示部などに有用に適用可能である。」
オ「【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のハードコーティングフィルムの製造方法は、
第1バインダー用単量体、第1無機微粒子、および第1光開始剤を含む第1ハードコーティング組成物を、支持基材の一面に塗布する段階と、
前記第1バインダー用単量体の一部が架橋されるまで、前記第1ハードコーティング組成物が塗布された前記一面に、第1波長を有する紫外線を照射して第1光硬化する段階と、
第2バインダー用単量体、第2無機微粒子、および第2光開始剤を含む第2ハードコーティング組成物を、前記支持基材の他面に塗布する段階と、
第1波長および前記第1波長より長い第2波長を有する紫外線を、前記第2ハードコーティング組成物が塗布された前記他面に照射して第2光硬化する段階とを含む。」
カ「【0059】
一方、本発明のハードコーティングフィルムの製造方法において、前記第1ハードコーティング組成物は、前述した成分のほか、界面活性剤、黄変防止剤、レベリング剤、防汚剤など、本発明の属する技術分野において通常使用される添加剤を追加的に含むことができる。また、その含有量は、本発明にかかる第1ハードコーティング組成物の物性を低下させない範囲内で多様に調節可能なため、特に制限しない。」
キ 文献13に記載された技術的事項
上記ア~カより,文献13には,以下の技術的事項が記載されていると認められる。
「ハードコーティングフィルムの製造方法であって,ハードコーティングフィルムは、高硬度、耐擦傷性、高透明度を示し、優れた加工性でカールまたはクラックの発生が少なく、モバイル機器、ディスプレイ機器、各種計器盤の前面板、表示部などに有用に適用可能であるハードコーティングフィルムの製造方法であって,第1バインダー用単量体、第1無機微粒子、および第1光開始剤を含む第1ハードコーティング組成物を、支持基材の一面に塗布する段階と、前記第1バインダー用単量体の一部が架橋されるまで、前記第1ハードコーティング組成物が塗布された前記一面に、第1波長を有する紫外線を照射して第1光硬化する段階と、第2バインダー用単量体、第2無機微粒子、および第2光開始剤を含む第2ハードコーティング組成物を、前記支持基材の他面に塗布する段階と、第1波長および前記第1波長より長い第2波長を有する紫外線を、前記第2ハードコーティング組成物が塗布された前記他面に照射して第2光硬化する段階とを含んでおり,前記第1ハードコーティング組成物は、防汚剤など、通常使用される添加剤を追加的に含むことができるハードコーティングフィルムの製造方法。」
第5 当審の判断
1 引用発明1に基づく進歩性
申立人1は,引用発明1に基づく進歩性欠如を主張しているので,以下検討する。
(1)本件特許発明1について
ア 対比
(ア)引用発明1は,「タッチパネルにおいて,一般に用いられている,透明基材上に設けられた透明導電層を有する透明導電性積層体であって,」「耐擦傷性および耐久性などを向上させることを目的として,透明ハードコート層が設けられて」いるから,タッチパネルの表面材として用いられるものであるといえる。
(イ)引用発明1において,「透明導電層を有するフィルムを構成する基材フィルムとして」「用いられている」「PETフィルムまたはポリカーボネートフィルム」は,合成樹脂であって,「フィルム強度および透明性が高く」,「ハードコーティングフィルムは,伸長性および耐屈曲性も高いものである」から,引用発明1において,「透明導電層を有するフィルムを構成する基材フィルムとして」「用いられている」「PETフィルムまたはポリカーボネートフィルム」は,耐屈曲性を備えた樹脂基材であるといえる。
(ウ)引用発明1において,「ハードコート層を形成する,ハードコーティング組成物」は,「(A)2またはそれ以上のアクリレート基を有する,フェノールノボラック型アクリレート,および(B)炭素数2または3のアルキレンオキシド構造を分子中に1~2mol有する,芳香族基含有モノまたはポリ(メタ)アクリレート化合物を含んで」いるから,合成樹脂であり,当該ハードコーティング組成物により形成された「ハードコート層」は,樹脂硬化層であるといえる。
(エ)上記(ア)~(ウ)より,本件特許発明1と引用発明1とは,タッチパネルの表面材として用いられ、耐屈曲性を備えた樹脂基材と少なくとも1層の樹脂硬化層とを有するタッチパネル用積層体である点で共通しているといえる。
イ 一致点・相違点
上記アより,本件特許発明1と引用発明1とは,以下(ア)の点で一致し,また,以下(イ)の点で相違しているといえる。
(ア)一致点
タッチパネルの表面材として用いられ,耐屈曲性を備えた樹脂基材と少なくとも1層の樹脂硬化層とを有するタッチパネル用積層体。
(イ)相違点
a 相違点1
本件特許発明1では,「(条件1)3mmの間隔で前記タッチパネル用積層体の全面を180°折り畳む試験を10万回繰り返し行った場合に割れ又は破断が生じない」を充足しているのに対して,引用発明1では,そのような特定がない点。
b 相違点2
本件特許発明1では,「(条件2)波長400nm~700nmの領域における前記タッチパネル用積層体の分光反射率を求め,任意の50nmの範囲における前記分光反射率の標準偏差が0.045未満である」を充足しているのに対して,引用発明1では,そのような特定がない点。
ウ 相違点についての判断
(ア)相違点1について
上記第4の1(1)ケで摘記したように,引用発明1の耐屈曲試験方法は,試料を50mm×50mmに調整し,試料を180°折り曲げた時に,目視にて塗膜・基材にクラックの有無を評価するものであり,条件1のように,「積層体の全面を180°折り畳む試験を10万回繰り返し行」うものではないから,文献1の記載から,引用発明1が「(条件1)3mmの間隔で前記タッチパネル用積層体の全面を180°折り畳む試験を10万回繰り返し行った場合に割れ又は破断が生じない」を充足していると認めることはできない。
また,文献2ないし文献13を参照しても,引用発明1と同様の構成を有する積層体が「(条件1)3mmの間隔で前記タッチパネル用積層体の全面を180°折り畳む試験を10万回繰り返し行った場合に割れ又は破断が生じない」を充足していると認めることはできない。
さらに,文献2ないし文献13の他に,引用発明1と同様の構成を有する積層体が「(条件1)3mmの間隔で前記タッチパネル用積層体の全面を180°折り畳む試験を10万回繰り返し行った場合に割れ又は破断が生じない」を充足していると認めるたる証拠や,技術常識等も見当たらない。
したがって,引用発明1に基づいて,「(条件1)3mmの間隔で前記タッチパネル用積層体の全面を180°折り畳む試験を10万回繰り返し行った場合に割れ又は破断が生じない」を充足するタッチパネル用積層体を想到することはできない。
(イ)作用効果について
本件特許発明1は,「(条件1)3mmの間隔で前記タッチパネル用積層体の全面を180°折り畳む試験を10万回繰り返し行った場合に割れ又は破断が生じない」を充足することにより,「極めて優れた」「耐久折り畳み性能を有するタッチパネル用積層体、該タッチパネル用積層体を用いてなる折り畳み式画像表示装置を提供する」という課題を達成しており,当該条件1を充足すると認められない引用発明1では得られない作用効果を有しているといえる。
(ウ)申立人1の主張について
a 申立人1は,申立書1において,相違点1の容易想到性に関して以下のように主張している。
「折り曲げ条件を変更することは、積層体に対してより高レベルの耐屈曲性を要求する当業者にとって容易に設計できる事項である。例えば、本件特許発明1の条件1および図1に示すように、積層体を180°に折り曲げた状態で、フィルムの一端(上端)を固定し、他端(下端)を左右方向に繰り返し移動させる方法は、IPC屈曲試験であって、IPC(米国電子回路協会)により規格化されている一般的な折り曲げ性能を計測する試験である(例えば、甲第2号証の段落0075)。また、折り曲げ回数が10万回やその間隔(積層体の曲率半径Rの2倍値)が3mmという数値についても、甲第3号証の段落0141に、「(屈曲性測定)自動マンドレル試験機を用いて、半径1、3、5、10、20mmのそれぞれの心棒を支えに10万回屈曲した後、屈曲付近でガスバリア層の破壊がないか光学顕微鏡で観察した。」と記載されていることから、公知またはそれに近い値であり、格別顕著な数値ではない。さらには、10万回や3mmという数値に格別の意義がないことは、本件特許明細書の実施例欄から明らかである。」(申立書1第13頁下から4行~第14頁第10行)
b 以下では,上記aの主張について検討する。
引用発明1の積層体は,「基材フィルムとして」「PETフィルム,ポリカーボネートフィルムなどのフィルム」を用いており,「ハードコート層を形成する,ハードコーティング組成物」として,「(A)2またはそれ以上のアクリレート基を有する,フェノールノボラック型アクリレート,および(B)炭素数2または3のアルキレンオキシド構造を分子中に1~2mol有する,芳香族基含有モノまたはポリ(メタ)アクリレート化合物を含ん」だものであるのに対して,申立人1が甲3号証として提出した文献3の上記第3の3(2)オ~クに摘記した実施例1~11は,いずれも,基板(基材フィルム)として,宇部興産社製(0.125mm厚のポリイミドフィルム)を用い,ハードコート層として,可溶性ポリイミドからなる有機層と酸化ケイ素(SiO2)からなるガスバリア層とを積層したものを用いており,材質の異なる積層体に対する屈曲性測定評価結果を引用発明1の屈曲性評価に援用することはできないから,上記aの主張は採用できない。
なお,文献3の上記第3の3(2)コに摘記した実施例1~11の表1を参照すると,「屈曲性:屈曲回数10万回で破壊限界となるBending radius R(mm)」という記載があり,実施例1~11に対応する「屈曲性」の値は,実施例1~3,5,7,8,10で,3mmであり,実施例4,6,9で5mmであり,実施例11では,10mmである。
