特許異議申立
2025-700915
検体回収容器及び検体採取セット
- 審判番号
- 2025-700915
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-162595
- 登録番号
- 7650048
- 請求日
- 2025年09月22日
- 審決日
- 2025年11月11日
- 公報発行日
- 2026年01月30日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】広陵化学工業株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人G-chemical
- 【異議申立人】齊藤 恵美子
- 審判長/審判官
- 審判長 宮澤 浩
- 審判官 松本 隆彦
- 審判官 伊藤 幸仙
- 分類
- P1651.121-Y (G01N) / 標準データ:手続:異議 / 標準データ:651・121-Y (G01N)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)、特許情報標準データ(審判)
事件の表示
特許第7650048号発明「検体回収容器及び検体採取セット」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7650048号の請求項1-8に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7650048号(以下「本件特許」という。)に係る出願(以下「本願」という。)は、令和2年9月28日の特許出願であって、令和7年3月13日にその請求項1-8に係る発明について特許権の設定登録がされ、同年3月24日に特許掲載公報が発行され、その後、請求項1-8に係る特許に対して、令和7年9月22日に特許異議申立人 齋藤恵美子(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされたものである。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1-8に係る発明(それぞれ以下「本件発明1」ないし「本件発明8」という。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1-8に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
検体採取具の検体採取部に付着した検体を回収するための検体回収容器であって、
一端に開口部を有し、他端に底部を有する筒状体であり、
前記筒状体の側面の一部に、筒状体の外部から外力が加えられると内側に変形する絞り部を有し、
前記検体回収容器は、前記筒状体の前記底部に液体保持部を有し、前記絞り部を前記液体保持部側面よりも前記開口部側の筒状体側面に有し、
前記検体回収容器は、側面からみると台形状、正面から見ると柱状となる形状であり、
前記絞り部は、その形状に沿って凸部を備え、
前記検体採取部を前記絞り部の内側で挟み込むことによって、前記検体採取部に付着した検体が絞られる、検体回収容器。
【請求項2】
前記絞り部は、前記筒状体の長軸方向に伸びる一対の楕円形の形状を有する請求項1に記載の検体回収容器。
【請求項3】
筒状体の外部から外力が加えられた際の、前記絞り部における内側への変形度は、絞り部以外の部分における内側への変形度よりも大きい、請求項1又は2のいずれか一項に記載の検体回収容器。
【請求項4】
樹脂成型品である請求項1~3のいずれか一項に記載の検体回収容器。
【請求項5】
前記絞り部は、可撓性材料からなる請求項1~4のいずれか一項に記載の検体回収容器。
【請求項6】
前記可撓性材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、シリコーン系エラストマー、スチレン系エラストマー、及びオレフィン系エラストマーからなる群より選択される少なくとも1つである請求項5に記載の検体回収容器。
【請求項7】
透明又は半透明の材料からなる請求項1~6のいずれか一項に記載の検体回収容器。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の検体回収容器と、前記検体回収容器に挿入され、前記絞り部により検体採取部が絞られる検体採取具とを備える検体採取セット。」
第3 異議申立理由の概要
申立人は、証拠として以下の甲第1号証ないし甲第10号証を提出し、以下の異議申立理由(以下「異議申立理由1及び2」という。)によって、本件発明1ないし8に係る特許を取り消すべきものである旨を主張している。
1.異議申立理由
(1)異議申立理由1.特許法第29条第2項(進歩性違反)について
本件発明1ないし8は、甲第1号証に記載された発明、甲第3号証に記載された事項及び甲第4号証~甲第10号証に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は特許法第113条第2号の規定により取消されるべきである。
(2)異議申立理由2.特許法第29条第2項(進歩性違反)について
本件発明1ないし8は、甲第2号証に記載された発明、甲第3号証に記載された事項及び、甲第1号証及び甲第4号証~甲第10号証に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許は特許法第113条第2号の規定により取消されるべきである。
2.証拠方法
甲第1号証:登録実用新案第3000661号公報
甲第2号証:特開2009-36732号公報
甲第3号証:意匠登録第1492812号公報
甲第4号証:実願昭58-85481号(実開昭59-188853号)のマイクロフィルム
甲第5号証:実願昭62-12348号(実開昭63-122676号)のマイクロフィルム
甲第6号証:特開平10-167247号公報
甲第7号証:特開2019-15597号公報
甲第8号証:特表2017-516980号公報
甲第9号証:国際公開第2016/031899号
甲第10号証:特開2006-138748号公報
第4 異議申立理由についての判断
1.甲第1ないし10号証の記載事項及び甲第1ないし10号証から認定される発明及び技術事項
(1)甲第1号証
本願の出願前である平成6年8月9日に発行された、登録実用新案第3000661号公報(以下「甲1」という。)には、図面とともに次の技術事項が記載されている。(下線は当審が付与した。以下同様。)
ア「【0019】
【実施例】
図1および図2に示される拭き取り検査用容器は本考案の一実施例を示すものであり、高密度ポリエチレンで一体成形された容器本体1と、容器本体の上端開口部を密栓すべく着脱可能に装着されるキャップ2と、キャップに固定される綿棒3とから構成されている。」
イ「【0022】
容器本体1には希釈液6が収容されている。希釈液としては、たとえば0.1%ペプトン加生理食塩水10mlが用いられる。
