特許異議申立
2024-701173
ガス製造装置、ガス製造システムおよびガス製造方法
- 審判番号
- 2024-701173
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-132505
- 登録番号
- 7497243
- 請求日
- 2024年12月06日
- 審決日
- 2025年03月05日
- 公報発行日
- 2025年04月25日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】積水化学工業株式会社
- 【権利者代理人】駒井 慎二
- 【権利者代理人】井上 彰文
- 【異議申立人】藤本 信男
- 審判長/審判官
- 審判長 深草 祐一
- 審判官 塩谷 領大
- 審判官 河本 充雄
- 分類
- P1651.113-Y (C01B) / P1651.121-Y (C01B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7497243号発明「ガス製造装置、ガス製造システムおよびガス製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7497243号の請求項1~13に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7497243号の請求項1~13に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、令和2年8月4日(優先権主張 令和1年9月24日)に出願され、令和6年5月31日にその特許権の設定登録がされ、同年6月10日に特許掲載公報が発行された。
その後、その請求項1~13に係る特許に対し、同年12月6日に特許異議申立人 藤本信男(以下、「申立人」という。)により、特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~13に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明13」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~13に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
二酸化炭素を含む原料ガスと、前記二酸化炭素を還元する金属酸化物を含む還元剤とを接触させて、一酸化炭素を含む生成ガスを製造するガス製造装置であって、
前記原料ガスを供給する原料ガス供給部と、
前記原料ガス供給部に接続され、前記還元剤を収納する少なくとも1つの反応器を備える反応部と、
前記原料ガス供給部と前記反応器との間に設けられ、前記原料ガス中に含まれる酸素の濃度を調整する濃度調整部と、
前記濃度調整部は、前記原料ガス中に含まれる前記酸素を除去する酸素除去装置を備え、前記原料ガス中に含まれる前記酸素の濃度を1体積%未満に調整するように構成されていることを特徴とするガス製造装置。
【請求項2】
前記酸素除去装置は、化学吸収もしくは化学吸着式の分離機である請求項1に記載のガス製造装置。
【請求項3】
さらに、前記二酸化炭素との接触により酸化された前記還元剤を還元する水素を含む還元ガスを供給する還元ガス供給部を有し、
前記還元ガス供給部は、再生可能エネルギーとしての電力を使用して、前記水素を発生させる水素発生装置を備える請求項1または2に記載のガス製造装置。
【請求項4】
前記水素は、水の電気分解により発生した水素を含む請求項3に記載のガス製造装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの反応器は、複数の前記反応器を含み、
各前記反応器は、前記原料ガス供給部および前記還元ガス供給部の少なくとも一方に接続され、各前記反応器に供給する前記原料ガスと前記還元ガスとを切換可能または前記反応器同士の間で前記還元剤を移動可能である請求項1~4のいずれか1項に記載のガス製造装置。
【請求項6】
さらに、前記反応器を通過した後のガス同士を合流させて、混合ガスを生成するガス合流部を有する請求項5に記載のガス製造装置。
【請求項7】
さらに、各前記反応器に接続され、互いに独立したガスラインを有する請求項5に記載のガス製造装置。
【請求項8】
前記金属酸化物は、第3族~第12族に属する金属元素から選択される少なくとも1種を含有する請求項1~7のいずれか1項に記載のガス製造装置。
【請求項9】
二酸化炭素を含む原料ガスを生成する原料ガス生成部と、
請求項1~8のいずれか1項に記載のガス製造装置とを備え、
