特許訂正審判
2018-390057
ラックアンドピニオン式ステアリング装置の製造方法
- 審判番号
- 2018-390057
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2010-010393外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2018年03月15日
- 審決日
- 2018年04月24日
- 公報発行日
- 2018年07月27日
- 結論
- 訂正認容
- 分類
- P141 .851-Y (B21K) / P141 .852-Y (B21K) / P141 .853-Y (B21K)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法126条1項2号特許法126条1項3号特許法126条5項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条第1項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第126条第7項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5471492号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
特許第5471492号の明細書及び特許請求の範囲を,本件審判請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本件訂正審判請求に係る特許第5471492号(以下「本件特許」という。)は,平成22年1月20日に特許出願され,平成26年2月14日に特許権の設定登録がなされ,平成30年3月15日に本件訂正審判の請求がなされたものである。
第2 請求の趣旨
本件訂正審判の請求の趣旨は,特許第5471492号の明細書及び特許請求の範囲を,本件審判請求書に添付した訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり訂正することを認める,との審決を求めるものである。
第3 本件訂正の内容
本件訂正の内容は,次のとおりである(なお,下線部は訂正箇所を示すため本審が付したものである。)。
1.訂正事項1
本件特許請求の範囲の請求項1に,
「調質処理が施された鋼製の素材を、冷間鍛造で所定の形状に成形して、ビッカース硬さHVを180以上300以下とした後に、該素材に高周波焼入れを施して前記ラックを製造する」
とあるのを,
「調質処理が施された鋼製の素材を、冷間鍛造で所定の形状に成形して、ビッカース硬さHVを260とした後に、該素材に高周波焼入れを施して前記ラックを製造する」
と訂正する。
2.訂正事項2
本件特許請求の範囲の請求項2に,
「前記ラックに形成された歯と歯の間の谷部のビッカース硬さHVを180以上300以下に維持するように前記高周波焼入れを施す」
とあるのを,
「前記ラックに形成された歯と歯の間の谷部のビッカース硬さHVを260に維持するように前記高周波焼入れを施す」
と訂正する。
3.訂正事項3
本件特許明細書の段落0002に,
「S35~S55C」
とあるのを,
「S35C~S55C」
と訂正する。
4.訂正事項4
本件特許明細書の段落0006に,
「調質処理が施された鋼製の素材を、冷間鍛造で所定の形状に成形して、ビッカース硬さHVを180以上300以下とした後に、該素材に高周波焼入れを施して前記ラックを製造する」
とあるのを,
「調質処理が施された鋼製の素材を、冷間鍛造で所定の形状に成形して、ビッカース硬さHVを260とした後に、該素材に高周波焼入れを施して前記ラックを製造する」
と訂正する。
5.訂正事項5
本件特許明細書の段落0010に,
「前記ラックに形成された歯と歯の間の谷部のビッカース硬さHVを180以上300以下に維持するように前記高周波焼入れを施すことが好ましい。
すなわち、ラックの歯には焼入れを施して前記表層部を形成し、歯と歯の間の谷部には実質的に焼入れを施さず非焼入れ部を形成することが好ましい。焼入れが施されなければビッカース硬さHVは高周波焼入れ前の180以上300以下に維持されるから、前記谷部は十分な靱性を有している。」
とあるのを,
「前記ラックに形成された歯と歯の間の谷部のビッカース硬さHVを260に維持するように前記高周波焼入れを施すことが好ましい。
すなわち、ラックの歯には焼入れを施して前記表層部を形成し、歯と歯の間の谷部には実質的に焼入れを施さず非焼入れ部を形成することが好ましい。焼入れが施されなければビッカース硬さHVは高周波焼入れ前の260に維持されるから、前記谷部は十分な靱性を有している。」
と訂正する。
6.訂正事項6
本件特許明細書の段落0035の表2に,「実施例」として番号1ないし12が付されているのを,以下のとおり,「参考例」として番号1ないし6及び8ないし12を付し,「実施例」として番号7のみを付するよう訂正する。
7.訂正事項7
本件特許明細書の段落0032に,
「以下に、実施例を示して、」
とあるのを,
「以下に、実施例及び参考例を示して、」
と訂正する。
8.訂正事項8
本件特許明細書の段落0039に,
「表2,3からわかるように、実施例のラックは、冷間鍛造後の素材の硬さHVが180以上300以下であるため、」
とあるのを,
「表2,3からわかるように、実施例7のラックは、冷間鍛造後の素材の硬さHVが260であるため、」
と訂正する。
第4 当審の判断
1.訂正事項1
(1)訂正の目的について
訂正事項1は,訂正前の請求項1に係る発明における,冷間鍛造後の鋼製の素材のビッカース硬さHVを「180以上300以下」から「260」に減縮するものであるから,特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(2)新規事項の追加の有無について
願書に最初に添付した明細書の段落0035の表2に,実施例7として冷間鍛造後の素材のビッカース硬さHV「260」のものが記載されていたことからみて,訂正事項1は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであると認められる。
したがって,訂正事項1は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであって,特許法第126条第5項の規定に適合する。
