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特許異議申立

2025-700204

親魚の産卵管理装置

審判番号
2025-700204
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2020-136868
登録番号
7535776
請求日
2025年02月18日
審決日
2026年02月05日
公報発行日
2026年03月27日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】株式会社クラハシ
  • 【権利者代理人】溝口 督生
  • 【異議申立人】齊藤 恵美子
審判長/審判官
  • 審判長 有家 秀郎
  • 審判官 立澤 正樹
  • 審判官 藏田 敦之
分類
P1651.113-Y (A01K) / P1651.121-Y (A01K) / P1651.536-Y (A01K) / P1651.537-Y (A01K)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条、特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7535776号発明「親魚の産卵管理装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7535776号の請求項1~7に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7535776号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~7に係る特許についての出願は、令和2年8月14日に出願された出願であって、令和6年8月8日にその特許権の設定登録がされ、同月19日に特許掲載公報が発行された。 その後、令和7年2月18日に、特許異議申立人 齊藤 恵美子(以下「申立人」という。)により、請求項1~7に係る特許に対して、特許異議の申立てがされた。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~7の特許に係る発明(以下、請求項番号により「本件発明1」等といい、まとめて「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 親魚と育成水を収容可能な収容容器と、 前記育成水の温度を制御する温度制御部と、 前記収容容器へ照射する光照射を制御する光照射制御部と、 前記親魚の産卵期間および非産卵期間の少なくとも一つを制御する期間制御部を備え、 前記温度制御部は、前記育成水の温度の範囲を示す温度帯域および前記育成水の温度の変化を示す温度変化の少なくとも一方に基づいて、前記育成水の温度を制御し、 前記期間制御部は、前記温度帯域、前記温度変化および前記光照射の少なくとも一つに基づいて、前記産卵期間および非産卵期間の少なくとも一つの期間を制御し、 前記温度帯域は、 雌の親魚が実際に産卵可能な温度帯域である産卵可能温度帯域よりも狭い温度帯域である産卵温度帯域と、 前記産卵温度帯域の下限より低い所定の温度以下の温度帯域である休養温度帯域と、 雄の親魚が射精可能な射精温度帯域と、 産卵された卵が受精可能な受精温度帯域と、 を含み、 前記産卵期間において、 前記温度制御部が、前記育成水を、前記受精温度帯域に制御することで、受精卵を生成可能とできる、近海魚である親魚の産卵管理装置。 【請求項2】 前記期間制御部は、 前記温度制御部において、前記育成水を前記休養温度帯域に制御させ、 前記光照射制御部において、1日当たりの光照射時間を第1時間以下とさせる、 ことで、前記非産卵期間を生じさせる、請求項1記載の親魚の産卵管理装置。 【請求項3】 前記期間制御部は、 前記温度制御部において、前記育成水を前記産卵温度帯域に制御させ、 前記光照射制御部において、1日当たりの光照射時間を第2時間以上とさせる、 ことで、前記産卵期間を生じさせ、 前記第2時間は前記第1時間より長い、請求項2記載の親魚の産卵管理装置。 【請求項4】 前記期間制御部は、 前記温度制御部において、前記育成水を前記産卵温度帯域から徐々に低下させる前記温度変化を生じさせ、 前記光照射制御部において、1日当たりの光照射時間を第1時間以下とさせる、 ことで、前記産卵期間から前記非産卵期間に移行させる、請求項1記載の親魚の産卵管理装置。 【請求項5】 前記産卵期間および前記非産卵期間が生じさせられることで、同一の雌の親魚が、複数の期間に渡って産卵可能である、請求項1から4のいずれか記載の親魚の産卵管理装置。 【請求項6】 前記光照射制御部は、太陽光もしくは疑似太陽光を、前記光として照射する、請求項1から5のいずれか記載の親魚の産卵管理装置。 【請求項7】 前記近海魚は、キス類(シロギスなど)、アジ類、イワシ類、イカ類(アオリイカなど)、ベラ類(キュウセンなど)、ハタ類(キジハタなど)、メバル、アナゴ、ハゼ、カワハギ類、オコゼ、舌平目、カニ類の少なくとも一つを含む、請求項1から6のいずれか記載の親魚の産卵管理装置。」 第3 証拠一覧及び特許異議申立理由の概要 1 証拠一覧 申立人が提出した証拠は、以下のとおりである。 (以下、申立人の提出した甲第1号証を、甲1という。甲第2号証以下についても同様。) 甲1:小牧博信, 外3名,“マダイ親魚の長期加温飼育による早期産卵について”,水産増殖,43巻1号,137-143頁,平成7年3月20日発行 甲2:Yong Zhu,外3名,“Effects of Water Temperature and Photoperiod on the Initiation and Termination of the Autumn Spawning Season in Tobinumeri-Dragonet Repomucenus beniteguri”,日本水産学会誌,第57巻第10号,1871-1876頁,平成3年10月25日発行 甲3:瀬戸熊卓見,外3名,“シロギスの産卵終了に及ぼす日長の影響”,海生研研報,第19号,73-78頁,平成26年3月発行 甲4:瀬戸熊卓見,外3名,“水温および日長制御によるシロギスの複数年にわたる周年産卵”,海生研研報,第19号,67-72頁,平成26年3月発行 2 特許異議申立理由の概要 申立人が特許異議申立書(以下、「申立書」という。)において主張する申立理由の概要は、次のとおりのものと認められる。 (1)実施可能要件違反 本件発明1~7に関し、発明の詳細な説明の記載は、その実施をすることができる程度に明確かつ十分な記載がされていないから、これらの発明に係る特許は、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法113条4号に該当し、取り消されるべきものである。 (2)明確性要件違反 本件発明1~7は、特許を受けようとする発明が明確でないから、これらの発明に係る特許は、特許法第36条6項2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。 (3)サポート要件違反 本件発明1~7は、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を越えていることから、これらの発明に係る特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであって、同法113条4号に該当し、取り消されるべきものである。 (4)新規性欠如 本件発明1~4、6は、本件出願より前に公開された甲1に記載された発明であり、また、本件発明1~2及び5~6は、本件出願より前に公開された、甲2に記載された発明であることから、これらの発明は、特許法29条1項3号に該当し、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。 (5)進歩性欠如 本件発明1~7は、本件出願より前に公開された甲1に記載された発明と、本件出願より前に公開された甲3~4に示された、本件出願当時の周知技術とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、本件発明1~7は、本件出願より前に公開された甲2に記載された発明と、本件出願より前に公開された甲3~4に示された、本件出願当時の周知技術とに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1~7に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものであって、同法113条2号に該当し、取り消されるべきものである。 第4 当審の判断 1 甲号証について (1)甲1 ア 甲1の記載事項 甲1には、次の記載がある(下線は、当審合議体が付した。以下、同様。) (ア)「近年,養殖マダイの需要対応として早期の種苗生産が行われ,これに伴い親魚の産卵期を制御するため,飼育水の加温1-3)や光周期の調節*およびホルモン処理4)が用いられている。このうち水温については,産卵誘発の方法として産卵前の親魚の飼育水温を急激に2~3℃上昇させる5)などがあるが,効果的な産卵誘発に関する事例や加温条件と成熟促進との関係を検討した報告例は少なく,ほとんどの種苗生産施設では経験的な方法で実施されている。また,海産魚類の卵質の評価には,多くの指標6-8)が用いられているが,加温飼育により早期産卵された卵の質についての報告例はほとんど見当らない。また,多回産卵する魚種では産卵期の進行とともに卵径が小型化し9,10),卵径と水温との間に負の相関がある11,12)ことから,水温が卵の大きさの決定に関与していることが示唆されている12)。そこで,加温飼育により得られた卵の質を明らかにするため,マダイ親魚を異なる設定水温で飼育して,浮上卵率,正常ふ化率および卵径等の変化を調べ,いくつかの知見を得たので報告する。」(137頁左下欄1行~同頁右下欄末行) (イ)「材料および方法 供試材料 試験にはFRP製10m3円形水槽3基を用いた。試験は2回実施し、1回目を1989年11月1日から1990年6月23日まで(以下,試験I),2回目を1990年11月1日から1991年6月22日まで(以下,試験II)実施した。試験Iでは近畿大学で育成された養成マダイ3年魚(平均体重1.25kg)の雌雄各4尾の計8尾を、試験IIでは近畿大学産のマダイ種苗を育成している養殖施設で養成された3年魚(平均体重1.71kg)の雌雄各6尾の計12尾を上記の3水槽にそれぞれ収容した。 試験区の設定 試験Iおよび試験IIともに20℃区,+3℃区および対照区を設定した。ただし試験Iの20℃区では3月上旬に自然海水温度から20℃まで急激に昇温し,試験IIの20℃区では、水温変化による産卵促進例*を参考に、試験開始以降を20℃とし,1月下旬に1℃/日の勾配で15℃まで下げ、約2週間経過後の2月中旬に再び20℃に戻した。+3℃区では自然海水温度より常に3℃高くなるように加温し,対照区では自然海水温度に設定した。なお20℃区では自然海水温度が季節的に20℃以上に上昇すると自然海水温度と同水温となった。 飼育方法 餌料には市販のモイスト用粉末に魚肉,アミエビ,イカを混ぜ,ビタミン等を添加したモイストペレットを用い、毎日1回飽食するまで給餌した。また、産卵期間中には冷凍オキアミも併用した。水槽の換水率は1回転/時とし,各水槽の上部には遮光ネットを取り付けて照度を100lux程度に抑えた。 採卵方法 水槽内で産出された卵を、海水とともに集卵槽(270lFRP製角型水槽)へ導き,採卵ネット(目合い400μm,70cm×40cm×30cm)に集めた。毎朝,ネット内の卵を50lアルテミアふ化槽に海水とともに収容して静置し,浮上卵と沈下卵に分離して海水1ml当たりの卵数を計数し容積法によって浮上卵数および沈下卵数を求め,浮上卵率を算出した。0.45μmメンブランフィルターでろ過した海水を入れた200mlビーカー中に浮上卵約100個体を収容し,親魚水槽の水温とほぼ同じ温度でふ化させた。ふ化後に正常個体,異常個体(主に脊索が屈曲し,および遊泳状態が異常なもの)および死卵数を計数し,総ふ化率(正常および異常個体数/総卵数)および正常ふ化率(正常個体数/総卵数)を求めた。なお,試験IIでは浮上卵50個体の卵径を万能投影機(Nikon V-12)を用いてほぼ3日毎に測定した。」(138頁左欄1行~同頁右欄2行) (ウ)「結果 産卵期間 試験期間中の各試験区の水温の経時変化とマダイの産卵開始日および終了日をFig.1に示した。試験Iの20℃区では3月20日から6月5日までの78日間に毎日,+3℃区では4月5日から6月23日までの80日間のうち71日,対照区では4月19日から6月23日までの66日間のうち62日に産卵がみられた。試験IIの20℃区では3月7日から6月1日までの87日間のうち72日,+3℃区では4月8日から6月10日までの64日間のうち48日,対照区では4月24日から6月22日までの60日間のうち58日に産卵がみられた。20℃区の産卵開始は試験Iでは対照区に比べ約1か月,試験IIでは約1.5か月早かった。+3℃区では両試験とも対照区に比べ約0.5か月早かった。」(138頁右欄3~16行) (エ)「浮上卵率、総ふ化率、正常ふ化率 各試験区の浮上卵率、総ふ化率および正常ふ化率の平均値および標準偏差をTable2に示し、特に試験IIについては毎日の正常ふ化率の変化をFig.4に示した。