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特許異議申立

2017-700724

ダイレクトダイオードレーザ加工装置及びこれを用いた板金の加工方法

審判番号
2017-700724
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2014-210553外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2017年07月25日
審決日
2018年09月26日
公報発行日
2019年02月22日
結論
請求成立(取消)
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.121-ZAA(B23K)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項特許法113条2号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第29条第2項、特許法第113条第2号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第6069280号発明「ダイレクトダイオードレーザ加工装置及びこれを用いた板金の加工方法」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第6069280号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1~5〕について訂正することを認める。 特許第6069280号の請求項1~5に係る特許を取り消す。

理由

【理 由】 1.手続の経緯 特許第6069280号の請求項1~5に係る特許についての出願は,平成26年10月15日に特許出願され,平成29年1月6日付けでその特許権の設定登録がされ,その後,平成29年7月25日に特許異議申立人藤本信男(以下,「特許異議申立人」という。)より請求項1~5に対して特許異議の申立てがされ,平成29年11月1日付けで取消理由が通知され,平成29年12月20日に意見書の提出及び訂正請求がされ,平成30年1月26日に特許異議申立人から意見書が提出され,平成30年4月2日付けで取消理由(決定の予告)が通知され,平成30年6月1日に意見書の提出がされたものである。 2.訂正の適否 (1)訂正の内容 特許権者は,特許請求の範囲の請求項1を以下の事項により特定されるとおりの請求項1として訂正することを請求する(訂正事項1)。 「【請求項1】 多波長のレーザ光を発振するレーザ共振器と, 前記レーザ共振器により発振された多波長のレーザ光を伝送する伝送ファイバと, 前記伝送ファイバにより伝送された多波長のレーザ光を集光して被加工材を加工するレーザ加工機と,を備え, 前記被加工材の厚さ及び吸収率に基づいて, 前記多波長のレーザ光の波長を,1000nm未満に制御し, 前記多波長のレーザ光のビームパラメータ積を,4mm・mrad~20mm・mradに制御し,且つ前記被加工材の切断速度Vを,0.1m/min~60m/minに制御し, 前記切断速度Vは,レーザパワーPと,被加工材の吸収率とに比例し,被加工材の融解エネルギー又は蒸発エネルギーEと,ビーム直径dと,板厚tに反比例し, 前記多波長のレーザ光の集光直径を247μm~364μmに制御し, 前記多波長のレーザ光の集光直径に対する,入射角70°における吸収率の比を0.042(%/μm)~0.11(%/μm)に制御し, 前記被加工材に吹き付けるアシストガスの圧力を0.05MPa~1.5MPaに制御する ことを特徴とするダイレクトダイオードレーザ加工装置。」 (2)訂正の目的の適否,新規事項の有無,一群の請求項及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 訂正事項1は,「多波長のレーザ光のビームパラメータ積」の上限を「25mm・mrad」から「20mm・mrad」に限定するものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして,明細書の段落0029に「多波長のレーザ光のBPPは,例えば4mm・mrad~25mm・mrad程度であり,7mm・mrad~20mm・mrad程度であってもよい。」と記載されていることから,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。 また,訂正前の請求項1~5は,請求項2~5が,訂正の請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあるから,訂正前において一群の請求項に該当するものである。したがって,訂正の請求は,一群の請求項ごとにされたものである。 (3)小括 したがって,上記訂正請求による訂正事項1は,特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条第9項で準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので,訂正後の請求項1~5について訂正を認める。 3.当審の判断 (1)訂正後の請求項1~5に係る発明 上記訂正請求により訂正された訂正後の請求項1~5に係る発明(以下「本件発明1」などという。)は,次のとおりのものである。 「【請求項1】 多波長のレーザ光を発振するレーザ共振器と, 前記レーザ共振器により発振された多波長のレーザ光を伝送する伝送ファイバと, 前記伝送ファイバにより伝送された多波長のレーザ光を集光して被加工材を加工するレーザ加工機と,を備え, 前記被加工材の厚さ及び吸収率に基づいて, 前記多波長のレーザ光の波長を,1000nm未満に制御し, 前記多波長のレーザ光のビームパラメータ積を,4mm・mrad~20mm・mradに制御し,且つ前記被加工材の切断速度Vを,0.1m/min~60m/minに制御し, 前記切断速度Vは,レーザパワーPと,被加工材の吸収率とに比例し,被加工材の融解エネルギー又は蒸発エネルギーEと,ビーム直径dと,板厚tに反比例し, 前記多波長のレーザ光の集光直径を247μm~364μmに制御し, 前記多波長のレーザ光の集光直径に対する,入射角70°における吸収率の比を0.042(%/μm)~0.11(%/μm)に制御し, 前記被加工材に吹き付けるアシストガスの圧力を0.05MPa~1.5MPaに制御する ことを特徴とするダイレクトダイオードレーザ加工装置。 【請求項2】 前記被加工材の単位切断長さ当たりのジュール熱を6.9J/mm~137.1J/mmに制御することを特徴とする請求項1に記載のダイレクトダイオードレーザ加工装置。 【請求項3】 前記被加工材が厚さ1mm~16mmの軟鋼であり, 前記被加工材に吹き付けるアシストガスの圧力を0.05MPa~1.5MPaに制御し, 前記被加工材の単位切断長さ当たりのジュール熱を12.0J/mm~137.1J/mmに制御し,且つ 前記被加工材の切断速度を14.6mm/秒~166.7mm/秒 に制御することを特徴とする請求項1~2のいずれか1項に記載のダイレクトダイオードレーザ加工装置。 【請求項4】 前記被加工材が厚さ1mm~4mmのアルミニウムであり, 前記被加工材に吹き付けるアシストガスの圧力を0.8MPa~1.5MPaに制御し, 前記被加工材の単位切断長さ当たりのジュール熱が6.9J/mm~43.6J/mmに制御し ,且つ 前記被加工材の切断速度を45.8mm/秒~291.7mm/秒 に制御することを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のダイレクトダイオードレーザ加工装置。 【請求項5】 請求項1~4のいずれか1項のダイレクトダイオードレーザ加工装置を用いて板金を切断加工することを特徴とする板金の加工方法。」 (2)引用文献の記載 ア 甲第1号証 取消理由通知(決定の予告)において引用した甲第1号証(G.Costa Rodrigues,外3名,“Theoretical and experimental aspects of laser cutting with a direct diode laser”,Optics and Lasers in Engineering,ELSEVIER,2014年5月20日,第61巻,p.31-38)には,以下の記載がある。()内は仮訳である。 (ア)31頁右欄16行~32頁左欄10行 「In this paper the technical aspects of using a Direct Diode Laser(DDL) for laser cutting of metal sheets are discussed. Section 2 offers a detailed overview of the set-up used. This includes a descriptive study on the performance of this prototype in terms of available power at different stages, beam quality analysis and electrical power consumption. An analytical model based on the laser absorption in metals is then used to predict the cutting performance in comparison with other laser sources (Section 3).A systematic optimization procedure was established for the cutting performance tests, taking into account quality constraints imposed normally in an industrial setting (Section 4). In Section 5 the cutting results are presented for typical industrial cut materials for two different cutting processes: fusion cutting of stainless steel and aluminium, with nitrogen, and for flame cutting of structural steel, with oxygen as assist gases. These results are analyzed and compared with the performance of other sources: two CO2 lasers and a fiber laser. 2. Hardware specifications Fig. 1 shows a schematic description of the set-up used in this work. The DDL source uses wavelength multiplexing techniques to couple four high brightness diode modules with different wavelengths and powers into an optical fiber. The wavelengths used are 808 nm, 915 nm, 940 nm and 980 nm, with respectively 372W, 841W, 817W and 826W maximum output power.」 (この論文では,ダイレクトダイオードレーザ(DDL)を用いて金属シートをレーザ切断することの技術的側面について論じる。第2節では,使用される構成の詳細な概要を説明する。 これは,さまざまな段階での利用可能なパワー,ビーム品質解析および電力消費量の観点からのこのプロトタイプの性能についての記述的研究を含む。そして,金属におけるレーザ吸収に基づく解析モデルを用いて,他のレーザ光源と比較して切断性能を予測する(第3節)。工業環境において通常課される品質制約を考慮に入れて,切断性能試験のために体系的な最適化手順を確立した(第4節)。第5節では,2つの異なる切断プロセス,すなわち窒素を用いたステンレス鋼およびアルミニウムの溶融切断,およびアシストガスとして酸素を用いた構造用鋼の火炎切断,のための典型的な工業用切断材料についての切断結果を示す。これらの結果を解析して,他の光源,すなわち2つのCO2レーザおよびファイバレーザの性能と比較する。 2.ハードウェアの仕様 図1は,本研究で使用される構成の概略説明を示す。DDL光源は,波長多重化技術を用いて,異なる波長およびパワーを有する4つの高輝度ダイオードモジュールを光ファイバに結合する。使用される波長は,808nm,915nm,940nmおよび980nmであり,最大出力パワーは,それぞれ372W,841W,817Wおよび826Wである。) (イ)32頁上欄 Fig. 1. Set-up schematic description. ( 図1 構成の概略説明) (ウ)32頁右欄17行~33頁左欄4行 「2.2. Beam characteristics A beam analysis was carried out for the three investigated laser sources with a Primes focus monitor. The device scans the beam with a rotation pinhole which takes a small part of the radiation to a detector by means of two mirrors. A layer by layer scan provides information regarding geometry and spacial distribution of the laser beam. The measured characteristics and other specifications for each of the studied sources are shown in Table 2. For the diode laser a weighted average wavelength value is provided. The three optical combinations for the diode laser show different laser beam qualities. A lower focal distance in combination with a raw beam diameter higher than 33 mm contributes to a high spherical aberration which can partially explain the increased BPP[12]. As the focal distance increases, the quality gets closer to the limit specified by the manufacture, i.e. 22mm mrad. Moreover, spot sizes in a range between the fiber and CO2 lasers can be used with acceptable focusing distances and, thus, the energy density needed to melt metals can be achieved.」 (2.2.ビーム特性 Primes社のフォーカスモニタを用いて,調査対象の3つのレーザ光源についてビーム解析を行った。当該装置は,2つのミラーによって放射のごく一部を検出器の方に向かわせる回転ピンホールを用いて,ビームを走査する。層ごとの走査は,レーザビームの形状および空間分布に関する情報を提供する。調査対象の各光源についての測定された特性および他の仕様を表2に示す。