特許異議申立
2025-700417
レーザ溶接機
- 審判番号
- 2025-700417
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2024-093797
- 登録番号
- 7655600
- 請求日
- 2025年04月11日
- 審決日
- 2026年03月03日
- 公報発行日
- 2026年04月24日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】株式会社KS・S
- 【権利者代理人】鎌田 直也
- 【権利者代理人】鎌田 文二
- 【権利者代理人】中谷 弥一郎
- 【異議申立人】山田 英一
- 審判長/審判官
- 審判長 本庄 亮太郎
- 審判官 刈間 宏信
- 審判官 山田 康孝
- 分類
- P1652.113-Y (B23K) / P1652.121-Y (B23K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7655600号発明「レーザ溶接機」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7655600号の請求項1~4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
1 特許掲載公報の発行までの経緯
特許第7655600号(以下「本件特許」という。)の請求項1~9に係る特許についての出願は、令和6年6月10日(優先権主張 令和5年11月7日)に出願され、令和7年3月25日にその特許権の設定登録がされ、同年4月2日に特許掲載公報が発行された。
2 特許異議の申立て以降の経緯
本件特許についての特許異議の申立て以降の主な経緯は、次のとおりである。
(1)令和7年4月11日
特許異議申立人 山田英一(以下「申立人」という。)による、本件特許の請求項1~4に係る特許に対する特許異議の申立て
(2)令和7年5月14日付け
手続補正指令書による手続補正の指令
(3)令和7年5月22日
申立人による手続補正書(方式)の提出(以下、当該補正書により補正された特許異議申立書を「異議申立書」という。)
第2 本件発明
本件特許のうち、請求項1~4の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
レーザ光発振器と、
前記レーザ光発振器から発振されたレーザ光が伝送される光ファイバ部と、
前記光ファイバ部により伝送されたレーザ光が出射されるレーザトーチとを備え、
前記レーザトーチは、前端部からレーザ光が出射される筒状の出射部と、
前記出射部の後端側に下方に延び出す状態で設けられ、前記光ファイバ部が接続される筒状のハンドル部と、
前記レーザ光発振器からレーザ光を発振させるスイッチ部とを有し、
前記出射部が、前記光ファイバ部から前記ハンドル部内へ出射されるレーザ光を前記出射部内へ屈折させるミラーと、前記ミラーにより屈折されたレーザ光を集光する集光レンズとを有し、
作業者により前記レーザトーチのハンドル部が把持されている状態で、前記レーザトーチの前端部から出射されるレーザ光によりワークを溶接するレーザ溶接機において、
前記出射部がその後端部の内部に前後方向に移動可能に嵌め合わされるミラー保持部を有し、前記ミラーが前記ミラー保持部に対して一体に前後方向に移動可能な状態に保持され、前記ミラー保持部の後端部が前記出射部の後端部から突出する状態であることを特徴とするレーザ溶接機。
【請求項2】
前記出射部が、その周方向の一部に設けられる収納口と前記収納口を通して前記集光レンズを出し入れ可能に収納するレンズ収納部とを有することを特徴とする請求項1に記載のレーザ溶接機。
【請求項3】
前記レーザトーチが前記出射部およびハンドル部を覆うカバーを有し、
前記カバーが、前記ミラー保持部の後端部を覆う状態であり、
前記カバーが、外部に開口する第一開口部と前記第一開口部を開閉する第一蓋部材と、外部に開口する第二開口部と前記第二開口部を開閉する第二蓋部材とを有し、
前記第一蓋部材を開いた状態で、前記第一開口部が前記出射部の収納口を露出させる位置に設けられており、
前記第二開口部が前記出射部の後端部側に設けられ、前記第二蓋部材を開いた状態で、前記ミラー保持部の後端部が前記第二開口部から前記出射部に対して前後方向に移動操作可能となっていることを特徴とする請求項2に記載のレーザ溶接機。
