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特許異議申立

2023-700045

故障予知装置、故障予知システム及び故障予知方法

審判番号
2023-700045
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-167222
登録番号
7104121
請求日
2023年01月17日
審決日
2024年05月14日
公報発行日
2024年08月30日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】ファナック株式会社
  • 【権利者代理人】青木 篤
  • 【権利者代理人】三橋 真二
  • 【権利者代理人】廣瀬 繁樹
  • 【権利者】株式会社Preferred Networks
  • 【権利者代理人】青木 篤
  • 【権利者代理人】三橋 真二
  • 【権利者代理人】廣瀬 繁樹
  • 【異議申立人】藤本 信男
審判長/審判官
  • 審判長 鈴木 貴雄
  • 審判官 刈間 宏信
  • 審判官 田々井 正吾
分類
P1651.121-YAA(G05B) / P1651.537-YAA(G05B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条、特許法第29条、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第126条、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7104121号発明「故障予知装置、故障予知システム及び故障予知方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7104121号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~16〕、17、18、19について訂正することを認める。 特許第7104121号の請求項2、4~6、8~16及び18に係る特許を維持する。 特許第7104121号の請求項1、3、7、17及び19に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7104121号(以下「本件特許」という。)の請求項1~19に係る発明についての出願は、平成27年11月30日(優先権主張 同年7月31日)に出願した特願2015-234022の一部を、平成29年2月7日に新たな特許出願(特願2017-20403)とし、その一部を、令和2年10月1日に新たな特許出願(特願2020-167222)としたものである。そして、令和4年7月11日に本件特許の設定登録がされ、同月20日に特許掲載公報が発行された。 その後の本件特許異議の申立ての主な経緯は、次のとおりである。 令和5年 1月17日 :特許異議申立人 藤本信男(以下「申立人」 という。)による請求項1~19に係る 特許に対する特許異議の申立て 同 年 4月18日付け:取消理由通知 同 年 6月 1日 :特許権者 ファナック株式会社及び株式会社 Preferred Networks(以下 「特許権者」という。)と審判官との面接 同 年 6月5日~6日:特許権者と審判官との電話及び電子メール での応対 同 年 6月 8日 :特許権者と審判官との電話及び電子メール での応対 同 年 6月19日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 同 年 7月31日 :申立人による意見書の提出 同 年10月26日付け:申立人に対する審尋 同 年10月31日付け:取消理由通知(決定の予告) 同 年12月15日 :申立人による回答書の提出 同 年12月25日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出 令和6年 1月11日付け:令和5年12月25日提出の訂正請求書に 対する手続補正指令 同 年 1月30日 :特許権者による手続補正書(方式)の提出 同 年 2月13日付け:申立人に対する訂正請求があった旨の通知 (意見書において説明を求める点の提示) 同 年 3月13日 :申立人による意見書の提出 なお、令和5年6月19日提出の訂正請求書による訂正の請求は、特許法120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 第2 訂正の適否 令和5年12月25日に提出され、令和6年1月30日提出の手続補正書(方式)により補正された訂正請求書によってされた、訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)による訂正の適否について検討する。 1 本件訂正請求の趣旨 本件訂正請求の趣旨は、本件特許の特許請求の範囲を、本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~19について訂正することを求めるものである。 2 一群の請求項について 本件訂正請求に係る訂正前(以下「訂正前」という。)の請求項1~16について、請求項4~16は、請求項1~3を直接的又は間接的に引用しているものであって、以下の訂正事項1~3によって記載が訂正される請求項1~3に連動して訂正されるものであるから、訂正前の請求項1~16に対応する本件訂正請求に係る訂正後の請求項1~16は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 3 独立特許要件 本件特許異議申立てにおいては、訂正前の全ての請求項1~19について特許異議申立てがされているので、本件訂正請求に関して、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法126条7項の独立特許要件は課されない。 4 一群の請求項1~16に係る訂正の適否 (1)一群の請求項1~16に係る訂正事項 上記2に示す一群の請求項1~16に係る訂正事項は、次のとおりである(下線は、特許権者が付したものである。)。 ア 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1を削除する。 イ 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に 「前記第1の機械の故障の度合いを示す情報の時系列を通知部に出力する出力部」 と記載されているのを、 「前記第1の機械の故障の度合いを示す情報の時系列を表示装置に表示する出力部」 に訂正する。(請求項2の記載を直接的又は間接的に引用する請求項4~6、8~16も同様に訂正する。) ウ 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 エ 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項4に 「請求項1乃至3のいずれか1項」 と記載されているのを、 「請求項2」 に訂正する。(請求項4の記載を直接的又は間接的に引用する請求項8~16も同様に訂正する。) オ 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項5に 「請求項1乃至3のいずれか1項」 と記載されているのを、 「請求項2」 に訂正する。(請求項5の記載を直接的又は間接的に引用する請求項6、8~16も同様に訂正する。) カ 訂正事項6 特許請求の範囲の請求項7を削除する。 キ 訂正事項7 特許請求の範囲の請求項8に 「請求項1乃至7のいずれか1項」 と記載されているのを、 「請求項2、4乃至6のいずれか1項」 に訂正する。(請求項8の記載を直接的又は間接的に引用する請求項9~16も同様に訂正する。) ク 訂正事項8 特許請求の範囲の請求項9に 「請求項1乃至8のいずれか1項」 と記載されているのを、 「請求項2、4乃至6、及び8のいずれか1項」 に訂正する。(請求項9の記載を直接的又は間接的に引用する請求項10~16も同様に訂正する。) ケ 訂正事項9 特許請求の範囲の請求項10に 「請求項1乃至9のいずれか1項」 と記載されているのを、 「請求項2、4乃至6、8、及び9のいずれか1項」 に訂正する。(請求項10の記載を直接的又は間接的に引用する請求項11~16も同様に訂正する。) コ 訂正事項10 特許請求の範囲の請求項11に 「請求項1乃至10のいずれか1項」 と記載されているのを、 「請求項2、4乃至6、及び8乃至10のいずれか1項」 に訂正する。(請求項11の記載を直接的又は間接的に引用する請求項12~16も同様に訂正する。) サ 訂正事項11 特許請求の範囲の請求項12に 「請求項1乃至請求項11のいずれか1項」 と記載されているのを、 「請求項2、4乃至6、及び8乃至11のいずれか1項」 に訂正する。(請求項12の記載を直接的又は間接的に引用する請求項13~16も同様に訂正する。) シ 訂正事項12 特許請求の範囲の請求項13に 「請求項1乃至12のいずれか1項」 と記載されているのを、 「請求項2、4乃至6、及び8乃至12のいずれか1項」 に訂正する。(請求項13の記載を直接的又は間接的に引用する請求項14~16も同様に訂正する。) ス 訂正事項13 特許請求の範囲の請求項14に 「請求項1乃至13のいずれか1項に記載の故障予知装置と、 前記通知部と、を備え、 前記通知部は、前記出力部からの出力をオペレータに通知する、 故障予知システム。」 と記載されているのを、 「請求項2、4乃至6、及び8乃至13のいずれか1項に記載の故障予知装置と、 前記表示装置と、を備え、 前記表示装置は、前記出力部からの出力をオペレータに通知する、 故障予知システム。」 に訂正する。