特許訂正審判
2024-390111
治療薬を試験するためのヒト化げっ歯類
- 審判番号
- 2024-390111
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 訂正審判(訂正の審決)
- 出願番号
- 特願2020-551545
- 登録番号
- 7328243
- 請求日
- 2024年10月04日
- 審決日
- 2025年02月05日
- 公報発行日
- 2025年06月27日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【請求人】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
- 【請求人代理人】山本 秀策
- 【請求人代理人】森下 夏樹
- 審判長/審判官
- 審判長 加々美 一恵
- 審判官 松本 隆彦
- 審判官 南 宏輔
- 分類
- P141 .841-Y (G01N) / P141 .851-Y (G01N) / P141 .852-Y (G01N) / P141 .853-Y (G01N) / P141 .854-Y (G01N) / P141 .855-Y (G01N) / P141 .856-Y (G01N)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法126条1項2号特許法126条1項3号特許法126条5項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第126条第1項、特許法第126条第6項、特許法第126条第5項、特許法第126条第7項、特許法第126条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7328243号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
特許第7328243号の特許請求の範囲を本件審判請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-29〕について訂正することを認める。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件訂正審判の請求に係る特許第7328243号(以下、「本件特許」という。)は、2019年(平成31年)3月25日(パリ条約による優先権主張 2018年3月26日、2018年6月25日 いずれも(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、令和5年8月7日に特許権の設定登録がなされ、令和6年10月4日に訂正審判(以下、「本件訂正審判」という。)の請求がなされ、令和6年11月7日に手続補正書が提出されたものである。
第2 請求の趣旨
本件訂正審判の請求の趣旨は、「特許第7328243号の特許請求の範囲を、本件審判請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~29について訂正することを認める、との審決を求める。」というものである。
第3 訂正の内容
本件訂正審判請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下の訂正事項1~9のとおりである。(下線は訂正箇所を示す。)
1 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に記載された
「(a)・・・、及び/または (b)・・・IgG定常ドメインをコードするCH遺伝子セグメントを含む、 前記免疫グロブリン重鎖定常領域と、を含み」
との記載を、
「(a)・・・、及び
(b)・・・IgG定常ドメインをコードするCH遺伝子セグメントから選択される1つ以上のCH遺伝子セグメントを含む、前記免疫グロブリン重鎖定常領域と、を含み」に訂正するとともに、
「前記CH遺伝子セグメントに由来する重鎖定常ドメインと、を含む」との記載を、「前記1つ以上のCH遺伝子セグメントに由来する重鎖定常ドメインと、を含む」と訂正する。
2 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1の「(b)ヒトIgG4 CH1ドメイン、ヒトIgG4ヒンジ領域、ヒトIgG4 CH2ドメイン、ヒトIgG2 CH3ドメイン」との記載を、「(b)ヒトIgG4 CH1ドメイン、ヒトIgG4ヒンジ領域、ヒトIgG4 CH2ドメイン、ヒトIgG4 CH3ドメイン」と訂正する。
3 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に記載された「試験される前記ヒト抗体は、前記げっ歯類免疫グロブリン重鎖定常領域に存在するヒトアイソタイプのヒトCH1、ヒトCH2、及びヒトCH3ドメインを含み、」との記載を、「試験される前記ヒト抗体は、前記げっ歯類免疫グロブリン重鎖定常領域に存在するヒトアイソタイプのヒトCH1ドメイン、ヒトCH2ドメイン、及びヒトCH3ドメインを含み」と訂正する。
4 訂正事項4
特許請求の範囲の請求項6および7を、訂正後の請求項4および5とするとともに、請求項4および5を請求項6および7に改めるとともに、訂正後の請求項6が引用する請求項を、請求項1から訂正前の請求項7である訂正後の請求項5に訂正する。
5 訂正事項5
特許請求の範囲の請求項4(訂正後の請求項6)において、(c)と(d)の間に「そして、」との接続詞を追記する。
