特許異議申立
2025-700516
酸化グラフェン分散液および酸化グラフェン分散液の製造方法
- 審判番号
- 2025-700516
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-062605
- 登録番号
- 7582030
- 請求日
- 2025年05月13日
- 審決日
- 2026年03月26日
- 公報発行日
- 2026年06月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】東レ株式会社
- 【異議申立人】西園 朋子
- 審判長/審判官
- 審判長 深草 祐一
- 審判官 三崎 仁
- 審判官 塩谷 領大
- 分類
- P1652.113-YAA(C01B) / P1652.121-YAA(C01B) / P1652.537-YAA(C01B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項特許法113条1項2号特許法120条の8第1項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条第1項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7582030号発明「酸化グラフェン分散液および酸化グラフェン分散液の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7582030号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~12〕について訂正することを認める。
特許第7582030号の請求項2に係る特許を維持する。
特許第7582030号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7582030号の請求項1~7に係る特許(以下、それぞれ「本件特許1」などといい、まとめて「本件特許」という。)についての出願は、令和3年 4月 1日(優先権主張 令和2年 4月 8日)に出願され、令和6年11月 5日にその特許権の設定登録がされ、同年同月13日に特許掲載公報が発行された。
その後、本件特許1、2に対して、令和7年 5月13日に特許異議申立人西園朋子(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、令和7年 9月 5日付けで取消理由が通知され、同年10月29日に特許権者により意見書及び訂正請求書の提出がされ、同年12月15日に申立人により意見書の提出がされた。
第2 訂正の認否についての判断
1 訂正の内容
令和7年10月29日提出の訂正請求書における訂正の請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という)は、特許法第120条の5第4項の規定に従い、一群の請求項を構成する訂正前の請求項1~7について訂正することを求めるものであり、その内容(訂正事項)は、次のとおりである(訂正箇所に下線を付した。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1を削除する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2に「前記酸化グラフェンのX線光電子分光法による酸素/炭素の元素比(O/C比)が0.60以上0.80以下である」と記載されているのを、「酸化グラフェンが水に分散してなる酸化グラフェン水分散液であって、前記酸化グラフェンのX線光電子分光法による酸素/炭素の元素比(O/C比)が0.60以上0.80以下であり、酸化グラフェン濃度を0.0013重量%に調整したときの、波長230nmにおける吸光度が0.6以上であり、波長270nmにおける吸光度に対する波長230nmにおける吸光度の比(230nm/270nm)が1.5以上となる酸化グラフェン水分散液。」に訂正する(請求項2の記載を直接的又は間接的に引用する請求項3~7も同様に訂正する。)。
(3)訂正事項3
ア 訂正事項3-1
特許請求の範囲の請求項3に「酸化グラフェン濃度40重量%以上50重量%以下の酸化グラフェンウエットケーキに水を混合したスラリーを、開口径0.1mm以上1.0mm以下の孔状、または幅0.1mm以上1.0mm以下のスリット状の間隙に通す工程を有する、酸化グラフェン濃度0.1重量%以上2.0重量%以下の請求項1または2記載の酸化グラフェン水分散液の製造方法。」とあるうち、請求項2を引用するものについて、「酸化グラフェン濃度40重量%以上50重量%以下の酸化グラフェンウエットケーキに水を混合したスラリーを、開口径0.1mm以上1.0mm以下の孔状、または幅0.1mm以上1.0mm以下のスリット状の間隙に通す工程を有する、酸化グラフェン濃度0.1重量%以上2.0重量%以下の請求項2記載の酸化グラフェン水分散液の製造方法。」に訂正する(請求項3の記載を直接的又は間接的に引用する請求項4~7も同様に訂正する。)。
イ 訂正事項3-2
特許請求の範囲の請求項3に「酸化グラフェン濃度40重量%以上50重量%以下の酸化グラフェンウエットケーキに水を混合したスラリーを、開口径0.1mm以上1.0mm以下の孔状、または幅0.1mm以上1.0mm以下のスリット状の間隙に通す工程を有する、酸化グラフェン濃度0.1重量%以上2.0重量%以下の請求項1または2記載の酸化グラフェン水分散液の製造方法。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、「酸化グラフェンが水に分散してなる酸化グラフェン水分散液の製造方法であって、酸化グラフェン濃度40重量%以上50重量%以下の酸化グラフェンウエットケーキに水を混合したスラリーを、開口径0.1mm以上1.0mm以下の孔状、または幅0.1mm以上1.0mm以下のスリット状の間隙に通す工程を有する、酸化グラフェン濃度を0.0013重量%に調整したときの、波長230nmにおける吸光度が0.6以上であり、波長270nmにおける吸光度に対する波長230nmにおける吸光度の比(230nm/270nm)が1.5以上となる、酸化グラフェン濃度0.1重量%以上2.0重量%以下の酸化グラフェン水分散液の製造方法。」と記載し、新たに請求項8とする。
(4)訂正事項4
ア 訂正事項4-1
特許請求の範囲の請求項4に「濃度40重量%以上50重量%以下の酸化グラフェンウエットケーキに水を混合したスラリーを、開口径0.1mm以上1.0mm以下の孔状、または幅0.1mm以上1.0mm以下のスリット状の間隙に通し、酸化グラフェン濃度0.8重量%以上2.0重量%以下の酸化グラフェン水分散液を得る工程、および、酸化グラフェン濃度0.8重量%以上2.0重量%以下の酸化グラフェン水分散液を、開口径0.1mm以上1.0mm以下の孔状、または幅0.1mm以上1.0mm以下のスリット状の間隙に通す工程を有する、酸化グラフェン濃度0.1重量%以上0.6重量%以下の請求項1または2記載の酸化グラフェン水分散液の製造方法。」とあるうち、請求項2を引用するものについて、「濃度40重量%以上50重量%以下の酸化グラフェンウエットケーキに水を混合したスラリーを、開口径0.1mm以上1.0mm以下の孔状、または幅0.1mm以上1.0mm以下のスリット状の間隙に通し、酸化グラフェン濃度0.8重量%以上2.0重量%以下の酸化グラフェン水分散液を得る工程、および、酸化グラフェン濃度0.8重量%以上2.0重量%以下の酸化グラフェン水分散液を、開口径0.1mm以上1.0mm以下の孔状、または幅0.1mm以上1.0mm以下のスリット状の間隙に通す工程を有する、酸化グラフェン濃度0.1重量%以上0.6重量%以下の請求項2記載の酸化グラフェン水分散液の製造方法。」に訂正する(請求項4の記載を直接的又は間接的に引用する請求項5~7も同様に訂正する。)。
イ 訂正事項4-2
特許請求の範囲の請求項4に「濃度40重量%以上50重量%以下の酸化グラフェンウエットケーキに水を混合したスラリーを、開口径0.1mm以上1.0mm以下の孔状、または幅0.1mm以上1.0mm以下のスリット状の間隙に通し、酸化グラフェン濃度0.8重量%以上2.0重量%以下の酸化グラフェン水分散液を得る工程、および、酸化グラフェン濃度0.8重量%以上2.0重量%以下の酸化グラフェン水分散液を、開口径0.1mm以上1.0mm以下の孔状、または幅0.1mm以上1.0mm以下のスリット状の間隙に通す工程を有する、酸化グラフェン濃度0.1重量%以上0.6重量%以下の請求項1または2記載の酸化グラフェン水分散液の製造方法。」とあるうち、請求項1を引用するものについて、独立形式に改め、「酸化グラフェンが水に分散してなる酸化グラフェン水分散液の製造方法であって、濃度40重量%以上50重量%以下の酸化グラフェンウエットケーキに水を混合したスラリーを、開口径0.1mm以上1.0mm以下の孔状、または幅0.1mm以上1.0mm以下のスリット状の間隙に通し、酸化グラフェン濃度0.8重量%以上2.0重量%以下の酸化グラフェン水分散液を得る工程、および、酸化グラフェン濃度0.8重量%以上2.0重量%以下の酸化グラフェン水分散液を、開口径0.1mm以上1.0mm以下の孔状、または幅0.1mm以上1.0mm以下のスリット状の間隙に通す工程を有する、酸化グラフェン濃度を0.0013重量%に調整したときの、波長230nmにおける吸光度が0.6以上であり、波長270nmにおける吸光度に対する波長230nmにおける吸光度の比(230nm/270nm)が1.5以上となる、酸化グラフェン濃度0.1重量%以上0.6重量%以下の酸化グラフェン水分散液の製造方法。」と記載し、新たに請求項9とする。
(5)訂正事項5
ア 訂正事項5-1
特許請求の範囲の請求項5に「前記開口径0.1mm以上1.0mm以下の孔状の間隙の形状が、四角形である請求項3または4記載の酸化グラフェン水分散液の製造方法。」とあるうち、引用する請求項3のうち訂正前の請求項2を引用するもの、および引用する請求項4のうち訂正前の請求項2を引用するものについて、「前記開口径0.1mm以上1.0mm以下の孔状の間隙の形状が、四角形である請求項3または4記載の酸化グラフェン水分散液の製造方法。」に訂正する(請求項5の記載を直接的又は間接的に引用する請求項6~7も同様に訂正する。)。
イ 訂正事項5-2
特許請求の範囲の請求項5に「前記開口径0.1mm以上1.0mm以下の孔状の間隙の形状が、四角形である請求項3または4記載の酸化グラフェン水分散液の製造方法。」とあるうち、引用する請求項3のうち訂正前の請求項1を引用するもの、および引用する請求項4のうち訂正前の請求項1を引用するものについて、請求項8または9を引用する形式に改め、「前記開口径0.1mm以上1.0mm以下の孔状の間隙の形状が、四角形である請求項8または9記載の酸化グラフェン水分散液の製造方法。」と記載し、新たに請求項10とする。
(6)訂正事項6
ア 訂正事項6-1
特許請求の範囲の請求項6に「前記スラリーを、開口径0.1mm以上1.0mm以下の孔状、または幅0.1mm以上1.0mm以下のスリット状の間隙に通す工程において、スラリーを周速15m/s以上で撹拌する請求項3~5のいずれか記載の酸化グラフェン水分散液の製造方法。」とあるうち、引用する請求項3のうち訂正前の請求項2を引用するもの、引用する請求項4のうち訂正前の請求項2を引用するもの、引用する請求項5のうち訂正前の請求項3を引用し、当該請求項3が訂正前の請求項2を引用するもの、および引用する請求項5のうち訂正前の請求項4を引用し、当該請求項4が訂正前の請求項2を引用するものについて、「前記スラリーを、開口径0.1mm以上1.0mm以下の孔状、または幅0.1mm以上1.0mm以下のスリット状の間隙に通す工程において、スラリーを周速15m/s以上で撹拌する請求項3~5のいずれか記載の酸化グラフェン水分散液の製造方法。」に訂正する(請求項6の記載を直接的又は間接的に引用する請求項7も同様に訂正する。)。
イ 訂正事項6-2
特許請求の範囲の請求項6に「前記スラリーを、開口径0.1mm以上1.0mm以下の孔状、または幅0.1mm以上1.0mm以下のスリット状の間隙に通す工程において、スラリーを周速15m/s以上で撹拌する請求項3~5のいずれか記載の酸化グラフェン水分散液の製造方法。」とあるうち、引用する請求項3のうち訂正前の請求項1を引用するもの、引用する請求項4のうち訂正前の請求項1を引用するもの、引用する請求項5のうち訂正前の請求項3を引用し、当該請求項3が訂正前の請求項1を引用するもの、および引用する請求項5のうち訂正前の請求項4を引用し、当該請求項4が訂正前の請求項1を引用するものについて、請求項8~10のいずれかを引用する形式に改め、「前記スラリーを、開口径0.1mm以上1.0mm以下の孔状、または幅0.1mm以上1.0mm以下のスリット状の間隙に通す工程において、スラリーを周速15m/s以上で撹拌する請求項8~10のいずれか記載の酸化グラフェン水分散液の製造方法。」と記載し、新たに請求項11とする。
(7)訂正事項7
ア 訂正事項7-1
特許請求の範囲の請求項7に「前記酸化グラフェン濃度0.8重量%以上2.0重量%以下の酸化グラフェン水分散液を、開口径0.1mm以上1.0mm以下の孔状、または幅0.1mm以上1.0mm以下のスリット状の間隙に通す工程において、酸化グラフェン濃度0.8重量%以上2.0重量%以下の酸化グラフェン水分散液を周速15m/s以上で撹拌する請求項6記載の酸化グラフェン水分散液の製造方法。」とあるうち、引用する請求項6のうち訂正前の請求項3を引用し、当該請求項3が訂正前の請求項2を引用するもの、引用する請求項6のうち訂正前の請求項4を引用し、当該請求項4が訂正前の請求項2を引用するもの、引用する請求項6のうち訂正前の請求項5を引用し、当該請求項5が訂正前の請求項3を引用し、当該請求項3が訂正前の請求項2を引用するもの、および引用する請求項6のうち訂正前の請求項5を引用し、当該請求項5が訂正前の請求項4を引用し、当該請求項4が訂正前の請求項2を引用するものについて、「前記酸化グラフェン濃度0.8重量%以上2.0重量%以下の酸化グラフェン水分散液を、開口径0.1mm以上1.0mm以下の孔状、または幅0.1mm以上1.0mm以下のスリット状の間隙に通す工程において、酸化グラフェン濃度0.8重量%以上2.0重量%以下の酸化グラフェン水分散液を周速15m/s以上で撹拌する請求項6記載の酸化グラフェン水分散液の製造方法。」に訂正する。
