特許異議申立
2016-700584
固形ルウ
- 審判番号
- 2016-700584
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2012-236355外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2016年06月29日
- 審決日
- 2017年11月10日
- 公報発行日
- 2018年05月25日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 分類
- P1651.121-ZDA(A23L) / P1651.537-ZDA(A23L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項、特許法第113条第2号、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第2項、特許法第113条第4号
- データ出所
- 審決公報(SGML)
事件の表示
特許第5841038号発明「固形ルウ」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
【結 論】
特許第5841038号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項9について訂正することを認める。
特許第5841038号の請求項1ないし8に係る特許を取り消す。
同請求項9に係る特許を維持する。
理由
【理 由】
第1 手続の経緯
本件特許異議の申立てに係る特許第5841038号(以下「本件特許」という。)の手続の経緯は、以下のとおりである。
平成24年10月26日 本件特許出願
平成27年11月20日 設定登録
平成28年 6月29日 特許異議申立書
同年10月 6日 取消理由通知書
同年12月12日 訂正請求書、意見書(特許権者)
平成29年 2月 8日 意見書(特許異議申立人)
同年 3月 2日 訂正拒絶理由通知書
同年 4月 5日 意見書(特許権者)
同年 5月 9日 取消理由通知書(決定の予告)
同年 7月10日 訂正請求書、意見書(特許権者)
同年 8月10日 意見書(特許異議申立人)
なお、平成29年7月10日付けで訂正請求がされたため、特許法第120条の5第7項の規定により、平成28年12月12日付けの訂正請求は、取り下げられたものとみなす。
第2 訂正について
1 訂正の内容
平成29年7月10日に提出された訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)は、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項9について訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は次のとおりである。
訂正前の請求項9に
「【請求項9】
油脂と固形分とを含む原料を加熱混合し、油脂の融点を下回る温度に冷却して固化する固形ルウの製造方法であって、(A)固形ルウの全量に対する砂糖の含有量が8質量%以下であり、(B)砂糖以外の固形分の含有量に対する油脂の含有量の割合が40質量%以上60質量%以下であり、(C)高甘味度甘味料を含有し、かつ(D)甘味量が砂糖換算量で6質量%以上20質量%以下である前記原料を用いることを特徴とする固形ルウの製造方法。」
とあるのを
「【請求項9】
油脂と固形分とを含む原料を加熱混合し、油脂の融点を下回る温度に冷却して固化する固形ルウの製造方法であって、(A)固形ルウの全量に対する砂糖の含有量が8質量%以下であり、(B)砂糖以外の固形分の含有量に対する油脂の含有量の割合が40質量%以上60質量%以下であり、(C)高甘味度甘味料を含有し、かつ(D)甘味量が砂糖換算量で6質量%以上20質量%以下である前記原料を用い、
流動性を有する原料混合物を焙煎釜、冷却タンク、及び充填機に順次パイプを介して送る形式の、連続式の製造ラインを用いて行うことを特徴とする固形ルウの製造方法。」
と訂正する(下線は訂正箇所を示す。)。
2 訂正の適否
上記訂正は、請求項9に係る発明の固形ルウの製造方法について、用いる製造ラインを特定することにより、発明を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。そして、本件特許明細書の【0016】に「固形カレールウの製造にあたっては、流動性を有する原料混合物を焙煎釜、冷却タンク、及び充填機に順次パイプを介して送る形式の、連続式の製造ラインを用いて行った。」と記載されているから、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項、第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項9について訂正を認める。
