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特許異議申立

2025-700813

審判番号
2025-700813
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2023-534408
登録番号
7645381
請求日
2025年08月08日
審決日
2026年05月25日
公報発行日
2026年09月25日
結論
請求成立(取消)
当事者
  • 【権利者】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
  • 【権利者代理人】飯田 雅人
  • 【権利者代理人】実広 信哉
  • 【異議申立人】中村 絵美
審判長/審判官
  • 審判長 涌井 智則
  • 審判官 畑中 博幸
  • 審判官 ▲高▼橋 真之
分類
P1651.121-ZC (H01M) / P1651.536-ZC (H01M) / P1651.537-ZC (H01M)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7645381号発明「二次電池」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7645381号の請求項5、6、18及び22に係る特許を取り消す。 同請求項1~4、7~17、19~21及び23に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7645381号の請求項1~23に係る特許についての出願は、2022年4月14日(優先権主張2021年4月15日、韓国 2021年11月4日、韓国)を国際出願日とする出願であって、令和7年3月5日にその特許権が設定登録され、令和7年3月13日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和7年8月8日に特許異議申立人 中村絵美(以下、「申立人」という。)により、請求項1~23に係る特許に対する特許異議の申立てがされた。当審は、令和7年12月18日付けで取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者から何らの応答もなかった。 第2 本件発明 特許第7645381号の請求項1~23の特許に係る発明(以下、「本件発明1」~「本件発明23」といい、これらをまとめて「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~23に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 電極組立体と、 前記電極組立体に取り付けられた電極リードと、 内部に前記電極組立体を収容するケースと、 前記ケースの少なくとも一部に形成されたベント領域と、 前記ベント領域に挿入され、炭素数6以上のコモノマー(comonomer)を有する線状低密度ポリエチレンを含むベント部材と、 を含み、 前記ケースは、前記電極組立体を密封するために形成されたシール部を備え、 前記シール部は、シーラント樹脂を含み、 前記ベント部材の炭素数6以上のコモノマーを有する線状低密度ポリエチレンは、前記シーラント樹脂よりも融点が低く、 前記ベント部材は、100℃以上における最大シール強度が6kgf/15mm未満であり、かつ、常温~60℃における最大シール強度が6kgf/15mm以上である、二次電池。 【請求項2】 前記ベント部材は、炭素数6~8のコモノマーを有する線状低密度ポリエチレンを含む、請求項1に記載の二次電池。 【請求項3】 前記ベント部材が、100℃~120℃において溶融されてガスをベントする、請求項1に記載の二次電池。 【請求項4】 前記ベント部材が、1.5atm以上の圧力においてガスをベントする、請求項3に記載の二次電池。 【請求項5】 前記ベント部材は、100℃以上における平均シール強度が4.5kgf/15mm未満である、請求項1に記載の二次電池。 【請求項6】 前記ベント部材は、常温~60℃における平均シール強度が4.5kgf/15mm以上である、請求項1に記載の二次電池。 【請求項7】 前記炭素数6以上のコモノマーを有する線状低密度ポリエチレンが、メタロセン触媒の存在下で重合されたものである、請求項1に記載の二次電池。 【請求項8】 前記炭素数6以上のコモノマーを有する線状低密度ポリエチレン100重量%を基準として、炭素数6以上のコモノマーの含量が15重量%以下である、請求項1に記載の二次電池。 【請求項9】 前記炭素数6以上のコモノマーを有する線状低密度ポリエチレンが、4以下の多分散性指数(Poly Dispersity Index;PDI)を有する、請求項1に記載の二次電池。 【請求項10】 前記シーラント樹脂の結晶化温度と前記炭素数6以上のコモノマーを有する線状低密度ポリエチレンの結晶化温度との差が10℃以下である、請求項1に記載の二次電池。 【請求項11】 前記炭素数6以上のコモノマーを有する線状低密度ポリエチレンの結晶化温度が90℃~115℃である、請求項10に記載の二次電池。 【請求項12】 前記炭素数6以上のコモノマーを有する線状低密度ポリエチレンが、100℃~130℃の融点を有する、請求項1に記載の二次電池。 【請求項13】 前記炭素数6以上のコモノマーを有する線状低密度ポリエチレンの重量平均分子量が、10万g/mol~40万g/molである、請求項1に記載の二次電池。 【請求項14】 前記ベント領域が前記シール部に位置する、請求項1に記載の二次電池。 【請求項15】 前記ベント領域が前記ケースの角部側のシール部に位置する、請求項14に記載の二次電池。 【請求項16】 前記二次電池は、パウチ型二次電池である、請求項1に記載の二次電池。 【請求項17】 前記ベント部材は、100℃~120℃における最大シール強度が6kgf/15mm未満である、請求項1に記載の二次電池。 【請求項18】 前記ベント部材は、100℃~120℃における平均シール強度が4.5kgf/15mm未満である、請求項1に記載の二次電池。 【請求項19】 前記炭素数6以上のコモノマーを有する線状低密度ポリエチレン100重量%を基準として、炭素数6以上のコモノマーの含量が5重量%~15重量%である、請求項1に記載の二次電池。 【請求項20】 前記炭素数6以上のコモノマーを有する線状低密度ポリエチレンが、1~4の多分散性指数(Poly Dispersity Index;PDI)を有する、請求項1に記載の二次電池。 【請求項21】 前記ベント部材は、120℃以上における最大シール強度が3kgf/15mm未満である、請求項1に記載の二次電池。 【請求項22】 前記ベント部材は、120℃以上における平均シール強度が2kgf/15mm未満である、請求項1に記載の二次電池。 【請求項23】 前記電極リードの外面の一部を包み込むように形成され、前記電極リードと前記ケースとの間に介在するリードフィルムをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の二次電池。」 第3 取消理由通知に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 請求項5、6、18及び22に係る特許に対し、当審が令和7年12月18日付けで特許権者に通知した取消理由は、次のとおりである。 1(明確性)本件特許は,特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 記 ●理由1(明確性)について ・請求項5、6、18、22について ア 請求項5、18には「平均シール強度が4.5kgf/15mm未満」との記載があり、請求項6には「平均シール強度が4.5kgf/15mm以上」との記載があり、さらに、請求項22には「平均シール強度が2kgf/15mm未満」との記載がある。 