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特許異議申立

2025-700695

乾燥ハーブ及びその製造方法

審判番号
2025-700695
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-063588
登録番号
7616828
請求日
2025年07月07日
審決日
2025年12月24日
公報発行日
2026年02月27日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】ハウス食品株式会社
  • 【権利者代理人】田中 伸一郎
  • 【権利者代理人】須田 洋之
  • 【権利者代理人】山崎 一夫
  • 【権利者代理人】服部 博信
  • 【権利者代理人】松田 七重
  • 【権利者】ハウス食品グループ本社株式会社
  • 【権利者代理人】田中 伸一郎
  • 【権利者代理人】須田 洋之
  • 【権利者代理人】山崎 一夫
  • 【権利者代理人】服部 博信
  • 【権利者代理人】松田 七重
  • 【異議申立人】齊藤 雄一
審判長/審判官
  • 審判長 松田 成正
  • 審判官 加藤 友也
  • 審判官 天野 宏樹
分類
P1651.121-Y (A23L) / P1651.537-Y (A23L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7616828号発明「乾燥ハーブ及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7616828号の請求項1~6に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7616828号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願は、令和2年3月31日の出願であって、令和7年1月8日にその特許権の設定登録(請求項の数6)がされ、同年同月17日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対して、同年7月7日に特許異議申立人齊藤雄一(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立て(対象:全請求項)がされたものである。 その他の手続の経緯は以下のとおりである。 令和7年 9月 5日付け:手続補正指令書(方式) 同年 9月30日 :特許異議申立書の手続補正書(方式) 以下において、令和7年9月30日に提出された手続補正書(方式)により補正された申立人が提出した特許異議申立書を「申立書」という。 第2 本件発明について 本件特許の請求項1~6に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明6」という。まとめて、「本件発明」ということもある。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 なお、以下において、隅付き括弧は「[ ]」と表記した。 「[請求項1] 生のハーブの酵素を失活させる工程と、 前記酵素を失活させる工程の後に、前記ハーブを乾燥する工程と、 を備える、 乾燥ハーブの製造方法であって、 前記酵素を失活させる工程が、前記生のハーブを30秒~5分間蒸す工程であり、 前記乾燥する工程が、前記ハーブを撹拌する工程を含み、 前記ハーブがバジル、わさび葉、紫蘇、パクチー、ローズマリー、ルッコラ、セルバチカ、タイム、チャービル、セイジ、ディル、ミント、イタリアンパセリ、オレガノ、マジョラム、フェンネル、セイボリー、コリアンダー、タラゴン、チャイブ、及びレモングラスから選択される少なくとも1種であり、 前記蒸す工程の後、前記乾燥する工程の前に、前記ハーブを0~30℃まで風冷する工程を備え、塩類及び/又は糖を使用しない、製造方法。 [請求項2] 更に、前記風冷する工程の後、前記乾燥する工程の前に、前記ハーブを0℃以下で冷凍する工程を備える、請求項1に記載の乾燥ハーブの製造方法。 [請求項3] 前記乾燥する工程が、60~130℃で行われる、請求項1又は2に記載の方法。 [請求項4] 前記乾燥する工程が、前記ハーブの水分量が0.1~10質量%になるように実施される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。 [請求項5] 請求項1~4のいずれか一項に記載された方法により、乾燥ハーブを製造する工程と、 前記乾燥ハーブを、他の飲食品材料に添加する工程と、 を含む、飲食品の製造方法 [請求項6] 請求項1~4のいずれか一項に記載された方法により、乾燥ハーブを製造する工程と、 前記乾燥ハーブを液体と混合し、液相に成分を抽出する工程と、 を含む、飲料の製造方法。」 第3 特許異議申立理由の概要 申立人は、証拠方法として下記2.に示す甲第1号証~甲第10号証(以下、「甲1」~「甲10」という。)を提出し、概略、以下の特許異議申立理由を主張している。なお、特許異議申立理由の番号は当審が仮に付与した。 1.特許異議申立理由 (1)理由1-1(甲1に基づく進歩性欠如) 本件発明1~6は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲1に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (2)理由1-2(甲3に基づく進歩性欠如) 本件発明1~6は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲3に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (3)理由1-3(甲4に基づく進歩性欠如) 本件発明1~6は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲4に記載された発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 (4)理由2(サポート要件違反) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、本件発明1~6についての特許は同項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 ア 「乾燥する工程」について 本件発明1は「乾燥する工程」を含んでいるが、いずれも乾燥条件は特定されていない。一方、本件発明3では乾燥工程は60~130℃で行われることとされている。ここで、本件明細書の[0015]の記載によれば、例えば、130℃を超える温度で乾燥した場合ハーブが焦げてしまい目的の風味だけでなく、本件特許発明の目的である鮮やかな緑色を保持する乾燥ハーブを得ることができないことを示したものと解される。しかしながら、本件発明1では乾燥条件が特定されていないため、ハーブが焦げて鮮やかな緑色が保持できない乾燥条件を含むものとなっている。したがって、本件発明1は発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものである。請求項1を引用する請求項2、4~6も同様である。 イ 「ハーブ」について 本件発明1に特定されるハーブのうち、実施例による効果が記載されているのはバジルのみである(本件明細書の[0039]~[0052])。バジル以外のハーブについては分析どころか、実施例による効果の確認すら示されていない。ハーブごとに葉の形状、硬さ、香り等の特性はそれぞれ相違しているのは説明するまでもないことであり、バジルの分析結果がそのまま他のハーブにも当てはまるというわけではない。したがって、本件発明1は発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものである。請求項1を引用する請求項2~6も同様である。 ウ 「ローズマリー」について 特許権者は令和6年10月11日に提出した2回目の意見書(甲10)において、「「そもそも、本発明において特定されるハーブは、オリーブの葉と異なり、バジル等の柔らかい植物です。・・・」と主張している。すなわち、本件発明1に特定された各種のハーブはバジルの葉のように柔らかい葉であると主張している。しかしながら、甲6(第90ページ中段)に「<葉>ローズマリーの葉は固いので、どんな料理に使う場合も細かく刻みましょう」と記載されているように、ローズマリーは固い葉であり、しかも、葉の形状もバジルとは異なり針状である。そもそも、本件発明の詳細な説明における実施例はバジルのみであって、他のハーブについては全く示されていない。したがって、特許権者の主張と異なる性状のハーブであるローズマリーを含む本件発明1は発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものである。請求項1を引用する請求項2~6も同様である。 また、本件明細書においてはバジル以外のハーブについて全く検証が行われていないため、単に請求項1からローズマリーを削除すればサポート要件が満たされるというものではなく、本来は請求項1に列記された各ハーブの葉の硬さを含む色や風味などの物性がどのようになっているのかを明記すべきものであるから、本件発明1は発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものである。請求項1を引用する請求項2~6も同様である。 エ 「撹拌する工程」について 本件発明1は「ハーブを撹拌する工程」を含んでいるが、撹拌条件が特定されていない。本件明細書の[0015]及び[0025]の記載、並びに特許権者の2回目の拒絶理由通知書に対する意見書(甲10)における、「本発明においては、乾燥時の撹拌は、ハーブの組織を壊し、旨味をより強くする目的で行います(0015)。」との主張によれば、「撹拌」はハーブの組織が破壊されるような強度で行われることが必須であり、ハーブの組織が壊されるような強度(撹拌速度・撹拌時間など)で撹拌されなかった場合には、得られた乾燥ハーブはその旨味を強くすることはできず、また、乾燥させるのに必要な時間を短くすることもできないことになる。一方、食品用の撹拌装置においては、撹拌条件は原料の状態や目的によって適宜に設定することが可能であり、一例として甲7には、「タッチパネルでドラムの回転、スイングの速度をゆっくり、傾く範囲も制限を掛ける事で、原料にダメージを少なく混ぜる事が可能です。」と記載されている。このような撹拌条件では、ハープの組織は壊されないため、得られた乾燥ハーブの旨味は強くならない蓋然性が極めて高いといえる。