イ 訂正事項7-2
特許請求の範囲の請求項7に「前記酸化グラフェン濃度0.8重量%以上2.0重量%以下の酸化グラフェン水分散液を、開口径0.1mm以上1.0mm以下の孔状、または幅0.1mm以上1.0mm以下のスリット状の間隙に通す工程において、酸化グラフェン濃度0.8重量%以上2.0重量%以下の酸化グラフェン水分散液を周速15m/s以上で撹拌する請求項6記載の酸化グラフェン水分散液の製造方法。」とあるうち、引用する請求項6のうち訂正前の請求項3を引用し、当該請求項3が訂正前の請求項1を引用するもの、引用する請求項6のうち訂正前の請求項4を引用し、当該請求項4が訂正前の請求項1を引用するもの、引用する請求項6のうち訂正前の請求項5を引用し、当該請求項5が訂正前の請求項3を引用し、当該請求項3が訂正前の請求項1を引用するもの、および引用する請求項6のうち訂正前の請求項5を引用し、当該請求項5が訂正前の請求項4を引用し、当該請求項4が訂正前の請求項1を引用するものについて、請求項11を引用する形式に改め、「前記酸化グラフェン濃度0.8重量%以上2.0重量%以下の酸化グラフェン水分散液を、開口径0.1mm以上1.0mm以下の孔状、または幅0.1mm以上1.0mm以下のスリット状の間隙に通す工程において、酸化グラフェン濃度0.8重量%以上2.0重量%以下の酸化グラフェン水分散液を周速15m/s以上で撹拌する請求項11記載の酸化グラフェン水分散液の製造方法。」と記載し、新たに請求項12とする。
2 訂正要件(訂正の目的の適否、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の追加の有無について)の判断
(1)訂正事項1について
ア 訂正の目的について
訂正事項1は、請求項1を削除するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
上記アのとおり、訂正事項1は、請求項1を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 新規事項の追加の有無について
上記アのとおり、訂正事項1は、請求項1を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的について
訂正事項2は、訂正前の請求項2が請求項1の記載を引用する記載であるところ、訂正事項1で請求項1が削除されて請求項1を引用できなくなったことに伴い、請求項間の引用関係を解消し、請求項1の記載を書き下して独立形式請求項へ改めるものであるから、「明瞭でない記載の釈明」又は「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
上記アのとおり、訂正事項2は、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
ウ 新規事項の追加の有無について
上記アのとおり、訂正事項2は、請求項間の引用関係を解消して独立形式請求項へ改めるものであるから、実質的な内容の変更を伴うものではなく、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
(3)訂正事項3について
ア 訂正事項3-1について
(ア)訂正の目的について
訂正事項3-1は、訂正前の請求項3が請求項1または2の記載を引用する記載であるところ、訂正前の請求項2を引用するものを選択するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(イ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
上記(ア)のとおり、訂正事項3-1は、訂正前の請求項2を引用するものを選択するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(ウ)新規事項の追加の有無について
上記(ア)のとおり、訂正事項3-1は、訂正前の請求項2を引用するものを選択するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
イ 訂正事項3-2について
(ア)訂正の目的について
訂正事項3-2は、訂正前の請求項3が請求項1または2の記載を引用する記載であるところ、訂正前の請求項1を引用するものを選択し、請求項1の記載を書き下して独立形式請求項へ改めるものであるから、「特許請求の範囲の減縮」又は「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
(イ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
上記(ア)のとおり、訂正事項3-2は、訂正前の請求項1を引用するものを選択するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(ウ)新規事項の追加の有無について
上記(ア)のとおり、訂正事項3-2は、訂正前の請求項1を引用するものを選択するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
(4)訂正事項4について
ア 訂正事項4-1について
(ア)訂正の目的について
訂正事項4-1は、訂正前の請求項4が請求項1または2の記載を引用する記載であるところ、訂正前の請求項2を引用するものを選択するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(イ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
上記(ア)のとおり、訂正事項4-1は、訂正前の請求項2を引用するものを選択するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(ウ)新規事項の追加の有無について
上記(ア)のとおり、訂正事項4-1は、訂正前の請求項2を引用するものを選択するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
イ 訂正事項4-2について
(ア)訂正の目的について
訂正事項4-2は、訂正前の請求項4が請求項1または2の記載を引用する記載であるところ、訂正前の請求項1を引用するものを選択し、請求項1の記載を書き下して独立形式請求項へ改めるものであるから、「特許請求の範囲の減縮」又は「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とするものである。
(イ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
上記(ア)のとおり、訂正事項4-2は、訂正前の請求項1を引用するものを選択するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(ウ)新規事項の追加の有無について
上記(ア)のとおり、訂正事項4-2は、訂正前の請求項1を引用するものを選択するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
(5)訂正事項5について
ア 訂正事項5-1について
(ア)訂正の目的について
訂正事項5-1は、訂正前の請求項5が請求項3または4の記載を引用する記載であるところ、引用する請求項3のうち訂正前の請求項2を引用するもの、および引用する請求項4のうち訂正前の請求項2を引用するものを選択するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(イ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
上記(ア)のとおり、訂正事項5-1は、引用する請求項3のうち訂正前の請求項2を引用するもの、および引用する請求項4のうち訂正前の請求項2を引用するものを選択するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(ウ)新規事項の追加の有無について
上記(ア)のとおり、訂正事項5-1は、引用する請求項3のうち訂正前の請求項2を引用するもの、および引用する請求項4のうち訂正前の請求項2を引用するものを選択するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
イ 訂正事項5-2について
(ア)訂正の目的について
訂正事項5-2は、訂正前の請求項5が請求項3または4の記載を引用する記載であるところ、引用する請求項3のうち訂正前の請求項1を引用するもの、および引用する請求項4のうち訂正前の請求項1を引用するものを選択するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(イ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
上記(ア)のとおり、訂正事項5-2は、引用する請求項3のうち訂正前の請求項1を引用するもの、および引用する請求項4のうち訂正前の請求項1を引用するものを選択するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(ウ)新規事項の追加の有無について
上記(ア)のとおり、訂正事項5-2は、引用する請求項3のうち訂正前の請求項1を引用するもの、および引用する請求項4のうち訂正前の請求項1を引用するものを選択するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
(6)訂正事項6について
ア 訂正事項6-1について
(ア)訂正の目的について
訂正事項6-1は、訂正前の請求項6が請求項3~5の記載を引用する記載であるところ、引用する請求項3のうち訂正前の請求項2を引用するもの、引用する請求項4のうち訂正前の請求項2を引用するもの、引用する請求項5のうち訂正前の請求項3を引用し、当該請求項3が訂正前の請求項2を引用するもの、および引用する請求項5のうち訂正前の請求項4を引用し、当該請求項4が訂正前の請求項2を引用するものを選択するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(イ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
上記(ア)のとおり、訂正事項6-1は、引用する請求項3のうち訂正前の請求項2を引用するもの、引用する請求項4のうち訂正前の請求項2を引用するもの、引用する請求項5のうち訂正前の請求項3を引用し、当該請求項3が訂正前の請求項2を引用するもの、および引用する請求項5のうち訂正前の請求項4を引用し、当該請求項4が訂正前の請求項2を引用するものを選択するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(ウ)新規事項の追加の有無について
上記(ア)のとおり、訂正事項6-1は、引用する請求項3のうち訂正前の請求項2を引用するもの、引用する請求項4のうち訂正前の請求項2を引用するもの、引用する請求項5のうち訂正前の請求項3を引用し、当該請求項3が訂正前の請求項2を引用するもの、および引用する請求項5のうち訂正前の請求項4を引用し、当該請求項4が訂正前の請求項2を引用するものを選択するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
イ 訂正事項6-2について
(ア)訂正の目的について
訂正事項6-2は、訂正前の請求項6が請求項3~5の記載を引用する記載であるところ、引用する請求項3のうち訂正前の請求項1を引用するもの、引用する請求項4のうち訂正前の請求項1を引用するもの、引用する請求項5のうち訂正前の請求項3を引用し、当該請求項3が訂正前の請求項1を引用するもの、および引用する請求項5のうち訂正前の請求項4を引用し、当該請求項4が訂正前の請求項1を引用するものを選択するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(イ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
上記(ア)のとおり、訂正事項6-2は、引用する請求項3のうち訂正前の請求項1を引用するもの、引用する請求項4のうち訂正前の請求項1を引用するもの、引用する請求項5のうち訂正前の請求項3を引用し、当該請求項3が訂正前の請求項1を引用するもの、および引用する請求項5のうち訂正前の請求項4を引用し、当該請求項4が訂正前の請求項1を引用するものを選択するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(ウ)新規事項の追加の有無について
上記(ア)のとおり、訂正事項6-2は、引用する請求項3のうち訂正前の請求項1を引用するもの、引用する請求項4のうち訂正前の請求項1を引用するもの、引用する請求項5のうち訂正前の請求項3を引用し、当該請求項3が訂正前の請求項1を引用するもの、および引用する請求項5のうち訂正前の請求項4を引用し、当該請求項4が訂正前の請求項1を引用するものを選択するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
