特許異議申立
2022-700462
高吸水性樹脂およびその製造方法
- 審判番号
- 2022-700462
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-518768
- 登録番号
- 6973874
- 請求日
- 2022年05月30日
- 審決日
- 2023年02月10日
- 公報発行日
- 2023年05月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】エルジー・ケム・リミテッド
- 【権利者代理人】実広 信哉
- 【権利者代理人】渡部 崇
- 【異議申立人】株式会社 日本触媒
- 【異議申立人代理人】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
- 審判長/審判官
- 審判長 大島 祥吾
- 審判官 加藤 友也
- 審判官 植前 充司
- 分類
- P1651.537-YAA(C08J) / P1651.121-YAA(C08J) / P1651.536-YAA(C08J)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条4項1号特許法113条4号特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6973874号発明「高吸水性樹脂およびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6973874号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし8〕及び〔9ないし13〕について訂正することを認める。
特許第6973874号の請求項1及び4ないし13に係る特許を維持する。
特許第6973874号の請求項2及び3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6973874号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし13に係る特許についての出願は、2019年(令和1年)9月17日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2018年11月13日 2019年9月16日、いずれも韓国)を国際出願日とする出願であって、令和3年11月8日にその特許権の設定登録(請求項の数13)がされ、同年12月1日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和4年5月30日に特許異議申立人 株式会社日本触媒(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし13)がされ、同年8月25日付けで取消理由が通知され、同年11月28日に特許権者 エルジー・ケム・リミテッドから訂正請求がされると共に意見書が提出され、同年12月8日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、令和5年1月6日に特許異議申立人から意見書が提出されたものである。
第2 本件訂正について
1 訂正の内容
令和4年11月28日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「エポキシ当量がl00g/eq以上130g/eq未満である第1エポキシ架橋剤」と記載されているのを、「エチレングリコールジグリシジルエーテル(ethyleneglycol diglycidyl ether)およびジエチレングリコールジグリシジルエーテル(diethyleneglycol diglycidyl ether)からなる群より選ばれる1種以上のエポキシ当量がl00g/eq以上130g/eq未満である第1エポキシ架橋剤、」に訂正する。
併せて、請求項1を直接又は間接的に引用する他の請求項についても請求項1を訂正したことに伴う訂正をする。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「エポキシ当量が130~200g/eqである第2エポキシ架橋剤」と記載されているのを、「グリセロールポリグリシジルエーテル(glycerol polyglycidyl ether)、ジグリセロールポリグリシジルエーテル(diglycerol polyglycidyl ether)、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(polyglycerol polyg1ycidy1 ether)およびソルビトールポリグリシジルエーテル(sorbitol polyglycidyl ether)からなる群より選ばれる1種以上のエポキシ当量が130~200g/eqである第2エポキシ架橋剤」に訂正する。
併せて、請求項1を直接又は間接的に引用する他の請求項についても請求項1を訂正したことに伴う訂正をする。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項4に「請求項1~3のいずれかに記載の高吸水性樹脂の製造方法」と記載されているのを、「請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法」に訂正する。
併せて、請求項4を直接又は間接的に引用する他の請求項についても請求項4を訂正したことに伴う訂正をする。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項7に「請求項1~6のいずれかに記載の高吸水性樹脂の製造方法」と記載されているのを、「請求項1及び4~6のいずれかに記載の高吸水性樹脂の製造方法」に訂正する。
併せて、請求項7を引用する請求項8についても請求項7を訂正したことに伴う訂正をする。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項8に「請求項1~7のいずれかに記載の高吸水性樹脂の製造方法」と記載されているのを、「請求項1及び4~7のいずれかに記載の高吸水性樹脂の製造方法」に訂正する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項9に「エポキシ当量がl00g/eq以上130g/eq未満である第1エポキシ架橋剤」と記載されているのを、「エチレングリコールジグリシジルエーテル(ethyleneglycol diglycidyl ether)およびジエチレングリコールジグリシジルエーテル(diethyleneglycol diglycidyl ether)からなる群より選ばれる1種以上のエポキシ当量がl00g/eq以上130g/eq未満である第1エポキシ架橋剤、」に訂正する。
併せて、請求項9を直接又は間接的に引用する他の請求項についても請求項9を訂正したことに伴う訂正をする。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項9に「エポキシ当量が130~200g/eqである第2エポキシ架橋剤」と記載されているのを、「グリセロールポリグリシジルエーテル(glycerol polyglycidyl ether)、ジグリセロールポリグリシジルエーテル(diglycerol polyglycidyl ether)、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(polyglycerol polyglycidyl ether)およびソルビトールポリグリシジルエーテル(sorbitol polyglycidyl ether)からなる群より選ばれる1種以上のエポキシ当量が130~200g/eqである第2エポキシ架橋剤」に訂正する。
併せて、請求項9を直接又は間接的に引用する他の請求項についても請求項9を訂正したことに伴う訂正をする。
2 訂正の目的、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)請求項1についての訂正について
訂正事項1による請求項1についての訂正は、「第1エポキシ架橋剤」の種類を特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項2による請求項1についての訂正は、「第2エポキシ架橋剤」の種類を特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1及び2による請求項1についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)請求項2についての訂正について
訂正事項3による請求項2についての訂正は、請求項2を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項3による請求項2についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(3)請求項3についての訂正について
訂正事項4による請求項3についての訂正は、請求項3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項4による請求項3についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(4)請求項4についての訂正について
訂正事項1及び2による請求項4についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項5による請求項4についての訂正は、引用請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1、2及び5による請求項4についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(5)請求項5及び6についての訂正について
訂正事項1、2及び5による請求項5及び6についての訂正は、請求項1、2及び4についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1、2及び5による請求項5及び6についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(6)請求項7についての訂正について
訂正事項1、2及び5による請求項7についての訂正は、請求項1、2及び4ないし6についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項6による請求項7についての訂正は、引用請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1、2、5及び6による請求項7についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(7)請求項8についての訂正について
訂正事項1、2、5及び6による請求項8についての訂正は、請求項1及び4ないし7についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項7による請求項8についての訂正は、引用請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1、2及び5ないし7による請求項8についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(8)請求項9についての訂正について
訂正事項8による請求項9についての訂正は、「第1エポキシ架橋剤」の種類を特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
訂正事項9による請求項9についての訂正は、「第2エポキシ架橋剤」の種類を特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項8及び9による請求項9についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(9)請求項10ないし13についての訂正について
訂正事項8及び9による請求項10ないし13についての訂正は、請求項9についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項8及び9による請求項10ないし13についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 むすび
以上のとおり、訂正事項1ないし9による請求項1ないし13についての訂正は、いずれも、特許法120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。
