特許異議申立
2025-700816
電池
- 審判番号
- 2025-700816
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-102536
- 登録番号
- 7632402
- 請求日
- 2025年08月12日
- 審決日
- 2025年10月02日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】トヨタ自動車株式会社
- 【権利者代理人】山下 昭彦
- 【権利者代理人】岸本 達人
- 【異議申立人】ジュネスプロパティーズ 株式会社
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 信一
- 審判官 涌井 智則
- 審判官 須原 宏光
- 分類
- P1651.121-Y (H01M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7632402号発明「電池」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7632402号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7632402号の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、令和4年6月27日に出願され、令和7年2月10日にその特許権が設定登録され、令和7年2月19日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和7年8月12日に特許異議申立人ジュネスプロパティーズ株式会社(以下、「申立人」という。)により、請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てがされた。
第2 本件発明
特許第7632402号の請求項1ないし5の特許に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明5」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
電極体と、
前記電極体の側面部から延在する複数の集電タブと、
前記複数の集電タブと接続された集電端子と、
前記電極体および前記複数の集電タブを収納するラミネートフィルムと、
を有する電池であって、
前記集電タブは、前記電極体側の端部である根元部と、前記集電端子と接続するための接続部と、前記根元部および前記接続部を結ぶ中間部と、を有し、
前記複数の集電タブは、それぞれの前記接続部が、厚さ方向に積層された積層接続部を有し、
前記集電端子は、前記電極体の前記側面部に対向する内面と、前記内面の外縁に沿って配置された側面と、を有し、
前記集電端子の前記側面に、前記ラミネートフィルムが配置され、
前記内面に、前記積層接続部の主面が接合され、
前記内面および前記側面部の間に、スペーサ部材が配置され、
前記電極体の積層方向の平面視において、前記スペーサ部材は、前記複数の集電タブと重複しない位置に配置されている、電池。
【請求項2】
電極体と、
前記電極体の側面部から延在する複数の集電タブと、
前記複数の集電タブと接続された集電端子と、
前記電極体および前記複数の集電タブを収納するラミネートフィルムと、
を有する電池であって、
前記集電タブは、前記電極体側の端部である根元部と、前記集電端子と接続するための接続部と、前記根元部および前記接続部を結ぶ中間部と、を有し、
前記複数の集電タブは、それぞれの前記接続部が、厚さ方向に積層された積層接続部を有し、
前記集電端子は、前記電極体の前記側面部に対向する内面と、前記内面の外縁に沿って配置された側面と、を有し、
前記集電端子の前記側面に、前記ラミネートフィルムが配置され、
前記内面に、前記積層接続部の主面が接合され、
前記内面および前記側面部の間に、スペーサ部材が配置され、
前記スペーサ部材は、前記内面、および、前記側面部の少なくとも一方と接触している、電池。
【請求項3】
前記電極体の積層方向の断面視において、前記中間部は、前記中間部の一部同士が対向するように湾曲した湾曲構造を有する、請求項1 または請求項2に記載の電池。
【請求項4】
前記スペーサ部材は、樹脂部材である、請求項1または請求項2に記載の電池。