前記ガス製造装置が、前記原料ガス供給部を介して前記原料ガス生成部に接続されていることを特徴とするガス製造システム。
【請求項10】
二酸化炭素を含む原料ガスと、前記二酸化炭素を還元する金属酸化物を含む還元剤とを接触させて、一酸化炭素を含む生成ガスを製造するガス製造方法であって、
前記還元剤を収納する少なくとも1つの反応器と、前記原料ガスとを準備し、
前記反応器内において前記還元剤に前記原料ガスを接触させて、前記二酸化炭素を前記一酸化炭素に変換し、
前記反応器を通過したガスをそのまま、または、前記反応器を通過したガスから前記一酸化炭素を精製することにより、前記生成ガスとして回収するのに際して、
前記反応器に供給するのに先立って、前記原料ガス中に含まれる酸素を酸素除去装置により除去することにより、前記原料ガス中に含まれる前記酸素の濃度を1体積%未満に調整することを特徴とするガス製造方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つの反応器は、複数の前記反応器を含み、
該複数の反応器および前記原料ガスとともに、さらに、前記二酸化炭素との接触により酸化された前記還元剤を還元する水素を含む還元ガスを準備し、
前記原料ガスと前記還元ガスとを供給する前記反応器を切り換えることにより、各前記反応器内において前記還元剤に前記原料ガスと前記還元ガスとを交互に接触させて、前記二酸化炭素を前記一酸化炭素に変換した後、前記酸化された還元剤を還元する請求項10に記載のガス製造方法。
【請求項12】
前記反応器を通過した後のガス同士を合流させて、混合ガスを生成し、
前記混合ガスをそのまま、または、前記混合ガスから前記一酸化炭素を精製することにより、前記生成ガスとして回収する請求項11に記載のガス製造方法。
【請求項13】
各前記反応器を通過した後のガスを、互いに独立して処理する請求項11に記載のガス製造方法。」
第3 申立理由の概要
申立人は、証拠として甲第1号証~甲第14号証(以下、「甲1」~「甲14」という。)を提出し、以下の理由により、請求項1~13に係る特許を取り消すべきものである旨主張している。
1 申立理由1(新規性)
請求項1、2、5、7~11、13に係る発明は、甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、2、5、7~11、13に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
2 申立理由2(進歩性)
請求項1~13に係る発明は、甲1に記載された発明及び周知技術(甲2~甲14)に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~13に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
[証拠方法]
甲1:国際公開第2019/163968号
甲2:特開2019-69417号公報
甲3:特開2019-98284号公報
甲4:特開2003-166013号公報
甲5:特開2010-255087号公報
甲6:Yolanda A, et al. "Isothermal reverse water gas shift chemical looping on La0.75Sr0.25Co(1-Y)FeYO3 perovskite-type oxides", Catalysis Today, 258, 2015, p.691-698
甲7:特開2017-77521号公報
甲8:特開2012-36029号公報
甲9:国際公開第2011/136045号
甲10:特許第6204547号公報
甲11:特開2019-132510号公報
甲12:特開2018-53314号公報
甲13:特開2017-20053号公報
甲14:特開2018-104282号公報
第4 甲号証の記載及び甲号証に記載された発明
1 甲1(国際公開第2019/163968号)
(1)甲1には、以下の記載がある(当審注:下線は当審が付与した。以下、同様である。)。
「[0006] 本発明者らは、鋭意検討の結果、二酸化炭素を再生利用エネルギー又は排熱により加熱することで、二酸化炭素削減に寄与できること見出し、以下の本発明を完成させた。本発明の要旨は、以下の[1]~[12]に示すとおりである。
[1]二酸化炭素を還元させる還元装置と、
二酸化炭素を前記還元装置に輸送する輸送経路とを備え、
前記輸送経路において、再生利用エネルギーおよび排熱の少なくともいずれかにより二酸化炭素を加熱させる、二酸化炭素還元システム。
・・・
[4]さらに二酸化炭素分離装置を備え、