【0023】
キャップ2の裏面から垂下延長する綿棒3の下端部には綿球4が保持されている。綿球4は希釈液6の液面レベルよりも下方に位置しており、したがって密栓時には希釈液中に浸漬された状態にある。
【0024】
容器本体1は概ね円筒形状をなしているが、その上方における一部が絞り込まれて縮径部5を形成している。この実施例において、縮径部5は対向する一対の面5a、5aを有するものとして示されており、これら面同士の間隔は綿球4の外径よりも若干大きく設定されている。」
ウ「【0026】
使用時には、キャップ2を容器本体1から取り外し、これを上方に引き上げる。綿棒3および綿球4もキャップ2と共に引き上げられるので、希釈液6中に浸漬されていた綿球4は該希釈液の液面上方に引き上げられる。
【0027】
更にキャップ2を上昇させて、綿球4が容器縮径部5を通過する際に、該縮径部5の対向面5a、5aを外方より指でつまんで更に縮径させる。容器本体1は質材料であるポリエチレンで形成されているので、人指で軽微な力を加えることによって容易に変形する。すなわち、縮径部5の対向面5a、5aの間の間隔を綿球4の外径よりも僅かに小さくなるまで縮径させ、綿球4の外周部に絞り込力を加え、綿球4に付着する希釈液6の余剰分を除去することができる。
【0028】
以上のようにして綿球4には適正量の希釈液6が付着した状態となり、この状態の綿球4を用いて検体面を拭き取る。綿球4はキャップ2に固定されているので、キャップ2の外周面を人指で把持することにより、簡易に且つ綿球4の滅菌状態を損なうことなく拭き取り操作することができ、ピンセット等を用いる必要がない。
【0029】
綿球4を用いて拭き取り操作を行った後、再度これを容器本体1に収容して、キャップ2で密栓する。検体面の菌を付着した綿球4は、密栓により希釈液6中に再び浸漬される。次いで、縮径部5の位置にまで綿球4を引き上げて、縮径部の対向面5a、5aを両側から押圧することにより、綿球4に付着する検体が希釈液6中に回収される。好ましくはこの作業を複数回繰り返して行うと、検体の回収を効率良く行うことができる。また、キャップ2を密栓した状態でボトルを激しく振ることにより、所定希釈度に希釈された検液が自動的に調製される。」
エ「【0031】
以上に述べた本考案の実施例は、いずれも、拭き取り検査に必要な要素をすべて有するキットないしアセンブリとして密栓状態且つ滅菌状態で提供されるものであって、これを入手した使用者は直ちに食品微生物等の拭き取り検査を行うことができる。しかしながら本考案の技術的思想はこれに限定されず、前述の実施例における容器本体1に相当するもののみからなる検体回収容器として構成することも可能であり、この実施例が図4に示される。
【0032】
図4に示される拭き取り検査用容器7は、概ね従来の試験管と同様の形状を有するが、その一部に縮径部8を有している。縮径部8は、前述の実施例と同様に一対の対向面を有するものとして形成して良い。この容器7は、好ましくは高密度ポリエチレン等の軟質材料で一体成形され、オートクレーブや放射線等で滅菌される。
【0033】
使用に際しては、容器7内に所定量の希釈液を注入しておき、滅菌された綿棒やガーゼタンポン等を用いて検体を拭き取った後、この綿棒等を容器7に収容するものであるが、縮径部8を通過する際に対向面を押圧する等により、綿棒に付着する検体を効率的に回収することができる。また、図3に示される実施例と同様に、用いる綿棒の外径よりも縮径部8を若干小径に形成しておけば、綿棒を容器7内に収容する際に自動的に絞り取り機能が発揮されることになる。」
オ「【図1】【図2】
[図:0001431176000001.jpg]
」
カ 前記「ア、イ及びオ」より、容器本体1は、「概ね円筒形状をなし、上端に開口部を備え、他端に底部を有する」ことが看てとれる。
キ 上記「アないしカ」より、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「高密度ポリエチレンで一体成形された容器本体1と、容器本体の上端開口部を密栓すべく着脱可能に装着されるキャップ2と、キャップに固定される綿棒3とから構成され、
容器本体1には希釈液6が収容され、容器本体1は概ね円筒形状をなしているが、その上方における一部が絞り込まれて縮径部5を形成しており、
キャップ2の裏面から垂下延長する綿棒3の下端部には綿球4が保持され、綿球4は希釈液6の液面レベルよりも下方に位置しており、したがって密栓時には希釈液中に浸漬された状態にあり、
使用時には、キャップ2を容器本体1から取り外し、これを上方に引き上げ、希釈液6中に浸漬されていた綿球4が該希釈液の液面上方に引き上げられ、更にキャップ2を上昇させて、綿球4が容器縮径部5を通過する際に、該縮径部5の対向面5a、5aを外方より指でつまんで更に縮径させ、縮径部5の対向面5a、5aの間の間隔を綿球4の外径よりも僅かに小さくなるまで縮径させ、綿球4の外周部に絞り込力を加え、綿球4に付着する希釈液6の余剰分を除去して綿球4に適正量の希釈液6が付着した状態とし、この状態の綿球4を用いて検体面を拭き取り、綿球4を用いて拭き取り操作を行った後、再度これを容器本体1に収容して、キャップ2で密栓して、検体面の菌を付着した綿球4を、密栓により希釈液6中に再び浸漬させ、次いで、縮径部5の位置にまで綿球4を引き上げて、縮径部の対向面5a、5aを両側から押圧することにより、綿球4に付着する検体が希釈液6中に回収される、
拭き取り検査用容器、及びそれに用いられる容器本体1に相当するもののみからなる検体回収容器であって、概ね円筒形状をなし、上端に開口部を備え、他端に底部を有する検体回収容器。」
(2)甲第2号証
本願の出願前である平成21年2月19日に公開された、特開2009-36732号公報(以下「甲2」という。)には、図面とともに次の技術事項が記載されている。
ア「【0014】
以下、添付図面を参照しながら本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施の一形態に係る抽出用容器の概略図であり、図2は、図1の抽出用容器の分解斜視図、図3は図1の抽出用容器のA-A矢視縦断面図である。
【0016】
各図を参照して、図示の抽出用容器1は、筒状の容器本体2と、この容器本体2の開口端部20に着脱自在に嵌合する蓋3とを備えている。
【0017】
容器本体2は、樹脂成型品であり、上記開口端部20と、この開口端部20に連続し、検体を抽出する検体抽出液を収容する底部22と、開口端部20および底部22との間に連続する扁平部23とを一体に有する筒状に形成されている。容器本体2の全長は、例えば40mm~45mm程度、開口端部20の内径は、例えば12mm程度のものである。
【0018】
開口端部20は、断面が略真円形に形成された円筒形状を呈している。開口端部20の外周部には、フランジ24が一体に形成されている。開口端部20は、フランジ24を境に底部22側よりも僅かに小径に設定されたスリーブ25を構成しており、このスリーブ25が蓋3の嵌合代を規定する当接部材として機能するようになっている。
