特許異議申立
2025-700599
全固体電池用外装およびこれを用いた全固体電池
- 審判番号
- 2025-700599
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-071561
- 登録番号
- 7596646
- 請求日
- 2025年06月05日
- 審決日
- 2025年09月30日
- 公報発行日
- 2025年11月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】TOPPANホールディングス株式会社
- 【権利者代理人】長谷川 芳樹
- 【権利者代理人】黒木 義樹
- 【権利者代理人】鈴木 洋平
- 【異議申立人】松山 徳子
- 審判長/審判官
- 審判長 中木 努
- 審判官 廣川 浩
- 審判官 河合 弘明
- 分類
- P1651.121-Y (H01M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7596646号発明「全固体電池用外装およびこれを用いた全固体電池」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7596646号の請求項1ないし請求項8に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7596646号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし請求項8に係る特許についての出願は、令和2年4月13日の出願であって、令和6年12月2日にその特許権の設定登録がなされ、令和6年12月10日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、請求項1ないし請求項8に係る特許に対して、令和7年6月5日に特許異議申立人(以下、単に「申立人」という。) 松山 徳子 により特許異議の申立てがなされたものである。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし請求項8に係る発明(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明8」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項8に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
少なくとも、基材層と、第1の接着剤層と、バリア層と、第2の接着剤層と、シーラント層とをこの順に備える積層体からなり、
前記第1の接着剤層が、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール及びポリカーボネートジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種のポリオールと、脂環式イソシアネート多量体とにより形成されたウレタン樹脂を含み、
前記基材層を除去し、前記第1の接着剤層を露出させ、露出した前記第1の接着剤層の最表面側からフーリエ変換赤外分光分析法の減衰全反射で測定した場合に、ベースラインの透過率T0と、2100cm-1から2400cm-1の範囲に検出される透過率の最小値T1と、1670cm-1から1700cm-1の範囲に検出される透過率の最小値T2が0.06≦(T0-T1)/(T0-T2)≦0.4の関係を充足している全固体電池用外装材。
【請求項2】
前記ポリオールに含まれる水酸基数に対する、前記脂環式イソシアネート多量体に含まれるイソシアネート基数の比率が5~60である、請求項1に記載の全固体電池用外装材。
【請求項3】
前記ウレタン樹脂の、乾燥後の塗布量が2.0g/m2以上6.0g/m2以下である、請求項1又は2に記載の全固体電池用外装材。
【請求項4】
前記バリア層がアルミニウム箔である、請求項1~3のいずれか一項に記載の全固体電池用外装材。
【請求項5】
前記バリア層の厚みが15~100μmである、請求項1~4のいずれか一項に記載の全固体電池用外装材。
【請求項6】
前記第1の接着剤層と前記バリア層の間、及び、前記第2の接着剤層と前記バリア層の間の少なくとも一方に、腐食防止処理層を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の全固体電池用外装材。
【請求項7】
前記基材層がポリアミドフィルムもしくはポリエステル系フィルムからなる、請求項1~6のいずれか一項に記載の全固体電池用外装材。
【請求項8】
全固体電池本体と、
前記全固体電池本体から延在する電流取出し端子と、
前記電流取出し端子を挟持しかつ前記全固体電池本体を収容する、請求項1~7のいずれか一項に記載の全固体電池用外装材と、
を備える全固体電池。」