第3 特許異議の申立てについて
1 本件発明
本件特許の請求項1~9に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明9」という。)は、訂正された特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
【請求項1】
油脂と固形分とを含んでなる固形ルウであって、
(A)固形ルウの全量に対する砂糖の含有量が8質量%以下であり、
(B)砂糖以外の固形分の含有量に対する油脂の含有量の割合が40質量%以上60質量%以下であり、
(C)高甘味度甘味料を含有し、かつ
(D)甘味量が砂糖換算量で6質量%以上20質量%以下である固形ルウ。
【請求項2】
固形ルウが10質量%以上35質量%以下の小麦粉を含有する、請求項1に記載の固形ルウ。
【請求項3】
調理品一皿あたりに使用される固形ルウの油脂の含有量が3.5g以上6.5g以下である、請求項1又は2に記載の固形ルウ。
【請求項4】
調理品一皿あたりに使用される固形ルウの質量が19.0g以下である、請求項1から3のいずれかに記載の固形ルウ。
【請求項5】
高甘味度甘味料がスクラロースである、請求項1から4のいずれかに記載の固形ルウ。
【請求項6】
高甘味度甘味料の含有量が0.005質量%以上0.020質量%以下である、請求項5に記載の固形ルウ。
【請求項7】
油脂の風味を有する香料を含有する、請求項1から6のいずれかに記載の固形ルウ。
【請求項8】
カレー固形ルウである、請求項1から7のいずれかに記載の固形ルウ。
【請求項9】
油脂と固形分とを含む原料を加熱混合し、油脂の融点を下回る温度に冷却して固化する固形ルウの製造方法であって、(A)固形ルウの全量に対する砂糖の含有量が8質量%以下であり、(B)砂糖以外の固形分の含有量に対する油脂の含有量の割合が40質量%以上60質量%以下であり、(C)高甘味度甘味料を含有し、かつ(D)甘味量が砂糖換算量で6質量%以上20質量%以下である前記原料を用い、
流動性を有する原料混合物を焙煎釜、冷却タンク、及び充填機に順次パイプを介して送る形式の、連続式の製造ラインを用いて行うことを特徴とする固形ルウの製造方法。
2 取消理由の概要
訂正前の請求項1~9に係る特許に対して平成28年10月6日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は次のとおりである。なお、当該取消理由は、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由を全て含んでいる。
(1)請求項1及び9の「(B)砂糖以外の固形分の含有量に対する油脂の含有量の割合が40質量%以上60質量%以下であり」の記載は不明確であるから、請求項1~9に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、特許法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)本件発明1~9は、引用例1に記載された発明、及び、引用例2~10に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
3 引用例
(1)取消理由通知において引用した引用例は次のとおりである。
引用例1(甲第1号証):特開2004-154028号公報
引用例2(甲第2号証):ハウス食品株式会社「プライムバーモントカレー(中辛)」のパッケージ写真及び当該製品についてのニュースリリースのウェブページ出力物
引用例3(甲第3号証):エスビー食品株式会社「カレーハーフとろけるカレー(中辛)」、「カレーハーフゴールデンカレー(中辛)」、「シチューハーフとろけるシチュー(クリーム)」、「シチューハーフとろけるシチュー(ビーフ)」、「とろけるハヤシハーフ」のパッケージ写真
引用例4(甲第4号証):「おいしく食べられる80kcalのレトルトカレー「カロリーコントロールカレー」発売」と題するウェブページの出力物
引用例5(甲第5号証):食品の包装、包装食品技術協会、平成23年3月4日、第42巻、第2号、p.29-32
引用例6(甲第6号証):FFIジャーナル、Vol.215、No.3、2010年8月1日、p.333-337
引用例7(甲第7号証):特開2012-249589号公報
引用例8(甲第8号証):特開2012-217408号公報
引用例9(甲第9号証):特開2012-165759号公報
引用例10(甲第10号証):食品化学新聞、平成23年1月13日
(2)引用例1には、以下の事項が記載されている(「・・・」は記載の省略を意味し、下線は当審による。以下同じ。)。
「【0090】
【実施例】
・・・
【0091】