【0019】
扁平部23は、一対の平板状部分23aを有している。平板状部分23aは、容器本体2の表裏にて互いに平行に窪んでいる。これら平板状部分23aによって、扁平部23は、横断面が略長方形に絞り込まれた外径を呈している。各平板状部分23aの長辺部分略中央部には、窪み部27が形成されている。窪み部27は、容器本体2を人差し指と親指で把持するのに好適な諸元に設定されている。また、窪み部27を設けることにより、図3に示すように、扁平部23の内壁には、互いに容器本体2の径方向に対向して突出する突出部27aが形成されている。
【0020】
窪み部27と底部22の間の内側壁には、突状部28が形成されている。突状部28は、例えば、3段の階段状、或いは洗濯板状の起伏で構成されており、その頂部には、平板状部分23aの横断面に沿う直線状のエッジ28aが水平に延びている。
【0021】
容器本体2は、全体としては、樹脂製の一体成型品であるが、開口端部20と扁平部23とは、肉厚等を変更することにより、硬さが大きく異なっている。本実施形態では、開口端部20が比較的硬質に仕上げられているのに対し、扁平部23は、弾性変形可能な可撓性の高い材質に仕上げられている。
【0022】
弾性変形可能な素材としては、弾力性と可撓性とを有する素材であって、耐薬性、成形性を有するものであればよく、臭気を伴わないものがより好ましい。具体的には、熱可塑性樹脂、シリコン樹脂、熱可塑性エラストマー等が例示される。これらの樹脂を組み合わせてもよい。
【0023】
熱可塑性樹脂の場合、例えば、オレフィン系樹脂の場合、熱可塑性樹脂エラストマー水素添加スチレン系熱可塑性樹脂エラストマーと組み合わせることで成形性が向上することが知られている。熱可塑性樹脂としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、メタロセン触媒直鎖状低密度ポリエチレン(L-LDPE)等のポリエチレンや、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、EVA等が挙げられる。これらは、2種類以上を組み合わせたポリマーブレンド、ポリマーアロイでもよい。
【0024】
熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系、オレフィン系、ウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、フッ素系、塩化ビニル系等の中から適宜成形性、耐薬品性、環境性、コスト等を考慮して選択されるが、中でもスチレン系、オレフィン系が好ましい。またこれらは、単独で用いてもよいし、複数を組み合わせて、例えば積層する等して用いてもよい。
イ「【0026】
次に、図4以下を参照しながら、本実施形態の使用例について説明する。
【0027】
図4は、検体を採取する例を示す説明図である。また、図5は、検体を採取した検体採取棒から検体を抽出する状態を示す説明図、図6は検体を採取した検体採取棒から検体を抽出する状態を説明するための要部を拡大して示す断面部分略図である。
【0028】
図4の例では、インフルエンザの検体を採取するために、検体採取棒4の先端に付けられた採取部4aを被験者の鼻腔から挿入し、鼻甲介を数回擦るようにして、粘膜表皮を採取する。
【0029】
次いで、図5に示すように、予め検体抽出液が容れてある容器本体2の蓋3を外し、検体を採取した検体採取棒4の先端を開口21から挿入する。このとき、容器本体2を把持している人差し指と親指とで容器本体2の窪み部27を挟み込むことで、図6に示すように容器本体2内に導入された検体採取棒4の採取部4aを突状部28で囲繞し、採取部4aを検体抽出液内でいわば揉みほぐすことにより、操作しやすい状態で検体採取棒4の採取部4aを充分に検体抽出液に浸漬し、検体をより効率よく検体抽出液に抽出することができる。しかも、検体採取棒4に採取された検体を容器本体2内の検体抽出液に抽出する際に、検体採取棒4自身が変位しやすい空間を確保しつつ、採取部4aに突状部28のエッジ28aを近接させて摺接させることが可能になり、より確実に優れた操作性で採取部4aから検体を抽出することができる。」
ウ「【図2】
[図:0001431176000002.jpg]
」
エ「【図3】
[図:0001431176000003.jpg]
」
オ「【図5】【図6】
[図:0001431176000004.jpg]
」
カ 上記「アないしオ」より、甲2には、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
「抽出用容器1は、筒状の容器本体2と、この容器本体2の開口端部20に着脱自在に嵌合する蓋3とを備え、
容器本体2は、樹脂成型品であり、上記開口端部20と、この開口端部20に連続し、検体を抽出する検体抽出液を収容する底部22と、開口端部20および底部22との間に連続する扁平部23とを一体に有する筒状に形成されており、
扁平部23は、一対の平板状部分23aを有し、平板状部分23aは、容器本体2の表裏にて互いに平行に窪んでおり、これら平板状部分23aによって、扁平部23は、横断面が略長方形に絞り込まれた外径を呈し、各平板状部分23aの長辺部分略中央部には、窪み部27が形成され、窪み部27は、容器本体2を人差し指と親指で把持するのに好適な諸元に設定され、窪み部27を設けることにより、扁平部23の内壁には、互いに容器本体2の径方向に対向して突出する突出部27aが形成され、
容器本体2は、全体としては、樹脂製の一体成型品であるが、開口端部20と扁平部23とは、肉厚等を変更することにより、硬さが大きく異なっており、開口端部20が比較的硬質に仕上げられているのに対し、扁平部23は、弾性変形可能な可撓性の高い材質に仕上げられており、
インフルエンザの検体を抽出する際には、
インフルエンザの検体を採取するために、検体採取棒4の先端に付けられた採取部4aを被験者の鼻腔から挿入し、鼻甲介を数回擦るようにして、粘膜表皮を採取し、
次いで、予め検体抽出液が容れてある容器本体2の蓋3を外し、検体を採取した検体採取棒4の先端を開口21から挿入し、このとき、容器本体2を把持している人差し指と親指とで容器本体2の窪み部27を挟み込むことで、容器本体2内に導入された検体採取棒4の採取部4aを突状部28で囲繞し、採取部4aを検体抽出液内でいわば揉みほぐすことにより、操作しやすい状態で検体採取棒4の採取部4aを充分に検体抽出液に浸漬し、検体をより効率よく検体抽出液に抽出することができる、
抽出用容器1。」
(3)甲第3号証
本願の出願前である平成26年3月17日に発行された、意匠登録第1492812号公報以下「甲3」という。)には、図面とともに次の技術事項が記載されている。