【請求項5】
前記電池は、前記スペーサ部材として、第1スペーサ部材および第2スペーサ部材を有し、
前記電極体の積層方向の平面視において、前記第1スペーサ部材および前記第2スペーサ部材の間に、前記複数の集電タブが配置されている、請求項1または請求項2に記載の電池。」
第3 特許異議申立理由の概要
申立人による特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。
本件請求項1ないし5に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第1ないし3号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。このため、本件請求項1ないし5に係る特許は特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきである。
[証拠]
甲第1号証:特開2011-165475号公報
甲第2号証:特開2018-55900号公報
甲第3号証:特開2018-125065号公報
第4 甲第1号証の記載
1 記載事項
甲第1号証には、「二次電池」に関して、図面と共に以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。
「【0020】
図1に示す本実施形態の二次電池1は、電池ケース2、電池蓋3、電極板4(正極板41、負極板42)、電極タブ5(正極タブ51、負極タブ52)、セパレータ6、電極リード7(正極リード71、負極リード72)、電極端子8(正極端子81、負極端子82)、スペーサ9、電極ユニット10、及び電極体15を備える。二次電池1において、電極体15は、複数の電極板ユニット10(当審注:「電極板ユニット10」は「電極ユニット10」の誤記と認める。)に分割されている。分割された各電極板ユニット10(当審注:「電極板ユニット10」は「電極ユニット10」の誤記と認める。)は、正極板41、負極板42、及びセパレータ6を有し、複数の正極板41と負極板42がセパレータ6を介してX方向に交互に積層した構造となっている。
【0021】
なお電極板4と電極端子8とを電気的に接続する接続板材としては、電極タブ5を束ねて直接電極端子8と接合する場合、あるいは電極リード7を介して電極板4と電極端子8とを接合させる場合などが考えられるが、本実施の形態においては電極リード7を介する例を用いて以下に説明する。
【0022】
図2および図3は、電極ユニット10の構成を説明する図である。図2に示すように、正極板41の+Z方向の縁端から突出する複数の正極タブ51は、電極ユニット10の-X方向に略垂直に折曲げられ束ねられている。束ねられた複数の正極タブ51は、電極板ユニット10の-X方向の縁端位置で+Z方向に略垂直に折曲げられ、正極リード71と接合されている。図2に示すように、電極板ユニット10の-X方向の端部にある正極タブ51は、+Z方向に略垂直に折曲げられた複数の他の正極タブ51と束ねられ、正極リード71と接合されている。
【0023】
ここで、複数の正極タブ51と正極リード71との接合は超音波接合等により行う。このように、本実施例の電極ユニット10は、電極ユニット10内に有する複数の正極タブ51を束ね正極リード71と接合する構成をしている。電極板ユニット10内に有する複数の負極タブ52についても、同様に束ねられ負極リード72と接合している。
【0024】
図3に、複数の正極タブ51が正極リード71と接合した構成と負極タブ52が束ねられ負極リード72と接合した構成を示す。なお、電極ユニット10において、積層された正極板41、負極板42及びセパレータ6は、積層ずれが起こらないように固縛部材11により固定されている。なお固縛部材11には、典型的には絶縁テープが用いられる。
【0025】
図4は本実施形態の二次電池1の電池ケースのY方向断面図であり、図5は本実施形態の二次電池1の電池ケースのX方向断面図である。図4および図5に示すように、電極ユニット10毎に束ねられた複数の正極タブ51は、各電極ユニット10に対応する正極リード71(1つの電極ユニットに対して1つの正極リードが対応する)とそれぞれ固定して電気的に接合される。そして、複数の正極リード71も互いに束ねられ、正極端子81と固定して電気的に接合された後、図4に示すように蛇行状に偶数回だけ折畳まれる。