しかしながら、本件発明1では撹拌条件が特定されていないため、撹拌速度を極端に遅くした場合や、撹拌時間を極端に短くした場合、或いは、撹拌機を用いずに手で軽く混ぜた場合などといった、ハーブの組織が壊されないような撹拌条件をも含むものとなっている。したがって、本件発明1は発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものである。請求項1を引用する請求項2~6も同様である。 オ 「冷凍する工程」について 本件発明2は冷凍工程を備えるが、本件発明1にはこの冷凍工程は含まれていない。ここで、本件明細書の[0013]の記載からすれば、本件発明1において、風冷する工程と乾燥する工程の間までの時間が長い場合には、ハーブの鮮度が落ち、色や風味が劣化することが容易に理解される。そうとすれば、風冷する工程と乾燥する工程までの時間はハーブの色や風味を保持できるか否かの重要な要件であり、この時間を特定しない場合には得られた乾燥ハーブは鮮やかな緑色とすることができず、風味も劣化したものが含まれてしまうことが容易に推察される。したがって、本件発明1は、発明の目的である鮮やかな緑色をした乾燥ハーブを得ることができないような発明を含んだものであって、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものである。請求項1を引用する請求項3~6も同様である。 カ 「水分含量」について 本件発明4は、本件発明1~3のいずれか1項を引用する発明であるが、引用する本件発明1、2においては乾燥条件を特定していない。そのため、本件発明4で特定する、例えば、水分含量0.1質量%とすることが可能な各種の乾燥方法が含まれることになる。そうとすれば、本件発明4は、例えば、本件発明3において特定する60~130℃を超えるような温度で水分含量を0.1質量%とするような乾燥も含むことになる。しかしながら、そのような乾燥温度では、上記したように、ハーブが焦げてしまい本件発明の本来の目的である鮮やかな緑色を保持する乾燥ハーブを得ることができないだけでなく、風味も損なわれてしまうことは明らかである。また、実施例1~3に示された乾燥ハーブの水分含量は2~3質量%であるところ、本件明細書においては、例えば、水分含量が0.1質量%となるまで乾燥した場合に、本件発明の目的である鮮やかな緑色を保持することができるのかについては何ら検証がなされていない。したがって、本件発明1、2は発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものである。請求項1、2を引用する請求項5、6も同様である。 2.証拠方法 甲1:特開2002-85010号公報 甲2:特開昭58-170450号公報 甲3:特開2016-10391号公報 甲4:特開2003-33151号公報 甲5:特開2010-88326号公報 甲6:ジル・ノーマン,水野仁輔監修翻訳,"世界のハーブ&スパイス大事典",1刷,株式会社主婦と生活社,2017年7月24日,p.90,"ローズマリー" 甲7:株式会社タテックス,"FAQ よくあるご質問",[online],株式会社タテックス公式HP,"混合器ミキサー|粉体・液体",2025年5月12日ダウンロード,<URL:http://www.tatechs.jp/#faq> 甲8:特許第7616828号公報 甲9:拒絶理由通知書(特許出願「2020-063588」,特許庁,起案日令和6年8月13日 甲10:意見書(特許出願「2020-063588」,ハウス食品株式会社,ハウス食品グループ本社株式会社,提出日令和6年10月11日 第4 当審の判断 当審は、申立人が申し立てたいずれの特許異議申立理由によっても、本件発明1~6についての特許を取り消すことはできないと判断する。理由は以下のとおりである。 1.理由1-1(甲1に基づく進歩性欠如)について (1)甲1に記載された事項 甲1には以下の事項が記載されている。 (1-1)「[請求項1] 以下の工程: (a)ケールを1~5cm幅に細片化する工程;および(b)乾燥面1m2当たり細片化したケール5~15kg(処理前生葉重量換算)を乾燥機内に配置し、30~60℃、風速0.1~5.0m/sの熱風で細片化したケールを乾燥する工程;を含む、ケールの乾燥粉末の製造方法。」 (1-2)「[0001] [発明の属する技術分野]本発明は、ケールの乾燥粉末を製造する方法に関する。 [0002] [従来の技術]健康志向の高揚とともに、近年、各種の健康食品が案出され、市販されている。そのうち、ケールは、いわゆる「青汁」として簡易に野菜成分を摂取できる健康食品として注目されている。 [0003]ケールの青汁には、様々な製品がある。例えば、ケールの乾燥粉末を、消費者の好みに合わせて、水、お湯、牛乳などに溶かして飲用する製品が市販されている。 ・・・ [0005]ケールの生葉の色は、本来、鮮やかな緑色である。健康食品という特性上、製品は、ケールの生葉と同じ程度の緑色を保持しておくのが、一般消費者から好まれている。 [0006] [発明が解決しようとする課題]そこで、短時間で、効率よく、緑色を保持したケールの乾燥粉末を製造する方法が望まれている。」 (1-3)「[0012]本発明においては、乾燥工程では、緑色および風味を維持し、短時間で効率よく乾燥するために特定の方法が採用されることも特徴の一つである。 [0013]さらに、緑色保持の観点から、ケールをブランチング処理する工程が、必要に応じて、細片化処理の前、あるいは後に、組み込まれる。ブランチング処理は、細片化処理後行われることが好ましい。 [0014]このように、本発明におけるケールの乾燥粉末の製造方法は、ケールの細片化と特定の乾燥条件を含むことが特徴である。以下、水洗-細片化-ブランチング処理-特定条件下での乾燥-粉砕の順で説明するが、本発明がこの順序に限定されないことはいうまでもない。」 (1-4)「[0017]ブランチング処理および急冷処理工程 本発明の方法においては、上記のように処理された細片化物をブランチング処理することが好ましい。ブランチング処理には、熱水、蒸気などが用いられる。熱水に、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、塩化ナトリウムを単独で、2種類組合せて、あるいは3種類組合せて、含有させてもよい。 [0018]熱水によるブランチング処理は、80~100℃の熱水に細片化物を1~5分間浸漬して行われる。炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、塩化ナトリウムを含有させる場合には、それぞれ、0.05~5.0重量%となるように含有させることが好ましい。熱水のみによるブランチングと比較して、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、塩化ナトリウムを熱水に含有させてブランチングを行うと、ケールの緑色が映えるとともに、心地よい風味を呈するようになる。 [0019]ブランチング処理後の細片化されたケールは、直ちに冷却されることが好ましい。冷却は、当業者が通常用いる方法(例えば、浸漬、水冷、風冷など)を用いて行われる。浸漬により冷却する場合、好ましくは4~10℃の水を用いて行われる。浸漬時間は、細片化物の処理量に応じた任意の時間で行われる。風冷による冷却としては、冷風による冷却、蒸発潜熱を利用する温風を使用した気化冷却が用いられる。後述の乾燥時間を短縮するには、気化冷却が好ましい。 [0020]熱水によるブランチング処理の代りに、水蒸気を利用したブランチング処理も行うことができる。水蒸気を利用したブランチングは、常圧または加圧下、適切な時間(例えば1~5分間)、上記細片化物を間歇的かまたは連続的に蒸煮処理することにより行われる。 [0021]水蒸気の温度は、約100℃(加圧時は、100~120℃)であり、このような水蒸気を用いて蒸煮処理したとき細片化物の温度は約70~90℃に保たれ、かつ水蒸気により処理される細片化物全体が均一に加温されるため、ブランチング処理におけるロット間差を生じにくい。 [0022]間歇的な蒸煮処理とは、一定時間の水蒸気による蒸煮処理と冷却工程からなる処理を繰り返す処理である。例えば、ケール細片化物を水蒸気により30秒間蒸煮し、ついで、細片化物の温度を60℃以下、好ましくは40℃以下となるように冷却する処理が繰り返される。この間歇蒸煮工程は、10回繰り返されても、ブランチング中にケールの変色をもたらさないが、好ましくは、2~5回繰り返される。この工程が1回しか行われない場合、ケールの緑色の褪色に関与する酵素は完全に失活されない。その一方、この工程を6回以上繰り返した場合、ケールが天然に有する成分が失われ始めるという問題がある。 [0023]上記間歇蒸煮処理により、実質的に長時間のブランチング処理が可能となり、褪色の原因となる酵素は完全に失活される。 [0024]連続的な蒸煮処理(連続蒸煮処理)の場合、処理は、1~5分間行われる。水蒸気処理が1分間以下であると、ケールの鮮やかな緑色の褪色に関与する酵素の失活が完全に行われず、また5分間より長いとブランチング中に、ケールの緑色が損なわれ始める。 [0025]水蒸気によるブランチングにおける冷却工程は、熱水による場合と同様に、冷水、風冷が用いられ得る。」 (1-5)「[0026]乾燥工程 ブランチングおよび冷却処理後のケールは脱水され、その後、細片化状態のままで乾燥した後、粉末化する工程に供される。乾燥は、細片化物の水分含量が10重量%以下、好ましくは5重量%以下となるように行われる。なお、本発明でいう水分含有量は、ケールの重量に対するケール内の水分の重量の割合で表すものである。 [0027]製造上のコストの面からは、熱風乾燥が最も好ましいが、間違った設定条件によっては、乾燥生成物が黒く変色することが見出されている。ケールの葉に含まれる糖が熱風によって焦げて変色しているものと思われる。 [0028]本発明においては、乾燥面1m2当たり細片化したケール5~15kg(処理前生葉重量換算)を乾燥機内に配置し、30~60℃、風速0.1~5.0m/sの熱風で細片化したケールを乾燥する。好ましくは、8~12Kg、より好ましくは10kg(いずれも処理前生葉重量換算)のケールを乾燥する。 [0029]すなわち、乾燥機内には、乾燥面1m2当たり細片化したケール5~15kg(処理前生葉重量換算)を配置する。なお、乾燥面とは、通気式乾燥機などの乾燥機において、乾燥させる対象物を載せる、金網などの面を意味する。 [0030]熱風の温度は、30~60℃、好ましくは30~50℃である。30℃よりも低いと乾燥に要する時間が長すぎて製造コストを上昇させる。60℃よりも高いと、黒く焦げている部分と未乾燥の部分が生じ、均一な乾燥ができない。熱風の風速は、0.1~5.0m/sが好ましい。0.1m/sよりも遅いと乾燥に要する時間が長すぎて製造コストを上昇させる。5.0m/sよりも早いと乾燥したケールが熱風によって飛び散る虞がある。