特許異議申立
2025-700899
リサイクルされたアルミニウムスクラップの鋳造
- 審判番号
- 2025-700899
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-128289
- 登録番号
- 7653393
- 請求日
- 2025年09月17日
- 審決日
- 2026年01月19日
- 公報発行日
- 2026年02月27日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】ノベリス・インコーポレイテッド
- 【権利者代理人】青木 篤
- 【権利者代理人】三橋 真二
- 【権利者代理人】関根 宣夫
- 【権利者代理人】青木 修二郎
- 【権利者代理人】村上 智史
- 【権利者代理人】河原 肇
- 【異議申立人】小林 瞳
- 審判長/審判官
- 審判長 富永 泰規
- 審判官 阿川 寛樹
- 審判官 酒井 英夫
- 分類
- P1651.537-Y (C22C) / P1651.536-Y (C22C) / P1651.121-Y (C22C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7653393号発明「リサイクルされたアルミニウムスクラップの鋳造」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7653393号の請求項1~8に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本件の特許第7653393号(以下「本件特許」という。)の請求項1~8に係る特許についての出願(特願2022-128289号。以下「本願」という。)は、平成30年 3月23日(パリ条約による優先権主張 平成29年 3月23日 (US)アメリカ合衆国)を出願日とする特願2019-552143号の一部を令和 4年 8月10日に新たな特許出願としたものであって、令和 7年 3月19日にその特許権の設定登録がなされ、同年 3月28日に特許掲載公報が発行された。本件は、その後、令和 7年 9月17日に、その請求項1~8(全請求項)に係る特許について、特許異議申立人である小林 瞳(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~8に係る発明は、本願の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。なお、以下において、本件特許の請求項1~8に係る発明を「本件発明1」~「本件発明8」といい、総称して「本件発明」という。また、本願の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。
「【請求項1】
0.1重量%~0.9重量%のCu、0.25重量%~0.7重量%のFe、0.6重量%~5.0重量%のMg、0.1重量%~0.9重量%のMn、0.01重量%~1.0重量%のSi、0.01重量%~0.15重量%のTi、0.01重量%~5.0重量%のZn、0.01重量%~0.09重量%のCr、0.01重量%~0.1重量%のZr、および、最大0.15重量%までの不純物を含み、残部がAlである元素組成を有し、Fe含有成分を含むアルミニウム合金を含む金属製品であって、
前記不純物が、Sn、Ga、Ca、Bi、Na、Pb、Li、W、Mo、Ni、およびVから選択された少なくとも1種を、各元素について0.05重量%以下の量で含む、
金属製品。
【請求項2】
前記アルミニウム合金が、約0.2~0.8重量%のCu、0.3重量%~0.6重量%のFe、1.4重量%~3.0重量%のMg、0.2重量%~0.7重量%のMn、0.2重量%~0.5重量%のSi、0.02重量%~0.1重量%のTi、0.02重量%~3.0重量%のZn、0.02重量%~0.09重量%のCr、0.02重量%~0.05重量%のZr、および、最大0.15重量%までの不純物を含み、残部がAlである元素組成を有する、請求項1に記載の金属製品。
【請求項3】
前記金属製品が、少なくとも100MPaの降伏強度を備える、請求項1または2に記載の金属製品。
【請求項4】
前記金属製品が、少なくとも210MPaの極限引張強度を備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の金属製品。
【請求項5】
前記金属製品が、少なくとも18%の均一伸びを備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の金属製品。
【請求項6】
前記金属製品が、少なくとも20.5%の全伸びを備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の金属製品。
【請求項7】
前記Fe含有成分が、約0.6μm~約1.8μmの範囲の長さを有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の金属製品。
【請求項8】
前記金属製品が、約3以下の幅対高さの比率を有する金属間粒子を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の金属製品。」
第3 申立理由の概要
申立人は、証拠方法として、下記5に示した甲第1~3号証(以下、「甲1」~「甲3」という。)を提出し、以下の理由により、本件特許の請求項1~8に係る特許を取り消すべきものであると主張している。
1 申立理由1(サポート要件)
本件特許の特許請求の範囲の請求項1~8の記載は、必須元素としてZrを0.01重量%~0.1重量%または0.02重量%~0.1重量%含む金属製品を特定するものであるが、本件明細書には、Zrを上記の範囲で具備する具体例は1例も記載されておらず、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~8の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものとはいえないから、請求項1~8に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
2 申立理由2(明確性)
本件特許の特許請求の範囲の請求項1~8の記載は、明確ではなく、請求項1~8に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
3 申立理由3(実施可能要件)
上記1のとおり、本件明細書には、本件発明の実施例が一切記載されておらず、本件発明の金属製品が製造できるのか、所期の目的が達成できるように使用できるのかが不明であるから、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、請求項1~8に係る発明について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものとはいえず、請求項1~8に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
4 申立理由4(進歩性)
(1)申立理由4-1
本件発明1~6は、甲1に記載された発明及び甲3に記載された周知慣用技術に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明1~6に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2)申立理由4-2