また、訂正事項1ないし9による請求項1ないし13についての訂正は、いずれも、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。
なお、訂正前の請求項1ないし8は一群の請求項に該当するものである。そして、訂正事項1ないし7による請求項1ないし8についての訂正は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
また、訂正前の請求項9ないし13も一群の請求項に該当するものである。そして、訂正事項8及び9による請求項9ないし13についての訂正は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
さらに、特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし13に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし8〕及び〔9ないし13〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし13に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいい、総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし13に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
酸性基を有し、前記酸性基の少なくとも一部が中和されたアクリル酸系単量体および内部架橋剤が架橋重合されたベース樹脂(base resin)を準備する段階(段階1);
前記ベース樹脂に、無機フィラー、エポキシ系表面架橋剤および多価金属塩を混合し、前記無機フィラーを先に前記ベース樹脂に乾式で混合し、次いでエポキシ系表面架橋剤および多価金属塩を水に溶解して表面架橋溶液状態にて混合する段階(段階2);および
前記段階2の混合物を昇温して前記ベース樹脂に対する表面改質を行う段階(段階3)を含み、
前記エポキシ系表面架橋剤は、エチレングリコールジグリシジルエーテル(ethyleneglycol diglycidyl ether)およびジエチレングリコールジグリシジルエーテル(diethyleneglycol diglycidyl ether)からなる群より選ばれる1種以上のエポキシ当量が100g/eq以上130g/eq未満である第1エポキシ架橋剤、およびグリセロールポリグリシジルエーテル(glycerol polyglycidyl ether)、ジグリセロールポリグリシジルエーテル(diglycerol polyglycidyl ether)、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(polyglycerol polyglycidyl ether)およびソルビトールポリグリシジルエーテル(sorbitol polyglycidyl ether)からなる群より選ばれる1種以上のエポキシ当量が130~200g/eqである第2エポキシ架橋剤を含むものであり、
前記第1エポキシ架橋剤はベース樹脂100重量部に対して0.02~0.05重量部で含まれ、第2エポキシ架橋剤はベース樹脂100重量部に対して0.005~0.05重量部で含まれる、高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(削除)
【請求項4】
前記段階2において、HLBが0以上6以下の疎水性物質をさらに混合する、請求項1に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記疎水性物質は、グリセリルステアレート(glyceryl stearate)、グリコールステアレート(glycol stearate)、マグネシウムステアレート(magnesium stearate)、グリセリルラウレート(glyceryl laurate)、ソルビタンステアレート(sorbitan stearate)、ソルビタントリオレート(sorbitan trioleate)、およびPEG-4ジラウレート(PEG-4 dilaurate)からなる群より選ばれる1種以上を含む、請求項4に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記疎水性物質は、前記ベース樹脂100重量部に対して0.001~0.5重量部で混合する、請求項4または5に記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記段階3は、120~190℃の温度で行う、請求項1及び4~6のいずれかに記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項8】
前記段階1は、
酸性基を有し、前記酸性基の少なくとも一部が中和されたアクリル酸系単量体、内部架橋剤、および重合開始剤を含むモノマー組成物を重合して含水ゲル状重合体を形成する段階;
前記含水ゲル状重合体を乾燥する段階;
前記乾燥された重合体を粉砕する段階;および
前記粉砕された重合体を分級する段階を含む、請求項1及び4~7のいずれかに記載の高吸水性樹脂の製造方法。
【請求項9】
酸性基の少なくとも一部が中和されたアクリル酸系単量体が架橋重合された架橋重合体を含むベース樹脂;および
前記ベース樹脂の粒子表面に形成されており、前記架橋重合体がエポキシ当量が相異する2種のエポキシ系表面架橋剤を介して追加架橋されている二重の表面改質層を含み、
前記表面改質層は、無機フィラーおよび多価金属塩を含み、
前記2種のエポキシ系表面架橋剤は、エチレングリコールジグリシジルエーテル(ethyleneglycol diglycidyl ether)およびジエチレングリコールジグリシジルエーテル(diethyleneglycol diglycidyl ether)からなる群より選ばれる1種以上のエポキシ当量が100g/eq以上130g/eq未満である第1エポキシ架橋剤、およびグリセロールポリグリシジルエーテル(glycerol polyglycidyl ether)、ジグリセロールポリグリシジルエーテル(diglycerol polyglycidyl ether)、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(polyglycerol polyglycidyl ether)およびソルビトールポリグリシジルエーテル(sorbitol polyglycidyl ether)からなる群より選ばれる1種以上のエポキシ当量が130~200g/eqである第2エポキシ架橋剤を含み、
前記第1エポキシ架橋剤はベース樹脂100重量部に対して0.02~0.05重量部で含まれ、第2エポキシ架橋剤はベース樹脂100重量部に対して0.005~0.05重量部で含まれる、高吸水性樹脂。
【請求項10】
前記高吸水性樹脂は、吸収速度(vortex time)が40秒以下である、請求項9に記載の高吸水性樹脂。
【請求項11】
前記高吸水性樹脂は、下記式1により測定される通液性(permeability、単位:秒)が35秒以下である、請求項9または10に記載の高吸水性樹脂:
【数4】
[図:0001397193000001.jpg]
前記式1において、
T1は、クロマトグラフィー管内に分級(300~600μm)した高吸水性樹脂試料0.2±0.0005gを入れて塩水を加えて塩水体積が50mLになるようにした後、30分間放置後、液面高さが40mLから20mLまで減るのにかかる時間であり、Bは、塩水が満たされたクロマトグラフィー管で液面高さが40mLから20mLまで減るのにかかる時間である。
【請求項12】
前記高吸水性樹脂は、遠心分離保持能(CRC)が25g/g以上である、請求項9~11のいずれかに記載の高吸水性樹脂。
【請求項13】
前記高吸水性樹脂は、前記高吸水性樹脂4gを水道水200gに浸漬させて2時間膨潤させた後、膨潤された前記高吸水性樹脂を0.75psiの圧力下に1分間濾過紙上で放置してから、前記高吸水性樹脂から前記濾過紙に再び染み出てきた水の重量で定義される再湿潤特性(加圧水道水の長期再湿潤)が1.0g以下である、請求項9~12のいずれかに記載の高吸水性樹脂。」
第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要
令和4年5月30日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要は次のとおりである。
1 申立理由1(甲第1号証に基づく進歩性)
本件特許の請求項1ないし13に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし13に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
2 申立理由2(甲第2号証に基づく進歩性)
本件特許の請求項1ないし13に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし13に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
3 申立理由3(甲第3号証に基づく進歩性)
本件特許の請求項1ないし13に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし13に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
4 申立理由4(甲第4号証に基づく進歩性)
本件特許の請求項1ないし13に係る発明は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第4号証に記載された発明に基づいて、その優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし13に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
5 申立理由5(明確性要件)及び申立理由6(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし13に係る特許は、下記(1)及び(2)の点で特許法第36条第6項第1及び2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
(1)本件特許発明1及び9には、「エポキシ系表面架橋剤は、エポキシ当量が100g/eq以上130g/eq未満である第1エポキシ架橋剤およびエポキシ当量が130~200g/eqである第2エポキシ架橋剤を含むもの」であることが規定されている。
ここで、本件特許の発明の詳細な説明によれば、実施例1ないし6及び比較例1ないし3において、「第1エポキシ架橋剤」として「エチレングリコールジグリシジルエーテル」が使用されている。エチレングリコールジグリシジルエーテルは、分子量が174.17であるから、エポキシ当量(エポキシ1個あたりの分子量)は87である。
このエポキシ当量は、本件特許発明1及び9にて特定された「第1エポキシ架橋剤」のエポキシ当量の100g/eq以上130g/eq未満の範囲外であるが、本件特許の発明の詳細な説明の【0108】及び【0115】によれば、「エポキシ当量113~125g/eq」と記載されている。
実施例1ないし6及び比較例1ないし3にて使用されているエチレングリコールジグリシジルエーテルは、エポキシ当量が理論値よりも大きな値を示していることからして、エポキシ当量の異なる少なくとも2つのエポキシ化合物の混合物であるものと言える。エポキシ系架橋剤が混合物であり得ることは、甲第6号証にも開示されている。なお、「第2エポキシ架橋剤」については、その具体的な構造式が記載されていないため、実施例1ないし6にて使用された「第2エポキシ架橋剤」は、エポキシ当量の値が理論値と乖離しているのか否かは判断できないが、第1エポキシ架橋剤と同様に、エポキシ当量の異なる少なくとも2つのエポキシ化合物の混合物であるものと推察される。
「第1エポキシ架橋剤」及び「第2エポキシ架橋剤」がエポキシ当量の異なる少なくとも2つのエポキシ化合物の混合物である以上、本件特許発明1及び9において、「第1エポキシ架橋剤」及び「第2エポキシ架橋剤」について混合物のエポキシ当量の平均値(例えば100g/eq以上130g/eq未満、130~200g/eq)を規定していることになる。そして、このように混合物のエポキシ当量の平均値を規定しても、本件特許発明2及び3では、「第1エポキシ架橋剤」及び「第2エポキシ架橋剤」が具体的に化合物として規定しているが、「第1エポキシ架橋剤」及び「第2エポキシ架橋剤」には、本件特許発明1のエポキシ当量の数値範囲外の不純物も含み得る。そして、実施例1ないし6及び比較例1ないし3において、使用される「第1エポキシ架橋剤」がエポキシ当量の異なる少なくとも2つのエポキシ化合物の混合物であるために、本件特許発明1における「第1エポキシ架橋剤」及び「第2エポキシ架橋剤」の規定要件は、比較例1ないし3をも含み得る。