以下の実施例において、各原料は、以下のものを用いた:油脂:牛脂;小麦粉:市販の薄力粉;果実ペースト:リンゴのペースト、水分含量約28重量%;野菜ペースト:トマトのペースト、水分含量約62重量%;ビーフエキス:市販のビーフエキス、水分含量25重量%;香辛料:クミンパウダー;カレー粉:市販のカレー粉;砂糖:市販のグラニュー糖;食塩:市販の食塩;調味料:市販のL-グルタミン酸ナトリウム;カラメル:市販のカラメル;ホエイパウダー:市販のホエイパウダー;ビーフ系のプリカーサーフレーバー。なお、プリカーサーフレーバーとしては、牛肉、ビーフエキス、調味料、グリセリンおよびビタミンB1を主成分とし、水分含量が約29重量%のものを用いた。
【0092】
(実施例1)
▲1▼予め加熱した開放型の加熱釜に油脂20重量部を投入し、油脂を溶解させた。このとき、溶解した油脂の品温は約60℃であった。次いで、この溶解した油脂に小麦粉20重量部を投入し、混合しながら、約50分間かけて到達品温が130℃になるように加熱して小麦粉ルウを製造した。
【0093】
▲2▼▲1▼で用いた加熱釜とは別の開放型の加熱釜(予め加熱した)に油脂7重量部を投入し、油脂を溶解させた。このとき、溶解した油脂の品温は約60℃であった。次いで、この溶解した油脂に、果実ペースト5重量部、野菜ペースト2重量部、ビーフエキス5重量部および香辛料3重量部を同時に投入し、混合しながら、約50分間かけて到達品温が約110℃になるまで加熱処理して調味材を製造した。調味材の水分含量は5.9重量%であった。
【0094】
▲3▼開放型の冷却釜に上記▲1▼で製造した小麦粉ルウ(約130℃)および▲2▼で製造した調味材(約110℃)を加え、撹拌混合しながらさらに油脂3重量部、カレー粉9重量部、砂糖10重量部、食塩9重量部、調味料5重量部およびカラメル2重量部を順次加え、約50分間かけて品温が60℃になるまで冷却混合処理し、カレールウを製造した。冷却は、原料の添加による冷却および冷却釜による強制冷却であった。得られたカレールウを容器に充填し、20℃になるまで冷却することによって、固形ルウが得られた。この固形ルウの水分含量は4.0重量%であった。」
「【0096】
(実施例2)
▲1▼予め加熱した開放型の加熱釜に油脂25重量部を投入し、油脂を溶解させた。このとき、溶解した油脂の品温は約60℃であった。次いで、この溶解した油脂に小麦粉30重量部を投入し、混合しながら、約50分間かけて到達品温が130℃になるように加熱して小麦粉ルウを製造した。
【0097】
▲2▼▲1▼で用いた加熱釜とは別の開放型の加熱釜(予め加熱した)に油脂3重量部を投入し、油脂を溶解させた。このとき、溶解した油脂の品温は約60℃であった。次いで、この溶解した油脂に、果実ペースト4重量部、野菜ペースト2重量部およびビーフエキス6重量部を同時に投入し、混合しながら、約80分間かけて到達品温が約113℃になるまで加熱処理して調味材を製造した。調味材の水分含量は6.8重量%であった。
【0098】
▲3▼開放型の冷却釜に上記▲1▼で製造した小麦粉ルウ(約130℃)および▲2▼で製造した調味材(約113℃)を加え、撹拌混合しながらさらにカレー粉9重量部、砂糖8重量部、食塩8重量部、調味料2重量部、カラメル2重量部およびホエイパウダー1重量部を順次加え、約60分間かけて品温が60℃になるまで冷却混合処理し、カレールウを製造した。冷却は、原料の添加による冷却および冷却釜による強制冷却であった。得られたカレールウを容器に充填し、20℃になるまで冷却することによって、固形ルウが得られた。この固形ルウの水分含量は4.2重量%であった。」
以上によれば、引用例1には、その実施例1又は実施例2に関し、以下の発明が記載されていると認められる。
「油脂30重量部、小麦粉20重量部、果実ペースト5重量部、野菜ペースト2重量部、ビーフエキス5重量部、香辛料3重量部、カレー粉9重量部、砂糖10重量部、食塩9重量部、調味料5重量部、カラメル2重量部を原料とする、水分含量4.0重量%の固形ルウ。
(但し、果実ペースト:水分含量28重量%のリンゴペースト/野菜ペースト:水分含量62重量%のトマトのペースト/ビーフエキス:水分含量25重量%の市販のビーフエキス)」(以下「引用発明1A」という。)
「油脂28重量部、小麦粉30重量部、果実ペースト4重量部、野菜ペースト2重量部、ビーフエキス6重量部、カレー粉9重量部、砂糖8重量部、食塩8重量部、調味料2重量部、カラメル2重量部、ホエイパウダー1重量部を原料とする、水分含量4.2重量%の固形ルウ。
(但し、果実ペースト:水分含量28重量%のリンゴペースト/野菜ペースト:水分含量62重量%のトマトのペースト/ビーフエキス:水分含量25重量%の市販のビーフエキス)」(以下「引用発明1B」という。)
「加熱釜に油脂20重量部、小麦粉20重量部を投入し、混合しながら、加熱して小麦粉ルウを製造し、別の加熱釜に油脂7重量部、果実ペースト5重量部、野菜ペースト2重量部、ビーフエキス5重量部および香辛料3重量部を投入し、混合しながら加熱処理して調味材を製造し、上記小麦粉ルウおよび調味材を撹拌混合しながらさらに油脂3重量部、カレー粉9重量部、砂糖10重量部、食塩9重量部、調味料5重量部およびカラメル2重量部を順次加え、冷却混合処理し、得られたカレールウを容器に充填し、20℃になるまで冷却することによって、水分含量4.0重量%の固形ルウを製造する方法。
