特許異議申立
2023-700851
渦電流探傷プローブ、探傷方法
- 審判番号
- 2023-700851
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-038036
- 登録番号
- 7227794
- 請求日
- 2023年08月18日
- 審決日
- 2024年04月22日
- 公報発行日
- 2024年08月30日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】三菱重工業株式会社
- 【権利者代理人】松沼 泰史
- 【権利者代理人】伊藤 英輔
- 【権利者代理人】橋本 宏之
- 【権利者代理人】古都 智
- 【権利者代理人】鎌田 康一郎
- 【権利者代理人】長谷川 太一
- 【異議申立人】笠井 素子
- 審判長/審判官
- 審判長 石井 哲
- 審判官 ▲高▼見 重雄
- 審判官 松本 隆彦
- 分類
- P1651.113-YAA(G01N) / P1651.121-YAA(G01N)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第113条第2号、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第5項、特許法第29条第2項、特許法第126条第7項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7227794号発明「渦電流探傷プローブ、探傷方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7227794号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7、9-11〕について訂正することを認める。
特許第7227794号の請求項1~11に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7227794号の請求項1~11に係る特許についての出願は、平成31年3月1日に出願され、令和5年2月14日にその特許権の設定登録がされ、同月22日に特許掲載公報が発行された。その後、全請求項に係る特許について、同年8月18日に特許異議申立人 笠井素子(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審は、同年11月28日付けで取消理由を通知した。その後、特許権者は、その指定期間内である令和6年1月10日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、当該訂正の請求を「本件訂正請求」という。)を行い、その後合議体は申立人に訂正請求があった旨の通知を送付し期間を指定して意見を求めたが、当該意見書及び本件訂正請求に対して申立人は意見書を提出することはなかった。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
(1)本件訂正請求における請求の趣旨は、特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~7、9~11について訂正することを求めるものであり、その具体的内容は、以下の訂正事項のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示す。
ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1の、
「励磁コイル及び検出コイルを有する組コイルを複数有する検出部を含むプローブヘッドと、
該プローブヘッドに接続されたチューブと、
前記チューブ内に設けられた回路基板と、
を備え、
前記プローブヘッドの延在方向の長さをL1とし、前記プローブヘッドの前記チューブ側の端部から、最も前記プローブヘッド側に設けられる前記回路基板の前記プローブヘッド側の端部までの距離をL2としたとき、L2/L1の値が1以上25以下の範囲である渦電流探傷プローブ。」を、
「励磁コイル及び検出コイルを有する組コイルを複数有する検出部を含むプローブヘッドと、
該プローブヘッドに接続されたチューブと、
前記チューブ内に設けられた回路基板と、
を備え、
前記プローブヘッドの延在方向の長さをL1とし、前記プローブヘッドの前記チューブ側の端部から、最も前記プローブヘッド側に設けられる前記回路基板の前記プローブヘッド側の端部までの距離をL2としたとき、L2/L1の値が1以上25以下の範囲であり、
前記チューブの内径をd2とし、前記回路基板が収められている回路ケースの長さをMとした時、M/d2の値は、2≦M/d2≦3の範囲である渦電流探傷プローブ。」
に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項2~7、9及び11も同様に訂正する。)
イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項10の、
「励磁コイル及び検出コイルを有する組コイルを複数含むプローブヘッドと、
該プローブヘッドに接続されて、前記プローブヘッドを有するチューブと、
前記プローブヘッドの延在方向において、前記チューブ側に設けられた一つ以上の回路基板と、
を備え、
前記回路基板の少なくとも一辺の長さが前記チューブの内径寸法以下であるとともに、