イ これら「平均シール強度」に関し、本件明細書段落【0082】には「最大シール強度は、ケース13が破綻されるときの最大値を意味し、平均シール強度は、最大シール強度が4.5kgf/15mm以上である場合には、4.5kgf/15mmにおいてケース13が8mm分だけ伸びたときの平均値を意味し、最大シール強度が4.5kgf/15mm未満である場合には、最大シール強度においてケース13が8mm分だけ伸びたときの平均値を意味する。」と記載され、段落【0139】にも「最大シール強度は、ケースが破綻されるときの最大値を意味し、平均シール強度は、最大シール強度が4.5kgf/15mm以上である場合には、4.5kgf/ 15mmにおいてケースが8mm分だけ伸びたときの平均値を意味し、最大強度が4.5 kgf/15mm未満である場合には、最大シール強度においてケースが8mm分だけ伸びたときの平均値を意味する。」と記載されている。 ウ 上記イによれば、「平均シール強度」は、「4.5kgf/15mmにおいてケース13が8mm分だけ伸びたときの平均値」又は「最大シール強度においてケース13が8mm分だけ伸びたときの平均値」を意味するものの、そもそも「4.5kgf/15mmにおいて」又は「最大シール強度において」の技術的に意味するところが不明確である。 エ 一方で、上記イによれば、平均シール強度の測定のために印加される力は、「4.5kgf/15mm」なる一定値、もしくは、4.5kgf/15mm未満の「最大シーリング強度」(ケースが破断するときの最大値)なる一定値のいずれかであり、得られる「平均値」も各一定値であると解されるものの、測定結果である表1には、測定のために印加される力を超える4.5kgf/15mm以上の測定値が多く示されており、これら測定値をどのようにして得たのか明らかでない。 オ そうすると、請求項5、6、18、22に記載の「平均シール強度」は、その値をどのようにして得るのかが、明細書の記載を参酌しても明らかでないから、当該請求項の記載は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である。 したがって、本願の請求項5、6、18、22に係る発明は明確でない。 2 当審の判断 当審は令和7年12月18日付けで特許権者に取消理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、特許権者は応答しなかった。 そして、上記の取消理由は妥当なものと認められるので、本件請求項5、6、18及び22に係る特許は、この取消理由によって取り消すべきものである。 第4 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について 1 特許異議申立理由の概要 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由の概要は、次のとおりである。 (1)申立理由1(進歩性欠如) 本件請求項1~23に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の甲第1~5号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1~23に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 [証拠] 甲第1号証:特開2003-242952号公報 甲第2号証:特開2005-103955号公報 甲第3号証:特開2008-293992号公報 甲第4号証:特開2018-60753号公報 甲第5号証:特表2022-518742号公報 (2)申立理由2(サポート要件) 本件発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではないから、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (3)申立理由3(明確性) 本件発明は、明確ではないから、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (4)申立理由4(実施可能要件) 本件特許に係る願書に添付した明細書の発明の詳細な説明には、本件発明について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されているとはいえないから、本件特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 2 甲各号証の記載 (1)甲第1号証 ア 記載事項 甲第1号証の明細書には、図面と共に以下の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付与した。以下、同様。) 「【請求項1】 2つの電極タブを有する電極組立て体と、 可撓性外装フィルムよりなって前記電極タブが突出されるように電極組立て体を包むものであり、融着により接合されるシーリング部を有した外装フィルム容器と、 前記シーリング部に電池から発生した熱によって溶融されることにより破損される安全手段と、を備えてなることを特徴とする2次電池。 【請求項2】 前記安全手段は、低融点の合成樹脂材よりなるテープであることを特徴とする請求項1に記載の2次電池。 【請求項3】 前記テープは、エチレンビニールアセテートと直鎖状の低密度ポリエチレンとポリプロピレンとからなる群から選択された少なくとも一からなることを特徴とする請求項2に記載の2次電池。」 「【0021】 【発明の実施の形態】図1及び図3には、本発明による2次電池の一実施の形態が示してある。 【0022】図面を参照すれば、本発明による2次電池は、各々の集電体に活物質及び添加剤よりなる活物質層が形成された正極板31と、負極板32、及びこれらの間に挟まれて正極板31と負極板32とを絶縁させるセパレータ33が所定の広さに切り取られて交互に積層されるかロール状に巻かれてなる。また、2次電池は、前記各正極板31に電気的に接続された正極タブ34と、前記各負極板32に電気的に接続された負極タブ35とを有する電極組立て体30を備える。 【0023】そして、電極組立て体30は、可撓性素材よりなる外装フィルム容器40に包まれて密封されるが、前記正極タブ34及び負極タブ35は外装フィルム容器40の外部に露出されて電池端子としての役割を果たす。前記外装フィルム容器40は、アルミニウム箔にナイロン、EAA、ポリエチレンフィルムなどがコーティングされてなる。前記容器の材料は前述した実施の形態により限定されず、所定の引張り力を有して前記電極組立て体30と絶縁可能な可撓性材質であれば、いかなるものも採用可能である。 【0024】前記電極組立て体30を包む外装フィルム容器40は、電極組立て体30が安着する安着部42aを有して縁部に第1の接合部41を有した本体部42と、前記本体部42から延び、その縁部に第2の接合部43が設けられて前記第1の接合部41と接合されることにより電極組立て体30が安着する安着部42aを密封するカバー部44とを備える。前記第1及び第2の接合部41及び43は互いに融着されてシーリング部45をなす。 【0025】前記本体部42の第1の接合部41とカバー部44の第2の接合部43との間には、これらと共に融着されるものであり、図4に示されたように、前記外装フィルム容器40より溶融点が相対的に低い材質よりなり、所定の長さを有した安全手段としてのテープ50が挟まれる。前記テープ50は低融点の合成樹脂材よりなるが、この合成樹脂材は、溶融点が60ないし100℃であるエチレンビニールアセテート、溶融点が90ないし120℃である直鎖状の低密度ポリエチレン、溶融点が110ないし180℃であるポリプロピレンよりなる。」 「【0027】そして、電極組立て体30の電極タブ34、35はシーリング部45、すなわち、第1及び第2の接合部41及び43に間に挟まれて電極組立て体30が安着する安着部42aの内部と外部との気密を保持するが、電極タブ34、35と第1及び第2の接合部41及び43との間には気密部材60が挟まれる。