特許拒絶査定不服審判
2017-011280
ユーザが開始するデバイス間、システム間、インターネットプロトコルアドレス間のハンドオフを提供する方法およびシステム
- 審判番号
- 2017-011280
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2015-002483外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2017年07月28日
- 審決日
- 2019年09月30日
- 公報発行日
- 2020年04月24日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】インターデイジタル テクノロジー コーポレーション
- 【請求人代理人】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
- 分類
- P18 .113-WZ (H04W) / P18 .121-WZ (H04W)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法29条2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特願2015- 2483「ユーザが開始するデバイス間、システム間、インターネットプロトコルアドレス間のハンドオフを提供する方法およびシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 5月14日出願公開、特開2015- 92749〕について、次のとおり審決する。
結論
【結 論】
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本願は、2003年(平成15年)9月2日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2002年9月3日 米国)を国際出願日とする特願2004-534460号の一部を、平成24年1月16日に新たな特許出願とした特願2012-6315号の一部を、平成25年7月11日に新たな特許出願とした特願2013-145579号の一部を、平成27年1月8日に更に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成27年 9月17日付け 拒絶理由通知書
平成28年 3月29日 意見書、手続補正書の提出
平成28年 7月4日付け 拒絶理由通知書(最後の拒絶理由)
平成29年 1月11日 意見書、手続補正書の提出
平成29年 3月23日付け 平成29年1月11日の手続補正につい
ての補正の却下の決定、拒絶査定
平成29年 7月28日 拒絶査定不服審判の請求、手続補正書の提 出
平成29年 9月7日 手続補正書(審判請求の理由)
平成30年 10月9日付け 拒絶理由通知書
平成31年 4月16日 意見書、手続補正書の提出
第2 本願発明について
本願の請求項1~12に係る発明は、平成31月4月16日にされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~12に記載された事項により特定されるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものと認める。
「 通信デバイスにおいて使用する方法において、
第1のネットワークを経由して、通信セッションに関連したデバイス間転送要求を受信するステップであって、前記要求は第1の無線アクセス技術(RAT)を使用して動作するソースデバイスおよび第2のRATを使用して動作するターゲットデバイスを示している、ステップと、
前記ソースデバイスから前記ターゲットデバイスへ、前記通信セッションを転送するステップと
を有することを特徴とする方法。」
第3 拒絶の理由
平成30年10月9日付けで当審が通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)は、概略、次のとおりのものである。
「1.(省略)
2.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(省略) 」
そして、理由2(進歩性)について、補正前の請求項1に対しては、下記引用例2が引用されている。
引用例2 特開2002-64562号公報
第4 引用発明及び周知技術
[引用発明]
当審拒絶理由で引用された特開2002-64562号公報(以下「引用例」という。)には、図面とともに次の記載がある。(下線は当審が付与。)
(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ネットワーク上で接続された複数の端末同士がサーバアプリケーション及びクライアントアプリケーションにより通信する場合に、通信経路の切替などのために用いられる通信コネクション確立方法に関する。」