ダイオードレーザでは,加重平均波長値が提供される。 ダイオードレーザの3つの光学的組み合わせは,異なるレーザビーム品質を示す。焦点距離が短くなることは,33mmよりも大きなロービーム径と組み合わさると,球面収差が高くなることの一因となり,これによりBPPの増加を部分的に説明することができる[12]。焦点距離が長くなるにつれて,品質は,製造業者が指定する限界,すなわち22mm・mradに近付いていく。さらに,許容可能な焦点距離で,ファイバレーザとCO2レーザとの間の範囲内のスポットサイズを使用することができ,そのため,金属を溶融するのに必要とされるエネルギ密度を達成することができる。) (エ)33頁上欄 ( ) (オ)34頁上欄 Inclinationangle[°]       Inclinationangle[°] Fig.2. Absorption in function of inclination angle,φin, for pure iron(a)and pure aluminium(b)according to Formula 3. ( 図2 式3による鉄及びアルミニウムにおける入射角に対する吸収率) (カ)34頁右欄12行~34頁右欄20行 「If an assumption is made that all the absorbed energy is used to melt theremoved material,a simple equation can be found for the cutting speed: where PL is the power of the laser, tc is the thickness of the sheet, WK is the kerf width, ρ is the material density and Δhm is the necessary increase in specific enthalpy to cause melting of the material to be cut starting from ambient temperature (1174kJkg-1 for iron and 966 kJkg-1 for aluminium).」 (吸収されたすべてのエネルギが除去された材料を溶融するのに使用されると仮定すると,切断速度についての簡単な式が見いだされる。 ここで,PLは,レーザパワー,tcは,被加工材の厚さ,WKは,カープ幅,ρは材料密度,Δhmは,雰囲気温度から切断を開始した際に材料の溶融を引き起こすための単位質量当たりのエンタルピーである (鉄は,1174kJkg-l,アルミニウムは,966kJkg-l)。) (キ)35頁右欄1行~36頁右欄2行 「4. Cutting test experiments For the cut experiments with the studied DDL typical industrial materials were selected for a better comparison with industrial CO2 and fiber technologies. Table 5 provides an overview of materials used and respective chemical composition. The prototype condition of the studied diode laser source requires a supplementary effort to verify the achievable process window. In the case of the commercial machines analyzed as comparative references in this work, namely the fiber laser and both considered CO2 machines, the technology files for different combinations of materials and thicknesses were readily available. These well-optimized settings have been identified by experienced operators, often after extensive process window scanning and mainly using a one-variable-at-a-time optimization technique. Due to time constraints and for the sake of comparability, the tests done with the diode laser machine were performed using Design of Experiments(DOE)optimization techniques with help of specialized software. For this propose the JMP@ software package(SAS)was used[25]. Typical industrial quality constraints, likeroughness, dross and straightness of the cutting edge, were used as reject criteria, while the actual optimization was oriented towards maximizing the cutting speed. Other common quality parameters, like heat affected zone width, kerf width, striations lag and the top edge rounding, were not taken into account because they are not as critical from an industrial point of view. The following systematic procedure was used: 1.For a specific combination of material thickness the cutting parameters of the fiber and the CO2 laser provided an indication about the region in which the best cutting parameters are situated. Screening tests were performed in order to reduce this region. 2.An experiment was designed using the custom design feature of the JMP@ software, taking into account main effects and second power iterations, which places the tests in the design region in an optimal way so that as much information as possible is obtained from a limited number of tests. The criterion for I-optimal design was selected for the software iterative algorithm which minimizes the average variance of prediction over the region of the data and is thus most appropriate to determine operation conditions[25]. 