【請求項4】
前記レンズ収納部が、前記集光レンズを収納する第一凹部と、前記第一凹部の前側に設けられる第二凹部とを有し、保護レンズが前記レンズ収納部の収納口を通して、前記第二凹部に出し入れ可能に収納されていることを特徴とする請求項2に記載のレーザ溶接機。」
(以下、各請求項に係る発明を「本件発明1」などという。)
第3 特許異議申立理由の概要
申立人が異議申立書で主張する特許異議申立理由の概要は、以下のとおりである。
1 甲第1号証に基づく新規性
本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、同法29条1項の規定により特許を受けることができない。
2 甲第1号証に基づく進歩性
本件発明1~4は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同法29条2項の規定により特許を受けることができない。
3 申立人が提出した書証
申立人は、異議申立書に添付して、以下の甲第1~2号証を提出した。
甲第1号証:中国実用新案第217667126号明細書
甲第2号証:中国実用新案第217513061号明細書
(以下、各甲号証を「甲1」などという。)
第4 当審の判断
1 甲1の記載事項及び甲1発明
(1)甲1の記載事項
甲1には、以下の事項が記載されている。(括弧内に、申立人による翻訳文を付記する。)
「
[図:0001434158000001.jpg]
」
(製造業の発展に伴い、一般的な溶接機は製造プロセスのニーズを満たすことができず、溶接プロセスの応用方向が絶えず革新され、それによりレーザ溶接機が誕生している。レーザ溶接機は、一般的にレーザ溶接機、レーザ溶接機と呼ばれ、レーザ材料加工用の機械であり、レーザ溶接技術は高効率、性能に優れるという利点を有するため、ますます幅広く応用され、そのうち、小型レーザ溶接機には柔軟性が容易で、従ってユーザに受け入れられ、その作業方式に基づいてレーザ金型焼結機、自動レーザ溶接機、レーザスポット溶接機、光ファイバ伝送レーザ溶接機に分けられる。)
「
[図:0001434158000002.jpg]
」
(図1~図8に示すように、実用新案の好ましい実施形態の手持ち式シングルスイング式レーザ溶接ガンは、ガンヘッド本体1と、ガンヘッド本体1に着脱可能に連結されたハンドル本体2とを備える。ガンヘッド本体1とハンドル本体2との間の取り外し可能な接続は、使用中のメンテナンス時間を短縮することができ、モジュラー溶接ガンは、製造と加工の難しさを簡素化し、軽減します。前記ハンドル本体2を通じてレーザ光が入射する入射チャネル3と、この入射チャネル3に接続された射出チャネル4がガンヘッド本体1に設けられている。具体的には、入射チャネル3と出射チャネル4との間の角度を鈍角とし、入射チャネル3からのレーザ光を出口チャネル4から反射させるための反射鏡5が出口チャネル4に設けられている。さらに、この方式の溶接ガンは、反射鏡5を偏向させる駆動装置も含み、駆動機構6は、反射鏡5を往復運動して左右に揺動させるために使用されます。これにより、レーザービームは溶接面にポイント溶接面またはライン溶接面処理を行うことができます。また、ハンドル本体2には第1の電気接点端子7が設けられ、ガンヘッド本体1には第2の電気接点端子8が設けられている。所定の位置に組み立てられると、駆動機構6は、第1の電気接点端子7と第2の電気接点端子8を介して外部電源に接続される。実際には、第1の電気接点端子と第2の電気接点端子8は、ガンヘッド本体1とハンドル本体2との接続部に配置されているため、第1の電気接点端子7と第2の電気接点端子8は、ガンヘッド本体1とハンドル本体2が所定の位置に接続された後に同期して接触し、押圧され、導電率の安定性を確保する。具体的には、ハンドル本体には各種パイプラインを配設するための配線チャネル9も設けられている。)
「
[図:0001434158000003.jpg]
」
(好ましくは、駆動機構6は、出力チャネル4と同軸のモータであり、ガンヘッド本体1のレーザービームの出射口から離れた端部に配置される。反射鏡5は、連結片10を介して駆動機構6の出力軸に接続される。モータが一定角度回転すると、反射鏡5を一定角度揺動するように駆動することができ、これにより、定点溶接を直線溶接に変更することができる。溶接ガン全体を手動で揺動させる必要がなくなり、溶接精度と品質を向上させることができる。)
