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特許異議申立

2019-700645

高吸水性樹脂およびその製造方法

審判番号
2019-700645
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2016-528243外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2019年08月13日
審決日
2020年08月28日
公報発行日
2020年12月25日
結論
訂正認容
審判長/審判官
分類
P1651.537-YAA(C08J) / P1651.536-YAA(C08J) / P1651.113-YAA(C08J) / P1651.121-YAA(C08J)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項特許法113条2号特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第4項、特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6468538号発明「高吸水性樹脂およびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6468538号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし14〕及び〔15ないし19〕について訂正することを認める。 特許第6468538号の請求項1、2、4ないし7及び9ないし14に係る特許を維持する。 特許第6468538号の請求項3、8及び15ないし19に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第6468538号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし19に係る特許についての出願は、2014(平成26)年12月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2013年12月11日、大韓民国、2014年12月10日、大韓民国)を国際出願日とする出願であって、平成31年1月25日にその特許権の設定登録(請求項の数19)がされ、同年2月13日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和1年8月13日に特許異議申立人 株式会社日本触媒(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし19)がされ、同年10月31日付けで取消理由が通知され、令和2年2月5日に特許権者 エルジー・ケム・リミテッド(以下、「特許権者」という。)により訂正請求がされるとともに意見書が提出され、同年3月3日付けで訂正拒絶理由が通知され、同年4月24日に特許権者から手続補正書(方式)及び意見書が提出され、同年6月8日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、それに対して特許異議申立人から応答がされなかったものである。 第2 訂正の適否について 1 訂正の内容 令和2年4月24日に提出された手続補正書(方式)により補正された同年2月5日にされた訂正の請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1において、「e)前記粉砕された含水ゲル状重合体のうち、粒度600μm以上850μm以下である粒子、粒度300μm以上600μm以下である粒子および粒度150μm以上300μm未満である粒子が混合された正常粒子に、450μm以下の大きさの粒子を用いて再造粒した再造粒体を混合する段階と」を「e)前記粉砕された含水ゲル状重合体のうち、粒度600μm以上850μm以下である粒子、粒度300μm以上600μm以下である粒子および粒度150μm以上300μm未満である粒子からなる正常粒子に、粒度150μm未満である粒子、粒度150μm以上300μm未満である粒子、粒度300μm以上450μm未満である粒子を含む450μm以下の大きさの粒子を用いて再造粒した再造粒体を混合する段階と」へ訂正する。 併せて、当該請求項を直接又は間接的に引用する他の請求項についても、当該請求項を訂正したことに伴う訂正をする。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1において、「g)前記含水ゲル状重合体の表面架橋反応を行う段階と、を含み、」を「g)前記含水ゲル状重合体の表面架橋反応を行う段階と、を含み、前記再造粒体は、粒度150~600μmの大きさを有し、」へ訂正する。 併せて、当該請求項を直接又は間接的に引用する他の請求項についても、当該請求項を訂正したことに伴う訂正をする。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項1において、「前記e)段階の含水ゲル状重合体は、正常粒子と再造粒体の全体総重量を基準に、粒度600~850μmの大きさの粒子0.01~3重量%、粒度300~600μmの大きさの粒子50~80重量%、粒度150~300μmの大きさの粒子1~25重量%および粒度450μm以下の大きさの粒子を用いて再造粒した再造粒体15~30重量%を含む」を「前記e)段階の含水ゲル状重合体は、正常粒子および再造粒体を合わせた全体総重量を基準に、前記粒度600~850μmの大きさの粒子0.01~3重量%、前記粒度300~600μmの大きさの粒子60~80重量%、および前記粒度150~300μmの大きさの粒子1~25重量%からなる正常粒子の70~85重量%;および前記再造粒体の15~30重量%を含む」へ訂正する。 併せて、当該請求項を直接又は間接的に引用する他の請求項についても、当該請求項を訂正したことに伴う訂正をする。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項2において、「前記段階e)で、再造粒した再造粒体は、粒度400μm以下の大きさの粒子を用いて再造粒したことを特徴とする」を「前記段階e)で、前記再造粒体は、粒度400μm以下の大きさの粒子を用いて再造粒したものであり、前記粒度400μm以下の大きさの粒子は、150μm未満である粒子および粒度150μm以上300μm未満である粒子を含むことを特徴とする」へ訂正する。 併せて、当該請求項を直接又は間接的に引用する他の請求項についても、当該請求項を訂正したことに伴う訂正をする。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項4において、「前記段階g)で、前記含水ゲル状重合体の表面架橋反応を行う段階は、分級された含水ゲル状重合体を一つの表面架橋反応機で行うことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法」を「前記段階g)で、前記表面架橋反応を行う段階は、一つの表面架橋反応機で行うことを特徴とする、請求項1または2に記載の高吸水性樹脂の製造方法」へ訂正する。 併せて、当該請求項を直接又は間接的に引用する他の請求項についても、当該請求項を訂正したことに伴う訂正をする。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項5において、「含水ゲル状重合体を粒度が1mm~15mmに粉砕する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法」を「前記含水ゲル状重合体を粒度が1mm~15mmに粉砕する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項1、2および4のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法」へ訂正する。 併せて、当該請求項を直接又は間接的に引用する他の請求項についても、当該請求項を訂正したことに伴う訂正をする。 (8)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項6において、「請求項1~5のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法」を「請求項1、2、4および5のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法」へ訂正する。 併せて、当該請求項を直接又は間接的に引用する他の請求項についても、当該請求項を訂正したことに伴う訂正をする。 (9)訂正事項9 特許請求の範囲の請求項7において、「請求項1~6のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法」を「請求項1、2、4~6のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法」へ訂正する。 併せて、当該請求項を直接又は間接的に引用する他の請求項についても、当該請求項を訂正したことに伴う訂正をする。 (10)訂正事項10 特許請求の範囲の請求項8を削除する。 (11)訂正事項11 特許請求の範囲の請求項9において、「請求項1~8のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法」を「請求項1、2、4~7のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法」へ訂正する。 併せて、当該請求項を直接又は間接的に引用する他の請求項についても、当該請求項を訂正したことに伴う訂正をする。 (12)訂正事項12 特許請求の範囲の請求項10において、「請求項1~9のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法」を「請求項1、2、4~7、9のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法」へ訂正する。 併せて、当該請求項を直接又は間接的に引用する他の請求項についても、当該請求項を訂正したことに伴う訂正をする。 (13)訂正事項13 特許請求の範囲の請求項11において、「請求項1~10のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法」を「請求項1、2、4~7、9~10のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法」へ訂正する。 併せて、当該請求項を直接又は間接的に引用する他の請求項についても、当該請求項を訂正したことに伴う訂正をする。 (14)訂正事項14 特許請求の範囲の請求項12において、「請求項1~11のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法」を「請求項1、2、4~7、9~11のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法」へ訂正する。 併せて、当該請求項を直接又は間接的に引用する他の請求項についても、当該請求項を訂正したことに伴う訂正をする。 (15)訂正事項15 特許請求の範囲の請求項13において、「請求項1~12のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法」を「請求項1、2、4~7、9~12のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法」へ訂正する。 併せて、当該請求項を引用する請求項14についても、当該請求項を訂正したことに伴う訂正をする。 (16)訂正事項16 特許請求の範囲の請求項14において、「請求項1~13のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法」を「請求項1、2、4~7、9~13のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法」へ訂正する。 (17)訂正事項17 特許請求の範囲の請求項15を削除する。 (18)訂正事項18 特許請求の範囲の請求項16を削除する。 (19)訂正事項19 特許請求の範囲の請求項17を削除する。 (20)訂正事項20 特許請求の範囲の請求項18を削除する。 (21)訂正事項21 特許請求の範囲の請求項19を削除する。 (22)訂正事項22 明細書【0007】の全文を「前記目的を達成するために、本発明は、a)水溶性エチレン系不飽和単量体および重合開始剤を含む単量体組成物を熱重合または光重合して含水ゲル状重合体を準備する段階と、b)前記含水ゲル状重合体を乾燥する段階と、c)前記乾燥された重合体を粉砕する段階と、d)前記粉砕された含水ゲル状重合体を粒度150μm未満である粒子、粒度150μm以上300μm未満である粒子、粒度300μm以上450μm未満である粒子、粒度450μm以上600μm以下である粒子、および粒度600μm以上850μm以下である粒子に分級する段階と、e)前記粉砕された含水ゲル状重合体のうち、粒度600μm以上850μm以下である粒子、粒度300μm以上600μm以下である粒子および粒度150μm以上300μm未満である粒子からなる正常粒子に、粒度150μm未満である粒子、粒度150μm以上300μm未満である粒子、粒度300μm以上450μm未満である粒子を含む450μm以下の大きさの粒子を用いて再造粒した再造粒体を混合する段階と、f)前記混合された含水ゲル状重合体のそれぞれに表面架橋剤を添加する段階と、g)前記含水ゲル状重合体の表面架橋反応を行う段階と、を含み、前記再造粒体は、粒度150~600μmの大きさを有し、前記e)段階の含水ゲル状重合体は、正常粒子および再造粒体を合わせた全体総重量を基準に、前記粒度600~850μmの大きさの粒子0.01~3重量%、前記粒度300~600μmの大きさの粒子60~80重量%、および前記粒度150~300μmの大きさの粒子1~25重量%からなる正常粒子の70~85重量%;および前記再造粒体の15~30重量%を含む高吸水性樹脂の製造方法を提供する。」へ訂正する。 (23)訂正事項23 明細書【0008】の全文を削除する。 