ア「【意匠に係る物品の説明】この物品は、人体、環境等から採取した検体から検査対象物質を抽出するための抽出用容器である。抽出部は、偏平形状で、抽出液を排出するためにスクイズし易い形状としている。また、抽出部内面に複数の棒状の突起を水平方向に形成し、容器を軽く押し潰すようにしながら、検体を突起にこすり付けることで抽出を容易にしている。」
イ「【平面図】
[図:0001431176000005.jpg]
」
ウ「【正面図】
[図:0001431176000006.jpg]
」
エ「【右側面図】
[図:0001431176000007.jpg]
」
オ「【A-A断面図】
[図:0001431176000008.jpg]
」
カ「【B-B断面図】
[図:0001431176000009.jpg]
」
キ 前記「アないしカ」より、甲3には次の技術(以下「甲3開示技術」という。)が記載されていると認められる。
「人体、環境等から採取した検体から検査対象物質を抽出するための抽出用容器の抽出部であって、
抽出部は、偏平形状で、抽出液を排出するためにスクイズし易い形状、すなわち正面から見て台形状、右側面から見て柱状、とし、
抽出部内面に複数の棒状の突起を水平方向に形成し、容器を軽く押し潰すようにしながら、検体を突起にこすり付けることで抽出を容易にしている、
抽出部。」
(4)甲第4号証
本願の出願前である昭和59年12月14日に公開された、実願昭58-85481号(実開昭59-188853号)のマイクロフィルム(以下「甲4」という。)には、次の技術が開示されていると認められる(第1,2,7図参照。)。
「押出容器において、内容物を押し出すために容器本体(1)の胴部(2)を変形しやすくするための凹部(3)または凸部(15)を胴部(2)に設ける技術。」
(5)甲第5号証
本願の出願前である昭和63年8月9日に公開された実願昭62-12348号(実開昭63-122676号)のマイクロフィルム(以下「甲5」という。)には、弁付塗布具の動作を示す図面として以下の図面が開示されていると認められる。
「
[図:0001431176000010.jpg]
」
「
[図:0001431176000011.jpg]
」
(6)甲第6号証
本願の出願前である平成10年6月23日に公開された、特開平10-167247号公報(以下「甲6」という。)には、スクイズボトルにおいて、階段状段差11で囲まれた押圧面12からなる押圧釦10を設ける技術が記載されている(【図3】参照。)。
(7)甲第7号証
本願の出願前である平成31年1月31日に公開された、特開2019-15597号公報(以下「甲7」という。)には、拭き取り検査器において、容器本体2の注出部5から検液7を注出可能とする押し込み部14を設け、押し込み部14の周辺の本体側壁9よりも押し込み部14の厚みを薄くすることで、内周側への変形しやすさを確保する技術(段落【0024】参照。)が記載されている。
(8)甲第8号証
本願の出願前である平成29年6月22日に公表された、特表2017-516980号公報(以下「甲8」という。)には、体液等採集デバイスにおいて、採集管20の本体22の壁厚を領域22bで小さくし、穏やかな絞り出し圧力の印加を容易にする技術(段落【0087】参照。)が記載されている。
(9)甲第9号証
本願の出願前である2016年3月3日に国際公開された、国際公開第2016/031899号(以下「甲9」という。)には、検体試験容器の容器基部120が円筒又は下方に向かって僅かに縮径するようにテーパーをかけた形状とする技術(段落[0043]及び図6(b)参照。)が記載されている。
(10)甲第10号証
本願の出願前である平成18年6月1日に公開された、特開2006-138748号公報(以下「甲10」という。)には、検体抽出用容器において、容器の本体1を開口端11から閉止端12にかけて、全体的に先細りになるように形成する技術(段落【0010】参照。)が記載されている。
2.本件発明1の項目分けについて
本件発明1は、前記「第2」に示したとおりであるが、以下の異議申立理由1及び2の検討のために以下のように、構成AないしHに構成分けを行う。
「【請求項1】
A 検体採取具の検体採取部に付着した検体を回収するための検体回収容器であって、
B 一端に開口部を有し、他端に底部を有する筒状体であり、
C 前記筒状体の側面の一部に、筒状体の外部から外力が加えられると内側に変形する絞り部を有し、
D 前記検体回収容器は、前記筒状体の前記底部に液体保持部を有し、前記絞り部を前記液体保持部側面よりも前記開口部側の筒状体側面に有し、
E 前記検体回収容器は、側面からみると台形状、正面から見ると柱状となる形状であり、
F 前記絞り部は、その形状に沿って凸部を備え、
G 前記検体採取部を前記絞り部の内側で挟み込むことによって、前記検体採取部に付着した検体が絞られる、
H 検体回収容器。」
3.<異議申立理由1>特許法第29条第2項(進歩性違反)について
(1)本件発明1と甲1発明との対比・判断について
ア 対比
甲1発明を本件発明1と対比する。
(ア)構成A及び構成Hについて
a 甲1発明の「綿棒3」は、本件発明1の「検体採取具」に相当する。
b 甲1発明の「綿球4」は、本件発明1の「検体採取部」に相当する。
c 甲1発明は、「使用時には、キャップ2を容器本体1から取り外し、これを上方に引き上げ、希釈液6中に浸漬されていた綿球4が該希釈液の液面上方に引き上げられ、更にキャップ2を上昇させて、綿球4が容器縮径部5を通過する際に、該縮径部5の対向面5a、5aを外方より指でつまんで更に縮径させ、縮径部5の対向面5a、5aの間の間隔を綿球4の外径よりも僅かに小さくなるまで縮径させ、綿球4の外周部に絞り込力を加え、綿球4に付着する希釈液6の余剰分を除去して綿球4に適正量の希釈液6が付着した状態とし、この状態の綿球4を用いて検体面を拭き取り、綿球4を用いて拭き取り操作を行った後、再度これを容器本体1に収容して、キャップ2で密栓して、検体面の菌を付着した綿球4を、密栓により希釈液6中に再び浸漬させ、次いで、縮径部5の位置にまで綿球4を引き上げて、縮径部の対向面5a、5aを両側から押圧することにより、綿球4に付着する検体が希釈液6中に回収される」ことから、甲1発明の「容器本体1」は、本件発明1の「検体採取具の検体採取部に付着した検体を回収するための検体回収容器」に相当する。
d 以上のことから、甲1発明は、本件発明1の構成A及び構成Hに相当する構成を備えている。
(イ)構成Bについて
a 甲1発明の「容器本体1に相当するもののみからなる検体回収容器」は、「概ね円筒形状をなし、上端に開口部を備え、他端に底部を有する」ことから、本件発明1の検体回収容器と「一端に開口部を有し、他端に底部を有する筒状体であ」る点で一致する。
b 以上のことから、甲1発明は、本件発明1の構成Bに相当する構成を備えている。
(ウ)構成Cについて
