特許異議申立
2025-700799
即席ノンフライ麺及びその製造方法
- 審判番号
- 2025-700799
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2024-119224
- 登録番号
- 7628647
- 請求日
- 2025年08月07日
- 審決日
- 2025年11月28日
- 公報発行日
- 2025年12月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】エースコック株式会社
- 【権利者代理人】福島 芳隆
- 【権利者代理人】幸 芳
- 【異議申立人】木村 嘉弘
- 【異議申立人】木村 康紀
- 審判長/審判官
- 審判長 松田 成正
- 審判官 壷内 信吾
- 審判官 天野 宏樹
- 分類
- P1651.113-Y (A23L) / P1651.121-Y (A23L) / P1651.536-Y (A23L) / P1651.537-Y (A23L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第2条第3項第3号、特許法第2条第3項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7628647号発明「即席ノンフライ麺及びその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7628647号の請求項1~8に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7628647号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~8に係る特許についての出願は、令和6年7月25日の出願であって、令和7年1月31日にその特許権の設定登録(請求項の数8)がされ、同年2月10日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対して、同年8月7日に特許異議申立人木村嘉弘(以下、「申立人A」という。)により特許異議の申立て(対象:全請求項)がなされ、同年同月8日に特許異議申立人木村康紀(以下、「申立人B」という。)により特許異議の申立て(対象:全請求項)がなされたものである。
第2 本件発明について
本件特許の請求項1~8に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明8」という。まとめて、「本件発明」ということもある。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
なお、以下において、隅付き括弧は「[ ]」と表記した。
「[請求項1]
混合工程、製麺工程、α化工程、及び乾燥工程をこの順に行う即席ノンフライ麺の製造方法であって、
前記混合工程は、原料粉を含む原材料を混合する工程であり、
前記原料粉は、小麦粉及びでん粉を含み、かつ、
前記混合工程が、減圧下において行われ、
前記乾燥工程は、130℃以上180℃以下の温度で、かつ、風速12m/秒以上120m/秒以下の熱風を用いて行われ、
前記乾燥工程後に得られたノンフライ麺の水分量が、4~14.5%であり、
前記乾燥工程後に得られたノンフライ麺の復元5分間における麺線の膨潤度は0.8倍以上1.4倍以下である、即席ノンフライ麺の製造方法。
[請求項2]
前記乾燥工程が、140℃以上180℃以下の温度で行われる、請求項1に記載の即席ノンフライ麺の製造方法。
[請求項3]
前記混合工程において、原料粉に対する加水率が、30~55質量%である、請求項1に記載の即席ノンフライ麺の製造方法。
[請求項4]
前記混合工程において、前記原料粉中のでん粉の配合割合が、0~55質量%である、請求項1に記載の即席ノンフライ麺の製造方法。
[請求項5]
前記混合工程において、原料粉は、小麦粉及びでん粉を含み、かつ、
前記原料粉中の前記でん粉の配合割合が、15~50質量%である、請求項1に記載の即席ノンフライ麺の製造方法。
[請求項6]
前記でん粉は、未加工でん粉及び/又は加工でん粉である、請求項5に記載の即席ノンフライ麺の製造方法。
[請求項7]
混合工程、製麺工程、α化工程、及び乾燥工程をこの順に行う即席ノンフライ麺の製造方法であって、
前記混合工程において、原料粉は、小麦粉及びでん粉を含み、
前記でん粉は、未加工でん粉及び/又は加工でん粉であり、
前記原料粉中の前記でん粉の配合割合が、15~50質量%であり、
原料粉に対する加水率が、40~50質量%であり、かつ、
前記混合工程が、減圧下において行われ、
前記乾燥工程が、130℃以上180℃以下の温度で、かつ、風速12m/秒以上120m/秒以下の熱風を用いて行われ、
前記乾燥工程後に得られたノンフライ麺の水分量が、4~14.5%であり、
前記乾燥工程後に得られたノンフライ麺の復元5分間における麺線の膨潤度は0.8倍以上1.4倍以下である、請求項1に記載の即席ノンフライ麺の製造方法。
[請求項8]
請求項1~7のいずれか1項に記載の即席ノンフライ麺の製造方法によって得られた即席ノンフライ麺。」
