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特許異議申立

2025-700714

審判番号
2025-700714
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-170875
登録番号
7619992
請求日
2025年07月10日
審決日
2026年05月25日
公報発行日
2026年09月25日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】日清食品ホールディングス株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人有古特許事務所
  • 【異議申立人】小形谷 美致子
審判長/審判官
  • 審判長 植前 充司
  • 審判官 宮久保 博幸
  • 審判官 松田 成正
分類
P1651.121-ZC (A23L) / P1651.536-ZC (A23L) / P1651.537-ZC (A23L)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第2項、特許法第113条第2号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7619992号発明「冷凍お好み焼き」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7619992号の請求項1及び3に係る特許を取り消す。 特許第7619992号の請求項2に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7619992号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし3に係る特許についての出願は、令和 4年10月25日に出願され、令和 7年 1月14日にその特許権の設定登録(請求項の数 3)がされ、同年同月22日に特許掲載公報が発行された。 その後、当該特許に対し、令和 7年 7月10日に小形谷 美致子(以下、「特許異議申立人」という。)が、全ての請求項に係る特許に対して特許異議申立てを行い、令和 8年 1月 5日付けで取消理由が通知されたが、これに対し、特許権者(日清食品ホールディングス株式会社)からは何ら応答がなかったものである。 第2 本件特許発明 特許第7619992号の請求項1ないし3に係る発明(以下、「本件特許発明1」のようにいい、総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 穀粉類と、難水溶性カルシウム塩と、湿熱処理澱粉及びリン酸架橋澱粉からなる群から選択される1種類以上の澱粉と、を含む、冷凍お好み焼き。 【請求項2】 前記穀粉類100重量部に対して、前記難水溶性カルシウム塩を1~20重量部含有し、かつ前記湿熱処理澱粉及びリン酸架橋澱粉からなる群から選択される1種類以上の澱粉を4~24重量部含有する、請求項1記載の冷凍お好み焼き。 【請求項3】 前記難水溶性カルシウム塩の主成分が炭酸カルシウムである、請求項1又は2記載の冷凍お好み焼き。」 第3 特許異議申立書に記載した申立理由の概要 特許異議申立人が申し立てた請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。 1 申立理由1(甲第1号証を主たる証拠とする進歩性) 本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証、甲第3号証~甲第6号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 2 申立理由2(甲第2号証を主たる証拠とする進歩性) 本件特許の請求項1ないし3に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証~甲第6号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 3 証拠方法 ・甲第1号証:特開2022-51308号公報 ・甲第2号証:特開2019-154276号公報 ・甲第3号証:特開2002-186468号公報 ・甲第4号証:特開平7-147946号公報 ・甲第5号証:特開平11-18681号公報 ・甲第6号証:特開平7-303457号公報 証拠の表記については、特許異議申立書における記載にしたがった。以下、「甲1」のようにいう。 第4 令和 8年 1月 5日付け取消理由通知に記載した取消理由の概要 当審が令和 8年 1月 5日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は次のとおりである。なお、取消理由1には、申立理由1のうち本件特許発明1及び3に係る部分が包含される。 