a 甲1発明の「容器本体1」は、「概ね円筒形状をなしているが、その上方における一部が絞り込まれて縮径部5を形成しており」、「綿球4が容器縮径部5を通過する際に、該縮径部5の対向面5a、5aを外方より指でつまんで更に縮径させ、縮径部5の対向面5a、5aの間の間隔を綿球4の外径よりも僅かに小さくなるまで縮径させ、綿球4の外周部に絞り込力を加え」ることができる構造となっていることから、甲1発明の「縮径部5」は、本件発明1の「筒状体の側面の一部に、筒状体の外部から外力が加えられると内側に変形する絞り部」に相当する。
b 以上のことから、甲1発明は、本件発明1の構成Cに相当する構成を備えている。
(エ)構成Dについて
a 甲1発明は、「容器本体1には希釈液6が収容され、容器本体1は概ね円筒形状をなしているが、その上方における一部が絞り込まれて縮径部5を形成してお」ることから、甲1発明と本件発明1とは、「検体回収容器は、」「筒状体の前記底部に液体保持部を有し、」「絞り部を前記液体保持部側面よりも」「開口部側の筒状体側面に有」する点で一致する。
b 以上のことから、甲1発明は、本件発明1の構成Dに相当する構成を備えている。
(オ)構成Eについて
a 甲1発明は、「容器本体1は概ね円筒形状をなしているが、その上方における一部が絞り込まれて縮径部5を形成して」いる形状である。
(カ)構成Fについて
a 甲1発明は、縮径部5には、対向面5a、5aを備えている。
(キ)構成Gについて
a 甲1発明は、「綿球4に付着する希釈液6の余剰分を除去して綿球4に適正量の希釈液6が付着した状態とし、この状態の綿球4を用いて検体面を拭き取り、綿球4を用いて拭き取り操作を行った後、再度これを容器本体1に収容して、キャップ2で密栓して、検体面の菌を付着した綿球4を、密栓により希釈液6中に再び浸漬させ、次いで、縮径部5の位置にまで綿球4を引き上げて、縮径部の対向面5a、5aを両側から押圧することにより、綿球4に付着する検体が希釈液6中に回収される」ことから、甲1発明と本件発明1とは「検体採取部を」「絞り部の内側で挟み込むことによって、」「検体採取部に付着した検体が絞られる」点で一致する。
b 以上のことから、甲1発明は、本件発明1の構成Gに相当する構成を備えている。
以上によれば、本件発明1と甲1発明とは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
A 検体採取具の検体採取部に付着した検体を回収するための検体回収容器であって、
B 一端に開口部を有し、他端に底部を有する筒状体であり、
C 前記筒状体の側面の一部に、筒状体の外部から外力が加えられると内側に変形する絞り部を有し、
D 前記検体回収容器は、前記筒状体の前記底部に液体保持部を有し、前記絞り部を前記液体保持部側面よりも前記開口部側の筒状体側面に有し、
G 前記検体採取部を前記絞り部の内側で挟み込むことによって、前記検体採取部に付着した検体が絞られる、
H 検体回収容器。
(相違点1)構成Eについて
検体回収容器について、本件発明1は、「側面からみると台形状、正面から見ると柱状となる形状であ」るのに対し、甲1発明は、「容器本体1は概ね円筒形状をなしているが、その上方における一部が絞り込まれて縮径部5を形成して」いる点。
(相違点2)構成Fについて
絞り部について、本件発明1は、「その形状に沿って凸部を備え」るのに対し、甲1発明は、縮径部5に対向面5a、5aを備える点。
イ 上記各相違点についての判断
事案に鑑み、相違点1について検討する。
(ア)前記「1.(3)」より、甲3開示技術は、「人体、環境等から採取した検体から検査対象物質を抽出するための抽出用容器の抽出部」を「正面から見て台形状、右側面から見て柱状、と」する技術である。よって、抽出用容器の形状を側面から見ると台形状、正面から見ると柱状となる形状とすることが、本願出願前に公知であると認められる。
(イ)一方、甲1発明の容器本体1は、概ね円筒形状をなしているが、その上方における一部が絞り込まれて縮径部5を形成しており、絞り込まれた縮径部5の対向面5a、5aを外方より指でつまんで更に縮径させ、縮径部5の対向面5a、5aの間の間隔を綿球4の外径よりも僅かに小さくなるまで縮径させることができる形状を採用している。
(ウ)前記「(イ)」に示した容器本体1の形状により、甲1発明の容器本体1は、外見上指でつまんで縮径させる部分(縮径部5の対向面5a、5a)を容易に判断でき、かつ手で触っても縮径させる部分を容易に判断できる形状となっている。また、当該形状により指でつまんで縮径させる場合の容器の変形量を少なくして、指への負担が少なくしている。
(エ)ここで、甲1発明に前記「(ア)」に示した公知の技術を採用した場合は、甲1発明が備える縮径部5をなくすこととなり、前記「(ウ)」に示した縮径部5によりもたらされる特有の効果もなくすこととなるから、甲1発明に前記「(ア)」に示した公知の技術を適用することには、阻害要因がある。したがって、甲1発明の容器本体1の形状として甲3開示技術を適用する動機は見当たらない。
(オ)したがって、甲3に触れた当業者が、甲1発明において、容器本体1の形状を、前記相違点1に係る「側面からみると台形状、正面から見ると柱状となる形状」にすることを、容易になしえたということはできない。
(カ)さらに、甲1発明の縮径部5に甲3開示技術の抽出部を置換適用した場合については、甲1発明の縮径部5のみに、甲3の抽出部を適用することとなるから、甲1発明の容器本体1の形状が「側面からみると台形状、正面から見ると柱状となる形状」とならない。
(キ)そして、検体回収容器の形状について、上記相違点1に係る「側面からみると台形状、正面から見ると柱状となる形状」にすることは、甲2、甲4ないし甲10にも開示も示唆もされていないし、当該形状とすることが仮に本願の出願前において周知の技術であったとしても、甲1発明に当該周知技術を採用する動機も見当たらない。
(ク)そうすると、甲2、甲4ないし甲10を参照しても、上記相違点1の構成が記載されていないのであるから、甲1発明に、甲2、甲4ないし甲10に開示された事項を組み合わせても、上記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとはならず、そして、相違点1の構成にあえてする動機があるともいえない。
ウ 申立人の主張について
(ア)申立人は、令和7年9月22日提出の特許異議申立書(以下「異議申立書」という。)において、上記相違点1について以下の旨主張をしている。
<申立人の主張の要旨>