本件発明1~2は、甲2に記載された発明及び甲3に記載された周知慣用技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件発明1~2に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
5 証拠方法
甲1:特開2011-252212号公報
甲2:特開2008-19483号公報
甲3:アルミニウムハンドブック(第7版)、社団法人日本アルミニウム協会、2007年1月31日発行、第18頁
第4 当合議体の判断
以下に述べるとおり、当合議体は、上記第3に示した申立理由1~4のいずれによっても、本件特許の請求項1~8に係る特許を取り消すことはできないと判断する。
1 申立理由1(サポート要件)
(1)本件明細書の記載
本件明細書には、以下の記載がある。なお、下線は当合議体が付したものである。また、「・・・」は記載の省略を表す。以下同様である。
ア 「【0002】
本開示は、一般に金属鋳造に関し、より具体的には、使用済み飲料缶スクラップなどのリサイクルされたスクラップを使用するアルミニウム鋳造の改善に関する。
【背景技術】
【0003】
リサイクルされたスクラップ金属としては、他の金属製品を調製するために収集および使用される使用済み金属製品由来の金属が挙げられる。例えば、使用済み飲料缶(UBC)スクラップは、使用済み飲料缶や、更なる金属製品で使用するためにリサイクルされたされ得る同様の製品から回収される。アルミニウムUBCスクラップは、しばしば、様々なアルミニウム合金(例えば、缶胴および缶蓋に使用される異なる合金由来)の混合物であり、しばしば、異質な物質、例えば雨水、飲み物の残り、有機物(例えば、塗料およびラミネートフィルム)、ならびに他の材料を含んでいる場合がある。UBCスクラップは、新しい金属製品を鋳造する際の液体金属原料として使用するために溶融される前に、細断し、被覆を取り除いたり、またはラッカーを取り除いたりすることができる。液体UBC金属中には不純物および不均衡な合金元素が存在するため、液体UBC金属を処理して望ましくない元素を除去するか、または鋳造前に液体UBC金属を十分な量の新規な一次アルミニウムと組み合わせる必要がある。同様に、他のソース由来のリサイクルされたスクラップは、比較的多量の不純物および/または不均衡な合金元素を有している場合がある。
【0004】
金属製品(例えば、金属ストリップ)を鋳造するために使用される液体金属中に十分な量の微量元素が存在すると、金属製品の特性、例えば強度および成形性に悪影響を及ぼす可能性がある。更に、UBCスクラップおよび同様のリサイクルされたスクラップ中に存在する不純物および元素は、凝固および/またはその後の金属製品の冷却中の亀裂形成などの、鋳造プロセス中に失敗および更には危険な結果をも引き起こす可能性がある。これらの段階で亀裂が形成されると、鋳造製品が使用できなくなり、場合によっては、人や建物に損害を与える可能性がある。
【0005】
高温割れに加えて、高いリサイクルされた含有量を有する合金を使用する際の懸念としては、鉄、マンガン、およびシリコン含有量のばらつきが挙げられる。これらの元素は除去が極めて難しいため、スクラップ流の汚染を防止または低減するために、それらの存在は主に制限される。これらの成分の改質は、金属間相のサイズおよび種を改質する可能性があり、それはある特定の機械的挙動の逸脱に変換されるため、一般に避けられる。
【0006】
したがって、UBCスクラップなどのリサイクルされたスクラップを使用してある特定の金属製品、特に、ある特定の仕様制限内の材料特性を有していなければならない製品を製造する現在の技術では、時間、空間、およびエネルギー(例えば、液体UBC金属からの不純物の除去または広範囲の鋳造後加工および処理)の点で高価であるか、または(例えば、液体UBC金属を十分量の新規な金属で希釈することにより)相当な量の新規な材料の使用が必要となる。
・・・
【0008】
本明細書では、リサイクルされたアルミニウムを液体金属に溶融することと、合金元素をその液体金属に添加して改質液体金属を形成することであって、その合金元素はマグネシウム、シリコン、または銅を含む、形成することと、改質液体金属を金属製品に鋳造することであって、その改質液体金属は少なくとも50%のリサイクルされたアルミニウムを含む、鋳造することと、その金属製品を圧延することと、を含む金属鋳造方法について記載する。任意選択的に、圧延は、金属製品を配送するためのゲージまで熱間圧延すること、金属製品を配送のためのゲージまで冷間圧延すること、または配送のために金属製品を熱間圧延および冷間圧延すること、を含む。配送のためのゲージは、中間ゲージまたは最終ゲージであり得る。改質液体金属は、最大約7重量%の量でマグネシウムを含むことができる。場合によっては、改質液体金属は、少なくとも1.5重量%(例えば、約1.5重量%~約7重量%または約1.5重量%~約4重量%)の量でマグネシウムを含む。・・・
【0009】
本明細書では、約0.01重量%~1.0重量%のCu、0.15重量%~0.8重量%のFe、0.5重量%~7.0重量%のMg、0.01重量%~1.2重量%のMn、最大1.5重量%のSi、最大0.15重量%の不純物、およびAl、を含むアルミニウム合金を含む金属製品であって、その金属製品は、少なくとも50%のリサイクルされたアルミニウムを含む改質液体金属から鋳造される、金属製品を更に提供する。任意選択的に、アルミニウム合金は、約0.1~0.9重量%のCu、0.25重量%~0.7重量%のFe、1.0重量%~5.0重量%のMg、0.1重量%~0.9重量%のMn、0.01重量%~1.0重量%のSi、0.01重量%~0.15重量%のTi、0.01重量%~5.0重量%のZn、0.01重量%~0.25重量%のCr、0.01重量%~0.1重量%のZr、最大0.15重量%の不純物、およびAl、を含む。任意選択的に、アルミニウム合金は、約0.2~0.8重量%のCu、0.3重量%~0.6重量%のFe、1.4重量%~3.0重量%のMg、0.2重量%~0,7重量%のMn、0.2重量%~0.5重量%のSi、0.02重量%~0.1重量%のTi、0.02重量%~3.0重量%のZn、0.02重量%~0.1重量%のCr、0.02重量%~0.05重量%のZr、最大0.15重量%の不純物、およびAl、を含む。場合によっては、改質液体金属は、少なくとも約60%のリサイクルされたアルミニウム(例えば、少なくとも約80%のリサイクルされたアルミニウム)を含む。・・・」
イ 「【0042】
いくつかの例では、本明細書に記載の合金は、合金の総重量に基づいて約0%~約0.15%(例えば、約0.01%~約0.1%、または約0.02%~約0.05%)の量でジルコニウム(Zr)を含む。例えば、合金は、0.01%、0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.10%、0.11%、0.12%、0.13%、0.14%、または0.15%のZrを含むことができる。場合によっては、Zrは合金中に存在しない(すなわち、0%)。すべて重量%で表している。」
ウ 「【0058】