前記気密部材60は、前述の如きテープ50よりなる。気密部材60が前述の如きテープ50よりなる場合、テープはその厚み方向の中心部の溶融点が低い必要はない。」 「【0032】 【発明の効果】上述したように、本発明による2次電池は、第1及び第2の接合部の間に溶融点が低いテープを挟んだ状態で融着してシーリング部を形成することにより、電池の異常作動により発生する熱により外装フィルム容器より早く溶融せしめて内部のガスを放出して電池が爆発することを防止できる。」 「【図1】 [図:0001439166000001.jpg] 」 イ 記載された技術事項 上記アより、甲第1号証には次の技術事項が記載されているといえる。 (ア)段落【0022】の記載によれば、甲第1号証には図1に示された2次電池として、「各々の集電体に活物質及び添加剤よりなる活物質層が形成された正極板31と、負極板32、及びこれらの間に挟まれて正極板31と負極板32とを絶縁させるセパレータ33が所定の広さに切り取られて交互に積層されるかロール状に巻かれてな」り、「前記各正極板31に電気的に接続された正極タブ34と、前記各負極板32に電気的に接続された負極タブ35とを有する電極組立て体30を備える」「2次電池」が記載されている。 (イ)段落【0023】の記載によれば、「電極組立て体30は、可撓性素材よりなる外装フィルム容器40に包まれて密封されるが、前記正極タブ34及び負極タブ35は外装フィルム容器40の外部に露出されて電池端子としての役割を果た」し、「外装フィルム容器40は、アルミニウム箔にナイロン、EAA、ポリエチレンフィルムなどがコーティングされてなる」。 (ウ)段落【0024】の記載によれば、「外装フィルム容器40は、電極組立て体30が安着する安着部42aを有して縁部に第1の接合部41を有した本体部42と、前記本体部42から延び、その縁部に第2の接合部43が設けられて前記第1の接合部41と接合されることにより電極組立て体30が安着する安着部42aを密封するカバー部44とを備え」、「第1及び第2の接合部41及び43は互いに融着されてシーリング部45をなす」。 (エ)段落【0025】の記載によれば、「本体部42の第1の接合部41とカバー部44の第2の接合部43との間には、これらと共に融着される」「外装フィルム容器40より溶融点が相対的に低い材質よりなり、所定の長さを有した安全手段としてのテープ50が挟まれる」。 また、【請求項2】、【請求項3】及び段落【0025】によれば、「テープ50は低融点の合成樹脂材よりな」り、「合成樹脂材は、」「溶融点が90ないし120℃である直鎖状の低密度ポリエチレン」「よりなる」。 (オ)段落【0032】の記載によれば、「2次電池」は、「第1及び第2の接合部の間に溶融点が低いテープを挟んだ状態で融着してシーリング部を形成することにより、電池の異常作動により発生する熱により外装フィルム容器より早く溶融せしめて内部のガスを放出して電池が爆発することを防止できる」。 ウ 記載された発明 上記(ア)~(オ)によれば、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「各々の集電体に活物質及び添加剤よりなる活物質層が形成された正極板と、負極板、及びこれらの間に挟まれて正極板と負極板とを絶縁させるセパレータが所定の広さに切り取られて交互に積層されるかロール状に巻かれてなり、前記各正極板に電気的に接続された正極タブと、前記各負極板に電気的に接続された負極タブとを有する電極組立て体を備える2次電池において、 電極組立て体は、可撓性素材よりなる外装フィルム容器に包まれて密封されるが、前記正極タブ及び負極タブは外装フィルム容器の外部に露出されて電池端子としての役割を果たし、 外装フィルム容器は、アルミニウム箔にナイロン、EAA、ポリエチレンフィルムなどがコーティングされてなり、電極組立て体が安着する安着部を有して縁部に第1の接合部を有した本体部と、前記本体部から延び、その縁部に第2の接合部が設けられて前記第1の接合部と接合されることにより電極組立て体が安着する安着部を密封するカバー部とを備え、第1及び第2の接合部は互いに融着されてシーリング部をなし、 本体部の第1の接合部とカバー部の第2の接合部との間には、これらと共に融着される外装フィルム容器より溶融点が相対的に低い材質よりなり、所定の長さを有した安全手段としてのテープが挟まれ、 テープは低融点の合成樹脂材よりなり、合成樹脂材は、溶融点が90ないし120℃である直鎖状の低密度ポリエチレンよりなり、 第1及び第2の接合部の間に溶融点が低いテープを挟んだ状態で融着してシーリング部を形成することにより、電池の異常作動により発生する熱により外装フィルム容器より早く溶融せしめて内部のガスを放出して電池が爆発することを防止できる、 2次電池。」 (2)甲第2号証 ア 記載事項 甲第2号証の明細書には、図面と共に以下の事項が記載されている。 「【0002】 リチウム2次電池、ニッケル水素電池等の2次電池は近年ノート型パソコン等の携帯機器のパワーサプライとして多く使用されるようになった他、車載用パワーサプライトして検討されるようになり、ますますその信頼性が求められる様になってきた。リチウム2次電池の場合は、その構成としてプロピレンカーボネート、ジエチレンカーボネート、エチレンカーボネート、γブチロラクトン等の非水系電解液が使用されており、電池構造の包装材料としては耐蝕性を有する材料が求められる。このような耐蝕性材料として、アルミニウムにポリプロピレンフィルムをラミネートして使用することが提案されている(例えば特許文献1~2参照)。」 「【0006】 本発明の目的は、上記従来の問題点を解消せんとするものであり、二軸配向ポリプロピレン層に熱接着性樹脂層としてメタロセン化合物を触媒としてエチレンとα-オレフィンとを共重合して得られる直鎖状エチレン系共重合体を設けることで、アルミ箔等の金属との接着性に優れ、耐蝕性が良好な金属被覆用フィルム、ならびに、リチウム2次電池用に用いられる金属ラミネートフィルムを提供せんとするものである。 【課題を解決するための手段】 【0007】 上記課題を解決するため、本発明は以下の構成からなる。すなわち、 (1)二軸配向ポリプロピレン層(A)と熱接着性樹脂層(B)が、バインディング層(C)を介して積層されたフィルムであって、熱接着性樹脂層(B)が55~95℃の融点ピークと100~125℃の融点ピークの少なくとも2つの融解ピークを有するエチレン系樹脂からなり、かつ、熱接着性樹脂層(B)の厚みが8~25μmであることを特徴とする耐蝕性金属被覆用ポリプロピレンフィルム。 【0008】 (2)熱接着性樹脂層(B)がメタロセン化合物を触媒としてエチレンとα-オレフィンとを共重合して得られる直鎖状エチレン系共重合体を含有してなることを特徴とする(1)に記載の耐蝕性金属被覆用ポリプロピレンフィルム。 ・・・(中略)・・・。 【0015】 (9)(1)~(8)のいずれか1項に記載の耐蝕性金属被覆用ポリプロピレンの熱接着性樹脂層(B)面と金属箔とが貼り合わされたことを特徴とする金属ラミネートフィルム。 ・・・(中略)・・・。 【0017】 (11)リチウム2次電池の少なくとも一部に用いられることを特徴とする(9)または(10)に記載の金属ラミネートフィルム。 により構成される。 【発明の効果】 【0018】 本発明の耐蝕性金属被覆用フィルムおよび金属箔ラミネートフィルムは、次のような優れた効果を奏し、電池材料として優れている他、金属容器等に好ましく用いることができる。特に、リチウム2次電池等の構成体として、電解液に接触する部位において、使用される材料として好適である。」 「【0032】 本発明の熱接着性樹脂層(B)は、55~95℃の融点ピークと100~125℃の融点ピークの少なくとも2つの融解ピークを有するエチレン系樹脂からなることが必要であり、好ましくは、60~85℃と105~120℃である。すなわち2つ以上の融点ピークを有すると低温で貼り合わせが容易となるばかりか、金属箔等とのラミネート体の温度が上昇した際の接着力を維持することが可能である。