前記輸送経路の二酸化炭素が、前記二酸化炭素分離装置により二酸化炭素を含む排気ガスから二酸化炭素を分離されたものである、上記[1]~[3]のいずれか1項に記載の二酸化炭素還元システム。」
「発明を実施するための形態
[0010] 以下、図面を参照して、本発明の二酸化炭素還元システム、及び二酸化炭素還元方法を説明する。図1に示すように、本発明の二酸化炭素還元システム1は、輸送経路4と、還元装置5とを備える。
好ましい一実施形態において、本発明の二酸化炭素還元システム1は二酸化炭素分離装置3をさらに含む。二酸化炭素を含む排気ガスは、一般的に二酸化炭素濃度が十分に高いとはいえず、そのまま利用しても効率的に有用物質が生成できるとはいえない。しかし、二酸化炭素分離装置3により排気ガスに含まれる二酸化炭素を分離したうえで加熱し、その加熱された二酸化炭素を還元することで、排気ガスに含まれる二酸化炭素を効率よく還元を行うことができる。
以下、好ましい一実施形態について詳細に説明する。
・・・
[0032](二酸化炭素分離装置)
二酸化炭素分離装置30は、燃料炉11から送られてきた排気ガスから二酸化炭素を分離する。二酸化炭素分離装置30の分離方式としては、特に限定されないが、化学吸収法、固体吸収法、膜分離法などが挙げられる。・・・
[0033] 本発明において二酸化炭素分離装置30における二酸化炭素の分離とは、厳密に排気ガスから二酸化炭素を単離する必要はなく、二酸化炭素の含有率が高められたガスと、その他のガスとに分離されればよい。二酸化炭素の含有率が高められたガスにおける二酸化炭素の含有率は、好ましくは30~100質量%、より好ましくは55~99質量%である。・・・
・・・
[0038] 還元装置50では、供給された二酸化炭素が還元される。ここで、二酸化炭素の還元により得られる物質は、一酸化炭素でもよいし、メタン、メタノール、酢酸、エタン、エチレンなどの有機物質でもよいが、一酸化炭素が好ましい。還元装置50は、吸熱反応により還元を行うとよいが、好ましくは逆シフト反応を行う逆シフト反応装置であることが好ましく、より好ましくはケミカルルーピング型反応装置である。
・・・
[0043] また、逆シフト反応は、より好ましい態様として、ケミカルルーピング型反応がある。ケミカルルーピング型反応で使用する反応装置(ケミカルルーピング型反応装置)は、第1及び第2の反応器を備え、上記した式(1)で表される反応が、第1及び第2の反応として、第1及び第2の反応器それぞれに分割して行われる。具体的には、第1及び第2の反応器それぞれに金属酸化物触媒を充填して、一方の反応器にて二酸化炭素を一酸化炭素に還元する第1の反応を、他方の反応器にて水素を水に酸化する第2の反応を行う。
[0044] CO2(ガス) + MOx-1(固体) →CO(ガス) + MOx(固体) (2)
H2(ガス) + MOx(固体) →H2O(ガス)+MOx-1(固体) (3)
(なお、式(2)、(3)において、Mは金属を表し、xは正の整数を表す。)」
(2)甲1に記載された発明
上記(1)の記載によれば、甲1には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる(当審注:括弧内は根拠となる甲1の段落番号等である。)。
「二酸化炭素を還元させる還元装置と、
二酸化炭素を前記還元装置に輸送する輸送経路とを備え、
前記輸送経路において、再生利用エネルギーおよび排熱の少なくともいずれかにより二酸化炭素を加熱させる、二酸化炭素還元システムであって、
さらに二酸化炭素分離装置を備え、
前記輸送経路の二酸化炭素が、前記二酸化炭素分離装置により二酸化炭素を含む排気ガスから二酸化炭素を分離されたものであり、([0006])
二酸化炭素分離装置30は、燃料炉11から送られてきた排気ガスから二酸化炭素を分離するものであり、([0032])
二酸化炭素分離装置30における二酸化炭素の分離とは、厳密に排気ガスから二酸化炭素を単離する必要はなく、二酸化炭素の含有率が高められたガスと、その他のガスとに分離されればよく、二酸化炭素の含有率が高められたガスにおける二酸化炭素の含有率は、好ましくは30~100質量%、より好ましくは55~99質量%であり、([0033])
還元装置50では、供給された二酸化炭素が還元され、還元装置50は、より好ましくはケミカルルーピング型反応装置であり、([0038])
ケミカルルーピング型反応装置は、第1及び第2の反応器を備え、第1及び第2の反応器それぞれに金属酸化物触媒を充填して、一方の反応器にて二酸化炭素を一酸化炭素に還元する第1の反応を、他方の反応器にて水素を水に酸化する第2の反応を行うものである、([0043])
二酸化炭素還元システム。」
