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特許異議申立

2025-700881

蓄電装置用外装材及びその製造方法、並びに蓄電装置用外装材におけるシーラント層として使用されるシーラントフィルムの選定方法

審判番号
2025-700881
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2019-238450
登録番号
7665920
請求日
2025年09月10日
審決日
2026年04月09日
公報発行日
2026年05月29日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】TOPPANホールディングス株式会社
  • 【権利者代理人】長谷川 芳樹
  • 【権利者代理人】柳 康樹
  • 【権利者代理人】鈴木 洋平
  • 【異議申立人】松山 徳子
審判長/審判官
  • 審判長 中木 努
  • 審判官 本郷 彰
  • 審判官 河合 弘明
分類
P1651.121-Y (H01M)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法113条1項2号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第113条第1項第2号
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7665920号発明「蓄電装置用外装材及びその製造方法、並びに蓄電装置用外装材におけるシーラント層として使用されるシーラントフィルムの選定方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7665920号の請求項1ないし請求項10に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7665920号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし請求項10に係る特許についての出願は、令和元年12月27日に出願され、令和7年4月14日にその特許権の設定登録がなされ、令和7年4月22日に特許掲載公報が発行されたものである。 その後、請求項1ないし請求項10に係る特許に対して、令和7年9月10日に特許異議申立人 松山 徳子(以下、単に「申立人」という。)により特許異議の申立てがなされたものである。 第2 本件特許発明 本件特許の請求項1ないし請求項10に係る発明(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明10」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項10に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 基材層と、 バリア層と、 シーラント層と、 をこの順に少なくとも備える積層構造を有し、 前記シーラント層が、1.0Hzの条件での動的粘弾性測定によって得られる損失正接tanδのプロファイルの-130℃~-50℃の範囲に少なくとも一つの副分散ピークγを有し、 前記シーラント層が、テレフタル酸とエチレングリコールとの共重合体、テレフタル酸とエチレングリコール及びブタンジオールとの共重合体、テレフタル酸及びイソフタル酸とエチレングリコール、ブタンジオール及びネオペンチルグリコールとの共重合体、テレフタル酸と、エチレングリコール及び1,4-シクロヘキサンジメタノールとの共重合体、テレフタル酸及びイソフタル酸とブタンジオール及びヘキサンジオールとの共重合体、並びにアミド変性ポリエチレンからなる群から選ばれる少なくとも一種の樹脂を含む、蓄電装置用外装材。 【請求項2】 前記シーラント層が、前記tanδのプロファイルの30℃~130℃の範囲に少なくとも一つの主分散ピークαを有する、請求項1に記載の蓄電装置用外装材。 【請求項3】 前記シーラント層が可塑剤を含有する、請求項1又は2に記載の蓄電装置用外装材。 【請求項4】 前記シーラント層が、テレフタル酸とエチレングリコールとの共重合体、並びにテレフタル酸とエチレングリコール及びブタンジオールとの共重合体からなる群から選ばれる少なくとも一種の樹脂を含む、請求項3に記載の蓄電装置用外装材。 【請求項5】 前記可塑剤がグリコールジエステルである、請求項3又は4に記載の蓄電装置用外装材。 【請求項6】 前記シーラント層が硫化水素吸着物質を含有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の蓄電装置用外装材。 【請求項7】 前記バリア層と前記シーラント層との間に設けられた接着剤層を更に備え、 前記接着剤層が硫化水素吸着物質を含有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の蓄電装置用外装材。 【請求項8】 前記バリア層の少なくとも一方の面上に設けられた腐食防止処理層を更に備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の蓄電装置用外装材。 