したがって、エポキシ系架橋剤の具体的な構造式を規定していない本件特許の請求項1及び9の記載は明瞭でないし、本件特許発明の課題を解決しない範囲をも含んでいる。
(2)さらに、本件特許発明1及び9では、「第1エポキシ架橋剤」及び「第2エポキシ架橋剤」について、それぞれエポキシ当量が100g/eq以上130g/eq未満、エポキシ当量が130~200g/eqと規定している。すなわち、エポキシ当量が130g/eqを境界とし、130g/eq未満を「第1エポキシ架橋剤」とし、130g/eq以上を「第2エポキシ架橋剤」としている。「第1エポキシ架橋剤」及び「第2エポキシ架橋剤」がエポキシ当量の異なる少なくとも2つのエポキシ化合物の混合物である以上、エポキシ当量が130g/eqを境界とし、架橋剤種を第1エポキシ架橋剤及び第2エポキシ架橋剤に切り分けることができず技術的意義が不明瞭である。
甲第6号証によれば、デナコールEX-810とデナコールEX-811とは、ともにエチレングリコールジグリシジルエーテルを代表成分とするが、エポキシ当量が112g/eqと135g/eqとの違いがある。このため、「第1エポキシ架橘剤」及び「第2エポキシ架橋剤」としてデナコールEX-810及びデナコールEX-811を用いれば、一応、本件特許発明の構成要件を満たすことになる。しかし、甲第6号証から、デナールEX-810及びデナコールEX-811のエポキシ当量は、主成分と不純物との比率に基づき、平均化されているに過ぎない。そうすると、構成要件を満たすように「第1エポキシ架橋剤」及び「第2エポキシ架橋剤」を選定しても(デナコールEX-810及びデナコールEX-811を選定しても)、得られる高吸水性樹脂は、従来のエポキシ架橋剤を用いた場合と異なる効果が発現するとは考えにくい。
したがって、エポキシ系架橋剤の具体的な構造式を規定していない本件特許の請求項1及び9の記載は明瞭でないし、本件特許発明の課題を解決しない範囲をも含んでいる。
また、本件特許発明の実施例と比較例とから、ベース樹脂に対して市販のエポキシ系架橋剤を単独で使用して表面架橋した場合に本件特許発明の課題を解決しないとも読み取れる。仮にそうであれば、例えば、「エポキシ等量129g/eqの架橋剤とエポキシ当量が130g/eqの架橋剤と」を併用して表面架橋を施した場合などでは、本件特許発明の課題を解決するとは言い難い。
したがって、本件特許発明のエポキシ当量は、本件特許発明の課題を解決しない範囲を含み得ることになる。
6 申立理由7(本件特許発明9ないし13に対する実施可能要件)
本件特許の請求項9ないし13に係る特許は、下記(1)及び(2)の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
(1)本件特許発明11は、下記式1により測定される通液性(permeability、単位:秒)が35秒以下である高吸水性樹脂が規定されている。ここで、本件特許の発明の詳細な説明の【0130】及び【0131】によれば、通液性(permeability、単位:秒)は、300~600μmに分級した高吸水性樹脂試料を対象とする。そして、当該高吸水性樹脂試料を膨潤させて通液性(permeability)が測定される。
しかし、本件特許発明9には、高吸水性樹脂について、その粒径及び/又は粒度分布が全く規定されていない。よって、前記高吸水性樹脂には、粒径が300~600μmの粒子を全く含まないか、又は無視できる量だけ含む高吸水性樹脂も包含される。
また、本件特許の発明の詳細な説明には、【0130】及び【0131】に記載の方法により通液性を測定できない高吸水性樹脂に対して、どのようにして通液性を測定するのか一切開示されていない。
そうすると、本件特許発明9は、高吸水性樹脂の通液性に関し本件特許の発明の詳細な説明の記載に基づいて当業者が測定することができない発明も包含する。それゆえに、本件特許の発明の詳細な説明は、本件特許発明9及び請求項9を引用して特定する本件特許発明10ないし13を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。
(2)本件特許発明13には、再湿潤特性(加圧水道水の長期再湿潤)が1.0g以下である高吸水性樹脂が特定されている。
本件特許の発明の詳細な説明の【0132】ないし【0134】には、再湿潤特性の測定方法が記載されている。【0133】には「(2)2時間膨潤させた高吸水性樹脂をフィルタペーパー(whatman社製,catalog No.1004-110,pore size 20-25μm、直径11cm)20枚上に敷いて直径11cm、5kgの重り(0.75psi)で1分間加圧した。」と記載されている。しかし、当該記載には、フィルタペーパー上への高吸水性樹脂の敷き方に関する具体的な記載がない。すなわち、ペトリ皿で膨潤させた高吸水性樹脂全量をフィルタペーパー上へ移すのか、高吸水性樹脂の一部を量り取って使用するのか、フィルタペーパー(直径11cm)全面に均一に広げるのか、ペトリ皿のサイズである直径13cmの面積に高吸水性樹脂を広げるのか、フィルタペーパーの中央部に山型に載せるのか、何ら開示されていない。このため、本件特許の発明の詳細な説明の記載から、再湿潤特性に関し、一義的な測定値を得るためにどのような操作を行えばよいのかが不明である。
実際に、甲第3号証の実施例2に準じて合成した吸水剤を用いて、本件特許の発明の詳細な説明の【0132】ないし【0134】の記載を参照して、本件特許発明13で規定される加圧水道水の長期再湿潤を測定したところ、本件特許の発明の詳細な説明の【0133】に記載された操作が具体的に記載されていないため測定値が一義的ではなかった(甲第10号証)。
具体的には、上記【0133】に記載された操作において、高吸水性樹脂をフィルタペーパーに敷く条件が記載されていないため、以下の条件を設定して測定を行った。なお測定には、電気伝導度147.8μS/cmの水道水を使用した。
○1 膨潤させた吸水剤全量(204g)を直径11cmのフィルターペーパー全面に均一にのせる。
○2 膨潤させた吸水剤全量(204g)をペトリ皿のサイズである直径13cmの面積に均一にのせる。
○3 膨潤させた吸水剤全量(204g)を直径11cmのフィルターペーパー中央部に山形にのせる。
条件○1~○3での「加圧水道水の長期再湿潤」の測定値を以下に示す(当審注:「○1」は、数字の1を○で囲んだ記号である。「○2」及び「○3」についても、同様。)。
[図:0001397193000002.jpg]
このように、本件特許発明13に規定の加圧水道水の長期再湿潤は、本件特許の発明の詳細な説明にその測定条件が十分に開示されておらず、測定値が一義的に定まらないことがわかった。
それゆえに、本件特許の発明の詳細な説明は、本件特許発明13を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。
7 証拠方法
甲第1号証:特開平10-244151号公報
甲第2号証:特表2012-530832号公報
甲第3号証:特開平11-310644号公報
甲第4号証:韓国特許公開10-2018-0067943号公報
甲第5号証:Modern Superabsorbent Polymer Technology(1998)p.69-103
甲第6号証:デナコール○R(当審注:「○R」はRを○で囲んだ記号である。以下同様。)カタログ(当審注:巻末に記載の郵便番号が5桁表示であることから、郵便番号が7桁表示に変更になった1998年以前に発行された刊行物であるといえる。)
甲第7号証:特表2002-538275号公報
甲第8号証:特開2011-80069号公報
甲第9号証:特開2012-7062号公報
甲第10号証:本件特許明細書の実施例の実験成績証明書
証拠の表記は、特許異議申立書の記載におおむね従った。以下、順に「甲1」のようにいう。
第5 取消理由の概要
令和4年8月25日付けで通知された取消理由(以下、「取消理由」という。)の概要はおおむね次のとおりである。なお、該取消理由は申立理由5とおおむね同旨である。
・取消理由(明確性要件)
本件特許の請求項1ないし13に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
1 請求項1には「前記エポキシ系表面架橋剤は、エポキシ当量が100g/eq以上130g/eq未満である第1エポキシ架橋剤およびエポキシ当量が130~200g/eqである第2エポキシ架橋剤を含むものであり」という記載があり、同じく請求項9には「前記2種のエポキシ系表面架橋剤は、エポキシ当量が100g/eq以上130g/eq未満である第1エポキシ架橋剤およびエポキシ当量が130~200g/eqである第2エポキシ架橋剤を含み」という記載がある。
他方、発明の詳細な説明の【0069】には「前記第1エポキシ架橋剤の例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル(ethyleneglycol diglycidyl ether)およびジエチレングリコールジグリシジルエーテル(diethyleneglycol diglycidyl ether)からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。」と記載され、同じく【0108】には「エチレングリコールジグリシジルエーテル(エポキシ当量113~125g/eq)」と記載されている。
ところで、「エチレングリコールジグリシジルエーテル」の分子量は174.17であるから、理論的なエポキシ当量(エポキシ1個当たりの分子量)は87である。
とすると、請求項1及び9に記載された「エポキシ当量」は、理論的なエポキシ当量ではないことになるが、発明の詳細な説明には、「エポキシ当量」の定義に相当する記載はないので、請求項1及び9に記載された「エポキシ当量」の意味、すなわち「理論的なエポキシ当量」を意味するのか、下記イに示すように「エポキシ当量の異なる少なくとも2つのエポキシ化合物の混合物のエポキシ当量の平均値」を意味するのかは、または、これら以外の別の意味なのかが明確でない。
2 請求項1及び9に記載された「エポキシ当量」が、「エポキシ当量の異なる少なくとも2つのエポキシ化合物の混合物のエポキシ当量の平均値」の意味であるとすると、発明の詳細な説明の【0116】及び【0117】に記載された比較例2及び3において使用される「第1エポキシ架橋剤」もエポキシ当量の異なる少なくとも2つのエポキシ化合物の混合物であるということになる。
そうすると、本件特許発明1における「第1エポキシ架橋剤」及び「第2エポキシ架橋剤」に関する発明特定事項(エポキシ当量及びその含有量)は、比較例2及び3をも含み得る。
したがって、「第1エポキシ架橋剤」及び「第2エポキシ架橋剤」の具体的な構造式を請求項2及び3に記載されているように特定していない請求項1及び9の記載は明確でない。
3 特許請求の範囲の請求項1及び9では、「第1エポキシ架橋剤」及び「第2エポキシ架橋剤」について、それぞれ、「エポキシ当量が100g/eq以上130g/eq未満」及び「エポキシ当量が130~200g/eq」と記載している。すなわち、エポキシ当量が130g/eqを境界とし、130g/eq未満を「第1エポキシ架橋剤」とし、130g/eq以上を「第2エポキシ架橋剤」としている。
しかし、「第1エポキシ架橋剤」及び「第2エポキシ架橋剤」が「エポキシ当量の異なる少なくとも2つのエポキシ化合物の混合物」である場合、エポキシ当量が130g/eqを境界としても、「第1エポキシ架橋剤」及び「第2エポキシ架橋剤」の具体的な構造式を請求項2及び3に記載されているように特定していない以上、架橋剤種を第1エポキシ架橋剤及び第2エポキシ架橋剤に切り分けることができず、130g/eq未満を「第1エポキシ架橋剤」とし、130g/eq以上を「第2エポキシ架橋剤」とすることの技術的意義が理解できないし、その結果として、請求項1及び9の記載は明確でない。
4 したがって、本件特許発明1及び9並びに請求項1又は9のいずれかを直接又は間接的に引用して特定する本件特許発明2ないし8及び10ないし13に関して、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎としても、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確である。
第6 取消理由(明確性要件)についての当審の判断