第3 申立人の主張及び証拠方法
1 申立人の主張の概要
申立人が特許異議申立書において主張する、本件特許についての特許異議申立の理由の概要は、以下のとおりである。
本件特許発明1ないし本件特許発明8に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、並びに、甲第2号証ないし甲第4号証に記載された技術事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本件特許発明1ないし本件特許発明8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
2 申立人が提出した証拠方法
甲第1号証:国際公開第2020/004413号
甲第2号証:特開2019-220328号公報
甲第3号証:特開2018-147782号公報
甲第4号証:国際公開第2008/093778号
第4 各甲号証に記載された事項
1 甲第1号証の記載事項
(1)甲第1号証(国際公開第2020/004413号)には、以下の各記載がある(なお、下線は合議体で付与した。)。
ア 「[請求項1]
蓄電装置用外装材であって、
基材層と、
第一の接着層と、
金属箔層と、
第二の接着層と、
ポリエステル系樹脂を含む内層と、
をこの順で備える積層構造を有し、
前記内層は、160~280℃の範囲に、示差走査熱量計により測定される融解時の融解ピーク温度を有し、
前記基材層は、前記内層の融解ピーク温度よりも高い融解ピーク温度を有する、外装材。
[請求項2]
全固体電池用である、請求項1に記載の外装材。」
イ 「[0005] ・・・(中略)・・・全固体電池は100℃を越える温度条件で使用することが可能であるとともに、高い温度条件下(例えば100~150℃)で作動させることによってリチウムイオンの伝導度を高めることができる。
[0006] しかし、外装材として上記のような積層体を使用し、ラミネート型の全固体電池を製造する場合、外装材の耐熱性が不十分であることに起因して全固体電池のパッケージの密封性が不十分になるおそれがある。また、本発明者らは外装材の耐熱性の向上を図ったところ、積層構造を有する外装材における基材層(外側の層)と内層(ヒートシール性を有する層)の組合せによっては蓄電装置(特にヒートシール部)の外観が悪くなってしまうことを見出した。
・・・(中略)・・・
[0009] 従来の蓄電装置用外装材のシーラント層(内層)は、主にポリプロピレン系樹脂からなり、融点が130~150℃程度であった。・・・(中略)・・・
[0019] ・・・(中略)・・・蓄電装置本体10は、充放電を行う電池本体である。外装材20は、蓄電装置本体10の表面を覆うとともに、端子用樹脂フィルム40の一部と接触するように配置されている。
[0020] ・・・(中略)・・・外装材20は、外側から内側(蓄電装置本体10側)に向けて、基材層11と、第一の接着層12aと、第一の腐食防止処理層13aと、バリア層(金属箔層)15と、第二の腐食防止処理層13bと、第二の接着層12bと、内層18とをこの順序で備える多層構造を有する。・・・(中略)・・・
[0033] ・・・(中略)・・・基材層11として使用でき且つ上記範囲の融解ピーク温度を有する樹脂フィルムとしては、ナイロンフィルム、PETフィルム、ポリアミドフィルム、ポリフェニレンスルファイドフィルム(PPSフィルム)などが挙げられる。・・・(中略)・・・
[0037] バリア層15は、導電性を有する金属層である。バリア層15の材料としては、例えば、アルミニウムやステンレス鋼等を例示することができるが、コストや重量(密度)等の観点から、アルミニウムが好適である。」
ウ 「[0053] ・・・(中略)・・・基材層として、融解ピーク温度が300℃の高耐熱ポリアミドフィルム(厚さ:25μm)を準備した。金属箔層として、アルミニウム箔(厚さ:40μm)を準備した。内層として、融解ピーク温度が255℃のPETフィルム(厚さ:75μm、単層構造)を準備した。基材層と金属箔層とを熱硬化性接着剤(ポリエステルウレタン系)で貼り合わせるとともに、これと同じ接着剤で金属箔層と内層とを貼り合わせることによって本実施例に係る外装材を得た。」
(2) 甲第1号証に記載された発明
ア 上記「(1)」の「ア」の請求項1には「 蓄電装置用外装材であって、/(「/」は改行を表す。以下同様。) 基材層と、/ 第一の接着層と、/ 金属箔層と、/ 第二の接着層と、・・・内層と、/をこの順で備える積層構造を有し、・・・(中略)・・・外装材」が、請求項2には「全固体電池用である、請求項1に記載の外装材」がそれぞれ記載されていることから、甲第1号証に記載の「外装材」は、「基材層と、第一の接着層と、金属箔層と、第二の接着層と、内層と、をこの順に備える積層構造からなる、全固体電池に適用される蓄電装置用外装材」であるといえる。