前記プローブヘッドの前記延在方向の長さをL1とし、前記プローブヘッドの前記チューブ側の端部から、最もプローブヘッド側に設けられる前記回路基板のプローブヘッド側の端部までの距離をL2としたとき、L2/L1の値が1以上25以下の範囲である渦電流探傷プローブ。」を、
「励磁コイル及び検出コイルを有する組コイルを複数含むプローブヘッドと、
該プローブヘッドに接続されて、前記プローブヘッドを有するチューブと、
前記プローブヘッドの延在方向において、前記チューブ側に設けられた一つ以上の回路基板と、
を備え、
前記回路基板の少なくとも一辺の長さが前記チューブの内径寸法以下であるとともに、
前記プローブヘッドの前記延在方向の長さをL1とし、前記プローブヘッドの前記チューブ側の端部から、最もプローブヘッド側に設けられる前記回路基板のプローブヘッド側の端部までの距離をL2としたとき、L2/L1の値が1以上25以下の範囲であり、
前記チューブの内径をd2とし、前記回路基板が収められている回路ケースの長さをMとした時、M/d2の値は、2≦M/d2≦3の範囲である渦電流探傷プローブ。」
に訂正する。
(請求項10の記載を引用する請求項11も同様に訂正する。)
(2)訂正の単位について
訂正前の請求項1~7、請求項9、11について、請求項2~7及び請求項9、11は、請求項1を直接的又は間接的に引用しているものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。また、訂正前の請求項10~11について、請求項11は、請求項10を直接的に引用しているものであり、訂正事項2によって記載が訂正される請求項10に連動して訂正されるものである。
したがって、訂正前の請求項1~7、請求項9、11及び訂正前の請求項10~11は、それぞれ一群の請求項となるが、共通の請求項11があることにより、組み合わされて、訂正前の請求項1~7、9~11は、特許法第120条の5第4項に規定する一つの一群の請求項となる。
よって、訂正事項1及び2は、一群の請求項〔1-7、9-11〕についてされたものであるから、本件訂正請求に係る訂正(以下「本件訂正」という。)は、特許法第120条の5第4項で規定する一群の請求項ごとに請求されたものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
ア 訂正事項1は、本件訂正前の請求項1に記載の発明特定事項である「チューブ」及び「回路基板」に関して、「前記チューブの内径をd2とし、前記回路基板が収められている回路ケースの長さをMとした時、M/d2の値は、2≦M/d2≦3の範囲である」と具体的に限定するものである。
よって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 上記訂正事項1の「前記チューブの内径をd2とし、前記回路基板が収められている回路ケースの長さをMとした時、M/d2の値は、2≦M/d2≦3の範囲である」との事項は、本件特許についての出願の願書に添付した明細書の段落【0045】「各回路ケース50は、チューブ40の中心軸Oと同軸の円筒状をなしている(図5参照)。回路ケース50の各寸法は以下のように設定されている。回路ケース50の外径寸法をd1とし、チューブ40の内径をd2とした時、d1/d2の値は、0.9≦d1/d2≦0.99とされている。d1/d2をこのような範囲とすることで、チューブ40内での回路ケース50の径方向位置を安定させることができる。回路ケース50の長さをMとした時、M/d2の値は、2≦M/d2≦3とされている。M/d2をこのような範囲とすることで、回路ケース50に回路基板を収めると同時に、チューブ40を曲げやすくすることができる。」との記載に基づく訂正であるから、本件特許についての出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。また、上記訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
(2)訂正事項2について
ア 訂正事項2は、本件訂正前の請求項10に記載の発明特定事項である「チューブ」及び「回路基板」に関して、「前記チューブの内径をd2とし、前記回路基板が収められている回路ケースの長さをMとした時、M/d2の値は、2≦M/d2≦3の範囲である」と具体的に限定するものである。
よって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
イ 上記訂正事項2の「前記チューブの内径をd2とし、前記回路基板が収められている回路ケースの長さをMとした時、M/d2の値は、2≦M/d2≦3の範囲である」との事項は、本件特許についての出願の願書に添付した明細書の段落【0045】「各回路ケース50は、チューブ40の中心軸Oと同軸の円筒状をなしている(図5参照)。回路ケース50の各寸法は以下のように設定されている。回路ケース50の外径寸法をd1とし、チューブ40の内径をd2とした時、d1/d2の値は、0.9≦d1/d2≦0.99とされている。d1/d2をこのような範囲とすることで、チューブ40内での回路ケース50の径方向位置を安定させることができる。回路ケース50の長さをMとした時、M/d2の値は、2≦M/d2≦3とされている。M/d2をこのような範囲とすることで、回路ケース50に回路基板を収めると同時に、チューブ40を曲げやすくすることができる。」との記載に基づく訂正であるから、本件特許についての出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものである。また、上記訂正事項2は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