(請求項14の記載を直接的又は間接的に引用する請求項15~16も同様に訂正する。) セ 訂正事項14 特許請求の範囲の請求項15に 「前記通知部は、故障が発生する時期から遡って第1の所定期間で定められる時期より前であり、」 と記載されているのを、 「前記表示装置は、故障が発生する時期から遡って第1の所定期間で定められる時期より前であり、」 に訂正する。(請求項15の記載を引用する請求項16も同様に訂正する。) (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 ア 訂正事項1、3及び6について (ア)訂正の目的について 訂正事項1、3及び6は、特許請求の範囲の請求項1、3及び7を削除するものであるから、その目的は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当する。 (イ)新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 訂正事項1、3及び6は、請求項1、3及び7を削除するものであるから、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件明細書等」という。)に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものには該当しない。 したがって、訂正事項1、3及び6は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項に適合する。 イ 訂正事項2 (ア)訂正の目的について 訂正事項2は、訂正前の請求項2の「通知部に出力する出力部」という事項を「表示装置に表示する出力部」と訂正するものであるところ、出力部による出力の態様を視覚的なものに限定して、「表示装置に表示する」と訂正するものであるから、訂正事項2の訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当する。 (イ)新規事項の有無について 請求項2の「出力部」に対応する事項は、本件明細書等の【0044】の「故障情報出力部42は、・・・ロボット2の故障情報を出力する」という記載に示すように、「故障情報出力部42」として記載されている。 そして、請求項2の出力部が「表示装置に表示する」ことは、本件明細書等の【0045】の「通知部32は、故障情報出力部42によって出力される故障情報をオペレータに通知する。故障情報が通知される態様は、オペレータが知得可能であれば、特に限定されない。例えば、予知された故障の有無又は故障の度合いを図示されない表示装置に表示してもよい」という記載に示すように、故障情報出力部42が通知部32に故障情報を出力し、その通知部32の通知の態様が、表示装置に表示する態様として記載されている。 したがって、訂正事項2は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項に適合する。 (ウ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 訂正事項2は、訂正前の請求項2に記載された事項をより具体的に特定するように訂正するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものには該当しない。 したがって、訂正事項2は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項に適合する。 ウ 訂正事項4、5及び7~12について (ア)訂正の目的について 訂正事項4、5及び7~12は、訂正前の請求項4、5及び8~13が、請求項1~3又は7のいずれかを直接的又は間接的に引用していたところ、訂正事項1、3及び6によって、請求項1、3及び7が削除されたことに伴って、請求項1、3及び7を引用しないように限定する(引用する請求項の選択肢から請求項1、3及び7を削除する)ものであるから、訂正事項4、5及び7~12の訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当する。 (イ)新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 訂正事項4、5及び7~12は、訂正前に引用していた請求項の選択肢から請求項1、3及び7を削除するものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものには該当しない。 したがって、訂正事項4、5及び7~12は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項に適合する。 エ 訂正事項13について (ア)訂正の目的について 訂正事項13は、訂正前の請求項14が、請求項1~3又は7のいずれかを直接的又は間接的に引用していたところ、訂正事項1、3及び6によって、請求項1、3及び7が削除されたことに伴って、請求項1、3及び7を引用しないように限定する(引用する請求項の選択肢から請求項1、3及び7を削除する)ものである。 また、訂正前の請求項14に記載された「通知部」について、訂正事項2によって「通知部」が「表示装置」に限定されたことに伴って、「表示装置」に限定するものである。 したがって、訂正事項13の訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当する。 (イ)新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 訂正事項13のうち、訂正前に引用していた請求項の選択肢から請求項1、3及び7を削除する訂正は、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものには該当しない。 また、訂正前の「通知部」を「表示装置」に限定する訂正は、訂正事項2と同様に、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものには該当しない。 したがって、訂正事項13は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項に適合する。 オ 訂正事項14について (ア)訂正の目的について 訂正事項14は、訂正前の請求項15に記載された「通知部」について、訂正事項2によって「通知部」が「表示装置」に限定されたことに伴って、「表示装置」に限定するものである。 したがって、訂正事項14の訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当する。 (イ)新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 訂正事項14は、訂正前の「通知部」を「表示装置」に限定するものであるから、訂正事項2と同様に、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものには該当しない。 したがって、訂正事項14は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項に適合する。 (3)一群の請求項1~16に係る訂正の小括 一群の請求項1~16に係る訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とし、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項に適合する。 5 請求項17に係る訂正の適否 (1)請求項17に係る訂正事項 特許請求の範囲の請求項17を削除する。 (2)訂正の目的について 請求項17に係る訂正は、特許請求の範囲の請求項17を削除するものであるから、その目的は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当する。 (3)新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 請求項17に係る訂正は、請求項17を削除するものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものには該当しない。 したがって、請求項17に係る訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項に適合する。 6 請求項18に係る訂正の適否 (1)請求項18に係る訂正事項 特許請求の範囲の請求項18に 「前記第1の機械の故障の度合いを示す情報の時系列を出力し」 と記載されているのを、 「前記第1の機械の故障の度合いを示す情報の時系列を表示装置に表示し」 に訂正する。 (2)訂正の目的について 請求項18に係る訂正は、訂正前の請求項18の「出力し」という事項を「表示装置に表示し」と訂正するものであるところ、出力の態様を視覚的なものに限定して、「表示装置に表示し」と訂正するものであるから、請求項18に係る訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当する。 (3)新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 請求項18に係る訂正は、請求項2に係る訂正事項2と同様の訂正であるから、訂正事項2と同様に、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものには該当しない。 したがって、請求項18に係る訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項に適合する。 7 請求項19に係る訂正の適否 (1)請求項19に係る訂正事項 特許請求の範囲の請求項19を削除する。 (2)訂正の目的について 請求項19に係る訂正は、特許請求の範囲の請求項19を削除するものであるから、その目的は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる特許請求の範囲の減縮に該当する。 (3)新規事項の有無及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否について 請求項19に係る訂正は、請求項19を削除するものであるから、本件明細書等に記載した事項の範囲内の訂正であり、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものには該当しない。 したがって、請求項19に係る訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項に適合する。 8 本件訂正に対する申立人の意見について (1)申立人の意見の概要 本件訂正に対する申立人の意見(令和6年3月13日の申立人の意見書の1~4ページ)の概要は次のとおりである。 請求項2、14、18に係る訂正は、訂正前の「通知部」を「表示装置」に訂正するものであるが、以下のア~イに示すように、特許法126条5項の要件を満たしていない。 ア 権利者は、訂正の根拠として本件明細書等の【0045】を示すが、そこには「図示されない表示装置」と記載されているから、「表示装置」は図6には図示されていないはずであり、当該「表示装置」は、図6に図示されている「通知部32」の具体的態様ではなく、【0017】の「外部装置」の具体的態様である。したがって、【0045】で説明する故障情報は、故障情報出力部42→通知部32→外部装置としての表示装置、の順に伝達され、故障情報出力部42が故障情報を表示装置に表示することは記載も示唆もされていない。 イ 【0046】の記載から、故障情報出力部42が出力するのは、故障の度合いを示す指標値そのもの(図7(a))、故障の有無そのもの(図7(b))、故障レベルそのもの(図7(c))であって、「故障の度合いを示す時系列」とは異なるから、「故障の度合いを示す情報の時系列を表示装置に表示する出力部」は記載も示唆もされていない。 (2)申立人の意見の検討 ア 申立人は、【0045】の「図示されない表示装置」という記載を根拠に、「表示装置」は本件明細書等の図6の「通知部32」の具体的態様ではなく、【0017】の「外部装置」の具体的態様であると説明しているが、「図示されない表示装置」という記載は、表示装置が図6に図示されていないことを意味するにすぎず、表示装置を包含する「通知部32」が図6に図示されていても、上記の記載に矛盾するわけではない。そして、請求項2に係る訂正の新規事項の有無(上記4(2)イ(イ))で説示するとおり、【0045】の記載からみて、故障情報出力部42が故障情報を通知部32に出力し、その通知部による通知の具体的な態様が、表示装置による表示であることは明らかである。 したがって、申立人の上記(1)アの意見は採用できない。 イ 申立人は、「故障の度合いを示す情報の時系列を表示装置に表示する出力部」は記載も示唆もされていないなどと説明するが、本件訂正は、訂正前の「通知部」を「表示装置」に訂正するものであり、「故障の度合いを示す情報の時系列」は、何ら訂正されていないから、申立人の上記(1)イの説明は失当であって採用できない。 ウ なお、請求項2及び18の「故障の度合いを示す情報の時系列」が本件明細書等に記載された事項の範囲内のものかどうかは、発明の詳細な説明に記載された発明であるか否かという観点で、特許法36条6項1号(サポート要件)に係る異議申立理由3と同趣旨のものであるが、以下の第5の8で説示するとおり、異議申立理由3によって、請求項2及び18に係る特許を取り消すことはできない。 9 本件訂正の小括 以上のとおり、本件訂正は、特許法120条の5第2項ただし書1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条9項において準用する同法126条5項及び6項の規定に適合するものである。 したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~16〕、17、18、19について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2のとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1~19に係る発明は、訂正特許請求の範囲の請求項1~19に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。(以下、各請求項に係る発明を「本件発明1」などという。) 「【請求項1】 (削除) 【請求項2】 第1の機械の動作に関する情報を検出するセンサの出力データ、及び、前記出力データに基づいて得られるデータの少なくとも1つを含む状態変数を取得する観測部と、 機械学習モデルに前記状態変数を入力した際の前記機械学習モデルからの出力に基づいて、前記第1の機械の故障の度合いを示す情報の時系列を表示装置に表示する出力部と、を備え、 前記故障の度合いを示す情報は、前記機械学習モデルからの出力に基づいて生成される、 故障予知装置。 【請求項3】 (削除) 【請求項4】 前記機械学習モデルは、少なくとも、前記第1の機械の状態変数と前記第1の機械の故障情報との組合せ、及び、第2の機械の状態変数と前記第2の機械の故障情報との組合せ、のいずれかを含む訓練データセットを用いて学習されたものである、 請求項2に記載の故障予知装置。 【請求項5】 前記機械学習モデルは、少なくとも、前記第1の機械の故障が無いとき又は故障の度合いが低いときの状態変数、及び、前記第2の機械の故障が無いとき又は故障の度合いが低いときの状態変数、のいずれかを含む訓練データセットを用いて学習されたものである、 請求項2に記載の故障予知装置。 【請求項6】 前記第1の機械の故障がないとき又は故障の度合いが低いときは、前記第1の機械が出荷された後又はメンテナンスされた後を起点とした一定期間を表し、 前記第2の機械の故障がないとき又は故障の度合いが低いときは、前記第2の機械が出荷された後又はメンテナンスされた後を起点とした一定期間を表す、 請求項5に記載の故障予知装置。 【請求項7】 (削除) 【請求項8】 前記機械学習モデルは、クラウドサーバ上に存在する、 請求項2、4乃至6のいずれか1項に記載の故障予知装置。 【請求項9】 前記機械学習モデルは、他の機械の故障予知にも利用される、 請求項2、4乃至6、及び8のいずれか1項に記載の故障予知装置。 【請求項10】 前記機械学習モデルは、時系列データを扱う機械学習モデルである、 請求項2、4乃至6、8、及び9のいずれか1項に記載の故障予知装置。 【請求項11】 前記機械学習モデルは、ニューラルネットワークである、 請求項2、4乃至6、及び8乃至10のいずれか1項に記載の故障予知装置。 【請求項12】 前記出力部は、前記機械学習モデルからの出力と正常モデルとに基づいて、前記第1の機械の故障情報を出力する、 請求項2、4乃至6、及び8乃至11のいずれか1項に記載の故障予知装置。 【請求項13】 前記第1の機械は、少なくとも、産業用ロボット、サービス用ロボット、及び、コンピュータ数値制御装置で制御される機械のいずれか1つである、 請求項2、4乃至6、及び8乃至12のいずれか1項に記載の故障予知装置。 【請求項14】 請求項2、4乃至6、及び8乃至13のいずれか1項に記載の故障予知装置と、 前記表示装置と、を備え、 前記表示装置は、前記出力部からの出力をオペレータに通知する、 故障予知システム。 【請求項15】 前記表示装置は、故障が発生する時期から遡って第1の所定期間で定められる時期より前であり、かつ、前記故障が発生する時期から遡って前記第1の所定期間よりも長い第2の所定期間で定められる時期より後に、前記出力部からの出力をオペレータに通知する、 請求項14に記載の故障予知システム。 【請求項16】 前記センサと、 前記第1の機械と、を更に備える、 請求項14又は15に記載の故障予知システム。 【請求項17】 (削除) 【請求項18】 第1の機械の動作に関する情報を検出するセンサの出力データ、及び、前記出力データに基づいて得られるデータの少なくとも1つを含む状態変数を取得し、 機械学習モデルに前記状態変数を入力した際の前記機械学習モデルからの出力に基づいて、前記第1の機械の故障の度合いを示す情報の時系列を表示装置に表示し、 前記故障の度合いを示す情報は、前記機械学習モデルからの出力に基づいて生成される、 故障予知方法。 【請求項19】 (削除) 第4 当審で通知した取消理由について 1 取消理由の概要 当審が、令和5年10月31日付けで通知した取消理由通知(決定の予告)の第6で示した取消理由の概要は次のとおりである。 (1)特許法36条6項2号(明確性)に係る取消理由 訂正前の請求項14は請求項2を引用しているところ、請求項2に「通知部」が記載されておらず、請求項14の「前記通知部」が不明確である点で特許請求の範囲の記載に不備があるため、請求項14及び請求項14を引用する請求項15~16に係る特許は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (2)特許法36条6項1号(サポート要件)に係る取消理由 訂正前の請求項1及び17に「前記機械学習モデルからの出力に基づいて、前記第1の機械の故障情報と故障が発生する時期を取得し」と記載されているが、機械学習モデルからの出力に基づいて、故障が発生する時期を取得することについて、本件明細書等に記載されていない点で特許請求の範囲の記載に不備があるため、請求項1及び17、並びに請求項1を引用する請求項4~16に係る特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 2 取消理由についての判断 (1)明確性に係る取消理由について 請求項2及び14の記載は上記第3のとおりであり、請求項2に「表示装置」が記載されていることに対して、請求項2を引用する請求項14に「前記表示装置」と記載されているから、請求項14の「前記表示装置」が請求項2の「表示装置」を意味することは明らかである。 