1 明確性要件の判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
そこで、検討する。
2 特許請求の範囲の記載
特許請求の範囲の記載は上記第3のとおりである。
3 明確性要件の判断
(1)まず、取消理由で指摘した点について検討する。
ア 上記第5 1の点について
例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテルを表面架橋剤として市販品を使用しようとする場合、エチレングリコールジグリシジルエーテルを主成分とするものの、異なる当量を有するエポキシ化合物が混合された状態のエポキシ架橋剤化合物を使用するしかなく、このような場合でも通常「混合物」で表記せず、主成分の化合物名で表記するのが当業者の技術常識である。
すなわち、当業者であれば、本件特許の請求項1及び9の「第1エポキシ架橋剤」及び「第2エポキシ架橋剤」のエポキシ当量が、理論的当量ではなく、当該化合物の実際の測定当量であることを明確に理解することができる。
したがって、本件特許の請求項1及び9の記載は明確でないとはいえず、上記第5 1の点では、明確性要件違反とすることはできない。
イ 上記第5 2の点について
本件特許の請求項1及び9は、本件訂正により訂正され、本件特許発明1及び9における「第1エポキシ架橋剤」及び「第2エポキシ架橋剤」の具体的な種類が特定され、本件特許発明1及び9における「第1エポキシ架橋剤」及び「第2エポキシ架橋剤」に関する発明特定事項(エポキシ当量及びその含有量)は、比較例2及び3を含まないことが明確になった。
したがって、本件特許の請求項1及び9の記載は明確でないとはいえず、上記第5 2の点は解消した。
ウ 上記第5 3の点について
本件特許の請求項1及び9は、本件訂正により訂正され、本件特許発明1及び9における「第1エポキシ架橋剤」及び「第2エポキシ架橋剤」の具体的な種類が特定され、本件特許発明1及び9における架橋剤種を「第1エポキシ架橋剤」及び「第2エポキシ架橋剤」に切り分けることができるようになった。
したがって、本件特許の請求項1及び9の記載は明確でないとはいえず、上記第5 3の点は解消した。
(2)他に本件特許の請求項1及び9にそれ自体不明確な記載はなく、また、本件特許の請求項1及び9の記載は発明の詳細な説明の記載とも整合する。
(3)本件特許の請求項4ないし8及び10ないし13にもそれ自体不明確な記載はなく、また、本件特許の請求項4ないし8及び10ないし13の記載は発明の詳細な説明の記載とも整合する。
(4)したがって、本件特許発明1及び9並びに請求項1又は9のいずれかを直接又は間接的に引用して特定する本件特許発明4ないし8及び10ないし13に関して、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
よって、本件特許発明1及び4ないし13は明確である。
4 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、令和5年1月6日に提出された意見書において、「ここで、本件特許のエポキシ当量の測定方法は不明であるが、例えば、特許権者も意見書において言及している甲第6号証の「デナコールEX-811」のエポキシ当量は、カタログ値で「135」とされる。この「デナコールEX-811」のエポキシ当量について、本件特許の測定方法で算出した場合、本件訂正発明1及び9に規定される「エポキシ当量が100g/eq以上130g/eq未満である第1エポキシ架橋剤」と部分的に重複することも十分に考えられる。すなわち、上述のとおり、「デナコールEX-811」のエポキシ当量は、カタログ値で「135」とされるところ、通常であれば、本件訂正発明1及び9に規定される「エポキシ当量が100g/eq以上130g/eq未満である第1エポキシ架橋剤」の構成要件を満たさないと考えられる。しかし、エポキシ当量の測定方法によっては、カタログ値で「135」の「デナコールEX-811」が本件訂正発明1及び9の「エポキシ当量が100g/eq以上130g/eq未満である第1エポキシ架橋剤」に該当する場合もあり得る。このように、「デナコールEX-811」を一例として挙げた場合でも、本件訂正発明1及び9の構成要件に該当するか否かが不明であり、依然として、本件訂正発明1及び9は外縁が不明確である。したがって、たとえ第1エポキシ架橋剤及び第2エポキシ架橋剤について、その化合物が限定されたとしても、上述のとおり、そのエポキシ当量の値が過度に振れるため、どのような化合物が第1エポキシ架橋剤及び第2エポキシ架橋剤に該当するのか不明確であり、本件特許は明確性要件を満たさない。」(第7ページ第19行ないし第8ページ第13行。なお、摘記に際し、改行は省略した。)と主張する。
そこで、上記主張について検討するに、「デナコールEX-811」のカタログ値が、測定した値であることは当業者の技術常識であり、それが「135」である以上、本件特許発明1及び9で特定される「エポキシ当量が100g/eq以上130g/eq未満である第1エポキシ架橋剤」に該当しないことは当業者に明らかである。
したがって、どのような化合物が第1エポキシ架橋剤及び第2エポキシ架橋剤に該当するのか不明確であるとはいえず、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
5 取消理由についての当審の判断のむすび
したがって、本件特許の請求項1及び4ないし13に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、取消理由によっては取り消すことはできない。
第7 取消理由に採用しなかった特許異議申立書に記載した申立て理由について
取消理由に採用しなかった特許異議申立書に記載した申立て理由は、申立理由1(甲1に基づく進歩性)、申立理由2(甲2に基づく進歩性)、申立理由3(甲3に基づく進歩性)、申立理由4(甲4に基づく進歩性)、申立理由6(サポート要件)及び申立理由7(本件特許発明9ないし13に対する実施可能要件)である。
以下、順に検討する。
1 申立理由1(甲1に基づく進歩性)について
(1)甲1に記載された発明
甲1は「吸水剤の製造方法および吸収剤」に関する文献であり、その【0024】、【0028】、【0029】及び【0035】に記載された事項を整理すると、甲1には次の発明(以下、順に「甲1製造方法発明」及び「甲1樹脂発明」という。)が記載されていると認める。
<甲1製造方法発明>
「アクリル酸200g、架橋剤としてメチレンビスアクリルアミド0.4g、イオン交換水600gを混合して重合性単量体水溶液を調整し、この混合液を断熱重合可能な重合槽に投入し、溶液中に窒素ガスを導入することにより、溶液中の溶存酸素量を0.1ppm以下、溶液温度を5℃とし、この重合溶液に、35%過酸化水素水0.03g、アスコルビン酸0.005g、V-50(和光純薬工業製アゾ系触媒)0.1gを添加し、約10分後に重合開始を示す温度上昇が確認され、約3時間後に最高温度に到達し、更に4時間熟成して含水ゲル状重合体を得、この含水ゲル状重合体600gを小型ニーダーを用いて小片に砕断した後、これに50%のNaOH水溶液120gを添加し、カルボキシル基の72モル%をナトリウム塩とし、この中和された含水ゲルを熱風乾燥した後、20~145メッシュの粒度に粉砕して含水率4.2%の吸水性樹脂粒子(A-1)を得、この吸水性樹脂粒子(A-1)60gを内容量2リットルのジューサーミキサーに入れ、攪拌しながら、エチレングリコールジグリシジルエーテルを0.4g、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(商品名:デナコールEX-512,平均エポキシ官能基数約4;ナガセ化成工業(株)製)0.2g、水25g、エチレングリコール10gを混合して作成した表面架橋剤溶液(c)3.5gを添加して十分混合し、この混合物を、120℃に調整した熱風乾燥機で40分間加熱する、吸水剤(8)の製造方法。」
<甲1樹脂発明>
「アクリル酸200g、架橋剤としてメチレンビスアクリルアミド0.4g、イオン交換水600gを混合して重合性単量体水溶液を調整し、この混合液を断熱重合可能な重合槽に投入し、溶液中に窒素ガスを導入することにより、溶液中の溶存酸素量を0.1ppm以下、溶液温度を5℃とし、この重合溶液に、35%過酸化水素水0.03g、アスコルビン酸0.005g、V-50(和光純薬工業製アゾ系触媒)0.1gを添加し、約10分後に重合開始を示す温度上昇が確認され、約3時間後に最高温度に到達し、更に4時間熟成して含水ゲル状重合体を得、この含水ゲル状重合体600gを小型ニーダーを用いて小片に砕断した後、これに50%のNaOH水溶液120gを添加し、カルボキシル基の72モル%をナトリウム塩とし、この中和された含水ゲルを熱風乾燥した後、20~145メッシュの粒度に粉砕して含水率4.2%の吸水性樹脂粒子(A-1)を得、この吸水性樹脂粒子(A-1)60gを内容量2リットルのジューサーミキサーに入れ、攪拌しながら、エチレングリコールジグリシジルエーテルを0.4g、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(商品名:デナコールEX-512,平均エポキシ官能基数約4;ナガセ化成工業(株)製)0.2g、水25g、エチレングリコール10gを混合して作成した表面架橋剤溶液(c)3.5gを添加して十分混合し、この混合物を、120℃に調整した熱風乾燥機で40分間加熱して得た、吸水剤(8)。」
(2)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲1製造方法発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「酸性基を有し、前記酸性基の少なくとも一部が中和されたアクリル酸系単量体および内部架橋剤が架橋重合されたベース樹脂(base resin)を準備する段階(段階1);
前記ベース樹脂に、エポキシ系表面架橋剤を水に溶解して表面架橋溶液状態にて混合する段階(段階2);および
前記段階2の混合物を昇温して前記ベース樹脂に対する表面改質を行う段階(段階3)を含む、吸水性樹脂の製造方法。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点1-1a>
「前記ベース樹脂に、エポキシ系表面架橋剤を水に溶解して表面架橋溶液状態にて混合する段階(段階2)」に関して、本件特許発明1においては、「前記ベース樹脂に、無機フィラー、エポキシ系表面架橋剤および多価金属塩を混合し、前記無機フィラーを先に前記ベース樹脂に乾式で混合し、次いでエポキシ系表面架橋剤および多価金属塩を水に溶解して表面架橋溶液状態にて混合する段階(段階2)」と特定されているのに対し、甲1製造方法発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点1-1b>
本件特許発明1においては、「前記エポキシ系表面架橋剤は、エチレングリコールジグリシジルエーテル(ethyleneglycol diglycidyl ether)およびジエチレングリコールジグリシジルエーテル(diethyleneglycol diglycidyl ether)からなる群より選ばれる1種以上のエポキシ当量が100g/eq以上130g/eq未満である第1エポキシ架橋剤、およびグリセロールポリグリシジルエーテル(glycerol polyglycidyl ether)、ジグリセロールポリグリシジルエーテル(diglycerol polyglycidyl ether)、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(polyglycerol polyglycidyl ether)およびソルビトールポリグリシジルエーテル(sorbitol polyglycidyl ether)からなる群より選ばれる1種以上のエポキシ当量が130~200g/eqである第2エポキシ架橋剤を含むものであり、
前記第1エポキシ架橋剤はベース樹脂100重量部に対して0.02~0.05重量部で含まれ、第2エポキシ架橋剤はベース樹脂100重量部に対して0.005~0.05重量部で含まれる」と特定されているのに対し、甲1製造方法発明においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
事案に鑑み、相違点1-1bについて検討する。
甲1には、甲1製造方法発明における「エチレングリコールジグリシジルエーテル」及び「ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(商品名:デナコールEX-512,平均エポキシ官能基数約4;ナガセ化成工業(株)製)」の「エポキシ当量」がどの程度かは記載されていないし、各々の含有量が本件特許発明1で特定される含有量の条件を満足するかどうかも記載されていない。
