特許異議申立
2025-700155
電池および電池モジュール
- 審判番号
- 2025-700155
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-102546
- 登録番号
- 7528989
- 請求日
- 2025年02月05日
- 審決日
- 2025年08月28日
- 公報発行日
- 2025年12月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】トヨタ自動車株式会社
- 【権利者代理人】山下 昭彦
- 【権利者代理人】岸本 達人
- 【権利者代理人】山本 典輝
- 【異議申立人】ジュネスプロパティーズ 株式会社
- 審判長/審判官
- 審判長 井上 信一
- 審判官 涌井 智則
- 審判官 須原 宏光
- 分類
- P1651.121-YAA(H01M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7528989号発明「電池および電池モジュール」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7528989号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1―5〕について訂正することを認める。
特許第7528989号の請求項1-5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7528989号の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、令和4年6月27日に出願され、令和6年7月29日にその特許権が設定登録され、令和6年8月6日に特許掲載公報が発行された。
その特許についての本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和7年2月 5日 :特許異議申立人ジュネスプロパティーズ株式会社(以下、「申立人」という。)により請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立て
令和7年4月14日付け:取消理由通知
令和7年6月11日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
なお、令和7年6月11日に提出された特許権者による意見書及び訂正請求書に対して、申立人に期間を指定して意見書を提出する機会を設けたが、申立人から意見書は提出されなかった。
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和7年6月11日付けの訂正請求の趣旨は、特許7528989号の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1-5に訂正することを求めるものであり、その訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は次のとおりである(下線は、訂正箇所を示す。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「前記集電端子の前記側面に、前記ラミネートフィルムが配置され」と記載されているのを、
「前記集電端子の前記側面に、前記ラミネートフィルムの端が配置されることにより、前記電極体は前記ラミネートフィルムによって封止され」に訂正する(請求項1を引用する請求項2、4も同様に訂正する)。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に、
「前記集電端子は、前記突出部として、第1突出部と、第2突出部とを有し、
前記電極体の積層方向の平面視において、前記電極体および前記集電端子の対向方向をD1とし、前記D1に直交する方向をD2とし、前記D1に平行であり、かつ、前記D2における前記集電端子の中点を通過する軸をAXとした場合に、
前記AXにより区画された前記集電端子の一方の領域に、前記第1突出部が配置され、
前記AXにより区画された前記集電端子の他方の領域に、前記第2突出部が配置されている、請求項1または請求項2に記載の電池。」と記載されているのを、
「電極体と、
前記電極体の側面部から延在する複数の集電タブと、
前記複数の集電タブと接続された集電端子と、
前記電極体および前記複数の集電タブを収納するラミネートフィルムと、
を有する電池であって、
前記集電タブは、前記電極体側の端部である根元部と、前記集電端子と接続するための接続部と、前記根元部および前記接続部を結ぶ中間部と、を有し、
前記複数の前記集電タブは、それぞれの前記接続部が、厚さ方向に積層された積層接続部を有し、
前記集電端子は、前記電極体の前記側面部に対向する内面と、前記内面の外縁に沿って配置された側面と、を有し、
前記集電端子の前記側面に、前記ラミネートフィルムが配置され、
前記内面に、前記積層接続部の主面が接合され、
前記電極体の積層方向の平面視において、前記集電端子は、前記内面の位置に該当する第1端部、および、前記第1端部に対向する第2端部を含む基部と、前記基部から、前記電極体とは反対側に突出する突出部と、を有し、
前記集電端子は、前記突出部として、第1突出部と、第2突出部とを有し、
前記電極体の積層方向の平面視において、前記電極体および前記集電端子の対向方向をD1とし、前記D1に直交する方向をD2とし、前記D1に平行であり、かつ、前記D2における前記集電端子の中点を通過する軸をAXとした場合に、
前記AXにより区画された前記集電端子の一方の領域に、前記第1突出部が配置され、