したがって、明確性に係る取消理由により、請求項14~16に係る特許を取り消すことはできない。 (2)サポート要件 上記第3のとおり、請求項1及び17は削除されたため、サポート要件に係る取消理由の対象は存在しない。 3 当審で通知した取消理由の小括 以上のとおりであるから、明確性に係る取消理由により、請求項14~16に係る特許を取り消すことはできない。 また、サポート要件に係る取消理由の対象は存在しない。 第5 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立理由について 1 申立人が提出した証拠 甲第 1号証:特開2015-88079号公報 甲第 2号証:特開2015-88154号公報 甲第 3号証:特開平1-237344号公報 甲第 4号証:特許第5715288号公報 甲第 5号証:特開2013-8111号公報 甲第 6号証:特表2008-537262号公報 甲第 7号証:特開2014-132400号公報 甲第 8号証:特開2010-160589号公報 甲第 9号証:再公表特許第2008/120552号 甲第10号証:特開平10-267509号公報 甲第11号証:特開2011-180673号公報 甲第12号証:特許第5875734号公報 甲第13号証:特開2012-168799号公報 (以下、各甲号証を「甲1」などという。) 2 取消理由通知に採用しなかった特許異議申立理由の概要 本件特許異議の申立てにおいて、申立人が主張した特許異議申立理由のうち、令和5年10月31日付け取消理由通知(決定の予告)に採用しなかった理由の概要は、次のとおりである(項分けは、特許異議申立書の3(5)ア~エ(特許異議申立書の126~127ページ)に基づく。)。 異議申立理由1(特許法29条1項3号及び同条2項) 異議申立理由1-1 訂正前の本件発明1~3、7~10、12~14及び16~19は、甲1又は甲2の各々に記載された発明であり、また、甲1又は甲2の各々に記載された発明から容易に発明をすることができたものである。 異議申立理由1-2 訂正前の本件発明1及び17は、甲3に記載された発明であり、また、甲3に記載された発明から容易に発明をすることができたものである。 異議申立理由1-3 訂正前の本件発明2及び18は、甲4に記載された発明であり、また、甲4に記載された発明から容易に発明をすることができたものである。 異議申立理由2(特許法29条2項) 異議申立理由2-1 訂正前の本件発明1~3は、甲1又は甲2の各々に記載された発明から容易に発明をすることができたものである。 異議申立理由2-2 訂正前の本件発明1は、甲3に記載された発明から容易に発明をすることができたものである。 異議申立理由2-3 訂正前の本件発明1は、甲1~3及び甲7~甲13に記載された発明から容易に発明をすることができたものである。 異議申立理由2-4 訂正前の本件発明2、3、12、18及び19は、甲1、甲2及び甲4に記載された発明から容易に発明をすることができたものである。 (当審注:特許異議申立書の126ページ下から3行には、「本件特許の請求項2、3、12に係る発明」と記載されているが、特許異議申立書の3(4)エ(イ)~(ウ)(同114~116ページ)及び同3(4)エ(カ)(同120~121ページ)からみて、「本件特許の請求項2、3、12、18及び19に係る発明」の誤記と認める。) 異議申立理由2-5 訂正前の本件発明9は、甲1、甲2、甲4、甲5及び甲7に記載された発明から容易に発明をすることができたものである。 異議申立理由2-6 訂正前の本件発明11は、甲1~甲3、甲6及び甲9に記載された発明から容易に発明をすることができたものである。 (当審注:特許異議申立書の127ページ2~3行には、「甲第1号証~甲第3号証、甲第6号証」と記載されているが、特許異議申立書の3(4)エ(オ)(同117~119ページ)からみて、「甲第1号証~甲第3号証、甲第6号証、甲第9号証」の誤記と認める。) 異議申立理由2-7 訂正前の本件発明14は、甲1、甲2、甲4及び甲7に記載された発明から容易に発明をすることができたものである。 異議申立理由2-8 訂正前の本件発明15は、甲1、甲2、甲7及び甲13に記載された発明から容易に発明をすることができたものである。 異議申立理由3(特許法36条6項1号) 訂正前の本件発明2~6、8~16、18及び19は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない。 異議申立理由4(特許法36条6項2号) 訂正前の本件発明1、4~17は、特許法36条6項2号に規定する要件を満たしていない。 上記第2のとおり、請求項1、3、7、17及び19は削除され、第3のとおり存在しないことに鑑み、以下では、異議申立理由1-1、同1-3、同2-1、同2-4~同2-8及び同3について検討する。 3 各甲号証の記載事項、各甲号証に記載された技術的事項及び発明 (1)甲1の記載事項 甲1には、以下の事項が記載されている。 「【0001】 本発明は、機械設備の健康状態と性能・品質のレベルとの関係性を把握する機械設備のヘルスマネージメントシステム及びヘルスマネージメント方法、並びに、機械設備の健康状態や性能・品質のレベルを予測する機械設備の異常診断システム及び異常診断方法に関する。」 「【0018】 本発明は、工場、商業施設、工事現場などで使用される機械設備の稼働率を維持・向上するため、機械設備の健康状態を示す指標である性能・品質レベルを把握し、機械設備の稼働継続可能時間(RUL)を診断する方法などを提供するものである。・・・ 【0019】 具体的には、(1)非線形回帰手法であるガウシアンプロセスを用いた機械設備の異常測度の予測、設備状態の分類、(2)k-NN(k-Nearest Neighbor)法や局所部分空間法などの認識手法を時系列データに適用した機械設備の異常測度の予測、設備状態の分類、(3)機械設備の状態と、性能・品質レベルなどを指標とする健康状態との関係性を構築し、この関係性に基づくRULの予測、などからなり、高精度な異常度の予測や性能・品質の予測、及び機械設備のRULの予測方法を提供する。」 「【0023】 図2は、本発明において、遠隔監視により、ヘルスマネージメント又は異常診断の対象となる機械設備の一例を示すものである。・・・以下、医療診断装置105a、発電設備105bなどを総称して、適宜に機械設備105と呼ぶ。」 「【0026】 時系列データ取得部11は、インターネット網などを介して、監視対象である機械設備105(例えば、図1に示した医療診断装置105a、発電設備105bなど)から出力される多次元のセンサデータと、機械設備105の設置環境を表す環境データとを取得する手段である。・・・時系列データ取得部11は、取得した最新の、すなわち現在の時系列データを、取得するごとに時系列データベース記憶部12に順次に記憶させることで蓄積するとともに、現在の時系列データを健康状態予測部13に出力する。」 「【0028】 なお、時系列データベース記憶部12に、新たに取得した時系列データを追加する場合は、不図示の評価手段によって、データとしての妥当性(異常ではないこと、既に時系列データベースに格納されているデータとの類似性から新規追加の是非)を評価した後に蓄積され、正常状態における過去の時系列データとして活用できる形態になっている。・・・」 「【0031】 健康状態予測部13は、時系列データ取得部11から入力される現在の時系列データと、時系列データベース記憶部12に記憶されている過去の時系列データとを用いて、性能や品質などを指標とする健康状態を推定(予測)するものである。また、健康状態予測部13は、推定した健康状態の指標である性能や品質をRUL予測部14に出力する。」 「【0035】 出力部15は、RUL予測部14からRULの予測結果を入力するとともに、時系列データベース記憶部12から設備状態や健康状態、あるいは異常測度や性能測度に影響が大きなセンサデータ12aを入力し、入力した時系列センサデータ12aや健康状態などを示す時系列データの波形を表示するものである。・・・」 「【0037】 センサデータ12aは、冷却水やオイルの温度、オイルの圧力、電圧などである。センサデータ12aは、2種以上であればよいが、数十から数万種に及ぶものであってもよい。センサデータ12aは、所定のサンプリング間隔で、時系列データ取得部11によって取得される。・・・」 「【0040】 [設備状態・健康状態の定量化方法] 次に、設備状態や健康状態を定量化する方法について説明する。 設備状態や健康状態の定量化には、回帰手法や認識手法などを用いることができる。以下に、いくつかの手法について順次に説明する。 なお、設備状態や健康状態の定量化は、図3に示した健康状態予測部13によって行われる処理である。 【0041】 (第1の定量化手法) まず、図7を参照(適宜図3参照)して、設備状態の第1の定量化手法として、回帰手法について説明する。 第1の定量化手法は、過去の時系列データを学習データとして、回帰モデルを作成し、作成した回帰モデルを用いて、現在の時系列データの設備状態や健康状態を定量化するものである。 なお、定量化する指標が、設備状態又は健康状態の何れであっても同様に適用することができるため、設備状態(本明細書において、「機械設備の状態」又は、単に「状態」ということもある)を例にして説明する。」 【0043】 次に、回帰手法としてガウシアンプロセスを用いた場合について説明する。