6 訂正事項6
特許請求の範囲の請求項4(訂正後の請求項6)において、二つ目の(c)を(d)に訂正する。
7 訂正事項7
特許請求の範囲の請求項9において、「げっ歯類Sγ2a、」を「げっ歯類Sγ2aスイッチ部位、」に訂正する。
8 訂正事項8
特許請求の範囲の請求項18において、「(c)・・・、(d)・・・、(c)・・・、(d)・・・」との記載を、「(c)・・・、(d)・・・、(e)・・・、(f)・・・」に訂正する。
9 訂正事項9
特許請求の範囲の請求項20において、「(c)・・・、(d)・・・、(c)・・・、(d)・・・」との記載を、「(c)・・・、(d)・・・、(e)・・・、(f)・・・」に訂正する。
第4 当審の判断
1 訂正事項1
(1)訂正の目的
訂正事項1は、特許請求の範囲の請求項1に記載された
「(a)・・・、及び/または (b)・・・IgG定常ドメインをコードするCH遺伝子セグメントを含む、 前記免疫グロブリン重鎖定常領域と、を含み」
との記載を、
「(a)・・・、及び (b)・・・IgG定常ドメインをコードするCH遺伝子セグメントから選択される1つ以上のCH遺伝子セグメントを含む、 前記免疫グロブリン重鎖定常領域と、を含み」に訂正するとともに、
「前記CH遺伝子セグメントに由来する重鎖定常ドメインと、を含む」との記載を、「前記1つ以上のCH遺伝子セグメントに由来する重鎖定常ドメインと、を含む」と訂正するものである。
請求項1の「前記CH遺伝子セグメントに由来する重鎖定常ドメインと、を含む」との記載は、前出の(a)のCH遺伝子セグメントと(b)のCH遺伝子セグメントの双方を指すと解するのが適当な解釈であるものの、いずれかと解釈する余地を完全に排除できないところ、この点を明瞭にするために、「(a)・・・、及び (b)・・・IgG定常ドメインをコードするCH遺伝子セグメントから選択される1つ以上のCH遺伝子セグメントを含む」と訂正し、この「1つ以上のCH遺伝子セグメント」を受けて、後段で「前記1つ以上のCH遺伝子セグメントに由来する重鎖定常ドメインと、を含む」と記載するように訂正するものである。
そのため、当該訂正事項1は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(2)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記訂正事項1は明瞭でない記載の釈明をするものであり、CH遺伝子セグメントが1つ以上であることは、(a)・・・及び/または(b)・・・を含む、との特許された請求項1の記載によって既に特定されている。
したがって、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(3)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項1は、願書に添付した明細書0009段落の「特定の態様では、本明細書で提供されるのは、そのゲノム中に、遺伝子改変された免疫グロブリン重鎖(IgH)遺伝子座を含む、げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)及びげっ歯類ES細胞である。特定の実施形態では、IgH遺伝子座は、(i)1つ以上のVH遺伝子セグメント、1つ以上のDH遺伝子セグメント及び1つ以上のJH遺伝子セグメント(例えば、ラットまたはマウスのVH遺伝子セグメント、DH遺伝子セグメント及びJH遺伝子セグメント)を含む、免疫グロブリン重鎖可変領域と、(ii)ヒトCH1ドメイン、ヒトヒンジ領域、ヒトCH2ドメイン、ヒトCH3ドメイン、ヒトまたはげっ歯類IgG膜貫通ドメイン及びヒトまたはげっ歯類IgG細胞質ドメインを含むIgG定常ドメインをコードする1つ以上のCH遺伝子セグメントを含む、免疫グロブリン重鎖定常領域と、を含む。いくつかの実施形態では、免疫グロブリン重鎖定常領域中の全てのCH遺伝子セグメントは、ヒトである。いくつかの実施形態では、免疫グロブリン重鎖可変領域は、げっ歯類が、VH遺伝子セグメント、DH遺伝子セグメント及びJH遺伝子セグメントに由来する可変ドメインと、CH遺伝子セグメントに由来する重鎖定常ドメインと、を含む、IgG抗体を産生するように、免疫グロブリン重鎖定常領域に作動可能に連結される。特定の実施形態では、この遺伝子座は、内因性げっ歯類免疫グロブリン重鎖遺伝子座に配置される。いくつかの実施形態では、げっ歯類の免疫グロブリン重鎖遺伝子座内のヒトCHによってコードされたFcとアイソタイプが一致するヒト抗体及びFc融合タンパク質は、かかるげっ歯類に投与されたとき、減少した免疫応答を惹起する。例えば、いくつかの実施形態では、ヒトIgG1抗体は、ヒト可変ドメイン及びヒトIgG1定常ドメインを有する抗体を発現する、本明細書で提供されるげっ歯類に投与される。いくつかの実施形態では、ヒトIgG2抗体は、ヒト可変ドメイン及びヒトIgG2定常ドメインを有する抗体を発現する、本明細書で提供されるげっ歯類に投与される。いくつかの実施形態では、ヒトIgG3抗体は、ヒト可変ドメイン及びヒトIgG3定常ドメインを有する抗体を発現する、本明細書で提供されるげっ歯類に投与される。いくつかの実施形態では、ヒトIgG4抗体は、ヒト可変ドメイン及びヒトIgG4定常ドメインを有する抗体を発現する、本明細書で提供されるげっ歯類に投与される。いくつかの実施形態では、κ軽鎖を有するヒト抗体は、ヒトκ軽鎖を有する抗体を発現する、例えば、ヒトκ定常ドメインを有する抗体を発現する、またはヒトκ可変及び定常ドメインを有する抗体を発現する、本明細書で提供されるげっ歯類に投与される。いくつかの実施形態では、λ軽鎖を有するヒト抗体は、ヒトλ軽鎖を有する抗体を発現する、例えば、ヒトλ定常ドメインを有する抗体を発現する、またはヒトλ可変及び定常ドメインを有する抗体を発現する、本明細書で提供されるげっ歯類に投与される。特定の実施形態では、本明細書で提供されるのは、かかるげっ歯類を使用してヒト抗体及びFc融合タンパク質を試験するための動物モデル及び方法である。」という記載(下線は当審が付した。以下同様。)、