第3 特許異議申立理由の概要
1.申立人A
申立人Aは、証拠方法として下記(5)に示す甲第1号証~甲第6号証(以下、申立人Aが提出した甲第1号証~甲第6号証を、それぞれ「甲1A」~「甲6A」のようにいう。)を提出し、概略、以下の特許異議申立理由を主張している。申立理由の番号は当審が仮に付与した。
(1)理由1A(甲1Aに基づく進歩性欠如)
本件発明1~8は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲1Aに記載された発明に基づいて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(2)理由2A(実施可能要件違反)
本件特許は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に適合するものではなく、本件発明1~8についての特許は同号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
・風速の上限値について
本件特許発明1では、風速の上限値を120m/sと規定しているが、本件特許出願時の技術常識では、90m/sを超える風速を実現するためには大掛かりな装置や設備が必要になると考えられていた(甲2Aの段落0031。甲3A及び甲5Aにも90m/sを超える風速で乾燥を行うことについての記載はない。)。
一方、本件特許発明の課題・効果は、「大規模装置を用いず、連続生産が可能な方法により、乾燥後の麺の表面に光沢を有する即席ノンフライ麺を製造する」であるが、本件明細書の発明の詳細な説明には、どのようにすれば、大規模装置を用いず、連続生産が可能な方法で、90m/sを超え120m/s以下の熱風を物理的(設備的)に実現でき、風圧で麺が吹き飛ばされたり、水分が過剰に蒸散されたりすることなく、本件特許発明1で規定している水分量(4~14.5%)及び膨潤度(0.8倍以上14倍以下)の麺を製造できるかについて、一切記載されていない。このため、本件特許発明1は、本件明細書の発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識を考慮しても、当業者に期待しうる程度を超える試行錯誤や複雑高度な実験等を必要とするものである。請求項1を引用する本件特許発明2~8についても同様である。
(3)理由3A(サポート要件違反)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、本件発明1~8についての特許は同項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
・乾燥温度及び風速について
本件明細書に記載された実施例のうち、本件特許発明の実施例に相当するものは実施例1、2、 7、8のみであり、乾燥温度が160℃、熱風の風速が18~22m/sの実施例しか記載されていない。
即席ノンフライ麺を製造するにあたり、麺線を熱風乾燥する際の温度は麺の乾燥度合いや水分含有量に大きく影響を与えると考えられるが、本件明細書の記載及び出願時の技術常識を考慮しても、本件特許発明1の乾燥温度の範囲(130~180℃)の全体に亘って本件特許発明の課題を解決できると当業者でも認識することはできない。また、即席ノンフライ麺を製造するにあたり、麺線を熱風乾燥する際の風速は麺の乾燥度合いや水分含有量に大きく影響を与えると考えられるが、本件明細書の記載及び出願時の技術常識を考慮しても、本件特許発明1における風速の範囲(12~120m/秒)の全体に亘って、本件特許発明の課題を解決できると当業者でも認識することはできない。特に、熱風の風速の上限値である120m/sについては、発明の詳細な説明の記載を参酌しても、どのようにすれば風速120m/sの熱風を物理的(設備的)に実現でき、風圧によつて麺を吹き飛ばしたり、水分を過剰に蒸散させたりすることなく、本件特許発明1で規定されている水分量(4~14.5%)及び膨潤度(0.8倍以上1,4倍以下)の麺を製造できるかを、当業者であつても理解できない。請求項1を引用する本件特許発明2~8も同様である。
(4)理由4A(明確性要件違反)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく、本件発明1~8についての特許は同項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
・でん粉の配合割合について
本件特許発明1では「前記原料粉は小麦粉及びでん粉を含み」と規定されており、原料粉が小麦粉とでん粉の両方を含むものに限定されている。一方、本件特許発明4では「原料粉中のでん粉の配合割合が、0~55質量%である」と規定されており、原料粉にでん粉が配合されていない場合(配合割合0質量%)を含んでいる。このように、本件特許発明4は、請求項1を引用しているにもかかわらず、本件特許発明1の範囲を超える範囲が記載されており、矛盾している。
(5)証拠方法
甲1A:特開平3-236755号公報
甲2A:特開平11-276105号公報
甲3A:国際公開第2010/055860号
甲4A:特公昭54-44731号公報
甲5A:特開平11-196799号公報