(但し、果実ペースト:水分含量28重量%のリンゴペースト/野菜ペースト:水分含量62重量%のトマトのペースト/ビーフエキス:水分含量25重量%の市販のビーフエキス)」(以下「引用発明1C」という。)
「加熱釜に油脂25重量部、小麦粉30重量部を投入し、混合しながら、加熱して小麦粉ルウを製造し、別の加熱釜に油脂3重量部、果実ペースト4重量部、野菜ペースト2重量部およびビーフエキス6重量部を投入し、混合しながら加熱処理して調味材を製造し、上記小麦粉ルウおよび調味材を撹拌混合しながらさらにカレー粉9重量部、砂糖8重量部、食塩8重量部、調味料2重量部、カラメル2重量部およびホエイパウダー1重量部を順次加え、冷却混合処理し、得られたカレールウを容器に充填し、20℃になるまで冷却することによって、水分含量4.2重量%の固形ルウを製造する方法。
(但し、果実ペースト:水分含量28重量%のリンゴペースト/野菜ペースト:水分含量62重量%のトマトのペースト/ビーフエキス:水分含量25重量%の市販のビーフエキス)」(以下「引用発明1D」という。)
(3)引用例2には、「カロリー50%オフ」、「1皿分(製品14.3g)」との記載があり、品名に「カレールウ」、原材料名に「甘味料(スクラロース)」の記載がある。
(4)引用例3には、「カロリー50%オフ」、「1皿分(ルウ14.5g)」又は「1皿分(ルウ14g)」との記載があり、品名に「カレールウ(パウダータイプ)」又は「シチュールウ(パウダータイプ)」又は「ハヤシルウ(パウダータイプ)」、原材料名に「甘味料(スクラロース)」の記載がある。
(5)引用例4には、「おいしく食べられる80kcalのレトルトカレー「カロリーコントロールカレー」発売」、「砂糖、小麦粉を一切使わず、低カロリーの甘味料(スクラロース)を使用してカロリーを抑えました。一般的なカレーと比較して半分以下※のカロリーです。」の記載がある。
(6)引用例5には、以下の事項が記載されている。
「スクラロースは・・・その最大の特長は、砂糖に近いまろやかでコクのある甘味質と砂糖の約600倍という甘味の強さ・・・」(29頁左欄7~11行)
「砂糖の代わりにスクラロースを使用することによって、使用量が数百分の1になるため、甘味コストの低減や、保管スペースの節約、製造時の作業効率の向上、輸送費の削減等、コストの削減につなげることができる。」(30頁左欄3~7行)
「(6) 風味の向上
スクラロースの使用により、フレーバーを強め、食品の風味を向上させることができる。粘度の高い食品や、固体状の食品では、味の発現が弱くなり、フレーバーが弱く感じられることがある。このような場合に、砂糖の一部をスクラロースに置き換えたり、スクラロースを上乗せすることで、フレーバーが強調された食品を作ることができる。」(31頁右欄下から15~9行)
(7)引用例6には、以下の事項が記載されている。
「スクラロースの主な特長を以下に示します。
・砂糖に近い味質のノンカロリー高甘味度甘味料。
・甘味度は砂糖の約600倍。」(334頁左欄15~17行)
「粘度の高い調味料等では味の発現が弱くなり、風味が弱く感じられることがありますが、このような場合に、砂糖の一部をスクラロースに置き換えることで、フレーバーが強調された調味料を作ることができます。」(334頁右欄25~29行)
「<カレー>
スクラロース、ソーマチンには風味を高める効果があり、特にスパイス感の改良効果は顕著です。・・・砂糖をスクラロースに置き換えることにより、カレーの香味が強く感じられます。」(337頁左欄5~9行)
(8)引用例7には、以下の事項が記載されている。
「【0053】
(カレーソースの評価)
カレールウ用の油脂として、実施例1~5の油脂、比較例1~5の油脂を使用し、以下の方法により、カレールウ及びカレーソースを調製した。
各油脂100g及び小麦粉100gを、加熱攪拌鍋に入れ、かき混ぜながら120℃に達するまで加熱した。次に各油脂及び小麦粉の混合物を、攪拌混合しながら品温を約110℃まで下げ、カレー粉30g、食塩28g、調味料26g、砂糖17gを順次添加し、さらに攪拌混合することでカレールウを調製した。更にカレールウを攪拌しながら品温60℃まで冷却した後、ポリプロピレン製の型に流し込み、冷蔵庫で冷却することで固形カレールウを調製した。」
上記固形カレールウの砂糖の含有量は5.6%(=17/(100+100+30+28+26+17))である。
(9)引用例8には、以下の事項が記載されている。
「【0057】
(カレーソースの評価)
カレールウ用の油脂として、実施例1~5の油脂、比較例1~5の油脂を使用し、以下の方法により、カレールウ及びカレーソースを調製した。
