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特許異議申立

2015-700214

感光性樹脂組成物、ドライフィルム、硬化物およびプリント配線板

審判番号
2015-700214
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2013-249062外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2015年11月25日
審決日
2016年11月09日
公報発行日
2017年04月28日
結論
請求成立(取消)
当事者
審判長/審判官
分類
P1651.113-ZDA(G03F) / P1651.121-ZDA(G03F)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項特許法113条2号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第120条の5第2項第1号、特許法第113条第2号
データ出所
審決公報(SGML)

事件の表示

特許第5723958号発明「感光性樹脂組成物,ドライフィルム,硬化物およびプリント配線板」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。

結論

【結 論】 特許第5723958号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり,訂正後の請求項〔1,3~6〕,〔7~10〕について訂正することを認める。 特許第5723958号の請求項2,7ないし10に係る特許を取り消す。 同請求項1,3ないし6に係る特許を維持する。

理由

【理 由】 第1 手続の経緯 特許第5723958号(以下「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願は,平成25年12月2日に特許出願され,平成27年4月3日に特許の設定登録がされたものである。 その後,平成27年5月27日に本件特許の特許公報が発行されたところ,平成27年11月25日に特許異議申立人 笠井素子により特許異議の申立てがなされ,平成28年1月26日付け取消理由通知書により取消理由が通知され,その指定期間内である同年3月28日に特許権者より意見書の提出及び訂正請求がなされ,これに対し,同年5月10日に特許異議申立人より意見書が提出され,平成28年7月4日付け取消理由通知書により決定の予告がされたところ,その指定期間内に特許権者より意見書等は提出されなかったところである。 第2 訂正の適否 1 訂正の内容 平成28年3月28日になされた訂正請求は,本件特許の特許請求の範囲について,以下のとおり訂正することを求めるものである。なお,下線は当合議体が付したものであり,訂正箇所を示す。 (1) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に, 「(A)カルボキシル基含有樹脂,(B)エポキシ系熱硬化性成分,(C)無機充填物,および,(D)光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物であって, 前記(A)カルボキシル基含有樹脂に含まれるカルボキシル基の当量に対する,前記(B)エポキシ系熱硬化性成分に含まれるエポキシ基の当量の比が,0.8以下であり,かつ,前記(C)無機充填物が,酸化チタンを含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。」とあるのを, 「(A)カルボキシル基含有樹脂,(B)エポキシ系熱硬化性成分,(C)無機充填物,および,(D)光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物であって, 前記(A)カルボキシル基含有樹脂に含まれるカルボキシル基の当量に対する,前記(B)エポキシ系熱硬化性成分に含まれるエポキシ基の当量の比が,0.8以下であり,前記(B)エポキシ系熱硬化性成分が,20℃で液状であるエポキシ樹脂を含有し,かつ,前記(C)無機充填物が,酸化チタンを含有することを特徴とする感光性脂組成物。」と訂正する。 (2) 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項3に, 「前記(B)エポキシ系熱硬化性成分が,20℃で液状であるエポキシ樹脂および40℃で固体状である固形エポキシ樹脂のうちの少なくとも一種以上を含有する請求項1または2記載の感光性樹脂組成物。」とあるのを, 「(A)カルボキシル基含有樹脂,(B)エポキシ系熱硬化性成分,(C)無機充填物,および,(D)光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物であって, 前記(A)カルボキシル基含有樹脂に含まれるカルボキシル基の当量に対する,前記(B)エポキシ系熱硬化性成分に含まれるエポキシ基の当量の比が,0.8以下であり,前記(B)エポキシ系熱硬化性成分が,20℃で液状であるエポキシ樹脂および40℃で固体状である固形エポキシ樹脂を含有し,かつ,前記(C)無機充填物が,酸化チタンを含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。」と訂正する。 (3) 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項4に, 「キャリアフィルム上に,請求項1~3のうちいずれか一項記載の感光性樹脂組成物を塗布,乾燥させて得られる樹脂層を有することを特徴とするドライフィルム。」とあるのを, 「キャリアフィルム上に,請求項1または3記載の感光性樹脂組成物を塗布,乾燥させて得られる樹脂層を有することを特徴とするドライフィルム。」と訂正する。 (4) 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項5に, 「請求項1~3のうちいずれか一項記載の感光性樹脂組成物,または,請求項4記載のドライフィルムの前記樹脂層を,光照射により硬化して得られることを特徴とする硬化物。」とあるのを, 「請求項1または3記載の感光性樹脂組成物,または,請求項4記載のドライフィルムの前記樹脂層を,光照射により硬化して得られることを特徴とする硬化物。」と訂正する。 (5) 訂正事項5 特許請求の範囲において,新たな請求項7として, 「前記(B)エポキシ系熱硬化性成分が,20℃で液状であるエポキシ樹脂および40℃で固体状である固形エポキシ樹脂のうちの少なくとも一種以上を含有する請求項2記載の感光性樹脂組成物。」とする。 (6) 訂正事項6 特許請求の範囲において,新たな請求項8として, 「キャリアフィルム上に,請求項2または7記載の感光性樹脂組成物を塗布,乾燥させて得られる樹脂層を有することを特徴とするドライフィルム。」とする。 (7) 訂正事項7 特許請求の範囲において,新たな請求項9として, 「請求項2または7記載の感光性樹脂組成物,または,請求項8記載のドライフィルムの前記樹脂層を,光照射により硬化して得られることを特徴とする硬化物。」とする。 (8) 訂正事項8 特許請求の範囲において,新たな請求項10として, 「請求項9記載の硬化物を有することを特徴とするプリント配線板。」とする。 2 訂正の目的の適否,新規事項の有無,一群の請求項及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1) 訂正事項1~4について 訂正事項1は,特許請求の範囲の減縮を目的とし,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。 訂正事項2は,特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とし,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。 訂正事項3及び4は,他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とし,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。 また,前記訂正事項1~4に係る訂正後の請求項1,3~6は,前記訂正事項1を含む請求項1の記載及び前記訂正事項2を含む請求項3の記載を,請求項4及び5がそれぞれ引用し,また,請求項6は請求項5の記載を引用するものであるから,当該訂正後の請求項1,3~6は,一群の請求項を構成する。 したがって,前記訂正事項1~4は,一群の請求項ごとに請求されたものである。 (2) 訂正事項5~8について 訂正事項5~8は,いずれも,他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とし,新規事項の追加に該当せず,実質上特許請求の範囲を拡張し,又は変更するものではない。 また,前記訂正事項5~8に係る訂正後の請求項7~10は,前記訂正事項5を含む請求項7の記載を,請求項8及び9が引用し,また,請求項10は,請求項9の記載を引用するものであるから,当該訂正後の請求項7~10は,一群の請求項を構成する。 したがって,前記訂正事項5~8は,一群の請求項ごとに請求されたものである。 3 むすび したがって,前記訂正請求による訂正事項1~8は,特許法第120条の5第2項第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条第9項で準用する同法第126条第4項~第6項の規定に適合するので,訂正後の請求項〔1,3~6〕からなる一群の請求項及び請求項〔7~10〕からなる一群の請求項について訂正を認める。 第3 取消理由についての判断 1 本件発明 本件特許の請求項1~10に係る発明は,それぞれ,前記訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1~10に記載された事項によりそれぞれ特定される次のとおりのものである(以下,本件特許の請求項1~10に係る発明をそれぞれ「本件発明1」~「本件発明10」といい,「本件発明1」~「本件発明10」を総称して「本件発明」という。)。 「【請求項1】 (A)カルボキシル基含有樹脂,(B)エポキシ系熱硬化性成分,(C)無機充填物,および,(D)光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物であって, 前記(A)カルボキシル基含有樹脂に含まれるカルボキシル基の当量に対する,前記(B)エポキシ系熱硬化性成分に含まれるエポキシ基の当量の比が,0.8以下であり,前記(B)エポキシ系熱硬化性成分が,20℃で液状であるエポキシ樹脂を含有し,かつ,前記(C)無機充填物が,酸化チタンを含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。 【請求項2】 (A)カルボキシル基含有樹脂,(B)エポキシ系熱硬化性成分,(C)無機充填物,および,(D)光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物であって, 前記(A)カルボキシル基含有樹脂に含まれるカルボキシル基の1当量に対し,前記(B)エポキシ系熱硬化性成分に含まれるエポキシ基の当量が1.0以下であり,該(A)カルボキシル基含有樹脂がスチレンまたはスチレン誘導体から誘導されたものであり,かつ,前記(C)無機充填物が,酸化チタンを含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。 【請求項3】 (A)カルボキシル基含有樹脂,(B)エポキシ系熱硬化性成分,(C)無機充填物,および,(D)光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物であって, 前記(A)カルボキシル基含有樹脂に含まれるカルボキシル基の当量に対する,前記(B)エポキシ系熱硬化性成分に含まれるエポキシ基の当量の比が,0.8以下であり,前記(B)エポキシ系熱硬化性成分が,20℃で液状であるエポキシ樹脂および40℃で固体状である固形エポキシ樹脂を含有し,かつ,前記(C)無機充填物が,酸化チタンを含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。 【請求項4】 キャリアフィルム上に,請求項1または3記載の感光性樹脂組成物を塗布,乾燥させて得られる樹脂層を有することを特徴とするドライフィルム。 【請求項5】 請求項1または3記載の感光性樹脂組成物,または,請求項4記載のドライフィルムの前記樹脂層を,光照射により硬化して得られることを特徴とする硬化物。 【請求項6】 請求項5記載の硬化物を有することを特徴とするプリント配線板。 【請求項7】 前記(B)エポキシ系熱硬化性成分が,20℃で液状であるエポキシ樹脂および40℃で固体状である固形エポキシ樹脂のうち少なくとも一種以上を含有する請求項2記載の感光性樹脂組成物。 【請求項8】 キャリアフィルム上に,請求項2または7記載の感光性樹脂組成物を塗布,乾燥させて得られる樹脂層を有することを特徴とするドライフィルム。 【請求項9】 請求項2または7記載の感光性樹脂組成物,または,請求項8記載のドライフィルムの前記樹脂層を,光照射により硬化して得られることを特徴とする硬化物。 【請求項10】 請求項9記載の硬化物を有することを特徴とするプリント配線板。」 2 申立人が提出した証拠等,及び決定の予告の概要 (1) 申立人が提出した証拠等 申立人が提出した証拠等は,以下のとおりである。 甲1:特開2011-174014号公報 甲2:特開2011-52130号公報 甲3:特開2013-67756号公報 甲4:特開2010-54825号公報 甲5:特開2011-232709号公報 甲6:特開2002-62650号公報 甲7:特開平8-62839号公報 甲8:特開2011-59613号公報 甲9:特開2003-295433号公報 甲10:特開2012-108523号公報 甲11:特開2013-80022号公報 甲12:国際公開第2013/162015号 甲13:国際公開第2013/172434号 甲14:特開2008-189852号公報 甲15:国際公開第2013/021734号 甲16:国際公開第2012/086445号 甲17:国際公開第2013/171888号 甲18:特開2011-227343号公報 参考資料1:甲1,甲3の実施例での当量比計算 参考資料2:日本化薬株式会社,「■エポキシ樹脂■反応性難燃剤■硬化剤」,第9版,日本化薬株式会社,刊行日不明,1~3葉 参考資料3:ダイセル・オルネクス株式会社,刊行物名不明,ダイセル・オルネクス株式会社,刊行日不明,1葉及び2葉 参考資料4:大日本インキ化学,「DIC EPICLON(R) エポキシ樹脂&硬化剤」,大日本インキ化学,2002年8月,表紙,目次,2~3頁 参考資料5:三菱化学株式会社 エポキシ事業部,「2011 製品案内」,三菱化学株式会社 エポキシ事業部,刊行日不明,表紙,1~6頁 参考資料6:三菱化学株式会社,表題不明,三菱化学株式会社,刊行日不明,1葉及び2葉 (当合議体注:甲4~甲18は周知技術を示す文献である。参考資料1は,申立人が作成したものであり,甲1,甲3の実施例における当量比の結果を表にまとめたものである。参考資料2はカタログであり,1葉の中央下に「05,May,27.1000」と記載されている。参考資料3はカタログと推認され,2葉の左下に「2013.10/ver2/1500」と記載されている。参考資料4の「(R)」は「R」を丸囲いしたものである。参考資料5は製品案内であり,刊行日は2011年以前と推認される。