「本件発明1において、上記相違点1に係る構成を採用した技術的意義は、絞り部の柔軟性を向上し、絞り部以外の部位が変形しにくくすることにあると解される。すなわち、容器表面の指で絞る箇所(絞り部)を容器横断面で見て円柱形状でなく扁平形状にすることにより、容器表面において変形しやすい部位(絞り部)と変形しにくい部位を構成することにあると解される。 甲1発明においても、縮径部の対向面5a、5aの箇所は容器横断面が扁平形状に形成されているといえるから、本件発明1と甲3記載の技術と同様な機能を有するということができる。その上で、甲3には、「人体、環境等から採取した検体から検査対象物質を抽出するための抽出用容器において、抽出部は、側面からみると柱状、正面から見ると略台形の形状を有する偏平形状で、抽出液を排出するためにスクイズし易い形状としている」ことが記載されている。甲3に記載された抽出用容器は、甲1発明の検査用容器と同様に、採取した検体を回収するための容器であるため、両者の技術分野は共通する。また、甲3記載の抽出部は、抽出液を排出するためにスクイズする部分であるのに対し、甲1発明の容器本体1は、「綿球4を縮径部5の内側で挟み込むことによって、綿球4に付着した検体が絞られ」る部分であるため、両者は、挟み込む(スクイズする)という点において機能や課題が共通するといえる。そうすると、甲1発明において、容器本体1を挟み込みやすくするために、容器本体1を甲3記載の抽出部を適用する動機付けがある。よって、上記相違点1に係る本件発明1の構成は、甲1発明及び甲3記載の技術に基づいて、 当業者が容易に想到し得たものといえる。」(異議申立書第54頁第3-27行参照。)
(イ)しかしながら、上記「イ」で説示したとおり、甲1発明に甲3開示技術から導き出される公知技術である「抽出用容器の形状を側面から見ると台形状、正面から見ると柱状となる形状とすること」を適用することには、阻害要因がある。したがって、甲1発明に甲3開示技術を適用する動機は見当たらない。また、検体回収容器の形状について、上記相違点1に係る「側面からみると台形状、正面から見ると柱状となる形状」にすることは、甲2、甲4ないし甲10にも開示も示唆もされていないし、当該形状とすることが仮に本願の出願前において周知の技術であったとしても、甲1発明に当該周知技術を採用する動機も見当たらない。
(ウ)さらに、スクイズする部分としての共通部は、甲1発明の縮径部5と甲3開示技術の抽出部となるから、機能や課題の共通性により甲1発明に甲3開示技術を適用した場合は、甲1発明の縮径部5のみに、甲3の抽出部を適用することとなるから、甲1発明の容器本体1の形状が「側面からみると台形状、正面から見ると柱状となる形状」とならない。
(エ)そして、甲1発明の容器本体1全体に甲3の抽出部を適用するとした場合には、甲1発明の容器本体1全体が抽出部となるため、本件発明1の構成Dの「前記絞り部を前記液体保持部側面よりも前記開口部側の筒状体側面に有し」の構成を失い新たな相違点を生じることとなり、その新たな相違点を埋めるためにさらなる技術を適用することは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
(オ)したがって、上記申立人の主張は採用することができない。
エ 本件発明1の効果について
本件発明1の効果は、「本発明の検体回収容器は、柔軟性(スクイズ性)に富むことから、多数の検体を検査する場合であっても指を痛めにくく、また、指で絞った(スクイズした)場合であっても回収溶液があふれ出すことがない」(段落【0018】参照。)というものであり、上記相違点1及び2に係る発明特定事項を備えることにより、「絞り部4の柔軟性を向上し、且つ絞り部4を指で絞った際に容器1の絞り部以外の部位が変形しにくく、回収溶液が容器1からあふれ出すことがない」(段落【0036】参照。)及び「容器を把持する使用者の指が滑りにくくなるとともに、一見して絞り部の位置が認識することが可能となる」(段落【0039】参照。)と認められることから、甲1ないし甲10に記載された発明及び周知技術から当業者が予測しうる程度の効果にすぎないということはできない。
オ 小括
以上のことから、相違点2について論ずるまでもなく本件発明1は甲1発明、並びに甲2ないし甲10に開示された技術又は周知技術から、当業者が容易になしえたことであるとはいえない。
(2)本件発明2ないし8について
本件発明2ないし8は、本件特許の請求項1を直接又は間接的に引用する発明であり、甲1発明とは、上記相違点1及び2で少なくとも相違する。
相違点1については、上記「(1)イ」で検討したとおりであるから、本件発明2ないし8についても、上記「(1)」と同じ理由により、甲1発明、並びに甲2ないし甲10に開示された技術又は周知技術から、当業者が容易になしえたことであるとはいえない。
(3)小括
以上のことから、本件発明1ないし8を、甲1発明、並びに甲2ないし甲10に開示された技術又は周知技術から、当業者が容易に発明をすることができたとはいえないから、申立人の特許法第29条第2項についての異議申立理由は、理由がない。
4.<異議申立理由2>特許法第29条第2項(進歩性違反)について(1)本件発明1と甲2発明との対比・判断について
ア 対比
甲2発明を本件発明1と対比する。
(ア)構成A及び構成Hについて
a 甲2発明の「検体採取棒4」は、本件発明1の「検体採取具」に相当する。
b 甲2発明の「採取部4a」は、本件発明1の「検体採取部」に相当する。
c 甲2発明は、「インフルエンザの検体を抽出する際には、インフルエンザの検体を採取するために、検体採取棒4の先端に付けられた採取部4aを被験者の鼻腔から挿入し、鼻甲介を数回擦るようにして、粘膜表皮を採取し、次いで、予め検体抽出液が容れてある容器本体2の蓋3を外し、検体を採取した検体採取棒4の先端を開口21から挿入し、このとき、容器本体2を把持している人差し指と親指とで容器本体2の窪み部27を挟み込むことで、容器本体2内に導入された検体採取棒4の採取部4aを突状部28で囲繞し、採取部4aを検体抽出液内でいわば揉みほぐすことにより、操作しやすい状態で検体採取棒4の採取部4aを充分に検体抽出液に浸漬し、検体をより効率よく検体抽出液に抽出することができる」ことから、甲2発明の「容器本体2」は、本件発明1の「検体採取具の検体採取部に付着した検体を回収するための検体回収容器」に相当する。
d 以上のことから、甲2発明は、本件発明1の構成A及び構成Hに相当する構成を備えている。
(イ)構成Bについて
a 甲2発明の「筒状の容器本体2」は、「上記開口端部20と、この開口端部20に連続し、検体を抽出する検体抽出液を収容する底部22と、開口端部20および底部22との間に連続する扁平部23とを一体に有する筒状に形成されて」いることから、本件発明1の検体回収容器と「一端に開口部を有し、他端に底部を有する筒状体であ」る点で一致する。
b 以上のことから、甲2発明は、本件発明1の構成Bに相当する構成を備えている。
(ウ)構成Cについて