また、甲1及び他の証拠に、甲1製造方法発明において、相違点1-1bに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。
したがって、甲1製造方法発明において、甲1及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点1-1bに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1の「優れた諸吸水物性を示しながらも再湿潤現象および小便漏出現象が抑制された高吸水性樹脂を提供することができる。」(本件特許の発明の詳細な説明の【0012】)という効果(以下、「本件特許発明1の効果」という。)は、甲1製造方法発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲1製造方法発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件特許発明4ないし8について
本件特許発明4ないし8は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1製造方法発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)本件特許発明9について
ア 対比
本件特許発明9と甲1樹脂発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「酸性基の少なくとも一部が中和されたアクリル酸系単量体が架橋重合された架橋重合体を含むベース樹脂;および
前記ベース樹脂の粒子表面に形成されており、2種のエポキシ系表面架橋剤を介して追加架橋されている表面改質層を含む、高吸水性樹脂。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点1-9a>
「表面改質層」に関して、本件特許発明9においては、「前記ベース樹脂の粒子表面に形成されており、前記架橋重合体がエポキシ当量が相異する2種のエポキシ系表面架橋剤を介して追加架橋されている二重の表面改質層を含み、
前記表面改質層は、無機フィラーおよび多価金属塩を含み」と特定されているのに対し、甲1樹脂発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点1-9b>
本件特許発明9においては、「前記2種のエポキシ系表面架橋剤は、エチレングリコールジグリシジルエーテル(ethyleneglycol diglycidyl ether)およびジエチレングリコールジグリシジルエーテル(diethyleneglycol diglycidyl ether)からなる群より選ばれる1種以上のエポキシ当量が100g/eq以上130g/eq未満である第1エポキシ架橋剤、およびグリセロールポリグリシジルエーテル(glycerol polyglycidyl ether)、ジグリセロールポリグリシジルエーテル(diglycerol polyglycidyl ether)、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(polyglycerol polyglycidyl ether)およびソルビトールポリグリシジルエーテル(sorbitol polyglycidyl ether)からなる群より選ばれる1種以上のエポキシ当量が130~200g/eqである第2エポキシ架橋剤を含み、
前記第1エポキシ架橋剤はベース樹脂100重量部に対して0.02~0.05重量部で含まれ、第2エポキシ架橋剤はベース樹脂100重量部に対して0.005~0.05重量部で含まれる」と特定されているのに対し、甲1樹脂発明においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
事案に鑑み、相違点1-9bについて検討する。
相違点1-9bは、相違点1-1bと実質的に同じであるから、その判断も同じである。すなわち、甲1樹脂発明において、甲1及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点1-9bに係る本件特許発明9の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明9の「優れた諸吸水物性を示しながらも再湿潤現象および小便漏出現象が抑制された高吸水性樹脂を提供することができる。」という効果(以下、「本件特許発明9の効果」という。)は、甲1樹脂発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明9は甲1樹脂発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(5)本件特許発明10ないし13について
本件特許発明10ないし13は、請求項9を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明9の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明9と同様に、甲1樹脂発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(7)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、令和5年1月6日に提出された意見書において、「本件訂正発明1~13は、甲第1号証の実施例8(エチレングリコールジグリシジルエーテルとポリグリセロールポリグリシジルエーテルを使用)に、周知技術である甲第5号証や甲第7号証とを参照して、当業者が適宜成し得る単なる設計的事項に過ぎない。」(第8ページ第16ないし19行)と主張する。
そこで、上記主張について検討するに、甲5や甲7には、相違点1-1bに係る本件特許発明1の発明特定事項や相違点1-9bに係る本件特許発明9の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載は認められない。
したがって、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
(8)申立理由1についてのむすび
したがって、本件特許発明1及び4ないし13は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1及び4ないし13に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由1によっては取り消すことはできない。
2 申立理由2(甲2に基づく進歩性)について
(1)甲2に記載された発明
甲2は「低い固化傾向及び圧力下の高い吸収を有する吸水性ポリマー粒子の製造方法」に関する文献であり、その【0099】ないし【0102】に記載された事項を整理すると、甲2には次の発明(以下、順に「甲2製造方法発明」及び「甲2樹脂発明」という。)が記載されていると認める。
<甲2製造方法発明>
「37.3質量%ナトリウムアクリラート水溶液5009gを、アクリル酸477g及び水430gと混合し、窒素で不活性化し、この混合物を、窒素で不活性化されたニーダー(2軸、Σ型ブレード)中へ入れて、連続してポリエチレングリコールジアクリラート9.0g(400g/molの平均モル質量を有するポリエチレングリコールのジアクリラート)、1.0質量%アスコルビン酸水溶液4.4g、15質量%過硫酸ナトリウム水溶液18.1g及び3質量%過酸化水素水溶液3.9gと混合し、ニーダーを、最大回転数(より高速の軸約98rpm、より低速の軸約49rpm、約2:1の比)で撹拌し、過酸化水素の添加直後、ニーダージャケットを80℃の温かい熱媒体で加熱し、最大温度の達成後に、ジャケット加熱のスイッチを切り、ニーダー中でさらに15分間後反応させ、得られたポリマーゲルを65℃に冷却し、排出し、ポリマーゲルの乾燥を、175℃で75分間、板あたり700gの負荷で循環空気乾燥器中で行い、ロールミル中での3回の粉砕後に、ポリマー粒子を850~100μmのふるい分級物にふるい分けし、得られた吸水性ポリマー粒子1000gを実験室用ミキサーへ移し、約23℃で、2-ヒドロキシエチルオキサゾリジン-2-オン0.6g、1,3-プロパンジオール0.6g、水16.5g、2-プロパノール11.5g及びアルミニウム塩水溶液(25質量%の乳酸アルミニウム1g、2g、4gもしくは6g、26.8質量%の硫酸アルミニウム2.4gもしくは3.6g又は17.4質量%の塩基性酢酸アルミニウム1.6gもしくは2.4g)の混合物を、ノズルを介して噴霧し、噴霧されたポリマー粒子を、他の実験室用ミキサー中へ移し、急速に170℃、175℃もしくは180℃に加熱し、この温度で60分保持し、冷却後に、表面後架橋されたポリマー粒子を、850~100μmのふるい分級物にふるい分けし、500mlガラスびん中で、表面後架橋されたポリマー粒子100gを、場合により二酸化ケイ素0.1g、0.2gもしくは0.3gと、ミキサーを用いて45rpmで15分間混合する、吸水性ポリマー粒子の製造方法。」
<甲2樹脂発明>
「37.3質量%ナトリウムアクリラート水溶液5009gを、アクリル酸477g及び水430gと混合し、窒素で不活性化し、この混合物を、窒素で不活性化されたニーダー(2軸、Σ型ブレード)中へ入れて、連続してポリエチレングリコールジアクリラート9.0g(400g/molの平均モル質量を有するポリエチレングリコールのジアクリラート)、1.0質量%アスコルビン酸水溶液4.4g、15質量%過硫酸ナトリウム水溶液18.1g及び3質量%過酸化水素水溶液3.9gと混合し、ニーダーを、最大回転数(より高速の軸約98rpm、より低速の軸約49rpm、約2:1の比)で撹拌し、過酸化水素の添加直後、ニーダージャケットを80℃の温かい熱媒体で加熱し、最大温度の達成後に、ジャケット加熱のスイッチを切り、ニーダー中でさらに15分間後反応させ、得られたポリマーゲルを65℃に冷却し、排出し、ポリマーゲルの乾燥を、175℃で75分間、板あたり700gの負荷で循環空気乾燥器中で行い、ロールミル中での3回の粉砕後に、ポリマー粒子を850~100μmのふるい分級物にふるい分けし、得られた吸水性ポリマー粒子1000gを実験室用ミキサーへ移し、約23℃で、2-ヒドロキシエチルオキサゾリジン-2-オン0.6g、1,3-プロパンジオール0.6g、水16.5g、2-プロパノール11.5g及びアルミニウム塩水溶液(25質量%の乳酸アルミニウム1g、2g、4gもしくは6g、26.8質量%の硫酸アルミニウム2.4gもしくは3.6g又は17.4質量%の塩基性酢酸アルミニウム1.6gもしくは2.4g)の混合物を、ノズルを介して噴霧し、噴霧されたポリマー粒子を、他の実験室用ミキサー中へ移し、急速に170℃、175℃もしくは180℃に加熱し、この温度で60分保持し、冷却後に、表面後架橋されたポリマー粒子を、850~100μmのふるい分級物にふるい分けし、500mlガラスびん中で、表面後架橋されたポリマー粒子100gを、場合により二酸化ケイ素0.1g、0.2gもしくは0.3gと、ミキサーを用いて45rpmで15分間混合して得た、吸水性ポリマー粒子。」
(2)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲2製造方法発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「酸性基を有し、前記酸性基の少なくとも一部が中和されたアクリル酸系単量体および内部架橋剤が架橋重合されたベース樹脂(base resin)を準備する段階(段階1);
前記ベース樹脂に、表面架橋剤を水に溶解して表面架橋溶液状態にて混合する段階(段階2);および
前記段階2の混合物を昇温して前記ベース樹脂に対する表面改質を行う段階(段階3)を含む、吸水性樹脂の製造方法。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点2-1a>
「前記ベース樹脂に、表面架橋剤を水に溶解して表面架橋溶液状態にて混合する段階(段階2)」に関して、本件特許発明1においては、「前記ベース樹脂に、無機フィラー、エポキシ系表面架橋剤および多価金属塩を混合し、前記無機フィラーを先に前記ベース樹脂に乾式で混合し、次いでエポキシ系表面架橋剤および多価金属塩を水に溶解して表面架橋溶液状態にて混合する段階(段階2)」と特定されているのに対し、甲2製造方法発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点2-1b>