(7)訂正事項7について
ア 訂正事項7-1について
(ア)訂正の目的について
訂正事項7-1は、訂正前の請求項7が請求項6の記載を引用する記載であるところ、引用する請求項6のうち訂正前の請求項3を引用し、当該請求項3が訂正前の請求項2を引用するもの、引用する請求項6のうち訂正前の請求項4を引用し、当該請求項4が訂正前の請求項2を引用するもの、引用する請求項6のうち訂正前の請求項5を引用し、当該請求項5が訂正前の請求項3を引用し、当該請求項3が訂正前の請求項2を引用するもの、および引用する請求項6のうち訂正前の請求項5を引用し、当該請求項5が訂正前の請求項4を引用し、当該請求項4が訂正前の請求項2を引用するものを選択するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(イ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
上記(ア)のとおり、訂正事項7-1は、引用する請求項6のうち訂正前の請求項3を引用し、当該請求項3が訂正前の請求項2を引用するもの、引用する請求項6のうち訂正前の請求項4を引用し、当該請求項4が訂正前の請求項2を引用するもの、引用する請求項6のうち訂正前の請求項5を引用し、当該請求項5が訂正前の請求項3を引用し、当該請求項3が訂正前の請求項2を引用するもの、および引用する請求項6のうち訂正前の請求項5を引用し、当該請求項5が訂正前の請求項4を引用し、当該請求項4が訂正前の請求項2を引用するものを選択するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(ウ)新規事項の追加の有無について
上記(ア)のとおり、訂正事項7-1は、引用する請求項6のうち訂正前の請求項3を引用し、当該請求項3が訂正前の請求項2を引用するもの、引用する請求項6のうち訂正前の請求項4を引用し、当該請求項4が訂正前の請求項2を引用するもの、引用する請求項6のうち訂正前の請求項5を引用し、当該請求項5が訂正前の請求項3を引用し、当該請求項3が訂正前の請求項2を引用するもの、および引用する請求項6のうち訂正前の請求項5を引用し、当該請求項5が訂正前の請求項4を引用し、当該請求項4が訂正前の請求項2を引用するものを選択するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
イ 訂正事項7-2について
(ア)訂正の目的について
訂正事項7-2は、訂正前の請求項7が請求項6の記載を引用する記載であるところ、引用する請求項6のうち訂正前の請求項3を引用し、当該請求項3が訂正前の請求項1を引用するもの、引用する請求項6のうち訂正前の請求項4を引用し、当該請求項4が訂正前の請求項1を引用するもの、引用する請求項6のうち訂正前の請求項5を引用し、当該請求項5が訂正前の請求項3を引用し、当該請求項3が訂正前の請求項1を引用するもの、および引用する請求項6のうち訂正前の請求項5を引用し、当該請求項5が訂正前の請求項4を引用し、当該請求項4が訂正前の請求項1を引用するものを選択するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(イ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否について
上記(ア)のとおり、訂正事項7-2は、引用する請求項6のうち訂正前の請求項3を引用し、当該請求項3が訂正前の請求項1を引用するもの、引用する請求項6のうち訂正前の請求項4を引用し、当該請求項4が訂正前の請求項1を引用するもの、引用する請求項6のうち訂正前の請求項5を引用し、当該請求項5が訂正前の請求項3を引用し、当該請求項3が訂正前の請求項1を引用するもの、および引用する請求項6のうち訂正前の請求項5を引用し、当該請求項5が訂正前の請求項4を引用し、当該請求項4が訂正前の請求項1を引用するものを選択するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(ウ)新規事項の追加の有無について
上記(ア)のとおり、訂正事項7-2は、引用する請求項6のうち訂正前の請求項3を引用し、当該請求項3が訂正前の請求項1を引用するもの、引用する請求項6のうち訂正前の請求項4を引用し、当該請求項4が訂正前の請求項1を引用するもの、引用する請求項6のうち訂正前の請求項5を引用し、当該請求項5が訂正前の請求項3を引用し、当該請求項3が訂正前の請求項1を引用するもの、および引用する請求項6のうち訂正前の請求項5を引用し、当該請求項5が訂正前の請求項4を引用し、当該請求項4が訂正前の請求項1を引用するものを選択するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正である。
3 独立特許要件の適否
(1)訂正事項2は、請求項2を直接的又は間接的に引用する請求項2~7についても同様に訂正するものであり、また訂正事項3~7は、請求項8~12を新たな請求項として訂正するものであるが、そのうちの請求項3~12については特許異議の申立てがされていない請求項であるから、特許出願の際に独立して特許を受けることができることについて検討する。
(2)まず、訂正後の請求項3~7に係る発明について検討する。
下記の第7で述べるように、訂正後の請求項3~7が引用する訂正後の請求項2に係る特許を取り消すべき理由は発見されず、また他に訂正後の請求項3~7に係る特許を取り消すべき理由も発見しないから、訂正後の請求項3~7に係る発明が、独立して特許を受けることができるものであることは明らかである。
(3)次に、訂正後の請求項8~12に係る発明について検討する。
ア 訂正後の請求項8には「酸化グラフェンが水に分散してなる酸化グラフェン水分散液の製造方法であって、酸化グラフェン濃度40重量%以上50重量%以下の酸化グラフェンウエットケーキに水を混合したスラリーを、開口径0.1mm以上1.0mm以下の孔状、または幅0.1mm以上1.0mm以下のスリット状の間隙に通す工程を有する、酸化グラフェン濃度を0.0013重量%に調整したときの、波長230nmにおける吸光度が0.6以上であり、波長270nmにおける吸光度に対する波長230nmにおける吸光度の比(230nm/270nm)が1.5以上となる、酸化グラフェン濃度0.1重量%以上2.0重量%以下の酸化グラフェン水分散液の製造方法。」と特定されている。
一方、後述する第5の1~7によると、甲第1号証~甲第7号証には、少なくとも「酸化グラフェン濃度40重量%以上50重量%以下の酸化グラフェンウエットケーキに水を混合したスラリーを、開口径0.1mm以上1.0mm以下の孔状、または幅0.1mm以上1.0mm以下のスリット状の間隙に通す工程」との構成が記載されていない。
そして、当該構成を採用することも当業者であっても容易に想到し得たものとはいえない。
したがって、甲第1号証~甲第7号証に記載されている発明において、「酸化グラフェン濃度40重量%以上50重量%以下の酸化グラフェンウエットケーキに水を混合したスラリーを、開口径0.1mm以上1.0mm以下の孔状、または幅0.1mm以上1.0mm以下のスリット状の間隙に通す工程」との構成を採用することは、当業者が容易に想到し得ることではない。
よって、訂正後の請求項8は、甲第1号証~甲第7号証に記載されている発明に基づいて当業者であれば容易に想到し得たものではない。
イ 訂正後の請求項9、及び訂正後の請求項8、9を引用する請求項1~12に係る発明も「酸化グラフェン濃度40重量%以上50重量%以下の酸化グラフェンウエットケーキに水を混合したスラリーを、開口径0.1mm以上1.0mm以下の孔状、または幅0.1mm以上1.0mm以下のスリット状の間隙に通す工程」との構成を備えているので、同様に、甲第1号証~甲第7号証に記載されている発明に基づいて当業者であれば容易に想到し得たものではない。
ウ よって、訂正後の請求項8~12に係る特許を取り消すべき理由は発見しないから、訂正後の請求項8~12に係る発明は、独立して特許を受けることができるものである。
4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第3号、第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項~第7項の規定に適合する。
したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~12〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
前記第2のとおり、本件訂正請求は適法にされたものであるから、本件特許の請求項1~12に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」などといい、まとめて「本件発明」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~12に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】(削除)
【請求項2】
酸化グラフェンが水に分散してなる酸化グラフェン水分散液であって、
前記酸化グラフェンのX線光電子分光法による酸素/炭素の元素比(O/C比)が0.60以上0.80以下であり、
酸化グラフェン濃度を0.0013重量%に調整したときの、波長230nmにおける吸光度が0.6以上であり、波長270nmにおける吸光度に対する波長230nmにおける吸光度の比(230nm/270nm)が1.5以上となる酸化グラフェン水分散液。
【請求項3】
酸化グラフェン濃度40重量%以上50重量%以下の酸化グラフェンウエットケーキに水を混合したスラリーを、開口径0.1mm以上1.0mm以下の孔状、または幅0.1mm以上1.0mm以下のスリット状の間隙に通す工程を有する、酸化グラフェン濃度0.1重量%以上2.0重量%以下の請求項2記載の酸化グラフェン水分散液の製造方法。
【請求項4】
濃度40重量%以上50重量%以下の酸化グラフェンウエットケーキに水を混合したスラリーを、開口径0.1mm以上1.0mm以下の孔状、または幅0.1mm以上1.0mm以下のスリット状の間隙に通し、酸化グラフェン濃度0.8重量%以上2.0重量%以下の酸化グラフェン水分散液を得る工程、および、酸化グラフェン濃度0.8重量%以上2.0重量%以下の酸化グラフェン水分散液を、開口径0.1mm以上1.0mm以下の孔状、または幅0.1mm以上1.0mm以下のスリット状の間隙に通す工程を有する、酸化グラフェン濃度0.1重量%以上0.6重量%以下の請求項2記載の酸化グラフェン水分散液の製造方法。
【請求項5】
前記開口径0.1mm以上1.0mm以下の孔状の間隙の形状が、四角形である請求項3または4記載の酸化グラフェン水分散液の製造方法。
【請求項6】
前記スラリーを、開口径0.1mm以上1.0mm以下の孔状、または幅0.1mm以上1.0mm以下のスリット状の間隙に通す工程において、スラリーを周速15m/s以上で撹拌する請求項3~5のいずれか記載の酸化グラフェン水分散液の製造方法。
【請求項7】
前記酸化グラフェン濃度0.8重量%以上2.0重量%以下の酸化グラフェン水分散液を、開口径0.1mm以上1.0mm以下の孔状、または幅0.1mm以上1.0mm以下のスリット状の間隙に通す工程において、酸化グラフェン濃度0.8重量%以上2.0重量%以下の酸化グラフェン水分散液を周速15m/s以上で撹拌する請求項6記載の酸化グラフェン水分散液の製造方法。
【請求項8】
酸化グラフェンが水に分散してなる酸化グラフェン水分散液の製造方法であって、
酸化グラフェン濃度40重量%以上50重量%以下の酸化グラフェンウエットケーキに水を混合したスラリーを、開口径0.1mm以上1.0mm以下の孔状、または幅0.1mm以上1.0mm以下のスリット状の間隙に通す工程を有する、
酸化グラフェン濃度を0.0013重量%に調整したときの、波長230nmにおける吸光度が0.6以上であり、波長270nmにおける吸光度に対する波長230nmにおける吸光度の比(230nm/270nm)が1.5以上となる、酸化グラフェン濃度0.1重量%以上2.0重量%以下の酸化グラフェン水分散液の製造方法。
【請求項9】
酸化グラフェンが水に分散してなる酸化グラフェン水分散液の製造方法であって、
濃度40重量%以上50重量%以下の酸化グラフェンウエットケーキに水を混合したスラリーを、開口径0.1mm以上1.0mm以下の孔状、または幅0.1mm以上1.0mm以下のスリット状の間隙に通し、酸化グラフェン濃度0.8重量%以上2.0重量%以下の酸化グラフェン水分散液を得る工程、および、酸化グラフェン濃度0.8重量%以上2.0重量%以下の酸化グラフェン水分散液を、開口径0.1mm以上1.0mm以下の孔状、または幅0.1mm以上1.0mm以下のスリット状の間隙に通す工程を有する、
酸化グラフェン濃度を0.0013重量%に調整したときの、波長230nmにおける吸光度が0.6以上であり、波長270nmにおける吸光度に対する波長230nmにおける吸光度の比(230nm/270nm)が1.5以上となる、酸化グラフェン濃度0.1重量%以上0.6重量%以下の酸化グラフェン水分散液の製造方法。
【請求項10】
前記開口径0.1mm以上1.0mm以下の孔状の間隙の形状が、四角形である請求項8または9記載の酸化グラフェン水分散液の製造方法。
【請求項11】
前記スラリーを、開口径0.1mm以上1.0mm以下の孔状、または幅0.1mm以上1.0mm以下のスリット状の間隙に通す工程において、スラリーを周速15m/s以上で撹拌する請求項8~10のいずれか記載の酸化グラフェン水分散液の製造方法。