1 取消理由1(甲第1号証を主たる証拠とする進歩性) 本件特許の請求項1及び3に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証、甲第3号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明することができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 2 取消理由2(サポート要件) 本件特許の請求項1及び3に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。 (1)本件特許発明1について ア 本件特許発明1の発明の課題は、「冷凍時及び電子レンジ解凍時における、生地の厚みの低減を抑制した冷凍お好み焼きを提供すること」(【0007】)で、「冷凍時及び解凍時においてもしっとり感があって口溶けの良い食感を有し、良好な厚みを維持できる」(【0018】)ものであるところ、本件特許発明1を具体的に説明する実施例として、【0019】ないし【0036】及び表1ないし表6が示されている。 イ 実施例7のサンプルは、【表3】から、穀粉類である「小麦粉」と、難水溶性カルシウム塩である「炭酸カルシウム」を24重量%と、「湿熱処理澱粉」と、を含むことが理解でき、本件特許発明1の発明特定事項を満たしているといえる。 しかしながら、官能評価の結果を示す【表4】において、実施例7の「製造直後の食感」と「解凍時の食感」はともに「△」(やや不良)の評価結果であり、 【0031】には、「炭酸カルシウムの添加量が多すぎる場合、ぼそぼそとした食感になった。」と記載されている。 してみると、炭酸カルシウム、すなわち、難水溶性カルシウム塩の含有量が特定されていない本件特許発明1は、発明の課題を解決できることが裏付けられているとはいえない。また、出願時の技術常識に照らし、本件特許発明1が発明の課題を解決できると認識できるともいえない。 よって、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。 ウ 実施例11のサンプルは、【表5】において、穀粉類である「小麦粉」と、難水溶性カルシウム塩である「炭酸カルシウム」と、「湿熱処理澱粉」を2重量%と、を含み、また、実施例16のサンプルは、【表5】において、穀粉類である「小麦粉」と、難水溶性カルシウム塩である「炭酸カルシウム」と、「湿熱処理澱粉」を30重量%と、を含むことから、実施例11と16のサンプルは、ともに本件特許発明1の発明特定事項を満たしているといえる。 しかしながら、官能評価の結果を示す【表6】において、実施例11の「解凍時の食感」と「解凍時の厚み」はともに「△」(やや不良)の評価結果であり、実施例16の「解凍時の食感」は「△」(やや不良)の評価結果であり、【0036】には、「湿熱処理澱粉」「を添加した場合のみ、解凍時の厚みがほとんど維持された。実施例11~16で示すように、小麦粉100重量部に対し、4重量部以上の添加で厚みの低減抑制の効果を発揮した。」「一方で、湿熱処理澱粉の添加量が多すぎる場合、パサついた食感になった。」と記載されている。 してみると、湿熱処理澱粉の含有量が特定されていない本件特許発明1は、発明の課題を解決できることが裏付けられているとはいえない。また、出願時の技術常識に照らし、本件特許発明1が発明の課題を解決できると認識できるともいえない。 よって、本件特許の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に適合するものではない。 エ 上記ア~ウより、本件特許発明1に関して、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしているものとはいえない。 (3)本件特許発明3について 本件特許発明3についても、上記(1)と同様に、特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしているものとはいえない。 第5 当審の判断 1 取消理由についての判断 本件特許の請求項1及び3に係る特許について、令和 8年 1月 5日付けで取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者は応答しなかった。 そして、上記の取消理由は妥当なものと認められるので、本件特許の請求項1及び3に係る特許は、上記の取消理由によって取り消すべきものである。 2 取消理由として採用しなかった申立理由についての判断 以下に述べるとおり、請求項2に対する申立理由1及び申立理由2は理由がないものと判断される。 (1)請求項2に対する申立理由1(甲1を主たる証拠とする進歩性)について ア 甲1に記載された事項等 (ア)甲1に記載された事項 甲1には、「小麦粉焼成和風食品用ミックス、及びそれを用いた小麦粉焼成和風食品の製造」に関し、次の記載がある。 