【0026】
本実施形態においては、束ねられた正極リード71はS字状に2回折畳まれて電池ケース2に収納される。同様に、電極ユニット10毎に束ねられた複数の負極タブ52は、各電極ユニット10に対応する負極リード72と電気的に接合される。そして、複数の負極リード72も互いに束ねられ、負極端子82と電気的に接合された後、図4に示すようにS字状に2回折畳まれ電池ケース2に収納される。
【0027】
なお、図4および図5に示すように、電池蓋3の内面3aと電極ユニット10の上面10aとの隙間にはそれぞれに当接するスペーサ9が配置されている。スペーサ9はPET(ポリエチレンテレフタレート)などの絶縁材料で構成されており、後述のとおり折り曲げた電極リード7の配置位置を固定する機能などを担う。なお、このスペーサ9は必須ではなく適宜省略が可能である。」
「【0034】
なお、電池ケース2内に配置された電極などの位置ずれをより確実に抑制するために、当該スペーサ9を介して電池蓋3の押し付け力を各電極ユニット10に作用させて、電極ユニット10がスペーサ9と電池ケース2の底板部分との間で押圧された状態とするようにしてもよい。」
「【0042】
(ステップS7 電池蓋閉塞工程)
そして図10に示すように、押さえ部材21を固定した状態で、+Z方向にやや上方で押さえ部材21と平面的に重なるように押さえ部材22を+X方向から-X方向に挿入する。さらに、電池蓋3を支えて配置される電池蓋固定機構30が、押さえ部材21の動作と同期して-X方向から+X方向、+Z方向から-Z方向へと順次電池蓋3を押し出す。すると電池蓋3は、図10に示す矢印Pのように時計回りに90度回転しながら電極体15の積層方向に垂直な向きに移動する。このような位置に電池蓋3が向くことで、当接された部分が各電極ユニット10と電池蓋3との間に配置される。また、電池ケース2への電極体15の挿入および電池ケース2と電池蓋3との溶接が容易となる。
【0043】
これにより、図11に示すように電極リード7の束はS字状になるように折曲げられる。その後、押さえ部材21および22を取り除いた後、電極リード7の束を-Z方向に電池蓋3で押え付けながらS字状となった状態を維持しつつ、電池ケース2の開口部に電池蓋3を図13に示すように固定して二次電池1が完成する。
なお電極リード7は蛇行状に偶数回だけ(本例ではS字状となるように2回)折畳まれているが、電池ケース内での電極の安定性だけを考慮するのであれば、偶数回折畳むことに限定されず3回以上の奇数回折畳んでもよい。すなわち蛇行状に折畳まれていればよい。
電極の安定性のみならず、電極リード7と電極端子8等との接合部付近に発生するストレスを相殺して上記接合部における損傷を軽減・防止するためには、電極リード7を電極端子8と接合・固定した後に、偶数回だけ蛇行状に折畳む構成が望ましい。
折畳み装置50では、電極リード7を電極端子8と接合・固定した後に、2回だけ電極リード7を折り曲げてS字状とするよう押さえ機構25、26、27が配置されているが、3回以上の奇数回、もしくは4回以上の偶数回折り曲げて蛇行させる場合には、適宜、押さえ機構をさらに追加すればよい。」
「【図1】
[図:0001428041000001.jpg]
【図2】
[図:0001428041000002.jpg]
」
「【図4】
[図:0001428041000003.jpg]
【図5】
[図:0001428041000004.jpg]
」
2 記載された技術事項
上記記載事項より、甲第1号証には次の技術事項が記載されているといえる。
(1)【0020】の記載より、二次電池1は、電池ケース2、電池蓋3、電極板4(正極板41、負極板42)、電極タブ5(正極タブ51、負極タブ52)、セパレータ6、電極リード7(正極リード71、負極リード72)、電極端子8(正極端子81、負極端子82)、スペーサ9、電極ユニット10、及び電極体15を備え、電極体15は、複数の電極ユニット10に分割され、各電極ユニット10は、正極板41、負極板42、及びセパレータ6を有し、複数の正極板41と負極板42がセパレータ6を介して交互に積層した構造となっている。
(2)図1、4、5より、電極リード7、電極タブ5、電極体15が電池ケース2に収納されることが見てとれる。