【請求項12】
前記酸化グラフェン濃度0.8重量%以上2.0重量%以下の酸化グラフェン水分散液を、開口径0.1mm以上1.0mm以下の孔状、または幅0.1mm以上1.0mm以下のスリット状の間隙に通す工程において、酸化グラフェン濃度0.8重量%以上2.0重量%以下の酸化グラフェン水分散液を周速15m/s以上で撹拌する請求項11記載の酸化グラフェン水分散液の製造方法。」
第4 特許異議申立理由、取消理由の概要
1 特許異議申立理由の概要
申立人が主張する特許異議申立理由は、概略、以下の(1)、(2)のとおりである。
ここで、申立人が提出した証拠方法は、次のものである。
甲第1号証 Giang T.T. Le et al., Insight into the ultrasonication of graphene oxide with strong changes in its properties and performance for adsorption applications, Chemical Engineering Journal, 2019年5月18日公開, 373,(2019),1212-1222
甲第2号証 Zhihao Zhang et al., Characterization of graphene oxide: Variations in reported approaches, Carbon, 2019年7月31日公開,154,(2019),510-521
甲第3号証 Jinhwan Lee et al., A Mediator-Free Integrated Chemical System for Efficient Solar Energy Conversion Using Thylakoid Membrane-Based Composite Film, Journal of The Electrochemical Society, 2018年9月7日公開, 165,(11),H770-H776
甲第4号証 Sanny Verma et al., Graphene oxide: an efficient and reusable carbocatalyst for aza-Michael addition of amines to activated alkenes, ChemComm, 2011年10月31日公開, 2011, 47, 12673-12675
甲第5号証 Huali Zhang et al., Fabrication of Reduced Graphene Oxide-Ag Nano composites and Analysis on the Interaction with BSA, Hindawi Journal of Nanomaterials, 2019年11月18日公開,Volume2019,Article ID 2707909
甲第6号証 Mohammad Khazaei et al., Response surface modeling of lead(II) removal by graphene oxide-Fe3O4 nanocomposite using central composite design, Journal of Environmental Health Science & Engineering,2016年1月26日公開,(2016)14:2
甲第7号証 国際公開2017/047523号
(1)申立理由1(新規性欠如、進歩性欠如)
ア 設定登録時の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明である、又は甲第1号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ 設定登録時の請求項2に係る発明は、甲第1号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)申立理由2(新規性欠如、進歩性欠如)
ア 設定登録時の請求項1に係る発明は、甲第2号証に記載された発明である、又は甲第2号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ 設定登録時の請求項2に係る発明は、甲第2号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)申立理由3(新規性欠如、進歩性欠如)
ア 設定登録時の請求項1に係る発明は、甲第3号証に記載された発明である、又は甲第3号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ 設定登録時の請求項2に係る発明は、甲第3号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)申立理由4(新規性欠如、進歩性欠如)
ア 設定登録時の請求項1に係る発明は、甲第4号証に記載された発明である、又は甲第4号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ 設定登録時の請求項2に係る発明は、甲第4号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)申立理由5(進歩性欠如)
ア 設定登録時の請求項1に係る発明は、甲第7号証に記載された発明、及び甲第1号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ 設定登録時の請求項2に係る発明は、甲第7号証に記載された発明、及び甲第1号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(6)申立理由6(記載要件違反)
ア 設定登録時の請求項1に係る発明は、サポート要件違反である。
2 取消理由の概要
令和7年 9月 5日付けで通知した取消理由は、要するに、以下の(1)~(4)に示した取消理由である。
(1)取消理由1(新規性欠如、進歩性欠如)
設定登録時の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるから、その特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。また、設定登録時の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(2)取消理由2(新規性欠如、進歩性欠如)
設定登録時の請求項1に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であるから、その特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。また、設定登録時の請求項1に係る発明は、甲第2号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(3)取消理由3(新規性欠如、進歩性欠如)
設定登録時の請求項1に係る発明は、甲第3号証に記載された発明であるから、その特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。また、設定登録時の請求項1に係る発明は、甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
(4)取消理由4(新規性欠如、進歩性欠如)
設定登録時の請求項1に係る発明は、甲第4号証に記載された発明であるから、その特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。また、設定登録時の請求項1に係る発明は、甲第4号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
第5 各証拠について
1 甲第1号証について
(1)甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、「Insight into the ultrasonication of graphene oxide with strong changes in its properties and performance for adsorption applications」(当審訳「吸着用途における性能および特性に大きな変化をもたらす酸化グラフェンの超音波処理に関する考察」)に関して、次の事項が記載されている。なお、甲第1号証の記載は英語であるが、ここでは当審訳で示す。(また、下線は当審において付与した。以下同様である。)
ア「2.材料と方法
2.1 酸化グラフェンの合成と超音波処理
酸化グラフェン(GO)は、典型的なHummers法によってグラファイトフレークから合成された[25]。簡単に説明すると、3.0gのグラファイト粉末(Acros Organics,合成由来、純度99%以上)と1.5gのNaNO3(LOBA、分析試薬、99%)を138mLの濃H2SO4(カルロ・エルバ、分析用ISO、98%)に加え、氷浴(20°C未満)中で1時間撹拌してグラファイトを分離層に剥離した。18gのKMnO4(カルロ・エルバ、ACS(分析用)、99%)を連続撹拌下でゆっくりと加えた。混合物を灰色の厚いスラリーになるまで35°Cで30分間保持した。その後、発熱を抑えるために脱イオン水(DI)(276mL)を徐々に加えた。混合物を80°Cで30分間ホットプレート上に置いた。420mLのDIと混合した50mLのH2O2溶液(シグマ-アルドリッチ30%w/w)をゆっくりと添加して残留KMnO4を減少させた。得られた黄色懸濁液を濃縮HC1(カルロ・エルバ、分析試薬、37%)でリンスして残留SO42-を除去した後、4000rpmのDI遠心分離で数回再洗浄した。GO懸濁液の最終pHは約4であった。GO構造中の捕捉水量を減少させるために、合成したGOを真空オーブンを用いて40°Cで乾燥した。
合成工程を経て調製したままのGOを脱イオン水に溶解し、4mg/mLに希釈した。得られたGO懸濁液を、超音波浴(UB)とプローブ超音波処理装置(PS)の2つの異なる技術を用いて、様々な超音波処理時間に供した。超音波浴(VGT-2013QTD、GT Sonic Co.、40kHz、360W、および9Lの浴中の水媒体)では、GO懸濁液を水媒体に浸した50mLのガラスビーカーに入れた。プローブ超音波処理装置(VCX130、VibraCell、Sonics and Materials Inc.製、20kHz、130W)では、プローブを50mLのGO懸濁液に直接浸漬した。処理時間が異なる2組のサンプルを用意し、それぞれUB0~UB120(超音波浴により0~120分処理した)およびPS0~PS120(プローブ超音波処理装置により0~120分処理した)とした。全ての超音波処理は、GOの熱還元につながる可能性のある過熱を避けるため、氷水浴中で20℃以下に保って実施した。」(1213頁右欄29行~1214頁左欄5行)
イ「3.4 X線光電子分光(XPS)スペクトル
・・・
各試料の成分比率は、フィッティングされたピークの面積から算出されており、図11に示されている。元のGOでは、C-C/C=CおよびC-O種(ヒドロキシル、エーテル、カルボキシル、エポキシドなど)が約45%を占め、C=O種(カルボニル、カルボキシル、ケトンなど)が約10%を占めている。C-O種の量は超音波処理後にわずかに減少し、PS120試料で約31%と最も低い値を示している。一方、C=O種には有意な変化は見られない。超音波処理による酸素含有基の喪失は、Namらの研究[9]でも観察されており、超音波化学処理の前後でのGO懸濁液のゼータ電位の変化から確認されている。酸素基が減少すると、溶液中のGOゼータ電位はより負の値が小さくなる。
さらにC/O比は原料GOの2.1からPS120で2.4に上昇しており(表2参照)、超音波処理によって一部の酸素官能基が除去されたことを示している。C/O比の増加はGoncalcvesらの研究[7]でも確認されており、超音波処理によってGOシート上のC-O-CやC-OHが減少またはC-HやC=O種に変換されることで、C/O比が上昇すると報告されている。」(1218頁左欄下から10行~右欄16行)
ウ「3.5. UV-Vis吸収スペクトル
超音波処理前後のGOの吸光度をUV-Vis分光法で測定した。GOは各サンプル50mg/Lの濃度で調製した。
230nmに明瞭な吸収帯が、300nmに広いショルダーが現れた。これらはそれぞれ、C=C結合のπ-π*遷移とC=O結合(カルボニル基またはカルボキシル基)のn-π*遷移に帰属できる[53]。超音波処理した全てのサンプルにおいてピークシフトは観察されない。しかし、GOシートの断片化と剥離により、UB-GOとPS-GOの両方の強度が著しく増加し、懸濁液中の粒子数が増加し、励起源からの光を吸収する。さらに、図12の挿入図に示されている正規化スペクトルは、超音波処理したすべてのGOサンプルにおいてC=O結合分率がわずかに減少していることを示している。これはXPSの結果と一致している。しかし、PS-GOではUB-GOよりも速く、より強い減少が見られ、PS5サンプルではプローブ超音波処理の5分後にC=Oピーク分率が直ちに減少するのに対し、UB-GOシリーズでは300nm種の減少が徐々に系統的に見られる。」(1218頁右欄17行~1219頁右欄7行)
エ「
[図:0001436185000001.jpg]
」
(2)甲第1号証に記載された発明
甲第1号証には、上記(1)ア、ウ、エによれば、GOを脱イオン水に溶解し、GO懸濁液を得ること、プローブ超音波処理装置では、プローブを50mlのGO懸濁液に直接浸漬し120分処理すること、GOの吸光度を求めるためにGOを50mg/Lの濃度で調整したサンプルを用いることが記載されていることから、甲第1号証には、GOの水懸濁液をプローブ超音波処理装置において120分処理した後、GOの水懸濁液を50mg/Lの吸光度を求めることが記載されているといえる。