【請求項9】 蓄電装置用外装材におけるシーラント層として使用されるシーラントフィルムの選定方法であって、 (A)評価対象のシーラントフィルムについて、1.0Hzの条件で動的粘弾性測定を実施する工程と、 (B)前記動的粘弾性測定によって得られるtanδのプロファイルの-130℃~-50℃の範囲に少なくとも一つの副分散ピークγが存在するか否かを判定する工程と、 を含み、 前記シーラントフィルムが、テレフタル酸とエチレングリコールとの共重合体、テレフタル酸とエチレングリコール及びブタンジオールとの共重合体、テレフタル酸及びイソフタル酸とエチレングリコール、ブタンジオール及びネオペンチルグリコールとの共重合体、テレフタル酸と、エチレングリコール及び1,4-シクロヘキサンジメタノールとの共重合体、テレフタル酸及びイソフタル酸とブタンジオール及びヘキサンジオールとの共重合体、並びにアミド変性ポリエチレンからなる群から選ばれる少なくとも一種の樹脂を含む、シーラントフィルムの選定方法。 【請求項10】 請求項9に記載の選定方法において、前記tanδのプロファイルの-130℃~-50℃の範囲に少なくとも一つの副分散ピークγが存在すると判定されるシーラントフィルムを準備する工程と、 当該シーラントフィルムとバリア層とを貼り合わせる工程と、 を含む、蓄電装置用外装材の製造方法。」 第3 申立人の主張及び証拠方法 1 申立人の主張の概要 申立人が特許異議申立書において主張する、本件特許についての特許異議申立の理由の概要は、以下のとおりである。 <申立理由> 本件特許発明1ないし本件特許発明10は、甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明、並びに甲第3号証ないし甲第11号証に記載された技術的事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。 したがって、本件特許発明1ないし本件特許発明10に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 2 申立人が提出した証拠方法 甲第1号証:特開2017-79199号公報 甲第2号証:特開2008-84666号公報 甲第3号証:特開平11-180455号公報 甲第4号証:"アイティー計測制御株式会社 DVA-200シリーズによる動的粘弾性測定データ報告 2011-2 各種結晶性高分子材料の温度分散、PP,TPXならびにPET",[online],アイティー計測制御株式会社,[令和8年3月26日検索],インターネット<URL:https://itkdva.com/pdf/DataSheet.pdf> 甲第5号証:金森 光夫,他3名,"非晶性ポリエチレンテレフタレート時効処理材の動的粘弾性",機械材料・材料加工技術講演会講演論文集2015.23巻,平成27年,一般社団法人 日本機械学会 甲第6号証:特開2011-204674号公報 甲第7号証:特開2014-175121号公報 甲第8号証:特開平4-100836号公報 甲第9号証:特開2004-296174号公報 甲第10号証:国際公開第02/26495号 甲第11号証:特開2019-204626号公報 第4 各甲号証に記載された事項 1 甲第1号証の記載事項 (1)甲第1号証(特開2017-79199号公報)には、以下の各記載がある。(なお、下線は合議体で付与した。) ア 「【請求項1】 少なくとも、第1の面及び第2の面を有するステンレス鋼箔と、前記第1の面側に積層された基材層と、前記第2の面側に積層されたシーラント層とを備える積層体からなる電池用包装材料であって、・・・(略)・・・」 イ 「【発明を実施するための形態】 ・・・(略)・・・ 【0015】 1.電池用包装材料の積層構造 本発明の電池用包装材料は、第1の面31及び第2の面32を有するステンレス鋼箔3と、第1の面31側に積層された基材層1と、第2の面32側に積層されたシーラント層4とを備える積層体からなる。電池用包装材料が電池に使用される際には、基材層1が最外層になり、シーラント層4が最内層(電池素子側)になる。・・・(略)・・・図3に示すように、本発明の電池用包装材料は、基材層1とステンレス鋼箔3との間に接着層2を有していてもよい。また、図4に示すように、本発明の電池用包装材料は、ステンレス鋼箔3とシーラント層4との間に接着層5を有していてもよい。 【0016】 また、本発明の電池用包装材料は、ステンレス鋼箔3の第1の面31及び第2の表面32に、それぞれ、化成処理層3a,3bを有していてもよい。・・・(略)・・・ 【0024】 2.電池用包装材料を形成する各層の組成 ・・・(略)・・・ 【0041】 [ステンレス鋼箔3] 本発明の電池用包装材料において、ステンレス鋼箔3は、電池用包装材料の強度向上の他、電池内部に水蒸気、酸素、光等が侵入するのを防止するためのバリア層として機能する層である。 ・・・(略)・・・ 【0046】 [化成処理槽3a,3b] ・・・(略)・・・ 【0047】 また、本発明においては、ステンレス鋼箔3と隣接する層との間の接着の安定化、溶解や腐食の防止等のために、必要に応じて、ステンレス鋼箔3の第1の面31にも化成処理層3aを有していてもよい。本発明においては、ステンレス鋼箔3の第1の面31及び第2の面32に化成処理層3a,3bが積層されていることがさらに好ましい。・・・(略)・・・ 【0059】 [シーラント層4] 本発明の電池用包装材料において、シーラント層4は、ステンレス鋼箔3の第2の面32側に積層されており、最内層に該当し、電池の組み立て時にシーラント層4同士が熱溶着して電池素子を密封する層である。