本件特許発明1においては、「前記エポキシ系表面架橋剤は、エチレングリコールジグリシジルエーテル(ethyleneglycol diglycidyl ether)およびジエチレングリコールジグリシジルエーテル(diethyleneglycol diglycidyl ether)からなる群より選ばれる1種以上のエポキシ当量が100g/eq以上130g/eq未満である第1エポキシ架橋剤、およびグリセロールポリグリシジルエーテル(glycerol polyglycidyl ether)、ジグリセロールポリグリシジルエーテル(diglycerol polyglycidyl ether)、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(polyglycerol polyglycidyl ether)およびソルビトールポリグリシジルエーテル(sorbitol polyglycidyl ether)からなる群より選ばれる1種以上のエポキシ当量が130~200g/eqである第2エポキシ架橋剤を含むものであり、
前記第1エポキシ架橋剤はベース樹脂100重量部に対して0.02~0.05重量部で含まれ、第2エポキシ架橋剤はベース樹脂100重量部に対して0.005~0.05重量部で含まれる」と特定されているのに対し、甲2製造方法発明においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
事案に鑑み、相違点2-1bについて検討する。
甲2及び他の証拠には、甲2製造方法発明において、相違点2-1bに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。
したがって、甲2製造方法発明において、甲2及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点2-1bに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1の効果は、甲2製造方法発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲2製造方法発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件特許発明4ないし8について
本件特許発明4ないし8は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲2製造方法発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)本件特許発明9について
ア 対比
本件特許発明9と甲2樹脂発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「酸性基の少なくとも一部が中和されたアクリル酸系単量体が架橋重合された架橋重合体を含むベース樹脂;および
前記ベース樹脂の粒子表面に形成されており、表面架橋剤を介して追加架橋されている表面改質層を含む、高吸水性樹脂。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点2-9a>
「表面改質層」に関して、本件特許発明9においては、「前記ベース樹脂の粒子表面に形成されており、前記架橋重合体がエポキシ当量が相異する2種のエポキシ系表面架橋剤を介して追加架橋されている二重の表面改質層を含み、
前記表面改質層は、無機フィラーおよび多価金属塩を含み」と特定されているのに対し、甲2樹脂発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点2-9b>
本件特許発明9においては、「前記2種のエポキシ系表面架橋剤は、エチレングリコールジグリシジルエーテル(ethyleneglycol diglycidyl ether)およびジエチレングリコールジグリシジルエーテル(diethyleneglycol diglycidyl ether)からなる群より選ばれる1種以上のエポキシ当量が100g/eq以上130g/eq未満である第1エポキシ架橋剤、およびグリセロールポリグリシジルエーテル(glycerol polyglycidyl ether)、ジグリセロールポリグリシジルエーテル(diglycerol polyglycidyl ether)、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(polyglycerol polyglycidyl ether)およびソルビトールポリグリシジルエーテル(sorbitol polyglycidyl ether)からなる群より選ばれる1種以上のエポキシ当量が130~200g/eqである第2エポキシ架橋剤を含み、
前記第1エポキシ架橋剤はベース樹脂100重量部に対して0.02~0.05重量部で含まれ、第2エポキシ架橋剤はベース樹脂100重量部に対して0.005~0.05重量部で含まれる」と特定されているのに対し、甲2樹脂発明においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
事案に鑑み、相違点2-9bについて検討する。
相違点2-9bは、相違点2-1bと実質的に同じであるから、その判断も同じである。すなわち、甲2樹脂発明において、甲2及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点2-9bに係る本件特許発明9の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明9の効果は、甲2樹脂発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明9は甲2樹脂発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(5)本件特許発明10ないし13について
本件特許発明10ないし13は、請求項9を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明9の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明9と同様に、甲2樹脂発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(6)申立理由2についてのむすび
したがって、本件特許発明1及び4ないし13は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1及び4ないし13に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由2によっては取り消すことはできない。
3 申立理由3(甲3に基づく進歩性)について
(1)甲3に記載された発明
甲3は「吸水剤の製造方法」に関する文献であり、その【0059】ないし【0062】に記載された事項を整理すると、甲3には次の発明(以下、順に「甲3製造方法発明」及び「甲3樹脂発明」という。)が記載されていると認める。
<甲3製造方法発明>
「単量体成分としてのアクリル酸ナトリウム(中和率75モル%)の33重量%水溶液5500部に、内部架橋剤としてのポリエチレングリコールジアクリレート(n=8)4. 0重量部を溶解させて反応液とし、次に、この反応液を窒素ガス雰囲気下で、30分間脱気し、次いで、シグマ型羽根を2本有するジャケット付きステンレス製双碗型ニーダーに蓋を付けた反応器に上記反応液を供給し、反応液を30℃に保ちながら上記反応器内を窒素ガス置換し、続いて、反応液を攪拌しながら、過硫酸アンモニウム2.4部、及びL-アスコルビン酸0.12部を添加したところ、凡そ1分後に重合が開始し、30℃~80℃で重合を行い、重合を開始して60分後に含水ゲル状重合体を取り出し、得られた含水ゲル状重合体を目開き300μmの金網上に広げ、150℃で90分間熱風乾燥し、次いで、乾燥物を振動ミルを用いて粉砕し、さらに目開き500μmの振るい網で分級することにより平均粒径が400μmで、150μm未満の粒子の割合が0.5重量%の不定型破砕状の吸水性樹脂(1)を得、得られた吸水性樹脂(1)100重量部に対し、下記一般式(2)で示される架橋剤(A)(式中mは1、nは平均11、X、Yはグリシジル基、平均分子量1450;ナガセ化成工業(株)製、デナコールEX-810HM)0.15重量部、水3重量部、イソプロピルアルコール1重量部からなる架橋剤溶液を混合し、得られた混合物を150℃で40分間加熱処理する、吸水剤(1)の製造方法。
[図:0001397193000003.jpg]
」
<甲3樹脂発明>
「単量体成分としてのアクリル酸ナトリウム(中和率75モル%)の33重量%水溶液5500部に、内部架橋剤としてのポリエチレングリコールジアクリレート(n=8)4. 0重量部を溶解させて反応液とし、次に、この反応液を窒素ガス雰囲気下で、30分間脱気し、次いで、シグマ型羽根を2本有するジャケット付きステンレス製双碗型ニーダーに蓋を付けた反応器に上記反応液を供給し、反応液を30℃に保ちながら上記反応器内を窒素ガス置換し、続いて、反応液を攪拌しながら、過硫酸アンモニウム2.4部、及びL-アスコルビン酸0.12部を添加したところ、凡そ1分後に重合が開始し、30℃~80℃で重合を行い、重合を開始して60分後に含水ゲル状重合体を取り出し、得られた含水ゲル状重合体を目開き300μmの金網上に広げ、150℃で90分間熱風乾燥し、次いで、乾燥物を振動ミルを用いて粉砕し、さらに目開き500μmの振るい網で分級することにより平均粒径が400μmで、150μm未満の粒子の割合が0.5重量%の不定型破砕状の吸水性樹脂(1)を得、得られた吸水性樹脂(1)100重量部に対し、下記一般式(2)で示される架橋剤(A)(式中mは1、nは平均11、X、Yはグリシジル基、平均分子量1450;ナガセ化成工業(株)製、デナコールEX-810HM)0.15重量部、水3重量部、イソプロピルアルコール1重量部からなる架橋剤溶液を混合し、得られた混合物を150℃で40分間加熱処理して得た、吸水剤(1)。
[図:0001397193000004.jpg]
」
(2)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲3製造方法発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「酸性基を有し、前記酸性基の少なくとも一部が中和されたアクリル酸系単量体および内部架橋剤が架橋重合されたベース樹脂(base resin)を準備する段階(段階1);
前記ベース樹脂に、表面架橋剤を水に溶解して表面架橋溶液状態にて混合する段階(段階2);および
前記段階2の混合物を昇温して前記ベース樹脂に対する表面改質を行う段階(段階3)を含む、吸水性樹脂の製造方法。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点3-1a>
「前記ベース樹脂に、表面架橋剤を水に溶解して表面架橋溶液状態にて混合する段階(段階2)」に関して、本件特許発明1においては、「前記ベース樹脂に、無機フィラー、エポキシ系表面架橋剤および多価金属塩を混合し、前記無機フィラーを先に前記ベース樹脂に乾式で混合し、次いでエポキシ系表面架橋剤および多価金属塩を水に溶解して表面架橋溶液状態にて混合する段階(段階2)」と特定されているのに対し、甲3製造方法発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点3-1b>
本件特許発明1においては、「前記エポキシ系表面架橋剤は、エチレングリコールジグリシジルエーテル(ethyleneglycol diglycidyl ether)およびジエチレングリコールジグリシジルエーテル(diethyleneglycol diglycidyl ether)からなる群より選ばれる1種以上のエポキシ当量が100g/eq以上130g/eq未満である第1エポキシ架橋剤、およびグリセロールポリグリシジルエーテル(glycerol polyglycidyl ether)、ジグリセロールポリグリシジルエーテル(diglycerol polyglycidyl ether)、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(polyglycerol polyglycidyl ether)およびソルビトールポリグリシジルエーテル(sorbitol polyglycidyl ether)からなる群より選ばれる1種以上のエポキシ当量が130~200g/eqである第2エポキシ架橋剤を含むものであり、