「
[図:0001434158000004.jpg]
[図:0001434158000005.jpg]
」
(好ましくは、ガンヘッド本体1は、反射鏡5に近接する駆動機構6の一端の上下左右の偏向を調整するための微調整機構11も備えられている。具体的には、微調整機構11は、駆動機構6に取り付けられた位置決めスリーブ1aと、位置決めスリーブ1aを径方向に貫通して螺合する上部ネジ1bと、上部ネジ1bは複数あり、位置決めスリーブ1aの円周に沿って均等に分布している。所定の位置に組み立てられると、複数の上部ネジ1bが全て駆動機構6にしっかりと押し付けられ、複数の上部ネジ1bが1つのユニットを構成する。このユニットは、駆動機構6の軸方向に沿って分散して複数設けられている。また、微調整機構11は、駆動機構6と位置決めスリーブ1aとの間に配置された調整スリーブ1cも備えている。所定の位置に組み立てられると、位置決めスリーブ1aと駆動機構6の両方に調整スリーブ1cが装着され、上部ネジ1bが調整スリーブ1cの外側壁に押し付けられる。上ネジ1bに対応する調整スリーブ1cの外側壁には当接凹部12が設けられている。使用中、複数の上部ネジ1bの前進と後退を調整することにより、モータの位置と姿勢を微調整することができる。)
「
[図:0001434158000006.jpg]
」
(好ましくは、引き出し型保護ミラー群17が、出力チャネル4に対応するガンヘッド本体1の出力端部に設けられている。さらに、複数の引き出し式保護ミラー群17が設けられている。出力チャネル4の内壁には、反射鏡5から離れた引き出し型保護ミラー群17の側面にブローイングチャネル18が設けられている。この吹出口チャネル19には、ハンドル本体2に連結されたエア出口チャネル19が設けられている。溶接工程中、ガンヘッド本体1内部の光学レンズは、複数の引き出し型保護ミラー群17とブローイングチャネル18とエア出口チャネル19による空気供給とを分離することによって効果的に保護することができる。また、ガンヘッド本体内部の集光レンズ群の保護効果を高めるために、複数の引き出し型保護ミラー群17が設けられている。)
(当審注:申立人による翻訳文では、符号「4」の部材について、「射出チャネル4」、「出射チャネル4」、「出力チャネル4」及び「出口チャネル4」と記載されているが、以下では、「出射チャネル4」に統一して記載する。同様に、「レーザ」及び「レーザー」の記載は、「レーザ」に統一して記載する。)
図5
「
[図:0001434158000007.jpg]
」
図6
「
[図:0001434158000008.jpg]
」
図7
「
[図:0001434158000009.jpg]
」
図8
「
[図:0001434158000010.jpg]
」
(2)甲1の記載事項から理解できる技術的事項
上記(1)の甲1の記載事項から、以下の技術的事項を理解できる。(括弧内に甲1の記載箇所を付記する。)
ア 甲1には、手持ち式シングルスイング式レーザ溶接ガン([0031])が記載されており、当該溶接ガンは、レーザ光が出射される出射チャネル4([0031])を有しているところ、レーザ光は出射チャネル4の前端から出射されるといえる(図5)。
イ 溶接ガンの出射チャネル4の後端側に下方に延び出す状態で、ハンドル本体2が設けられており(図5)、ハンドル本体2には、レーザ光が入射する入射チャネル3が設けられている([0031])。
ウ 溶接ガンの出射チャネル4が、前記ハンドル本体2内へ出射されるレーザ光を前記出射チャネル4内へ反射させる反射鏡5([0031])と、集光レンズ群([0036])を有している。
エ 前記溶接ガンが、作業者により前記ハンドル本体2が把持されている状態で、前記出射チャネル4から出射されるレーザ光によりワークを溶接するものであることは明らかである。
オ 前記溶接ガンは、前記出射チャネル4の後端部に駆動機構6を有しており([0033])、駆動機構6の後端部が前記出射チャネル4の後端部から突出する状態である(図5)。