前記AXにより区画された前記集電端子の他方の領域に、前記第2突出部が配置されている、電池。」に訂正する(請求項3を引用する請求項5も同様に訂正する)。
2 訂正要件についての判断
(1)一群の請求項について
訂正事項1ないし2に係る本件訂正前の請求項1ないし5について、請求項2ないし5は請求項1を直接または間接的に引用しているから、本件訂正前の請求項1ないし5に対応する本件訂正の請求項〔1-5〕は、特許法第120条の5第4項に規定する関係を有する一群の請求項である。
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否、独立特許要件
ア 訂正事項1について
訂正事項1に係る請求項1の訂正は、訂正前の請求項1の「ラミネートフィルム」について「前記集電端子の前記側面」に「端」が配置され、そのことにより「前記電極体は前記ラミネートフィルムによって封止され」ると限定するものであるから、訂正事項1に係る訂正は、訂正前の請求項1について、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そして、本件明細書の【0002】に「電極体は、外装体により封止される」と記載され、図1ないし3にラミネートフィルム40の端が集電端子30の側面に配置されていることが見てとれるから、訂正事項1に係る訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
また、訂正事項1に係る訂正は、発明特定事項を限定するものであって、カテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当せず、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
訂正事項1に係る訂正は、訂正前の請求項2、4についても同様のことがいえる。
イ 訂正事項2について
訂正事項2に係る請求項3の訂正は、訂正前の請求項3が「請求項1または請求項2に記載の電池」を引用するものであったのを、請求項2を引用するものを削除し引用する請求項の数を減少すると共に、請求項1を引用するものについて請求項間の引用関係を解消し、請求項3の記載を引用しないものとし、独立形式請求項へ改めるための訂正であって、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」および第4号に掲げる「他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること」を目的とする訂正である。
そして、訂正事項2に係る訂正が、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないことも明らかである。
したがって、訂正事項2は、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
訂正事項2に係る訂正は、訂正前の請求項5についても同様のことがいえる。
ウ 独立特許要件について
訂正事項1、2は、上記「ア」、「イ」に示したとおり、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするところ、本件においては、訂正前の請求項1ないし5について特許異議の申立てがされているから、対応する訂正後の請求項1ないし5に係る発明について、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
3 小括
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号および第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
そして、訂正後の請求項3、5について、別の訂正単位とすることの求めはされていないことから、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
上記「第2」のとおり本件訂正は認められるので、本件特許の請求項1ないし5に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明5」という。)は、その訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された次の事項により特定されるものである。なお、下線は、訂正箇所を示す。
「【請求項1】
電極体と、
前記電極体の側面部から延在する複数の集電タブと、
前記複数の集電タブと接続された集電端子と、
前記電極体および前記複数の集電タブを収納するラミネートフィルムと、
を有する電池であって、
前記集電タブは、前記電極体側の端部である根元部と、前記集電端子と接続するための接続部と、前記根元部および前記接続部を結ぶ中間部と、を有し、
前記複数の前記集電タブは、それぞれの前記接続部が、厚さ方向に積層された積層接続部を有し、
前記集電端子は、前記電極体の前記側面部に対向する内面と、前記内面の外縁に沿って配置された側面と、を有し、
前記集電端子の前記側面に、前記ラミネートフィルムの端が配置されることにより、前記電極体は前記ガミネートフィルムによって封止され、
前記内面に、前記積層接続部の主面が接合され、
前記電極体の積層方向の平面視において、前記集電端子は、前記内面の位置に該当する第1端部、および、前記第1端部に対向する第2端部を含む基部と、前記基部から、前記電極体とは反対側に突出する突出部と、を有する、電池。
【請求項2】
前記電極体の積層方向の断面視において、前記中間部は、前記中間部の一部同士が対向するように湾曲した湾曲構造を有する、請求項1に記載の電池。