本明細書に記載のリサイクルされた含有アルミニウム合金製品は、本明細書においてFe含有成分とも称される鉄含有金属間粒子を含む。場合によっては、鉄含有金属間粒子は球状である。Fe含有成分は、約0.6μm~約1.8μm(例えば、約0.7μm~約1.7μmまたは約0.8μm~約1.6μm)の範囲の長さを有することができる。
【0059】
本明細書に記載のアルミニウム合金製品は、低アスペクト比(例えば、幅の高さに対する割合)を有する金属間粒子を含有する。場合によっては、低アスペクト比は、約3以下(例えば、約2.5以下、約2以下、または約1.5以下)の比である。特に、金属間粒子の形状は円形または球形である。1のアスペクト比(例えば、円形断面に近い、すなわち、球状粒子)は、機械的特性、例えば、曲げ、成形、破砕、および/または衝突試験のための好ましいFe含有金属間粒子形状である。これらの金属間粒子は、製品の望ましい機械的特性を高める。」
エ 「【実施例】
【0150】
実施例1
以下の表4は、UBCスクラップ、第1の代替合金(「UBC1」)、第2の代替合金(「UBC2」)、標準5754直接チル鋳造アルミニウム合金(「5754DC」)、および2つの5754連続鋳造アルミニウム合金(「5754CC」)および「5754CC1」)中の微量元素と合金元素を示している。5754DCアルミニウム合金、5754CCアルミニウム合金、および5754CC1アルミニウム合金は、大部分がリサイクルされたされたスクラップ、例えばUBCスクラップから調製されてはいない標準合金は、比較合金として役立つ。
【表4】
[図:0001432096000001.jpg]
【0151】
表4の値は、特定の元素のおおよその重量パーセントを表している。UBC1合金は、約0.25重量%のCuおよび約0.15重量%のSiをUBCスクラップに添加することによって生成され、約0.37重量%のCuおよび約0.29重量%のSiを含む組成物が得られる。UBC2合金は、UBC1と同様に作製されるが、約1.0重量%のMgが添加され、約2.59重量%のMgを含む組成物が得られる。5754DC、5754CC、および5754CC1合金を比較すると、これらは一般にUBCスクラップと比較してFe、Si、および/またはCuがより少ない。」
オ 「【0158】
連続鋳造されたUBC2合金は、約114.42MPaの縦方向降伏強度および約115.95MPaの横方向降伏強度を達成し、両方が降伏強度規格限界602を十分に上回り、また、約241.8MPaの縦方向極限引張強度および約234.5MPaの横方向極限引張強度を達成し、両方が極限引張強度規格限界606を十分に上回った。更に、連続鋳造されたUBC2合金は、約18%の縦方向均一伸びおよび約14%の横方向均一伸びを達成し、両方が均一伸び規格限界604以上であり、ならびに約21%の縦方向全伸びおよび約15%の横方向全伸びを達成し、全伸び規格限界608を一方は上回り、もう一方は下回った。これらの結果は、UBCスクラップにマグネシウムを添加すると、連続鋳造技術を使用して合金が鋳造される場合、規格限界が達成され得ることを示している。」
カ 「【0161】
図7~12に見られるように、表4で特定される連続鋳造されたUBC1合金は、熱間かつ冷間圧延された後の強度および成形性においては十分に機能したが、熱間圧延のみまたは冷間圧延のみの後の強度および成形性は中程度である。」
キ 「【0185】
図18は、本開示のある特定の態様に従って2.59重量%のMgを有するUBCベースの合金を使用して連続鋳造された金属製品サンプルの3点曲げ試験結果(内側曲げ角度β)を示すチャート1800である。3点曲げ試験で試験されたサンプルは、10%の予ひずみ後に試験した。チャート1800は、表4で特定されるUBC2合金を使用して連続的に鋳造された3つの金属製品サンプルの縦方向(L)および横方向(T)の3点曲げ試験を曲げ角度(°)で示している。各サンプルは、(例えば、図2のプロセス200に見られるような)冷間圧延、(図1のプロセス100に見られるような)熱間圧延、および(例えば、図3に見られるような)冷間圧延と熱間圧延の組み合わせ、を含む3つの異なる圧延技術のうちの1つを受けた。
【0186】
冷間圧延のみされたサンプルでは、3点曲げ試験で非常に高い内側曲げ角度(β角度)が見られたが、熱間圧延のみされたサンプル、および熱間かつ冷間圧延されたサンプルは、より低い内側曲げ角度(β角度)を示し、十二分な曲げ性を示した。興味深いことに、熱間圧延のみされたサンプルは、熱間かつ冷間圧延されたサンプルと実質的に同様の曲げ性を達成した。」
(2)サポート要件に関する判断
ア 上記第2のとおり、本件発明1は、「0.1重量%~0.9重量%のCu、0.25重量%~0.7重量%のFe、0.6重量%~5.0重量%のMg、0.1重量%~0.9重量%のMn、0.01重量%~1.0重量%のSi、0.01重量%~0.15重量%のTi、0.01重量%~5.0重量%のZn、0.01重量%~0.09重量%のCr、0.01重量%~0.1重量%のZr、および、最大0.15重量%までの不純物を含み、残部がAlである元素組成を有」する「アルミニウム合金を含む金属製品」に関するものである。
イ また、本件明細書の上記(1)イに示した【0002】~【0008】からみて、本件発明において解決すべき課題(以下、単に「課題」という。)は、リサイクルされたアルミニウムを50%程度含有させても、強度や成形性に悪影響を及ぼさず、亀裂形成の起きないアルミニウム合金を含む金属製品を得ることと理解される。
ウ そして、本件明細書には、上記(1)エに示した【表4】に、実施例として、重量%で0.37%のCu、0.3%のFe、1.5%のMg、0.8%のMn、0.29%のSi、0.02%のTi、0.1%のZn、0.05%のCr、0.001%のZrを含むアルミニウム合金(UBC1)、0.39%のCu、0.32%のFe、2.59%のMg、0.78%のMn、0.31%のSi、0.02%のTi、0.1%のZn、0.05%のCr、0.001%のZrを含むアルミニウム合金(UBC2)が記載され、これらの実施例は、上記(1)オ~キ等に示されるように、上記課題を解決し得ることが記載されている。
エ 申立人は、特許異議申立書において、上記実施例は、いずれも、Zrの含有量が、0.001重量%であって、本件発明1で特定されるZr含有量の下限値である0.01重量%に比べて1/10でしかなく、本件発明1の技術的範囲から外れるものであること、このような必須元素が下限値の1/10しか含有されていない具体例の記載があったとしても、その必須元素を10倍以上含有させたときに同等の作用効果が得られ、課題が解決できるとはいえないことを主張する(第24頁第7~末行)。
しかし、本件明細書には、上記(1)イの【0042】に示されるように、Zrは「約0%~約0.15%(例えば、約0.01%~約0.1%、または約0.02%~約0.05%)の量で」含むことが許容されるものであり、「Zrは合金中に存在しない(すなわち、0%)」ことも許容すると記載されている。そうすると、本件明細書においては、Zrは、必須元素ではなく、任意に添加される元素の一つであることが示されているといえ、Zrは、0.15%程度までであれば、Zrを含まないものと同程度に、上記課題の解決を妨げることなく存在させることが可能と解される。したがって、本件発明1における「0.01重量%~0.1重量%のZr」を含むアルミニウム合金を含む金属製品は、上記実施例と同様に、上記課題を解決できるものと認められる。
