特許拒絶査定不服審判
2017-014876
保護層を有する多孔性低屈折率層を備える光学要素
- 審判番号
- 2017-014876
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2013-535071外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年10月05日
- 審決日
- 2018年01月05日
- 公報発行日
- 2018年07月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
- 【請求人代理人】赤澤 太朗
- 【請求人代理人】野村 和歌子
- 【請求人代理人】佃 誠玄
- 【請求人代理人】吉野 亮平
- 分類
- P18 .121-Z (G02B) / P18 .575-Z (G02B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第17条の2第6項、特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2013-535071「保護層を有する多孔性低屈折率層を備える光学要素」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 4月26日国際公開、WO2012/054680、平成26年 1月 9日国内公表、特表2014-500520〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2011年10月20日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年10月20日、米国)を国際出願日とする出願であって、その後の手続の概要は、以下のとおりである。
平成26年10月20日:手続補正書(以下「手続補正1」という。)
平成27年 8月28日:拒絶理由通知
平成28年 2月29日:意見書
平成28年 2月29日:手続補正書(以下「手続補正2」という。)
平成28年 7月20日:拒絶理由通知(最後)
平成29年 1月26日:意見書
平成29年 1月26日:手続補正書(以下「手続補正3」という。)
平成29年 5月26日:手続補正3の補正の却下の決定
平成29年 5月26日:拒絶査定
平成29年10月 5日:審判請求書
平成29年10月 5日:手続補正書
第2 平成29年10月5日付け手続補正についての補正の却下の決定
〔補正の却下の決定の結論〕
平成29年10月5日付け手続補正を却下する。
〔理由〕
1 本件補正の内容
(1)平成29年10月5日付け手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてするものであって、手続補正2によって補正された本件補正前の請求項1に、
「光学物品であって、
光学要素と、
前記光学要素上に配設された、1.3以下の有効屈折率を有する低屈折率層であって、
該低屈折率層は、結合剤と、該結合剤中に分散された複数のヒュームドシリカ又はヒュームドアルミナの粒子とを含み、該低屈折率層は複数の相互に接続された空隙を含む、低屈折率層と、
前記低屈折率層上に配設されたポリマー保護層であって、該ポリマー保護層が、(メタ)アクリレート修飾シリコーン、シリコーン修飾(メタ)アクリレート、シリコーン-ポリウレア、シリコーン-ポリウレタン-ポリウレア、シリコーンポリアミド、及びシリコーンポリオキサミドからなる群から選択される有機修飾シリコーン、又は熱可塑性シリコーンアクリレートコポリマーを含む、ポリマー保護層と、を含む、光学物品。」とあったものを、
「光学物品であって、
光学要素と、
前記光学要素上に配設された、1.3以下の有効屈折率を有する低屈折率層であって、
該低屈折率層は、結合剤と、該結合剤中に分散された複数のヒュームドシリカ又はヒュームドアルミナの粒子とを含み、該低屈折率層は複数の相互に接続された空隙を含み、低屈折率層中の複数の空隙の容積分率は50%以上である、低屈折率層と、
前記低屈折率層上に配設されたポリマー保護層であって、該ポリマー保護層が、(メタ)アクリレート修飾シリコーン、シリコーン修飾(メタ)アクリレート、シリコーン-ポリウレア、シリコーン-ポリウレタン-ポリウレア、シリコーンポリアミド、及びシリコーンポリオキサミドからなる群から選択される有機修飾シリコーンを含む、ポリマー保護層と、を含む、光学物品。」とする補正を含むものである(下線は合議体が付した。以下同様。)。
(2)本件補正後の請求項1に係る上記(1)の補正は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「低屈折率層」が「低屈折率層中の複数の空隙の容積分率は50%以上」であるものとするものである。
(3)本件補正後の請求項1に係る上記(1)の補正は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「ポリマー保護層」が「有機修飾シリコーン、又は熱可塑性シリコーンアクリレートコポリマーを含む」となっていたものから「有機修飾シリコーンを含む」とするものである。
2 本件補正の目的
上記1の補正は、本件補正前の請求項1において記載されていた「低屈折率層」を、願書に最初に添付された明細書の【0037】の記載に基づいて、「低屈折率層中の複数の空隙の容積分率は50%以上」であることに限定するものである。また、上記1の補正は、本件補正前の請求項1において記載されていた「ポリマー保護層」が含むものとして選択肢に挙げられていた「熱可塑性シリコーンアクリレートコポリマー」を削除するものである。
そうすると、本件補正後の請求項1は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。また、本件補正は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が補正の前後において同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか。以下「独立特許要件」という。)について以下検討する。
3 引用例
(1)原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用され、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に頒布された刊行物である特開2000-75105号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が図とともに記載されている。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】 透明支持体および透明支持体よりも低い屈折率と3乃至50体積%の空隙率とを有する低屈折率層が積層されている反射防止膜であって、該低屈折率層の上に含フッ素化合物を含むオーバーコート層がさらに積層されており、オーバーコート層の材料が低屈折率層の空隙を占有している割合が70体積%未満であることを特徴とする反射防止膜。
【請求項2】 オーバーコート層が粒径10nm以上の含フッ素化合物の微粒子を含む請求項1に記載の反射防止膜。
【請求項3】 オーバーコート層の塗布量が、低屈折率層の空隙の量の80体積%以下である請求項1に記載の反射防止膜。
【請求項4】 含フッ素化合物が重量平均分子量2万以上の含フッ素ポリマーである請求項1に記載の反射防止膜。
【請求項5】 含フッ素化合物が含フッ素ポリマーであり、含フッ素ポリマーがオーバーコート層の形成後に架橋している請求項1または4に記載の反射防止膜。
【請求項6】 含フッ素ポリマーが放射線照射により架橋している請求項5に記載の反射防止膜。
【請求項7】 低屈折率層が微粒子を含み、微粒子間または微粒子内に空隙が形成されている請求項1に記載の反射防止膜。
【請求項8】 透明支持体の屈折率よりも高い屈折率を有する高屈折率層が、透明支持体と低屈折率層との間に設けられている請求項1に記載の反射防止膜。
【請求項9】 画像表示面上に、透明支持体および透明支持体よりも低い屈折率と3乃至50体積%の空隙率とを有する低屈折率層がこの順に積層されている画像表示装置であって、該低屈折率層の上に含フッ素化合物を含むオーバーコート層がさらに積層されており、オーバーコート層の材料が低屈折率層の空隙を占有している割合が70体積%未満であることを特徴とする画像表示装置。」
イ 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、透明支持体、低屈折率層およびオーバーコート層が、この順で積層されている反射防止膜およびそれを用いた画像表示装置に関する。」
ウ 「【0005】
【発明が解決しようとする課題】空隙を有する低屈折率層は、空隙中の空気によって非常に低い屈折率が得られるとの特徴がある。一方、低屈折率層は、低屈折率層は透明支持体から最も遠い側、すなわち反射防止膜の表面側に設けられる。そのため、低屈折率層の表面は汚れやすく、傷も付きやすい。汚れや傷により、低屈折率層の反射防止機能が低下する。表面側の層を汚れから保護し、耐傷性を向上させるためには、含フッ素化合物を含むオーバーコート層を表面側の層の上に設ける対策が、反射防止膜の技術分野に限らず一般に、良く知られている。しかし、本発明者が研究したところ、空隙を有する低屈折率層の上に、含フッ素化合物を含むオーバーコート層を設けようとすると、オーバーコート層の塗布液が低屈折率層の空隙に浸入して、低屈折率層の空隙率が低下する問題が認められた。低屈折率層の空隙率が低下すれば、低屈折率層の屈折率は上昇してしまう。本発明の目的は、低屈折率層の屈折率を上昇させることなく、低屈折率層の表面が汚れから保護され、かつ耐傷性も改善されている反射防止膜を提供することである。」
エ 「【0008】