・・・(略)・・・ 【0062】 シーラント層4の形成に使用されるポリエステル樹脂の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリカーボネート、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステル、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステル等が挙げられる。また、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステルとしては、具体的には、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体としてエチレンイソフタレートと重合する共重合体ポリエステル(以下、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)にならって略す)、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)、・・・(略)・・・が挙げられる。また、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステルとしては、具体的には、ブチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体としてブチレンイソフタレートと重合する共重合体ポリエステル(以下、ポリブチレン(テレフタレート/イソフタレート)にならって略す)、ポリブチレン(テレフタレート/アジペート)、ポリブチレン(テレフタレート/セバケート)、ポリブチレン(テレフタレート/デカンジカルボキシレート)、ポリブチレンナフタレート等が挙げられる。これらのポリエステル樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。 ・・・(略)・・・ 【0111】 3.電池用包装材料の製造方法 ・・・(略)・・・ 【0117】 次いで、積層体Aのステンレス鋼箔3上に、シーラント層4を積層させる。・・・(略)・・・ ステンレス鋼箔3上へのシーラント層4の積層は、共押出し法、サーマルラミネート法、サンドラミネート法、コーティング法、又はこれらの組み合わせ等によって行うことができる。・・・(略)・・・ 【0122】 4 . 電池用包装材料の用途 ・・・(略)・・・ 【0125】 本発明の電池用包装材料は、一次電池、二次電池のいずれに使用してもよいが、好ましくは二次電池である。本発明の電池用包装材料が適用される二次電池の種類については、特に制限されず、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、鉛畜電池、ニッケル・水素畜電池、ニッケル・カドミウム畜電池、ニッケル・鉄畜電池、ニッケル・亜鉛畜電池、酸化銀・亜鉛畜電池、金属空気電池、多価カチオン電池、コンデンサー、キャパシター等が挙げられる。これらの二次電池の中でも、本発明の電池用包装材料の好適な適用対象として、リチウムイオン電池及びリチウムイオンポリマー電池が挙げられる。」 ウ 「【図3】 [図:0001435204000001.jpg] 」 エ 「【図4】 [図:0001435204000002.jpg] 」 (2)甲第1号証に記載された発明 ア 上記「(1)」の「イ」の段落0015には「本発明の電池用包装材料は、第1の面31及び第2の面32を有するステンレス鋼箔3と、第1の面31側に積層された基材層1と、第2の面32側に積層されたシーラント層4とを備える積層体からなる・・・(略)・・・本発明の電池用包装材料は、基材層1とステンレス鋼箔3との間に接着層2を有していてもよい・・・(略)・・・本発明の電池用包装材料は、ステンレス鋼箔3とシーラント層4との間に接着層5を有していてもよい」こと、段落0047には「本発明においては、ステンレス鋼箔3の第1の面31及び第2の面32に化成処理層3a,3bが積層されていることがさらに好ましい」こと、段落0059には「シーラント層4は、ステンレス鋼箔3の第2の面32側に積層されており、最内層に該当」すること、がそれぞれ記載されており、上記「(1)」の「ウ」に示す図3及び「エ」に示す図4の記載も参酌すると、甲第1号証の「積層体」は、基材層1、接着層2、化成処理層3a、ステンレス鋼箔3、化成処理層3b、接着層5、シーラント層4の各層を選択的に積層する積層体であるから、甲第1号証の「電池用包装材料」は、「基材層1、接着層2、化成処理層3a、ステンレス鋼箔3、化成処理層3b、接着層5、シーラント層4の各層を選択的に積層する積層体からなる電池用包装材料」であるといえる。 イ 上記「(1)」の「イ」の段落0041には「ステンレス鋼箔3は、・・・(略)・・・バリア層として機能する層である」ことが記載されているから、上記「ア」の「ステンレス鋼箔3」は、「バリア層として機能するステンレス鋼箔3」であるといえる。 ウ 上記「(1)」の「イ」の段落0062には「シーラント層4の形成に使用されるポリエステル樹脂の具体例としては、・・・(略)・・・エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステル・・・(略)・・・等が挙げられる・・・(略)・・・これらのポリエステル樹脂は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい」ことが記載されているから、上記「ア」の「シーラント層4」は、「エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステル等を1種単独又は他のポリエステル樹脂と組み合わせて使用する樹脂を含む」ものである。 