特許異議申立
2017-701101
ポリエステル系樹脂組成物
- 審判番号
- 2017-701101
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2013-078168外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年11月22日
- 審決日
- 2018年08月10日
- 公報発行日
- 2018年11月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社
- 【権利者代理人】小野 尚純
- 【権利者代理人】奥貫 佐知子
- 【権利者代理人】平川 さやか
- 【異議申立人】東レ 株式会社
- 分類
- P1651.113-YAA(C08L) / P1651.537-YAA(C08L) / P1651.121-YAA(C08L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第9項、特許法第29条、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の8第1項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第6139946号発明「ポリエステル系樹脂組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第6139946号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-4〕について訂正することを認める。
特許第6139946号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。
特許第6139946号の請求項4に係る特許に対する本件異議の申立てを却下する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯・本件異議申立の趣旨
1.本件特許の設定登録までの経緯
本件特許第6139946号(以下、単に「本件特許」という。)に係る出願(特願2013-78168号、以下「本願」という。)は、平成25年4月4日に出願人三菱エンジニアリングプラスチックス株式会社(以下「特許権者」ということがある。)によりされた特許出願であり、平成29年5月12日に特許権の設定登録(請求項の数4)がされ、平成29年5月31日に特許公報の発行がされたものである。
2.本件異議申立の趣旨
本件特許につき平成29年11月22日付けで特許異議申立人東レ株式会社(以下「申立人」という。)により「特許第6139946号の特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された発明についての特許は取り消されるべきものである。」という趣旨の本件異議申立がされた。
3.以降の手続の経緯
平成30年 2月26日付け 取消理由通知
平成30年 4月24日 訂正請求書・意見書(特許権者)
平成30年 4月27日付け 通知書(申立人あて)
平成30年 6月21日付け 手続補正指令(方式)(特許権者あて)
平成30年 6月27日 手続補正書(方式)
平成30年 6月28日付け 手続補正書副本送付(申立人あて)
第2 申立人が主張する取消理由
申立人は、本件特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、下記甲第1号証ないし甲第4号証を提示し、概略、以下の取消理由1及び2が存するとしているものと認められる。
取消理由1:本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、いずれも、甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は、同法第29条に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
取消理由2:本件特許の請求項1ないし4に係る発明は、その解決課題を解決できるか不明な実施態様を含むものであり、本件特許に係る明細書(以下「本件特許明細書」という。)の発明の詳細な説明に記載したものとはいえないから、本件特許に係る請求項1ないし4の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、同条同項(柱書)の規定を満たしていないものであって、本件特許は、同法第36条第6項の規定を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
・申立人提示の甲号証
甲第1号証:特開2000-313792号公報
甲第2号証:特開2000-227674号公報
甲第3号証:「三井ハイワックス」及び「エクセレックス」なる商品名の機能性低分子量ポリオレフィンに係る2010年12月20日に三井化学株式会社が作成・発行したものと解される製品カタログ