2 甲2(特開2019-69417号公報)
甲2には、以下の記載がある。
「【0003】
・・・現在までにCO2回収技術として実用化されている方式としては、吸収液を用いた化学吸収、物理吸収法の他、選択的にCO2を透過する膜分離法や混合ガスの液化温度差を利用した深冷分離法等がある。・・・」
3 甲3(特開2019-98284号公報)
甲3には、以下の記載がある。
「【0002】
・・・二酸化炭素を分離、回収、貯留する技術(Carbon Capture and Storage)(以下、本明細書において「CCS」と記す場合がある)の一つとして、化学吸着法を利用した回収方式によるものがあって、火力発電所等のボイラ燃焼排ガス中の二酸化炭素量の低減に重要な役割を果たしている。」
4 甲4(特開2003-166013号公報)
甲4には、以下の記載がある。
「【0016】
・・・なお、前述のようにコークス炉ガスには酸素の含有量が極めて少ないが、防爆のために、酸素の含有量は0.5%以下が望ましい。」
5 甲5(特開2010-255087号公報)
甲5には、以下の記載がある。
「【0031】
還元剤は、オフガス中の酸素濃度が1容積%以下のときに添加する。この理由は、オフガス中の酸素が1容積%よりも多いと、オフガス中の水素ガスや還元剤中の水素原子が酸素と反応しやすくなって水蒸気を発生し、この水蒸気による還元剤添加に伴う改質反応が進行するため、炭酸ガスの転化率が低下し、炭酸ガス削減効果が低下するからである。また、オフガス中の酸素濃度が1容積%より多いときに還元剤を添加すると、発火や爆発の危険性もある。」
6 甲6(Yolanda A, et al. "Isothermal reverse water gas shift chemical looping on La0.75Sr0.25Co(1-Y)FeYO3 perovskite-type oxides", Catalysis Today, 258, 2015, p.691-698)
甲6には、以下の記載がある。なお、甲6の記載は、当審の訳文で示す。
「一般的に、ケミカルルーピングの研究では酸素移動性物質を回収するための酸化剤として空気中のO2を使用し[26,27]、最近の研究では水蒸気も使用されている[28]。これら2つの酸化剤と比較するとCO2の酸化力は低いため、酸素キャリアの相安定性を維持することが望まれる。なぜなら、結晶相を回収するのとは対照的に、酸素欠乏物質を再酸化するのに必要なエネルギーが少なくて済むからである。」(692ページ左欄37~43行)
7 甲7(特開2017-77521号公報)
甲7には、以下の記載がある。
「【0002】
金属酸化物を脱酸素剤として用いる技術が種々知られている。例えば特許文献1には、還元処理を施した酸素欠陥を有する無機化合物を熱可塑性樹脂に配合した樹脂組成物層の単層あるいはこの層を含む多層体に、接着層を介して酸素バリア性基材からなる層を設けた積層体が記載されている。この無機化合物としては、酸素欠陥を有する二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、酸化鉄などが用いられる。」
「【0005】
特許文献1及び2に記載の脱酸素剤は、酸化セリウムを初めとする各種金属酸化物に酸素欠損を生じさせ、その酸素欠損を利用して酸素を吸収しようとするものである。その結果、これらの脱酸素剤が酸素と触れると、比較的短時間で酸素の吸収が完了してしまう。・・・」
8 甲8(特開2012-36029号公報)
甲8には、以下の記載がある。
「【0014】
・・・本発明においては、高炉ガス又は転炉ガスに含まれている二酸化炭素を、特定の金属酸化物(以下、この金属酸化物のことを「二酸化炭素の一酸化炭素への変換剤」又は単に「変換剤」ともいう。)と加熱下に接触させて、これらのガス中に含まれている二酸化炭素ガスを一酸化炭素ガスに変換する。この変換剤と二酸化炭素ガスとの反応は、この変換剤の還元力を利用した化学量論反応である。・・・」
「【0016】
・・・二酸化炭素ガスが他のガスを含む場合、二酸化炭素を80%以上含む二酸化炭素ガスを用いることが好ましい。ただし、その他のガスが酸素ガス又は水蒸気等の含酸素ガスである場合、供給するガス全量に対する割合は極力少量であることが望ましい。・・・」
「【0030】
・・・つまり、コークス炉ガスには前記変換剤の強還元に必要かつ十分な量の水素が含まれている。しかもコークス炉ガス中には、前記変換剤の強還元を阻害する物質である水蒸気や酸素等がほとんど含まれていない。したがって、コークス炉ガスは、酸素欠損を失った変換剤に酸素欠損を生成させるために適切なものである。・・・」