特に、2次電池の様に充放電サイクルの中で電池の温度が繰り返し変動する様な場合は金属箔とラミネートフイルムの熱膨張率の差で接着界面にストレスがかかることになるが、低温側に融解ピークを有することでストレス緩和が可能となり、界面剥離の危険性を低減し、優れた耐触性を発揮することができる。ここで、低温側の融点ピークの温度が低すぎるとフイルム粘着性が強まり加工時に問題を生じ均一なラミネートフイルムを得ることが困難になる。一方、低温側の融点ピークが高すぎると初期接着性が悪化したり、前述の熱ストレス緩和性が悪化し、耐触性が損なわれる可能性がある。また、高温側の融点ピークが低すぎるとラミネート体が高温時になった時の接着力に問題を生じ、高すぎると接着強度が不足する恐れがある。ここで、このような複数ピークを有する樹脂構成とするためには、2つの異なる融点を有するエチレン系樹脂をメルトブレンドすることで可能となるが、少なくとも該(B)層には、メタロセン化合物を触媒としてエチレンとα-オレフィンとを共重合して得られる直鎖状エチレン系共重合体(以下「メタロセンポリエチレン」という)を含有することが好ましい。 【0033】 ここでメタロセンポリエチレンとは、例えば、「機能性・環境対応型包装材料の新技術」,シーエムシー出版,2003年4月11日 第1刷、P.20に記載された、日本ポリケム(株)製の「カーネル」グレードのメタロセンポリエチレン群から最適なものを選定することが可能であるが、これに限定されるものでは無い。本発明において、該メタロセンポリエチレンの好ましい例としては、エチレン70~99重量%、より好ましくは80~93重量%と、炭素数が3~12のα-オレフィン30~1重量%、より好ましくは20~7重量%とを、メタロセン化合物の存在下に、高圧イオン重合、気相重合、溶液重合法により製造される密度(JIS K7112、A法)が0.870~0.905g/cm3、より好ましくは0.880~0.903g/cm3 、MFR(JIS K7210、条件4)が2~150g/10分、より好ましくは5~150g/10分のものである。 ・・・(中略)・・・。 【0035】 エチレンと共重合される炭素数が3~12のα-オレフィンとしては、例えばプロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ヘキセン、4-メチルペンテン-1,4-メチルヘキセン-1,4,4-ジメチルペンテン-1、オクタデセン等が挙げられる。これらの中でも1-ヘキセン、1-オクテン、1-ヘプテン、4-メチル-ペンテン-1が好ましい。 ・・・(中略)・・・。 【0037】 かかる好ましいメタロセンポリエチレンを含有させることにより、本発明の耐蝕性金属被覆用ポリプロピレンフィルムにおいては、接着性が向上し、金属箔との密着性および耐蝕性が向上する。また、本発明の金属ラミネートフィルムにおいては、金属箔が腐蝕されにくく、プロピレンカーボネート、ジエチレンカーボネート、エチレンカーボネート、γブチロラクトン等の非水系電解液が使用されたリチウム2次電池などの2次電池用金属ラミネートフィルムとして好適に用いることができる。次に該(B)層の厚みは、8~25μmであることが必要であり、好ましくは10~20μmである。該厚みが薄すぎると接着力が不足し、厚すぎるとブロッキング等の問題を生じる。」 「【図1】 [図:0001439166000002.jpg] 」 イ 記載された技術事項 上記アより、甲第2号証には次の技術事項が記載されているといえる。 (ア)段落【0007】、【0015】及び【0017】によれば、甲第2号証には、二軸配向ポリプロピレン層(A)と熱接着性樹脂層(B)が、バインディング層(C)を介して積層された耐蝕性金属被覆用ポリプロピレンフィルムの熱接着性樹脂層(B)面と金属箔とが貼り合わされたリチウム2次電池用金属ラミネートフィルムが記載されているといえる。 (イ)段落【0007】によれば、熱接着性樹脂層(B)は、55~95℃の融点ピークと100~125℃の融点ピークの少なくとも2つの融解ピークを有する。 (ウ)段落【0008】、【0032】によれば、熱接着性樹脂層(B)は、メタロセン化合物を触媒としてエチレンとα-オレフィンとを共重合して得られる直鎖状エチレン系共重合体を含有している。 (エ)段落【0032】、【0033】によれば、直鎖状エチレン系共重合体は、エチレンと、炭素数が3~12のα-オレフィンとを、メタロセン化合物の存在下に、高圧イオン重合、気相重合、溶液重合法により製造されるものである。 (オ)段落【0035】によれば、炭素数が3~12のα-オレフィンとしては、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ヘプテン、4-メチル-ペンテン-1が好ましい。 (カ)段落【0002】、【0018】及び【0037】によれば、該金属ラミネートフィルムは、非水系電解液が接触する電池構造の包装材料として用いられることは明らかである。 ウ 上記(ア)~(カ)によれば、甲第2号証には、以下の技術(以下、「甲第2号証に記載された技術」という。)が記載されていると認められる。 「二軸配向ポリプロピレン層(A)と熱接着性樹脂層(B)が、バインディング層(C)を介して積層された耐蝕性金属被覆用ポリプロピレンフィルムの熱接着性樹脂層(B)面と金属箔とが貼り合わされたリチウム2次電池用金属ラミネートフィルムであって、熱接着性樹脂層(B)は、55~95℃の融点ピークと100~125℃の融点ピークの少なくとも2つの融解ピークを有するとともに、メタロセン化合物を触媒としてエチレンとα-オレフィンとを共重合して得られる直鎖状エチレン系共重合体を含有し、該直鎖状エチレン系共重合体は、エチレンと、炭素数が3~12のα-オレフィンとを、メタロセン化合物の存在下に、高圧イオン重合、気相重合、溶液重合法により製造されるものであり、該炭素数が3~12のα-オレフィンとしては、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ヘプテン、4-メチル-ペンテン-1が好ましく、非水系電解液が接触する電池構造の包装材料として用いられること。」 (3)甲第3号証 ア 記載事項 甲第3号証の明細書には、以下の事項が記載されている。 「【0015】 本発明の目的は、異常時のガス発生による外装フィルムの膨張時の開放圧力および圧力開放位置を容易かつ確実に設定することのできる、フィルム外装電気デバイスおよびその製造方法を提供することにある。」 「【0054】 フィルム外装電池1においては、好ましい設計上の開放圧力は、大気圧からの上昇分として0.05MPa~1MPaであり、より好ましくは0.1MPa~0.2MPaである。開放圧力が低すぎると、一時的に大電流が流れたり一次的に高温になったりしたときなどの軽微なトラブルでも開放してしまい、フィルム外装電池1が作動しなくなるという不具合を招く。一方、開放圧力が高すぎると、ガス開放部7まで剥離が進行する前に他の部位で開放し、意図しない方向へガスが噴出してしまう危険性が増大する。」 イ 記載された技術事項 上記アより、甲第3号証には、以下の技術(以下、「甲第3号証に記載された技術」という。)が記載されていると認められる。 「異常時のガス発生による外装フィルムの膨張時の開放圧力および圧力開放位置を容易かつ確実に設定することのできる、フィルム外装電気デバイスにおいて、好ましい設計上の開放圧力は、大気圧からの上昇分として0.05MPa~1MPaであり、より好ましくは0.1MPa~0.2MPaであること。」 (4)甲第4号証 ア 記載事項 甲第4号証の明細書には、以下の事項が記載されている。 「【0013】 上記目的を達成するために、本発明は、少なくとも基材層、一方又は両方の面に腐食防止処理層が設けられた金属箔層、接着剤層又は接着性樹脂層、及び、シーラント層がこの順で積層された構造を有する蓄電装置用外装材であって、上記シーラント層が、シングルサイト触媒系ポリプロピレン樹脂を含む、蓄電装置用外装材を提供する。」 