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特許異議申立

2025-700345

全固体電池の端子用樹脂フィルム及び全固体電池

審判番号
2025-700345
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-015008
登録番号
7556366
請求日
2025年03月26日
審決日
2025年06月25日
公報発行日
2025年07月25日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】TOPPANホールディングス株式会社
  • 【権利者代理人】長谷川 芳樹
  • 【権利者代理人】黒木 義樹
  • 【権利者代理人】鈴木 洋平
  • 【権利者代理人】青木 博昭
  • 【異議申立人】松山 徳子
審判長/審判官
  • 審判長 井上 信一
  • 審判官 岩間 直純
  • 審判官 須原 宏光
分類
P1651.121-Y (H01M) / P1651.536-Y (H01M)
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特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7556366号発明「全固体電池の端子用樹脂フィルム及び全固体電池」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7556366号の請求項1~6に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7556366号の請求項1~6係る特許(以下、それぞれ「本件特許1」などといい、まとめて「本件特許」という。)についての出願は、2022年(令和4年)2月2日を出願日とする出願であって、令和6年9月17日にその特許権の設定登録がされ、令和6年9月26日に特許掲載公報が発行された。 その後、本件特許1~6に対して、令和7年3月26日に特許異議申立人 松山 徳子(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。 第2 本件特許発明 本件特許の請求項1~6に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」などという。)は、本件特許の特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 全固体電池を構成する電池本体と電気的に接続される金属端子の一部の外周面にヒートシールにより接着される全固体電池の端子用樹脂フィルムであって、 ポリオレフィン系樹脂を含むポリオレフィンフィルムを備え、 前記ポリオレフィン系樹脂が、ポリプロピレン、プロピレンを共重合成分として含むブロック若しくはランダム共重合体、プロピレン-αオレフィン共重合体、又は酸変性ポリプロピレンを含むポリオレフィンフィルムであり、 含水率が358質量ppm以上2700質量ppm以下である、全固体電池の端子用樹脂フィルム。 【請求項2】 絶縁層と、前記絶縁層の少なくとも一面側に設けられるシーラント層とを有する多層フィルムからなり、 前記シーラント層が、前記ポリオレフィンフィルムである、請求項1に記載の全固体電池の端子用樹脂フィルム。 【請求項3】前記多層フィルムのうち前記シーラント層が酸変性ポリオレフィン樹脂層である、請求項2に記載の全固体電池の端子用樹脂フィルム。 【請求項4】250℃以下の融点を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の全固体電池の端子用樹脂フィルム。 【請求項5】150℃以上の融点を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の全固体電池の端子用樹脂フィルム。 【請求項6】固体電解質を含む電池本体と、 前記電池本体と電気的に接続された金属端子と、 前記金属端子を挟持し且つ前記電池本体を収容する外装袋と、 前記金属端子の一部の外周面にヒートシールにより接着される端子用樹脂フィルムとを備え、 前記端子用樹脂フィルムが、請求項1~4のいずれか一項に記載の端子用樹脂フィルムからなる、全固体電池。」 第3 異議申立理由の概要 1 申立人による特許異議申立理由の概要 申立人による申立理由は以下のとおりである。 (1)理由A 請求項1~6 条文 特許法第29条第2項(同法第113条第2号) 証拠 甲第1号証、及び、甲第2号証 (2)理由B 請求項1~6 条文 特許法第36条第4項第1号(同法第113条第4号) 証拠 甲第3号証 2 証拠方法 申立人が提出した証拠は、以下のとおりである。(以下、甲第1号証~甲第3号証をその証拠番号に従い「甲1」などということがある。) 甲第1号証:特開2021-119562号公報 甲第2号証:特開2021-005556号公報 甲第3号証:フィラメントの色と吸湿劣化の影響について|Nature3D 2021/07/10 23:35 https://nature3d.thebase.in/blog/2021/07/10/233541 第4 当審の判断 1 申立理由A(進歩性)について (1) 甲1号証の記載 甲1には、図面と共に以下の事項が記載されている。 ア 「【請求項1】 蓄電デバイス素子の電極に電気的に接続された金属端子と、前記蓄電デバイス素子を封止する蓄電デバイス用外装材との間に介在される、金属端子用接着性フィルムであって、 前記金属端子用接着性フィルムは、前記金属端子側に配置される第1ポリオレフィン層と、基材と、前記蓄電デバイス用外装材側に配置される第2ポリオレフィン層とをこの順に備える積層体から構成されており、 前記第1ポリオレフィン層のTDに平行な方向かつ厚み方向の断面について、電界放出形走査型電子顕微鏡を用いて取得した断面画像に海島構造が観察され、 前記断面画像は、前記第1ポリオレフィン層の厚みを100%とした場合に、前記基材側の表面とは反対側の表面から30%の厚みの部分までの範囲内で取得した断面画像であり、 前記金属端子用接着性フィルムを温度190℃及び面圧0.016MPaの加熱加圧環境で12秒間静置し、さらに、温度25℃の環境で1時間静置した場合の前記断面画像において、前記海島構造の島部の合計面積の割合が、25.0%以上35.0%以下であり、 前記第1ポリオレフィン層の厚みを100%とした場合に、前記基材側の表面から30%の厚みの部分までの範囲内で取得した断面画像であって、前記金属端子用接着性フィルムを温度190℃及び面圧0.016MPaで12秒間加熱し、さらに、温度25℃の環境で1時間静置した場合の当該断面画像においても、海島構造が観察され、前記基材側の表面部分の断面画像における、海島構造の島部の合計面積の割合が、25.0%以上35.0%以下である、金属端子用接着性フィルム。」 イ 「【発明が解決しようとする課題】 【0007】 このような接着性フィルムには、ヒートシールした際の金属端子との優れた密着性が求められる。 【0008】 さらに、接着性フィルムには、包装材料によって封止されている電解液が接着性フィルムに接触した場合にも、金属端子に対する密着性の低下が好適に抑制されていることが求められる。 【0009】 しかしながら、従来の接着性フィルムは、電解液が接触した場合の金属端子に対する密着性について十分に検討されておらず、本開示の発明者等は、ヒートシールによる接着性フィルムの金属端子への優れた密着性に加えて、金属端子に密着した接着性フィルムに対して電解液が付着した場合において、金属端子に対する密着性の低下を抑制することを追求した。 【0010】 本開示は、ヒートシールによる接着性フィルムの金属端子への密着性に優れ、さらに、金属端子に密着した接着性フィルムに対して電解液が付着した場合にも、金属端子に対する密着性の低下が好適に抑制された、金属端子用接着性フィルムを提供することを主な目的とする。さらに、本開示は、当該金属端子用接着性フィルムの製造方法、当該金属端子用接着性フィルムを利用した金属端子用接着性フィルム付き金属端子、当該金属端子用接着性フィルムを用いた蓄電デバイス及び当該蓄電デバイスの製造方法を提供することも目的とする。」 ウ 「【0020】 1.金属端子用接着性フィルム 本開示の金属端子用接着性フィルムは、蓄電デバイス素子の電極に電気的に接続された金属端子と、蓄電デバイス素子を封止する蓄電デバイス用外装材との間に介在されるものである。具体的には、例えば図1から図3に示されるように、本開示の金属端子用接着性フィルム1は、蓄電デバイス素子4の電極に電気的に接続されている金属端子2と、蓄電デバイス素子4を封止する蓄電デバイス用外装材3との間に介在されている。また、金属端子2は、蓄電デバイス用外装材3の外側に突出しており、ヒートシールされた蓄電デバイス用外装材3の周縁部3aにおいて、金属端子用接着性フィルム1を介して、蓄電デバイス用外装材3に挟持されている。