「【請求項1】 少なくとも小麦粉を含む穀粉、 α化澱粉、並びに マルトース生成α-アミラーゼ、マルトテトラオース生成α-アミラーゼ、β-アミラーゼ、及びキシラナーゼよりなる群から選択される少なくとも一種の酵素を含有することを特徴とする、 小麦粉焼成和風食品用ミックス。 【請求項2】 前記小麦粉焼成和風食品が、たこ焼、明石焼、お好み焼、ねぎ焼、いか焼(大阪風)、チヂミ、もんじゃ焼、熊本ちょぼ焼、洋食焼、どんどん焼、及びこれらに類する小麦粉焼成和風食品からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載する小麦粉焼成和風食品用ミックス。 【請求項3】 請求項1又は2に記載する小麦粉焼成和風食品用ミックス及び水を含有するバッターの焼成物を一部に有する、小麦粉焼成和風食品。 【請求項4】 前記小麦粉焼成和風食品が冷凍食品である、請求項3に記載する小麦粉焼成和風食品。」 「【0007】 本発明は、後述するたこ焼やお好み焼などに求められる食感を有する小麦粉焼成和風食品であって、バッターを調製後、時間が経過してもバッターの性状が安定しており、所望の形状を難なく製造することができる小麦粉焼成和風食品を提供することを課題とする。また、本発明は、小麦粉焼成和風食品に対して求められる食感、具体的には、例えばたこ焼については中身がしっとりやわらかく、口溶けのよいとろみのある食感、またお好み焼については口溶けがよい食感など、良好な食感を有する小麦粉焼成和風食品を成形性よく製造することができる小麦粉焼成和風食品用ミックスを提供することを課題とする。 さらに本発明は当該小麦粉焼成和風食品の製造方法を提供することを課題とする。」 「【発明を実施するための形態】 【0014】 (I)小麦粉焼成和風食品用ミックス 本発明の小麦粉焼成和風食品用ミックス(以下、単に「本発明ミックス」とも称する)は、穀粉、α化澱粉、並びにマルトース生成α-アミラーゼ、マルトテトラオース生成α-アミラーゼ、β-アミラーゼ、及びキシラナーゼよりなる群から選択される少なくとも一種の酵素を含有することを特徴とする。 なお、本発明において小麦粉焼成和風食品用ミックスとは、後述するたこ焼やお好み焼などの小麦粉焼成和風食品のバッターを調製するために使用される混合物である。その形状は、制限はされないが、好ましくは粉体状を例示することができる。 以下、本発明ミックスの成分について説明する。 【0015】 [穀粉] 本発明ミックスにおいて穀粉として主に使用されるのは小麦粉である。 本発明ミックスに使用する小麦粉としては、特に制限されず、例えば強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉、デュラム小麦粉、及びこれらの熱処理粉などを例示することができる。これらは一種単独で使用しても、二種以上を任意に組み合わせて用いることもできる。好ましくは薄力粉又は中力粉であり、薄力粉又は中力粉と他の小麦粉とを組み合わせて用いてもよい。特に、薄力粉又は中力粉をミックスの原料として、後述するα化澱粉及び酵素と組み合わせることで、成形性(作業性)、形状、または食感(とろみ、口溶け)が良好な小麦粉焼成和風食品を調製することができる。 【0016】 本発明ミックス中の小麦粉の配合割合としては、50質量%以上から適時選択することができる。好ましくは80~99質量%、より好ましくは85~95質量%である。 【0017】 なお、本発明の効果を妨げないことを限度として、本発明ミックスに、小麦粉に加えて他の穀粉を配合することもできる。かかる他の穀粉としては、上記の限り制限されないものの、例えば、大麦、ライ麦、蕎麦、稗、粟、はと麦、とうもろこし、ホワイトソルガム、及び米(餅米を含む)等の穀類や大豆等の豆類の粉体等を例示することができる。 【0018】 また、穀粉には、植物由来の澱粉、またはこれらに物理的または化学的な加工が施された加工澱粉を配合することもできる。 植物由来の澱粉には、制限されないものの、例えば、馬鈴薯澱粉、餅種(以下、ワキシーともいう)の馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、甘藷澱粉、サゴ澱粉、米澱粉、及び、餅米澱粉等が含まれる。また、加工澱粉には、制限されないものの、例えば、酵素処理澱粉、酸化澱粉、酸処理澱粉、酢酸澱粉(アセチル化澱粉)等のエステル化澱粉、リン酸化澱粉、ヒドロキシプロピル化澱粉等のエーテル化澱粉、リン酸架橋澱粉やアジピン酸架橋澱粉等の架橋澱粉、及び、複数の加工を組み合わせた加工澱粉(例えば、アセチル化酸化澱粉、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、リン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉等)が含まれる。 【0019】 [α化澱粉] α化澱粉は、前述する澱粉または加工澱粉(以下、α化する原料澱粉という意味で、単に「原料澱粉」とも称する)を水の存在下で加熱して糊化(α化)させた澱粉である。α化の方法に特に制限はなく、例えばドラムドライ法やスプレードライ法等も含まれる。