特許異議申立
2024-700443
蓄電装置用外装材及び蓄電装置用外装材の製造方法
- 審判番号
- 2024-700443
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-029067
- 登録番号
- 7377417
- 請求日
- 2024年05月10日
- 審決日
- 2024年08月19日
- 公報発行日
- 2024年09月27日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】TOPPANホールディングス株式会社
- 【権利者代理人】長谷川 芳樹
- 【権利者代理人】黒木 義樹
- 【権利者代理人】鈴木 洋平
- 【異議申立人】松山 徳子
- 審判長/審判官
- 審判長 岩間 直純
- 審判官 行武 哲太郎
- 審判官 畑中 博幸
- 分類
- P1651.121-Y (H01M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7377417号発明「蓄電装置用外装材及び蓄電装置用外装材の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7377417号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7377417号(以下、「本件特許」という。)の請求項1-5に係る特許についての出願は、平成28年7月25日(優先権主張 平成28年4月12日)に出願した特願2016-145508号(以下、「原出願」という。)の一部を令和4年2月28日に新たな特許出願としたものであって、令和5年11月1日にその特許権の設定登録がされ、同年11月10日に特許掲載公報が発行された。その後、請求項1-5に係る発明に対して、令和6年5月10日に特許異議申立人 松山 徳子(以下、「特許異議申立人」という。)により、特許異議の申立てがなされたものである。
第2 本件発明
本件特許の請求項1-5の特許に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」-「本件発明5」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1-5に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
【請求項1】(本件発明1)
少なくとも基材層、接着層、金属箔層、シーラント接着層及びシーラント層がこの順で積層された構造を有し、
前記基材層の厚さが6~40μmであり、前記金属箔層の厚さが9~200μmであり、前記シーラント層の厚さが10~100μmであり、
前記金属箔層がアルミニウム箔であり、
前記基材層が、下記条件を満たすポリエステルフィルムからなる、蓄電装置用外装材。
<条件>
160~200℃での熱処理後の50%伸長時応力値が100~180MPaであり、160~200℃での熱処理後の熱収縮率が1~15%であり、且つ200℃での熱処理後の熱収縮率が7.8%以上であるポリエステルフィルム。これら熱処理はオーブン中での30分間の加熱による。
50%伸長時応力値:基材層の4方向(0°(MD)、45°、90°(TD)、135°)に対し引張試験(試験片形状:JIS K7127に規定される5号型ダンベル状、チャック間距離:75mm、標点間距離:25mm、試験速度:50mm/min、温度:23℃)を行ったときの応力値の平均値である。
熱収縮率:基材層の4方向(0°(MD)、45°、90°(TD)、135°)に対する、熱処理前後での収縮率の平均値である。
【請求項2】(本件発明2)
前記ポリエステルフィルムは、160℃での熱処理後の熱収縮率が1~5%である、請求項1に記載の蓄電装置用外装材。
【請求項3】(本件発明3)
前記基材層と前記接着層との間に設けられた易接着処理層をさらに備える、請求項1又は2に記載の蓄電装置用外装材。
【請求項4】(本件発明4)
前記金属箔層の両面に設けられた腐食防止処理層を更に備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の蓄電装置用外装材。
【請求項5】(本件発明5)
下記条件を満たすポリエステルフィルムを基材層として選定し、金属箔層の一方の面に、接着層を介して前記基材層を貼り合わせる工程、及び
前記金属箔層の前記接着層とは反対側の面に、シーラント接着層を介してシーラント層を形成する工程、を備え、
前記基材層の厚さが6~40μmであり、前記金属箔層の厚さが9~200μmであり、前記シーラント層の厚さが10~100μmであり、
前記金属箔層がアルミニウム箔である、蓄電装置用外装材の製造方法。
<条件>
160~200℃での熱処理後の50%伸長時応力値が100~180MPaであり、160~200℃での熱処理後の熱収縮率が1~15%であり、且つ200℃での熱処理後の熱収縮率が7.8%以上であるポリエステルフィルム。これら熱処理はオーブン中での30分間の加熱による。
50%伸長時応力値:基材層の4方向(0°(MD)、45°、90°(TD)、135°)に対し引張試験(試験片形状:JIS K7127に規定される5号型ダンベル状、チャック間距離:75mm、標点間距離:25mm、試験速度:50mm/min、温度:23℃)を行ったときの応力値の平均値である。
熱収縮率:基材層の4方向(0°(MD)、45°、90°(TD)、135°)に対する、熱処理前後での収縮率の平均値である。