甲第4号証:特開平8-283486号公報
(以下、上記甲第1号証ないし甲第4号証につき、それぞれ「甲1」ないし「甲4」と略していう。)
第3 当審が通知した取消理由の概要
当審が平成30年2月26日に通知した取消理由の概略は、以下のとおりである。
「当審は、
申立人が主張する上記取消理由1及び当審が新たに発見した下記取消理由aにより、本件発明1ないし4についての特許はいずれも取り消すべきもの、
と判断する。以下、取消理由1と取消理由aにつき併せて詳述する。
取消理由a:本件発明1ないし4は、いずれも、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであって、それらの発明についての特許は、同法第29条に違反してされたものであるから、同法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。
・取消理由1及び取消理由aについて
・・(中略)・・
(5)取消理由1及び取消理由aに係る検討のまとめ
以上のとおりであるから、本件発明1ないし3は、いずれも甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、また、本件発明1ないし4は、いずれも甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同法同条第2項の規定により、いずれにしても特許を受けることができるものではない。
3.当審の判断のまとめ
以上のとおり、本件発明1ないし4は、いずれも特許法第29条第1項第3号に該当するか、同法同条第2項の規定により、いずれにしても特許を受けることができるものではないから、本件の請求項1ないし4に係る発明についての特許は、特許法第29条に違反してされたものであって、いずれも同法第113条第2号の規定に該当し、取り消すべきものである。」
第4 平成30年4月24日付け訂正請求の適否
1.訂正請求の内容
平成30年6月27日の手続補正書により補正された上記平成30年4月24日付け訂正請求では、本件特許に係る特許請求の範囲及び明細書を、上記訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲及び訂正明細書のとおり、訂正後の請求項1ないし4について訂正することを求めるものであり、以下の(1)ないし(4)の訂正事項を含むものである。(なお、下線は、当審が付したもので訂正箇所を表す。)
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「天然ワックス、ポリオレフィン系化合物、脂肪酸エステル系化合物、シリコーン系化合物から選ばれる少なくとも1種」と記載されているのを「酸価が1~40mgKOH/gの酸化ポリエチレンワックス」に訂正する。(請求項1を引用する請求項2~3も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項4を削除する。
(3)訂正事項3
願書に添付した明細書の段落【0069】に記載された「(実施例1~14」を、「(実施例1~9、14、参考例10~13」に訂正する。
(4)訂正事項4
願書に添付した明細書の段落【0074】の【表3】に記載された「実施例10~13」を、「参考例10~13」に訂正する。
2.検討
なお、以下の検討において、この訂正請求による訂正を「本件訂正」といい、本件訂正前の特許請求の範囲における請求項1ないし4を「旧請求項1」ないし「旧請求項4」、本件訂正後の特許請求の範囲における請求項1ないし4を「新請求項1」ないし「新請求項4」という。
(1)訂正の目的要件について
上記の各訂正事項による訂正の目的につき検討する。
上記訂正事項1に係る訂正は、旧請求項1における「離型剤(B)」に係る並列的選択肢の一部を削除し、単一の「酸化ポリエチレンワックス」とした上で、当該「ワックス」について、明細書の【0033】の記載に基づき、酸価の範囲に係る事項を付加して限定して新請求項1としたものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。
上記訂正事項2に係る訂正は、旧請求項4に記載された事項を全て削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められる。
また、上記訂正事項3及び4に係る各訂正は、上記訂正事項1及び2に係る各訂正により特許請求の範囲が訂正されたことに伴い、特許請求の範囲に記載された事項を具備しないものとなった各「実施例」につき単に各「参考例」としたものであるから、いずれも明瞭でない記載の釈明を目的とするものと認められる。
したがって、上記訂正事項1ないし4による各訂正は、いずれも特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に規定の目的要件に適合するものである。
(2)新規事項の追加及び特許請求の範囲の実質的拡張・変更について