各油脂100g及び小麦粉100gを、加熱攪拌鍋に入れ、かき混ぜながら120℃に達するまで加熱した。次に各油脂及び小麦粉の混合物を、攪拌混合しながら品温を約110℃まで下げ、カレー粉30g、食塩28g、調味料26g、砂糖17gを順次添加し、さらに攪拌混合することでカレールウを調製した。更にカレールウを攪拌しながら品温60℃まで冷却した後、ポリプロピレン製の型に流し込み、冷蔵庫で冷却することで固形カレールウを調製した。」
上記固形カレールウの砂糖の含有量は5.6%(=17/(100+100+30+28+26+17))である。
(10)引用例9には、以下の事項が記載されている。
「【要約】
・・・具体的には本発明は、スクラロースを含有する組成物であって、スクラロースの特性に基づいて・・・風味が改善された食品組成物、味質が改善された保存料及び食品組成物、フレーバー感が改善された香気性組成物を提供するものである。」(1頁)
「実施例(IV-7-7) レトルトカレー
スクラロース 0.0008(kg)
玉葱(みじん切り) 7.00
・・・ ・・・
合 計 100.00kg
上記の処方でレトルトカレーを調製した。・・・得られたレトルトカレーは、スパイス感が引き立ち、こくのあるものであった。」(117頁)
(11)引用例10には、「▽スクラロース ・・・ 飲料のほかは、塩味系食品、カレールー、医薬部外品などでエンハンスやマスキングといった効果を目的とした採用例が増えている。」との記載がある。
4 特許法第29条第2項について
(1)本件発明1について
ア 対比
引用発明1Aに関し、引用例1の【0093】によれば、調味材の原料は、油脂7重量部、果実ペースト5重量部、野菜ペースト2重量部、ビーフエキス5重量部および香辛料3重量部であり、該原料中の水分含量は、5重量部×28%+2重量部×62%+5重量部×25%=3.89重量部である。ところが、調味材の水分含量は5.9重量%であったのだから(【0093】)、調味材の製造時に水分が2.75重量部蒸発したということになる(蒸発した水分をx重量部とすると、(3.89-x)/(22-x)=5.9% より算出できる。)。よって、引用発明1Aの固形ルウは、全量が97.25重量部であり、水分を3.89重量部(=97.25×4.0%)含んでいる。
そうすると、引用発明1Aの固形ルウは、
(A)固形ルウの全量に対する砂糖の含有量が10.3質量%(=10/97.25)であり、
(B)砂糖以外の固形分の含有量に対する油脂の含有量の割合が56.2質量%(=30/(97.25-30-3.89-10))である。
同様に、引用発明1Bに関し、調味材の製造時に蒸発した水分は3.05重量部であるから、引用発明1Bの固形ルウは、全量が96.95重量部であり、水分を4.07重量部含んでいる。
そうすると、引用発明1Bの固形ルウは、
(A)固形ルウの全量に対する砂糖の含有量が8.3質量%(=8/96.95)であり、
(B)砂糖以外の固形分の含有量に対する油脂の含有量の割合が49.2質量%(=28/(96.95-28-4.07-8))である。
引用発明1A及び引用発明1Bの固形ルウが、いずれも油脂と固形分とを含んでいることは明らかである。
上記のとおり、引用発明1Aは、「砂糖の含有量が10.3質量%」であり、引用発明1Bは、「砂糖の含有量が8.3質量%」であって、これらは、いずれも本件発明1の「甘味量が砂糖換算量で6質量%以上20質量%以下である」に相当する。
また、上記のとおり、引用発明1Aは、「(B)砂糖以外の固形分の含有量に対する油脂の含有量の割合が56.2質量%」であり、引用発明1Bは、「(B)砂糖以外の固形分の含有量に対する油脂の含有量の割合が49.2質量%」であって、これらは、いずれも本件発明1の「(B)砂糖以外の固形分の含有量に対する油脂の含有量の割合が40質量%以上60質量%以下」に相当する。
よって、本件発明1と引用発明1A又は引用発明1Bとの一致点、相違点は以下のとおりである。
[一致点]
油脂と固形分とを含んでなる固形ルウであって、
(B)砂糖以外の固形分の含有量に対する油脂の含有量の割合が40質量%以上60質量%以下であり、
(D)甘味量が砂糖換算量で6質量%以上20質量%以下である固形ルウ。
[相違点1]
本件発明1が「(A)固形ルウの全量に対する砂糖の含有量が8質量%以下であり」、「(C)高甘味度甘味料を含有」するのに対し、引用発明1A又は引用発明1Bは、砂糖の含有量が10.3質量%又は8.3質量%であって、高甘味度甘味料を含有しない点。
イ 判断
固形ルウにおいて、スクラロースは甘味料として慣用されており(引用例2、3)、低カロリーを訴求したカレールウないしレトルトカレーにおいて、スクラロースを配合したものが周知であった(引用例2~4)。
また、スクラロースについて、砂糖の約600倍の甘味を有し、使用量がその分削減されるため、物流、包材等のコストが削減できること(引用例5、6)、カレー等の粘度の高い製品の風味を高める効果を有すること(引用例5、6、9)、エンハンス効果を目的としてカレールウに採用する例が増えていること(引用例10)が、いずれも周知であったと認められる。