本発明ミックスに配合するα化澱粉は、制限されないものの、前記原料澱粉が、好ましくは加工澱粉であり、より好ましくは架橋澱粉、アセチル化澱粉、及びエーテル化澱粉である。なかでも架橋澱粉、特にリン酸架橋澱粉が好ましい。 本発明ミックスには、原料澱粉の種類に応じて、α化澱粉を一種単独で配合しても、また二種以上を任意に組み合わせて配合してもよい。α化澱粉として、好ましくは、前記の通り、リン酸架橋澱粉をα化した澱粉(α化リン酸架橋澱粉)であり、当該リン酸架橋澱粉にはヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉、及びリン酸モノエステル化リン酸架橋澱粉等も含まれる。 【0020】 本発明ミックスに配合するα化澱粉の割合としては、本発明の効果を奏する範囲であればよい。具体的には、小麦粉焼成和風食品の焼成時の成形性(作業性)に悪影響を与えることなく、後述する酵素配合による食感改良効果を維持または増強するように働く配合割合を挙げることができる。また小麦粉焼成和風食品を冷凍後、再加熱した場合でも、酵素配合による食感改良効果を維持するか、または増強するように働く配合割合であることが好ましい。かかるα化澱粉の配合割合として、本発明ミックス中の穀粉100質量%あたり、40質量%以下の範囲から設定することができる。好ましくは0.1~40質量%、より好ましくは1~30質量%の範囲を挙げることができる。」 「【0065】 実験例4 お好み焼の製造 表4に記載する組成からなるお好み焼焼成用の生地(バッター)を用いて、お好み焼を焼成し、その食感を評価した。またその一部を冷凍保存後、再加熱して食感を評価した。 【0066】 (1)お好み焼ミックス、及びバッターの調製 表4に記載する配合割合で各材料を混合して、お好み焼用ミックスを調製した。酵素量は、酵素を除くお好み焼用ミックス100gあたりの酵素活性として単位(ユニット)で示した。表4に記載する割合の水に、調製したお好み焼用ミックスを加え、攪排混合して、お好み成用生地(バッター)(被験試料4-1~4-6)を調製した。調製後、お好み焼製造まで、10~15℃の暗所に3時間静置保存した。 【0067】 (2)お好み焼の製造 上記で調製したバッター125質量部に、具材としてキャベツ(粗みじん切り)125質量部を混合したものを、サラダ油を引いて200℃に加熱した鉄板の上で、15cm径のセルクルを用いて形状を整えながら、片面5分間焼成し、次いでコテを用いて反転してさらに5分間焼成して、お好み焼を製造した(被験試料4-1~4-6)。また、各お好み焼の一部を急速凍結庫(-35℃)で凍結し、冷凍庫(-18 ℃)で1週間保管した。」 「【0069】 (b)食感(口溶け)の評価 冷凍保管後、冷凍状態にある冷凍お好み焼(被験試料4-1~4-6)を、電子レンジ(出力500W、7分間/1枚)で加熱した。これを10名の専門パネルに熱い状態で食べてもらい、所定のスコア基準に従って、生地の食感(口溶け)を評価してもらった。なお評価にあたり、事前に10名の専門パネル間同士で、各自が感じる生地の食感とその強さを、下記のスコアの基準に従って摺り合わせて統一した。 [食感のスコア碁準] 5:口溶けが非常によく、非常にふんわりとした軽い食感 4:口溶けがよく、ふんわりとした軽い食感 3:口溶けがややよく、軽い食感 2:口溶けがやや悪い 1:口溶けが悪く、重い食感。 【0070】 (C)評価結果 評価結果を表4に併せて示す。食感の評価結果は、10名のパネルの平均値である。 【表4】 [図:0001439165000001.jpg] 表4に示すように、お好み焼のミックスに、小麦粉に加えてα化澱粉を配合しても、十分な食感(とろみ)改善効果は認められないにも関わらず(被験試料4-2)、これにさらにマルトース生成α-アミラーゼ、マルトテトラオース生成α-アミラーゼ、β-アミラーゼ、又はキシラナーゼを配合することで、口溶けのよいふんわりと軽い食感を有するお好み焼が焼成できることが確認された(被験試料4-3~4-6)。 以上のことから、たこ焼のみならず、お好み焼についても、小麦粉に加えて、α化澱粉、並びにマルトース生成α-アミラーゼ、マルトテトラオース生成α-アミラーゼ、β-アミラーゼ、キシラナーゼといった酵素を配合したミックス粉で調製した生地を焼成することで、良好な焼成作業性を維持しつつ、口溶けがよく、ふんわりとした軽い食感を有する所望の小麦粉焼成和風食品が製造できることが確認された。」 (イ)甲1に記載された発明 上記(ア)の記載、特に実施例4及び表4を中心に整理すると、甲1には次の発明が記載されていると認める。 <甲1発明> 「小麦粉及びα化リン酸架橋澱粉を含む、表4の被験試料4-3~4-6の原材料からなる生地を焼成し、冷凍保存した、お好み焼。」(以下、「甲1発明」という。) イ 本件特許発明2についての対比・判断 本件特許発明2と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「小麦粉」と「α化リン酸架橋澱粉」は、それぞれ、本件特許発明2の「穀粉類」と「リン酸架橋澱粉」に相当する。 