20℃区の浮上卵率、総ふ化率および正常ふ化率は試験I、試験IIともに高く、総ふ化率および正常ふ化率ではt検定で20℃区と対照区との間に有意差が認められた。一方、+3℃区の総ふ化率および正常ふ化率の場合、試験Iでは対照区との間にはt検定で有意差がみられたが、試験IIでは有意差は認められなかった。産卵期間中の正常ふ化率の変化をみると、20℃区では産卵初期から末期まで変動が小さく概ね90%以上であったが、対照区では産卵初期に低く、その後上昇して安定し、末期にはわずかに低下する傾向が認められた。なお、+3℃区では全体的に変動が大きく、産卵末期にようやく上昇する傾向が認められた。なお、試験IIにおいては浮上卵率と正常ふ化率の間に、+3℃区、対照区ともに弱い相関がみられた(Table3)。」(139頁右欄6行-140頁右欄7行) (オ)図1「 [図:0001433087000001.jpg] 」 イ 認定事項 (ア)試験Iの20℃区について、前記ア(イ)及び(ウ)より、水温を、3月上旬に20℃に昇温させ、自然海水温度が季節的に20℃以上に上昇すると自然海水温度と同水温としており、3/20から6/5まで産卵がみられたことが理解できる。さらに、図1より、試験Iの20℃区で産卵がみられた3/20から6/5までの水温は、約20℃であったことが見てとれる。 (イ)試験Iの水温を自然海水温度より常に3℃高くなるように加温する+3℃区について、前記ア(イ)(ウ)より、4/5から6/23まで産卵がみられたことが理解できる。さらに、図1より、試験Iの+3℃区で産卵がみられた4/5から6/23までの水温は、約16℃から約25℃まで上昇したことが見てとれる。 (ウ)試験IIの20℃区について、前記ア(イ)及び(ウ)より、水温を、11月1日の試験開始以降20℃とし,1月下旬に1℃/日の勾配で15℃まで下げ、約2週間経過後の2月中旬に再び20℃に戻し、自然海水温度が季節的に20℃以上に上昇すると自然海水温度と同水温としており、3/7から6/1まで産卵がみられたことが理解できる。また、図1より、試験IIの20℃区で産卵がみられた3/7から6/1までの水温は、約20℃であったことが見てとれる。 (エ)試験IIの水温を自然海水温度より常に3℃高くなるように加温する+3℃区について、前記ア(イ)(ウ)より、4/8から6/10まで産卵がみられたことが理解できる。さらに、図1より、試験IIの+3℃区で産卵がみられた4/8から6/10までの水温は、約16℃から約22℃まで上昇したことが見てとれる。 (オ)前記ア(ア)(イ)より、加温飼育により得られた卵の質を明らかにするため,マダイ親魚を異なる設定水温で飼育して,浮上卵率,正常ふ化率および卵径等の変化を調べるために(前記ア(ア))、マダイの雌雄を各水槽に収容し、20℃区,+3℃区という水温の異なる試験区を設定して産卵させて、水槽内で産出された卵を海水とともに集卵槽へ導くものであるから(前記ア(イ))、水槽内には、マダイの雌雄とともに海水が収容されること、水槽内の水温を20℃、あるいは、自然海水温度+3℃等の設定水温に調整する設備があることが当業者に明らかである。 (カ)水槽、前記(オ)の水槽内の水温を設定水温に調整する設備、遮光ネット、水槽内で産出された卵を、海水とともに収容して静置するアルテミアふ化槽、及び、浮上卵約100個体を海水とともに収容し,親魚水槽の水温とほぼ同じ温度でふ化させるビーカーは産卵試験設備といえる。 ウ 甲1に記載された発明 前記ア、イより、甲1には、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。括弧内に主な根拠箇所を示した。 「加温飼育により得られた卵の質を明らかにするため,マダイ親魚を異なる設定水温で飼育して,浮上卵率,正常ふ化率および卵径等の変化を調べるための産卵試験設備であって(前記ア(ア)、前記イ(カ))、 マダイの雌雄とともに海水を収容したFRP製10m3円形水槽(前記ア(イ))、 水槽内の水温を20℃、あるいは、自然海水温度+3℃等の設定水温に調整する設備(前記ア(イ)、前記イ(オ))、 水槽の上部に取り付けられ、照度を100lux程度に抑える遮光ネット(前記ア(イ))、 水槽内で産出された卵を、海水とともに収容して静置するアルテミアふ化槽(前記ア(イ))、 浮上卵約100個体を海水とともに収容し,親魚水槽の水温とほぼ同じ温度でふ化させるビーカーを含み(前記ア(イ))、 1989年11月1日から1990年6月23日までの試験Iと、1990年11月1日から1991年6月22日までの試験IIとが実施された結果(前記ア(イ))、 水温を、3月上旬に20℃に昇温させ、自然海水温度が季節的に20℃以上に上昇すると自然海水温度と同水温とした試験Iの20℃区について、3/20から6/5まで産卵がみられ、かつ、そのときの水温は、約20℃であり(前記イ(ア))、 水温を自然海水温度より常に3℃高くなるように加温した試験Iの+3℃区について、4/5から6/23まで産卵がみられ、かつ、そのときの水温は約16℃から約25℃まで上昇し(前記イ(イ))、 水温を、11月1日の試験開始以降20℃とし,1月下旬に1℃/日の勾配で15℃まで下げ、約2週間経過後の2月中旬に再び20℃に戻し、自然海水温度が季節的に20℃以上に上昇すると自然海水温度と同水温とした試験IIの20℃区について、3/7から6/1まで産卵がみられ、かつ、そのときの水温は、約20℃であり(前記イ(ウ))、 水温を自然海水温度より常に3℃高くなるように加温した試験IIの+3℃区について、4/8から6/10まで産卵がみられ、かつ、そのときの水温は、約16℃から約22℃まで上昇し(前記イ(エ))、 20℃区では、浮上卵率、総ふ化率および正常ふ化率は試験I、試験IIともに高い(前記ア(エ)) マダイの産卵試験設備(前記イ(カ))。」 (2)甲2 ア 甲2の記載事項 甲2には、次の記載がある。なお、翻訳文(以下「当審訳」という。)は当審合議体が作成したものである。 (ア)「In order to investigate the factors which initiate the autumn spawning, immature fish were reared under different conditions from August 15 to September 12. Spawning was observed from August 27 in the 12L12D/22-24℃ group, and from August 30 in 15L9D/22-24℃ group. However, much more eggs were obtained in the 12L12D group than that in the 15L9D group. No mature fish were found in the 15L9D/28-29℃ group. These results indicate that the decrease in temperature is the main environmental cue that initiates the autumn spawning, and that short daylength accelerates gonadal maturation. In order to investigate the factors which terminate the autumn spawning, mature fish were divided into 3 groups; reared under 1) temperature changed group (23℃→19℃→16℃→14℃→11℃; 13L11D), 2) natural temperature group (13L11D), 3) daylength changed group (13L→11L→9L→15L→11L; 22-24℃) in the autumn spawning season. In the temperature changed group, daily spawning continued until the temperature decreased to 14℃. In natural temperature group, daily spawning was observed above 13℃. In the daylength changed group, daily spawning was observed under 13L11D, 11L13D and 9L15D. Spawning, however, stopped under 15L9D, and resumed under 11L13D. The number of spawned eggs/fish increased with the decrease in daylength. These results indicate that the low temperature in early winter is the terminating cue of the autumn spawning season.」(1871頁1~17行) (当審訳:秋季の産卵を開始させる要因を調べるため、未成熟の魚を8月15日から9月12日まで異なる条件下で飼育した。12L12D/22~24℃群では8月27日から、15L9D/22~24℃群では8月30日から産卵が観察された。しかし、12L12D群の方が15L9D群よりもはるかに多くの卵が得られた。15L9D/28~29℃群では成熟個体は認められなかった。これらの結果は、秋季産卵の開始には水温の低下が主要な環境シグナルであり、短日条件が生殖腺成熟を促進することを示している。 秋季産卵を終了させる要因を調べるため、成熟した魚を以下の3つの群に分けて飼育した。1)温度変化群(23℃→19℃→16℃→14℃→11℃;13L11D)、2)自然温度群(13L11D)、3)日長変化群(13L→11L→9L→15L→11L;22~24℃)である。温度変化群では、水温が14℃まで低下するまで毎日産卵が続いた。自然温度群では、13℃以上で毎日産卵が観察された。日長変化群では13L11D・11L13D・9L15Dの条件で毎日産卵が続いたが、15L9Dでは産卵は停止し、11L13D条件で再開した。産卵数は日長が短くなるほど増加した。これらの結果は、初冬の低水温が秋季産卵期の終了シグナルであることを示している。) (イ)「Tobinumeri-dragonet has two spawning seasons, spring and autumn, within one year.11,12) It is an interesting phenomenon, since seasonal breeders usually have a single breeding season in a year. It seems to be valuable to know how these two spawning seasons are formed. Therefore, the effects of water temperature and daylength on the initiation and termination of the autumn spawning season in the tobinumeni-dragonet were investigated in this study.」(1871頁右欄14行~1872頁左欄3行) (当審訳:トビヌメリは、1年のうちに春と秋の2回の産卵期をもつ。季節繁殖魚の多くが年1回の産卵期しか持たないことを考えると、これは興味深い現象である。