【発明の効果】本発明者の研究により、空隙を有する低屈折率層の上に含フッ素化合物を含むオーバーコート層を設けても、オーバーコート層の材料が低屈折率層の空隙を占有している割合が70体積%未満とすることが可能であることが判明した。第1に、オーバーコート層中の含フッ素化合物を、粒径が10nm以上の含フッ素化合物の微粒子とすれば、微粒子が空隙の開口を塞ぐことになり、低屈折率層の空隙が維持される。第2に、オーバーコート層の塗布量を、低屈折率層の空隙の80体積%以下となるように調整することによっても、低屈折率層の空隙を維持することができる。第3に、オーバーコート層中の含フッ素ポリマーの重量平均分子量を2万以上にすることにより、ポリマーの溶液中での回転二乗半径(Rg)の二倍が空隙のサイズ以上となり、空隙中に拡散しなくなるため、低屈折率層の空隙が維持される。以上の結果、本発明の反射防止膜では、低屈折率層の屈折率を上昇させることなく、低屈折率層の表面が汚れから保護され、耐傷性も改善されている。このような反射防止膜を用いることで、画像表示装置の画像表示面における光の反射を有効に防止することができる。」
オ 「【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の反射防止膜の基本的な構成を図面を引用しながら説明する。図1は、反射防止膜の主な層構成を示す断面模式図である。図1の(a)に示す態様は、透明支持体(1)、低屈折率層(3)、そしてオーバーコート層(3)の順序の層構成を有する。透明支持体(1)と低屈折率層(2)は、以下の関係を満足する屈折率を有する。低屈折率層の屈折率<透明支持体の屈折率図1の(b)に示す態様は、透明支持体(1)、ハードコート層(4)、低屈折率層(2)、そしてオーバーコート層(3)の順序の層構成を有する。透明支持体(1)と低屈折率層(2)の屈折率の関係は、上記(a)と同様である。図1の(c)に示す態様は、透明支持体(1)、ハードコート層(4)、高屈折率層(5)、低屈折率層(2)、そしてオーバーコート層(3)の順序の層構成を有する。透明支持体(1)、高屈折率層(5)および低屈折率層(2)は、以下の関係を満足する屈折率を有する。低屈折率層の屈折率<透明支持体の屈折率<高屈折率層の屈折率図1の(d)に示す態様は、透明支持体(1)、ハードコート層(4)、中屈折率層(6)、高屈折率層(5)、低屈折率層(2)、そしてオーバーコート層(3)の順序の層構成を有する。透明支持体(1)、中屈折率層(6)、高屈折率層(5)および低屈折率層(2)は、以下の関係を満足する屈折率を有する。低屈折率層の屈折率<透明支持体の屈折率<中屈折率層の屈折率<高屈折率層の屈折率図2は、本発明の好ましい態様における低屈折率層とオーバーコート層の断面模式図である。図2に示す低屈折率層(2)は、微粒子(21)およびバインダー(22)を含む。そして、微粒子(21)間に空隙(23)が形成されている。空隙は、微粒子の内部に存在していてもよい。オーバーコート層(3)は、粒径が10nm以上の含フッ素化合物の微粒子(31)を含む。含フッ素化合物の微粒子(31)により、低屈折率層(2)の空隙(23)の開口が塞がれるため、オーバーコート層(3)の形成後も、低屈折率層(2)の空隙(23)が維持されている。
【0010】図3は、本発明の別の好ましい態様における低屈折率層とオーバーコート層の断面模式図である。図3に示す低屈折率層(2)も、微粒子(21)およびバインダー(22)を含む。そして、微粒子(21)間に空隙(23)が形成されている。オーバーコート層(3)の塗布量は、低屈折率層(2)の空隙(23)の80体積%以下に調整されている。言い換えると、オーバーコート層(3)の塗布量は、低屈折率層(3)の表面に付着する程度の量に調整されている。そのため、オーバーコート層(3)の塗布液が低屈折率層(2)の空隙(23)に浸入する量が少なく、オーバーコート層(3)の形成後も、低屈折率層(2)の空隙(23)が維持されている。図4は、本発明の別の好ましい態様における低屈折率層とオーバーコート層の断面模式図である。図4においても、低屈折率層(2)は、微粒子(21)およびバインダー(22)を含む。そして、微粒子(21)間に空隙(23)が形成されている。オーバーコート層(3)は重量平均分子量2万以上の含フッ素ポリマーからなり、低屈折率層の表面の凹凸は覆うが、低屈折率層内部の空隙(23)には浸入しない。従って、オーバーコート層(3)の形成後も、低屈折率層(2)の空隙(23)が維持される。この態様の場合、オーバーコート層(3)の塗布量を低屈折率層(2)の空隙(23)の容積以上に塗布しても空隙が維持される。そのため、図4に示す態様では、オーバーコート層(3)が連続層として、低屈折率層(2)の表面を覆っている。
・・・略・・・
【0019】[低屈折率層]低屈折率層の屈折率は、1.20乃至1.55であることが好ましく、1.30乃至1.55であることがさらに好ましい。低屈折率層の厚さは、50乃至400nmであることが好ましく、50乃至200nmであることがさらに好ましい。低屈折率層は、オーバーコート層の形成前に、3乃至50体積%の空隙率を有する層として形成する。オーバーコート層の形成前の低屈折率層の空隙率は、5乃至35体積%であることがさらに好ましい。低屈折率層の空隙は、微粒子を用いて微粒子間または微粒子内のミクロボイドとして形成することができる。微粒子の平均粒径は、0.5乃至200mmであることが好ましく、1乃至100nmであることがより好ましく、3乃至70nmであることがさらに好ましく、5乃至40nmの範囲であることが最も好ましい。微粒子の粒径は、なるべく均一(単分散)であることが好ましい。無機微粒子あるいは有機微粒子を低屈折率層に用いることができる。
【0020】無機微粒子は、非晶質であることが好ましい。無機微粒子は、金属の酸化物、窒化物、硫化物またはハロゲン化物からなることが好ましく、金属酸化物または金属ハロゲン化物からなることがさらに好ましく、金属酸化物または金属フッ化物からなることが最も好ましい。金属原子としては、Na、K、Mg、Ca、Ba、Al、Zn、Fe、Cu、Ti、Sn、In、W、Y、Sb、Mn、Ga、V、Nb、Ta、Ag、Si、B、Bi、Mo、Ce、Cd、Be、PbおよびNiが好ましく、Mg、Ca、BおよびSiがさらに好ましい。二種類の金属を含む無機化合物を用いてもよい。特に好ましい無機化合物は、二酸化ケイ素、すなわちシリカである。
【0021】無機微粒子内ミクロボイドは、例えば、粒子を形成するシリカの分子を架橋させることにより形成することができる。シリカの分子を架橋させると体積が縮小し、粒子が多孔質になる。ミクロボイドを有する(多孔質)無機微粒子は、ゾル-ゲル法(特開昭53-112732号、特公昭57-9051号の各公報記載)または析出法(APPLIED OPTICS、27、3356頁(1988)記載)により、分散物として直接合成することができる。また、乾燥・沈澱法で得られた粉体を、機械的に粉砕して分散物を得ることもできる。市販の多孔質無機微粒子(例えば、二酸化ケイ素ゾル)を用いてもよい。ミクロボイドを有する無機微粒子は、低屈折率層の形成のため、適当な媒体に分散した状態で使用することが好ましい。分散媒としては、水、アルコール(例、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール)およびケトン(例、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン)が好ましい。
・・・略・・・
【0024】粒子間のミクロボイドは、微粒子を少なくとも2個以上積み重ねることにより形成することができる。なお、粒径が等しい(完全な単分散の)球状微粒子を最密充填すると、26体積%の空隙率の微粒子間ミクロボイドが形成される。粒径が等しい球状微粒子を単純立方充填すると、48体積%の空隙率の微粒子間ミクロボイドが形成される。実際の低屈折率層では、微粒子の粒径の分布や粒子内ミクロボイドが存在するため、空隙率は上記の理論値からかなり変動する。空隙率を増加させると、低屈折率層の屈折率が低下する。微粒子を積み重ねてミクロボイドを形成し、微粒子の粒径を調整することで、粒子間ミクロボイドの大きさも適度の(光を散乱せず、低屈折率層の強度に問題が生じない)値に容易に調節できる。さらに、微粒子の粒径を均一にすることで、粒子間ミクロボイドの大きさも均一である光学的に均一な低屈折率層を得ることができる。これにより、低屈折率層は微視的にはミクロボイド含有多孔質膜であるが、光学的あるいは巨視的には均一な膜にすることができる。
・・・略・・・
【0036】[オーバーコート層]オーバーコート層は、含フッ素化合物を含む塗布液を、低屈折率層の上に塗布して形成する。本発明では、オーバーコート層の材料が低屈折率層の空隙を占有している割合を70体積%未満とする。オーバーコート層の材料が低屈折率層の空隙を占有している割合は、50体積%未満であることが好ましく、40体積%未満であることがより好ましく、30体積%未満であることがさらに好ましく、20体積%未満であることが最も好ましい。低屈折率層の空隙を残してオーバーコート層を形成するためには、様々な手段が採用できる。例えば、前述したように低屈折率層の空隙を微粒子とバインダーポリマーで閉じた状態で形成すれば、オーバーコート層を塗布により形成しても低屈折率層の空隙が残存する。また、オーバーコート層の塗布液が低屈折率層の空隙に浸入しないように塗布液の粘度を高くしてもよい。具体的には、オーバーコート層中の含フッ素化合物を粒径10nm以上の微粒子とするか、オーバーコート層の塗布量を低屈折率層の空隙の80体積%以下となるように調整するか、あるいはオーバーコート層中の含フッ素化合物を重量平均分子量2万以上の含フッ素ポリマーとする。重量平均分子量2万以上の含フッ素ポリマーを用いる方法が特に好ましい。