なお、本開示において、蓄電デバイス用外装材をヒートシールする際の加熱温度としては、通常160~190℃程度の範囲、圧力としては、通常1.0~2.0MPa程度の範囲である。なお、接着性フィルムを介して金属端子と蓄電デバイス用外装材とを接着する工程では、例えば、金属端子への仮接着工程及び本接着工程というように、複数回の加熱及び加圧が行われることが一般的である。仮接着工程は、金属端子への接着性フィルムへの仮止めや気泡抜きを行う工程であり、本接着工程は、仮接着工程よりも高温条件で1回又は複数回の加熱・加圧を行って接着性フィルムを金属端子に接着させる工程である。金属端子用接着性フィルムの金属端子への仮接着工程は、例えば、温度140~160℃程度、圧力0.01~1.0MPa程度、時間3~15秒間程度、回数3~6回程度の条件で行われ、本接着工程は、例えば、温度160~240℃程度、圧力0.01~1.0MPa程度、時間3~15秒間程度、回数1~3回程度の条件で行われる。 【0021】 本開示の金属端子用接着性フィルム1は、金属端子2と蓄電デバイス用外装材3との密着性を高めるために設けられている。金属端子2と蓄電デバイス用外装材3との密着性が高められることにより、蓄電デバイス素子4の密封性が向上する。上述のとおり、蓄電デバイス素子4をヒートシールする際には、蓄電デバイス素子4の電極に電気的に接続された金属端子2が蓄電デバイス用外装材3の外側に突出するようにして、蓄電デバイス素子が封止される。このとき、金属により形成された金属端子2と、蓄電デバイス用外装材3の最内層に位置する熱融着性樹脂層35(ポリオレフィンなどの熱融着性樹脂により形成された層)とは異種材料により形成されているため、このような接着性フィルムを用いない場合には、金属端子2と熱融着性樹脂層35との界面において、蓄電デバイス素子の密封性が低くなりやすい。 (中略) 【0026】 本開示の金属端子用接着性フィルム1の好ましい積層構成の具体例としては、酸変性ポリプロピレンにより形成された第1ポリオレフィン層/ポリプロピレンにより形成された基材/ポリプロピレンにより形成された第2ポリオレフィン層がこの順に積層された3層構成;酸変性ポリプロピレンにより形成された第1ポリオレフィン層/ポリプロピレンにより形成された基材/酸変性ポリプロピレンにより形成された第2ポリオレフィン層がこの順に積層された3層構成などが挙げられ、これらの中でも、酸変性ポリプロピレンにより形成された第1ポリオレフィン層/ポリプロピレンにより形成された基材/ポリプロピレンにより形成された第2ポリオレフィン層がこの順に積層された3層構成が特に好ましい。」 エ 「【0064】 本開示の金属端子用接着性フィルム1の好ましい積層構成の具体例としては、酸変性ポリプロピレンにより形成された第1ポリオレフィン層/ポリプロピレンにより形成された基材/ポリプロピレンにより形成された第2ポリオレフィン層がこの順に積層された3層構成;酸変性ポリプロピレンにより形成された第1ポリオレフィン層/ポリプロピレンにより形成された基材/酸変性ポリプロピレンにより形成された第2ポリオレフィン層がこの順に積層された3層構成などが挙げられ、これらの中でも、酸変性ポリプロピレンにより形成された第1ポリオレフィン層/ポリプロピレンにより形成された基材/ポリプロピレンにより形成された第2ポリオレフィン層がこの順に積層された3層構成が特に好ましい。」 オ 「【0123】 2.蓄電デバイス 本開示の蓄電デバイス10は、少なくとも、正極、負極、及び電解質を備えた蓄電デバイス素子4と、当該蓄電デバイス素子4を封止する蓄電デバイス用外装材3と、正極及び負極のそれぞれに電気的に接続され、蓄電デバイス用外装材3の外側に突出した金属端子2とを備えている。本開示の蓄電デバイス10においては、金属端子2と蓄電デバイス用外装材3との間に、本開示の金属端子用接着性フィルム1が介在されてなることを特徴とする。すなわち、本開示の蓄電デバイス10は、金属端子2と蓄電デバイス用外装材3との間に、本開示の金属端子用接着性フィルム1が介在する工程を備える方法により製造することができる。 【0124】 具体的には、少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた蓄電デバイス素子4を、蓄電デバイス用外装材3で、正極及び負極の各々に接続された金属端子2を外側に突出させた状態で、本開示の金属端子用接着性フィルム1を金属端子2と熱融着性樹脂層35との間に介在させ、蓄電デバイス素子4の周縁に蓄電デバイス用外装材のフランジ部(熱融着性樹脂層35同士が接触する領域であり、蓄電デバイス用外装材の周縁部3a)が形成できるようにして被覆し、フランジ部の熱融着性樹脂層35同士をヒートシールして密封させることによって、蓄電デバイス用外装材3を使用した蓄電デバイス10が提供される。