0082段落の「したがって、いくつかの実施形態では、免疫グロブリン重鎖遺伝子座の1つ以上の免疫グロブリン重鎖定常領域(またはその部分)は、欠失されていない(すなわち、インタクトである)。いくつかの実施形態では、免疫グロブリン重鎖遺伝子座の1つ以上のCH遺伝子セグメントは、とりわけ、非ヒト免疫グロブリン重鎖IgG定常領域遺伝子の膜貫通及び細胞質コード配列(複数可)(例えば、M1及び/またはM2コード配列)に作動可能に連結された本明細書に記載される免疫グロブリン重鎖定常領域配列(例えば、ヒトIgGCH1-H-CH2-CH3ポリペプチドをコードする配列)、また、いくつかの実施形態では、IgE定常領域遺伝子の膜貫通及び細胞質コード配列(複数可)に作動可能に連結された免疫グロブリン重鎖定常領域配列(例えば、ヒトIgE CH1-CH2-CH3-CH4ポリペプチドをコードする配列)で変更、破壊、欠失、または置換または操作される。・・・」という記載、
0083段落の「いくつかの実施形態では、本明細書に記載される操作された免疫グロブリン重鎖定常領域は、同じまたは異なるIgGサブクラスの非ヒト膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインコード配列(例えば、非ヒトIgGM1-M2)に作動可能に連結されたヒト細胞外ドメインコード配列(例えば、ヒトIgG CH1-H-CH2-CH3)をそれぞれ含む1つ以上のIgGコードCH遺伝子セグメントを含む。」という記載、及び
0247段落の「例示的な実施形態1では、本明細書で提供されるのは、げっ歯類であって、そのゲノム中に、操作された免疫グロブリン重鎖遺伝子座を含み、操作された免疫グロブリン重鎖遺伝子座は、(i)VH遺伝子セグメント、DH遺伝子セグメント及びJH遺伝子セグメントを含む、免疫グロブリン重鎖可変領域と、(ii)ヒトCH1ドメイン、ヒトヒンジ領域、ヒトCH2ドメイン、ヒトCH3ドメイン、IgG膜貫通ドメイン及びIgG細胞質ドメインを含むIgG定常ドメインをコードするCH遺伝子セグメントを含む、・・・」という記載の内、特に下線部を付した各記載から、ヒトIgGサブクラス(IgG1、IgG4)のヒトCH1ドメイン、ヒトヒンジ領域、ヒトCH2ドメイン及びヒトCH3ドメイン、並びに、IgG膜貫通ドメイン及びIgG細胞質ドメインを含むIgG定常ドメインをコードする1つ以上のCH遺伝子セグメントを1つ以上含むことが開示されていることは明らかである。
そのため、当該訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
2 訂正事項2
(1)訂正の目的
訂正事項2は、特許請求の範囲の請求項1に記載された
「(b)ヒトIgG4 CH1ドメイン、ヒトIgG4ヒンジ領域、ヒトIgG4 CH2ドメイン、ヒトIgG2 CH3ドメイン」をとの記載を、「(b)ヒトIgG4 CH1ドメイン、ヒトIgG4ヒンジ領域、ヒトIgG4 CH2ドメイン、ヒトIgG4 CH3ドメイン」と訂正するものである。
請求項1の(b)はヒトIgG4の各ドメインを含むCH遺伝子セグメントに係る態様であり、これに関して、0007段落に「いくつかの実施形態では、遺伝子改変されたげっ歯類(例えば、マウスまたはラット)は、ヒトFc(例えば、ヒトIgG1 Fc、ヒトIgG4Fc)を含む抗体を発現する。」という記載があり、0009段落に「・・・いくつかの実施形態では、ヒトIgG4抗体は、ヒト可変ドメイン及びヒトIgG4定常ドメインを有する抗体を発現する、本明細書で提供されるげっ歯類に投与される。・・・」という記載があり、「ヒトIgG4定常ドメインを有する抗体を発現する」ためには、CH遺伝子セグメントの「CH3ドメイン」は、サブクラス「IgG4」のものであることは自明であり、これは、0092段落の「いくつかの特定の実施形態では、本明細書に記載される操作された免疫グロブリン重鎖定常領域は、CH1-H-CH2-CH3-M1-M2エクソンの代わりにヒトIgG4CH1-H-CH2-CH3-M1-M2をコードする配列を含み、非ヒト(例えば、ラットまたはマウス)Cγ1遺伝子セグメントのスイッチ領域に作動可能に連結された、操作されたCγ1遺伝子セグメントを含む。」という記載にも裏付けられており、発現させる抗体の免疫グロブリン重鎖定常領域の細胞外ドメインにおいて、異なるサブクラスのドメインが混在するものを発現させることは明細書に記載されていないことから、CH3ドメインについてのみヒトIgG2由来のものとする本件訂正前の記載は、明らかに誤記であると認められる。そして、訂正事項はこの誤記を訂正するものである。
そのため、当該訂正事項2は、特許法第126条第1項ただし書第2号に掲げる誤記の訂正を目的とするものである。
(2)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
