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特許異議申立

2026-700154

積層不織布および衛生材料

審判番号
2026-700154
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-514443
登録番号
7726066
請求日
2026年02月20日
審決日
2026年05月08日
公報発行日
2026年06月26日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】東レ株式会社
  • 【異議申立人】宮島 崇
審判長/審判官
  • 審判長 小宮 慎司
  • 審判官 松永 稔
  • 審判官 棚田 一也
分類
P1651.113-Y (D04H) / P1651.121-Y (D04H)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7726066号発明「積層不織布および衛生材料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7726066号の請求項1~6に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7726066号(以下「本件特許」という。)についての出願は、2021年(令和3年)2月12日(優先権主張 令和2年2月28日)を国際出願日とする出願であって、令和7年8月12日にその特許権の設定登録がされ、同年同月20日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許に対し、令和8年2月20日に特許異議申立人宮島 崇(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。(申立人により提出された特許異議申立書を以下「申立書」という。) 第2 本件発明 本件特許の請求項1~6に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明6」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「 【請求項1】 第1の熱可塑性樹脂繊維からなる不織布層(A)と、第2の熱可塑性樹脂繊維からなる不織布層(B)とが、それぞれ少なくとも1層積層された積層不織布であって、不織布層(A)を構成する繊維の平均単繊維直径Daに対する不織布層(B)を構成する繊維の平均単繊維直径Dbの比(Db/Da)が1.1以上であり、不織布層(B)が少なくとも一方の最表面に積層されており、さらに、積層不織布の表面の水との接触角が10°以下であって、積層不織布の裏面の水との接触角が10°以下である、積層不織布。 【請求項2】 前記積層不織布において、不織布層(A)が他方の最表面に積層されてなる、請求項1に記載の積層不織布。 【請求項3】 前記積層不織布において、任意の一方向を0°とし22.5°毎に180°まで積層不織布の面内で回転させて測定した破断強力の内、最低破断強力σminに対する最高破断強力σmaxの比(σmax/σmin)が1.2~4.0である、請求項1または2に記載の積層不織布。 【請求項4】 前記不織布層(A)および不織布層(B)が、ともに長繊維不織布からなる、請求項1~3のいずれかに記載の積層不織布。 【請求項5】 少なくとも一部が請求項1~4のいずれかに記載の積層不織布で構成されてなる、衛生材料。 【請求項6】 前記不織布層(B)が積層されてなる側の最表面が、着用者の肌側に向けて配されてなる、請求項5に記載の衛生材料。」 第3 申立理由の概要 申立人は、次の甲第1号証~甲第4号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲4」という。)を証拠方法とし、以下の申立理由1~3により、本件特許を取り消すべきものである旨申し立てた。 甲1: 特開2006-299425号公報 甲2: 特開平7-42057号公報 甲3: 特開2010-106402号公報 甲4: 特開平5-176953号公報 1 申立理由1(甲1を主引用例とする新規性・進歩性欠如) (1) 本件発明1、2、4~6は、甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、本件の請求項1、2、4~6に係る特許は、同法第113条第2号により取消されるべきものである。 (2) 本件発明1~6は、甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件の請求項1~6に係る特許は、同法第113条第2号により取消されるべきものである。 2 申立理由2(甲2を主引用例とする進歩性欠如) (1) 本件発明1~6は、甲2及び甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件の請求項1~6に係る特許は、同法第113条第2号により取消されるべきものである。 (2) 本件発明1~5は、甲2及び甲4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件の請求項1~5に係る特許は、同法第113条第2号により取消されるべきものである。 3 申立理由3(甲3を主引用例とする進歩性欠如) (1) 本件発明1~6は、甲3及び甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件の請求項1~6に係る特許は、同法第113条第2号により取消されるべきものである。 (2) 本件発明1、2、5、6は、甲3及び甲4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件の請求項1、2、5、6に係る特許は、同法第113条第2号により取消されるべきものである。 第4 申立理由の検討 1 甲1~3に記載された発明、及び、甲4の記載 (1) 甲1に記載された発明(甲1発明A、甲1発明B) ア 甲1の記載 甲1には次の記載がある。(下線は、引用箇所を示すために、当審において付加した。以下同様。) 「【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は、熱可塑性合成繊維不織布において、高い強度を損なうことなく、高い吸水性と保水性を有する吸水性不織布積層体に関するものである。 ・・・(中略)・・・ 【0017】 この共重合体の溶融粘度は特に制限はないが、常用のスパンボンド法やメルトブロー法にて繊維を得るためには、生産性の観点から、せん断速度1000秒-1での溶融粘度が100~10000poiseの範囲のものを使用するのが好ましい。 吸水性不織布層に使用される繊維の繊度はその製造法によっても異なるが、0.01~25dtex、特に0.05~15dtexの範囲が適当である。 吸水性樹脂の溶融粘度がこの範囲であると、特にメルトブロー法による極細繊維化が容易であり、吸水性を有する極細繊維不織布を得ることができる。極細繊維の繊径は0.5~5μmの範囲が好ましく、目付は1.0~100g/m2 の範囲が可能であるが、低目付けの範囲(2~10g/m2 )でも、安定した不織布が得られる。 ・・・(中略)・・・ 【実施例】 【0030】 以下に、実施例などにより本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例などにより何ら限定されるものではない。 なお、測定方法、評価方法等は下記の通りである。 <引張強さ> JIS-L-1096の4.3に示された方法で測定して引張強さを評価した。 <吸水速度> JIS-L-1096の6.26.1滴下法に示された方法で測定し、吸水に要した秒数で、吸水速度を評価した。 ・・・(中略)・・・ 【0058】 [実施例13] 固有粘度が0.70のポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)を常用の溶融紡糸装置に供給し290℃にて均一に溶融混合し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から溶融紡出して速度4500m/分にて引き取り、2.0dtexのポリエチレンテレフタレート繊維を得た。得られたポリエチレンテレフタレート繊維を開繊分散して目付が10g/m2 のウェブを形成した。 次に固有粘度が0.92でポリエチレングリコールの共重合率が45重量%であるポリテトラメチレンテレフタレートとポリエチレングリコールとの共重合ポリエステル樹脂を常用のメルトブロー溶融紡糸装置に供給し、270℃にて均一に溶融混合し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から溶融紡出して2.5μmの吸水性繊維からなる目付が60g/m2 のウェブを得た。 【0059】 得られた吸水吸放湿性ウェブを目付が10g/m2 のポリエチレンテレフタレート繊維からなるウェブで挟み、165℃に加熱した長方形柄エンボス(圧着面積11.4%)ロールとフラットロール間で線圧45N/cmにて部分熱圧着して80g/m2 の不織布を作成した。得られた不織布の各物性を表1に示す。 