上記(1)に示したとおり、上記訂正事項1に係る訂正により、旧請求項1に記載された並列的選択肢の一部を削除するとともに、訂正前の明細書に記載された事項を直列的に付加することにより、旧請求項1に係る特許請求の範囲を実質的に減縮して新請求項1とされていることが明らかである。
また、訂正事項2に係る訂正により、旧請求項4に記載された事項が全て削除されており、旧請求項4に係る特許請求の範囲が減縮されていることも明らかである。
さらに、訂正事項3及び4に係る各訂正は、訂正された特許請求の範囲の記載との対応関係が不明瞭となった明細書の記載につき単に正したものである。
してみると、上記訂正事項1ないし4に係る各訂正は、いずれも新たな技術的事項を導入しないものであり、また、特許請求の範囲を実質的に拡張又は変更するものではないことが明らかである。
してみると、上記訂正事項1ないし4に係る各訂正は、いずれも特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定を満たすものである。
(3)一群の請求項について
本件訂正前の旧請求項2ないし4は、いずれも旧請求項1を直接的又は間接的に引用するものであるから、本件訂正前の旧請求項1ないし4は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。
また、上記訂正事項3及び4に係る明細書についての各訂正は、上記訂正事項1及び2に係る各訂正により特許請求の範囲が上記一群の請求項ごとに訂正されたことに伴い、不整合となった明細書の記載を上記一群の請求項の全てについて訂正したものであるから、上記明細書についての各訂正は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項の規定を満たすものである。
(4)独立特許要件
なお、本件異議の申立ては、旧請求項1ないし4、すなわち全ての請求項に係る特許に対するものであるから、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項に規定の独立特許要件につき検討すべき請求項は存しない。
(5)訂正に係る検討のまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項及び同条第9項において準用する同法第126条第4項ないし第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-4〕について訂正を認める。
第5 本件特許に係る請求項に記載された事項
本件訂正後の本件特許に係る請求項1ないし4には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
ポリエステル樹脂(A)と、示差走査型熱量計(DSC)による融点が130℃以下である離型剤(B)及び融点が180℃以上である離型剤(C)を含有し、離型剤(B)は酸価が1~40mgKOH/gの酸化ポリエチレンワックスであり、離型剤(C)がカルボン酸アミド系ワックスであることを特徴とするポリエステル系樹脂組成物。
【請求項2】
離型剤(B)と離型剤(C)の含有量の質量比(B)/(C)が、3/7~8/2である請求項1に記載のポリエステル系樹脂組成物。
【請求項3】
離型剤(B)と離型剤(C)の含有量が、ポリエステル樹脂(A)100質量部に対し、合計で0.1~3質量部である請求項1又は2に記載のポリエステル系樹脂組成物。
【請求項4】(削除)」
(以下、上記請求項1ないし4に係る各発明につき、項番に従い「本件発明1」ないし「本件発明4」といい、併せて「本件発明」と総称することがある。)
第6 当審の判断
当審は、
当審が通知した取消理由及び申立人が主張する上記取消理由につきいずれも理由がなく、ほかに本件発明1ないし3についての特許を取り消すべき理由を発見しないから、本件発明1ないし3についての特許は取り消すことはできず、維持すべきものである、
本件の請求項4に係る特許に対する本件異議申立は、訂正により同項の記載事項が全て削除されたことにより、申立ての対象を欠く不適法なものとなり、その補正ができないものであるから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下すべきものである、
と判断する。以下、詳述する。
I.当審が通知した取消理由について
・取消理由1及び取消理由aについて
1.甲号証に記載された事項及び記載された発明
以下、上記取消理由1及び取消理由aにつき検討するにあたり、当該両理由はいずれも特許法第29条に係るものであるから、上記甲1ないし4に記載された事項を確認・摘示するとともに、甲1に記載された発明の認定を行う。
(1)甲1
ア.甲1に記載された事項
甲1には、申立人が申立書第6頁第3行~第7頁第20行で主張するとおりの事項(【0012】、【0054】、【0075】及び【0079】)に加えて、以下の事項が記載されている。
(a-1)
「【0090】
【表2】
【0091】
【表3】
」
イ.甲1に記載された発明