(1)で検討したように、上記訂正事項2の本件訂正前の記載が、設定登録時の明細書の記載との関係で、誤りであることは明らかであり、かつ、明らかな誤記を訂正するものであり、請求項1の(b)がヒトIgG4の各ドメインを含むCH遺伝子セグメントに係るものであることは、設定登録時の明細書、特許請求の範囲又は図面の記載全体から、自明な事項として定まるものであるから、その誤りを正しい記載にする訂正事項2は、実質上、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(3)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項2は、(1)で摘記した(願書に添付した)明細書の0094段落に少なくとも記載されている。
そのため、当該訂正事項2は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
(4)独立特許要件
訂正事項2は「誤記又は誤訳の訂正」を目的とするものであるところ、訂正後における特許請求の範囲の請求項1に記載される事項により特定される発明について、特許要件の適否について見直すべき新たな事情は存在せず、特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由を発見しないから、特許法第126条第7項の規定に適合するものである。
3 訂正事項3
(1)訂正の目的
訂正事項3は、特許請求の範囲の請求項1に記載された
「試験される前記ヒト抗体は、前記げっ歯類免疫グロブリン重鎖定常領域に存在するヒトアイソタイプのヒトCH1、ヒトCH2、及びヒトCH3ドメインを含み、」との記載を、「試験される前記ヒト抗体は、前記げっ歯類免疫グロブリン重鎖定常領域に存在するヒトアイソタイプのヒトCH1ドメイン、ヒトCH2ドメイン、及びヒトCH3ドメインを含み」と訂正するものである。
免疫グロブリン重鎖定常領域が、3つの定常ドメインCH1、CH2、CH3で構成されることは技術常識であることを踏まえると、本件訂正前の記載は、ヒトCH1、ヒトCH2、ヒトCH3は同格のものであり、「ドメイン」が、「ヒトCH3」だけを受けるものではなく、「ヒトCH1」及び「ヒトCH2」も受けていると解するのが妥当であったものの、本件訂正前の記載は、文言上「ドメイン」が、「CH3」だけを受けると解する余地があった。訂正事項3による訂正は、「ヒトCH1」、「ヒトCH2」をそれぞれ「ヒトCH1ドメイン」および「ヒトCH2ドメイン」とするものであり、上記のような文言上の解釈の余地を排除するものであるから、本件訂正前の請求項1の上記記載をより明確にするためのものである。
そのため、当該訂正事項3は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(2)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記訂正事項3は明瞭でない記載の釈明をするものであり、ヒトCH1、ヒトCH2がそれぞれヒトCH1ドメインおよびヒトCH2ドメインを指すものであることは特許された請求項1の記載から把握されるものである。
したがって、訂正事項3は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(3)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項3は、願書に添付した明細書の0023段落に「・・・例えば、いくつかの実施形態では、ヒトIgG1抗体は、ヒト可変ドメイン及びヒトIgG1定常ドメインを有する抗体を発現する、本明細書で提供されるげっ歯類に投与される。いくつかの実施形態では、ヒトIgG2抗体は、ヒト可変ドメイン及びヒトIgG2定常ドメインを有する抗体を発現する、本明細書で提供されるげっ歯類に投与される。いくつかの実施形態では、ヒトIgG3抗体は、ヒト可変ドメイン及びヒトIgG3定常ドメインを有する抗体を発現する、本明細書で提供されるげっ歯類に投与される。いくつかの実施形態では、ヒトIgG4抗体は、ヒト可変ドメイン及びヒトIgG4定常ドメインを有する抗体を発現する、本明細書で提供されるげっ歯類に投与される。・・・」という記載があり、投与される抗体の重鎖定常領域のドメインと、投与対象のげっ歯類の免疫グロブリン重鎖定常領域が同じものであることは明らかであるから、当該訂正事項3は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
4 訂正事項4
(1)訂正の目的
訂正事項4は、特許請求の範囲の請求項6および7を、訂正後の請求項4および5とするとともに、請求項4および5を請求項6および7に改めるとともに、従属請求項を適切に訂正するものである。
請求項1に従属する請求項4には、「前記Cγ2遺伝子セグメント」および「前記Cγ3遺伝子セグメント」との記載が存在するが、「Cγ2遺伝子セグメント」および「Cγ3遺伝子セグメント」はいずれも請求項1において前出せず、請求項7において初出するので、不明確であったところ、請求項6および7を請求項4および5に移動させ、請求項4(訂正後の請求項6)を請求項7(訂正後の請求項5)に従属させるように改めることで明確とするものである。
また、訂正事項4により、訂正前の請求項4が、訂正前の請求項6を間接的に、請求項7を直接引用するものとなるため、「前記免疫グロブリン重鎖定常領域が、ヒトCμ遺伝子セグメント、ヒトCδ遺伝子セグメント、ヒトCγ3遺伝子セグメント及びヒトCγ1遺伝子セグメントを含む」(訂正前の請求項6)及び「前記免疫グロブリン重鎖定常領域が、ヒトCγ2遺伝子セグメント及びヒトCγ4遺伝子セグメントを更に含む」(訂正前の請求項7)という特定事項で限定されることになる。