前記第1エポキシ架橋剤はベース樹脂100重量部に対して0.02~0.05重量部で含まれ、第2エポキシ架橋剤はベース樹脂100重量部に対して0.005~0.05重量部で含まれる」と特定されているのに対し、甲3製造方法発明においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
事案に鑑み、相違点3-1bについて検討する。
甲3及び他の証拠には、甲3製造方法発明において、相違点3-1bに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。
したがって、甲3製造方法発明において、甲3及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点3-1bに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1の効果は、甲3製造方法発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲3製造方法発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件特許発明4ないし8について
本件特許発明4ないし8は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲3製造方法発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)本件特許発明9について
ア 対比
本件特許発明9と甲3樹脂発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「酸性基の少なくとも一部が中和されたアクリル酸系単量体が架橋重合された架橋重合体を含むベース樹脂;および
前記ベース樹脂の粒子表面に形成されており、表面架橋剤を介して追加架橋されている表面改質層を含む、高吸水性樹脂。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点3-9a>
「表面改質層」に関して、本件特許発明9においては、「前記ベース樹脂の粒子表面に形成されており、前記架橋重合体がエポキシ当量が相異する2種のエポキシ系表面架橋剤を介して追加架橋されている二重の表面改質層を含み、
前記表面改質層は、無機フィラーおよび多価金属塩を含み」と特定されているのに対し、甲3樹脂発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点3-9b>
本件特許発明9においては、「前記2種のエポキシ系表面架橋剤は、エチレングリコールジグリシジルエーテル(ethyleneglycol diglycidyl ether)およびジエチレングリコールジグリシジルエーテル(diethyleneglycol diglycidyl ether)からなる群より選ばれる1種以上のエポキシ当量が100g/eq以上130g/eq未満である第1エポキシ架橋剤、およびグリセロールポリグリシジルエーテル(glycerol polyglycidyl ether)、ジグリセロールポリグリシジルエーテル(diglycerol polyglycidyl ether)、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(polyglycerol polyglycidyl ether)およびソルビトールポリグリシジルエーテル(sorbitol polyglycidyl ether)からなる群より選ばれる1種以上のエポキシ当量が130~200g/eqである第2エポキシ架橋剤を含み、
前記第1エポキシ架橋剤はベース樹脂100重量部に対して0.02~0.05重量部で含まれ、第2エポキシ架橋剤はベース樹脂100重量部に対して0.005~0.05重量部で含まれる」と特定されているのに対し、甲3樹脂発明においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
事案に鑑み、相違点3-9bについて検討する。
相違点3-9bは、相違点3-1bと実質的に同じであるから、その判断も同じである。すなわち、甲3樹脂発明において、甲3及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点3-9bに係る本件特許発明9の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明9の効果は、甲3樹脂発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明9は甲3樹脂発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(5)本件特許発明10ないし13について
本件特許発明10ないし13は、請求項9を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明9の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明9と同様に、甲3樹脂発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(6)申立理由3についてのむすび
したがって、本件特許発明1及び4ないし13は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1及び4ないし13に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由3によっては取り消すことはできない。
4 申立理由4(甲4に基づく進歩性)について
(1)甲4に記載された発明
甲4は「高吸収性樹脂及びその製造方法」に関する文献であり、その【0136】ないし【0145】に記載された事項を整理すると、甲4には次の発明(以下、順に「甲4製造方法発明」及び「甲4樹脂発明」という。)が記載されていると認める。
<甲4製造方法発明>
「アクリル酸500gに希釈された0.21%IRGACURE819開始剤20.5g(80ppm)を混合して、アクリル酸に希釈された10%ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA、Mw=400)溶液21gを混合した溶液に注入して、ここに2%SDS(Sodium dodecyl sulfate)溶液12gを混合して、24%苛性ソーダ溶液800gを徐々に滴下して混合し、このように得られた水溶性エチレン系不飽和単量体としてアクリル酸ナトリウムでアクリル酸中和度は70モル%になり、二つの溶液の混合の時中和熱によって混合液温度が72℃以上上昇することを確認した後、温度が43℃で冷却した時4%ナトリウムビカーボネート溶液13.4gを混合して、同時に水に希釈された4%過硫酸ナトリウム溶液16gを注入し、前記溶液をUVの調査装置が上部に装着されて内部が80℃に予熱された正方形重合機内に設置されたトレー(tray、横15cm×15cm)に注いでUVを調査して重合を開示して製造したシート形態の重合体を約5cm×5cmのサイズで切った後、ミットチョッパ(meat chopper)に投入して重合体を粉砕して1mmないし10mmサイズを有する関数粒子を得、前記パウダー(crump)を上下で風量転移が可能なオーブンで乾燥させ、180℃以上のホットエア(hot air)を15分間下方で上方に、また15分間上方で下方に流れるようにして均一に乾燥させ、乾燥後乾燥体の含水量は2%以下になるようにし、乾燥後、粉砕機で粉砕した後分け与えて150ないし850μmサイズを選別してベース樹脂を準備し、水4g、メタノール4g、EX-810(Ethylen Glycol Diglycidyl Ether)0.25g、プロピレングリコール(PG)0.3g、アルミニウムサルフェイト(Al-S)0.15g、フユームドシリカ(AEROXIDE○RAlu130)0.1g、還元剤(Na2S2O5)0.05gを混合した表面架橋剤溶液を製造し、前記得られたベース樹脂粉末100gに、前記表面架橋剤溶液を混合した後140℃オーブン(convection oven)に入れて35分間反応させ、製造された粉末をASTM規格の標準網体で分け与えて150ないし850μmの粒径を有するようにする、高吸収性樹脂の製造方法。」
<甲4樹脂発明>
「アクリル酸500gに希釈された0.21%IRGACURE819開始剤20.5g(80ppm)を混合して、アクリル酸に希釈された10%ポリエチレングリコールジアクリレート(PEGDA、Mw=400)溶液21gを混合した溶液に注入して、ここに2%SDS(Sodium dodecyl sulfate)溶液12gを混合して、24%苛性ソーダ溶液800gを徐々に滴下して混合し、このように得られた水溶性エチレン系不飽和単量体としてアクリル酸ナトリウムでアクリル酸中和度は70モル%になり、二つの溶液の混合の時中和熱によって混合液温度が72℃以上上昇することを確認した後、温度が43℃で冷却した時4%ナトリウムビカーボネート溶液13.4gを混合して、同時に水に希釈された4%過硫酸ナトリウム溶液16gを注入し、前記溶液をUVの調査装置が上部に装着されて内部が80℃に予熱された正方形重合機内に設置されたトレー(tray、横15cm×15cm)に注いでUVを調査して重合を開示して製造したシート形態の重合体を約5cm×5cmのサイズで切った後、ミットチョッパ(meat chopper)に投入して重合体を粉砕して1mmないし10mmサイズを有する関数粒子を得、前記パウダー(crump)を上下で風量転移が可能なオーブンで乾燥させ、180℃以上のホットエア(hot air)を15分間下方で上方に、また15分間上方で下方に流れるようにして均一に乾燥させ、乾燥後乾燥体の含水量は2%以下になるようにし、乾燥後、粉砕機で粉砕した後分け与えて150ないし850μmサイズを選別してベース樹脂を準備し、水4g、メタノール4g、EX-810(Ethylen Glycol Diglycidyl Ether)0.25g、プロピレングリコール(PG)0.3g、アルミニウムサルフェイト(Al-S)0.15g、フユームドシリカ(AEROXIDE○RAlu130)0.1g、還元剤(Na2S2O5)0.05gを混合した表面架橋剤溶液を製造し、前記得られたベース樹脂粉末100gに、前記表面架橋剤溶液を混合した後140℃オーブン(convection oven)に入れて35分間反応させ、製造された粉末をASTM規格の標準網体で分け与えて150ないし850μmの粒径を有するようにして得た、高吸収性樹脂。」
(2)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と甲4製造方法発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「酸性基を有し、前記酸性基の少なくとも一部が中和されたアクリル酸系単量体および内部架橋剤が架橋重合されたベース樹脂(base resin)を準備する段階(段階1);
前記ベース樹脂に、表面架橋剤を水に溶解して表面架橋溶液状態にて混合する段階(段階2);および
前記段階2の混合物を昇温して前記ベース樹脂に対する表面改質を行う段階(段階3)を含む、吸水性樹脂の製造方法。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点4-1a>
「前記ベース樹脂に、表面架橋剤を水に溶解して表面架橋溶液状態にて混合する段階(段階2)」に関して、本件特許発明1においては、「前記ベース樹脂に、無機フィラー、エポキシ系表面架橋剤および多価金属塩を混合し、前記無機フィラーを先に前記ベース樹脂に乾式で混合し、次いでエポキシ系表面架橋剤および多価金属塩を水に溶解して表面架橋溶液状態にて混合する段階(段階2)」と特定されているのに対し、甲4製造方法発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点4-1b>
本件特許発明1においては、「前記エポキシ系表面架橋剤は、エチレングリコールジグリシジルエーテル(ethyleneglycol diglycidyl ether)およびジエチレングリコールジグリシジルエーテル(diethyleneglycol diglycidyl ether)からなる群より選ばれる1種以上のエポキシ当量が100g/eq以上130g/eq未満である第1エポキシ架橋剤、およびグリセロールポリグリシジルエーテル(glycerol polyglycidyl ether)、ジグリセロールポリグリシジルエーテル(diglycerol polyglycidyl ether)、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(polyglycerol polyglycidyl ether)およびソルビトールポリグリシジルエーテル(sorbitol polyglycidyl ether)からなる群より選ばれる1種以上のエポキシ当量が130~200g/eqである第2エポキシ架橋剤を含むものであり、