エ 上記「(1)」の「イ」の段落0125には「本発明の電池用包装材料は、一次電池、二次電池のいずれに使用してもよいが、好ましくは二次電池である」ことが記載されているから、上記「ア」の「電池用包装材料」は、「二次電池用包装材料」であるといえる。 オ 上記「ア」ないし「エ」を総合すると、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 <甲1発明> 「基材層1、接着層2、化成処理層3a、バリア層として機能するステンレス鋼箔3、化成処理層3b、接着層5、シーラント層4の各層を選択的に積層する積層体からなり、シーラント層4は、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステル等を1種単独又は他のポリエステル樹脂と組み合わせて使用する樹脂を含む、二次電池用包装材料」 2 甲第2号証の記載事項 (1)甲第2号証(特開2008-84666号公報)には、以下の記載がある。(なお、下線は合議体で付与した。) 「【0004】 リチウムイオン二次電池の形状には、筒形電池とラミネート形電池がある。ラミネート形非水二次電池は、金属シートの片面側に熱融着性樹脂層(例えばポリエチレン層)、他面側に機械的強度に優れた樹脂層(例えばポリエチレンテレフタレート層)を積層してなるラミネートシートを用い、その熱融着性樹脂層側が内側となるように構成されたラミネートシート外装体内に、シート状の正極とシート状の負極とをセパレータを介して重ね合わせた積層電極体などの電極群を封入してなるものである(例えば、特許文献1)。・・・(略)・・・ 【発明を実施するための最良の形態】 【0015】 本発明のラミネート形非水二次電池は、正極シートと負極シートとをセパレータを介して積層した積層電極群を、平面視で方形のラミネートシート外装体内に封入してなるものである。ラミネートシート外装体としては、通気遮断性を有する金属シートの片面または両面に、絶縁熱融着性樹脂フィルムの層(熱融着性樹脂層)を少なくとも1層積層した構造のラミネートシートにより構成されたものが挙げられる。 ・・・(略)・・・ 【0018】 熱融着性樹脂層を形成するための絶縁熱融着性樹脂としては、熱融着(溶着)によりラミネートシート外装体を封止できるものであれば特に制限はなく、公知の絶縁熱融着性樹脂を用いることができる。具体的には、ポリエチレン、マレイン酸変性ポリエチレン、ポリプロピレン、マレイン酸変性ポリプロピレンなどのポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、熱融着性ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル;熱融着性ポリイミド;ポリメタクリル酸メチル;アイオノマー樹脂;などの樹脂や、これらの樹脂を形成するためのモノマーの2種以上からなる共重合体(エチレン-プロピレン共重合体など)が挙げられる。」 (2)甲第2号証に記載された発明 ア 上記「(1)」の段落0004には「ラミネート形非水二次電池は、金属シートの片面側に熱融着性樹脂層(例えばポリエチレン層)、他面側に機械的強度に優れた樹脂層(例えばポリエチレンテレフタレート層)を積層してなるラミネートシートを用い」ること、同じく段落0004には「その熱融着性樹脂層側が内側となるように構成されたラミネートシート外装体内に、・・・(略)・・・電極群を封入してなるものである」こと、段落0015には「ラミネートシート外装体としては、・・・(略)・・・絶縁熱融着性樹脂フィルムの層(熱融着性樹脂層)を少なくとも1層積層した構造のラミネートシートにより構成された」こと、がそれぞれ記載されており、甲第2号証の「ラミネート形非水二次電池」に用いる「ラミネートシート外装体」は、「熱融着性樹脂層を少なくとも1層積層した構造のラミネートシートにより構成され、機械的強度に優れた樹脂層と、金属シートと、熱融着性樹脂層と、をこの順で積層してなるラミネートシート」より構成された「ラミネートシート外装体」であるといえる。 イ 上記「(1)」の段落0018には「熱融着性樹脂層を形成するための絶縁熱融着性樹脂としては、・・・(略)・・・ポリエチレンテレフタレート・・・(略)・・・などの樹脂や、これらの樹脂を形成するための・・・(略)・・・共重合体(エチレン-プロピレン共重合体など)が挙げられる」ことが記載されている。 ウ 上記「ア」及び「イ」を総合すると、甲第2号証には、次の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。 <甲2発明> 「機械的強度に優れた樹脂層と、金属シートと、熱融着性樹脂層と、をこの順で積層してなるラミネートシートより構成され、熱融着性樹脂層はポリエチレンテレフタレート共重合体を含む、ラミネート形非水二次電池に用いるラミネートシート外装体」 3 甲第3号証に記載された事項 甲第3号証(特開平11-180455号公報)には、以下の記載がある。 ア 「【0010】前記合成樹脂製フィルムは、図3に示すように、ポリアミド樹脂層4、接着性樹脂層7a、エチレンビニルアルコール共重合体層5、接着性樹脂層7b、熱融着性樹脂層6の五層構造からなり、・・・(略)・・・ 【0028】但し、熱融着性樹脂層6を熱融着性のポリエステル系樹脂によって形成すれば、ポリエチレン樹脂等のにおいが袋本体1内に収容された水に付着しないため、より好ましい。