本研究では、トビヌメリにおける秋季産卵期の開始および終了がどのように形成されるかを理解するため、水温および日長の影響について調べた。) (ウ)「Materials and Methods Experimental fish were obtained by angling from Lake Hamana, and transferred to the Fisheries Laboratory of the University of Tokyo, Maisaka, Shizuoka Prefecture. They were kept under natural conditions in an outdoor concrete pond (8×2×0.85 m) supplied with seawater and fed eel commercial paste at about 5% of body weight every day. In order to elucidate the initiation cue of autumn spawning, experiment 1 was started prior to the autumn spawning season. Immature fish which were caught in spring and summer were randomly divided into four groups. The fish (25 females and 25 males for each) was transferred to experimental tanks (2×1×0.8 m) on August 15 and reared from August 22 under 1) 15L9D/28-29℃, 2) 15L9D/22-24℃, or 3) 12L12D/22-24℃ till September 12. Another group was reared in an outdoor tank (8×2 m) under conditions of natural daylength and natural temperature (NL/NT). Spawned eggs were collected and the total egg volume was measured during the experimental period except NL/NT group. Ten females and 10 males were sampled from each group on September 3 and September 12. After anesthetizing the fish with 0.01% tricaine methanesulfonate solution, their body weight and gonad weight were measured. Gonadosomatic index (GSI: gonad weight × 100 / body weight) was calculated. The gonads were fixed with Bouin’s solution for histological observation.」(1872頁左欄4行~同頁右欄16行) (当審訳:材料および方法 試験に用いる魚は浜名湖で釣獲し、静岡県舞阪の東京大学水産実験所へ搬入した。魚は屋外のコンクリート池(8×2×0.85m)に収容し、天然条件下で飼育した。海水を注水し、体重のおよそ5%量のウナギ用市販練り餌を毎日与えた。 秋季産卵の開始要因を明らかにするため、試験1を秋季産卵期の開始前に実施した。春および夏に採捕された未成熟魚を無作為に4つの群に分けた。各群には雌25尾、雄25尾を用い、8月15日に試験水槽(2×1×0.8m)へ移した。8月22日から9月12日まで、1)15L9D/28~29℃、2)15L9D/22~24℃、3)12L12D/22~24℃のいずれかの条件で飼育した。別の1群は屋外タンク(8×2m)に収容し、自然日長・自然水温(NL/NT)の条件で飼育した。産卵された卵は収集し、試験期間中(NL/NT群を除く)における総卵量を測定した。各群から9月3日および9月12日に雌10尾、雄10尾をサンプリングした。0.01%トリカインメタンスルホン酸溶液で麻酔した後、体重および生殖腺重量を測定した。生殖腺指数(GSI:生殖腺重量×100/体重)を算出した。生殖腺は組織学的観察のため、ブアン液で固定した。) (エ)「In order to understand the termination cue of autumn spawning, experiment 2 was undertaken in the autumn spawning season. Fish which were caught in spring and summer matured in autumn. They were randomly divided into three groups, 1) temperature changed group (25 females and 22 males: Fig. 4), 2) natural temperature group (25 females and 22 males: Fig. 5) and 3) daylength changed group (25 females and 25 males: Fig. 6). They were transferred into each concrete tank (3×1.5×0.9 m). During the experimental period, the photoperiod was maintained at 13L11D in the temperature changed and natural temperature groups, and water temperature was maintained at 20-22℃ in the daylength changed group. In the temperature changed group, water temperature was maintained above 23℃ from September 21 to October 2, decreased to 19℃ on October 3, to 16℃ on October 10, to 14℃ on October 23 and to 11℃ on November 10, and then increased to 20℃ on December 7. In the daylength changed group, the daylength was maintained 13L from August 27 to November 14, shortened to 11L on November 15, to 9L on November 23. The daylength was increased to 15L on October 8, and then shortened to 11L on October 23. The spawning time was monitored and the total egg volume was measured during the experimental period. The number of eggs spawned was calculated from the total egg volume (4146 eggs/ml).」(1872頁右欄17行~1874頁左欄3行) (当審訳:秋季産卵の終了シグナルを理解するため、試験2は秋季産卵期に実施した。春および夏に採捕された魚は、秋に成熟した。これらの魚は無作為に3つの群に分けられた。すなわち、1)温度変化群(雌25尾、雄22尾:図4)、2)自然温度群(雌25尾、雄22尾:図5)、3)日長変化群(雌25尾、雄25尾:図6)である。魚はそれぞれコンクリート水槽(3×1.5×0.9m)に移された。試験期間中、温度変化群および自然温度群では日長を13L11Dに維持し、日長変化群では水温を20~22℃に維持した。温度変化群では、水温は9月21日から10月2日まで23℃以上に保たれ、その後10月3日に19℃、10月10日に16℃、10月23日に14℃、11月10日に11℃に低下し、12月7日には20℃まで上昇させた。日長変化群では、日長は8月27日から11月14日まで13Lに維持され、11月15日に11L、11月23日に9Lへ短縮された。また、日長は10月8日に15Lへ延長され、10月23日に再び11Lへ短縮された。産卵時刻は継続的に記録され、試験期間中に総卵量が測定された。産卵数は総卵量(4146卵/ml)から算出した。) (オ)「Results Experiment 1 First spawning was observed on August 27 in the 12L12D/22-24℃ group, and on August 30 in the 15L9D/22-24℃ group. Thereafter, spawning occurred every day except August 28 (12L12D/22-24℃ group), and September 4 (15L- 9D/22-24℃ group). No spawning was observed in the 15L9D/28-29℃ group. The number of eggs spawned/female was approximately three times higher in the 12L12D/22-24℃ group than that in the 15L9D/22-24℃ group (Fig. 1). The GSI of female exposed to 15L9D/28-29℃ showed a small decrease, while the GSI of female exposed to 15L9D/22-24℃, 12L12D/22-24℃ or NL/NT showed a rapid increase, and reached from 0.6% to 1.4%, 2.5%, 3.1% on September 3, and 2.3%, 8.7%, 4.2% on September 12, respectively (Fig. 2). The number of ovulated females were 0, 4, 9, 9 on September 3, and 0, 9, 10, 9 on September 12 in the 15L9D/28-29℃, 15L9D/22- 24℃, 12L12D/22-24℃ and NL/NT groups, respectively (Fig. 2). The oocytes were at the peri-nucleolus stage in the 15L9D/28-29℃ group. Some atretic oocytes were observed in the 15L9D/ 22-24℃ group, whereas the oocytes developed normally in the 12L12D/22-24℃ and NL/NT groups. GSIs in the male groups unchanged on September 3 (Fig. 3). The GSI value was highest in 12L12D/22-24℃ group on September 12. The GSI value in the 15L9D/22-24℃ group was lower than that in the NL/NT group on September 12. Almost all fish survived until the end of the experiment.」(1874頁左欄4行~同頁右欄15行) (当審訳:結果 試験1 最初の産卵は、12L12D/22~24℃群では8月27日に、15L9D/22~24℃群では8月30日に観察された。その後、12L12D/22~24℃群では8月28日を除き毎日、15L9D/22~24℃群では9月4日を除き毎日産卵がみられた。一方、15L9D/28~29℃群では産卵は全く認められなかった。雌当たりの産卵数は、12L12D/22~24℃群が15L9D/22~24℃群の約3倍であった(図1)。15L9D/28~29℃群の雌のGSIはわずかに低下したが、15L9D/22~24℃、12L12D/22~24℃、NL/NT群では急速に上昇し、0.6%から1.4%、2.5%、9月3日には3.1%に、また、2.3%、8.7%、9月12日には4.2%となった(図2)。排卵雌の数は、9月3日には0、4、9、9尾、9月12日には0、9、10、9尾であり、発育段階は群間で大きく異なった。15L9D/28~29℃群では卵母細胞は核周期段階にとどまり、15L9D/22~24℃群では退行卵がみられたが、12L12D/22~24℃およびNL/NT群では正常に発達していた。 雄のGSIは、9月3日には大きな変化はなかったが(図3)、9月12日には12L12D/22~24℃群で最も高く、15L9D/22~24℃群ではNL/NT群より低かった。