第3 申立理由の概要
特許異議申立人は、証拠として下記の甲第1号証-甲第5号証を提出し、以下の申立理由により、請求項1-5に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。
理由A 特許法第29条第2項
本件発明1-5は、甲第1号証と甲第2号証-甲第5号証に記載の発明とを組み合わせることで、当業者が容易に想到できたものであるから特許法第29状第2項の規定に違反しているため、同法第113条第2号により、その特許は取り消されるべきである。
[証拠方法]
甲第1号証:特開2015-044626号公報
甲第2号証:特開2016-162622号公報
甲第3号証:国際公開第2015/125806号
甲第4号証:二軸配向ポリエステルフィルムの耐熱寿命 -高分子論文集1999年56巻1号 p.45-47
甲第5号証:結晶性高分子の結晶領域の弾性率 第11報ポリエチレンテレフタレートおよびその共重合物 桜田 一郎,梶 慶輔 1969年26巻296号 p.817-822
第4 甲第1号証-甲第5号証について
1 甲第1号証
甲第1号証には、図面とともに、次の事項が記載されている。(下線は当審にて付与。)
「【0001】
本発明は、例えば、ノートパソコン用、携帯電話用、車載用、定置型の二次電池(リチウムイオン二次電池)のケースとして好適に用いられ、また食品の包装材、医薬品の包装材として好適に用いられる包装材及び成形ケースに関する。」
「【0038】
本発明に係る包装材1の一実施形態を図1に示す。この包装材1は、リチウムイオン2次電池ケース用包材として用いられるものである。即ち、前記包装材1は、深絞り成形等の成形に供されて2次電池ケースとして用いられるものである。
【0039】
前記包装材1は、金属箔層4の上面に第1接着剤層5を介して耐熱性樹脂延伸フィルム層(外側層)2が積層一体化されると共に、前記金属箔層4の下面に第2接着剤層6を介して熱可塑性樹脂層(内側層)3が積層一体化された構成からなる。・・・(中略)・・・
【0040】
・・・(中略)・・・本発明において、前記耐熱性樹脂延伸フィルム層2は、熱水収縮率が2%~20%の耐熱性樹脂延伸フィルムにより構成される必要がある。熱水収縮率が2%未満では、高温多湿等のやや苛酷な環境下での使用時等において着色インキ層が耐熱性樹脂延伸フィルム層から剥離する。一方、熱水収縮率が20%を超えると、深絞り成形や張り出し成形等の成形を行った際に包装材の着色インキ層が耐熱性樹脂延伸フィルム層から剥離する。中でも、前記耐熱性樹脂延伸フィルムとして、熱水収縮率が2.5~10%の耐熱性樹脂延伸フィルムを用いるのが好ましい。更に、熱水収縮率が3.0%~6.0%の耐熱性樹脂延伸フィルムを用いるのがより好ましく、さらには熱水収縮率が3.5%~5.0%の耐熱性樹脂延伸フィルムを用いるのが特に好ましい。
【0041】
なお、前記「熱水収縮率」とは、耐熱性樹脂延伸フィルム2の試験片(10cm×10cm)を95℃の熱水中に30分間浸漬した際の浸漬前後の試験片の延伸方向における寸法変化率であり、次式で求められる。
【0042】
熱水収縮率(%)={(X-Y)/X}×100
X:浸漬処理前の延伸方向の寸法
Y:浸漬処理後の延伸方向の寸法。
【0043】
なお、2軸延伸フィルムを採用する場合におけるその熱水収縮率は、2つの延伸方向における寸法変化率の平均値である。」
「【0045】
前記耐熱性樹脂延伸フィルム層(外側層)2としては、特に限定されるものではないが、例えば、延伸ナイロンフィルム等の延伸ポリアミドフィルム、延伸ポリエステルフィルム等が挙げられる。中でも、前記耐熱性樹脂延伸フィルム層2としては、二軸延伸ナイロンフィルム等の二軸延伸ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリブチレンテレフタレート(PBT)フィルム、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム又は二軸延伸ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムを用いるのが特に好ましい。また、前記耐熱性樹脂延伸フィルム層2としては、同時2軸延伸法により延伸された耐熱性樹脂二軸延伸フィルムを用いるのが好ましい。また、「T方向における熱水収縮率」に対する「M方向における熱水収縮率」の比(MD/TD)が0.9~1.1の範囲にある耐熱性樹脂二軸延伸フィルムを用いるのが好ましい。前記比(MD/TD)が0.9~1.1の範囲にある構成を採用した場合には、特に良好な成形性を有した包装材を得ることができる。なお、前記「M方向」は、「機械流れ方向」を意味し、前記「T方向」は、「M方向に対して直交する方向」を意味する。前記ナイロンとしては、特に限定されるものではないが、例えば、6ナイロン、6,6ナイロン、MXDナイロン等が挙げられる。なお、前記耐熱性樹脂延伸フィルム層2は、単層(単一の延伸フィルム)で形成されていても良いし、或いは、例えば延伸ポリエステルフィルム/延伸ポリアミドフィルムからなる複層(延伸PETフィルム/延伸ナイロンフィルムからなる複層等)で形成されていても良い。」
「【0047】