ここで,本件特許発明の条件1における「3mmの間隔」(直径3mm)に相当するBending radius(半径)の値は,1.5mmであり,Bending radiusの値が小さいほど屈曲性が高いといえるから,文献3に記載の実施例1~11は,いずれも,本件特許発明1の条件1における「3mmの間隔」を充足していない。
したがって,仮に,引用発明1における積層体の材質・構成を文献3に記載されたものに変更できたとしても,本件特許発明1の条件1は充足しないから,申立人1の上記aの主張は採用できない。
エ 本件特許発明1の進歩性のまとめ
以上のとおりであるから,相違点2の容易想到性について判断するまでもなく,本件特許発明1は,引用発明1,および,文献2~13記載の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件特許発明2~11について
本件特許の請求項2ないし11は,請求項1の記載を引用する形式で記載されたものであって,本件特許発明2ないし11は,本件特許発明1の全発明特定事項を具備し,これにさらに限定を加えたものに該当するところ,上記(1)で述べたとおり,本件特許発明1が,引用発明1,および,文献2~13記載の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない以上,本件特許発明2ないし11についても,同様の理由で,引用発明1,および,文献2~13記載の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)小括
以上から,本件特許発明1ないし11は,いずれも,引用発明1,および,文献2~13記載の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではないから,申立人1の申立ての理由1-1によって,本件特許発明1ないし11についての特許を取り消すことはできない。
2 引用発明2に基づく進歩性
申立人2は,引用発明2に基づく進歩性欠如を主張しているので,以下検討する。
(1)本件特許発明1について
ア 対比
(ア)引用発明2の「ポリマーフィルム60a」は,「抵抗膜式タッチパネル10」の「指やペン等で押圧される側の基板である操作側基板(フィルム)12」に用いられるものであるから,タッチパネルの表面材として用いられるものであるといえる。
(イ)引用発明2の「ポリマーフィルム60a」を繰り返し曲げる試験では,テストフィルム60aを治具63の先端を屈曲点として曲げ伸ばすことにより,テストフィルム60aに機械的なストレスを与え,曲げた状態で一対の電極62,62間の抵抗変化を調べたものであり,ポリマーフィルム60aは,100回の曲げで抵抗変化が全くみられず,10000回の曲げで僅かに抵抗変化がみられるから,「ポリマーフィルム60a」は,耐屈曲性を備えているといえる。また,引用発明2の「ポリマーフィルム60a」は,可撓性を有するPET樹脂を基材45として備えているから,引用発明2の「ポリマーフィルム60a」の基材45は,耐屈曲性を備えた樹脂基材であるといえる。
(ウ)引用発明2の「ポリマーフィルム60a」は,基材45であるPET樹脂45の上面にコーティングされたハードコート層42を備えており,ハードコート層42は,PET樹脂45をハードコート(硬化)する層であるから,樹脂硬化層に相当するといえる。
(エ)上記(ア)~(ウ)より,本件特許発明1と引用発明2とは,タッチパネルの表面材として用いられ、耐屈曲性を備えた樹脂基材と少なくとも1層の樹脂硬化層とを有するタッチパネル用積層体である点で共通しているといえる。
イ 一致点・相違点
上記アより,本件特許発明1と引用発明2とは,以下(ア)の点で一致し,また,以下(イ)の点で相違しているといえる。
(ア)一致点
タッチパネルの表面材として用いられ,耐屈曲性を備えた樹脂基材と少なくとも1層の樹脂硬化層とを有するタッチパネル用積層体。
(イ)相違点
a 相違点1
本件特許発明1では,「(条件1)3mmの間隔で前記タッチパネル用積層体の全面を180°折り畳む試験を10万回繰り返し行った場合に割れ又は破断が生じない」を充足しているのに対して,引用発明2では,そのような特定がない点。
b 相違点2
本件特許発明1では,「(条件2)波長400nm~700nmの領域における前記タッチパネル用積層体の分光反射率を求め,任意の50nmの範囲における前記分光反射率の標準偏差が0.045未満である」」を充足しているのに対して,引用発明2では,そのような特定がない点。
ウ 相違点についての判断
(ア)相違点1について
引用発明2の「ポリマーフィルム60a」を用いた「タッチパネル10は,屈曲に対する耐久性は非常に高く,コーナ半径R1.0mmで曲げを10000回繰り返しても,クラックを生ずることがなく,また,電気抵抗の変化が非常に小さい」とされているものの,「ポリマーフィルム60a」の曲げ試験においては,電気抵抗の変化を測定しているのみであり,コーナ半径R1.0mmで曲げを10000回繰り返した場合のクラックの有無を測定していないから,文献2の記載に基づいて,コーナ半径R1.0mmで曲げを曲げ試験の10000回の10倍に相当する10万回繰り返した場合に,クラック(割れ又は破断)が生じないと認めることはできない。
また,文献1~7および文献9~13を参照しても,引用発明2と同様の構成を有する積層体が「(条件1)3mmの間隔で前記タッチパネル用積層体の全面を180°折り畳む試験を10万回繰り返し行った場合に割れ又は破断が生じない」を充足していると認めることはできない。
さらに,文献1~7および文献9~13の他に,引用発明2と同様の構成を有する積層体が「(条件1)3mmの間隔で前記タッチパネル用積層体の全面を180°折り畳む試験を10万回繰り返し行った場合に割れ又は破断が生じない」を充足していると認めるたる証拠や,技術常識等も見当たらない。
したがって,引用発明2に基づいて,「(条件1)3mmの間隔で前記タッチパネル用積層体の全面を180°折り畳む試験を10万回繰り返し行った場合に割れ又は破断が生じない」を充足するタッチパネル用積層体を想到することはできない。
(イ)作用効果について
本件特許発明1は,「(条件1)3mmの間隔で前記タッチパネル用積層体の全面を180°折り畳む試験を10万回繰り返し行った場合に割れ又は破断が生じない」を充足することにより,「極めて優れた」「耐久折り畳み性能を有するタッチパネル用積層体、該タッチパネル用積層体を用いてなる折り畳み式画像表示装置を提供する」という課題を達成しており,当該条件1を充足すると認められない引用発明2では得られない作用効果を有しているといえる。
(ウ)申立人2の主張について
a 申立人2は,申立書2において,相違点1の容易想到性に関して以下のように主張している。
「ポリマーフィルム60aの耐屈曲性は、折り畳んだときの間隔が2mmであって3mmでない点、及び確認された折り曲げ回数が1万回であって10万回ではない点で、本件発明のタッチパネル用積層体とは相違する。一方で、図9の曲線-△-を参照して、PET基材45は曲げ回数1万回では全く劣化していないことが理解される。曲げ回数1万回における抵抗値の増加(曲線-△-の上昇)度合を考慮すると、ポリマーフィルム60aの屈曲による耐久性は、曲げ回数10万回を超えるレベルになり得ることが予想される。また、屈曲試験では、折り畳んだときの間隔を大きくすると折り曲げ部分に印加される負荷が軽減し、曲げ回数は増加する。本件発明の条件1では、畳んだときの間隔が3mmであり、甲第1号証よりも1.5倍大きくなっている。してみれば、ポリマーフィルム60aの屈曲試験を、仮に3mmの折り曲げ間隔に増大させて行った場合には、クラックが入らない曲げ回数は10万回を超えるレベルになり得ることが予想される。さらに、条件1に規定されている、クラックが入らない曲げ回数が10万回である積層樹脂フィルムは、1万回を示したものよりも耐屈曲性に優れることは自明である。そうすると、本件発明のタッチパネル用積層体が耐久折り畳み性能を有することを目的とした場合に、屈曲性に優れたタッチパネルを目的とする甲第1号証の図6のポリマーフィルム60aについて、その屈曲による耐久性を1万回から10万回に増加させることで、本件発明の条件1、即ち構成要件(B)を充足することは容易である。」(申立書2第16頁第10行~第17頁第2行)
b 以下では,上記aの主張について検討する。
上記第4の2(2)キにおいて摘記したように,文献8の図8は,抵抗値の変化を記載したものであり,クラック(割れ又は破断)の有無を記載したものでないから,クラックの有無の根拠とすることはできない。
また,抵抗値の変化とクラックの有無に,ある程度の相関関係が認められたと仮定しても,屈曲回数を1万回から10万回へと10倍に増加させた場合のクラックの有無を図9に基づいて予測することは適当でない。
したがって,申立人2の上記aの主張は採用できない。
エ 本件特許発明1の進歩性のまとめ
以上のとおりであるから,相違点2の容易想到性について判断するまでもなく,本件特許発明1は,引用発明2,および,文献1~7ならびに文献9~13記載の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件特許発明2~11について
本件特許の請求項2ないし11は,請求項1の記載を引用する形式で記載されたものであって,本件特許発明2ないし11は,本件特許発明1の全発明特定事項を具備し,これにさらに限定を加えたものに該当するところ,上記(1)で述べたとおり,本件特許発明1が,引用発明2,および,文献1~7ならびに文献9~13記載の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない以上,本件特許発明2ないし11についても,同様の理由で,引用発明2,および,文献1~7ならびに文献9~13記載の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3)小括