2 訂正の目的の適否、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1ないし3について 訂正事項1のうち請求項1の「粒子が混合された正常粒子」を「粒子からなる正常粒子」とする訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 訂正事項1のうち請求項1の「450μm以下の大きさの粒子」を「粒度150μm未満である粒子、粒度150μm以上300μm未満である粒子、粒度300μm以上450μm未満である粒子を含む450μm以下の大きさの粒子」とする訂正は、「450μm以下の大きさの粒子」の内訳を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正事項2は、請求項1の「再造粒体」の粒度を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正事項3のうち請求項1の「正常粒子と再造粒体の全体総重量」を「正常粒子および再造粒体を合わせた全体総重量」とする訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 訂正事項3のうち請求項1の「粒度600~850μmの大きさの粒子0.01~3重量%、粒度300~600μmの大きさの粒子50~80重量%、粒度150~300μmの大きさの粒子1~25重量%および粒度450μm以下の大きさの粒子を用いて再造粒した再造粒体15~30重量%を含む」を「前記粒度600~850μmの大きさの粒子0.01~3重量%、前記粒度300~600μmの大きさの粒子60~80重量%、および前記粒度150~300μmの大きさの粒子1~25重量%からなる正常粒子の70~85重量%;および前記再造粒体の15~30重量%を含む」とする訂正は、「前記」を加えることで「粒度600~850μmの大きさの粒子」、「粒度300~600μmの大きさの粒子」及び「粒度150~300μmの大きさの粒子」が、これらの記載より前に記載されたものであることを明確にし、さらに、「粒度300~600μmの大きさの粒子」の含有割合を限定し、「正常粒子」の含有割合を限定するものであるから、明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項1ないし3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。 さらに、訂正事項1ないし3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 請求項1を直接又は間接的に引用する他の請求項についても、同様である。 (2)訂正事項4について 訂正事項4は、請求項2の「粒度400μm以下の大きさの粒子」の内訳を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。 さらに、訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 請求項2を直接又は間接的に引用する他の請求項についても、同様である。 (3)訂正事項5、10及び17ないし21について 訂正事項5、10及び17ないし21は、請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項5、10及び17ないし21は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。 さらに、訂正事項5、10及び17ないし21は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4)訂正事項6について 訂正事項6のうち請求項4の「前記含水ゲル状重合体の表面架橋反応を行う段階は、分級された含水ゲル状重合体を一つの表面架橋反応機で行う」を「前記表面架橋反応を行う段階は、一つの表面架橋反応機で行う」とする訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 訂正事項6のうち請求項4の「請求項1~3」を「請求項1または2」とする訂正は、引用する請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。 さらに、訂正事項6は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 請求項4を直接又は間接的に引用する他の請求項についても、同様である。 (5)訂正事項7について 訂正事項7のうち請求項5の「含水ゲル状重合体」を「前記含水ゲル状重合体」とする訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 訂正事項7のうち請求項5の「請求項1~4」を「請求項1、2及び4」とする訂正は、引用する請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項7は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。 さらに、訂正事項7は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 請求項5を直接又は間接的に引用する他の請求項についても、同様である。 (6)訂正事項8、9及び11ないし16について 訂正事項8、9及び11ないし16は、それぞれ、請求項6、7及び9ないし14において、引用する請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項8、9及び11ないし16は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。 さらに、訂正事項8、9及び11ないし16は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 請求項6、7及び9ないし13を直接又は間接的に引用する他の請求項についても、同様である。 (7)訂正事項22及び23について 訂正事項22及び23は、訂正事項1ないし21により特許請求の範囲を訂正したことに伴い、特許請求の範囲と整合するように発明の詳細な説明の記載を訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 また、訂正事項22及び23は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものである。 さらに、訂正事項22及び23は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 むすび 以上のとおり、訂正事項1ないし23は、特許請求の範囲の減縮又は明瞭でない記載の釈明を目的とするものであるから、特許法120条の5第2項ただし書第1又は3号に掲げる事項を目的とするものである。 また、訂正事項1ないし23は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないので、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。 さらに、訂正事項22及び23は、願書に添付した明細書についての訂正であるが、当該訂正に係る請求項の全てについて訂正の請求は行われており、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第4項の規定に適合する。 なお、訂正前の請求項2ないし14は訂正前の請求項1を直接又は間接的に引用するものであるから、訂正前の請求項1ないし14は一群の請求項に該当するものである。そして、訂正事項1ないし16は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。 訂正前の請求項16ないし19は訂正前の請求項15を直接又は間接的に引用するものであるから、訂正前の請求項15ないし19は一群の請求項に該当するものである。そして、訂正事項17ないし21は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。 そして、特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし19に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。 したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし14〕及び〔15ないし19〕について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし19に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし19に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 a)水溶性エチレン系不飽和単量体および重合開始剤を含む単量体組成物を熱重合または光重合して含水ゲル状重合体を準備する段階と、 b)前記含水ゲル状重合体を乾燥する段階と、 c)前記乾燥された重合体を粉砕する段階と、 d)前記粉砕された含水ゲル状重合体を粒度150μm未満である粒子、粒度150μm以上300μm未満である粒子、粒度300μm以上450μm未満である粒子、粒度450μm以上600μm以下である粒子、および粒度600μm以上850μm以下である粒子に分級する段階と、 e)前記粉砕された含水ゲル状重合体のうち、粒度600μm以上850μm以下である粒子、粒度300μm以上600μm以下である粒子および粒度150μm以上300μm未満である粒子からなる正常粒子に、粒度150μm未満である粒子、粒度150μm以上300μm未満である粒子、粒度300μm以上450μm未満である粒子を含む450μm以下の大きさの粒子を用いて再造粒した再造粒体を混合する段階と、 f)前記混合された含水ゲル状重合体のそれぞれに表面架橋剤を添加する段階と、 g)前記含水ゲル状重合体の表面架橋反応を行う段階と、を含み、 前記再造粒体は、粒度150~600μmの大きさを有し、 前記e)段階の含水ゲル状重合体は、正常粒子および再造粒体を合わせた全体総重量を基準に、前記粒度600~850μmの大きさの粒子0.01~3重量%、前記粒度300~600μmの大きさの粒子60~80重量%、および前記粒度150~300μmの大きさの粒子1~25重量%からなる正常粒子の70~85重量%;および前記再造粒体の15~30重量%を含む高吸水性樹脂の製造方法。 【請求項2】 前記段階e)で、前記再造粒体は、粒度400μm以下の大きさの粒子を用いて再造粒したものであり、 前記粒度400μm以下の大きさの粒子は、150μm未満である粒子および粒度150μm以上300μm未満である粒子を含むことを特徴とする、請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法。 【請求項3】(削除) 【請求項4】 前記段階g)で、前記表面架橋反応を行う段階は、一つの表面架橋反応機で行うことを特徴とする、請求項1または2に記載の高吸水性樹脂の製造方法。 【請求項5】 前記段階b)の乾燥段階前に、前記含水ゲル状重合体を粒度が1mm~15mmに粉砕する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項1、2および4のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。 【請求項6】 前記段階b)の乾燥段階は、150℃~250℃の温度で行われることを特徴とする、請求項1、2、4および5のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。 【請求項7】 前記表面架橋剤は、多価アルコール化合物;エポキシ化合物;ポリアミン化合物;ハロエポキシ化合物;ハロエポキシ化合物の縮合産物;オキサゾリン化合物;モノ-、ジ-またはポリオキサゾリジノン化合物;環状ウレア化合物;多価金属塩;およびアルキレンカーボネート化合物からなる群より選択されるいずれか一つ以上であることを特徴とする、請求項1、2、4~6のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。 【請求項8】(削除) 【請求項9】 前記段階f)で、添加される表面架橋剤の温度は、5~40℃であることを特徴とする、請求項1、2、4~7のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。 【請求項10】 前記段階g)で、前記表面架橋反応は、1分~60分間行われることを特徴とする、請求項1、2、4~7、9のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。 【請求項11】 前記段階g)で、スチーム、電気、紫外線および赤外線からなる熱源群より選択されるいずれか一つ以上を照射して昇温することを特徴とする、請求項1、2、4~7、9~10のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。 【請求項12】 前記高吸水性樹脂は、Vortex測定方法により測定した吸水速度が40秒以下であることを特徴とする、請求項1、2、4~7、9~11のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。 【請求項13】 前記高吸水性樹脂は、50×10-7cm3・s/g以上の食塩水流れ誘導性(a saline flow conductivity、SFC)を有することを特徴とする、請求項1、2、4~7、9~12のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。 【請求項14】 前記e)段階の再造粒体は、450μm未満の粒子100重量部当たり水50~300重量部を高速回転するミキサーに投入して30秒~5分間混合して製造したことを特徴とする、請求項1、2、4~7、9~13のいずれか一項に記載の高吸水性樹脂の製造方法。 【請求項15】(削除) 【請求項16】(削除) 【請求項17】(削除) 【請求項18】(削除) 【請求項19】(削除)」 第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由及び取消理由の概要 1 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要 令和1年8月13日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。 (1)申立理由1(明確性要件) 本件特許の請求項12ないし19に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 (2)申立理由2(サポート性要件及び実施可能要件) 本件特許の請求項1ないし19に係る特許は、特許法第36条第6項第1号及び第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 (3)申立理由3(甲第1号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許の請求項1ないし19に係る発明は、下記の本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、又は当該発明に基づいてその優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし19に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (4)申立理由4(甲第2、3、6及び7号証のいずれかを主引用文献とする進歩性) 本件特許の請求項1ないし19に係る発明は、下記の本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第2、3、6及び7号証のいずれかに記載された発明に基づいてその優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし19に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (5)証拠方法 甲第1号証:国際公開第2006/098271号 甲第2号証:特開2006-116535号公報 甲第3号証:特開2006-55833号公報 甲第4号証:特表平9-510889号公報 甲第5号証:Modern Superabsorbent Polymer Technology(1998),pp.69-87,93-96,197-200、表紙・奥付 甲第6号証:特開平11-140194号公報 甲第7号証:特表2008-517116号公報 甲第8号証:特表2003-529647号公報 甲第9号証:特開2006-176570号公報 甲第10号証:特開2013-132433号公報 甲第11号証:国際公開第2011/034147号 なお、文献名等の表記はおおむね特許異議申立書の記載に従った。以下、順に「甲1」のようにいう。 2 取消理由の概要 令和1年10月31日付けで通知した取消理由(以下、「取消理由」という。)の概要は次のとおりである。 (1)取消理由1(明確性要件) 本件特許の特許請求の範囲の記載は下記の点で不備があり、本件特許の請求項12ないし19に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 ア 請求項12及び18に「前記高吸水性樹脂は、Vortex測定方法により測定した吸水速度が40秒以下である」と記載されている。 そして、これに関して、発明の詳細な説明には、「(4)うず巻きの実験(Vortex-test) 100mlビーカーに、0.9重量%のNaCl溶液50mlを入れた後、攪拌機を用いて600rpmで攪拌しながら、前記比較例1~比較例3および実施例1~実施例3による高吸水性樹脂2.00gをそれぞれ添加する。攪拌によりできる液体のうず巻き(vortex)がなくなり、なめらかな表面ができる時までの時間を測定した。」(【0075】)と記載されている。 ところで、甲5(第200ページのFigure5.20.)には、Vortex-testに温度依存性があり、試料の温度が高くなると、Vortex-timeが短くなる傾向が示されている。 また、Vortex-testは回転数以外の撹拌条件、特に撹拌子の長さにも依存するものである。例えば、同じ回転数の場合、撹拌子が長いほど強い力で撹拌するので、当然うずが消失するまでの時間は遅くなる。 しかし、Vortex-test、すなわちVortex測定をいかなる温度及び撹拌条件(撹拌子の長さ)において行ったかについて、請求項12及び18には記載されていないし、発明の詳細な説明にも記載されていない。 また、Vortex測定をいかなる温度及び撹拌条件(撹拌子の長さ)で行うかは、甲2(【0162】)、甲9(【0080】)及び甲10(【0119】)に記載されているように一義的には定まらないのが技術常識である。 したがって、請求項12及び18の記載では、本件特許発明12及び18に含まれる範囲が明確であるとはいえない。 よって、本件特許発明12及び18に関して、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎としても、特許請求の範囲の記載は第三者の利益が不当に害されるほどに明確でない。 請求項12を直接又は間接的に引用する本件特許発明13及び14並びに請求項18を直接引用する本件特許発明19に関しても同様に、特許請求の範囲の記載は第三者の利益が不当に害されるほどに明確でない。 イ 請求項15の「前記粉砕された含水ゲル状重合体のうち、粒度600μm以上850μm以下である粒子、粒度300μm以上600μm以下である粒子および粒度150μm以上300μm未満である粒子が混合された正常粒子と、450μm以下の大きさの粒子を用いて再造粒した再造粒体が表面架橋され、・・・高吸水性樹脂。」との記載は、製造に関して経時的な要素の記載がある場合に該当するため、当該請求項にはその物の製造方法が記載されているといえる。 そして、本件特許の明細書等(特許権者が提出した意見書を含む。)を通じてみても、製造方法により特定せざるを得ない不可能・非実際的事情があったものと認識することができない。 したがって、本件特許発明15は明確でない。 請求項15を直接又は間接的に引用する本件特許発明16ないし19に関しても同様に、明確でない。 (2)取消理由2(サポート要件) 本件特許の特許請求の範囲の記載は下記の点で不備があり、本件特許の請求項1ないし19に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 ア 甲4(第34ページの表4)によると、粒度が小さくなるように分画されたもの程、SFC値が低くなる傾向が示されており、このことから、粒度が150μm未満の粒子や再造粒体は透水性(SFC)が劣ることが明らかである。 また、甲5(第197ページのFigure5.19.)によると、粒度が850μm以上の大きさの粒子は吸水速度が劣ることが明らかである。 すると、本件特許発明1は、透水性(SFC)が劣るものや吸水速度が劣るものを多量に含む高吸水性樹脂の製造方法を含むということになるから、本件特許発明1は発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえず、また、当業者が出願時の技術常識に照らし発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるともいえない。 また、請求項15にも請求項1と同様の記載があるから、本件特許発明15についても同様に発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえず、また、当業者が出願時の技術常識に照らし発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるともいえない。 さらに、請求項1を直接又は間接的に引用する本件特許発明1ないし14及び請求項15を直接又は間接的に引用する本件特許発明16ないし19についても同様である。 イ 発明の詳細な説明の【0065】ないし【0067】及び【0077】の記載によると、150μm以上850μm未満に分級された正常粒子70%以上85%以下と粒度150μm以上600μm以下に選別された再造粒体15%以上30%以下を混合したものは、発明の課題を解決することができると当業者は認識できる。 しかし、請求項1及び15の記載では、本件特許発明1及び15には、150μm以上850μm未満に分級された正常粒子70%以上85%以下と粒度150μm以上600μm以下に選別された再造粒体15%以上30%以下を混合したもの以外のものが含まれる。 したがって、本件特許発明1及び15は発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえず、また、当業者が出願時の技術常識に照らし発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるともいえない。 また、請求項1を直接又は間接的に引用する本件特許発明2ないし14及び請求項15を直接又は間接的に引用する本件特許発明16ないし19についても同様である。 (3)取消理由3(実施可能要件) 本件特許の発明の詳細な説明の記載は下記の点で不備があり、本件特許の請求項12ないし14、18及び19に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 ・発明の詳細な説明には、本件特許発明12ないし14、18及び19の発明特定事項である「前記高吸水性樹脂は、Vortex測定方法により測定した吸水速度が40秒以下である」に関して、具体的な記載、すなわちVortex測定をいかなる温度及び撹拌条件(撹拌子の長さ)において行ったかについての記載がない。 しかしながら、Vortex測定の値は、温度や撹拌条件(撹拌子の長さ)により異なることが知られている。 してみると、「前記高吸水性樹脂は、Vortex測定方法により測定した吸水速度が40秒以下である」とする条件が不明であるため、当業者が実施をすることができるとはいえない。 したがって、物を生産する方法の発明である本件特許発明12ないし14について、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産する方法の使用をし、その物を生産する方法により生産した物の使用をすることができる程度の記載があるとはいえないし、また、物の発明である本件特許発明18及び19について、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があるとはいえない。 (4)取消理由4(甲1に基づく新規性・進歩性) 本件特許の請求項15ないし19に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであり、又は本件特許の請求項1ないし19に係る発明は、当該発明に基づいてその優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし19に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (5)取消理由5(甲2を主引用文献とする進歩性) 本件特許の請求項1ないし19に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明に基づいてその優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし19に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (6)取消理由6(甲3を主引用文献とする進歩性) 本件特許の請求項1ないし19に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲3に記載された発明に基づいてその優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし19に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (7)取消理由7(甲6を主引用文献とする進歩性) 本件特許の請求項1ないし19に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲6に記載された発明に基づいてその優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし19に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (8)取消理由8(甲7を主引用文献とする進歩性) 本件特許の請求項1ないし19に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲7に記載された発明に基づいてその優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし19に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 第5 当審の判断 1 取消理由について (1)取消理由1(明確性)について ア 明確性要件の判断基準 特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 そこで、検討する。 イ 判断 (ア)取消理由1のアについて 請求項12に記載された「Vortex測定方法」に関して、請求項12自体及び発明の詳細な説明にVortex測定方法をいかなる温度及び撹拌条件(撹拌子の長さ)で行うか具体的に記載されていないものの、「日本工業規格 JIS K7224 高吸収性樹脂の吸収速度試験方法」(特許権者が令和2年2月5日提出した意見書に添付された乙第1号証)の「3.試料及び試験液の状態調節並びに試験温度・湿度」には、Vortex測定を行う際の温度が記載され、「4.試験器具及び試験液」には、試験器具の回転数や寸法が記載されている。 したがって、請求項12や発明の詳細な説明に、Vortex測定をいかなる温度及び撹拌条件(撹拌子の長さ)で行うか記載されていないとしても、当業者であれば、「日本工業規格 JIS K7224 高吸収性樹脂の吸収速度試験方法」を参照して、Vortex測定を行うことができるので、当業者の出願時における技術常識を考慮すれば、「Vortex測定方法」が不明確な記載であるとはいえない。 また、他に請求項12に不明確な記載はない。 よって、本件特許発明12に関して、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎としても、特許請求の範囲の記載は第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。 請求項12を直接又は間接的に引用する本件特許発明13及び14に関しても同様に、特許請求の範囲の記載は第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。 (イ)取消理由1のイについて 本件訂正により、取消理由1のイの対象である請求項15ないし19は削除された。 ウ 取消理由1についてのまとめ したがって、本件特許の請求項12ないし14に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえず、同法第113条第4号に該当するものではない。 (2)取消理由2(サポート要件)について ア サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 そこで、検討する。 イ 発明の詳細な説明の記載 発明の詳細な説明には、おおむね次の記載がある。 ・「【技術分野】 【0001】 本発明は、高吸水性樹脂およびその製造方法に関し、より詳しくは、吸水速度および透水性が向上した高吸水性樹脂およびその製造方法に関する。 