よって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものである。
なお、特許異議の申立てが全請求項に対してされているので、本件訂正請求においては、いずれの請求項についても、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
3 訂正の適否についてのまとめ
上記のとおり、訂正事項1及び2に係る訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書き第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-7、9-11〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
上記のとおり本件訂正が認められるから、本件訂正後の請求項1~11に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明11」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~11に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】
励磁コイル及び検出コイルを有する組コイルを複数有する検出部を含むプローブヘッドと、
該プローブヘッドに接続されたチューブと、
前記チューブ内に設けられた回路基板と、
を備え、
前記プローブヘッドの延在方向の長さをL1とし、前記プローブヘッドの前記チューブ側の端部から、最も前記プローブヘッド側に設けられる前記回路基板の前記プローブヘッド側の端部までの距離をL2としたとき、L2/L1の値が1以上25以下の範囲であり、
前記チューブの内径をd2とし、前記回路基板が収められている回路ケースの長さをMとした時、M/d2の値は、2≦M/d2≦3の範囲である渦電流探傷プローブ。
【請求項2】
前記チューブの外径寸法は、前記検出部の外径寸法よりも小さい請求項1に記載の渦電流探傷プローブ。
【請求項3】
前記回路基板は、前記チューブ内に、前記チューブの延在方向に間隔をあけて複数設けられる請求項1又は2に記載の渦電流探傷プローブ。
【請求項4】
前記チューブは、検査対象の配管の湾曲に追従して曲げることが可能なフレキシブル部を含み、
少なくとも一つの前記回路基板は、前記フレキシブル部内に設けられている請求項1から3のいずれか一項に記載の渦電流探傷プローブ。
【請求項5】
前記回路基板は複数設けられており、
各前記回路基板は、
前記励磁コイルが発生させる磁束に乱れが生じた場合に、当該磁束の乱れを電圧量の変化として前記検出コイルが検出した前記電圧量の変化を増幅する増幅回路と、
前記複数の検出コイルから、動作させる前記検出コイルを選択する選択回路と、
前記増幅回路及び前記選択回路に電源を供給する電源回路と、
のうちいずれか一つを有する請求項1から4のいずれか一項に記載の渦電流探傷プローブ。
【請求項6】
複数の前記回路基板が、それぞれ独立した回路ケースに収められており、前記回路ケースは前記チューブ内に設けられる請求項1から5のいずれか一項に記載の渦電流探傷プローブ。
【請求項7】
前記チューブは、内径が前記チューブの内径よりも大きい凹部を内側に有しており、
前記回路ケースは、前記凹部に前記チューブの内側から接触可能な爪部を有する請求項6に記載の渦電流探傷プローブ。
【請求項8】
励磁コイル及び検出コイルを有する組コイルを複数有する検出部を含むプローブヘッドと、
該プローブヘッドに接続されたチューブと、
前記チューブ内に設けられた回路基板と、
を備え、
複数の前記回路基板が、それぞれ独立した回路ケースに収められており、前記回路ケースは前記チューブ内に設けられ、
前記チューブは、内径が前記チューブの内径よりも大きい凹部を内側に有しており、
前記回路ケースは、前記凹部に前記チューブの内側から接触可能な爪部を有する渦電流探傷プローブ。
【請求項9】
前記プローブヘッドは、マルチコイル型の前記検出部を含む請求項1から8のいずれか一項に記載の渦電流探傷プローブ。
【請求項10】
励磁コイル及び検出コイルを有する組コイルを複数含むプローブヘッドと、
該プローブヘッドに接続されて、前記プローブヘッドを有するチューブと、
前記プローブヘッドの延在方向において、前記チューブ側に設けられた一つ以上の回路基板と、
を備え、
前記回路基板の少なくとも一辺の長さが前記チューブの内径寸法以下であるとともに、
前記プローブヘッドの前記延在方向の長さをL1とし、前記プローブヘッドの前記チューブ側の端部から、最もプローブヘッド側に設けられる前記回路基板のプローブヘッド側の端部までの距離をL2としたとき、L2/L1の値が1以上25以下の範囲であり、
前記チューブの内径をd2とし、前記回路基板が収められている回路ケースの長さをMとした時、M/d2の値は、2≦M/d2≦3の範囲である渦電流探傷プローブ。
【請求項11】
蒸気発生器の伝熱管を内側から探傷する探傷方法であって、
前記伝熱管は、直線状に延びる一対の直管部と、
該一対の直管部同士の間を接続するとともに湾曲して延びる湾曲部と、
を有し、
前記直管部の一端から、請求項1から10のいずれか一項に記載の渦電流探傷プローブを挿入して、前記一対の直管部及び前記湾曲部を探傷し、前記直管部の前記一端から前記渦電流探傷プローブを取り出す工程を含む探傷方法。」