そして、甲1発明は小麦粉78質量部に対し、α化リン酸架橋澱粉を7質量部含むから、本件特許発明2の「前記穀粉類100重量部に対して」、「前記湿熱処理澱粉及びリン酸架橋澱粉からなる群から選択される1種類以上の澱粉を4~24重量部含有する」との特定事項を満たす。 また、甲1発明は、「生地を焼成し、冷凍保存した、お好み焼」であることから、冷凍お好み焼きであることが理解できる。 してみると、両者の間の一致点・相違点は次のとおりである。 (一致点) 「穀粉類と、湿熱処理澱粉及びリン酸架橋澱粉からなる群から選択される1種類以上の澱粉と、を含み、 前記穀粉類100重量部に対して、前記湿熱処理澱粉及びリン酸架橋澱粉からなる群から選択される1種類以上の澱粉を4~24重量部含有する、冷凍お好み焼き。」 (相違点2-1) 本件特許発明2は「前記穀粉類100重量部に対して、前記難水溶性カルシウム塩を1~20重量部含有」することを特定するのに対して、甲1発明では「難水溶性カルシウム塩」を含むか否かを含め、含有量が明らかでない点。 (判断) 上記相違点2-1について検討する。 甲3(請求項1~4、【0002】、【0007】)には、保形性に優れた、カルシウムを含有する小麦粉焼成食品用ミックスから製造された小麦粉焼成食品であって、その小麦粉焼成食品として、お好み焼きが開示されているものであるところ、甲3の【0026】には、カルシウムは「保形性の確保とその持続性の向上に資するもの」であって、「貝殻末、サンゴ末、真珠層末、卵殻末」が例として開示されている。ここで、「貝殻末、サンゴ末、真珠層末、卵殻末」は、主に炭酸カルシウムからなるものであるから、当業者であれば、難水溶性カルシウム塩にあたることが理解できる。 しかしながら、甲1において、甲3の記載事項を根拠とし、「難水溶性カルシウム塩」を添加するものとしても、甲1には、甲1発明において「難水溶性カルシウム塩」の含有量を相違点2-1に係る本件特許発明2の発明特定事項を満たすものとする動機付けとなる記載はない。また、他の証拠にも、甲1発明において、相違点2-1に係る本件特許発明2の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載があるとはいえない。 したがって、甲1及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、甲1発明において、相違点2-1に係る本件特許発明2の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。 ウ 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は特許異議申立書の第23頁ないし26頁において、概ね以下の点を主張する。 (ア)本件特許発明2は難水溶性カルシウム塩の配合量について規定するものであるのに対して、甲1には当該成分を配合すること自体について記載がない点について、甲3の記載事項から、お好み焼き等に用いる小麦粉焼成食品用ミックス(小麦粉焼成和風食品用ミックス)において、リン酸架橋澱粉、カルシウム、加熱粉のいずれも冷凍後の小麦粉焼成食品の保形性を向上させることができる成分であって併用可能であること、さらにその効果は相加・相乗的に奏されるものであることは当業者にとって明らかである。 (イ)また、甲3に記載される小麦粉焼成食品用ミックスは、当該小麦粉焼成食品用ミックスに対するカルシウムの添加量が0.1~5重量%で十分である旨が記載されており([0026])、当該小麦粉焼成食品用ミックスが小麦粉100重量部に対し、0.05~10重量部のゼラチンを含有すること([0024])から、小麦粉100重量部に対して添加し得るカルシウムの添加量を算出すると、約0.1~5.5重量%になる。 (ウ)してみれば、甲1に記載された発明についても、甲1の段落[0020]等に記載されるとおり、小麦粉焼成食品に対し冷凍耐性を付与することを課題とするものであるから、甲3の記載を参酌して、甲1に記載された発明に対し、卵殻カルシウムなどのカルシウム分(本件特許発明2における「難水溶性カルシウム塩」に相当)を更に配合することは当業者が容易になし得たことであり、併せてその配合量についても、甲3の記載に基づき、当業者が容易に想到し得るものである。また、甲1及び甲3の記載を鑑みれば、本件特許発明2において難水溶性カルシウム塩を所定量配合することによって奏される効果についても当業者が予測し得る程度のことであり、格別顕著なものであるとは言えない。 エ ここで上記主張について検討する。 特許異議申立人は、上記ウ(イ)において、甲3に記載される小麦粉焼成食品用ミックスは、当該小麦粉焼成食品用ミックスに対するカルシウムの添加量の記載から、小麦粉100重量部に対して添加し得るカルシウムの添加量を算出すると、約0.1~5.5重量%になる旨主張する。 