また、甲第1号証には、上記(1)エによれば、プローブ超音波処理装置において120分処理したサンプルは、GOの水懸濁液を50mg/Lとしたときに、230nmにおける吸光度が2.74、270nmにおける吸光度が1.71を示すことが見て取れる。
また、甲第1号証には、上記(1)イによれば、X線光電子分光(XPS)スペクトルを用いて、プローブ超音波処理装置において120分処理したPS120のC/O比は2.4であることが記載されている。
これらの記載を「GOの水懸濁液」に着目して整理すると、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
〔甲1発明〕
「GOの水懸濁液を50mg/Lとしたときに、230nmにおける吸光度が2.74、270nmにおける吸光度が1.71を示し、X線光電子分光(XPS)スペクトルにより測定したC/O比が2.4であるGOの水懸濁液。」
2 甲第2号証について
(1)甲第2号証の記載事項
甲第2号証には、「Characterization of graphene oxide: Variations in reported approaches」(当審訳「酸化グラフェンの特性評価:報告されているアプローチのバリエーション」)に関して、次の事項が記載されている。なお、甲第2号証の記載は英語であるが、ここでは当審訳で示す。
ア「1.2. GOの構造
・・・
GOの重要な特性は、親水性であり、層間の水分子を容易にインターカレートすることである[24]。GOシート間の層間距離は、相対湿度の変化によって約6Åから12Åまで可逆的に変化する[24]。特に、黒鉛酸化物は、水/黒鉛酸化物混合物[25、26]を超音波処理することにより、完全に剥離してGOシートの水性コロイド懸濁液を生成することができる。GOは、DMF、NMP、THF、およびエチレングリコールに分散させることもでき、これらのすべての溶媒中で、個別の単層シートへの黒鉛酸化物材料の完全な剥離を達成することができる[27]。GOシートのゼータ電位測定[28]は、水に分散させると負電荷を持つことを示しており、負電荷を持つGOシート間の静電反発が安定した懸濁液の生成を助けることを示している。」(511頁右欄20行~47行)
イ「2.4.X線光電子分光法(XPS)
・・・XPS分析は、GOの原子組成およびC/O比[50]の決定にも用いられており、C1sピーク面積を、O1sピーク面積に光イオン化断面積[56]の比を乗じた値で割ることによって求める。
2.5元素分析(EA)
EA(元素分析)は、GOの燃焼によって行われ、GOの元素組成を決定するための最も正確な手法であると考えられている[57,58]。ScholzとBoehmは、GOの酸化度を評価するための便利な指標としてC/O比を導入した[16,59]。多くの場合、この比は約1.8から2.5の範囲にあり[16]、一部の研究ではC/O比が0.96[60]から3.81[46]の範囲で報告されている。」(513頁左欄30行~右欄4行)
ウ「2.10. 紫外可視分光法(UV-Vis)
UV-VisはGOシートの光学吸収特性を測定するために用いられている[77]。グラフェンナノシートの265nmにおけるUV-Vis吸収ピーク(図3E)は、黒鉛構造を示しており[84]、一般に黒鉛構造のπプラズモン励起とみなされている[85]。GOのUV-Vis吸収スペクトルは2つの特徴的なピークを持つことが知られており(図3F)[86]、これは識別手段として用いられている。すなわち、芳香族C=C結合のπ→π*遷移に対応する231nmの最大吸収と、C=O結合のn→π*遷移に起因するとされる約300nmの肩ピークである[27,87]。」(515頁左欄20行~30行)
エ「
[図:0001436185000002.jpg]
」
「図3・・・(F)異なる濃度のGO希釈液のUV-Visスペクトル。文献[86]より許可を得て転載。」(514頁Fig.3)
(2)甲第2号証に記載された発明
甲第2号証には、上記(1)ウ、エによれば、GOシートの光学吸収特性をUV-Visスペクトルを用いて測定し、0.03mg/Lの吸光度を測定している。
また、甲第2号証には、上記(1)エによれば、0.03mg/LのGO希釈液は、230nmにおける吸光度が1.89、270nmにおける吸光度が1.21を示すことが見て取れる。
これらの記載を「GO希釈液」に着目して整理すると、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
〔甲2発明〕
「0.03mg/LのGO希釈液であって、230nmにおける吸光度が1.89、270nmにおける吸光度が1.21を示すGO希釈液。」
3 甲第3号証について
(1)甲第3号証の記載事項
甲第3号証には、「A Mediator-Free Integrated Chemical System for Efficient Solar Energy Conversion Using Thylakoid Membrane-Based Composite Film」(当審訳「チラコイド膜系複合膜を用いた効率的な太陽エネルギー変換のためのメディエーターフリー統合化学システム」)に関して、次の事項が記載されている。なお、甲第3号証の記載は英語であるが、ここでは当審訳で示す。
ア「
[図:0001436185000003.jpg]
」
「図2(a)溶液相中の酸化グラフェン(黒)と電気化学的に還元された酸化グラフェン(赤)のUV-visスペクトル。」(H772頁Figure.2(a))
イ「RGO形成を確認するために様々な分光法を用いた。」(H772頁左欄11行~12行)
(2)甲第3号証に記載された発明
甲第3号証には、上記(1)アによれば、12μg/mlである溶液相の酸化グラフェン、及び溶液相中の酸化グラフェンのUV-visスペクトルが記載されている。
また、甲第3号証には、上記(1)によれば、12μg/mlである溶液相の酸化グラフェンは、230nmにおける吸光度が0.60、270nmにおける吸光度が0.40を示すことが見て取れる。
これらの記載を「溶液相」に着目して整理すると、次の発明(以下、「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。
〔甲3発明〕
「12μg/mlである酸化グラフェンの溶液相であって、溶液相中の酸化グラフェンの230nmにおける吸光度が0.60、270nmにおける吸光度が0.40を示す溶液相。」
4 甲第4号証について
(1)甲第4号証の記載事項
甲第4号証には、「Graphene oxide: an efficient and reusable carbocatalyst for aza-Michael addition of amines to activated alkenes」(当審訳「酸化グラフェン:活性アルケンへのアミンのアザーマイケル付加反応に用いる高効率かつ再使用可能なカーボン触媒」)に関して、次の事項が記載されている。なお、甲第4号証の記載は英語であるが、ここでは当審訳で示す。
ア「ここでは、黒鉛粉末を強酸化条件下で酸化することにより酸化グラフェンを調製した。酸化グラフェンナノシート上の各種化学官能基の存在および水中での分散性を、XRD、FTIR、UV-Vis、ゼータ電位測定によって検討した。図1aは、黒鉛粉末および酸化グラフェン粉末のXRDパターンを示している。黒鉛粉末の26.5°の位置に現れる鋭いピーク(002)は、層間距離が0.345nmであること、および黒鉛層の結晶構造が非常に規則的であることを示している。酸化グラフェンは、11.6°に中心をもつやや広がった(002)ピークを示し、これは層間距離が0.76nmであることに対応している。黒鉛粉末の酸化によって、さまざまな官能基が導入される。これらの官能基は、黒鉛層の基底面および端部の両方に結合しており、さらに層間に捕捉された水分子の存在と相まって、酸化グラフェンにおける層間距離の拡大を引き起こしている。
さらに、化学官能基の性質をFTIRによって特性評価した(全スペクトルは補足情報に示した)。
強くかつ広がったピークが3404cm-1において現れた。このピークはO-H結合の伸縮振動に起因し、酸化グラフェン中にヒドロキシル基が豊富に存在することを示している。1726cm-1における強いバンド(νC=O)は、カルボン酸およびカルボニル基に対応する。さらに、1227cm-1および1058cm-1のバンドは、それぞれC-OHおよびC-O(エポキシ)基の存在に起因するとされる。酸化グラフェンのUV-Visスペクトル(図1b)は、230nmにおいて強い吸収ピークを示し、これは黒鉛状のC-C結合におけるπ→π*遷移に起因する。また、約300nmにショルダーを示し、これはC=O結合におけるn→π*遷移に対応する。したがって、XRDおよびFTIRと同様に、UV-Visスペクトルも、酸化グラフェン上にヒドロキシル基、エポキシ基、カルボキシレート基およびカルボニル基といった多くの酸素官能基が存在することを示しており、その様子を図2に示す。」(12673頁右欄12行~12674頁左欄14行)
イ「
[図:0001436185000004.jpg]
」
「図1・・・(b)水を分散溶媒として用いた酸化グラフェン(0.04mg・m-1)のuv-vis吸収スペクトル。挿入図は酸化グラフェンの水分散液の写真である。」(12673頁Fig.1(b))
(2)甲第4号証に記載された発明
甲第4号証には、上記(1)イによれば、水を分散溶媒として用いた酸化グラフェンの水分散液(0.04mg・m-1)のUV-Vis吸収スペクトルが記載されており、230nmにおける吸光度が2.10、270nmにおける吸光度が1.40を示すことが見て取れる。
これらの記載を「酸化グラフェンの水分散液」に着目して整理すると、次の発明(以下、「甲4発明」という。)が記載されていると認められる。
〔甲4発明〕
「0.04mg・m-1である酸化グラフェンの水分散液であって、230nmにおける吸光度が2.10、270nmにおける吸光度が1.40を示す酸化グラフェンの水分散液。」
5 甲第5号証について
甲第5号証には、「Fabrication of Reduced Graphene Oxide-Ag Nano composites and Analysis on the Interaction with BSA」(当審訳「還元型グラフェンン化物-Agナノコンポジットの作製およびBSAとの相互作用の解析」)に関して、次の事項が記載されている。なお、甲第5号証の記載は英語であるが、ここでは当審訳で示す。
(1)「C-C芳香族の電子π-π*遷移およびC=O結合のn-π*遷移に起因して、グラフェン酸化物の紫吸収ピークは約230nmにあり、ショルダーピークは約300nmにあることが知られている[29](図1、赤線)。」(第2頁右欄第24行~第29行)
(2)「
[図:0001436185000005.jpg]
」
「図1:GO(赤線)とrGO―AgNPs(黒線)のUV-visスペクトル。」
6 甲第6号証について
甲第6号証には、「Response surface modeling of lead(II) removal by graphene oxide-Fe3O4 nanocomposite using central composite design」(当審訳「中心複合設計を用いた酸化グラフェンーFe3O4ナノ複合体による鉛(II)除去の応答曲面モデリング」)に関して、次の事項が記載されている。なお、甲第6号証の記載は英語であるが、ここでは当審訳で示す。
(1)「図2に示すように、GO水性分散液のUV-可視スペクトル(オレンジ色の線)は、芳香族C-C結合によるπ→π*遷移に関連する231nmのプラズモンピークを示す。また、C=O結合のn→π*遷移に当たる300nm付近のこぶを検出できる[31,32]。GO分散液に鉛(II)水性イオンを徐々に添加すると、300nm付近でこぶ状のパターンが成長したが、これはGO構造中のカルボキシル基に関連する鉛(II)とC=O結合との親和性に起因すると考えられる[33]。」(第4頁右欄第11行~第21行)
(2)「
[図:0001436185000006.jpg]
」
「図2 GO分散液のUV―可視スペクトル(水中)鉛(II)添加前(オレンジ線)と添加後(鉛(II)初期濃度=1μM、pH=6.8、T=298K)」
7 甲第7号証について
(1)甲第7号証の記載事項
甲第7号証には、「グラフェン分散液およびその製造方法、グラフェンー活物質複合体粒子の製造方法ならびに電極用ペーストの製造方法」(発明の名称)に関して、次の事項が記載されている。
ア「[0013] また、本発明のグラフェン分散液の製造方法は、 水を含む分散媒に分散した酸化グラフェンを還元する還元工程; 還元工程の前後または還元工程の最中の中間体分散液に含まれる酸化グラフェンまたはグラフェンを微細化する微細化工程; 還元工程および微細化工程を経た中間体分散液と有機溶媒とを混合する有機溶媒混合工程; 有機溶媒を含む中間体分散液をせん断速度毎秒5000~毎秒50000で撹拌処理する強撹拌工程; 有機溶媒添加と吸引濾過を組み合わせる手法、または蒸留により中間体分散液から水分の少なくとも一部を除去する水分除去工程; を有するグラフェン分散液の製造方法である。
・・・
[0032] 本発明のグラフェン分散液に含まれるグラフェンは、X線光電子分光法により測定される炭素に対する酸素の元素の比(O/C比)が、0.08以上0.30以下であることが好ましい。グラフェン表面の酸素原子は、グラフェン自体に結合した酸性基や、グラフェン表面に付着した表面処理剤中が有する酸性基に含まれる酸素原子である。このような酸素原子はグラフェンの分散状態を向上させる効果を持ち、グラフェン表面の酸素原子が少なすぎると分散性が悪くなる。グラフェンのO/C比は、より好ましくは0.10以上である。一方、グラフェン表面の酸素原子が多すぎると導電性が低下する。グラフェンのO/C比は、より好ましくは0.20以下であり、さらに好ましくは0.15以下である。