第4 特許異議の申立てについて
1 申立理由の概要
申立人は、証拠として下記2に示す甲第1号証~甲第5号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲5」という。)を提出し、以下の申立理由により、請求項1~11に係る特許は取り消すべきものである旨主張している。
(1)申立理由1(新規性)
請求項1~3、5及び10に係る発明は、本件特許に係る出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、その特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
したがって、請求項1~3、5及び10に係る特許は、特許法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。
(2)申立理由2(進歩性)
請求項1~11に係る発明は、本件特許に係る出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明、甲2~甲5に記載された技術的事項に基いて、本件特許に係る出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、請求項1~11に係る特許は、特許法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。
2 証拠方法
甲1:川田かよ子、他4名、“蒸気発生器3/4インチ伝熱管用インテリジェントECTシステムの開発”、保全学、Vol.10、No.4、日本保全学会、2012年1月10日、第45~50頁
甲2:特開平11-83810号公報
甲3:米国特許第5398560号明細書
甲4:特開2009-74943号公報
甲5:特開平5-168122号公報
第5 取消理由通知書に記載した取消理由について
訂正前の請求項1~6、9~11に係る特許に対して、当審が特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
取消理由(進歩性)
請求項1~6、9~11に係る発明は、本件特許に係る出願前に日本国内又は外国において頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、甲1に記載された発明及び甲1に記載された技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、請求項1~6、9~11に係る特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
第6 各甲号証の記載等
1 甲1について
(1)甲1の記載事項
甲1には、以下の記載がある(下線は当審において付与した。)。
(甲1ア)タイトル、第45頁左欄
「蒸気発生器3/4インチ伝熱管用インテリジェントECTシステムの開発」、
「現在、国内PWRプラントの伝熱管は全て外径7/8インチであるが、次世代プラントのAPWR(改良型PWR)では、外径3/4インチの伝熱管が採用される。この3/4インチ伝熱管にインテリジェントECTシステムを適用するには、プローブ小型化による信号レベル低下を補償して、7/8インチ用と同等の欠陥検出性と深さサイジング性能を実現することが必須となる。
本論文では、3/4インチ用に小型化したECTプローブを含むECTシステムが、従来の7/8インチ用と同等の性能及び実用性を有していることを確認した結果を報告する。」
(甲1イ)第45頁右欄~第46頁左欄
「2.インテリジェントECTシステムの概要
・・・
2.1 インテリジェントECTプローブ
インテリジェントECTプローブのセンサは、欠陥以外の信号発生要因により生じるノイズの影響が小さくかつ欠陥検出性の高い相互誘導方式であり、プローブはマルチセンサで構成されている。
[図:0001413323000001.jpg]
Fig.1にプローブ外観と構成を、Table1にプローブ仕様を示す。Fig.1の模式図に示すように、1センサは、2個の検出コイルとそれらに直交する1個の励磁コイルから構成される。励磁コイルにより区切られた各検出コイルの2領域では、渦電流による磁束が逆向きになるため、検出コイル全体に一様に分布する信号発生要因(たとえばリフトオフ変化などのノイズ要因)による信号を低減する効果がある[1]。検出コイルには薄膜アレイコイルを採用してコイル間のばらつきを低減し、プローブヘッド部には電子式切替器及び信号増幅アンプからなる小型アナログ電子回路を内蔵することで、信号線数を削減した。プローブヘッドは、周方向分解能を考慮して合計24個のセンサを配置する構造とした。
なお、インテリジェントECTプローブには、全長用プローブと小曲げ管Uベンド用プローブの2種類がある。伝熱管のうち、U字型曲がり部の曲げ径がφ280mm程度以下の小曲げ径管は、曲げ部伝熱管内径が扁平により直管部に比べ小さいため、小曲げ管Uベンド用プローブで探傷する。その他は全長用プローブで探傷する。
[図:0001413323000002.jpg]
」
(甲1ウ)第46頁右欄~第47頁左欄
「3.3/4インチ伝熱管用インテリジェントECTシステムの開発
7/8インチ伝熱管用インテリジェントECTシステムの技術を基に3/4インチ伝熱管用のインテリジェントECTシステムの開発を行った。開発では、プローブの小型化、探傷条件の選定及び分析機能の最適化を実施した。