以上から,本件特許発明1ないし11は,いずれも,引用発明2,および,文献1~7ならびに文献9~13記載の技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものではないから,申立人2の申立ての理由2-1によって,本件特許発明1ないし11についての特許を取り消すことはできない。
3 実施可能要件
申立人1および申立人2は,それぞれ,理由1-2および理由2-2において,本件特許発明1ないし11に係る特許の実施可能要件違反を主張しているので,以下検討する。
(1)本件特許発明1について
ア 実施可能性要件の法規範
特許法第36条第4項は,「前項第三号の発明の詳細な説明の記載は,次の各号に適合するものでなければならない。」と記載され,その第1号において,「経済産業省令で定めるところにより,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易にその実施をすることができる程度に,明確かつ十分に記載しなければならない。」と規定している。同号は,明細書のいわゆる実施可能要件を規定したものであって,物の発明では,物を実施するための具体的な記載が発明の詳細な説明にあるか,そのような記載がない場合には,明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識に基づき,当業者が過度の試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要なく,その物を実施することができる程度にその発明が記載されなければならないと解される。
イ 実施可能要件の検討
以下,上記アの観点に立って,本件特許の明細書及び図面の記載が実施可能要件に適合するか否かについて検討する。
(ア)積層体の構成について
本件特許発明1の積層体の構成に関して,本件特許の明細書には,以下の記載がある。
「【0110】(実施例1)基材フィルムとして、厚さ30μmの上記式(1)で表されるポリイミドフィルムを準備し、該基材フィルムの一方の面上に、下記組成の単官能モノマーの硬化層用組成物aを塗布し、塗膜を形成し、形成した塗膜に対して、70°1分間加熱させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン社製、光源Hバルブ)を用いて、紫外線を空気中にて積算光量が100mJ/cm2になるように照射して塗膜をハーフキュアーさせて厚さ2μmの単官能モノマーの硬化層を形成した。次いで、上記単官能モノマーの硬化層上に、下記組成のハードコート層用組成物1を塗布し、塗膜を形成し、形成した塗膜に対して、70°1分間加熱させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン社製、光源Hバルブ)を用いて、紫外線を空気中にて積算光量が100mJ/cm2になるように照射して塗膜をハーフキュアーさせて厚さ3μmの第一ハードコート層を形成した。続きを表示(全152行)次いで、第一ハードコート層上に、下記組成のハードコート層用組成物Aを塗布し、塗膜を形成した。次いで、形成した塗膜に対して、70°1分間加熱させることにより塗膜中の溶剤を蒸発させ、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムジャパン社製、光源Hバルブ)を用いて、紫外線を酸素濃度が200ppm以下の条件下にて積算光量が200mJ/cm2になるように照射して塗膜を完全硬化させることにより、厚さ2μmの第二ハードコート層を形成し、タッチパネル用積層体を製造した。【0111】(単官能モノマーの硬化層用組成物a)アクリロイルモルホリン(ACMO、興人フィルムケミカルズ社製) 100質量部光重合開始剤(Irg184) 4質量部フッ素系レベリング剤(F568、DIC社製) 0.1質量部(固形換算)溶剤(MIBK) 75質量部溶剤(MEK) 75質量部【0112】(ハードコート層用組成物1)ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(M403、東亜合成社製) 25質量部ジペンタエリスリトールEO変性ヘキサアクリレート(A-DPH-6E、新中村化学社製) 25質量部異型シリカ微粒子(平均粒子径25nm、日揮触媒化成社製) 50質量部(固形換算)光重合開始剤(Irg184) 4質量部フッ素系レベリング剤(F568、DIC社製) 0.2質量部(固形換算)溶剤(MIBK) 150質量部なお、得られた第一ハードコート層のマルテンス硬さは、830MPaであった。【0113】(ハードコート層用組成物A)ウレタンアクリレート(UX5000、日本化薬社製) 25質量部ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(M403、東亜合成社製) 50質量部多官能アクリレートポリマー(アクリット8KX-012C、大成ファインケミカル社製) 25質量部(固形換算)防汚剤(BYKUV3500、ビックケミー社製) 1.5質量部(固形換算)光重合開始剤(Irg184) 4質量部溶剤(MIBK) 150質量部なお、得られた第二ハードコート層のマルテンス硬さは、500MPaであった。【0114】(実施例2)単官能モノマーの硬化層の厚みを5μmとした以外は、実施例1と同様にしてタッチパネル用積層体を製造した。【0115】(実施例3)単官能モノマーの硬化層の厚みを8μmとした以外は、実施例1と同様にしてタッチパネル用積層体を製造した。【0116】(実施例4)単官能モノマーの硬化層の厚みを1μmとした以外は、実施例1と同様にしてタッチパネル用積層体を製造した。【0117】(実施例5)単官能モノマーの硬化層の厚みを0.5μmとした以外は、実施例1と同様にしてタッチパネル用積層体を製造した。【0118】(実施例6)第二ハードコート層の厚みを4μmとした以外は、実施例1と同様にしてタッチパネル用積層体を製造した。【0119】(実施例7)第一ハードコート層の厚みを5μmとした以外は、実施例1と同様にしてタッチパネル用積層体を製造した。【0120】(実施例8)第二ハードコート層の厚みを0.75μmとした以外は、実施例1と同様にしてタッチパネル用積層体を製造した。【0121】(実施例9)第一ハードコート層の厚みを2μmとした以外は、実施例1と同様にしてタッチパネル用積層体を製造した。【0122】(実施例10)ハードコート層用組成物1に代えて下記組成のハードコート層用組成物2を用い、ハードコート層用組成物Aに代えて下記組成のハードコート層用組成物Bを用いた以外は、実施例1と同様にして第一ハードコート層及び第二ハードコート層を形成し、タッチパネル用積層体を製造した。【0123】(ハードコート層用組成物2)ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(M403、東亜合成社製) 25質量部6官能アクリレート(MF001、第一工業製薬社製) 25質量部異型シリカ微粒子(平均粒子径25nm、日揮触媒化成社製) 50質量部(固形換算)フッ素系レベリング剤(F568、DIC社製) 0.2重量部(固形換算)光重合開始剤(Irg184) 4重量部溶剤(MIBK) 150質量部なお、得られた第一ハードコート層のマルテンス硬さは、890MPaであった。【0124】(ハードコート層用組成物B)ウレタンアクリレート(UX5000、日本化薬社製) 50質量部ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(M403、東亜合成社製) 50質量部防汚剤(BYKUV3500、ビックケミー社製) 1.5質量部(固形換算)光重合開始剤(Irg184) 4重量部溶剤(MIBK) 150質量部なお、得られた第二ハードコート層のマルテンス硬さは、600MPaであった。【0125】(実施例11)ハードコート層用組成物1に代えて下記組成のハードコート層用組成物3を用い、ハードコート層用組成物Aに代えて下記組成のハードコート層用組成物Cを用いた以外は、実施例1と同様にして第一ハードコート層及び第二ハードコート層を形成し、タッチパネル用積層体を製造した。【0126】(ハードコート層用組成物3)ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(M403、東亜合成社製) 35質量部ジペンタエリスリトールEO変性ヘキサアクリレート(A-DPH-6E、新中村化学社製) 35質量部異型シリカ微粒子(平均粒子径25nm、日揮触媒化成社製) 30質量部(固形換算)光重合開始剤(Irg184) 4重量部フッ素系レベリング剤(F568、DIC社製) 0.2重量部(固形換算)溶剤(MIBK) 150質量部なお、得られた第一ハードコート層のマルテンス硬さは、620MPaであった。【0127】(ハードコート層用組成物C)ウレタンアクリレート(KRM8452、ダイセル・オルネクス社製) 100質量部防汚剤(TEGO-RAD2600、エボニックジャパン社製)1.5質量部(固形換算)溶剤(MIBK) 150質量部なお、得られた第二ハードコート層のマルテンス硬さは、420MPaであった。【0128】(実施例12)ハードコート層用組成物1に代えて下記組成のハードコート層用組成物4を用い、ハードコート層用組成物Aに代えて下記組成のハードコート層用組成物Dを用いた以外は、実施例1と同様にして第一ハードコート層及び第二ハードコート層を形成し、タッチパネル用積層体を製造した。【0129】(ハードコート層用組成物4)ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(M403、東亜合成社製) 25質量部6官能アクリレート(MF001、第一工業製薬社製) 10質量部多官能アクリレートポリマー(PVEEA、AX-4-HC、日本触媒社製)15質量部(固形換算)光重合開始剤(Irg184) 4重量部異型シリカ微粒子(平均粒子径25nm、日揮触媒化成社製) 50質量部(固形換算)フッ素系レベリング剤(F568、DIC社製) 0.2重量部(固形換算)溶剤(MIBK) 150質量部なお、得られた第一ハードコート層のマルテンス硬さは、800MPaであった。