「【0110】 シングルサイト触媒系ポリプロピレン樹脂の分子量分布、すなわち、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比であるQ値(Mw/Mn)は、5.5未満であることが好ましく、1.5以上5.5未満であることがより好ましく、1.5以上4.0未満であることが更に好ましい。Q値が5.5未満であると、ヒートシール、成型及びデガッシングヒートシール後の絶縁性をより十分に維持することができる。なお、本明細書において、重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定し、標準ポリスチレンを用いた検量線により換算することで求めたものである。」 イ 記載された技術事項 上記アより、甲第4号証には、以下の技術(以下、「甲第4号証に記載された技術」という。)が記載されていると認められる。 「少なくとも基材層、一方又は両方の面に腐食防止処理層が設けられた金属箔層、接着剤層又は接着性樹脂層、及び、シーラント層がこの順で積層された構造を有する蓄電装置用外装材であって、上記シーラント層が、シングルサイト触媒系ポリプロピレン樹脂を含み、シングルサイト触媒系ポリプロピレン樹脂の分子量分布、すなわち、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比であるQ値(Mw/Mn)は、5.5未満であることが好ましく、1.5以上5.5未満であることがより好ましく、1.5以上4.0未満であることが更に好ましいこと。」 (5)甲第5号証 ア 記載事項 甲第5号証の明細書には、以下の事項が記載されている。 「【0001】 本開示は、包装用途のための金属化ポリエチレンフィルムに関する。」 「【0006】 したがって、本明細書に開示されるのは、ポリエチレンを含む少なくとも1つの層と、金属層と、を備えるフィルムであり、このフィルムは、フィルムの総重量に基づいて、100万分の300重量部(ppm)以下のステアリン酸金属および50ppm以下のステアリン酸を有する。また、本明細書に開示されるのは、ポリエチレンを含む少なくとも1つの層と、金属化の1週間後に少なくとも38ダイン/cmの金属層を含む金属層と、を備えるそのようなフィルムである。さらに、本明細書に開示されるのは、基材に積層されたそのようなフィルムを備える物品である。 ・・(中略)・・・。 【0008】 ポリエチレン含有フィルム層 本明細書に開示されるフィルムは、ポリエチレンを含む少なくとも1つの層を有する。ポリエチレンを含む1つの層が設けられ得る。あるいは、ポリエチレンを含む2つ以上の層が設けられ得る。これらの層は接着して接触している可能性がある。ポリエチレンを含む3つ(または3つ以上)の層が設けられ得る。ポリエチレンを含む3つ(または3つ以上)の層が設けられる場合、金属層に隣接する層は本明細書では第1層と呼ばれ、フィルムの外側の金属層と反対側の層はシーラント層と呼ばれ、第1の層とシーラント層との間の1つまたは複数の層は、1つまたは複数のコア層である。ポリエチレンを含む層が1つしか設けられていない場合、本明細書で第1の層、コア層、またはシーラント層として説明したポリエチレン組成物のいずれかを使用することができる。ポリエチレンを含む層が2つしか設けられていない場合、第1層とコア層、第1層とシーラント層、またはコア層とシーラント層の任意の組み合わせを使用することができる。2つ以上のポリエチレン含有層が設けられる場合、各ポリエチレン含有層は、少なくとも1つの他のポリエチレン含有層に直接隣接する場合があり、または接着剤層または他の中間層を2つ以上のポリエチレン含有層の間に使用することができる。」 「【0042】 フィルムは、単層または3層のブローフィルムに適合したフィーダーを備えた市販の7層ブローフィルムラインで作られている。フィルム幅は400mmである。インラインコロナ処理により、フィルムの表面エネルギーが50ダイン/cmを超える。単層の例では、ブローフィルムの条件を同じに保ち、厚さを50um、ブローアップ率(BUR)を2.3にする。3層の例では、ブローフィルムの条件は例と同じに保たれ、合計の厚さは30um、層の比率は1:3:1(外側:コア:内側)、BURは2.3になる。いくつかの例では、表2に記載されているように、市販の樹脂の一部として提供されるものに加えて、追加の添加剤が導入される。これらの添加剤は、それぞれ前もって配合されたLDPEマスターバッチを介して配合物に混合されている。フィルムはインラインコロナ処理されており、フィルムの表面エネルギーが50ダイン/cmを超える。」 「【表2】 [図:0001439166000003.jpg] 」 表2によれば、実施例3の内側の層にExceed1018MF(90%)が使用されていることが読み取れる。 イ 記載された技術事項 上記アより、甲第5号証には、以下の技術(以下、「甲第5号証に記載された技術」という。)が記載されていると認められる。 「包装用途のための金属化ポリエチレンフィルムであって、フィルムは、ポリエチレンを含む3つ(または3つ以上)の層と、金属層とを備え、該3つの層のうち内側の層にExceed1018MF(90%)を使用すること。」 3 当審の判断 (1)申立理由1(進歩性欠如)について ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 a 本件明細書段落【0044】の記載によれば、本件発明1の「電極組立体」は正極板、負極板、及びセパレータを含み、セパレータを間に挟んで正極板と負極板とがこの順に積層されるものである。 そうすると、甲1発明の「電極組立て体」のうち「各々の集電体に活物質及び添加剤よりなる活物質層が形成された正極板と、負極板、及びこれらの間に挟まれて正極板と負極板とを絶縁させるセパレータが所定の広さに切り取られて交互に積層されるかロール状に巻かれてな」る構成は、本件発明1の「電極組立体」に相当する。 b 甲1発明の「電極組立て体」のうち「前記各正極板に電気的に接続された正極タブと、前記各負極板に電気的に接続された負極タブ」は、本件発明1の「前記電極組立体に取り付けられた電極リード」に相当する。 c 甲1発明は「電極組立て体は、可撓性素材よりなる外装フィルム容器に包まれて密封される」ものであるから、甲1発明の「外装フィルム容器」は電極組立て体を収容しているといえ、本件発明1の「内部に前記電極組立体を収容するケース」に相当する。 d 本件明細書段落【0065】の記載によれば、本件発明1の「ベント領域」はケースの少なくとも一部に形成され、ベント部材が挿入され、熱暴走現象が発生したとき、ベント部材は、特定の方向へのガス排出を誘導して電池の安全性を向上させるものである。 これに対して、甲1発明は「本体部の第1の接合部とカバー部の第2の接合部との間には、これらと共に融着される外装フィルム容器より溶融点が相対的に低い材質よりなり、所定の長さを有した安全手段としてのテープが挟まれ、」「第1及び第2の接合部の間に溶融点が低いテープを挟んだ状態で融着してシーリング部を形成することにより、電池の異常作動により発生する熱により外装フィルム容器より早く溶融せしめて内部のガスを放出して電池が爆発することを防止できる」ものであるから、甲1発明の「安全手段としてのテープ」は、外装フィルム容器の一部である第1及び第2の接合部との間に挟まれる。 そうすると、甲1発明の「安全手段としてのテープ」は本件発明1の「ベント部材」に相当し、甲1発明の外装フィルム容器の一部である「第1及び第2の接合部」の安全手段としてのテープが挟まれる部分は、本件発明1の「前記ケースの少なくとも一部に形成されたベント領域」に相当する。 e 甲1発明の「安全手段としてのテープ」は「低融点の合成樹脂材よりなり、合成樹脂材は、溶融点が90ないし120℃である直鎖状の低密度ポリエチレンよりな」る。 