前記第1エポキシ架橋剤はベース樹脂100重量部に対して0.02~0.05重量部で含まれ、第2エポキシ架橋剤はベース樹脂100重量部に対して0.005~0.05重量部で含まれる」と特定されているのに対し、甲4製造方法発明においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
事案に鑑み、相違点4-1bについて検討する。
甲4及び他の証拠には、甲4製造方法発明において、相違点4-1bに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。
したがって、甲4製造方法発明において、甲4及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点4-1bに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1の効果は、甲4製造方法発明並びに甲4及び他の証拠に記載された事項から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲4製造方法発明並びに甲4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件特許発明4ないし8について
本件特許発明4ないし8は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲4製造方法発明並びに甲4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)本件特許発明9について
ア 対比
本件特許発明9と甲4樹脂発明を対比する。
両者は次の点で一致する。
<一致点>
「酸性基の少なくとも一部が中和されたアクリル酸系単量体が架橋重合された架橋重合体を含むベース樹脂;および
前記ベース樹脂の粒子表面に形成されており、2種の表面架橋剤を介して追加架橋されている表面改質層を含む、高吸水性樹脂。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点4-9a>
「表面改質層」に関して、本件特許発明9においては、「前記ベース樹脂の粒子表面に形成されており、前記架橋重合体がエポキシ当量が相異する2種のエポキシ系表面架橋剤を介して追加架橋されている二重の表面改質層を含み、
前記表面改質層は、無機フィラーおよび多価金属塩を含み」と特定されているのに対し、甲4樹脂発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点4-9b>
本件特許発明9においては、「前記2種のエポキシ系表面架橋剤は、エチレングリコールジグリシジルエーテル(ethyleneglycol diglycidyl ether)およびジエチレングリコールジグリシジルエーテル(diethyleneglycol diglycidyl ether)からなる群より選ばれる1種以上のエポキシ当量が100g/eq以上130g/eq未満である第1エポキシ架橋剤、およびグリセロールポリグリシジルエーテル(glycerol polyglycidyl ether)、ジグリセロールポリグリシジルエーテル(diglycerol polyglycidyl ether)、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル(polyglycerol polyglycidyl ether)およびソルビトールポリグリシジルエーテル(sorbitol polyglycidyl ether)からなる群より選ばれる1種以上のエポキシ当量が130~200g/eqである第2エポキシ架橋剤を含み、
前記第1エポキシ架橋剤はベース樹脂100重量部に対して0.02~0.05重量部で含まれ、第2エポキシ架橋剤はベース樹脂100重量部に対して0.005~0.05重量部で含まれる」と特定されているのに対し、甲4樹脂発明においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
事案に鑑み、相違点4-9bについて検討する。
相違点4-9bは、相違点4-1bと実質的に同じであるから、その判断も同じである。すなわち、甲4樹脂発明において、甲4及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点4-9bに係る本件特許発明9の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明9の効果は、甲4樹脂発明並びに甲4及び他の証拠に記載された事項から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。
ウ まとめ
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明9は甲4樹脂発明並びに甲4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(5)本件特許発明10ないし13について
本件特許発明10ないし13は、請求項9を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明9の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明9と同様に、甲4樹脂発明並びに甲4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(6)申立理由4についてのむすび
したがって、本件特許発明1及び4ないし13は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1及び4ないし13に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由4によっては取り消すことはできない。
5 申立理由6(サポート要件)について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、検討する。
(2)特許請求の範囲の記載
本件特許の特許請求の範囲の記載は上記第3のとおりである。
(3)サポート要件の判断
本件特許の発明の詳細な説明の【0003】ないし【0009】によると、本件特許発明の解決しようとする課題は「再湿潤および小便の漏出現象が抑制される高吸水性樹脂およびその製造方法を提供すること」(以下、「発明の課題」という。)である。
そして、本件特許の発明の詳細な説明の【0010】、【0011】、【0069】、【0073】、【0082】ないし【0085】及び【0095】ないし【0103】には、本件特許発明1及び4ないし13に対応する記載がある。
また、本件特許の発明の詳細な説明の【0064】には「エポキシ系表面架橋剤を使用し、エポキシ当量が相異する2種のエポキシ系表面架橋剤を混合使用する。このように2種のエポキシ系表面架橋剤を混合使用すると、高吸水性樹脂の表面に架橋層が二重層で形成され、これにより、高吸水性樹脂の再湿潤特性が低下することなく、水が速やかに通過する性質である通液性をより改善することができる。」と記載され、【0106】ないし【0137】において、「エポキシ当量が100g/eq以上130g/eq未満である第1エポキシ架橋剤」及び「エポキシ当量が130~200g/eqである第2エポキシ架橋剤」を含む「エポキシ架橋剤」を使用した実施例1ないし6が、そのような「エポキシ架橋剤」を使用していない比較例1ないし3と比べて、再湿潤特性及び通液性に優れていることを確認している。
そうすると、当業者は、「酸性基を有し、前記酸性基の少なくとも一部が中和されたアクリル酸系単量体および内部架橋剤が架橋重合されたベース樹脂(base resin)を準備する段階;
前記ベース樹脂に、エポキシ系表面架橋剤混合する段階;および
前記段階2の混合物を昇温して前記ベース樹脂に対する表面改質を行う段階を含み、
前記エポキシ系表面架橋剤は、エポキシ当量が100g/eq以上130g/eq未満である第1エポキシ架橋剤およびエポキシ当量が130~200g/eqである第2エポキシ架橋剤を含む、高吸水性樹脂の製造方法」及び「酸性基の少なくとも一部が中和されたアクリル酸系単量体が架橋重合された架橋重合体を含むベース樹脂;および
前記ベース樹脂の粒子表面に形成されており、前記架橋重合体がエポキシ当量が相異する2種のエポキシ系表面架橋剤を介して追加架橋されている二重の表面改質層を含み、
前記2種のエポキシ系表面架橋剤は、エポキシ当量が100g/eq以上130g/eq未満である第1エポキシ架橋剤およびエポキシ当量が130~200g/eqである第2エポキシ架橋剤を含む、高吸水性樹脂」は発明の課題を解決できると認識できる。
そして、本件特許発明1及び4ないし8は、上記発明の課題を解決できると認識できる「高吸水性樹脂の製造方法」をさらに限定したものであり、本件特許発明9ないし13は、上記発明の課題を解決できると認識できる「高吸水性樹脂」をさらに限定したものである。
したがって、本件特許発明1及び4ないし13は、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
よって、本件特許発明1及び4ないし13に関して、特許請求の範囲の記載は、サポート要件に適合する。
なお、特許異議申立人の上記第4 5(1)ないし(3)の主張について検討するに、上記判断は左右されない。
また、特許異議申立人は、令和5年1月6日に提出された意見書において、「「エチレングリコールジグリシジルエーテル」について第1エポキシ架橋剤として用いたときに効果を奏したからといって、「ジエチレングリコールジグリシジルエーテル」についても、第1エポキシ架橋剤として用いたときに同様の効果を奏するとはいえない。」(第10ページ第4ないし9行)旨主張するが、上記のとおり、「第1エポキシ架橋剤」として用いるものが、「エチレングリコールジグリシジルエーテル」であるか又は「ジエチレングリコールジグリシジルエーテル」であるかは、発明の課題を解決できると認識できる範囲とは関係がないし、「ジエチレングリコールジグリシジルエーテル」を用いた場合に課題を解決できないとする証拠が示されている訳でもないから、上記主張も、サポート要件の判断を左右するものではない。
(4)申立理由6についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1及び4ないし13に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、申立理由6によっては取り消すことはできない。
6 申立理由7(本件特許発明9ないし13に対する実施可能要件)について
(1)実施可能要件の判断基準
上記第3のとおり、本件特許発明9ないし13は物の発明であるところ、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があることを要する。
そこで、検討する。
(2)実施可能要件の判断
本件特許の発明の詳細な説明には、本件特許発明9ないし13の各発明特定事項について具体的に記載され、実施例についてもその製造方法を含め具体的に記載されている。
したがって、本件特許の発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明9ないし13を生産し、使用することができる程度の記載があるといえる。
よって、本件特許発明9ないし13に関して、発明の詳細な説明の記載は、実施可能要件を充足する。
なお、特許異議申立人の上記第4 6(1)及び(2)の主張について検討するに、上記判断は左右されない。
(3)申立理由7についてのむすび
したがって、本件特許の請求項9ないし13に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえないから、同法第113条第4号に該当せず、申立理由7によっては取り消すことはできない。
第8 結語
上記第6及び7のとおり、本件特許の請求項1及び4ないし13に係る特許は、取消理由及び特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1及び4ないし13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
さらに、本件特許の請求項2及び3に係る特許は、訂正により削除されたため、特許異議申立人による請求項2及び3に係る特許についての特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-700462