(3)特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項1は,上記(1)のとおり,特許請求の範囲を減縮するものである。また,訂正事項1は,請求項1に係る発明の属する発明のカテゴリを変更するものではない。
したがって,訂正事項1は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではなく,特許法第126条第6項の規定に適合する。
(4)独立特許要件について
訂正事項1は,上記(1)のとおり,特許請求の範囲を減縮するものであるから,本件訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される請求項1,2及び3に係る発明(以下,まとめて「本件訂正発明1」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるかどうかについて検討する。
本件訂正発明1は,特許出願の際独立して特許を受けることができた特許第5471492号の請求項1、2及び3に係る発明を減縮するものである上、本件訂正発明1について,特許査定された事情を変更すべき新たな事由を形成するものは,現時点では見当たらない。
したがって,本件訂正発明1については,特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しないから,訂正事項1は特許法第126条第7項の規定に適合する。
2.訂正事項2
(1)訂正の目的について
訂正事項2は,訂正前の請求項2に係る発明における,高周波焼入れを施した後の,ラックに形成された歯と歯の間の谷部のビッカース硬さHVを「180以上300以下」から「260」に減縮するものであるから,特許法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(2)新規事項の追加の有無について
願書に最初に添付した明細書の段落0035の表2に,実施例7として冷間鍛造後の素材のビッカース硬さHV「260」のものが記載されていたこと,及び同段落0037の記載「冷間鍛造後の素材のビッカース硬さHVを、表2,3に示す。素材のビッカース硬さHVは、ラックの歯と歯の間の谷部から数mm内方の部分について測定し、複数回測定して得た測定値のうち最高値を採用した。この谷部には、この後の高周波焼入れにより焼入れが施されることはないので、高周波焼入れ及び焼戻しが施されても谷部のビッカース硬さはほとんど変化しない。よって、この谷部のビッカース硬さHVは、完成品ラックの非焼入れ部のビッカース硬さでもある。」からみて,訂正事項2は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであると認められる。
したがって,訂正事項2は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであって,特許法第126条第5項の規定に適合する。
(3)特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項2は,上記(1)のとおり,特許請求の範囲を減縮するものである。また,訂正事項2は,請求項2に係る発明の属する発明のカテゴリを変更するものではない。
したがって,訂正事項2は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではなく,特許法第126条第6項の規定に適合する。
(4)独立特許要件について
訂正事項2は,上記(1)のとおり,特許請求の範囲を減縮するものであるから,本件訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される請求項2及び3に係る発明(以下,まとめて「本件訂正発明2」という。)が,特許出願の際独立して特許を受けることができるかどうかについて検討する。
本件訂正発明2は,特許出願の際独立して特許を受けることができた特許第5471492号の請求項2及び3に係る発明を減縮するものである上、本件訂正発明2について,特許査定された事情を変更すべき新たな事由を形成するものは,現時点では見当たらない。
したがって,本件訂正発明2については,特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しないから,訂正事項2は特許法第126条第7項の規定に適合する。
3.訂正事項3
(1)訂正の目的について
訂正事項3において,「S35」を「S35C」に訂正した点を検討すると,日本工業規格JIS G4051は,機械構造用炭素鋼鋼材(以下,単に「鋼材」という。)の種類の一つとして,「S35C」を規定するが,「S35」は規定していないことからすれば,本件訂正前の明細書の段落0002には,鋼材の種類に関して誤記があることは明白である。
したがって,訂正事項3は,明細書の段落0002の記載を上記日本工業規格の規定と整合させる誤記の訂正であるから,特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものである。
(2)新規事項の追加の有無について
訂正事項3は,上記(1)のとおり,鋼材の種類に関する明白な誤記を訂正するものに過ぎないから,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであると認められる。
したがって,訂正事項3は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであって,特許法第126条第5項の規定に適合する。
(3)特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項3は,上記(1)のとおり,鋼材の種類に関する明白な誤記を訂正するものに過ぎず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではないから,特許法第126条第6項の規定に適合する。
4.訂正事項4
(1)訂正の目的について
本件訂正前の明細書の段落0006には,訂正事項1による訂正前の請求項1に係る発明に対応する記載が存在するところ,同段落0006は,訂正事項1による訂正後の請求項1に係る発明の記載とは一致せず,明瞭でないが,訂正事項4は,明細書の段落0006の記載を訂正事項1による訂正後の請求項1に係る発明の記載と一致させるものである。