参考資料6は,インターネット<http://www.m-kagaku.co.jp/newsreleases/2010/20100120-1.html>及び<http://www.mec-epoxy.jp/company/enkaku.html>のプリントアウトと推認される。) (2) 平成28年7月4日付け取消理由通知書によりされた決定の予告は,概略,以下のとおりである。 ア 本件発明1,3~6は,甲1記載の発明,甲2記載の発明,甲3記載の発明から,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 イ 本件発明2,7~10は,甲1記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件発明2,7~10の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 3 甲1に基づく進歩性判断について (1) 甲1の記載事項 本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲1には,次の事項が記載されている。なお,下線は当合議体が付したものであり,甲1に記載された発明の認定に使用した箇所を示す(以下同様。)。 ア 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 カルボキシル基含有樹脂, 酸化チタン,及び リン化合物を含有することを特徴とするポリエステル基材用の樹脂組成物。 【請求項2】 請求項1に記載の樹脂組成物をフィルムに塗布乾燥してなるドライフィルム。 【請求項3】 請求項1に記載の樹脂組成物又は前記樹脂組成物をフィルムに塗布乾燥してなるドライフィルムを,光硬化及び/又は熱硬化して得られる硬化塗膜。 【請求項4】 請求項1に記載の樹脂組成物又は前記樹脂組成物をフィルムに塗布乾燥してなるドライフィルムを,光硬化及び/又は熱硬化して得られる硬化塗膜を有するプリント配線板。」 イ 「【技術分野】 【0001】 本発明は,ポリエステル基材用の樹脂組成物,特に低反りで難燃性に優れた塗膜を形成できる硬化性樹脂組成物に関する。本発明はまた,かかる樹脂組成物を用いたドライフィルム及びそれらの硬化塗膜を有するプリント配線板に関する。 【背景技術】 【0002】 従来,プリント配線板及びフレキシブル配線板(以下,FPCと略称する)は,電子機器に搭載されるため難燃性が要望されており,これらの一部である塗膜にも難燃性が要求されている。この中でも,FPCは,通常,ポリイミド基板からなるため,ガラスエポキシ基板のプリント配線板とは異なり薄膜である。しかしながら,塗布されるべき塗膜は,プリント配線板もFPCも同じ膜厚であるため,薄膜のFPCの場合,相対的に塗膜への難燃化の負担が大きくなる。 ・・・略・・・ 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 本発明は,前記したような従来技術の問題を解決すべくなされたものであり,その主たる目的は,ポリエステル基材を用いたプリント配線板であっても,ハロゲンフリーで難燃性を達成でき,且つ,低反り性に優れた塗膜層を形成可能なポリエステル基材用の樹脂組成物を提供することにある。 さらに本発明の目的は,かかる樹脂組成物を用いることによって,低反りで難燃性に優れたドライフィルム及びこのような優れた特性の難燃性皮膜を有するプリント配線板を提供することにある。」 ウ 「【課題を解決するための手段】 【0007】 前記目的を達成するために,本発明によれば,カルボキシル基含有樹脂,酸化チタン,及びリン化合物を含有することを特徴とするポリエステル基材用の樹脂組成物が提供される。 本発明によれば,さらに熱硬化性樹脂を含むことを特徴とするポリエステル基材用組成物が提供される。 また,本発明によれば,前記カルボキシル基含有樹脂が,ウレタン構造を有するカルボキシル基含有樹脂であることを特徴とするポリエステル基材用組成物が提供される。 その上,本発明によれば,前記熱硬化性樹脂が,ビフェニルノボラック骨格を有するエポキシ樹脂を含むことを特徴とするポリエステル基材用組成物が提供される。 また,本発明によれば,上記樹脂組成物をフィルムに塗布乾燥してなるドライフィルムが提供される。 さらに本発明によれば,上記樹脂組成物又は上記樹脂組成物をフィルムに塗布乾燥してなるドライフィルムを,光硬化及び/又は熱硬化して得られる硬化塗膜が提供される。 さらにまた,本発明によれば,上記樹脂組成物又は上記樹脂組成物をフィルムに塗布乾燥してなるドライフィルムを,光硬化及び/又は熱硬化して得られる硬化塗膜を有するプリント配線板も提供される。 【発明の効果】 【0008】 本発明によれば,カルボキシル基含有樹脂,酸化チタン,及びリン化合物を含有する樹脂組成物を用いることにより,自己難燃性がないポリエステル基材に用いた場合でも,ノンハロゲン組成で環境負荷が少なく難燃性に優れ,且つ,低そり性に優れた塗膜を提供することができる。」 エ 「【0011】 カルボキシル基含有樹脂の具体例としては,以下に列挙するような化合物(オリゴマー及びポリマーのいずれでもよい)が好ましい。 (1)(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸と,スチレン,α-メチルスチレン,低級アルキル(メタ)アクリレート,イソブチレン等の不飽和基含有化合物との共重合により得られるカルボキシル基含有樹脂。 【0012】 (2)脂肪族ジイソシアネート,分岐脂肪族ジイソシアネート,脂環式ジイソシアネート,芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネートと,ジメチロールプロピオン酸,ジメチロールブタン酸等のカルボキシル基含有ジアルコール化合物及びポリカーボネート系ポリオール,ポリエーテル系ポリオール,ポリエステル系ポリオール,ポリオレフィン系ポリオール,アクリル系ポリオール,ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール,フェノール性ヒドロキシル基及びアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物等のジオール化合物及び必要に応じて一つのアルコール性ヒドロキシル基有する化合物との重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂。 【0013】 (3)ジイソシアネートと,ビスフェノールA型エポキシ樹脂,水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂,ビスフェノールF型エポキシ樹脂,ビスフェノールS型エポキシ樹脂,ビキシレノール型エポキシ樹脂,ビフェノール型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂の(メタ)アクリレートもしくはその部分酸無水物変性物,カルボキシル基含有ジアルコール化合物及びジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。 【0014】 (4)前記(2)又は(3)の樹脂の合成中に,ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の分子中に1つの水酸基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え,末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。 【0015】 (5)前記(2)又は(3)の樹脂の合成中に,イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの等モル反応物など,分子中に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を加え末端(メタ)アクリル化したカルボキシル基含有感光性ウレタン樹脂。 【0016】 (6)後述するような2官能又はそれ以上の多官能(固形)エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ,側鎖に存在する水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。 【0017】 (7)後述するような2官能(固形)エポキシ樹脂の水酸基をさらにエピクロロヒドリンでエポキシ化した多官能エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させ,生じた水酸基に2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル基含有感光性樹脂。 【0018】 (8)後述するような2官能オキセタン樹脂にアジピン酸,フタル酸,ヘキサヒドロフタル酸等のジカルボン酸を反応させ,生じた1級の水酸基に無水フタル酸,テトラヒドロ無水フタル酸,ヘキサヒドロ無水フタル酸等の2塩基酸無水物を付加させたカルボキシル 基含有ポリエステル樹脂。 【0019】 (9)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンオキシド,プロピレンオキシドなどのアルキレンオキシドとを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ,得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。 【0020】 (10)1分子中に複数のフェノール性水酸基を有する化合物とエチレンカーボネート,プロピレンカーボネートなどの環状カーボネート化合物とを反応させて得られる反応生成物に不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ,得られる反応生成物に多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。 【0021】 (11)1分子中に複数のエポキシ基を有するエポキシ化合物に,p-ヒドロキシフェネチルアルコール等の1分子中に少なくとも1個のアルコール性水酸基と1個のフェノール性水酸基を有する化合物と,(メタ)アクリル酸等の不飽和基含有モノカルボン酸とを反応させ,得られた反応生成物のアルコール性水酸基に対して,無水マレイン酸,テトラヒドロ無水フタル酸,無水トリメリット酸,無水ピロメリット酸,アジピン酸等の多塩基酸無水物を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂。 【0022】 (12)上記(1)~(11)の樹脂に,さらにグリシジル(メタ)アクリレート,α-メチルグリシジル(メタ)アクリレート等の1分子中に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加してなるカルボキシル基含有感光性樹脂。 なお,本明細書において,(メタ)アクリレートとは,アクリレート,メタクリレート及びそれらの混合物を総称する用語で,他の類似の表現についても同様である。」 オ 「【0046】 前記ビフェニルノボラック骨格を有するエポキシ樹脂や分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する化合物等の熱硬化性成分の配合量は,前記カルボキシル基含有樹脂のカルボキシル基1当量に対して,好ましくは0.3~2.5当量,より好ましくは,0.5~2.0当量となる範囲にある。分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分の配合量が0.3未満である場合,前記カルボキシル基含有樹脂との架橋反応が少なくなるため,耐熱性,耐アルカリ性,電気絶縁性などが低下するので,好ましくない。一方,2.5当量を超える場合,低分子量の環状(チオ)エーテル基が乾燥塗膜に残存することにより,塗膜の強度などが低下するので,好ましくない。」 カ 「【0051】 本発明の樹脂組成物を光硬化性樹脂組成物もしくは光硬化性熱硬化性樹脂組成物に組成する場合には,光重合開始剤を配合することができる。好ましい開始剤としては,オキシムエステル基を有するオキシムエステル系光重合開始剤,α-アミノアセトフェノン系光重合開始剤,アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤からなる群から選択される1種以上の光重合開始剤を使用することができる。」 キ 「【実施例】 【0117】 以下に実施例及び比較例を示して本発明について具体的に説明するが,本発明が下記実施例に限定されるものではないことはもとよりである。 【0118】 合成例1 撹拌装置,温度計,コンデンサーを備えた反応容器に,2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物として1,5-ペンタンジオールと1,6-ヘキサンジオールから誘導されるポリカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ(株)製TJ5650J,数平均分子量800)を3600g(4.5モル),ジメチロールブタン酸を814g(5.5モル),及び分子量調整剤(反応停止剤)としてn-ブタノール118g(1.6モル)を投入した。次に,芳香環を有しないイソシアネート化合物としてトリメチルヘキサメチレンジイソシアネート2009g(10.8モル)を投入し,撹拌しながら60℃まで加熱して停止し,反応容器内の温度が低下し始めた時点で再度加熱して80℃で撹拌を続け,赤外線吸収スペクトルでイソシアネート基の吸収スペクトル(2280cm-1)が消失したことを確認して反応を終了した。次いで,固形分が60wt%となるようにカルビトールアセテートを添加し,希釈剤を含有する粘稠液体のカルボキシル基含有樹脂を得た。得られたカルボキシル基含有ポリウレタンの固形分の酸価は49.8mgKOH/gであった。以下,この反応生成物を樹脂溶液(A-1)とする。 【0119】 合成例2 撹拌装置,温度計,コンデンサーを備えた反応容器に,1,5-ペンタンジオールと1,6-ヘキサンジオールから誘導されるポリカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ(株)製,TJ5650J,数平均分子量800)を2400g(3モル),ジメチロールプロピオン酸を603g(4.5モル),及びモノヒドロキシル化合物として2-ヒドロキシエチルアクリレートを238g(2.6モル)投入した。次いで,ポリイソシアネートとしてイソホロンジイソシアネート1887g(8.5モル)を投入し,撹拌しながら60℃まで加熱して停止し,反応容器内の温度が低下し始めた時点で再度加熱して80℃で撹拌を続け,赤外線吸収スペクトルでイソシアネート基の吸収スペクトル(2280cm-1)が消失したことを確認して反応を終了した。固形分が50質量%となるようにカルビトールアセテートを添加した。得られたカルボキシル基含有樹脂の固形分の酸価は50mgKOH/gであった。以下,この反応生成物を樹脂溶液(A-2)とする。 【0120】 合成例3 セパラブルフラスコ中に,ビスフェノールA型エポキシ化合物として,日本化薬(株)製RE310S(2官能ビスフェノールA型エポキシ樹脂,エポキシ当量:184g/当量)を368.0gアクリル酸(分子量:72.06)を142.7g,熱重合禁止剤として2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールを2.94g及び反応触媒としてトリフェニルフォスフィンを1.53g仕込み,98℃の温度で反応液の酸価が0.5mgKOH/g以下になるまで反応させ,エポキシカルボキシレート化合物(a)(理論分子量:510.7)を得た。