(3)【0021】の記載より、電極板4と電極端子8とを電気的に接続する接続板材としては、電極タブ5を束ねて直接電極端子8と接合する場合、あるいは電極リード7を介して電極板4と電極端子8とを接合させる場合などが考えられるが、電極リード7を介する場合とすることが記載されている。
(4)【0022】の記載より、正極板41の縁端から突出する複数の正極タブ51は、折曲げられ束ねられ、束ねられた複数の正極タブ51は正極リード71と接合されている。
また、図2、4より、正極タブ51は、電極ユニット10の上面10aに対応する正極板41の縁端から突出すること、および、複数の正極タブ51は厚さ方向に積層され束ねられた部分で正極リード71と整合されていることが見てとれる。
してみると、電極ユニット10の上面10aに対応する正極板41の縁端から突出する複数の正極タブ51は、折曲げられ厚さ方向に積層されて束ねられ、束ねられた部分で正極リード71と接合されているといえる。
(5)【0023】の記載より、複数の負極タブ52についても、同様に束ねられ負極リード72と接合している。
(6)図1、4、5より、電極端子8は、電極体15を構成する電極ユニット10の上面10aに対向する面と、当該面の外縁に沿って配置された側面とを有する形状で、電池蓋3を貫通するように設けられることが見てとれる。
(7)【0025】、【0026】の記載より、電極ユニット10毎に束ねられた複数の正極タブ51は、各電極ユニット10に対応する正極リード71(1つの電極ユニットに対して1つの正極リードが対応する)とそれぞれ固定して電気的に接合され、複数の正極リード71も互いに束ねられ、正極端子81と固定して電気的に接合された後、S字状に2回折畳まれ電池ケース2に収納される。
(8)【0026】の記載より、同様に、電極ユニット10毎に束ねられた複数の負極タブ52は、各電極ユニット10に対応する負極リード72と電気的に接合され、複数の負極リード72も互いに束ねられ、負極端子82と電気的に接合された後、S字状に2回折畳まれ電池ケース2に収納される。
(9)【0027】の記載より、電池蓋3の内面3aと電極ユニット10の上面10aとの隙間にはそれぞれに当接するスペーサ9が配置され、スペーサ9はPET(ポリエチレンテレフタレート)などの絶縁材料で構成され、折り曲げた電極リード7の配置位置を固定する機能などを担う。
(10)図5より、電極ユニット10の積層方向の平面視において、スペーサ9は、複数の電極タブ5及び複数の電極リード7と重複しない位置に配置されていることが、見てとれる。
(11)【0043】の記載より、電極リード7の束を電池蓋3で押え付けながらS字状となった状態を維持しつつ、電池ケース2の開口部に電池蓋3を固定して二次電池1が完成する。
3 記載された発明
上記「2(1)」ないし「2(11)」の技術事項を総合勘案すると、甲第1号証には、二次電池として次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「電池ケース2、電池蓋3、電極板4(正極板41、負極板42)、電極タブ5(正極タブ51、負極タブ52)、セパレータ6、電極リード7(正極リード71、負極リード72)、電極端子8(正極端子81、負極端子82)、スペーサ9、電極ユニット10、及び電極体15を備え、電極体15は、複数の電極ユニット10に分割され、各電極ユニット10は、正極板41、負極板42、及びセパレータ6を有し、複数の正極板41と負極板42がセパレータ6を介して交互に積層した構造となっている二次電池1において、
電極リード7、電極タブ5、電極体15が電池ケース2に収納され、
電極板4と電極端子8とを電気的に接続する接続板材としては、電極タブ5を束ねて直接電極端子8と接合する場合、あるいは電極リード7を介して電極板4と電極端子8とを接合させる場合などが考えられるが、電極リード7を介する場合、
電極ユニット10の上面10aに対応する正極板41の縁端から突出する複数の正極タブ51は、折曲げられ厚さ方向に積層されて束ねられ、束ねられた部分で正極リード71と接合され、
複数の負極タブ52についても、同様に束ねられ負極リード72と接合され、
電極端子8は、電極体15を構成する電極ユニット10の上面10aに対向する面と、当該面の外縁に沿って配置された側面とを有する形状で、電池蓋3を貫通するように設けられ、