【請求項3】
電極体と、
前記電極体の側面部から延在する複数の集電タブと、
前記複数の集電タブと接続された集電端子と、
前記電極体および前記複数の集電タブを収納するラミネートフィルムと、
を有する電池であって、
前記集電タブは、前記電極体側の端部である根元部と、前記集電端子と接続するための接続部と、前記根元部および前記接続部を結ぶ中間部と、を有し、
前記複数の前記集電タブは、それぞれの前記接続部が、厚さ方向に積層された積層接続部を有し、
前記集電端子は、前記電極体の前記側面部に対向する内面と、前記内面の外縁に沿って配置された側面と、を有し、
前記集電端子の前記側面に、前記ラミネートフィルムが配置され、
前記内面に、前記積層接続部の主面が接合され、
前記電極体の積層方向の平面視において、前記集電端子は、前記内面の位置に該当する第1端部、および、前記第1端部に対向する第2端部を含む基部と、前記基部から、前記電極体とは反対側に突出する突出部と、を有し、
前記集電端子は、前記突出部として、第1突出部と、第2突出部とを有し、
前記電極体の積層方向の平面視において、前記電極体および前記集電端子の対向方向をD1とし、前記D1に直交する方向をD2とし、前記D1に平行であり、かつ、前記D2における前記集電端子の中点を通過する軸をAXとした場合に、
前記AXにより区画された前記集電端子の一方の領域に、前記第1突出部が配置され、
前記AXにより区画された前記集電端子の他方の領域に、前記第2突出部が配置されている、電池。
【請求項4】
複数の電池を積層した電池モジュールであって、
前記電池が、請求項1または請求項2に記載の電池である、電池モジュール。
【請求項5】
複数の電池が積層された電池モジュールであって、
前記電池が、請求項3に記載の電池であり、
前記電池モジュールは、前記電池として、電池A、電池Bおよび電池Cを有し、
前記電池A、前記電池Bおよび前記電池Cは、連続して積層されており、
前記電池Aの前記第1突出部、前記電池Bの前記第1突出部、および、前記電池Cの前記第1突出部は、前記電極体の積層方向の平面視において、それぞれ少なくとも一部が重複するように配置され、
前記電池Aの前記第2突出部、前記電池Bの前記第2突出部、および、前記電池Cの前記第2突出部は、前記電極体の積層方向の平面視において、それぞれ少なくとも一部が重複するように配置され、
前記電池Bの前記第1突出部は、前記電池Aの前記第1突出部と接合されており、かつ、前記電池Cの前記第1突出部と接合されておらず、
前記電池Bの前記第2突出部は、前記電池Aの前記第2突出部と接合されておらず、かつ、前記電池Cの前記第2突出部と接合されている、電池モジュール。」
第4 取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
令和7年4月14日付けの取消理由通知に記載した取消理由の概要は、次のとおりである。
1)下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、下記の請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
記(各甲号証については甲号証一覧参照)
●理由1(進歩性)について
・請求項1、2、4について引用文献1、2
<引用文献等一覧>
引用文献1:特開2018-181622号公報(甲第1号証)
引用文献2:特開2022-47131号公報(甲第2号証)
2 引用文献1の記載等
(1)引用文献1の図1、図7からは、以下のことが見てとれる。
「図1
[図:0001430014000001.jpg]
」
「図7
[図:0001430014000002.jpg]
」
a 電極タブ(正極タブ130、負極タブ230)は電極体400の積層方向と直交する方向である電極体400の側面方向に導出されていること。
b 電極端子(正極端子150、負極端子250)は、電極体400の側面方向に設けられ、電極体400の側面に対向する面、当該面の外縁に沿った側面、電極体400の側面に対向する面と反対の面とを有する形状であること。
c 電極端子の突出部153、253は電極体400とは反対側に突出すること。
d 電極端子の側面に外装体700が配置されていること。
e 電極端子と電極タブの接合点において、電極端子の電極体400の側面に対向する面に対して電極タブが接続され、電極タブはタブの厚さ方向にタブ同士が積層されていること。
(2)そして、引用文献1の【請求項1】、【0011】、【0013】、【0017】、【0022】、【0029】-【0031】、【0037】、【0038】、【0045】の記載とあわせると、引用文献1には、図7に示された積層型二次電池として以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「正極100、負極200、正極タブ130、負極タブ230、正極端子150、負極端子250、セパレータ300、シーラント剤500、外装体700を有する積層型二次電池1000において(【0011】)、
正極100、セパレータ300、負極200が積層されて電極体400が構成され、積層型二次電池1000は、複数の電極体400が積層されて構成され(【0013】)、
正極タブ130は電極体400の積層方向と直交する方向である電極体400の側面方向に電極体400の外部に導出され、正極タブ130は折り曲げられており、折り曲げられた正極タブ130は積層方向に延伸し(【0017】、【0045】、図1、図7)、
正極タブ130と同様に負極タブ230も電極体400の外部に導出されているが、正極タブ130および負極タブ230の面内方向において導出されている方向は、反対になっており(【0022】)、