3.1 プローブ
3/4インチ用ECTプローブでは、適用可能な検出コイル及び励磁コイルの物理的なサイズが小さくなる。そのため、信号レベルの低下が発生し、SN比の低下も懸念される。そこで、その対策として以下を実施した。
・・・
以上により、7/8インチ用とほぼ同等の信号レベルを達成することが可能となった。
開発したプローブの写真をFig.4に示す。
[図:0001413323000003.jpg]
」
(甲1エ)第47頁左欄~右欄
「4.検証試験
開発した3/4インチ用インテリジェントECTシステムの検証試験を行い、実機適用に係る妥当性を確認した。7/8インチ用の確性試験の検証項目のうち、3/4インチ用独自の検証要否をTable3に示す。
・・・
4.1 プローブ挿入性
実機模擬(実物大伝熱管全長)モックアップを用いて探傷したデータにより、全長用プローブ、及び小曲げ管Uベンド部用プローブが、それぞれ対象とする部位を問題なく通過することを確認した。
通過性を確認した項目の一覧をTable4に、小曲げ管Uベンド部用プローブが、最小曲げ径の短管試験片を通過した例をFig.5に、模擬全長モックアップのY3列伝熱管を全長用プローブが通過した波形例をFig.6に示す。
・・・
[図:0001413323000004.jpg]
」
(2)甲1に記載された事項の整理
甲1は、(甲1ア)タイトル「蒸気発生器3/4インチ伝熱管用インテリジェントECTシステムの開発」に関する文献であって、ここでのECTが渦電流探傷(試験)の意味であり、(甲1エ)に、当該システムには、全長用プローブと小曲げ管Uベンド部用プローブを用いることが記載されている。
そこで、蒸気発生器3/4インチ伝熱管の渦電流探傷に用いる「小曲げ管Uベンド部用プローブ」について、以下の事項を看取・認定することができる。
ア 前記(甲1イ)において、インテリジェントECTプローブには、全長用プローブと小曲げ管Uベンド部用プローブの2種類があること、図1のインテリジェントECTプローブ写真(当審が作図した以下の参考図も併せて参照されたい。)によれば、プローブヘッドには、先端と反対側に向けて、蛇腹(以下、この「蛇腹」を「蛇腹1」という。以下、各部材を区別するために記号を付す。)、直管1、蛇腹2、直管2、蛇腹3、直管3、蛇腹4へと順に続くチューブが接続されていること、直管2・3の内部には、電子回路(増幅器と切替ユニット)を有すること、が見て取れる。
<Fig.1の一部に基づく参考図>
[図:0001413323000005.jpg]
イ また、前記(甲1ウ)において、全長用プローブと小曲げ管Uベンド部用プローブの開発を行ったこと、図4には、開発した全長用プローブと小曲げ管Uベンド部用プローブ(下図)の写真が示されている。図4の小曲げ管Uベンド部用プローブ写真(当審が作図した下図も併せて参照されたい。)によれば、プローブヘッドには、先端と反対側に向けて、蛇腹1に対応する位置に、中間にリング状部材を付加した蛇腹A、直管1に対応する位置に傾斜リング状部材1を介して蛇腹Aより外径寸法を大きくした蛇腹Bへと順に続くチューブが接続されていること、が見て取れる。
そして、図4の小曲げ管Uベンド部用プローブは、インテリジェントECTプローブであるから、図1同様、チューブ内部の複数位置に電子回路(増幅器と切替ユニット)を有することは、明らかである。
<Fig.4の一部に基づく参考図>
[図:0001413323000006.jpg]
ウ また、前記(甲1イ)には、プローブヘッドは、合計24個のセンサを配置する構造としたことが示されており、前記イで説示した図4の小曲げ管Uベンド部用プローブ(当審が作図した上図も併せて参照されたい。)によれば、プローブヘッドの両側に傾斜リング状部材2が接続され、前記傾斜リング状部材2を含むプローブヘッドの延在方向の長さは、前記イで説示した蛇腹Aの延在方向の長さより若干短いこと、が見て取れる。
エ また、前記(甲1エ)の図5によれば、小曲げ管Uベンド部は、直線状に延びる一対の直管部と、一対の直管部同士の間を接続するとともに湾曲して延びる湾曲部とを有し、直管部の一端から小曲げ管Uベンド部用プローブを前記一対の直管部及び前記湾曲部に挿入した状態、が見て取れる。
(3)甲1に記載された発明
前記(2)ア~エを含め前記(1)の記載及び図面を総合すると、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。ここで、各構成単位末尾の括弧内には、主たる認定根拠となる甲1の記載箇所を示す。
「小曲げ管Uベンド部は、直線状に延びる一対の直管部と、一対の直管部同士の間を接続するとともに湾曲して延びる湾曲部とを有し、直管部の一端から、一対の直管部及び湾曲部に挿入し、蒸気発生器3/4インチ伝熱管の渦電流探傷に用いる小曲げ管Uベンド部用プローブであって、((甲1ア)・(2)エ)
1センサは、2個の検出コイルとそれらに直交する1個の励磁コイルから構成され、合計24個のセンサを配置する構造としたプローブヘッドと、((甲1イ))
プローブヘッドには、先端と反対側に向けて、中間にリング状部材を付加した蛇腹A、傾斜リング状部材1を介して蛇腹Aより外径寸法を大きくした蛇腹Bへと順に続くチューブが接続され、((2)イ)
チューブ内部の複数位置に電子回路(増幅器と切替ユニット)を有し、((2)イ)
プローブヘッドの両側に傾斜リング状部材2が接続され、前記傾斜リング状部材2を含むプローブヘッドの延在方向の長さは、蛇腹Aの延在方向の長さより若干短い、((2)ウ)