電極ユニット10毎に束ねられた複数の正極タブ51は、各電極ユニット10に対応する正極リード71(1つの電極ユニットに対して1つの正極リードが対応する)とそれぞれ固定して電気的に接合され、複数の正極リード71も互いに束ねられ、正極端子81と固定して電気的に接合された後、S字状に2回折畳まれ電池ケース2に収納され、
同様に、電極ユニット10毎に束ねられた複数の負極タブ52は、各電極ユニット10に対応する負極リード72と電気的に接合され、複数の負極リード72も互いに束ねられ、負極端子82と電気的に接合された後、S字状に2回折畳まれ電池ケース2に収納され、
電池蓋3の内面3aと電極ユニット10の上面10aとの隙間にはそれぞれに当接するスペーサ9が配置され、スペーサ9はPET(ポリエチレンテレフタレート)などの絶縁材料で構成され、折り曲げた電極リード7の配置位置を固定する機能などを担い、
電極ユニット10の積層方向の平面視において、スペーサ9は、複数の電極タブ5及び複数の電極リード7と重複しない位置に配置されており、
電極リード7の束を電池蓋3で押え付けながらS字状となった状態を維持しつつ、電池ケース2の開口部に電池蓋3を固定する
二次電池1。」
第5 当審の判断
1 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
a 甲1発明の「電極体15」は、「複数の電極ユニット10に分割され、各電極ユニット10は、正極板41、負極板42、及びセパレータ6を有し、複数の正極板41と負極板42がセパレータ6を介して交互に積層した構造となっている」ものであり、本件発明1の「電極体」に相当する。
b 甲1発明の「複数の正極タブ51」は「電極ユニット10の上面10aに対応する正極板41の縁端から突出する」ものである。
また、甲1発明は「複数の負極タブ52についても、同様に束ねられ負極リード72と接合され」るものであるから、甲1発明の「複数の負極タブ52」についても、電極ユニット10の上面10aに対応する負極板42の縁端から突出する構成を有するものと認められる。
ここで、甲1発明は「電極体15は、複数の電極ユニット10に分割され、各電極ユニット10は、正極板41、負極板42、及びセパレータ6を有」するものであるから、正極板41及び負極板42は電極体15を構成するものであり、甲1発明の複数の「電極タブ5(正極タブ51、負極タブ52)」は電極体15を構成する電極ユニット10の上面10aから延在するものと言える。
そして、甲1発明の「電極体15を構成する電極ユニット10の上面10a」は、本件発明1の「電極体の側面部」に対応することから、甲1発明の「電極タブ5(正極タブ51、負極タブ52)」は、本件発明1の「前記電極体の側面部から延在する複数の集電タブ」に相当する。
c 甲1発明は「電極ユニット10毎に束ねられた複数の正極タブ51は、各電極ユニット10に対応する正極リード71(1つの電極ユニットに対して1つの正極リードが対応する)とそれぞれ固定して電気的に接合され、複数の正極リード71も互いに束ねられ、正極端子81と固定して電気的に接合され」、「電極ユニット10毎に束ねられた複数の負極タブ52は、各電極ユニット10に対応する負極リード72と電気的に接合され、複数の負極リード72も互いに束ねられ、負極端子82と電気的に接合され」るものである。
してみると、甲1発明の「電極端子8(正極端子81、負極端子82)」は、複数の電極タブ5(正極タブ51、負極タブ52)と電極リード7(正極リード71、負極リード72)を介して接合されているといえる。
よって、甲1発明の「電極端子8(正極端子81、負極端子82)」は、本件発明1の「集電端子」に対応するといえる。
ただし、集電端子が、本件発明1では「前記複数の集電タブと接続され」るのに対して、甲1発明では複数の電極タブ5と電極リード7を介して接続されている点で相違する。
d 甲1発明は「電極リード7、電極タブ5、電極体15が電池ケース2に収納され」るものであるから、甲1発明の「電池ケース2」と、本件発明1の「前記電極体および前記複数の集電タブを収納するラミネートフィルム」とは、「前記電極体および前記複数の集電タブを収納する」外装である点では一致する。
ただし、外装が、本件発明1は「ラミネートフィルム」であるのに対し、甲1発明はその旨特定されていない点で相違する。
e 甲1発明の「二次電池1」は、電極体15と、電極タブ5と、電極端子8と、電池ケース2とを有するものであるから、本件発明1の「電池」に相当する。