3.The experiments were performed and the responses(rough- ness,dross and cutting speed)measured and fed back to the software. 4.The multiple response optimization problem was solved by the software using the desirability approach[26]. In this procedure the numerical optimization feature in the software package identifies one or more points in the factors domain that would maximize the objective function. 5.Stability tests were performed afterwards by changing the relative position of the focal point. A focal point robustness range of at least 0.5 mm, depending on the thickness of the sheet, was defined which should still result in good quality cuts. If this range was sufficiently big, the corresponding set of parameters was considered stable and was accepted. 6.The optimized cuts were.classified according to the UNI EN ISO9013 standard as an indication of quality.」 (4.切断試験実験 調査対象のDDLを用いた切断実験では,工業用CO2およびファイバ技術とさらによく比較するために,典型的な工業材料が選択された。表5は,使用される材料およびそれぞれの化学組成の概要を示す。 調査対象のダイオードレーザ光源のプロトタイプ条件は,達成可能なプロセスウィンドウを検証するための追加の努力を必要とする。本研究において比較参考として解析される商用マシン,すなわちフ少イバレーザおよび両方ともCO2マシンと考えられるマシンの場合,材料および厚みのさまざまな組み合わせについての技術ファイルが容易に利用可能であった。これらの十分に最適化された設定は,しばしば広範なプロセスウィンドウ走査後に,主に「1回に1つの変数」の最適化技術を用いて,熟練したオペレータによって特定された。時間的制約により,および比較可能性を持たせるために,ダイオードレーザマシンを用いてなされた試験は,専門のソフトウェアの助けを借りて,実験計画(DOE)最適化技術を用いて行われた。 このために,JMP@ソフトウェアパッケージ(SAS)を使用した[25]。粗さ,ドロスおよび刃先の真直度のような典型的な工業品質制約を不合格基準として使用し,その一方で,実際の最適化は切断速度の最大化へと向けられた。熱影響部幅,カープ幅,ストリエーション遅延および上端丸めのような他の一般的な品質パラメータは,工業的観点からそれほど重要ではないので考慮に入れなかった。以下の体系的な手順を使用した。 1.材料厚みのある特定の組み合わせでは,ファイバレーザおよびCO2レーザの切断パラメータは,最良の切断パラメータが位置する領域についての指標を提供した。この領域を減少させるためにスクリーニング試験を行った。 2.主な効果および第二べき乗法を考慮に入れて,JMP@ソフトウェアの特注機能を用いて実験を設計し,これは,限られた可数の試験からできる限り多くの情報が得られるように最適な態様で試験を設計領域にセットする。ソフトウェア反復アルゴリズムのためにI-optimal設計基準が選択され,これは,データの領域にわたる平均予測分散を最小化するので動作条件の決定に最適である[25]。 3.実験を行って,レスポンス(粗さ,ドロスおよび切断速度)を測定してソフトウェアにフィードバックした。 4.複数レスポンス最適化問題は,望ましさアプローチを用いたソフトウェアによって解決された[26]。この手順では,ソフトウェアパッケージ内の数値最適化機能が,目的の機能を最大化するであろう要因ドメイン内の1つ以上のポイントを特定する。 5.その後,焦点の相対位置を変化させることによって安定性試験を行った。シートの厚みに応じて少なくとも0.5mmの焦点ロバスト性範囲が規定され,これは,依然として優れた品質の切断をもたらすはずである。この範囲が十分に大きい場合,対応するパラメータセットは,安定していると考えられ,受容された。 6.最適化された切断を,品質の指標としてのUNI EN IS09013規格に従って分類した。) (ク)36頁右欄3~17行 「5. Results and discussion 5.1. Fusion cutting of stainless steel and aluminium In this section the experimental results gathered with the prototype diode laser machine are compared with the achievable cutting speeds by different laser sources in fusion cutting. Both stainless steel 304 L and aluminium(AW-5083 for 1mm, AW-5086 for 2mm and AW-5754 for 4 and 6mm)were cut for this purpose. The results are presented in Fig.6.The analysis of the achievable speeds for the different lasers shows a similar behavior for both materials. The 2kW diode laser is faster than a CO2 laser at the same power for the whole range of thicknesses and has a similar performance as the 4kW version of a CO2 laser for thin sheets. The tested fiber laser is clearly faster than the other lasers for thin materials when using an inert gas as assist gas.」 (5.結果および考察 5.1.ステンレス鋼およびアルミニウムの溶融切断 この節では,プロトタイプダイオードレーザマシンを用いて収集された実験結果を,溶融切断時のさまざまなレーザ光源による達成可能な切断速度と比較する。この目的で,ステンレス鋼304Lもアルミニウム(1mmではAW-5083,2mmではAW-5086,4mmおよび6mmではAW-5754)も切断した。結果を図6に示す。さまざまなレーザの達成可能な速度の解析は,両方の材料で同様の挙動を示す。2kWダイオードレーザは,パワーが同一であれば全厚み範囲でCO2レーザよりも速く,薄いシートでは4kWバージョンのCO2レーザと同様の性能を有する。試験したファイバレーザは,アシストガスとレて不活性ガスを使用した場合,薄い材料では他のレーザよりも明らかに速い。) (ケ)36頁下欄 Fig. 6. The optimized cutting speeds (m/min)for stainless steel 304(a) and aluminium alloys(b) for the considered lasers. ( 図6:検討したレーザの,ステンレス鋼304(a)およびアルミニウム合金(b)に対する最適化切断速度(m/min)) (コ)37頁上欄 Fig.7. Optimized cutting speeds (m/min)for the cut of structural steel compared for the considered lasers(left)and images of the best diode laser cuts for structural steel(taken with Zeiss Discovery V20 microscope, magnification ×3). ( 図7.