a 甲2発明の「容器本体1」の「開口端部20および底部22との間に連続する扁平部23」は、「一対の平板状部分23aを有し、平板状部分23aは、容器本体2の表裏にて互いに平行に窪んでおり、これら平板状部分23aによって、扁平部23は、横断面が略長方形に絞り込まれた外径を呈し、各平板状部分23aの長辺部分略中央部には、窪み部27が形成され、窪み部27は、容器本体2を人差し指と親指で把持するのに好適な諸元に設定され、窪み部27を設けることにより、扁平部23の内壁には、互いに容器本体2の径方向に対向して突出する突出部27aが形成され」、「容器本体2を把持している人差し指と親指とで容器本体2の窪み部27を挟み込むことで、容器本体2内に導入された検体採取棒4の採取部4aを突状部28で囲繞し、採取部4aを検体抽出液内でいわば揉みほぐすことにより、操作しやすい状態で検体採取棒4の採取部4aを充分に検体抽出液に浸漬し、検体をより効率よく検体抽出液に抽出することができる」構造となっていることから、甲2発明の「容器本体2」の「扁平部23」の「窪み部27」は、本件発明1の「筒状体の側面の一部に、筒状体の外部から外力が加えられると内側に変形する絞り部」に相当する。
b 以上のことから、甲2発明は、本件発明1の構成Cに相当する構成を備えている。
(エ)構成Dについて
a 甲2発明は、「容器本体2は、樹脂成型品であり、上記開口端部20と、この開口端部20に連続し、検体を抽出する検体抽出液を収容する底部22と、開口端部20および底部22との間に連続する扁平部23とを一体に有する筒状に形成されてお」り、「扁平部23」に「窪み部27」を備えることから、甲2発明と本件発明1とは、「検体回収容器は、」「筒状体の前記底部に液体保持部を有し、」「絞り部を前記液体保持部側面よりも」「開口部側の筒状体側面に有」する点で一致する。
b 以上のことから、甲2発明は、本件発明1の構成Dに相当する構成を備えている。
(オ)構成Eについて
a 甲2発明は、「容器本体2は、樹脂成型品であり、上記開口端部20と、この開口端部20に連続し、検体を抽出する検体抽出液を収容する底部22と、開口端部20および底部22との間に連続する扁平部23とを一体に有する筒状に形成されて」おり、「扁平部23は、一対の平板状部分23aを有し、平板状部分23aは、容器本体2の表裏にて互いに平行に窪んでおり、これら平板状部分23aによって、扁平部23は、横断面が略長方形に絞り込まれた外径を呈し、各平板状部分23aの長辺部分略中央部には、窪み部27が形成され、窪み部27は、容器本体2を人差し指と親指で把持するのに好適な諸元に設定され」ている形状である。
(カ)構成Fについて
a 甲2発明は、「扁平部23は、一対の平板状部分23aを有し、平板状部分23aは、容器本体2の表裏にて互いに平行に窪んでおり、これら平板状部分23aによって、扁平部23は、横断面が略長方形に絞り込まれた外径を呈し、各平板状部分23aの長辺部分略中央部には、窪み部27が形成され、窪み部27は、容器本体2を人差し指と親指で把持するのに好適な諸元に設定され」ている。
(キ)構成Gについて
a 甲2発明は、「インフルエンザの検体を抽出する際には、インフルエンザの検体を採取するために、検体採取棒4の先端に付けられた採取部4aを被験者の鼻腔から挿入し、鼻甲介を数回擦るようにして、粘膜表皮を採取し、次いで、予め検体抽出液が容れてある容器本体2の蓋3を外し、検体を採取した検体採取棒4の先端を開口21から挿入し、このとき、容器本体2を把持している人差し指と親指とで容器本体2の窪み部27を挟み込むことで、容器本体2内に導入された検体採取棒4の採取部4aを突状部28で囲繞し、採取部4aを検体抽出液内でいわば揉みほぐすことにより、操作しやすい状態で検体採取棒4の採取部4aを充分に検体抽出液に浸漬し、検体をより効率よく検体抽出液に抽出することができる」ことから、甲2発明と本件発明1とは「検体採取部を」「絞り部の内側で挟み込むことによって、」「検体採取部に付着した検体が絞られる」点で一致する。
b 以上のことから、甲2発明は、本件発明1の構成Gに相当する構成を備えている。
以上によれば、本件発明1と甲2発明とは、次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
A 検体採取具の検体採取部に付着した検体を回収するための検体回収容器であって、
B 一端に開口部を有し、他端に底部を有する筒状体であり、
C 前記筒状体の側面の一部に、筒状体の外部から外力が加えられると内側に変形する絞り部を有し、
D 前記検体回収容器は、前記筒状体の前記底部に液体保持部を有し、前記絞り部を前記液体保持部側面よりも前記開口部側の筒状体側面に有し、
G 前記検体採取部を前記絞り部の内側で挟み込むことによって、前記検体採取部に付着した検体が絞られる、
H 検体回収容器。
(相違点3)構成Eについて
検体回収容器について、本件発明1は、「側面からみると台形状、正面から見ると柱状となる形状であ」るのに対し、甲2発明は、「容器本体2は」「開口端部20および底部22との間に連続する扁平部23とを一体に有する筒状に形成されており、」「扁平部23は、一対の平板状部分23aを有し、平板状部分23aは、容器本体2の表裏にて互いに平行に窪んでおり、これら平板状部分23aによって、扁平部23は、横断面が略長方形に絞り込まれた外径を呈し、各平板状部分23aの長辺部分略中央部には、窪み部27が形成され、窪み部27は、容器本体2を人差し指と親指で把持するのに好適な諸元に設定され」ている点。
(相違点4)構成Fについて
絞り部について、本件発明1は、「その形状に沿って凸部を備え」るのに対し、甲2発明は、「扁平部23は、一対の平板状部分23aを有し、平板状部分23aは、容器本体2の表裏にて互いに平行に窪んでおり、これら平板状部分23aによって、扁平部23は、横断面が略長方形に絞り込まれた外径を呈し、各平板状部分23aの長辺部分略中央部には、窪み部27が形成され、窪み部27は、容器本体2を人差し指と親指で把持するのに好適な諸元に設定され」ている点。
イ 上記各相違点についての判断
事案に鑑み、相違点3について検討する。
(ア)前記「1.(3)」より、甲3開示技術は、「人体、環境等から採取した検体から検査対象物質を抽出するための抽出用容器の抽出部」を「正面から見て台形状、右側面から見て柱状、と」する技術である。よって、抽出用容器の形状を側面から見ると台形状、正面から見ると柱状となる形状とすることが、本願出願前に公知であると認められる。
(イ)一方、甲2発明の容器本体2は、筒状に形成されているが、開口端部20および底部22との間に連続する扁平部23を備え、当該扁平部23が備える一対の平板状部分23aの長辺部分略中央部にある窪み部27を人差し指と親指で挟み込むことで、容器本体2内に導入された検体採取棒4の採取部4aを突状部28で囲繞し、採取部4aを検体抽出液内でいわば揉みほぐすことができる形状を採用している。また、甲2発明の窪み部27は容器本体2を人差し指と親指で把持するのに好適な諸元に設定されていることから、容器本体2を把持しやすい形状及び採取部4aをもみほぐすことができる形状とされていると認められる。
(ウ)前記「(イ)」に示した容器本体2の形状により、甲2発明の容器本体2は、外見上指でつまんで縮径させる部分(窪み部27)を容易に判断でき、かつ手で触っても縮径させる部分を容易に判断できる形状となっている。