試験期間を通じてほぼ全ての個体が生存した。) (カ)「Experiment 2 In the temperature changed group, daily spawning continued until the temperature decreased to 16℃. The egg number decreased at 14℃ and spawning stopped at 11℃. Thereafter, the temperature was raised to 20℃. The fish resumed spawning soon and spawned a larger number of eggs (Fig. 4). In the natural temperature group, daily spawning was observed above 13℃, and stopped below 12℃. Spawning, however, stopped for 3 days when the temperature decreased rapidly from 16℃ to 13℃ (Fig. 5). In the daylength changed group, spawning occurred every day under the conditions of 13L, 11L, and 9L. The egg number increased with the decrease in daylength. Spawning stopped 10 days after the increase in daylength from 9L to 15L. Spawning resumed two weeks after the decrease in the daylength from 15L to 11L (Fig. 6). Although the spawning time fluctuated largely just after temperature was changed in turn (23℃→19℃→16℃→14℃) in the temperature changed group, the spawning time returned to the former level soon. The spawning time was almost constant in the natural temperature group. In the daylength changed group, the spawning time showed small changes when the time of lights-on was changed (0500 h (13L)→0700 h (11L)→0900 h (9L), the time of lights-off was constant at 1800 h). Although the spawning time advanced 2 hours when the time of lights-on was changed from 0900 h to 0300 h (15L), it returned gradually to the former level. Thereafter, spawning stopped under 15L. Spawning resumed under the daylength of 11L (photophase: 0700-1800 h). The spawning time was similar to the former level. Almost all fish survived until the end of experiment.」 (1874頁右欄16行~1875頁左欄27行) (当審訳:試験2 温度変化群では、産卵は水温が16℃に低下するまで毎日続いた。14℃で産卵数が減少し、11℃で産卵が停止した。その後水温を20℃に上昇させると、産卵は速やかに再開され、より多くの卵が産み出された(図4)。自然温度群では、水温13℃以上で毎日産卵がみられ、12℃未満で産卵が停止した。また、水温が16℃から13℃に急激に低下した際には、3日間産卵が停止した(図5)。日長変化群では、13L、11L、9Lの条件下で毎日産卵が継続した。日長が短くなるほど産卵数は増加した。9Lから15Lへ延長した10日後に産卵が停止し、15Lから11Lへの短縮から2週間後に産卵が再開した(図6)。 温度変化群では、水温を(23℃→19℃→16℃→14℃)と段階的に変化させた直後には産卵時刻が大きく変動したが、その後すぐに元の時間帯へ戻った。自然温度群では、産卵時刻はほぼ一定であった。日長変化群では、点灯時刻を変更した際(13Lでは0500時→11Lでは0700時→9Lでは0900時、消灯時刻は常に1800時で一定)に、産卵時刻に小さな変化が見られた。また、点灯時刻を0900時から0300時へ変更した(15L条件)際には、産卵時刻が2時間早まったが、その後徐々に元の時間帯へ戻った。その後、15L条件下では産卵が停止した。11L(明期:0700~1800時)の条件になると産卵が再開され、産卵時刻は元の時間帯とほぼ同じであった。試験終了まで、ほとんどすべての個体が生存した。) (キ)図3「 [図:0001433087000002.jpg] 」 (当審訳:図3 秋季における精巣成熟の開始に対する日長および水温の影響。柱および誤差棒は平均値±標準誤差を示す。NTは自然水温、NLは自然日長を表す。統計解析には Duncan の多重範囲検定を用いた。 *および**は、8月15日の初期 GSI と比較して、それぞれ p<0.05、p<0.01 で有意差があることを示す。) (ク)図4「 [図:0001433087000003.jpg] 」 (当審訳:図4 13L11D条件下における秋季産卵終了に対する水温(Temp.)の影響。太い矢印は魚が産卵していなかった期間を示し、細い矢印は水温の変化を示す。) (ケ)図6のうち下の図 「 [図:0001433087000004.jpg] 」 (当審訳:図6 20~22℃の条件下における秋季産卵終了に対する日長の影響。) イ 認定事項 (ア)前記ア(カ)及び図6より、試験2の日長変化群では、日長を、13L、11L、9L、15L、11Lと順に変化させたこと、また、13L、11L、9Lの条件下で毎日産卵が継続し、日長が短くなるほど産卵数は増加したが、9Lから15Lへ延長した10日後に産卵が停止し、15Lから11Lへの短縮から2週間後に産卵が再開したことが理解できる。 (イ)前記ア(イ)~(オ)より、試験1または試験2で用いる試験水槽、屋外タンク及びコンクリート水槽のそれぞれに、トビヌメリの雌雄とともに海水が収容されることが当業者に明らかである。また、試験1の試験水槽の水温及び日長を、1)15L9D/28~29℃、2)15L9D/22~24℃及び3)12L12D/22~24℃、それぞれの条件となるように、また、試験2のコンクリート水槽の水温及び日長を、1)温度変化群及び3)日長変化群、それぞれの条件となるように調整する設備があることが当業者に明らかである。 (ウ)試験水槽、屋外タンク、コンクリート水槽、並びに、前記(イ)の試験水槽及びコンクリート水槽の水温及び日長のそれぞれを調整する設備は、秋季産卵を開始させる要因を調べ、秋季産卵を終了させる要因を調べるための産卵試験設備といえる。 ウ 甲2に記載された発明 前記ア、イより、甲2には、次の発明(以下「甲2発明」が記載されているものと認められる。括弧内に主な根拠箇所を示した。 「秋季産卵を開始させる要因を調べるため、また、秋季産卵を終了させる要因を調べるための試験設備であって(前記イ(ウ))、 トビヌメリの雌雄とともに海水を収容する試験水槽、屋外タンク及びコンクリート水槽と(前記イ(イ))、 前記試験水槽及び前記コンクリート水槽の水温及び日長を調整する設備と(前記イ(イ))を備え、 秋季産卵を開始させる要因を調べる試験1では、1)15L9D/28~29℃、2)15L9D/22~24℃、3)12L12D/22~24℃の条件で飼育した結果(前記ア(ウ))、 1)15L9D/28~29℃群では産卵は認められず、2)15L9D/22~24℃群では8月30日に、3)12L12D/22~24℃群では、8月27日に最初の産卵が観察され、その後、2)15L9D/22~24℃群及び3)12L12D/22~24℃群のいずれも、ほぼ毎日産卵がみられ(前記ア(オ))、 秋季産卵を終了させる要因を調べる試験2では、1)温度変化群、2)自然温度群、3)日長変化群の3つの群に魚を分けて、1)温度変化群および2)自然温度群では日長を13L11Dに維持し、3)日長変化群では水温を20~22℃に維持し、1)温度変化群では、水温を23℃以上に保ち、その後、19℃、16℃、14℃、11℃に低下させた後、20℃まで上昇させ、3)日長変化群では、日長を13L、11L、9L、15L、11Lと順に変化させた結果(前記ア(エ)(カ)、前記イ(ア)及び図6)、 1)温度変化群では、水温が16℃に低下するまで産卵が毎日続き、14℃で産卵数が減少し、11℃で産卵が停止した後、水温を20℃に上昇させると、産卵は速やかに再開され、より多くの卵が産み出され、2)自然温度群では、水温13℃以上で毎日産卵がみられ、12℃未満で産卵が停止し、また、水温が16℃から13℃に急激に低下した際にも3日間産卵が停止し、3)日長変化群では、13L、11L、9Lの条件下で毎日産卵が継続し、日長が短くなるほど産卵数は増加し、9Lから15Lへ延長した10日後に産卵が停止し、15Lから11Lへの短縮から2週間後に産卵が再開した(前記ア(カ)、図4及び図6)、 産卵試験設備(前記イ(ウ))。」 (3)甲3の記載事項 ア 甲3の記載事項 甲3には、次の記載がある。 (ア)「当研究所(千葉県御宿町)所在地の各月の中旬頃の水温と日長時間の年周期を重ね合わせ,小林ら(2013)の図を参考に第3図を作成した。ここでは、シロギスの産卵臨界日長を12時間,産卵適水温を20℃以上(瀬戸熊ら,2014),28℃以下(Hotta et al.,2001)とした。この図からシロギスの産卵開始期は水温が制限要因となり,終了期は日長が制限要因となることがわかる。当海域では、シロギスの産卵期は、日長時間と水温からおよそ7月初旬頃から9月下旬頃までとなる。」(77頁右欄9行~78頁左欄3行) (イ)第3図「 [図:0001433087000005.jpg] 」 イ 甲3記載の技術的事項 「千葉県御宿町の各月の中旬頃の水温と日長時間の年周期を重ね合わせた図と、シロギスの産卵臨界日長を12時間、産卵適水温を20℃以上とした研究結果とから、シロギスの産卵開始期は水温が制限要因となり,終了期は日長が制限要因となって、千葉県御宿町でのシロギスの産卵期は、日長時間と水温からおよそ7月初旬頃から9月下旬頃までとなること」(77頁右欄9行~78頁左欄3行) (4)甲4 ア 甲4には、次の記載がある。 (ア)「要約:シロギス雌12尾,雄6尾を3m3水槽1基に収容し,水温20~28℃,日長14時間明期に設定して3年3か月間(1,173日)飼育し,産卵状況を毎日調べた。終了時には雌6尾,雄5尾となった。産卵が確認された日数は957日であった。1日の産卵数は最大509,600,平均153,000,産出卵の正常発生率の平均は74.9%であった。このことから,シロギスは水温と日長時間を制御することにより、複数年にわたり周年産卵することが判明した。」(67頁要約欄) (イ)「本実験の結果から,水温20~28℃,明期14時間以上の長日条件で飼育することにより通常の産卵期である6月から9月頃の4か月以外の時季においても継続的に産卵することが確認できた。3年3か月の飼育期間を通して正常発生率に差異も認められなかったことから,水温と日長を制御することによって周年にわたり受精卵を得ることが可能であることが判明した。」(71頁左欄23~30行) イ 甲4記載の技術的事項 「シロギスの雌雄を水槽の水温20~28℃,明期14時間以上の長日条件で飼育することにより通常の産卵期である6月から9月頃の4か月以外の時季においても継続的に産卵することでき、水温と日長を制御することにより、複数年にわたり周年産卵させ、周年にわたり受精卵を得ることが可能であること」 2 新規性欠如・進歩性欠如について (1)本件発明1について ア 甲1を主引例として (ア)対比 本件発明1と、甲1発明とを対比する。 a 甲1発明における「マダイの雌雄とともに海水を収容したFRP製10m3円形水槽」、「水槽内の水温を20℃、あるいは、自然海水温度+3℃等の設定水温に調整する設備」、「水槽の上部に取り付けられ、照度を100lux程度に抑える遮光ネット」及び「マダイの雌雄」は、それぞれ、本件発明1における「親魚と育成水を収容可能な収容容器」、「前記育成水の温度を制御する温度制御部」、「前記収容容器へ照射する光照射を制御する光照射制御部」及び「近海魚である親魚」に相当する。 b 甲1発明の「水槽内の水温を20℃、あるいは、自然海水温度+3℃等の設定水温に調整する設備」は、水温を20℃あるいは自然海水温度+3℃といった設定水温の近辺に調整(制御)するものであり、当該設定水温の近辺は、設定水温により定まる温度帯域といえる。 よって、甲1発明の「水槽内の水温を20℃、あるいは、自然海水温度+3℃等の設定水温に調整する設備」は、本件発明1の「温度制御部」と、「前記育成水の温度の範囲を示す温度帯域」「に基づいて、前記育成水の温度を制御」する点で共通しており、本件発明1の「前記育成水の温度の範囲を示す温度帯域および前記育成水の温度の変化を示す温度変化の少なくとも一方に基づいて、前記育成水の温度を制御」する「温度制御部」に相当する。 c 甲1発明における水温の調整は、「加温飼育により得られた卵の質を明らかにするため,マダイ親魚を異なる設定水温で飼育して,浮上卵率,正常ふ化率および卵径等の変化を調べるため」に「産卵試験設備」において行っているものであり、親魚(マダイの雌雄)の「産卵期間及び非産卵期間の少なくとも一つを制御する期間制御部」を備えた「産卵管理装置」が「産卵期間」等の「管理」のために行っているものではない。 また、甲1発明における「水槽の上部に取り付けられ、照度を100lux程度に抑える遮光ネット(前記収容容器へ照射する光照射を制御する光照射制御部)」についても、同様である(「産卵期間及び非産卵期間の少なくとも一つを制御する期間制御部」を備えた「産卵管理装置」が「産卵期間」等の「管理」のために用いているものではない。)。 