構造用鋼に対する最適化切断速度(m/min)及び検討したダイオードレーザによる切断面の画像(Zeiss Discovery V20 microscope,倍率3倍で撮影)) (サ)37頁左欄6~8行 「The beam power and the oxygen gas pressure balance each other to achieve a stable cut [33].」 (ビームパワー及び酸素ガス圧力の互いのバランスにより安定した切断を実現する[33]。) (シ)37頁左欄16~18行 「Fig. 7 shows the results of the cuts for structural steel (EN10025 :2004 S235 up to 4mm and S355 for higher thickness),」 (図7は,構造用鋼(EN10025:2004 S235(4mm厚まで)及びS355(より厚みの厚い))を切断した結果を示す。) (ス)上記(ア)及び(イ)から,ダイレクトダイオードレーザ(DDL)を用いて金属をレーザ切断する装置において,808nm,915nm,940nm及び980nmの4つの波長からなるDDL光源と,コア光ファイバと,コリメーティングレンズ及び集束レンズかならレーザヘッドを有する装置が認識できる。 また,それぞれの波長の最大出力は,372W,841W,817W及び826wであり,合計すると最大出力は2.9kW程度であることが認識できる。 (セ)上記(ウ)及び(エ)から,上記mに記載した4つの波長の中間的な926nmにおいて,125mmの集束レンズを用いた場合,ビームパラメータ積が24.214mm・mradであり,スポット半径が0.174mmすなわち集光直径が0.348mm=348μmであることが認識できる。 (ソ)上記(オ)から,図2には,異なる波長における入射角の吸収率が示されている。図2に示されるように,ダイオードレーザとファイバレーザは,波長のわずかな差異に起因し,同様の傾向が示されている。鉄とアルミニウムの両方場合において,短波長であると,入射角が小さい場合に吸収率を増加させることが示されている。また,図2からは,アルミニウムの場合,入射角が70 °のときの吸収率が0.40であることを読み取ることができる。すなわち,前述したようにダイレクトレーザの集束レンズが125mmの場合,集光直径が348μmであることから,多波長レーザ光の集光直径に対する,入射角70 °における吸収率の比が0.11%/μm(40%/348μmの計算により算出)であることが理解できる。 また,同様に計算すると,鉄の場合は0.13%/μm(45%/348μmの計算により算出)であることが理解できる。 (タ)上記(カ)から,切断速度は,レーザパワーに比例し,被加工材の吸収率に比例し,被加工材の融解エネルギ(材料密度X単位質量当たりのエンタルピー)に反比例し,ビーム直径(カープ幅)に反比例し,被加工材の厚みに反比例する,ことが理解できる。 (チ)上記(ク),(ケ)及び(コ)から,次の点が開示されていると理解できる。 図6aから,1mmの厚さを有するステンレス鋼304Lをダイオードレーザを用いて切断する際の最適化された切断速度は11m/分(183.3mm/秒)であることを読み取ることができる。ここで,被加工材の単位切断長さ当たりのジュール熱は,レーザパワーを切断速度で除することにより求めることができ,2kW(2000W)ダイオードレーザの場合,10.9J/mmであることを読み取ることができる。 図6aから,2mmの厚さを有するステンレス鋼304Lをダイオードレーザを用いて切断する際の最適化された切断速度は5m/分(83.3mm/秒)であることを読み取ることができる。また,2kW(2000W)ダイオードレーザの場合,被加工材の単位切断長さ当たりのジュール熱が24.0J/mmであることを読み取ることができる。 図6aから,4mmの厚さを有するステンレス鋼304Lをダイオードレーザを用いて切断する際の最適化された切断速度は1.45m/分(24.2mm/秒)であることを読み取ることができる。また,2kW(2000W)ダイオードレーザの場合,被加工材の単位切断長さ当たりのジュール熱が82.6J/mmであることを読み取ることができる。 図6aから,8mmの厚さを有するステンレス鋼304Lをダイオードレーザを用いて切断する際の最適化された切断速度は0.55m/分(9.2mm/秒)であることを読み取ることができる。また,2kW(2000W)ダイオードレーザの場合,被加工材の単位切断長さ当たりのジュール熱が217.3J/mmであることを読み取ることができる。 図6bから,1mmの厚さを有するアルミニウム合金をダイオードレーザを用いて切断する際の最適化された切断速度は13m/分(216.7mm/秒)であることを読み取ることができる。また,2kW(2000W)ダイオードレーザの場合,被加工材の単位切断長さ当たりのジュール熱が9.2J/mmであることを読み取ることができる。 図6bから,2mmの厚さを有するアルミニウム合金をダイオードレーザを用いて切断する際の最適化された切断速度は6m/分(100.0mm/秒)であることを読み取ることができる。また,2kW(2000W)ダイオードレーザの場合,被加工材の単位切断長さ当たりのジュール熱が20.0J/mmであることを読み取ることができる。 図6bから,4mmの厚さを有するアルミニウム合金をダイオードレーザを用いて切断する際の最適化された切断速度は2m/分(33.3mm/秒)。であることを読み取ることができる。また,2kW(2000W)ダイオードレーザの場合,被加工材の単位切断長さ当たりのジュール熱が60.6J/mmであることを読み取ることができる。 図6bから,6mmの厚さを有するアルミニウム合金をダイオードレーザを用いて切断する際の最適化された切断速度は1m/分(16.7mm/秒)であることを読み取ることができる。また,2kW(2000W)ダイオードレーザの場合,被加工材の単位切断長さ当たりのジュール熱が119.7J/mmであることを読み取ることができる。 図6a及び図6bから,同一のレーザ光源を用いてレーザ切断を行っても,被切断材の材料が異なると,最適化された切断速度が異なることを読み取ることができる。 図6a及び図6bの各々から,同一のレーザ光源を用いてレーザ切断を行っても,被切断材の厚さが異なると,最適化された切断速度が異なることを読み取ることができる。 図6a及び図6bの各々から,被切断材の材料及び厚さが同一であっても,レーザ光源の出力が異なると,最適化された切断速度が異なることを読み取ることができる。 図7から,1mmの厚さを有する構造用鋼をダイオードレーザを用いて切断する際の最適化された切断速度は12.5m/分(208.3mm/秒)であることを読み取ることができる。また,2kW(2000W)ダイオードレーザの場合,被加工材の単位切断長さ当たりのジュール熱が9.6J/mmであることを読み取ることができる。 図7から,2mmの厚さを有する構造用鋼をダイオードレーザを用いて切断する際の最適化された切断速度は5.25m/分(87.5mm/秒)であることを読み取ることができる。また,2kW(2000W)ダイオードレーザの場合,被加工材の単位切断長さ当たりのジュール熱が22.9J/mmであることを読み取ることができる。 図7から,4mmの厚さを有する構造用鋼をダイオードレーザを用いて切断する際の最適化された切断速度は3.25ミリ/分(54.1mm/秒)であることを読み取ることができる。また,2kW(2000W)ダイオードレーザの場合,被加工材の単位切断長さ当たりのジュール熱が37.0J/mmであることを読み取ることができる。 