そうすると、上記dの対比を考慮すると、甲1発明の「安全手段としてのテープ」と本件発明1の「ベント部材」とは、「前記ベント領域に挿入され、」「線状低密度ポリエチレンを含むベント部材」である点で共通する。 ただし、線状低密度ポリエチレンに関し、本件発明1では「炭素数6以上のコモノマーを有する」ものであるのに対して、甲1発明ではその旨特定されていない点で相違する。 f 甲1発明は「外装フィルム容器は、」「電極組立て体が安着する安着部を有して縁部に第1の接合部を有した本体部と、前記本体部から延び、その縁部に第2の接合部が設けられて前記第1の接合部と接合されることにより電極組立て体が安着する安着部を密封するカバー部とを備え、第1及び第2の接合部は互いに融着されてシーリング部をな」すものであるから、甲1発明の「外装フィルム容器」は、電極組立て体を密封する第1及び第2の接合部が融着したシーリング部を備えたものであり、本件発明1の「前記ケースは、前記電極組立体を密封するために形成されたシール部を備え」ることに相当する構成を有する。 g 甲1発明は「外装フィルム容器は、アルミニウム箔にナイロン、EAA、ポリエチレンフィルムなどがコーティングされてなり、」「第1及び第2の接合部は互いに融着されてシーリング部をなし、本体部の第1の接合部とカバー部の第2の接合部との間には、これらと共に融着される外装フィルム容器より溶融点が相対的に低い材質よりなり、所定の長さを有した安全手段としてのテープが挟まれ」るから、「外装フィルム容器」の「第1及び第2の接合部」が「シーリング部をな」すための樹脂を含み、「安全手段としてのテープ」は前記樹脂よりも溶融点が低いことは明らかであり、上記e、fの対比を考慮すると、甲1発明と本件発明1とは、「前記シール部は、シーラント樹脂を含み、前記ベント部材」の「線状低密度ポリエチレンは、前記シーラント樹脂よりも融点が低」い点で共通する。 ただし、線状低密度ポリエチレンに関し、本件発明1では「炭素数6以上のコモノマーを有する」ものであるのに対して、甲1発明ではその旨特定されていない点で相違する。 h 本件発明1は「前記ベント部材は、100℃以上における最大シーリング強度が6kgf/15mm未満であり、かつ、常温~60℃における最大シーリング強度が6kgf/15mm以上である」のに対して、甲1発明の「安全手段としてのテープ」のシーリング強度は特定されていない点で相違する。 i 甲1発明の「2次電池」は電極タブを有する電極組立て体、外装フィルム容器、気密部材、安全手段としてのテープを有するものであり、本件発明1の「二次電池」に相当する。 j 上記aないしiより、本件発明1と甲1発明とは、 「電極組立体と、 前記電極組立体に取り付けられた電極リードと、 内部に前記電極組立体を収容するケースと、 前記ケースの少なくとも一部に形成されたベント領域と、 前記ベント領域に挿入され、線状低密度ポリエチレンを含むベント部材と、 を含み、 前記ケースは、前記電極組立体を密封するために形成されたシール部を備え、 前記シール部は、シーラント樹脂を含み、 前記ベント部材の線状低密度ポリエチレンは、前記シーラント樹脂よりも融点が低い、二次電池。」 である点で一致し、次の点で相違する。 〈相違点1〉 線状低密度ポリエチレンが、本件発明1では「炭素数6以上のコモノマーを有する」ものであるのに対して、甲1発明ではその旨特定されていない点。 〈相違点2〉 本件発明1は「前記ベント部材は、100℃以上における最大シーリング強度が6kgf/15mm未満であり、かつ、常温~60℃における最大シーリング強度が6kgf/15mm以上である」のに対して、甲1発明の「安全手段としてのテープ」のシーリング強度は特定されていない点。 (イ)相違点に対する判断 事案に鑑み、相違点2について検討する。 a 上記2(2)ウのとおり、甲第2号証には甲第2号証に記載された技術が記載されているところ、当該技術には、「55~95℃の融点ピークと100~125℃の融点ピークの少なくとも2つの融解ピークを有するとともに」、「直鎖状エチレン系共重合体」を含有する「熱接着性樹脂層(B)」が記載されている。 b しかし、甲第2号証に記載された技術は、「非水系電解液が接触する電池構造の包装材料として用いられる」「リチウム2次電池用金属ラミネートフィルム」に係る技術である。 また、甲第2号証には、電池の異常により内部で発生したガスを外部へ排出するためのベント部材について記載されておらず、まして、ベント部材の最大シール強度について一切記載されていない。 そして、甲1発明に、甲第2号証に記載された技術を適用する理由もないことから、甲第1号証に接した当業者は、甲1発明に甲第2号証に記載された技術を適用することを容易に想到し得ない。 c また、上記2(3)~(5)のとおり、甲第3号証には甲第3号証に記載された技術、甲第4号証には甲第4号証に記載された技術、及び、甲第5号証には甲第5号証に記載された技術が、それぞれ記載されているものの、ガスを排出するためのベンド部材の最大シール強度について一切記載はない。 そうすると、仮に、甲1発明に、甲第3~5号証に記載された技術を適用したとしても、相違点2に係る「前記ベント部材は、100℃以上における最大シーリング強度が6kgf/15mm未満であり、かつ、常温~60℃における最大シーリング強度が6kgf/15mm以上である」との構成を導き出すことはできない。 d したがって、甲1発明に甲第2~5号証に記載された技術を適用して本件発明1の相違点2に係る構成を得ることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 (ウ)異議申立人の主張について a 異議申立人は、異議申立書において、概略次のように主張する。 甲第1号証の安全手段としてのテープ50(溶融点が90ないし120℃である直鎖状の低密度ポリエチレン)に、甲第2号証の熱接着性樹脂層(B)(55~95℃の融点ピークと100~125℃の融点ピークの少なくとも2つの融解ピークを有するエチレン系樹脂)を適用する場合、融点が100℃以下であれば、100℃以上における最大シール強度が6kgf/15mm未満になるといえる。 また、甲第2号証は、熱接着性樹脂層(B)の好適な組成としてメタロセン触媒の存在下で重合された炭素数6のコモノマーを有する線状低密度ポリエチレンを開示していることから、このような線状低密度ポリエチレンを甲第1号証の安全手段(べント部材)に適用すれば、本件特許の実施例1および2のごとく、常温~60℃における最大シール強度が6kgf/15mm以上となる蓋然性が高い。(29頁14行~30頁8行) b 異議申立人の上記主張について検討する。 (a)上記(イ)bのとおり、甲第2号証に記載された技術は、「包装材料として用いられる」「リチウム2次電池用金属ラミネートフィルム」に係る技術であり、甲第2号証には、電池の異常により内部で発生したガスを外部へ排出するためのベント部材について一切記載されていない。また、甲第2号証に記載された技術における「熱接着性樹脂層(B)」を、甲1発明の「安全手段としてのテープ」に適用する理由もない。 そうすると、甲第1号証に接した当業者は、甲1発明に甲第2号証に記載された技術を適用することを容易に想到し得ない。 (b)甲第2号証に記載された技術において、「熱接着性樹脂層(B)」は「55~95℃の融点ピークと100~125℃の融点ピークの少なくとも2つの融解ピークを有する」ものの、そもそも甲第2号証には「熱接着性樹脂層(B)」の常温~60℃における最大シール強度について何等記載されていない。 そして、甲1発明の「安全手段としてのテープ」に該「熱接着性樹脂層(B)」を適用したとしても、この場合、該「安全手段としてのテープ」の常温~60℃の温度範囲における最大シール強度が6kgf/15mm以上であることを裏付ける証拠や合理的な理由も見当たらない。 そうすると、仮に、甲1発明の「安全手段としてのテープ」に該「熱接着性樹脂層(B)」を適用したとしても、常温~60℃の温度範囲における最大シール強度が6kgf/15mm以上であるとは必ずしもいえない。 (c)以上から、異議申立人の上記主張は採用できない。 (エ)小括 よって、その他の相違点について検討するまでもなく、本件の請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~5号証に記載された技術より当業者が容易に発明することができたものではない。 イ 本件発明2ないし23について 本件の請求項2ないし23は、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項であり、本件発明2ないし23は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、本件の請求項2ないし23に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~5号証に記載された技術より当業者が容易に発明することができたものではない。 ウ 申立理由1のまとめ 以上によれば、本件特許の請求項1~23に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 したがって、異議申立人の主張する申立理由1には理由がない。 (2)申立理由2(サポート要件)について ア サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。以下、検討する。 イ 当審の判断 本件明細書の段落【0009】の記載によれば、本件発明の課題は、特定の方向にガス排出を誘導することができて安全性が向上した二次電池を提供することである。 そして 、本件明細書には、二次電池について、本件発明で特定されているとおり、電極リードが取り付けられた電極組立体と、内部に前記電極組立体を収容するケースと、前記電極リードの外面の一部を包み込むように形成され、前記電極リードと前記ケースとの間に介在するリードフィルムと、前記ケースの少なくとも一部に形成されたベント領域と、前記ベント領域に挿入され、炭素数6以上のコモノマー(comonomer)を有する線状低密度ポリエチレンを含むベント部材と、を含み(段落【0041】)、ベント領域にベント部材を挿入することによって、熱暴走現象が生じたとき、ベント部材は、特定の方向にガスの排出を誘導して電池の安全性を向上させることができるという、という効果(段落【0036】、【0065】)を奏することで、発明の課題を解決するものであることが理解できる。 そうすると、本件発明は、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 したがって、本件発明は、サポート要件を満たしている。 ウ 異議申立人の主張 (ア)異議申立人は特許異議申立書において、概略次のように主張している。 a 本件発明1には、「前記べント部材は、100℃以上における最大シール強度が6kgf/mm未満であり、かつ、常温~60℃における最大シール強度が6kgf/15mm以上である」なる記載がある。 しかしながら、本件発明1の記載からは、「常温~60℃」について、「常温」の具体的な温度は不明である。 本件明細書の【0067】の記載から、本件発明1の「常温~60℃」なる記載は、優れたケース13の密封性を有する「正常温度の範囲」と理解することができるが、「正常温度の範囲」の具体的な温度範囲は不明である。(38頁14~27行) b また、本件明細書の【0069】の記載を参照すると、「常温~60℃」は、「電池の正常作動時」の温度と理解することもできる。 ここで、「電池の正常作動時」の温度については、電池の種類によって様々であり、本件明細書【0003】の記載から、本件発明の二次電池は、携帯用機器だけではなく、電気自動車、ハイブリッド電気自動車の使用も想定されていると解されるところ、電気自動車、ハイプリッド電気自動車などの使用環境温度は幅広く、高温側については60℃程度が想定されるが、低温側については-30℃といった温度も想定されているため、これらの自動車に使用される二次電池については、「電池の正常作動時」の温度は、-30℃~60℃という温度も想定されることは技術常識である。 一方、本件明細書の実施例では、「常温」の具体的な温度が開示されておらず、例えば電気自動車、ハイプリッド電気自動車などにおける常温である-30℃から60℃の範囲での最大シーリング強度について測定されていると理解することはできない。 本件発明1に規定されたべント部材は、炭素数6以上のコモノマーを有する直鎖状低密度ポリエチレンを含む部材(樹脂)であり、樹脂は低温で脆くなることについても技術常識である。 例えば-30℃といった低温環境において、べント部材が脆くなると、電池の正常作動時に密封性を確保できるとは考えられない。 そうすると、本件発明1は、電気自動車、ハイプリッド電気自動車などの「常温」において、最大シーリング強度は6kgf/15mm以上にはなり得ず、「特定の方向にガス排出を誘導することができて安全性が向上した二次電池を提供する」という課題を解決できるとはいえない。(38頁下から3行~39頁26行) (イ)異議申立人の上記主張について検討する。 a 一般に、電極組立体を封止する多層フィルム構造のケースについて、23~25℃程度の常温でシール強度を測定することは技術常識(例えば、甲第4号証の段落【0211】、特開2020-107573号公報の段落【0151】、【0190】、特開2019-117702号公報の段落【0122】、特開2017-199514号公報の段落【0137】、特開2012-134049号公報の段落【0020】、【0026】、を参照。)であり、また、本件明細書の段落【0067】に「正常の温度範囲、例えば、常温~60℃においては、ケース13の密封性に優れていながらも、高温、例えば、100℃以上」と記載され、同段落【0136】~【0140】、【表2】には、「常温」、「60℃」、「100℃」、「120℃」の各温度におけるケースのシール強度を測定することが記載されていることからすれば、本件発明の「常温」とは、23~25℃程度であると解するのが自然である。 よって、異議申立人の「常温」の温度が不明であるとする上記(ア)aの主張は採用できない。 b 異議申立人は、「常温~60℃」は、「電池の正常作動時」の温度であると解した上で、電気自動車等に使用される二次電池の「電池の正常作動時」の温度は、-30℃~60℃が想定されるところ、-30℃といった低温環境において、べント部材が脆くなると、電池の正常作動時に密封性を確保できないことから、本件発明は、電気自動車等の「常温」において、「特定の方向にガス排出を誘導することができて安全性が向上した二次電池を提供する」という課題を解決できるとはいえない旨主張する。 しかし、本件明細書には、「常温~60℃」が、電気自動車等の使用環境における「電池の正常作動時」の温度であることは一切記載されておらず、また、本件発明における「常温~60℃」を、そのように限定解釈する理由もないことから、当該主張は前提を欠くものである。 よって、異議申立人の上記(ア)bの主張は採用できない。 エ 申立理由2のまとめ 以上によれば、本件発明は、発明の詳細な説明に記載したものであって、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえない。 したがって、異議申立人の主張する申立理由2は理由がない。 (3)申立理由3(明確性)について ア 明確性の判断基準 特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載のみならず、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、 特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。以下、検討する。 イ 当審の判断 本件発明1~23は前記第2のとおりであって、上記第3で検討した点を除き明確であり、格別、本件発明1~4、7~17、19~21及び22に第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとすべき点は見当たらない。 