・・・(略)・・・熱融着性のポリエステル系樹脂としては、非晶性のポリエステル、例えば商品名PETG(イーストマンコダック社製)等が使用される。」 イ 「【図3】 [図:0001435204000003.jpg] 」 4 甲第4号証に記載された事項 (1)甲第4号証(アイティー計測制御株式会社 DVA-200シリーズによる動的粘弾性測定データ報告 2011-2 各種結晶性高分子材料の温度分散、PP,TPXならびにPET)には、以下の各記載がある。(なお、下線は合議体で付与した。) ア 「■ PET 現在、大量のPETが消費されています。左図はPETボトル壁体(37μ厚)データです。右図は包装用パッケージの測定データを重ねたもので、150℃付近に再結晶化の挙動がみられます。」 イ 「(左図) [図:0001435204000004.jpg] 」 ウ 「(右図) [図:0001435204000005.jpg] 」 (2)甲第4号証に記載された技術的事項 ア 甲第4号証の文献名称に含まれる「DVA-200シリーズ」は、アイティー計測制御株式会社が販売する動的粘弾性測定装置として知られている。また、甲第4号証の文献名称に含まれる「DVA-200シリーズによる動的粘弾性測定データ報告」は、装置DVA-200シリーズを用いて、結晶性高分子材料の動的粘弾性を測定した測定データの報告書であると解される。 イ 上記「(1)」の「ア」には「左図はPETボトル壁体(37μ厚)データです。右図は包装用パッケージの測定データを重ねたもので、150℃付近に再結晶化の挙動がみられ」ることが記載されているから、上記「(1)」の「イ」に示す図(左図)は「PETボトル壁体(37μ厚)データ」であること、上記「(1)」の「ウ」に示す図(右図)は「包装用パッケージの測定データを重ねたもので」あることが読み取れる。また、上記「右図は包装用パッケージの測定データを重ねたもので」あるとの記載から、右図は左図と同じ条件で測定したデータであると解される。 ウ 上記「左図」の測定データについて、測定条件や試料に関する具体的な記載が見当たらないものの、図中の「DVA(5℃/min;10Hz)[PET-bottle(dried)]」及び「▲ tanδ」という記載から、昇温速度「5℃/min」、測定周波数「10Hz」、試料「PET-bottle(dried)」で動的粘弾性測定を実施し、損失正接tanδが記号「▲」でプロットされているものと解される。 エ 上記「右図」の測定データについて、動的粘弾性測定によって得られる損失正接tanδは、試料「PET-bottle(dried)」では、120℃付近、-70℃付近に、それぞれピークが認められる。また、試料「PET(急冷非晶)」では、120℃付近、80℃付近、-70℃付近にそれぞれピークが認められる。 オ 上記「ア」ないし「エ」を総合すると、甲第4号証には、次の技術的事項が記載されていると認められる。 <甲第4号証に記載された技術的事項> 「装置DVA-200シリーズ、昇温温度5℃/min、周波数10Hzの条件での動的粘弾性測定によって得られる損失正接tanδは、試料「PET-bottle(dried)」について、120℃付近、-70℃付近にそれぞれピークが認められ、試料「PET(急冷非晶)」について、120℃付近、80℃付近、-70℃付近にそれぞれピークが認められる。」 5 甲第5号証に記載された事項 (1)甲第5号証(非晶性ポリエチレンテレフタレート時効処理材の動的粘弾性)には、以下の各記載がある。(なお、下線は合議体で付与した。) ア 「2. 実験方法 2・1 動的粘弾性測定 試験材は市販の非晶性PET(ペテック:タキロン社)であり,・・・(略)・・・373Kで2h加熱後,氷水中に投入して急冷したものを急冷材として用いた.・・・(略)・・・急冷材を,Tg以下の時効温度(313,323,333K)において時効時間ta(24,60,96h)で処理した時効材を試験材とした. ねじり形式の自由減衰振動法(周波数1.5Hz(室温))によって,約140~400Kの温度域において貯蔵弾性率G’,損失弾性率G”,損失正接tanδの温度分散を測定した.・・・(略)・・・測定は約1K/minで昇温しながら2.5K間隔で行った.」 イ 「3. 実験結果及び考察 3・1 動的粘弾性測定 図1,2に急冷材,各種時効材について低温域β緩和及び高温域α緩和それぞれの損失正接の温度分散の測定結果を比較して示す. 高温域のα分散は・・・(略)・・・主分散であり,低温域のβ分散は・・・(略)・・・分子鎖セグメントの局所的運動による分散である.これらの分子運動に対する粘性抵抗に伴うエネルギー損失ピークが観測されている.」 ウ 「 [図:0001435204000006.jpg] (仮訳:図1 一定周波数1.5Hzにおいて測定されたβ分散のtanδを、さまざまな時間および温度で時効処理された試料について示す。)」 エ 「 [図:0001435204000007.jpg] (仮訳:図2 一定周波数1.5Hzにおいて測定されたα分散のtanδを、さまざまな時間および温度で時効処理された試料について示す。)」 (2)甲第5号証に記載された技術的事項 ア 上記「(1)」の「ア」の「2.1 動的粘弾性測定」には「試験材は市販の非晶性PET(ペテック:タキロン社)であり,・・・(略)・・・373Kで2h加熱後,氷水中に投入して急冷したものを急冷材として用いた.・・・(略)・・・急冷材を,Tg以下の時効温度(313,323,333K)において時効時間ta(24,60,96h)で処理した時効材を試験材とした」ことが記載されており、当該「試験材」は、「非晶性PET(ペテック:タキロン社)を、373Kで2時間加熱し、氷水中に投入して急冷し、Tg以下の時効温度において時効時間taで処理した時効材」であると解される。 