f 甲1発明の「正極タブ51」は、「電極ユニット10の上面10aに対応する正極板41の縁端から突出」し、「折曲げられ厚さ方向に積層されて束ねられ、束ねられた部分で正極リード71と接合され」るものであり、「負極タブ52についても、同様に束ねられ負極リード72と接合され」るものである。
してみると、甲1発明の「電極タブ5(正極タブ51、負極タブ52)」は、電極体15(電極ユニット10)を構成する電極板4(正極板41、負極板42)の縁端から突出する部分と、電極リード7(正極リード71、負極リード72)と接合する部分と、折り曲げられる部分とを有するものであり、甲1発明の上記「電極体15(電極ユニット10)を構成する電極板4(正極板41、負極板42)の縁端から突出する部分」は本件発明1の「前記電極体側の端部である根元部」に、甲1発明の「折り曲げられる部分」は本件発明1の「前記根元部および前記接続部を結ぶ中間部」にそれぞれ相当し、そして、甲1発明の「電極リード7(正極リード71、負極リード72)と接合する部分」と本件発明1の「前記集電端子と接続するための接続部」とは、「導電部材と接続するための接続部」である点では一致するといえる。
したがって、甲1発明の「電極タブ5」は、本件発明1の「集電タブ」と「前記集電タブは、前記電極体側の端部である根元部と、導電部材と接続するための接続部と、前記根元部および前記接続部を結ぶ中間部と、を有」する点で一致する構成を有する。
ただし、集電タブの接続部と接続する導電部材が、本件発明1は「集電端子」であるのに対して、甲1発明は電極リード7である点で相違する。
g 甲1発明の「複数の正極タブ51は、折曲げられ厚さ方向に積層されて束ねられ、束ねられた部分で正極リード71と接合され」、「複数の負極タブ52についても、同様に束ねられ負極リード72と接合され」るものであるから、甲1発明の「複数の電極タブ5」は、それぞれの電極リード7と接合する部分が、厚さ方向に積層された部分を有するといえ、このことは、上記「f」の対比を考慮すれば、本件発明1の「前記複数の集電タブは、それぞれの前記接続部が、厚さ方向に積層された積層接続部を有」することに相当する。
h 甲1発明の「電極端子8」は「電極体15を構成する電極ユニット10の上面10aに対向する面と、当該面の外縁に沿って配置された側面とを有する形状」である。
甲1発明の「電極端子8」の上記「電極体15を構成する電極ユニット10の上面10aに対向する面」は本件発明1の「前記電極体の前記側面部に対向する内面」に、甲1発明の「当該面の外縁に沿って配置された側面」は本件発明1の「前記内面の外縁に沿って配置された側面」にそれぞれ相当し、甲1発明の「電極端子8」は、本件発明1の「前記集電端子は、前記電極体の前記側面部に対向する内面と、前記内面の外縁に沿って配置された側面と、を有」することに相当する構成を有する。
i 甲1発明の「電極端子8」は「電池蓋3を貫通するように設けられ」たものであるから、「電極端子8」の側面には電池蓋3が配置されているといえる。
してみると、上記hの対比を考慮すると、集電端子の側面に配置されるのが、本件発明1は「前記ラミネートフィルム」であるのに対して、甲1発明は電池蓋3である点で相違する。
j 甲1発明は「電極リード7を介して電極板4と電極端子8を接合」するものであるから、「電極端子8」の上記「電極体15を構成する電極ユニット10の上面10aに対向する面」には電極リード7が接合されている。
したがって、上記hの対比を考慮すれば、集電端子の内面に接合されるのが、本件発明1は集電タブの「前記積層接続部の主面」であるのに対して、甲1発明は電極リード7である点で相違する。
k 甲1発明の「電池蓋3の内面3aと電極ユニット10の上面10aとの隙間にはそれぞれに当接するスペーサ9が配置され」ていることは、本件発明1と「スペーサ部材が配置され」ている点で一致する。
ただし、スペーサ部材が、本件発明1では集電端子の「前記内面および」電極体の「前記側面の間に」「配置され」ているのに対して、甲1発明では電池蓋3の内面3aと電極ユニット10の上面10aとの隙間に配置されている点で相違する。
l 甲1発明の「電極ユニット10の積層方向の平面視において、スペーサ9は、複数の電極タブ5及び複数の電極リード7と重複しない位置に配置されて」いることは、本件発明1の「前記電極体の積層方向の平面視において、前記スペーサ部材は、前記複数の集電タブと重複しない位置に配置されている」ことに相当する。