次いでこの反応液に反応用溶媒としてカルビトールアセテートを588.2g,ジメチロールプロピオン酸(b)(分子量:134.16)105.5gを加え,45℃に昇温させた。この溶液にイソホロンジイソシアネート(c)(分子量:222.28)264.7gを反応温度が65℃を超えないように徐々に滴下した。滴下終了後,温度を80℃に上昇させ,赤外吸収スペクトル測定法により,2250cm-1付近の吸収がなくなるまで6時間反応させ,更に98℃の温度で2時間反応させ,アルカリ水溶液可溶性ウレタン樹脂を60重量%含む樹脂溶液を得た。酸価を測定したところ,28.9mgKOH/g(固形分酸価:48.1mgKOH/g)であった。以下,この反応生成物を樹脂溶液(A-3)とする。 【0121】 感光性基含有でビスフェノールノボラック構造の多官能エポキシを使用したカルボキシル基含有感光性樹脂(日本化薬(株)製ZCR-1601:固形分65%,樹脂としての酸価は98mgKOH/g)の溶液を用いた。以下,この樹脂溶液を(A-4)とする。 【0122】 水酸化アルミニウムスラリーの調製: 水酸化アルミニウム(昭和電工(株)製ハイジライト42M)700gと,溶剤としてカルビトーアセテート280g,BYK-110(ビックケミー・ジャパン(株)製湿潤分散剤)を20g混合攪拌し,ビーズミルにて0.5μmのジルコニアビーズを用い分散処理を行った。これを3回繰り返して3μmのフィルターを通した水酸化アルミニウムスラリーを作製した。 【0123】 実施例1~8,比較例1~4 上記合成例の樹脂溶液を用い,表1に示す種々の成分とともに表1に示す割合(質量部)にて配合し,攪拌機にて予備混合した後,3本ロールミルで混練し,硬化性樹脂組成物を調製した。ここで,得られた各硬化性樹脂組成物の分散度をエリクセン社製グラインドメータによる粒度測定にて評価したところ,15μm以下であった。」 ク 「【0124】 【表1】 」 ケ 上記ア~クから,甲1には以下のa及びbにて示す発明が記載されているものと認められる。なお,段落番号は,発明の認定に活用した甲1の記載箇所を示すために併記したものである。 a 甲1発明A 甲1の段落【0007】には,【課題を解決するための手段】として,請求項1に係る発明である「樹脂組成物」について,より好ましい例が記載され,明細書の段落【0009】~【0104】には,請求項1に係る発明を実施するための形態が記載されているから,甲1には,次の発明が記載されているものと認められる(以下「甲1発明A」という。)。 なお,段落【0046】には「ビフェニルノボラック骨格を有するエポキシ樹脂や分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する化合物等の熱硬化性成分の配合量」と記載されているが,甲1発明Aとしては熱硬化性成分としてエポキシ樹脂を用いたものを認定していること,及びエポキシ樹脂の「熱硬化性成分の配合量」の「当量比」とはエポキシ樹脂の「エポキシ基の当量比」を指すものと認められることから,以下のように甲1発明Aを認定した。 「【請求項1】 カルボキシル基含有樹脂,酸化チタン,及びリン化合物を含有することを特徴とするポリエステル基材用の樹脂組成物であって, 【0007】熱硬化性樹脂を含み,前記熱硬化性樹脂が,ビフェニルノボラック骨格を有するエポキシ樹脂を含み, 【0011】カルボキシル基含有樹脂として,(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸と,スチレン,α-メチルスチレン,低級アルキル(メタ)アクリレート,イソブチレン等の不飽和基含有化合物との共重合により得られるカルボキシル基含有樹脂を用い, 【0046】前記ビフェニルノボラック骨格を有するエポキシ樹脂のエポキシ基の当量は,前記カルボキシル基含有樹脂のカルボキシル基1当量に対して,好ましくは0.3~2.5当量,より好ましくは,0.5~2.0当量となる範囲にある, 【0051】光重合開始剤を配合した, 樹脂組成物。」 b 甲1発明B 甲1の段落【0117】~【0124】には実施例が記載されているところ,甲1には,実施例3として,次の発明が記載されているものと認められる(以下「甲1発明B」という。)。 なお,樹脂溶液(A-1),樹脂溶液(A-3),樹脂溶液(A-4)はいずれもワニスA-1,ワニスA-3,ワニスA-4であるから,以下,ワニスA-1,ワニスA-3,ワニスA-4で統一して標記する。 「【0124】【表1】カルボキシル基含有樹脂としてワニスA-1を83質量部,ワニスA-3を17質量部,ワニスA-4を61質量部と, エポキシ樹脂であって,固形分が75%であるNC-3000HCA75を30質量部と,光重合開始剤と,酸化チタンと,を含む樹脂組成物であって, 【0118】ワニスA-1は,固形分の含有量が60重量%であり,固形分の酸価が49.8mgKOH/gであるカルボキシル基含有ポリウレタン樹脂を有する樹脂溶液であり, 【0120】ワニスA-3は,固形分の含有量が60重量%であり,固形分の酸価が48.1mgKOH/gであるアルカリ水溶液可溶性ウレタン樹脂を有する樹脂溶液であり, 【0121】ワニスA-4は,固形分の含有量が65wt%であり,固形分の酸価が98mgKOH/gであるカルボキシル基含有感光性樹脂を有する樹脂溶液である, 樹脂組成物。」 (2) 甲4記載事項 本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲4には,次の事項が記載されている。 ア 「【請求項1】 下記の成分A,成分B,成分C及び成分Dを含有し,カルボキシル当量(g/モル)/エポキシ当量(g/モル)の比a/e=0.5~1.5,(成分A+成分C)/成分Bの質量比=0.7~5.6及び成分D/(成分A+成分B+成分C)の質量比=0.01~0.12であることを特徴とするアルカリ現像性ネガ型樹脂組成物。 成分A:下記一般式(1)で表されるイタコン酸モノエステル由来の構成単位(a1)を13~72質量%及び下記一般式(2)で表されるビニル単量体又はビニルエステル単量体由来の構成単位(a2)を28~87質量%より構成され,質量平均分子量が3,000~300,000及び酸価が50~150mgKOH/gであるアルカリ可溶性共重合体。 【化1】 (R1及びR2は,水素,炭素数1~8の直鎖又は分岐アルキル基,炭素数4~8のシクロアルキル基又は炭素数6~12の芳香族炭化水素基である。但し,R1及びR2のいずれか1つは水素である。) 【化2】 〔一般式(2)中のXは,R3又はOCOR4を表し,R3は炭素数1~6の直鎖又は分岐アルキル基,炭素数4~8のシクロアルキル基又は炭素数6~12の芳香族炭化水素基である。R4は炭素数1~17の直鎖又は分岐アルキル基,炭素数4~8のシクロアルキル基又は炭素数6~12の芳香族炭化水素基である。〕 成分B:光重合性多官能(メタ)アクリレート 成分C:エポキシ樹脂 成分D:光重合開始剤」 イ 「【0037】 【化10】 上記一般式(4)中のR1,R2は炭素数1~8の直鎖又は分岐アルキル基,炭素数4~8のシクロアルキル基又は6~12の芳香族炭化水素基である。但し,R1及びR2のいずれか1つは水素である。この場合,炭素数が8を超える直鎖又は分岐アルキル基,シクロアルキル基又は炭素数12を超える芳香族炭化水素基を用いると,前記反応式(i)が起こる温度が250℃以上となるため,反応式(ii)による硬化反応が起こらず,硬化被膜の十分な硬度及び耐熱性を得ることができなくなる。 <ビニル単量体又はビニルエステル単量体由来の構成単位(a2)> 係るビニル単量体由来の構成単位又はビニルエステル単量体由来の構成単位(a2)は前記一般式(2)で表され,硬化被膜の透明性並びに感度及び解像度を制御する成分である。該構成単位(a2)をアルカリ可溶性共重合体に導入するために使用される単量体としては,下記式(5)及び(6)で表されるビニル単量体及びビニルエステル単量体が挙げられる。 【0038】 【化11】 上記一般式(5)中のR3は炭素数1~6の直鎖又は分岐アルキル基,炭素数4~8のシクロアルキル基又は炭素数6~12の芳香族炭化水素基である。ここで,炭素数が6を超える直鎖又は分岐アルキル基,炭素数が8を超えるシクロアルキル基又は炭素数が12を超える芳香族炭化水素基を用いると,アルカリ溶液へのアルカリ可溶性共重合体の溶解性が低下し,十分な感度及び解像度が得られなくなる。一般式(5)中のR3としては,感度及び解像度と耐熱性との両立の観点からシクロヘキシル基又はフェニル基が好ましい。 【0039】 【化12】 上記一般式(6)中のR4は炭素数1~17の直鎖又は分岐アルキル基,炭素数4~8のシクロアルキル基又は炭素数6~12の芳香族炭化水素基である。ここで,炭素数が17を超える直鎖又は分岐アルキル基,炭素数が8を超えるシクロアルキル基又は炭素数が12を超える芳香族炭化水素基を用いると,アルカリ溶液へのアルカリ可溶性共重合体の溶解性が低下し,十分な感度及び解像度が得られない。感度及び解像度と耐熱性との両立の観点からシクロヘキシル基又はフェニル基が好ましい。」 ウ 「【0054】 アルカリ現像性ネガ型樹脂組成物を調製する場合には,収容容器内に成分Aのアルカリ可溶性共重合体,成分Bの光重合性多官能(メタ)アクリレート,成分Cのエポキシ樹脂,成分Dの光重合開始剤及び適切な溶剤を投入し,ペイントシェーカー,ビーズミル,サンドグラインドミル,ボールミル,アトライターミル,2本ロールミル,3本ロールミルなどを用い,常法に従って溶解又は分散させればよい。なお,アルカリ可溶性共重合体としては,合成反応後に有効成分であるアルカリ可溶性共重合体を単離精製したものを用いることができるほか,合成反応により得られた反応溶液,その乾燥物などをそのまま用いることもできる。 <各成分の比率> 前記各成分を混合してアルカリ現像性ネガ型樹脂組成物を調製する際には,アルカリ現像性ネガ型樹脂組成物中におけるカルボキシル基とエポキシ基の当量比は,カルボキシル当量(g/モル)/エポキシ当量(g/モル)の比a/e=0.5~1.5に設定される。このa/eが0.5を下回る場合には,前記硬化反応が十分に進行せず,硬化被膜の硬度及び耐熱性が不足するという結果を招く。その一方,1.5を上回る場合には,成分Aのアルカリ可溶性共重合体の含有量が多くなるためアルカリ溶液への溶解性が高くなり過ぎ,現像時における膜減りによるパターン形成が不良となる。」 エ 「【0064】 ・・・(中略)・・・ <耐熱性試験(2)> パターン形成方法で示した工程により得られた線幅20~30μmのパターンを280℃で1時間加熱した後,パターン観察を行い,レジストの耐熱性を下記の基準で評価した。 【0066】 熱ダレ等の形状変化が観られないものは実用上好ましく,◎と判定した。 熱ダレ等の形状変化が観られるものは実用不可であり,△と判定した。 パターンの形成が不可能であるものは評価不能であり,×と判定した。」 オ 「【0070】 ・・・(中略)・・・ (合成例1,アルカリ可溶性共重合体a-1の合成) 単量体として,イタコン酸モノメチル231.3g及びスチレン626.3gをパーブチルPV〔商品名,日油(株)製の有機過酸化物〕42.9gと共に,210gのプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)に溶解した溶液を,90℃に温度調整した1889.5gのPGMEAを入れた窒素バブリング条件下の重合槽中に2時間かけて滴下した。その後同温度で6時間熟成し,さらに2時間100℃で過酸化物の加熱処理を行い,アルカリ可溶性共重合体a-1を得た。 【0071】 合成例1と同様の方法で合成例2~7及び比較合成例1~6を合成し,共重合体a-2~a-7,a’-1~a’-6を得た。配合割合と合成結果を表1及び表2に示した。なお,表1及び表2では,アルカリ可溶性共重合体の合計量が100gとなるように計算をして記載した。 【0072】 【表1】 表1中の略号は以下の通りである。 【0073】 MMI:イタコン酸モノメチル,MBI:イタコン酸モノブチル,MOI:イタコン酸モノオクチル,McHI:イタコン酸モノシクロヘキシル,MBeI:イタコン酸モノベンジル,St:スチレン,VC:ビニルシクロヘキシル,VcHC:シクロヘキサンカルボン酸ビニル,VB:安息香酸ビニル,MMA:メタクリル酸メチル,パーブチルPV:商品名,日油(株)製の有機過酸化物,パーヘキシルPV:商品名,日油(株)製の有機過酸化物,PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート。 【0074】 【表2】 表2中の略号は以下の通りである。 【0075】 MDI:イタコン酸モノデシル,MAA:メタクリル酸,VD:ビニルドデシル,VODC:イコサン酸ビニル,BVE:ブチルビニルエーテル。 (実施例1~13) 表3に示す配合割合でPGMEAに溶解混合したアルカリ現像性ネガ型樹脂組成物の溶液を,孔径0.2μmのメンブランフィルターで濾過した後,縦,横10cmのガラス基板上にスピンコート法により塗布した。それをクリーンオーブンにて90℃,2分間乾燥後,超高圧水銀ランプを搭載したプロキシミティー露光機にて,マスクを介して,又は介さずに100~150mJ/cm2の強度で紫外線を照射した。照射後,マスクを介して照射した被膜は0.4質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド溶液に60秒間浸漬し,30秒間水洗し,クリーンオーブンにより,230℃で1時間硬化した。マスクを介さずに照射した被膜は,そのままクリーンオーブンにより,230℃で1時間硬化し,膜厚2.0μmの硬化被膜を得た。得られた硬化被膜について,光の波長380nmにおける光線透過率,鉛筆硬度,耐熱性,密着性,感度及び解像度の評価を前述の方法にて行った。 【0076】 得られた実施例1~13の結果を表3に示す。 【0077】 【表3】 表3中の略号は以下の通りである。 【0078】 PE-4A:ペンタエリスリトールテトラアクリレート,共栄社化学(株)製の4官能アクリレート「ライトアクリレートPE-4A」,商品名 DPE-6A:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート,共栄社化学(株)製の6官能アクリレート「ライトアクリレートDPE-6A」,商品名 Ep-834:ジャパンエポキシレジン(株)製のビスフェノールA型エポキシ樹脂「jER-834」,商品名,下記式(12)で表される構造を有する。 【0079】 【化18】 EHPE-3150:2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロセキサン付加物,ダイセル化学工業(株)製のエポキシ樹脂 イルガキュア907:2-メチル-1-(4-(メチルチオ)フェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン,チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製の光重合開始剤 イルガキュア369:(2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1,チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製の光重合開始剤 (比較例1~11) 表4に示す配合割合で実施例1~13と同様の方法にて硬化被膜及びパターンを作製し,同様の評価を行った。 【0080】 得られた比較例1~11の結果を表4に示す。 【0081】 【表4】 表3及び表4に示した結果より,実施例1~13のアルカリ現像性ネガ型樹脂組成物を用いた場合,感度及び解像度が良好であると共に,光線透過率が高く,鉛筆硬度が十分で,耐熱性に優れていた。従って,実施例1~13のアルカリ現像性ネガ型樹脂組成物は,透明性,硬度,耐熱性等の被膜性能と,感度,解像度等のレジスト性能との両立を図ることができた。」 (3) 甲5記載事項 本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲5には,次の事項が記載されている。 ア 「【0010】 本発明の目的は,色分かれが起こり難いレジストインキ組成物及びその硬化物を有するプリント配線板を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0011】 上記の課題を解決するために,本発明に係る硬化性樹脂組成物は,(A)カルボキシル基含有樹脂,(B)光重合開始剤,(C)含フッ素ブロックコポリマー及び/又はフッ化アルキル基を有するポリエーテルポリマー,(D)希釈剤,(E)着色剤,(F)エポキシ樹脂を含有する。」 イ 「【0039】 これらエポキシ樹脂(F)は,前記カルボキシル基含有樹脂(A)と熱硬化して,耐熱性,密着性等を向上させる。これらエポキシ樹脂(F)の配合量は,前記カルボキシル基含有樹脂(A)のカルボキシル基1当量に対して,エポキシ基が0.5~3.0当量,好ましくは,1.0~2.0当量である。エポキシ樹脂(F)の配合量が,エポキシ基0.5当量未満の場合,未反応のカルボキシル基が残存し,硬化被膜の吸湿性が高くなってPCT耐性が低下し易くなり,また,はんだ耐熱性や耐無電解めっき性も低くなり易い。また,エポキシ樹脂(F)の配合量が,エポキシ基3.0当量を超えた場合,塗膜の現像性や硬化被膜の耐無電解めっき性が悪くなり,またPCT耐性も劣ったものとなる。」 (4) 甲6記載事項 本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲6には,次の事項が記載されている。 ア 「【0019】次に,常温で液状のエポキシ樹脂成分として,グリシジルエーテル型,グリシジルエステル型,脂環式等のエポキシ樹脂を主体として使用することができる。その他のエポキシ樹脂としてアミン型エポキシ樹脂が知られているが,これらは分子中のNがカチオン重合反応を阻害するため望ましくない。特にグリシジルエーテル型エポキシ樹脂(例えばビスフェノールA型,ビスフェノールF型,フェノールノボラック型エポキシ樹脂)が望ましい。該樹脂は他のエポキシ樹脂より耐吸湿性が高く,プリント配線基板の樹脂層に用いた場合に高い信頼性が得られるからである。液状樹脂の添加により,例えばフィルムをプリント配線基板にラミネートしたとき,基板の凹部への樹脂の回り込み性が向上されるという一般的な効果の他に,現像後の樹脂残りが低減されるという,感光性接着フィルムにおいて極めて重要な効果が発現される。」 (5) 甲7記載事項 本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲7には,次の事項が記載されている。 ア 「【0007】即ち,本発明は下記の成分(イ),(ロ),(ハ),(ニ)及び(ホ)からなることを特徴とする樹脂組成物,プリント配線板用永久レジスト樹脂組成物及びこれらの硬化物に関するものである。 (イ)エポキシ当量120~500の多官能エポキシ樹脂,(ロ)少なくとも1個のアクリロイル基又はメタクリロイル基を有するフェノールノボラック型光熱硬化剤,(ハ)エポキシアクリレート又はエポキシメタクリレート化合物,(ニ)光重合及び熱反応性モノマーからなる希釈剤,(ホ)光重合開始剤。」 イ 「【0008】本発明に用いられる(イ)成分のエポキシ樹脂は,ビスフェノ-ルA型又はビスフェノールF型エポキシ樹脂が好ましく,平均分子量が1000より大きくなるとアルカリ水溶液を用いた現像性の面で好ましくない。」 (6) 甲8記載事項 本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲8には,次の事項が記載されている。 ア 「【請求項1】 (A)(a)スチレンもしくはスチレン誘導体と(b)(メタ)アクリル酸を必須成分とした共重合体(c)に,下記一般式(I)で表される構造を有する化合物(d)を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂, (B)オキシムエステル系光重合開始剤, (C)分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有する化合物,及び (D)熱硬化性化合物 を含有することを特徴とするアルカリ溶液により現像可能な感光性のソルダーレジスト組成物。 【化1】 (式中,R1は水素原子又はメチル基を表し,R2は 【化2】 のいずれか又はそれらの混合物を表し,r,s,tはそれぞれ独立に1~9の整数である。)」 イ 「【0009】 本発明のソルダーレジスト組成物は,感光性樹脂として,(a)スチレンもしくはスチレン誘導体と(b)(メタ)アクリル酸を必須成分とした共重合体(c)に,前記一般式(I)で表される構造を有する化合物(d)を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂(A)を用いると共に,光重合開始剤としてオキシムエステル系光重合開始剤(B),好ましくはオキシムエステル系光重合開始剤と他の光重合開始剤を組み合わせて含有しているため,高感度であり,特にダイレクト露光等に対する感度が高く,作業性良く表面硬化性,はんだ耐熱性,無電解金めっき耐性等に優れた硬化皮膜を形成できる。また,上記カルボキシル基含有感光性樹脂(A)のスチレンもしくはスチレン誘導体(c)の部分は相溶化剤として効果があるため,均一分散性に優れると共に,指触乾燥性が悪化することもない。さらに,感光性樹脂として,上記カルボキシル基含有感光性樹脂(A)とノボラック構造を有するカルボキシル基含有感光性樹脂(A’)を組み合わせて用いた好適な態様においては,はんだ耐熱性,無電解金めっき耐性等の皮膜特性をさらに向上させることができる。 従って,本発明のソルダーレジスト組成物は,プリント配線板やフレキシブルプリント配線板のソルダーレジスト等の硬化皮膜の形成に有利に適用できる。」 (7) 甲9記載事項 本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲9には,次の事項が記載されている。 ア 「【請求項1】 下記一般式〔化1〕,〔化2〕及び〔化3〕で表されるモノマーのうち少なくとも一般式〔化1〕及び〔化2〕で表されるモノマーの共重合体からなるカルボキシル基含有共重合樹脂(A)と,1分子中に少なくとも2個のエチレン性不飽和結合を有する感光性樹脂(B)と,反応性希釈剤(C)と,光重合開始剤(D)と,熱硬化性化合物(E)を含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。 【化1】 (式中,R1は水素原子又はメチル基,R2は炭素数1~6の脂肪族炭化水素基又は芳香族基を示す。) 【化2】 (式中,R1は水素原子又はメチル基を示す。) 【化3】 (式中,R3は水素原子又は炭素数1~6の脂肪族炭化水素基,R4は水素原子又はヒドロキシル基,アルコキシル基を示す。) イ 「【0006】 【課題を解決するための手段】本発明者等は,上記目的を達成するために鋭意研究した結果,(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステルから合成されるカルボキシル基含有共重合樹脂,又は,(メタ)アクリル酸,(メタ)アクリル酸エステル及びスチレン誘導体スチレン誘導体から合成されるカルボキシル基含有共重合樹脂を用いることにより,露光感度,解像性,耐薬品性,耐溶剤性などにおいて優れた特性を有し,特に耐熱性,密着性,耐薬品性に優れ,かつタックフリーで,作業性が良好な感光性樹脂組成物が得られることを見出した。」 ウ 「【0024】 【発明の実施の形態】 【実施例】次に,実施例をもって本発明をさらに詳細に説明するが,これらは本発明の権利範囲を何ら制限するものではない。なお,実施例中の部は重量部を,%は質量%を表わすものとする。 【0025】〔合成例1〕カルビトールアセテート190gに,スチレン104g,メタクリル酸86g,アゾイソブチロニトリル(AIBN)4gを溶解し,加熱条件下に反応させて固形分50%のカルボキシル基含有ポリマー(a1)を得た。そのポリマーの平均分子量(GPC法,以下同様)は20000であり,酸価は147であった。 【0026】〔合成例2〕カルビトールアセテート194gに,スチレン62.4g,メタクリル酸86g,エチルメタクリレート45.6g,アゾイソブチロニトリル(AIBN)4gを溶解し,加熱条件下に反応させて固形分50%のカルボキシル基含有ポリマー(a2)を得た。そのポリマーの平均分子量(GPC法,以下同様)は25000であり,酸価は144であった。 【0027】〔合成例3〕カルビトールアセテート225gに,スチレン62.4g,アクリル酸72g,エチルメタクリレート91.2g,アゾイソブチロニトリル(AIBN)4gを溶解し,加熱条件下に反応させて固形分50%のカルボキシル基含有ポリマー(a3)を得た。そのポリマーの平均分子量(GPC法,以下同様)は24000であり,酸価は125であった。 【0028】〔合成例4〕カルビトールアセテート206gに,4-ヒドロキシスチレン120g,メタクリル酸86g,アゾイソブチロニトリル(AIBN)4gを溶解し,加熱条件下に反応させて固形分50%のカルボキシル基含有ポリマー(a4)を得た。そのポリマーの平均分子量(GPC法,以下同様)は30000であり,酸価は136であった。 【0029】〔合成例5〕カルビトールアセテート204gに,4-ヒドロキシスチレン72g,メタクリル酸86g,エチルメタクリレート45.6g,アゾイソブチロニトリル(AIBN)4gを溶解し,加熱条件下に反応させて固形分50%のカルボキシル基含有ポリマー(a5)を得た。そのポリマーの平均分子量(GPC法,以下同様)は28000であり,酸価は137であった。 【0030】〔感光性樹脂(B)製造例1〕カルビトールアセテート380重量部に,ビスフェノールA型エポキシ樹脂[油化シェル製,エピコート1001,エポキシ当量480]480重量部及びアクリル酸72重量部を溶解し,還流下に反応させてビスフェノールA型エポキシアクリレートを得た。次いで,このエポキシアクリレートにヘキサヒドロ無水フタル酸154重量部を加え,酸価が理論値になるまで還流下で反応させて,固形分65%の感光性樹脂(b1)を得た。 【0031】〔感光性樹脂(B)製造例2〕カルビトールアセテート392gに,クレゾールノボラック型エポキシ樹脂「日本化薬製,EOCN104S,エポキシ当量215]430g及びアクリル酸144gを溶解し,還流下に反応させてクレゾールノボラック型エポキシアクリレートを得た。次いで,このエポキシアクリレートにヘキサヒドロ無水フタル酸154gを加え,酸価が理論値になるまで還流下で反応させて,固形分65%の感光性樹脂(b2)を得た。 【0032】〔実施例1〕合成例1で得られたカルボキシル基含有ポリマー(a1)20gに対し,感光性樹脂(B)製造例1で得られた感光性樹脂(b1)100g,2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパノンを8.0g,トリメチロールプロパントリアクリレートを8.0g,トリグリシジルトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートを30g,フタロシアニングリーンを0.5g及びタルクを8.0gの割合で配合し3本ロールで混合分散させて,感光性樹脂組成物の溶液を調製した。この組成物の塗膜性能を表1に示す。 【0033】〔実施例2〕合成例1で得られたカルボキシル基含有ポリマー(a1)20gに対し,感光性樹脂(B)製造例2で得られた感光性樹脂(b2)100g,2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパノンを8.0g,トリメチロールプロパントリアクリレートを8.0g,トリグリシジルトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートを30g,フタロシアニングリーンを0.5g及びタルクを8.0gの割合で配合し3本ロールで混合分散させて,感光性樹脂組成物の溶液を調製した。この組成物の塗膜性能を表1に示す。 【0034】〔実施例3〕合成例2で得られたカルボキシル基含有ポリマー(a2)20gに対し,感光性樹脂(B)製造例2で得られた感光性樹脂(b2)100g,2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパノンを8.0g,トリメチロールプロパントリアクリレートを8.0g,トリグリシジルトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートを30g,フタロシアニングリーンを0.5g及びタルクを8.0gの割合で配合し3本ロールで混合分散させて,感光性樹脂組成物の溶液を調製した。この組成物の塗膜性能を表1に示す。 【0035】〔実施例4〕合成例3で得られたカルボキシル基含有ポリマー(a3)20gに対し,感光性樹脂(B)製造例2で得られた感光性樹脂(b2)100g,2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパノンを8.0g,トリメチロールプロパントリアクリレートを8.0g,トリグリシジルトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートを30g,フタロシアニングリーンを0.5g及びタルクを8.0gの割合で配合し3本ロールで混合分散させて,感光性樹脂組成物の溶液を調製した。この組成物の塗膜性能を表1に示す。 【0036】〔実施例5〕合成例4で得られたカルボキシル基含有ポリマー(a4)20gに対し,感光性樹脂(B)製造例2で得られた感光性樹脂(b2)100g,2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパノンを8.0g,トリメチロールプロパントリアクリレートを8.0g,トリグリシジルトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートを30g,フタロシアニングリーンを0.5g及びタルクを8.0gの割合で配合し3本ロールで混合分散させて,感光性樹脂組成物の溶液を調製した。この組成物の塗膜性能を表1に示す。 【0037】〔実施例6〕合成例5で得られたカルボキシル基含有ポリマー(a5)20gに対し,感光性樹脂(B)製造例2で得られた感光性樹脂(b2)100g,2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパノンを8.0g,トリメチロールプロパントリアクリレートを8.0g,トリグリシジルトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートを30g,フタロシアニングリーンを0.5g及びタルクを8.0gの割合で配合し3本ロールで混合分散させて,感光性樹脂組成物の溶液を調製した。この組成物の塗膜性能を表1に示す。 【0038】〔比較例1〕感光性樹脂(B)製造例1で得られた感光性樹脂(b1)100g,2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパノンを8.0g,トリメチロールプロパントリアクリレートを8.0g,トリグリシジルトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートを30g,フタロシアニングリーンを0.5g及びタルクを8.0gの割合で配合し3本ロールで混合分散させて,感光性樹脂組成物の溶液を調製した。この組成物の塗膜性能を表1に示す。 