【0037】オーバーコート層中の含フッ素化合物を微粒子とする方法では、微粒子のサイズを低屈折率層の空隙の開口サイズよりも大きくなるように調製する。これにより、微粒子は低屈折率層表面の開口部を塞ぎ、オーバーコート層は低屈折率層の内部の空隙には拡散しない。微粒子の粒径は、10nm以上であることが好ましく、10乃至100nmであることがより好ましく、15乃至70nmであることがさらに好ましく、20乃至50nmであることが最も好ましい。含フッ素化合物の微粒子は、含フッ素化合物の溶液を乳化することにより形成できる。また、含フッ素化合物の溶液から微粒子を析出してもよい。さらに、含フッ素ポリマーのラテックスを微粒子として用いてもよい。含フッ素ポリマーのラテックスは、含フッ素モノマーを乳化重合させて得ることができる。市販のフッ素系微粒子の分散物も使用できる。オーバーコート層の塗布量を低屈折率層の空隙の80体積%以下となるように調整する方法では、オーバーコート層を表面に付着する程度の量とすることで、低屈折率層の空隙を維持する。オーバーコート層の塗布量は、オーバーコート層形成前の低屈折率層の空隙の70体積%以下であることがさらに好ましく、60体積%以下であることが特に好ましい。オーバーコートの塗布量は、一般に2mg/m2 以上である。
【0038】オーバーコート層中の含フッ素化合物を重量平均分子量2万以上の含フッ素ポリマーとする方法では、高分子量のポリマーを用いてオーバーコート層の塗布液が低屈折率層の内部の空隙中に拡散しないようにする。含フッ素ポリマーの重量平均分子量は、4万乃至200万であることがさらに好ましく、5万乃至100万であることが最も好ましい。
【0039】オーバーコート層に用いる含フッ素化合物としては、含フッ素界面活性剤、含フッ素ポリマー、含フッ素エーテルおよび含フッ素シラン化合物が好ましく用いられる。含フッ素界面活性剤としては、親水性部がアニオン性、カチオン性、ノニオン性、および両性のいずれでも良い。含フッ素界面活性剤では、疎水性部を構成する炭化水素の水素原子の一部または全部がフッ素原子により置換されている。含フッ素ポリマーは、フッ素原子を含むエチレン性不飽和モノマー(含フッ素モノマー)の重合反応により合成することが好ましい。含フッ素モノマーの例には、フルオロオレフィン(例、フルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ-2,2-ジメチル-1,3-ジオキソール)、フッ素置換アルコールとアクリル酸またはメタアクリル酸とのエステルおよびフッ素化ビニルエーテルが含まれる。二種類以上の含フッ素モノマーから得られるコポリマーを用いてもよい。含フッ素モノマーとフッ素原子を含有しないモノマーとのコポリマーを用いてもよい。フッ素原子を含有しないモノマーの例には、オレフィン(例、エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン)、アクリル酸エステル(例、アクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2-エチルヘキシル)、メタクリル酸エステル(例、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、エチレングリコールジメタクリレート)、スチレンおよびその誘導体(例、スチレン、ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン)、ビニルエーテル(例、メチルビニルエーテル)、ビニルエステル(例、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル)、アクリルアミド(例、N-tert-ブチルアクリルアミド、N-シクロヘキシルアクリルアミド)、メタクリルアミド、アクリロニトリルおよびその誘導体が含まれる。
【0040】オーバーコート層に滑り性を付与するため、含フッ素ポリマーに、ポリオルガノシロキサンからなる繰り返し単位を導入してもよい。ポリオルガノシロキサンからなる繰り返し単位を有する含フッ素ポリマーは、例えば、末端に反応性基を持つポリオルガノシロキサンと含フッ素モノマーとの重合によって得られる。反応性基は、エチレン不飽和性モノマー(例、アクリル酸およびそのエステル、メタクリル酸およびそのエステル、ビニルエーテル、スチレンおよび誘導体)をポリオルガノシロキサンの末端に化学的に結合させる。市販の含フッ素ポリマー、例えば、サイトップ(旭硝子(株)製)、テフロンAF(デュポン社製)、ルミフロン(旭硝子(株)製)、オプスター(JSR(株)製)を用いてもよい。含フッ素エーテルは、一般に潤滑剤として使用されている化合物である。含フッ素エーテルの例には、パーフルオロポリエーテルおよびその誘導体が含まれる。含フッ素シラン化合物の例には、パーフルオロアルキル基を含むシラン化合物(例、ヘプタデカフルオロ-1,2,2,2-テトラデシル)トリエトキシシラン)が含まれる。市販の含フッ素シラン化合物、例えば、KBM-7803、KP-801M(信越化学(株)製)を用いてもよい。
【0041】オーバーコート層に用いる含フッ素化合物は、フッ素原子を30乃至80重量%の範囲で含むことが好ましく、40乃至75重量%の範囲で含むことがさらに好ましい。オーバーコート層に含フッ素ポリマーを用いることが特に好ましい。含フッ素ポリマーは、さらに架橋していることが好ましい。具体的には、架橋性基を含フッ素ポリマーに導入するか、あるいは架橋剤を用いて含フッ素ポリマーを架橋させる。架橋性基は含フッ素ポリマーに側鎖として導入することが好ましい。含フッ素ポリマーの合成において架橋性基を有するモノマーを共重合することにより、架橋性基を含フッ素ポリマーに側鎖として導入できる。また、2以上の架橋性基を有する化合物(架橋剤)を含フッ素ポリマーの側鎖と反応させることにより、含フッ素ポリマーを架橋させることができる。架橋性基は、光(好ましくは紫外線)や電子ビーム(EB)のような放射線の照射あるいは加熱により反応して含フッ素ポリマーを架橋させる官能基であることが好ましい。放射線の照射により架橋させる官能基であることがさらに好ましく、紫外線の照射により架橋させる官能基であることが最も好ましい。すなわち、架橋反応の処理温度が低いと、支持体の平面性の悪化が少なく、製造工程の加熱ラインを短縮できる。また、紫外線の照射は、比較的安価な設備で実施できるとの利点がある。架橋性基の例には、アクリロイル、メタクリロイル、アリル、イソシアナート、エポキシ、アルコキシシリル、アジリジン、オキサゾリン、アルデヒド、カルボニル、ヒドラジン、カルボキシル、メチロールおよび活性メチレンが含まれる。オーバーコート層の厚さは、2乃至50nmであることが好ましく、5乃至30nmであることがさらに好ましく、5乃至20nmであることが最も好ましい。」
カ 「【0043】
【実施例】[実施例1]
(ハードコート層用塗布液の調製)市販のハードコート材料(デソライトZ7503、JSR(株)製)のメチルエチルケトン溶液(固形分濃度:72重量%、シリカ含量:38重量%)625gを、メチルエチルケトンとシクロヘキサノンとの混合溶媒(重量比:50/50)375gに混合した。混合物を撹拌した後、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過してハードコート層の塗布液を調製した。
【0044】(二酸化チタン分散物の調製)二酸化チタン(一次粒子重量平均粒径:50nm、屈折率:2.70)30重量部、アニオン性ジアクリレートモノマー(商品名:PM21、日本化薬(株)製)4.5重量部、カチオン性メタクリレートモノマー(商品名:DMAEA、興人(株)製)0.3重量部およびメチルエチルケトン65.2重量部を、サンドグラインダーにより分散し、二酸化チタン分散物を調製した。
【0045】(中屈折率層用塗布液の調製)シクロヘキサノン151.9gおよびメチルエチルケトン37.0gに、光重合開始剤(イルガキュア907、チバガイギー社製)0.14gおよび光増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)0.04gを溶解した。さらに、上記の二酸化チタン分散物6.1gおよびジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)2.4gを加え、室温で30分間攪拌した後、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して、中屈折率層用塗布液を調製した。
【0046】(高屈折率層用塗布液の調製)シクロヘキサノン1152.8gおよびメチルエチルケトン37.2gに、光重合開始剤(イルガキュア907、チバガイギー社製)0.06gおよび光増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)0.02gを溶解した。さらに、上記の二酸化チタン分散物13.13gおよびジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)0.76gを加え、室温で30分間攪拌した後、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して、高屈折率層用塗布液を調製した。
【0047】(低屈折率層用塗布液の調製)平均粒径が15nmのシリカ微粒子のメタノール分散液(メタノールシリカゾル、日産化学(株)製)200gに、シランカップリング剤(KBM-503、信越シリコーン(株)製)3gおよび0.1N塩酸2gを加え、室温で5時間攪拌した後、3日間室温で放置して、シランカップリング処理したシリカ微粒子分散物を調製した。分散物35.04gに、イソプロピルアルコール58.35gおよびジアセトンアルコール39.34gを加えた。また、光重合開始剤(イルガキュア907、チバガイギー社製)1.02gおよび光増感剤(カヤキュアーDETX、日本化薬(株)製)0.51gを772.85gのイソプロピルアルコールに溶解した溶液を加え、さらにジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)25.6gを加えて溶解した。得られた溶液67.23gを、上記分散液、イソプロピルアルコールおよびジアセトンアルコールの混合液に添加した。混合物を20分間室温で撹拌し、孔径0.4μmのポリプロピレン製フィルターで濾過して、低屈折率層用塗布液を調製した。