【背景技術】 【0002】 高吸水性樹脂(Super Absorbent Polymer、SAP)とは、自重の5百~1千倍程度の水分を吸収できる機能を有する合成高分子物質であり、生理用具として実用化し始め、現在は乳幼児用紙おむつなど衛生用品以外に、園芸用土壌保水材、土木・建築用止水材、育苗用シート、食品流通分野における新鮮度保持剤、および湿布用などの材料として幅広く用いられている。 【0003】 このような高吸水性樹脂の吸収メカニズムは高分子電解質の電荷が示す電気的吸引力の差による浸透圧、水と高分子電解質の間の親和力、高分子電解質イオンの間の反発力による分子膨張および架橋結合による膨張抑制の相互作用により支配される。つまり、吸水性樹脂の吸水性は前述した親和力と分子膨張に依存し、吸水速度は吸水性高分子自体の浸透圧に大きく左右される。 【0004】 このような高吸水性樹脂の吸水速度を向上させるために多大な研究が行われており、例えば韓国公開特許2007-0012623Aなどで、樹脂粒子の大きさに応じた含量比を限定することを開示しているが、樹脂の吸水速度および透水性を同時に向上させるには十分でないという問題点があった。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0005】 【特許文献1】韓国公開特許2007-0012623号 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 本発明は、前記のような従来技術の問題点を解決するためになされたものであって、従来の粒子に微粉再造粒体の投入量を15%以上増大させると同時に600~850μmおよび150~300μmの大きさの粒子の含量を減少させ、300~600μmの大きさの粒子の含量だけを増加させることによって、吸水速度および透水性の特性を共に向上させることができる高吸水性樹脂を提供することにその目的がある。」 ・「【発明の効果】 【0009】 本発明による高吸水性樹脂によれば、従来使用していた高吸水性樹脂に比べて吸水速度および透水性の特性を共に向上させることができるという長所がある。」 ・「【0013】 まず、本発明による高吸水性樹脂の製造方法は、a)水溶性エチレン系不飽和単量体および重合開始剤を含む単量体組成物を熱重合または光重合して含水ゲル状重合体を準備する段階を経る。 【0014】 本発明の高吸水性樹脂の製造のためには、当該技術分野で通常用いられる段階および方法により重合体を準備することができる。具体的に、本発明の高吸水性樹脂製造において、前記単量体組成物は重合開始剤を含むが、重合方法に応じて光重合方法による場合には光重合開始剤を含み、熱重合方法による場合には熱重合開始剤などを含むことができる。ただし、光重合方法によるとしても、紫外線照射などの照射により一定量の熱が発生し、また、発熱反応である重合反応の進行によりある程度の熱が発生するため、追加的に熱重合開始剤を含むこともできる。 【0015】 本発明による高吸水性樹脂の製造方法に用いられる熱重合開始剤は、特別な制限はないが、好ましくは、過硫酸塩系開始剤、アゾ系開始剤、過酸化水素、およびアスコルビン酸からなる開始剤群より選択される一つ以上を用いることができる。具体的に、過硫酸塩系開始剤の例としては、過硫酸ナトリウム(Sodium persulfate;Na2S2O8)、過硫酸カリウム(Potassium persulfate;K2S2O8)、過硫酸アンモニウム(Ammonium persulfate;(NH4)2S2O8)などがあり、アゾ(Azo)系開始剤の例としては、2,2-アゾビス-(2-アミジノプロパン)二塩酸塩(2,2-azobis(2-amidinopropane) dihydrochloride)、2,2-アゾビス-(N,N-ジメチレン)イソブチラミジンジヒドロクロライド(2,2-azobis-(N,N-dimethylene)isobutyramidine dihydrochloride)、2-(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル(2-(carbamoylazo)isobutylonitril)、2,2-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]ジヒドロクロライド(2,2-azobis[2-(2-imidazolin-2-yl)propane] dihydrochloride)、4,4-アゾビス-(4-シアノ吉草酸)(4,4-azobis-(4-cyanovaleric acid))などを用いることができる。 【0016】 また、本発明による高吸水性樹脂の製造方法に用いられる光重合開始剤としては、特別な制限はないが、好ましくは、ベンゾインエーテル(benzoin ether)、ジアルキルアセトフェノン(dialkyl acetophenone)、ヒドロキシルアルキルケトン(hydroxyl alkylketone)、フェニルグリオキシレート(phenyl glyoxylate)、ベンジルジメチルケタール(Benzyl Dimethyl Ketal)、アシルホスフィン(acyl phosphine)およびα-アミノケトン(α-aminoketone)からなる群より選択される一つ以上を用いることができる。一方、アシルホスフィンの具体的な例として、商用のlucirin TPO、つまり、2,4,6-トリメチル-ベンゾイル-トリメチルホスフィンオキシド(2,4,6-trimethyl-benzoyl-trimethyl phosphine oxide)を用いることができる。 【0017】 また、本発明による高吸水性樹脂の製造方法において、前記水溶性エチレン系不飽和単量体としては、高吸水性樹脂の製造に通常用いられる単量体であれば特別な制限はないが、好ましくは、陰イオン性単量体とその塩、非イオン系親水性含有単量体、およびアミノ基含有不飽和単量体およびその4級化物からなる群より選択されるいずれか一つ以上を用いることができる。具体的には、アクリル酸、メタアクリル酸、無水マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イタコン酸、2-アクリロイルエタンスルホン酸、2-メタアクリロイルエタンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルプロパンスルホン酸、または2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の陰イオン性単量体とその塩;(メタ)アクリルアミド、N-置換(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートまたはポリエチレングリコール(メタ)アクリレートの非イオン系親水性含有単量体;および(N,N)-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートまたは(N,N)-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドのアミノ基含有不飽和単量体およびその4級化物からなる群より選択されたいずれか一つ以上を好ましく用いることができ、より好ましくは、アクリル酸またはその塩を用いることができるが、アクリル酸またはその塩を単量体とする場合、特に吸水性が向上した高吸水性樹脂を得ることができるという長所がある。」 ・「【0024】 その後、本発明による高吸水性樹脂の製造方法は、b)前記含水ゲル状重合体を乾燥する段階を経る。」 ・「【0033】 その後、本発明による高吸水性樹脂の製造方法は、前記乾燥段階を経た後、c)前記乾燥された重合体を粉砕する段階を経る。前記粉砕段階の後に得られる重合体の粒度は150~850μmである。本発明による高吸水性樹脂の製造方法において、このような粒度に粉砕するために用いられる紛砕機は、具体的に、ピンミル(pin mill)、ハンマーミル(hammer mill)、スクリューミル(screw mill)、ロールミル(roll mill)、ディスクミル(disc mill)またはジョグミル(jog mill)などを用いることができるが、これに限定されない。 【0034】 その後、本発明による高吸水性樹脂の製造方法は、d)前記粉砕された含水ゲル状重合体を粒度150μm未満である粒子、粒度150μm以上300μm未満である粒子、粒度300μm以上450μm未満である粒子、粒度450μm以上600μm以下である粒子、および粒度600μm以上850μm以下である粒子に分級する段階を経る。この時、分級基準となる粒度は、重合体粒子重量当たり比表面積の比率を基準にすることができる。分級段階の数値が大きくなるほど、表面架橋剤の添加時、重合体粒子に添加される表面架橋剤の分布をより均一にすることができるという長所がある。したがって、本発明による高吸水性樹脂の製造方法は、添加される表面架橋剤の均一性の確保および工程の経済性などを考慮して、150μm未満である粒子、粒度150μm以上300μm未満である粒子、粒度300μm以上450μm未満である粒子、粒度450μm以上600μm以下である粒子、および粒度600μm以上850μm以下である粒子に分級する。 【0035】 前記分級段階の製造工程を具体的に説明すると、重合体供給機から供給された含水ゲル状重合体を重合体紛砕機で150~850μmの粒度に粉砕した後、各粒度の大きさによる分級機を経て分級される。この時、粒度150μm未満の微粉は別途に分級せず、粒度850μmを超える粒子は別途に分級して、紛砕機に再び戻すことができる。 【0036】 その後、本発明による高吸水性樹脂の製造方法は、e)前記粉砕された含水ゲル状重合体のうち、粒度600μm以上850μm以下である粒子、粒度300μm以上600μm以下である粒子および粒度150μm以上300μm未満である粒子が混合された正常粒子に、450μm以下の大きさの粒子を用いて再造粒した再造粒体を混合する段階を経る。前記f)段階において、正常粒子は600~850μmの大きさの粒子、300~600μmの大きさの粒子および150~300μmの大きさの粒子が混合されている含水ゲル状重合体粒子を意味し、再造粒体は前記含水ゲル状重合体のうち、450μm以下の大きさの粒子を用いて再造粒したものを意味する。前記再造粒体は450μm未満の粒子100重量部当たり水50~300重量部を高速回転するミキサーに投入して30秒~5分間混合して製造することができる。 【0037】 前記e)段階の含水ゲル状重合体は、好ましくは、正常粒子と再造粒体の全体総重量を基準に、粒度600~850μmの大きさの粒子0.01~3重量%、粒度300~600μmの大きさの粒子50~80重量%、粒度150~300μmの大きさの粒子1~25重量%および粒度450μm以下の大きさの粒子を用いて再造粒した再造粒体15~30重量%を含むことができる。」 ・「【0041】 本発明による高吸水性樹脂の製造方法は、f)前記混合された含水ゲル状重合体のそれぞれに表面架橋剤を添加する段階を経る。前記段階では正常粒子と再造粒体が混合された含水ゲル状重合体に表面架橋剤を添加するようになるが、粒度の大きさに応じたそれぞれの含水ゲル状重合体に添加される表面架橋剤の組成はそれぞれ同一であってもよく、場合によっては異なる組成で添加されてもよい。」 ・「【0049】 本発明による高吸水性樹脂の製造方法は、g)前記含水ゲル状重合体の表面架橋反応を行う段階を経る。」 ・「【0061】 [実施例] 含水ゲル状重合体の製造 アクリル酸単量体100g、苛性ソーダ(NaOH)38.9gおよび水103.9gを混合し、前記混合物に光重合開始剤であるジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド0.01g、熱重合開始剤である過硫酸ナトリウム0.18g、および架橋剤であるポリエチレングリコールジアクリレート0.30gを添加してモノマー組成物を準備した。このようなモノマー組成物は、恒温槽を用いて40℃に維持し、2軸シリコンベルト形態の回転式ベルトに注入し、ベルト上部に位置した水銀UVランプ光源を用いて10mWの強さで60秒間紫外線を照射した。また反応機は、光重合以降、熱重合が実施される時、内部温度を90℃に維持して熱重合反応が円滑に行われるように熱風と断熱装置をした。 【0062】 以降、切断機から吐出された含水ゲル状重合体を180℃温度の熱風乾燥機で1時間乾燥した。 【0063】 次に、ピンミル紛砕機で粉砕した後、ふるい(sieve)を用いて粒度が150μm未満である粒子、粒度150μm以上300μm未満である粒子、粒度300μm以上450μm未満である粒子、粒度450μm以上600μm以下である粒子、および粒度600μm以上850μm以下である粒子に分級した。 【0064】 再造粒体の製造方法は、前記分級された粒度別重合体のうち、450μm未満の粒子100重量部当たり水100重量部を高速回転するミキサーに投入して1分間混合して製造した。再造粒体は粒子間の接着性が増加して粒子同士でひっつくようになり、含まれている含水率は約50%程度であった。 【0065】 次に、ピンミル紛砕機で粉砕した後、180℃温度の熱風乾燥機で1時間乾燥し、ふるい(sieve)を用いて粒度150μm以上600μm以下である粒子を選別した。 【0066】 このように製造された再造粒体は、前記乾燥後、分級された正常粒子(150μm以上850μm未満)と下記表1のように混合して表面架橋前段階の粒子を製造した。 【0067】 【表1】 【0068】 高吸水性樹脂の製造 前記実施例1~3および比較例1~3で製造された表面架橋前段階の粒子を表面処理して、高吸水性樹脂を製造した。表面処理前段階の粒子100重量部当たり1,3-プロパンジオール1.0重量部および水3.0重量部を含む溶液を噴射混合した。その後、表面架橋反応機に投入して、180℃下で30分間表面架橋反応を進行した。表面架橋反応後、冷却する段階を追加的に経て高吸水性樹脂粉末を得た。 【0069】 実験例:物性評価 前記比較例1~比較例3および実施例1~実施例3による高吸水性樹脂の物性を評価するために下記のような試験を進行した。 【0070】 (1)無荷重下吸収倍率(CRC) 前記比較例1~比較例3および実施例1~実施例3による高吸水性樹脂W(g)(約0.1g)を不織布製の封筒に均一に入れて密封(seal)した後、常温で0.9質量%の生理食塩水に浸水させた。30分後に封筒を遠心分離機を用いて250Gで3分間水気を除去した後に封筒の質量W2(g)を測定した。また樹脂を利用せずに同一の操作をした後にその時の質量W1(g)を測定した。得られた各質量を用いて次の式によりCRC(g/g)を算出した。 【0071】 [数式1] CRC(g/g)={(W2(g)-W1(g))/W(g)}-1 (2)加圧吸収能(AUP:Absorbency under Pressure) 内径60mmのプラスチックの円筒の底にステンレス製400mesh鉄網を装着させた。