しかしながら、上記算出による添加量は、甲3に記載の小麦粉焼成食品用ミックスにおけるカルシウムの添加量を算出したことに過ぎない。すなわち、甲3を適用した甲1発明におけるカルシウムの添加量を算出したものではないから、上記算出結果を根拠として採用することはできない。 また、上記イで述べたとおり、甲1において、「難水溶性カルシウム塩」の含有量を特定する動機付けとなる記載はないから、仮に上記算出結果を採用できるとしても、小麦粉100質量部に対してカルシウムの添加量は約0.1~5.5重量部であり、相違点2-1に係る本件特許発明2の発明特定事項を満たすものとはならない。 ここで、特許異議申立人は特許異議申立書において、湿熱処理を施した澱粉を用いること、あるいは湿熱処理澱粉及びリン酸架橋澱粉を併用する甲4ないし6を提示しているが、これらの証拠にも、甲1において、「難水溶性カルシウム塩」の含有量を特定する動機付けとなる記載はない。 そして、他の証拠にも、甲1発明において、相違点1に係る本件特許発明2の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載があるとはいえない。 よって、特許異議申立人の主張は採用し得ない。 オ 申立理由1についてのまとめ したがって、本件特許発明2は、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。 上記のとおりであるから、請求項2に対する申立理由1には理由がない。 (2)申立理由2(甲2を主たる証拠とする進歩性)について ア 甲2に記載された事項等 (ア)甲2に記載された事項 甲2には「焼き物用生地、焼き物、及びこれらの製造方法」について、おおむね次の事項が記載されている。 「【請求項1】 生地ベースとレトルトバッターとを含む焼き物用生地であって、 前記生地ベースが、小麦粉と水とを含んでおり、 前記レトルトバッターが、澱粉組成物と水とを含んでおり、 前記澱粉組成物が、糊化抑制澱粉と糊化促進澱粉とからなり、 前記糊化抑制澱粉が、5~15質量%の澱粉水溶液又は澱粉水分散液を70~90℃で加熱混合した際に糊化しないという特性;及び前記加熱混合した液を室温まで冷却した後、121℃で30分間加熱した液の、24℃における粘度が500~4,000mPa・sであるという特性を有する澱粉であり、 前記糊化促進澱粉が、5~15質量%の澱粉水溶液又は澱粉水分散液を70~90℃で加熱混合した際に糊化するという特性;及び前記加熱混合した液を室温まで冷却した後、121℃で30分間加熱した液の、24℃における粘度が4,000mPa・sを超えて50,000mPa・s以下であるという特性を有する澱粉であり、 前記糊化抑制澱粉と前記糊化促進澱粉の質量比が、15/85~85/15であり、 前記澱粉組成物の含有量が、前記レトルトバッターの総量に対して、4.5~13.5質量%であり、 前記レトルトバッターの含有量が、前記生地ベース100質量部に対して、2~25質量部である、上記焼き物用生地。 【請求項2】 請求項1記載の焼き物用生地を焼成してなる焼き物。 【請求項3】 たこ焼き又はお好み焼きである、請求項2記載の焼き物。 【請求項4】 冷凍されている、請求項2又は3記載の焼き物。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0004】 本発明の目的は、やわらかく、なめらか又はしっとりとしていて、口溶けの良好な焼き物及び該焼き物用の生地を提供することにある。 また、本発明の目的は、冷蔵又は冷凍後に再加熱しても、やわらかく、なめらか又はしっとりとしていて、口溶けの良好な焼き物及び該焼き物用の生地を提供することにある。 さらに、本発明の目的は、上記焼き物及び焼き物用生地を簡便に製造できる方法を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0005】 本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、小麦粉と水とを含む生地ベース100質量部に対して、糊化抑制澱粉と糊化促進澱粉と水とを含む特定のレトルトバッターを2~25質量部配合すると、やわらかく、なめらか又はしっとりとしていて、口溶けの良好な焼き物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。」 「【実施例】 【0031】 以下に本発明を具体的に説明するために実施例を示すが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。 【0032】 (1)製造例:レトルトバッター 糊化抑制澱粉としては、リン酸架橋タピオカ澱粉(松谷化学工業株式会社製のパインベークCC)を使用した。上記澱粉は、9質量部の澱粉を91質量部の水に懸濁し、75℃で加熱しても糊化せず、該加熱液を室温まで冷却した後、121℃で30分間加熱し、No.4ローターを装着したC型粘度計(東京計器社製のCVR-20形粘度計)を使用して、24℃の温度条件下、回転速度20rpmで1分間回転後の指示値を読み取ると、1,900mPa・sであった。 