イ 上記「(1)」の「イ」の段落0020には「外装材20は、外側から内側(蓄電装置本体10側)に向けて、基材層11と、第一の接着層12aと、第一の腐食防止処理層13aと、バリア層(金属箔層)15と、第二の腐食防止処理層13bと、第二の接着層12bと、内層18とをこの順序で備える多層構造を有する」との記載があることから、上記「ア」の「積層構造」には、基材層、第一の接着層、金属箔層、第二の接着層、内層以外の層(例えば、第一の腐食防止処理層13aや第二の腐食防止処理層13b)を含むことが記載されている。したがって、上記「ア」の「蓄電装置用外装材」は、「少なくとも基材層と、第一の接着層と、金属箔層と、第二の接着層と、内層とをこの順に備える積層構造からなる、全固体電池である蓄電装置用外装材」であるといえる。
ウ 上記「(1)」の「イ」の段落0006には「内層(ヒートシール性を有する層)」、段落0009には「シーラント層(内層)」がそれぞれ記載されていることから、上記「イ」の「内層」は、ヒートシール性を有する層であって、「シーラント層」として機能する層であるといえる。
エ 上記「(1)」の「ウ」の段落0053には「金属箔層として、アルミニウム箔(厚さ:40μm)」、上記「(1)」の「イ」の段落0037には「バリア層15は、導電性を有する金属層」、段落0020には「バリア層(金属箔層)15」がそれぞれ記載されていることから、上記「イ」の「金属箔層」は、導電性を有するアルミニウム箔であって、「バリア層」として機能する層であるといえる。
オ 上記「(1)」の「ウ」の段落0053には「基材層と金属箔層とを熱硬化性接着剤(ポリエステルウレタン系)で貼り合わせる」と記載されているから、上記「イ」の「第一の接着層」は、「基材層」と「金属箔層」の間に形成された「熱硬化性接着剤(ポリエステルウレタン系)」であるといえる。
カ 上記「イ」ないし「オ」を総合すると、甲第1号証には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。
<甲1発明>
「少なくとも基材層と、第一の接着層と、バリア層と、第二の接着層と、シーラント層とをこの順に備える積層構造からなる、第一の接着層が熱硬化性接着剤(ポリエステルウレタン系)である、全固体電池用である蓄電装置用外装材。」
2 甲第2号証に記載された事項
甲第2号証(特開2019-220328号公報)には、以下の記載がある。
ア 「【0042】
ウレタン系接着剤は、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール等のポリオールよりなる主剤と、脂肪族イソシアネート化合物、脂環式イソシアネート化合物、芳香族イソシアネート化合物等のイソシアネートよりなる硬化剤と、を組み合わせて用いる、二液硬化型のポリウレタン系接着剤である。上記接着剤において、主剤の水酸基に対する硬化剤のイソシアネート基のモル比(=NCO/OH)は、1~30が好ましく、5~20がより好ましい。」
イ 「【0112】
(実施例1)
以下の手法により、蓄電デバイス用外装材10を作製した。まず、金属箔層14として、厚さ35μmの軟質アルミニウム箔8079材(東洋アルミニウム株式会社製)を準備した。
【0113】
次いで、基材層11としてナイロンフィルム(厚さ15μm)を準備し、基材層11の両面をコロナ処理した。
【0114】
次いで、金属箔層14の一方の面に、接着層13を形成するための接着剤組成物を、接着層13の厚さが5μmとなるように塗布した。この際、接着剤組成物を、接着層13が、顔料である酸化チタンを10質量%、シランカップリング剤である3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランを5質量%、及びウレタン系接着剤を85質量%含むものとなるように調製した。なお、ウレタン系接着剤としては、主剤の水酸基に対する硬化剤のイソシアネート基のモル比(=NCO/OH)が15であるものを用いた。
・・・(中略)・・・
【0118】
(その他の実施例及び比較例)
接着剤組成物の構成を表1に示すように変更したこと以外は、実施例1と同様にして蓄電デバイス用外装材10を作製した。表1中、硬化剤の項目におけるビウレット、アダクト、及びヌレートは、それぞれイソシアネート化合物のビウレット体、アダクト体、及びイソシアヌレート体であることを示す。」
3 甲第3号証に記載された事項
甲第3号証(特開2018-147782号公報)には、以下の記載がある。
ア 「【請求項1】
基材層と金属箔層とを接着層によって接着積層した積層構造をその一部に有する蓄電デバイス用外装材において、
前記基材層がポリエステル系樹脂を含有する樹脂層から成り、
前記接着層がポリオールとイソシアネート化合物とを反応硬化させたウレタン系接着剤から成ると共に、前記イソシアネート化合物がイソホロンジイソシアネート又はヘキサメチレンジイソシアネートから成ることを特徴とする蓄電デバイス用外装材。