そうすると、引用発明1A又は引用発明1Bの固形ルウにおいて、使用量の削減、風味の向上、低カロリー化等を目的として、砂糖の一部をスクラロースに置き換える動機付けが存在するといえる。
そして、固形ルウの全量に対する砂糖の含有量が8質量%以下であるカレールウが知られていること(引用例7、8)や、スクラロースは砂糖の約600倍の甘味を有することから、極少量のスクラロースの添加で砂糖を大幅に低減できることを踏まえると、引用発明1A又は引用発明1Bの砂糖の一部をスクラロースに置き換えることにより、砂糖の含有量を「8質量%以下」に減らすことは、当業者が容易に想到し得たことである。
なお、引用発明1A又は引用発明1Bの砂糖の一部をスクラロースに置き換えても、スクラロースの添加量は極少量であるから、砂糖以外の固形分の含有量は大きく変化せず、砂糖以外の固形分の含有量に対する油脂の含有量の割合も大きく変化しない。
よって、上記相違点1に係る本件発明1の構成は、引用発明1A又は引用発明1Bにおいて、上記周知技術を勘案して、砂糖の一部をスクラロースに置き換えることにより、当業者が容易に想到し得たものである。
そして、本件発明1が、引用発明1A又は引用発明1B、及び、周知技術から予測できない格別顕著な効果を奏するものとは認められない。
特許権者は「本件特許発明では・・・減容化されていても一連の製造時の流動性を損なうことなく、かつ風味と香味のバランスに優れた固形ルウを得ることができる。工業的かつ安定に上記の性能を有する固形ルウを得ることができる効果は、当業界において格段の効果である。」(平成28年12月12日付け意見書6頁下から7~1行)、「製造適性に優れる効果は、本件発明の「固形ルウ」の効果と認めるべきである。」(平成29年7月10日付け意見書5頁末行~6頁1行)と主張する。
しかし、特許権者が主張する上記の効果は、本件特許明細書に「固形カレールウの製造にあたっては、流動性を有する原料混合物を焙煎釜、冷却タンク、及び充填機に順次パイプを介して送る形式の、連続式の製造ラインを用いて行った。」(【0016】)と記載されているとおりの製造方法により製造した場合の効果にすぎない。本件発明1は、「固形ルウ」という物の発明であって、上記製造方法が特定されたものではなく、換言すれば、上記製造方法によらずに製造された固形ルウをも包含するのであるから、上記効果を本件発明1の効果と認めることはできない。よって、上記特許権者の主張は採用できない。
さらに、特許権者は、本件特許明細書に記載された実施例1と比較例1とを比べて、「本件発明において、スクラロースは単に砂糖の甘味補填のために含まれるのではなく、砂糖及びスクラロースは、固形ルウにおいて、他の原料との相互作用により甘味、風味を形成していることがわかる。」(平成29年7月10日付け意見書4頁14~末行)と主張する。
しかし、比較例1は実施例1に比べて油脂が少ないことから、本件特許明細書の【0019】に記載された「風味」の評価について、「油脂感が不足する」と評価されたものと認められ、当業者が普通に予測し得た結果といえる。よって、上記特許権者の主張は採用できない。
ウ まとめ
したがって、本件発明1は、引用発明1A又は引用発明1B、及び、周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(2)本件発明2について
引用発明1Aの小麦粉の含有量は20.6質量%(=20/97.25)、引用発明1Bの小麦粉の含有量は30.9質量%(=30/96.95)であり、このことは本件発明2の「10質量%以上35質量%以下の小麦粉を含有する」に相当する。
よって、本件発明2と引用発明1A又は引用発明1Bとを対比すると、両者は前記(1)で検討した相違点1でのみ相違する。
したがって、前記(1)で検討したのと同様に、本件発明2は、引用発明1A又は引用発明1B、及び、周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)本件発明3、4について
本件発明3と引用発明1A又は引用発明1Bとを対比すると、両者は前記相違点1に加え、次の点で相違する。
[相違点2]
本件発明3が「調理品一皿あたりに使用される固形ルウの油脂の含有量が3.5g以上6.5g以下である」と特定されているのに対し、引用発明1A又は引用発明1Bはそのように特定されていない点。
また、本件発明4と引用発明1A又は引用発明1Bとを対比すると、両者は前記相違点1に加え、次の点で相違する。
[相違点3]
本件発明4が「調理品一皿あたりに使用される固形ルウの質量が19.0g以下である」と特定されているのに対し、引用発明1A又は引用発明1Bはそのように特定されていない点。
引用例2、3によれば、調理品一皿あたりに使用されるルウの質量を19.0g以下とすることは普通のことと認められる。