糊化促進澱粉としては、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉(日本食品化工株式会社製のクリアテクストB3)を使用した。上記澱粉は、9質量部の澱粉を91質量部の水に懸濁し、75℃で加熱すると糊化し、該加熱液を室温まで冷却した後、121℃で30分間加熱し、No.4ローターを装着したC型粘度計(東京計器社製のCVR-20形粘度計)を使用して、24℃の温度条件下、回転速度20rpmで1分間回転後の指示値を読み取ると、21,000mPa・sであった。 糊化抑制澱粉(リン酸架橋タピオカ澱粉)4.5質量%、糊化促進澱粉(ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉)4.5質量%を、水91質量%に撹拌し懸濁液とした。この懸濁液を75℃で加熱混合して均一化し、200gをレトルトパウチに充填、密封し、121℃で30分間レトルト処理してレトルトバッターを得た(糊化抑制澱粉:糊化促進澱粉=50:50、24℃における粘度:6,000mPa・s)。 また、糊化抑制澱粉と糊化促進澱粉の質量比を、表1に示す値に調整する以外は、上記と同様にして各種レトルトバッターを調製した。」 「【0038】 (4)試験例3:お好み焼き 薄力小麦粉97.5質量部、食塩1質量部、ベーキングパウダー1.5質量部に対して水170質量部を加え、ハンドミキサー(クイジナート社、HM-050SJ)を使用し1分間撹拌し、お好み焼き用生地ベースを調製した。 上記お好み焼き用生地ベースに対し、上記製造例のレトルトバッター(糊化抑制澱粉:糊化促進澱粉=50:50)を表3の配合比率でミックスし、お好み焼き用生地を調製した。 上記生地50質量部に対して、刻みキャベツ35質量部、揚げ玉10質量部、紅ショウガ5質量部を加え、よく混合した後、180℃に予熱し表面に液状油を塗布した鉄板で片面5分間ずつ焼成し、お好み焼きを作製した。 上記お好み焼きを室温で30分間放冷後、-25℃の急速冷凍庫で冷凍、次いで-18℃の冷凍保存庫で1週間保存した。その後、600Wの電子レンジで5分間加熱し、試食評価した。試食評価は、熟練のパネラー10名で下記の評価基準に従い評価し、その評価点数の分布及び平均値を示した。 <評価基準> ・食感 5点:非常に柔らかく、極めてしっとり感が強い 4点:柔らかく、しっとり感が強い 3点:柔らかさとしっとり感がややある 2点:やや硬く、しっとり感がやや弱い 1点:固く、しっとり感がない ・口溶け感 5点:べたつきが全くなく、口溶けが極めて良好 4点:べたつきがなく、口溶けが良好 3点:べたつきはほぼなく、口溶けは許容できる 2点:べたつきがややあり、口溶けがやや悪い 1点:べたつきが強く、口溶けが悪い」 「【0039】 【表3】 [図:0001439165000002.jpg] 」 (イ)甲2に記載された発明 上記(ア)の記載、特に試験例3を中心に整理すると、甲2には次の発明が記載されていると認める。 「薄力小麦粉、食塩、ベーキングパウダーに対して水を加え、撹拌し、お好み焼き用生地ベースを調製し、製造例のレトルトバッターとして、糊化抑制澱粉(リン酸架橋タピオカ澱粉)、糊化促進澱粉(ヒドロキシプロピル化リン酸架橋澱粉)を、水に撹拌し懸濁液とし、この懸濁液を加熱混合して均一化し、レトルト処理してレトルトバッターを得て、上記お好み焼き用生地ベースに対し、上記製造例のレトルトバッターをミックスすることにより、お好み焼き用生地を調製し、焼成し、急速冷凍庫で冷凍、次いで冷凍保存庫で保存した、お好み焼き。」(以下、「甲2発明」という。) イ 対比・判断 (ア)本件特許発明2について 本件特許発明2と甲2発明とを対比すると、甲2発明の「薄力小麦粉」は、本件特許発明2の「穀粉類」に相当する。 また、甲2発明は、「お好み焼き用生地を調製し、焼成し、急速冷凍庫で冷凍、次いで冷凍保存庫で保存した、お好み焼き」であることから、冷凍お好み焼きであることが理解できる。 してみると、両者の間の一致点・相違点は次のとおりである。 (一致点) 「穀粉類と、湿熱処理澱粉及びリン酸架橋澱粉からなる群から選択される1種類以上の澱粉と、を含む、冷凍お好み焼き。」 (相違点2-2) 本件特許発明2は「前記穀粉類100重量部に対して、前記難水溶性カルシウム塩を1~20重量部含有」することを特定するのに対して、甲2発明では「難水溶性カルシウム塩」を含むか否かを含め、含有量が明らかでない点。 (相違点2-3) 「前記湿熱処理澱粉及びリン酸架橋澱粉からなる群から選択される1種類以上の澱粉」について、本件特許発明2では「前記穀粉類100重量部に対して」、「4~24重量部含有」することを特定するのに対して、甲2発明では含有量についてそのような特定がされていない点。 (判断) 上記相違点2-2について検討する。 甲2には、「本発明の目的は、やわらかく、なめらか又はしっとりとしていて、口溶けの良好な焼き物及び該焼き物用の生地を提供することにある。