図7から,6mmの厚さを有する構造用鋼をダイオードレーザを用いて切断する際の最適化された切断速度は1.9ミリ/分(31.7mm/秒)であることを読み取ることができる。また,2kW(2000W)ダイオードレーザの場合,被加工材の単位切断長さ当たりのジュール熱が63.1J/mmであることを読み取ることができる。 図7から,8mmの厚さを有する構造用鋼をダイオードレーザを用いて切断する際の最適化された切断速度は1.3ミリ/分(21.6mm/秒)であることを読み取ることができる。また,2kW(2000W)ダイオードレーザの場合,被加工材の単位切断長さ当たりのジュール熱が92.6J/mmであることを読み取ることができる。 図7から,10mmの厚さを有する構造用鋼をダイオードレーザを用いて切断する際の最適化された切断速度は1.0ミリ/分(16.7mm/秒)であることを読み取ることができる。また2kW(2000W)ダイオードレーザの場合,被加工材の単位切断長さ当たりのジュール熱が119.8J/mmであることを読み取ることができる。 図7の各々から,被切断材の材料及び厚さが同一であっても,レーザ光源の出力が異なると,最適化された切断速度が異なることを読み取ることができる。 特に,本件発明に関する実施例としては,例えば,上記下線を付した例が挙げられる。 (ツ)上記(サ)より,甲第1号証で引用されている参考文献[33](甲第3号証)には,アシストガスの圧力を0.5 bar(≒0.05MPa)とすることが開示されており,甲第1号証に記載されている発明を実施しようとすれば,アシストガスの圧力を0.05MPaとすることは当然に認識する事項である。 (テ)以上より,甲第1号証には次の発明が開示されていると認められる。 「808nm,915nm,940nm及び980nmの4つの波長からなるDDL光源と, コア光ファイバと, コリメーティングレンズ及び集束レンズからなるレーザヘッドと,を備え, 切断速度は,レーザパワーに比例し,被加工材の吸収率に比例し,被加工材の融解エネルギ(材料密度×単位質量当たりのエンタルピー)に反比例し,ビーム直径(カーフ幅)に反比例し,被加工材の厚みに反比例し, レーザ光の集光直径が,348μmであり, レーザ光の集光直径に対する,入射角70°における吸収率の比を0.11(%/μm)とし, 被加工材に吹き付けるアシストガスの圧力を0.05MPaとし, 被加工材が2mmのアルミニウム合金であり, 被加工材の単位長さ当たりのジュール熱が20.0J/mmであり, 被加工材の切断速度を100mm/秒(6m/分)とするダイレクトダイオードレーザ加工装置」(以下,「引用発明1」という。) 「808nm,915nm,940nm及び980nmの4つの波長からなるDDL光源と, コア光ファイバと, コリメーティングレンズ及び集束レンズからなるレーザヘッドと,を備え, 切断速度は,レーザパワーに比例し,被加工材の吸収率に比例し,被加工材の融解エネルギ(材料密度×単位質量当たりのエンタルピー)に反比例し,ビーム直径(カーフ幅)に反比例し,被加工材の厚みに反比例し, レーザ光の集光直径が,348μmであり, レーザ光の集光直径に対する,入射角70°における吸収率の比を0.13(%/μm)とし, 被加工材に吹き付けるアシストガスの圧力を0.05MPaとし, 被加工材が4mmの構造用鋼(EN10025:2004 S235)であり, 被加工材の単位長さ当たりのジュール熱が37.0J/mmであり, 被加工材の切断速度を54.1mm/秒とするダイレクトダイオードレーザ加工装置」(以下,「引用発明2」という。) イ 甲第3号証 取消理由通知(決定の予告)において引用した甲第3号証(E.Fallahi Sichani,外3名,“Monitoring and adaptive control of CO2 laser flame cutting”,Physics Procedia,ELSEVIER,2010年,第5巻,p.483-492)には,491頁6行~491頁8行に次の事項が記載されている。 「The optimisation resulted in a cutting speed increase of approximately 21 % (or 168 mm/min)as a result of an increase of the duty cycle and the gas pressure (respectively set at 75 % and 0.5 bar in the standard cutting technology database).」 (この最適化により,デューティサイクル及びガス圧の増加の結果として,約21%(又は168mm/分)の切断速度の増加をもたらした(標準切断技術データベースではそれぞれ75%及び0.5barに設定された) 。) また,491頁中段には次の事項が記載されている。 「Fig.8 Control and optimisation of linear cutting of HARDOX-400 25 mm starting from standard process settings」 (図8 標準プロセス設定から開始して25mmの線形切断時における制御及び最適化) ウ 甲第4号証 取消理由通知(決定の予告)において引用した甲第4号証(特開2013-193106号公報)には,次の技術的事項が記載されている。 「【0025】 以下,本発明の表面保護シートの用途について説明する。 図1は本発明の表面保護シートがレーザー切断加工に供される被加工材に貼付して使用される態様を示している。表面保護シート1はレーザービーム6の照射により切断加工されるワーク(被加工材)2のレーザービームの照射面に貼付される。図1に示す装置では,レーザービーム6は,加工ヘッド3の集光レンズ31で集光された後,ノズル4からワーク2に照射される。但し,本発明ではレーザービームの発生装置は図示されたものに限定されない。レーザービーム6は,通常,炭酸ガスレーザーであるが,YAGレーザー,ファイバーレーザー等であってもよい。ノズル4からは,レーザービーム6と共に,アシストガス7が0.5~1.5MPa程度の高圧でワーク2に吹きつけられる。このアシストガス7は,ガスボンベなどといったガス供給手段5から,導入管51およびガス導入口41を経由して供給される。このアシストガス7は,ワーク2の材質及び要求される切断面品質に応じて各種ガスが使い分けられるが,典型的には,窒素ガスや空気などが用いられる。」 エ 甲第5号証 取消理由通知(決定の予告)において引用した甲第5号証(特開2013-191712号公報)には,次の技術的事項が記載されている。 「【0004】 電子部品用基板としては,セラミックまたは金属から形成された基板本体上に樹脂層が積層された積層基板がよく用いられる。このような積層基板は,例えば,ダイサーによる切断(ダイシング)またはレーザ光により切断される。例えば,特許文献1では,電子部品チップを樹脂封止したリードフレームを,レーザ光により切断している。」 「【0033】 さらに,図3(b)に示すように,積層基板10の上方からダイサーの刃31を除去し,これに代えて,レーザ光32照射用のレーザ(図示せず),および,アシストガス34噴射用のノズル33を配置する。ノズル33は,アシストガス34を,レーザ光32と同軸上において高圧で噴射可能な同軸高圧ノズルであることが好ましい。より具体的には,例えば,0.5MPa以上,好ましくは2MPa程度の高圧ガスに対応した同軸ノズル仕様であっても良い。」 オ 甲第8号証 特許異議申立人が,平成30年1月26日に提出し,取消理由通知(決定の予告)において引用した甲第8号証(Robin K.Huang,外6名,“Direct diode lasers with comparable beam quality to fiber,CO2,and solid state lasers”,High-Power Diode Laser Technology and Applications X,SPIE,2012年,Proceedings Volume 8241 824102,p.1-6)には,4頁第2パラグラフに次の事項が記載されている(下線は,理解のため当審にて付した。