・・・ガウシアンプロセスの特徴は、現在の時系列センサデータ(以下、「現在の時系列データ」を、適宜に「観測データ」という)に対する設備状態の予測値(推定値)として、学習データと類似したデータを出力し、かつ、その予測の信頼性も分散値として出力可能なことである。 【0044】 学習データである過去の時系列センサデータを示す入力ベクトルx1,・・・,xnと対応する設備状態が出力t=(t1,・・・,tn)Tとして与えられているとする。このとき、現在の時系列センサデータとして入力される新しい入力ベクトルxn+1に対する出力tn+1を予測する場合について考える。この出力tn+1の予測値testは、式(1.1)によって得ることができる。」 「【0050】 なお、ガウシアンプロセスでは、予測値の算出に際して、観測データに類似した過去の時系列センサデータ(以下、「過去の時系列データ」を、適宜に「過去データ」という)の重みが大きくなる。言い換えれば、どの過去データを参照しているか(重みの大きな過去データがどれか)が容易に分かるため、参照した過去データが属する設備状態が、観測データが取得された現在の設備状態に対応する。これは、後記する局所部分空間法で算出される残差ベクトルの始点に対応するものである。 【0051】 すなわち、ガウシンアンプロセスにおいて、参照した過去データの位置を始点とし、観測データの位置を終点とする多次元ベクトルを考えた場合に、当該多次元ベクトルは、正常状態から異常状態に向かう多次元ベクトルとして定義することができる。この多次元ベクトルは、前記したように、局所部分空間法における残差ベクトルに相当するものである。 従って、当該多次元ベクトルの始点位置によって設備状態を定量化できる。また、多次元ベクトルの長さは、正常状態からの乖離度を示す異常測度として用いることができる。」 「【0054】 (第2の定量化手法) 次に、図8を参照(適宜図3参照)して、設備状態の第2の定量化手法として、認識手法の一つであるk-NN(k-Nearest Neighbor;k-近傍)法について説明する。 第2の定量化手法においても、設備状態の定量化を行うために、多次元のセンサデータ及び環境データをからなる過去データを学習データとして用いる。」 「【0057】 k-NN法において、観測データqが分類されたクラスタBの重心(代表値)を始点とし、観測データqの位置を終点とする多次元ベクトルを考えた場合に、当該多次元ベクトルは、正常状態から異常状態に向かう多次元ベクトルとして定義することができる。この多次元ベクトルは、局所部分空間法における残差ベクトルに相当するものである。 従って、当該多次元ベクトルの始点位置によって設備状態を定量化することができる。また、多次元ベクトルの長さは、正常状態からの乖離度を示す異常測度として用いることができる。」 「【0060】 (第3の定量化手法) 次に、図9を参照(適宜図3参照)して、設備状態の第3の定量化手法として、認識手法の1つである局所部分空間(LSC:Local Subspace Classifier)法について説明する。・・・ 【0061】 本定量化手法では、まず、未知データである観測データqを用いて、前記したk-NN法と同様の手順により、学習データxの中から観測データqのk-近傍データx1~x3を選択する。次に、k-近傍データによって張られるk-1次元の局所部分空間(線形多様体)SSを作成する。なお、kは、観測データq及び学習データxの次元数以下であればよい。そして、観測データqから局所部分空間SSへ降ろした垂線の足Xbを始点とし、観測データqを終点とする残差ベクトルVを求める。図9に示した例は、k=3の場合であり、局所部分空間SSは、(k-1)=2次元空間(平面)である。 LSC法で求めた残差ベクトルは、正常状態から異常状態に向かう多次元ベクトルとして用いることができる。すなわち、残差ベクトルの始点が設備状態を示すとともに、残差ベクトルの長さが正常状態からの乖離度を示し、異常測度として用いることができる。」 「【0080】 [健康状態予測部及びRUL予測部の構成] 次に、図17を参照(適宜図3参照)して、第1実施形態における健康状態予測部13及びRUL予測部14の詳細な構成について説明する。 健康状態予測部13は、類似時系列データ選択部131と、第1識別部133aと、第2識別部133bと、第1始点データ記憶部134aと、第2始点データ記憶部134bと、第1クラスタ生成部135aと、第2クラスタ生成部135bと、類似度算出部136と、類似度データ記憶部137と、健康状態推定部138と、健康状態記憶部139とを備えている。 また、本実施形態におけるヘルスマネージメントシステム1は、異常予兆検知部16を備えている。 【0081】 類似時系列データ選択部131は、時系列データ取得部11から現在の時系列データである観測データを入力し、時系列データベース記憶部12に記憶されている過去データから、観測データと類似するデータを選択する。具体的には、観測データである入力ベクトルと、時系列データベース記憶部12に蓄積されている過去データである入力ベクトルとの間の距離を算出し、距離が近いものから所定数の過去データを選択する。更に具体的には、前記したカーネル関数(例えば、式(1.4))を用いて、カーネル関数の値が「1」に近いデータから順に選択することができる。 類似時系列データ選択部131は、選択した過去データを、第1識別部133a及び第2識別部133bに出力する。 【0082】 第1識別部133a及び第2識別部133bは、それぞれ類似時系列データ選択部131から観測データ又は/及び過去データを入力し、それぞれ設備状態及び健康状態を定量化するものである。具体的には、前記したガウシアンプロセスなどの回帰手法や、k-NN法やLSC法などの認識手法を用いて、正常状態から異常状態に向かう多次元ベクトルを算出し、その始点データによって設備状態及び健康状態を定量化する。 【0083】 第1識別部133aは、過去データについて算出した多次元ベクトルの始点データを第1始点データ記憶部134aに記憶させる。また、第1識別部133aは、観測データについて算出した多次元ベクトルの始点データを健康状態推定部138に出力するとともに、その長さを異常測度として異常予兆検知部16に出力する。 第2識別部133bは、過去データについて算出した始点データを第2始点データ記憶部134bに記憶させる。また、第2識別部133bは、観測データについては、多次元ベクトルの算出は行わない。」 「【0120】 また、異常予兆検知部16は、第1識別部133aから異常測度を入力し、異常測度が所定の閾値を超えた場合に異常予兆ありと判定し、閾値以下の場合に異常予兆なしと判定することにより、異常予兆の有無を検知するものである。異常予兆検知部16は、異常予兆の判定結果を出力部15に出力する。」 「【0124】 ・・・ヘルスマネージメントシステム1は、出力部15によって、異常予兆の検知結果を表示又は/及び外部に出力する。」 図1 「 [図:0001413290000001.jpg] 」 図17 「 [図:0001413290000002.jpg] 」 (2)甲1に記載された技術的事項 上記(1)の記載を整理すると、甲1には、以下の技術的事項が記載されているといえる。 ア 甲1には、異常診断システムが記載されており、当該システムは、時系列データ取得部11から入力される現在の時系列データと、時系列データベース記憶部12に記憶されている過去の時系列データとを用いて、性能や品質などを推定する健康状態予測部13(【0031】)と、健康状態予測部13が出力する異常測度が所定の閾値を超えた場合に異常予兆ありと判定する異常予兆検知部16(【0120】)と、異常測度及び判定結果を出力する出力部15(【0124】)を備えている。 イ 時系列データ取得部11は、機械設備105(【0026】)の冷却水やオイルの温度、オイルの圧力、電圧などを検出するセンサの時系列センサデータ12a(【0037】)を取得して、時系列データベース記憶部12に蓄積する(【0026】)。 ウ 時系列データベース記憶部12には、正常状態における過去の時系列データが蓄積されている(【0028】)。 エ 機械設備の異常測度の予測は、非線形回帰手法であるガウシアンプロセス、k-NN法又は局所部分空間(LSC:Local Subspace Classifier)法で行われる(【0019】)。 オ ガウシアンプロセスでは、過去の時系列データ(以下「過去データ」という。)を学習データとして回帰モデルを作成し、回帰モデルを用いて現在の時系列データ(以下「観測データ」という。)の設備状態を定量化する(【0041】)。 カ 第1の定量化手法であるガウシアンプロセスでは、観測データに類似した過去データの位置を始点とし、観測データの位置を終点とする多次元ベクトルを考えると、過去データは正常状態におけるデータである(上記ウ)から、この多次元ベクトルは正常状態から異常状態に向かう多次元ベクトルとして定義することができる。そして、当該多次元ベクトルの始点位置によって設備状態を定量化でき、多次元ベクトルの長さは、正常状態からの乖離度を示す異常測度として用いることができる(【0051】)。 キ 第2の定量化手法であるk-NN法では、観測データqが分類されるクラスタBの重心位置を始点、観測データqの位置を終点とする多次元ベクトルを考えると、当該多次元ベクトルを、正常状態から異常状態に向かう多次元ベクトルとして定義することができる。そして、多次元ベクトルの始点位置によって設備状態を定量化でき、多次元ベクトルの長さを異常測度として用いることができる(【0057】)。 ク 第3の定量化手法であるLSC法では、観測データqから局所部分空間SSへ下ろした垂線の足Xbの位置を始点とし、観測データqの位置を終点とする残差ベクトルVを考えると、当該残差ベクトルVは、正常状態から異常状態に向かう多次元ベクトルとして用いることができる。