【0130】(ハードコート層用組成物D)ウレタンアクリレート(UV7600B、日本合成化学社製) 50質量部ペンタエリスリトールトリアクリレート(M306、東亜合成社製) 50質量部防汚剤(X71-1203M)(信越化学社製) 0.5質量部(固形換算)光重合開始剤(Irg184) 4重量部溶剤(MIBK) 150質量部なお、得られた第二ハードコート層のマルテンス硬さは、600MPaであった。【0131】(実施例13)ハードコート層用組成物1に代えて下記組成のハードコート層用組成物5を用い、ハードコート層用組成物Aに代えて下記組成のハードコート層用組成物Eを用いた以外は、実施例1と同様にして第一ハードコート層及び第二ハードコート層を形成し、タッチパネル用積層体を製造した。【0132】(ハードコート層用組成物5)ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(M403、東亜合成社製) 25質量部ジペンタエリスリトールEO変性ヘキサアクリレート(A-DPH-6E、新中村化学社製) 25質量部中実シリカ微粒子(平均粒子径12nm、MIBKSD、日産化学社製)50質量部(固形換算)フッ素系レベリング剤(F568、DIC社製) 0.2重量部(固形換算)光重合開始剤(Irg184) 4重量部溶剤(MIBK) 150質量部なお、得られた第一ハードコート層のマルテンス硬さは、730MPaであった。また、中実シリカ微粒子とは、球状の中実シリカ微粒子であった。【0133】(ハードコート層用組成物E)ウレタンアクリレート(UV7600B、日本合成社製) 45質量部ペンタエリスリトールトリアクリレート(M306、東亜合成社製) 45質量部中実シリカ微粒子(平均粒子径12nm、MIBKSD、日産化学社製) 10質量部防汚剤(オプツールDAC、ダイキン工業社製) 0.5質量部(固形換算)光重合開始剤(Irg184) 4重量部溶剤(MIBK) 150質量部なお、得られた第二ハードコート層のマルテンス硬さは、500MPaであった。【0134】(実施例14)第一ハードコート層の厚みを5μmとし、第二ハードコート層の厚みを4μmとした以外は、実施例1と同様にしてタッチパネル用積層体を製造した。」
上記記載では,素材の製造メーカ名や製品型番等についても具体的に記されているから,タッチパネル用積層体製造工程の技術常識を備えた当業者であれば,上記記載に基づいて,本件特許発明1の「樹脂基材と少なくとも1層の樹脂硬化層とを有するタッチパネル用積層体」を製造することができると認められる。
(イ)(条件1)について
本件特許発明1の(条件1)に関して,本件特許の明細書には,以下の記載がある。
「【0042】上記(条件1)は、本発明のタッチパネル用積層体が耐久折り畳み性能を有することを示す条件である。図1は、上記(条件1)に示す、3mmの間隔で本発明のタッチパネル用積層体の全面を180°折り畳み試験(以下、耐久折り畳み試験とも言う)を模式的に示す断面図である。図1(a)に示したように、上記耐久折り畳み試験においては、まず、本発明のタッチパネル用積層体10の一の辺と、該一の辺に対向する他の辺とを、平行に配置された上固定部11と下固定部12とにそれぞれ固定する。なお、本発明のタッチパネル用積層体は、任意の形状であってよいが、上記耐久折り畳み試験における本発明のタッチパネル用積層体10は、矩形であることが好ましい。続きを表示(全12行)また、図1に示したように、上固定部11は固定されており、下固定部12は上固定部11との平行を維持したまま左右に移動可能なっている。本発明では、上固定部11と下固定部12との間隔は3mmである。【0043】次に、図1(b)に示したように、下固定部12を左方に移動させることで、試験片10の屈曲部位を下固定部12に固定された他の辺付近まで移動させ、更に、図1(c)に示したように、下固定部12を右方に移動させることで、試験片10の屈曲部位を上固定部11に固定された一の辺付近まで移動させる。図1(a)~(c)に示したように下固定部12を移動させることで、本発明のタッチパネル用積層体の全面を180°折り畳むことができる。上記(条件1)では、上述した図1(a)~(c)で表される折り畳み試験を、タッチパネル用積層体10で10万回行った場合に該試験片に割れ又は破断が生じないことを示している。10万回以内に本発明のタッチパネル用積層体10に割れ又は破断が生じると、本発明のタッチパネル用積層体の耐久折り畳み性能が不充分となる。本発明では、上記耐久折り畳み試験を本発明のタッチパネル用積層体10で15万回行った場合に割れ又は破断が生じないことが好ましい。また、本発明のタッチパネル用積層体10は、上記耐久折り畳み試験を片面に対して行った場合に、割れ又は破断が生じないものであってもよいが、上記耐久折り畳み試験を両面に対して行った場合に、割れ又は破断が生じないことが好ましい。なお、本発明では、上述した本発明のタッチパネル用積層体10を90°回転させて同様の耐久折り畳み試験を行っても、同様に割れ又は破断が生じないものである。」
上記記載によれば,本件特許発明1の(条件1)は,タッチパネル用積層体が耐久折り畳み性能を有することを示す条件であり,条件1を充足するための耐久折り畳み試験の内容も記載されているから,当業者は,当該記載に基づいて,タッチパネル用積層体が耐久折り畳み性能を有することを当該耐久折り畳み試験に基づいて評価し,本件特許明細書の表2に記載されているように,条件1を充足することを確認できると認められる。
(ウ)(条件2)について
本件特許発明1の(条件2)に関して,本件特許の明細書には,以下の記載がある。
「【0044】上記(条件2)は、本発明のタッチパネル用積層体が干渉縞防止性能を有することを示す条件である。上記(条件2)の分光反射率の標準偏差は、以下の手順により求めることができる。まず、分光光度計を用いて、5度反射測定法により、本発明のタッチパネル用積層体の波長380nm~780nmの範囲の反射率を測定する。具体的には、本発明のタッチパネル用積層体の樹脂硬化層を形成した側の面に対して、入射角度5度の光を照射し、本発明のタッチパネル用積層体で反射された正反射方向の反射光を受光して、波長380nm~780nmの範囲の反射率を測定する。続きを表示(全12行)次いで、上記測定データの波長400~700nmの範囲について、2次多項式により近似値を求める。最後に、任意の50nmの範囲について、測定値と2次多項式による近似値との差から標準偏差を算出する。なお、本発明では、分光光度計(MPC3100、島津製作所社製)により測定された分光反射率を用いた。【0045】本発明のタッチパネル用積層体は、波長400nm~700nmの可視光領域において、任意の50nmの範囲における上記分光反射率の標準偏差が0.045未満である。すなわち、本発明のタッチパネル用積層体は、波長400~700nmの範囲のうち、最も標準偏差が大きい50nmの範囲における標準偏差が、0.045未満である。上記(条件2)を満たす本発明のタッチパネル用積層体は、極めて優れた干渉縞防止性能を有しており、折り畳み式画像表示装置やタッチパネルに用いたとしても、折り畳み部に干渉縞が生じず、また、折り畳むことによって生じる動く干渉縞も観察されない。本発明のタッチパネル用積層体は、波長400nm~700nmの可視光領域において、任意の50nmの範囲における上記分光反射率の標準偏差が0.035未満であることが好ましく、0.025未満であることがより好ましい。」
上記記載から,本件特許発明1の(条件2)は,タッチパネル用積層体が干渉縞防止性能を有することを示す条件であり,分光反射率の標準偏差を求める手順も具体的に記載されているといえるから,当業者は,分光反射率の標準偏差を求める当該手順に従って,タッチパネル用積層体の分光反射率の標準偏差を求めて,本件特許明細書の表2に記載されているように,条件2の充足性を評価できると認められる。
(エ) 以上(ア)~(ウ)より,本件特許発明1についての特許は,実施可能要件を満たしているといえる。
(2)本件特許発明2ないし11について
ア 本件特許発明2について
本件特許発明2の「樹脂基材は、ポリイミドフィルム又はアラミドフィルムである」点について,本件特許明細書の段落0035に「ポリイミドフィルム又はアラミドフィルムは、市販のものを用いても良い。上記ポリイミドフィルムの市販品としては、例えば、三菱ガス化学社製のネオプリム等が挙げられ、上記アラミドフィルムの市販品としては、例えば、東レ社製のミクトロン等が挙げられる。」等の記載があり,当業者は,当該記載に基づいて,市販品を調達するなどして,本件特許発明2についての特許を実施可能であるといえる。
イ 本件特許発明3について
本件特許発明3の「樹脂基材の厚みが10~55μmである」点について,当業者は,当該範囲の厚みを有する市販品の樹脂基材を調達するなどして,本件特許発明3についての特許を実施可能であるといえる。
ウ 本件特許発明4について
本件特許発明4の「単官能モノマーの硬化層」に関して,本件特許明細書には,以下の記載がある。
「【0048】上記単官能モノマーの硬化層に用いる単官能モノマーとしては、例えば、電離放射線硬化型樹脂が挙げられ、なかでも、単官能アクリルモノマーが好適に用いられる。上記単官能アクリルモノマーとしては、アクリロイルモルホリン、N-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド、シクロヘキシルアクリレート、テトラヒドロフリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、及び、アダマンチルアクリレートからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、なかでも、耐溶剤性に優れるポリイミドフィルム等を樹脂基材として用いた場合であっても、該フィルムを好適に溶解させることができ、極めて優れた干渉縞防止性能を付与できることから、アクリロイルモルホリンであることが好ましい。【0049】上記単官能モノマーの硬化層は、例えば、上述した単官能モノマーと溶剤とを含有する単官能モノマーの硬化層用組成物を、上記屈曲性を備えた樹脂基材の面上に塗布し、形成した塗膜を乾燥後硬化させることで形成することができる。」