以下同様。)。 「TeraDiode has demonstrated a laser that outputs >2,000 W out of an industrial process ing fiber.See Figure 6. The industrial processing fiber is LLK-D compatible. Two different processing output fibers were used, and for both the fiber parameters are measured at 95% power content: 100m/0.13 NA and 50in/0.15 NA. For the latter demonstration, the Beam Parameter Product of 3.75mm-mrad is the lowest BPP for a multi-kW-class direct diode laser that has been demonstrated. We believe that this laser will be very suitable for kW- class industrial laser cutting of sheet metal at industrial processing speeds」 (TeraDiode社は,産業用加工用ファイバから2,000 W以上の出力を持つレーザを実証した。図6に示すように,産業用加工繊維はLLK-Dと互換性がある。2つの異なる処理出力ファイバを使用し,両方のファイバパラメータについて,95%出力量:100μm/0.13NAおよび50μm/0.15NAで測定した。後者のデモンストレーションでは,BPPは,3.75mm-mradであり,実証されているマルチkWクラスのダイレクトダイオードレーザにおいて最低のBPPである。このレーザは,工業的な加工速度において板金をkW級の産業用レーザー切断することに非常に適していると考えられる。) カ 甲第10号証 特許異議申立人が,平成30年1月26日に提出し,取消理由通知(決定の予告)において引用した甲第10号証(特開2012-43849号公報)には,次の技術的事項が記載されている。 「【0006】 図7は,1ミクロン波長帯で,出力4kW,ビームパラメータ積(BPP値)が0.34mm-mradから8mm-mradまでの窒素切断で最大切断速度の板厚への依存性を示すグラフである。 【0007】 図7に示すように,板厚が5mmを越えると,切断速度のビームパラメータ積(BPP値)への依存性はほとんど無い。一方,板厚が5mm以下だと,BPP値が小さいほうが速く切れる。つまり,厚い金属板を切断する場合には,最高切断速度は,ただ単にレーザ総出力に依存するだけで,BPP値にはあまり依存しない。しかし,厚さ数mm未満の薄板を切断する場合には,BPP値が最高切断速度に及ぼす影響が大きくなる。」 (3)対比・判断 ア 本件発明1 本件発明1と引用発明1とを対比する。 引用発明1の「808nm,915nm,940nm及び980nmの4つの波長からなるDDL光源」は,4つの波長の光源を有しているから,本件発明1の「多波長のレーザ光を発振するレーザ共振器」に相当する。 同様に,引用発明1の「コア光ファイバ」は,本件発明1の「レーザ共振器により発振された多波長のレーザ光を伝送する伝送ファイバ」に相当し, 「コリメーティングレンズ及び集束レンズからなるレーザヘッド」は「前記伝送ファイバにより伝送された多波長のレーザ光を集光して被加工材を加工するレーザ加工機」に相当する。 さらに,引用発明1の「切断速度は,レーザパワーに比例し,被加工材の吸収率に比例し,被加工材の融解エネルギ(材料密度×単位質量当たりのエンタルピー)に反比例し,ビーム直径(カーフ幅)に反比例し,被加工材の厚みに反比例し」は,本件発明1の「前記切断速度Vは,レーザパワーPと,被加工材の吸収率とに比例し,被加工材の融解エネルギー又は蒸発エネルギーEと,ビーム直径dと,板厚tに反比例し」に相当する。ここで,本件発明1の「被加工材の吸収率とに比例し」と「板厚tに反比例し」に,引用発明1が相当する以上,引用発明においても「前記被加工材の厚さ及び吸収率に基づいて」いることになる。 次に,本件発明1の「多波長」について検討する。引用発明1は上述のように,4種類の波長が示されているところ,本件発明1に関して,実施例を参照しても,具体的にどのような波長のレーザをいくつ組み合わせるのか不明であり,引用発明1に具体的に示された,「915nm」と「940nm」の2つの波長を組み合わせた場合でも含むような表現となっている。そして,波長が大きく異ならなければ,その振る舞いも大きく異ならないのが通常であり,本件発明1の「多波長」という文言自体で,次に示す相当関係が成り立たないと認めることはできない。 引き続き相当関係を示す。 引用発明1の「808nm,915nm,940nm及び980nmの4つの波長」は,本件発明1の「前記多波長のレーザ光の波長を,1000nm未満」に相当し, 「被加工材の切断速度を100mm/秒(6m/分)」は,「記被加工材の切断速度Vを,0.1m/min~60m/minに制御」に, 「レーザ光の集光直径が,348μm」は,「前記多波長のレーザ光の集光直径を247μm~364μmに制御」に, 「レーザ光の集光直径に対する,入射角70°における吸収率の比を0.11(%/μm)」は,「前記多波長のレーザ光の集光直径に対する,入射角70°における吸収率の比を0.042(%/μm)~0.11(%/μm)に制御」に, 「被加工材に吹き付けるアシストガスの圧力を0.05MPa」は,「前記被加工材に吹き付けるアシストガスの圧力を0.05MPa~1.5MPaに制御」に,それぞれ相当する。 してみると,一致点,相違点は次のとおりである。 <一致点> 多波長のレーザ光を発振するレーザ共振器と, 前記レーザ共振器により発振された多波長のレーザ光を伝送する伝送ファイバと, 前記伝送ファイバにより伝送された多波長のレーザ光を集光して被加工材を加工するレーザ加工機と,を備え, 前記被加工材の厚さ及び吸収率に基づいて, 前記多波長のレーザ光の波長を,1000nm未満に制御し, 前記被加工材の切断速度Vを,0.1m/min~60m/minに制御し, 前記切断速度Vは,レーザパワーPと,被加工材の吸収率とに比例し,被加工材の融解エネルギー又は蒸発エネルギーEと,ビーム直径dと,板厚tに反比例し, 前記多波長のレーザ光の集光直径を247μm~364μmに制御し, 前記多波長のレーザ光の集光直径に対する,入射角70°における吸収率の比を0.042(%/μm)~0.11(%/μm)に制御し, 前記被加工材に吹き付けるアシストガスの圧力を0.05MPa~1.5MPaに制御する ことを特徴とするダイレクトダイオードレーザ加工装置。 <相違点1> 本件発明1は,「多波長のレーザ光のビームパラメータ積」が,「4mm・mrad~20mm・mrad」であるのに対し,引用発明1は,「レーザ光のビームパラメータ積」が,「24.214mm・mrad」である点。 相違点1について検討する。 甲第1号証には,表2にダイオードレーザの場合で,「レーザ光のビームパラメータ積」が,「26.677mm・mrad」,「22.808mm・mrad」が示され,ファイバレーザの場合では,「3.377mm・mrad」,CO2レーザの場合では,「12.633mm・mrad」が,示されている。 そして,甲第10号証に,ビームパラメータ積が切断速度に関係することが示されているように,「レーザ光のビームパラメータ積」をどのように設定するかは,レンズや波長等と同様に,切断速度等の求められる条件に応じて適宜設定する程度の事項と認められる。 特に,甲第10号証には「板厚が5mm以下だと,BPP値が小さいほうが速く切れる。」と記載されているように,BPP値を小さくした方がよいとの技術思想が示されている。 