また、本発明の目的は、冷蔵又は冷凍後に再加熱しても、やわらかく、なめらか又はしっとりとしていて、口溶けの良好な焼き物及び該焼き物用の生地を提供することにある。さらに、本発明の目的は、上記焼き物及び焼き物用生地を簡便に製造できる方法を提供することにある。」(【0004】)との記載があり、上記相違点2-2に係る本件特許発明2の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。また、他の証拠にも、甲2発明において、相違点2-2に係る本件特許発明2の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載があるとはいえない。 したがって、甲2及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、甲2発明において、相違点2-2に係る本件特許発明2の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。 ウ 特許異議申立人の主張について 特許異議申立人は特許異議申立書の第31頁ないし33頁において、概ね以下の点を主張する。 本件特許発明2と甲2発明とは、少なくとも「本件特許発明2は難水溶性カルシウム塩の配合量について規定するものである」のに対して、甲2には「当該成分を配合すること自体について記載がない点」で相違するが、甲3の記載事項から、お好み焼き等に用いる小麦粉焼成食品用ミックス(小麦粉焼成和風食品用ミックス)において、リン酸架橋澱粉、カルシウム、加熱粉のいずれも冷凍後の小麦粉焼成食品の保形性を向上させることができる成分であって併用可能であること、さらにその効果は相加・相乗的に奏されるものであることは当業者にとって明らかである旨、甲3に記載される小麦粉焼成食品用ミックスは、当該小麦粉焼成食品用ミックスの成分及びこの成分含有比に係る記載([請求項1][0013][0024][0026])から小麦粉100重量部に対するカルシウムの添加量を算出すると、約0.1~5.5重量%になる旨、甲2に記載された発明についても、甲2の段落[0038][0039]等に記載されるとおり、小麦粉焼成食品に対する冷凍耐性の付与が課題(目的)の一つと解されるものであるから、甲3の記載を参酌して、甲2に記載された発明に対し、卵殻カルシウムなどのカルシウム分(本件特許発明2における「難水溶性カルシウム塩」に相当)を更に配合することは当業者が容易になし得たことであり、併せてその配合量についても、甲3の記載に基づき、当業者が容易に想到し得るものである旨、そして、効果についても当業者が予測し得る程度のことであり、格別顕著なものであるとは言えない旨、それぞれ主張する。 エ ここで上記主張について検討する。 (ア)甲2に記載された発明の課題は、「本発明の目的は、やわらかく、なめらか又はしっとりとしていて、口溶けの良好な焼き物及び該焼き物用の生地を提供することにある。また、本発明の目的は、冷蔵又は冷凍後に再加熱しても、やわらかく、なめらか又はしっとりとしていて、口溶けの良好な焼き物及び該焼き物用の生地を提供することにある。さらに、本発明の目的は、上記焼き物及び焼き物用生地を簡便に製造できる方法を提供することにある。」(【0004】)であるから、甲2発明において、「保形性の確保とその持統性の向上に資する」(甲3の【0007】)ものである甲3に記載の「カルシウム」を採用する動機付けとなる記載があるとはいえない。また、甲2発明において「カルシウム」を採用することが当業者において自明の事項とも認められない。 よって、特許異議申立人の主張は採用し得ない。 (イ)甲4ないし6について また、特許異議申立人は特許異議申立書において、湿熱処理を施した澱粉を用いること、あるいは湿熱処理澱粉及びリン酸架橋澱粉を併用する甲4ないし6を提示しているが、これらの証拠にも、甲2において、「難水溶性カルシウム塩」を採用する動機付けとなる記載はない。 オ 申立理由2についてのまとめ よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明2は、甲2発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるとはいえない。 上記のとおりであるから、申立理由2には理由がない。 第6 結語 以上のとおり、本件特許の請求項1及び3に係る特許は、特許法第113条第2号及び4号に該当し取り消すべきものである。 また、本件特許の請求項2に係る特許は、特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては取り消すことはできない。 他に、本件特許の請求項2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700714

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