吸水性繊維の含有比率は75%であり、後述の比較例6に対して、吸水速度は0.8秒と大幅に早くなり、保水率は比較例6の約10倍の65%に増加し、保水性が大幅に向上した。 【0060】 [実施例14] 固有粘度が0.70のポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)を常用の溶融紡糸装置に供給し290℃にて均一に溶融混合し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から溶融紡出して速度4500m/分にて引き取り、2.0dtexのポリエチレンテレフタレート繊維を得た。得られたポリエチレンテレフタレート繊維を開繊分散して目付が30g/m2 のウェブを形成した。 次に固有粘度が0.92でポリエチレングリコールの共重合率が45重量%であるポリテトラメチレンテレフタレートとポリエチレングリコールとの共重合ポリエステル樹脂を常用のメルトブロー溶融紡糸装置に供給し、270℃にて均一に溶融混合し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から溶融紡出して2.5μmの吸水性繊維からなる目付が10g/m2 のウェブを得た。 【0061】 得られた吸水性ウェブと目付が30g/m2 のポリエチレンテレフタレート繊維からなるウェブを165℃に加熱した長方形柄エンボス(圧着面積11.4%)ロールとフラットロール間で線圧45N/cmにて部分熱圧着して60g/m2 の不織布を作成した。得られた不織布の各物性を表1に示す。 吸水性繊維の含有比率は50%であり、後述の比較例6に対して、吸水速度は0.8秒と大幅に早くなり、保水率は比較例6の約8倍の48%に増加し、保水性が大幅に向上した。 ・・・(中略)・・・ 【0077】 【表1】 [図:0001436228000001.jpg] 」 イ 甲1発明A(実施例13) (ア) 上記アの段落0058~0059と同段落0077の表1の記載とを対比すると、段落0058に記載されたポリエチレンテレフタレート繊維(PET)を開繊分散して形成した「目付が10g/m2 のウェブ」及び段落0059に記載された「目付が10g/m2 のポリエチレンテレフタレート繊維からなるウェブ」は、表1の「SB層」と対応するといえる。 また、段落0058に記載された「2.5μmの吸水性繊維からなる目付が60g/m2 のウェブ」及び段落0059に記載された「吸水吸放湿性ウェブ」は、表1の「MB層」と対応するといえる。 (イ) 上記アの段落0017の、メルトブロー法によって得られる吸水性を有する極細繊維不織布の極細繊維の繊径についての記載によると、同段落0058の、メルトブロー溶融紡糸装置によって得られる吸水性繊維についての「2.5μm」との記載は、同様に、吸水性繊維の「繊径」を意味するものといえる。 (ウ) 上記(ア)、(イ)を踏まえると、甲1(上記アの段落0030、0058~0059、表1)には、実施例13として次の発明(以下「甲1発明A」という。)が記載されているといえる。 「ポリテトラメチレンテレフタレートとポリエチレングリコールとの共重合ポリエステル樹脂をメルトブロー溶融紡糸装置に供給し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から溶融紡出して得た繊径2.5μmの吸水性繊維からなる目付が60g/m2のウェブ(MB層、吸水性ウェブ)を、2.0dtexのポリエチレンテレフタレート繊維を開繊分散して形成した目付が10g/m2のウェブ(SB層)で挟み、部分熱圧着して作成した不織布であって、 吸水速度(JIS-L-1096の6.26.1滴下法に示された方法で測定した、吸水に要した秒数)が0.8秒である、 不織布。」 ウ 甲1発明B(実施例14) 上記イと同様に検討すると、甲1(上記アの段落0060~0061、表1)には、実施例14として次の発明(以下「甲1発明B」という。)が記載されているといえる。 ただし、表1には、実施例14のMB層の目付が30g/m2と記載されているが、段落0060の記載に基づき10g/m2と認定した。 「ポリテトラメチレンテレフタレートとポリエチレングリコールとの共重合ポリエステル樹脂をメルトブロー溶融紡糸装置に供給し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から溶融紡出して得た繊径2.5μmの吸水性繊維からなる目付が10g/m2のウェブ(MB層、吸水性ウェブ)と、2.0dtexのポリエチレンテレフタレート繊維を開繊分散して形成した目付が30g/m2 のウェブ(SB層)を、部分熱圧着して作成した不織布であって、 吸水速度(JIS-L-1096の6.26.1滴下法に示された方法で測定した、吸水に要した秒数)が0.8秒である、 不織布。」 (2) 甲2に記載された発明 ア 甲2の記載 甲2には次の記載がある。 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 熱可塑性樹脂の連続長繊維より成る衛生材料の表面材不織布であって、人の肌に触れる側の繊維層(A層)と触れない繊維層(B層)との複数層から成り、A層とB層の構成繊維はそれぞれ平均繊度が0.5デニール以上4.0デニール以下であり、且つB層の平均繊度はA層の平均繊度の1.5倍以上8.0倍以下であり、不織布の目付は20g/m2 以上40g/m2 以下であり、B層が不織布全体に占める割合は10重量%以上90重量%以下であり、該不織布は高圧水柱流処理が施されていて、AB両層の境界面においてA層の繊維とB層の繊維が一部交絡していることを特徴とする衛生材料の表面材不織布。」 「【0023】実施例1 図1に示す製造装置を用いて不織布を製造した。すなわち、ポリプロピレンを溶融紡糸して、A層として繊度0.8デニールで目付が12g/m2 のポリプロピレンスパンボンドウエブ、B層として繊度3.0デニールで目付が12g/m2 のポリプロピレンスパンボンドウエブをそれぞれ得た。無端コンベア上にてA層とB層を積層して合計24g/m2 のウエブとし、表面の温度を135℃にした平滑なロールにより線圧10kg/cmで仮り留めした 【0024】この不織布ウエブに、ノズル径0.1mm、ピッチ1mm、水圧40kg/cm2 の条件で得られた高圧水柱流を直角方向から吹き当てて交絡処理を施し、これを熱風循環方式の乾燥器に通して乾燥した後、上段が熱エンボスロールで下段が熱平滑ロールである部分的熱圧着装置で圧着した。部分的熱圧着した時の条件は上段熱エンボスロールの彫刻は丸型で直径は0.6mm、接着面積率は7%であり、2つのロールの表面温度は150℃、線圧20kg/cmであった。また、ラインスピードは80m/minに設定した。得られた不織布を界面活性剤水溶液(三洋化成工業株式会社製、商品名サンシリコンM-84)に浸し、脱水後乾燥した。」 イ 甲2発明 上記アによると、甲2には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているといえる。 「ポリプロピレンを溶融紡糸して、A層として繊度0.8デニールで目付が12g/m2 のポリプロピレンスパンボンドウエブ、B層として繊度3.0デニールで目付が12g/m2 のポリプロピレンスパンボンドウエブをそれぞれ得、A層とB層を積層して仮り留めし、交絡処理を施し、部分的熱圧着装置で圧着して製造した不織布であって、 A層が人の肌に触れる側の繊維層である不織布。」 (3) 甲3に記載された発明 ア 甲3の記載 甲3には次の記載がある。 「【0029】 実施例1 下層として、表面親水化処理された鞘PE(ポリエチレン)/芯PET(ポリエチレンテレフタレート)からなる熱接着性複合繊維(帝人ファイバー(株)製,1.7dt×5mm)を22g/m2となるよう、エアレイド法で捕集用ネット上に、ウェブ形成した。更に、この上に上層として、同様な親水化熱接着性複合繊維(帝人ファイバー株)製、4.4dt×5mm)を21g/m2となるよう、エアレイド法で形成した。次いで、この43g/m2のエアレイド2層積層ウェブを熱オーブンで140℃で加熱し繊維間結合を生じさせて、厚さが1.1mmである、エアレイド不織布シートを得た。」 イ 甲3発明 上記アによると、甲3には次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されているといえる。 「下層として、表面親水化処理された鞘PE(ポリエチレン)/芯PET(ポリエチレンテレフタレート)からなる熱接着性複合繊維(帝人ファイバー(株)製,1.7dt×5mm)を22g/m2となるよう、エアレイド法で捕集用ネット上に、ウェブ形成し、 更に、この上に上層として、同様な親水化熱接着性複合繊維(帝人ファイバー株)製、4.4dt×5mm)を21g/m2となるよう、エアレイド法で形成し、 次いで、この43g/m2のエアレイド2層積層ウェブを加熱し繊維間結合を生じさせて得た、 厚さが1.1mmである、エアレイド不織布シート。」 (4) 甲4(特開平5-176953号公報)の記載 甲4には次の記載がある。 