9 甲9(国際公開第2011/136045号)
甲9には、以下の記載がある。
「[0009] ・・・鉄の酸化物は、酸素イオン導電性が低く、表面が酸化されてしまうと、たとえ該酸化物の内部に酸素欠損が存在していても、該酸素欠損は二酸化炭素ガスと接触することができない。したがって二酸化炭素ガスから一酸化炭素ガスへの変換効率を高めたい場合には、酸素欠損を有する鉄の酸化物を多量に使用する必要があり、経済的に不利になる。」
10 甲10(特許第6204547号公報)
甲10には、以下の記載がある。
「【0003】
ケミカルループ法は、金属粒子を酸化する酸化反応系と金属酸化物を還元する還元反応系との間で金属粒子および金属酸化物を循環させることで熱あるいは水素と同時に二酸化炭素や窒素ガスを得るようにしたエネルギー変換システムであり、燃料を直接空気と燃焼させる代わりに、酸素源として金属酸化物中の格子酸素を用いることにより、燃焼反応を「金属粒子の酸化」と、「金属酸化物の還元」という2つに分け、両者を物理的な粒子の循環で結ぶシステムである。燃料と空気は直接接触することがなく、金属を媒体として純酸素のやり取りをしている。・・・」
なお、甲11及び甲12は本件発明3に対する周知技術を立証する証拠として提出され、甲13は本件発明4に対する周知技術を立証する証拠として提出され、甲14は本件発明6に対する周知技術を立証する証拠として提出されたものであるから、摘記を省略する。
第5 申立理由1(新規性)、申立理由2(進歩性)について
1 本件発明1について
(1) 対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
ア 甲1発明の「二酸化炭素還元システム」は、「排気ガス」に含まれる「二酸化炭素を還元させる還元装置」である「ケミカルルーピング型反応装置」を備えるものであるところ、「ケミカルルーピング型反応装置は、第1及び第2の反応器を備え、第1及び第2の反応器それぞれに金属酸化物触媒を充填して、一方の反応器にて二酸化炭素を一酸化炭素に還元する第1の反応を、他方の反応器にて水素を水に酸化する第2の反応を行うものである」から、「二酸化炭素を含む排気ガス」は、「一酸化炭素」を生成するための原料ガスであるといえ、「金属酸化物触媒」は、「二酸化炭素」を「還元する」金属酸化物を含む還元剤であるといえ、「二酸化炭素を還元させる還元装置」である「ケミカルルーピング型反応装置」を備える「二酸化炭素還元システム」は、「一酸化炭素」を含む生成ガスを製造するガス製造装置であるといえる。
そうすると、甲1発明の「二酸化炭素を含む排気ガス」、「金属酸化物触媒」は、それぞれ、本件発明1の「二酸化炭素を含む原料ガス」、「前記二酸化炭素を還元する金属酸化物を含む還元剤」に相当し、甲1発明の「二酸化炭素を還元させる還元装置」である「ケミカルルーピング型反応装置」を備える「二酸化炭素還元システム」は、本件発明1の「二酸化炭素を含む原料ガスと、前記二酸化炭素を還元する金属酸化物を含む還元剤とを接触させて、一酸化炭素を含む生成ガスを製造するガス製造装置」に相当する。
イ 甲1発明の「二酸化炭素分離装置を備え」る「二酸化炭素還元システム」において、「二酸化炭素分離装置30は、燃料炉11から送られてきた排気ガスから二酸化炭素を分離するもの」であるから、「二酸化炭素還元システム」は、「燃料炉11」と「二酸化炭素分離装置30」の間に「排気ガス」を供給する排気ガス供給部を備えているといえる。
そして、上記アで検討したとおり、甲1発明の「二酸化炭素を含む排気ガス」は、本件発明1の「二酸化炭素を含む原料ガス」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、「前記原料ガスを供給する原料ガス供給部」を備える点で共通する。
ウ 甲1発明の「二酸化炭素還元システム」において、「燃料炉11から送られてきた排気ガス」は、「二酸化炭素分離装置30」により「二酸化炭素を分離され」、「二酸化炭素」は、「輸送経路」により「還元装置に輸送」されるものであるところ、上記イで検討したとおり、「二酸化炭素還元システム」は、「燃料炉11」と「二酸化炭素分離装置30」の間に「排気ガス」を供給する排気ガス供給部を備えているから、「還元装置」は、「排気ガス」を供給する排気ガス供給部に接続されているといえる。
また、甲1発明の「二酸化炭素を還元させる還元装置」である「ケミカルルーピング型反応装置」は、「第1及び第2の反応器を備え、第1及び第2の反応器それぞれに金属酸化物触媒を充填して」いるから、「金属酸化物触媒」を収納する少なくとも1つの「反応器」を備える反応部であるといえる。