d 甲1発明における「20℃」及び「自然海水温度+3℃」のいずれも、「加温飼育により得られた卵の質を明らかにするため,マダイ親魚を異なる設定水温で飼育して,浮上卵率,正常ふ化率および卵径等の変化を調べるため」に「試験」として設定された温度であるから、本件発明1の「期間制御部」が「前記親魚の産卵期間および非産卵期間の少なくとも一つを制御する」際に用いる温度帯域である「雌の親魚が実際に産卵可能な温度帯域である産卵可能温度帯域よりも狭い温度帯域である産卵温度帯域」、「前記産卵温度帯域の下限より低い所定の温度以下の温度帯域である休養温度帯域」、「雄の親魚が射精可能な射精温度帯域」ないし「産卵された卵が受精可能な受精温度帯域」に相当するものとはいえない。 e 甲1発明における「産卵試験設備」は、産卵に係る設備である点で、本件発明1の「産卵管理装置」と共通する。 f 前記a~eを踏まえると、本件発明1と甲1発明との間の一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「親魚と育成水を収容可能な収容容器と、 前記育成水の温度を制御する温度制御部と、 前記収容容器へ照射する光照射を制御する光照射制御部と、を備え 前記温度制御部は、前記育成水の温度の範囲を示す温度帯域および前記育成水の温度の変化を示す温度変化の少なくとも一方に基づいて、前記育成水の温度を制御する 近海魚である親魚の産卵に係る設備。」 <相違点1> 本件発明1が、「前記親魚の産卵期間および非産卵期間の少なくとも一つを制御する期間制御部を備え」ており、当該「期間制御部」が、「雌の親魚が実際に産卵可能な温度帯域である産卵可能温度帯域よりも狭い温度帯域である産卵温度帯域と、前記産卵温度帯域の下限より低い所定の温度以下の温度帯域である休養温度帯域と、雄の親魚が射精可能な射精温度帯域と、産卵された卵が受精可能な受精温度帯域、を含」む「前記温度帯域、前記温度変化および前記光照射の少なくとも一つに基づいて、前記産卵期間および非産卵期間の少なくとも一つの期間を制御」し、「前記産卵期間において、前記温度制御部が、前記育成水を、前記受精温度帯域に制御することで、受精卵を生成可能」とできる「産卵管理装置」であるのに対して、 甲1発明は、そのような期間制御部を備えていない「産卵試験設備」である点。 (イ)新規性に関する判断 相違点1に係る本件発明1の構成は、甲1に開示されておらず、また、本件発明1は、相違点1に係る構成を有することにより、異なる条件下における親魚の産卵を観察することを目的とした試験装置とは異なり、産卵や受精を行わせる時期と、これらを行わせない時期の制御に着目して、これらを適切に変化させるものとして、親魚の疲労を軽減させ、親魚の寿命を想定した長期間の飼育を可能として、同じ親魚からの産卵や受精を長期間にわたって可能とした結果、同じ親魚からの受精卵の採取ができる期間を長くすることを可能として、水産資源として減少している近海魚の養殖を実現し、また、減少している近海魚の水産資源増加に寄与するという効果を奏するから(本件特許明細書の【0025】~【0027】参照)、相違点1は実質的な相違点である。 したがって、本件発明1は甲1に記載された発明ではない。 (ウ)進歩性に関する判断 a 甲2発明も、異なる条件下において産卵を観察することを目的とする産卵試験設備であり、産卵や受精を行わせる時期と、これらを行わせない時期とに着目して、これらを適切に変化させるものではないから、甲1発明を出発点として相違点1に係る「期間制御部」を設けて、「雌の親魚が実際に産卵可能な温度帯域である産卵可能温度帯域よりも狭い温度帯域である産卵温度帯域と、前記産卵温度帯域の下限より低い所定の温度以下の温度帯域である休養温度帯域と、雄の親魚が射精可能な射精温度帯域と、産卵された卵が受精可能な受精温度帯域、を含」む「前記温度帯域、前記温度変化および前記光照射の少なくとも一つに基づいて、前記産卵期間および非産卵期間の少なくとも一つの期間を制御」し、「前記産卵期間において、前記温度制御部が、前記育成水を、前記受精温度帯域に制御することで、受精卵を生成可能」とできる「産卵管理装置」となすことを開示あるいは示唆するものではない。 b 甲3にはシロギスの産卵期が水温と日長時間に影響されること、甲4には水温と日長を制御することでシロギスから周年にわたり受精卵を得ることが可能であることが示されているが、甲1発明を出発点として相違点1に係る「期間制御部」を設けて、「雌の親魚が実際に産卵可能な温度帯域である産卵可能温度帯域よりも狭い温度帯域である産卵温度帯域と、前記産卵温度帯域の下限より低い所定の温度以下の温度帯域である休養温度帯域と、雄の親魚が射精可能な射精温度帯域と、産卵された卵が受精可能な受精温度帯域、を含」む「前記温度帯域、前記温度変化および前記光照射の少なくとも一つに基づいて、前記産卵期間および非産卵期間の少なくとも一つの期間を制御」し、「前記産卵期間において、前記温度制御部が、前記育成水を、前記受精温度帯域に制御することで、受精卵を生成可能」とできる「産卵管理装置」となすことを開示あるいは示唆するものではない。 c 前記a及びbより、甲1発明において、相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、甲2発明及び甲3~4記載の技術的事項を考慮しても、当業者が容易に想到し得たことではない。 そのため、本件発明1は、甲1発明、甲2発明及び甲3~甲4に記載される事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。 (エ)申立人の主張について a 申立人の主張 申立人は、申立書において、甲1に記載の産卵試験設備において、水槽内の水の温度を20℃あるいは自然海水温度+3℃に制御して、産卵開始日を早めることで、マダイの親魚の非産卵期間の終了のタイミング、及び、産卵期間の開始のタイミングを制御する構成が、本件発明1の「前記親魚の産卵期間および非産卵期間の少なくとも一つを制御する期間制御部」に相当すると主張している(申立書24頁17~末行)。 b 前記aの主張について検討する。 申立人の主張に係る甲1の開示は、「加温飼育により得られた卵の質を明らかにするため,マダイ親魚を異なる設定水温で飼育して,浮上卵率,正常ふ化率および卵径等の変化を調べるため」の「試験」として20℃や自然海水温度+3℃への温度制御を行い、その結果を示したものに過ぎず、本件発明1のように、産卵や受精を行わせる時期と、これらを行わせない時期の制御に着目して、雌の親魚が実際に産卵可能な温度帯域である産卵可能温度帯域よりも狭い温度帯域である産卵温度帯域と、前記産卵温度帯域の下限より低い所定の温度以下の温度帯域である休養温度帯域と、雄の親魚が射精可能な射精温度帯域と、産卵された卵が受精可能な受精温度帯域と、を含む温度帯域、温度変化および光照射の少なくとも一つに基づいて、前記産卵期間および非産卵期間の少なくとも一つの期間を制御する期間制御部を備える産卵管理装置とすることについて開示あるいは示唆するものとは認められない。 よって、申立人の上記主張は、採用することができない。 イ 甲2を主引例として (ア)対比 本件発明1と、甲2発明とを対比する。 a 甲2発明における「トビヌメリの雌雄とともに海水を収容する水槽」、「前記試験水槽及び前記コンクリート水槽の水温及び日長を調整する設備」及び「トビヌメリの雌雄」は、それぞれ、本件発明1における「親魚と育成水を収容可能な収容容器」、「前記育成水の温度を制御する温度制御部と、前記収容容器へ照射する光照射を制御する光照射制御部」及び「近海魚である親魚」に相当する。 b 甲2発明の「前記試験水槽及び前記コンクリート水槽の水温及び日長を調整する設備」は、「秋季産卵を開始させる要因を調べる試験1」において、「1)15L9D/28~29℃、2)15L9D/22~24℃、3)12L12D/22~24℃の条件で飼育」することを可能とするものであるところ、「28~29℃」及び「22~24℃」のいずれも、育成水の温度の範囲を示す温度帯域である。 よって、甲2発明の「前記試験水槽及び前記コンクリート水槽の水温及び日長を調整する設備」は、育成水の温度の範囲を示す温度帯域に基づいて、前記育成水の温度を制御するものであるから、本件発明1の「温度制御部」と、「前記育成水の温度の範囲を示す温度帯域」「に基づいて、前記育成水の温度を制御」する点で共通しており、本件発明1の「前記育成水の温度の範囲を示す温度帯域および前記育成水の温度の変化を示す温度変化の少なくとも一方に基づいて、前記育成水の温度を制御」する「温度制御部」に相当する。 c 甲2発明における「水温及び日長」の調整は、「秋季産卵を開始させる要因を調べるため、また、秋季産卵を終了させる要因を調べるため」に「産卵試験設備」において行っているものであり、親魚(マダイの雌雄)の「産卵期間及び非産卵期間の少なくとも一つを制御する期間制御部」を備えた「産卵管理装置」が「産卵期間」等の「管理」のために行っているものではない。 d 甲2発明における「28~29℃」、「22~24℃」、「20~22℃」、「23℃以上」、「19℃、16℃、14℃、11℃」及び「20℃」のいずれも、「秋季産卵を開始させる要因を調べるため、また、秋季産卵を終了させる要因を調べるため」に設定される温度であり、「産卵期間あるいは非産卵期間」に結びつけて設定される温度ではないから、本件発明1の「期間制御部」が、「前記親魚の産卵期間および非産卵期間の少なくとも一つを制御する」際に用いる温度帯域である「雌の親魚が実際に産卵可能な温度帯域である産卵可能温度帯域よりも狭い温度帯域である産卵温度帯域」、「前記産卵温度帯域の下限より低い所定の温度以下の温度帯域である休養温度帯域」、「雄の親魚が射精可能な射精温度帯域」ないし「産卵された卵が受精可能な受精温度帯域」に相当するものとはいえない。 e 甲2発明における「産卵試験設備」は、産卵に係る設備である点で、本件発明1の「産卵管理装置」と共通する。 f 前記a~eを踏まえると、本件発明1と甲2発明との間の一致点及び相違点は、次のとおりである。 <一致点> 「親魚と育成水を収容可能な収容容器と、 前記育成水の温度を制御する温度制御部と、 前記収容容器へ照射する光照射を制御する光照射制御部と、を備え、 前記温度制御部は、前記育成水の温度の範囲を示す温度帯域および前記育成水の温度の変化を示す温度変化の少なくとも一方に基づいて、前記育成水の温度を制御する 近海魚である親魚の産卵に係る設備。」 <相違点1’> 本件発明1が、「前記親魚の産卵期間および非産卵期間の少なくとも一つを制御する期間制御部を備え」ており、当該「期間制御部」が、「雌の親魚が実際に産卵可能な温度帯域である産卵可能温度帯域よりも狭い温度帯域である産卵温度帯域と、前記産卵温度帯域の下限より低い所定の温度以下の温度帯域である休養温度帯域と、雄の親魚が射精可能な射精温度帯域と、産卵された卵が受精可能な受精温度帯域、を含」む「前記温度帯域、前記温度変化および前記光照射の少なくとも一つに基づいて、前記産卵期間および非産卵期間の少なくとも一つの期間を制御」し、「前記産卵期間において、前記温度制御部が、前記育成水を、前記受精温度帯域に制御することで、受精卵を生成可能」とできる「産卵管理装置」であるのに対して、 甲2発明は、そのような期間制御部を備えていない「産卵試験設備」である点。 (イ)新規性に関する判断 相違点1’に係る本件発明1の構成は、甲2に開示されておらず、また、本件発明1は、相違点1’に係る構成を有することにより、異なる条件下における親魚の産卵を観察することを目的とした試験装置とは異なり、産卵や受精を行わせる時期と、これらを行わせない時期の制御に着目して、これらを適切に変化させるものとして、親魚の疲労を軽減させ、親魚の寿命を想定した長期間の飼育を可能として、同じ親魚からの産卵や受精を長期間にわたって可能とした結果、同じ親魚からの受精卵の採取ができる期間を長くすることを可能として、水産資源として減少している近海魚の養殖を実現し、また、減少している近海魚の水産資源増加に寄与するという効果を奏するから(本件特許明細書の【0025】~【0027】参照)、相違点1’は実質的な相違点である。 したがって、本件発明1は甲2に記載された発明ではない。 (ウ)進歩性に関する判断 a 甲1発明も、異なる条件下において産卵を観察することを目的とする産卵試験設備であり、産卵や受精を行わせる時期と、これらを行わせない時期とに着目して、これらを適切に変化させるものではないから、甲2発明を出発点として相違点1‘に係る「期間制御部」を設けて、「雌の親魚が実際に産卵可能な温度帯域である産卵可能温度帯域よりも狭い温度帯域である産卵温度帯域と、前記産卵温度帯域の下限より低い所定の温度以下の温度帯域である休養温度帯域と、雄の親魚が射精可能な射精温度帯域と、産卵された卵が受精可能な受精温度帯域、を含」む「前記温度帯域、前記温度変化および前記光照射の少なくとも一つに基づいて、前記産卵期間および非産卵期間の少なくとも一つの期間を制御」し、「前記産卵期間において、前記温度制御部が、前記育成水を、前記受精温度帯域に制御することで、受精卵を生成可能」とできる「産卵管理装置」となすことを開示あるいは示唆するものではない。 