イ 上記「(1)」の「ア」の「2.1 動的粘弾性測定」には「ねじり形式の自由減衰振動法(周波数1.5Hz(室温))によって,約140~400Kの温度域において貯蔵弾性率G’,損失弾性率G”,損失正接tanδの温度分散を測定した.・・・(略)・・・測定は約1K/minで昇温しながら2.5K間隔で行った」と記載されており、測定条件は、測定方法「ねじり形式の自由減衰振動法」、測定周波数「1.5Hz」、昇温速度「1K/min」であると解される。 ウ 上記「(1)」の「イ」の「3.1 動的粘弾性測定」には「図1,2に急冷材,各種時効材について低温域β緩和及び高温域α緩和それぞれの損失正接の温度分散の測定結果を比較して示す」こと、「高温域のα分散は・・・(略)・・・主分散であり,低温域のβ分散は・・・(略)・・・分子鎖セグメントの局所的運動による分散である」ことが記載されている。 エ 上記「ウ」と、上記「(1)」の「ウ」に示す「図1」の記載を合わせると、当該「図1」は低温域のβ分散を表しており、tanδのふるまいが試料によって異なるが、190~200K付近に1つのピークが認められる。 オ 上記「ウ」と、上記「(1)」の「エ」に示す「図2」の記載を合わせると、当該「図2」は高温域のα分散を表しており、tanδのふるまいが試料によって異なるが、350K付近に1つのピークが認められる。 カ 上記「ア」ないし「オ」を総合すると、甲第5号証には、次の技術的事項が記載されていると認められる。 <甲第5号証に記載された技術的事項> 「ねじり形式の自由減衰振動法、昇温温度1K/min、周波数1.5Hzの条件での動的粘弾性測定によって得られる損失正接tanδは、試料「非晶性PET(ペテック:タキロン社)の急冷材、各種時効材」について、350K付近、190~200K付近にそれぞれピークが認められる。」 6 甲第6号証の記載事項 甲第6号証(特開2011-204674号公報)には、以下の各記載がある。 ア 「【請求項1】 25℃におけるフィルムの突き刺し荷重が5N~15Nかつ、突き刺し変位が2.5~7mmであり、フィルムの厚みが10~40μmである電池外装用ポリエステルフィルム。」 イ 「【0060】 ・・・(略)・・・ポリエステル樹脂に可塑剤、界面活性剤、染料などの添加剤を含んでいる可能性がある場合は、不溶成分を除去した後に、最沈殿法、再結晶法、クロマトグラフィー法、抽出法等を実施した後に、再度溶液を調整して測定した値(η)である。」 7 甲第7号証の記載事項 甲第7号証(特開2014-175121号公報)には、以下の各記載がある。 ア 「【請求項1】 少なくとも保護層、第1の接着層、少なくともアルミニウムを含む金属箔、第2の接着層、シーラント層がこの順で積層されてなる電池外装用ラミネートフィルムであって、該金属箔の該第2の接着層と接する側の表面に、水との接触角が5°以上、70°以下となるようなベーマイト皮膜が形成されており、該第2の接着層は少なくとも酸変性ポリオレフィン樹脂を含有し、該金属箔と該第2の接着層が熱ラミネーション法により貼り合わされてなることを特徴とする電池外装用ラミネートフィルム。」 イ 「【0089】 更に、シーラント層5には、本発明の効果を損なわない範囲で、・・・(略)・・・各種可塑剤・・・(略)・・・を添加することができる。」 8 甲第8号証の記載事項 甲第8号証(特開平4-100836号公報)には、以下の各記載がある。 ア 「2.特許請求の範囲 (1)鎖状グリコール類と次の一般式(I)・・・(略)・・・で表される脂肪族第三級カルボン酸とを原料にして得られるグリコールジェステルを含有することを特徴とする樹脂用可塑剤。」(第1ページ左下欄第4ないし13行) イ 「前記熱可塑性ポリエステル樹脂としては、たとえば、ポリエチレンテレフタレート、・・・(略)・・・が挙げられる。」(第9ページ左上欄第8ないし11行) 9 甲第9号証の記載事項 甲第9号証(特開2004-296174号公報)には、以下の各記載がある。 ア 「【請求項1】 基材フィルムの一方の面に金属箔、アンカーコート層、シーラント層が順次積層された積層体において、・・・(略)・・・シーラント層が密度0.92g/cm3以上のポリエチレン樹脂90~60重量%と無機系吸湿剤10~40重量%を混合した混合樹脂・・・(略)・・・からなることを特徴とするリチウムイオン電池用外装材。」 イ 「【0022】 前記無機系吸湿剤は塩化カルシウム、ゼオライト、硫酸マグネシウム、生石灰又はミョウバンのいずれかである。ポリエチレン樹脂に対しその混合割合が10重量%未満であると吸湿性能が劣り、40重量%を超えると加工適性が低下するので良くない。」 10 甲第10号証の記載事項 甲第10号証(国際公開第02/26495号)には、以下の記載がある。 「 上記接着層と前記第1の樹脂層と前記第2の樹脂層とのいずれかが酸化亜鉛微粒子を更に含有すれば、硫化水素等の硫化物に対する耐腐食性に優れたラミネート体を提供できる。」(第6ページ第11ないし13行) 11 甲第11号証の記載事項 (1)甲第11号証(特開2019-204626号公報)には、以下の各記載がある。