(2)「【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記のような従来の通信システムにおいては、サーバアプリケーションとクライアントアプリケーションとの間の通信を開始する際にその通信経路が決定される。従って、通信の途中では利用するサーバアプリケーション,クライアントアプリケーション及びプロキシの組み合わせを変更することはできない。
【0007】サーバアプリケーション,クライアントアプリケーション又はプロキシを変更する場合には、通信を一旦終了し、通信コネクションを解放し、サーバアプリケーションとクライアントアプリケーションとの間の各通信コネクションをつなぎ直す必要がある。(省略)
【0008】また、例えば通信中の端末に障害が発生した場合には、通信を一旦終了し、通信コネクションを解放し、障害が生じた端末のアプリケーションやプロキシの機能を他の端末で置き換えるように通信経路を再構築して最初から通信をやり直す必要がある。また、例えばユーザが利用する端末を画面の小さい移動端末から画面の大きい固定端末(例えばデスクトップパソコン)に切り替えようとする場合にも、移動端末の通信を終了し、通信コネクションを解放し、固定端末を用いて新たな通信経路を構築し、通信を最初からやり直す必要がある。
【0009】そこで、本発明はサーバアプリケーションとクライアントアプリケーションとの間の通信を終了することなく、それらのアプリケーションの切替や通信経路の切替を可能にすることを目的とする。」
(3)「【0035】図21の(c)に示すように、各ノードには、プロキシ又はアプリケーションあるいはそれらの両方を搭載することができる。複数のアプリケーションの間の通信は少なくとも1つのプロキシを介して行われる。また、互いに通信する複数のアプリケーションの間に複数のプロキシを介在することにより、プロキシ間で発生する通信の切断や通信媒体の変化などを吸収することが可能であり、ノードの移動が可能になる。
【0036】また、通信経路上のプロキシやアプリケーションの接続関係を変更することにより、ネットワークサービスをノード間にまたがって移動させることが可能になる。請求項1はプロキシの按続関係を変吏することを特徴としている。また、請求項2はアプリケーションの按続閑係を変吏することを特徴としている。按続関係を様々に変更することにより、通信に用いるノードやアプリケーションの自由な変更が可能になり、ユーザの利便性を高めることができる。
【0037】例えば、ユーザが屋内にいる場合には有線の広帯域の回線を用いて大画面のノードでサービスを受け、ユーザが屋外に移動した場合には携帯端末のノードにサービスを移すとともに、サービスの質よりもモビリティを優先させるように通信環境を対応させることができる。」
(4)「【0039】図1はプロキシ及びアプリケーションを切り替える場合の制御シーケンスを示すシーケンス図である。図2はプロキシ及びアプリケーションを切り替える場合の通信経路の例を示すブロック図である。(省略)
【0040】(省略)
【0041】図9は通信システムの構成例を示すブロック図である。図10は移動端末の構成例を示すブロック図である。図11はサービス管理部SRが保持する情報の例を示す模式図である。図12は位置管理部LRが保持する情報の例を示す模式図である。図13はセッション管理部SMが保持する情報の例を示す模式図である。図14は通信システムの構成例を示すブロック図である。(省略)
【0042】(省略)
【0043】この形態では、例えば図9に示すような通信システムに本発明を適用する場合を想定している。図9の例では、3種類のサブネットワーク51,52,53が広域ネットワーク54を介して互いに接続されている。サブネットワーク51においては、イーサネットの規格に沿って構成された通信インタフェースを介して、有線で多数の端末(55,56)を互いに通信可能な状態で接続することができる。
【0044】サブネットワーク52は無線LANを構成している。この規格に適合する無線通信インタフェースを備える移動端末59,60は、基地局57,58との間で無線通信が可能であり、無線でサブネットワーク52と接続される。勿論、特定の通信可能エリアの外では基地局57,58との通信はできない。サブネットワーク53は、公衆無線通信システムであるPHSのネットワークである。図9の例では、サブネットワーク53には移動端末61,固定端末62及びTAP(PIAFS用ターミナルアダプタ)63が接続され、TAP63には基地局64,65が接続されている。PHSの通信規格に沿って構成された無線通信インタフェースを備える移動端末66,67は、基地局64,65との間で無線通信が可能である。勿論、特定の通信可能エリアの外では基地局64,65との通信はできない。