上記記載に基づいて,当業者は,「単官能モノマーの硬化層」を形成できるから,当業者は,本件特許発明4についての特許を実施可能であるといえる。
エ 本件特許発明5について
本件特許発明5の「単官能モノマーの硬化層を、耐屈曲性を備えた樹脂基材の樹脂硬化層側に有する」点に関して,上記ウで摘記した本件特許明細書の段落0048および0049の記載に基づいて,「単官能モノマーの硬化層を、耐屈曲性を備えた樹脂基材の樹脂硬化層側に有する」構成とできるから,当業者は,本件特許発明5についての特許を実施可能であるといえる。
オ 本件特許発明6について
本件特許発明6の「樹脂硬化層は、耐屈曲性を備えた樹脂基材側に設けられた第一ハードコート層と、前記第一ハードコート層の前記耐屈曲性を備えた樹脂基材側と反対側面上に設けられた第二ハードコート層とを有する」点に関して,上記(1)イ(ア)で摘記した本件特許明細書の段落0110の記載に基づいて,「樹脂硬化層は、耐屈曲性を備えた樹脂基材側に設けられた第一ハードコート層と、前記第一ハードコート層の前記耐屈曲性を備えた樹脂基材側と反対側面上に設けられた第二ハードコート層とを有する」構成とできるから,当業者は,本件特許発明6についての特許を実施可能であるといえる。
カ 本件特許発明7について
本件特許発明7の「第二ハードコート層は、樹脂成分として多官能(メタ)アクリレートモノマーの硬化物を含有し、第一ハードコート層は、樹脂成分として多官能(メタ)アクリレートの硬化物を含有するとともに、前記樹脂成分中に分散されたシリカ微粒子とを含有する」点に関して,上記(1)イ(ア)で摘記した本件特許明細書の段落0122~0124の実施例10に関する記載に基づいて,「第二ハードコート層は、樹脂成分として多官能(メタ)アクリレートモノマーの硬化物を含有し、第一ハードコート層は、樹脂成分として多官能(メタ)アクリレートの硬化物を含有するとともに、前記樹脂成分中に分散されたシリカ微粒子とを含有する」構成とできるから,当業者は,本件特許発明7についての特許を実施可能であるといえる。
キ 本件特許発明8について
本件特許発明8の「シリカ微粒子は、反応性シリカ微粒子である」点に関して,本件特許明細書には以下の記載がある。
「【0055】上記シリカ微粒子としては、反応性シリカ微粒子であることが好ましい。上記反応性シリカ微粒子は、上記多官能(メタ)アクリレートとの間で架橋構造を構成することが可能なシリカ微粒子であり、該反応性シリカ微粒子を含有することで、上記第一ハードコート層の硬度を充分に高めることができる。【0056】上記反応性シリカ微粒子は、その表面に反応性官能基を有することが好ましく、該反応性官能基としては、例えば、重合性不飽和基が好適に用いられ、より好ましくは光硬化性不飽和基であり、特に好ましくは電離放射線硬化性不飽和基である。上記反応性官能基の具体例としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合及びエポキシ基等が挙げられる。【0057】上記反応性シリカ微粒子としては特に限定されず、従来公知のものを用いることができ、例えば、特開2008-165040号公報記載の反応性シリカ微粒子等が挙げられる。また、上記反応性シリカ微粒子の市販品としては、例えば、日産化学工業社製;MIBK-SD、MIBK-SDMS、MIBK-SDL、MIBK-SDZL、日揮触媒化成社製;V8802、V8803等が挙げられる。」
上記記載に基づいて,当業者は,例示された市販品の反応性シリカ微粒子を調達することなどにより,「シリカ微粒子は、反応性シリカ微粒子である」構成とすることができるから,当業者は,本件特許発明8についての特許を実施可能であるといえる。
ク 本件特許発明9について
本件特許発明9の「防汚性能を更に有する」点に関して,本件特許明細書には以下の記載がある。
「【0076】また、本発明のタッチパネル用積層体は、防汚性能を更に有することが好ましい。このような防汚性は、例えば、上記ハードコート層に防汚剤を含有させることで得ることができる。上記防汚剤を含有するハードコート層は、表面の水に対する接触角が100°以上であることが好ましく、製造直後の本発明のタッチパネル用積層体においては、上記ハードコート層の表面の水に対する接触角は105°以上であることがより好ましく、#0000番のスチールウールで1kg/cm2の荷重をかけながら、上記ハードコート層の表面を3500回往復摩擦させる耐スチールウール試験を行った後のハードコート層の表面の水に対する接触角は90°以上であることが好ましく、103°以上であることがより好ましい。【0077】続きを表示(全18行)上記防汚剤は、上記ハードコート層の最表面側に偏在して含まれていることが好ましい。上記ハードコート層に均一に防汚剤が含有されている場合、充分な防汚性能を付与するために添加量を増やす必要があり、ハードコート層の膜強度の低下につながる恐れがある。なお、上記ハードコート層が上述した第一ハードコート層及び第二ハードコート層を有する場合、上記防汚剤は、最表面側に配置される第二ハードコート層の最表面側に偏在して含まれていることが好ましい。上記防汚剤をハードコート層の最表面側に偏在させる方法としては、例えば、該ハードコート層を形成時において、後述するハードコート層用組成物を用いて形成した塗膜を乾燥させ、硬化させる前に、上記塗膜に熱をかけて該塗膜に含まれる樹脂成分の粘度を下げることにより流動性を上げ、上記防汚剤を最表面側に偏在させる方法や、表面張力の低い防汚剤を選定して用い、上記塗膜の乾燥時に熱をかけずに該塗膜の表面に上記防汚剤を浮かせ、その後塗膜を硬化させることで、上記防汚剤を最表面側に偏在させる方法等が挙げられる。【0078】上記防汚剤としては特に限定されず、例えば、含シリコーン系防汚剤、含フッ素系防汚剤、含シリコーン系かつ含フッ素系防汚剤が挙げられ、それぞれ単独で使用してもよく、混合して使用してもよい。また、上記防汚剤としては、アクリル系防汚剤であってもよい。上記防汚剤の含有量としては、上述した樹脂材料100質量部に対して、0.01~3.0重量部であることが好ましい。0.01重量部未満であると、ハードコート層に充分な防汚性を付与できないことがあり、また、滑り性が悪いため、耐スチールウール試験でも傷が生じることがある。一方、3.0重量部を超えると、ハードコート層の硬度が低下する恐れがあり、また、防汚剤自身が玉状(ミセル状)態になり、ハードコート層の樹脂成分と防汚剤とが、微細に相分離(海島状態)してしまうことがあり、白くなるおそれがある。また、上記防汚剤は、重量平均分子量が2万以下であることが好ましく、防汚性能の耐久性を改善するために、反応性官能基を好ましくは1以上、より好ましくは2以上有する化合物である。なかでも、2以上の反応性官能基を有する防汚剤を用いることにより、優れた耐擦傷性を付与することができる。なお、上記防汚剤が反応性官能基を有さない場合、本発明のタッチパネル用積層体がロール状の場合でも、シート状の場合でも、重ねたときに裏面に防汚剤が転移してしまい、該裏面に他の部材を貼ったり、塗ったりしようとすると、該他の部材の剥がれ発生することがあり、更に、複数回の折り畳み試験を行うことで容易に剥がれる場合がある。なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算により求めることができる。【0079】更に、上記反応性官能基を有する防汚剤は、防汚性の性能持続性(耐久性)が良好となり、なかでも、上述した含フッ素系防汚剤を含むハードコート層は、指紋が付きにくく(目立ちにくく)、拭き取り性も良好である。更に、上記ハードコート層形成用組成物の塗工時の表面張力を下げることができるので、レベリング性がよく、形成するハードコート層の外観が良好なものとなる。また、上記含シリコーン系防汚剤を含むハードコート層は、滑り性がよく、耐スチールウール性が良好である。このような含シリコーン系防汚剤をハードコート層に含む本発明のタッチパネル用積層体を搭載したタッチパネルは、指やペンなどで接触したときの滑りがよくなるため、触感がよくなる。また、上記ハードコート層に指紋も付きにくく(目立ちにくく)、拭き取り性も良好となる。更に、上記ハードコート層を形成する際の組成物(ハードコート層用組成物)の塗工時の表面張力を下げることができるので、レベリング性がよく、形成するハードコート層の外観が良好なものとなる。また、上記反応性官能基を有する防汚剤としては、市販品として入手可能であり、上記以外の市販品としては、例えば、含シリコーン系防汚剤としては、例えば、SUA1900L10(新中村化学社製)、SUA1900L6(新中村化学社製)、Ebecryl1360(ダイセルサイテック社製)、UT3971(日本合成社製)、BYKUV3500(ビックケミー社製)、BYKUV3510(ビックケミー社製)、BYKUV3570(ビックケミー社製)、X22-164E、X22-174BX、X22-2426、KBM503.KBM5103(信越化学社製)、TEGO-RAD2250、TEGO-RAD2300.TEGO-RAD2200N、TEGO-RAD2010、TEGO-RAD2500、TEGO-RAD2600、TEGO-RAD2700(エボニックジャパン社製)、メガファックRS854(DIC社製)等が挙げられる。含フッ素系防汚剤としては、例えば、オプツールDAC、オプツールDSX(ダイキン工業社製)、メガファックRS71、メガファックRS74(DIC社製)、LINC152EPA、LINC151EPA、LINC182UA(共栄社化学社製)、フタージェント650A、フタージェント601AD、フタージェント602等が挙げられる。また、含フッ素系かつ含シリコーン系で反応性官能基を有する防汚剤としては、例えば、メガファックRS851、メガファックRS852、メガファックRS853、メガファックRS854(DIC社製)、オプスターTU2225、オプスターTU2224(JSR社製)、X71-1203M(信越化学社製)等が挙げられる。」