・・・
[0035] グラフェンのO/C比は、原料となる酸化グラフェンの酸化度を変えたり、表面処理剤の量を変えたりすることによりコントロールすることが可能である。例えば、酸化グラフェンの酸化度が高いほど還元後に残る酸素の量も多くなり、酸化度が低いと還元後の酸素原子量が少なくなる。また、酸性基のある表面処理剤の付着量を増やすことで酸素原子量を多くすることができる。
・・・
[0055] 黒鉛(石墨粉)と硝酸ナトリウムを濃硫酸中に入れて攪拌しながら、過マンガン酸カリウムを温度が上がらないように徐々に添加し、25~50℃下、0.2~5時間攪拌反応する。その後イオン交換水を加えて希釈して懸濁液とし、80~100℃で5~50分間反応する。最後に過酸化水素と脱イオン水を加え1~30分間反応して、酸化グラフェン分散液を得る。得られた酸化グラフェン分散液を濾過、洗浄し、酸化グラフェンゲルを得る。この酸化グラフェンゲルを希釈して、表面処理剤との混合処理や還元処理をしても良い。
・・・
[0070] 〔微細化工程〕
還元工程の前後、または最中に、還元工程の前後または還元工程の最中の中間体分散液に含まれる酸化グラフェンまたは還元後のグラフェンを微細化する微細化工程を行う。本発明のグラフェン分散液を得るためには、酸化グラフェンを微細化した状態で還元工程を行うことが好ましいことから、微細化工程は還元工程の前または還元工程の最中に行うことが好ましい。
[0071] 微細化工程を加えることにより、酸化グラフェンまたはグラフェンの面方向の大きさSを適切な大きさにすることができる。微細化する手法としては特に限定はないが、複数のビーズやボールなどの粉砕メディアを分散液と混合し、粉砕メディア同士を衝突させることにより、酸化グラフェンまたはグラフェンを破砕し分散させる手法の場合、酸化グラフェンまたはグラフェン同士の凝集を誘発するため、粉砕メディアを用いずに分散液に強いせん断力を与えるメディアレス分散法が好ましく用いられる。例として、圧力を印加した中間体分散液を単体のセラミックボールに衝突させる手法、あるいは圧力を印加した中間体分散液同士を衝突させて分散を行う液―液せん断型の湿式ジェットミルを用いる手法を挙げることができる。また、中間体分散液に超音波を印加する手法も、メディアレス分散法であり、好ましい手法である。」
イ「[0100] (合成例1)
酸化グラフェンの作製方法:1500メッシュの天然黒鉛粉末(上海一帆石墨有限会社製)を原料として、氷浴中の10gの天然黒鉛粉末に、220mlの98%濃硫酸、5gの硝酸ナトリウム、30gの過マンガン酸カリウムを入れ、1時間機械攪拌し、混合液の温度を20℃以下で保持した。この混合液を氷浴から取り出し、35℃水浴中で4時間攪拌反応し、その後イオン交換水500mlを入れて得られた懸濁液を90℃で更に15分反応を行った。最後に600mlのイオン交換水と50mlの過酸化水素を入れ、5分間の反応を行い、酸化グラフェン分散液を得た。熱いうちにこれを濾過し、希塩酸溶液で金属イオンを洗浄し、イオン交換水で酸を洗浄し、pHが7になるまで洗浄を繰り返して酸化グラフェンゲルを調製した。調製した酸化グラフェンゲルの、X線光電子分光法により測定される酸素原子の炭素原子に対する元素比は0.53であった。
[0101] [実施例1]
合成例1で調製した酸化グラフェンゲルを、イオン交換水で濃度30mg/mlに希釈し、超音波洗浄機で30分処理し、均一な酸化グラフェン分散液を得た。」
(2)甲第7号証に記載された発明
甲第7号証には、上記(1)イによれば、X線光電子分光法により測定される酸素原子の炭素原子に対する元素比は0.53である酸化グラフェンゲルをイオン交換水で希釈して、超音波洗浄機で30分処理し、均一な酸化グラフェン分散液を得ることが記載されているといえる。
これらの記載を「酸化グラフェン分散液」に着目して整理すると、次の発明(以下、「甲7発明」という。)が記載されていると認められる。
〔甲7発明〕
「イオン交換水で希釈され、超音波洗浄機で30分処理された酸化グラフェン分散液であって、X線光電子分光法により測定される酸素原子の炭素原子に対する元素比は0.53である酸化グラフェン分散液。」
第6 当審の判断
取消理由1~4は、設定登録時の請求項1に対するものであるが、本件訂正により請求項1は削除され、対象となる請求項が存在しないものとなった。
以下、本件訂正により削除された設定登録時の請求項1に対する申立理由1のア、2のア、3のア、4のア、5のア、及び6以外に対する判断について詳述する。
1 申立理由1のイ(甲第1号証を主たる証拠とする進歩性欠如)について
(1)本件発明2と甲1発明との対比
本件発明2と甲1発明とを対比する。
甲1発明の「GOの水懸濁液」は、本件発明2の「酸化グラフェンが水に分散してなる酸化グラフェン水分散液」に相当する。
そうすると、本件発明2と甲1発明は、「酸化グラフェンが水に分散してなる酸化グラフェン水分散液」である点で一致し、以下の点で相違する。
・本件発明2は、「酸化グラフェン濃度を0.0013重量%に調整したときの、波長230nmにおける吸光度が0.6以上であり、波長270nmにおける吸光度に対する波長230nmにおける吸光度の比(230nm/270nm)が1.5以上となる」のに対し、甲1発明は、「GOの水懸濁液を50mg/Lとしたときに、230nmにおける吸光度が2.74、270nmにおける吸光度が1.71を示す」点(以下、「相違点1」という。)。
・本件発明2は、「前記酸化グラフェンのX線光電子分光法による酸素/炭素の元素比(O/C比)が0.60以上0.80以下」であるのに対し、甲1発明は、X線光電子分光スペクトルにより測定した「C/O比が2.4」である点(以下、「相違点2」という。)。
(2)相違点の検討
ア 事案に鑑み、まず相違点2について検討する。
上記第5の1(1)のイによると、甲第1号証には、X線光電子分光(XPS)スペクトルにより測定した原料GOのC/O比は2.1、原料GOをプローブ超音波処理装置において120分処理したPS120のC/O比は2.4に上昇し、超音波処理により、C/O比が上昇することが記載されている。つまり、原料GOのO/C比は約0.48であり、超音波処理によりPS120のO/C比は約0.42に減少しているといえる。
そうすると、本件発明2は、「前記酸化グラフェンのX線光電子分光法による酸素/炭素の元素比(O/C比)が0.60以上0.80以下」であるのに対し、甲1発明は、O/C比が約0.42であるので、相違点2は実質的なものである。
イ ここで、本件特許明細書の【0015】には、「本発明の酸化グラフェン水分散液に含まれる酸化グラフェンは、X線光電子分光法により測定される炭素に対する酸素の元素の比(O/C比)が、0.60以上0.80以下であることが好ましい。酸化グラフェン表面の酸素原子は、酸化グラフェンが有する酸性基に含まれる酸素原子である。このような酸素原子は酸化グラフェンの分散性をより向上させる効果を有するため、酸化グラフェンのO/C比が0.60以上であると、酸化グラフェンの分散性をより向上させ、塗布性をより向上させることができる。酸化グラフェンのO/C比は、より好ましくは0.65以上である。一方、官能基による立体障害を抑制し、分散性をより向上させる観点から、酸化グラフェンのO/C比は、0.80以下が好ましく、より好ましくは0.75以下である。」と記載されている。
つまり、本件特許明細書には、酸化グラフェン水分散液に含まれる酸化グラフェンの分散性の観点から、O/C比を0.60以上、官能基による立体障害を抑制し、分散性をより向上させる観点から、O/C比を0.80以下とすることが記載されているといえる。
ウ 一方、甲第1号証には、X線光電子分光(XPS)スペクトルによりC/O比を測定しているものの、C/O比と酸化グラフェン水分散液に含まれる酸化グラフェンの分散性との関係については、記載されていない。
また、甲第2号証~甲第6号証には、酸化グラフェン水分散液に含まれる酸化グラフェンのX線光電子分光法によるO/C比の値について、記載はない。
エ 甲第7号証には、上記第5の7(1)イによると、[0100]に、「(合成例1)・・・調製した酸化グラフェンゲルの、X線光電子分光法により測定される酸素原子の炭素原子に対する元素比は0.53であった。」と記載され、[0101]に「[実施例1]合成例1で調製した酸化グラフェンゲルを、イオン交換水で濃度30mg/mlに希釈し、超音波洗浄機で30分処理し、均一な酸化グラフェン分散液を得た。」と記載されている。
つまり、甲第7号証には、具体的な実施例として、酸化グラフェンゲルのX線光電子分光法により測定される酸素原子の炭素原子に対する元素比、すなわち酸化グラフェンゲルのO/C比が0.53である酸化グラフェン分散液が記載されているといえる。
しかしながら、酸化グラフェンのO/C比が0.60以上0.80以下である具体例は記載されていない。
オ また、甲第7号証には、上記第5の7(1)(ア)によると、[0032]に、「本発明のグラフェン分散液に含まれるグラフェンは、X線光電子分光法により測定される炭素に対する酸素の元素の比(O/C比)が、0.08以上0.30以下であることが好ましい。グラフェン表面の酸素原子は、グラフェン自体に結合した酸性基や、グラフェン表面に付着した表面処理剤中が有する酸性基に含まれる酸素原子である。このような酸素原子はグラフェンの分散状態を向上させる効果を持ち、グラフェン表面の酸素原子が少なすぎると分散性が悪くなる。グラフェンのO/C比は、より好ましくは0.10以上である。一方、グラフェン表面の酸素原子が多すぎると導電性が低下する。グラフェンのO/C比は、より好ましくは0.20以下であり、さらに好ましくは0.15以下である。」、[0035]に「グラフェンのO/C比は、原料となる酸化グラフェンの酸化度を変えたり、表面処理剤の量を変えたりすることによりコントロールすることが可能である。例えば、酸化グラフェンの酸化度が高いほど還元後に残る酸素の量も多くなり、酸化度が低いと還元後の酸素原子量が少なくなる。また、酸性基のある表面処理剤の付着量を増やすことで酸素原子量を多くすることができる。」と記載されている。
つまり、甲第7号証には、グラフェン分散液において、グラフェンのO/C比を分散性の観点から0.10以上、導電性の観点から0.20以下であることが好ましいことが記載されている。また、原料となる酸化グラフェンの酸化度を調整することで、グラフェンのO/C比を調製することができることが記載されている。
しかしながら、甲第7号証には、グラフェンの分散性の観点からO/C比を調製することは記載されているものの、グラフェンの原料となる酸化グラフェンの分散性に関する記載はなく、酸化グラフェンの分散性のためにO/C比の数値範囲を調整することについては記載されていない。
カ そうすると、甲第1号証~甲第7号証の記載を踏まえても、甲1発明において、酸化グラフェンのO/C比を調整し、「前記酸化グラフェンのX線光電子分光法による酸素/炭素の元素比(O/C比)が0.60以上0.80以下」とする動機付けはないといえる。
キ したがって、甲1発明において、相違点2に係る本件発明2の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得ることではない。
(3)申立人の主張について
ア 申立人は、特許異議申立書の第21頁下から4行~第22頁2行において、以下の主張をしている。
「(イ)本件特許発明2と甲1発明を対比する。
当業者であれば、PS120処理した酸化グラフェンやUB120処理した酸化グラフェンにて、酸化反応を進めることなどにより、本件特許発明2の要件Eを満たすように適宜調整し得る。
したがって、本件特許発明2は、甲1発明にもとづいて当業者が容易に想到し得たものであり、進歩性がない。」
イ 申立人の上記主張について検討する。
申立人は、甲1発明において、さらに酸化反応を進めることで「前記酸化グラフェンのX線光電子分光法による酸素/炭素の元素比(O/C比)が0.60以上0.80以下」を満たすことができると主張しているといえる。
しかしながら、上記(2)ア~カで検討したとおり、甲第1号証~甲第7号証の記載を踏まえても、酸化グラフェンのO/C比を調整し、「前記酸化グラフェンのX線光電子分光法による酸素/炭素の元素比(O/C比)が0.60以上0.80以下」とする動機付けはないといえ、申立人が主張する「さらに酸化反応を進める」ことの動機付けもないといえる。
したがって、申立人の主張は採用できない。
(4)小括
したがって、本件発明2は、相違点1について検討するまでもなく、甲第1号証に記載されている発明に基づいて当業者であれば容易に想到し得たものではない。
2 申立理由2のイ(甲第2号証を主たる証拠とする進歩性欠如)について
(1)本件発明2と甲2発明との対比
本件発明2と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「GO希釈液」は、本件発明2の「酸化グラフェンが」「分散してなる酸化グラフェン」「分散液」に相当する。
そうすると、本件発明2と甲2発明は、「酸化グラフェンが水に分散してなる酸化グラフェン水分散液」である点で一致し、以下の点で相違する。
・本件発明2は、酸化グラフェンを「水」に分散してなる酸化グラフェン水分散液であるのに対し、甲2発明は、それを特定していない点(以下、「相違点3」という。)。