【請求項2】
前記ポリオールの水酸基のモル数[A]に対する前記ポリイソシアネート化合物の反応性基のモル数[B]の比([B]/[A])が2~10であることを特徴とする請求項1に記載の蓄電デバイス用外装材。」
イ 「【0070】
(実施例1)
始めに、金属箔層13として厚さ40μmの軟質アルミニウム箔8079材を準備し、その両側に腐食防止処理層14a,14bを形成した。
【0071】
基材層11としてはポリエステルフィルム(東洋紡社製,厚さ25μm)を用いた。そして、金属箔層13の腐食防止処理層14aの金属箔層13とは反対側の面に、接着層12として、ウレタン系接着剤を塗布した。ウレタン系接着剤はポリエステルポリオール(ロックペイント社製SD-7)とHDI(旭化成社製デュラネート24A-100)との混合物で、ポリエステルポリオールの水酸基のモル数[A]に対するHDIの反応性基のモル数[B]の比[B]/[A]は2.0である。なお、塗布量は5.0~6.0g/mm2である。」
ウ 「【0080】
(実施例4)
接着剤層12のイソシアネート化合物として、HDIに代えて、IPDI(三井化学社製タケネートD140N)を使用した外は、実施例1と同様に外装材を製造し、かつ、成型されたエンボスタイプ外装材20の剥離の有無及び外観を観察した。」
4 甲第4号証に記載された事項
甲第4号証(国際公開第2008/093778号)には、以下の記載がある。
ア 「[0040] <接着剤層>
図4~6に示す構成は、コーティング層14とシーラント層16の間に第2の接着剤層15aを設けた構成であり、ドライラミネートなどの手法によって製造される。この第2の接着剤層15a、または、図1~3に示す基材層11とアルミニウム箔層13の間に設けた第1の接着剤層12の材料としては、各種ポリオールを主剤成分とし、イソシアネート化合物またはその誘導体を硬化剤成分としたポリウレタン系接着剤が挙げられる。
主剤成分となるポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、アクリルポリオール、ポリオレフィンポリオールなどが挙げられる。・・・(中略)・・・
硬化剤成分となるイソシアネート化合物またはその誘導体としては、すでに<接着樹脂層>で記載した材料を用いることが可能である。・・・(中略)・・・また、第1の接着剤層12と第2の接着剤層15aは同じタイプのポリウレタン系接着剤でも異なるタイプのポリウレタン系接着剤でも構わない。」
イ 「[0096] ・・・(中略)・・・
次いで、アルミニウム箔層の、コーティング層とは反対側の面に、ドライラミネート手法により、ポリウレタン系接着剤(三井化学ポリウレタン(株)製、A525/A52)を介して耐熱性基材層(D-1)を設けた。そしてさらにドライラミネート手法により、コーティング層側にポリエステルポリオール主剤に対しイソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体を硬化剤として配合したポリウレタン系接着剤をドライ塗布量5g/m 2になるように設けた。その後、シーラント層(F-1)をラミネートした。そして60℃で5日間のエージングを行うことでリチウム電池用包材を作成した。」
第5 当審の判断
1 本件特許発明1に対する申立理由(第29条第2項)について
(1)対比
本件特許発明1と甲1発明を対比すると、次のことがいえる。
ア 甲1発明の「基材層」、「バリア層」及び「シーラント層」は、それぞれ本件特許発明1の「基材層」、「バリア層」及び「シーラント層」に相当する。
イ 甲1発明の「第一の接着層」は、基材層とバリア層の間に形成された層であるから、本件特許発明1の「第1の接着剤層」に相当する。
ウ 甲1発明の「第二の接着層」は、バリア層とシーラント層の間に形成された層であるから、本件特許発明1の「第2の接着剤層」に相当する。
エ 甲1発明の「積層構造からなる、・・・全固体電池用である蓄電装置用外装材」は、積層体といえることから、本件特許発明1の「積層体」に含まれる。
オ 甲1発明の「第一の接着層が熱硬化性接着剤(ポリエステルウレタン系)である」ことは、熱硬化性接着剤がポリエステルウレタン系のウレタン樹脂であることを意味するから、本件特許発明1の「第1の接着剤層が・・・ウレタン樹脂である」ことに含まれる。
カ 甲1発明の「全固体電池用である蓄電装置用外装材」は、本件特許発明1と同様に、「全固体電池用外装材」であるといえる。
キ したがって、上記「ア」ないし「カ」を総合すれば、本件特許発明1と甲1発明は、以下の点で一致し、また相違する。
<一致点>
「少なくとも基材層と、第1の接着剤層と、バリア層と、第2の接着剤層と、シーラント層と、をこの順に備える積層体からなり、当該第1の接着剤層がウレタン樹脂である、全固体電池用外装材。」
<相違点1>