よって、引用発明1A又は引用発明1Bの固形ルウについて、調理品一皿あたりに使用される固形ルウの質量を19.0g以下とすること、すなわち、上記相違点3に係る本件発明4の構成とすることは、当業者が適宜決定し得た設計事項にすぎない。
また、引用発明1Aの固形ルウ14~19gあたりの油脂の含有量は4.3~5.9g(=30/97.25×14~19g)、引用発明1Bの固形ルウ14~19gあたりの油脂の含有量は4.0~5.5g(=28/96.95×14~19g)であるから、引用発明1A又は引用発明1Bにおいて、調理品一皿あたりに使用される固形ルウの油脂の含有量を3.5g以上6.5g以下とすること、すなわち、上記相違点2に係る本件発明3の構成とすることも、当業者が適宜決定し得た設計事項にすぎない。
したがって、本件発明3、4は、引用発明1A又は引用発明1B、及び、周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)本件発明5について
本件発明5と引用発明1A又は引用発明1Bとを対比すると、両者は前記相違点1に加え、次の点で相違する。
[相違点4]
本件発明5は、「高甘味度甘味料がスクラロースである」と特定されているのに対し、引用発明1A又は引用発明1Bは、高甘味度甘味料を含有しない点。
前記(1)で検討したように、引用発明1A又は引用発明1Bにおいて、砂糖の一部をスクラロースに置き換えることは当業者が容易に想到し得たことである。
よって、本件発明5は、引用発明1A又は引用発明1B、及び、周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)本件発明6について
本件発明6と引用発明1A又は引用発明1Bとを対比すると、両者は前記相違点1、相違点4に加え、次の点で相違する。
[相違点5]
本件発明6は、「高甘味度甘味料の含有量が0.005質量%以上0.020質量%以下である」と特定されているのに対し、引用発明1A又は引用発明1Bは高甘味度甘味料を含有しない点。
スクラロースは砂糖の約600倍の甘味を有することを踏まえると、引用発明1Aの砂糖の含有量10.3質量%は、スクラロースの含有量0.017質量%に相当し、引用発明1Bの砂糖の含有量8.3質量%は、スクラロースの含有量0.014質量%に相当するといえる。
上記の計算を参考にすれば、引用発明1A又は引用発明1Bにおいて、砂糖の一部をスクラロースに置き換えるにあたり、スクラロースの含有量を、0.005質量%以上0.020質量%以下の範囲内で決定することは、当業者が容易に想到し得たことである。
よって、本件発明6は、引用発明1A又は引用発明1B、及び、周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(6)本件発明7について
本件発明7と引用発明1A又は引用発明1Bとを対比すると、両者は前記相違点1に加え、次の点で相違する。
[相違点6]
本件発明7は、「油脂の風味を有する香料を含有する」と特定されているのに対し、引用発明1A又は引用発明1Bはそのように特定されていない点。
固形ルウに、嗜好に応じて適宜の香料を添加することにより、上記相違点6に係る構成となすことは、単なる設計事項にすぎない。
よって、本件発明7は、引用発明1A又は引用発明1B、及び、周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(7)本件発明8について
引用発明1A及び引用発明1Bの「固形ルウ」は、カレー粉を配合したものであるから、本件発明8の「カレー固形ルウ」に相当する。
よって、本件発明8と引用発明1A又は引用発明1Bとを対比すると、両者は前記相違点1でのみ相違する。
したがって、前記(1)で検討したのと同様に、本件発明8は、引用発明1A又は引用発明1B、及び、周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。
(8)本件発明9について
引用発明1Cの「加熱釜に油脂20重量部、小麦粉20重量部を投入し、混合しながら、加熱」すること及び「別の加熱釜に油脂7重量部、果実ペースト5重量部、野菜ペースト2重量部、ビーフエキス5重量部および香辛料3重量部を投入し、混合しながら加熱処理」することは、本件発明9の「油脂と固形分とを含む原料を加熱混合」することに相当する。
引用発明1Cの「得られたカレールウを容器に充填し、20℃になるまで冷却する」は、本件発明9の「油脂の融点を下回る温度に冷却して固化する」に相当する。
引用発明1Dについても同様である。
さらに、前記(1)アの検討も踏まえると、本件発明9と引用発明1C又は引用発明1Dとの一致点、相違点は以下のとおりである。
[一致点]
油脂と固形分とを含む原料を加熱混合し、油脂の融点を下回る温度に冷却して固化する固形ルウの製造方法であって、(B)砂糖以外の固形分の含有量に対する油脂の含有量の割合が40質量%以上60質量%以下であり、(D)甘味量が砂糖換算量で6質量%以上20質量%以下である前記原料を用いる固形ルウの製造方法。