(なお、下線は合議体で付与した。) ア 「【請求項1】 少なくとも基材層、一方又は両方の面に腐食防止処理層が設けられた金属箔層、及び、シーラント層をこの順で備える蓄電装置用外装材であって、 前記シーラント層がポリプロピレン系樹脂(A)及び前記ポリプロピレン系樹脂と非相溶である非相溶系成分(B)を含む樹脂層を備え、 前記シーラント層が、周波数1.0Hzでの動的粘弾性測定により得られる損失正接tanδにおいて、-30~30℃に極大値を有し、且つ、-30~30℃におけるtanδの前記極大値(II)の-50℃におけるtanδの値(I)に対する比(II/I)が、2.50以上である、蓄電装置用外装材。」 イ 「【0084】 <シーラント層16> シーラント層16は、外装材10にヒートシールによる封止性を付与する層である。シーラント層16は、ポリプロピレン系樹脂(A)及び上記ポリプロピレン系樹脂と非相溶である非相溶系成分(B)を含む樹脂層16a(第1の樹脂層16aということがある)を備える。図1においては、シーラント層16は第1の樹脂層16aから構成されている。 【0085】 シーラント層16は、周波数1.0Hzでの動的粘弾性測定により得られる損失正接tanδにおいて、-30~30℃に極大値を有する。また、シーラント層16は、-30~30℃におけるtanδの極大値(II)の-50℃におけるtanδの値(I)に対する比(II/I) が、2.50以上である。 ・・・(略)・・・ 【0094】 以下に、第1の樹脂層16aに含まれ得る各成分の例について説明する。 【0095】 (ポリプロピレン系樹脂(A)) ポリプロピレン系樹脂(A)は、プロピレンを含む重合単量体から得られた樹脂である。・・・(略)・・・ 【0101】 (非相溶系成分(B)) 非相溶系成分(B)としては、グラフト共重合体、ブロック共重合体及びランダム共重合体等が挙げられる。これらの共重合体は、少なくとも一部に(A)成分に対する非相溶部を有する。」 ウ 「【0211】 (シーラント層の損失正接tanδ) ・・・(略)・・・JIS K7244-4に準拠した方法に従い、動的粘弾性装置(SII社製、商品名:DMS6100)を用いて、下記条件にて測定を行い、損失弾性率E''及び貯蔵弾性率E'から損失正接tanδを算出した。実施例1及び比較例1で得られた外装材におけるシーラント層のtanδの測定結果を図4に示す。また、得られたtanδの算出結果から、-50℃におけるtanδの値(I)、-30~30℃におけるtanδの極大値(II)、及び90~100℃におけるtanδの最大値(III)をそれぞれ求め、II/I及びIII/IIの値をそれぞれ算出した。なお、-100~120℃ の温度範囲において、tanδの最大値は、実施例1~9及び実施例11~14では(II)であり、実施例10及び比較例1では(III)であった。」 エ 「【図4】 [図:0001435204000008.jpg] 」 (2)甲第11号証に記載された技術的事項 ア 上記「(1)」の「イ」の段落0084及び段落0085には「シーラント層16は、ポリプロピレン系樹脂(A)及び上記ポリプロピレン系樹脂と非相溶である非相溶系成分(B)を含む樹脂層16a・・・(略)・・・を備える。・・・(略)・・・シーラント層16は、周波数1.0Hzでの動的粘弾性測定により得られる損失正接tanδにおいて、-30~30℃に極大値を有する」ことが記載されている。 イ 上記「(1)」の「ウ」の段落0211には「(シーラント層の損失正接tanδ) ・・・(略)・・・動的粘弾性装置(SII社製、商品名:DMS6100)を用いて、下記条件にて測定を行い、・・・(略)・・・損失正接tanδを算出した。・・・(略)・・・また、得られたtanδの算出結果から、-50℃におけるtanδの値(I)、-30~30℃におけるtanδの極大値(II)、及び90~100℃におけるtanδの最大値(III)をそれぞれ求め」たことが記載されている。 ウ 上記「イ」と、上記「(1)」の「エ」に示す「図4」の記載を合わせると、動的粘弾性装置「SII社製、商品名:DMS6100」、周波数1.0Hzの条件での動的粘弾性測定により得られる損失正接tanδは、試料「シーラント層」について、-30~30℃におけるtanδの極大値(II)が認められ、90~100℃におけるtanδの最大値(III)が認められる。 エ 上記「ア」ないし「ウ」を総合すると、甲第11号証には、次の技術的事項が記載されていると認められる。 <甲第11号証に記載された技術的事項> 「装置DMS6100、周波数1.0Hzの条件での動的粘弾性測定により得られる損失正接tanδは、試料「シーラント層(ポリプロピレン系樹脂(A)及び上記ポリプロピレン系樹脂と非相溶である非相溶系成分(B)を含む樹脂層)」について、-30~30℃におけるtanδの極大値(II)、90~100℃におけるtanδの最大値(III)が認められる。」 第5 当審の判断 申立理由(第29条第2項)について、甲第1号証を主引例とする場合と、甲第2号証を主引例とする場合とに分けて判断する。 1 甲第1号証を主引例とする場合 (1)対比 本件特許発明1と甲1発明を対比すると、次のことがいえる。 ア 甲1発明の「基材層1、接着層2、化成処理層3a、バリア層として機能するステンレス鋼箔3、化成処理層3b、接着層5、シーラント層4の各層を選択的に積層する」ことは、少なくとも基材層1と、バリア層として機能するステンレス鋼箔3と、シーラント層4とを順に積層することであるから、本件特許発明1の「少なくとも基材層1と、バリア層として機能するステンレス鋼箔3と、シーラント層4とを順に備える」ことに含まれる。 イ 甲1発明の「基材層1」、「バリア層として機能するステンレス鋼箔3」及び「シーラント層4」は、それぞれ本件特許発明1の「基材層」、「バリア層」及び「シーラント層」に相当する。 