さらに,甲第8号証にダイオードレーザにおけるレーザ光のビームパラメータ積として「3.75mm・mrad」が示されている以上,甲第1号証に接した当業者であれば,当時実現可能なビームパラメータ積の範囲内で,より小さいBPPを選択することが十分可能であれば適宜実施をしてみようという発想は普通に想到しうる事項にすぎず,3.75mm・mrad~20mm・mrad程度の範囲で,例えば,甲第1号証にCO2レーザとして示されている「12.633mm・mrad」で実施してみることに困難性は認められない。 また,本件特許明細書には,「ビームパラメータ積」が10.3mm・mradの実施例が示されているものの,「10.3」という数値自体に,格別の点は認められず,「ビームパラメータ積」の値をいくつとするかは,使用に適した範囲内での単なる選択にすぎないものと認められる。 したがって,本件発明1は,上記引用発明1及び甲第3,8,10号証に記載された技術的事項並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 イ 本件発明2 本件発明2と引用発明1とを対比する。 引用発明1の「被加工材の単位長さ当たりのジュール熱が20.0J/mm」は,本件発明2の「前記被加工材の単位切断長さ当たりのジュール熱を6.9J/mm~137.1J/mmに制御する」に相当する。 してみると,本件発明2と引用発明1とは,上記相違点1以外の相違はない。 したがって,上記アの検討と同様の理由により,本件発明2は,上記引用発明1及び甲第3,8,10号証に記載された技術的事項並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 ウ 本件発明3 本件発明3は,被加工材が「軟鋼」に限定された発明である。 ここで,本件発明3と引用発明2とを対比すると,上記相違点1に加えて,次の点で相違する。 <相違点2> 本件発明3は,「前記多波長のレーザ光の集光直径に対する,入射角70°における吸収率の比を0.042(%/μm)~0.11(%/μm)に制御」しているのに対し,引用発明2は「レーザ光の集光直径に対する,入射角70°における吸収率の比を0.13(%/μm)」である点。 <相違点3> 本件発明3は,被加工材が「軟鋼」であるのに対し,引用発明2は「構造用鋼(EN10025:2004 S235)」である点。 相違点2について検討すると,相違点2は,甲第1号証の図2aと,本件の図9aとの差異に基づくものである。測定手法にどのような差異があるのか不明であるが,引用発明2を実施しようとして,本件発明3と同じ被加工材を用いて,本件発明3と同じ測定手法を用いれば,上記「吸収率の比」は当然に「0.11(%/μm)」になると考えられるから,相違点2は実質的な相違点とは言えない。 次に相違点3について検討すると,本件発明3における「軟鋼」が具体的にどのような成分を含有するものが含まれるのかは一概に明らかではないものの,一般的に「軟鋼」とは,比較的やわらかい炭素比率が低いものを言い,鉄骨,橋梁に用いられることが知られており,かたや「構造用鋼」は,その名称のとおり構造材に用いられる鋼種を指すのであるから,両者の性質に大きな相違があるものではなく,引用発明2において「軟鋼」を用いることは単なる用途呼称を性質呼称に言い換えた程度の事項にすぎない。 以上より,上記アにおける,相違点1の検討を含めて,本件発明3は,上記引用発明2及び甲第3,8,10号証に記載された技術的事項並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 エ 本件発明4 本件発明4と引用発明1とを対比すると,上記相違点1に加えて次の点で相違する。 <相違点4> 本件発明4は,「被加工材に吹き付けるアシストガスの圧力」が,「0.8MPa~1.5MPa」であるに対し,引用発明1は,「被加工材に吹き付けるアシストガスの圧力」が,「0.05MPa」である点。 <相違点5> 本件発明4は,被加工材が「アルミニウム」であるに対し,引用発明1は,「アルミニウム合金」である点。 相違点4について検討する。 甲第1号証に「ビームパワー及び酸素ガス圧力の互いのバランスにより安定した切断を実現する」と記載されているように,アシストガスの圧力は,ビームパワー等の他の条件に応じて適宜設定する程度の事項にすぎない。 そして,甲第4,5号証に示されているように,アシストガスの圧力として,0.5~1.5MPa程度の圧力は通常用いられている範囲であり,0.5~1.5MPa程度の圧力で実施するという発想を得ることに困難性があったものとは認められない。 また,本件特許明細書には,「アシストガスの圧力」が0.05MPa~1.5MPaのものが示されているが,0.8MPa以上に限定することに格別の創意工夫が必要であったものとも認められない。 さらに相違点5について検討する。 通常,引用発明1のレーザ切断装置が切断する材料は,3.(2)ア(ア)で金属シートと記載されているように,純アルミニウムのみを切断加工材料とすることはなく,本件発明4においてもアルミニウム合金を切断することは当然に行われることであり,実質的な相違点ではない。 したがって,上記アで検討した相違点1と併せて,本件発明4は,上記引用発明1及び甲第3,4,5,8,10号証に記載された技術的事項並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 オ 本件発明5 本件発明5は本件発明1~4のいずれかを引用して,加工方法として記載されたものである。 そして,引用発明1の加工装置で加工を行うことは当然であるから,本件発明5は上記アと同様に,上記引用発明1及び甲第3,8,10号証に記載された技術的事項並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.特許権者の主張について 特許権者は,平成30年6月1日提出の意見書の第4~5ページにおいて,次のように主張している。 「(ウ)・・ しかしながら,本件特許出願当時,CO2レーザであれば,3.75mm・mrad~26.677mm・mradの範囲のビームパラメータ積は,実現可能であったが,・・ダイオードレーザでは,2015年当時(出願から8月後)でもなお,20mm・mradより大きいものが一般的技術水準であったのである。そうすると,甲第3,8,10号証のいずれにも,『前記多波長のレーザ光のビームパラメータ積を,4mm・mrad~20mm・mradに制御』することについては記載も示唆もないから,本件特許出願前では,本件発明1の『前記多波長のレーザ光のビームパラメータ積を,4mm・mrad~20mm・mradに制御』することは,机上の空論でしかなく,実現できなかったのである。」 しかしながら,上記3.(1)の相違点1の判断において示したように,ビームパラメータ積が小さい方が切断速度が速くなるという技術思想が甲第10号証に示されているのであるから,より小さいビームパラメータ積を用いるという技術思想は容易に想到し得たものであり,甲第8号証に3.75mm・mradが示されている以上,ダイオードレーザのビームパラメータ積の下限常識は,少なくとも3.75mm・mradであったというべきであり,さらに,市販レベルで実現されない限り技術思想として認められないということもできないから,当該主張は採用することはできない。 5.むすび 以上のとおり,本件発明1~3及び5は甲第1号証に記載された発明,甲第3,8,10号証に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて,本件発明4は甲第1号証に記載された発明,甲第3~5,8,10号証に記載された技術的事項及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件発明1~5に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 したがって,本件発明1~5に係る特許は,特許法第113条第2号に該当し,取り消されるべきものである。 よって,結論のとおり決定する。

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2017-700724

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