ウ 異議申立人の主張 (ア)異議申立人は特許異議申立書において、概略次のように主張している。 本件発明1の記載からは、「常温」について、具体的な温度は不明である。 「電池の正常作動時」の温度については、電池の種類によって様々であり、例えば電気自動車、ハイプリッド電気自動車などの使用環境温度は幅広く、高温側については60℃程度が想定されるが、低温側については-30℃といった温度も想定されている。このため、これらの自動車に使用される二次電池については、「電池の正常作動時」の温度は、-30℃~60℃という温度も想定されることは技術常識である。 本件発明1には、「常温」について、具体的な温度が記載されておらず、当業者は、具体的にどの温度までを想定して、最大シーリング強度が6kgf/15mm以上であれば本件発明1の技術的範囲に満たすといえるのか、判断することができない。(39頁下から2行~40頁10行) (イ)異議申立人の上記主張について検討する。 上記(2)ウ(イ)aのとおり、本件発明の「常温」とは、23~25℃程度であると解するのが自然であるから、「常温」について具体的な温度が記載されていないからといって、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとまではいえない。 また、上記(2)ウ(イ)bのとおり、本件明細書には、「常温~60℃」が、電気自動車等の使用環境における「電池の正常作動時」の温度であることは一切記載されておらず、また、本件発明における「常温~60℃」を、そのように限定解釈する理由もない。 よって、異議申立人の上記主張は採用できない。 エ 申立理由3のまとめ 以上によれば、本件発明は、明確であって、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるとはいえない。 したがって、異議申立人の主張する申立理由3は理由がない。 (4)申立理由4(実施可能要件)について ア 実施可能要件の判断基準 発明の詳細な説明の記載が実施可能要件を満たすというためには、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、当業者が過度の試行錯誤を要することなく、その発明を実施することができる程度の記載があることを要する。以下、検討する。 イ 当審の判断 本件明細書の発明の詳細な説明の段落【0111】~【0116】には、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate)/アルミニウム箔/ポリプロピレン樹脂がこの順に積層された上部パウチと下部パウチをポリプロピレン樹脂が対向するように配置した後、正極/セパレーター/負極がこの順に積層された電極組立体を収容し、次いで、前記ポリプロピレン樹脂の間にメタロセン触媒の存在下で重合された炭素数6又は8のコモノマーを有する線状低密度ポリエチレンを含むベント部材を挿入した後、熱融着させて二次電池を製造した実施例1~3が記載され、同段落【0117】~【0019】には、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate)/アルミニウム箔/ポリプロピレン樹脂がこの順に積層された上部パウチと下部パウチをポリプロピレン樹脂が対向するように配置した後、正極/セパレーター/負極がこの順に積層された電極組立体を収容し、次いで、前記ポリプロピレン樹脂を熱融着させて二次電池を製造した比較例1が記載されている。 そして、同段落【0127】、【0135】の【表1】によれば、実施例1~3の各ベント部材に用いられたベント樹脂の融点が、「119℃」、「119℃」、「120℃」であるのに対し、比較例1に用いられたシーラント樹脂の融点が「160℃」であることが記載されており、各ベント部材は、シーラント樹脂よりも融点が低いといえる。 さらに、同段落【0136】~【0139】、【0140】の【表2】によれば、実施例1~3の各ベント部材の常温での最大シール強度は、「11.1kgf/15mm」、「14.6/15mm」、「13.8kgf/15mm」であり、60℃での最大シール強度は、「7.2kgf/15mm」、「13.3kgf/15mm」、「10.0kgf/15mm」であり、「6kgf/15mm以上」の範囲内である。また、実施例1~3の各ベント部材の100℃での最大シール強度は、「1.7kgf/15mm」、「3.6/15mm」、「1.1kgf/15mm」であり、120℃での最大シール強度は、「0.5kgf/15mm」、「0.06kgf/15mm」、「0/06kgf/15mm」であり、「6kgf/15mm未満」の範囲内である。 したがって、本件明細書の発明の詳細な説明には、本件発明の二次電池について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されている。 ウ 異議申立人の主張 (ア)異議申立人は特許異議申立書において、概略次のように主張している。 本件発明1の記載からは、「常温」について、 具体的な温度は不明である。 また、「電池の正常作動時」の温度については、電池の種類によって様々であり、例えば電気自動車、ハイプリッド電気自動車などの使用環境温度は幅広く、高温側については60℃程度が想定されるが、低温側については-30℃といった温度も想定されている。このため、これらの自動車に使用される二次電池については、「電池の正常作動時」の温度は、-30℃~60℃という温度も想定されることは技術常識である。 一方、本件明細書の実施例では、「常温」の具体的な温度が開示されておらず、例えば電気自動車、ハイブリッド電気自動車などにおける常温である-30から60℃の範囲での最大シーリング強度について測定されていると理解することはできない。 そうすると、本件発明1に包含されるあらゆる用途の二次電池に係る発明について、本件明細書の発明の詳細な説明は、本件発明1に係る発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものではなく、実施可能要件を満たしていない。(41頁2~13行) (イ)異議申立人の上記主張について検討する。 上記(2)ウ(イ)aのとおり、本件発明の「常温」とは、23~25℃程度であると解するのが自然であり、また、上記(2)ウ(イ)bのとおり、本件明細書には、「常温~60℃」が、電気自動車等の使用環境における「電池の正常作動時」の温度であることは一切記載されておらず、また、本件発明における「常温~60℃」を、そのように限定解釈する理由もない。 そうすると、異議申立人の主張は前提を欠くことから、採用できない。 エ 申立理由4のまとめ 以上によれば、発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1~23を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであり、本件特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。 したがって、異議申立人の主張する申立理由4は理由がない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、請求項5、6、18及び22に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、取り消すべきものである。 請求項1~4、7~17、19~21、23に係る特許については、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1~4、7~17、19~21、23に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700813

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