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 (1)肌に接触する第一不織布層と、第一不織布層の裏面側に積層形成された第二不織布層とからなる表面材を備えた吸収性物品において、 (2)第一不織布層が第二不織布層よりも親水性が低く、 (3)これら両層全体に0.5~10重量%の二酸化チタンが含有され且つその坪量が12~50g/m2 である ことを特徴とする吸収性物品。 【請求項2】 (1)第一不織布層は、太さが1~6デニールで濡れ性が接触角で20~90°の繊維からなり、且つ、上記繊維が二酸化チタンを0. 5~10重量%含有すると共にその坪量が5~20g/m2 であり、また、 (2)第二不織布層は、太さが0. 1~5デニールで濡れ性が接触角で10~50°の繊維からなり且つ二酸化チタンを0. 5~10重量%含有すると共にその坪量が7~45g/m2 であり、更に、 (3)第一不織布層の酸化チタン含有量が第二不織布層のそれよりも小さい、請求項1記載の吸収性物品。」 「【0023】 【表1】 不織布組成・物性 [図:0001436228000002.jpg] 」 2 申立理由1(甲1を主引用例とする新規性・進歩性欠如) (1) 甲1発明Aを主引用発明とする場合 本件発明1と甲1発明Aを対比する。 ア 甲1発明Aの「ポリテトラメチレンテレフタレートとポリエチレングリコールとの共重合ポリエステル樹脂をメルトブロー溶融紡糸装置に供給し、円形断面の紡糸孔を有する紡糸口金から溶融紡出して得た繊径2.5μmの吸水性繊維からなる目付が60g/m2のウェブ(MB層、吸水吸放湿性ウェブ)」は、その、熱可塑性樹脂といえる「ポリテトラメチレンテレフタレートとポリエチレングリコールとの共重合ポリエステル樹脂」を溶融紡出した「吸水性繊維」が、「熱可塑性樹脂繊維」といえるから、本件発明1の「第1の熱可塑性樹脂繊維からなる不織布層(A)」に相当する。 イ 甲1発明Aの「2.0dtexのポリエチレンテレフタレート繊維を開繊分散して形成した目付が10g/m2のウェブ(SB層)」は、その「ポリエチレンテレフタレート繊維」が「熱可塑性樹脂繊維」といえるから、本件発明1の「第2の熱可塑性樹脂繊維からなる不織布層(B)」に相当する。 ウ 上記1(1)アの甲1の段落0001に記載されているとおり、甲1は、「吸水性不織布積層体」に係る文献である。 そして、その実施例13に係る甲1発明Aは、「目付が60g/m2のウェブ(MB層、吸水吸放湿性ウェブ)」を、「目付が10g/m2のウェブ(SB層)」で挟み、部分熱圧着して作成した不織布に係る発明であるから、本件発明1と「第1の熱可塑性樹脂繊維からなる不織布層(A)と、第2の熱可塑性樹脂繊維からなる不織布層(B)とが、それぞれ少なくとも1層積層された積層不織布」といえる点で共通する。 エ 甲1発明Aの、「10g/m2のウェブ(SB層)」は、「少なくとも一方の最表面に積層」されている点で本件発明1の不織布層(B)と共通する。 オ ポリエチレンテレフタレートの比重が概ね1.38であることを踏まえると、甲1発明Aのウェブ(SB層)を構成する「2.0dtexのポリエチレンテレフタレート繊維」の平均単繊維直径は約13.6μmと算出できる。 そうすると、甲1発明Aにおいて、「10g/m2のウェブ(SB層)」を構成する「2.0dtexのポリエチレンテレフタレート繊維」の平均単繊維直径(13.6μm)/「目付が60g/m2のウェブ(MB層、吸水性ウェブ)」を構成する吸水性繊維の繊径(2.5μm)は、約5.44であるから、本件発明1と甲1発明Aとは、「不織布層(A)を構成する繊維の平均単繊維直径Daに対する不織布層(B)を構成する繊維の平均単繊維直径Dbの比(Db/Da)が1.1以上」である点で一致する。 カ 一致点・相違点 以上を踏まえると、本件発明1と甲1発明とは次の点で一致し、相違する。 (ア) 一致点 「第1の熱可塑性樹脂繊維からなる不織布層(A)と、第2の熱可塑性樹脂繊維からなる不織布層(B)とが、それぞれ少なくとも1層積層された積層不織布であって、不織布層(A)を構成する繊維の平均単繊維直径Daに対する不織布層(B)を構成する繊維の平均単繊維直径Dbの比(Db/Da)が1.1以上であり、不織布層(B)が少なくとも一方の最表面に積層されている、積層不織布。」 (イ) 相違点 本件発明1が「積層不織布の表面の水との接触角が10°以下であって、積層不織布の裏面の水との接触角が10°以下である」ことを特定しているのに対し、甲1発明Aは、「吸水速度(JIS-L-1096の6.26.1滴下法に示された方法で測定した、吸水に要した秒数)が0.8秒である」ことが特定されているものの、不織布の表面と裏面となる「10g/m2のウェブ(SB層)」の水との接触角について何ら特定していない点。