そして、上記アで検討したとおり、甲1発明の「金属酸化物触媒」は、本件発明1の前記二酸化炭素を還元する金属酸化物を含む還元剤」に相当する。
そうすると、甲1発明の「金属酸化物触媒を充填して」いる「反応器を備え」、「二酸化炭素を還元させる還元装置」である「ケミカルルーピング型反応装置」は、本件発明1の「前記還元剤を収納する少なくとも1つの反応器を備える反応部」に相当し、本件発明1と甲1発明とは、「前記原料ガス供給部に接続され、前記還元剤を収納する少なくとも1つの反応器を備える反応部」を備える点で共通する。
エ 甲1発明の「二酸化炭素還元システム」は、「二酸化炭素を還元させる還元装置と、二酸化炭素を前記還元装置に輸送する輸送経路とを備え」、「さらに二酸化炭素分離装置を備え、前記輸送経路の二酸化炭素が、前記二酸化炭素分離装置により二酸化炭素を含む排気ガスから二酸化炭素を分離されたもの」である。
そして、上記イで検討したとおり、甲1発明の「二酸化炭素還元システム」は、「燃料炉11」と「二酸化炭素分離装置30」の間に「排気ガス」を供給する排気ガス供給部を備えているものであり、上記ウで検討したとおり、甲1発明の「二酸化炭素を還元させる還元装置」である「ケミカルルーピング型反応装置」は、「金属酸化物触媒」を収納する少なくとも1つの「反応器」を備えているものである。
そうすると、甲1発明は、排気ガス供給部と「反応器」との間に「二酸化炭素分離装置30」が設けられているといえる。
また、甲1発明において、「排気ガス」は、「二酸化炭素を含む」、すなわち、ガスを含むものであり、「二酸化炭素分離装置30における二酸化炭素の分離とは、厳密に排気ガスから二酸化炭素を単離する必要はなく、二酸化炭素の含有率が高められたガスと、その他のガスとに分離されればよ」いものであるから、「二酸化炭素分離装置30」は、「排気ガス」中に含まれるガスの濃度を調整する濃度調整部であるといえる。
一方、本件発明1の「濃度調整部」は、「前記原料ガス中に含まれる酸素」、すなわち、「原料ガス中に含まれる」ガスの濃度を調整するものである。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、「前記原料ガス供給部と前記反応器との間に設けられ、前記原料ガス中に含まれる」ガスの「濃度を調整する濃度調整部」を備える点で共通する。
オ 以上によれば、本件発明1と甲1発明との一致点、相違点は以下のとおりとなる。
<一致点>
「二酸化炭素を含む原料ガスと、前記二酸化炭素を還元する金属酸化物を含む還元剤とを接触させて、一酸化炭素を含む生成ガスを製造するガス製造装置であって、
前記原料ガスを供給する原料ガス供給部と、
前記原料ガス供給部に接続され、前記還元剤を収納する少なくとも1つの反応器を備える反応部と、
前記原料ガス供給部と前記反応器との間に設けられ、前記原料ガス中に含まれるガスの濃度を調整する濃度調整部とを備えるガス製造装置。」
<相違点>
相違点1:「濃度調整部」について、本件発明1は、「前記原料ガス中に含まれる酸素の濃度を調整する」ものであり、「前記濃度調整部は、前記原料ガス中に含まれる前記酸素を除去する酸素除去装置を備え、前記原料ガス中に含まれる前記酸素の濃度を1体積%未満に調整するように構成されている」のに対し、甲1発明は、「排気ガス」中に含まれる「二酸化炭素」の濃度を調整する「二酸化炭素分離装置30」であり、「二酸化炭素分離装置30における二酸化炭素の分離とは、厳密に排気ガスから二酸化炭素を単離する必要はなく、二酸化炭素の含有率が高められたガスと、その他のガスとに分離されればよく、二酸化炭素の含有率が高められたガスにおける二酸化炭素の含有率は、好ましくは30~100質量%、より好ましくは55~99質量%」である点。
(2)相違点1についての判断
ア 本件発明1の「前記原料ガス中に含まれる酸素の濃度を調整する濃度調整部」は、「前記原料ガス中に含まれる前記酸素を除去する酸素除去装置を備え、前記原料ガス中に含まれる前記酸素の濃度を1体積%未満に調整するように構成されている」から、「酸素除去装置を備え」る「濃度調整部」は、「原料ガス中に含まれる酸素を除去する」装置として構成され、かつ、「前記原料ガス中に含まれる前記酸素の濃度を1体積%未満に調整するように構成されている」ものである。
一方、甲1発明の「二酸化炭素分離装置30」においては、「厳密に排気ガスから二酸化炭素を単離する必要はなく、二酸化炭素の含有率が高められたガスと、その他のガスとに分離されればよ」い装置として構成され、「二酸化炭素の含有率が高められたガスにおける二酸化炭素の含有率は、好ましくは30~100質量%、より好ましくは55~99質量%」とするものであるから、甲1発明の「二酸化炭素分離装置30」は、排気ガス中に含まれる酸素の濃度を1体積%未満に調整するように構成されている酸素除去装置を備えているとはいえない。