【0045】例えば、図9に示す移動端末59が移動端末55の近傍に移動した場合には、移動端末59は基地局57との無線通信ができなくなる可能性がある。しかし、その位置では移動端末59を有線でサブネットワーク51に接続することができる。一般的なシステムの場合、端末が通信のために利用するネットワークをサブネットワーク51,52,53の間で切り替える場合には、アプリケーションの通信を一旦終了して通信経路を再構築する必要があるため手間がかかる。
【0046】本発明を実施する場合には、端末が通信のために利用するネットワークをサブネットワーク51,52,53の間で切り替える場合であっても、アプリケーションの通信を終了することなく自動的に切替を行うことができる。また、例えば移動端末55及び固定端末56に同一のアプリケーションプログラムが存在する場合には、一人のユーザが移動端末55上のアプリケーションプログラムを利用して通信している途中で、固定端末56上のアプリケーションプログラムに切り替えて継続的に通信を行うこともできる。
【0047】本発明を実施するために用いる各端末(この例では移動端末)は、図10のように構成される。図10の移動端末は、サブネットワーク51との接続を可能にするためにイーサネット通信アダプタ21を備え、サブネットワーク52との接続を可能にするために無線LANアダプタ22を備え、サブネットワーク53との接続を可能にするためにPHS通信アダプタ23を備えている。
【0048】また、図10の移動端末はソフトウェア10としてサーバアプリケーション11,クライアントアプリケーション12,プロキシ13,エージェント14,リンク切替部15,リンク16,17,18,位置管理部LR,セッション管理部SM及びサービス管理部SRを備えている。サーバアプリケーション11は、特定のアプリケーションのサービスを提供するためのプログラムである。クライアントアプリケーション12は、特定のアプリケーションについてサーバが提供するサービスを利用するためのプログラムである。」
(5)「【0050】図10のプロキシ13は、サーバアプリケーション11の通信又はクライアントアプリケーション12の通信を中継することができる。リンク切替部15は他の端末との間の通信に利用するリンク16,17,18を切り替える。リンク16はイーサネット通信アダプタ21と接続され、リンク17は無線LANアダプタ22と接続され、リンク18はPHS通信アダプタ23と接続されている。
【0051】リンク16及びイーサネット通信アダプタ21を利用して通信する場合には、サブネットワーク51を介して通信することができ、リンク17及び無線LANアダプタ22を介して通信する場合には、サブネットワーク52を介して通信することができ、リンク18及びPHS通信アダプタ23を利用する場合には、サブネットワーク53を介して通信することができる。
【0052】つまり、リンク切替部15で使用するリンク16,17,18を切り替えることにより通信方式を切り替えて、サブネットワーク51,52,53のいずれかに接続することができる。通信を行う各端末には、それぞれIP(Internet Protocol)アドレスが割り当てられる。また、端末が通信方式を切り替える際には、アドレスの割り当て単位であるサブネットの境界を超えて端末がネットワーク上を移動することになるため、切替のたびに新たなアドレスを用いる。」
(6)「【0068】ある移動元からある移動先にサービスを移動する場合には、そのサービスの通信で利用しているセッションから、移動先のアプリケーション又はプロキシ上に構築されるサービスに対して移動元のサービスの状態を転送することで実現することができる。転送すべきサービスの状態としては、セッションを構成しているアプリケーション及びプロキシの接続状態,送受信しているデータのバイト数,フレーム数などがある。
【0069】例えば、携帯型の移動端末を用い、無線回線及びネットワークを介して特定のサーバアプリケーションからストリームデータを受信し閲覧している場合には、端末の表示能力が低いため品質の高いサービスを受けることができない。しかし、ユーザが移動端末から画面の大きい固定端末にサービスを移動すれば、品質の高いサービスを受けることができる。このような移動の場合でも、継続的にサービスを利用することができる。」
(7)「【0070】(省略)サービスの提供に利用される通信経路を切り替える場合や、サーバアプリケーション又はクライアントアプリケーションを切り替える場合の具体例について以下に説明する。ここでは、図14に示すような通信システムを想定する。
【0071】図14においては移動端末30(1)~30(5)のそれぞれの機能を簡略化して表してある。実際には、移動端末30(1)~30(5)のそれぞれは図10に示す移動端末と同様の機能を有している。(省略)。
【0072】まず、プロキシ及びアプリケーションを切り替える場合について説明する。具体的には、切替前の状態では図2において移動端末30(1)のサーバアプリケーション11(1)とプロキシ13(1)との間に通信コネクション201が確立され、プロキシ13(1)とプロキシ13(2)との間に通信コネクション202が確立され、クライアントアプリケーション12(2)とプロキシ13(2)との間に通信コネクション203が確立され、サーバアプリケーション11(1)-プロキシ13(1)-プロキシ13(2)-クライアントアプリケーション12(2)の通信経路を通るようにセッションが形成されている場合を想定している。