カ 反射鏡5は、連結片10を介して駆動機構6の出力軸に接続されており([0031])、駆動機構6は、微調整機構11により、反射鏡5に近接する端部の上下左右の偏向を調整できる([0034])から、駆動機構6は上下左右に移動可能であるといえる。また、反射鏡5は、駆動機構6に対して一体に上下左右に移動できる状態に保持されているといえる。
(3)甲1発明
上記(2)の技術的事項を本件発明1の記載に沿って整理すると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。(括弧内に、上記(2)の技術的事項の認定箇所を付記する。また、本件発明1で「前記」と表記される部分は、甲1発明においても「前記」と表記する。)
「前端からレーザ光が出射される出射チャネル4(上記(2)ア)と、
前記出射チャネル4の後端側に下方に延び出す状態で設けられ、入射チャネル3を有するハンドル本体2(上記(2)イ)と、
前記出射チャネル4が、前記ハンドル本体2内へ出射されるレーザ光を前記出射チャネル4内へ反射させる反射鏡5と、集光レンズ群とを有し(上記(2)ウ)、
作業者により前記ハンドル本体2が把持されている状態で、前記出射チャネル4から出射されるレーザ光によりワークを溶接する溶接ガン(上記(2)エ)において、
前記出射チャネル4の後端部に上下左右に移動可能である駆動機構6を有し(上記(2)オ)、前記反射鏡5が駆動機構6に対して一体に上下左右に移動できる状態に保持され(上記(2)カ)、前記駆動機構6の後端部が前記出射チャネル4の後端部から突出する状態である(上記(2)オ)溶接ガン。」
2 本件発明1の新規性及び進歩性について
(1)対比
本件発明1と甲1発明を対比すると、甲1発明の「前端からレーザ光が出射される出射チャネル4」が本件発明1の「前端部からレーザ光が出射される筒状の出射部」に相当し、以下同様に、「ハンドル本体2」が「筒状のハンドル部」に、「レーザ光を前記出射チャネル4内へ反射させる反射鏡5」が「レーザ光を前記出射部内へ屈折させるミラー」に、「集光レンズ群」が「前記ミラーにより屈折されたレーザ光を集光する集光レンズ」に相当する。
また、甲1発明の「溶接ガン」は本件発明1の「レーザトーチ」に相当するといえるところ、甲1発明の「前記出射チャネル4から出射されるレーザ光によりワークを溶接する溶接ガン」と、本件発明1の「前記レーザトーチの前端部から出射されるレーザ光によりワークを溶接するレーザ溶接機」を対比すると、両者は「レーザトーチの前端部から出射されるレーザ光によりワークを溶接するレーザトーチを含む溶接手段」という点で一致する。
そして、甲1発明の「駆動機構6」は、反射鏡5と一体的に接続されている(上記1(2)カ)から、本件発明1の「ミラー保持部」に相当するといえるところ、甲1発明の「前記出射チャネル4の後端部に上下左右に移動可能である駆動機構6」と、本件発明1の「前記出射部がその後端部の内部に前後方向に移動可能に嵌め合わされるミラー保持部」を対比すると、両者は「前記出射部がその後端部の内部に移動可能に嵌め合わされるミラー保持部」という点で一致する。また、甲1発明の「前記反射鏡5が駆動機構6に対して一体に上下左右に移動できる状態」と、本件発明1の「前記ミラーが前記ミラー保持部に対して一体に前後方向に移動可能な状態」を対比すると、両者は「前記ミラーが前記ミラー保持部に対して一体に移動可能な状態」という点で一致する。
(2)一致点及び相違点
上記(1)から、本件発明1と甲1発明は、以下の一致点で一致し、以下の相違点1~3で相違する。
[一致点]
「前端部からレーザ光が出射される筒状の出射部と、
前記出射部の後端側に下方に延び出す状態で設けられる筒状のハンドル部と、
前記出射部が、前記ハンドル部内へ出射されるレーザ光を前記出射部内へ屈折させるミラーと、前記ミラーにより屈折されたレーザ光を集光する集光レンズとを有し、
作業者により前記レーザトーチのハンドル部が把持されている状態で、レーザトーチの前端部から出射されるレーザ光によりワークを溶接するレーザトーチを含む溶接手段において、
前記出射部がその後端部の内部に移動可能に嵌め合わされるミラー保持部を有し、前記ミラーが前記ミラー保持部に対して一体に移動可能な状態に保持され、前記ミラー保持部の後端部が前記出射部の後端部から突出する状態であるレーザトーチを含む溶接手段。」
[相違点1]