したがって、甲1発明の「二酸化炭素分離装置30」は、本件発明1の「酸素除去装置を備え」、「前記原料ガス中に含まれる前記酸素の濃度を1体積%未満に調整するように構成されている」「濃度調整部」に相当しない。
したがって、相違点1は実質的な相違点である。
よって、本件発明1は、甲1発明ではない。
イ また、甲2~甲14のいずれにも、「ガス製造装置」において、「前記原料ガス中に含まれる酸素の濃度を調整する濃度調整部」を備え、「前記濃度調整部は、前記原料ガス中に含まれる前記酸素を除去する酸素除去装置を備え、前記原料ガス中に含まれる前記酸素の濃度を1体積%未満に調整するように構成されている」こと、すなわち、相違点1に係る本件発明1の構成は、記載も示唆もされていない。
そうすると、甲1発明に、甲2~甲14に記載された事項を適用しても、相違点1に係る本件発明1の構成は得られない。
したがって、本件発明1は、甲1発明及び周知技術(甲2~甲14)に基づいて、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
ウ 申立人の主張
申立人は、特許異議申立書の21ページ下から8行~22ページ1行において、甲1発明の「二酸化炭素の含有率を30~100質量%に高める」という記載について、二酸化炭素の含有率が100質量%であれば酸素の濃度は1体積%未満であることは明らかであるため、本件発明1における「酸素濃度を1体積%未満」は甲1発明における「二酸化炭素の含有率を30~100質量%」に含まれ、したがって、甲1発明の「前記排気ガス中に含まれる前記二酸化炭素の含有率を30~100質量%に高めるように構成されていること」は、本件発明1の「前記原料ガス中に含まれる前記酸素の濃度を1体積%未満に調整するように構成されていること」と一致する旨主張している。
しかし、上記アで検討したとおり、本件発明1の「濃度調整部」は、「前記原料ガス中に含まれる前記酸素の濃度を1体積%未満に調整するように構成されている」「酸素除去装置を備え」るものであるのに対し、甲1発明の「二酸化炭素分離装置30」は、酸素除去装置により、排気ガス中に含まれる酸素の濃度を1体積%未満に調整する構成を有しているとはいえないから、甲1発明の「二酸化炭素分離装置30」は、本件発明1の「酸素除去装置を備え」、「前記原料ガス中に含まれる前記酸素の濃度を1体積%未満に調整するように構成されている」「濃度調整部」に相当しない。
したがって、申立人の上記主張は採用できない。
(3)まとめ
よって、本件発明1は、甲1発明ではないし、また、甲1発明及び周知技術(甲2~甲14)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 本件発明2~9について
本件発明2~9は、本件発明1の全ての構成を有するものであるから、本件発明1と同様の理由により、甲1発明ではないし、また、甲1発明及び周知技術(甲2~甲14)に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
3 本件発明10について
本件発明10は、本件発明1に対応する方法の発明であり、相違点1に係る本件発明1の構成に対応する、「前記原料ガス中に含まれる酸素を酸素除去装置により除去することにより、前記原料ガス中に含まれる前記酸素の濃度を1体積%未満に調整する」との構成を備えるものである。
そうすると、本件発明1と同様の理由により、本件発明10は、甲1に記載された発明ではないし、また、甲1に記載された発明及び周知技術(甲2~甲14)に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
4 本件発明11~13について
本件発明11~13は、本件発明10の全ての構成を有するものであるから、本件発明10と同様の理由により、甲1に記載された発明ではないし、また、甲1に記載された発明及び周知技術(甲2~甲14)に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
5 小括
上記1~4で検討したとおりであるから、申立理由1、2には理由がない
第6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1~13に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1~13に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-701173