小曲げ管Uベンド部用プローブ。」
(4)甲1に記載された技術的事項
また、甲1には、上記<Fig.4の一部に基づく参考図>から、次の技術的事項が記載されていると認められる。
「傾斜リング状部材2を含むプローブヘッドの延在方向の長さは、蛇腹Aの延在方向の長さより若干短いこと。」
2 甲2について
甲2には、図面とともに以下の記載がある。
(甲2ア)
「【0011】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照しながら本発明の一実施形態を説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る渦電流探傷プローブの全体構成を示す図である。図1に示すように本実施形態に係る渦電流探傷プローブ18は、信号増幅回路等を内蔵する4個の電子回路ユニット14を有する。各電子回路ユニット14は例えば金属製の蛇腹パイプ等の金属製フレキシブルチューブ状接続材15で相互に連結されており、金属製フレキシブルチューブ状接続材15が変形することにより、渦電流探傷プローブ18全体として容易に曲がることができる構造となっている。なお、図示しないが隣接する電子回路ユニット14同士は金属製フレキシブルチューブ状接続材15内に設けられた伝送ケーブルで接続されており、電気的に導通した構造となっている。
【0012】また、渦電流探傷プローブ18の先端部には検出コイル12を内蔵する検出コイルユニット11が設けられ、金属製フレキシブルチューブ状接続材15を介して電子回路ユニット14と接続されている。この検出コイルユニット11の先端部にはエア放出部13が設けられ、冷却用エアを排出する。ここで、検出コイルユニット11,電子回路ユニット14,金属製フレキシブルチューブ状接続材15はそれぞれ内部に貫通孔を有し、それら貫通孔は冷却媒体通過領域として連通した構造となっている。」
(甲2イ)図1
「
[図:0001413323000007.jpg]
」
3 甲3について
甲3には、図面とともに以下の記載がある。
(甲3ア)
「Referring now to FIG. 1, the inspection rabbit 20 in its preferred embodiment is a slender, flexible body having a head or nose 22 at one end, a tail 24 at the opposite end and a plurality of body modules 26 therebetween. Body modules 26, which are flexibly connected to each other and to nose 22 and tail 24, contain an inspection driver coil 28, an inspection detector coil 32, a plurality of electronic inspection packages 34, a self-contained power supply (shown generally as 36) and a communication wire spool 38.」(第3欄38~47行)
(当審訳:「Fig.1を参照すると、好適な実施例の検査ラビット20は、一端にヘッド又はノーズ22を有する細くて柔軟性のある部材であり、他端にテイル24を有し、その間に複数のボディモジュール26を有している。相互に並びにノーズ22及びテイル24に柔軟に連結されているボディモジュール26は、検査用の励磁コイル28及び検出コイル32、複数の電子検査パッケージ34、及び36で示される自閉型の電力供給部、並びに通信用のワイヤースプール38を有している。」)
(甲3イ)Fig1(図1)
「
[図:0001413323000008.jpg]
」
4 甲4について
甲4には、以下の記載がある。
(甲4ア)
「【0061】
また、コイル数についても、1列8個に限る必要は一切無く、必要に応じて適宜増減できる。また、切換回路であるマルチプレクサのチャンネル数についても同様に、必要に応じて適宜増減することができる。また、回路を内蔵する場所については、渦流探傷プローブのケーシング内部が最も望ましいが、物理的に不可能である場合は、信号線を内包するチューブ内部やその周囲に設けることも可能である。」
5 甲5について
甲5には、図面とともに以下の記載がある。
(甲5ア)
「【0002】
【従来の技術】車両等の電気配線において、電線束等のワイヤハーネスを保護するために、ワイヤハーネスをコルゲートチューブ内に収容して配索する方法が知られている。このコルゲートチューブ1は、蛇腹状の円管形状に成形されたもので、軸方向に沿ってワイヤハーネス挿入用のスリット3が形成されている。」
(甲5イ)
「【0013】この実施例に係るコルゲートチューブは、図1及び図2に示すように、収容されるワイヤハーネス11にクランプ29を固着したもので、クランプ29は、図3,図4及び図5に示すように、外径がコルゲートチューブ1の内径よりも僅かに小さく、かつ、内径がワイヤハーネス11の外径よりも大きく形成された円筒部31と、円筒部31の外周面に形成され、コルゲートチューブ1の内周面の溝部23と噛合する複数の突条33と、円筒部31の一部を軸方向に延設した固着部35とにより構成されている。また、円筒部31には軸方向に沿ってスリット37が形成されており、ワイヤハーネス11は、スリット37から円筒部31内に挿入され、固着部35は、テープ39によってワイヤハーネス11に固着される。」