(以下「相違点」という。) キ 申立人の主張 (ア) 申立人は、「甲第1号証における「JIS-L-1096滴下法」という文言は、現在の「JIS―L1907滴下法」と読み替えることができる。 よって、本件特許明細書の段落0042の記載(吸収速度が2秒以内であれば水に対する接触角は0°と定義する)を考慮すると、甲第1号証の実施例13の不織布積層体の両面の吸水速度はいずれも2秒以内であるから、水に対する接触角は0°となる。」(申立書7ページ17~23行)から、相違点は認められず、「本件特許発明1は、甲1発明に対して新規性は認められない。仮に、新規性が認められたとしても進歩性は認められない。」(申立書17ページ下から6行~下から5行)と主張する。 (イ) ここで、本件特許に係る明細書には、接触角、及び吸水速度の測定方法について次の記載がある。(下線は、強調のために当審において付加した。) 「【0024】 本発明において、熱可塑性樹脂繊維は、いずれも水との接触角が90°未満であることが好ましい。熱可塑性樹脂繊維における水との接触角は、後述する不織布における水との接触角とは異なる指標であり、該接触角が90°以上であれば疎水性、90°未満であれば親水性となる。なお、本発明において、熱可塑性樹脂繊維の水との接触角は、例えば、室温20℃、相対湿度65%の室内に24時間以上放置した不織布から取り出した熱可塑性樹脂繊維に対し、インクジェット方式水滴吐出部を搭載した自動接触角計を用いて極少量(15pL)の水滴を繊維表面に着液させた際の、液滴の空気界面と繊維のなす角を測定することにより求められる。 ・・・(中略)・・・ 【0042】 本発明における積層不織布層の水との接触角は、以下の方法で測定、算出された値を指す。不織布層(B)が最表面に積層された面を第1面、その反対側の面を第2面と定義する。 (1)積層不織布を、室温20℃、相対湿度65%の室内に24時間以上放置する。 (2)上記処理を施した積層不織布を、同室に設置した接触角計のステージ上に、不織布層(B)が測定面となるようにセットする。 (3)イオン交換水からなる2μLの液滴を針先に作製し、不織布に着液させる。 (4)不織布に液滴が着液してから2秒後の画像より、液滴との接触角を求める。なお、2秒以内にすべての水が不織布に吸水された場合は、液滴の空気との界面が不織布層の表面と同一面に存在すると判断し、水との接触角を0°と定義する。 (5)1水準につき測定位置を変更して5回測定を行い、その算術平均値を第1面と水との接触角とする。 (6)(1)と同様の処理を施した積層不織布を、不織布層(B)が裏面となるようにセットし、上記(2)~(5)の操作を繰り返し行い、その算術平均値を第2面と水との接触角とする。 ・・・(中略)・・・ 【0048】 ここで言う吸水速度とは、JIS L1907:2010「繊維製品の吸水性試験方法」の「7.1.1 滴下法」に基づき測定されるものである。積層不織布に水滴を1滴滴下し、吸収されて表面の鏡面反射が消失するまでの時間を測定し、これを異なる10箇所で測定した値の単純平均を算出し、単位を秒として、小数点第1位を四捨五入した値を、本発明で言う吸水速度とする。 ・・・(中略)・・・ 【0079】 (2) 積層不織布の水との接触角 協和界面科学株式会社製の接触角計「DMo-501」を用い、下記のとおり測定を行った。 【0080】 本発明の積層不織布層において、不織布層(B)が最表面に積層された面を第1面、その反対側の面を第2面と定義し、以下の方法で測定、算出した。 (2.1)積層不織布を、室温20℃、相対湿度65%の室内に24時間放置した。 (2.2)上記処理を施した積層不織布を、同室に設置した接触角計のステージ上に、不織布層(B)が測定面となるようにセットした。 (2.3)イオン交換水からなる2μLの液滴を針先に作製し、不織布に着液させた。 (2.4)不織布に液滴が着液してから2秒後の画像より、液滴との接触角を求めた。なお、2秒以内にすべての水が不織布に吸水された場合は、液滴の空気との界面が不織布層の表面と同一面に存在すると判断し、水との接触角を0°と定義した。 (2.5)1水準につき測定位置を変更して5回測定を行い、その算術平均値を第1面と水との接触角とした。 (2.6)(2.1)と同様の処理を施した積層不織布を、不織布層(B)が裏面となるようにセットし、上記(2.2)~(2.5)の操作を繰り返し行い、その算術平均値を第2面と水との接触角とした。」 (ウ) 上記(イ)の記載によると、本件発明1において吸水速度を測定する際に1滴滴下される「水滴」は、接触角を測定する際に着液させる「イオン交換水からなる2μLの液滴」と同等のものではない。 