そして、これらの特定事項は、訂正前の請求項4が引用する請求項1で特定される「免疫グロブリン重鎖定常領域」に含まれる遺伝子セグメントを限定するものである。
したがって、当該訂正事項4は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明、及び、同法第126条第1項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(2)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記訂正事項4に係る訂正は、上記(1)で検討したとおり、他の記載との関係で不合理な記載を訂正して本来の意を明らかにする明瞭でない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、「免疫グロブリン重鎖定常領域」に含まれる遺伝子セグメントを限定することで減縮される事項以外の特定が新たになされるものではないので、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法126条第6項の規定に適合する。
(3)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
明細書の0079段落に「いくつかの実施形態では、Ig重鎖定常領域は、ヒトまたは部分的ヒトCμ遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、Ig重鎖定常領域は、ヒトまたは部分的ヒトCδ遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、Ig重鎖定常領域は、ヒトまたは部分的ヒトCγ1遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、Ig重鎖定常領域は、ヒトまたは部分的ヒトCγ2遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、Ig重鎖定常領域は、ヒトまたは部分的ヒトCγ3遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、Ig重鎖定常領域は、ヒトまたは部分的ヒトCγ4遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、Ig重鎖定常領域は、ヒトまたは部分的ヒトCε遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、Ig重鎖定常領域は、ヒトまたは部分的ヒトCα遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、Ig重鎖定常領域は、ヒトCμ遺伝子セグメント、ヒトCδ遺伝子セグメント、ヒトCγ1遺伝子セグメント及びヒトCγ3遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、Ig重鎖定常領域は、ヒトCγ2遺伝子セグメント及びヒトCγ4遺伝子セグメントを更に含む。」との記載があり、0064段落の「特定の実施形態では、ヒトCH1ドメイン、ヒトヒンジ領域、ヒトCH2ドメイン及びヒトCH3ドメインは、IgG2ドメインである。いくつかの実施形態では、かかるIgG2ドメインは、IGHG2*01、IGHG2*02、IGHG2*03、IGHG2*04、IGHG2*05及びIGHG2*06から選択される対立遺伝子によってコードされる。」との記載があり、0065段落に「特定の実施形態では、ヒトCH1ドメイン、ヒトヒンジ領域、ヒトCH2ドメイン及びヒトCH3ドメインは、IgG3ドメインである。いくつかの実施形態では、かかるIgG3ドメインは、IGHG3*01、IGHG3*02、IGHG3*03、IGHG3*04、IGHG3*05、IGHG3*06、IGHG3*07、IGHG3*08、IGHG3*09、IGHG3*10、IGHG3*11、IGHG3*12、IGHG3*13、IGHG3*14、IGHG3*15、IGHG3*16、IGHG3*17、IGHG3*18及びIGHG3*19から選択される対立遺伝子によってコードされる。」との記載があり、「ヒトCγ2遺伝子セグメント」及び「ヒトCγ3遺伝子セグメント」が、IgG2、IgG3の重鎖定常領域をコードする遺伝子セグメントであることは技術常識であり、明細書の0048段落の「例えば、Cγ1遺伝子セグメントまたはCγ1遺伝子は、IgG1定常領域をコードするDNA配列のセグメントを指す。」という記載もこの技術常識と整合するものであり、上記訂正事項4による訂正前の請求項4が引用する請求項1で特定される「免疫グロブリン重鎖定常領域」に含まれる遺伝子セグメントを限定する事項は、願書に最初に添付した明細書に記載されていると認められる。
そのため、当該訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
(4)独立特許要件
上記(1)で検討したとおり、訂正事項4に係る訂正は、特許法126条1項ただし書1号に規定する、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、本件訂正後の請求項6に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない(いわゆる独立特許要件)。