上記記載に基づいて,当業者は,例示された市販品の防汚剤を調達してハードコート層に配合することなどにより,「防汚性能を更に有する」構成とすることができるから,当業者は,本件特許発明9についての特許を実施可能であるといえる。
ケ 本件特許発明10について
本件特許発10の「導電性層を更に有する」点に関して,本件特許明細書には以下の記載がある。
「【0094】本発明のタッチパネル用積層体は、導電性層を更に有することが好ましい。上記導電性層としては、例えば、導電剤として導電性繊維状フィラーを含むことが好ましい。【0095】続きを表示(全32行)上記導電性繊維状フィラーは、繊維径が200nm以下であり、繊維長が1μm以上であることが好ましい。上記繊維径が200nmを超えると、製造する導電性層のヘイズ値が高くなったり光透過性能が不充分となったりすることがある。上記導電性繊維状フィラーの繊維径の好ましい下限は導電性層の導電性の観点から10nmであり、上記繊維径のより好ましい範囲は10~180nmである。また、上記導電性繊維状フィラーの繊維長が1μm未満であると、充分な導電性能を有する導電性層を形成できないことがあり、凝集が発生してヘイズ値の上昇や光透過性能の低下を招く恐れがあることから、上記繊維長の好ましい上限は500μmであり、上記繊維長のより好ましい範囲は3~300μmであり、更に好ましい範囲は10~30μmである。なお、上記導電性繊維状フィラーの繊維径、繊維長は、例えば、SEM、STEM、TEM等の電子顕微鏡を用い、1000~50万倍にて上記導電性繊維状フィラーの繊維径及び繊維長を測定した10カ所の平均値として求めることができる。【0096】上記導電性繊維状フィラーとしては、例えば、導電性炭素繊維、金属繊維及び金属被覆合成繊維からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。上記導電性炭素繊維としては、例えば、気相成長法炭素繊維(VGCF)、カーボンナノチューブ、ワイヤーカップ、ワイヤーウォール等が挙げられる。これらの導電性炭素繊維は、1種又は2種以上を使用することができる。【0097】上記金属繊維としては、例えば、ステンレススチール、鉄、金、銀、アルミニウム、ニッケル、チタン等を細く、長く伸ばす伸線法、又は、切削法により作製された繊維が使用できる。このような金属繊維は、1種又は2種以上を使用することができる。これらの金属繊維の中でも、導電性に優れることから、銀を用いた金属繊維が好ましい。【0098】上記金属被覆合成繊維としては、例えば、アクリル繊維に金、銀、アルミニウム、ニッケル、チタン等をコーティングした繊維等が挙げられる。このような金属被覆合成繊維は、1種又は2種以上を使用することができる。これらの金属被覆合成繊維の中でも、導電性に優れることから、銀を用いた金属被覆合成繊維が好ましい。【0099】上記導電性層における導電性繊維状フィラーの含有量としては、例えば、導電性層を構成する樹脂成分100質量部に対して20~3000質量部であることが好ましい。20質量部未満であると、充分な導電性能を有する導電性層を形成できないことがあり、3000質量部を超えると、本発明の導電性積層体のヘイズが高くなったり光透過性能が不充分となったりすることがある。また、導電性繊維状フィラーの接点にバインダー樹脂が入る量が多くなることで導電性層の導通が悪化し、本発明の導電性積層体に目標の抵抗値を得られないことがある。上記導電性繊維状フィラーの含有量のより好ましい下限は50質量部、より好ましい上限は1000質量部である。なお、上記導電性層の樹脂成分としては特に限定されず従来公知の材料が挙げられる。【0100】また、上記導電性繊維状フィラー以外のその他の導電剤としては、例えば、第4級アンモニウム塩、ピリジニウム塩、第1~第3アミノ基等のカチオン性基を有する各種のカチオン性化合物、スルホン酸塩基、硫酸エステル塩基、リン酸エステル塩基、ホスホン酸塩基などのアニオン性基を有するアニオン性化合物、アミノ酸系、アミノ硫酸エステル系などの両性化合物、アミノアルコール系、グリセリン系、ポリエチレングリコール系などのノニオン性化合物、スズ及びチタンのアルコキシドのような有機金属化合物並びにそれらのアセチルアセトナート塩のような金属キレート化合物等、更に、上記に列記した化合物を高分子量化した化合物、更に、第3級アミノ基、第4級アンモニウム基、又は、金属キレート部を有し、かつ、電離放射線により重合可能なモノマー又はオリゴマー、或いは電離放射線により重合可能な重合可能な官能基を有し、かつ、カップリング剤のような有機金属化合物等の重合性化合物等が挙げられる。上記その他の導電剤の含有量としては、上記導電性層を構成する樹脂成分100質量部に対して、1~50質量部であることが好ましい。1質量部未満であると、充分な導電性能を有する導電性層を形成できないことがあり、50質量部を超えると、本発明の導電性積層体のヘイズが高くなったり光透過性能が不充分となったりすることがある。【0101】更に、上記導電剤としては、例えば、導電性微粒子も用いることができる。上記導電性微粒子の具体例としては、金属酸化物からなるものを挙げることができる。そのような金属酸化物としては、例えば、ZnO(屈折率1.90、以下、カッコ内の数値は屈折率を表す。)、CeO2(1.95)、Sb2O3(1.71)、SnO2(1.997)、ITOと略して呼ばれることの多い酸化インジウム錫(1.95)、In2O3(2.00)、Al2O3(1.63)、アンチモンドープ酸化錫(略称;ATO、2.0)、アルミニウムドープ酸化亜鉛(略称;AZO、2.0)等を挙げることができる。上記導電性微粒子の平均粒径は、0.1nm~0.1μmであることが好ましい。かかる範囲内であることにより、上記導電性微粒子を導電性層を構成する樹脂成分の原料中に分散した際、ヘイズがほとんどなく、全光線透過率が良好な高透明な膜を形成可能な組成物が得られる。上記導電性微粒子の含有量としては、上記導電性層を構成する樹脂成分100質量部に対して、10~400質量部であることが好ましい。10質量部未満であると、充分な導電性能を有する導電性層を形成できないことがあり、400質量部を超えると、本発明の導電性積層体のヘイズが高くなったり光透過性能が不充分となったりすることがある。【0102】上記導電剤としては、例えば、芳香族共役系のポリ(パラフェニレン)、複素環式共役系のポリピロール、ポリチオフェン、脂肪族共役系のポリアセチレン、含ヘテロ原子共役系のポリアニリン、混合型共役系のポリ(フェニレンビニレン)、分子中に複数の共役鎖を持つ共役系である複鎖型共役系、前述の共役高分子鎖を飽和高分子にグラフト又はブロック共重した高分子である導電性複合体等の高分子量化導電剤を用いることもできる。【0103】上記導電性層は、屈折率調整粒子を含んでいてもよい。上記屈折率調整粒子としては、例えば、高屈折率微粒子や低屈折率微粒子等が挙げられる。上記高屈折率微粒子としては特に限定されず、例えば、芳香族系ポリイミド樹脂や、エポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂(アクリレート、メタクリレート化合物)、ポリエステル樹脂及びウレタン樹脂等の樹脂材料に芳香環や硫黄原子や臭素原子を含有させた屈折率の高い樹脂並びにその前駆体等の屈折率の高い材料からなる微粒子、又は、金属酸化物微粒子や金属アルコキシド微粒子等が挙げられる。上記低屈折率微粒子としては特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリエステル樹脂及びウレタン樹脂等の樹脂材料にフッ素原子を含有させた屈折率の低い樹脂並びにその前駆体等の屈折率の低い材料からなる微粒子、又は、フッ化マグネシウム微粒子、中空や多孔質状の微粒子(有機系、無機系)等が挙げられる。」
上記記載で例示された導電材を用いて導電性層を形成することにより,当業者は,「導電性層を更に有する」構成とすることができるから,本件特許発明10についての特許を実施可能であるといえる。
コ 本件特許発明11について
本件特許発明11の「タッチパネル用積層体を用いてなることを特徴とする折り畳み式画像表示装置」である点に関して,本件特許明細書には以下の記載がある。
「【0104】本発明のタッチパネル用積層体は、上述した構成を有し、上記耐久折り畳み試験(条件1)で割れない極めて優れた折り畳み性を有し、更に、上記干渉縞評価方法(条件2)によって干渉縞が観察されないといった極めて優れた干渉縞防止性能を有する。このような本発明のタッチパネル用積層体は、従来公知のハードコート層を備えたハードコートフィルムと同様に、液晶表示装置等の画像表示装置の表面保護フィルムとして使用できるだけでなく、曲面ディスプレイや、曲面を有する製品の表面保護フィルム、折り畳み式の部材の表面保護フィルムとして使用できる。なかでも、本発明のタッチパネル用積層体は、極めて優れた干渉縞防止性能と、耐久折り畳み性能を有するため、折り畳み式の部材の表面保護フィルムとして好適に用いられる。」
上記記載に基づいて,タッチパネル用積層体を,画像表示装置の折り畳み式の部材の表面保護フィルムとして使用できるから,当業者は,「タッチパネル用積層体を用いてなることを特徴とする折り畳み式画像表示装置」を製造でき,本件特許発明11についての特許を実施可能であるといえる。
(3)申立人らの主張について
ア 申立人1の主張について