なお、乾燥の進行状況により、熱風の温度を低下させるなどの方法をとってもよい。 [0031]このような条件で、約1~10時間、好ましくは1~5時間で乾燥が終了する。 [0032]さらに、効率的に乾燥を行うために、乾燥を2段階に分けて行うことも、本発明の一つである。すなわち、まず、乾燥面1m2当たり細片化したケール5~15kg(処理前生葉重量換算)を乾燥機内に配置し、30~60℃、風速0.1~5.0m/sの熱風で細片化したケールの水分を30~15%まで乾燥し、半乾燥ケールを得る。このようにして得られる半乾燥ケールを集めて、乾燥面1m2当たり、この半乾燥ケール50~150kg(処理前生葉重量換算)を乾燥機内に配置し、30~60℃、風速0.1~3.0m/sの熱風で細片化したケールを乾燥する。乾燥は、0.5~5時間で行われる。 [0033]このように2段階で乾燥することにより、乾燥処理工程の水分管理が容易になり、効率的に乾燥が行われる。 [0034]この乾燥工程により、細片化されたケールは、10%以下、好ましくは、5%以下の水分含有量まで乾燥される。本発明の乾燥条件で乾燥することにより、乾燥生成物は、天然に有していた色および成分を保持している。」 (2)甲1に記載された発明 甲1の請求項1(摘記1-1)には、「以下の工程:(a)ケールを1~5cm幅に細片化する工程;および(b)乾燥面1m2当たり細片化したケール5~15kg(処理前生葉重量換算)を乾燥機内に配置し、30~60℃、風速0.1~5.0m/sの熱風で細片化したケールを乾燥する工程;を含む、ケールの乾燥粉末の製造方法。」が記載されており、[0013](摘記1-3)には、「緑色保持の観点から、ケールをブランチング処理する工程が、必要に応じて、細片化処理の前、あるいは後に、組み込まれる。ブランチング処理は、細片化処理後行われることが好ましい」ことが記載されている。また、[0017]~[0024](摘記1-4)には、「ブランチング処理および急冷処理工程」の具体的な方法について、「ブランチング処理には、熱水、蒸気などが用いられる」こと、「熱水のみによるブランチングと比較して、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、塩化ナトリウムを熱水に含有させてブランチングを行うと、ケールの緑色が映えるとともに、心地よい風味を呈するようになる」こと、「熱水によるブランチング処理の代りに、水蒸気を利用したブランチング処理も行うことができる。水蒸気を利用したブランチングは、常圧または加圧下、適切な時間(例えば1~5分間)、上記細片化物を間歇的かまたは連続的に蒸煮処理することにより行われる」こと、「ブランチング処理後の細片化されたケールは、直ちに冷却されることが好ましい。冷却は、当業者が通常用いる方法(例えば、浸漬、水冷、風冷など)を用いて行われる」こと、「水蒸気によるブランチングにおける冷却工程は、熱水による場合と同様に、冷水、風冷が用いられ得る」ことが記載されている。さらに、[0026]~[0034](摘記1-5)には、「乾燥工程」の具体的な方法について、「製造上のコストの面からは、熱風乾燥が最も好ましい」こと、「乾燥機内には、乾燥面1m2当たり細片化したケール5~15kg(処理前生葉重量換算)を配置」し、「熱風の温度は、30~60℃、好ましくは30~50℃」、「熱風の風速は、0.1~5.0m/sが好ましい」こと、及び「乾燥工程により、細片化されたケールは、10%以下、好ましくは、5%以下の水分含有量まで乾燥される。本発明の乾燥条件で乾燥することにより、乾燥生成物は、天然に有していた色および成分を保持している」ことが記載されている。 そうすると、甲1には、請求項1等の記載に基づき以下の発明が記載されている。 「以下の工程: ケールを1~5cm幅に細片化する工程、細片化物を炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、塩化ナトリウムを含有させた熱水を用いて、又は水蒸気を利用して常圧または加圧下、適切な時間(例えば1~5分間)、上記細片化物を間歇的かまたは連続的に蒸煮処理することによりブランチング処理する工程、ブランチング処理後の細片化物を冷水又は風冷により冷却する工程、及び、乾燥面1m2当たり細片化したケール5~15kg(処理前生葉重量換算)を乾燥機内に配置し、30~60℃、風速0.1~5.0m/sの熱風で細片化したケールを10%以下の水分含有量まで乾燥する工程、を含む、ケールの乾燥粉末の製造方法。」(以下、「甲1発明」という。) (3)本件発明1について ア 本件発明1と甲1発明との対比 本件発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明における「ケール」は、本件発明1における「生のハーブ」と「緑色植物」である限りにおいて一致し、甲1発明における「ケールの乾燥粉末の製造方法」は、本件発明1における「乾燥ハーブの製造方法」と「緑色植物の乾燥物の製造方法」である限りにおいて一致する。また、甲1発明における「ブランチング処理する工程」は、甲1の[0024](摘記1-4)における「水蒸気処理が1分間以下であると、ケールの鮮やかな緑色の褪色に関与する酵素の失活が完全に行われず」との記載を参酌すると、本件発明1における「酵素を失活させる工程」に相当し、甲1発明における「細片化したケールを10%以下の水分含有量まで乾燥する工程」は、本件発明1における「前記ハーブを乾燥する工程」と「緑色植物を乾燥する工程」である限りにおいて一致するとともに「前記酵素を失活させる工程の後に、」行われる点も満たしており、甲1発明における「ブランチング処理後の細片化物を冷水又は風冷により冷却する工程、」は、本件発明1における「前記ハーブを0~30℃まで風冷する工程」と、「緑色植物を冷却する工程」である限りにおいて一致するとともに、「前記蒸す工程の後、前記乾燥する工程の前に、」と、「前記酵素を失活させる工程の後、前記乾燥する工程の前に」行われる限りにおいて一致する。 そうすると、両者は、 「緑色植物の酵素を失活させる工程と、 前記酵素を失活させる工程の後に、前記緑色植物を乾燥する工程と、 を備える、 緑色植物の乾燥物の製造方法であって、 前記酵素を失活させる工程の後、前記乾燥する工程の前に、前記緑色植物を冷却する工程を備える、製造方法。」 の点で一致し、 相違点甲1-1:本件発明1は「生のハーブ」を原料とする「乾燥ハーブの製造方法」であるのに対し、甲1発明は「ケール」を原料とする「ケールの乾燥粉末の製造方法」である点 相違点甲1-2:本件発明1は「前記酵素を失活させる工程が、前記生のハーブを30秒~5分間蒸す工程であり、」と特定するのに対し、甲1発明は「細片化物を炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、塩化ナトリウムを含有させた熱水を用いて、又は水蒸気を利用して常圧または加圧下、適切な時間(例えば1~5分間)、上記細片化物を間歇的かまたは連続的に蒸煮処理することによりブランチング処理する工程、」と特定する点 相違点甲1-3:本件発明1は「前記乾燥する工程が、前記ハーブを撹拌する工程を含み、」と特定するのに対し、甲1発明は「乾燥面1m2当たり細片化したケール5~15kg(処理前生葉重量換算)を乾燥機内に配置し、30~60℃、風速0.1~5.0m/sの熱風で」乾燥すると特定する点 相違点甲1-4:本件発明1は「前記ハーブがバジル、わさび葉、紫蘇、パクチー、ローズマリー、ルッコラ、セルバチカ、タイム、チャービル、セイジ、ディル、ミント、イタリアンパセリ、オレガノ、マジョラム、フェンネル、セイボリー、コリアンダー、タラゴン、チャイブ、及びレモングラスから選択される少なくとも1種であり、」と特定するのに対し、甲1発明は「ケール」を原料とする点 相違点甲1-5:本件発明1は「前記ハーブを0~30℃まで風冷する工程を備え、」と特定するのに対し、甲1発明は「ブランチング処理後の細片化物を冷水又は風冷により冷却する工程、」と特定する点 相違点甲1-6:本件発明1は「塩類及び/又は糖を使用しない、」と特定するのに対し、甲1発明はそのように特定されない点 で相違する。 そこで、事案に鑑み、上記相違点甲1-1及び相違点甲1-4について検討する。 イ 相違点甲1-1及び相違点甲1-4について 一般に、「ハーブ」とは、「香辛料のうち、おもに葉や茎を用いるものの総称」(河野友美編著,"新・食品事典5 野菜・藻類",株式会社真珠書院,1992年1月30日,p.301,"ハーブ(herb)"の項を参照。)、又は「香りを主とし,辛味・苦味などの刺激的な味,および着色料として食用にされる“野菜的植物”」であり「ふつうは“調味料・香辛料的”に少量だけ用いられるもの」(福場博保,小林彰夫編,"調味料・香辛料の事典(普及版)",普及版第4刷,株式会社朝倉書店,2012年3月30日,p.465-468,"2.1.1 用途からみた定義","2.3.1 ハーブの多様性"の項を参照。)を意味するところ、甲1発明における「ケールの乾燥粉末」は、甲1の[0002](摘記1-2)に記載されているように「いわゆる「青汁」として簡易に野菜成分を摂取できる健康食品として」用いられるものであり、香りを主として香辛料的に少量だけ用いられるものではないから、「ハーブ」には当たらない。また、甲1の[0037](摘記1-6)に記載された「賦形剤、増量剤、結合剤、増粘剤、乳化剤、着色料、香料、食品添加物、調味料等と混合され、用途に応じて、顆粒、錠剤等の形態に成形する」方法、及び「例えば、ローヤルゼリー、ビタミン、プロテイン、カルシウム、キトサン、レシチンなどが配合され、さらに糖液や調味料が加えられて味が整えられる。そしてこれらは、必要に応じてハードカプセル、ソフトカプセルなどのカプセル剤、錠剤もしくは丸剤としてか、または粉末状、顆粒状、茶状、ティーバック状もしくは、飴状などの形状に成形」する方法も、香りを主として香辛料的に少量だけ用いる方法ではないから、「ハーブ」としての使用方法ではない。さらに、甲1には、甲1発明の乾燥粉末の製造方法をケール以外の原料に適用することについて記載も示唆もされておらず、甲1発明の乾燥粉末の製造方法が、香りを主として香辛料的に使用することが求められる「ハーブ」の製造に適したものであることを示唆する記載もない。加えて、他の全ての証拠の記載を参酌しても、甲1発明における原料である「ケール」を、相違点甲1-1及び相違点甲1-4に係る選択肢で特定される「ハーブ」に置き換えることの動機付けとなる記載は見いだせない。そして、本件発明1が発揮する「鮮やかな緑色を有する乾燥ハーブを得ることができる。更に、旨味を有する乾燥ハーブを得ることができる。」([0010])という効果は、当業者が予測することのできない顕著なものである。 