そして、残差ベクトルVの始点が設備状態を示し、残差ベクトルの長さを異常測度として用いることができる(【0061】)。 ケ 健康状態予測部13は、類似時系列データ選択部131、第1識別部133a、第2識別部133bを備えている(【0080】)。 コ 類似時系列データ選択部131は、観測データと類似する過去データを選択する(【0081】)。 サ 第1識別部133aは、過去データについて多次元ベクトルの始点を算出し、観測データについて多次元ベクトルの終点を算出し、多次元ベクトルの長さを異常測度として異常予知検知部16に出力する(【0083】)。(当審注:【0083】には「観測データについて算出した多次元ベクトルの始点データ」と記載されているが、ガウシアンプロセス、k-NN法及びLSC法のいずれについても、観測データの位置を多次元ベクトルの終点としている(上記カ~ク)から、上記の記載は「観測データについて算出した多次元ベクトルの終点データ」の誤記と認める。) シ 異常予兆検知部16は、健康状態予測部13の第1識別部133aが出力する異常測度(多次元ベクトルの長さ)が所定の閾値を超えた場合に異常予兆ありと判定する(【0120】)。 ス 出力部15は、異常測度を入力し、入力した時系列データの波形を表示する(【0035】、図1)。 (3)甲1発明 甲1の記載事項及び甲1記載の技術的事項を、本件発明2の記載に合わせて整理すると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 「機械設備105の冷却水やオイルの温度、オイルの圧力、電圧などを検出するセンサの時系列センサデータ12aの少なくとも1つを含む時系列データを取得する時系列データ取得部11と、 前記時系列センサデータ12aに類似する過去データの位置を始点とし、前記時系列センサデータ12aの位置を終点とする多次元ベクトルに基づいて、異常測度を示す多次元ベクトルの長さの時系列を表示する出力部15と、を備え、 前記異常測度を示す多次元ベクトルの長さは、前記多次元ベクトルに基づいて生成される 異常診断システム。」 (4)甲2の記載事項及び甲2発明 甲2は、甲1の公開特許公報に係る出願(特願2013-227383)の一部を、平成26年2月10日に新たな出願(特願2014-23667)としたものの公開特許公報であるから、甲1の記載事項(上記(1))と同様の事項が記載されており、甲1発明(上記(3))と同じ発明(以下「甲2発明」という。)が記載されているといえる。 (5)甲4の記載事項 甲4には、以下の事項が記載されている。 「【0001】 本発明は、機械設備の動態を監視する動態監視装置等に関する。」 「【0014】 ≪実施形態≫ 図1は、本実施形態に係る動態監視装置の構成図である。 動態監視装置1は、機械設備2に設置された複数のセンサの検出値を含む時系列データに基づいて、機械設備2の動態を監視する装置である。・・・」 「【0017】 図2に示すように、装置AにはセンサA1,A2,A3が設置されている。センサA1は、装置Aに関する特定の物理量(温度、圧力、流量、電圧、電流等)を所定のサンプリング周期で検出する機能を有している。センサA1の検出値は、ネットワークNを介して、時系列データとして動態監視装置1に送信される。なお、センサA2,A3についても同様である。また、装置Bに設置されたセンサB1,B2、装置Cに設置されたセンサC1、装置Dに設置されたセンサD1,D2についても同様である。」 「【0021】 <動態監視装置の構成> 図1に示すように、動態監視装置1は、通信手段11と、時系列データ取得手段12と、時系列データ記憶手段13と、設備情報取得手段14と、設備情報記憶手段15と、データマイニング手段16と、診断結果記憶手段17と、入力受付手段18と、表示制御手段19と、を備えている。」 「【0023】 時系列データ取得手段12は、ネットワークNを介して通信手段11に送信されたデータのうち、機械設備2に関する時系列データを取得する。前記した時系列データには、機械設備2に設置された各センサ(図2参照)の検出値と、各センサの識別情報と、各センサが所定の物理量を検出した日時と、が含まれる。時系列データ取得手段12は、通信手段11を介して取得した時系列データを時系列データ記憶手段13に格納する。」 「【0028】 診断結果記憶手段17には、データマイニング手段16による診断結果が格納される。診断結果記憶手段17として、磁気ディスク装置、光ディスク装置、半導体記憶装置等を用いることができる。また、前記した診断結果には、機械設備2の識別情報と、各センサの検出値と、異常予兆の有無と、後記する異常測度と、が含まれる。 入力受付手段18は、入力装置4を介したユーザの操作に応じて、所定の操作信号を表示制御手段19に出力する。入力装置4として、タッチパネル、マウス、キーボード等を用いることができる。」 「【0031】 図4は、動態監視装置が有するデータマイニング手段の構成図である。データマイニング手段16は、データマイニング学習部161と、データマイニング診断部162と、を備えている。 【0032】 (データマイニング学習部の構成) 図4は、動態監視装置が有するデータマイニング手段の構成図である。 データマイニング学習部161(学習手段)は、時系列データ取得手段12によって取得される時系列データを用いて、機械設備2の状態に対応する特徴ベクトルを生成し、この特徴ベクトルの正常範囲を示す正常モデルを学習する。 図4に示すように、データマイニング学習部161は、学習対象データ取得部161aと、学習対象データ記憶部161bと、正常モデル学習部161cと、正常モデル記憶部161dと、を備えている。」 「【0037】 以下では、一例として、非階層的クラスタリングであるk平均法を用いてクラスタリングを行う場合について説明する。 正常モデル学習部161cは、まず、各特徴ベクトルに対してランダムにクラスタを割り振り、割り振ったデータに基づいて各クラスタの中心(クラスタ中心c:図5参照)を算出する。クラスタ中心cは、例えば、クラスタに属する複数の特徴ベクトルの重心である。 【0038】 次に、正常モデル学習部161cは、所定の特徴ベクトルと各クラスタ中心cとの距離を求め、この距離が最も小さくなるクラスタに当該特徴ベクトルを割り当て直す。このような処理を全ての特徴ベクトルについて実行し、クラスタの割り当てが変化しなかった場合はクラスタの生成処理を終了する。それ以外の場合は、新しく割り振られたクラスタからクラスタ中心cを再計算し、前記した処理を繰り返す。このようにして正常モデル学習部161cは、機械設備2の状態に対応する各特徴ベクトルを複数のクラスタに分類する。 【0039】 さらに、正常モデル学習部161cは、各クラスタについてクラスタ中心c(図5参照)の座標値と、クラスタ半径rと、を算出する。クラスタ半径rは、例えば、クラスタ中心cと特徴ベクトルとの距離の平均値である。なお、クラスタ半径rの算出方法はこれに限定されず、例えば、特徴ベクトルの各成分の分散値に基づいてクラスタ半径rを算出するようにしてもよい。 【0040】 そして、正常モデル学習部161cは、生成したクラスタに関する情報(クラスタ中心c、クラスタ半径r)を正常モデル記憶部161d(図4参照)に格納する。 図4に示す正常モデル記憶部161dには、正常モデル学習部161cによって学習された正常モデル(クラスタ)に関する情報がデータベースとして記憶されている。 【0041】 (データマイニング診断部の構成) 図4に示すデータマイニング診断部162は、データマイニング学習部161によって学習されたクラスタを用いて、機械設備2における異常予兆の有無を診断する。 データマイニング診断部162は、診断対象データ取得部162aと、診断対象データ記憶部162bと、異常測度算出部162cと、診断部162dと、を備えている。」 「【0043】 異常測度算出部162c(異常測度算出手段)は、診断対象データ記憶部162bから読み出した診断対象データを用いて、機械設備2の異常測度uを算出する。なお、「異常測度u」とは、機械設備2(つまり、機械設備2の状態に対応する特徴ベクトル)の異常度合いを示す値である。 まず、異常測度算出部162cは、診断対象データを正規化(無次元量化)し、各時刻での機械設備2の状態を表す特徴ベクトルを生成する。 【0044】 そして、異常測度算出部162cは、正常モデル記憶部161dから読み出した正常モデル(クラスタ)に基づいて、診断対象データの異常測度uを算出する。この異常測度uは、例えば、次のような手順で算出される。 すなわち、異常測度算出部162cは、特徴ベクトルの正常範囲を示す複数のクラスタのうち、診断対象データに最も近いクラスタ中心cを有するものを特定する。さらに異常測度算出部162cは、特定したクラスタのクラスタ中心cから診断対象データまでの距離d(図5参照)と、クラスタ半径rと、を用いて、例えば、(数式1)に基づき異常測度uを算出する。」 「【0048】 また、異常測度u>1である場合、診断対象データはクラスタの外に存在している。この場合、診断部162dは、この診断対象データに対応する機械設備2に関して「異常予兆あり」と診断する。なお、診断結果記憶手段17に格納された情報は、表示制御手段19(図1参照)によって表示装置5に表示される。」 (6)甲4に記載された技術的事項 上記(5)の記載を整理すると、甲4には、以下の技術的事項が記載されているといえる。 ア 甲4には、機械設備の動態を監視する動態監視装置(【0001】)が記載され、当該動態監視装置は、時系列データ取得手段12と、データマイニング手段16と、表示制御手段19を備えている(【0021】)。 イ 時系列データ取得手段12は、機械設備2に関する時系列データを取得する(【0023】)。 ウ データマイニング手段16は、データマイニング学習部161と、データマイニング診断部162を備えている(【0031】)。 