(ア)申立人1は,本件特許発明1は,(条件2)として,「波長400nm~700nmの領域における前記タッチパネル用積層体の分光反射率を求め,任意の50nmの範囲における前記分光反射率の標準偏差が0.045未満である」という条件を要件としているところ,一般的に,標準偏差の値は,測定値の数(データ数)や,測定幅(測定波長幅)によって大きく依存し,その値も大きく変化するが,本件特許明細書の上記段落や実施例の欄にも,任意の50nmの範囲において,どのような波長間隔(例えば,1nm間隔,10nm間隔,50nm間隔なのか)で,何点のデータ(例えば,50点,5点,1点なのか)で,標準偏差を算出すればよいのか,明細書には一切記載されておらず,測定条件が不明確であり,実施例欄などにおいても,具体的な算出経過や測定反射率データが示されていないから,当業者は,本件特許発明1を実施(製造)することが困難であり,本件特許発明2ないし11についても,本件特許発明1を実施することが困難である以上,同様に,実施することが困難である旨主張している。(申立書1第23頁第17行~第24頁第18行)
(イ)しかし,上記,イ(ウ)でも述べたように,本件特許発明1における「(条件2)波長400nm~700nmの領域における前記タッチパネル用積層体の分光反射率を求め、任意の50nmの範囲における前記分光反射率の標準偏差が0.045未満である」は,タッチパネル用積層体が干渉縞防止性能を有することを示す条件であるから,干渉縞の観測という主観的評価に対して,条件2は,干渉縞の抑制の程度を客観的な数値として評価可能な評価指標である点に技術的意義を有しているといえる。
したがって,その技術的意義に照らして,干渉縞が観測されないように,測定値の数(データ数)や,測定幅(測定波長幅)を適宜定めることは,当業者の通常の捜索能力の範囲内に過ぎないから,申立人1の上記(ア)の主張は採用できない。
イ 申立人2の主張について
(ア)申立人2は,当業者は,本件請求項1に規定されている,耐屈曲性を備えた樹脂基材と少なくとも1層の樹脂硬化層とを有するタッチパネル用積層体であって,(条件1)及び(条件2)を充足するもののうちで,実施例に記載されていないものを製造するためには,当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤をする必要があり,請求項1に従属する請求項2~11も同様であって,本件請求項1~11に係る発明は,実施可能でない発明を含んでいるから,本件明細書の記載は実施可能要件に違反している旨主張している。(申立書2第24頁第1行~第25頁第5行)
(イ)実施可能性要件の法規範は,上記アに記載したものであり,申立人2の上記(ア)の主張のような,「実施例に記載されていないもの」の製造(実施)の記載までも要件とするものでない。
したがって,申立人2の上記(ア)の主張は,実施可能性要件の法規範の解釈を誤ったものであり,採用できない。
(4)小括
以上(1)~(3)より,本件特許発明1ないし11についての特許は,いずれも,実施可能要件を満たしているから,申立人1主張の理由1-2,および,申立人2主張の理由2-2によって,取り消すことはできない。
4 サポート要件
申立人1および申立人2は,それぞれ,理由1-3および理由2-3において,本件特許発明1ないし11に係る特許のサポート要件違反を主張しているので,以下検討する。
(1)本件特許発明1について
ア サポート要件の法規範
特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは,特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し,特許請求の範囲に記載された発明が,発明の詳細な説明に記載された発明で,発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できる範囲のものであるか否か,また,発明の詳細な説明に記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
イ 以下,上記アの観点に立って,本件特許の特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かについて検討する。
(ア)本件特許発明1に対応する発明の詳細な説明の記載は,上記3(1)イ(ア)~(ウ)で摘記したとおりであるから,特許請求の範囲の請求項1に記載された本件特許発明1は,発明の詳細な説明に記載された発明であるといえる。
(イ)本件特許明細書には,発明が解決しようとする課題に関して,以下の記載がある。
「【発明が解決しようとする課題】【0008】本発明は,上記現状に鑑みて,極めて優れた干渉縞防止性能及び耐久折り畳み性能を有するタッチパネル用積層体,該タッチパネル用積層体を用いてなる折り畳み式画像表示装置を提供することを目的とするものである。」
上記記載から,本件特許発明の課題は「極めて優れた干渉縞防止性能及び耐久折り畳み性能を有するタッチパネル用積層体,該タッチパネル用積層体を用いてなる折り畳み式画像表示装置を提供すること」であると認められる。
(ウ)本件特許明細書には,干渉縞防止性能に関して,以下の記載がある。
「【0044】上記(条件2)は、本発明のタッチパネル用積層体が干渉縞防止性能を有することを示す条件である。上記(条件2)の分光反射率の標準偏差は、以下の手順により求めることができる。まず、分光光度計を用いて、5度反射測定法により、本発明のタッチパネル用積層体の波長380nm~780nmの範囲の反射率を測定する。具体的には、本発明のタッチパネル用積層体の樹脂硬化層を形成した側の面に対して、入射角度5度の光を照射し、本発明のタッチパネル用積層体で反射された正反射方向の反射光を受光して、波長380nm~780nmの範囲の反射率を測定する。続きを表示(全12行)次いで、上記測定データの波長400~700nmの範囲について、2次多項式により近似値を求める。最後に、任意の50nmの範囲について、測定値と2次多項式による近似値との差から標準偏差を算出する。なお、本発明では、分光光度計(MPC3100、島津製作所社製)により測定された分光反射率を用いた。【0045】本発明のタッチパネル用積層体は、波長400nm~700nmの可視光領域において、任意の50nmの範囲における上記分光反射率の標準偏差が0.045未満である。すなわち、本発明のタッチパネル用積層体は、波長400~700nmの範囲のうち、最も標準偏差が大きい50nmの範囲における標準偏差が、0.045未満である。上記(条件2)を満たす本発明のタッチパネル用積層体は、極めて優れた干渉縞防止性能を有しており、折り畳み式画像表示装置やタッチパネルに用いたとしても、折り畳み部に干渉縞が生じず、また、折り畳むことによって生じる動く干渉縞も観察されない。本発明のタッチパネル用積層体は、波長400nm~700nmの可視光領域において、任意の50nmの範囲における上記分光反射率の標準偏差が0.035未満であることが好ましく、0.025未満であることがより好ましい。」
上記記載から,本件特許発明1の(条件2)は,タッチパネル用積層体が干渉縞防止性能を有することを示す条件であり,分光反射率の標準偏差を求める手順も具体的に記載されているといえるから,当業者は,分光反射率の標準偏差を求める当該手順に従って,タッチパネル用積層体の分光反射率の標準偏差を求めて評価することにより,本件特許発明1のタッチパネル用積層体が極めて優れた干渉縞防止性能を達成しているか否か判定できるものと認められる。
(エ)本件特許明細書には,耐久折り畳み性能に関して,以下の記載がある。
「【0042】上記(条件1)は、本発明のタッチパネル用積層体が耐久折り畳み性能を有することを示す条件である。図1は、上記(条件1)に示す、3mmの間隔で本発明のタッチパネル用積層体の全面を180°折り畳み試験(以下、耐久折り畳み試験とも言う)を模式的に示す断面図である。図1(a)に示したように、上記耐久折り畳み試験においては、まず、本発明のタッチパネル用積層体10の一の辺と、該一の辺に対向する他の辺とを、平行に配置された上固定部11と下固定部12とにそれぞれ固定する。なお、本発明のタッチパネル用積層体は、任意の形状であってよいが、上記耐久折り畳み試験における本発明のタッチパネル用積層体10は、矩形であることが好ましい。続きを表示(全12行)また、図1に示したように、上固定部11は固定されており、下固定部12は上固定部11との平行を維持したまま左右に移動可能なっている。本発明では、上固定部11と下固定部12との間隔は3mmである。【0043】次に、図1(b)に示したように、下固定部12を左方に移動させることで、試験片10の屈曲部位を下固定部12に固定された他の辺付近まで移動させ、更に、図1(c)に示したように、下固定部12を右方に移動させることで、試験片10の屈曲部位を上固定部11に固定された一の辺付近まで移動させる。図1(a)~(c)に示したように下固定部12を移動させることで、本発明のタッチパネル用積層体の全面を180°折り畳むことができる。上記(条件1)では、上述した図1(a)~(c)で表される折り畳み試験を、タッチパネル用積層体10で10万回行った場合に該試験片に割れ又は破断が生じないことを示している。10万回以内に本発明のタッチパネル用積層体10に割れ又は破断が生じると、本発明のタッチパネル用積層体の耐久折り畳み性能が不充分となる。本発明では、上記耐久折り畳み試験を本発明のタッチパネル用積層体10で15万回行った場合に割れ又は破断が生じないことが好ましい。また、本発明のタッチパネル用積層体10は、上記耐久折り畳み試験を片面に対して行った場合に、割れ又は破断が生じないものであってもよいが、上記耐久折り畳み試験を両面に対して行った場合に、割れ又は破断が生じないことが好ましい。なお、本発明では、上述した本発明のタッチパネル用積層体10を90°回転させて同様の耐久折り畳み試験を行っても、同様に割れ又は破断が生じないものである。」