なお、蓄電デバイス用外装材3を用いて蓄電デバイス素子4を収容する場合、蓄電デバイス用外装材3の熱融着性樹脂層35が内側(蓄電デバイス素子4と接する面)になるようにして用いられる。 【0125】 本開示の蓄電デバイス用外装材は、電池(コンデンサー、キャパシター等を含む)などの蓄電デバイスに好適に使用することができる。また、本開示の蓄電デバイス用外装材は、一次電池、二次電池のいずれに使用してもよいが、好ましくは二次電池である。本開示の蓄電デバイス用外装材が適用される二次電池の種類については、特に制限されず、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、全固体電池、鉛蓄電池、ニッケル・水素蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池、ニッケル・鉄蓄電池、ニッケル・亜鉛蓄電池、酸化銀・亜鉛蓄電池、金属空気電池、多価カチオン電池、コンデンサー、キャパシター等が挙げられる。これらの二次電池の中でも、本開示の蓄電デバイス用外装材の好適な適用対象として、リチウムイオン電池及びリチウムイオンポリマー電池が挙げられる。 【実施例】 【0126】 以下に実施例及び比較例を示して本開示を詳細に説明する。但し、本開示は実施例に限定されるものではない。 【0127】 <金属端子用接着性フィルムの製造> 実施例1 第1ポリオレフィン層を形成するポリオレフィンとして、無水マレイン酸変性ポリプロピレン(PPa)、第2ポリオレフィン層を形成するポリオレフィンとして、ポリプロピレン(PP)、基材として、未延伸ポリプロピレンフィルム(CPP、ホモポリプロピレン、厚み50μm)を用意した。基材(CPP)の一方面に、無水マレイン酸変性ポリプロピレン(PPa)をTダイ押出機で押出して、第1ポリオレフィン層(厚み50μm)を形成し、基材(CPP)の他方面に、ポリプロピレン(PP)をTダイ押出機で押出して、第2ポリオレフィン層(厚み50μm)を形成し、第1ポリオレフィン層(50μm、PPa層)/基材(50μm、CPP層)/第2ポリオレフィン層(50μm、PP層)が順に積層された金属端子用接着性フィルムを得た。 (中略) 【0129】 比較例2 第1ポリオレフィン層を形成するポリオレフィンとして、無水マレイン酸変性ポリプロピレン(PPa)、第2ポリオレフィン層を形成するポリオレフィンとして、無水マレイン酸変性ポリプロピレン(PPa)、基材として、ポリプロピレン(PP)を用意した。各層の樹脂を用いて、多層空冷インフレーション成形を行い、第1ポリオレフィン層(25μm、PPa層)/基材(50μm、PP層)/第2ポリオレフィン層(25μm、PPa層)が順に積層された金属端子用接着性フィルムを得た。」 (2)甲1発明 請求項1より、甲1には、「蓄電デバイス素子の電極に電気的に接続された金属端子と、前記蓄電デバイス素子を封止する蓄電デバイス用外装材との間に介在される、金属端子用接着性フィルム」が記載されている。 【0020】より、甲1には、「金属端子2は、蓄電デバイス用外装材3の外側に突出しており、ヒートシールされた蓄電デバイス用外装材3の周縁部3aにおいて、金属端子用接着性フィルム1を介して、蓄電デバイス用外装材3に挟持されている」ものが記載されている。 さらに、【0125】より、甲1には、蓄電デバイス素子として「全固体電池」が記載されている。 よって、請求項1、【0020】、【0125】より、甲1には、「蓄電デバイス素子の電極に電気的に接続された金属端子と、前記蓄電デバイス素子を封止する蓄電デバイス用外装材との間に介在される、金属端子用接着性フィルム」であって、「前記金属端子は、前記蓄電デバイス用外装材の外側に突出しており、ヒートシールされた前記蓄電デバイス用外装材の周辺部において、前記金属端子用接着フィルム1を介して、前記デバイス用外装剤に挟持されて」おり、「前記蓄電デバイス素子は全固体電池」であるものが記載されている。 【0064】より、甲1には、「金属端子用接着性フィルムは、酸変性ポリプロピレンにより形成された第1ポリオレフィン層/ポリプロピレンにより形成された基材/ポリプロピレンにより形成された第2ポリオレフィン層がこの順に積層された3層構成」であることが記載されている。 