【0073】ここで、移動端末30(2)上のクライアントアプリケーション12(2)の代わりに移動端末30(3)上のクライアントアプリケーション12(3)を利用して継続的にサーバアプリケーション11(1)のサービスを受けようとする場合には、セッション管理部SM(2)の機能を利用して、図1に示す制御シーケンスを実行する。すなわち、プロキシ13(2)からプロキシ13(3)に切り替える。
【0074】ユーザの利用状態及び端末間の接続状態を管理している端末のエージェント14は、必要に応じて(例えばユーザの指示により)アプリケーション(AP)の切替要求を発生する。この切替要求は、例えばセッション管理部SM(2)に通知される。この場合、セッション管理部SM(2)は図1のステップS11を実行する。すなわち、切替先のクライアントアプリケーション12(3)との間で通信コネクション204が確立された切替先のプロキシ13(3)に切り替えるために、プロキシ13(3)に対して切替に関する問い合わせを行う。この問い合わせの際には、該当するセッションのセッションIDやプロキシの接続状態の情報もパラメータとしてセッション管理部SM(2)からプロキシ13(3)に送信する。
【0075】このパラメータには、切替元のプロキシ13(2)が転送を中継しているファイルのファイル名及び転送を終了したバイト数(ファイル上の現在の転送位置)も含まれている。問い合わせを受けたプロキシ13(3)は、受信したパラメータに基づいて、必要なプロセス等を起動し、ステップS12で通信の中継をするための準備を行う。このプロキシ13(3)は、受信したパラメータに基づいて切替元のプロキシ13(2)の状態を継承する。
【0076】(省略)
【0077】セッション管理部SM(2)は、準備完了通知を受信するとステップS14で、切替元のプロキシ13(2)との間で通信コネクション202を確立していたプロキシ13(1)に対して切替要求を送信する。この切替要求には、パラメータとして切替先のプロキシ13(3)に関するノード名(G16)及びポート番号(G17)が含まれている。
【0078】プロキシ13(1)は、切替要求を受信した場合には、切替要求のパラメータ及びセッションIDを利用して、プロキシ13(3)の接続ポイント(端末のIPアドレスとプロキシ13(3)のポート番号)に対して通信コネクション205を確立する(S15)。プロキシ13(3)はプロキシ13(1)との間で通信コネクション205が確立すると、通信コネクション205の確立の際に受信したセッションIDで定まる特定のセッションについて、通信コネクション204及びクライアントアプリケーション12(3)を関連付ける(S16)。これにより、通信コネクション205と通信コネクション204との間の通信を中継(蓄積転送)するためのプロキシ13(3)の準備が完了する。
【0079】また、プロキシ13(1)はそれまでに通信コネクション202を介して行っていた全ての通信を通信コネクション205に切り替える(S17)。この切替が完了した後、プロキシ13(1)はセッション管理部SM(2)に対して切替の完了通知を送信する(S18)。
【0080】(省略)
【0081】また、セッション管理部SM(2)は、変更を行ったセッションの情報を管理している他のセッション管理部SM(1),SM(3),SM(4)に対して変更した情報を通知する(S21)。以上の制御シーケンスの結果、図2に示すようにサーバアプリケーション11(1)とクライアントアプリケーション12(2)との間の通信で提供していたサービスが、サーバアプリケーション11(1)とクライアントアプリケーション12(3)との間の通信に切り替わるようにセッション(通信経路)の内容が変更される。」
(8)「【0109】本発明の機能の概略は、図16に示す移動モデルで表すことができる。すなわち、ユーザが使用する端末が移動して通信方式が切り替わった場合や、ユーザが使用する端末を切り替えた場合でも、同じサービスを継続的に同じユーザに提供することができる。ここで扱うサービスとは、各セッションを通してアプリケーション間で送受信される通信内容,それに付随する通信プロトコル(http等)及び表現方法(再生,ブラウジング等)を意味する。
【0110】サービスを移動する場合には、同じセッションIDで示される移動元のセッションから移動先のセッションに対してサービスの状態を転送することにより、同じ状態でサービスを継続することができる。各端末(ノード)は、図16に示すようにリンク層のアドレス空間にマッピングされる。従って、ノードの移動はノードとアドレスとの対応関係を変更することで実現できる。また、各端末は複数の通信デバイスをもつことが可能であり、それぞれが固有のアドレスを保持することができる。」