よって、相違点甲1-1及び相違点甲1-4に係る本件発明1の特定事項は、甲1及び他の全ての証拠の記載を参酌しても当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 ウ 申立人の主張について 申立人は申立書の21~22頁において、本件発明1と甲1発明とは「いずれも生の葉の鮮やかな色を有する乾燥葉の製造方法を提供することを目的としたものである」から、「ケール」を「ハーブ」に適用することは当業者であれば容易に想到し得る事項であり、その「ハーブ」が具体的には相違点甲1-4に係る選択肢から選ばれる少なくとも1種であることも、当業者であれば容易に想到し得る事項である旨を主張している。 しかし、上記イに記載したとおり、甲1には、甲1発明におけるケール及びその乾燥粉末を、香りを主として香辛料的に少量だけ用いる形態で使用することは記載も示唆もされておらず、また、甲1及び他の全ての証拠の記載を参照しても、甲1発明の乾燥粉末の製造方法が、香りを主として香辛料的に少量だけ用いる形態での使用に適した乾燥粉末を得られる方法であることは記載も示唆もされていないから、甲1発明の原料であるケールを相違点甲1-1及び相違点甲1-4に係るハーブに置き換えることにより乾燥ハーブの製造方法とすることは、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。 よって、申立人の主張を採用することはできない。 エ 本件発明1についてのまとめ 以上のことから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件発明2~6について 本件発明2~6は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備える製造方法の発明である。そうすると、上記(3)で検討した本件発明1と同様の理由により、本件発明2~6は、いずれも甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (5)理由1-1(甲1に基づく進歩性欠如)についてのまとめ 以上まとめると、本件発明1~6は、いずれも甲1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものでもない。 よって、理由1-1(甲1に基づく進歩性欠如)により本件発明1~6についての特許を取り消すことはできない。 2.理由1-2(甲3に基づく進歩性欠如)について (1)甲3に記載された事項 甲3には以下の事項が記載されている。 (3-1)「[請求項1] 大麦若葉を蒸熱するブランチング工程と、 前記ブランチング工程に続いて、ブランチングされた大麦若葉を30~40℃の品温で揉捻する粗揉工程と、 前記粗揉工程において粗揉された大麦若葉を、更に押圧しながら転動させる揉捻工程と、 前記揉捻工程において揉捻された大麦若葉を、30~40℃の品温で揉捻して撚りをかける中捻工程と、 前記中捻工程において中揉された大麦若葉を乾燥する乾燥工程とを含む、 比容積が3~9cm3/gである乾燥大麦若葉を製造する方法。」 (3-2)「[技術分野] [0001] 本発明は、乾燥大麦若葉の製造方法、乾燥大麦若葉及び乾燥大麦若葉粉末に関する。 [背景技術] [0002] 乾燥大麦若葉粉末は青汁商品の一つであり、健康食品素材として大きな市場を形成している。この乾燥大麦若葉粉末の製法にあっては、一般に、収穫した大麦若葉を裁断して水洗後、熱湯でブランチングし酵素を失活させた後、これを乾燥して粉砕している。例えば、特許文献1では大麦若葉を洗浄して、塩と重曹の溶解液中で加熱処理し冷却した後、これを乾燥して粉砕することが開示されている。 ・・・ [発明が解決しようとする課題] [0004] しかしながら、大麦若葉は、その栄養成分であるビタミンやミネラル、アミノ酸等が比較的丈夫な細胞壁で覆われた原形質内に存在しており、上記方法で製造された粉末では、これを飲用する際にそのまま熱湯に浸漬、又は分散させても限られた量の栄養成分しか溶出しなかった。 [0005] 従って、本発明は、水溶性栄養成分が容易に外液に溶出する乾燥大麦若葉の製造方法及び乾燥大麦若葉を提供することを目的とする。」 (3-3)「[0014] 次に、脱水された大麦若葉のブランチング処理を行う。このブランチング処理は、大麦若葉の変色や変質の原因となる葉体中の酵素を失活させるために行う。ブランチング処理としては、具体的には、熱水処理及び水蒸気処理などが挙げられる。 [0015] 熱水処理は、例えば、大麦若葉を沸騰水中に数十秒~5分間程度浸漬することにより行う。水蒸気処理は、例えば、ベルトコンベア式や回転式の金網円筒形の蒸し機を使用し、大麦若葉を20~100秒間、蒸気により加熱することにより行う。 [0016] このブランチング処理では、酵素を失活させると共に、大麦若葉に柔軟性を与える。大麦若葉に適切な柔軟性を与えるために、熱水処理は、沸騰水中に40秒~3分間浸漬することが好ましく、水蒸気処理は、30~60秒間、蒸気により加熱することが好ましい。 [0017] ブランチング処理後、大麦若葉は冷水に浸漬するか、冷風若しくは真空冷却器などを使用して急速冷却することにより、品温を常温程度に降下させる。急速に冷却することにより、加熱が過剰に進行することを防ぐことができる。これにより、茶葉の品質の劣化を抑制することができる。」 (3-4)「[0018] 冷却後の大麦若葉は、典型的には粗揉工程に付されるが、その前に予備乾燥を行うことも可能である。予備乾燥は、例えば、通風ベルトコンベア上に大麦若葉を載置し、30~40℃の品温となるように70~100℃程度の温風を吹き付けることにより行う。こうすると、90%以上含まれていた若葉の水分は徐々に低減し、70~80%程度の水分を含有した状態となる。このような予備乾燥を行うことにより、後述する粗揉工程における工程時間の短縮を図ることができる。 [0019] 次に、予備乾燥後の大麦若葉を粗揉工程に供する。粗揉工程は、粗揉機を使用して行うことができる。粗揉機の一例について以下に説明する。 [0020] 粗揉機は、半円筒形状を有する容器と、該容器中に入れられた大麦若葉を攪拌するための攪拌機とを備える。攪拌機は、大麦若葉を容器の底に押しつけるための第1の羽根と、大麦若葉をさらって攪拌するための第2の羽根とを備える。容器及び攪拌機は、外装内に配置される。外装内には、別に備えられる温風供給機から、攪拌機の回転方向に温風が供給される。このような粗揉機では、大麦若葉は第1の羽根によって揉圧され、第2の羽根によって攪拌される。 [0021] 粗揉工程は70~110℃の温度の温風下で行うことが好ましい。品温は30~40℃の範囲であることが好ましい。また加える圧力は、例えば1~25kg/cm2であり、この粗揉工程は、例えば30~50分間程度行う。 [0022] 粗揉工程に続いて、大麦若葉を揉捻工程に供する。この揉捻工程は、揉捻機を使用して行うことができる。揉捻機の一例について以下に説明する。 [0023] 揉捻機は、水平な揉盤と、該揉盤の上を円運動する底なしの円筒容器とを備える。円筒容器内には、加重が調節可能な加重蓋が備えられる。揉盤は表面上に複数の棒状の凸部を有する。複数の凸部は、円筒容器の円運動の中心から放射線上に並べられており、それぞれ、円筒容器の円運動方向に凸の形に湾曲している。 [0024] このような揉捻機において、大麦若葉は円筒容器の内部に入れられ、上から加重蓋により加重される。この状態で円筒容器を盤上で円運動させることにより、大麦若葉が揉捻される。 [0025] 揉捻工程は、室温下で大麦若葉の品温が30~40℃の範囲となるように行う。揉捻工程で加える圧力は、例えば20~25kg/cm2であり、約5~10分間の処理を行う。これらの条件は、原料の大麦若葉の性質に応じて適宜設定する。揉捻工程では、大麦若葉を押圧しながら転動させて水分を均一化し、乾燥及び萎縮させる。 [0026] 揉捻工程を行うと、大麦若葉によれ形をつけることができるため、例えば、葉部分の上乾きを防ぐことができ、より均一に乾燥させやすくなる。 [0027] 以上のような粗揉及び揉捻工程によれば、大麦若葉の組織や細胞壁に適度な損傷を与えることができる。また、葉体の部位間に存在する水分ムラを均一にしながら徐々に乾燥させることができるため、品温が部分的に上昇し過ぎることを防ぐことができる。 [0028] 揉捻工程を終えた大麦若葉は、続く中揉工程において撚りをかけ、撚られた状態となる。 [0029] 中揉工程は、例えば、粗揉工程で使用した粗揉機を使用することができる。ただし、大麦若葉を容器の底に押しつけるための第1の羽根をより短くすることが好ましい。これにより、大麦若葉に加える圧力を、粗揉工程よりも弱くすることができる。中揉工程は、60~70℃程度の温風下で、品温が30~40℃の範囲で行うことが好ましい。加える圧力は、例えば0.5~1.5kg/cm2程度である。中揉工程は、例えば15~30分間程度行う。 [0030] 中揉工程において、過度に乾燥を行うと、撚られた大麦若葉の塊の各々が硬くなる。また、乾燥が不足していると、撚られた大麦若葉の塊同士が互いに付着し、後の工程に悪影響を及ぼす。この場合、例えば、後述する乾燥工程において、撚られた大麦若葉の塊を均一に乾燥することが困難になる。 [0031] 上記中揉工程により、大麦若葉の水分含量は15~30%程度となる。次いで、水分含量が5%以下になるまで乾燥工程を行う。この乾燥により、大麦若葉に保存性が付与される。 [0032] この乾燥工程は、例えば、ベルトコンベア上に大麦若葉を載置し熱風で連続乾燥することにより行う。乾燥工程は、棚等での静置式熱風乾燥により行ってもよい。 [0033] 各工程で使用する機種、操作等は、特に限定されるものではない。単子葉類である大麦の硬さ、繊維の方向性、葉体組織等を考慮して適切な機種、操作等を選択することができる。」 (3-5)「[0039] 本実施形態に係る乾燥大麦若葉は、例えば、急須等に入れて抽出してもよく、ティーバッグに封入し、これを抽出してもよい。いずれの場合でも、水溶性栄養成分が容易に外液に溶出するため、大麦若葉自体を摂取することなしに、十分な量の栄養成分を摂取することが可能となる。 [0040] ティーバッグとしては、通水性を有するものであれば従来公知のものを使用することができる。例えば、天然繊維からなるものや、合成繊維からなるものを使用することができる。 [0041] ティーバッグ内に充填する乾燥大麦若葉の量は、用途や目的により適切な量を充填することが可能であるが、例えば、約2gである。 [0042] 次に本発明の他の実施形態に係る乾燥大麦若葉粉末について説明する。乾燥大麦若葉粉末は、水又は湯などの液体に分散させ、分散液の状態で飲用に供される。 ・・・ [0049] また、この乾燥大麦若葉粉末は、ティーバッグに封入し、これを抽出し、抽出液のみを飲用してもよい。本実施形態に係る乾燥大麦若葉粉末は、高い溶出率を有するため、抽出液のみを飲用しても十分な量の水溶性栄養成分を摂取することができる。 [0050] 本実施形態に係る乾燥大麦若葉粉末は、この粉末のまま又は甘味料、調味料等を混合した粉末として、若しくは錠剤として、お湯や牛乳等に溶解、分散させて飲料として供するだけでなく、パンや麺類等に配合することも可能である。いずれの場合にも、細胞壁内の成分が溶出しやすく且つ消化に優れるため、大麦若葉の栄養成分を効率よく摂取できる。」 (3-6)「[実施例] [0051] 以下、実施例を挙げて本発明を説明する。 (実施例1) 大麦若葉を刈取り、異物や不良品を除去した後、4cm程度に粗切りを行った。これを水洗して脱水した後、回転式の金網円筒形の蒸し器を使用し、40秒間100℃の蒸気を吹き付けてブランチング処理を行った。 [0052] ブランチング処理終了後、送風機で風を当てて冷却した。 [0053] 次いで、大麦若葉を通風ベルトコンベア上に載置し、90℃の温風を吹き付けて予備乾燥を行ったところ、得られた大麦若葉の水分含量は76%であった。 [0054] その後、大麦若葉を粗揉機に投入し、約80℃の温風を吹き付けて、大麦若葉内の水分が均一となるように調整を行いながら、粗揉工程を40分間行った。この時の大麦若葉の品温は約35℃であった。 [0055] 次いで、大麦若葉を揉捻機に移送して、34℃の品温を維持しながら揉捻工程を7分間行った。次に、大麦若葉を中揉機に投入し、65℃の温風で乾燥しつつ圧力を加えて撚りを入れ、中揉工程を行った。中揉工程終了時の大麦若葉の水分含量は23%であった。 [0056] 中揉工程後の大麦若葉を多段式の連続通風乾燥機に載置し、約70℃の温風を当てて水分含量4%の乾燥大麦若葉を得た。この乾燥大麦若葉の比容積(cm3/g)は4.6であった。 [0057] 図1に、実施例1で得られた乾燥大麦若葉の写真を示す。 [0058] (比較例1) 実施例1で調製したブランチング処理済みの粗切り若葉の一部を分取し、粗揉工程、揉捻工程及び中揉工程を行わなかったことを除いて、実施例1と同様にして粉砕前の乾燥大麦若葉を得た。この乾燥大麦若葉の水分含量は4%であり、比容積(cm3/g)は19.3であった。」 (2)甲3に記載された発明 甲3の請求項1(摘記3-1)には、「大麦若葉を蒸熱するブランチング工程と、前記ブランチング工程に続いて、ブランチングされた大麦若葉を30~40℃の品温で揉捻する粗揉工程と、前記粗揉工程において粗揉された大麦若葉を、更に押圧しながら転動させる揉捻工程と、前記揉捻工程において揉捻された大麦若葉を、30~40℃の品温で揉捻して撚りをかける中捻工程と、前記中捻工程において中揉された大麦若葉を乾燥する乾燥工程とを含む、比容積が3~9cm3/gである乾燥大麦若葉を製造する方法。」が記載されており、[0014]~[0016](摘記3-3)には、「ブランチング処理」の具体的な方法について、「熱水処理及び水蒸気処理などが挙げられる」ことが記載され、[0017](摘記3-3)には、「ブランチング処理後、大麦若葉は冷水に浸漬するか、冷風若しくは真空冷却器などを使用して急速冷却することにより、品温を常温程度に降下させる」ことが記載されている。また、[0018]~[0033](摘記3-4)には、「冷却後の大麦若葉は、典型的には粗揉工程に付されるが、その前に予備乾燥を行うことも可能である」こと、並びに「粗揉工程」、「揉捻工程」、「中捻工程」及び「乾燥工程」の具体的な方法について記載されている。そして、上記各工程を含む具体例として、[0051]~[0057](摘記3-6)には実施例1が記載されており、「大麦若葉を刈取り、異物や不良品を除去した後、4cm程度に粗切りを行った。これを水洗して脱水した後、回転式の金網円筒形の蒸し器を使用し、40秒間100℃の蒸気を吹き付けてブランチング処理を行った。」こと、「ブランチング処理終了後、送風機で風を当てて冷却した。」こと、「90℃の温風を吹き付けて予備乾燥を行った」こと、「約80℃の温風を吹き付けて、大麦若葉内の水分が均一となるように調整を行いながら、粗揉工程を40分間行った。この時の大麦若葉の品温は約35℃であった。」こと、「大麦若葉を揉捻機に移送して、34℃の品温を維持しながら揉捻工程を7分間行った。」こと、「大麦若葉を中揉機に投入し、65℃の温風で乾燥しつつ圧力を加えて撚りを入れ、中揉工程を行った。」こと、及び「中揉工程後の大麦若葉を多段式の連続通風乾燥機に載置し、約70℃の温風を当てて水分含量4%の乾燥大麦若葉を得た。」ことが記載されている。 そうすると、甲3には、請求項1及び実施例1等の記載に基づき以下の発明が記載されている。 「4cm程度に粗切りした大麦若葉に、40秒間100℃の蒸気を吹き付けてブランチング処理する工程と、 ブランチング処理終了後、送風機で風を当てて冷却する工程と、 90℃の温風を吹き付けて予備乾燥を行う工程と、 予備乾燥された大麦若葉を、約80℃の温風を吹き付けて、35℃の品温で40分間粗揉する工程と、 粗揉された大麦若葉を、34℃の品温で7分間揉捻する工程と、 揉捻された大麦若葉を、65℃の温風で乾燥しつつ圧力を加えて撚りを入れる中揉工程と、 中揉された大麦若葉を、多段式の連続通風乾燥機に載置し、約70℃の温風を当てて水分含量4%に乾燥する乾燥工程とを含む、 比容積が4.6cm3/gである乾燥大麦若葉を製造する方法。」(以下、「甲3発明」という。) (3)本件発明1について ア 本件発明1と甲3発明との対比 本件発明1と甲3発明とを対比すると、甲3発明における「大麦若葉」は、本件発明1における「生のハーブ」と「緑色植物」である限りにおいて一致し、甲3発明における「乾燥大麦若葉を製造する方法」は、本件発明1における「乾燥ハーブの製造方法」と「緑色植物の乾燥物の製造方法」である限りにおいて一致する。また、甲3発明における「40秒間100℃の蒸気を吹き付けてブランチング処理する工程」は、甲3の[0014](摘記3-3)における「このブランチング処理は、大麦若葉の変色や変質の原因となる葉体中の酵素を失活させるために行う」との記載を参酌すると、本件発明1における「酵素を失活させる工程」に相当し、本件発明1における「前記酵素を失活させる工程が、前記生のハーブを30秒~5分間蒸す工程であり、」と、「前記酵素を失活させる工程が、前記緑色植物を30秒~5分間蒸す工程であ」る限りにおいて一致する。さらに、甲3発明における「90℃の温風を吹き付けて予備乾燥を行う工程と、予備乾燥された大麦若葉を、約80℃の温風を吹き付けて、35℃の品温で40分間粗揉する工程と、粗揉された大麦若葉を、34℃の品温で7分間揉捻する工程と、揉捻された大麦若葉を、65℃の温風で乾燥しつつ圧力を加えて撚りを入れる中揉工程と、中揉された大麦若葉を、多段式の連続通風乾燥機に載置し、約70℃の温風を当てて水分含量4%に乾燥する乾燥工程」は、本件発明1における「前記ハーブを乾燥する工程」と「緑色植物を乾燥する工程」である限りにおいて一致するとともに「前記酵素を失活させる工程の後に、」行われる点を満たしており、かつ、甲3発明が上記乾燥工程で「粗揉」、「揉捻」及び「撚りを入れる中揉」を行う点は、本件発明1における「前記乾燥する工程が、前記ハーブを撹拌する工程を含み、」と、「前記乾燥する工程が、前記緑色植物を撹拌する工程を含」む限りにおいて一致する。加えて、甲3発明における「ブランチング処理終了後、送風機で風を当てて冷却する工程と、」は、本件発明1における「前記ハーブを0~30℃まで風冷する工程」と、「緑色植物を風冷する工程」である限りにおいて一致するとともに、「前記蒸す工程の後、前記乾燥する工程の前に、」行われる点を満たしており、甲3発明においては塩類及び糖のいずれも使用しないから、本件発明1における「塩類及び/又は糖を使用しない、」を満たしている。 そうすると、両者は、 「緑色植物の酵素を失活させる工程と、 前記酵素を失活させる工程の後に、前記緑色植物を乾燥する工程と、 を備える、 緑色植物の乾燥物の製造方法であって、 前記酵素を失活させる工程が、前記緑色植物を30秒~5分間蒸す工程であり、 前記乾燥する工程が、前記緑色植物を撹拌する工程を含み、 前記蒸す工程の後、前記乾燥する工程の前に、前記緑色植物を風冷する工程を備え、塩類及び/又は糖を使用しない、製造方法。」 の点で一致し、 相違点甲3-1:本件発明1は「生のハーブ」を原料とする「乾燥ハーブの製造方法」であるのに対し、甲3発明は「大麦若葉」を原料とする「乾燥大麦若葉を製造する方法」である点 相違点甲3-2:本件発明1は「前記ハーブがバジル、わさび葉、紫蘇、パクチー、ローズマリー、ルッコラ、セルバチカ、タイム、チャービル、セイジ、ディル、ミント、イタリアンパセリ、オレガノ、マジョラム、フェンネル、セイボリー、コリアンダー、タラゴン、チャイブ、及びレモングラスから選択される少なくとも1種であり、」と特定するのに対し、甲3発明は「大麦若葉」を原料とする点 相違点甲3-3:本件発明1は「0~30℃まで」風冷すると特定するのに対し、甲3発明は風冷後の品温を特定しない点 で相違する。 そこで、上記相違点甲3-1及び相違点甲3-2について検討する。 イ 相違点甲3-1及び相違点甲3-2について 一般に、「ハーブ」とは、上記1.(3)イに記載したものと解されるところ、甲3発明における「ケールの乾燥粉末」は、甲3の[0002](摘記3-2)に記載されているように「青汁」として飲用されるものであり、香りを主として香辛料的に少量だけ用いられるものではないから、「ハーブ」には当たらない。また、甲3の[0039]~[0050](摘記3-5)に記載された「乾燥大麦若葉は、例えば、急須等に入れて抽出してもよく、ティーバッグに封入し、これを抽出してもよい。」、「乾燥大麦若葉粉末は、水又は湯などの液体に分散させ、分散液の状態で飲用に供される。」、「この乾燥大麦若葉粉末は、ティーバッグに封入し、これを抽出し、抽出液のみを飲用してもよい。」、「乾燥大麦若葉粉末は、この粉末のまま又は甘味料、調味料等を混合した粉末として、若しくは錠剤として、お湯や牛乳等に溶解、分散させて飲料として供するだけでなく、パンや麺類等に配合することも可能である。」という使用方法も、香りを主として香辛料的に少量だけ用いる方法ではないから、「ハーブ」としての使用方法ではない。さらに、甲3には、甲3発明の乾燥大麦若葉を製造する方法を大麦若葉以外の原料に適用することについて記載も示唆もされておらず、甲3発明の乾燥大麦若葉を製造する方法が、香りを主として香辛料的に使用することが求められる「ハーブ」の製造に適したものであることを示唆する記載もない。加えて、他の全ての証拠の記載を参酌しても、甲3発明における原料である「大麦若葉」を、相違点甲3-1及び相違点甲3-2に係る選択肢で特定される「ハーブ」に置き換えることの動機付けとなる記載は見いだせない。そして、本件発明1が発揮する「鮮やかな緑色を有する乾燥ハーブを得ることができる。更に、旨味を有する乾燥ハーブを得ることができる。」([0010])という効果は、当業者が予測することのできない顕著なものである。 