前記耐熱性樹脂延伸フィルム層2の厚さは、12μm~50μmであるのが好ましい。ポリエステルフィルムを用いる場合には厚さは12μm~50μmであるのが好ましく、ナイロンフィルムを用いる場合には厚さは15μm~50μmであるのが好ましい。上記好適下限値以上に設定することで包装材として十分な強度を確保できると共に、上記好適上限値以下に設定することで張り出し成形時や絞り成形時の応力を小さくできて成形性を向上させることができる。」
「【0077】
前記熱可塑性樹脂層(内側層)3は、リチウムイオン二次電池等で用いられる腐食性の強い電解液などに対しても優れた耐薬品性を具備させると共に、包材にヒートシール性を付与する役割を担うものである。」
「【0079】
前記熱可塑性樹脂層3の厚さは、20μm~80μmに設定されるのが好ましい。20μm以上とすることでピンホールの発生を十分に防止できると共に、80μm以下に設定することで樹脂使用量を低減できてコスト低減を図り得る。中でも、前記熱可塑性樹脂層3の厚さは30μm~50μmに設定されるのが特に好ましい。なお、前記熱可塑性樹脂層3は、単層であってもよいし、複層であってもよい。
【0080】
前記金属箔層4は、包装材1に酸素や水分の侵入を阻止するガスバリア性を付与する役割を担うものである。前記金属箔層4としては、特に限定されるものではないが、例えば、アルミニウム箔、銅箔等が挙げられ、アルミニウム箔が一般的に用いられる。前記金属箔層4の厚さは、20μm~100μmであるのが好ましい。20μm以上であることで金属箔を製造する際の圧延時のピンホール発生を防止できると共に、100μm以下であることで張り出し成形時や絞り成形時の応力を小さくできて成形性を向上させることができる。」
「【0090】
<実施例1>
・・・(中略)・・・
【0093】
一方、厚さ35μmのアルミニウム箔4の両面に、ポリアクリル酸、三価クロム化合物、水、アルコールからなる化成処理液を塗布し、180℃で乾燥を行って、クロム付着量が10mg/m2となるようにした。
【0094】
次に、前記化成処理済みアルミニウム箔4の一方の面に、ポリエステル系ポリウレタン接着剤5を介して前記二軸延伸ナイロンフィルム2をその黒インキ層(着色インキ層)10側で貼り合わせ、次いでアルミニウム箔4の他方の面に、ポリアクリル接着剤6を介して厚さ30μmの未延伸ポリプロピレンフィルム(熱可塑性樹脂層)3を貼り合わせた後、40℃環境下で5日間放置することによって、積層体を得た。」
「【0120】
<実施例17>
接着剤組成物Wに代えて、接着剤組成物Zを用いると共に、厚さ15μm、熱水収縮率4.0%の二軸延伸6ナイロンフィルム(MD/TD=0.95)に代えて、逐次2軸延伸法で延伸して得られた、厚さ15μm、熱水収縮率5.0%の二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(MD/TD=0.9)を用いた以外は、実施例1と同様にして、図1に示す包装材1を得た。」
上記記載から、甲第1号証には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
(1)甲第1号証に記載された発明は、リチウムイオン2次電池ケース用包材用の包装材に関するものである。(【0001】、【0038】)
(2)包装材1は、金属箔層4の上面に第1接着剤層5を介して耐熱性樹脂延伸フィルム層(外側層)2が積層一体化されると共に、金属箔層4の下面に第2接着剤層6を介して熱可塑性樹脂層(内側層)3が積層一体化された構成からなる。(【0039】)よって、包装材1は、耐熱性樹脂延伸フィルム層2、第1接着剤層5、金属箔層4、第2接着剤層6及び熱可塑性樹脂層3がこの順で積層された構造を有していると認められる。
(3)耐熱性樹脂延伸フィルム層2は、延伸ポリエステルフィルムである二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用い(【0045】)、厚さは12μm~50μmであるのが好ましい(【0047】)。また、熱水収縮率が2%~20%の耐熱性樹脂延伸フィルムにより構成される必要がある。(【0040】)ここで、熱水収縮率とは、耐熱性樹脂延伸フィルム2の試験片(10cm×10cm)を95℃の熱水中に30分間浸漬した際の浸漬前後の試験片の延伸方向における寸法変化率であり(【0041】、【0042】)、2軸延伸フィルムを採用する場合におけるその熱水収縮率は、2つの延伸方向における寸法変化率の平均値である。(【0043】)よって、耐熱性樹脂延伸フィルム層2を、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなるものとした場合において、熱水収縮率とは、耐熱性樹脂延伸フィルム2の試験片(10cm×10cm)を95℃の熱水中に30分間浸漬した際の浸漬前後の試験片の2つの延伸方向における寸法変化率の平均値であると認められる。
また、実施例17において、厚さ15μm、熱水収縮率4.0%の二軸延伸6ナイロンフィルム(MD/TD=0.95)に代えて、逐次2軸延伸法で延伸して得られた、厚さ15μm、熱水収縮率5.0%の二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(MD/TD=0.9)を用いた以外は、実施例1と同様にして包装材1を得ている。(【0120】)よって、実施例17において、耐熱性樹脂延伸フィルム層2は、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを用いており、厚さが15μmであり、熱水収縮率は5.0%であると認められる。