上記ア.の記載事項(特に上記【表2】の「実施例20」に係る記載)からみて、甲1には、
「(A)ポリブチレンテレフタレート樹脂100重量部に対して、(B)赤リン10重量部、(C)フェノール系樹脂5重量部、(D)アミノトリアゾール系化合物1重量部及び(K)滑剤を配合してなる難燃性樹脂組成物であって、上記(K)滑剤として、『ヘキストワックスOP』なる商品名の脂肪酸エステルの一部をカルシウム塩にした滑剤、『ライトアマイドWH-255』なる商品名のエチレンジアミンとステアリン酸及びセバシン酸からなる重縮合物並びに『三井ハイワックス1105A』なる商品名の酸無水物変性ポリアルキレンワックスをそれぞれ0.3重量部併用してなる樹脂組成物。」
に係る発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものといえる。
(2)甲2に記載された事項
甲2には、申立人が申立書第8頁第19行~第21行で主張するとおりの、「ヘキストワックスOP」なる商品名のモンタン酸エチレングリコールエステルの部分ケトン化物につき融点79℃であることが記載されている。
(3)甲3に記載された事項
甲3には、申立人が申立書第9頁第1行~第5行で主張するとおりの、「三井ハイワックス1105A」なる商品名の機能性ポリオレフィンワックスにつき融点104℃(DSC法)であることが記載されている。
(4)甲4に記載された事項
甲4には、申立人が申立書第9頁第8行~第10行で主張するとおりの、「ライトアマイドWH-255」なる商品名のエチレンジアミン/ステアリン酸/セバシン酸重縮合物につき融点255℃であることが記載されている。
2.検討
(1)本件発明1について
ア.対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、両者は、
「ポリエステル樹脂(A)を含有するポリエステル系樹脂組成物。」
の点で一致し、下記の点で相違するものと認められる。
相違点1:「離型剤」につき、本件発明1では「示差走査型熱量計(DSC)による融点が130℃以下である離型剤(B)及び融点が180℃以上である離型剤(C)を含有し、離型剤(B)は酸価が1~40mgKOH/gの酸化ポリエチレンワックスであり、離型剤(C)がカルボン酸アミド系ワックスである」のに対して、甲1発明では、「上記(K)滑剤として、『ヘキストワックスOP』なる商品名の脂肪酸エステルの一部をカルシウム塩にした滑剤、『ライトアマイドWH-255』なる商品名のエチレンジアミンとステアリン酸及びセバシン酸からなる重縮合物並びに『三井ハイワックス1105A』なる商品名の酸無水物変性ポリアルキレンワックスをそれぞれ0.3重量部併用してなる」点
イ.検討
上記相違点1につき検討すると、甲1発明における「(K)滑剤」は、当該剤の使用により成形加工時の樹脂組成物の器壁への付着を防止するために組成物に添加・使用するものであることが当業者に自明であり、成形型の内壁に対する樹脂組成物の付着を防止し成形物の型離れを良くするために使用する本件発明1における「離型剤」とその作用を一にするものであるから、甲1発明における「(K)滑剤」と本件発明1における「離型剤」とは、表現上の差異のみであって実質的な差異が存するものとは認められない。
そして、甲1発明における
「『ヘキストワックスOP』なる商品名の脂肪酸エステルの一部をカルシウム塩にした滑剤」、
「『ライトアマイドWH-255』なる商品名のエチレンジアミンとステアリン酸及びセバシン酸からなる重縮合物」並びに
「『三井ハイワックス1105A』なる商品名の酸無水物変性ポリアルキレンワックス」
は、甲2ないし甲4の開示に照らすと、それぞれ、本件発明1における
「示差走査型熱量計(DSC)による融点が130℃以下である離型剤(B)」としての脂肪酸エステル系化合物、
「示差走査型熱量計(DSC)による・・融点が180℃以上である離型剤(C)」としての「カルボン酸アミド系ワックス」及び
「示差走査型熱量計(DSC)による融点が130℃以下である離型剤(B)」としてのポリオレフィン系化合物、
に相当し、甲1発明では、それらを「併用して」いるのであるから、本件発明1における「示差走査型熱量計(DSC)による融点が130℃以下である離型剤(B)及び融点が180℃以上である離型剤(C)を含有し」に相当するものとはいえる。
しかしながら、甲1発明において使用される「『三井ハイワックス1105A』なる商品名の酸無水物変性ポリアルキレンワックス」は酸価が60mgKOH/gの「酸無水物変性」タイプのものであり、本件発明1における「酸価が1~40mgKOH/gの酸化ポリエチレンワックス」でないことが明らかである。
また、特許権者が平成30年4月24日付け意見書に添付した乙第1号証実験証明書の内容を参酌すると、本件発明1に係る実施例2につき酸価22~28mgKOH/gの酸化ポリエチレンワックスに代えて、甲1発明で使用される『三井ハイワックス1105A』を使用した場合、離型性が低下することが看取できるから、本件発明1が、甲1発明に比して、格別な効果を奏しているものと理解するのが自然である。