m 上記aないしlより、本件発明1と甲1発明とは、
「電極体と、
前記電極体の側面部から延在する複数の集電タブと、
集電端子と、
前記電極体および前記複数の集電タブを収納する外装と、
を有する電池であって、
前記集電タブは、前記電極体側の端部である根元部と、導電部材と接続するための接続部と、前記根元部および前記接続部を結ぶ中間部と、を有し、
前記複数の集電タブは、それぞれの前記接続部が、厚さ方向に積層された積層接続部を有し、
前記集電端子は、前記電極体の前記側面部に対向する内面と、前記内面の外縁に沿って配置された側面と、を有し、
スペーサ部材が配置され、
前記電極体の積層方向の平面視において、前記スペーサ部材は、前記複数の集電タブと重複しない位置に配置されている、電池。」
である点で一致し、次の点で相違する。
〈相違点1〉
集電端子が、本件発明1では「前記複数の集電タブと接続され」るのに対して、甲1発明では複数の電極タブ5と電極リード7を介して接続されている点。
〈相違点2〉
外装が、本件発明1は「ラミネートフィルム」であるのに対し、甲1発明はその旨特定されていない点。
〈相違点3〉
集電タブの接続部が接続する導電部材が、本件発明1は「集電端子」であるのに対して、甲1発明は電極リード7である点。
〈相違点4〉
集電端子の側面に配置されるのが、本件発明1は「前記ラミネートフィルム」であるのに対して、甲1発明は電池蓋3である点。
〈相違点5〉
集電端子の内面に接合されるのが、本件発明1は集電タブの「前記積層接続部の主面」であるのに対して、甲1発明は電極リード7である点。
〈相違点6〉
スペーサ部材が、本件発明1では集電端子の「前記内面および」電極体の「前記側面の間に」「配置され」ているのに対して、甲1発明では電池蓋3の内面3aと電極ユニット10の上面10aとの隙間に配置されている点。
(2)判断
事案に鑑み、相違点4について検討する。
蓄電装置に関する甲第2号証の【0020】に「例えば、第一容器部20は、金属等の導電性を有する部材を樹脂等でコーティングした材料で構成されてもよい。・・・パウチ(ラミネート)が、第一容器部20の構成として挙げられる。」と記載されるように、電池のケースとしてラミネートフィルムを用いること自体は、本件出願前より周知の技術事項であるものと認められる。
ここで、甲1発明は「電池ケース2の開口部に電池蓋3を固定する」ものであるから、甲1発明の外装は電池ケース2および電池蓋3により構成されるものであるところ、甲第1号証の【0034】に「電池ケース2内に配置された電極などの位置ずれをより確実に抑制するために、当該スペーサ9を介して電池蓋3の押し付け力を各電極ユニット10に作用させて、電極ユニット10がスペーサ9と電池ケース2の底板部分との間で押圧された状態とする」と記載されるように、スペーサ9を配置する甲1発明は電池蓋3の押し付け力を電極ユニット10に作用させるものであるから、電池蓋3にある程度の剛性が求められるのは明らかであり、外装を構成する電池蓋3としてラミネートフィルムを用いることを当業者が容易に想到し得るものとは認められない。
また、甲第3号証にも、蓋体にラミネートフィルムを用いることは、記載も示唆もされていない。
したがって、甲第1号証に記載された発明及び甲第2、3号証に記載された技術に基づいて本件発明1の相違点4に係る構成を得ることは、当業者が容易になし得たとはいえない。
よって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件の請求項1に係る発明は甲第1号証及び甲第2、3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものとは認められず、本件の請求項1に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
2 本件発明2について
(1)本件発明2の構成
本件発明2は、本件発明1の「前記電極体の積層方向の平面視において、前記スペーサ部材は、前記複数の集電タブと重複しない位置に配置されている」との構成を「前記スペーサ部材は、前記内面、および、前記側面部の少なくとも一方と接触している」とした点を除いて、本件発明1と同一の構成を有するものである。
(2)対比