そこで検討すると、本件訂正前の請求項4に係る発明は、特許を受けることができない理由を発見しないとして特許を受けることができたものと認められるところ、本件訂正後の請求項6に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする理由が新たに発見される事情はないから、訂正事項4に係る訂正は特許法126条第7項の規定に適合する。
5 訂正事項5
(1)訂正の目的
訂正事項5は、特許請求の範囲の請求項4(訂正後の請求項6)において、(c)と(d)の間に「そして、」との接続詞を追記する訂正を行うものであり、接続詞がないために明確ではない可能性があったところ、これを明確にするものである。
そのため、当該訂正事項5は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(2)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記訂正事項5は「そして、」との接続詞を追記しただけであり、訂正前の範囲から何ら拡張、変更されていない。
したがって、訂正事項5は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(3)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項5は、「そして、」との接続詞を追記しただけであり、新たな事項を追加・導入するものではない。
そのため、当該訂正事項5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
6 訂正事項6
(1)訂正の目的
訂正事項6は、特許請求の範囲の請求項4(訂正後の請求項6)において、二つ目の(c)を(d)に訂正するものであり、訂正前は(c)の項目が2つあり、不明確であったところ、これを適切に改めたものである。
そのため、当該訂正事項6は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(2)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記訂正事項6は項目のラベルを変更することで、他の記載との関係で不合理な記載を訂正して本来の意を明らかにするものであり、実体的な事項を変更するものではないので、訂正前の範囲から何ら拡張されていない。
したがって、当該訂正事項6は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(3)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
願書に添付した明細書の0062段落の「特定の実施形態では、ヒトCH1ドメイン、ヒトヒンジ領域、ヒトCH2ドメイン及びヒトCH3ドメインは、IgG1ドメインである。いくつかの実施形態では、かかるIgG1ドメインは、IGHG1*01、IGHG1*02、IGHG1*03、IGHG1*04及びIGHG1*05から選択される対立遺伝子によってコードされる。」、0063段落の「特定の実施形態では、ヒトCH1ドメイン、ヒトヒンジ領域、ヒトCH2ドメイン及びヒトCH3ドメインは、IgG2ドメインである。いくつかの実施形態では、かかるIgG2ドメインは、IGHG2*01、IGHG2*02、IGHG2*03、IGHG2*04、IGHG2*05及びIGHG2*06から選択される対立遺伝子によってコードされる。」、0064段落の「特定の実施形態では、ヒトCH1ドメイン、ヒトヒンジ領域、ヒトCH2ドメイン及びヒトCH3ドメインは、IgG2ドメインである。いくつかの実施形態では、かかるIgG2ドメインは、IGHG2*01、IGHG2*02、IGHG2*03、IGHG2*04、IGHG2*05及びIGHG2*06から選択される対立遺伝子によってコードされる。」、及び、0065段落の「特定の実施形態では、ヒトCH1ドメイン、ヒトヒンジ領域、ヒトCH2ドメイン及びヒトCH3ドメインは、IgG3ドメインである。いくつかの実施形態では、かかるIgG3ドメインは、IGHG3*01、IGHG3*02、IGHG3*03、IGHG3*04、IGHG3*05、IGHG3*06、IGHG3*07、IGHG3*08、IGHG3*09、IGHG3*10、IGHG3*11、IGHG3*12、IGHG3*13、IGHG3*14、IGHG3*15、IGHG3*16、IGHG3*17、IGHG3*18及びIGHG3*19から選択される対立遺伝子によってコードされる。」という連続する4つの並列的な記載の存在がしていることから、上記訂正事項6により訂正された事項は、願書に添付した明細書に記載されている事項とみとめられ、新たな事項を追加・導入するものではない。
そのため、当該訂正事項6は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
7 訂正事項7
(1)訂正の目的
訂正事項7は、特許請求の範囲の請求項9において、「げっ歯類Sγ2a、」を「げっ歯類Sγ2aスイッチ部位、」に訂正するものである。訂正前は「げっ歯類Sγ2a、」には「スイッチ部位」との記載が存在しないところ、請求項9は「スイッチ部位を含む」との事項を特定するものであり、他の「及び/または」で接続されるものが全て「・・・スイッチ部位」と記載されていることから、「げっ歯類Sγ2a、」についても、他の記載と整合するように「げっ歯類Sγ2aスイッチ部位、」と訂正することでより明確にするものである。これは、明細書の1077段落に