【0048】(オーバーコート層用塗布液の調製)熱架橋性含フッ素ポリマー(JN-7214、JSR(株)製)にイソプロピルアルコールを加えて、0.6重量%の粗分散液を調製した。粗分散液を超音波で微細分散し、オーバーコート層用塗布液を調製した。塗布液中の含フッ素ポリマー微粒子の平均粒径をコールターカウンターで測定したところ、30nmであった。
【0049】(反射防止膜の作成)80μmの厚さのトリアセチルセルロースフイルム(TAC-TD80U、富士写真フイルム(株)製)上に、上記のハードコート層用塗布液を、バーコーターを用いて塗布し、90℃で乾燥した後、紫外線を照射して、塗布層を硬化させ、厚さ6μmのハードコート層を形成した。その上に、上記中屈折率層用塗布液をバーコーターを用いて塗布し、60℃で乾燥した後、紫外線を照射して塗布層を硬化させ、中屈折率層(屈折率:1.72、厚さ:0.081μm)を形成した。その上に、上記高屈折率層用塗布液をバーコーターを用いて塗布し、60℃で乾燥した後、紫外線を照射して塗布層を硬化させ、高屈折率層(屈折率:1.92、厚さ:0.053μm)を形成した。高屈折率層の上に、上記低屈折率層用塗布液をバーコーターを用いて塗布し、60℃で乾燥した後、紫外線を照射して塗布層を硬化させ、低屈折率層(屈折率:1.40、厚さ:0.085μm)を形成した。形成した低屈折率層の空隙率は、16体積%であった。低屈折率層の上に、上記オーバーコート層用塗布液を#3のバーコーターを用いて塗布し、120℃で1時間乾燥して、反射防止膜を形成した。」
キ 「【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
」
ク 上記アないしキからみて、引用例1には、特許請求の範囲の請求項1の記載を引用する請求項7から把握できる発明として次の発明が記載されている。
「透明支持体および透明支持体よりも低い屈折率と3乃至50体積%の空隙率とを有する低屈折率層が積層されている反射防止膜であって、
該低屈折率層の上に含フッ素化合物を含むオーバーコート層がさらに積層されており、オーバーコート層の材料が低屈折率層の空隙を占有している割合が70体積%未満であり、
低屈折率層が微粒子を含み、微粒子間または微粒子内に空隙が形成されている、
反射防止膜。」(以下「引用発明」という。)
(2)原査定の拒絶の理由に引用文献3として引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2008-3243号公報(以下「引用例3」という。)には、次の事項が図とともに記載されている。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの光路変更層と、少なくとも1つの低屈折率層とを有してなり、該低屈折率層は前記光路変更層よりも屈折率が小さく、かつ前記光路変更層の光出射面側に前記低屈折率層を有することを特徴とする光学シート。
【請求項2】
低屈折率層が多孔質低屈折率層である請求項1に記載の光学シート。
【請求項3】
多孔質低屈折率層の屈折率が1.4以下であり、かつ空孔径が2~100nmである請求項2に記載の光学シート。
【請求項4】
多孔質低屈折率層が無機微粒子を含有し、かつ該無機微粒子が気相法シリカである請求項2から3のいずれかに記載の光学シート。
【請求項5】
光路変更層は、該光路変更層の光出射面側に単位レンズが一軸方向に配列したレンズ列を隣接して略全面に有するプリズム層であり、かつ前記単位レンズがプリズム形状、ピラミッド形状、半球形状、及びレンチキュラーレンズ形状のいずれかである請求項1から4のいずれかに記載の光学シート。
【請求項6】
光路変更層がバインダー及び粒子を含有し、かつ前記光路変更層の光出射面側に前記粒子の少なくとも一部が突出した表面凹凸型光拡散層である請求項1から4のいずれかに記載の光学シート。
【請求項7】
光路変更層がバインダー及び粒子を含有し、かつ該粒子が前記光路変更層中に埋没している埋没型光拡散層である請求項1から4のいずれかに記載の光学シート。
【請求項8】
支持体を有する請求項1から7のいずれかに記載の光学シート。
【請求項9】
光学シートの光出射側の最表面に空気層を有する請求項1から8のいずれかに記載の光学シート。
【請求項10】
多孔質低屈折率層の光出射側の面に遮蔽層を有する請求項2から9のいずれかに記載の光学シート。
【請求項11】
遮蔽層が平均粒径0.1μm以上のラテックスを含有し、かつ該ラテックスが有機溶剤に耐性を有する請求項10に記載の光学シート。
【請求項12】
光学シートの光出射側の最表面に粘着層を有し、かつ該粘着層によって、他の光学シート及び液晶ユニットのいずれかに貼着可能である請求項1から11のいずれかに記載の光学シート。
【請求項13】
請求項1から12のいずれかに記載の光学シートと、光源ユニットとを有することを特徴とする光源装置。
【請求項14】
請求項13に記載の光源装置を用いたことを特徴とする表示装置。」
イ 「【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの光路変更層と、少なくとも1つの低屈折率層とを有する積層構造の光学シート、並びに該光学シートを用いた光源装置及び表示装置に関する。」
ウ 「【0060】
<低屈折率層>
前記低屈折率層は、前記光路変更層の光出射面側に設けられる。この低屈折率層は、第1形態のプリズム層及び第2形態の表面凹凸型光拡散層の表面を平坦化し、他の層と積層させたり、他の部材と貼り合わせを容易にする役割も有する。
前記光路変更層を2つ以上有する場合には、少なくとも1つの光路変更層の光出射面に低屈折率層が設けられているのが好ましく、2つ以上のすべての光路変更層の光出射面に低屈折率層が設けられていてもよく、また、光出射側の最表面が空気層であっても構わない。
【0061】
前記低屈折率層の屈折率は、前記光路変更層の屈折率よりも小さく、1.4以下が好ましく、1.10~1.25がより好ましい。前記屈折率が1.4を超えると、界面での光の屈折が弱まり、集光効果が小さくなることがある。
ここで、前記低屈折率層の屈折率は、例えばプリズムカプラー屈折率測定機(SPA4000、Sairon Technology,Inc.)を用い、低屈折率層面の全反射角を測定して、屈折率を算出することができる。
【0062】
前記低屈折率層としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、多孔質低屈折率層であることが好ましい。
前記多孔質低屈折率層は、少なくとも無機微粒子と、水溶性樹脂と、架橋剤とを含有してなり、酸性基含有化合物、低沸点有機溶媒、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0063】
-無機微粒子-
前記無機微粒子としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えばシリカ微粒子、コロイダルシリカ、二酸化チタン、硫酸バリウム、珪酸カルシウム、ゼオライト、カオリナイト、ハロイサイト、雲母、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、擬ベーマイト、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、アルミナ、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、酸化ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化ランタン、酸化イットリウムなどが挙げられる。これらの中でも、良好な多孔質構造を形成する点で、シリカ微粒子、コロイダルシリカ、アルミナ微粒子、又は擬ベーマイトが好ましく、シリカ微粒子が特に好ましい。
【0064】
前記シリカ微粒子は、通常その製造法により湿式法粒子と、乾式法(気相法)粒子とに大別される。前記湿式法では、ケイ酸塩の酸分解により活性シリカを生成し、これを適度に重合させて、凝集沈降させて含水シリカを得る方法が主流である。一方、前記気相法は、ハロゲン化珪素の高温気相加水分解による方法(火炎加水分解法)、ケイ砂とコークスとを電気炉中でアークによって加熱還元気化し、これを空気で酸化する方法(アーク法)によって無水シリカを得る方法が主流であり、該気相法によって得られた無水シリカ微粒子である「気相法シリカ」が特に好ましい。
【0065】
前記気相法シリカは、含水シリカと表面のシラノール基の密度、空孔の有無等に相違があり、異なった性質を示すが、空隙率が高い三次元構造を形成するのに適している。この理由は明らかではないが、含水シリカの場合には、無機微粒子表面におけるシラノール基の密度が5~8個/nm2で多く、シリカ微粒子が密に凝集(アグリゲート)し易い。一方、気相法シリカの場合には、無機微粒子表面におけるシラノール基の密度が2~3個/nm2であり、少ないことから疎な軟凝集(フロキュレート)となり、その結果、空隙率が高い構造になるものと推定される。
前記気相法シリカは、比表面積が特に大きく、また、屈折率が低いので、適切な粒子径まで分散を行えば多孔質低屈折率層に透明性を付与できる。
【0066】