(4)金属箔層4は、アルミニウム箔を用い、厚さは20μm~100μmであるのが好ましい。(【0080】)
また、実施例17において、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(MD/TD=0.9)を用いた以外は、実施例1と同様にして包装材1を得ている(【0120】)ところ、実施例1において、厚さ35μmのアルミニウム箔4を用いている。(【0093】)よって、実施例17において、金属箔層4はアルミニウム箔であり、厚さが35μmであると認められる。
(5)熱可塑性樹脂層3は、包材にヒートシール性を付与する役割を担うものである。(【0077】)また、熱可塑性樹脂層3の厚さは、20μm~80μmに設定されるのが好ましい。(【0079】)
また、実施例17において、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(MD/TD=0.9)を用いた以外は、実施例1と同様にして包装材1を得ている(【0120】)ところ、実施例1において、厚さ30μmの未延伸ポリプロピレンフィルム(熱可塑性樹脂層)3を用いている。(【0094】)よって、実施例17において、熱可塑性樹脂層3の厚さは30μmであると認められる。
(6)実施例17において、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(MD/TD=0.9)を用いた以外は、実施例1と同様にして包装材1を得ている(【0120】)ところ、実施例1において、ポリアクリル接着剤6を用いている。(【0093】)よって、実施例17において、第2接着剤層6を用いていると認められる。
以上より、甲第1号証(特に、実施例17)には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
「外側層である耐熱性樹脂延伸フィルム層2、第1接着剤層5、金属箔層4、金属箔層4の下面と熱可塑性樹脂層3を接着する第2接着剤層6、及び、包材にヒートシール性を付与する内側層である熱可塑性樹脂層3がこの順で積層された構造を有し、
耐熱性樹脂延伸フィルム層2の厚さが15μmであり、金属箔層4の厚さが35μmであり、熱可塑性樹脂層3の厚さが30μmであり、
金属箔層4がアルミニウム箔であり、
耐熱性樹脂延伸フィルム層2は、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなり、熱水収縮率は5.0%である、リチウムイオン2次電池ケース用包材用の包装材1。
(熱水収縮率とは、耐熱性樹脂延伸フィルム2の試験片(10cm×10cm)を95℃の熱水中に30分間浸漬した際の浸漬前後の試験片の2つの延伸方向における寸法変化率の平均値のこと)」
2 甲第2号証
甲第2号証は、本件特許の原出願の出願日(平成28年7月25日)及び優先日(平成28年4月12日)のいずれよりも後である平成28年9月5日に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用例である。
3 甲第3号証
甲第3号証には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「[0009] 本発明の主な目的は、少なくとも、基材層、接着層、金属層、及びシーラント層が順次積層されたフィルム状の積層体からなる電池用包装材料において、成形時にクラックやピンホールが生じ難く、優れた成型性を備えさせる技術を提供することにある。」
「[0015] 1.電池用包装材料の積層構造
電池用包装材料は、図1に示すように、少なくとも、基材層1、接着層2、金属層3、及びシーラント層4が順次積層された積層体からなる。本発明の電池用包装材料において、基材層1が最外層になり、シーラント層4は最内層になる。即ち、電池の組み立て時に、電池素子の周縁に位置するシーラント層4同士が熱溶着して電池素子を密封することにより、電池素子が封止される。」
「[0017] 2.電池用包装材料を形成する各層の組成
[基材層1]
・・・(中略)・・・なお、本発明において、基材層1のMD方向及びTD方向における、上記50%伸長時の応力及び5%伸長時の応力は、それぞれ、JIS K7127に規定された方法に準拠して測定された値である。」
「[0021] 基材層1のMD方向における50%伸長時の応力としては、特に制限されないが、好ましくは100~210MPa程度、より好ましくは110~200MPa程度が挙げられる。また、基材層1のTD方向における50%伸長時の応力としては、特に制限されないが、好ましくは130~270MPa程度、より好ましくは140~260MPa程度が挙げられる。・・・(中略)・・・
[0022] 基材層1を形成する素材については、絶縁性を備えており、かつ、上記の関係を充足するものであることを限度として特に制限されるものではない。基材層1を形成する素材としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン樹脂、珪素樹脂、フェノール樹脂、及びこれらの混合物や共重合物等の樹脂フィルムが挙げられる。これらの中でも、好ましくはポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂が挙げられ、より好ましくは2軸延伸ポリエステル樹脂、2軸延伸ポリアミド樹脂が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、共重合ポリエステル、ポリカーボネート等が挙げられる。また、ポリアミド樹脂としては、具体的には、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン6とナイロン6,6との共重合体、ナイロン6,10、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)等が挙げられる。」