ウ 甲1発明の「積層体からなり」は、複数の層が積層されたものが積層体であることから、本件特許発明1の「積層構造を有し」に相当する。 エ 上記「ア」ないし「ウ」から、甲1発明の「基材層1、接着層2、化成処理層3a、バリア層として機能するステンレス鋼箔3、化成処理層3b、接着層5、シーラント層4の各層を選択的に積層する積層体からなり」は、本件特許発明1の「 基材層と、 バリア層と、 シーラント層と、 をこの順に少なくとも備える積層構造を有し」に含まれる。 オ 甲1発明の「二次電池用包装材料」は、「蓄電装置」が「二次電池」の上位概念に属するから、本件特許発明1の「蓄電装置用外装材」に含まれる。 カ したがって、上記「エ」及び「オ」から、本件特許発明1と甲1発明は、以下の点で相違し、その余の点で一致する。 <相違点1> 本件特許発明1では「前記シーラント層が、1.0Hzの条件での動的粘弾性測定によって得られる損失正接tanδのプロファイルの-130℃~-50℃の範囲に少なくとも一つの副分散ピークγを有」するという発明特定事項を有するのに対して、甲1発明ではそのような発明特定事項について特定されていない点。 <相違点2> 本件特許発明1では「前記シーラント層が、テレフタル酸とエチレングリコールとの共重合体、テレフタル酸とエチレングリコール及びブタンジオールとの共重合体、テレフタル酸及びイソフタル酸とエチレングリコール、ブタンジオール及びネオペンチルグリコールとの共重合体、テレフタル酸と、エチレングリコール及び1,4-シクロヘキサンジメタノールとの共重合体、テレフタル酸及びイソフタル酸とブタンジオール及びヘキサンジオールとの共重合体、並びにアミド変性ポリエチレンからなる群から選ばれる少なくとも一種の樹脂を含む」であるのに対して、甲1発明では「シーラント層4は、エチレンテレフタレートを繰り返し単位の主体とした共重合ポリエステル等を1種単独又は他のポリエステル樹脂と組み合わせて使用する樹脂を含む」である点。 (2)判断 上記相違点1について検討する。 ア 甲第4号証は、上記「第4」の「4」の「(2)」の「オ」に説示したとおり、周波数について「10Hzの条件」での動的粘弾性測定のデータについて開示するものの、「1.0Hzの条件」での動的粘弾性測定のデータについては開示も示唆もしていない。 イ 甲第5号証は、上記「第4」の「5」の「(2)」の「カ」に説示したとおり、周波数について「1.5Hzの条件」での動的粘弾性測定のデータについて開示するものの、「1.0Hzの条件」での動的粘弾性測定のデータについては開示も示唆もしていない。 ウ 甲第11号証は、上記「第4」の「11」の「(2)」の「エ」に説示したとおり、周波数について「1.0Hzの条件」での動的粘弾性測定のデータではあるものの、「損失正接tanδのプロファイルの-130℃~-50℃の範囲に少なくとも一つの副分散ピークγを有」するものではない。 エ 甲第3号証、甲第6号証ないし甲第10号証では、いずれも「前記シーラント層が、1.0Hzの条件での動的粘弾性測定によって得られる損失正接tanδのプロファイルの-130℃~-50℃の範囲に少なくとも一つの副分散ピークγを有」するという発明特定事項が開示も示唆もされていない。 オ 上記「ア」ないし「エ」を総合すると、上記相違点1は、当業者が容易に想到し得たとはいえない。 したがって、上記相違点2について検討するまでもなく、本件特許発明1は、当業者であっても、甲第1号証に記載された発明、並びに甲第3号証ないし甲第11号証に記載された技術的事項に基いて、容易に発明をすることができたものではない。 2 甲第2号証を主引例とする場合 本件特許発明1と甲2発明は、少なくとも上記相違点1と同じ点で相違し、上記説示したとおりである。 したがって、本件特許発明1は、当業者であっても、甲第2号証に記載された発明、並びに甲第3号証ないし甲第11号証に記載された技術的事項に基いて、容易に発明をすることができたものではない。 3 本件特許発明2ないし本件特許発明8について 本件特許発明2ないし本件特許発明8は、本件特許発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件特許発明1と同様である。 4 本件特許発明9及び本件特許発明10 本件特許発明9は、本件特許発明1の「蓄電装置用外装材」を、「シーラントフィルムの選定方法」としたものであるから、本件特許発明9と甲1発明又は甲2発明は、少なくとも上記相違点1と同じ点で相違することから、本件特許発明1と同様である。 また、本件特許発明10は、本件特許発明9の発明特定事項を全て含むものであるから、本件特許発明9と同様である。 第6 むすび 以上のとおりであるから、本件特許発明1ないし本件特許発明10は、当業者であっても、甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明、並びに甲第3号証ないし甲第11号証に記載された技術的事項に基いて、容易に発明をすることができたものでない。 したがって、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許発明1ないし本件特許発明10は、特許法第113条第1項第2号には該当せず、取り消すことはできない。 また、他に、本件特許発明1ないし本件特許発明10を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700881

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