【0127】より、甲1には、「前記金属端子用接着性フィルムは、第1ポリオレフィン層として無水マレイン酸変性ポリプロピレン、基材として未延伸ポリプロピレンフィルム、第2ポリオレフィン層としてポリプロピレンが用いられてなる」ものが記載されている。 よって、甲1には以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。 「蓄電デバイス素子の電極に電気的に接続された金属端子と、前記蓄電デバイス素子を封止する蓄電デバイス用外装材との間に介在される、金属端子用接着性フィルムであって、 前記金属端子は、前記蓄電デバイス用外装材の外側に突出しており、ヒートシールされた前記蓄電デバイス用外装材の周辺部において、前記金属端子用接着フィルムを介して、前記デバイス用外装剤に挟持されており、 前記蓄電デバイス素子は全固体電池であり、 前記金属端子用接着性フィルムは、酸変性ポリプロピレンにより形成された第1ポリオレフィン層/ポリプロピレンにより形成された基材/ポリプロピレンにより形成された第2ポリオレフィン層がこの順に積層された3層構成であり、第1ポリオレフィン層として無水マレイン酸変性ポリプロピレン、基材として未延伸ポリプロピレンフィルム、第2ポリオレフィン層としてポリプロピレンが用いられてなる、 金属端子用接着性フィルム」 (3) 対比 本件特許発明1と甲1発明を対比する。 ア 甲1発明の金属端子用接着性フィルムは「第1ポリオレフィン層」、基材として「未延伸ポリプロピレンフィルム」、「第2ポリオレフィン層」からなることから、樹脂フィルムである。また、「前記金属端子は、前記蓄電デバイス用外装材の外側に突出しており、ヒートシールされた前記蓄電デバイス用外装材の周辺部において、前記金属端子用接着フィルムを介して、前記デバイス用外装剤に挟持されて」いることから、甲1発明の「金属端子用接着フィルム」は、前記金属端子の一部の外周面にヒートシールにより接着されるものと認められる。 してみれば、甲1発明の「蓄電デバイス素子の電極に電気的に接続された金属端子と、前記蓄電デバイス素子を封止する蓄電デバイス用外装材との間に介在される、金属端子用接着性フィルム」であって、「前記金属端子は、前記蓄電デバイス用外装材の外側に突出しており、ヒートシールされた前記蓄電デバイス用外装材の周辺部において、前記金属端子用接着フィルムを介して、前記デバイス用外装剤に挟持されており」、「前記蓄電デバイス素子は全固体電池」であるとの事項は、本件特許発明1の「全固体電池を構成する電池本体と電気的に接続される金属端子の一部の外周面にヒートシールにより接着される全固体電池の端子用樹脂フィルム」に相当する。 イ 甲1発明の「前記金属端子用接着性フィルムは」、「第1ポリオレフィン層として無水マレイン酸変性ポリプロピレン、基材として未延伸ポリプロピレンフィルム、第2ポリオレフィン層としてポリプロピレンが用いられてなる」は、本件特許発明1の「ポリオレフィン系樹脂を含むポリオレフィンフィルムを備え」、「前記ポリオレフィン系樹脂が、ポリプロピレン、プロピレンを共重合成分として含むブロック若しくはランダム共重合体、プロピレン-αオレフィン共重合体、又は酸変性ポリプロピレンを含むポリオレフィンフィルムであり」に含まれる。 してみれば、本件特許発明1と甲1発明とでは、以下の点で一致及び相違する。 [一致点] 「全固体電池を構成する電池本体と電気的に接続される金属端子の一部の外周面にヒートシールにより接着される全固体電池の端子用樹脂フィルムであって、 ポリオレフィン系樹脂を含むポリオレフィンフィルムを備え、 前記ポリオレフィン系樹脂が、ポリプロピレン、プロピレンを共重合成分として含むブロック若しくはランダム共重合体、プロピレン-αオレフィン共重合体、又は酸変性ポリプロピレンを含むポリオレフィンフィルムである、 全固定電池の端子用樹脂フィルム。」 [相違点] 本件特許発明1の全固体電池の端子用樹脂フィルムが「含水率が358質量ppm以上2700質量ppm以下である」のに対し、甲1発明では、そのような特定はない点。 (4) 判断 上記相違点について検討する。 甲2には、少なくとも1層のポリオレフィン骨格を有する樹脂層を備えている金属端子用接着性フィルムが記載されているが、当該金属端子用接着性フィルムの含水率については、記載も示唆もない。 してみれば、本件特許発明1は甲1発明及び甲2号証に基づき当業者が容易に想到することができたものとはいえない。 (5) 申立人の主張について ア 申立人の主張 申立人は異議申立書において、概ね、以下のような主張をしている。 (ア) 甲1の比較例2の金属端子用接着性フィルムの構成は、本件特許明細書【0101】に記載の実施例1のポリオレフィンフィルムとほぼ同じ構成である。本件特許明細書には含水率を358質量ppm以上2700質量ppm以下とする具体例や説明はされていないことから、本件特許明細書の実施例1とほぼ同じ構成を有する甲第1号証の比較例2に係る金属端子用接着性フィルムは、構成Cの含水率を満たしている蓋然性が高い。 (イ) 甲2には構成Cの含水率は明示されていないが、甲第2号証の実施例1(【0120】)の金属端子用接着性フィルム」は、本件特許明細書に記載の実施例1に係るPOフィルム1、及び、実施例6に開示の積層体からなるポリオレフィンフィルム3(POフィルム3)」と類似する構成であり、特に甲2の実施例2に係る金属端子用接着性フィルムは、融解ピーク温度が155℃以上の無水マレイン酸変性ポリプロビレンを用いた3層構成の金属端子用接着性フィルムが開示されており、当該融解ピーク温度の面からも本件特許明細書の実施例1、6に開示のPOフィルム3と類似する。そうすると、本件特許明細書には含水率を358質量ppm以上2700質量ppm以下とする具体例や説明はされていないことから、本件特許明細書の実施例1、6と類似の構成を有する甲2の実施例1、2に記載の金属端子用接着性フィルムは、構成Cの含水率を満たしている蓋然性が高い。 (ウ) 甲1及び甲2に記載の発明は、いずれも金属端子用接着性フィルムに係る発明であり、電解液に接触した場合の金属端子との密着性に優れた金属端子用接着性フィルムを提供するという課題も共通していることから、当業者であれば甲1に記載の金属端子用接着性フィルムとして、甲2に記載の融解ピーク温度を備えた金属端子用接着性フィルムを用いることは、容易に想到できたものである。 イ 申立人の主張に対する判断 前記(ア)、(イ)の主張は、甲1及び甲2に記載された金属端子用接着性フィルムが本件明細書の実施例の記載とほぼ同じ構成を有し、それにより本件特許発明1に示される含水率を満たしている蓋然性が高いことを主張するものである。 そして、当該主張は、幾つかの仮定に基づき、その可能性が高いことを主張するのみであって、甲1及び甲2に記載されたものが本件特許発明1に含まれることを具体的かつ客観的に立証するものではない。(例えば、甲1に記載の各フィルムは、その融点について具体的に記載がないことから、本件特許明細書の実施例に記載の端子用樹脂フィルムと類似の融解ピーク温度を有するものとはいえない。甲2に記載のフィルムは、本件特許明細書の実施例に記載の端子用樹脂フィルムと類似の融解ピーク温度を有するものの、当該主張は、客観的な証拠に基づき、融解ピーク温度と含水率との関係を立証するものではない。) また、前記(ウ)の主張に関し、仮に、甲1発明に甲2に記載の技術を組み合わせることにより、含水率が358質量ppm以上2700質量ppm以下である端子用樹脂フィルムが得られる蓋然性が高いとしても、 前記(4)で判断したとおり、甲1及び甲2には、全固体電池の端子用樹脂フィルムの「含水率」を特定する技術思想は、記載も示唆もない。してみれば、両者を組み合わせたとしても、当業者が、含水率を特定する技術思想を含む本件特許発明1を容易に想到することができたとはいえない。 よって、申立人の主張は採用できない。 (6) 小括 以上より、請求項1に記載された発明は、甲第1号証に記載された発明に基づき、又は、甲1号証に記載された発明と甲2号証に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものではない。請求項1に記載された発明の発明特定事項を全て含む、請求項2~6に記載された発明についても同様である。 2 申立理由B(実施可能要件)について (1) 判断 本件発明の詳細な説明には、【0100】~【0106】にフィルムの組成、厚み、融点等を特定し、共押出しとの作成方法を特定し、作成されたフィルムの含水率を測定した実施例が記載されており、何れも本件特許発明1~6を当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであると認められる。 (2) 申立人の主張 申立人は、「ポリプロピレンの吸水率が含有成分や酸変性されることなどによって大きく変化することは本件特許出願時における周知技術である」とし、「本件特許明細書にはどのような手段をどのような条件で適用することで所定の含水率の範囲を達成できたのか記載も示唆もされておらず、本件特許発明に規定の範囲の含水率を達成するためには、当業者に期待しうる程度を超える試行錯誤や複雑高度な実験等を要するものである。」