b 甲3にはシロギスの産卵期が水温と日長時間に影響されること、甲4には水温と日長を制御することでシロギスから周年にわたり受精卵を得ることが可能であることが示されているが、甲2発明を出発点として相違点1’に係る「期間制御部」を設けて、「雌の親魚が実際に産卵可能な温度帯域である産卵可能温度帯域よりも狭い温度帯域である産卵温度帯域と、前記産卵温度帯域の下限より低い所定の温度以下の温度帯域である休養温度帯域と、雄の親魚が射精可能な射精温度帯域と、産卵された卵が受精可能な受精温度帯域、を含」む「前記温度帯域、前記温度変化および前記光照射の少なくとも一つに基づいて、前記産卵期間および非産卵期間の少なくとも一つの期間を制御」し、「前記産卵期間において、前記温度制御部が、前記育成水を、前記受精温度帯域に制御することで、受精卵を生成可能」とできる「産卵管理装置」となすことを開示あるいは示唆するものではない。 c 前記a及びbより、甲2発明において、相違点1’に係る本件発明1の構成とすることは、甲1発明及び甲3~4記載の技術的事項を考慮しても、当業者が容易に想到し得たことではない。 そのため、本件発明1は、甲2発明、甲1発明及び甲3~甲4に記載される事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。 (エ)申立人の主張について a 申立人の主張 申立人は、申立書において、甲2には、コンクリート水槽の水の温度を変えることによって、産卵期間と非産卵期間が制御されていることが開示されているから、甲2に記載の産卵試験設備は、本件発明1の「前記親魚の産卵期間および非産卵期間の少なくとも一つを制御する期間制御部」に相当する構成を有していると主張している(申立書37頁2~9行)。 b 前記aの主張について検討する。 申立人の主張する甲2に記載の事項は、「秋季産卵を開始させる要因を調べる」ため、あるいは、「秋季産卵を終了させる要因を調べる」ために、水温及び日長を調整した結果として、観察された産卵期間について述べたものに過ぎず、本件発明1のように、産卵や受精を行わせる時期と、これらを行わせない時期の制御とに着目して、雌の親魚が実際に産卵可能な温度帯域である産卵可能温度帯域よりも狭い温度帯域である産卵温度帯域と、前記産卵温度帯域の下限より低い所定の温度以下の温度帯域である休養温度帯域と、雄の親魚が射精可能な射精温度帯域と、産卵された卵が受精可能な受精温度帯域と、を含む温度帯域、温度変化および光照射の少なくとも一つに基づいて、前記産卵期間および非産卵期間の少なくとも一つの期間を制御する期間制御部を備える産卵管理装置とすることについて開示あるいは示唆するものとも認められない。 よって、申立人の上記主張は、採用することができない。 ウ 小括 以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲2に記載された発明ではなく、甲1発明、甲2発明及びその他の証拠に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明2~7について 本件発明2~7は、本件発明1の構成をすべて含み、さらに減縮したものであるから、前記(1)と同様の理由により、甲1に記載された発明ではなく、また、甲2に記載された発明ではなく、甲1発明、甲2発明及びその他の証拠に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 特許法第36条4項1号(実施可能要件違反)について (1)申立人の具体的主張 申立人は、申立書において、実施可能要件違反に関し、概略次の主張をしている。 ア 本件発明1では、「温度帯域」として、 (ア)雌の親魚が実際に産卵可能な温度帯域である産卵可能温度帯域 (イ)産卵可能温度帯域よりも狭い温度帯域である産卵温度帯域 (ウ)前記産卵温度帯域の下限より低い所定の温度以下の温度帯域である休養温度帯域 (エ)雄の親魚が射精可能な射精温度帯域 (オ)産卵された卵が受精可能な受精温度帯域 の5つが特定されているものの、これらの具体的な数値範囲は、本件特許明細書には一切記載されておらず、あらゆる「近海魚」について、雌の親魚に確実に産卵を行わせる温度帯域や、産卵時における雌の親魚の体力的な消耗を低減できる温度帯域、射精温度帯域及び受精可能温度帯域が、どのような数値範囲であるかが技術常識であるということはできず、さらに、本件特許明細書には、実際に近海魚を飼育して、産卵、射精及び受精を行ったことの実施例も記載されていないから、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載に基づいて、前記5つの温度帯域としてどのような温度帯域を設定すれば、あらゆる「近海魚の親魚による維持可能な産卵と受精を管理しつつ、親魚の健康生命の維持も図る親魚の産卵管理装置」とすることができるのかを、当業者は理解することができないから、本件発明1及びこれを引用する本件発明2~7を実施するためには、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤、高度な実験などが必要となる。 イ 本件発明2では、1日当たりの光照射時間を第1時間以下とさせることで非産卵期間を生じさせることが特定されており、本件発明4では、1日当たりの光照射時間を第1時間以下とさせることで、産卵期間から非産卵期間に移行させることが特定されているものの、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、光照射時間を第1時間以下とさせることで産卵期間から非産卵期間となることのメカニズムや、実際に、産卵期間から非産卵期間に移行したことを示す実験例の記載は一切なく、また、あらゆる近海魚について、産卵期間から非産卵期間に移行するために光照射時間の上限をどの程度にすべきかが、本件特許出願当時の技術常識であるともいえず、また、近海魚の選択、光照射時間及び水温の詳細な設定について本件特許明細書の発明の詳細な説明には説明がないこと、さらに、甲2の図6のように、光照射時間を短くしても、非産卵期間にはならない場合があることから、本件発明2、4及びこれらを引用する本件発明3、5~7を実施するためには、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤、高度な実験などが必要となる。 ウ 本件発明3では、1日当たりの光照射時間を前記第1時間より長い第2時間以上とさせることで産卵期間を生じさせることが特定されているものの、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、光照射時間を第2時間以上とさせることで産卵期間が生じるメカニズムや、実際に産卵期間が生じたことを示す実験例の記載はなく、また、あらゆる近海魚について、産卵期間を生じさせるための光照射時間の下限があることが、本件特許出願当時の技術常識であるともいえず、また、甲2の図6のように、光照射時間を長くしても、産卵期間にはならない場合があることから、本件発明3及びこれを引用する本件発明5~7を実施するためには、当業者に期待し得る程度を超える試行錯誤、高度な実験などが必要となる。 (2)判断基準 本件発明1ないし本件発明7は物の発明であるところ、物の発明の実施とは、その物の生産及び使用等をする行為であるから、物の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明において、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づき、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があることを要する。 (3)発明の詳細な説明における記載 本件特許明細書の発明の詳細な説明には、次の記載がある。 「【0083】 (温度制御) 温度制御部3は、温度帯域および温度変化の少なくとも一つを制御する。ここで、温度帯域は、産卵温度帯域および休養温度帯域の少なくとも一つを含む。産卵温度帯域に制御することで、雌の親魚201は、産卵を行う温度環境の中で生息することになる。このため、光照射制御部5での光照射の制御と併せて、産卵する産卵期間を生じさせることに繋がる。 【0084】 産卵期間が生じさせられることで、雌の親魚201は、産卵する。雄の親魚202の射精と併せて、目的とする受精卵が得られる。また、受精卵は、図1の第2段階の孵化育成に用いられる。この孵化育成による稚魚までの育成が、この受精卵をスタートとして実行される。 【0085】 また、休養温度帯域は、雌の親魚201が産卵をせずに休養できるための温度環境である。休養温度帯域とされることで、雌の親魚201は、産卵するべき時期ではないと反応する。光照射制御部5による光照射の制御と併せて、休養温度帯域となると、雌の親魚201は、産卵をせずに非産卵期間となる。 【0086】 産卵しない非産卵期間が設けられることで、雌の親魚201は、休息する時間を得ることができる。産卵することは、大きなエネルギーを消費して雌の親魚201への負担となる。この負担が軽減される非産卵期間が生じることで、雌の親魚201の寿命をあるべき長さに近づけることができる。 【0087】 また、非産卵期間が設定されることで、雌の親魚201が身体を休めることができる。身体を休める期間があることで、上記のように寿命を全うしやすくなることに加えて、健康状態を維持できる。さらには、産卵期間での産卵を十分に行わせることもできるし、産卵される卵の生体的な質を上げることができる。 【0088】 このように、温度制御部3は、温度帯域および温度変化の少なくとも一つを制御する。温度帯域だけでなく、温度変化によって、産卵期間と非産卵期間の切り替えにつなげることも可能である。期間制御部9は、温度変化および光照射に基づいて、産卵期間と非産卵期間とを制御してもよい。 【0089】 温度帯域は、図4に示されるように、産卵温度帯域および休養温度帯域の少なくとも一つを含む。図4は、本発明の実施の形態1における温度帯域の相関関係図である。産卵温度帯域は、雌の親魚201が産卵可能な温度帯域である産卵可能温度帯域よりも狭い温度帯域である。狭い温度帯域であることで、収容容器2において、雌の親魚201が確実に産卵できるようになる。また、産卵可能温度帯域よりも狭い産卵温度帯域に制御されることで、産卵に要する体力を節減できるので、雌の親魚の健康状態を維持しながら、必要となる産卵を行わせることができる。 【0090】 また、休養温度帯域は、産卵温度帯域の下限より低い温度帯域である。すなわち、図4に示されるように、産卵温度帯域の下限温度よりも下のところの帯域において、休養温度帯域が設定される。休養温度帯域が産卵温度帯域の下限温度よりも下の帯域に設けられる温度帯域であることで、雌の親魚201は、産卵をしないでよい期間であることを、温度面から確実に把握できる。この把握によって、雌の親魚201は、産卵せずに体力を温存しつつ休息状態となることができる。 【0091】 また、温度制御部3は、育成水20の温度帯域を、雄の親魚202が射精可能な射精温度帯域に制御してもよい。あるいは、産卵された卵が受精可能な受精温度帯域に制御してもよい。図4には、射精温度帯域および受精温度帯域が示されている。図4では、射精温度帯域は、産卵可能温度帯域よりも狭く、受精温度帯域は、射精温度帯域よりも狭い。このような帯域に制御されることで、雌の親魚201が産卵するだけでなく、雄の親魚202による受精卵が確実に得られるようになる。 【0092】 なお、図4での、射精温度帯域と受精温度帯域との相関関係、射精温度帯域と産卵温度帯域との相関関係、受精温度帯域と産卵温度帯域との相関関係は、一例であり、図4に示す温度に厳密に限られるものではない。上限温度、下限温度の値、相対関係、温度帯域の幅などは、魚種、外部環境、季節や時期、場所などに応じて、適宜設定されればよい。 【0093】 温度制御部3は、上述のような温度帯域で制御する。このとき、温度帯域は自動的にプログラミングされて設定されていてもよいし、作業者による操作で設定されることでもよい。 【0094】 (光照射制御部) 光照射制御部5は、収容容器2への光の照射を制御する。図2では、光照射制御部5が、収容容器2に光を照射している状態を示している。光照射を制御するとは、自然光を照射する時間やその量を制御したり、自然光と人工光をミックスして照射する時間やその量を制御したり、人工光を照射する時間やその量を制御したり、自然光や人工光の照射を遮蔽や減衰させたりすることである。 【0095】 時間の量とは、照射時間帯を変化させたり、照射の時間量を変化させたりすることである。 【0096】 光照射制御部5は、収容容器2へ光を照射したり照射を遮断したりできる。すなわち、光照射制御部5は、光の照射時間や照射強度、照射タイミングを制御できる。例えば、1日当たりの光照射時間を制御したり、光照射の時刻を制御したりできる。また、光照射の時間間隔を制御することもできる。例えば、何分おきあるいは何時間おきに光を照射する、あるいは、特定の時間に光を照射するなどを制御できる。 【0097】 図5のように、光照射制御部5は、収容容器2に光を遮断することも制御の一つとして行ってもよい。例えば、照射される光として自然光(太陽光)が用いられ、光照射制御部5は、この自然光の照射時間を制御する。自然光が照射されており、照射されたくない時間において、この自然光を遮断するなどである。 【0098】 人工光の場合でも、遮蔽を行うことで、その照射量を制御することもできる。勿論、人工光の場合であって、光源を光照射制御部5が備える場合には、光源の照射量そのものを制御することで、遮蔽による照射量の制限を行ってもよい。 【0099】 図5は、本発明の実施の形態1における産卵管理装置のブロック図である。