電極端子(正極端子150、負極端子250)は、電極体400の側面方向に設けられ、電極体400の側面に対向する面、当該面の外縁に沿った側面、電極体400の側面に対向する面と反対の面とを有する形状であり(図1、図7)、
電極端子は、電極端子中間凹部(正極端子中間凹部151、負極端子中間凹部251)、電極端子端部凹部(正極端子端部凹部152、負極端子端部凹部252)、電極体400の側面に対向する面と反対の面から電極体400とは反対側に突出する電極端子突出部(正極端子突出部153、負極端子突出部253)を有し(【0029】、図1、図7)、
電極端子中間凹部が電極端子および電極タブ(正極タブ130、負極タブ230)の接合点になり、接合点において、電極タブおよび電極端子は、積層方向に延伸する面同士で接続されるように、電極端子の電極体400の側面に対向する面に対して電極タブが接続されると共に電極タブはタブの厚さ方向にタブ同士が積層されており(【0030】、図1、図7)、
電極端子の側面に外装体700が配置され(図1、図7)、
電極端子端部凹部にシーラント剤500が形成され、電極端子は、外装体700にシーラント剤500を介して固定され(【0031】、【0030】)、
電極端子および外装体700は、電極端子における電極タブおよび電極端子の接続面とは反対側の面で、積層方向に延伸する面同士でシールされ(【請求項1】、【0038】)、
外装体700は、電極、セパレータ300、電極タブ、電極端子、シーラント剤500を収納し、外装体700の電極端子が形成されている面では、電極端子を露出させるように外装体700には開口部が形成されている(【0037】、【0045】)、
積層型二次電池1000。」
3 当審の判断
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「正極100、セパレータ300、負極200が積層されて」構成される「複数の電極体400」は、本件発明1の「電極体」に相当する。
(イ)引用発明の「電極体400の積層方向と直交する方向である電極体400の側面方向に電極体400の外部に導出され」る「正極タブ130」および「正極タブ130と同様」の「負極タブ230」である「電極タブ」は、本件発明1の「前記電極体の側面部から延在する複数の集電タブ」に相当する。
(ウ)引用発明の「電極端子(正極端子150、負極端子250)」「は、電極端子中間凹部(正極端子中間凹部151、負極端子中間凹部251)」を有し、「電極端子中間凹部が電極端子および電極タブ(正極タブ130、負極タブ230)の接合点になり、接合点において、電極タブおよび電極端子は、積層方向に延伸する面同士で接続される」「と共に電極タブはタブの厚さ方向にタブ同士が積層され」たものであるから、引用発明の「電極端子」は、複数の電極タブと接続されたものであり、本件発明1の「前記複数の集電タブと接続された集電端子」に相当する。
(エ)上記(ア)で述べたように引用発明の「電極体400」は、「正極100、セパレータ300、負極200が積層されて」構成されており、引用発明の「外装体700」は、「電極、セパレータ300、電極タブ、電極端子、シーラント剤500を収納」するから、引用発明の「外装体700」は、電極体400および電極タブを収納するものであり、本件発明1の「前記電極体および前記複数の集電タブを収納するラミネートフィルム」とは、「前記電極体および前記複数の集電タブを収納する」「外装」である点では一致する。
ただし、外装が、本件発明1は「ラミネートフィルム」であるのに対して、引用発明はその旨特定されていない点で相違する。
(オ)上記(ア)ないし(エ)での対比を考慮すれば、引用発明の「積層型二次電池1000」は本件発明1の「電池」に相当する。
(カ)引用発明は「正極タブ130は電極体400の積層方向と直交する方向である電極体400の側面方向に電極体400の外部に導出され、正極タブ130は折り曲げられており、折り曲げられた正極タブ130は積層方向に延伸し」、「負極タブ230」は「正極タブ130と同様」のものである。
また、引用発明は「電極端子中間凹部が電極端子および電極タブ(正極タブ130、負極タブ230)の接合点になり、接合点において、電極タブおよび電極端子は、積層方向に延伸する面同士で接続される」ものである。
してみると、引用発明の「電極タブ」は、電極体400の外部に導出される部分と、電極端子と接続される積層方向に延伸する部分と、折り曲げられた部分とを有するものであり、引用発明の上記「電極体400の外部に導出される部分」は本件発明1の「前記電極体側の端部である根元部」に、引用発明の上記「電極端子と接続される積層方向に延伸する部分」は本件発明1の「前記集電端子と接続するための接続部」に、引用発明の上記「折り曲げられた部分」は本件発明1の「前記根元部および前記接続部を結ぶ中間部」にそれぞれ相当する。
したがって、引用発明の「電極タブ」は、本件発明1の「前記集電タブは、前記電極体側の端部である根元部と、前記集電端子と接続するための接続部と、前記根元部および前記接続部を結ぶ中間部と、を有」することに相当する構成を有する。
(キ)引用発明は「電極端子中間凹部が電極端子および電極タブ(正極タブ130、負極タブ230)の接合点になり、接合点において、電極タブおよび電極端子は、積層方向に延伸する面同士で接続される」「と共に電極タブはタブの厚さ方向にタブ同士が積層されて」いるから、引用発明の「電極タブ」は、電極端子と接続される積層方向に延伸する部分で、タブの厚さ方向にタブ同士が積層されており、このことは、本件発明1の「前記複数の前記集電タブは、それぞれの前記接続部が、厚さ方向に積層された積層接続部を有」することに相当する。