【0039】〔比較例2〕感光性樹脂(B)製造例2で得られた感光性樹脂(b2)100g,2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパノンを8.0g,トリメチロールプロパントリアクリレートを8.0g,トリグリシジルトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートを30g,フタロシアニングリーンを0.5g及びタルクを8.0gの割合で配合し3本ロールで混合分散させて,感光性樹脂組成物の溶液を調製した。この組成物の塗膜性能を表1に示す。 【0040】硬化塗膜性能は下記の方法で評価した。 ・・・(中略)・・・ 【0046】(C)はんだ耐熱性 硬化塗膜を有する評価基板をJIS C 6481の試験方法に従って,260℃の半田槽に30秒浸漬後セロハンテープによるピーリング試験を1サイクルとし,計1~3サイクルを行った後の塗膜状態を観察し,耐熱性を評価した。 ◎:3サイクル後も塗膜に変化がないもの ○:3サイクル後に僅かに変化しているもの △:2サイクル後に変化しているもの ×:1サイクル後に剥離を生じているもの ・・・(中略)・・・ 【0051】 【表1】 【0052】表1から判るように,本発明の感光性樹脂組成物を用いることにより,タックフリーで感度,密着性,はんだ耐熱性,耐酸性及び耐金めっき性に優れたソルダーレジスト皮膜を形成することが出きることが判る。」 (8) 甲10の記載事項 本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲10には,次の事項が記載されている。 ア 「【0001】 本発明は,基板上に形成させるソルダーレジスト膜や,発光ダイオードチップが搭載される基板上に形成される光を反射させるレジスト膜などのレジスト膜を形成するために好適に用いられる感光性組成物,並びに該感光性組成物を用いたプリント配線板に関する。」 イ 「【0096】 (他の成分) 後述の実施例及び比較例では,下記の表1,2に示す成分を適宜用いた。 【0097】 【表1】 【0098】 【表2】 」 ウ 「【0100】 (実施例2~23及び比較例1~5) 使用した材料の種類及び配合量を下記の表3~6に示すように変更したこと以外は,実施例1と同様にして,感光性組成物を得た。 ・・・(中略)・・・ 【0107】 【表3】 【0108】 【表4】 【0109】 【表5】 【0110】 【表6】 」 (9) 甲11の記載事項 本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲11には,次の事項が記載されている。 ア 「【請求項1】 (A)感光性カルボン酸樹脂および(B)液状2官能性エポキシ樹脂を含有する感光性樹脂組成物であって,全カルボン酸樹脂100質量部に対して,(C)アルミニウム含有無機フィラーを200質量部以上含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。」 イ 「【0034】 [(B)液状2官能性エポキシ樹脂] 上記(B)液状2官能性エポキシ樹脂は,分子内にエポキシ基を2つ有する化合物であって,室温(25℃)で液状のものである。2官能性エポキシ樹脂としては,例えば,ビスフェノールA型エポキシ樹脂,水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂,ビスフェノールF型エポキシ樹脂,ビスフェノールS型エポキシ樹脂,ビキシレノール型エポキシ樹脂,ビフェノール型エポキシ樹脂等が挙げられる。また,水素添加された2官能エポキシ化合物であってもよい。液状2官能性エポキシ樹脂は,樹脂組成物の無電解金めっき耐性の改善に寄与しうる。理由のひとつとして,基材との濡れ性がよくなる為と考えられる。また,液状2官能エポキシ樹脂は,溶剤としても機能する為,突沸を生じやすい要因の一つである溶剤使用量を大幅に低減することができるため,突沸低減に効果がある。」 (10) 甲12の記載事項 本件特許の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である甲12には,次の事項が記載されている。 ア 「[0030][(B)軟化点60℃以下の多官能エポキシ樹脂] 本発明の組成物では,感光性樹脂(A)と光重合開始剤(C)と軟化点が60℃以下の多官能エポキシ樹脂(B)(以下,「エポキシ樹脂(B)」ともいう。)を組み合わせることにより,組成物の感度を高めることができ,組成物が良好に硬化する。また,エポキシ樹脂(B)を含有させることにより,現像後の残渣がなく,現像性が改善される。ここで,軟化点は,JIS K 7234に記載の方法に従い測定される値を意味する。軟化点が60℃以下の多官能エポキシ樹脂(B)としては,公知のものでよいが,例えば,20~30℃の室温で液状であることが好ましい。このような多官能エポキシ樹脂としては,ジャパンエポキシレジン社製のエピコート834,828(ジャパンエポキシレジン社製),YD-128(東都化成社製),840,850(DIC社製)などのビスフェノールA型エポキシ樹脂,806,807(ジャパンエポキシレジン社製),YDF-170(東都化成社製),830,835,N-730A(DIC社製)などのビスフェノールF型エポキシ樹脂,ZX-1059(東都化成社製)などのビスフェノールAとビスフェノールFの混合物,YX-8000,8034(ジャパンエポキシレジン社製)ST-3000(東都化成社製)などの水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂,日本化薬社製のRE-306CA90,ダウケミカル社製のDEN431,DEN438等のノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。」 (11) 甲13の記載事項 本件特許の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である甲13には,次の事項が記載されている。 ア 「[0111](実施例2~26,比較例3~5) <マレイミド組成物の調整> 下記表2に記載の配合に従って,実施例/比較例に記載の材料をそれぞれ配合,攪拌機にて予備混合した後,3本ロールミルにて混練し,マレイミド組成物を調整した。表中の値は,特に断りが無い限り,質量部である。」 イ 「[0123] [表2] [0124] [表3] [0125] [表4] (熱反応性化合物) ※828:Bis-A型液状エポキシ(当量190g/eq),三菱化学社 (マレイミド化合物) ※UVT-302:マレイミド基を側鎖に有するアクリルポリマー(当量320g/eq),東亞合成社 ※MIA-200:ビスマレイミドオリゴマー(当量500g/eq,Mn<1000),DIC社 ※BMI-3000:エアブラウン社,長鎖アルキルビスマレイミドオリゴマー,Mw=3000 (アルカリ現像性樹脂) ※HF-1M H60:フェノールノボラック(水酸基当量100g/eq),明和化成社をシクロヘキサノンで溶解,固形分60% ※MEH-7851M H60:ビフェニル/フェノールノボラック(水酸基当量210),明和化成社をシクロヘキサノンで溶解。固形分60%。 ※ジョンクリル586 H60:スチレンアクリル酸共重合樹脂,Mw=3100,固形分酸価=108mgKOH/g,ジョンソンポリマー社をシクロヘキサノンで溶解。固形分60% ※ジョンクリル68 H60:スチレンアクリル酸共重合樹脂,Mw=10000,酸価 195mgKOH/g,ジョンソンポリマー社 ※R-2000PG:固形分65%,DIC社,エポキシアクリレート構造を有する (光塩基発生剤) ※Irg369:2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1,BASFジャパン社 ※OXE-02:エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム),BASFジャパン社 ※WPBG-140:1-(アントラキノン-2-イル)エチルイミダゾールカルボキシレート,和光純薬工業社 (高分子樹脂,無機充填剤,モノマー,その他) ※MAM M52 H30:MMA/nBA/MMAトリブロック共重合物,アルケマ社をシクロヘキサノンで溶解。固形分30% ※XER-91:粒子状架橋ゴム粒子(NBR,官能基カルボン酸)JSR社 ※YX8100 BH30:フェノキシ樹脂,三菱化学社,固形分30% ※SO-C2:球状シリカ D50=0.5μm,屈折率=1.45,比重=2.2g/cm3,アドマテックス社 ※フタロシアニンブルー:C.I. Pigment Blue 15:3 ※カーボンMA-50 カーボンブラック:三菱化学社 ※CR58 ルチル型酸化チタン:D50=0.28μm,4.2g/cm3,石原産業社 ※クロモフタルイエロー:C.I. Pigment Yellow 147 ※R-2000:クレゾールノボラック,アクリル酸,THPA変性樹脂(固形分61%,固形分酸価87mgKOH/g,DIC社 ※IRG-184:1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン,BASFジャパン社 ※DPHA:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート,日本化薬社」 (12) 甲14の記載事項 本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲14には,次の事項が記載されている。 ア 「【0001】 本発明は,熱硬化性樹脂組成物に関し,特に,多層基板や両面基板等のプリント配線基板におけるスルーホールやバイアホール等の永久穴埋め用組成物等として有用な液状の熱硬化性樹脂組成物に関する。さらに,本発明は,該組成物を用いてスルーホールやバイアホール等の永久穴埋めを行なったプリント配線基板及びその製造方法に関する。 なお,本明細書において,「穴部」とは,プリント配線板の製造過程で形成されるスルーホールやバイアホール等を総称する用語である。」 イ 「【0011】 以下,本発明の熱硬化性樹脂組成物の各構成成分について詳細に説明する。 まず,前記エポキシ樹脂(A)としては,1分子中に少なくとも2つのエポキシ基を有する公知慣用の多官能エポキシ樹脂が使用できる。例えば,ビスフェノールA型エポキシ樹脂,水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂,ビスフェノールS型エポキシ樹脂,ビスフェノールF型エポキシ樹脂,フェノールノボラック型エポキシ樹脂,クレゾールノボラック型エポキシ樹脂,脂環式エポキシ樹脂,ビフェノール型エポキシ樹脂,ビフェニル型エポキシ樹脂,ナフタレン型エポキシ樹脂,カテコール型エポキシ樹脂,ジシロクペンタジエン骨格を有するエポキシ樹脂,トリフェニルメタン骨格を有するエポキシ樹脂,ザイロック型エポキシ樹脂,アミノエポキシ樹脂,CTBN変性エポキシ樹脂,リン含有エポキシ樹脂,臭素原子含有エポキシ樹脂,フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ樹脂,プロピレングリコール又はポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル,ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル,グリセロールポリグリシジルエーテル,トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル,フェニル-1,3-ジグリシジルエーテル,ビフェニル-4,4’-ジグリシジルエーテル,1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル,エチレングリコール又はプロピレングリコールのジグリシジルエーテル,ソルビトールポリグリシジルエーテル,ソルビタンポリグリシジルエーテル,トリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌレート,トリグリシジルトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなどが挙げられる。これらの中でも,二官能のエポキシ樹脂,例えば,ビスフェノールA型エポキシ樹脂,ビスフェノールF型エポキシ樹脂,水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂,水添ビスフェノールF型エポキシ樹脂,プロピレングリコール又はポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテルなどの室温で液状のエポキシ樹脂が好ましい。室温で液状のエポキシ樹脂を用いることにより,硬化収縮やボイドの原因となる有機溶剤の添加を省くことができ,実質的に無溶剤化を達成することも可能となる。また,反応性希釈剤としての単官能エポキシ樹脂を含有していてもよい。 【0012】 前記したようなエポキシ樹脂は,単独で使用してもよいが,2種以上を組み合わせて用いることが好ましく,例えば室温で液状のエポキシ樹脂と固体のエポキシ樹脂を併用した場合,低分子量の液状のエポキシ樹脂が,得られる硬化皮膜の可撓性及び密着性向上に寄与し,固体のエポキシ樹脂が,ガラス転移点を上昇させるのに寄与するので,これらの比率を調整することにより上記特性のバランスを調整することが可能となる。また,他の方法としては,エポキシ当量が200以下のエポキシ樹脂と200を超えるエポキシ樹脂を併用することも好ましい。エポキシ当量が200を超えるエポキシ樹脂は,硬化収縮が少なく,基材のそり防止と硬化物への柔軟性付与に効果的である。一方,エポキシ当量が200以下のエポキシ樹脂は,反応性が高く,硬化物に機械的強度を与える。また,加熱時の溶融粘度が低いため,スルーホール等の穴部や導体回路間の凹部への樹脂組成物の充填性に寄与する。」 (13) 甲15の記載事項 本件特許の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である甲15には,次の事項が記載されている。 ア 「[0070] エポキシ化合物が液状の二官能エポキシ樹脂を含むことも好ましく,特に液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂と液状のビスフェノールF型エポキシ樹脂のうち少なくとも一方を含むことが好ましい。この場合,レジスト用樹脂組成物の熱硬化反応の反応性が高くなると共に,硬化時の硬化収縮が起こりにくくなる。更に,レジスト用樹脂組成物の固形分の低下を抑制しながら,このレジスト用樹脂組成物の良好な流動性を確保することが容易となる。尚,エポキシ化合物が液状の二官能エポキシ樹脂のみであってもよいが,エポキシ化合物が液状の二官能エポキシ樹脂と,液状の二官能エポキシ樹脂以外の化合物とを含んでもよい。エポキシ化合物が液状の二官能エポキシ樹脂と,液状の二官能エポキシ樹脂以外の化合物とを含む場合には,この液状の二官能エポキシ樹脂以外の化合物の種類,割合等を調整することで,レジスト用樹脂組成物の物性を調整することが可能である。」 イ 「[0131] [表1] 」 (14) 甲16の記載事項 本件特許の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である甲16には,次の事項が記載されている。 