「[0064] 実施例1-4及び比較例1-2
<電池用包装材料の製造>
基材層1/接着層2/金属層3が順に積層された積層体に対して、サーマルラミネート法で接着層5及びシーラント層4を積層させることにより、基材層1/接着層2/金属層3/接着層5/シーラント層4が順に積層された積層体からなる電池用包装材料を製造した。電池用包装材料の具体的な製造条件は、以下に示す通りである。
[0065] 基材層1を構成する樹脂フィルムとしては、それぞれ、表1に記載のA=MD方向における50%伸長時応力/5%伸長時応力、及びB=TD方向における50%伸長時応力/5%伸長時応力を有する、2軸延伸ナイロンフィルム、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、2軸延伸ポリブチレンテレフタレートフィルムを用いた。なお、樹脂フィルムのMD方向、TD方向における50%伸長時応力及び5%伸長時応力、引張破断強度、及び引張破断伸度は、それぞれJIS K7127の規定に準拠した方法で測定した値である。(・・・中略・・・)」
「[0071] [表1]
[図:0001414221000001.jpg]
[0072] 表1に示される結果から明らかなように、成形深さ6mmという厳しい条件で成形した場合にも、基材層としてA+B≧3.5を充足するものを用いた実施例1-4の電池包装材料では、ピンホール及びクラックが全く見られず、ピンポール及びクラックの発生を顕著に抑制できていた。一方、基材層としてA+B<3.5のものを用いた比較例1,2の電池包装材料では、成形深さ6mmで成形した場合、ピンホール及びクラックの発生率が高く、実施例1-4に比して成形性の点で劣っていた。」
上記記載から、甲第3号証には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
(1)甲第3号証に記載された技術は、基材層、接着層、金属層、及びシーラント層が順次積層されたフィルム状の積層体からなる電池用包装材料に関するものである。([0009]、[0015]、[0064])
(2)基材層1を構成する樹脂フィルムは、2軸延伸ポリエステル樹脂であるポリエチレンテレフタレートも用い([0022])、MD方向における50%伸長時の応力としては好ましくは100~210MPa程度、TD方向における50%伸長時の応力としては好ましくは130~270MPa程度である。([0021])
また、基材層1としてポリエチレンテレフタレートを用いた実施例2及び実施例4において、MD方向における50%伸長時の応力及びTD方向における50%伸長時の応力は、それぞれ、113MPa及び160MPa、及び、116MPa及び140MPaである。([0065]、[0071]、[0072])ここで、樹脂フィルムのMD方向、TD方向における50%伸長時応力は、それぞれJIS K7127の規定に準拠した方法で測定した値である。([0017]、[0065])
よって、実施例2及び4において、基材層1の2方向(MD方向とTD方向)に対してJIS K7127の規定に準拠した方法で測定した50%伸長時の応力の平均値は、それぞれ、136.5MPa、128MPaであると認められる。
以上より、甲第3号証(特に、実施例2及び実施例4)には、次の技術が記載されていると認められる。
「ポリエチレンテレフタレートからなる基材層1において、基材層1の2方向(MD方向とTD方向)に対してJIS K7127の規定に準拠した方法で測定した50%伸長時の応力の平均値が、136.5MPaもしくは128MPaである、電池用包装材料。」
4 甲第4号証
甲第4号証には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「厚さ25μmの二軸配向フィルムでポリエチレンテレフタレート(PET)にイソフタル酸(IA)を12 mol%共重合させたポリエチレンテレフタレート/イソフタレート(PET/I)フィルム(融点: 227℃)を15 cm角の銅枠に固定して、温度(160~220℃)と時間(3~25000 min)を組み合わせて、空気中で熱処理したものを試料とした。
・・・(中略)・・・
(3) 幅5 mm、長さ20 mmの引張試験片を作製し、引張試験機(オリエンテック(株)製RTA-500)を用いて室温、10 mm/minの速度で引張試験を行い、引張強さを求めた。
・・・(中略)・・・」(第45ページ左下欄「2 実験」の第1段落)
「Fig. 3 に熱処理後の引張強さの処理時間に対する変化を示す。引張強さは熱処理時間が長くなると低下し、またこの変化は高温ほど短時間で認められる。」(第46ページ左欄第4-6行目)
[図:0001414221000002.jpg]
上記記載から、甲第4号証には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