したがって,訂正事項4は,特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(2)新規事項の追加の有無について
「1.訂正事項1」の「(2)新規事項の追加の有無について」で指摘したのと同様に,訂正事項4は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであって,特許法第126条第5項の規定に適合する。
(3)特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
「1.訂正事項1」の「(3)特許請求の範囲の拡張・変更の存否について」で指摘したのと同様に,訂正事項4は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではなく,特許法第126条第6項の規定に適合する。
5.訂正事項5
(1)訂正の目的について
本件訂正前の明細書の段落0010には,訂正事項2による訂正前の請求項2に係る発明に対応する記載が存在するところ,同段落0010は,訂正事項2による訂正後の請求項2に係る発明の記載とは一致せず,明瞭でないが,訂正事項5は,明細書の段落0010の記載を訂正事項2による訂正後の請求項2に係る発明の記載と一致させるものである。
したがって,訂正事項5は,特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(2)新規事項の追加の有無について
「2.訂正事項2」の「(2)新規事項の追加の有無について」で指摘したのと同様に,訂正事項5は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであって,特許法第126条第5項の規定に適合する。
(3)特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
「2.訂正事項2」の「(3)特許請求の範囲の拡張・変更の存否について」で指摘したのと同様に,訂正事項5は,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではなく,特許法第126条第6項の規定に適合する。
6.訂正事項6及び7
(1)訂正の目的について
本件訂正前の明細書の段落0035の表2には,訂正事項1及び2による訂正前の請求項1及び2に係る発明に対応する実施例1ないし12が記載されているところ,これらの内、実施例1ないし6及び8ないし12は,訂正事項1及び2による訂正後の請求項1及び2に係る発明には対応せず,明瞭でない。
また,同段落0032には,「以下に、実施例を示して、」と記載されているところ,実施例の内,実施例1ないし6及び8ないし12は,訂正事項1及び2による訂正後の請求項1及び2に係る発明には対応せず,明瞭でない。
ここで,訂正事項6及び7は,明細書の段落0035の表2の実施例及び同段落0032の実施例の内,訂正事項1及び2による訂正後の請求項1及び2に係る発明に対応しないものを参考例とすることにより,これらを同請求項1及び2に係る発明に整合させるものである。
したがって,訂正事項6及び7は,特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(2)新規事項の追加の有無について
訂正事項6及び7は,上記(1)のとおり,訂正事項1及び2による訂正後の請求項1及び2に係る発明に対応しない実施例を参考例とするものに過ぎないから,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであると認められる。
したがって,訂正事項6及び7は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであって,特許法第126条第5項の規定に適合する。
(3)特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項6及び7は,上記(1)のとおり,訂正事項1及び2による訂正後の請求項1及び2に係る発明に対応しない実施例を参考例とするものに過ぎず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではないから,特許法第126条第6項の規定に適合する。
7.訂正事項8
(1)訂正の目的について
本件訂正前の明細書の段落0039には,訂正事項6による訂正前の明細書の段落0035の表2の実施例1ないし12に対応する記載が存在するため,当該記載で示された実施例は,訂正事項6による訂正後の明細書の段落0035の表2の実施例7には一致せず,明瞭でないが,訂正事項8は,明細書の段落0039の当該記載で示された実施例を訂正事項6による訂正後の明細書の段落0035の表2の実施例7に一致させるものである。
したがって,訂正事項8は,特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(2)新規事項の追加の有無について
願書に最初に添付した明細書の段落0035の表2に,実施例7として冷間鍛造後の素材のビッカース硬さHV「260」のものが記載されていたことからみて,訂正事項8は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであると認められる。
したがって,訂正事項8は,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内のものであって,特許法第126条第5項の規定に適合する。
(3)特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
訂正事項8は,上記(1)のとおり,明細書の段落0039の記載で示された実施例を,訂正事項6による訂正後の明細書の段落0035の表2の実施例7に一致させるものに過ぎないから,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではなく,特許法第126条第6項の規定に適合する。
第5 むすび
以上のとおりであるから,本件訂正は,特許法第126条第1項ただし書第1号、第2号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条第5項ないし第7項の規定に適合する。
よって,結論のとおり審決する。
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