ア 「[0055] 〈d成分〉 d1:マープルーフG0150M(常温で固体,重量平均分子量10,000,エポキシ当量370,メタクリル酸グリシジルとメタクリル酸メチルとの共重合体,日本油脂社製) d2:N-695(常温で固体,エポキシ当量214,軟化点90-100℃,クレゾールノボラック型エポキシ樹脂,DIC社製) 〈d成分の比較成分〉 d3:マープルーフG01100(常温で固体,重量平均分子量12,000,エポキシ当量170,メタクリル酸グリシジルの単独重合体,日本油脂社製) d4:マープルーフG0115S(常温で固体,重量平均分子量11,000,エポキシ当量1000,メタクリル酸グリシジルとスチレンとの共重合体,日本油脂社製) d5:エピコート154(常温で固体,エポキシ当量176-180,フェノールノボラック型エポキシ樹脂,三菱化学社製) 〈d成分に対する比較成分〉 d1’:EXA-835LV(常温で液状,エポキシ当量160-170,ビスフェノールF型エポキシ樹脂,DIC社製) d2’:YP-70(常温で固体,重量平均分子量50,000-70,000,エポキシ当量11,000-17,000,ビスフェノールA及びビスフェノールFの共重合フェノキシ樹脂,新日鐵化学社製) 〈e成分〉 e1:サンマイドA-100(変性イミダゾール,三和化学工業社製) e2:1B2MZ(1ベンゾイル-2-メチルイミダゾール,四国化成工業社製) 」 (15) 甲17の記載事項 本件特許の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である甲17には,次の事項が記載されている。 ア 「[0118] [表1] ※828:Bis-A型液状エポキシ(当量190),三菱化学社 ※HP-4032:ナフトール型エポキシ(当量150),DIC社 ※HP-7200H60:ジシクロペンタジエン型エポキシ(当量265),DIC社をシクロヘキサノンで溶解。固形分60% ※HF-1M H60:フェノールノボラック(水酸基当量105),明和化成社をシクロヘキサノンで溶解。固形分60% ※ジョンクリル68 H60:スチレンアクリル酸共重合樹脂,Mw=10000,酸価195,ジョンソンポリマー社 ※Irg907:2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン,BASFジャパン社 ※Irg369:2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1,BASFジャパン社 ※Irg379:2-(4-メチルベンジル)-2-(ジメチルアミノ)-1-(4-モルフォリノフェニル)エタン-1-オン,BASFジャパン社 ※OXE-02:エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-1-(o-アセチルオキシム),BASFジャパン社 ※TPO:ルシリンTPO,BASFジャパン社」 イ 「[0134] [表8] 」 ウ 「[0137] [表11] 」 (16) 甲18の記載事項 本件特許の出願前に頒布された刊行物である甲18には,次の事項が記載されている。 ア 「【0083】 〔合成例1〕 還流冷却器,温度計,窒素置換用ガラス管及び撹拌機を取り付けた四ツ口フラスコに,メタクリル酸42質量部,メチルメタクリレート43質量部,スチレン35質量部,ベンジルアクリレート35質量部,カルビトールアセテート100質量部,ラウリルメルカプタン0.5質量部,アゾビスイソブチロニトリル4質量部を加えた。この四ツ口フラスコ内の液を窒素気流下で75℃で5時間加熱して重合反応を進行させ,濃度50質量%の共重合体溶液を得た。 【0084】 この共重合体溶液に,ハイドロキノン0.05質量部,グリシジルメタクリレート23質量部,ジメチルベンジルアミン2.0質量部を加え,80℃で24時間付加反応を行なった後,カルビトールアセテート35質量部を加えることで,濃度50質量%の感光性樹脂の溶液(感光性樹脂溶液A)を得た。 【0085】 〔合成例2〕 還流冷却器,温度計,窒素置換用ガラス管及び撹拌機を取り付けた四ツ口フラスコに,グリシジルメタクリレート120質量部,メチルメタクリレート25質量部,t-ブチルアクリレート20質量部,t-ブチルメタクリレート35質量部,カルビトールアセテート200質量部,アゾビスイソブチロニトリル18.4質量部を加えた。この四ツ口フラスコ内の液を窒素気流下で95℃で8時間加熱して重合反応を進行させ,濃度50質量%の共重合体溶液を得た。」 イ 「【0108】 (はんだ耐熱性) フラックスとしてLONCO 3355-11(ロンドンケミカル社製の水溶性フラックス)を用い,まずテストピースにフラックスを塗布し,次いでこれを260℃の溶融はんだ浴に15秒間浸漬し,その後水洗した。このサイクルを3回おこなった後の表面白化の程度を観察した。 【0109】 表面白化の評価方法は次の通りである。 ◎:異常が認められない。 ○:僅かに白化が認められる。 △:白化が認められる。 ×:著しい白化が認められる。」 ウ 「【0115】 (試験結果) 以上の評価試験の結果を下記表1に示す。 【0116】 【表1】 」 (17)  甲1発明Aとの対比・判断 ア 本件発明1について (ア)甲1発明Aの「ビフェニルノボラック骨格を有するエポキシ樹脂」は,「熱硬化性樹脂」なのであるから,甲1発明Aの「ビフェニルノボラック骨格を有するエポキシ樹脂」は,本件発明1の「(B)エポキシ系熱硬化成分」に相当する。 (イ)甲1発明Aの「カルボキシル基含有樹脂」,「酸化チタン」及び「光重合開始剤」は,本件発明1の「(A)カルボキシル基含有樹脂」,「酸化チタン」及び「(D)光重合開始剤」に相当する。また,甲1発明Aの「酸化チタン」は無機物質であって,樹脂組成物に充填されるものであるから,本件発明1の「(C)無機充填物」にも相当する。 (ウ)してみれば,本件発明1と甲1発明Aとは,「(A)カルボキシル基含有樹脂,(B)エポキシ系熱硬化性成分,(C)無機充填物,および,(D)光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物であって,(C)無機充填物が,酸化チタンを含有することを特徴とする感光性脂組成物。」である点で一致し,次の点で相違する。 相違点1:本件発明1では,「(B)エポキシ系熱硬化成分が,20℃で液状である」ものを用い,かつ「(A)カルボキシル基含有樹脂に含まれるカルボキシル基の当量に対する,前記(B)エポキシ系熱硬化成分に含まれるエポキシの当量の比が,0.8以下」であるのに対し,甲1発明Aでは,このような点は特定されていない点。 (エ)相違点1について検討する。 本件発明1は,エポキシ系熱硬化成分として,20℃で液状であるものを用い,かつカルボキシル基含有樹脂に含まれるカルボキシル基の当量に対するエポキシ系熱硬化成分に含まれるエポキシの当量の比を0.8以下とすることで,スルーホール等における現像残渣の発生をなくすという,格別顕著な効果を奏するものと認められる。このことは,段落【0039】及び【0040】の一般的な記載の他,【0081】【表1】及び【0082】【表2】において,エポキシ系熱硬化成分として,20℃で液状であるものを用い,かつカルボキシル基含有樹脂に含まれるカルボキシル基の当量に対するエポキシ系熱硬化成分に含まれるエポキシの当量の比を0.8以下とした実施例1及び実施例2のみが,現像性について「◎」の評価(段落【0076】の現像性評価において「現像残渣がない場合」に相当)となっていることからも理解される。 一方,甲1の段落【0043】には,種々のエポキシ樹脂が例示され,その中には20℃で液状のものも含まれている。しかし,そのようなエポキシ樹脂を用い,かつカルボキシル基含有樹脂に含まれるカルボキシル基の当量に対するエポキシ系熱硬化成分に含まれるエポキシの当量の比を0.8以下とすることによって,スルーホール等における現像残渣の発生をなくすことは,記載も示唆もされていない。 (オ)申立人提出の甲6,7,10~15,17について 申立人は,液状のエポキシ樹脂に関連して,甲6,7,10~13を提出している。 確かに,甲6の段落【0019】には,エポキシ樹脂について「液状樹脂の添加により,例えばフィルムをプリント配線基板にラミネートしたとき,基板の凹部への樹脂の回り込み性が向上されるという一般的な効果の他に,現像後の樹脂残りが低減されるという,感光性接着フィルムにおいて極めて重要な効果が発現される。」と記載され,甲7の段落【0008】には,「ビスフェノ-ルA型又はビスフェノールF型エポキシ樹脂が好ましく,平均分子量が1000より大きくなるとアルカリ水溶液を用いた現像性の面で好ましくない。」と記載されている。また,現像性や残渣の観点では,甲12の段落[0030]に,「本発明の組成物では,感光性樹脂(A)と光重合開始剤(C)と軟化点が60℃以下の多官能エポキシ樹脂(B)(以下,「エポキシ樹脂(B)」ともいう。)を組み合わせることにより,組成物の感度を高めることができ,組成物が良好に硬化する。また,エポキシ樹脂(B)を含有させることにより,現像後の残渣がなく,現像性が改善される」との記載がある。 また,甲10の段落【0107】【表3】及び段落【0108】【表4】には,実施例1~6,9~23において「ビスフェノールA型エポキシ樹脂」を用いることが記載されており,この「ビスフェノールA型エポキシ樹脂」は,段落【0098】の【表2】によると,ジャパンエポキシレジン社製(当合議体注:申立人の提出する参考資料6の三菱化学株式会社のホームページによると,ジャパンエポキシレジン社は,現在は三菱化学株式会社に吸収合併されている。)の「jER828」であり,当該樹脂は,申立人が提出する参考資料5(三菱化学株式会社のエポキシ樹脂に関するカタログ)によれば「常温で液体」であると記載されていることや,また特開2013-76002号公報の段落【0015】に「常温,例えば20℃で液状のエポキシ樹脂が好ましい」と記載され,段落【0016】に,その例として「これらの市販品としては,ビスフェノールA型液状エポキシとして,三菱化学社製jER828,・・・(中略)・・・等が挙げられる。」と記載されていることからみて,20℃で液状のエポキシ樹脂であると認められる。すなわち,甲10では,特定の実施例において,20℃で液状のエポキシ樹脂が用いられている。 また甲11でも,「基材との濡れ性」や「突沸低減」(段落【0034】)を目的として,25℃で液状のエポキシ樹脂を用いることが記載されている。 そして,甲13の段落[0123][表2]及び段落[0124][表3]には,実施例11及び18において,熱反応性化合物として「828」を用いることが記載されており,段落[0125]によれば,これは「Bis-A型液状エポキシ(当量190g/eq),三菱化学社(マレイミド化合物)」であるところ,この樹脂は三菱化学社製の「jER828」のことであると認められる。すなわち,甲13でも,特定の実施例において,20℃で液状のエポキシ樹脂が用いられている。 さらに,申立人は,液状及び固体状エポキシ樹脂の双方を含有する周知例として,甲14,15,17を提出している。 そして,甲14には,「例えば室温で液状のエポキシ樹脂と固体のエポキシ樹脂を併用した場合,低分子量の液状のエポキシ樹脂が,得られる硬化皮膜の可撓性及び密着性向上に寄与し,固体のエポキシ樹脂が,ガラス転移点を上昇させるのに寄与するので,これらの比率を調整することにより上記特性のバランスを調整することが可能となる」ことが記載され(段落【0012】),甲15には,「エポキシ化合物が液状の二官能エポキシ樹脂と,液状の二官能エポキシ樹脂以外の化合物とを含む場合には,この液状の二官能エポキシ樹脂以外の化合物の種類,割合等を調整することで,レジスト用樹脂組成物の物性を調整することが可能である」ことが記載されている(段落[0070])。 また,甲15の[0131]の[表1]の実施例5では「エポキシ化合物A」及び「エポキシ化合物B」が,実施例7では「エポキシ化合物A」及び「エポキシ化合物C」が用いられている。段落[0133]によると,「エポキシ化合物A」はビスフェノールA型液状エポキシ樹脂であるDIC株式会社製の「EPICLON 850」,「エポキシ化合物B」はクレゾールノボラック型エポキシ樹脂であるDIC株式会社製の「EPICLON N-695」,「エポキシ化合物C」はビスフェノールA型固形エポキシ樹脂である三菱化学株式会社製の「jER1001」であると認められる。そして,甲16の段落[0055]によれば,DIC社製のクレゾールノボラック型エポキシ樹脂EPICLON N-695は常温で固体のエポキシであると認められるから,甲15の実施例5及び7では,常温で液体のエポキシ樹脂と固体のものとが併用されているものと認められる。 さらに,甲17の段落[0118][表1]には,実施例23,57~64において,常温で液体である「828:Bis-A型液状エポキシ(当量190),三菱化学社」と,常温で固体である「HP7200H60:ジシクロペンタジエン型エポキシ(当量265),DIC社をシクロヘキサノンで溶解。固形分60%」とものとが併用されている。すなわち,甲17の実施例23,57~64においても,常温で液体のエポキシ樹脂と固体のものとが併用されているものと認められる。 しかしながら,前記甲6,7,10~15,17のいずれも,スルーホール等の現像残渣を低減するために,20℃で液状のエポキシ樹脂を用い,かつカルボキシル基含有樹脂に含まれるカルボキシル基の当量に対するエポキシ系熱硬化成分に含まれるエポキシの当量の比を0.8以下とすることは,記載も示唆もされていない。 (カ)申立人は,当量比に関連して甲4及び甲5を提出している。 しかし,甲4の段落【0054】には,「・・・アルカリ現像性ネガ型樹脂組成物中におけるカルボキシル基とエポキシ基の当量比は,カルボキシル当量(g/モル)/エポキシ当量(g/モル)の比a/e=0.5~1.5に設定される。このa/eが0.5を下回る場合には,前記硬化反応が十分に進行せず,硬化被膜の硬度及び耐熱性が不足するという結果を招く。その一方,1.5を上回る場合には,成分Aのアルカリ可溶性共重合体の含有量が多くなるためアルカリ溶液への溶解性が高くなり過ぎ,現像時における膜減りによるパターン形成が不良となる。」と記載されていように,カルボキシル当量に対するエポキシ当量の上限を定める理由(a/eが0.5を下回らないようにする理由)は,上記のとおり「硬化被膜の硬度及び耐熱性」の不足を防止するためであり,本件発明1のような,スルーホール等の現像残渣を抑制する効果を奏するものではないし,その上限値も2(1を0.5で除した値)であり,本件発明1の上限値とは大きく異なっている。 また,甲5の段落【0039】の記載をみるに,甲5において上限値を定める理由は,「塗膜の現像性や硬化被膜の耐無電界めっき性が悪くなり,またPCT耐性も劣ったものとなる。」というものであり,本件発明1のような,スルーホールなどの現像残渣を抑制する効果を奏するものではないし,その当量比の上限値も2とされており,本件発明1の上限値とは大きく異なっている。 そして,甲4及び甲5のいずれにも,エポキシ系熱硬化成分として,20℃で液状であるものを用い,かつカルボキシル基含有樹脂に含まれるカルボキシル基の当量に対するエポキシ系熱硬化成分に含まれるエポキシの当量の比を0.8以下とすることで,スルーホール等における現像残渣の発生を抑制することは,記載も示唆もされていない。 したがって,甲4,甲5に記載を参酌しても,甲1発明Aにおいて,エポキシ系熱硬化成分として,20℃で液状であるものを用い,かつカルボキシル基含有樹脂に含まれるカルボキシル基の当量に対するエポキシ系熱硬化成分に含まれるエポキシの当量の比を,0.8以下とすることで,スルーホール等における現像残渣の発生を抑制することが,当業者にとって容易であったものとはいえない。 (キ)したがって,相違点1に係る構成を具備する本件発明1は,甲1発明Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 イ 本件発明3~6について 本件発明3~6は,本件発明1をさらに限定したものであるので,本件発明1と同様に,当業者が甲1発明Aに基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 ウ 本件発明2について (ア)本件発明2と甲1発明Aとは,「(A)カルボキシル基含有樹脂,(B)エポキシ系熱硬化性成分,(C)無機充填物,および,(D)光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物であって,(C)無機充填物が,酸化チタンを含有することを特徴とする感光性脂組成物。」