遮蔽は、遮蔽板などの遮蔽機構によって実現されればよい。あるいは、遮蔽のみでなく、照射量を減衰させることでもよい。なお、遮蔽機構は、図5のように光照射制御部5と収容容器2との間に備わってもよいし、光照射制御部5内部に備わっていてもよい。 【0100】 光照射制御部5は、人工光を用いる場合には、疑似的な人工的に作られた自然光や太陽光を照射することでもよい。例えば、LEDなどにより特定範囲の波長に調整された人工光が照射されてもよい。太陽光などの自然光は気象によって左右される。このため、人工光であれば、必要な光照射を確実に与えることができる。 【0101】 LEDなどが用いられる場合には、親魚200が生息しやすい波長や照射レベルに合わせることも容易となるのでメリットがある。また、産卵された卵の健康状態の維持に適した波長などが用いられるメリットもある。 【0102】 また、自然光と人工光を組み合わせて、光照射制御部5は、光を照射することでもよい。自然光で十分な場合には、光照射制御部5は、自然光を収容容器2に付与させる。一方で、自然光で不十分な場合には、光照射制御部5は、人工光を収容容器2に照射する。このとき、自然光のレベルが不十分な場合には、光照射制御部5は、自然光に追加して人工光を照射する。あるいは、自然光が照射できない時間帯において(天候により自然光が無い、夜間などの自然光がない時間帯など)、人工光を照射する。 【0103】 このように、光照射制御部5は、収容容器2に必要となる時間量や時間帯などをコントロールしながら、光を照射できる。この光照射にも基づいて、期間制御部9は、産卵期間と非産卵期間とを切り替えることができる。親魚200は、照射される光の時間量や照射レベルなどに基づいて、自分の生理現象を変化させたり決定したりするからである。 【0104】 なお、光照射制御部5は、太陽光もしくは疑似太陽光を光として照射することでもよい。 【0105】 (期間制御部による期間制御) 上述したように、期間制御部9は、温度制御部3での温度制御および光照射制御部5での光照射の制御の少なくとも一つに基づいて、産卵期間および非産卵期間を切り替える。すなわち、産卵期間と非産卵期間とを生じさせる。このとき、温度制御部3での温度制御および光照射制御部5での光照射の制御の両方に基づいて、産卵期間と非産卵期間を切り替えることでもよい。 【0106】 また、温度制御部3は、温度帯域および温度変化の少なくとも一方を制御する。このため、期間制御部9は、温度帯域および温度変化の少なくとも一方を用いて、産卵期間および非産卵期間を切り替える。 【0107】 図6は、本発明の実施の形態1における期間制御部による制御を示す模式図である。産卵期間および非産卵期間を切り替える条件との関係を示している。期間制御部9は、図6のような条件になるように温度制御部3と光照射制御部5を制御することで、産卵期間と非産卵期間とを切り替えることができる。 【0108】 期間制御部9は、温度制御部3において育成水20を休養温度帯域に制御させる。併せて、光照射制御部5において、1日当たりの光照射時間を第1時間とさせる。すなわち、休養温度帯域および第1時間以下の光照射時間とすることで、期間制御部9は、非産卵期間を生じさせる。図6の左端の状態である。雌の親魚201がいる育成水20の温度が休養温度帯域とされて、光照射の時間が第1時間以下となることで、雌の親魚201は、生理的に産卵に適した時期ではないと判断する(生態的本能による)。 【0109】 この生理的な判断によって、この条件が整っていると、雌の親魚201は、産卵を行わない。この結果、非産卵期間が生じる。収容容器2全体が、この温度と光照射によって制御されるので、収容容器2内部の雌の親魚201は、非産卵状態となる。この結果、産卵管理装置1では、非産卵期間が生じる。 【0110】 産卵期間は、詳細に言えば、図6に示されるように産卵開始から産卵停止までの期間である。この期間が、雌の親魚201が産卵を実際に行っている産卵期間である。 【0111】 期間制御部9は、温度制御部3において育成水20を産卵温度帯域に制御させる。併せて、光照射制御部5において、1日当たりの光照射時間を第2時間以上とさせる。すなわち、産卵温度帯域および第2時間以上の光照射時間とすることで、期間制御部9は、産卵期間を生じさせる。図6の真ん中エリアの状態である。 【0112】 雌の親魚201は、この温度および光照射の制御によって、産卵を行うようになる。雌の親魚201がいる育成水20の温度が産卵温度帯域とされて、光照射の時間が第2時間以上となることで、雌の親魚201は、生理的に産卵に適した時期であると判断する(生態的本能による)。 【0113】 この生理的な判断によって、このような条件が整っていると、雌の親魚201は産卵を行う。この結果、産卵期間が生じる。収容容器2全体が、この温度と光照射によって制御されるので、収容容器2内部の雌の親魚201は、産卵状態となる。この結果、産卵管理装置1では、産卵期間が生じる。 【0114】 (非産卵期間~産卵期間) 産卵期間は、非産卵期間から産卵開始に変化することで開始される。また、産卵期間において産卵停止となっていくことで、産卵期間から非産卵期間へ変化する。 【0115】 期間制御部9は、温度制御部3により育成水20を産卵温度帯域とさせ、光照射制御部5により光照射時間を第2時間以上とさせることで、非産卵期間から産卵開始に変化させることができる。この変化により、非産卵期間から産卵期間に変化する。産卵開始となって、温度帯域と光照射の制御状態が維持されることで、産卵期間が維持される。 【0116】 このように、休養温度帯域から産卵温度帯域への変化および第1時間以下から第2時間以上の状態への変化に基づいて、産卵開始が生じる。こうして、産卵停止による非産卵期間への移行までが、産卵期間として制御される。 【0117】 産卵期間において、期間制御部9は、温度制御部3により育成水20を休養温度帯域とさせ、光照射制御部5により光照射時間を第1時間以下とさせることで、産卵停止状態に移行させる。この移行に伴って、産卵期間から非産卵期間へ変化する。 【0118】 産卵期間は、産卵開始から産卵停止までにより生じさせられる。産卵停止による産卵停止から次の産卵開始までが、非産卵期間とされる。このような切り替えによって、収容容器2において、産卵期間と非産卵期間とが切り替えられながら、親魚200の健康を維持しながら、全体として長期間にわたっての産卵を実現させることができる。 【0119】 (産卵停止) 期間制御部9は、温度制御部3により育成水20を産卵温度帯域から徐々に低下させる温度変化を生じさせる。併せて、光照射制御部5による光照射時間を第1時間以下とさせる。このような温度変化と光照射時間の切り替えによって、期間制御部9は、産卵期間を停止させる産卵停止の状態変化を生じさせる。 【0120】 ここで、温度制御部3は、産卵温度帯域から徐々に温度を低下させていく制御を行うことで、確実な切り替わりによる産卵停止を生じさせることができる。このような制御が行われることで、産卵期間から非産卵期間へ、確実に変化させることができる。また、産卵期間から非産卵期間への変化において、雌の親魚201に身体的負担をかけにくいスムーズな変化とすることができる。 【0121】 特に徐々に温度が低下していくことで、雌の親魚201は、生理的に産卵すべきではない環境になっていることを把握できる(生態的本能による判断)。この把握に基づいて、雌の親魚201は、産卵を止めて非産卵期間に移行する。 【0122】 徐々に温度を低下させることおよび休養温度帯域に変化させることが相まって、雌の親魚201は、健康的な状態を維持して非産卵期間に確実に移行できる。 【0123】 これらの結果、図3に示されるように、産卵期間と非産卵期間を切り替えながら、期間制御部9は制御することができる。このとき、魚種、親魚200の寿命、親魚200の年齢、外部環境、産卵管理装置1の設置場所などに応じて、産卵期間の時間的長さ、非産卵期間の時間的長さ、産卵期間と非産卵期間の切り替え頻度などは、適宜定められればよい。 【0124】 また、休養温度帯域、産卵温度帯域、第1時間、第2時間のそれぞれも、上述のような状況に応じて、適宜定められれば良い。なお、第1時間は第2時間より短い時間である。 【0125】 このように、産卵期間および非産卵期間が変化しながら生じさせられることによって、同一の雌の親魚201が、複数の期間にわたって産卵可能である。特に、一度の産卵期間に集中して産卵して体力を消耗することが軽減できる。この軽減によって、生涯においてより長い期間およびより多くの産卵を可能とできる。また、産卵時期を分散させることで、図1の第2段階の孵化育成での効率化を図ることもできる。勿論、雌の親魚201の健康的な寿命を延ばすこともできる。 【0126】 以上のように、実施の形態1における親魚の産卵管理装置1は、親魚200の健康寿命を延ばしながら、効率的な産卵量の確保を実現できる。」 (4)判断 ア 前記(1)アの主張について (ア)本件特許明細書「なお、図4での、射精温度帯域と受精温度帯域との相関関係、射精温度帯域と産卵温度帯域との相関関係、受精温度帯域と産卵温度帯域との相関関係は、一例であり、図4に示す温度に厳密に限られるものではない。上限温度、下限温度の値、相対関係、温度帯域の幅などは、魚種、外部環境、季節や時期、場所などに応じて、適宜設定されればよい。」(段落【0092】より抜粋)、「このように、光照射制御部5は、収容容器2に必要となる時間量や時間帯などをコントロールしながら、光を照射できる。この光照射にも基づいて、期間制御部9は、産卵期間と非産卵期間とを切り替えることができる。親魚200は、照射される光の時間量や照射レベルなどに基づいて、自分の生理現象を変化させたり決定したりするからである。」(【0103】より抜粋)、「期間制御部9は、温度制御部3において育成水20を休養温度帯域に制御させる。併せて、光照射制御部5において、1日当たりの光照射時間を第1時間とさせる。すなわち、休養温度帯域および第1時間以下の光照射時間とすることで、期間制御部9は、非産卵期間を生じさせる。図6の左端の状態である。雌の親魚201がいる育成水20の温度が休養温度帯域とされて、光照射の時間が第1時間以下となることで、雌の親魚201は、生理的に産卵に適した時期ではないと判断する(生態的本能による)。」(【0108】より抜粋)、「この生理的な判断によって、この条件が整っていると、雌の親魚201は、産卵を行わない。この結果、非産卵期間が生じる。収容容器2全体が、この温度と光照射によって制御されるので、収容容器2内部の雌の親魚201は、非産卵状態となる。この結果、産卵管理装置1では、非産卵期間が生じる。」(【0109】より抜粋)、「雌の親魚201は、この温度および光照射の制御によって、産卵を行うようになる。雌の親魚201がいる育成水20の温度が産卵温度帯域とされて、光照射の時間が第2時間以上となることで、雌の親魚201は、生理的に産卵に適した時期であると判断する(生態的本能による)。」(【0112】より抜粋)、「この生理的な判断によって、このような条件が整っていると、雌の親魚201は産卵を行う。この結果、産卵期間が生じる。収容容器2全体が、この温度と光照射によって制御されるので、収容容器2内部の雌の親魚201は、産卵状態となる。この結果、産卵管理装置1では、産卵期間が生じる。」(【0113】より抜粋)の記載によれば、本件特許明細書に記載される育成水の温度制御及び光照射時間の制御は、照射される光の時間量や照射レベル、育成水の温度に基づいて、親魚の生理現象を変化させるものであって、雌の親魚が、生理的に産卵に適した時期ではないと判断し、産卵を行わない結果、非産卵期間を生じさせ、雌の親魚が、生理的に産卵に適した時期であると判断し、産卵を行う結果、産卵期間を生じさせるものである。 (イ)本件特許明細書「図5のように、光照射制御部5は、収容容器2に光を遮断することも制御の一つとして行ってもよい。例えば、照射される光として自然光(太陽光)が用いられ、光照射制御部5は、この自然光の照射時間を制御する。自然光が照射されており、照射されたくない時間において、この自然光を遮断するなどである。」(【0097】より抜粋)、「光照射制御部5は、人工光を用いる場合には、疑似的な人工的に作られた自然光や太陽光を照射することでもよい。例えば、LEDなどにより特定範囲の波長に調整された人工光が照射されてもよい。太陽光などの自然光は気象によって左右される。このため、人工光であれば、必要な光照射を確実に与えることができる。」(【0100】より抜粋)、「なお、光照射制御部5は、太陽光もしくは疑似太陽光を光として照射することでもよい。」(【0104】より抜粋)の記載より、光照射制御部は、太陽光もしくは疑似太陽光の照射時間を制御するものであることが認められる。 (ウ)本件特許明細書「これらの結果、図3に示されるように、産卵期間と非産卵期間を切り替えながら、期間制御部9は制御することができる。このとき、魚種、親魚200の寿命、親魚200の年齢、外部環境、産卵管理装置1の設置場所などに応じて、産卵期間の時間的長さ、非産卵期間の時間的長さ、産卵期間と非産卵期間の切り替え頻度などは、適宜定められればよい。」(段落【0123】より抜粋)及び「また、休養温度帯域、産卵温度帯域、第1時間、第2時間のそれぞれも、上述のような状況に応じて、適宜定められれば良い。なお、第1時間は第2時間より短い時間である。」