「(項目1)
ヒト抗体を試験する方法であって、前記抗体をげっ歯類に投与することを含み、前記げっ歯類は、そのゲノム中に、
免疫グロブリン重鎖遺伝子座を含み、前記免疫グロブリン重鎖遺伝子座は、
(i)VH遺伝子セグメント、DH遺伝子セグメント及びJH遺伝子セグメントを含む、免疫グロブリン重鎖可変領域と、
(ii)ヒトCH1ドメイン、ヒトヒンジ領域、ヒトCH2ドメイン、ヒトCH3ドメイン、IgG膜貫通ドメイン及びIgG細胞質ドメインを含むIgG定常ドメインをコードするCH遺伝子セグメントを含む、免疫グロブリン重鎖定常領域と、を含み、
前記免疫グロブリン重鎖可変領域は、前記げっ歯類が、前記VH遺伝子セグメント、前記DH遺伝子セグメント及び前記JH遺伝子セグメントに由来する可変ドメインと、前記CH遺伝子セグメントに由来する重鎖定常ドメインと、を含む、IgG抗体を産生するように、前記免疫グロブリン重鎖定常領域に作動可能に連結される、前記方法。
・・・
(項目42)
前記免疫グロブリン重鎖遺伝子座が、げっ歯類Sμスイッチ部位を更に含む、項目1~41のいずれか1項に記載の方法。
(項目43)
前記免疫グロブリン重鎖遺伝子座が、げっ歯類Sγ3スイッチ部位を更に含む、項目1~42のいずれか1項に記載の方法。
(項目44)
前記免疫グロブリン重鎖遺伝子座が、げっ歯類Sγ1スイッチ部位を更に含む、項目1~43のいずれか1項に記載の方法。
(項目45)
前記免疫グロブリン重鎖遺伝子座が、げっ歯類Sγ2bスイッチ部位を更に含む、項目1~44のいずれか1項に記載の方法。
(項目46)
前記免疫グロブリン重鎖遺伝子座が、げっ歯類Sγ2a及び/またはSγ2cスイッチ部位を更に含む、項目1~45のいずれか1項に記載の方法。
(項目47)
前記免疫グロブリン重鎖遺伝子座が、げっ歯類Sεスイッチ部位を更に含む、項目1~46のいずれか1項に記載の方法。
(項目48)
前記免疫グロブリン重鎖遺伝子座が、げっ歯類Sαスイッチ部位を更に含む、項目1~47のいずれか1項に記載の方法。
(項目49)
前記免疫グロブリン重鎖遺伝子座が、ヒトSμスイッチ部位を更に含む、項目1~41及び48のいずれか1項に記載の方法。
(項目50)
前記免疫グロブリン重鎖遺伝子座が、ヒトSγ3スイッチ部位を更に含む、項目1~41及び48~49のいずれか1項に記載の方法。
(項目51)
前記免疫グロブリン重鎖遺伝子座が、ヒトSγ1スイッチ部位を更に含む、項目1~41及び48~50のいずれか1項に記載の方法。
(項目52)
前記免疫グロブリン重鎖遺伝子座が、ヒトSγ2スイッチ部位を更に含む、項目1~41及び48~51のいずれか1項に記載の方法。
(項目53)
前記免疫グロブリン重鎖遺伝子座が、ヒトSγ4スイッチ部位を更に含む、項目1~41及び48~52のいずれか1項に記載の方法。
(項目54)
前記免疫グロブリン重鎖遺伝子座が、ヒトSεスイッチ部位を更に含む、項目1~41及び48~53のいずれか1項に記載の方法。
(項目55)
前記免疫グロブリン重鎖遺伝子座が、ヒトSαスイッチ部位を更に含む、項目1~41及び48~54のいずれか1項に記載の方法。」という記載が存在し、特に、「項目(46)」の「げっ歯類Sγ2a及び/またはSγ2cスイッチ部位」という記載から、訂正事項7の「げっ歯類Sγ2aスイッチ部位」が適切な記載であることは明らかであり、項目(42)から項目(55)にかけて連続して、請求項9で特定されるスイッチ部位が記載されていることからも支持される。
そのため、当該訂正事項7は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(2)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
(1)で説示したように、上記訂正事項7は、「げっ歯類Sγ2a、」を他の記載と整合するように「げっ歯類Sγ2aスイッチ部位、」であることを明確に特定しただけであり、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、訂正事項7は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(3)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
上記訂正事項7は、願書に添付した明細書の1077段落の「(項目46)」に「前記免疫グロブリン重鎖遺伝子座が、げっ歯類Sγ2a及び/またはSγ2cスイッチ部位を更に含む、項目1~45のいずれか1項に記載の方法。」との記載が存在し、願書に添付した明細書に記載されていると認められるので、新たな事項を追加・導入するものではない。
そのため、当該訂正事項7は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
8 訂正事項8
(1)訂正の目的
訂正事項8は、特許請求の範囲の請求項18において、「(c)・・・、(d)・・・、(c)・・・、(d)・・・」との記載を、「(c)・・・、(d)・・・、(e)・・・、(f)・・・」に訂正するものであり、訂正前は(c)および(d)の項目が2つあり、不明確であった記載を明確にするものである。