エ データマイニング学習部161は、時系列データ取得手段12によって取得される時系列データを用いて、機械設備2の状態に対応する特徴ベクトルを生成し、この特徴ベクトルの正常範囲を示す正常モデルを学習するものであり、正常モデル学習部161cと正常モデル記憶部161dを備えている(【0032】)。 オ 正常モデル学習部161cは、特徴ベクトルをクラスタに割り振り、割り振ったデータに基づいて、各クラスタの中心c(特徴ベクトルの重心)を算出し(【0037】)、特徴ベクトルと各クラスタ中心cとの距離が最も小さくなるように、各クラスタに特徴ベクトルを割り当て直すことで、各特徴ベクトルを複数のクラスタに分類し(【0038】)、各クラスタ中心cの座標値とクラスタ半径rを算出して(【0039】)、その情報を正常モデル記憶部161dに格納する(【0040】)。 カ データマイニング診断部162は、データマイニング学習部161によって学習されたクラスタを用いて、機械設備2における異常予兆の有無を診断するものであり、異常測度算出部162cと診断部162dを備えている(【0041】)。 キ 異常測度算出部162cは、特徴ベクトルの正常範囲を示す複数のクラスタのうち、診断対象データに最も近いクラスタ中心cを特定し、そのクラスタの中心cから診断対象データまでの距離dとクラスタ半径rから異常測度uを算出する(【0044】)。 ク 診断部162dは、異常測度u>1である場合、診断対象データに対応する機械設備2に関して「異常予兆あり」と診断し、診断結果は表示制御手段19によって表示装置5に表示される(【0048】)。 (7)甲4発明 甲4の記載事項及び甲4記載の技術的事項を、本件発明2の記載に合わせて整理すると、甲4には、次の発明(以下「甲4発明」という。)が記載されているといえる。 「機械設備2の装置に関する特定の物理量を検出するセンサの検出値の少なくとも1つを含む時系列データを取得する時系列データ取得手段12と、 正常モデルのクラスタ中心cから診断対象となる時系列データまでの距離d及びクラスタ半径rに基づいて、異常測度uを算出する異常測度算出部162cと、異常測度uを表示装置5に表示させる表示制御手段19と、を備え、 前記異常測度uは、前記正常でモデルのクラスタ中心c及びクラスタ半径rに基づいて生成される、 動態監視装置。」 4 異議申立理由1-1について (1)甲1発明に基づく本件発明2の新規性及び進歩性について ア 本件発明2と甲1発明の対比 異議申立理由1-1(上記2)を検討するため、本件発明2と甲1発明を対比すると、次のとおりである。 (ア)甲1発明の「機械設備105」が、本件発明2の「第1の機械」に相当することは明らかであり、以下同様に、「冷却水やオイルの温度、オイルの圧力、電圧などを検出するセンサの時系列センサデータ12aの少なくとも1つ」が、「動作に関する情報を検出するセンサの出力データ、及び、前記出力データに基づいて得られるデータの少なくとも1つ」に相当し、「時系列データ」が「状態変数」に相当し、「時系列データ取得部11」が「観測部」に相当し、「異常診断システム」が「故障予知装置」に相当する。 (イ)本件発明2の「故障の度合い」は、故障の深刻さを意味する(本件明細書等の【0014】)ところ、甲1発明の「異常測度」は、正常状態からの乖離度を定量化したもの(甲1の【0051】)であり、正常状態から大きく乖離すれば、より深刻な故障といえるから、甲1発明の「異常測度」は、本件発明2の「前記第1の機械の故障の度合いを示す情報」に相当する。 そして、甲1発明の「異常測度を示す多次元ベクトルの長さの時系列を表示する出力部15」は、本件発明2の「前記第1の機械の故障の度合いを示す情報の時系列を表示装置に表示する出力部」に相当する。 (ウ)以上をまとめると、本件発明2と甲1発明は、以下の点で一致及び相違する。 [一致点] 「第1の機械の動作に関する情報を検出するセンサの出力データ、及び、前記出力データに基づいて得られるデータの少なくとも1つを含む状態変数を取得する観測部と、 前記第1の機械の故障の度合いを示す情報の時系列を表示装置に表示する出力部と、を備える、 故障予知装置。」である点。 [相違点1] 故障の度合いを示す情報が、本件発明2は「機械学習モデルに前記状態変数を入力した際の前記機械学習モデルからの出力に基づいて」生成されるのに対して、甲1発明は「前記時系列センサデータ12aに類似する過去データの位置を始点とし、前記時系列センサデータ12aの位置を終点とする多次元ベクトルに基づいて」生成される点。 イ 相違点1の判断 (ア)故障の度合いを示す情報を「機械学習モデルに前記状態変数を入力した際の前記機械学習モデルからの出力に基づいて」生成することは、甲1には記載されていないし、示唆もないから、相違点1は、甲1に基づいて容易に想到できたものとはいえない。 (イ)これに対して、申立人は、令和6年3月13日の意見書において、甲1には、学習したガウシアンプロセスに観測データを入力することや、学習済みのガウシアンプロセスから出力される設備状態の予測値が設備状態を示す始点データであることが示されている旨を説明し、その根拠として、甲1の【0082】の「観測データ又は/及び過去データを入力し、それぞれ設備状態及び健康状態を定量化するものである。具体的には、前記したガウシアンプロセス・・・を用いて、正常状態から異常状態に向かう多次元ベクトルを算出し、その始点データによって設備状態及び健康状態を定量化する」という記載を挙げている。 (ウ)しかし、上記3(2)カで説示したとおり、甲1のガウシアンプロセスでは、多次元ベクトルの始点は、学習済みのガウシアンプロセスから出力されるものではなく、観測データに類似した過去データの位置であって、具体的には、類似時系列データ選択部131が、観測データと類似する過去データを選択することで決定される(上記3(2)コ)ものである。そして、このような始点と終点(観測データ(時系列センサデータ12a)の位置)を有する多次元ベクトルが、「機械学習モデルに前記状態変数を入力した際の前記機械学習モデルからの出力に基づいて」生成されるものということはできない。 したがって、申立人の上記の説明は採用できない。 ウ 甲1発明に基づく本件発明2の新規性及び進歩性の小括 本件発明2と甲1発明を対比すると、相違点1が存在するから、本件発明2は甲1発明ではない。 また、相違点1に係る本件発明2の構成は、当業者が甲1の記載から容易に想到できたものとはいえないから、本件発明2は、甲1発明及び甲1の記載に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。 (2)本件発明8~10、12~14及び16に係る発明の新規性及び進歩性 本件発明8~10、12~14及び16は、本件発明2を直接的又は間接的に引用するから、本件発明2と同様に、本件発明8~10、12~14及び16は、甲1発明ではないし、甲1発明及び甲1の記載に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)本件発明18の新規性及び進歩性について 本件発明18は、請求項2の故障予知装置に係る発明を、故障予知方法の発明として記載したものであり、発明のカテゴリーの相違に基づく表現上の差異を除けば、本件発明2と実質的な差異はない。 そして、甲1には、異常診断システムに係る甲1発明が記載されているほかに、異常診断方法の発明(以下「甲1の診断方法発明」という。)も記載されているといえるところ、本件発明18と甲1の診断方法発明を対比すると、相違点1と同様の相違点が存在することは明らかである。 したがって、本件発明18は甲1の診断方法発明ではないし、甲1の診断方法発明及び甲1の記載に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。 (4)甲2発明に基づく本件発明2、8~10、12~14、16及び18の新規性及び進歩性について 甲2には、甲1の記載事項と同様の事項が記載されており、甲1発明と同じ甲2発明が記載されているということができ(上記3(4))、本件発明2と甲2発明を対比すると、相違点1が存在するから、本件発明2は甲2発明ではないし、甲2発明及び甲2の記載に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。 また、本件発明8~10、12~14及び16は、本件発明2を直接的又は間接的に引用するから、本件発明2と同様に、本件発明8~10、12~14及び16は、甲2発明ではないし、甲2発明及び甲2の記載に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。 さらに、甲2には、異常診断システムに係る甲2発明が記載されているほかに、異常診断方法の発明(以下「甲2の診断方法発明」という。)も記載されているといえるところ、本件発明18と甲2の診断方法発明を対比すると、相違点1と同様の相違点が存在することは明らかである。 したがって、本件発明18は甲2の診断方法発明ではないし、甲2の診断方法発明及び甲2の記載に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。 (5)異議申立理由1-1の小括 以上のとおり、本件発明2、8~10、12~14、16及び18は、甲1又は甲2の各々に記載された発明ではないし、また、甲1又は甲2の各々に記載された発明から容易に発明をすることができたものではないから、異議申立理由1-1によって、本件発明2、8~10、12~14、16及び18に係る特許を取り消すことはできない。 また、請求項1、3、7、17及び19は削除され、異議申立の対象が存在しない。 5 異議申立理由1-3について (1)甲4発明に基づく本件発明2の新規性及び進歩性について ア 本件発明2と甲4発明の対比 異議申立理由1-3(上記2)を検討するため、本件発明2と甲4発明を対比すると、次のとおりである。 (ア)甲4発明の「機械設備2」が、本件発明2の「第1の機械」に相当することは明らかであり、以下同様に、「装置に関する特定の物理量を検出するセンサの検出値の少なくとも1つ」が、「動作に関する情報を検出するセンサの出力データ、及び、前記出力データに基づいて得られるデータの少なくとも1つ」に相当し、「時系列データ」が「状態変数」に相当し、「時系列データ取得手段12」が「観測部」に相当し、「動態監視装置」が「故障予知装置」に相当する。 (イ)本件発明2の「故障の度合い」は、故障の深刻さを意味するところ、甲4発明の「異常測度u」は、機械設備2の異常度合いを示す値(甲4の【0043】)であり、異常度合いを示す値が大きくなれば、より深刻な故障といえるから、甲4発明の「異常測度u」は、本件発明2の「前記第1の機械の故障の度合いを示す情報」に相当する。 そして、甲4発明の「異常測度uを算出する異常測度算出部162cと、異常測度uを表示装置5に表示させる表示制御手段19」は、本件発明2の「前記第1の機械の故障の度合いを示す情報」「を表示装置に表示する出力部」に相当する。 (ウ)以上をまとめると、本件発明2と甲4発明は、以下の点で一致及び相違する。 [一致点] 「第1の機械の動作に関する情報を検出するセンサの出力データ、及び、前記出力データに基づいて得られるデータの少なくとも1つを含む状態変数を取得する観測部と、 前記第1の機械の故障の度合いを示す情報を表示装置に表示する出力部と、を備える、 故障予知装置。」である点。 [相違点2] 故障の度合いを示す情報が、本件発明2は「機械学習モデルに前記状態変数を入力した際の前記機械学習モデルからの出力に基づいて」生成されるのに対して、甲4発明は「正常モデルのクラスタ中心cから診断対象となる時系列データまでの距離d及びクラスタ半径rに基づいて」生成される点。 [相違点3] 出力部の表示の態様が、本件発明2は「時系列」を表示するのに対して、甲4発明は「時系列」を表示しない点。 イ 相違点2の判断 (ア)故障の度合いを示す情報を「機械学習モデルに前記状態変数を入力した際の前記機械学習モデルからの出力に基づいて」生成することは、甲4には記載されていないし、示唆もないから、相違点2は、甲4に基づいて容易に想到できたものとはいえない。 (イ)これに対して、申立人は、令和5年12月15日の回答書5ページにおいて、甲4の正常モデルは、診断対象データという入力に対して診断対象データに最も近いクラスタ中心を有するクラスタという出力を決定する構成と同一視できるなどと説明し、さらに、令和6年3月13日の意見書の5~6ページにおいて、仮に、甲4の正常モデルが、異常測度を算出するための計算自体を行うものでないとしても、正常モデル及び異常測度算出部162cをまとめた構成は、正常モデルに異常測度算出部162cの計算機能が付加された構成と同一視できるなどと説明している。 (ウ)しかし、診断対象データという入力に対して診断対象データに最も近いクラスタ中心を有するクラスタという出力を決定するのは、異常測度算出部162cであって、正常モデルではない(上記第5の3(6)キ)。 そして、甲4の異常測度算出部162cが機械学習モデルでないことは明らかであるから、仮に、申立人の説明するように、正常モデル及び異常測度算出部162をまとめた構成を仮定しても、その構成は、本件発明2の機械学習モデルに相当するとはいえない。 したがって、申立人の上記の説明は採用できない。 ウ 甲4発明に基づく本件発明2の新規性及び進歩性の小括 本件発明2と甲4発明を対比すると、相違点2が存在するから、本件発明2は甲4発明ではない。 また、相違点2に係る構成は、当業者が甲4の記載から容易に想到できたものとはいえないから、相違点3について検討するまでもなく、本件発明2は、甲4発明及び甲4の記載に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。 (2)本件発明18の新規性及び進歩性について 本件発明18は、請求項2の故障予知装置に係る発明を、故障予知方法の発明として記載したものであり、発明のカテゴリーの相違に基づく表現上の差異を除けば、本件発明2と実質的な差異はない。 そして、甲4には、動態監視装置に係る甲4発明が記載されているほかに、動態監視方法の発明(以下「甲4の監視方法発明」という。)も記載されているといえるところ、本件発明18と甲4の監視方法発明を対比すると、少なくとも、相違点2と同様の相違点が存在することは明らかである。 したがって、本件発明18は甲4の監視方法発明ではないし、甲4の監視方法発明及び甲4の記載に基づいて、容易に発明をすることができたものとはいえない。 (3)異議申立理由1-3の小括 以上のとおり、本件発明2及び18は、甲4に記載された発明ではないし、また、甲4に記載された発明から容易に発明をすることができたものではないから、異議申立理由1-3によって、本件発明2及び18に係る特許を取り消すことはできない。 6 異議申立理由2-1について 上記4で異議申立理由1-1について検討したとおり、本件発明2は、甲1発明又は甲2発明から容易に発明をすることができたものではないから、異議申立理由1-1と同様に、異議申立理由2-1によって、本件発明2に係る特許を取り消すことはできない。 また、請求項1及び3は削除され、異議申立の対象が存在しない。 7 異議申立理由2-4~同2-8について 本件発明2は、甲1発明又は甲2発明と対比すると、相違点1が存在するところ、甲4~甲7、甲9及び甲13には、相違点1に係る構成が記載されているとはいえないから、本件発明2、9、11、12、14、15及び18は、甲1発明又は甲2発明、並びに、甲4~甲7、甲9及び甲13から容易に発明をすることができたものとはいえない。 したがって、異議申立理由2-4~同2-8によって、本件発明2、9、11、12、14、15及び18に係る特許を取り消すことはできない。 また、請求項3、19は削除され、異議申立の対象が存在しない。 8 異議申立理由3について (1)異議申立理由3の概要 本件明細書等には、「故障の度合いを示す情報の時系列」を「出力」することが記載されていないから、本件発明2及び18並びに本件発明4~6及び8~16は発明の詳細な説明に記載したものでなく、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない。 (2)異議申立理由3の検討 ア 一般に、「時系列」は、時間の経過とともに変化する値を得て、得られた値を時間の順序に従って整理・配列したものを意味するということができるから、本件発明2の「前記第1の機械の故障の度合いを示す情報の時系列を表示装置に表示する出力部」という記載は、第1の機械の故障の度合いを示す情報が、時間の順序に従って整理、配列されたものを、表示装置に表示する出力部を意味すると解される。 イ 本件明細書等の図7(a)~(c)には、座標の横軸を時間、縦軸を故障の度合いとする不連続な関数が示されており、これらの関数の表示は、時間の序列に沿って故障の度合いを整理・配列して表示しているといえるから、図7(a)~(c)を表示することは、故障の度合いを示す情報の時系列を表示することといえる。 ウ また、本件明細書等の【0046】には、「・・・図7(a)に示されるように、・・・「故障の度合い」を示す指標値を、故障が近づくにつれて大きくなるように定め、学習によって得られた指標値をそのまま故障情報として故障情報出力部42が出力するように構成することができる」と記載されており、故障情報出力部42が、学習によって得られた「故障の度合い」を示す指標値を図7(a)に示されるように出力することが開示されている。 同様に、本件明細書等の【0046】には、故障情報出力部42が、「故障の度合い」を示す指標値を図7(b)や(c)に示されるように出力することも示されている。 そして、故障情報出力部42の出力を通知する通知部32の具体的な態様として、本件明細書の【0045】には、表示装置に表示する態様が示されている。 エ 以上をまとめると、本件明細書等の図7(a)~(c)には、故障の度合いを示す情報の時系列が記載され、【0046】には、故障情報出力部42が、「故障の度合い」を示す指標値を図7(a)~(c)に示されるように出力することが記載され、【0045】には、その出力を通知する具体的な態様として、表示装置に表示することが記載されているから、本件発明2の「前記第1の機械の故障の度合いを示す情報の時系列を表示装置に表示する出力部」という事項は、本件明細書等に記載されているといえる。 また、本件発明2を引用する本件発明4~6及び8~16、並びに、本件発明2(故障予知装置に係る発明)を、故障予知方法の発明とした本件発明18についても、本件発明2と同様に、本件明細書等に記載されているといえる。 (3)異議申立理由3の小括 したがって、異議申立理由3により、請求項2、4~6及び8~16並びに18に係る特許を取り消すことはできない。 また、請求項3及び19は削除され、異議申立の対象が存在しない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項2、4~6、8~16及び18に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に、請求項2、4~6、8~16及び18に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、請求項1、3、7、17及び19に係る特許は、訂正により削除された。これにより、特許異議の申立てについて、請求項1、3、7、17及び19に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700045

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