[相違点7]
本件発明9が「(A)固形ルウの全量に対する砂糖の含有量が8質量%以下であり」、「(C)高甘味度甘味料を含有」するのに対し、引用発明1C又は引用発明1Dは、砂糖の含有量が10.3質量%又は8.3質量%であって、高甘味度甘味料を含有しない点。
[相違点8]
本件発明9の固形ルウの製造方法が「流動性を有する原料混合物を焙煎釜、冷却タンク、及び充填機に順次パイプを介して送る形式の、連続式の製造ラインを用いて行う」ものであるのに対し、引用発明1C又は引用発明1Dは、このような連続式の製造ラインを用いて行うものではない点。
相違点7は、実質的に前記(1)に示した相違点1と同じであり、その判断も(1)に示したのと同様である。
相違点8に係る連続式の製造ラインを用いて製造することについては、引用例1~10に記載されていない。そして、「一般に、固形ルウを減容化するために、油脂や各種固形分の含有量を低減させた場合、固形ルウ製造時の原料混合物の流動性や、風味や香味のバランスが損なわれることが従来知られていた。」(本件特許明細書【0003】)という背景技術を前提に、本件発明9は、「減容化を効果的に実現させつつも、製造時の原料混合物の流動性が十分に維持されて製造適性が損なわれること無く、風味や香味のバランスにも優れるものであった。」(本件特許明細書【0021】)という、上記のような連続式の製造ラインを用いて製造する際の製造適性が損なわれないという作用効果を奏するものである。
よって、相違点8に係る本件発明9の構成は、引用発明1C又は引用発明1Dに基いて当業者が容易に想到し得たとはいえない。
特許異議申立人は、相違点8に係る連続式の製造ラインは、甲第11号証(特開2004-8043号公報)に記載されている旨を主張する(平成29年8月10日付け意見書5頁下から5行~7頁6行)。しかし、引用発明1C又は引用発明1Dの原料配合が、上記連続式の製造ラインを用いて製造する際にも原料混合物の流動性が十分に維持されて製造適性が損なわれないものであることは、引用例1にも、甲第11号証にも示唆されていないから、甲第11号証の記載事項を考慮しても、相違点8に係る本件発明9の構成を当業者が容易に想到し得たとはいえない。
したがって、本件発明9は、引用発明1C又は引用発明1D、及び、引用例1~10、甲第11号証の記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
5 特許法第36条第6項第2号について
請求項9の「(B)砂糖以外の固形分の含有量に対する油脂の含有量の割合が40質量%以上60質量%以下であり」との記載に関し、本件特許明細書の段落【0009】~【0011】には、「固形分」及び「油脂」について、以下のとおり記載されている。
「本明細書において、「固形分」とは、固形ルウを構成する成分のうち、油脂と水分とを除いた成分を指す。」(【0009】)
「固形ルウ全体に対する油脂の含有量は、前述の油脂の他に、調味原料等に含まれる油脂を含めた油脂の総質量が、固形ルウの質量に対して占める割合を指す。上記の油脂の含有量は、おおよそ包装容器に表示される脂質の割合に相当する。」(【0010】)
「固形分は、固形ルウ中の油脂及び水を除いた部分を指す。固形ルウ全体に対する固形分の含有量は、(固形ルウの質量-固形ルウ中の油脂及び水の含有量)÷固形ルウの質量、によって求められる。この場合に、固形ルウ中の油脂及び水の含有量は、例えば固形ルウの包装容器に表示される脂質の割合と、分析される固形ルウの水の割合とに基づいて求めることができる。」(【0011】)
上記各記載は、「固形分」及び「油脂」の意味を定義しているものと認められ、当該定義を踏まえれば、請求項9の「(B)砂糖以外の固形分の含有量に対する油脂の含有量の割合」の意味は明確である。
特許異議申立人は、本件特許明細書において実施例の結果を示す「表1」では、調味原料等に含まれる油脂や固形ルウに含まれる水分を考慮していない旨を主張するが、仮にそうだとしても、上記のとおり、本件特許明細書において「固形分」及び「油脂」の意味が定義されているから、請求項9の「(B)砂糖以外の固形分の含有量に対する油脂の含有量の割合」は、当該定義に従って理解でき、不明確なところはない。
よって、請求項9の記載は明確であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとはいえない。
第4 むすび
以上のとおり、本件発明1~8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
本件発明9に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、取り消すことはできない。また、他に本件発明9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2016-700584