オ そうすると、本件発明1は、発明の詳細な説明において、上記イの課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものとはいえない。
カ この点は、本件特許の請求項1の記載を直接または間接的に引用する本件発明2~8についても同様である。
(3)小括
以上のとおり、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~8の記載は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものといえ、特許法第36条第6項第1号に適合するものであるから、申立理由1によって、同請求項に係る特許を取り消すことはできない。
2 申立理由2(明確性)
(1)請求項1、2の記載について
ア 本件特許の特許請求の範囲の請求項1には、「金属製品」なる物におけるアルミニウム合金に関し、Si、Ti、Zn、Cr、Zrの元素組成が「0.01重量%~1.0重量%のSi、0.01重量%~0.15重量%のTi、0.01重量%~5.0重量%のZn、0.01重量%~0.09重量%のCr、0.01重量%~0.1重量%のZr」と記載されており、Si、Ti、Zn、Cr、Zrのいずれの成分についても、その含有量の範囲は明確である。
請求項2の「0.2重量%~0.5重量%のSi、0.02重量%~0.1重量%のTi、0.02重量%~3.0重量%のZn、0.02重量%~0.09重量%のCr、0.02重量%~0.05重量%のZr」なる記載についても、同様に明確である。
イ 申立人は、特許異議申立書において、請求項1及び2における上記アの記載は、本件明細書【0038】~【0042】におけるSi、Ti、Zn、Cr、Zrが存在しなくても良い旨の記載と矛盾することから、明確ではないことを主張する(第25頁第9~23行)。
しかし、上記アのとおり、請求項1、2の元素組成に関する記載はそもそも明確であるし、上記【0038】~【0042】の記載は、金属製品中にSi、Ti、Zn、Cr、Zrの各成分は、存在しても存在しなくても良いことを示すものであり、請求項1、2の元素組成に関する記載は、そのうち、所定の範囲で存在することを限定的に特定したものにすぎないから、上記【0038】~【0042】の記載があることで、請求項1及び2に記載されたSi、Ti、Zn、Cr、Zrの含有量が不明確となることはない。
よって、申立人の主張は採用できない。
ウ したがって、請求項1、2の記載は明確である。
(2)請求項7の記載について
ア 本件特許の特許請求の範囲の請求項7には、「Fe含有成分が、約0.6μm~約1.8μmの範囲の長さを有する」と記載されている。
イ 上記アに関し、本件明細書【0058】には、「本明細書に記載のリサイクルされた含有アルミニウム合金製品は、本明細書においてFe含有成分とも称される鉄含有金属間粒子を含む」と記載されており、上記請求項7に記載の「Fe含有成分」は、鉄含有金属間粒子を意味することが明らかである。そして、合金中に含まれる粒子を、その長さによって特定することに特段不合理な点はないから、請求項7の「Fe含有成分が、約0.6μm~約1.8μmの範囲の長さを有する」なる記載は明確である。
ウ 申立人は、特許異議申立書において、「Fe含有成分」といういわゆる化学的な要素が、その含有率等ではなく、長さを要素として有する点が当業者においては理解ができないことを主張する(第26頁第6~12行)。
しかしながら、上記イで検討したとおり、「Fe含有成分」は、鉄含有金属間粒子を意味することが明らかである。そして、当該粒子は、当然に長さを要素として有するものである。
よって、申立人の主張は採用できない。
エ したがって、請求項7の記載は明確である。
(3)請求項8の記載について
ア 本件特許の特許請求の範囲の請求項8には、「金属製品が、約3以下の幅対高さの比率を有する金属間粒子を含む」と記載されているが、この記載は、金属間粒子の幅対高さの比率が約3以下であることを特定するものであり、特段不明確な記載とはいえない。
イ 申立人は、特許異議申立書において、「3以下の幅対高さ」が技術的にどのような意義を有するのか本件明細書を参照しても理解できないことを挙げ、請求項8の記載は明確ではないことを主張する(第26頁第14~18行)。
しかし、上記アに示したとおり、請求項8の「金属製品が、約3以下の幅対高さの比率を有する金属間粒子を含む」なる記載は、そもそも不明確とはいえないし、本件明細書の【0059】における「本明細書に記載のアルミニウム合金製品は、低アスペクト比(例えば、幅の高さに対する割合)を有する金属間粒子を含有する。場合によっては、低アスペクト比は、約3以下(例えば、約2.5以下、約2以下、または約1.5以下)の比である。特に、金属間粒子の形状は円形または球形である。1のアスペクト比(例えば、円形断面に近い、すなわち、球状粒子)は、機械的特性、例えば、曲げ、成形、破砕、および/または衝突試験のための好ましいFe含有金属間粒子形状である。これらの金属間粒子は、製品の望ましい機械的特性を高める。」という記載により、Fe含有金属間粒子の幅の高さに対する割合であるアスペクト比が所定以下であれば、機械的特性に優れた合金製品が得られることが説明されていることから、申立人のいう技術的な意義も理解できるものである。
よって、申立人の主張は採用できない。
ウ したがって、請求項8の記載は明確である。
(4)上記(1)~(3)のとおり、請求項1、2、7、8の記載は明確である。そして、請求項1、2、7を直接または間接的に引用する請求項3~8の記載も、同様に明確である。
(5)小括
以上のとおり、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~8の記載は明確であり、特許法第36条第6項第2号に適合するものであるから、申立理由2によって、同請求項に係る特許を取り消すことはできない。
3 申立理由3(実施可能要件)
(1)上記第2のとおり、本件発明1は、
「0.1重量%~0.9重量%のCu、0.25重量%~0.7重量%のFe、0.6重量%~5.0重量%のMg、0.1重量%~0.9重量%のMn、0.01重量%~1.0重量%のSi、0.01重量%~0.15重量%のTi、0.01重量%~5.0重量%のZn、0.01重量%~0.09重量%のCr、0.01重量%~0.1重量%のZr、および、最大0.15重量%までの不純物を含み、残部がAlである元素組成を有し、Fe含有成分を含むアルミニウム合金を含む金属製品であって、
前記不純物が、Sn、Ga、Ca、Bi、Na、Pb、Li、W、Mo、Ni、およびVから選択された少なくとも1種を、各元素について0.05重量%以下の量で含む、
金属製品。」
という物の発明である。
(2)ここで、物の発明について、発明の詳細な説明の記載が、その発明を実施できる程度に明確かつ十分なものであるというためには、当業者が発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を作れ、かつ、その物を使用できるものでなければならないと解するのが相当である。
(3)そこで、本件特許の発明の詳細な説明の記載について検討する。