と主張している。 しかしながら、申立人の主張するとおり、「ポリプロピレンの吸水率が含有成分や酸変性されることなどによって大きく変化することは本件特許出願時における周知技術である」としても、本件発明の詳細な説明の実施例には、前記のとおり使用するポリプロピレンの特性等がある程度特定されており、当業者に期待しうる程度を超える試行錯誤や複雑高度な実験等を要するものとはいえない。 申立人は甲3を根拠に、カーボンブラックを含ませることで、端子用樹脂フィルムの含水率を大きく変化させることが可能であることを指摘しているが、本件発明の詳細な説明には端子用樹脂フィルムにカーボンブラックを含ませることは記載されておらず、本件特許の実施可能要件の判断に何ら影響しない。また、酸変性ポリプロピレンを含むことでも端子用樹脂フィルムの含水率を変化させることができる旨主張しているが、例えば、本件発明の詳細な説明の実施例1は酸変性ポリプロピレンを含み、実施例2は含まないものであり、それぞれ含水率が本件特許発明1に含まれることが記載されており、酸変性ポリプロピレンを含むことで端子用樹脂フィルムの含水率を変化させることができること自体は、本件特許の実施可能要件の判断には何ら影響しない。 よって、申立人の主張は採用できない。 (3) 小括 以上より、本件の発明の詳細な説明の記載は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が本件特許発明1~6の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。 第6 むすび 以上のとおりであるから、異議申立人が主張する理由によっては、本件請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700345

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同じ当事者の審決280件(TOPPANホールディングス株式会社、松山 徳子)
  • 2025-700881異議申立 / 2026-04-09 / 維持蓄電装置用外装材及びその製造方法、並びに蓄電装置用外装材におけるシーラント層とし…
    同じ当事者: TOPPANホールディングス株式会社、松山 徳子
  • 2025-700599異議申立 / 2025-09-30 / 維持全固体電池用外装およびこれを用いた全固体電池
    同じ当事者: TOPPANホールディングス株式会社、松山 徳子
  • 2025-700335異議申立 / 2025-06-18 / 維持蓄電装置用外装材及びこれを用いた蓄電装置
    同じ当事者: TOPPANホールディングス株式会社、松山 徳子
  • 2024-701049異議申立 / 2025-01-14 / 維持蓄電装置用外装材及びそれを用いた蓄電装置
    同じ当事者: TOPPANホールディングス株式会社、松山 徳子
  • 2024-700443異議申立 / 2024-08-19 / 維持蓄電装置用外装材及び蓄電装置用外装材の製造方法
    同じ当事者: TOPPANホールディングス株式会社、松山 徳子
同じ論点・分野の審決(審決分類)1,721件(121・H01M、536・H01M)
  • 2026-700195異議申立 / 2026-06-29 / 維持電気化学セル、電気化学セル装置、モジュールおよびモジュール収容装置
    共通の審決分類: 121・H01M、536・H01M
  • 2026-700227異議申立 / 2026-06-24 / 維持燃料電池用シール部材
    共通の審決分類: 121・H01M、536・H01M
  • 2026-700111異議申立 / 2026-06-22 / 維持固体酸化物形電気化学セル及びその利用
    共通の審決分類: 121・H01M、536・H01M
  • 2026-700141異議申立 / 2026-05-27 / 維持電気化学装置
    共通の審決分類: 121・H01M、536・H01M
  • 2025-700813異議申立 / 2026-05-25 / 請求成立(取消)
    共通の審決分類: 121・H01M、536・H01M

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