上記「(1)」を考慮すれば、本件発明2と甲1発明とを対比すると、上記「1(1)」の「a」から「k」と同様のことがいえる。
そして、甲1発明の「電極体15を構成する電極ユニット10の上面10a」は本件発明2の「電極体の前記側面部」に対応することから、甲1発明が「電池蓋3の内面3aと電極ユニット10の上面10aとの隙間にはそれぞれに当接するスペーサ9が配置され」ることは、本件発明2の「前記スペーサ部材は、」「前記側面部」「と接触している」ことに相当し、「記スペーサ部材は、前記内面、および、前記側面部の少なくとも一方と接触している」ことに含まれる。
以上のことより、本件発明2と甲1発明とは、
「電極体と、
前記電極体の側面部から延在する複数の集電タブと、
集電端子と、
前記電極体および前記複数の集電タブを収納する外装と、
を有する電池であって、
前記集電タブは、前記電極体側の端部である根元部と、導電部材と接続するための接続部と、前記根元部および前記接続部を結ぶ中間部と、を有し、
前記複数の集電タブは、それぞれの前記接続部が、厚さ方向に積層された積層接続部を有し、
前記集電端子は、前記電極体の前記側面部に対向する内面と、前記内面の外縁に沿って配置された側面と、を有し、
スペーサ部材が配置され、
記スペーサ部材は、前記側面部と接触している、電池。」
である点で一致し、次の点で相違する。
〈相違点7〉
集電端子が、本件発明2では「前記複数の集電タブと接続され」るのに対して、甲1発明では複数の電極タブ5と電極リード7を介して接続されている点。
〈相違点8〉
外装が、本件発明2は「ラミネートフィルム」であるのに対し、甲1発明はその旨特定されていない点。
〈相違点9〉
集電タブの接続部が接続する導電部材が、本件発明2は「集電端子」であるのに対して、甲1発明は電極リード7である点。
〈相違点10〉
集電端子の側面に配置されるのが、本件発明2は「前記ラミネートフィルム」であるのに対して、甲1発明は電池蓋3である点。
〈相違点11〉
集電端子の内面に接合されるのが、本件発明2は集電タブの「前記積層接続部の主面」であるのに対して、甲1発明は電極リード7である点。
〈相違点12〉
スペーサ部材が、本件発明2では集電端子の「前記内面および」電極体の「前記側面の間に」「配置され」ているのに対して、甲1発明では電池蓋3の内面3aと電極ユニット10の上面10aとの隙間に配置されている点。
(3)判断
事案に鑑み、相違点10について検討する。
本件発明2の相違点10に係る構成は、本件発明1の相違点4に係る構成と同一である。
したがって、上記「1(2)」で述べたのと同様の理由により、甲第1号証に記載された発明及び甲第2、3号証に記載された技術に基づいては、本件発明2の相違点10に係る構成を得ることは当業者が容易になし得たとはいえない。
よって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件の請求項2に係る発明は甲第1号証及び甲第2、3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものとは認められず、本件の請求項2に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
3 本件発明3ないし5について
本件の請求項3ないし5は、請求項1または2を引用する請求項であり、本件発明3ないし5は、本件発明1または2の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明1または2についての判断と同様の理由により、本件の請求項3ないし5に係る発明は、甲第1号証及び甲第2、3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易になし得たものとは認められない。
したがって、本件の請求項3ないし5に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
第6 むすび
以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件の請求項1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件の請求項1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700816