レーザトーチを含む溶接手段が、本件発明1は、「レーザ光発振器」、「前記レーザ光発振器から発振されたレーザ光が伝送される光ファイバ部」及びレーザトーチを備えた「レーザ溶接機」であって、レーザトーチのハンドル部には「前記光ファイバ部が接続」され、「前記光ファイバ部から」ハンドル部内へレーザ光が出射されるのに対して、甲1発明は、レーザトーチに相当する「溶接ガン」であって、レーザ光発振器や光ファイバ部を備えていない点。
[相違点2]
レーザトーチについて、本件発明1は、「前記レーザ光発振器からレーザ光を発振させるスイッチ部」を有するのに対して、甲1発明は、スイッチ部を有するかどうか不明な点。
[相違点3]
ミラー保持部及びミラーの移動について、本件発明1は、「前後方向に移動可能」であるのに対して、甲1発明は、「上下左右に移動可能」である点。
(3)新規性の判断
本件発明1と甲1発明は相違点1~3で相違し、本件発明1は甲1発明であるとはいえないから、特許法29条1項3号に該当するとはいえない。
(4)進歩性の判断
事案に鑑みて、相違点3について検討すると、本件発明1において、ミラー保持部及びミラーを前後方向に移動可能に構成する技術的な理由は、ミラー28を前後方向に移動させることで、光ファイバ部8から出射されたレーザ光がミラー28に照射される位置を上下方向に変更し、ミラー28で屈折されるレーザ光の光軸の上下方向の位置を変更するためであるといえる(本件特許明細書の【0050】)。
これに対して、甲1発明は、駆動機構6を上下に移動させることで、反射鏡5を上下に移動でき、レーザ光が反射鏡5に照射される位置及び反射鏡5で反射されるレーザ光の位置を上下に変更できるから、本件発明1のように、ミラーを前後方向に移動させる必要がないことは明らかである。
また、申立人が提出した甲2を参照しても、ミラーを前後方向に移動可能に構成することについて、記載や示唆はない。
したがって、相違点3に係る本件発明1の構成は、甲1発明及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に想到できたものとはいえないから、相違点1~2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(5)申立人の主張について
ア 申立人は、本件発明1の「前後方向に移動可能に嵌め合わされるミラー保持部」(申立人のいう「構成要素G」)について、甲1の[0034]の「使用中、複数の上部ネジ1bの前進と後退を調整することにより、モータの位置と姿勢を微調整することができる」との記載を根拠として、甲1の駆動機構6を前後方向に移動させることが記載されている旨を主張している。(異議申立書の18ページ3行~19ページ3行、及び、28ページ最終行~29ページ13行)
イ 当該主張を検討すると、甲1の駆動機構6及び調整スリーブ1cは、上部ネジ1bの前進と後退を調整することで、位置決めスリーブ1aに対する位置と姿勢を調整、すなわち、位置と姿勢を変更することができるといえる。
そして、上部ネジ1bは、甲1の図8から、前後方向に並んで2つ存在し、甲1の図7から、周方向に120度の間隔で存在することを理解できるから、合計で6つの上部ネジ1bが存在するといえる。
そして、当業者であれば、6つの上部ネジ1bについて、前後方向に並ぶ2つの上部ネジ1bを、同じ距離で前進や後退させることで、駆動機構6及び調整スリーブ1cを、位置決めスリーブ1aに対して上下左右の方向に移動できること、すなわち、位置を変更できると理解できるといえる。また、前後方向に並ぶ2つの上部ネジ1bを、異なる距離で前進や後退させることで、駆動機構6及び調整スリーブ1cを、位置決めスリーブ1aに対して傾けること、すなわち、姿勢を変更できることを理解できるといえる。
甲1の[0034]の「モータの位置と姿勢を微調整すること」は、このような、上下左右の位置の変更や、傾きの変更をいうものであって、前後方向の位置の変更を意味するわけではないから、申立人の当該主張は採用できない。
3 本件発明2~4の進歩性について
本件発明2~4は、本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、本件発明1と同様の理由により、甲1発明及び甲2に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700417