よって、相違点甲3-1及び相違点甲3-2に係る本件発明1の特定事項は、甲3及び他の全ての証拠の記載を参酌しても当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 ウ 申立人の主張について 申立人は申立書の29~30頁において、本件発明1と甲3実施例1(甲3発明)とは「いずれも鮮やかな緑色を保持した食用に供する植物の葉の乾燥物及びその製造方法を提供するものである点で同一」であり、また、「甲3では乾燥する工程において緑葉を撹拌することにより組織を壊すことによってその旨味をより強くすることを開示していることから、これに接した当業者であれば本件発明1は容易に想到し得るものといえ、その効果は格別顕著な効果とはいえない」と主張している。 しかし、上記イに記載したとおり、甲3には、甲3発明における大麦若葉及び乾燥大麦若葉を、香りを主として香辛料的に少量だけ用いる形態で使用することは記載も示唆もされておらず、また、甲3及び他の全ての証拠の記載を参照しても、甲3発明の乾燥大麦若葉を製造する方法が、香りを主として香辛料的に少量だけ用いる形態での使用に適した乾燥物を得られる方法であることは記載も示唆もされていないから、甲3発明の原料である大麦若葉を相違点甲3-1及び相違点甲3-2に係るハーブに置き換えることにより乾燥ハーブの製造方法とすることは、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。 よって、申立人の主張を採用することはできない。 エ 本件発明1についてのまとめ 以上のことから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件発明2~6について 本件発明2~6は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備える製造方法の発明である。そうすると、上記(3)で検討した本件発明1と同様の理由により、本件発明2~6は、いずれも甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (5)理由1-2(甲3に基づく進歩性欠如)についてのまとめ 以上まとめると、本件発明1~6は、いずれも甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものでもない。 よって、理由1-2(甲3に基づく進歩性欠如)により本件発明1~6についての特許を取り消すことはできない。 3.理由1-3(甲4に基づく進歩性欠如)について (1)甲4に記載された事項 甲4には以下の事項が記載されている。 (4-1)「[請求項1] 緑葉を乾燥する工程;該乾燥した緑葉を粗粉砕する工程;該粗粉砕した緑葉を110℃以上で加熱する工程;および該加熱した緑葉を微粉砕する工程、を包含する、緑葉乾燥微粉末の製造方法。 [請求項2] 前記乾燥する工程が、緑葉の水分含量が5重量%より多く25重量%以下となるまで一次乾燥した後、該一次乾燥した緑葉の水分含量が5重量%以下となるまで、一次乾燥よりも高くかつ90℃以下の乾燥温度で二次乾燥する工程である、請求項1に記載の方法。 [請求項3] 前記粗粉砕する工程が、前記乾燥した緑葉を0.1~10mmの大きさに粗粉砕する工程であり、かつ前記微粉砕する工程が、前記加熱した緑葉を90重量%が200メッシュ区分を通過するように微粉砕する工程である、請求項1に記載の方法。 [請求項4] 前記加熱する工程が、前記粗粉砕した緑葉を加圧蒸気処理する工程である、請求項1に記載の方法。」 (4-2)「[0002] [従来の技術]緑色植物の緑葉、例えば、麦若葉は、ビタミン類、ミネラル類、食物繊維などに富み、有害物質の吸着、腸内環境の改善、コレステロールの吸収抑制、食後血糖値の急上昇防止、スーパーオキシドディスムターゼ(SOD)の活性化などの効果を有する健康食品の素材として注目を浴びている。そしてこのような緑葉は、野菜ジュースのような液状の形態で、あるいは粉末、顆粒、錠剤のような乾燥形態で提供されている。液状の場合、緑葉をそのまま搾汁したものがよく用いられるのに対し、乾燥形態の場合には、単に乾燥する工程だけでなく、粉砕などの複数の加工工程を経ることが必要である。その結果、それぞれの工程において、あるいは複数の工程を経る間に、嗜好性が損なわれてしまうという問題がある。 [0003] [発明が解決しようとする課題]そこで、嗜好性に優れた緑葉乾燥粉末の製造方法が望まれている。 [0004] [課題を解決するための手段]本発明者らは、緑葉の乾燥形態の中でも、特に嗜好性に優れた乾燥微粉末の製造方法について鋭意検討したところ、緑葉を乾燥した後、粗粉砕し、110℃以上で加熱し、さらに微粉砕することにより、通常の単に乾燥、粉砕へと続く工程を経て得られる乾燥粉末と比較して、嗜好性に優れた緑葉乾燥微粉末を製造できることを見出して本発明を完成するに至った。 [0005]すなわち、本発明の緑葉乾燥微粉末の製造方法は、緑葉を乾燥する工程、乾燥した緑葉を粗粉砕する工程、粗粉砕した緑葉を110℃以上で加熱する工程、および加熱した緑葉を微粉砕する工程を包含する。緑葉を乾燥した後、粗粉砕、加熱、および微粉砕処理の順で処理することにより、嗜好性に優れた緑葉乾燥微粉末が得られる。 [0006]好ましい実施態様において、上記乾燥する工程は、緑葉の水分含量が5重量%より多く25重量%以下となるまで一次乾燥した後、この一次乾燥した緑葉の水分含量が5重量%以下となるまで、一次乾燥よりも高くかつ90℃以下の乾燥温度で二次乾燥する工程である。乾燥工程を2段階で行うことにより、緑葉の乾燥ムラをなくすと同時に乾燥時の褪色を抑えることができる。 [0007]別の好ましい実施態様において、上記粗粉砕する工程は、上記乾燥した緑葉を0.1~10mmの大きさに粗粉砕する工程であり、かつ上記微粉砕する工程は上記加熱した緑葉を90重量%が200メッシュ区分を通過するように微粉砕する工程である。このように2段階で粉砕することにより、緑葉の微粉砕の効率をあげることができ、食感が良くなる。 [0008]好ましい実施態様において、上記加熱する工程は、上記粗粉砕した緑葉を加圧蒸気処理する工程である。これにより、香味を良好にすることができる。」 (4-3)「[0010] [発明の実施の形態]本発明に用いられる緑葉としては、例えば、イネ科植物(例えば、大麦、小麦、えん麦、ライ麦等の麦類、イネ、あわ、笹、ひえ、きび、とうもろこし、ソルガム、さとうきび等)、キク科植物(例えば、ヨモギ等)、セリ科植物(アシタバ、パセリ、セロリ等)、クワ科植物(例えば、クワ等)、ドクダミ科植物(例えば、ドクダミ等)、シソ科植物(例えば、シソ等)、アブラナ科植物(小松菜、ケール、キャベツ、ブロッコリー等)、ユリ科植物(例えば、アスパラガス等)、シナノキ科植物(例えば、モロヘイヤ等)のような緑色植物の緑葉が挙げられるがこれらに限定されない。」 (4-4)「[0014]上記緑葉を、水(好ましくは25℃以下の冷水)で洗浄し、泥などを洗い落とし、水気を切った後、適当な長さ(例えば、5cm~10cm)に切断する。 [0015]次いで必要に応じて、さらに緑葉の緑色の褪色や栄養成分の変質に関与する酵素を失活させるために、熱水処理や蒸熱処理のようなブランチング処理が行われる。このときの処理の温度および時間は、処理する緑葉の量および熱水のpHに応じて適宜決定すればよい。 [0016]ブランチング処理された緑葉は、緑色および風味を維持する上で、直ちに冷却することが好ましい。冷却は、冷却水中に浸漬する、冷風を当てて急冷するなど、当業者が通常用いる手段で行われる。冷却水への浸漬処理は、30℃以下の水、好ましくは20℃以下の水を用いて行われる。冷水の温度が低いほど、緑葉の緑色が映えるようになり、見た目に美しい。浸漬時間は、緑葉の処理量に応じた任意の時間である。」 (4-5)「[0018]本発明の方法に係る乾燥工程は、緑葉の水分含量が5重量%以下になるように乾燥を行う工程であり、例えば、熱風乾燥、高圧蒸気乾燥、電磁波乾燥、凍結乾燥などの当業者が通常用いる任意の方法により行われる。製造上のコストの面からは、熱風乾燥が最も好ましい。なお、高温で乾燥する場合、乾燥は90℃以下で行う。 [0019]上記乾燥工程は、2段階で行うことが好ましい。乾燥を2段階で行う場合は、緑葉の水分含量が5重量%より多く25重量%以下となるまで60~80℃の温度で一次乾燥した後、該一次乾燥した緑葉の水分含量が5重量%以下となるまで一次乾燥よりも高くかつ90℃以下の温度で二次乾燥することが好ましい。乾燥温度が60℃未満では、乾燥速度が遅くなり、90℃を超えると、焦げなどが生じやすいので、好ましくない。一次乾燥と二次乾燥との好ましい温度差は、約5~15℃であり、約10℃であることがより好ましい。この2段階の乾燥工程を行うことにより、乾燥時間が短縮されると同時に、緑葉の緑色および風味が維持される。また、温度差を上記のように一定範囲に設定することにより、乾燥工程における緑葉の水分管理が容易になり、効率的に乾燥が行われる。 [0020]上記乾燥工程のみでも、風味が損なわれることはないが、上記ブランチング処理と乾燥処理とを組み合わせることにより、緑色および風味がさらに長時間維持される緑葉末が得られる。」 (4-6)「[0027]得られた緑葉乾燥微粉末は、そのまま飲食に供することができ、賦形剤、増量剤、結合剤、増粘剤、乳化剤、着色料、香料、食品添加物、調味料などと混合され、用途に応じて、顆粒、錠剤などの形態に成形することもできる。さらに、各種の飲食品に配合して飲食に供することができる。例えば、ローヤルゼリー、ビタミン、プロテイン、カルシウム、キトサン、レシチンなどが配合され、さらに糖液および調味料が加えられて味が整えられる。そしてこれらは、必要に応じてハードカプセル、ソフトカプセルなどのカプセル剤、錠剤、もしくは丸剤などに、あるいは粉末状、顆粒状、茶状、ティーバッグ状、もしくは飴状などの形態に成形される。これらの形状または好みに応じて、そのまま食してもよく、あるいは水、湯、牛乳などに溶いて飲んでも良い。また、ティーバッグ状などの場合、成分を浸出させてから飲んでも良い。」 (2)甲4に記載された発明 甲4の請求項1及び3(摘記4-1)には、「緑葉を乾燥する工程;該乾燥した緑葉を粗粉砕する工程;該粗粉砕した緑葉を110℃以上で加熱する工程;および該加熱した緑葉を微粉砕する工程、を包含する、緑葉乾燥微粉末の製造方法。」及び「前記粗粉砕する工程が、前記乾燥した緑葉を0.1~10mmの大きさに粗粉砕する工程であり、かつ前記微粉砕する工程が、前記加熱した緑葉を90重量%が200メッシュ区分を通過するように微粉砕する工程である、請求項1に記載の方法」が記載されており、[0014]~[0016](摘記4-4)には、緑葉を切断した後、「緑葉の緑色の褪色や栄養成分の変質に関与する酵素を失活させるために、熱水処理や蒸熱処理のようなブランチング処理が行われる」こと、及び「ブランチング処理された緑葉は、緑色および風味を維持する上で、直ちに冷却することが好ましい。