である点で一致し,次の点で相違する。 相違点2:本件発明2では,(A)カルボキシル基含有樹脂がスチレンまたはスチレン誘導体から誘導されたものであるのに対し,甲1発明Aでは,そのようなものを用いることは記載されていない点。 相違点3:本件発明2では,(A)カルボキシル基含有樹脂に含まれるカルボキシル基の1当量に対し,前記(B)エポキシ系熱硬化性成分に含まれるエポキシ基の当量が1.0以下であるのに対し,甲1発明Aでは,1.0以下とすることは特定されていない点。 (イ)相違点2及び3について検討する。 (A) 甲1発明Aは,段落【0046】に「前記ビフェニルノボラック骨格を有するエポキシ樹脂や分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する化合物等の熱硬化性成分の配合量は,前記カルボキシル基含有樹脂のカルボキシル基1当量に対して,好ましくは0.3~2.5当量,より好ましくは,0.5~2.0当量となる範囲にある。分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分の配合量が0.3未満である場合,前記カルボキシル基含有樹脂との架橋反応が少なくなるため,耐熱性,耐アルカリ性,電気絶縁性などが低下するので,好ましくない。」と記載されているように,耐熱性が望まれていることは明らかである。 (B) 一方,甲4は,「一般式(1)」で表される,カルボキシル基を有する構成単位(a1)と,「一般式(2)」で表される構成単位(a2)とを有する「アルカリ可溶性共重合体」としての「成分A」を含む「アルカリ現像性ネガ樹脂組成物」について記載されており(【請求項1】),前記「アルカリ可溶性共重合体」は,カルボキシル基を有する構成単位(a1)を含むから,「カルボキシル基含有樹脂」である。そして,甲4の段落【0038】には,アルカリ可溶性共重合体に前記の「構成単位(a2)」を導入するために使用する単量体として,「一般式(5)」のものを用いること,及び前記「一般式(5)中のR3としては,感度及び解像度と耐熱性の両立の観点からシクロヘキシル基又はフェニル基が好ましい。」ことが記載されている。一般式(5)において,R3をフェニル基としたものはスチレン単量体であるから,甲4には,感度及び解像度と耐熱性の両立の観点から,スチレンから誘導されたカルボキシル基含有樹脂を用いることが記載されているものと認められる。また,甲4の段落【0072】【表1】及び【0074】【表2】には,「アルカリ可溶性共重合体」の合成例が記載されているが,前記【表1】及び【表2】から明らかなように,実施例に用いられる重合体「a-1」,「a-6」,「a-7」及び比較例に用いられる重合体「a’-1」,「a’-3」,「a’-6」は,スチレンから誘導されたカルボキシル基含有樹脂であると認められる。 ここで,段落【0081】【表4】に記載された比較例の実験結果をみると,スチレンから誘導されたカルボキシル基含有樹脂を含む比較例1,2,5,6,11は,「耐熱性(2)」の試験結果が「△」(評価方法について,段落【0065】及び【0066】を参照されたい。特定の条件下で「熱ダレ等の形状変化が観られるもの」が「△」である。)であるが,それ以外のもの,すなわち,スチレンから誘導されたカルボキシル基含有樹脂を含まない比較例3,4,7~10は,「耐熱性(2)」の試験結果が「×」(「パターンの形成が不可能であるもの」が「×」)とされている。甲4の前記段落【0038】の記載と併せてみれば,スチレンから誘導されたカルボキシル基含有樹脂を用いることは,耐熱性の観点からみて好ましいことが理解できるものと認められる。 また,甲9は,カルボキシル基含有共重合樹脂を含有する感光性樹脂組成物について記載されており(【請求項1】),前記カルボキシル基含有共重合樹脂について,段落【0006】には「(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸エステルから合成されるカルボキシル基含有共重合樹脂,又は,(メタ)アクリル酸,(メタ)アクリル酸エステル及びスチレン誘導体スチレン誘導体(当合議体注:「スチレン誘導体スチレン誘導体」は,「スチレン誘導体」の誤記であると思われる。)から合成されるカルボキシル基含有共重合樹脂を用いることにより,露光感度,解像性,耐薬品性,耐溶剤性などにおいて優れた特性を有し,特に耐熱性,密着性,耐薬品性に優れ,かつタックフリーで,作業性が良好な感光性樹脂組成物が得られることを見出した。」と記載されている。さらに,甲9の【0051】【表1】をみると,スチレンを含有する実施例1~6においては,はんだ耐熱性の評価が「◎」(評価方法について,段落【0046】を参照されたい。)であるのに対し,スチレンを含有しない感光性樹脂を用いる比較例のはんだ耐熱性の評価は「○」となっている。 そして,甲18には,実施例において,感光性樹脂のはんだ耐熱性等の評価がなされているところ(段落【0116】【表1】を参照),スチレンを含有する感光性樹脂溶液A(段落【0083】及び【0084】を参照)を用いた実施例1~10及び比較例1は,はんだ耐熱性試験の結果が「◎」(評価方法について,段落【0108】及び【0109】を参照)であるのに対し,スチレンを含有しない感光性樹脂溶液B(段落【0085】及び【0086】を参照)を用いた比較例2は,はんだ耐熱性試験の結果が「○」となっている。 また,甲8には,プリント配線板に用いるソルダーレジスト組成物であって,カルボキシル基含有感光性樹脂を用いるものである。そして,甲8の段落【0009】には,「本発明のソルダーレジスト組成物は,感光性樹脂として,(a)スチレンもしくはスチレン誘導体と(b)(メタ)アクリル酸を必須成分とした共重合体(c)に,前記一般式(I)で表される構造を有する化合物(d)を反応させて得られるカルボキシル基含有感光性樹脂(A)を用いると共に,光重合開始剤としてオキシムエステル系光重合開始剤(B),好ましくはオキシムエステル系光重合開始剤と他の光重合開始剤を組み合わせて含有しているため,高感度であり,特にダイレクト露光等に対する感度が高く,作業性良く表面硬化性,はんだ耐熱性,無電解金めっき耐性等に優れた硬化皮膜を形成できる。」との記載があり,スチレン又はスチレン誘導体を含むカルボキシル基含有感光性樹脂を用いたソルダーレジスト組成物のはんだ耐熱性について記載がされている。 さらには,例えば特開平2001-188340号公報には,カルボキシル基を含有する高分子化合物を有するソルダーレジストについて,段落【0021】に,「(メタ)アクリロイル基およびカルボキシル基を含有する高分子化合物は,(メタ)アクリル酸と共重合させるビニル化合物を変えることで様々な物性を与えることができる。・・・(中略)・・・また,高耐熱性,高硬度の硬化塗膜を得る場合はスチレン,メタクリル酸メチルまたは(メタ)アクリル酸イソボルニル等を共重合すると良い。」と記載されている。 上記のような甲4,8,9,18及び特開2001-188340号公報の記載からみて,スチレンを含むようなカルボキシル基含有樹脂を用いた際に耐熱性が得られることは,当業者に既に知られていたものと認められる。 (C) そして,甲1発明Aには,カルボキシル基含有樹脂の選択肢として,スチレンまたはスチレン誘導体から誘導されたものが挙げられているのであるから,甲1発明Aにおいて,カルボキシル基含有樹脂をスチレンまたはスチレン誘導体から誘導されたものとすることは,当業者が容易に想到したものとも考えられる。 (D) しかし,甲1発明Aにおいて,耐熱性を重視するのであれば,段落【0046】の「分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分の配合量が0.3未満である場合,前記カルボキシル基含有樹脂との架橋反応が少なくなるため,耐熱性,耐アルカリ性,電気絶縁性などが低下するので,好ましくない。」との記載からみて,環状エーテル基(エポキシ基)の当量を十分に高くするのが自然である。したがって,甲1発明Aにおいて,耐熱性を考慮し,カルボキシル基含有樹脂の選択肢としてスチレンまたはスチレン誘導体から誘導されたものを選択した場合には,エポキシ基を十分に多くする方が自然であって,カルボキシル基含有樹脂に含まれるカルボキシル基の当量に対する,エポキシ系熱硬化成分に含まれるエポキシの当量の比を,甲1発明Aにおいて好ましいとされる「0.5~2.0」のうち,1.0以下であるように設定するものとは認め難い。 してみれば,相違点2及び3に係る構成を具備する本件発明2は,当業者が甲1発明Aに基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 エ 本件発明7~10について 本件発明7~10は,本件発明2をさらに限定したものであるので,本件発明2と同様に,当業者が甲1発明Aに基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 (18) 甲1発明Bとの対比・判断 ア 本件発明1について (ア)甲1発明Bの「NC-3000HCA75」は「エポキシ樹脂」であって,熱硬化性であることは明らかであるから,本件発明1の「(B)エポキシ系熱硬化性成分」に相当する。 (イ)甲1発明Bの「酸化チタン」及び「光重合性開始剤」は,いずれも本件発明1の「酸化チタン」及び「光重合開始剤」に相当する。また,甲1発明Bの「酸化チタン」は無機物質であって,樹脂組成物に充填されるものであるから,本件発明1の「(C)無機充填物」にも相当する。 (ウ)甲1発明Bの「ワニスA-1」,「ワニスA-3」及び「ワニスA-4」はいずれもカルボキシル基含有樹脂なのであるから,併せて本件発明1の「(A)カルボキシル基含有樹脂」に相当する。 (エ)申立人が提出した参考資料2(日本化薬株式会社のカタログ)によれば,甲1発明BのNC-3000のエポキシ当量は,280~300g/eqであると認められる。 そして,水酸化カリウムの式量が56.11であることから,甲1発明Bのカルボキシル含有樹脂におけるカルボキシル基当量(数)は,ワニスA-1について49.8(mgKOH/g)/1000×0.6(重量%)×83(重量部)/56.11(水酸化ナトリウムの式量)=0.044となる。同様に,ワニスA-3について0.009,ワニスA-4について0.069となるから,合わせて0.122となる。一方,エポキシ樹脂であるNC-3000HCA75は,当量が280(g/eq)であるとすると,1/280(g/eq)×0.75(重量%)×30(重量部)=0.080となり,300(g/eq)であるとすると,0.075となる。 そうすると,カルボキシル基含有樹脂に含まれるカルボキシル基の当量に対する,エポキシ系熱硬化性成分に含まれるエポキシ基の当量の比は,0.61~0.66となるから,甲1発明Bは,本件発明1の「カルボキシル基含有樹脂に含まれるカルボキシル基の当量に対する,前記エポキシ系熱硬化性成分に含まれるエポキシ基の当量の比が,0.8以下」であるとの要件を満たす。 (オ)してみれば,本件発明1と甲1発明Bとは,「(A)カルボキシル基含有樹脂,(B)エポキシ系熱硬化性成分,(C)無機充填物,および,(D)光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物であって,前記(A)カルボキシル基含有樹脂に含まれるカルボキシル基の当量に対する,前記(B)エポキシ系熱硬化性成分に含まれるエポキシ基の当量の比が,0.8以下であり,前記(C)無機充填物が,酸化チタンを含有することを特徴とする感光性脂組成物。」である点で一致し,次の点で相違する。 相違点4:本件発明1では,エポキシ系熱硬化成分が,20℃で液状であるのに対し,甲1発明Bでは,常温で固形のエポキシ系熱硬化成分が用いられている点。 (カ)相違点4について検討する。 前記(17)ア(エ)で検討したように,本件発明1は,エポキシ系熱硬化成分として,20℃で液状であるものを用い,かつカルボキシル基含有樹脂に含まれるカルボキシル基の当量に対するエポキシ系熱硬化成分に含まれるエポキシの当量の比を0.8以下とすることで,スルーホール等における現像残渣の発生を抑制するという,格別顕著な効果を奏するものと認められる。 一方,甲1の段落【0043】には,種々のエポキシ樹脂が例示され,その中には20℃で液状のものも含まれている。しかし,そのようなエポキシ樹脂を用い,かつカルボキシル基含有樹脂に含まれるカルボキシル基の当量に対するエポキシ系熱硬化成分に含まれるエポキシの当量の比を0.8以下とすることによって,スルーホール等における現像残渣の発生をなくすことは,記載も示唆もされていない。 (キ)申立人は,液状のエポキシ樹脂に関連して,甲6,7,10~15,17を提出している。 しかし,上記(17)ア(オ)で検討したのと同様の理由により,甲6,7,10~15,17を参酌しても,本件発明1は,当業者が甲1発明Bに基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 (ク)したがって,相違点4に係る構成を具備する本件発明1は,甲1発明Bに基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 イ 本件発明3~6について 本件発明3~6は,本件発明1をさらに限定したものであるので,本件発明1と同様に,当業者が甲1発明Bに基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 ウ 本件発明2について (ア)甲1発明Bの「NC-3000HCA75」は「エポキシ樹脂」であって,熱硬化性であることは明らかであるから,本件発明2の「(B)エポキシ系熱硬化性成分」に相当する。 (イ)甲1発明Bの「酸化チタン」及び「光重合性開始剤」は,いずれも本件発明1の「酸化チタン」及び「光重合開始剤」に相当する。また,甲1発明Bの「酸化チタン」は無機物質であって,樹脂組成物に充填されるものであるから,本件発明1の「(C)無機充填物」にも相当する。 (ウ)甲1発明Bの「ワニスA-1」,「ワニスA-3」及び「ワニスA-4」はいずれもカルボキシル基含有樹脂なのであるから,併せて本件発明2の「(A)カルボキシル基含有樹脂」に相当する。 (エ)甲1発明Bにおける,カルボキシル基含有樹脂に含まれるカルボキシル基の当量に対する,エポキシ系熱硬化性成分に含まれるエポキシ基の当量の比が0.61~0.66であることは,上記ア(エ)で検討したとおりである。 してみれば,甲1発明Bは,本件発明1の「(A)カルボキシル基含有樹脂に含まれるカルボキシル基の1当量に対し,(B)エポキシ系熱硬化性成分に含まれるエポキシ基の当量が1.0以下であ」るとの要件を満たす。 (オ)したがって,本件発明2と甲1発明Bとは,「(A)カルボキシル基含有樹脂,(B)エポキシ系熱硬化性成分,(C)無機充填物,および,(D)光重合開始剤を含有する感光性樹脂組成物であって,前記(A)カルボキシル基含有樹脂に含まれるカルボキシル基の1当量に対し,前記(B)エポキシ系熱硬化性成分に含まれるエポキシ基の当量が1.0以下であり,前記(C)無機充填物が,酸化チタンを含有することを特徴とする感光性樹脂組成物。」である点で一致し,次の点で相違する。 相違点5:本件発明2では,(A)カルボキシル基含有樹脂がスチレンまたはスチレン誘導体から誘導されたものであるのに対し,甲1発明Bでは,そのようなものを用いていない点。 (カ)相違点5について検討する。甲1の段落【0046】に「前記ビフェニルノボラック骨格を有するエポキシ樹脂や分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する化合物等の熱硬化性成分の配合量は,前記カルボキシル基含有樹脂のカルボキシル基1当量に対して,好ましくは0.3~2.5当量,より好ましくは,0.5~2.0当量となる範囲にある。