上記1(1)エの【0150】~【0151】をみるに、本件発明1の「金属製品」は、UBCスクラップにCuやSi、Mg等を添加し、合金成分を調整することで製造できることが理解されるから、当業者が発明の詳細な説明の記載に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明1の「金属製品」なる物を作れると認められる。また、そのように製造された「金属製品」が製品として使用可能であることも明らかである。
(4)申立人は、特許異議申立書において、発明の詳細な説明には、本件発明1の実施例が一切記載されておらず、本件発明1の合金が実際に製造できるのか、所期の課題が達成できるように使用できるのか不明であると主張する(第26頁第20~27行)。
しかし、上記1で検討したとおり、本件発明において、Zrは、0.15%程度までであれば、本件特許の課題の解決を妨げずに存在させることが可能と解されるから、本件発明1における「0.01重量%~0.1重量%のZr」を含むアルミニウム合金であっても、上記実施例と同様に金属製品を製造することができることは明らかであるし、上記課題を達成できるように使用できるものである。
よって、申立人の主張は採用できない。
(5)上記(3)、(4)の点は、本件特許の請求項1の記載を直接または間接的に引用する本件発明2~8についても同様である。
(6)小括
以上のとおり、本件特許の発明の詳細な説明の記載は、本件発明1~8について、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであり、特許法第36条第4項第1号に適合するものであるから、申立理由3によって、同請求項に係る特許を取り消すことはできない。
4 申立理由4(進歩性)について
(1)申立理由4-1について
ア 甲1の記載事項、甲1に記載された発明
(ア)甲1の記載事項
本願の優先日前に公知となった甲1には、「6000系アルミニウム合金材の成形加工方法および成形加工品」(発明の名称)に関し、以下の記載がある。
a 「【請求項1】
質量%(以下、合金成分値は質量%で示す)で、Si:0.3%以上4.0%以下、Mg:0.3%以上2.0%以下、Cu:2.0%以下、Mn:1.5%以下、Fe:1.5%以下、Zn:2.0%以下、Cr:0.50%以下、Zr:0.50%以下、Ti:0.50%以下、V:0.50%以下を含有し、残部がアルミニウムおよび不可避的不純物からなる6000系アルミニウム合金材を成形加工する方法であって、該アルミニウム合金材を溶体化処理する工程と、溶体化処理後、金型内で成形加工を行う工程と、成形加工に続いて金型内で250℃以下の温度まで冷却して焼入れ処理する工程を含むことを特徴とする6000系アルミニウム合金材の成形加工方法。」
b 「【0002】
近年、環境保護のための省エネルギー対策として、例えば自動車ではボディシート、ならびに各種筺体等の部材において、従来の強度を確保して且つ軽量化を達するために、上記部材の素材について、鋼板に替えて、例えば6000系アルミニウム合金板材の使用が進んでいる。
【0003】
しかしながら、上記部材の素材として使用される6000系アルミニウム合金板材は、鋼板に比べ成形加工性が劣るため複雑形状への加工が困難であり、成形加工性の観点から中強度の6000系アルミニウム合金板材が成形加工時において使用される。そのため、溶体化処理、焼入れ処理後の室温時効(自然時効)処理材で成形加工が行われており、高強度を得るためには塗装焼付硬化もしくは、さらに強度が必要な場合は200℃前後の温度を加える熱処理、すなわち人工時効が必要となる。
【0004】
最終の必要強度が高いほど、室温時効処理材を用いる成形加工時にも耐力が高い材料が必要となり、そのため、成形加工時のスプリングバックが大きくなって寸法精度が低下し部品の組み立て工程でのトラブルの原因となるとともに成形加工性も劣化する。
・・・
【0006】
本発明は、上記従来の問題を解消するためになされたものであり、その目的は、冷間成形加工性には限界があるが、焼入れ性に優れた高強度の6000系アルミニウム合金材において、より複雑形状に成形することができ、人工時効後(塗装焼付け処理後)において250MPa以上の耐力を有する高強度の成形品を得ることを可能とする6000系アルミニウム合金材の成形加工方法、および該成形加工方法により成形された成形加工品を提供することにある。」
c 「【0023】
Zn:
Znは材料特性に大きな影響を与えないが、許容量が多いほどリサイクル性に優れる。その含有量が2.0%を超えると耐食性が劣化するため、2.0%以下とするのが好ましい。さらに好ましい含有範囲は0.5%以下である。
【0024】
Cr、Zr、Ti、V:
Cr、Zr、TiおよびVは結晶粒を微細化して強度の向上に寄与する。好ましい含有量は、それぞれ0.50%以下の範囲であり、それぞれ0.50%を超えると、鋳塊割れや熱間割れが発生し易くなるとともに粗大な金属間化合物が生成し易くなり成形加工性が劣化する。Cr、Zr、TiおよびVのより好ましい含有範囲は、それぞれ0.30%以下であり、さらに好ましい含有範囲は、それぞれ0.20%以下である。」
d 「【実施例】
【0039】
以下、本願発明の実施例を比較例と対比して説明し、その効果を実証する。なお、これらの実施例は、本願発明の一実施態様を示すためのものであり、本発明はこれらに限定されない。
【0040】
実施例1、比較例1
表1に示す組成を有するアルミニウム合金(E1~E12)およびアルミニウム合金(C1~C10)をDC鋳造により造塊し、520℃で10時間均質化熱処理を行った。次に、500℃で熱間圧延を開始し板厚4mmまで熱間圧延を行った後、350℃で2時間の中間焼鈍を施して室温まで炉内冷却を行い、その後、冷間圧延を行い、板厚1.5mmとした。得られた冷間圧延材を板幅200mm、長さ250mm(板厚1.5mm)に切断して成形加工に供するためのアルミニウム合金板材(試験材)とした。なお、表1において、本発明の条件を外れたものには下線を付した。
【0041】
得られた試験材(アルミニウム合金板材)について、以下の成形加工を行い、成形加工性、機械的性質を評価した。
予めアルミニウム合金板材に離型剤を塗布した上で、アルミニウム合金板材を上型と下型からなるアイロン加熱装置に装着して、540℃の温度に急速加熱して60秒間保持する溶体化処理を行った後、50℃とした金型を構成する上型と下型との間に挟持固定してプレス成形と同時に、同じ金型内で急速に冷却して焼入れ処理し、底面を有する断面コ字形状のプレス成形品を作製した。
【0042】
得られたプレス成形品について、割れ発生の有無を観察すると共に、プレス成形品の底面よりJIS Z2241、JIS5号試験片を採取して機械的性質(塗装焼付け処理前)を測定し、該試験片を、プレス成形後、1週間室温時効した後、170℃の温度で8時間の人工時効処理を行い、機械的性質(塗装焼付け処理後)を測定した。結果を表2に示す。
【0043】
【表1】
[図:0001432096000002.jpg]
」
(イ)甲1に記載された発明
上記(ア)に摘記した甲1の記載事項を総合勘案し、特に、合金E6として記載されたアルミニウム合金を用いて製造されたアルミニウム合金板材に着目すると、甲1には次の発明が記載されていると認められる。
「質量%で、Si:1%、Mg:1.5%、Cu:0.6%、Mn:0.1%、Fe:0.25%、Ti:0.03%を含有し、Zn:0.01%未満、Cr:0.01%未満、Zr:0.01%未満、V:0.01%未満であり、残部がアルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金をDC鋳造により造塊し、520℃で10時間均質化熱処理を行い、500℃で熱間圧延を開始し板厚4mmまで熱間圧延を行った後、350℃で2時間の中間焼鈍を施して室温まで炉内冷却を行い、その後、冷間圧延を行い、板厚1.5mmとして得たアルミニウム合金板材。」(以下「甲1発明」という。)
イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
a 甲1発明の「アルミニウム合金板材」は、本件発明1の「金属製品」に相当する。
b 甲1発明における「質量%で、Si:1%、Mg:1.5%、Cu:0.6%、Mn:0.1%、Fe:0.25%、Ti:0.03%を含有し、」残部がアルミニウムおよび不可避的不純物からなるアルミニウム合金」は、本件発明1における「0.1重量%~0.9重量%のCu、0.25重量%~0.7重量%のFe、0.6重量%~5.0重量%のMg、0.1重量%~0.9重量%のMn、0.01重量%~1.0重量%のSi、0.01重量%~0.15重量%のTi」「を含み、残部がAlである元素組成を有」する「アルミニウム合金」に相当する。
c 甲1発明のアルミニウム合金におけるVは、含まれていても質量%で0.01%未満であるから、不純物元素と認められる。また、甲1発明は、Sn、Ga、Ca、Bi、Na、Pb、Li、W、Mo、Niについて特定するものではないから、含まれていたとしてもごく微量であると解される。したがって、甲1発明の「V:0.01%未満」は、本件発明1の「最大0.15重量%までの不純物を含」むものであって「前記不純物が、Sn、Ga、Ca、Bi、Na、Pb、Li、W、Mo、Ni、およびVから選択された少なくとも1種を、各元素について0.05重量%以下の量で含む」ことに相当する。
d そうすると、本件発明1と甲1発明とは、
「0.1重量%~0.9重量%のCu、0.25重量%~0.7重量%のFe、0.6重量%~5.0重量%のMg、0.1重量%~0.9重量%のMn、0.01重量%~1.0重量%のSi、0.01重量%~0.15重量%のTi、および、最大0.15重量%までの不純物を含み、残部がAlである元素組成を有するアルミニウム合金を含む金属製品であって、
前記不純物が、Sn、Ga、Ca、Bi、Na、Pb、Li、W、Mo、Ni、およびVから選択された少なくとも1種を、各元素について0.05重量%以下の量で含む、
金属製品。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
本件発明1では、アルミニウム合金の成分組成が「0.01重量%~5.0重量%のZn、0.01重量%~0.09重量%のCr、0.01重量%~0.1重量%のZr」と特定されているのに対して、甲1発明では、Zn、Cr、Zrがいずれも0.01%未満である点。
<相違点2>
本件発明1では、アルミニウム合金が「Fe含有成分を含む」と特定されているのに対して、甲1発明では、そのような特定がない点。
(イ)相違点についての判断
a 相違点1について
上記ア(ア)cに示した「Znは材料特性に大きな影響を与えないが、許容量が多いほどリサイクル性に優れる。その含有量が2.0%を超えると耐食性が劣化するため、2.0%以下とするのが好ましい。さらに好ましい含有範囲は0.5%以下である。」(【0023】)や「Cr、Zr、TiおよびVは結晶粒を微細化して強度の向上に寄与する。好ましい含有量は、それぞれ0.50%以下の範囲であり、それぞれ0.50%を超えると、鋳塊割れや熱間割れが発生し易くなるとともに粗大な金属間化合物が生成し易くなり成形加工性が劣化する。Cr、Zr、TiおよびVのより好ましい含有範囲は、それぞれ0.30%以下であり、さらに好ましい含有範囲は、それぞれ0.20%以下である。」(【0024】)からみて、甲1には、Znをあえて添加しようとする動機付けはなく、Crを0.01重量%~0.09重量%の範囲で添加し、Zrを0.01重量%~0.1重量%の範囲で添加する動機付けもない。このことは、甲3の記載を参酌しても変わるものではない。
そうすると、甲1発明において、上記相違点1に係る特定事項を備えることを当業者が容易に想到し得たとはいえない。
b 相違点2について
上記2(2)イの【0058】に「本明細書に記載のリサイクルされた含有アルミニウム合金製品は、本明細書においてFe含有成分とも称される鉄含有金属間粒子を含む」と記載されるとおり、本件発明において「Fe含有成分」は、鉄含有金属間粒子を意味することが明らかである。そして、甲1には、アルミニウム合金中に鉄含有金属間粒子を含有することについて記載はなく、甲1発明の鉄の含有量から、鉄含有金属間粒子を含有するものとは必ずしもいえない。また、本願優先日時の技術常識を考慮しても、そのような粒子を含有させる動機付けがあるとはいえない。このことは、甲3の記載を参酌しても変わるものではない。
そうすると、甲1発明において、上記相違点2に係る特定事項を備えることを当業者が容易に想到し得たとはいえない。
(ウ)申立人の主張について
a 申立人は、特許異議申立書において、甲1の請求項1、【0006】、【0018】~【0024】、【0037】~【0043】の記載から、甲1には下記bに示す発明(以下「発明A」という。)が記載されており、該発明Aは、Cu、Fe、Mg、Mn、Si、Ti、Zn、Cr、Zrの含有量については、本件発明1におけるそれぞれの元素の含有量と重複し、相違点とはならないと主張する(第15頁第7行~第19頁第8行、第27頁第1行~第28頁第12行)。
b 「2.0%以下のCu、1.5%以下のFe、0.3%以上2.0%以下のMg、1.5%以下のMn、0.3%以上4.0%以下のSi、0.50%以下のTi、2.0%以下のZn、0.50%以下のCr、0.50%以下のZr、0.50%以下のV、および、不可避的不純物を含み、残部がAlであるアルミニウム合金を含む6000系アルミニウム合金材であって、人工時効後の耐力が250MPa以上である、6000系アルミニウム合金材。」
c しかし、例えば、Cuについてみるに、発明AのCu含有量は「2.0%以下」であり、本件発明1で特定される「0.1重量%~0.9重量%」なる範囲を含むものではあるが、該範囲外のものをも含むから、該Cu含有量については相違点と認められる。そして、甲1の記載をみても、発明AのCu含有量である「2.0%以下」から「0.1重量%~0.9重量%」なる範囲を選択して採用する動機付けは存在しない。Fe、Mg、Mn、Si、Ti、Zn、Cr、Zrについても同様である。また、このことは、甲3の記載を参酌しても変わるものではない。
(エ)小括
以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1に記載された発明及び甲3に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ 本件発明2~6について
本件特許の請求項2~6は、請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものであるから、本件発明2~6は、本件発明1の発明特定事項をすべて備えたものである。
したがって、上記イ(エ)のとおり、本件発明1が、甲1に記載された発明及び甲3に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、同様に、本件発明2~6は、甲1に記載された発明及び甲3に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2)申立理由4-2について