冷却は、冷却水中に浸漬する、冷風を当てて急冷するなど、当業者が通常用いる手段で行われる」ことが記載されており、[0018]~[0020](摘記4-5)には、「乾燥工程は、緑葉の水分含量が5重量%以下になるように乾燥を行う工程」であり、「熱風乾燥が最も好まし」く、「高温で乾燥する場合、乾燥は90℃以下で行う」ことが記載されている。また、[0010]には、用いられる緑葉として「例えば、イネ科植物(例えば、大麦、小麦、えん麦、ライ麦等の麦類、イネ、あわ、笹、ひえ、きび、とうもろこし、ソルガム、さとうきび等)、キク科植物(例えば、ヨモギ等)、セリ科植物(アシタバ、パセリ、セロリ等)、クワ科植物(例えば、クワ等)、ドクダミ科植物(例えば、ドクダミ等)、シソ科植物(例えば、シソ等)、アブラナ科植物(小松菜、ケール、キャベツ、ブロッコリー等)、ユリ科植物(例えば、アスパラガス等)、シナノキ科植物(例えば、モロヘイヤ等)のような緑色植物の緑葉が挙げられる」ことが記載されている。 そうすると、甲4には、請求項1及び3等の記載に基づき以下の発明が記載されている。 「緑葉を切断した後、緑葉の緑色の褪色や栄養成分の変質に関与する酵素を失活させるために、熱水処理や蒸熱処理のようなブランチング処理をする工程と、 ブランチング処理された緑葉を冷却水中に浸漬する又は冷風を当てて急冷する工程と、 90℃以下で緑葉の水分含量が5重量%以下になるように熱風乾燥する工程と、 該乾燥した緑葉を0.1~10mmの大きさに粗粉砕する工程と、 該粗粉砕した緑葉を110℃以上で加熱する工程と 加熱した緑葉を90重量%が200メッシュ区分を通過するように微粉砕する工程と、を包含する、緑葉乾燥微粉末の製造方法であって、 前記緑葉が、イネ科植物(例えば、大麦、小麦、えん麦、ライ麦等の麦類、イネ、あわ、笹、ひえ、きび、とうもろこし、ソルガム、さとうきび等)、キク科植物(例えば、ヨモギ等)、セリ科植物(アシタバ、パセリ、セロリ等)、クワ科植物(例えば、クワ等)、ドクダミ科植物(例えば、ドクダミ等)、シソ科植物(例えば、シソ等)、アブラナ科植物(小松菜、ケール、キャベツ、ブロッコリー等)、ユリ科植物(例えば、アスパラガス等)、シナノキ科植物(例えば、モロヘイヤ等)から選ばれる緑色植物の緑葉である、製造方法。」(以下、「甲4発明」という。) (3)本件発明1について ア 本件発明1と甲4発明との対比 本件発明1と甲4発明とを対比すると、甲4発明における緑葉のうち、「シソ科植物(例えば、シソ等)」は、本件発明1における「生のハーブ」及びその選択肢の一つである「紫蘇」に相当し、甲4発明における「緑葉乾燥微粉末の製造方法」は、本件発明1における「乾燥ハーブの製造方法」に相当する。また、甲4発明における「緑葉の緑色の褪色や栄養成分の変質に関与する酵素を失活させるために、熱水処理や蒸熱処理のようなブランチング処理をする工程」は、本件発明1における「酵素を失活させる工程」に相当し、甲4発明における「90℃以下で緑葉の水分含量が5重量%以下になるように熱風乾燥する工程」は、本件発明1における「前記ハーブを乾燥する工程」に相当するとともに「前記酵素を失活させる工程の後に、」行われる点を満たしている。さらに、甲4発明における「ブランチング処理された緑葉を冷却水中に浸漬する又は冷風を当てて急冷する工程」は、本件発明1における「前記ハーブを0~30℃まで風冷する工程」と、「前記ハーブを冷却する工程」である限りにおいて一致するとともに、「前記蒸す工程の後、前記乾燥する工程の前に、」と、「前記酵素を失活させる工程の後、前記乾燥する工程の前に」行われる限りにおいて一致する。加えて、甲4発明においては塩類及び糖のいずれも使用しないから、本件発明1における「塩類及び/又は糖を使用しない、」を満たしている。 そうすると、両者は、 「生のハーブの酵素を失活させる工程と、 前記酵素を失活させる工程の後に、前記ハーブを乾燥する工程と、 を備える、 乾燥ハーブの製造方法であって、 前記ハーブがバジル、わさび葉、紫蘇、パクチー、ローズマリー、ルッコラ、セルバチカ、タイム、チャービル、セイジ、ディル、ミント、イタリアンパセリ、オレガノ、マジョラム、フェンネル、セイボリー、コリアンダー、タラゴン、チャイブ、及びレモングラスから選択される少なくとも1種であり、 前記酵素を失活させる工程の後、前記乾燥する工程の前に、前記ハーブを冷却する工程を備え、塩類及び/又は糖を使用しない、製造方法。」 の点で一致し、 相違点甲4-1:本件発明1は、「前記酵素を失活させる工程が、前記生のハーブを30秒~5分間蒸す工程であり、」と特定するのに対し、甲4発明は「熱水処理や蒸熱処理のようなブランチング処理をする工程」と特定する点 相違点甲4-2:本件発明1は、乾燥する工程が「前記ハーブを撹拌する工程を含」むと特定するのに対し、甲4発明はそのように特定されない点 相違点甲4-3:本件発明1は「前記ハーブを0~30℃まで風冷する工程を備え、」と特定するのに対し、甲4発明は「ブランチング処理された緑葉を冷却水中に浸漬する又は冷風を当てて急冷する工程」と特定する点 で相違する。 そこで、上記相違点について検討する。 イ 相違点甲4-1について 甲4の[0015](摘記4-4)には、「熱水処理や蒸熱処理のようなブランチング処理が行われる。このときの処理の温度および時間は、処理する緑葉の量および熱水のpHに応じて適宜決定すればよい」と記載されているが、「蒸熱処理」の具体的な処理条件は記載されておらず、相当する実施例も記載されていないから、相違点甲4-1に係る「30秒~5分間蒸す」という特定の条件を採用する動機はない。また、甲3には、「4cm程度に粗切りした大麦若葉に、40秒間100℃の蒸気を吹き付けてブランチング処理する工程」を含む乾燥大麦若葉を製造する方法が記載されているが、上記2.(3)イに記載したとおり、甲3には、甲3発明の乾燥大麦若葉を製造する方法を大麦若葉以外の原料に適用することについて記載も示唆もされておらず、甲3発明の乾燥大麦若葉を製造する方法が、香りを主として香辛料的に使用することが求められる「ハーブ」の製造に適したものであることを示唆する記載もないから、甲4発明におけるブランチング処理として、甲3に記載された「40秒間100℃の蒸気を吹き付け」るという条件を採用することは、当業者が動機付けられないことである。さらに、他の全ての証拠の記載を参酌しても、甲4発明におけるブランチング処理の条件として、相違点甲4-1に係る「30秒~5分間蒸す」という特定の条件を採用することの動機付けとなる記載は見いだせない。そして、本件発明1が発揮する「鮮やかな緑色を有する乾燥ハーブを得ることができる。更に、旨味を有する乾燥ハーブを得ることができる。」([0010])という効果は、当業者が予測することのできない顕著なものである。 よって、相違点甲4-1に係る本件発明1の特定事項は、甲4及び他の全ての証拠の記載を参酌しても当業者が容易に想到し得たこととはいえない。 ウ 申立人の主張について 申立人は申立書の34頁において、「甲3は「大麦若葉」が対象であり、ハーブとはいえないものの、いずれも植物の葉である点では両者は共通し、その目的も同じであることから、甲4に甲3を適用することに阻害要因はない」、「その効果も格別顕著であるとはいえない」と主張している。 しかし、上記2.(3)イ及びウに記載したとおり、甲3には、甲3発明における大麦若葉及び乾燥大麦若葉を、香りを主として香辛料的に少量だけ用いる形態で使用することは記載も示唆もされておらず、また、甲3及び他の全ての証拠の記載を参照しても、甲3発明の乾燥大麦若葉を製造する方法が、香りを主として香辛料的に少量だけ用いる形態での使用に適した乾燥物を得られる方法であることは記載も示唆もされていないから、甲3に記載された乾燥大麦若葉の製造方法の製造条件を甲4発明に適用することは、当業者が容易に想到し得ることとはいえない。 また、甲4発明における「緑葉乾燥微粉末」は、甲4の[0002](摘記4-2)に記載されているように「健康食品の素材」として、「野菜ジュースのような液状の形態で、あるいは粉末、顆粒、錠剤のような乾燥形態で」提供されるものであり、また、甲4の[0027](摘記4-6)に記載された「賦形剤、増量剤、結合剤、増粘剤、乳化剤、着色料、香料、食品添加物、調味料などと混合され、用途に応じて、顆粒、錠剤などの形態に成形することもできる」、「例えば、ローヤルゼリー、ビタミン、プロテイン、カルシウム、キトサン、レシチンなどが配合され、さらに糖液および調味料が加えられて味が整えられる。そしてこれらは、必要に応じてハードカプセル、ソフトカプセルなどのカプセル剤、錠剤、もしくは丸剤などに、あるいは粉末状、顆粒状、茶状、ティーバッグ状、もしくは飴状などの形態に成形される」、「ティーバッグ状などの場合、成分を浸出させてから飲んでも良い」という使用方法も、香りを主として香辛料的に少量だけ用いる方法ではないから、「ハーブ」としての使用方法ではない。そうすると、本件発明1が「鮮やかな緑色を有する乾燥ハーブを得ることができる。更に、旨味を有する乾燥ハーブを得ることができる。」という効果を発揮することは、甲4の記載から当業者が予測することのできない顕著なものといえる。 よって、申立人の主張を採用することはできない。 エ 本件発明1についてのまとめ 以上のことから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件発明2~6について 本件発明2~6は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備える製造方法の発明である。そうすると、上記(3)で検討した本件発明1と同様の理由により、本件発明2~6は、いずれも甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (5)理由1-3(甲4に基づく進歩性欠如)についてのまとめ 以上まとめると、本件発明1~6は、いずれも甲4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものでもない。 よって、理由1-3(甲4に基づく進歩性欠如)により本件発明1~6についての特許を取り消すことはできない。 4.理由2(サポート要件違反)について (1)サポート要件の判断手法 特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 (2)本件発明の課題について 本件明細書の[0005]等の記載から見て、本件発明1~4の課題は「鮮やかな色を有する乾燥ハーブ及びその製造方法」を提供することにあり、本件発明5及び6の課題は「鮮やかな色を有する乾燥ハーブの製造方法を含む飲食品又は飲料の製造方法」を提供することにあるものと認められる。 (3)本件明細書の記載について 本件明細書の[0006]には、課題を解決する手段に関し、「本発明者は、所定の方法を採用することによって、鮮やかな色を有する乾燥ハーブが得られることを見出した。更に、意外なことに、旨味を増強できることを見出した。すなわち、本発明は以下の事項を含む。[1]生のハーブの酵素を失活させる工程と、前記酵素を失活させる工程の後に、前記ハーブを乾燥する工程と、を備える、乾燥ハーブの製造方法。」と記載されており、[0010]には、課題解決の作用機序に関し、「生のハーブが有する酵素を失活させることにより、ハーブの退色が防止される。これにより、鮮やかな緑色を有する乾燥ハーブを得ることができる。更に、旨味を有する乾燥ハーブを得ることができる。」と記載されている。また、[0009]には、乾燥ハーブの製造方法を適用できるハーブの具体例が記載され、[0011]には、上記課題解決手段とされる酵素を失活させる工程について、「具体的には、生のハーブを蒸すことにより、酵素を失活させることができる。加えて、生のハーブを蒸すことにより、フレッシュな香りを残しつつ不快な香気を除去することもできる。また、後の乾燥工程と組み合わせることで旨味を増すこともできる。その結果、食べやすい風味の乾燥ハーブを得ることができる。」こと、「ハーブを蒸す時間は、例えば30秒~5分、好ましくは30秒~3分である。蒸す時間が30秒以上であれば、酵素を十分に失活させることができる。また、フレッシュな香りを残しつつ不快な香気を十分に飛ばすことができる。蒸す時間が5分以下であれば、ハーブが黒ずんでしまうこともない。」ことが記載されており、酵素を失活させる工程として生のハーブを蒸す工程を採用すること及びハーブを蒸す時間を特定することにより得られる作用効果が具体的に記載されている。さらに、[0014]~[0015]には、ハーブを蒸す工程の後に行われる乾燥工程について、具体的な乾燥方法及び乾燥条件が記載され、「このような範囲内であれば、微生物が増殖することもなく、また、焦げて目的の風味が得られなくなることもない。」ことが記載されている。加えて、[0024]~[0052]には実施例が記載されており、[0038]の[表1]等の記載から、バジルに対して所定の蒸し工程と加熱乾燥工程とを加えた実施例1~3は、「色」の評価が生のバジル(比較例1)又はフリーズドライ(比較例3)と同等の「3:鮮やかな緑色(実施例1)」又は「2:実施例1ほどではないが、鮮やかな緑色」を超える2.2の評価であったのに対し、蒸し工程を備えないで加熱乾燥を行った比較例2、4及び5は「色」の評価が「2」に満たない1.6又は「1:緑色が薄い(比較例2と同等)」との評価であったことが記載されている。 (4)サポート要件についての判断 本件明細書の記載に接した当業者は、[0006]に課題解決手段として記載された、生のハーブの酵素を失活させる工程と、前記酵素を失活させる工程の後に、前記ハーブを乾燥する工程と、を備える、乾燥ハーブの製造方法において、[0011]に記載された条件で生のハーブを蒸すことにより酵素を充分に失活させることができ、[0010]に記載された作用機序のとおりハーブの退色が防止され、鮮やかな緑色を有する乾燥ハーブが得られると理解することができる。また、実施例の記載を参酌することにより、[0011]に記載された条件で生のハーブを蒸すことにより、実際にハーブの退色が防止され、生のバジルと同等の「3:鮮やかな緑色」と評価される乾燥バジルを製造することができたことを確認することができるから、[0009]に例示されたハーブに対し[0011]に記載された条件で生のハーブを蒸す工程、及び乾燥工程を施せば、実施例と同様にハーブの退色が防止され、鮮やかな色を有する乾燥ハーブが得られると理解することができる。 そうすると、当業者は、 「生のハーブの酵素を失活させる工程と、 前記酵素を失活させる工程の後に、前記ハーブを乾燥する工程と、 を備える、 乾燥ハーブの製造方法であって、 前記酵素を失活させる工程が、前記生のハーブを30秒~5分間蒸す工程であり、 前記ハーブがバジル、わさび葉、紫蘇、パクチー、ローズマリー、ルッコラ、セルバチカ、タイム、チャービル、セイジ、ディル、ミント、イタリアンパセリ、オレガノ、マジョラム、フェンネル、セイボリー、コリアンダー、タラゴン、チャイブ、及びレモングラスから選択される少なくとも1種である、 製造方法。」 の範囲で発明の課題を解決できると認識することができる。本件発明1~4は、当業者が発明の課題を解決できると認識することができる上記発明をさらに限定した発明であるから、いずれも当業者が発明の課題を解決することができると認識することができるものといえる。また、同じ工程を含む本件発明5及び6についても、当業者が発明の課題を解決することができると認識することができるものといえる。 (5)申立人の主張について 申立人は、上記第3 1.(4)のように主張しているが、以下のとおり、いずれの主張も採用することはできない。 ア 「乾燥する工程」について 本件明細書の[0015]には、ハーブを加熱により乾燥させる場合の好ましい条件に関連して、「微生物が増殖することもなく、また、焦げて目的の風味が得られなくなることもない」と記載されており、また、本件明細書には、緑葉を焦がしたり、焦がした「乾燥ハーブ」を製造したりすることを推奨する記載はない。さらに、例えば甲1の[0027]及び甲4の[0019]に記載されているように、緑葉の乾燥物を製造する方法において、乾燥時に緑葉が焦げることを避けることは、本件特許の出願時において周知の技術的事項である。そうすると、当業者は、本件明細書の記載及び本件特許の出願時における技術常識を参酌することにより、本件発明1の「乾燥ハーブ」の製造方法における「乾燥」という用語は、ハーブが焦げることとは区別して用いられている用語であると理解することができ、「ハーブを乾燥する工程」は、「微生物が増殖することもなく、また、焦げて目的の風味が得られなくなることもない」ことを満たすように行われる工程であることを理解することができる。また、本件明細書の[0015]に記載された「例えば60~130℃」という温度が例示にすぎず、130℃を超えると直ちにハーブが焦げてしまうものではないことも理解することができる。よって、本件発明1において乾燥条件が特定されていなくとも、当業者は、本件明細書の記載及び本件特許の出願時における技術常識を参酌することにより、乾燥条件には「ハーブが焦げて鮮やかな緑色が保持できない乾燥条件」は含まれず、本件発明1は発明の課題を解決できるものであると認識することができるといえる。請求項1を直接又は間接的に引用して特定する本件発明2~6についても同様である。 イ 「ハーブ」及び「ローズマリー」について 上記(4)に記載したとおり、本件明細書の[0010]~[0011]等の記載に接した当業者は、本件発明1において選択肢で特定されるハーブであれば、実施例で採用されたバジルと葉の形状、硬さ、香り等の特性が異なるものがあるとしても、いずれも[0011]に記載された「生のハーブを30秒~5分間蒸す」工程を施したときには「生のハーブの酵素を失活させる」ことができ、[0010]に記載された作用機序のとおりハーブの退色が防止され、鮮やかな緑色を有する乾燥ハーブが得られると理解することができる。 また、申立人は甲6を引用し、「ローズマリーは固い葉であり、しかも、葉の形状もバジルと異なり針状である」から、「バジル等の柔らかい植物」とは異なる性状のハーブであると主張しているが、仮にローズマリーとバジルの性状が異なるとしても、例えば甲2の第2頁左上欄14~17行に記載されるように、本件特許の出願時において、それらは当業者にとって同じハーブの範疇に含めることができるものと認識される程度の違いしかないものといえ、いずれも[0011]に記載された「生のハーブを30秒~5分間蒸す」工程を施したときには「生のハーブの酵素を失活させる」ことができ、[0010]に記載された作用機序のとおりハーブの退色が防止され、鮮やかな緑色を有する乾燥ハーブが得られると理解することができる。 よって、当業者は実施例に採用されたバジルを代表的な例として、本件発明1に特定されるハーブの範囲で発明の課題を解決することができると認識することができるから、バジル以外のハーブについて検証が行われていなくとも、本件発明1が発明の詳細な説明に記載した範囲を超えるものであるとはいえない。請求項1を直接又は間接的に引用して特定する本件発明2~6についても同様である。 ウ 「撹拌する工程」、「冷凍する工程」及び「水分含量」について 上記(4)に記載したとおり、本件明細書の[0010]~[0011]等の記載に接した当業者は、本件発明1において選択肢で特定されるハーブに対し、[0011]に記載された「生のハーブを30秒~5分間蒸す」工程を施したときには「生のハーブの酵素を失活させる」ことができ、[0010]に記載された作用機序のとおりハーブの退色が防止され、鮮やかな緑色を有する乾燥ハーブが得られ、発明の課題を解決できると認識することができる。また、[0015]における撹拌についての記載、[0013]における冷凍についての記載、及び[0014]における水分含量についての記載は、[0010]に記載された「生のハーブが有する酵素を失活させることにより、ハーブの退色が防止される。これにより、鮮やかな緑色を有する乾燥ハーブを得ることができる。」という作用機序に照らし、いずれも発明の課題解決には必須の事項ではないと理解することができる。よって、本件発明1において撹拌条件、冷凍工程及び水分含量がいずれも特定されていなくとも、当業者は、本件発明1が発明の課題を解決できるものであると認識することができる。請求項1を直接又は間接的に引用して特定する本件発明2~6についても同様である。 (6)申立理由2(サポート要件違反)についてのまとめ 以上のことから、特許請求の範囲の記載は明細書のサポート要件に適合するものといえるので、本件発明1~6はいずれも発明の詳細な説明に記載したものであるといえ、特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号に適合するものであり、それらの発明についての特許は、同法第36条第6項に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものである。 よって、申立理由2(サポート要件違反)により本件発明1~6についての特許を取り消すことはできない。 第5 むすび 以上のとおり、本件発明1~6についての特許は、上記のいずれの特許異議申立理由によっても取り消すことはできない。 また、他に、これらの特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700695

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