(エ)ここで、甲2発明に前記「(ア)」に示した公知の技術を採用した場合は、甲2発明が備える扁平部23の平板状部分23a及び窪み部27をなくすこととなり、前記「(ウ)」に示した窪み部27によりもたらされる特有の効果もなくすこととなるから、甲2発明に前記「(ア)」に示した公知の技術を適用することには、阻害要因がある。したがって、甲2発明の容器本体2の形状として甲3開示技術を適用する動機は見当たらない。
(オ)したがって、甲3に触れた当業者が、甲2発明において、容器本体2の形状を、前記相違点1に係る「側面からみると台形状、正面から見ると柱状となる形状」にすることを、容易になしえたということはできない。
(カ)さらに、甲2発明の窪み部27に甲3開示技術の抽出部を置換適用した場合については、甲2発明の窪み部27のみに、甲3の抽出部を適用することとなるから、甲2発明の容器本体2の形状が「側面からみると台形状、正面から見ると柱状となる形状」とならない。
(キ)そして、検体回収容器の形状について、上記相違点3に係る「側面からみると台形状、正面から見ると柱状となる形状」にすることは、甲1、甲4ないし甲10にも開示も示唆もされていないし、当該形状とすることが仮に本願の出願前において周知の技術であったとしても、甲2発明に当該周知技術を採用する動機も見当たらない。
(ク)そうすると、甲1、甲4ないし甲10を参照しても、上記相違点3の構成が記載されていないのであるから、甲2発明に、甲1、甲4ないし甲10に開示された事項を組み合わせても、上記相違点3に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとはならず、そして、相違点3の構成にあえてする動機があるともいえない。
ウ 申立人の主張について
(ア)申立人は、異議申立書において、上記相違点3(異議申立書における相違点7に相当)について以下の旨主張をしている。
<申立人の主張の要旨>
「本件特許発明1において、上記相違点7に係る構成を採用した技術的意義は、絞り部の柔軟性を向上し、絞り部以外の部位が変形しにくくすることにあると解される。すなわち、容器表面の指で絞る箇所(絞り部)を容器横断面で見て円柱形状でなく扁平形状にすることにより、容器表面において変形しやすい部位(絞り部)と変形しにくい部位を構成することにあると解される。甲2発明においても、窪み部27の箇所は容器横断面が扁平形状に形成されているといえるから、本件特許発明1と以下に示す甲第3号証記載の技術と同様な機能を有するということができる。その上で、甲第3号証には、「人体、環境等から採取した検体から検査対象物質を抽出するための抽出用容器において、抽出部は、側面からみると柱状、正面から見ると略台形の形状を有する偏平形状で、抽出液を排出するためにスクイズし易い形状としている」こと(摘記3g)が記載されている。甲第3号証に記載された抽出用容器は、甲2発明の検査用容器と同様に、採取した検体を回収するための容器であるため、両者の技術分野は共通する。また、甲第3号証に記載の抽出部は、抽出液を排出するためにスクイズする部分(摘記3g)であるのに対し、甲2発明の容器本体2は、「窪み部27を挟み込むことで、採取部4aを検体抽出液内で揉みほぐして、採取部4aに採取された検体が検体抽出液に抽出され」る部分(甲2発明の要件f2)であるため、 両者は、揉みほぐす(スクイズする)という点において機能や課題が共通するといえる。そうすると、甲2発明において、容器本体2を揉みほぐしやすくするために、容器本体2を甲第3号証に記載の抽出部を適用する動機付けがある。よって、上記相違点7に係る本件特許発明1の構成は、甲2発明及び甲3記載の技術に基づいて、当業者が容易に想到し得たものといえる。」(異議申立書第67頁第19行-第68頁第15行参照。)
(イ)しかしながら、上記「イ」で説示したとおり、甲2発明に甲3開示技術から導き出される公知技術である「抽出用容器の形状を側面から見ると台形状、正面から見ると柱状となる形状とすること」を適用することには、阻害要因がある。したがって、甲2発明に甲3開示技術を適用する動機は見当たらない。また、検体回収容器の形状について、上記相違点3に係る「側面からみると台形状、正面から見ると柱状となる形状」にすることは、甲1、甲4ないし甲10にも開示も示唆もされていないし、当該形状とすることが仮に本願の出願前において周知の技術であったとしても、甲2発明に当該周知技術を採用する動機も見当たらない。
(ウ)さらに、スクイズする部分としての共通部は、甲2発明の窪み部27と甲3開示技術の抽出部となるから、機能や課題の共通性により甲2発明に甲3開示技術を適用した場合は、甲2発明の窪み部27のみに、甲3の抽出部を適用することとなるから、甲2発明の容器本体2の形状が「側面からみると台形状、正面から見ると柱状となる形状」とならない。
(エ)そして、甲2発明の容器本体2全体に甲3の抽出部を適用するとした場合には、甲2発明の容器本体2全体が抽出部となるため、本件発明1の構成Dの「前記絞り部を前記液体保持部側面よりも前記開口部側の筒状体側面に有し」の構成を失い新たな相違点を生じることとなり、その新たな相違点を埋めるためにさらなる技術を適用することは、当業者が容易になし得たことであるとはいえない。
(オ)したがって、上記申立人の主張は採用することができない。
エ 本件発明1の効果について
本件発明1の効果については、前記「3.(1)エ」で説示したとおりであり、甲1ないし甲10に記載された発明及び周知技術から当業者が予測しうる程度の効果にすぎないということはできない。
オ 小括
以上のことから、相違点4について論ずるまでもなく本件発明1は、甲2発明、並びに甲1、甲3ないし甲10に開示された技術又は周知技術から、当業者が容易になしえたことであるとはいえない。
(2)本件発明2ないし8について
本件発明2ないし8は、本件特許の請求項1を直接又は間接的に引用する発明であり、甲2発明とは、上記相違点3及び4で少なくとも相違する。
相違点3については、上記「(1)イ」で検討したとおりであるから、本件発明2ないし8についても、上記「(1)」と同じ理由により、甲2発明、並びに甲1、甲3ないし甲10に開示された技術又は周知技術から、当業者が容易になしえたことであるとはいえない。
(3)小括
以上のことから、本件発明1ないし8を、甲2発明、並びに甲1、甲3ないし甲10に開示された技術又は周知技術から、当業者が容易に発明をすることができたとはいえないから、申立人の特許法第29条第2項についての異議申立理由は、理由がない。
5.まとめ
以上のとおりであるので、上記「第3」に示した異議申立理由1及び2は、いずれも理由がない。
第5 むすび
以上のとおり、申立人が特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1ないし8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1ないし8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2025-700915