前記無機微粒子の平均一次粒径としては、5~30nmが好ましく、5~20nmがより好ましく、5~10nmが更に好ましい。また、平均一次粒径が5~30nmのシリカ微粒子、平均一次粒径が5~30nmのコロイダルシリカ、平均一次粒径が5~20nmのアルミナ微粒子、又は平均細孔半径が2~15nmの擬ベーマイトがより好ましく、この中でも、シリカ微粒子、アルミナ微粒子、擬ベーマイトが特に好ましい。気相法シリカにおいては、平均一次粒子径は5~30nmが好ましく、5~20nmがより好ましく、5~10nmが更に好ましく、3~10nmが特に好ましい。前記気相法シリカは、シラノール基による水素結合によって粒子同士が付着しやすいため、平均一次粒子径が30nm以下のときに空隙率の大きい構造を形成することができる。また、嵩密度としては、50g/l以上が好ましく、60g/l以上がより好ましい。
【0067】
前記シリカ微粒子は、上記した他の無機微粒子と併用してもよい。該他の無機微粒子とシリカ微粒子(特に気相法シリカ)とを併用する場合、全無機微粒子中のシリカ微粒子(特に気相法シリカ)の含有量は30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましい。
【0068】
-水溶性樹脂-
前記水溶性樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、親水性構造単位としてヒドロキシル基を有する樹脂が好ましく、例えばポリビニルアルコール(PVA)、カチオン変性ポリビニルアルコール、アニオン変性ポリビニルアルコール、シラノール変性ポリビニルアルコール、ポリビニルアセタール、セルロース系樹脂〔メチルセルロース(MC)、エチルセルロース(EC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)等〕、キチン類、キトサン類、デンプン;親水性のエーテル結合を有する樹脂である、ポリエチレンオキサイド(PEO)、ポリプロピレンオキサイド(PPO)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル(PVE);親水性構のアミド基又はアミド結合を有する樹脂である、ポリアクリルアミド(PAAM)、ポリビニルピロリドン(PVP)などが挙げられる。また、解離性基としてカルボキシル基を有する、ポリアクリル酸塩、マレイン酸樹脂、アルギン酸塩、ゼラチン類等を挙げることもできる。これらの中でも、ポリビニルアルコール(PVA)類が特に好ましい。
【0069】
前記水溶性樹脂の含有量としては、前記多孔質低屈折率層の全固形分質量に対して、9~40質量%が好ましく、12~33質量%がより好ましい。
前記ポリビニルアルコール(PVA)の数平均重合度は1,800以上が好ましく、2,000以上がより好ましい。また、シリカ微粒子と組み合わせる場合には、透明性の観点から水溶性樹脂の種類が重要となる。無水シリカを用いる場合には、水溶性樹脂としてPVAを用いるのが好ましく、これらの中でも鹸化度70~99%のPVA樹脂がより好ましい。
【0070】
前記ポリビニルアルコールとしては、ポリビニルアルコール(PVA)に加え、カチオン変性PVA、アニオン変性PVA、シラノール変性PVA、又はその他ポリビニルアルコールの誘導体も含まれる。前記ポリビニルアルコールは1種単独でもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記ポリビニルアルコール(PVA)は、その構造単位に水酸基を有するが、この水酸基とシリカ微粒子表面のシラノール基とが水素結合を形成して、シリカ微粒子の二次粒子を鎖単位とする三次元網目構造を形成し易くする。このような三次元網目構造の形成によって、空隙率の高い多孔質構造の低屈折率層を形成し得ると考えられる。」
エ 「【0092】
<遮蔽層>
前記遮蔽層は、前記多孔質低屈折率層の光出射側の面に設けられ、該多孔質低屈折率層の空孔内に空気を閉じ込める保護層の役目を果たす。
前記遮蔽層は、少なくともラテックスを含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。」
オ 「【実施例】
【0105】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0106】
(実施例1)
<光学シートの作製>
厚み180μmの透明なポリエチレンテレフタレート(PET)支持体上に、下記組成のアンカーコート層塗布液を乾燥後の厚みが0.3μmとなるように塗布し、170℃まで加熱し、アンカーコート層を形成した。
・・・略・・・
【0110】
次に、表面凹凸型光拡散層上に、下記組成の多孔質低屈折率層塗布液をウェット塗布量で80g/m2塗布し、熱風乾燥機にて80℃(風速3~8m/秒)で塗布層の固形分濃度が20質量%になるまで乾燥させた。この乾燥期間は、塗布層は恒率乾燥速度を示した。その直後、下記組成の多孔質低屈折率層架橋液に塗布層を30秒間浸漬して該塗布層上に架橋液を15g/m2付着させた。次いで、80℃下、10分間乾燥させて、多孔質低屈折率層を形成した。
得られた多孔質低屈折率層の屈折率を、プリズムカプラー屈折率測定機(SPA4000、Sairon Technology,Inc.)を用い、多孔質低屈折率層面の全反射角を測定して、屈折率を算出したところ、1.20であった。
また、多孔質低屈折率層の空孔径を走査型電子顕微鏡(VE-9800、キーエンス社製)により測定したところ、20nmであった。
【0111】
<多孔質低屈折率層塗布液の調製>
下記組成の気相法シリカ微粒子、イオン交換水、及び「シャロールDC-902P」を混合し、ビーズミル(KD-P、株式会社シンマルエンタープライゼス製)を用いて分散させた後、得られた分散液を45℃に加熱し、20時間保持した。次に、分散液に、下記組成の硼酸、ポリビニルアルコール溶解液、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、及びエタノールを30℃にて加え、シリカ多孔質層塗布液を調製した。
-多孔質低屈折率層塗布液の組成-
・気相法シリカ微粒子(無機微粒子、AEROSIL300SF75、日本アエロジル株式会社製)・・・10.0質量部
・イオン交換水・・・64.8質量部
・シャロールDC902P(分散剤、第一工業製薬株式会社製、51.5質量%水溶液)・・・0.87質量部
・硼酸(架橋剤)・・・0.74質量部
・下記組成のポリビニルアルコール(水溶性樹脂)溶解液・・・58.8質量部
〔組成〕
・・PVA-235(鹸化度88%、重合度3500、株式会社クラレ製)・・・4.06質量部
・・ポリオキシエチレンラウリルエーテル(界面活性剤)・・・0.06質量部
・・下記構造式で表される酸性基含有化合物1・・・0.12質量部
【化5】・・・略・・・
・・トリエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチセノール20P、協和発酵株式会社製)・・・1.36質量部
・・イオン交換水・・・53.2質量部
・ポリオキシエチレンラウリルエーテル(界面活性剤、エマルゲン109Pの10質量%水溶液、HLB値=13.6、花王株式会社製)・・・0.49質量部
・エタノール・・・2.49質量部
【0112】
-多孔質低屈折率層架橋液の組成-
・硼酸(架橋剤)・・・0.65質量部
・炭酸アンモニウム(1級、関東化学株式会社製)・・・3.5質量部
・イオン交換水・・・63.3質量部
・ポリオキシエチレンラウリルエーテル(界面活性剤、エマルゲン109Pの10質量%水溶液、HLB値13.6、花王株式会社製)・・・30.0質量部
【0113】
次に、多孔質低屈折率層上に、下記組成の遮蔽層塗布液を乾燥後の厚みが3μmとなるようにワイヤーバーで塗布し、130℃で5分間乾燥させて、遮蔽層を形成した。
-遮蔽層塗布液の組成-
・イオン交換水・・・27質量部
・ケミパールWF-640(三井化学株式会社製、平均粒径=1.0μm、有機溶剤に耐性有り)・・・15質量部
・ラピゾールA-90(1質量%水溶液)・・・3質量部
【0114】
次に、遮蔽層上に、ワイヤーバーにてウェット塗布量で20g/m2となるように下記組成のプリズム層塗布液を塗布し、80℃にて1分間乾燥させた後、頂角90°、底辺50μmのストライプ状に溝を刻んだプリズム原盤にプリズム層塗布液面を押し当て、ロールで加圧し、UV照射装置にて1500mJ/cm2の露光量でUV照射を行い、原盤から剥離して、プリズム層を形成した。
得られたプリズム層のプリズム樹脂を薄層化し、プリズムカプラー屈折率測定機(SPA4000、Sairon Technology,Inc.)を用い、モードカップリング測定し、屈折率を算出したところ、1.59であった。
【0115】
-プリズム層塗布液の調製-
下記組成を混合し、プリズム層塗布液を調製した。
・ビスフェノールAタイプエポキシアクリレート(エベクリル3700、ダイセルUBC株式会社製、粘度=2,200mPa・s/65℃)・・・2.55質量部
・エチレンオキシド付加ビスフェノールAメタクリル酸エステル(NKエステルBPE-200、新中村化学株式会社製、粘度=590mPa・s/25℃)・・・0.85質量部
・アロニックスM-110(東亞合成株式会社製)・・・0.85質量部
・トリブロモフェノキシエチルアクリレート(ニューフロンティアBR-31、第一工業製薬株式会社製、常温で固体、融点50℃以上)・・・4.25質量部
・メチルエチルケトン(MEK)・・・2.89質量部
・ラジカル発生剤(ルシリンTPO-L、BASF株式会社製)・・・0.17質量部
【0116】
以上の各工程により、図8に示す支持体1上に表面凹凸型光拡散層5、多孔質低屈折率層3、遮蔽層4、及びプリズム層2をこの順に有する実施例1の光学シート10を作製した。
得られた光学シートは、液晶ユニットの直下型バックライトユニットに装填した場合、色ムラ、輝度ムラが少なく、高い正面輝度を有していた。」