(9)図1
(10)図2
(11)図9
(12)図10
(13)図14
上記記載及び図面並びに当業者の技術常識を考慮すると、
a 上記(4)段落0043~0044、0047の記載及び上記(11)図9、(12)図10によれば、各移動端末は、無線LANアダプタ又はPHS通信アダプタを介して、ネットワークに接続されている。
そして、上記(5)段落0050~0051の記載及び上記(11)図9、(12)図10によれば、各移動端末は、無線LANアダプタ及びPHS通信アダプタを切り替えて、無線LAN及びPHS通信の通信方式を切り替える機能を有するといえる。
さらに、上記(5)段落0052の記載によれば、各移動端末は、それぞれIPアドレスが割り当てられている。
ここで、上記(7)段落0071の記載及び(13)図14によれば、移動端末30(1)~30(3)のそれぞれは、図10に示す移動端末と同様の機能を有しているから、引用例には、移動端末30(1)~30(3)はいずれも、それぞれIPアドレスが割り当てられ、無線LANアダプタ又はPHS通信アダプタを介して、ネットワークに接続され、無線LAN及びPHS通信の通信方式を切り替える機能を有することが記載されていると認められる。
b 上記(7)段落0077の記載、(9)図1によれば、セッション管理部SM(2)は、通信コネクション202を介してプロキシ13(1)に対して切替要求を送信する。
そして、上記(4)段落0048によれば、プロキシはソフトウェアとして移動端末に備えられているものである。
よって、引用例には、移動端末13(1)は、通信コネクション202を介して移動端末30(2)から送信された切替要求を受信することが記載されていると認められる。
c 上記(7)段落0077の記載及び(9)図1によれば、切替要求には、切替先のプロキシ13(3)に関するノード名及びポート番号が含まれており、bで述べたように、プロキシはソフトウェアとして移動端末に備えられるものであるから、プロキシ13(3)に関するノード名及びポート番号は、移動端末30(3)を示す情報といえる。
よって、引用例には、切替要求は、移動端末30(3)を示す情報を含むことが記載されていると認められる。
d 上記(7)段落0079の記載、(9)図1及び(10)図2によれば、プロキシ13(1)は、切替要求を受信した場合、通信コネクション202を介してプロキシ13(2)と行っていた全ての通信を、プロキシ13(3)との通信コネクション205に切り替える。
ここで、上記(7)段落0073、0081の記載によれば、通信コネクション202を介してプロキシ13(2)と行っていた全ての通信を、プロキシ13(3)との通信コネクション205に切り替えることにより、クライアントアプリケーション12(2)との通信で提供していたサービスが、クライアントアプリケーション12(3)との間の通信に切り替わり、継続的にサーバアプリケーション11(1)のサービスが受けられることは明らかである。
そして、上記(3)段落0036~0037、上記(6)段落0068~0069、上記段落(8)0110の記載からすれば、クライアントアプリケーション12(2)との通信で提供していたサービスが、クライアントアプリケーション12(3)との間の通信に切り替わることは、クライアントアプリケーション12(2)からクライアントアプリケーション12(3)にサービスを移動させているともいえる。
さらに、上記(4)段落0048から、プロキシ及びクライアントアプリケーションは、アプリケーションとして移動端末に備えられるものである。
よって、引用例には、通信コネクション202を介して移動端末30(2)と行っていた全ての通信を、移動端末30(3)との通信コネクション205に切り替え、移動端末30(2)から移動端末30(3)にサービスを移動させることが記載されていると認められる。
e 上記(6)段落0068には、ある移動元からある移動先にサービスを移動する場合には、そのサービスの通信で利用しているセッションから、移動先のアプリケーション又はプロキシ上に構築されるサービスに対して移動元のサービスの状態を転送することが記載されており、上記dで述べた、通信コネクション202を介して行っていた全ての通信を、通信コネクション205に切り替え、サービスを移動させる場合においても、そのサービスの通信で利用しているセッションから、移動先のアプリケーション又はプロキシ上に構築されるサービスに対して移動元のサービスの状態を転送することが含まれるといえ、さらに、dで述べたように、プロキシ及びアプリケーションは、移動端末に備えられるものである。
f bで述べた、切替要求を受信すること、及び、dで述べた、通信コネクションを切り替えることは、移動端末30(1)において実行されることであることから、引用例には、移動端末30(1)において実行される方法が記載されていると認められる。
以上を総合すると、引用例には以下の発明が(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認める。