そのため、当該訂正事項8は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(2)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記訂正事項8は項目のラベルを変更することで、他の記載との関係で不合理な記載を訂正して本来の意を明らかにするものであり、実体的な事項を変更するものではないので、訂正前の範囲から何ら拡張されていない。
よって、訂正事項8は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(3)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
願書に添付した明細書の0078段落の「いくつかの実施形態では、Ig重鎖定常領域は、ヒトCμ遺伝子セグメント、ヒトCδ遺伝子セグメント、ヒトCγ1遺伝子セグメント及びヒトCγ3遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、Ig重鎖定常領域は、ヒトCγ2遺伝子セグメント及びヒトCγ4遺伝子セグメントを更に含む。」、及び、0113段落の「実施形態では、本明細書で提供されるのは、ヒト重鎖可変遺伝子セグメント(ヒト重鎖V、D、及びJ遺伝子セグメント)と、ヒトEiエンハンサーと、ヒトCμ、Cδ、Cγ3、Cγ1、Cγ2及びCγ4遺伝子セグメントと、げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)3’エンハンサーを含むげっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)3’調節領域と、を含む、遺伝子操作された重鎖免疫グロブリン遺伝子座である。」という、免疫グロブリン重鎖定常領域に含まれる遺伝子セグメントの並列的な記載が存在することから、上記訂正事項8により訂正された事項は、願書に添付した明細書に記載されている事項と認められ、新たな事項を追加・導入するものではない。
そのため、当該訂正事項8は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
9 訂正事項9
(1)訂正の目的
訂正事項9は、特許請求の範囲の請求項20において、「(c)・・・、(d)・・・、(c)・・・、(d)・・・」との記載を、「(c)・・・、(d)・・・、(e)・・・、(f)・・・」に訂正するものであり、訂正前は(c)および(d)の項目が2つあり、不明確であった記載を明確にするものである。
そのため、当該訂正事項9は、特許法第126条第1項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(2)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更する訂正ではないこと
上記訂正事項9は項目のラベルを変更することで、他の記載との関係で不合理な記載を訂正して本来の意を明らかにするものであり、実体的な事項を変更するものではないので、訂正前の範囲から何ら拡張されていない。
よって、訂正事項9は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(3)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること
願書に添付した明細書の0078段落の「いくつかの実施形態では、Ig重鎖定常領域は、ヒトCμ遺伝子セグメント、ヒトCδ遺伝子セグメント、ヒトCγ1遺伝子セグメント及びヒトCγ3遺伝子セグメントを含む。いくつかの実施形態では、Ig重鎖定常領域は、ヒトCγ2遺伝子セグメント及びヒトCγ4遺伝子セグメントを更に含む。」、及び、0115段落の「一実施形態では、本明細書で提供されるのは、げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)重鎖可変遺伝子セグメント(げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)重鎖V、D、及びJ遺伝子セグメント)と、げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)Eiエンハンサーと、ヒトCμ、Cδ、Cγ3、Cγ1、Cγ2及びCγ4遺伝子セグメントと、げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)3’エンハンサーを含むげっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)3’調節領域と、を含む、遺伝子操作された重鎖免疫グロブリン遺伝子座である。」という、免疫グロブリン重鎖定常領域に含まれる遺伝子セグメントの並列的な記載が存在することから、上記訂正事項9により訂正された事項は、願書に添付した明細書に記載されている事項と認められ、新たな事項を追加・導入するものではない。
そのため、当該訂正事項9は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
第5 むすび
以上のとおりであるから、本件審判の請求に係る訂正は、特許法第126条第1項ただし書第1号、第2号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法同条第5項~第7項の規定に適合するものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-390111