甲6A:農林物資規格調査会,"日本農林規格の改正訂について 「即席めん」",農林水産省,平成26年2月21日,p.2-3,1(2)「JAS規格の基準」
2.申立人B
申立人Bは、証拠方法として下記(8)に示す甲第1号証~甲第5号証(以下、申立人Bが提出した甲第1号証~甲第5号証を、それぞれ「甲1B」~「甲5B」のようにいう。)を提出し、概略、以下の特許異議申立理由を主張している。申立理由の番号は当審が仮に付与した。
(1)理由1B(甲1Bに基づく新規性欠如)
本件発明1~4及び8は、本件特許の出願前に日本国内または外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲1Bに記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(2)理由2B-1(甲1Bに基づく進歩性欠如)
本件発明1~8は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲1Bに記載された発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(3)理由2B-2(甲3Bに基づく進歩性欠如)
本件発明1~8は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲3Bに記載された発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(4)理由2B-3(甲4Bに基づく進歩性欠如)
本件発明1~8は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲4Bに記載された発明に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができるものではなく、それらの発明についての特許は同条の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(5)理由3B(明確性要件違反)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく、本件発明4及び8についての特許は同項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
・でん粉の配合割合について
本件特許発明4は本件特許発明1の従属項であり、「前記混合工程において、前記原料粉中のでん粉の配合割合が、0~55質量%である」と記載されている。一方、本件特許発明1は、「前記原料粉は、小麦粉及びでん粉を含み」と規定されている。本件特許発明4は、でん粉の配合割合が0質量%である場合、即ちでん粉を含まない場合を含んでおり、本件特許発明1の構成をさらに限定するものではないため不明確である。本件特許発明4を引用する本件特許発明8も同じ理由により不明確である。
(6)理由4B(実施可能要件違反)
本件特許は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第4項第1号に適合するものではなく、本件発明1~8についての特許は同号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
・麺線の太さについて
本件特許発明1の乾燥条件の技術的意義や有効性について検討するにあたって、本件明細書には乾燥の対象となる麺線の太さと乾燥条件との関係に関する情報は何ら記載されていない。本件明細書に記載された実施例においては、#16番丸の切刃を通した厚み1.42mmの麺線に対して乾燥処理が行われたことが記載されているのみであり、これ以外の太さの麺線に対して本件発明の乾燥条件が適用可能であるか否かについては一切の開示がない(明細書段落[0042]参照)。また、本件明細書に記載された実施例には、麺線の乾燥時間は記載されておらず、さらには乾燥後のノンフライ麺の水分量についても具体的に記載されていない。そうすると、当業者は本件明細書の記載に基づき、本件特許発明1で定められた広範な乾燥条件(温度130~180℃、風速12~120m/秒)を任意の太さの麺線に対してそのまま適用するだけでは、本件特許発明1に記載されたような膨潤度を有するノンフライ麺を再現することは困難であり、当業者によって実施可能であるとはいえない。そのため、本件特許発明1及び7は実施可能要件を満たさない。それらを引用する本件特許発明2~6及び8も同様である。
(7)理由5B(サポート要件違反)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に適合するものではなく、本件発明1~8についての特許は同項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
ア 乾燥工程後に得られたノンフライ麺の水分量について