常温、湿度50%の条件下で鉄網上に前記比較例1~比較例3および実施例1~実施例3による高吸水性樹脂0.90gをそれぞれ均一に散布し、その上に4.83kPa(0.7psi)の荷重を均一にさらに付与できるピストン(piston)は、外径が60mmより若干小さく、円筒の内壁と隙間がなく、上下の動きが妨害されないようにした。この時、前記装置の重量Wa(g)を測定した。 【0072】 直径150mmのペトロ皿の内側に直径90mmに厚さ5mmのガラスフィルターを置き、0.90重量%の塩化ナトリウムで構成された生理食塩水をガラスフィルターの上面と同一のレベルになるようにした。その上に直径90mmの濾過紙1枚を載せた。濾過紙の上に前記測定装置を載せ、液を荷重下で1時間吸収した。1時間後、測定装置を持ち上げ、その重量Wb(g)を測定した。 【0073】 そして、Wa、Wbから次の式により加圧吸収能を算出した。 【0074】 [数式2] AUP(g/g)=[Wb(g)-Wa(g)]/吸水樹脂の質量(g) (3)生理食塩水流れ誘導性(SFC:Saline Flow conductivity) 本発明のSFC値は米国特許第5669894号に開示されたSFC試験方法に基づき、前記比較例1~比較例3および実施例1~実施例3による高吸水性樹脂に対する、荷重2.07kPaでの0.69重量%塩化ナトリウム水溶液の透水性を測定した。 【0075】 (4)うず巻きの実験(Vortex-test) 100mlビーカーに、0.9重量%のNaCl溶液50mlを入れた後、攪拌機を用いて600rpmで攪拌しながら、前記比較例1~比較例3および実施例1~実施例3による高吸水性樹脂2.00gをそれぞれ添加する。攪拌によりできる液体のうず巻き(vortex)がなくなり、なめらかな表面ができる時までの時間を測定した。 【0076】 前記のように測定したそれぞれの物性を測定し、その結果を表2に示した。また、Vortex時間値を図1に、SFC値を図2にそれぞれグラフで示した。 【0077】 【表2】 【0078】 前記表2に示されているように、実施例1~3は、比較例1~3に対して同一の水準のCRC値および0.7AUP値を示すことが分かった。また、表2、図1および図2から、本発明の実施例1~3の高吸水性樹脂のVortex時間が遥かに小さくて吸水速度に優れており、SFC値も向上したことが分かり、したがって、本発明の高吸水性樹脂が従来の高吸水性樹脂に比べて向上した透水性(Permeability)および吸水速度を有することを確認できた。」 ・「 」 ウ 判断 (ア)発明の詳細な説明の【0001】ないし【0006】の記載によると、本件特許発明1、2、4ないし7及び9ないし14の解決しようとする課題(以下、「発明の課題」という。)は、「吸水速度および透水性の特性を共に向上させることができる高吸水性樹脂を提供すること」である。 他方、発明の詳細な説明の【0013】ないし【0017】、【0024】、【0033】ないし【0036】、【0041】、【0049】、【0061】ないし【0068】及び【0069】ないし【0078】によると、水溶性エチレン系不飽和単量体および重合開始剤を含む単量体組成物を熱重合または光重合して含水ゲル状重合体を準備する段階と、前記含水ゲル状重合体を乾燥する段階と、前記乾燥された重合体を粉砕する段階と、前記粉砕された含水ゲル状重合体を粒度150μm未満である粒子、粒度150μm以上300μm未満である粒子、粒度300μm以上450μm未満である粒子、粒度450μm以上600μm以下である粒子、および粒度600μm以上850μm以下である粒子に分級する段階と、前記粉砕された含水ゲル状重合体のうち、粒度600μm以上850μm以下である粒子、粒度300μm以上600μm以下である粒子および粒度150μm以上300μm未満である粒子からなる正常粒子に、粒度150μm未満である粒子、粒度150μm以上300μm未満である粒子、粒度300μm以上450μm未満である粒子を含む450μm以下の大きさの粒子を用いて再造粒した再造粒体を混合する段階と、前記混合された含水ゲル状重合体のそれぞれに表面架橋剤を添加する段階と、前記含水ゲル状重合体の表面架橋反応を行う段階と、を含み、前記再造粒体は、粒度150~600μmの大きさを有し、正常粒子に再造立体を混合する段階の含水ゲル状重合体は、正常粒子および再造粒体を合わせた全体総重量を基準に、前記粒度600~850μmの大きさの粒子0.01~3重量%、前記粒度300~600μmの大きさの粒子60~80重量%、および前記粒度150~300μmの大きさの粒子1~25重量%からなる正常粒子の70~85重量%;および前記再造粒体の15~30重量%を含む高吸水性樹脂の製造方法は、発明の課題を解決できると当業者は認識する。 そして、本件特許発明1は、上記製造方法の範囲のものである。 したがって、本件特許発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 請求項1を直接又は間接的に引用する本件特許発明2、4ないし7及び9ないし14についても同様である。 (イ)取消理由2のアについて 本件訂正により、本件特許発明1には、粒度150μm未満又は粒度850μm以上の大きさの粒子や再造粒体を多量に含む高吸水性樹脂の製造方法は含まれないことになった。 したがって、本件特許発明1は、透水性(SFC)が劣るものや吸水速度が劣るものを多量に含む高吸水性樹脂の製造方法は含まれないことになるから、本件特許発明1は発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 請求項1を直接又は間接的に引用する本件特許発明2、4ないし7及び9ないし14についても同様である。 (ウ)取消理由2のイについて 本件訂正により、本件特許発明1には、150μm以上850μm未満に分級された正常粒子70%以上85%以下と粒度150μm以上600μm以下に選別された再造粒体15%以上30%以下を混合したもの以外のものは含まれないことになった。 したがって、本件特許発明1は発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるとはいえる。 請求項1を直接又は間接的に引用する本件特許発明2、4ないし7及び9ないし14についても同様である。 (エ)まとめ したがって、本件特許発明1、2、4ないし7及び9ないし14に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。 エ 取消理由2についてのまとめ したがって、本件特許の請求項1、2、4ないし7及び9ないし14に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえず、同法第113条第4号に該当しない。 (3)取消理由3(実施可能要件)について ア 実施可能要件の判断基準 物を生産する方法の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産する方法の使用をし、その物を生産する方法により生産した物の使用をすることができる程度の記載があることを要する。 そこで、検討する。 イ 発明の詳細な説明の記載及び図面 発明の詳細な説明の記載及び図面は、上記(2)イのとおりである。 ウ 判断 発明の詳細な説明には、本件特許発明12の発明特定事項である「前記高吸水性樹脂は、Vortex測定方法により測定した吸水速度が40秒以下である」に関して、具体的な記載、すなわちVortex測定をいかなる温度及び撹拌条件(撹拌子の長さ)において行ったかについての記載がない。 しかし、上記(1)イ(ア)のとおり、「Vortex測定方法」に関して、「日本工業規格 JIS K7224 高吸収性樹脂の吸収速度試験方法」には、試験器具の回転数や寸法が記載されている。 してみると、「前記高吸水性樹脂は、Vortex測定方法により測定した吸水速度が40秒以下である」とする条件が発明の詳細な説明に記載されていないとしても、当業者であれば、どのような条件で実施すればよいか理解できる。 また、上記(2)イ及びウ(ア)のとおり、発明の詳細な説明には、本件特許発明12の「前記高吸水性樹脂は、Vortex測定方法により測定した吸水速度が40秒以下である」という発明特定事項以外の発明特定事項について具体的に記載され、本件特許発明12の実施例についても具体的に記載されている。 したがって、物を生産する方法の発明である本件特許発明12について、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産する方法の使用をし、その物を生産する方法により生産した物の使用をすることができる程度の記載があるといえる。 請求項12を直接又は間接的に引用する本件特許発明13及び14についても同様である。 エ 取消理由3についてのまとめ したがって、本件特許の請求12ないし14に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえず、同法第113条第4号に該当しない。 (4)取消理由4(甲1に基づく新規性・進歩性)について 本件訂正により、取消理由4の内、甲1に基づく新規性違反の対象である請求項15ないし19は、削除されたので、甲1に基づく進歩性違反について検討する。 ア 甲1発明 甲1の[0016]、[0017]、[0037]、[0055]、[0060]、[0066]、[0074]、[0286]、[0290]、[0295]ないし[0300]、[0316]ないし[0320]及び[0336]ないし[0344]に記載された事項を実施例15に関して整理すると、甲1には次の発明が記載されていると認める。 <甲1発明> 「シグマ型羽根を2本有するジャケット付きステンレス型双腕型ニーダーに蓋を付けて形成した反応器中で、アクリル酸506質量部、37質量%アクリル酸ナトリウム水溶液4431質量部、純水581質量部、ポリエチレングリコールジアクリレート(分子量523)11.5質量部を溶解させて反応液とし、次に、この反応液を窒素ガス雰囲気下で、20分間脱気し、続いて、反応液に10質量%過硫酸ナトリウム水溶液29質量部および0.1質量%L-アスコルビン酸水溶液24質量部を攪拌しながら添加したところ、およそ1分後に重合が開始し、そして、生成したゲルを粉砕しながら、20~95℃で重合を行い、重合が開始して30分後に含水ゲル状架橋重合体を取り出し、得られた含水ゲル状架橋重合体は、その径が約5mm以下に細分化され、この細分化された含水ゲル状架橋重合体を50メッシュの金網上に広げ、180℃で50分間熱風乾燥を行い、乾燥後の架橋重合体をロールミルで粉砕し、粉砕物を目開き710μmと目開き150μmのJIS標準篩で分級することにより、質量平均粒子径346μm、質量平均粒子径の対数標準偏差(σζ)0.31で不定形粒子状の非造粒物である吸水性樹脂(30A)と、150μmの篩を通過した微粉である吸水性樹脂(30a)を得、該吸水性樹脂(30A)100質量部と表面架橋前の微粉(30a)18質量部と150μmの篩を通過した微粉である表面架橋後の微粉(30b)3質量部との混合物に95℃の温水24質量部を混合したのち、得られた含水ゲルを180℃で乾燥し、次いで、ロールミルで粉砕し、710μmと150μmの篩で分級することにより、2つの篩間で、得た粒子状造粒物である吸水性樹脂(100)21質量部との混合物に、1,4-ブタンジオール0.46質量部、プロピレングリコール0.70質量部および純水3.5質量部を混合してなる表面処理剤溶液を鋤型混合機で均一に混合し、200℃に加熱されたパドルミキサー中で加熱処理し、冷却したのち、該冷却物100質量部に、25%硫酸アルミニウム水溶液2.5質量部および50%乳酸ナトリウム水溶液0.5質量部からなる混合液3質量部を混合し、室温で30分間静置し、目開き710μmと150μmのJIS標準篩で分級することにより、2つの篩間で、質量平均粒子径360μm、質量平均粒子径の対数標準偏差(σζ)0.38で不定形粒子状の非造粒物である吸水性樹脂(11B)を製造する方法。」 イ 対比・判断 (ア)本件特許発明1について 本件特許発明1と甲1発明を対比する。 甲1発明における「アクリル酸506質量部、37質量%アクリル酸ナトリウム水溶液4431質量部」は本件特許発明1における「水溶性エチレン不飽和系単量体」に相当し、以下同様に「含水ゲル状架橋重合体」は「含水ゲル状重合体」に、「吸水性樹脂(30A)」は「粒度600μm以上850μm以下である粒子、粒度300μm以上600μm以下である粒子および粒度150μm以上300μm未満である粒子が混合された正常粒子」に、「1,4-ブタンジオール0.46質量部、プロピレングリコール0.70質量部および純水3.5質量部を混合してなる表面処理剤溶液を鋤型混合機で均一に混合し、200℃に加熱されたパドルミキサー中で加熱処理し、冷却したのち、該冷却物100質量部に、25%硫酸アルミニウム水溶液2.5質量部および50%乳酸ナトリウム水溶液0.5質量部からなる混合液3質量部を混合し、室温で30分間静置し」は「表面架橋」に、「質量平均粒子径360μm、質量平均粒子径の対数標準偏差(σζ)0.38で不定形粒子状の非造粒物である吸水性樹脂(11B)」は「高吸水性樹脂」に、それぞれ相当する。 そうすると、甲1発明が、本件特許発明1における「a)水溶性エチレン系不飽和単量体および重合開始剤を含む単量体組成物を熱重合または光重合して含水ゲル状重合体を準備する段階」、「b)前記含水ゲル状重合体を乾燥する段階」、「c)前記乾燥された重合体を粉砕する段階」、「f)前記混合された含水ゲル状重合体のそれぞれに表面架橋剤を添加する段階」及び「g)前記含水ゲル状重合体の表面架橋反応を行う段階」を有していることは明らかである。 また、甲1発明が、本件特許発明1における「d)前記粉砕された含水ゲル状重合体を粒度150μm未満である粒子、粒度150μm以上300μm未満である粒子、粒度300μm以上450μm未満である粒子、粒度450μm以上600μm以下である粒子、および粒度600μm以上850μm以下である粒子に分級する段階」と「d)前記粉砕された含水ゲル状重合体を分級する段階」という限りで一致する段階を有していることも明らかである。 さらに、甲1発明が、本件特許発明1における「e)前記粉砕された含水ゲル状重合体のうち、粒度600μm以上850μm以下である粒子、粒度300μm以上600μm以下である粒子および粒度150μm以上300μm未満である粒子からなる正常粒子に、粒度150μm未満である粒子、粒度150μm以上300μm未満である粒子、粒度300μm以上450μm未満である粒子を含む450μm以下の大きさの粒子を用いて再造粒した再造粒体を混合する段階」と「e)前記粉砕された含水ゲル状重合体のうち、粒度600μm以上850μm以下である粒子、粒度300μm以上600μm以下である粒子および粒度150μm以上300μm未満である粒子からなる正常粒子に、450μm以下の大きさの粒子を用いて再造粒した再造粒体を混合する段階」という限りで一致する段階を有していることも明らかである。 