カ 上記アないしエからみて、引用例3には、請求項1ないし3の発明特定事項を全て含む請求項4に係る発明における多孔質低屈折率層の構成及び屈折率について、【0061】及び【0062】の記載を参照すると、以下の事項が記載されているものと認められる。
「少なくとも1つの光路変更層と、少なくとも1つの低屈折率層とを有してなり、該低屈折率層は前記光路変更層よりも屈折率が小さく、かつ前記光路変更層の光出射面側に前記低屈折率層を有し、該低屈折率層が多孔質低屈折率層であり、該多孔質低屈折率層は、その屈折率が1.4以下であり、かつ空孔径が2~100nmであり、無機微粒子を含有し、かつ該無機微粒子が気相法シリカである、光学シートにおいて、
前記多孔質低屈折率層は、その屈折率が1.10~1.25が好ましく、気相法シリカと、水溶性樹脂と、架橋剤とを含有してなること。」(以下「引用例3の記載事項」という。)
(3)原査定の拒絶の理由に引用文献4として引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平11-281802号公報(以下「引用例4」という。)には、次の事項が図とともに記載されている。
ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】 基体上の反射防止塗装層であって、該塗装層に平均孔径が100nm以下の空孔を形成させ、該空孔率を前記基材の界面から空気界面まで実質的に連続的に増大させたことを特徴とする反射防止膜。
【請求項2】 前記空孔の平均孔径が50nm以下であることを特徴とする請求項1に記載の反射防止膜。
【請求項3】 前記塗装層が、無機微粒子と水溶性樹脂とを含有することを特徴とする請求項1乃至請求項2に記載の反射防止膜。
【請求項4】 前記無機微粒子の平均一次粒子系が10nm以下であることを特徴とする請求項3に記載の反射防止膜。
【請求項5】 前記無機微粒子が、シリカ微粒子であることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の反射防止膜。
【請求項6】 前記シリカ微粒子が、シラノール基を有する無水珪酸であることを特徴とする請求項5に記載の反射防止膜。
【請求項7】 前記水溶性樹脂が、ポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項3に記載の反射防止膜。
【請求項8】 基板上に請求項1乃至請求項7に記載の反射防止膜を設けたことを特徴とする反射防止部材。
【請求項9】 前記基板が、透明樹脂フイルム乃至シートからなることを特徴とする請求項8に記載の反射防止部材。
【請求項10】 基板上に無機微粒子(P)と水溶性樹脂(B)との比率を段階的に変えた塗液を多層塗布することを特徴とする反射防止部材の製造方法。
【請求項11】 前記塗液を同時重層塗布して各塗布層の界面を相溶させ、無機微粒子(P)と水溶性樹脂(B)との比率を連続的に変化させることを特徴とする請求項10に記載の反射防止部材の製造方法。」
イ 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、表示装置の表示スクリーン、蛍光灯等の光源からの光の反射を防止する部材に用いられる反射防止膜、太陽集光器の保護板等に用いられる反射防止膜、この反射防止膜を有する反射防止部材、及びその製造方法に関する。」
ウ 「【0027】
【実施例】[実施例1]
(1)無機微粒子としてのシリカ微粒子(P)/水溶性樹脂としてのポリビニルアルコール(B)の重量比〔PB比〕=3.0の場合の反射防止層形成用塗布液の組成(以下の全ての塗布液の配合量を示す重量部の値は、全て固形分又は不揮発分を表わす)
○1(審決注:○囲みの「1」をこのように表記した。以下同じ。) 乾式シリカ微粒子(平均1次粒子径:7nm; 1.5重量部
屈折率:1.45;表面シラノール基:2~3/ nm2 ;
エアロジルA300(日本アエロジル(株)製))
○2 ポリビニルアルコール(鹸化度80%;重合度3500;0.5重量部
PVA435(クラレ(株)製))
○3 イオン交換水
【0028】のシリカ微粒子を、のイオン交換水(11重量部)中に添加して、高速回転湿式コロイドミル(クレアミックス(エム・テクニック(株)製))を用いて、10000rpmの条件で20分間分散させた後、ポリビニルアルコール水溶液(イオン交換水9.5重量部に溶解させたもの)を加えて、更に上記と同じ条件で分散を行ない、ついでpHを4~5に調整し更に、イオン交換水の残りの157.5重量部を加えて反射防止層形成用塗布液を得た。これと同様に、乾式シリカ微粒子(P)とポリビニルアルコール(B)の重量比(PB比)を変更して、反射防止層用の塗布液を得た。また、各々の液を、単独で塗布乾燥した場合の空孔率(ε)と屈折率(n)を示す。
【0029】
【表1】
【0030】(2)塗布乾燥
これらの塗布液を100μmの厚みの二軸延伸したポリエチレンテレフタレート表面をコロナ放電処理し、その表面に同時多塗布機を用いて塗布し、熱風乾燥機により70℃(風速5m/秒)で1分間乾燥した後、更に150℃で10分間乾燥した。これにより多層(8層、6層、2層)反射防止膜を形成した。得られた反射防止膜の表面走査型電子顕微鏡写真(100000倍)を、それぞれ図2及び図3に示す。これらの写真より、得られた反射防止膜は三次元網目構造を有することが分かる。
【0031】なお、各層の空孔率と屈折率は、各層の単層膜を、別途作成して、下記測定器で測定した。各々の塗布層の屈折率は(n)は、エリプソメーター〔(株)溝尻光学社製:DAH-XA〕を用いて測定した。また、空孔率(ε)は、水銀ポロシメーター〔(株)島津社製:オートポア9220型〕を用いて測定した。また、実施例1-(1)~実施例1-(6)はいずれも塗布層が8層であり、実施例2-(1)~実施例2-(6)はいずれも塗装層が6層であり、実施例3-(1)~実施例3-(6)はいずれも塗装層が2層である。なお、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート・フイルム(100μm厚み)の反射率(%)は、平均値:6.0%、最大値:7.0%であった。実施例1,2,3の結果を表2にまとめた。
【0032】
【表2】
【0033】表2から、塗布層の数が多い反射防止部材(実施例1,実施例2)では、可視光の反射率の変化率が少ないが、塗布層の数が少ない反射防止部材(実施例3)では、膜厚の変動により可視光の反射率最大値の変化が大きい。このことから、塗布層が多いと、反射防止塗装層における屈折率を連続的に変化させることができるため、膜厚の変動によっても可視光の反射率最大値の変化を少なくすることができることがわかる。」
(4)原査定の拒絶の理由に引用文献5として引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開2001-350005号公報(以下「引用例5」という。)には、次の事項が図とともに記載されている。
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば、LCD、EL、FED等のディスプレイに好適に用いられ、特に、これらディスプレイの輝度ムラ防止、コントラスト向上、広視野角化に優れた効果を発揮する光学シートに関する。」
イ 「【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者は、光学特性の安定性向上について鋭意検討を行った結果、高温高湿条件下では、粘着剤の流動により例えば球状微粒子が基体方向に沈み込むなどの変動を生じて、光学特性が変化すること、また、ブロッキングは結着層として使用している粘着剤が他の部材と接触することで発生することを見いだした。
【0007】すなわち本発明は、透光性基体上に結着層及び保護層が順次積層され、球状微粒子が単層で結着層に少なくとも接触するように保護層に埋め込まれており、かつ、球状微粒子による凸部が保護層表面に形成されていることを特徴とする光学シートである。上記のように、球状微粒子を埋め込んだ形態で、表面に凸部を有するように保護層を積層することによって、環境条件などによって光学特性が変化することのない優れた安定性を有し、ブロッキングが発生することなく、かつ、ヘイズ値を所望の値に容易に制御できる光学シートを得ることができる。」
ウ 「【0016】保護層は樹脂を主成分として形成されるものであるが、使用される材料としては非粘着性の樹脂でなければならない。ここで、非粘着性とは、乾燥、硬化後に常温でタックフリーとなることを意味するものであり、熱又は光硬化性樹脂や熱可塑性樹脂などの結着剤が適宜使用される。これらの結着剤としては、例えばポリエステル、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリアセタール、ポリカーボネート、アクリル、エポキシ、シリコーン等の樹脂を挙げることができるが、中でもアクリル系樹脂が前記結着層で述べたのと同様の理由により好ましく、特に、アクリル系紫外線硬化型樹脂は後述の本発明の第1及び第2のどちらの製造方法においても、好適に使用することができる。なお、これらは、単独もしくは2種以上混合して使用してもよい。」
エ 「【0026】
【実施例】次に、本発明を実施例を用いてより具体的に説明する。
[実施例1]・・・略・・・
【0028】次に、球状微粒子の単層が形成された結着層上に、UV硬化型アクリレート(商品名:UV-3300、東亞合成社製)を、MIBKで希釈した塗料を、乾燥後の厚さが1.0μmとなるようにリバースコーターで塗工し、100℃で1分間乾燥させた後、UVによる硬化を行って保護層を設けて、本発明の光学シートを得た。なお、乾燥後の膜厚は、均一厚さと仮定して塗膜の重量と比重から計算されたものである。
【0029】[実施例2]実施例1のUV硬化型アクリレートに代えて、UV硬化型シリコーンアクリレート(商品名:UVHC-1103、GE東芝シリコーン社製)を、n-ブタノールで希釈した塗料を乾燥後の厚さが1.1μmとなるようにリバースコーターで塗工した以外は実施例1と同様に行い、本発明の光学シートを得た。