(ク)引用発明は「電極端子(正極端子150、負極端子250)は、」「電極体400の側面に対向する面、当該面の外縁に沿った側面」「を有する形状であ」る。
引用発明の「電極端子」の上記「電極体400の側面に対向する面」は本件発明1の「集電端子」の「前記電極体の前記側面部に対向する内面」に、引用発明の「当該面の外縁に沿った側面」は本件発明1の「前記内面の外縁に沿って配置された側面」にそれぞれ相当し、引用発明の「電極端子」は、本件発明1の「前記集電端子は、前記電極体の前記側面部に対向する内面と、前記内面の外縁に沿って配置された側面と、を有」することに相当する構成を有する。
(ケ)引用発明は「正極100、セパレータ300、負極200が積層されて電極体400が構成され」、「電極端子の側面に外装体700が配置され、電極端子端部凹部にシーラント剤500が形成され、電極端子は、外装体700にシーラント剤500を介して固定され、外装体700は、電極、セパレータ300、電極タブ、電極端子、シーラント剤500を収納し」ているから、電極端子の側面に外装体700が配置され、電極体400は外装体700によって封止されているといえる。
よって、引用発明と本件発明1とは、「前記集電端子の前記側面に、」「外装の一部」「が配置されることにより、前記電極体は前記」「外装」「によって封止され」る点で一致する。
ただし、集電端子の側面に配置される外装の一部が、本件発明1は「ラミネートフィルムの端」であるのに対して、引用発明はその旨特定されていない点で相違する。
(コ)引用発明は、「接合点において、電極タブおよび電極端子は、積層方向に延伸する面同士で接続されるように、電極端子の電極体400の側面に対向する面に対して電極タブが接続されると共に電極タブはタブの厚さ方向にタブ同士が積層されて」いるから、電極端子の電極体400の側面に対向する面に電極タブの積層方向に延伸する面が接続されており、本件発明1の「前記内面に、前記積層接続部の主面が接合され」ることに相当する。
(サ)引用発明の「電極端子」は「電極体400の側面方向に設けられ、電極体400の側面に対向する面、当該面の外縁に沿った側面、電極体400の側面に対向する面と反対の面とを有する形状であり」、「電極端子中間凹部(正極端子中間凹部151、負極端子中間凹部251)、電極端子端部凹部(正極端子端部凹部152、負極端子端部凹部252)、電極体400とは反対側に突出する電極端子突出部(正極端子突出部153、負極端子突出部253)を有し」たものである。
ここで、引用発明の「電極体400」の積層方向の平面視における「電極端子」の「電極体400の側面に対向する面」に該当する端部は、本件発明1の「前記電極体の積層方向の平面視」における「前記集電端子」の「前記内面の位置に該当する第1端部」に、引用発明の「電極体400」の積層方向の平面視における「電極端子」の「電極体400の側面に対向する面と反対の面」に該当する端部は、本件発明1の「前記第1端部に対向する第2端部」に相当し、引用発明の「電極端子」のうち「電極体400の側面に対向する面と反対の面から電極体400とは反対側に突出する電極端子突出部(正極端子突出部153、負極端子突出部253)」以外の部分は、本件発明1の「前記電極体の積層方向の平面視において、前記集電端子は、前記内面の位置に該当する第1端部、および、前記第1端部に対向する第2端部を含む基部」に相当し、そして、引用発明の「電極端子」の「電極体400の側面に対向する面と反対の面から電極体400とは反対側に突出する電極端子突出部(正極端子突出部153、負極端子突出部253)」は、本件発明1の「前記基部から、前記電極体とは反対側に突出する突出部」に相当するとみることができる。
してみると、引用発明の「電極端子」は、本件発明1の「前記電極体の積層方向の平面視において、前記集電端子は、前記内面の位置に該当する第1端部、および、前記第1端部に対向する第2端部を含む基部と、前記基部から、前記電極体とは反対側に突出する突出部と、を有する」ことに相当する構成を有する。
(シ)したがって、両者は以下の一致点と相違点を有する。
〈一致点〉
「電極体と、
前記電極体の側面部から延在する複数の集電タブと、
前記複数の集電タブと接続された集電端子と、
前記電極体および前記複数の集電タブを収納する外装と、
を有する電池であって、
前記集電タブは、前記電極体側の端部である根元部と、前記集電端子と接続するための接続部と、前記根元部および前記接続部を結ぶ中間部と、を有し、
前記複数の前記集電タブは、それぞれの前記接続部が、厚さ方向に積層された積層接続部を有し、
前記集電端子は、前記電極体の前記側面部に対向する内面と、前記内面の外縁に沿って配置された側面と、を有し、
前記集電端子の前記側面に、前記外装が配置されることにより、前記電極体は前記外装によって封止され、
前記内面に、前記積層接続部の主面が接合され、
前記電極体の積層方向の平面視において、前記集電端子は、前記内面の位置に該当する第1端部、および、前記第1端部に対向する第2端部を含む基部と、前記基部から、前記電極体とは反対側に突出する突出部と、を有する、電池。」
〈相違点1〉
外装が、本件発明1は「ラミネートフィルム」であるのに対して、引用発明はその旨特定されておらず、さらに、集電端子の側面に配置される外装の一部が、本件発明1は「ラミネートフィルム」の「端」であるのに対して、引用発明は外装体の端ではない点。
イ 判断
引用文献2(特開2022-47131号公報;甲第2号証)の【0029】に記載されるように、二次電池の外装としてラミネートフィルムを用いること自体は周知技術である。