(1)ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート(PET/I)フィルムに(融点: 227℃)を15 cm角の銅枠に固定して、温度(160~220℃)と時間(3~25000 min)を組み合わせて、空気中で熱処理したものを試料とした。
(2)幅5 mm、長さ20 mmの引張試験片を作製し、引張試験機(オリエンテック(株)製RTA-500)を用いて室温、10 mm/minの速度で引張試験を行い、引張強さを求めた。
(3)Fig. 3より、160℃で30分熱処理したポリエチレンテレフタレート/イソフタレート(PET/I)フィルムの引張強さは、未処理のものと比較してほぼ同程度となることが推定されると認められる。また、200℃で30分熱処理したポリエチレンテレフタレート/イソフタレート(PET/I)フィルムの引張強さは、未処理のものと比較して80%程度となることが推定されると認められる。
以上より、甲第4号証には、次の技術が記載されていると認められる。
「幅5 mm、長さ20 mmの引張試験片を作製し、引張試験機(オリエンテック(株)製RTA-500)を用いて室温、10 mm/minの速度で引張試験を実施した場合、ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート(PET/I)フィルムにおいて、160℃で30分熱処理したものの引張強さは、未処理のものと比較してほぼ同程度となり、200℃で30分熱処理したものの引張強さは、未処理のものと比較して80%程度となることが推定されること。」
5 甲第5号証
甲第5号証には、図面とともに、次の事項が記載されている。
「PET試料は、既報と同じ東洋レーヨン試製のタイヤコード用フィラメント(太さ5デニール、密度1.38 g/cm3、密度法結晶化度39.5%)であり、これを210℃の熱風炉中で約11時間熱処理したものを用いた。・・・(中略)・・・
PET/PEI共重合物は、東洋レーヨン中央研究所よりチップ状で提供されたものであり、イソフタル酸を8.3 mol%含んでいる。実験用試料は、このチップからつぎのように作製した。すなわち、チップを270℃でメルトプレスし、ただちに急冷して原フィルムを作製した。この原フィルム(厚さ0.45 mm)を80℃の熱風炉中で4倍延伸し、200℃のシリコン油中で3時間熱処理後、石油ベンジンで洗浄し風乾して試料とした。・・・(中略)・・・」(第817ページ左下欄「2. 試料ならびに実験方法」の第1段落及び第2段落)
「PET単独の試料(フィラメント)について得られた結果を示す。Table 1は、結晶格子面(-105)の応力(σ)ひずみ(ε)の関係と試料に対する応力(σ)-伸び(ζ)の関係である。これらの関係を図示すると、Fig. 4および5のようになる。・・・(中略)・・・Fig. 4の直線の勾配から求めた分子鎖軸方向の結晶弾性率(Ei)の値は、つぎのように得られる。
PET:Ei=110×104 kg/cm2 (21±1℃)」(第819ページ左下欄「3.1 ポリエチレンテレフタレート(PET)」の第1段落)
(当審注:ミラー指数である「-105」の記載につき、当該記載の「-1」は、原文においてはバー付の「1」。)
「PET/PEIの共重合物について、上と全く同様にしてEiを求めるための実験を行った。その結果得られた(-105)面に対する応力(σ)と格子ひずみ(ε)の関係をTable 3にあげる。この結晶格子のσ-εと試料の応力(σ)-伸び(ζ)の関係をFig. 8および9に示す。・・・(中略)・・・
Fig. 8のσ-ε図の直線の勾配から求めたEiの値は、
PET/PEI:Ei=115×104 kg/cm2 (20±1℃)」(第820ページ右欄「3.2 ポリエチレンテレフタレート/イソフタレート(PET/PEI)」の第1段落及び第2段落)
(当審注:ミラー指数である「-105」の記載につき、当該記載の「-1」は、原文においてはバー付の「1」。)
[図:0001414221000003.jpg]
[図:0001414221000004.jpg]
(当審注:第819ページ左下欄「3.1 ポリエチレンテレフタレート(PET)」の第1段落の記載によると、Table 1は、結晶格子面(-105)の応力(σ)ひずみ(ε)の関係と試料に対する応力(σ)-伸び(ζ)の関係であり、Fig. 4および5はこれを図示したものであること、及び、Table 1の「ε(%)」列の値を参酌すると、Fig. 4中の縦軸の「ζ(%)」の記載は誤記であり、正しくは「ε(%)」であるべきものと認められる。)
[図:0001414221000005.jpg]
上記記載から、甲第5号証には、次の技術的事項が記載されていると認められる。
(1)タイヤコード用フィラメントを210℃の熱風炉中で約11時間熱処理を行うことで作製したPET単独の試料において、結晶格子面(-105)に対する応力(σ)とひずみ(ε)の関係から求められる結晶弾性率(Ei)の値は、Ei=110×104 kg/cm2である。
(2)チップ状で提供されたPET/PEI共重合物を270℃でメルトプレスし急冷することで作製した原フィルムを、80℃の熱風炉中で4倍延伸し、200℃のシリコン油中で3時間熱処理を行うことで作製したPET/PEIの共重合物の試料において、結晶格子面(-105)面に対する応力(σ)とひずみ(ε)の関係から求められる結晶弾性率(Ei)の値は、Ei=115×104 kg/cm2である。