上記記載によれば,本件特許発明1の(条件1)は,タッチパネル用積層体が耐久折り畳み性能を有することを示す条件であり,条件1を充足するための耐久折り畳み試験の内容も記載されているから,当業者は,当該記載に基づいて,タッチパネル用積層体が耐久折り畳み性能を有することを当該耐久折り畳み試験に基づいて評価することにより,本件特許発明1のタッチパネル用積層体が所望の耐久折り畳み性能を達成しているか否か判定できるものと認められる。
(オ)上記(イ)~(エ)より,本件特許発明1が条件1を充足することにより,所望の耐久折り畳み性能を達成し,条件2を充足することにより,極めて優れた干渉縞防止性能を達成するといえるから,本件特許明細書の上記(ウ)および(エ)で摘記した記載に基づいて条件1および2を評価し,条件1および2を充足する本件特許発明1は,本件特許発明1の課題である「極めて優れた干渉縞防止性能及び耐久折り畳み性能を有するタッチパネル用積層体」を解決できる範囲内のものであるといえる。
ウ したがって,特許請求の範囲の請求項1に記載された本件特許発明1は,発明の詳細な説明に記載された発明であり,発明の詳細な説明の記載により当業者が本件特許発明1の課題を解決できる範囲のものであるといえるから,本件特許発明1はついての特許はサポート要件を満たしているといえる。
(2)本件特許発明2ないし11について
ア 本件特許発明2ないし11に対応する発明の詳細な説明の記載は,上記3(2)ア~コで摘記したとおりであるから,特許請求の範囲の請求項2ないし11に記載された本件特許発明2ないし11は,いずれも,発明の詳細な説明に記載された発明であるといえる。
イ 本件特許発明2ないし11は,いずれも,本件特許発明1を技術的に限定するものであり,本件特許発明1と同様に,条件1および2を構成要件として備えている。
上記(1)イ(オ)で述べたように,本件特許発明1は,本件特許明細書の上記(1)イ(ウ)および(エ)で摘記した記載に基づいて,本件特許発明1の課題である「極めて優れた干渉縞防止性能及び耐久折り畳み性能を有するタッチパネル用積層体」を解決できる範囲内のものであるといえるから,条件1および2を構成要件として備えた本件特許発明2ないし11も,本件特許発明1と同様に,本件特許発明1の課題である「極めて優れた干渉縞防止性能及び耐久折り畳み性能を有するタッチパネル用積層体」を解決できる範囲内のものであるといえる。
ウ したがって,特許請求の範囲の請求項2ないし11に記載された本件特許発明2ないし11は,いずれも,発明の詳細な説明に記載された発明であり,発明の詳細な説明の記載により当業者が本件特許発明1の課題を解決できる範囲のものであるといえるから,本件特許発明2ないし11はついての特許は,いずれも,サポート要件を満たしているといえる。
(3)申立人の主張について
ア 申立人1の主張について
(ア) 申立人1は,本件特許発明1は,達成すべき結果により規定された発明(具体的には,所望の折り畳み試験条件および分光反射率の標準偏差により規定されたタッチパネル用積層体の発明)であるが,本件特許明細書の発明の詳細な説明には,特定の第1ハードコート層,特定の第2層ハードコート層,および,特定の単官能モノマーの硬化層を備える積層体のみが開示されており,また,本件特許請求項1の「(条件2)波長400nm~700nmの領域における前記タッチパネル用積層体の分光反射率を求め,任意の50nmの範囲における前記分光反射率の標準偏差が0.045未満である」について,その発明特定事項の効果としては,段落0045から,干渉縞防止であるとされているが,実施例(段落0150の表1)において,標準偏差が0.045付近(例えば,0.020~0.045)では,干渉縞が防止されている実験データは存在しておらず,干渉縞防止が達成されているのは,実施例1~14を見ると,標準偏差が0.018以下のものに限られる一方,比較例2を見ると,0.045にごく近い0.050では干渉縞が防止されておらず,0.018で干渉縞が防止されているため,標準偏差0.045未満付近では,干渉縞を防止できていない蓋然性が極めて高く,また,標準偏差の境界を0.045という数値に設定した技術的意義や根拠も不明であるから,技術常識を考慮しても,本件特許発明1に係る発明の範囲まで,発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえず,本件特許発明2ないし11についても,同様に,これらの発明の範囲まで,発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない旨主張している。(申立書1第24頁第19行~第26頁第2行)
(イ)申立人1は,標準偏差0.045未満付近では,干渉縞を防止できていない蓋然性が極めて高い旨主張しているが,本件特許明細書の記載や,提出された証拠を参照しても,標準偏差0.045において,干渉縞を防止できていないことを認めることができない。
したがって,申立人1の上記主張(ア)は,証拠に基づく主張ではないから採用できない。
イ 申立人2の主張について
(ア) 申立人2は,当業者は,実施例を除き,本件請求項1に規定されている,耐屈曲性を備えた樹脂基材と少なくとも1層の樹脂硬化層とを有するタッチパネル用積層体であって(条件1)及び(条件2)を充足するものが,本件発明の課題を解決できるとは,認識できず,請求項1に従属する請求項2~11も同様であって,本件特許発明1~11は,明細書の記載から発明の課題が解決できると認識することができる範囲を超えるものであるから,本件特許請求の範囲の記載はサポート要件に違反している旨主張している。(申立書2第25頁第6行~第26頁第20行)
(イ)上記(1)イ(オ)で述べたように,本件特許発明1は,本件特許明細書の上記(1)イ(ウ)および(エ)で摘記した記載に基づいて,本件特許発明1の課題である「極めて優れた干渉縞防止性能及び耐久折り畳み性能を有するタッチパネル用積層体」を解決できる範囲内のものであるといえるから,申立人2の上記主張(ア)は採用できない。
(4)小括
以上のように,特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された本件特許発明1ないし11は,いずれも,発明の詳細な説明に記載された発明であって,発明の詳細な説明の記載により当業者が本件特許発明1の課題を解決できる範囲のものであり,本件特許発明1ないし11はついての特許は,いずれも,サポート要件を満たしているといえるから,申立人1主張の理由1-3,および,申立人2主張の理由2-3によって,本件特許発明1ないし11についての特許を取り消すことはできない。
5 明確性要件
申立人1は,理由1-4において,本件特許発明1ないし11に係る特許の明確性要件違反を主張しているので,以下検討する。
(1)本件特許発明1について
ア 明確性要件の法規範
特許を受けようとする発明が明確であるか否かは,特許請求の範囲の記載だけではなく,願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し,また,当業者の出願当時における技術常識を基礎として,特許請求の範囲の記載が,第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
イ 以下,この観点に立って,本件特許発明1が明確であるか否かについて検討する。
本件特許発明1に対応する発明の詳細な説明の記載は,上記3(1)イ(ア)~(ウ)で摘記したとおりであり,当該明細書の記載を考慮すれば,特許請求の範囲の請求項1に記載された本件特許発明1は,第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
(2)本件特許発明2ないし11について
本件特許発明2ないし11に対応する発明の詳細な説明の記載は,上記3(2)ア~コで摘記したとおりであり,当該明細書の記載を考慮すれば,特許請求の範囲の請求項2ないし11に記載された本件特許発明2ないし11は,いずれも,第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
(3)申立人1の主張について
ア 申立人1は,本件特許請求項1では,分光反射率の標準偏差が,0.045未満であると記載されており,標準偏差の単位は,通常,その標準偏差の測定対象の単位と一致するから,分光反射率の標準偏差の単位は,分光反射率(%)の単位と一致するはずであるところ,本件請求項1では,分光反射率の標準偏差の単位は,分光反射率の単位(%)ではなく,無単位となっており,両者は一致しておらず,技術的意義が理解できないから,本件特許発明1は,不明確であり,本件特許発明2ないし11についても,本件特許発明1が不明確である以上,同様に,不明確である旨主張している。(申立書1第26頁第3行~第13行)
イ 統計学的に「標準偏差」の意味や算出のための計算式は周知事項であり,分光反射率の「標準偏差」について,無単位で「0.045未満である。」と記載されていても,第三者の利益が不当に害されるほどに不明確とはいえない。
したがって,上記アの申立人1の主張は採用できない。
(4)小括
以上により,特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された本件特許発明1ないし11は,いずれも,第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえないから,申立人1主張の理由1-4によって,本件特許発明1ないし11についての特許を取り消すことはできない。
第5 むすび
以上のとおり,特許異議の申立ての理由1-1ないし1-4および理由2-1ないし2-3によっては,特許請求の範囲の請求項1ないし11に記載された本件特許発明1ないし11に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に本件特許発明1ないし11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
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2020-700043