そして、吸水速度は、水の量や性質に当然依存するから、甲1発明Aについて、測定された吸水速度が0.8秒だからといって、甲1発明Aの表面及び裏面にイオン交換水からなる2μLの液滴を着液させたとしても、2秒以内で吸水されるかは不明である。 そうすると、甲1発明Aの接触角が0°であるかは不明であるから、申立人の主張は採用できない。 ク 小括 以上のとおり、本件発明1と甲1発明Aとは相違点で相違するから、本件発明1は甲1発明Aとはいえない。 そして、本件発明1の構成をすべて含む本件発明2、4~6についても同様である。 また、相違点に係る本件発明1の構成は、いずれの証拠にも記載も示唆もされていないから、本件発明1は、甲1発明Aに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 そして、本件発明1の構成をすべて含む本件発明2~6についても同様である。 (2) 甲1発明Bを主引用発明とする場合 本件発明1と甲1発明Bとを対比すると、上記(1)と同様に、本件発明1と甲1発明Bとは上記(1)カ(イ)の相違点で相違するから、本件発明1は甲1発明Bとはいえない。 そして、本件発明1の構成をすべて含む本件発明2、4~6についても同様である。 また、相違点に係る本件発明1の構成は、いずれの証拠にも記載も示唆もされていないから、本件発明1は、甲1発明Bに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものともいえない。 そして、本件発明1の構成をすべて含む本件発明2~6についても同様である。 (3) 申立理由1(甲1を主引用例とする新規性・進歩性欠如)についてのまとめ 以上のとおり、本件発明1、2、4~6は、甲1に記載された発明ではなく、また、本件発明1~6は、甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、申立理由1(甲1を主引用例とする新規性・進歩性欠如)は理由がない。 3 申立理由2(甲2を主引用例とする進歩性欠如) (1) 対比・判断 本件発明1と甲2発明とを対比する。 ア 甲2発明の、A層としてのポリプロピレンスパンボンドウエブは、本件発明1の「第1の熱可塑性樹脂繊維からなる不織布層(A)」に相当する。 イ 甲2発明の、B層としてのポリプロピレンスパンボンドウエブは、本件発明1の「第2の熱可塑性樹脂繊維からなる不織布層(B)」に相当する。 ウ 甲2発明は、A層とB層を積層して部分的熱圧着装置で圧着して製造した不織布であるから、本件発明1と「第1の熱可塑性樹脂繊維からなる不織布層(A)と、第2の熱可塑性樹脂繊維からなる不織布層(B)とが、それぞれ少なくとも1層積層された積層不織布」に係る発明である点で共通する。 エ 甲2発明のB層は、「少なくとも一方の最表面に積層されており」といえるから、本件発明1の不織布層(B)と一致する。 オ 甲2発明のA層とB層とは同じポリプロピレンを溶融紡糸したものであり、それらの繊度に基づいてA層に対するB層の平均単繊維直径の比率を算出すると概ね1.9となるから、甲2発明のA層とB層をそれぞれ構成する繊維は、「不織布層(A)を構成する繊維の平均単繊維直径Daに対する不織布層(B)を構成する繊維の平均単繊維直径Dbの比(Db/Da)が1.1以上」といえる点で、本件発明1と一致する。 カ そうすると、本件発明1と甲2発明とは、上記2(1)カ(イ)の相違点で相違する。 (2) 相違点についての申立人の主張 ア 甲1を副引例とする場合 (ア) 申立人は、申立書19ページ4~11行で、相違点については甲1に記載があるから、甲2発明に甲1記載事項を適用することにより、相違点に係る構成は当業者が容易に想到し得る旨主張する。 (イ) しかしながら、上記2(1)キ(ウ)のとおり、甲1には相違点に係る本件発明1の構成について記載がなく、また、示唆もないから、申立人の主張は採用できない。 イ 甲4を副引例とする場合 (ア) 申立人は、申立書25ページ17~21行で、甲4には、衛生材料に用いられる積層不織布の表面及び裏面の水との接触角を30°以下にすることが記載されている(特許請求の範囲及び実施例12参照)から、相違点に係る構成は当業者が容易に想到し得る旨主張する。 (イ) しかしながら、上記1(4)の甲4の特許請求の範囲には、肌に接触する方の第一不織布層の接触角が20~90°の繊維からなるとしか記載されていないから、甲2発明における人の肌に触れる側の繊維層であるA層について、水との接触角を10°以下とすることは、何ら示唆されていない。 