【0030】[実施例3]実施例2のUV硬化型シリコーンアクリレートを、乾燥後の厚さが0.8μmとなるようにリバースコーターで塗工した以外は実施例1と同様に行い、本発明の光学シートを得た。
【0031】[実施例4]実施例2のUV硬化型シリコーンアクリレートを、乾燥後の厚さが1.6μmとなるようにリバースコーターで塗工した以外は実施例1と同様に行い、本発明の光学シートを得た。
・・・略・・・
【0033】[実施例6]厚さ80μmのTACフィルムからなる透光性基体の片面上に、ブチルアクリレート系粘着剤(商品名:H-6F、綜研化学社製)100部に、三官能イソシアネート(商品名:D-90、綜研化学社製)0.3部を加え、MIBKで希釈した塗料を、乾燥後の厚さが4μmになるようにリバースコーターで塗工し、100℃で2分間乾燥させた後、60℃で7日間熟成をおこない、結着層を形成した。該結着層上に、UV硬化型シリコーンアクリレートを乾燥後の膜厚が1.0μmとなるように塗工し、100℃で1分間乾燥させ、保護層を形成した。
【0034】次に、実施例1と同じ球状微粒子が入った流動槽に、保護層の形成された透光性基体を通すことで球状微粒子を保護層表面に付着させ、さらに真球状ジルコニア球が入った振動槽に球状微粒子を付着させた透光性基体をくぐらせ、球状微粒子を保護層中に結着層と接触する程度に埋め込んだ。その後、UVを照射して保護層の硬化をおこない、さらに洗浄を行って余剰の球状微粒子を除去して本発明の光学シートを得た。」
オ 上記アないしエからみて、引用例5には、以下の事項が記載されているものと認められる。
「透光性基体上に結着層及び保護層が順次積層され、球状微粒子を埋め込んだ形態で、表面に凸部を有するように保護層を積層することによって、環境条件などによって光学特性が変化することのない優れた安定性を有し、ブロッキングが発生することなく、かつ、ヘイズ値を所望の値に容易に制御できるようにした、光学シートにおいて、
前記保護層が、UV硬化型シリコーンアクリレートを、n-ブタノールで希釈した塗料を乾燥後の厚さが1.1μmとなるようにリバースコーターで塗工し、100℃で1分間乾燥させた後、UVによる硬化を行って設けられたものであること。」(以下「引用例5の記載事項」という。)
4 対比・判断
(1)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「反射防止膜」は、技術的に光学的な機能を有する物品といえるから、本願補正発明の「光学物品」に相当する。
イ 引用発明の「反射防止膜」(本願補正発明の「光学物品」に相当。以下、「」に続く()内の用語は対応する本願補正発明の用語を表す。)は、透明支持体および透明支持体よりも低い屈折率と3乃至50体積%の空隙率とを有する低屈折率層が積層されているものであり、「透明支持体」は光学的な機能に寄与することが明らかであるから、本願補正発明の「光学要素」に相当する。また、引用発明の「低屈折率層」は、本願補正発明の「低屈折率層」に相当する。
ウ 引用発明は、「透明支持体」(光学要素)及び「低屈折率層」(低屈折率層)が積層されているものであるから、本願補正発明の「前記光学要素上に配設された」「低屈折率層」との構成を備える。
エ 引用発明の「低屈折率層」(低屈折率層)は、微粒子を含み、微粒子間または微粒子内に空隙が形成され、「微粒子」及び「空隙」がそれぞれ複数存在することは技術常識であるから、引用発明の「低屈折率層」と、本願補正発明の「低屈折率層」とは、「複数の粒子」と「複数の空隙」とを含む点で一致する。
オ 引用発明の「オーバーコート層」は、「低屈折率層」(低屈折率層)の上に積層されているのであるから、本願補正発明の「ポリマー保護層」に相当する。また、引用発明は、本願補正発明の「低屈折率層上に配設されたポリマー保護層」との構成を備える。
カ 上記アないしオからみて、本願補正発明と引用発明とは、
「光学物品であって、
光学要素と、
前記光学要素上に配設された、低屈折率層であって、
該低屈折率層は、複数の粒子と複数の空隙とを含む、低屈折率層と、
前記低屈折率層上に配設されたポリマー保護層と、
を含む、光学物品。」である点で一致し、次の点で相違する。
・相違点1
本願補正発明では、「低屈折率層」は、「1.3以下の有効屈折率を有」し、「結合剤と、該結合剤中に分散された複数のヒュームドシリカ又はヒュームドアルミナの粒子とを含み」、「複数の相互に接続された空隙を含み、低屈折率層中の複数の空隙の容積分率は50%以上である」のに対し、
引用発明では、低屈折率層は、そのような構成を備えているかどうかが明らかでない点。
・相違点2
本願補正発明では、「ポリマー保護層」は、「(メタ)アクリレート修飾シリコーン、シリコーン修飾(メタ)アクリレート、シリコーン-ポリウレア、シリコーン-ポリウレタン-ポリウレア、シリコーンポリアミド、及びシリコーンポリオキサミドからなる群から選択される有機修飾シリコーンを含む」のに対し、
引用発明では、オーバーコート層(ポリマー保護層)は、上記有機修飾シリコーンを含むかどうかが明らかでない点。
(2)判断
ア 上記相違点1について検討する。
(ア)引用例1の【0020】には、「無機微粒子は、金属の酸化物、窒化物、硫化物またはハロゲン化物からなることが好ましく、金属酸化物または金属ハロゲン化物からなることがさらに好ましく、金属酸化物または金属フッ化物からなることが最も好ましい。・・・略・・・特に好ましい無機化合物は、二酸化ケイ素、すなわちシリカである。」と記載されている。当該記載を考慮すると、引用発明において、「微粒子」として、シリカが適したものといえる。シリカは、コロイダルシリカ、ヒュームドシリカ等の態様で提供されることが技術常識であるところ、引用例3の記載事項(上記3(2)オ)における多孔質低屈折率層が気相法シリカ、すなわちヒュームドシリカを含んでいることを考慮すれば、引用発明の低屈折率層として、ヒュームドシリカを含んだものとなすことは、当業者が引用例3の記載事項に基づいて適宜なし得たことである。
(イ)引用例1の【0005】には、「【発明が解決しようとする課題】空隙を有する低屈折率層は、空隙中の空気によって非常に低い屈折率が得られるとの特徴がある・・・、空隙を有する低屈折率層の上に、含フッ素化合物を含むオーバーコート層を設けようとすると、オーバーコート層の塗布液が低屈折率層の空隙に浸入して、低屈折率層の空隙率が低下する問題が認められた。低屈折率層の空隙率が低下すれば、低屈折率層の屈折率は上昇してしまう。本発明の目的は、低屈折率層の屈折率を上昇させることなく、低屈折率層の表面が汚れから保護され、かつ耐傷性も改善されている反射防止膜を提供することである。」と記載されている。当該記載を考慮すると、引用発明の「低屈折率層」は、「非常に低い屈折率」の層であり、その上にオーバーコート層が設けられても、屈折率が上昇しないようにするものである。
引用発明の前記空隙率が50体積%を下回るものであるとしても、前述のとおり、低屈折率層は、非常に低い屈折率の層であり、強度等の観点からみて支障がなく、実現可能であれば、さらに屈折率を下げるために空隙率を50%以上に高めることは当業者であれば容易に想起し得たことである。低屈折率層において、50%以上の空隙率が実現可能なことについては、例えば、引用例4(上記3(3)参照。)に記載されている。
なお、引用発明は、低屈折率層の空隙率の上限が50体積%であり、オーバーコート層の材料が低屈折率層の空隙を占有している割合が70体積%未満であるから、オーバーコート層積層後における低屈折率層の空隙率は15体積%(=50体積%×0.3)ないし50体積%(=50体積%×1)となる。引用例1の【0005】の前述の記載によれば、引用発明において、オーバーコート層の塗布液は低屈折率層の空隙に全く浸入しないことが理想的な態様であるから、このような態様であれば、空隙率の上限はちょうど50体積%であり、引用発明は、本願補正発明の「低屈折率層中の複数の空隙の容積分率は50%以上である」との構成を備えることとなる。また、本願の明細書には、低屈折率層中の複数の空隙の容積分率に関し、「【0041】・・・略・・・一部の実施形態では、低屈折率層中の複数の相互に接続された空隙の容積分率は、約20%以上(すなわち約20%超である)、又は約30%超、又は約40%超、又は約50%超、又は約60%超、又は約70%超、又は約90%超である。」と記載され、実施例については、具体的な数値が記載されているわけでもないから、本願補正発明の「低屈折率層中の複数の空隙の容積分率は50%以上である」ことに臨界的意義はない。
(ウ)引用例1には、複数の空隙が相互に接続されていることについては明示されていないものの、低屈折率層内に、多数のシリカ粒子及び空隙が存在している場合に、該空隙が独立気泡との説示が特に無い限り、空隙同士が相互に全く接続しないことは技術常識的に考えられないから、引用発明において、空隙同士が相互に接続している状態であることは当業者に自明な事項である。
(エ)引用例3の記載事項は、ヒュームドシリカを含む多孔質低屈折率層の屈折率が1.10~1.25であるから、引用発明の低屈折率層がヒュームドシリカを含んだもの際には、引用発明は、本願補正発明の「低屈折率層」が「1.3以下の有効屈折率を有」するとの構成を備えることは明らかである。
(オ)以上のとおりであるから、引用発明において、上記相違点1に係る本願補正発明の構成となすことは当業者が引用例3の記載事項に基づいて適宜なし得たことである。
イ 上記相違点2について検討する。