(甲5ウ)
「【0015】コルゲートチューブ1へのワイヤハーネス11の収容は、まず、クランプ29の円筒部31内にワイヤハーネス11を挿入し、固着部35をテープ39によってワイヤハーネス11に固着した後、ワイヤハーネス11をクランプ29と共にコルゲートチューブ1内に挿入して行う。この挿入時に、クランプ29の突条33を、コルゲートチューブ1の内周面の溝部23に噛合することにより、ワイヤハーネス11がコルゲートチューブ1に固定される。」
(甲5エ)図1
「
[図:0001413323000009.jpg]
」
(甲5オ)図2
「
[図:0001413323000010.jpg]
」
第7 当審の判断
1 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
ア 甲1発明の「センサ」及び「合計24個のセンサを配置する構造」は、本件発明1の「組コイル」及び「検出部」に相当する。
してみると、甲1発明の「1センサは、2個の検出コイルとそれらに直交する1個の励磁コイルから構成され、合計24個のセンサを配置する構造としたプローブヘッド」は、本件発明1の「励磁コイル及び検出コイルを有する組コイルを複数有する検出部を含むプローブヘッド」に相当する。
イ 甲1発明の「プローブヘッド」に「接続され」た「チューブ」は、本件発明1の「該プローブヘッドに接続されたチューブ」に相当する。
ウ 甲1発明の「チューブ内部」に「有」する「電子回路(増幅器と切替ユニット)」は、本件発明1の「前記チューブ内に設けられた回路基板」に相当する。
エ 甲1発明の「渦電流探傷に用いる小曲げ管Uベンド部用プローブ」は、本件発明1の「渦電流探傷プローブ」に相当する。
すると、本件発明1と甲1発明とは次の点において一致し、次の各点において相違する。
(一致点)
「励磁コイル及び検出コイルを有する組コイルを複数有する検出部を含むプローブヘッドと、
該プローブヘッドに接続されたチューブと、
前記チューブ内に設けられた回路基板と、
を備える渦電流探傷プローブ。」
(相違点1)
本件発明1は、「前記プローブヘッドの延在方向の長さをL1とし、前記プローブヘッドの前記チューブ側の端部から、最も前記プローブヘッド側に設けられる前記回路基板の前記プローブヘッド側の端部までの距離をL2としたとき、L2/L1の値が1以上25以下の範囲であ」るのに対し、甲1発明は、「電子回路」が、「チューブ」の延在方向、どの位置にあるのか不明であり、最もプローブヘッド側に設けられる前記「電子回路」の前記プローブヘッド側の端部までの距離も不明となるから、当該距離と、「前記傾斜リング状部材2を含むプローブヘッドの延在方向の長さ」との関係も不明である点。
(相違点2)
本件発明1は、「前記チューブの内径をd2とし、前記回路基板が収められている回路ケースの長さをMとした時、M/d2の値は、2≦M/d2≦3の範囲である」のに対し、甲1発明は、「電子回路」を収めるケースの存在の有無が不明であり、「チューブ」の内径と「電子回路」を収めるケースの長さとの比も不明である点。
(2)判断
事案に鑑み前記相違点2について検討する。
ア 前記相違点2は実質的な相違点であるから、本件発明1は甲1発明でない。
イ 「前記チューブの内径」と「前記回路基板が収められている回路ケースの長さ」の比を具体的に特定した前記相違点2における本件発明1の構成は、甲1発明の認定に採用していない前記甲1の他の記載箇所、前記甲2~5のいずれにも記載も示唆もされておらず、周知技術であるともいえない。
そして、前記相違点2に係る本件発明1の構成は、段落【0045】に記載された「M/d2をこのような範囲とすることで、回路ケース50に回路基板を収めると同時に、チューブ40を曲げやすくすることができる。」との効果を奏するものといえる。
そうすると、甲1発明において、甲1に記載された技術的事項(上記第6の1(4)参照)や甲2~5に記載された技術的事項を踏まえても、前記相違点2に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。
(3)小括
したがって、前記相違点1について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明でなく、また、甲1発明及び甲1~5に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 本件発明2~7、9及び11について
本件発明2~7、9及び11は、いずれも本件発明1の発明特定事項を全て含む発明であるから、上記1と同様の理由により、本件発明2、3及び5は、甲1発明でなく、また、本件発明2~7、9及び11は、甲1発明及び甲1~5に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 本件発明8について
(1)対比
本件発明8と甲1発明とを対比する。
これまでの繰り返しとなる対比は省略する。
すると、本件発明8と甲1発明とは次の点において一致し、次の点において相違する。
(一致点)
「励磁コイル及び検出コイルを有する組コイルを複数有する検出部を含むプローブヘッドと、
該プローブヘッドに接続されたチューブと、
前記チューブ内に設けられた回路基板と、
を備える渦電流探傷プローブ。」
(相違点3)
本件発明8は、「複数の前記回路基板が、それぞれ独立した回路ケースに収められており、前記回路ケースは前記チューブ内に設けられ、