本件明細書に記載された実施例を参照しても、乾燥条件としては「庫内温度160℃、風速18~22m/sで乾燥させた」旨が記載されているにとどまり、乾燥時間に関する記載が一切ない。また、最終的に得られたノンフライ麺の乾燥後の水分量について、いかなる数値も記載されていない。本件特許発明1に特定された「水分量4~14.5%」という数値範囲が、なぜ当該技術的範囲として特定されているのかについて、明細書中に技術的裏付けは一切なく、実施例の記載もそれを支持していない。すなわち、明細書は請求項に係る発明を技術的にサポートしておらず、サポート要件を具備しない。本件特許発明7、また、本件特許発明1及び7を引用する本件特許発明2~6及び8についても同様である。
イ 麺線の太さと乾燥条件について
本件明細書には乾燥の対象となる麺線の太さや種類等と、その乾燥条件との関係に関する情報は何ら記載されていない上に、本件明細書に記載された実施例においては、#16番丸の切刃を通した厚み1.42mmの麺線に対して乾燥処理が行われたことが記載されているのみであり、これ以外の太さや種類の麺線に対して本件発明の乾燥条件が適用可能であるか否かについては一切の開示がない(明細書段落[0042]参照)。本件明細書には、実質的には特定の太さの麺線にのみ適用される乾燥条件が記載されているに過ぎないにもかかわらず、本件特許発明1には麺線の太さや種類等に関する限定が何ら存在していない。あらゆる太さや種類の麺線に対して本件発明の効果が奏されることを何ら具体的に開示しておらず、これは、明細書に記載された発明の実施形態に基づかない過度な一般化であり、サポート要件を具備しないことは明らかである。本件特許発明7、また、本件特許発明1及び7を引用する本件特許発明2~6及び8についても同様である。
(8)証拠方法
甲1B:特許第3392044号公報
甲2B:特許第2599208号公報
甲3B:国際公開第2010/055860号
甲4B:特公昭54-44731号公報
甲5B:特許第3527084号公報
第4 当審の判断
当審は、申立人A及び申立人Bが申し立てたいずれの特許異議申立理由によっても、本件発明1~8についての特許を取り消すことはできないと判断する。理由は以下のとおりである。
なお、サポート要件違反の申立て(理由3A及び理由5B)、実施可能要件違反の申立て(理由2A及び理由4B)並びに明確性要件違反の申立て(理由4A及び理由3B)については、まとめて当審の判断を示した(それぞれ下記5.~7.を参照)。
1.理由1A(甲1Aに基づく進歩性欠如)について
(1)甲1Aに記載された事項
甲1Aには以下の事項が記載されている。
(1A-1)「小麦粉を主成分とする原料に水を加えた後、160~310mmHgの減圧雰囲気下で混合、混捏して麺生地を調製する工程と、この麺生地をロール圧延した後、所望幅に切り出す工程と、この麺線を油揚げ又は熱風乾燥する工程とを具備したことを特徴とする即席麺の製造方法。」(特許請求の範囲の請求項1)
(1A-2)「本発明は、上記従来の課題を解決するためになされたもので、ひぶくれ、発泡等の肌荒れを招くことなく、外観性、食感を改良した即席麺の製造方法を提供しようとするものである。」(第2頁左上欄10~13行)
(1A-3)「上記原料は、主原料である小麦粉に馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、ワキシースターチなどの澱粉と食塩、かんすい、麺質改質剤などの副原料を加えた組成からなる。なお、澱粉の配合上限は30重量%とすることが望ましい。
上記原料に加える水の量は、小麦粉に対して30~40重量%の範囲にすることが望ましい。この理由は、加水量を30重量%未満にすると減圧雰囲気下での混合、混捏時の脱気が不十分になる恐れがあり、一方加水量が40重量%を越える油揚げ時や熱風乾燥時にひぶくれ、発泡等の肌荒れを生じ易くなるばかりか、油揚げ時間、熱風乾燥時間が長くなる恐れがある。」(第2頁右上欄2~14行)
(1A-4)「上記油揚げは、麺線を蒸し、調味液での味付け後に150℃前後の油に入れて揚げる工程であり、乾燥は麺線をそのまま又は蒸煮後に乾燥機内に入れて100℃以上の熱風を吹き付ける工程である。」(第2頁左下欄8~11行)
(1A-5)「[作用]
第1発明方法によれば、小麦粉を主成分とする原料に水を加えた後、160~310mmHgの減圧雰囲気下で混合、混捏することによって、加水された原料中の空気が脱気されて組織が適度に緻密化された縦横方向への柔軟性の高い麺生地を調製できる。こうした麺生地をロール圧延し、所望幅に切り出した麺線を油揚げ又は熱風乾燥することによって、ひぶくれ、発泡等の肌荒れを招くことなく、供食時の食感、外観性が良好な即席麺を得ることができる。」(第2頁右下欄14行~第3頁左上欄4行)
(1A-6)「実施例1~5
まず、小麦粉5kg及び馬鈴薯澱粉500gの主原料をミキサに投入した。また、前記主原料に対して35重量%の水を別に用意し、これに食塩50g、かんすい10g、グアーガム5g、乳化剤5gを加えて撹拌した後、前記ミキサ内に投入した。つづいて、加水原料をミキサ内で混捏しながらミキサに連結された真空ポンプを作動してミキサ内の圧力を160mmHg、210mmHg、260mmHg、310mmHg、360mmHgの5通りの減圧度で15分間混捏して、5種の麺生地を調製した。」(第3頁左上欄19行~右上欄9行)
(1A-7)「実施例6~10