したがって、甲4の記載に接したとしても、甲2発明において、相違点に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。 よって、申立人の主張は採用できない。 (3) 申立理由2(甲2を主引用例とする進歩性欠如)についてのまとめ 以上のとおり、相違点に係る本件発明1の構成は、いずれの証拠にも記載も示唆もされていないから、本件発明1及び本件発明1の構成をすべて含む本件発明2~6は、甲2及び甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものはなく、また、同様に、本件発明1~5は、甲2及び甲4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、申立理由2(甲2を主引用例とする進歩性欠如)は、理由がない。 4 申立理由3(甲3を主引用例とする進歩性欠如) (1) 対比・判断 本件発明1と甲3発明とを対比する。 ア 甲3発明の、下層としての、表面親水化処理された鞘PE(ポリエチレン)/芯PET(ポリエチレンテレフタレート)からなる熱接着性複合繊維(帝人ファイバー(株)製,1.7dt×5mm)を22g/m2となるよう、エアレイド法で捕集用ネット上に形成されたウェブは、本件発明1の「第1の熱可塑性樹脂繊維からなる不織布層(A)」に対応する。 イ 甲3発明の、同様な親水化熱接着性複合繊維(帝人ファイバー株)製、4.4dt×5mm)を21g/m2となるよう、エアレイド法で形成した上層は、本件発明1の「第2の熱可塑性樹脂繊維からなる不織布層(B)」に対応する。 ウ 甲3発明は、エアレイド2層積層ウェブを加熱し繊維間結合を生じさせて得たものであるから、本件発明1と「第1の熱可塑性樹脂繊維からなる不織布層(A)と、第2の熱可塑性樹脂繊維からなる不織布層(B)とが、それぞれ少なくとも1層積層された積層不織布」に係る発明である点で共通する。 エ 甲3発明の上層は、「少なくとも一方の最表面に積層されており」といえるから、本件発明1の不織布層(B)と一致する。 オ 甲3発明の上層と下層とは同様の熱接着性複合繊維で形成され、それぞれの繊度に基づいて上層の下層に対する平均単繊維直径の比率を算出すると概ね1.6となるから、甲3発明の上層と下層をそれぞれ構成する繊維は、「不織布層(A)を構成する繊維の平均単繊維直径Daに対する不織布層(B)を構成する繊維の平均単繊維直径Dbの比(Db/Da)が1.1以上」といえる点で、本件発明1と一致する。 カ そうすると、本件発明1と甲3発明とは、上記2(1)カ(イ)の相違点で相違する。 (2) 相違点についての申立人の主張 ア 甲1を副引例とする場合 申立人は、申立人は、申立書20ページ下から5行~21ページ3行で、甲1を副引例とする場合について、上記3(2)ア(ア)と同様の主張をする。 しかしながら、上記2(1)キ(ウ)のとおり、甲1には相違点に係る本件発明1の構成について記載がなく、また、示唆もないから、申立人の主張は採用できない。 イ 甲4を副引例とする場合 申立人は、26ページ18~24行で甲4を副引例とする場合について、上記3(2)イ(ア)と同様の主張をする。 しかしながら、上記1(4)の甲4には、第一不織布層が接触角が20~90°の繊維からなり、第一不織布層の裏面側に積層形成された第二不織布層が、接触角を10~50°の繊維からなるとの記載しかなく、積層された不織布の表面及び裏面のいずれの面についても、水との接触角を10°以下とすることは何ら記載も示唆もされていない。 したがって、甲4の記載に接したとしても、甲3発明において、相違点に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。 よって、申立人の主張は採用できない。 (3) 申立理由3(甲3を主引用例とする進歩性欠如)についてのまとめ 以上のとおり、相違点に係る本件発明1の構成は、いずれの証拠にも記載も示唆もされていないから、本件発明1及び本件発明1の構成をすべて含む本件発明2~6は、甲3及び甲1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものはなく、また、同様に、本件発明1、2、5、6は、甲3及び甲4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、申立理由3(甲3を主引用例とする進歩性欠如)は、理由がない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2026-700154

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