しかしながら、外装であるラミネートフィルムの端を集電端子の側面上に配置することは、引用文献1及び2のいずれにも、記載も示唆もされていない。
また、引用文献1の特に【請求項1】中において「前記電極端子および前記外装体は、前記電極端子における前記電極タブおよび前記電極端子の接続面とは反対側の面で、積層方向に延伸する面同士でシールされる」と記載されるように、引用文献1に記載された発明は、外装体は電極端子における電極タブおよび電極端子の接続面とは反対側の面で積層方向に延伸する面同士でシールされる構成を必須とするものであり、外装体の端を電極端子の側面に配置するようにすべき動機がない。
したがって、引用発明に引用文献2に記載の周知技術を適用し、外装としてラミネートフィルムを用いたとしても、当該外装であるラミネートフィルムの端を集電端子の側面に配置することが当業者が容易になし得たとはいえない。
よって、本件の請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明と引用文献2に記載の周知技術とに基づいて当業者が容易になし得たものとはいえず、請求項1に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
(2)本件発明2および4について
本件の請求項2および4は、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項であり、本件発明2および4は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、本件の請求項2および4に係る発明は、引用文献1に記載された発明と引用文献2に記載された周知技術とに基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、本件の請求項2および4に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
なお、甲第4号証(特開2018-81749号公報)にも、外装であるラミネートフィルムの端を集電端子の側面上に配置することは記載も示唆もされていない。
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 申立人の主張
申立人は特許異議申立書において、概略次のように主張している。
「甲1発明、甲2発明、および、甲3発明は、電池という共通の技術分野に属している。また、甲1発明、甲2発明、および、甲3発明は、筒状の外装体によって電極体を包むという構成において共通する。これらの点に鑑みると、当業者であれば、甲1発明~甲3発明を組み合わせることには動機付けがある。また、これらの発明を組み合わせることに、阻害要因はない。このため、当業者は、甲1発明において、軸AXにより区画された正極端子150の一方の領域に突出部と形成し、他方の領域に突出部を形成することに容易に想到することができる。
以上のとおり、本件発明3は、甲1発明と、甲2発明と、甲3発明とに基づいて当業者が容易に想到し得た発明である。」(第19頁第7ないし15行)
「甲1発明、甲2発明、甲3発明、および、甲4発明は、電池という共通の技術分野に属している。また、甲1発明、甲2発明、甲3発明、および、甲4発明は、筒状の外装体によって電極体を包むという構成において共通する。これらの点に鑑みると、当業者であれば、甲1発明~甲4発明を組み合わせることには動機付けがある。また、これらの発明を組み合わせることに、阻害要因はない。
以上のとおり、本件発明3(当審注:「本件発明3」は「本件発明5」の誤記と認める。)は、甲1発明と、甲2発明と、甲3発明とに基づいて、または、甲1発明と、甲2発明と、甲3発明と、甲4発明とに基づいて当業者が容易に想到し得た発明である。」(第20頁第14ないし21行)
「甲第1号証 特開2018-181622号公報
甲第2号証 特開2022-47131号公報
甲第3号証 WO2020/218214号
甲第4号証 特開2018-81749号公報」(第21頁第3ないし6行)
2 甲第1号証の記載について
甲第1号証は引用文献1であるから、甲第1号証には引用発明と同一の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
3 当審の判断
(1)本件発明3について
ア 対比
本件発明3と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明の「正極100、セパレータ300、負極200が積層されて」構成される「複数の電極体400」は、本件発明3の「電極体」に相当する。
(イ)甲1発明の「電極体400の積層方向と直交する方向である電極体400の側面方向に電極体400の外部に導出され」る「正極タブ130」および「正極タブ130と同様」の「負極タブ230」である「電極タブ」は、本件発明3の「前記電極体の側面部から延在する複数の集電タブ」に相当する。
(ウ)甲1発明の「電極端子(正極端子150、負極端子250)」「は、電極端子中間凹部(正極端子中間凹部151、負極端子中間凹部251)」を有し、「電極端子中間凹部が電極端子および電極タブ(正極タブ130、負極タブ230)の接合点になり、接合点において、電極タブおよび電極端子は、積層方向に延伸する面同士で接続される」「と共に電極タブはタブの厚さ方向にタブ同士が積層され」たものであるから、甲1発明の「電極端子」は、複数の電極タブと接続されたものであり、本件発明3の「前記複数の集電タブと接続された集電端子」に相当する。