してみると、上記相違点1は、実質的な相違点であるとともに、本件発明1は、上記相違点1に係る事項を具備することにより、甲1発明に比して、格別な効果を奏しているものと認められる。
ウ.小括
したがって、本件発明1は、甲1発明、すなわち甲1に記載された発明であるということはできず、また、本件発明1が、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。
(2)本件発明2及び3について
本件発明1を引用する本件発明2及び3につき検討すると、上記(1)で説示したとおりの理由により、本件発明1は、甲1に記載された発明であるということはできず、また、本件発明1が、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできないのであるから、本件発明1に係る事項を全て具備する本件発明2及び3についても、甲1に記載された発明であるということはできず、また、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできない。
(3)取消理由1及び取消理由aに係る検討のまとめ
以上のとおりであるから、本件発明1ないし3は、いずれも甲1に記載された発明であるということはできず、また、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるということもできないから、上記取消理由1及び取消理由aはいずれも理由がない。
3.当審が通知した取消理由に係る検討のまとめ
以上のとおりであるから、当審が通知した取消理由1及び取消理由aは、いずれも理由がない。
II.申立人が主張する取消理由について
申立人が、申立書で主張する取消理由は、上記第2で示した取消理由1及び2であるところ、取消理由1は、当審が通知した上記I.で検討したものと同旨であるから、残る取消理由2につき以下検討する。
1.取消理由2について
申立人が主張する取消理由2は、申立書第12頁第5行ないし第13行の記載からみて、本件特許に係る請求項2に記載された「離型剤(B)と離型剤(C)の含有量の質量比(B)/(C)が、3/7~8/2である」との点につき、実施例で効果が実証されている場合は、5/5及び6/4の場合のみであり、それ以外の比率の場合に、同様の本件発明に係る効果を奏するか否か明らかでないから、請求項2に係る発明が、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載したものではなく、請求項2及び同項を引用する請求項3並びに4の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合しないというものと認められる。
しかるに、上記「離型剤(B)」及び「離型剤(C)」は、いずれも離型性を発現させる剤として、その機能などにおいて共通の傾向を示すものであり、上記2種の離型剤を併用する場合において、上記「含有量の質量比(B)/(C)」が一方に偏った(例えば、3/7又は8/2)からといって、本件発明2につき所期の離型性に係る効果が得られないであろうとすべき当業者の技術常識が存するものでもなく、(本件訂正後の)本件特許明細書の発明の詳細な説明に照らして、当該「質量比(B)/(C)」が一方に偏った場合であっても、本件発明に係る効果を奏するであろうと当業者が認識するものと理解するのが自然である。
してみると、(本件訂正後の)本件特許明細書の発明の詳細な説明には、本件の請求項2及び3に係る発明につき、所期の課題を解決できるであろうと当業者が認識することができるように記載したものということができるから、同各項に係る発明が記載したものということができる。
したがって、本件の請求項2及び3の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものであるから、上記取消理由2は、理由がない。
(なお、この点、旧請求項4についても同様であるから、先の取消理由通知において、請求項2ないし4に係る取消理由2につき通知しなかった。)
2.申立人が主張する取消理由についてのまとめ
以上のとおりであるから、申立人が主張する取消理由1及び2は、いずれも理由がない。
第7 むすび
以上のとおり、本件の請求項1ないし3に係る発明についての特許は、当審が通知した取消理由並びに申立人が主張する取消理由及び証拠によっては、取り消すことができない。
また、ほかに、本件の請求項1ないし3に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見できない。
さらに、本件の請求項4に係る特許に対する本件異議申立は、訂正により同項の記載事項が全て削除されたことにより、申立ての対象を欠く不適法なものとなり、その補正ができないものであるから、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2017-701101