したがって、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「a)水溶性エチレン系不飽和単量体および重合開始剤を含む単量体組成物を熱重合または光重合して含水ゲル状重合体を準備する段階と、 b)前記含水ゲル状重合体を乾燥する段階と、 c)前記乾燥された重合体を粉砕する段階と、 d)前記粉砕された含水ゲル状重合体を分級する段階、 e)前記粉砕された含水ゲル状重合体のうち、粒度600μm以上850μm以下である粒子、粒度300μm以上600μm以下である粒子および粒度150μm以上300μm未満である粒子が混合された正常粒子に、450μm以下の大きさの粒子を用いて再造粒した再造粒体を混合する段階と、 f)前記混合された含水ゲル状重合体のそれぞれに表面架橋剤を添加する段階と、 g)前記含水ゲル状重合体の表面架橋反応を行う段階と、を含む高吸水性樹脂の製造方法。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点1-1> 「d)前記粉砕された含水ゲル状重合体を分級する段階」に関して、本件特許発明1においては、「d)前記粉砕された含水ゲル状重合体を粒度150μm未満である粒子、粒度150μm以上300μm未満である粒子、粒度300μm以上450μm未満である粒子、粒度450μm以上600μm以下である粒子、および粒度600μm以上850μm以下である粒子に分級する段階」と特定されているのに対し、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点1-2> 「e)前記粉砕された含水ゲル状重合体のうち、粒度600μm以上850μm以下である粒子、粒度300μm以上600μm以下である粒子および粒度150μm以上300μm未満である粒子が混合された正常粒子に、450μm以下の大きさの粒子を用いて再造粒した再造粒体を混合する段階」に関して、本件特許発明1においては、「再造粒」に用いる「450μm以下の大きさの粒子」が、「粒度150μm未満である粒子、粒度150μm以上300μm未満である粒子、粒度300μm以上450μm未満である粒子を含む」と特定され、「再造粒体」が「粒度150~600μmの大きさを有し」と特定され、さらに、「含水ゲル状重合体」が「正常粒子および再造粒体を合わせた全体総重量を基準に、前記粒度600~850μmの大きさの粒子0.01~3重量%、前記粒度300~600μmの大きさの粒子60~80重量%、および前記粒度150~300μmの大きさの粒子1~25重量%からなる正常粒子の70~85重量%;および前記再造粒体の15~30重量%を含む」と特定されているのに対し、甲1発明においては、そのようには特定されていない点。 そこで、事案に鑑み、相違点1-2から検討する。 甲1には、「再造粒」に用いる「450μm以下の大きさの粒子」に、「粒度150μm未満である粒子」、「粒度150μm以上300μm未満である粒子」及び「粒度300μm以上450μm未満である粒子」の3種類を含ませることは記載も示唆もされていない。 また、甲1には、「再造粒体」が「粒度150~600μm」の大きさを有することは記載も示唆もされていない。 さらに、甲1には、「含水ゲル状重合体」が「正常粒子および再造粒体を合わせた全体総重量を基準に、前記粒度600~850μmの大きさの粒子0.01~3重量%、前記粒度300~600μmの大きさの粒子60~80重量%、および前記粒度150~300μmの大きさの粒子1~25重量%からなる正常粒子の70~85重量%;および前記再造粒体の15~30重量%を含む」ことは記載も示唆もされていない。 そして、他のいずれの証拠にも、上記事項は記載も示唆もされていない。 したがって、甲1発明において、他の証拠を考慮しても、相違点1-2に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明1は、「従来使用していた高吸水性樹脂に比べて吸水速度および透水性の特性を共に向上」(【0009】)させた高吸水性樹脂を製造することができるという甲1発明及び他の証拠に記載された事項からみて格別顕著な効果を奏するものである。 したがって、相違点1-1について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (イ)本件特許発明2、4ないし7及び9ないし14について 本件特許発明2、4ないし7及び9ないし14は、請求項1を引用するものであり、本件特許発明1をさらに限定したものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ 取消理由4についてのまとめ したがって、本件特許の請求項1、2、4ないし7及び9ないし14に係る発明は、甲1発明、すなわち甲第1号証に記載された発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではないから、本件特許の請求項1、2、4ないし7及び9ないし14に係る特許は、同法第113条第2号に該当するものではない。 (5)取消理由5(甲2を主引用文献とする進歩性)について ア 甲2発明 甲2の【0009】ないし【0012】、【0018】、【0055】、【0071】ないし【0074】、【0076】ないし【0081】、【0084】、【0090】、【0091】、【0141】、【0162】、【0170】、【0174】、【0180】、【0194】に記載された事項を実施例3に関して整理すると、甲2には次の発明が記載されていると認める。 <甲2発明> 「アクリル酸(アクリル酸ダイマー20ppm、酢酸50ppm、プロピオン酸50ppm、フルフラール1ppm以下、プロトアネモニン1ppm以下)、該アクリル酸を用いて得られたアクリル酸ナトリウム水溶液、および脱イオン水を混合して得られた75モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5500g(単量体濃度38質量%)に、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数9)7.5gを溶解し反応液とし、次に、この反応液を脱気したのち、反応器に、上記反応液を供給し、反応液を30℃に保ちながら系を窒素ガス置換し、続いて、反応液を撹拌しながら、過硫酸ナトリウムの10質量%水溶液28.3g及びL-アスコルビン酸の1質量%水溶液1.5gを添加したところ、およそ1分後に重合が開始し、重合開始後17分で重合ピーク温度86℃を示し、重合を開始して40分後に含水ゲル状重合体を取り出し、得られた含水ゲル状重合体は約1~4mmの粒子に細分化され、この細分化された含水ゲル状重合体を50メッシュ(目の大きさ300μm)の金網上に広げ、160℃で60分間熱風乾燥し、次いで、乾燥物をロールミルを用いて粉砕し、さらに目開き600μmの金網で分級、調合することにより、得た不定形破砕状の吸水性樹脂(c)100質量部に、エチレンカーボネート0.2質量部、1,3-プロパンジオール0.3量量部と、水3質量部とからなる表面架橋剤水溶液3.5質量部を噴霧混合し、上記の混合物を、パドル型混合加熱処理機を用いてその上部空間の気体を外気と置換しながら、粉体温度200℃で45分間加熱処理して表面架橋された吸水性樹脂(3)を得、得られた表面架橋された吸水性樹脂(3)に水2質量部を噴霧混合し、得られた混合物を60℃で1時間硬化し、さらに目開き710μmのふるいを通過させることにより、粒子状吸水剤(3)を製造する方法。」 イ 対比・判断 (ア)本件特許発明1について 本件特許発明1と甲2発明を対比する。 甲2発明における「アクリル酸(アクリル酸ダイマー20ppm、酢酸50ppm、プロピオン酸50ppm、フルフラール1ppm以下、プロトアネモニン1ppm以下)、該アクリル酸を用いて得られたアクリル酸ナトリウム水溶液」は本件特許発明1における「水溶性エチレン不飽和系単量体」に相当し、以下同様に「重合を開始して40分後に含水ゲル状重合体を取り出し、得られた含水ゲル状重合体」は「含水ゲル状重合体」に、「粒子状吸水剤(3)」は「高吸水性樹脂」に、それぞれ相当する。 そうすると、甲2発明が、「a)水溶性エチレン系不飽和単量体および重合開始剤を含む単量体組成物を熱重合または光重合して含水ゲル状重合体を準備する段階」、「b)前記含水ゲル状重合体を乾燥する段階」、「c)前記乾燥された重合体を粉砕する段階」、「f)混合された含水ゲル状重合体のそれぞれに表面架橋剤を添加する段階」及び「g)前記含水ゲル状重合体の表面架橋反応を行う段階」に相当する段階を有することは明らかである。 また、甲2発明が、本件特許発明1における「d)前記粉砕された含水ゲル状重合体を粒度150μm未満である粒子、粒度150μm以上300μm未満である粒子、粒度300μm以上450μm未満である粒子、粒度450μm以上600μm以下である粒子、および粒度600μm以上850μm以下である粒子に分級する段階」と「d)前記粉砕された含水ゲル状重合体を分級する段階」という限りで一致する段階を有していることも明らかである。 したがって、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「a)水溶性エチレン系不飽和単量体および重合開始剤を含む単量体組成物を熱重合または光重合して含水ゲル状重合体を準備する段階と、 b)前記含水ゲル状重合体を乾燥する段階と、 c)前記乾燥された重合体を粉砕する段階と、 d)前記粉砕された含水ゲル状重合体を分級する段階と、 f)混合された含水ゲル状重合体のそれぞれに表面架橋剤を添加する段階と、 g)前記含水ゲル状重合体の表面架橋反応を行う段階と、を含む高吸水性樹脂の製造方法。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点2-1> 「d)前記粉砕された含水ゲル状重合体を分級する段階」に関して、本件特許発明1においては、「d)前記粉砕された含水ゲル状重合体を粒度150μm未満である粒子、粒度150μm以上300μm未満である粒子、粒度300μm以上450μm未満である粒子、粒度450μm以上600μm以下である粒子、および粒度600μm以上850μm以下である粒子に分級する段階」と特定されているのに対し、甲2発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点2-2> 本件特許発明1においては、「e)前記粉砕された含水ゲル状重合体のうち、粒度600μm以上850μm以下である粒子、粒度300μm以上600μm以下である粒子および粒度150μm以上300μm未満である粒子からなる正常粒子に、粒度150μm未満である粒子、粒度150μm以上300μm未満である粒子、粒度300μm以上450μm未満である粒子を含む450μm以下の大きさの粒子を用いて再造粒した再造粒体を混合する段階」を含むこと、「前記再造粒体は、粒度150~600μmの大きさを有」すること及び「前記e)段階の含水ゲル状重合体は、正常粒子および再造粒体を合わせた全体総重量を基準に、前記粒度600~850μmの大きさの粒子0.01~3重量%、前記粒度300~600μmの大きさの粒子60~80重量%、および前記粒度150~300μmの大きさの粒子1~25重量%からなる正常粒子の70~85重量%;および前記再造粒体の15~30重量%を含む」ことが特定されているのに対し、甲2発明においては、そのようには特定されていない点。 そこで、事案に鑑み、相違点2-2から検討する。 甲2には、「粉砕された含水ゲル状重合体のうち、粒度600μm以上850μm以下である粒子、粒度300μm以上600μm以下である粒子および粒度150μm以上300μm未満である粒子からなる正常粒子に、粒度150μm未満である粒子、粒度150μm以上300μm未満である粒子、粒度300μm以上450μm未満である粒子を含む450μm以下の大きさの粒子を用いて再造粒した再造粒体を混合する」ことは記載も示唆もされていない。 また、甲2には、「再造粒体」が「粒度150~600μm」の大きさを有することは記載も示唆もされていない。 さらに、甲2には、「含水ゲル状重合体」が「正常粒子および再造粒体を合わせた全体総重量を基準に、前記粒度600~850μmの大きさの粒子0.01~3重量%、前記粒度300~600μmの大きさの粒子60~80重量%、および前記粒度150~300μmの大きさの粒子1~25重量%からなる正常粒子の70~85重量%;および前記再造粒体の15~30重量%を含む」ことは記載も示唆もされていない。 そして、他のいずれの証拠にも、上記事項は記載も示唆もされていない。 したがって、甲2発明において、他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点2-2に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明1は、「従来使用していた高吸水性樹脂に比べて吸水速度および透水性の特性を共に向上」させた高吸水性樹脂を製造することができるという甲2発明及び他の証拠に記載された事項からみて格別顕著な効果を奏するものである。 したがって、相違点2-1について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲2発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (イ)本件特許発明2、4ないし7及び9ないし14について 本件特許発明2、4ないし7及び9ないし14は、請求項1を引用するものであり、本件特許発明1をさらに限定したものであるから、本件特許発明1と同様に、甲2発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ 取消理由5についてのまとめ したがって、本件特許の請求項1、2、4ないし7及び9ないし14に係る発明は、甲2発明、すなわち甲第2号証に記載された発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではないから、本件特許の請求項1、2、4ないし7及び9ないし14に係る特許は、同法第113条第2号に該当するものではない。 (6)取消理由6(甲3を主引用文献とする進歩性)について ア 甲3発明 甲3の【0008】、【0009】、【0017】、【0018】、【0045】、【0059】、【0064】ないし【0069】、【0115】、【0170】、【0176】、【0177】、【0189】ないし【0193】及び【0228】に記載された事項を実施例5に関して整理すると、甲3には次の発明が記載されていると認める。 <甲3発明> 「70モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5500g(単量体濃度30質量%)に、ポリエチレングリコールジアクリレート(エチレンオキシドの平均付加モル数9)20.0g、フォスフィン酸ナトリウム3.3gを溶解し反応液とし、次に、この反応液を脱気したのち、反応器に、上記反応液を供給し、反応液を30℃に保ちながら系を窒素ガス置換し、続いて、反応液を撹拌しながら、過硫酸ナトリウムの10質量%水溶液22.6g及びL-アスコルビン酸の1質量%水溶液1.1gを添加したところ、およそ1分後に重合が開始し、重合開始後18分で重合ピーク温度82℃を示し、重合を開始して40分後に含水ゲル状重合体を取り出し、得られた含水ゲル状重合体は約1~4mmの粒子に細分化され、この含水ゲル状重合体を乾燥・粉砕し、さらに目開き600μmと150μmの金網で分級、調合することにより、不定形破砕状の吸水性樹脂粉末(e)を得、次いで、得られた吸水性樹脂粉末(e)100質量部に、プロピレングリコール0.5質量部と、1,3-プロパンジオール0.3質量部と、水3質量部とからなる表面架橋剤3.8質量部を混合し、上記の混合物を熱媒温度195℃で40分間加熱処理することにより吸水性樹脂(5)を得、得られた吸水性樹脂(5)100質量部に、水2質量部を噴霧混合し、得られた混合物を60℃で1時間硬化することにより、吸水剤(5)を製造する方法。」 イ 対比・判断 (ア)本件特許発明1について 本件特許発明1と甲3発明を対比する。 甲3発明における「70モル%の中和率を有するアクリル酸ナトリウムの水溶液5500g(単量体濃度30質量%)」は本件特許発明1における「水溶性エチレン不飽和系単量体」に相当し、以下同様に「重合を開始して40分後に含水ゲル状重合体を取り出し、得られた含水ゲル状重合体」は「含水ゲル状重合体」に、「表面架橋剤3.8質量部を混合し、上記の混合物を熱媒温度195℃で40分間加熱処理」は「表面架橋」に、「吸水剤(5)」は「高吸水性樹脂」に、それぞれ相当する。 そうすると、甲3発明が、「a)水溶性エチレン系不飽和単量体および重合開始剤を含む単量体組成物を熱重合または光重合して含水ゲル状重合体を準備する段階」、「b)前記含水ゲル状重合体を乾燥する段階」、「c)前記乾燥された重合体を粉砕する段階」、「f)混合された含水ゲル状重合体のそれぞれに表面架橋剤を添加する段階」及び「g)前記含水ゲル状重合体の表面架橋反応を行う段階」に相当する段階を有することは明らかである。 また、甲3発明が、本件特許発明1における「d)前記粉砕された含水ゲル状重合体を粒度150μm未満である粒子、粒度150μm以上300μm未満である粒子、粒度300μm以上450μm未満である粒子、粒度450μm以上600μm以下である粒子、および粒度600μm以上850μm以下である粒子に分級する段階」と「d)前記粉砕された含水ゲル状重合体を分級する段階」という限りで一致する段階を有していることも明らかである。 したがって、 両者は次の点で一致する。 <一致点> 「a)水溶性エチレン系不飽和単量体および重合開始剤を含む単量体組成物を熱重合または光重合して含水ゲル状重合体を準備する段階と、 b)前記含水ゲル状重合体を乾燥する段階と、 c)前記乾燥された重合体を粉砕する段階と、 d)前記粉砕された含水ゲル状重合体を分級する段階と、 f)混合された含水ゲル状重合体のそれぞれに表面架橋剤を添加する段階と、 g)前記含水ゲル状重合体の表面架橋反応を行う段階と、を含む高吸水性樹脂の製造方法。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点3-1> 「d)前記粉砕された含水ゲル状重合体を分級する段階」に関して、本件特許発明1においては、「d)前記粉砕された含水ゲル状重合体を粒度150μm未満である粒子、粒度150μm以上300μm未満である粒子、粒度300μm以上450μm未満である粒子、粒度450μm以上600μm以下である粒子、および粒度600μm以上850μm以下である粒子に分級する段階」と特定されているのに対し、甲3発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点3-2> 本件特許発明1においては、「e)前記粉砕された含水ゲル状重合体のうち、粒度600μm以上850μm以下である粒子、粒度300μm以上600μm以下である粒子および粒度150μm以上300μm未満である粒子からなる正常粒子に、粒度150μm未満である粒子、粒度150μm以上300μm未満である粒子、粒度300μm以上450μm未満である粒子を含む450μm以下の大きさの粒子を用いて再造粒した再造粒体を混合する段階」を含むこと、「前記再造粒体は、粒度150~600μmの大きさを有」すること及び「前記e)段階の含水ゲル状重合体は、正常粒子および再造粒体を合わせた全体総重量を基準に、前記粒度600~850μmの大きさの粒子0.01~3重量%、前記粒度300~600μmの大きさの粒子60~80重量%、および前記粒度150~300μmの大きさの粒子1~25重量%からなる正常粒子の70~85重量%;および前記再造粒体の15~30重量%を含む」ことが特定されているのに対し、甲3発明においては、そのようには特定されていない点。 そこで、事案に鑑み、相違点3-2から検討する。 甲3には、「粉砕された含水ゲル状重合体のうち、粒度600μm以上850μm以下である粒子、粒度300μm以上600μm以下である粒子および粒度150μm以上300μm未満である粒子からなる正常粒子に、粒度150μm未満である粒子、粒度150μm以上300μm未満である粒子、粒度300μm以上450μm未満である粒子を含む450μm以下の大きさの粒子を用いて再造粒した再造粒体を混合する」ことは記載も示唆もされていない。 また、甲3には、「再造粒体」が「粒度150~600μm」の大きさを有することは記載も示唆もされていない。 さらに、甲3には、「含水ゲル状重合体」が「正常粒子および再造粒体を合わせた全体総重量を基準に、前記粒度600~850μmの大きさの粒子0.01~3重量%、前記粒度300~600μmの大きさの粒子60~80重量%、および前記粒度150~300μmの大きさの粒子1~25重量%からなる正常粒子の70~85重量%;および前記再造粒体の15~30重量%を含む」ことは記載も示唆もされていない。 そして、他のいずれの証拠にも、上記事項は記載も示唆もされていない。 したがって、甲3発明において、他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点3-2に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明1は、「従来使用していた高吸水性樹脂に比べて吸水速度および透水性の特性を共に向上」させた高吸水性樹脂を製造することができるという甲3発明及び他の証拠に記載された事項からみて格別顕著な効果を奏するものである。 したがって、相違点3-1について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲3発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (イ)本件特許発明2、4ないし7及び9ないし14について 本件特許発明2、4ないし7及び9ないし14は、請求項1を引用するものであり、本件特許発明1をさらに限定したものであるから、本件特許発明1と同様に、甲3発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ 取消理由6についてのまとめ したがって、本件特許の請求項1、2、4ないし7及び9ないし14に係る発明は、甲3発明、すなわち甲第3号証に記載された発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではないから、本件特許の請求項1、2、4ないし7及び9ないし14に係る特許は、同法第113条第2号に該当するものではない。 (7)取消理由7(甲6を主引用文献とする進歩性)について ア 甲6発明 甲6の【請求項1】、【0009】ないし【0014】、【0019】、【0031】ないし【0033】、【0058】、【0059】、【0065】、【0066】、【0103】ないし【0123】に記載された事項を実施例3に関して整理すると、甲6には次の発明が記載されていると認める。 <甲6発明> 「粒径150μm未満の吸水性樹脂微粉末(A2)を造粒して得られた150~850μmの吸水性樹脂造粒物(1)100重量部に対し、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.05重量部、プロピレングリコール1.0重量部、水3重量部、およびイソプロパノール0.9重量部からなる表面架橋剤水性液を混合し、得られた混合物を195℃で30分間加熱処理することで、得た吸水倍率33g/gで加圧下吸収倍率27g/gの比較吸水性樹脂組成物(1)40重量部と、一次粒子である粒径150~850μmの吸水性樹脂粉末(B1)に対し、表面架橋を繰り返して得た吸水倍率28g/g、加圧下吸収倍率25g/gの比較吸水性樹脂組成物(5)60重量部とを均一に混合することによって、吸水性樹脂組成物(3)を製造する方法。」 イ 対比・判断 (ア)本件特許発明1について 本件特許発明1と甲6発明を対比する。 甲6発明における「吸水性樹脂組成物(3)」は本件特許発明1における「高吸水性樹脂に相当する。 また、甲6発明が、「a)水溶性エチレン系不飽和単量体および重合開始剤を含む単量体組成物を熱重合または光重合して含水ゲル状重合体を準備する段階」、「b)前記含水ゲル状重合体を乾燥する段階」、「c)前記乾燥された重合体を粉砕する段階」、「f)含水ゲル状重合体のそれぞれに表面架橋剤を添加する段階」及び「g)前記含水ゲル状重合体の表面架橋反応を行う段階」に相当する段階を有することは明らかである。 さらに、甲6発明が、本件特許発明1における「d)前記粉砕された含水ゲル状重合体を粒度150μm未満である粒子、粒度150μm以上300μm未満である粒子、粒度300μm以上450μm未満である粒子、粒度450μm以上600μm以下である粒子、および粒度600μm以上850μm以下である粒子に分級する段階」と「d)前記粉砕された含水ゲル状重合体を分級する段階」という限りで一致する段階を有していることも明らかである。 したがって、 両者は次の点で一致する。 <一致点> 「a)水溶性エチレン系不飽和単量体および重合開始剤を含む単量体組成物を熱重合または光重合して含水ゲル状重合体を準備する段階と、 b)前記含水ゲル状重合体を乾燥する段階と、 c)前記乾燥された重合体を粉砕する段階と、 d)前記粉砕された含水ゲル状重合体を分級する段階と、 f)含水ゲル状重合体のそれぞれに表面架橋剤を添加する段階と、 g)前記含水ゲル状重合体の表面架橋反応を行う段階と、を含む高吸水性樹脂の製造方法。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点6-1> 「d)前記粉砕された含水ゲル状重合体を分級する段階」に関して、本件特許発明1においては、「d)前記粉砕された含水ゲル状重合体を粒度150μm未満である粒子、粒度150μm以上300μm未満である粒子、粒度300μm以上450μm未満である粒子、粒度450μm以上600μm以下である粒子、および粒度600μm以上850μm以下である粒子に分級する段階」と特定されているのに対し、甲6発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点6-2> 本件特許発明1においては、「e)前記粉砕された含水ゲル状重合体のうち、粒度600μm以上850μm以下である粒子、粒度300μm以上600μm以下である粒子および粒度150μm以上300μm未満である粒子からなる正常粒子に、粒度150μm未満である粒子、粒度150μm以上300μm未満である粒子、粒度300μm以上450μm未満である粒子を含む450μm以下の大きさの粒子を用いて再造粒した再造粒体を混合する段階」を含むこと、「前記再造粒体は、粒度150~600μmの大きさを有」すること及び「前記e)段階の含水ゲル状重合体は、正常粒子および再造粒体を合わせた全体総重量を基準に、前記粒度600~850μmの大きさの粒子0.01~3重量%、前記粒度300~600μmの大きさの粒子60~80重量%、および前記粒度150~300μmの大きさの粒子1~25重量%からなる正常粒子の70~85重量%;および前記再造粒体の15~30重量%を含む」ことが特定されているのに対し、甲6発明においては、そのようには特定されていない点。 そこで、事案に鑑み、相違点6-2から検討する。 甲6には、「粉砕された含水ゲル状重合体のうち、粒度600μm以上850μm以下である粒子、粒度300μm以上600μm以下である粒子および粒度150μm以上300μm未満である粒子からなる正常粒子に、粒度150μm未満である粒子、粒度150μm以上300μm未満である粒子、粒度300μm以上450μm未満である粒子を含む450μm以下の大きさの粒子を用いて再造粒した再造粒体を混合する」ことは記載も示唆もされていない。 また、甲6には、「再造粒体」が「粒度150~600μm」の大きさを有することは記載も示唆もされていない。 さらに、甲6には、「含水ゲル状重合体」が「正常粒子および再造粒体を合わせた全体総重量を基準に、前記粒度600~850μmの大きさの粒子0.01~3重量%、前記粒度300~600μmの大きさの粒子60~80重量%、および前記粒度150~300μmの大きさの粒子1~25重量%からなる正常粒子の70~85重量%;および前記再造粒体の15~30重量%を含む」ことは記載も示唆もされていない。 そして、他のいずれの証拠にも、上記事項は記載も示唆もされていない。 したがって、甲6発明において、他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点6-2に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明1は、「従来使用していた高吸水性樹脂に比べて吸水速度および透水性の特性を共に向上」させた高吸水性樹脂を製造することができるという甲6発明及び他の証拠に記載された事項からみて格別顕著な効果を奏するものである。 したがって、相違点6-1について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲6発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (イ)本件特許発明2、4ないし7及び9ないし14について 本件特許発明2、4ないし7及び9ないし14は、請求項1を引用するものであり、本件特許発明1をさらに限定したものであるから、本件特許発明1と同様に、甲6発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ 取消理由7についてのまとめ したがって、本件特許の請求項1、2、4ないし7及び9ないし14に係る発明は、甲6発明、すなわち甲第6号証に記載された発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではないから、本件特許の請求項1、2、4ないし7及び9ないし14に係る特許は、同法第113条第2号に該当するものではない。 (8)取消理由8(甲7を主引用文献とする進歩性)について ア 甲7発明 甲7の【請求項1】ないし【請求項8】、【0013】ないし【0016】、【0071】、【0072】、【0113】、【0114】、【0152】、【0153】、【0171】ないし【0173】、【0190】、【0191】、【0214】ないし【0217】、【0221】ないし【0226】及び【0231】に記載された事項を例60に関して整理すると、甲7には次の発明が記載されていると認める。 <甲7発明> 「作業容量2tを有する工業用の2本のアームを有する混練機中で、固体含有率36質量%を有する部分的に中和されたアクリル酸ナトリウムの水溶液1326kgを装入し、全反応溶液に対する比率でのアクリル酸とアクリル酸ナトリウムとの合計を固体含有率とみなし、中和度は65モル%であり、架橋剤として18回エトキシ化されたトリメチロールプロパントリアクリレート0.40質量%(アクリル酸モノマーに対する)を添加し、良好に攪拌し、かつ引き続き窒素で不活性化し、該溶液の温度は、19℃であり、撹拌下で過硫酸ナトリウム(1.27kgを水7.2kg中に溶解)およびアスコルビン酸(18.6gを水3.7kg中に溶解)を素早く添加することにより開始し、次いで強力に混練し、かつ反応器壁を冷却しながら45分間、混練機中の最大温度が、100℃を下回り、かつ微分散した塊のないゲルが生じるように重合を実施し、このゲルをバンド型乾燥器により乾燥させ、引き続きロールミルで粉砕し、かつ最終的に分級し、以下の特性を有するポリマー粉末を製造する方法。 CRC=33.9g/g、 AUL0.3psi=11.6g/g、 抽出可能分16時間=12.9質量%、 残留モノマーのアクリル酸=230ppm、 残留水分=0.5質量%、 pH=5.7。 粒径分布 >850μm <0.1質量%、 600~850μm 1.3質量%、 300~600μm 70.4質量%、 150~300μm 28.9質量%、 45~150μm 0.6質量%、 <45μm <0.1質量%、 150~500μm 98.1質量%。」 イ 対比・判断 (ア)本件特許発明1について 本件特許発明1と甲7発明を対比する。 甲7発明における「アクリル酸とアクリル酸ナトリウム」は本件特許発明1における「水溶性エチレン不飽和系単量体」に相当し、以下同様に「ゲル」は「含水ゲル状重合体」に、「以下の特性を有するポリマー粉末」は「高吸水性樹脂」に、それぞれ相当する。 そうすると、甲7発明が、「a)水溶性エチレン系不飽和単量体および重合開始剤を含む単量体組成物を熱重合または光重合して含水ゲル状重合体を準備する段階」、「b)前記含水ゲル状重合体を乾燥する段階」、「c)前記乾燥された重合体を粉砕する段階」、「f)混合された含水ゲル状重合体のそれぞれに表面架橋剤を添加する段階」及び「g)前記含水ゲル状重合体の表面架橋反応を行う段階」に相当する段階を有することは明らかである。 また、甲7発明が、本件特許発明1における「d)前記粉砕された含水ゲル状重合体を粒度150μm未満である粒子、粒度150μm以上300μm未満である粒子、粒度300μm以上450μm未満である粒子、粒度450μm以上600μm以下である粒子、および粒度600μm以上850μm以下である粒子に分級する段階」と「d)前記粉砕された含水ゲル状重合体を分級する段階」という限りで一致する段階を有していることも明らかである。 したがって、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「a)水溶性エチレン系不飽和単量体および重合開始剤を含む単量体組成物を熱重合または光重合して含水ゲル状重合体を準備する段階と、 b)前記含水ゲル状重合体を乾燥する段階と、 c)前記乾燥された重合体を粉砕する段階と、 d)前記粉砕された含水ゲル状重合体を分級する段階と、 f)混合された含水ゲル状重合体のそれぞれに表面架橋剤を添加する段階と、 g)前記含水ゲル状重合体の表面架橋反応を行う段階と、を含む高吸水性樹脂の製造方法。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点7-1> 「d)前記粉砕された含水ゲル状重合体を分級する段階」に関して、本件特許発明1においては、「d)前記粉砕された含水ゲル状重合体を粒度150μm未満である粒子、粒度150μm以上300μm未満である粒子、粒度300μm以上450μm未満である粒子、粒度450μm以上600μm以下である粒子、および粒度600μm以上850μm以下である粒子に分級する段階」と特定されているのに対し、甲7発明においては、そのようには特定されていない点。 <相違点7-2> 本件特許発明1においては、「e)前記粉砕された含水ゲル状重合体のうち、粒度600μm以上850μm以下である粒子、粒度300μm以上600μm以下である粒子および粒度150μm以上300μm未満である粒子からなる正常粒子に、粒度150μm未満である粒子、粒度150μm以上300μm未満である粒子、粒度300μm以上450μm未満である粒子を含む450μm以下の大きさの粒子を用いて再造粒した再造粒体を混合する段階」を含むこと、「前記再造粒体は、粒度150~600μmの大きさを有」すること及び「前記e)段階の含水ゲル状重合体は、正常粒子および再造粒体を合わせた全体総重量を基準に、前記粒度600~850μmの大きさの粒子0.01~3重量%、前記粒度300~600μmの大きさの粒子60~80重量%、および前記粒度150~300μmの大きさの粒子1~25重量%からなる正常粒子の70~85重量%;および前記再造粒体の15~30重量%を含む」ことが特定されているのに対し、甲7発明においては、そのようには特定されていない点。 そこで、事案に鑑み、相違点7-2から検討する。 甲7には、「粉砕された含水ゲル状重合体のうち、粒度600μm以上850μm以下である粒子、粒度300μm以上600μm以下である粒子および粒度150μm以上300μm未満である粒子からなる正常粒子に、粒度150μm未満である粒子、粒度150μm以上300μm未満である粒子、粒度300μm以上450μm未満である粒子を含む450μm以下の大きさの粒子を用いて再造粒した再造粒体を混合する」ことは記載も示唆もされていない。 また、甲7には、「再造粒体」が「粒度150~600μm」の大きさを有することは記載も示唆もされていない。 さらに、甲7には、「含水ゲル状重合体」が「正常粒子および再造粒体を合わせた全体総重量を基準に、前記粒度600~850μmの大きさの粒子0.01~3重量%、前記粒度300~600μmの大きさの粒子60~80重量%、および前記粒度150~300μmの大きさの粒子1~25重量%からなる正常粒子の70~85重量%;および前記再造粒体の15~30重量%を含む」ことは記載も示唆もされていない。 そして、他のいずれの証拠にも、上記事項は記載も示唆もされていない。 したがって、甲7発明において、他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点7-2に係る本件特許発明1の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明1は、「従来使用していた高吸水性樹脂に比べて吸水速度および透水性の特性を共に向上」させた高吸水性樹脂を製造することができるという甲7発明及び他の証拠に記載された事項からみて格別顕著な効果を奏するものである。 したがって、相違点7-1について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲7発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (イ)本件特許発明2、4ないし7及び9ないし14について 本件特許発明2、4ないし7及び9ないし14は、請求項1を引用するものであり、本件特許発明1をさらに限定したものであるから、本件特許発明1と同様に、甲7発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 ウ 取消理由8についてのまとめ したがって、本件特許の請求項1、2、4ないし7及び9ないし14に係る発明は、甲7発明、すなわち甲第7号証に記載された発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではないから、本件特許の請求項1、2、4ないし7及び9ないし14に係る特許は、同法第113条第2号に該当するものではない。 2 取消理由で採用しなかった特許異議申立ての理由について (1)取消理由で採用しなかった特許異議申し立ての理由 取消理由で採用しなかった特許異議申し立ての理由は、おおむね次のとおりである。 ア 申立理由3のうち本件特許発明1、2、4ないし7及び9ないし14に対する新規性違反(以下、「不採用理由ア」という。) イ 発明の詳細な説明に「再造立体」の粒度分布、「再造立体」の具体的な製造方法及び「高吸収性樹脂」の粒度分布並びにVortex方法について記載がないことに起因する本件特許発明1、2、4ないし7及び9ないし14に対するサポート要件違反及び実施可能要件違反(以下、「不採用理由イ」という。) (2)判断 ア 不採用理由アについて 上記1(4)イ(ア)のとおり、本件特許発明1と甲第1号証に記載された発明の間には、相違点1-1及び1-2があり、それらは実質的な相違点である。 したがって、本件特許発明1は甲第1号証に記載された発明であるとはいえない。 また、本件特許発明2、4ないし7及び9ないし14についても同様である。 よって、不採用理由アによっては、本件特許の請求項1、2、4ないし7及び9ないし14に係る特許は取り消すことはできない。 イ 不採用理由イについて 上記1(2)ウのとおり、本件特許発明1、2、4ないし7及び9ないし14は、発明の詳細な説明の記載により当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるから、発明の詳細な説明に「再造立体」の粒度分布及び具体的な製造方法並びに「高吸収性樹脂」の粒度分布について記載がないとしても、サポート要件違反とはいえない。 また、上記1(1)イ(ア)のとおり、当業者であれば、「日本工業規格 JIS K7224 高吸収性樹脂の吸収速度試験方法」を参照して、Vortex測定を行うことができるから、発明の詳細な説明にVortex方法について記載がないとしても、 サポート要件違反とはいえない。 さらに、上記1(2)イのとおり、発明の詳細な説明には、本件特許発明1、2、4ないし7及び9ないし14の発明特定事項について、具体的に記載され、実施例についても具体的に記載されているから、物を生産する方法の発明である本件特許発明1、2、4ないし7及び9ないし14について、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産する方法の使用をし、その物を生産する方法により生産した物の使用をすることができる程度の記載があるといえ、実施可能要件違反とはいえない。 したがって、不採用理由イによっては、本件特許の請求項1、2、4ないし7及び9ないし14に係る特許は取り消すことはできない。 第6 結語 上記第5のとおり、本件特許の請求項1、2、4ないし7及び9ないし14に係る特許は、取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1、2、4ないし7及び9ないし14に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 さらに、本件特許の請求項3、8及び15ないし19に係る特許は、訂正により削除されたため、特許異議申立人による請求項3、8及び15ないし19に係る特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2019-700645

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  • 2025-700001異議申立 / 2025-08-20 / 訂正認容シート、プリント基板用基材及びシートの製造方法
    共通の条文: 特許法113条2号、特許法120条の8第1項、特許法135条、特許法29条2項
  • 2023-700384異議申立 / 2024-05-02 / 訂正認容繊維状セルロース複合樹脂及びその製造方法
    共通の条文: 特許法113条2号、特許法120条の8第1項、特許法135条、特許法29条2項
  • 2021-700876異議申立 / 2022-06-20 / 訂正認容炭素繊維強化プラスチックの処理方法及び燃料の製造方法
    共通の条文: 特許法113条2号、特許法120条の8第1項、特許法135条、特許法29条2項
  • 2020-701006異議申立 / 2022-01-14 / 請求成立(取消)滑り性と安定生産性の優れたポリアミドフィルム
    共通の条文: 特許法113条2号、特許法120条の8第1項、特許法135条、特許法29条2項
  • 2020-700268異議申立 / 2021-10-25 / 訂正認容プロピレンポリマー組成物で作られた二軸配向フィルム
    共通の条文: 特許法113条2号、特許法120条の8第1項、特許法135条、特許法29条2項
同じ論点・分野の審決(審決分類)551件(113・C08J、121・C08J、536・C08J ほか)
  • 2026-700187異議申立 / 2026-05-29 / 維持水まわり部材
    共通の審決分類: 113・C08J、121・C08J、536・C08J、537・C08J
  • 2026-700139異議申立 / 2026-04-24 / 維持ポリエステルフィルム
    共通の審決分類: 113・C08J、121・C08J、536・C08J、537・C08J
  • 2022-701115異議申立 / 2026-04-15 / 訂正認容ポリイミドフィルム
    共通の審決分類: 113・C08J、121・C08J、536・C08J、537・C08J
  • 2025-700195異議申立 / 2025-12-17 / 訂正認容樹脂粒子及びその用途
    共通の審決分類: 113・C08J、121・C08J、536・C08J、537・C08J
  • 2024-700025異議申立 / 2025-09-22 / 訂正認容球状架橋粒子
    共通の審決分類: 113・C08J、121・C08J、536・C08J、537・C08J

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