(ア)引用例1には、オーバーコート層に関し、「【0040】オーバーコート層に滑り性を付与するため、含フッ素ポリマーに、ポリオルガノシロキサンからなる繰り返し単位を導入してもよい。ポリオルガノシロキサンからなる繰り返し単位を有する含フッ素ポリマーは、例えば、末端に反応性基を持つポリオルガノシロキサンと含フッ素モノマーとの重合によって得られる。反応性基は、エチレン不飽和性モノマー(例、アクリル酸およびそのエステル、メタクリル酸およびそのエステル、ビニルエーテル、スチレンおよび誘導体)をポリオルガノシロキサンの末端に化学的に結合させる。・・・【0041】・・・オーバーコート層に含フッ素ポリマーを用いることが特に好ましい。含フッ素ポリマーは、さらに架橋していることが好ましい。具体的には、架橋性基を含フッ素ポリマーに導入するか、あるいは架橋剤を用いて含フッ素ポリマーを架橋させる。架橋性基は含フッ素ポリマーに側鎖として導入することが好ましい。・・・架橋性基の例には、アクリロイル、メタクリロイル、アリル、イソシアナート、エポキシ、アルコキシシリル、アジリジン、オキサゾリン、アルデヒド、カルボニル、ヒドラジン、カルボキシル、メチロールおよび活性メチレンが含まれる。オーバーコート層の厚さは、2乃至50nmであることが好ましく、5乃至30nmであることがさらに好ましく、5乃至20nmであることが最も好ましい。」と記載されている。当該記載から、オーバーコート層に用いられる含フッ素ポリマーは、ポリオルガノシロキサンからなる繰り返し単位を導入されるとともに、架橋性基として、アクリロイル又はメタクリロイルを導入されたものであること、すなわち、(メタ)アクリレート修飾シリコーン又はシリコーン修飾(メタ)アクリレートであることの示唆がされているといえる。
(イ)それに加え、引用例5の記載事項(上記3(4)オ)が高温高湿などの環境条件により光学特性が変化することのないようにするためにUV硬化型シリコーンアクリレートを硬化させて光学シートの保護層を形成させたものである。そして、引用発明も汚れや傷から表面側の層を保護するためにオーバーコートを層を設けている(引用例1の【0005】参照。)。そうすると、引用発明も引用例5の記載事項も表面側の層を外的要因から保護するために保護層を設けることで共通するものであるから、引用発明のオーバーコート層(ポリマー保護層)として、(メタ)アクリレート修飾シリコーン又はシリコーン修飾(メタ)アクリレートから選択される有機修飾シリコーンを含んだものとなすこと、すなわち、上記相違点2に係る本願補正発明の構成となすことは当業者が引用例5の記載事項に基づいて適宜なし得たことである。
ウ 効果について
本願補正発明が奏する、ポリマー保護層が、低屈折率層の物理的性質を実質的に劣化させず、また、低屈折率層の中に実質的に拡散しないという効果は、引用発明における効果、引用例3の記載事項の奏する効果及び引用例5の記載事項の奏する効果から、当業者が予測できた程度のものである。
(3)審判請求人の主張について
ア 審判請求人は、審判請求書において、概略、以下のとおり主張している。
(ア)引用文献1(引用例1)と引用文献5(引用例5)とは組み合わせられない
オーバーコート層の塗布により低屈折率層の空隙率が低下することを抑制しようとする引用文献1において、空隙に浸入して低屈折率層の空隙率を低下させる引用文献5の保護層の樹脂をオーバーコート層として使用することを、当業者が動機付けられることはない。
(イ)引用文献1に引用文献5を組み合わせても本願発明1(本願補正発明)は得られない
引用発明1(引用例1に記載された発明)における低屈折率層の空隙率は3乃至50体積%(好ましくは5乃至35体積%)であるところ、これに引用文献5の保護層を適用すれば、保護層を構成する樹脂が空隙に浸入し、低屈折率層の空隙率は50体積%(好適には35体積%)よりも低減することになり、低屈折率層中の複数の空隙の容積分率が50%以上である本願発明1の構成が得られることはない。
(ウ)数値範囲の臨界的意義は不要である
本願発明1と、引用発明1とでは課題及び効果が異なるから、数値範囲の臨界的意義は問題とならない。
(エ)強度について
引用発明1が、強度の観点から、空隙率の上限を50体積%にしたのであれば、まさにかかる空隙率の設定こそが、引用発明1の課題解決手段である。だからこそ、引用文献1の請求項1(独立請求項)には、低屈折率層が3乃至50体積%の空隙率を有することが、必須の構成要素として明記されている。かかる記載に反し、低屈折率層中の複数の空隙の容積分率を50%以上とすることには、阻害要因が存在する。
イ 審判請求人の主張について検討する。
(ア)上記ア(ア)及び(イ)の主張について
上記(2)イで説示したとおり、引用例1には、オーバーコート層に(メタ)アクリレート修飾シリコーン又はシリコーン修飾(メタ)アクリレートが含まれることの示唆があり、引用例5には、保護層の形成に具体的にUV硬化型シリコーンアクリレートを用いることの記載があり、引用発明のオーバーコート層として、具体的に如何なる樹脂を選択するかを検討するに際し、引用例5を参酌しているにすぎない。また、引用発明は、低屈折率層の空隙率が低下することを抑制しようとするものであるところ、オーバーコート層に(メタ)アクリレート修飾シリコーン又はシリコーン修飾(メタ)アクリレートを用いた場合でも、同様に空隙に侵入しないように、重量平均分子量を調整することは当業者が適宜なし得たことである。
(イ)上記ア(ウ)の主張について
ポリマー保護層が、光学要素の有効屈折率を増加させないため、すなわち、低屈折率層の有効屈折率を増加させないために、低屈折率層の中に実質的に浸透(拡散)しないようにした点で、本願補正発明と引用発明とは課題が共通し、それに関連する低屈折率層の空隙率の数値範囲は重要な論点であるから、その数値範囲に関しては臨界的意義が求められるものである。
(ウ)上記ア(エ)の主張について
低屈折率層において、強度と空隙率とがトレードオフの関係にあることが技術常識であるところ、上記(2)ア(イ)で検討したように、低屈折率層における更なる屈折率の低下の要請により、強度等について、許容され、且つ、実現可能である範囲において、空隙率を高めることは当業者にとって格別困難なことではない。
(4)独立特許要件のむすび
以上のとおりであるから、本願補正発明は、当業者が引用例1に記載された発明、引用例3の記載事項及び引用例5の記載事項に基づいて容易に発明をすることができたものである。
よって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
5 小括
以上のとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものである。
したがって、本件補正は、同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成28年2月29日付け手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2〔理由〕1(1)に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。
2 原査定の理由の概略
この出願の本件補正前の特許請求の範囲における請求項1ないし3に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
記
引用文献1.特開2000-75105号公報
引用文献2.国際公開第2004/073972号
引用文献3.特開2008-3243号公報
引用文献4.特開平11-281802号公報
引用文献5.特開2001-350005号公報
・請求項1~3
・引用文献1、3、5
・備考
引用文献3には、低屈折率層に含有させるシリカ粒子として、「気相法シリカ(ヒュームドシリカ)」を使用することが記載されている。
そして、引用文献1と引用文献3とは、「反射防止構造」という同一の技術分野に属する。よって、引用文献1に記載された発明において、引用文献3に記載の技術を適用することは当業者が容易になし得たことである。
引用文献5には、光学シートの表面保護層として、シリコーンアクリレートからなる保護層を使用することが記載されている。
そして、引用文献1と引用文献5とは、「光学シート」という技術分野において関連し、共に、表面保護層に関する発明である。よって、引用文献1に記載された発明において、引用文献5に記載の技術を適用することは当業者が容易になし得たことである。
請求項2、3についても同様である。
・請求項1~3
・引用文献1~5
・備考
「反射防止膜」の技術分野において、低屈折率層として、屈折率が1.3以下であり、結合剤と、金属酸化物粒子と、相互に接続された複数の空隙とを含むものは、例えば、引用文献2~4に記載されているように、周知技術である。
よって、引用文献1に記載された発明において、低屈折率層の具体的構成として、周知技術を採用することにより、上記構成に関して本願の請求項1~3に係る発明を構成することは当業者が容易になし得たことである。その余の点については上記したとおりである。
3 引用例
引用例1の記載事項は、上記第2〔理由〕3(1)に記載したとおりである。
4 対比・判断
本願補正発明は、上記「第2〔理由〕1(2)」のとおり、本願発明を特定するために必要な事項を限定したものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに限定を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2〔理由〕4」に記載したとおり、当業者が引用例1に記載された発明、引用例3の記載事項及び引用例5の記載事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が引用例1に記載された発明、引用例3の記載事項及び引用例5の記載事項に基づいて容易に発明をすることができたものである。
5 むすび
本願発明は、以上のとおり、当業者が引用例1に記載された発明、引用例3の記載事項及び引用例5の記載事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2017-014876