「 移動端末30(1)において実行される方法において、
移動端末30(1)~30(3)はいずれも、それぞれIPアドレスが割り当てられ、無線LANアダプタ又はPHS通信アダプタを介して、ネットワークに接続され、無線LAN及びPHS通信の通信方式を切り替える機能を有し、
通信コネクション202を介して移動端末30(2)から送信された切替要求を受信するステップであって、前記切替要求には、移動端末30(3)を示す情報を含む、ステップと、
通信コネクション202を介して移動端末30(2)と行っていた全ての通信を、移動端末30(3)との通信コネクション205に切り替え、移動端末30(2)から移動端末30(3)にサービスを移動させるステップであって、そのサービスの通信で利用しているセッションから、移動先の移動端末上に構築されるサービスに対して移動元のサービスの状態を転送するステップと、
を有する方法。」
[周知技術]
本件の優先日前に刊行された、林 誠編、「Web技術のすべてがわかる本」、日本能率協会マネジメントセンター、2000年7月15日第6刷発行、105ページ(以下、「周知例1」という。)には、以下の事項が記載されている。
(14)「TCP/IPではIPパケットというデータ単位をホスト間で交換する。ここでホストとは通信する機器(PCやワークステーション)を総称した呼び方である。IPパケットはIPヘッダ部(送信元IPアドレスと送信先IP アドレス)とIPデータ部から構成される。」(105ページ14~17行)
本件の優先日前に刊行された、小泉 修、「図解でわかる Web技術のすべて」、株式会社日本実業出版社、2001年5月10日第5刷発行、90~92ページ(以下、「周知例2」という。)には、以下の事項が記載されている。
(15)「インターネット層には、TCP/IPの中心的な役割を果たすプロトコルであるIP(Internet Protocol)が存在します。
(省略)
IPによって情報を転送する場合、インターネット層により、データにIPヘッダを付加して下位層に引き渡します。
IPヘッダは、先に説明したトランスポート層によって付加されたTCPヘッダの上部に付加されます。(省略)
図2-19(次ページ)ではIPヘッダ(IP header)のフォーマットを、つぎの図2-20(→P.93)ではその内容を説明しています。主な機能について、図2-20に準じて説明しておきましょう。
(省略)
11の送信元IPアドレス(Source IP Address)は送信元自身のアドレスを表し、12の宛先IPアドレス(Destination IP Address)は、IPヘッダの最も重要なフィールドの1つである、最終的な宛先の住所です。」(90ページ7行~92ページ16行)
上記(14)~(15)の記載から明らかなように、「IPプロトコルに従って通信する場合、データに、送信元のIPアドレスと送信先のIPアドレスを含むIPヘッダを付して送信すること」は技術常識ともいえる周知技術である(以下、「周知技術」という。)。
第5 対比・判断
1 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
a 引用発明において、移動端末30(1)は、移動端末30(2)又は移動端末30(3)と、通信コネクションを介して通信を行うものであるから、引用発明の「移動端末30(1)」は、本願発明の「通信デバイス」に相当する。
また、引用発明の「移動端末30(1)において実行される方法」を、「移動端末30(1)において使用する方法」と称することも任意である。
b 引用発明において、移動端末30(2)から移動端末30(3)にサービスを移動させるステップにおいて、「そのサービスの通信で利用しているセッションから、移動先の移動端末上に構築されるサービスに対して移動元のサービスの状態を転送する」ものである。ここで、このようなサービスの移動は、そのサービスで利用しているセッションの観点からは、移動端末間のセッションの転送ということができる。
c 本願発明の「通信セッション」に関し、本願明細書には、「通信セッション」なる用語は記載されておらず、その定義は明らかにされていないところ、本願明細書の段落0014の「パーソナルコンピュータ10は、WLAN20とサポートするサービスセンター36の間でIPネットワーク24を介してデータセッションを行うように図示されている。」との記載から、本願発明は、IPネットワークを介してデータセッション等の通信セッションを行うことは明らかであるから、本願発明の「通信セッション」が、IPネットワークで用いられるIPプロトコルにおける「通信セッション」を含むものといえる。
そして、引用発明では、各移動端末にIPアドレスが割り当てられており、移動端末間の通信はIPプロトコルに従って行われることは明らかであるから、引用発明の「セッション」は、IPプロトコルにおける「セッション」であり、本願発明の「通信セッション」に含まれるといえる。