(3)PET単独の試料とPET/PEIの共重合物の試料は、上記(1)及び(2)のとおり結晶弾性率(Ei)の値は近い値をとっており、Fig. 4およびFig. 8も鑑みれば、応力とひずみの関係は同様のものとなると認められる。
以上より、甲第5号証には、次の技術が記載されていると認められる。
「タイヤコード用フィラメントを210℃の熱風炉中で約11時間熱処理を行うことで作製したPET単独の試料と、チップ状で提供されたPET/PEI共重合物を270℃でメルトプレスし急冷することで作製した原フィルムを、80℃の熱風炉中で4倍延伸し、200℃のシリコン油中で3時間熱処理を行うことで作製したPET/PEIの共重合物の試料は、応力とひずみの関係が同様のものとなること。」
第5 当審の判断
1 申立理由A(進歩性)について
(1)本件発明1について
ア 甲1発明との対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
(ア)甲1発明の「外側層である耐熱性樹脂延伸フィルム層2」は、外側の層であり、「二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからな」るものであるから、本件発明1の「基材層」に相当する。
(イ)甲1発明の「第1接着剤層5」は、本件発明1の「接着層」に相当する。
(ウ)甲1発明の「金属箔層4」は、本件発明1の「金属箔層」に相当する。
(エ)甲1発明の「金属箔層4の下面と熱可塑性樹脂層3を接着する第2接着剤層6」は、「包材にヒートシール性を付与する内側層である熱可塑性樹脂層3」を「金属箔層4の下面」に接着するものであるから、本件発明1の「シーラント接着層」に相当する。
(オ)甲1発明の「包材にヒートシール性を付与する内側層である熱可塑性樹脂層3」は、包材にヒートシール性を付与する内側層であるから、本件発明1の「シーラント層」に相当する。
(カ)甲1発明において、「外側層である耐熱性樹脂延伸フィルム層2」、「第1接着剤層5」、「金属箔層4」、「金属箔層4の下面と熱可塑性樹脂層3を接着する第2接着剤層6」、「包材にヒートシール性を付与する内側層である熱可塑性樹脂層3」がこの順で積層された構造を有していることは、本件発明1において「基材層」、「接着層」、「金属箔層」、「シーラント接着層」、「シーラント層」がこの順で積層された構造を有していることに相当する。
(キ)甲1発明の「耐熱性樹脂延伸フィルム層2」において、「厚さが15μmであ」ることは、本件発明1で特定されている「前記基材層」の「厚さ」の範囲である「6~40μm」に含まれるものである。
(ク)甲1発明の「金属箔層4」において、「厚さが35μmであ」ることは、本件発明1で特定されている「前記金属箔層」の「厚さ」の範囲である「9~200μm」に含まれるものである。
(ケ)甲1発明の「熱可塑性樹脂層3」において、「厚さが30μmであ」ることは、本件発明1で特定されている「前記シーラント層」の「厚さ」の範囲である「10~100μm」に含まれるものである。
(コ)甲1発明の「金属箔層4がアルミニウム箔であり」は、本件発明1の「前記金属箔層がアルミニウム箔であり」に相当する。
(サ)甲1発明の「耐熱性樹脂延伸フィルム層2は、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからな」ることは、本件発明1の「前記基材層が」「ポリエステルフィルムからなる」ことに相当する。
(シ)甲1発明に「耐熱性樹脂延伸フィルム層2」において、「熱水収縮率」が特定されており、ここで「熱水収縮率」とは「耐熱性樹脂延伸フィルム2の試験片(10cm×10cm)を95℃の熱水中に30分間浸漬した際の浸漬前後の試験片の延伸方向における、2つの延伸方向における寸法変化率の平均値」とされている。一方、本件発明1の「前記基材層」において、「160~200℃での熱処理後の熱収縮率」が特定されており、ここで「熱収縮率:基材層の4方向(0°(MD)、45°、90°(TD)、135°)に対する、熱処理前後での収縮率の平均値」とされている。
してみると、甲1発明の「耐熱性樹脂延伸フィルム層2」と、本件発明1の「前記基材層」は、いずれも熱処理後において、少なくとも2方向を含む延伸方向における寸法変化率の平均値を特定している点で共通し、後述の点で相違する。
(ス)甲1発明の「リチウムイオン2次電池ケース用包材用の包装材1」は、本件発明1の「蓄電装置用外装材」に相当する。
以上のことから、本件発明1と甲1発明とは、以下の点で一致し、また相違する。
(一致点)
「少なくとも基材層、接着層、金属箔層、シーラント接着層及びシーラント層がこの順で積層された構造を有し、
前記基材層の厚さが6~40μmであり、前記金属箔層の厚さが9~200μmであり、前記シーラント層の厚さが10~100μmであり、
前記金属箔層がアルミニウム箔であり、
前記基材層が、ポリエステルフィルムからなり、熱処理後において、少なくとも2方向を含む延伸方向における寸法変化率の平均値が所望である、蓄電装置用外装材。」
(相違点1)
「基材層」の「ポリエステルフィルム」が満たす「条件」につき、本件発明1においては、「160~200℃での熱処理後の50%伸長時応力値が100~180MPaであり」、ここで「50%伸長時応力値:基材層の4方向(0°(MD)、45°、90°(TD)、135°)に対し引張試験(試験片形状:JIS K7127に規定される5号型ダンベル状、チャック間距離:75mm、標点間距離:25mm、試験速度:50mm/min、温度:23℃)を行ったときの応力値の平均値であ」り、また、この「熱処理はオーブン中での30分間の加熱による」ものであるのに対し、甲1発明において、50%伸長時応力値は何ら特定されない点。