前記チューブは、内径が前記チューブの内径よりも大きい凹部を内側に有しており、
前記回路ケースは、前記凹部に前記チューブの内側から接触可能な爪部を有する」のに対し、
甲1発明は、「電子回路」を収めるケースの存在の有無が不明であるため、「チューブ」と「電子回路」を収めるケースとの関係も不明である点。
(2)判断
前記相違点3について検討する。
電子回路を保護ケースに収めることは、常套手段であるから、甲1発明の「チューブ内部の複数位置に」「有」する「電子回路(増幅器と切替ユニット)」を、それぞれ独立した保護ケースに収め、前記相違点3における本件発明8の構成のうち、「複数の前記回路基板が、それぞれ独立した回路ケースに収められており、前記回路ケースは前記チューブ内に設けられ」るという構成とすることは、当業者が適宜設計し得る程度のことといえる。
しかし、前記相違点3における本件発明8の構成のうち、「前記チューブ」と「前記回路ケース」との関係を具体的に特定した「前記チューブは、内径が前記チューブの内径よりも大きい凹部を内側に有しており、
前記回路ケースは、前記凹部に前記チューブの内側から接触可能な爪部を有する」という構成は、前記甲2~5のいずれにも記載も示唆もされておらず、周知技術であるともいえない。
そして、前記相違点3における本件発明8の構成は、段落【0022】に記載された「回路ケースの爪部が凹部に接触可能であることにより、チューブ内で回路ケースが軸方向に移動してしまうことを抑制できるため、回路ケースの位置を安定させることができる。」との効果を奏するものといえる。
そうすると、甲1発明において、甲2~5に記載された技術的事項を踏まえても、前記相違点3に係る本件発明8の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることではない。
(3)小括
したがって、本件発明8は、甲1発明及び甲2~5に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
4 本件発明10について
(1)対比
本件発明10と甲1発明とを対比する。
ア 甲1発明の「1センサは、2個の検出コイルとそれらに直交する1個の励磁コイルから構成され、合計24個のセンサを配置する構造としたプローブヘッド」は、本件発明10の「励磁コイル及び検出コイルを有する組コイルを複数含むプローブヘッド」に相当する。
イ 甲1発明の「プローブヘッド」に「接続され」て、「プローブヘッド」を有する「チューブ」は、本件発明10の「該プローブヘッドに接続されて、前記プローブヘッドを有するチューブ」に相当する。
ウ 甲1発明の「ブローブヘッドの延在方向」において、「チューブ内部」に「有」する「電子回路(増幅器と切替ユニット)」は、本件発明10の「前記プローブヘッドの延在方向において、前記チューブ側に設けられた一つ以上の回路基板」に相当する。
エ 甲1発明の「チューブ内部の複数位置に」「有」される「電子回路(増幅器と切替ユニット)」の少なくとも一辺の長さが、チューブの内径寸法以下であることは、「電子回路(増幅器と切替ユニット)」がチューブ内部に位置する以上、自明であるから、甲1発明は、本件発明10の「前記回路基板の少なくとも一辺の長さが前記チューブの内径寸法以下である」に相当する構成を備えているといえる。
すると、本件発明10と甲1発明とは次の点において一致し、本件発明1と同じ相違点(相違点1・相違点2を参照)を有する。
(一致点)
「励磁コイル及び検出コイルを有する組コイルを複数含むプローブヘッドと、
該プローブヘッドに接続されて、前記プローブヘッドを有するチューブと、
前記プローブヘッドの延在方向において、前記チューブ側に設けられた一つ以上の回路基板と、
を備え、
前記回路基板の少なくとも一辺の長さが前記チューブの内径寸法以下である渦電流探傷プローブ。」
(2)判断
前記相違点2については、上記1(2)で検討したとおりである。
(3)小括
したがって、前記相違点1について検討するまでもなく、本件発明10は、甲1発明でなく、また、甲1発明及び甲1~5に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第8 まとめ
1 申立理由1(新規性)及び申立理由2(進歩性)
上記第7のとおりであるから、請求項1~3、5及び10に係る発明は、甲1に記載された発明ではなく、請求項1~11に係る発明は、甲1に記載された発明、甲2~甲5に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、申立理由1(新規性)及び申立理由2(進歩性)は採用できない。
2 取消理由(進歩性)
上記第7のとおりであるから、請求項1~6、9~11に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲1に記載された技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、取消理由(進歩性)は維持できない。
第9 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由、特許異議申立書に記載した申立理由及び証拠によっては、本件請求項1~11に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1~11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2023-700851