d 引用発明の「移動端末30(2)」、「移動端末30(3)」は、本願発明の「ソースデバイス」、「ターゲットデバイス」に対応付けることができるから、前記b、cを踏まえると、引用発明の「通信コネクション202を介して移動端末30(2)と行っていた全ての通信を、移動端末30(3)との通信コネクション205に切り替え、移動端末30(2)から移動端末30(3)にサービスを移動させるステップであって、そのサービスの通信で利用しているセッションから、移動先の移動端末上に構築されるサービスに対して移動元のサービスの状態を転送するステップ」は、本願発明の「前記ソースデバイスからターゲットデバイスへ、前記通信セッションを転送するステップ」に対応する。
e 引用発明において、移動端末30(1)は、無線LANアダプ又はPHS通信アダプタを介してネットワークに接続した上で、通信コネクション202を介し、切替要求を受信する以上、引用発明において、ネットワークを介して切替要求を受信することを含むことは明らかであって、該ネットワークを「第1のネットワーク」と称することは任意である。
そして、上記bで述べた点を踏まえれば、引用発明は、「切替要求」を受信した場合に、移動端末30(2)から移動端末30(3)にセッションを転送させるから、該「切替要求」は、移動端末30(2)から移動端末30(3)へセッションを転送させるための要求であるといえ、本願発明の「通信セッションに関連したデバイス転送間転送要求」に含まれることは明らかである。
よって、本願発明の「第1のネットワークを経由して、通信セッションに関連したデバイス間転送要求を受信するステップであって、前記要求は第1の無線アクセス技術(RAT)を使用して動作するソースデバイスおよび第2のRATを使用して動作するターゲットデバイスを示している、ステップ」と、引用発明の「通信コネクション202を介して移動端末30(2)から送信された切替要求を受信するステップであって、前記切替要求には、移動端末30(3)を示す情報を含む、ステップ」とは、「第1のネットワークを経由して、通信セッションに関連したデバイス間転送要求を受信するステップ」である点で共通する。
以上から、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致し、また、相違している。
(一致点)
「 通信デバイスにおいて使用する方法において、
第1のネットワークを経由して、通信セッションに関連したデバイス間転送要求を受信するステップと、
前記ソースデバイスから前記ターゲットデバイスへ、前記通信セッションを転送するステップと
を有することを特徴とする方法。」
(相違点)
一致点の「通信セッションに関連したデバイス間転送要求」に関し、本願発明は、「第1の無線アクセス技術(RAT)を使用して動作するソースデバイスおよび第2のRATを使用して動作するターゲットデバイスを示している」のに対し、引用発明においては、「ソースデバイス」を示すことは特定しておらず、また、「移動端末30(3)を示す情報」を含むものの、その無線アクセス技術(RAT)を特定していない点。
2 相違点についての判断
上記1のcで述べたとおり、引用発明では、各移動端末にIPアドレスが割り当てられているから、移動端末間の通信はIPプロトコルに従って行われることは明らかであって、上記周知技術のとおり、「IPプロトコルに従って通信する場合、データに、送信元のIPアドレスと送信先のIPアドレスを含むIPヘッダを付して送信すること」は技術常識ともいえる周知技術であるから、「移動端末30(2)から送信された切替要求」には、移動端末30(2)を示す送信元IPアドレスが含まれるといえる。
そして、引用発明において、移動端末30(2)、移動端末30(3)はいずれも、無線LANアダプタ又はPHS通信アダプタを介して、ネットワークに接続され、無線LAN及びPHS通信の通信方式を切り替える機能を有しており、移動端末30(2)、移動端末30(3)で利用するそれぞれの通信方式が、無線LAN及びPHS通信の通信方式をそれぞれ異なるものとすることも想定できる。ここで、無線LAN及びPHS通信はそれぞれ異なる無線アクセス技術(RAT)といえる。してみれば、「通信セッションに関連したデバイス間転送要求」の内容として、引用発明及び前記周知技術に基づき、「第1の無線アクセス技術(RAT)を使用して動作するソースデバイスおよび第2のRATを使用して動作するターゲットデバイスを示している」ものとすることは、当業者が容易に想到することができた事項である。
したがって、本願発明は引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が引用例に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができな。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2017-011280