第1の接着剤層が含むウレタン樹脂が、本件特許発明1は「ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール及びポリカーボネートジオールからなる群より選ばれる少なくとも1種のポリオールと、脂環式イソシアネート多量体とにより形成された」ものであるのに対して、甲1発明ではそのような特定がない点。
<相違点2>
本件特許発明1は「前記基材層を除去し、前記第1の接着剤層を露出させ、露出した前記第1の接着剤層の最表面側からフーリエ変換赤外分光分析法の減衰全反射で測定した場合に、ベースラインの透過率T0と、2100cm-1から2400cm-1の範囲に検出される透過率の最小値T1と、1670cm-1から1700cm-1の範囲に検出される透過率の最小値T2が0.06≦(T0-T1)/(T0-T2)≦0.4の関係を充足している」のに対して、甲1発明ではそのような特定がない点。
(2)判断
事案に鑑み、まず相違点2について検討する。
ア 相違点2について
甲第2号証ないし甲第4号証には、「前記基材層を除去し、前記第1の接着剤層を露出させ、露出した前記第1の接着剤層の最表面側からフーリエ変換赤外分光分析法の減衰全反射で測定した場合に、ベースラインの透過率T0と、2100cm-1から2400cm-1の範囲に検出される透過率の最小値T1と、1670cm-1から1700cm-1の範囲に検出される透過率の最小値T2が0.06≦(T0-T1)/(T0-T2)≦0.4の関係を充足している」第1の接着剤層が開示されていないから、甲1発明に基いて上記相違点2に係る構成を得ることは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
イ したがって、他の相違点(相違点1)について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明、及び甲第2号証ないし甲第4号証に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
なお、申立人は、「甲第1号証には、基材層と、第1の接着層と、バリア層と、第2の接着層と、シーラント層とをこの順に備える積層体からなる全固体電池用外装材が開示され、技術分野が共通する甲第2号証の実施例2の外装材、甲第3号証の実施例4の外装材は構成Cの関係を充足している蓋然性が高い」(特許異議申立書9ページ)と主張している。
しかしながら、甲1発明が仮に「甲第2号証の実施例2の外装材」あるいは「甲第3号証の実施例4の外装材」を適用できたとしても、甲第2号証ないし甲第4号証のいずれにも明記されていない、「前記基材層を除去し、前記第1の接着剤層を露出させ、露出した前記第1の接着剤層の最表面側からフーリエ変換赤外分光分析法の減衰全反射で測定した場合に、ベースラインの透過率T0と、2100cm-1から2400cm-1の範囲に検出される透過率の最小値T1と、1670cm-1から1700cm-1の範囲に検出される透過率の最小値T2が0.06≦(T0-T1)/(T0-T2)≦0.4の関係を充足している」第1の接着剤層を採用する蓋然性が高いとはいえない。
したがって、申立人の上記主張は採用することができない。
2 本件特許発明2ないし本件特許発明8に対する申立理由(第29条第2項)について
本件特許発明2ないし本件特許発明8は、本件特許発明1の構成を全て含み、更に他の構成を付加したものである。
そうすると、上記「1」の「(2)」で述べた理由により、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明、及び甲第2号証ないし甲第4号証に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない以上、同様の理由により、本件特許発明2ないし本件特許発明8は、甲第1号証に記載された発明、及び甲第2号証ないし甲第4号証に記載された技術事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
3 まとめ
以上のとおり、本件特許発明1ないし本件特許発明8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるとはいえず、同法第113条第2号には該当せず、申立理由によっては取り消すことはできない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許の請求項1ないし請求項8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし請求項8に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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