分子中に複数の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化性成分の配合量が0.3未満である場合,前記カルボキシル基含有樹脂との架橋反応が少なくなるため,耐熱性,耐アルカリ性,電気絶縁性などが低下するので,好ましくない。」と記載されているように,甲1発明Bにおいても,耐熱性が考慮されていることは明らかである。 一方,スチレンを含むようなカルボキシル基含有樹脂を用いた際に耐熱性が得られることが,当業者に既に知られていたものと認められることについては,前記(17)ウ(イ)(B)で検討したとおりである。 そして,甲1の段落【0011】には,スチレン又はスチレン誘導体から誘導されたカルボキシル基含有樹脂が記載されているところ,甲1発明Bにおいて,カルボキシル基含有樹脂をスチレンまたはスチレン誘導体から誘導されたものとすることは,当業者が容易になし得たものである。 (キ)カルボキシル基含有樹脂を,甲1発明Bのものからスチレン又はスチレン誘導体から誘導された樹脂に変更した場合に,当量比が変動する可能性があるので,念のため,この点について検討する。甲1発明Bにおいては,その当量比が0.61~0.66であり,本件発明2の上限値である1.0を大きく下回っている。また,その当量比を設計すべきことが甲1の段落【0046】に記載されており,当量比も重要なパラメータの1つであると認識されていることは明らかである。そうすると,当該当量比が高々0.61~0.66程度であった甲1発明Bにおいて,これが1.0を超えるものとなるような,大幅な当量比の変更を行うものとは考えがたい。 してみれば,本件発明2は,甲1発明Bに基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 エ 本件発明7について (ア)本件発明7と甲1発明Bとを対比すると,上記相違点5に加え,以下の点で相違する。 相違点6:本件発明7では,エポキシ系熱硬化成分が,20℃で液状であるのに対し,甲1発明では,常温で固形のエポキシ系熱硬化成分が用いられている点。 (イ)相違点6について検討するに,前記(17)ア(オ)で検討したように,20℃で液状のエポキシ樹脂自体は,甲6,7,10~13に記載されるように,当業者に周知であるものと認められる。そして,このような液状のエポキシ樹脂を利用する目的として,甲6の段落【0019】に「液状樹脂の添加により,例えばフィルムをプリント配線基板にラミネートしたとき,基板の凹部への樹脂の回り込み性が向上されるという一般的な効果の他に,現像後の樹脂残りが低減されるという,感光性接着フィルムにおいて極めて重要な効果が発現される。」,甲12の段落[0030]に「本発明の組成物では,感光性樹脂(A)と光重合開始剤(C)と軟化点が60℃以下の多官能エポキシ樹脂(B)(以下,「エポキシ樹脂(B)」ともいう。)を組み合わせることにより,組成物の感度を高めることができ,組成物が良好に硬化する。また,エポキシ樹脂(B)を含有させることにより,現像後の残渣がなく,現像性が改善される。ここで,軟化点は,JIS K 7234に記載の方法に従い測定される値を意味する。軟化点が60℃以下の多官能エポキシ樹脂(B)としては,公知のものでよいが,例えば,20~30℃の室温で液状であることが好ましい。」と記載されているところである。このような甲6及び甲12の記載からみて,一般的な現像性の観点から,20℃で液状のエポキシ樹脂を用いることは,当業者に既によく知られていたものとも認められる。 甲1発明Bにおいても,例えば甲1の段落【0024】に「また,低酸価の樹脂としては,ウレタン構造を有するカルボキシル基含有ポリウレタンが密着性,低反りの観点から好ましく,高酸価の樹脂としては,芳香環を有するカルボキシル基含有樹脂であることが難燃性,耐熱性,現像性の観点から好ましい。」と記載されるように,良好な現像性が求められているものと認められる。 してみれば,甲1発明Bにおいて,20℃で液状のエポキシ樹脂を用いて,相違点6に係る構成を具備する本件発明7に係る発明のような構成とすることは,当業者が容易になし得たことと認められる。 オ 本件発明8について 感光性樹脂組成物をドライフィルムとすることは,甲1の請求項2に記載されており,この点は実質的にみて相違点ではないか,または当業者が容易になし得たことである。 カ 本件発明9について 感光性樹脂組成物は,硬化して利用されるのであるから,硬化物とすることは実質的にみて相違点ではない。仮に相違点であるとしても,当業者が容易になし得たことである。 キ 本件発明10について 感光性樹脂組成物をプリント配線板に用いる点については,甲1の請求項4に記載されており,この点は実質的にみて相違点ではないか,または当業者が容易になし得たことである。 4 甲2,3に基づく進歩性判断について (1) 甲2の記載事項の概要 甲2には,カルボン酸含有樹脂と,光重合開始剤とを含む硬化性樹脂組成物であって(【請求項1】),酸化チタンなどの金属酸化物を用いても良いこと(段落【0060】),エポキシ樹脂のような熱硬化性樹脂を用いても良いこと(段落【0063】),カルボン酸含有樹脂のカルボキシル基1当量に対して,チオエーテル基を有する熱硬化成分の配合量の当量比をある特定の範囲内にすべきこと(段落【0068】)が記載されている。 (2) 本件発明との対比・判断 ア 本件発明1について (ア)相違点 甲2記載の発明と本件発明1とは,次の点で相違する。 相違点7:本件発明1では,エポキシ系熱硬化成分として,20℃で液状であるものを用い,かつカルボキシル基含有樹脂に含まれるカルボキシル基の当量に対するエポキシ系熱硬化成分に含まれるエポキシの当量の比を,0.8以下とすることで,スルーホール等における現像残渣の発生を抑制するのに対し,甲2発明では,このような点は特定されていない点。 (イ)判断 相違点7について検討する。甲2の段落【0065】には種々のエポキシ樹脂が例示され,その中には20℃で液状のものも含まれてはいるものの,甲2には,20℃で液状のものを選択しつつ,かつカルボキシル基含有樹脂に含まれるカルボキシル基の当量に対するエポキシ系熱硬化成分に含まれるエポキシの当量の比を0.8以下とすべきことは記載されていないし,示唆もされていない。また,前記3(17)ア(エ)で検討したように,本件発明1は,エポキシ系熱硬化成分として,20℃で液状であるものを用い,かつカルボキシル基含有樹脂に含まれるカルボキシル基の当量に対するエポキシ系熱硬化成分に含まれるエポキシの当量の比を0.8以下とすることで,スルーホール等における現像残渣をなくすという,格別顕著な効果を奏するものであるといえる。 以上のような甲2の記載及び本件発明1の技術内容に鑑みれば,本件発明1は,甲2発明に基づいて当業者が容易になし得たものとはいえない。 (ウ)なお,申立人は,当量比に関連して甲4及び甲5を提出しているが,前記3(17)ア(カ)で検討したのと同様の理由により,容易想到性の根拠とすることができない。 (エ)したがって,相違点7に係る構成を具備する本件発明1は,甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 イ 本件発明2について (ア)相違点 甲2記載の発明と本件発明2とは,次の点で相違する。 相違点8:本件発明2では,(A)カルボキシル基含有樹脂がスチレンまたはスチレン誘導体から誘導されたものであるのに対し,甲1発明では,そのようなものを用いることは記載されていない点。 相違点9:本件発明1では,(A)カルボキシル基含有樹脂に含まれるカルボキシル基の1当量に対し,前記(B)エポキシ系熱硬化性成分に含まれるエポキシ基の当量が1.0以下であるのに対し,甲2記載の発明では,0.6~2.5,より好ましくは0.8~2.0とされている点。 (イ)判断 甲2発明は,段落【0068】に「分子中に2つ以上の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化成分の配合量は,カルボン酸含有樹脂のカルボキシル基1当量に対して,0.6~2.5当量が好ましい。配合量が0.6未満である場合,ソルダーレジスト膜にカルボキシル基が残り,耐熱性,耐アルカリ性,電気絶縁性などが低下する。一方,2.5当量を超える場合,低分子量の環状(チオ)エーテル基が乾燥塗膜に残存することにより,塗膜の強度などが低下する。より好ましくは,0.8~2.0当量である。」と記載されているように,耐熱性が望まれていることは明らかである。 一方,スチレンを含むようなカルボキシル基含有樹脂を用いた際に耐熱性が得られることが,当業者に既に知られていたものと認められることについては,前記3(17)ウ(イ)(B)で検討したとおりである。 そして,甲2には,段落【0022】に「このようなカルボン酸含有樹脂としては,以下に列挙するような化合物(オリゴマー及びポリマーのいずれでもよい)が好ましい。(1)(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸と,スチレン,α-メチルスチレン,低級アルキル(メタ)アクリレート,イソブチレン等の不飽和基含有化合物との共重合により得られるカルボン酸含有樹脂。」との記載があるのであるから,甲2発明において,カルボキシル基含有樹脂をスチレンまたはスチレン誘導体から誘導されたものとすることは,当業者が容易に想到したものとも考えられる。 しかし,甲2発明において,耐熱性を重視するのであれば,段落【0068】の「分子中に2つ以上の環状(チオ)エーテル基を有する熱硬化成分の配合量は,カルボン酸含有樹脂のカルボキシル基1当量に対して,0.6~2.5当量が好ましい。配合量が0.6未満である場合,ソルダーレジスト膜にカルボキシル基が残り,耐熱性,耐アルカリ性,電気絶縁性などが低下する。」との記載からみて,環状エーテル基(エポキシ基)の当量を十分に高くするのが自然である。したがって,甲2発明において,耐熱性を考慮し,カルボキシル基含有樹脂の選択肢としてスチレンまたはスチレン誘導体から誘導されたものを選択した場合には,エポキシ基を十分に多くする方が自然であって,カルボキシル基含有樹脂に含まれるカルボキシル基の当量に対する,エポキシ系熱硬化成分に含まれるエポキシの当量の比を,甲2発明において好ましいとされる「0.8~2.0」のうち,1.0以下であるように設定するものとは認められない。 してみれば,相違点8及び9に係る構成を具備する本件発明2は,当業者が甲2発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 ウ 本件発明3~10について 本件発明3~10は,本件発明1又は本件発明2をさらに限定したものであるので,本件発明1及び本件発明2と同様に,当業者が甲2発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 (3) 甲3の記載事項の概要 甲3には,光硬化性樹脂(【請求項1】),熱硬化性樹脂(【請求項1】,光重合開始剤(【請求項4】),エポキシ化合物(【請求項7】),酸化チタン(【請求項8】)を含有する樹脂組成物であって,前記光硬化樹脂がカルボキシル基含有光硬化性樹脂である(【請求項3】)樹脂組成物が記載されている。 (4) 本件発明との対比・判断 ア 本件発明1について (ア)相違点 甲3記載の発明と本件発明1とは,次の点で相違する。 相違点10:本件発明1では,(B)エポキシ系熱硬化成分が,20℃で液状である」ものを用い,かつ「(A)カルボキシル基含有樹脂に含まれるカルボキシル基の当量に対する,前記(B)エポキシ系熱硬化成分に含まれるエポキシの当量の比が,0.8以下」であるのに対し,甲3記載の発明では,このような点は特定されていない点。 (イ)判断 相違点10について検討する。 FLX-2089の固形分酸化の値については,申立人の提出する参考資料1において「98mgKOH/g」と記載されている。しかし,この値は「推定値」とされているため,この値を正しいものとして採用することができない。してみると,甲3の実施例における当量比が具体的にどのような値であるのかは,明らかであるとはいえない。そして,甲3には,当量比をどのようにすべきかについては,記載も示唆もされていない。エポキシ樹脂として,20℃で液状のものを用いるべきことについても,記載も示唆もされていない。 一方,上記3(17)ア(エ)でも検討したように,本件発明1は,エポキシ系熱硬化成分として,20℃で液状であるものを用い,かつカルボキシル基含有樹脂に含まれるカルボキシル基の当量に対するエポキシ系熱硬化成分に含まれるエポキシの当量の比を0.8以下とすることで,スルーホール等における現像残渣の発生をなくすという,格別顕著な効果を奏するものと認められる。 なお,甲4及び甲5について検討するに,これら証拠が本件発明1の進歩性を否定する根拠とできないことは,前記3(17)ア(カ)で検討したとおりである。 してみれば,相違点10に係る構成を具備する本件発明1は,甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 イ 本件発明2について (ア)相違点 甲3記載の発明と本件発明2とは,次の点で相違する。 相違点11:本件発明2では,(A)カルボキシル基含有樹脂がスチレンまたはスチレン誘導体から誘導されたものであるのに対し,甲3記載の発明では,そのようなものを用いることは記載されていない点。 相違点12:本件発明2では,(A)カルボキシル基含有樹脂に含まれるカルボキシル基の1当量に対し,前記(B)エポキシ系熱硬化性成分に含まれるエポキシ基の当量が1.0以下であるのに対し,甲3記載の発明では,当量比が明らかでない点。 (イ)判断 相違点12について検討するに,上記アの(イ)で検討したように,甲3には,当量比をどのような値にするかについて,記載も示唆もされていない。 また,申立人が当量比に関連して提出する甲4及び甲5のいずれも,その当量比の上限は本件発明2の1.0とは大きく異なっており,当量比を1.0以下にすることが容易であることの証拠として用いることができない。 してみれば,相違点11について検討するまでもなく,相違点12に係る構成を具備する本件発明2は,甲3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 ウ 本件発明3~10について 本件発明3~10は,本件発明1又は本件発明2をさらに限定したものであるので,本件発明1及び本件発明2と同様に,当業者が甲3記載の発明に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。 第4 むすび 以上のとおり,本件発明1~10は,甲1発明A,甲2記載の発明,甲3記載の発明から,当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 また,本件発明2,7~10は,甲1発明Bに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本件発明2,7~10の特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 したがって,本件発明2,7~10の特許は,特許法第113条第2号に該当し,取り消されるべきものである。 一方,本件発明1,3~6は,甲1発明A,甲1発明B,甲2記載の発明,甲3記載の発明のいずれに基づいても,当業者が容易に発明をすることができたものではないから,請求項1,3~6に係る特許を取り消すことはできない。 よって,結論のとおり決定する。

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2015-700214

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