(段落【0124】より抜粋)の記載によれば、各温度帯域の上限温度、下限温度の値、幅、第1時間及び第2時間は、魚種に応じて、適宜設定されるものである。 (エ)上記(ア)~(ウ)より、本件特許明細書に記載される産卵管理装置は、魚種に応じて適宜設定される各温度帯域に基づいて育成水の温度を制御し、魚種に応じて適宜設定される第1時間、第2時間に基づいて太陽光あるいは疑似太陽光の照射時間を制御して、親魚の生理現象を変化させて、雌の親魚に生理的に産卵に適した時期ではないと判断させて、産卵を行わせない結果、非産卵期間を生じさせ、雌の親魚に生理的に産卵に適した時期であると判断させて、産卵を行わせる結果、産卵期間を生じさせるものである。 (オ)本件特許明細書に接し、近海魚の養殖を行おうとする当業者であれば、上記(エ)の魚種に応じた温度帯域、第1時間、第2時間の設定に際して、養殖しようとする魚種の生態、すなわち、生息する海域、その海域の水温、産卵期を調べる程度のことは期待できる。 そして、当業者であれば、各温度帯域を魚種に応じて適宜設定するのに際して、産卵させようとする魚種(親魚)の生息海域の産卵期の水温を参考にして産卵温度帯域を定め、また、産卵させようとする魚種(親魚)の生息海域の産卵する季節の水温を参考にして、これよりも低くなるように休養温度帯域を定めることに、過度の試行錯誤を要するとはいえない。 (カ)以上のとおりであるから、本件発明1及びこれを引用する本件発明2~7を実施するのに際して、当業者であれば、養殖しようとする魚種の生息する海域、その海域の水温、産卵期を調べて、これらを利用することが期待できるのであるから、過度の試行錯誤を要するとはいえない。 イ 前記(1)イ、ウの主張について (ア)太陽光の照射時間が季節により変わることは一般常識であるところ、前記ア(エ)からして、当業者であれば、親魚に産卵に適した時期であるという判断をさせるための光照射時間(本件発明3の「第2時間」以上の光照射時間)を、産卵させようとする魚種(親魚)の生息海域における、産卵する季節の日照時間を参考にして定め、親魚の生態的本能により産卵に適した時期でないという判断をさせるための光照射時間(本件発明2、4の「第1時間」以下の光照射時間)を、産卵させようとする魚種(親魚)の生息海域における、産卵する季節の日照時間を参考にして、これよりも短く定めることに、過度の試行錯誤を要するとはいえない。 (イ)本件発明は、近海魚である親魚の産卵管理装置に係るものであるところ、近海魚には、日長時間が所定の長さ以上であることを条件として産卵する魚種がいることは知られている(一例として、甲3参照)。また、本件発明は、あらゆる近海魚を対象とすることを特定しているわけではないから、近海魚の中に一部、光照射時間を短くしても非産卵期間にはならず、光照射時間を長くしても産卵期間にはならない魚種が存在したとしても、本件発明が実施できないことになるものでもない。 (ウ)以上のとおりであるから、本件発明2~4及びこれらを引用する本件発明5~7を実施するために、過度の試行錯誤を要するとは認められない。 (5)小括 以上のとおりであるから、本件発明は、当業者が発明の詳細な説明の記載及び技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、実施できるものであり、本件特許明細書の発明の詳細な説明は、本件発明を当業者が過度の試行錯誤を要することなく実施することができる程度の記載があるものである。 よって、本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載は、本件発明について、特許法36条4項1号に規定する実施可能要件を充足する。 4 特許法第36条6項2号(明確性要件違反)について (1)申立人の具体的主張 申立人は、申立書において、明確性要件違反に関し、概略次の主張をしている。 ア 本件発明1は、「近海魚である親魚の産卵管理装置」を要件とするところ、「近海魚」については、当業者の技術常識からすると、どのような魚種が含まれるのか必ずしも明らかではなく、本件特許明細書の段落【0151】では、近海魚の例が幾つか挙げられているものの、「近海魚」の定義は記載されておらず、また、例示された「近海魚」の中には、技術常識からして近海魚には該当しない「カニ類」も含まれており、さらに、段落【0152】には、「これらは一例であり、他の種類の近海魚も含むことを除外するものではない。」と記載されているため、当業者が、本件発明1の「近海魚」として、どのような魚種が含まれているのか理解することができないため、本件発明1及びこれを引用する本件発明2~7は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である。 イ 本件発明1の「産卵温度帯域」は、「雌の親魚が実際に産卵可能な温度帯域である産卵可能温度帯域よりも狭い温度帯域である」を要件とするところ、この「産卵温度帯域」が、「産卵可能温度帯域」よりもどのくらい狭いのかは、本件特許明細書の発明の詳細な説明には何ら記載されておらず、また、そのような温度帯域が本願出願当時の当業者における技術常識であるともいえないから、当業者は、「産卵温度帯域」がどのような温度帯域であるかを理解することができず、産卵管理装置で制御される温度が、本件発明1で特定される「産卵温度帯域」の範囲に含まれるのか否かを理解することができないため、本件発明1及びこれを引用する本件発明2~7は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である。 ウ 本件発明4では、「前記温度制御部において、前記育成水を前記産卵温度帯域から徐々に低下させる」ことが特定されているものの、どのくらいの速度で温度を低下させた場合に「徐々に低下させる」に該当するのか本件特許明細書の記載をみても明らかではなく、また、段階的に低下させることが「徐々に低下させる」ことに該当するのか否か、明らかではなく、当業者は、産卵管理装置で制御される冷却速度が、本件発明4で特定される「徐々に低下させる」ことに該当するのか否かを理解することができない。よって、本件発明4及びこれを引用する本件発明5~7は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確である。 (2)判断基準 特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 (3)判断 ア 「近海魚」について 近海魚に含まれる魚種について諸説あるとしても、当業者であれば、どのような魚種が含まれ得るのかは理解し得るところである。 また、本件特許明細書の段落【0151】に「カニ類」も含まれていることは、本件特許明細書「本発明は、これらの課題に鑑み、近海魚の親魚による維持可能な産卵と受精を管理しつつ、親魚の健康生命の維持も図る親魚の産卵管理装置を提供することを目的とする。」(【0023】より抜粋)、「これらの結果、水産資源として減少している近海魚の養殖を実現できる。また、減少している近海魚の水産資源増加に寄与できる。」(【0027】より抜粋)の記載からすると、親魚による維持可能な産卵と受精を管理しつつ、親魚の健康生命の維持も図る養殖の実現により水産資源増加に寄与できる近海魚として、カニ類を含む(加える)ことを意味するものと解される。 以上のとおりであるから、本件発明1の「近海魚」の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。 イ 「産卵可能温度帯域よりも狭い温度帯域である産卵温度帯域」について 産卵可能温度帯域は、親魚である近海魚に応じて適宜に定まると理解される。 「産卵温度帯域」は、「産卵可能温度帯域よりも狭い」と特定されており、前述のとおり「産卵可能温度帯域」が適宜に定まるから、これよりも狭い「産卵温度帯域」についても、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確となるものではない。 ウ 「前記育成水を前記産卵温度帯域から徐々に低下させる」について 本件特許明細書の「ここで、温度制御部3は、産卵温度帯域から徐々に温度を低下させていく制御を行うことで、確実な切り替わりによる産卵停止を生じさせることができる。このような制御が行われることで、産卵期間から非産卵期間へ、確実に変化させることができる。また、産卵期間から非産卵期間への変化において、雌の親魚201に身体的負担をかけにくいスムーズな変化とすることができる。」(【0120】より抜粋)及び「徐々に温度を低下させることおよび休養温度帯域に変化させることが相まって、雌の親魚201は、健康的な状態を維持して非産卵期間に確実に移行できる。」(【0120】より抜粋)の記載からして、産卵温度帯域から(休養温度帯域へ)徐々に温度を低下させることは、温度変化をスムーズなものとすることにより、雌の親魚に身体的負担をかけにくくし、健康的な状態を維持して非産卵期間に確実に移行させることを目的としたものと認められる。 明細書のこうした記載を参酌しても、さほど急激ではなく徐々に温度を低下させることが理解され、その点について、「前記育成水を前記産卵温度帯域から徐々に低下させる」の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。 (4)小括 以上のとおりであるから、本件発明は明確であり、特許法36条6項2号の規定を充足する。 5 特許法第36条6項1号(サポート要件違反)について (1)申立人の具体的主張 申立人は、申立書において、サポート要件違反に関し、概略次の主張をしている。 本件明細書の段落【0023】、【0025】及び【0026】の記載を考慮すると、本件発明1~7は、雌の親魚の飼育中に「産卵温度帯域」よりも低い「休養温度帯域」で飼育する期間を設けて雌の親魚を休ませることで、「親魚による維持可能な産卵と受精を管理しつつ、親魚の健康生命の維持も図る」という課題を解決しようとしているものと解されるところ、魚の飼育温度が過度に低くなると、魚の生理機能が低下し、健康に悪影響を及ぼすことも当然予想されるところであるから、魚の健康状態を維持するためには、最低限必要な温度環境下で飼育されるべきであると考えられる。 しかしながら、本件発明1では、「休養温度帯域」について、単に「産卵温度帯域の下限より低い所定の温度以下の温度帯域である」と特定されているのみで、その温度の下限は何ら限定されていないから、本件発明1及びこれを引用する本件発明2~7は、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えており、本件特許の特許請求の範囲の記載はサポート要件を満たしていない。 (2)判断基準 特許請求の範囲の記載がサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲内のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも、当業者が出願時の技術常識に照らし、当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 (3)判断 本件特許明細書における「本発明は、これらの課題に鑑み、近海魚の親魚による維持可能な産卵と受精を管理しつつ、親魚の健康生命の維持も図る親魚の産卵管理装置を提供することを目的とする。」(【0023】より抜粋)の記載から明らかなように、本件発明1は、親魚の健康生命の維持も図るものである。 また、本件特許明細書における「この構成により、期間制御部は、非産卵期間を生じさせることができ、かつ雌の親魚201が、産卵による体力消耗をしないように休養させることができる。」(【0036】より抜粋)の記載から明らかなように、本件発明1の非産卵期間は、雌の親魚が、産卵による体力消耗をしないように休養させるものである。 しかるに、親魚の健康生命の維持を図り、産卵による体力消耗をしないように休養させるためには、「休養温度帯域」が、健康生命の維持を妨げない範囲のものであることは、当業者に自明のことである。 したがって、「前記産卵温度帯域の下限より低い所定の温度帯域である休養温度帯域」について、請求項の記載より、特に下限を明記していないからといって、休養にならないような極端に低い温度であると理解すべき事情はない。 以上のとおりであるから、本件発明1が、当業者が出願時の技術常識に照らして、当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものでないということはできず、本件発明1を引用する本件発明2~7についても同様である。 (4)小括 以上のとおりであるから、本件発明は発明の詳細な説明に記載された発明であり、特許法36条6項1号の規定を充足する。 第5 むすび 以上のとおり、本件発明は、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。 また、他に本件発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700204

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    共通の審決分類: 113・A01K、121・A01K、536・A01K、537・A01K
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