(相違点2)
「基材層」の「ポリエステルフィルム」が満たす「条件」につき、本件発明1においては、「160~200℃での熱処理後の熱収縮率が1~15%であり、且つ200℃での熱処理後の熱収縮率が7.8%以上であ」り、ここで「熱収縮率:基材層の4方向(0°(MD)、45°、90°(TD)、135°)に対する、熱処理前後での収縮率の平均値であ」り、また、この「熱処理はオーブン中での30分間の加熱による」ものであるのに対し、甲1発明においては、「熱水収縮率は5.0%であ」り、ここで「熱水収縮率とは、耐熱性樹脂延伸フィルム2の試験片(10cm×10cm)を95℃の熱水中に30分間浸漬した際の浸漬前後の試験片の2つの延伸方向における寸法変化率の平均値のこと」である点。
イ 判断
まず、相違点2について検討する。
甲第3-5号証のいずれにも、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる耐熱性樹脂延伸フィルムにおける熱収縮率について記載も示唆もされていない。とりわけ、「160~200℃での熱処理後の熱収縮率が1~15%であり、且つ200℃での熱処理後の熱収縮率が7.8%以上であ」り、ここで「熱収縮率:基材層の4方向(0°(MD)、45°、90°(TD)、135°)に対する、熱処理前後での収縮率の平均値であ」り、また、この「熱処理はオーブン中での30分間の加熱による」ものであることは記載も示唆もされていない。
よって、相違点2は、甲1発明および甲3-5技術に基づき、当業者が容易に想到することができた事項であるとはいえない。
また、甲第2号証は、上記「第4」「2」のとおり、本件特許の原出願の出願日及び優先日のいずれよりも後に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった引用例であるから、甲1発明及び甲第2号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものと言うことはできない
ウ 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、特許異議申立書にて、請求項1の「160~200℃での熱処理後の熱収縮率が1~15%であり、且つ200℃での熱処理後の熱収縮率が7.8%以上であるポリエステルフィルム。これら熱処理はオーブン中での30分間の加熱による。」を構成Eとした上で、構成Eについては、甲第1号証には一部明示されていないが、当業者であれば甲第2号証の実施例に記載のポリエチレンテレフタレートフィルムA-2、B-5及びC-2の180℃熱間収縮率である5.7~6.6%を、甲1発明に適用して構成Eの「160~200℃での熱処理後の熱収縮率が1~15%であり、」とすることは容易に想到できると主張している。
しかしながら、上記イで述べたように、甲第2号証は、上記「第4」「2」のとおり、本件特許の原出願の出願日及び優先日のいずれよりも後に頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となったものであり、本件特許は適法に分割出願されたものと認められるから、甲第2号証の記載内容を検討するまでもなく、甲1発明及び甲第2号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものと言うことはできない。
よって、特許異議申立人の主張を採用することはできない。
エ 小括
したがって、その余の相違点(相違点1)については検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2-5に記載された技術に基づき、当業者が容易に発明することができたものではない。
(2)本件発明2-5について
請求項2-4は請求項1を引用するものであり、少なくとも上記相違点に係る発明特定事項を備えるものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明2-4は、甲1発明及び甲2-5に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。
また、本件発明5は物を生産する方法に係る発明であり、物の発明である本件発明1とはカテゴリーが異なるものであるが、実質的に同じ発明特定事項を備えるものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明5は、甲1発明及び甲2-5に記載された技術事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。
(3)まとめ
以上のとおり、本件発明1-5は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるということはできない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、本件発明1-5は、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。
また、他に本件発明1-5を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-700443