(エ)上記(ア)で述べたように甲1発明の「電極体400」は、「正極100、セパレータ300、負極200が積層されて」構成されており、甲1発明の「外装体700」は、「電極、セパレータ300、電極タブ、電極端子、シーラント剤500を収納」するから、甲1発明の「外装体700」は、電極体400および電極タブを収納するものであり、本件発明3の「前記電極体および前記複数の集電タブを収納するラミネートフィルム」とは、「前記電極体および前記複数の集電タブを収納する」「外装」である点では一致する。
ただし、外装が、本件発明3は「ラミネートフィルム」であるのに対して、甲1発明はその旨特定されていない点で相違する。
(オ)上記(ア)ないし(エ)での対比を考慮すれば、甲1発明の「積層型二次電池1000」は本件発明3の「電池」に相当する。
(カ)甲1発明は「正極タブ130は電極体400の積層方向と直交する方向である電極体400の側面方向に電極体400の外部に導出され、正極タブ130は折り曲げられており、折り曲げられた正極タブ130は積層方向に延伸し」、「負極タブ230」は「正極タブ130と同様」のものである。
また、甲1発明は「電極端子中間凹部が電極端子および電極タブ(正極タブ130、負極タブ230)の接合点になり、接合点において、電極タブおよび電極端子は、積層方向に延伸する面同士で接続される」ものである。
してみると、甲1発明の「電極タブ」は、電極体400の外部に導出される部分と、電極端子と接続される積層方向に延伸する部分と、折り曲げられた部分とを有するものであり、甲1発明の上記「電極体400の外部に導出される部分」は本件発明3の「前記電極体側の端部である根元部」に、甲1発明の上記「電極端子と接続される積層方向に延伸する部分」は本件発明3の「前記集電端子と接続するための接続部」に、甲1発明の上記「折り曲げられた部分」は本件発明3の「前記根元部および前記接続部を結ぶ中間部」にそれぞれ相当する。
したがって、甲1発明の「電極タブ」は、本件発明3の「前記集電タブは、前記電極体側の端部である根元部と、前記集電端子と接続するための接続部と、前記根元部および前記接続部を結ぶ中間部と、を有」することに相当する構成を有する。
(キ)甲1発明は「電極端子中間凹部が電極端子および電極タブ(正極タブ130、負極タブ230)の接合点になり、接合点において、電極タブおよび電極端子は、積層方向に延伸する面同士で接続される」「と共に電極タブはタブの厚さ方向にタブ同士が積層されて」いるから、甲1発明の「電極タブ」は、電極端子と接続される積層方向に延伸する部分で、タブの厚さ方向にタブ同士が積層されており、このことは、本件発明3の「前記複数の前記集電タブは、それぞれの前記接続部が、厚さ方向に積層された積層接続部を有」することに相当する。
(ク)甲1発明は「電極端子(正極端子150、負極端子250)は、」「電極体400の側面に対向する面、当該面の外縁に沿った側面」「を有する形状であ」る。
甲1発明の「電極端子」の上記「電極体400の側面に対向する面」は本件発明3の「集電端子」の「前記電極体の前記側面部に対向する内面」に、甲1発明の「当該面の外縁に沿った側面」は本件発明3の「前記内面の外縁に沿って配置された側面」にそれぞれ相当し、甲1発明の「電極端子」は、本件発明3の「前記集電端子は、前記電極体の前記側面部に対向する内面と、前記内面の外縁に沿って配置された側面と、を有」することに相当する構成を有する。
(ケ)甲1発明の「電極端子の側面に外装体700が配置され」ることと、本件発明3の「前記集電端子の前記側面に、前記ラミネートフィルムが配置され」ることは、「前記集電端子の前記側面に、」「外装」「が配置され」る点では一致する。
ただし、外装が、本件発明3は「ラミネートフィルム」であるのに対して、甲1発明はその旨特定されていない点で相違する。
(コ)甲1発明は、「接合点において、電極タブおよび電極端子は、積層方向に延伸する面同士で接続されるように、電極端子の電極体400の側面に対向する面に対して電極タブが接続されると共に電極タブはタブの厚さ方向にタブ同士が積層されて」いるから、電極端子の電極体400の側面に対向する面に電極タブの積層方向に延伸する面が接続されており、本件発明3の「前記内面に、前記積層接続部の主面が接合され」ることに相当する。
(サ)甲1発明の「電極端子」は「電極体400の側面方向に設けられ、電極体400の側面に対向する面、当該面の外縁に沿った側面、電極体400の側面に対向する面と反対の面とを有する形状であり」、「電極端子中間凹部(正極端子中間凹部151、負極端子中間凹部251)、電極端子端部凹部(正極端子端部凹部152、負極端子端部凹部252)、電極体400とは反対側に突出する電極端子突出部(正極端子突出部153、負極端子突出部253)を有し」たものである。
ここで、甲1発明の「電極体400」の積層方向の平面視における「電極端子」の「電極体400の側面に対向する面」に該当する端部は、本件発明3の「前記電極体の積層方向の平面視」における「前記集電端子」の「前記内面の位置に該当する第1端部」に、甲1発明の「電極体400」の積層方向の平面視における「電極端子」の「電極体400の側面に対向する面と反対の面」に該当する端部は、本件発明3の「前記第1端部に対向する第2端部」に相当し、甲1発明の「電極端子」のうち「電極体400の側面に対向する面と反対の面から電極体400とは反対側に突出する電極端子突出部(正極端子突出部153、負極端子突出部253)」以外の部分は、本件発明3の「前記電極体の積層方向の平面視において、前記集電端子は、前記内面の位置に該当する第1端部、および、前記第1端部に対向する第2端部を含む基部」に相当し、そして、甲1発明の「電極端子」の「電極体400の側面に対向する面と反対の面から電極体400とは反対側に突出する電極端子突出部(正極端子突出部153、負極端子突出部253)」は、本件発明3の「前記基部から、前記電極体とは反対側に突出する突出部」に相当するとみることができる。