・本件発明2は、「酸化グラフェン濃度を0.0013重量%に調整したときの、波長230nmにおける吸光度が0.6以上であり、波長270nmにおける吸光度に対する波長230nmにおける吸光度の比(230nm/270nm)が1.5以上となる」のに対し、甲2発明は、「0.03mg/LのGO希釈液であって、230nmにおける吸光度が1.89、270nmにおける吸光度が1.21を示す」点(以下、「相違点4」という。)。
・本件発明2は、「前記酸化グラフェンのX線光電子分光法による酸素/炭素の元素比(O/C比)が0.60以上0.80以下」であるのに対し、甲2発明は、それを特定していない点(以下、「相違点5」という。)。
(2)相違点の検討
ア 事案に鑑み、まず相違点5について検討する。
上記第5の2(1)イによると、甲第2号証には、X線光電子分光法(XPS)について「XPS分析は、GOの原子組成およびC/O比[50]の決定にも用いられており、C1sピーク面積を、O1sピーク面積に光イオン化断面積[56]の比を乗じた値で割ることによって求める。」との記載はあるものの、具体的に、X線光電子分光法(XPS)を用いてC/Oの値を求めている例は記載されていない。
また、上記第5の2(1)イによると、甲第2号証には、「2.5元素分析(EA) EA(元素分析)は、GOの燃焼によって行われ、GOの元素組成を決定するための最も正確な手法であると考えられている[57,58]。ScholzとBoehmは、GOの酸化度を評価するための便利な指標としてC/O比を導入した[16,59]。多くの場合、この比は約1.8から2.5の範囲にあり[16]、一部の研究ではC/O比が0.96[60]から3.81[46]の範囲で報告されている。」と記載されている。つまり、燃焼により行った測定において、O/C比が0.26~1.04のGOについて報告されていることが記載されているといえる。
しかしながら、上記記載は、酸化グラフェンの一般的な先行技術についての記載であるといえ、甲2発明の「GO希釈液」のO/C比について説明するものではない。
そうすると、本件発明2は、「前記酸化グラフェンのX線光電子分光法による酸素/炭素の元素比(O/C比)が0.60以上0.80以下」であるのに対し、甲2発明は、酸化グラフェンのO/C比は特定されていないので、相違点5は実質的なものである。
イ そして、上記1(2)イ~オで検討したとおり、甲第1号証~甲第7号証には、酸化グラフェン水分散液に含まれる酸化グラフェンのX線光電子分光法によるO/C比の値を0.60以上0.80以下とすることについて記載されていない、又はO/C比の値と酸化グラフェンの分散性との関係について記載されていないことから、甲第1号証~甲第7号証の記載を踏まえても、甲2発明において、GO希釈液のO/C比を調整し、「前記酸化グラフェンのX線光電子分光法による酸素/炭素の元素比(O/C比)が0.60以上0.80以下」とする動機付けはないといえる。
ウ したがって、甲2発明において、相違点5に係る本件発明2の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得ることではない。
(3)申立人の主張について
ア 申立人は、特許異議申立書の第22頁下から5行~第22頁最終行において、以下の主張をしている。
「(エ)本件特許発明2と甲2発明を対比する。
当業者であれば、上記酸化グラフェンにて、酸化反応を進めることなどにより、本件特許発明2の要件Eを満たすように適宜調整し得る。
したがって、本件特許発明2は、甲2発明にもとづいて当業者が容易に想到し得たものであり、進歩性がない。」
イ 申立人の上記主張について検討する。
申立人は、甲2発明において、さらに酸化反応を進めることで「前記酸化グラフェンのX線光電子分光法による酸素/炭素の元素比(O/C比)が0.60以上0.80以下」を満たすことができると主張しているといえる。
しかしながら、上記(2)ア、イで検討したとおり、甲第1号証~甲第7号証の記載を踏まえても、酸化グラフェンのO/C比を調整し、「前記酸化グラフェンのX線光電子分光法による酸素/炭素の元素比(O/C比)が0.60以上0.80以下」とする動機付けはないといえ、申立人が主張する「さらに酸化反応を進める」ことの動機付けもないといえる。
したがって、申立人の主張は採用できない。
(4)小括
したがって、本件発明2は、相違点3、4について検討するまでもなく、甲第2号証に記載されている発明に基づいて当業者であれば容易に想到し得たものではない。
3 申立理由3のイ(甲第3号証を主たる証拠とする進歩性欠如)について
(1)本件発明2と甲3発明との対比
本件発明2と甲3発明とを対比する。
甲3発明の「酸化グラフェン」を含む「溶液相」は、本件発明2の「酸化グラフェンが」「分散してなる酸化グラフェン」「分散液」に相当する。
そうすると、本件発明2と甲3発明は、酸化グラフェンが分散してなる酸化グラフェン分散液である点で一致し、以下の点で相違する。
・本件発明2は、酸化グラフェンを「水」に分散してなる酸化グラフェン水分散液であるのに対し、甲3発明は、それを特定していない点(以下、「相違点7」という。)
・本件発明2は、「酸化グラフェン濃度を0.0013重量%に調整したときの、波長230nmにおける吸光度が0.6以上であり、波長270nmにおける吸光度に対する波長230nmにおける吸光度の比(230nm/270nm)が1.5以上となる」のに対し、甲3発明は、「12μg/mlである酸化グラフェンの溶液相であって、溶液相中の酸化グラフェンの230nmにおける吸光度が0.60、270nmにおける吸光度が0.40を示す」点(以下、「相違点8」という。)。
・本件発明2は、「前記酸化グラフェンのX線光電子分光法による酸素/炭素の元素比(O/C比)が0.60以上0.80以下」であるのに対し、甲3発明は、それを特定していない点(以下、「相違点9」という。)。
(2)相違点の検討
ア 事案に鑑み、まず相違点9について検討する。
上記第5の3(1)アによると、甲第3号証には、溶液相中の酸化グラフェンが記載されているものの、具体的に、X線光電子分光法(XPS)を用いてO/C比の値を求めている例は記載されていない。
そうすると、本件発明2は、「前記酸化グラフェンのX線光電子分光法による酸素/炭素の元素比(O/C比)が0.60以上0.80以下」であるのに対し、甲3発明は、酸化グラフェンのO/C比は特定されていないので、相違点9は実質的なものである。
イ そして、上記1(2)イ~オで検討したとおり、甲第1号証~甲第7号証には、酸化グラフェン水分散液に含まれる酸化グラフェンのX線光電子分光法によるO/C比の値を0.60以上0.80以下とすることについて記載されていない、又はO/C比の値と酸化グラフェンの分散性との関係について記載されていないことから、甲第1号証~甲第7号証の記載を踏まえても、甲3発明において、溶液相中の酸化グラフェンのO/C比を調整し、「前記酸化グラフェンのX線光電子分光法による酸素/炭素の元素比(O/C比)が0.60以上0.80以下」とする動機付けはないといえる。
ウ したがって、甲3発明において、相違点9に係る本件発明2の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得ることではない。
(3)申立人の主張について
ア 申立人は、特許異議申立書の第23頁下から9行~下から5行において、以下の主張をしている。
「(カ)本件特許発明2と甲3発明を対比する。
当業者であれば、上記酸化グラフェンにて、酸化反応を進めることなどにより、本件特許発明2の要件Eを満たすように適宜調整し得る。
したがって、本件特許発明2は、甲3発明にもとづいて当業者が容易に想到し得たものであり、進歩性がない。」
イ 申立人の上記主張について検討する。
申立人は、甲3発明において、さらに酸化反応を進めることで「前記酸化グラフェンのX線光電子分光法による酸素/炭素の元素比(O/C比)が0.60以上0.80以下」を満たすことができると主張しているといえる。
しかしながら、上記(2)ア、イで検討したとおり、甲第1号証~甲第7号証の記載を踏まえても、酸化グラフェンのO/C比を調整し、「前記酸化グラフェンのX線光電子分光法による酸素/炭素の元素比(O/C比)が0.60以上0.80以下」とする動機付けはないといえ、申立人が主張する「さらに酸化反応を進める」ことの動機付けもないといえる。
したがって、申立人の主張は採用できない。
(4)小括
したがって、本件発明2は、相違点7、8について検討するまでもなく、甲第3号証に記載されている発明に基づいて当業者であれば容易に想到し得たものではない。
4 申立理由4のイ(甲第4号証を主たる証拠とする進歩性欠如)について
(1)本件発明2と甲4発明との対比
本件発明2と甲4発明とを対比する。
甲4発明の「酸化グラフェンの水分散液」は、本件発明2の「酸化グラフェンが水に分散してなる酸化グラフェン水分散液」に相当する。
そうすると、本件発明2と甲4発明は、「酸化グラフェンが水に分散してなる酸化グラフェン水分散液」である点で一致し、以下の点で相違する。
・本件発明2は、「酸化グラフェン濃度を0.0013重量%に調整したときの、波長230nmにおける吸光度が0.6以上であり、波長270nmにおける吸光度に対する波長230nmにおける吸光度の比(230nm/270nm)が1.5以上となる」のに対し、甲4発明は、「0.04mg・m-1である酸化グラフェンの水分散液であって、230nmにおける吸光度が2.10、270nmにおける吸光度が1.40を示す」点(以下、「相違点10」という。)。
・本件発明2は、「前記酸化グラフェンのX線光電子分光法による酸素/炭素の元素比(O/C比)が0.60以上0.80以下」であるのに対し、甲4発明は、それを特定していない点(以下、「相違点11」という。)。
(2)相違点の検討
ア 事案に鑑み、まず相違点11について検討する。
上記第5の4(1)イによると、甲第4号証には、酸化グラフェンの水分散液が記載されているものの、具体的に、X線光電子分光法(XPS)を用いて酸化グラフェンのO/C比の値を求めている例は記載されていない。
そうすると、本件発明2は、「前記酸化グラフェンのX線光電子分光法による酸素/炭素の元素比(O/C比)が0.60以上0.80以下」であるのに対し、甲4発明は、酸化グラフェンのO/C比は特定されていないので、相違点11は実質的なものである。
イ そして、上記1(2)イ~オで検討したとおり、甲第1号証~甲第7号証には、酸化グラフェン水分散液に含まれる酸化グラフェンのX線光電子分光法によるO/C比の値を0.60以上0.80以下とすることについて記載されていない、又はO/C比の値と酸化グラフェンの分散性との関係について記載されていないことから、甲第1号証~甲第7号証の記載を踏まえても、甲4発明において、水分散液中の酸化グラフェンのO/C比を調整し、「前記酸化グラフェンのX線光電子分光法による酸素/炭素の元素比(O/C比)が0.60以上0.80以下」とする動機付けはないといえる。
(3)申立人の主張について
ア 申立人は、特許異議申立書の第24頁12行~16行において、以下の主張をしている。
「(ク)本件特許発明2と甲4発明を対比する。
当業者であれば、上記酸化グラフェンにて、酸化反応を進めることなどにより、本件特許発明2の要件Eを満たすように適宜調整し得る。
したがって、本件特許発明2は、甲4発明にもとづいて当業者が容易に想到し得たものであり、進歩性がない。」
イ 申立人の上記主張について検討する。
申立人は、甲4発明において、さらに酸化反応を進めることで「前記酸化グラフェンのX線光電子分光法による酸素/炭素の元素比(O/C比)が0.60以上0.80以下」を満たすことができると主張しているといえる。
しかしながら、上記(2)ア、イで検討したとおり、甲第1号証~甲第7号証の記載を踏まえても、酸化グラフェンのO/C比を調整し、「前記酸化グラフェンのX線光電子分光法による酸素/炭素の元素比(O/C比)が0.60以上0.80以下」とする動機付けはないといえ、申立人が主張する「さらに酸化反応を進める」ことの動機付けもないといえる。
したがって、申立人の主張は採用できない。
(4)小括
したがって、本件発明2は、相違点10について検討するまでもなく、甲第4号証に記載されている発明に基づいて当業者であれば容易に想到し得たものではない。
5 申立理由5のイ(甲第7号証を主たる証拠とする進歩性欠如)について
(1)本件発明2と甲7発明との対比
甲7発明の「イオン交換水で希釈された酸化グラフェン分散液」は、本件発明2の「酸化グラフェンが水に分散してなる酸化グラフェン水分散液」に相当する。
そうすると、本件発明2と甲7発明は、「酸化グラフェンが水に分散してなる酸化グラフェン水分散液」である点で一致し、以下の点で相違する。
・本件発明2は、「酸化グラフェン濃度を0.0013重量%に調整したときの、波長230nmにおける吸光度が0.6以上であり、波長270nmにおける吸光度に対する波長230nmにおける吸光度の比(230nm/270nm)が1.5以上となる」のに対し、甲7発明は、それを特定していない点(以下、「相違点12」という。)。
・本件発明2は、「前記酸化グラフェンのX線光電子分光法による酸素/炭素の元素比(O/C比)が0.60以上0.80以下」であるのに対し、甲7発明は、「X線光電子分光法により測定される酸素原子の炭素原子に対する元素比は0.53である」点(以下、「相違点13」という。)。
(2)相違点の検討
ア 事案に鑑み、先ず相違点13について検討する。
上記第5の7(1)アによると、甲第7号証には、「[0032] 本発明のグラフェン分散液に含まれるグラフェンは、X線光電子分光法により測定される炭素に対する酸素の元素の比(O/C比)が、0.08以上0.30以下であることが好ましい。」、「[0035] グラフェンのO/C比は、原料となる酸化グラフェンの酸化度を変えたり、表面処理剤の量を変えたりすることによりコントロールすることが可能である。例えば、酸化グラフェンの酸化度が高いほど還元後に残る酸素の量も多くなり、酸化度が低いと還元後の酸素原子量が少なくなる。また、酸性基のある表面処理剤の付着量を増やすことで酸素原子量を多くすることができる。」と記載されていることから、甲第7号証には、酸化グラフェンの酸化度は、還元後のグラフェンのO/C比を0.08以上0.30以下とするために調整するものであるといえるが、酸化グラフェンのO/C比と、酸化グラフェンの分散性との関係については記載されていない。