ア 甲2の記載事項、甲2に記載された発明
(ア)甲2の記載事項
本願の優先日前に公知となった甲2には、「温間成形用アルミニウム合金板および温間成形方法」(発明の名称)に関し、以下の記載がある。
a 「【請求項1】
Al-Mg-Si系合金板が、含有するSiとMgとがMg2Si 組成相当の含有量で0.25~1.25 at%の範囲であり、これらSiとMgとの含有量のMg2Si バランスからのずれが各々±0.5at%以下の範囲であり、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなり、この板の特性として、200 ~300 ℃における局部伸びが20% 以上で、かつ、この局部伸びの全伸びに対する比率が60% 以上であることを特徴とする温間成形用アルミニウム合金板。
【請求項2】
前記アルミニウム合金板が、質量% で、Si:0.30 ~1.8%、Mg:0.45 ~2.6%を含み、その他の元素として、Fe:1.0% 以下、Ti:0.05%以下、Mn:1.0% 以下、Cr:0.3% 以下、Zr:0.3% 以下、V:0.3%以下、Cu:1.0% 以下、Zn=1.0% 以下の含有まで許容し、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなる、請求項1に記載の温間成形用アルミニウム合金板。」
b 「【0010】
ただ、6000系Al合金板の温間成形については、これまで、あまり提案されていない。また、例えば、前記特許文献1などのように、温間成形用のアルミニウム合金板の温間加工温度範囲200 ~300 ℃における引張伸びなどの高温の特性を高くしても、Al-Mg-Si系の6000系Al合金板では、温間成形性が向上するとは限らない。
【0011】
即ち、合金系が違えば、温間成形性が向上するメカニズムが違い、当然、温間成形性を向上させる手段も違ってくる。つまり、6000系Al合金板の温間成形性を向上させる手段は、これまで必ずしも明確ではなかった。
【0012】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、その目的は温間成形性を向上させた6000系Al合金板を提供することである。」
c 「【0037】
(自動車パネル材用組成)
一方、本発明が対象とするAl-Mg-Si系の6000系Al合金板では、前記した自動車パネル材用などとして、主目的である温間成形性以外にも、優れた曲げ加工性、BH (ベークハード) 性、強度、溶接性、耐食性などの諸特性が要求される。このような諸特性や温間成形性を保証するために、Si、Mg各々の含有量範囲を更に規定し、その他の元素の許容量を規定することが好ましい。
【0038】
このような組成として、具体的には、本発明温間成形用アルミニウム合金板が、質量% で、Si:0.30 ~1.8%、Mg:0.45 ~2.6%を含み、その他の元素として、Fe:1.0% 以下、Ti:0.05%以下、Mn:1.0% 以下、Cr:0.3% 以下、Zr:0.3% 以下、V:0.3%以下、Cu:1.0% 以下、Zn=1.0% 以下の含有まで許容し、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなることが好ましい。上記その他の元素は基本的には不純物であるが、地金以外にスクラップを溶解原料として多量に使用した場合には、これらの元素が混入される可能性が高い。そして、これらを例えば検出限界以下に低減すること自体コストアップとなり、ある程度の含有の許容が必要となる。また、実質量含有しても本発明目的や効果を阻害しない含有範囲があり、この範囲では各々の含有効果もある。したがって、上記各規定する量以下の範囲での含有を許容する。
【0039】
Si:0.30 ~1.8%。
SiはMgとともに、自動車パネル材用などとして、固溶強化と、塗装焼き付け処理などの前記低温短時間の人工時効処理時に、強度向上に寄与する時効析出物を形成して、時効硬化能を発揮する。これによって、例えば、自動車のアウタパネルとして必要な強度(耐力)を得ることができ、プレス成形性、ヘム (曲げ) 加工性などの諸特性を兼備できる。
【0040】
Si量が0.30% 未満では、上記時効硬化能、プレス成形性などが低下する。一方、Siが1.8%を越えて含有されると、却ってヘム加工性やプレス成形性が低下する。更に、溶接性を著しく阻害する。
・・・
【0044】
Mn:1.0% 以下、Cr:0.3% 以下、Zr:0.3% 以下、V:1.0%以下
これらの遷移元素には、均質化熱処理時に分散粒子 (分散相) を生成し、これらの分散粒子には再結晶後の粒界移動を妨げる効果があるため、微細な結晶粒を得ることができる効果がある。但し、これらは、溶解、鋳造時に粗大なAl-Fe-Si-(Mn、Cr、Zr) 系の金属間化合物や晶析出物を生成しやすく、Al合金板の機械的性質を低下させる。また、曲げ加工性やフラットヘム加工性も低下させる。このため、Mn:1.0% 以下、Cr:0.3% 以下、Zr:0.3% 以下、V:1.0%以下までの含有を許容する。
・・・
【0047】
Zn:1.0%以下
Znは耐蝕性を低下させる。このため、Znは1.0%までの含有は許容する。」
d 「【0072】
次に、本発明の実施例を説明する。表1に示す1 ~9 (発明例)、10~16(比較例)の各組成およびSiとMgとの組成バランスを有する6000系Al合金板を製造し、これを各々温間成形し、その成形性を評価した。
【0073】
各試験材Al合金板の、より具体的な共通する製造条件は以下の通りである。表1 に示す各組成の500mm 厚さ、2000mm幅、7m長さの鋳塊を、DC鋳造法により溶製後、480 ℃×2 時間の均質化熱処理を施した。この均質化熱処理後に、開始温度390 ℃、終了温度280 ℃として、厚さ2.5mmtまで熱間圧延した。この熱延板を、荒鈍を省略した上で、直接冷間圧延を行い、厚さ1.0mmtの冷延板コイルを得た。この板コイルを、連続炉で550 ℃×数秒の溶体化処理後に、300 ℃/ 分の冷却速度で室温まで冷却する水焼入れ処理を行った。その後、直ちに、70℃の温度に再加熱して、この温度範囲に2 時間保持するなどの一連の調質処理を行なった。
【0074】
(供試板引張特性)
これら調質処理後の各板から供試板 (ブランク) を切り出し、300 ℃における板の機械的な温間特性(As 特性) を調査、評価した。300 ℃における板の局部伸び(%)、全伸び(%)、(局部伸び/全伸び)×100 (%)の結果を表2 に各々示す。」
e 「【0084】
【表1】
[図:0001432096000003.jpg]
」
(イ) 甲2に記載された発明
上記(ア)に摘記した甲2の記載事項を総合勘案し、特に、発明例8として記載されたアルミニウム合金を用いて製造されたアルミニウム合金板材に着目すると、甲1には次の発明が記載されていると認められる。
「at%で、Si:1.10%、Mg:2.10%を含み、その他の元素として、Fe:0.15%、Ti:0.01%、Mn:0.2%、Cu:0.3%を含有し、残部アルミニウムおよび不可避的不純物からなる温間成形用アルミニウム合金板」(以下「甲2発明」という。)
イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲2発明とを対比する。
a 甲2発明の「温間成形用アルミニウム合金板」は、本件発明1の「金属製品」に相当する。
b 甲2発明における「at%で、Si:1.40%、Mg:2.10%を含み、その他の元素として、Fe:0.15%、Ti:0.01%、Mn:0.2%、Cu;0.3%を含有し、残部アルミニウム」からなる合金は、その成分組成が重量%で、Si:1.45%、Mg:1.88%、Fe:0.31%、Ti:0.02%、Mn:0.4%、Cu:0.7%程度と換算されるから、本件発明1における「0.1重量%~0.9重量%のCu、0.25重量%~0.7重量%のFe、0.6重量%~5.0重量%のMg、0.1重量%~0.9重量%のMn、」「0.01重量%~0.15重量%のTiを含み、残部がAlである」に相当する元素組成を備えている。
c そうすると、本件発明1と甲2発明とは、
「0.1重量%~0.9重量%のCu、0.25重量%~0.7重量%のFe、0.6重量%~5.0重量%のMg、0.1重量%~0.9重量%のMn、0.01重量%~0.15重量%のTi、および、残部がAlである元素組成を有する金属製品」
である点で一致し、以下の点で相違する。
<相違点3>
本件発明1は、アルミニウム合金が「0.01重量%~1.0重量%のSi」を含むものであるのに対して、甲2発明は、重量%で1.45%のSiを含んでいる点
<相違点4>
本件発明1は、アルミニウム合金が「0.01重量%~5.0重量%のZn」、「0.01重量%~0.09重量%のCr」、「0.01重量%~0.1重量%のZr」を含むものであるのに対して、甲2発明は、Zn、Cr、Zrを含んでいない点
<相違点5>
本件発明1では、アルミニウム合金が「Fe含有成分を含む」と特定されているのに対して、甲2発明では、そのような特定がない点。
<相違点6>
本件発明1は、アルミニウム合金が「最大0.15重量%までの不純物を含み、」「前記不純物が、Sn、Ga、Ca、Bi、Na、Pb、Li、W、Mo、Ni、およびVから選択された少なくとも1種を、各元素について0.05重量%以下の量で含む」ものであるのに対して、甲2発明は、不純物及びその含有量が不明である点。
(イ)相違点についての判断
事案に鑑み、上記相違点4、5について検討する。
a 相違点4について
上記ア(ア)cに示した「これらの遷移元素には、均質化熱処理時に分散粒子 (分散相) を生成し、これらの分散粒子には再結晶後の粒界移動を妨げる効果があるため、微細な結晶粒を得ることができる効果がある。但し、これらは、溶解、鋳造時に粗大なAl-Fe-Si-(Mn、Cr、Zr) 系の金属間化合物や晶析出物を生成しやすく、Al合金板の機械的性質を低下させる。また、曲げ加工性やフラットヘム加工性も低下させる。このため、Mn:1.0% 以下、Cr:0.3% 以下、Zr:0.3% 以下、V:1.0%以下までの含有を許容する。」(【0044】)、「Znは耐蝕性を低下させる。このため、Znは1.0%までの含有は許容する。」(【0047】)からみて、甲2には、Znをあえて添加しようとする動機付けはなく、Crを0.01重量%~0.09重量%の範囲で添加し、Zrを0.01重量%~0.1重量%の範囲で添加する動機付けもない。このことは、甲3の記載を参酌しても変わるものではない。
そうすると、甲2発明において、上記相違点4に係る特定事項を備えることを、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
a 相違点5について
上記2(2)イの【0058】に「本明細書に記載のリサイクルされた含有アルミニウム合金製品は、本明細書においてFe含有成分とも称される鉄含有金属間粒子を含む」と記載されるとおり、本件において「Fe含有成分」は、鉄含有金属間粒子を意味することが明らかである。そして、甲2には、アルミニウム合金中に鉄含有金属間粒子を含有することについて記載はなく、甲2発明の鉄の含有量から、鉄含有金属間粒子を含有するものとは必ずしもいえない。また、本願優先日時の技術常識を考慮しても、そのような粒子を含有させる動機付けがあるとはいえない。このことは、甲3の記載を参酌しても変わるものではない。
そうすると、甲2発明において、上記相違点5に係る特定事項を備えることを当業者が容易に想到し得たとはいえない。
(ウ)申立人の主張について
a 申立人は、特許異議申立書において、甲2の請求項1~2、【0038】~【0047】、【0085】の記載から、甲2には下記bに示す発明(以下「発明B」という。)が記載されており、該発明Bは、Cu、Fe、Mg、Mn、Si、Ti、Zn、Cr、Zrの含有量については、本件発明1におけるそれぞれの元素の含有量と重複し、相違点とはならないと主張する(第19頁第11行~第23頁第6行、第29頁第15行~第30頁第22行)。
b 「Cu:1.0%以下、Fe:1.0%以下、Mg:0.45~2.6%、Mn:1.0%以下、Si:0.30~1.8%、Ti:0.05%以下、Zn:1.0%以下、Cr:0.3%以下、Zr:0.3%以下、V:0.3%以下 および、不可避的不純物を含み、残部がAlであるアルミニウム合金を含む、温間成形用アルミニウム合金板。」
c しかし、例えば、Cuについてみるに、発明BのCu含有量は「1.0%以下」であり、本件発明1で特定される「0.1重量%~0.9重量%」なる範囲を含むものではあるが、該範囲外のものをも含むから、該Cu含有量については相違点と認められる。そして、甲2の記載をみても、発明BのCu含有量である「1.0%以下」から「0.1重量%~0.9重量%」なる範囲を選択して用いようとする動機付けは存在しない。Fe、Mg、Mn、Si、Ti、Zn、Cr、Zrについても同様である。また、このことは、甲3の記載を参酌しても変わるものではない。
(エ)小括
以上のとおりであるから、相違点3、6について検討するまでもなく、本件発明1は、甲2に記載された発明及び甲3に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
ウ 本件発明2について
本件特許の請求項2は、請求項1の記載を引用するものであるから、本件発明2は、本件発明1の発明特定事項をすべて備えたものである。
したがって、上記イ(エ)のとおり、本件発明1が、甲2に記載された発明及び甲3に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない以上、同様に、本件発明2は、甲2に記載された発明及び甲3に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(3)まとめ
以上のとおり、本件発明1~6は、甲1に記載された発明及び甲3に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえない。
また、本件発明1~2は、甲2に記載された発明及び甲3に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえない。
したがって、申立理由4によっては、同発明に係る特許を取り消すことはできない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、申立人による特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700899