してみると、甲1発明の「電極端子」は、本件発明3の「前記電極体の積層方向の平面視において、前記集電端子は、前記内面の位置に該当する第1端部、および、前記第1端部に対向する第2端部を含む基部と、前記基部から、前記電極体とは反対側に突出する突出部と、を有」することに相当する構成を有する。
(シ)本件発明3は「前記集電端子は、前記突出部として、第1突出部と、第2突出部とを有し、前記電極体の積層方向の平面視において、前記電極体および前記集電端子の対向方向をD1とし、前記D1に直交する方向をD2とし、前記D1に平行であり、かつ、前記D2における前記集電端子の中点を通過する軸をAXとした場合に、前記AXにより区画された前記集電端子の一方の領域に、前記第1突出部が配置され、前記AXにより区画された前記集電端子の他方の領域に、前記第2突出部が配置されている」のに対して、甲1発明はそのような特定を有していない点で相違する。
(ス)したがって、両者は以下の一致点と相違点を有する。
〈一致点〉
「電極体と、
前記電極体の側面部から延在する複数の集電タブと、
前記複数の集電タブと接続された集電端子と、
前記電極体および前記複数の集電タブを収納する外装と、
を有する電池であって、
前記集電タブは、前記電極体側の端部である根元部と、前記集電端子と接続するための接続部と、前記根元部および前記接続部を結ぶ中間部と、を有し、
前記複数の前記集電タブは、それぞれの前記接続部が、厚さ方向に積層された積層接続部を有し、
前記集電端子は、前記電極体の前記側面部に対向する内面と、前記内面の外縁に沿って配置された側面と、を有し、
前記集電端子の前記側面に、前記外装が配置され、
前記内面に、前記積層接続部の主面が接合され、
前記電極体の積層方向の平面視において、前記集電端子は、前記内面の位置に該当する第1端部、および、前記第1端部に対向する第2端部を含む基部と、前記基部から、前記電極体とは反対側に突出する突出部と、を有する、電池。」
〈相違点2〉
外装が、本件発明3は「ラミネートフィルム」であるのに対して、甲1発明はその旨特定されていない点。
〈相違点3〉
本件発明3は「前記集電端子は、前記突出部として、第1突出部と、第2突出部とを有し、前記電極体の積層方向の平面視において、前記電極体および前記集電端子の対向方向をD1とし、前記D1に直交する方向をD2とし、前記D1に平行であり、かつ、前記D2における前記集電端子の中点を通過する軸をAXとした場合に、前記AXにより区画された前記集電端子の一方の領域に、前記第1突出部が配置され、前記AXにより区画された前記集電端子の他方の領域に、前記第2突出部が配置されている」のに対して、甲1発明はそのような特定を有していない点。
イ 判断
事案に鑑み、相違点3について検討する。
本件発明3の相違点3に係る構成は「前記集電端子は、前記突出部として、第1突出部と、第2突出部とを有」することを含むものであるから、本件発明3の「集電端子」は2つの「突出部」を有するものである。
これに対して、甲第3号証の[0058]の記載及び図2によれば、甲第3号証には、二次電池400に突出した形状の正極電極端子51および負極電極端子52を設ける技術が記載されているといえるものの、正極電極端子51および負極電極端子52はそれぞれ異なる電極端子であり、甲第3号証には、1つの電極端子(集電端子)に2つの突出部を設けることは記載も示唆もされていない。
また、甲第2号証には二次電池の外装としてラミネートフィルムを用いることが記載されているものの、甲第2号証には、1つの電極端子(集電端子)に2つの突出部を設けることは記載も示唆もされていない。
したがって、本件発明3の相違点3に係る構成を得ることは、甲第1号証に記載された発明と甲第2、3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易になし得たこととはいえない。
よって、相違点2について検討するまでもなく、本件特許の請求項3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と、甲第2、3号証に記載された発明とに基づき、当業者が容易に発明をすることができたものではなく、本件特許の請求項3に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
(2)本件発明5について
本件の請求項5は請求項3を引用する請求項であり、本件発明5は、本件発明3発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものである。
これに対して、甲第4号証には、本願発明3の上記相違点3に係る構成のうち「前記集電端子は、前記突出部として、第1突出部と、第2突出部とを有」する点について記載も示唆もされていない。
よって、上記本件発明3についての判断と同様の理由により、本件の請求項5に係る発明は、甲第1号証に記載された発明と、甲第2ないし4号証に記載された発明とに基づき、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、本件特許の請求項5に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した異議申立理由によっては、請求項1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。
さらに、他に請求項1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700155