そして、本件発明2は、「前記酸化グラフェンのX線光電子分光法による酸素/炭素の元素比(O/C比)が0.60以上0.80以下」であるのに対し、甲7発明は、酸化グラフェンのX線光電子分光法により測定される酸素原子の炭素原子に対する元素比が0.53であるので、相違点13は実質的なものである。
イ さらに、上記1(2)イ~オで検討したとおり、甲第1号証~甲第7号証には、酸化グラフェン水分散液に含まれる酸化グラフェンのX線光電子分光法によるO/C比の値を0.60以上0.80以下とすることについて記載されていないし、O/C比の値と酸化グラフェンの分散性との関係について記載されていないことから、甲第1号証~甲第7号証の記載を踏まえても、甲7発明において、水分散液中の酸化グラフェンのO/C比を調整し、「前記酸化グラフェンのX線光電子分光法による酸素/炭素の元素比(O/C比)が0.60以上0.80以下」とする動機付けはないといえる。
(3)申立人の主張について
ア 申立人は、特許異議申立書の第25頁12行~第26頁4行において、以下の主張をしている。
「(コ)甲第7号証に記載の発明に甲第1号証の記載事項を組み合わせた進歩性違反
甲第7号証には、実質的に、以下のことが記載されている。
・・・
・グラフェンのO/C比は、原料となる酸化グラフェンの酸化度を変えることでコントロールすることが可能である。
・・・
また酸化グラフェンの酸化度を変えるモチベーションがある。甲第7号証に記載のグラフェンは酸化グラフェンを還元して得られるものであり、段落[0032]にO/C比は0.08以上0.30以下が好ましい旨記載されている。還元前の酸化グラフェンのO/C比は、当然、これよりも高くなる。当業者は、このような酸化グラフェンのO/C比を適宜0.60以上0.80以下に調整でき、本件特許発明2の要件Eを満たすものとすることに容易に想到する。従って、本件特許発明2は、甲第7号証に記載の発明に甲第1号証の記載事項を組み合わせることにより進歩性が欠如する。」
イ 申立人の上記主張について検討する。
申立人は、甲7発明において、グラフェンのO/C比は、原料となる酸化グラフェンの酸化度を変えることでコントロールすることが可能であるから「前記酸化グラフェンのX線光電子分光法による酸素/炭素の元素比(O/C比)が0.60以上0.80以下」を満たすことができると主張しているといえる。
しかしながら、上記(2)ア、イで検討したとおり、甲第1号証~甲第7号証には、酸化グラフェンのO/C比と分散性との関係、特に酸化グラフェンの分散性について、酸化グランのX線光電子分光法による酸素/炭素の元素比(O/C比)が0.60以上0.80以下」とする動機付けはないといえる。
したがって、申立人の主張は採用できない。
(4)小括
したがって、本件発明2は、相違点13について検討するまでもなく、甲第7号証に記載されている発明、及び甲第1号証に記載されている事項に基づいて当業者であれば容易に想到し得たものではない。
6 令和7年12月15日提出の意見書における申立人の主張について
(1)申立人の主張
ア 申立人は、令和7年12月15日提出の意見書の第2頁第4行~第5頁第5行において、以下の主張(以下、「主張点1」という。)をしている。
「(A)訂正後の本件特許発明2が進歩性の要件を満たさないこと
令和7年5月13日付け異議申立書に記載の、甲第7号証(国際公開第2017/047523号)による進歩性欠如の取消理由が採用されるべきである。
・・・
ウ 本件特許発明2と甲第7号証に記載された発明との対比
・・・
(b)構成要件E
訂正後の本件特許発明2の構成要件Eでいう「前記酸化グラフェンのX線光電子分光法による酸素/炭素の元素比(O/C比)が0.60以上0.80以下であり、」について、甲7発明の[0100]、合成例1ではO/C比が0.53の酸化グラフェンが得られている。
しかし、下記の通り、甲7発明の合成例1の製造方法は、O/Cが0.70の酸化グラフェンが得られる本件特許明細書の合成例1の製造方法と同一である。
・・・
製造方法が同一であるのに、本件合成例1では、O/C比が0.70の酸化グラフェンウェットケーキが得られる。甲第7号証の合成例1では、O/C比が0.53の酸化グラフェンゲルが得られる。このように、本件の合成例1と甲第7号証の合成例1とは、出願人が同一でありながら、記載内容に明らかな矛盾がある。
ここで、甲第7号証の方に誤記があった(甲第7号証の合成例1でO/C比が0.53の酸化グラフェンゲルが得られた旨の記載が誤記であった)可能性がある。仮にそうであれば、本件の合成例1と製造方法が同一である甲第7号証の合成例1に、訂正後の本件特許発明2の構成要件Eが内在的に開示されている。
仮にそうでないとしても、甲第7号証の合成例1で得られた酸化グラフェンゲルの0/C比を0.60以上0.80以下とすることは容易である。」
イ 申立人は、令和7年12月15日提出の意見書の第7頁第4行~第8頁第3行において、以下の主張(以下、「主張点2」という。)をしている。
「(B)訂正後の本件特許発明2が記載要件を満たさないこと
「(A)訂正後の本件特許発明2が進歩性の要件等を満たさないこと」、「ウ 本件特許発明2と甲第7号証に記載された発明との対比」、「(b)構成要件E」で上記したように、O/C比が0.70の酸化グラフェンウエットケーキが得られる本件特許明細書の合成例1の製造方法は、O/C比が0.53の酸化グラフェンゲルが得られる甲7発明の合成例1の製造方法と同一である。
本件の合成例1と甲第7号証の合成例1とは、出願人が同一でありながら、記載内容に明らかな矛盾がある。
ここで、本件特許明細書の方に誤記があった(本件特許明細書の合成例1でO/C比が0.70の酸化グラフェンウエットケーキが得られたとする記載が誤記であった)可能性がある。仮にそうであれば、本件特許明細書には、実施例として、合成例1の酸化グラフェンウェットケーキを用いた実施例1~6、8~12、又は、合成例2の酸化グラフェンウェットケーキ(O/C比が0.53)を用いた実施例7しか無いことから、訂正後の本件特許発明2に対応する実施例が無く、サポート要件を満たさない。
または、本件の合成例1と甲第7号証の合成例1とは、実際には製造方法が同一では無かった可能性がある。例えば、本件合成例1には、O/C比が0.70で分散性がより向上した酸化グラフェンを得るために必須の重要な工程が、何らかの理由により具体的に開示されず、抜け落ちている可能性がある。その場合、O/C比の調整がある程度技術常識から可能とはいっても、本件明細書を参照した当業者が、O/C比が0.60以上0.80以下の酸化グラフェンが水に分散してなる、訂正後の本件特許発明2の酸化グラフェン水分散液を過度な試行錯誤を経ることなく製造可能とは言えず、訂正後の本件特許発明2は実施可能要件を満たさない。
なお、本件の合成例1と甲第7号証の合成例1とは、O/C比の評価方法が同一である(本件特許明細書の[0033]、甲第7号証の[0094])。このような測定条件ではO/C比の値が一義的に定まらない、と言う場合は、信頼性のない測定方法による規定である可能性があり、訂正後の本件特許発明2は、訂正で回避不能な明確性違反がある。」
(2)申立人の主張に関する当審の判断
ア まず、事案に鑑み、主張点2から検討する。
(ア)主張点2は、本件特許発明2は、サポート要件違反であり、実施可能要件違反であり、及び明確性要件違反があることを主張するものである。
(イ)a 上記第5の7(1)イによると、甲第7号証の[0100]には、「(合成例1) 酸化グラフェンの作製方法:1500メッシュの天然黒鉛粉末(上海一帆石墨有限会社製)を原料として、氷浴中の10gの天然黒鉛粉末に、220mlの98%濃硫酸、5gの硝酸ナトリウム、30gの過マンガン酸カリウムを入れ、1時間機械攪拌し、混合液の温度を20℃以下で保持した。・・・調製した酸化グラフェンゲルの、X線光電子分光法により測定される酸素原子の炭素原子に対する元素比は0.53であった。」と記載されている。
一方、本件明細書の【0037】には、「[合成例1:酸化グラフェンウエットケーキの作製方法] 1500メッシュの天然黒鉛粉末(上海一帆石墨有限会社)を原料として、氷浴中の10gの天然黒鉛粉末に、220mlの98%濃硫酸、5gの硝酸ナトリウム、30gの過マンガン酸カリウムを入れ、1時間撹拌し、混合液の温度を20℃以下に保持した・・・作製した酸化グラフェンウエットケーキ-1の、測定例3により測定した酸素原子の炭素原子に対する元素比(O/C比)は0.70、測定例1により測定した酸化グラフェンウエットケーキ-1の濃度は44.5重量%であった。」と記載されている。
つまり、本件明細書、及び甲第7号証において、酸化グラフェンの製造方法に「1500メッシュの天然黒鉛粉末(上海一帆石墨有限会社製)」を原材料として用いているものといえる。そして、1500メッシュとは粉末の粒径を特定しているものであり、本件明細書、及び甲第7号証において、同程度の粒径の天然黒鉛粉末を用いているとはいえる。しかしながら、本件明細書、及び甲第7号証には、天然黒鉛粉末の具体的な製品名等の詳細は記載されておらず、仮に同じ製品名の天然黒鉛粉末であったとしても、同じ物性を備えているかどうかは、本件明細書、及び甲第7号証に記載内容から明らかではなく、同じ物性を備えた天然黒鉛粉末を用いているとはいえない。
そうすると、本件明細書の合成例と甲第7号証の合成例とにおいて、製造方法が同一であったとしても、原材料が同一とはいえないからO/C比が同一の値であるとはいえない。
したがって、主張点2の「本件特許明細書の合成例1でO/C比が0.70の酸化グラフェンウエットケーキが得られたとする記載が誤記であった」とはいえず、この主張に基づく、本件発明2のサポート要件違反との主張は採用できない。
b また、本件明細書の【0038】には、合成例2として、酸化度を変更したこと以外は合成例1と同様にして、O/C比が0.53の酸化グラフェンウェットケーキを作製したことが記載されていることから、当業者であれば、本件明細書の記載に基づき、酸化グラフェンウェットケーキのO/C比を調整することはできるといえる。
そうすると、主張点2の「本件明細書を参照した当業者が、O/C比が0.60以上0.80以下の酸化グラフェンが水に分散してなる、訂正後の本件特許発明2の酸化グラフェン水分散液を過度な試行錯誤を経ることなく製造可能とは言えず、訂正後の本件特許発明2は実施可能要件を満たさない。」との主張は採用できず、この主張に基づく、本件発明2の実施可能要件違反との主張は成り立たない。
c また、本件明細書の【0033】には、O/C比の測定する方法について記載されていることから、当業者であれば一義的に測定する方法が理解でき、主張点2の「このような測定条件ではO/C比の値が一義的に定まらない、と言う場合は、信頼性のない測定方法による規定である可能性があり、訂正後の本件特許発明2は、訂正で回避不能な明確性違反がある。」との主張は採用できず、この主張に基づく、本件発明2の明確性要件違反との主張は成り立たない。
(ウ)なお、主張点2は、異議申立書提出時には主張されておらず、異議申立書提出時に主張できたにも関わらず、本意見書において初めて主張されたものであることを踏まえても、主張点2は採用しない。
イ 次に、主張点1について検討する。
上記ア(イ)aで検討したとおり、本件明細書の合成例と甲第7号証の合成例とにおいて、製造方法が同一であったとしても、原材料が同一でない限りO/C比が同一の値であるとはいえないことから、甲第7号証の合成例1のO/C比が0.53であることが誤記である可能性があるとの主張は採用しない。
そして、上記第6の5(2)で検討したとおり、甲第1号証~甲第7号証には、酸化グラフェン水分散液に含まれる酸化グラフェンのX線光電子分光法によるO/C比の値を0.60以上0.80以下とすることについて記載していない、又はO/C比の値と酸化グラフェンの分散性との関係について記載されていないことから、甲第1号証~甲第7号証の記載を踏まえても、甲7発明において、水分散液中の酸化グラフェンのO/C比を調整し、「前記酸化グラフェンのX線光電子分光法による酸素/炭素の元素比(O/C比)が0.60以上0.80以下」とする動機付けはないといえる。
よって、上記「甲第7号証の合成例1で得られた酸化グラフェンゲルの0/C比を0.60以上0.80以下とすることは容易である」との主張点1の主張は採用しない。
(3)したがって、上記主張によっても、本件発明2は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるということはできない。
第7 むすび
前記第6で検討したとおり、本件特許2は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるということはできず、同法第113条第1項第2号に該当するものではないから、上記申立理由1のイ、申立理由2のイ、申立理由3のイ、申立理由4のイ、申立理由5のイ、及び取消理由1~4によって、本件特許2を取り消すことはできない。
また、他に本件特許2を取り消すべき理由を発見しない。
そして、申立理由1のア、申立理由2のア、申立理由3のア、申立理由4のア、申立理由5のア、及び申立理由6に係る本件特許1に対する特許異議の申立ては、請求項1は本件訂正により削除され、当該申立てに係る特許が存在しないこととなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700516