まず、前記実施例1~5と同様な方法で調製した麺生地を常法に従ってロール圧延して1.0mmの厚さとし、20番丸刃で切り出して幅1.5mmの麺線とした。つづいて、これら麺線を2分間蒸煮した後、定量にカットし、更に熱風乾燥機内にて100℃、20分間熱風乾燥して5種の乾燥麺を製造した。
比較例3、4
前記比較例1、2と同様な方法で調製した麺生地を常法に従ってロール圧延して1.0mmの厚さとし、20番丸で切り出して幅1.5mmの麺線とした後、これら麺線を実施例6と同様な処理を施して2種の乾燥麺を製造した。
本実施例6~10及び比較例3、4の乾燥麺を調理鍋の沸騰水に入れ、4分間煮て供食した。かかる供食に際し、麺線の外観(透明性、光沢性及び発泡状態;麺線の剥離状態の有無等)と、麺の伸びと、麺の粉臭と、滑らかさ及び弾力性とを調べた。その結果を下記第2表に示す。
[図:0001430038000001.jpg]
*1:麺線が部分的に二枚に剥離した。
◎:非常に良好
○:良好
△:やや劣る
×:劣る
」(第4頁左上欄1行~右上欄第2表)
(1A-8)「前述した第1表~第3表から明らかなように160~310mmHgの減圧雰囲気下で混捏して調製した麺生地を用いることによって、麺線の外観性、麺の伸び、滑らかさ及び弾力性等の食感が良好な油揚げ麺、乾燥麺を得ることができることがわかる。」(第4頁右下欄表下1~6行)
(2)甲1Aに記載された発明
甲1Aの請求項1(摘記1A-1)には、「小麦粉を主成分とする原料に水を加えた後、160~310mmHgの減圧雰囲気下で混合、混捏して麺生地を調製する工程と、この麺生地をロール圧延した後、所望幅に切り出す工程と、この麺線を油揚げ又は熱風乾燥する工程とを具備したことを特徴とする即席麺の製造方法。」が記載されており、第2頁右上欄2~14行(摘記1A-3)には、「上記原料は、主原料である小麦粉に馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、ワキシースターチなどの澱粉と食塩、かんすい、麺質改質剤などの副原料を加えた組成からなる。なお、澱粉の配合上限は30重量%とすることが望ましい」こと、及び「上記原料に加える水の量は、小麦粉に対して30~40重量%の範囲にすることが望ましい」ことが記載され、第2頁左下欄8~11行(摘記1A-4)には、「乾燥は麺線をそのまま又は蒸煮後に乾燥機内に入れて100℃以上の熱風を吹き付ける工程である」ことが記載されている。さらに、第4頁左上欄1行~右上欄第2表(摘記1A-7)には、実施例6~10として、「実施例1~5と同様な方法で調製した麺生地を常法に従ってロール圧延して1.0mmの厚さとし、20番丸刃で切り出して幅1.5mmの麺線とした。つづいて、これら麺線を2分間蒸煮した後、定量にカットし、更に熱風乾燥機内にて100℃、20分間熱風乾燥して5種の乾燥麺を製造した」例が記載されており、実施例1~5の麺生地の調製方法については、第3頁左上欄19行~右上欄9行(摘記1A-6)に、「小麦粉5kg及び馬鈴薯澱粉500gの主原料をミキサに投入した。また、前記主原料に対して35重量%の水を別に用意し、これに食塩50g、かんすい10g、グアーガム5g、乳化剤5gを加えて撹拌した後、前記ミキサ内に投入した。つづいて、加水原料をミキサ内で混捏しながらミキサに連結された真空ポンプを作動してミキサ内の圧力を160mmHg、210mmHg、260mmHg、310mmHg、360mmHgの5通りの減圧度で15分間混捏して、5種の麺生地を調製した」ことが記載されている。
そうすると、甲1Aには、請求項1及び実施例の記載等に基づいて以下の発明が記載されている。
「小麦粉を主成分とし、上限30重量%までの澱粉などの副原料を加えた組成からなる原料に、水を小麦粉に対して30~40重量%の範囲の量加えた後、160~360mmHgの減圧雰囲気下で混合、混捏して麺生地を調製する工程と、この麺生地をロール圧延した後、所望幅に切り出す工程と、この麺線を蒸煮後に乾燥機内に入れて、100℃以上の熱風を吹き付け熱風乾燥する工程とを具備した、即席麺の製造方法。」(以下、「甲1A発明」という。)
(3)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1A発明との対比
本件発明1と甲1A発明とを対比すると、甲1A発明における「小麦粉を主成分とし、上限30重量%までの澱粉などの副原料を加えた組成からなる原料」は、本件発明1における「原料粉を含む原材料」に相当し、かつ「原料粉は、小麦粉及びでん粉を含み」を満たしており、甲1A発明における「原料に、水を小麦粉に対して30~40重量%の範囲の量加えた後、」及び「160~360mmHgの減圧雰囲気下で混合、混捏して麺生地を調製する工程」は、合わせて本件発明1における「混合工程」に相当し、かつ「前記混合工程は、原料粉を含む原材料を混合する工程であり、」及び「前記混合工程が、減圧下において行われ、」に相当する。また、甲1A発明における「この麺生地をロール圧延した後、所望幅に切り出す工程」及び「この麺線を蒸煮」は、それぞれ本件発明1における「製麺工程」及び「α化工程」に相当し、甲1A発明における「乾燥機内に入れて、100℃以上の熱風を吹き付け熱風乾燥する工程」は、本件発明1における「乾燥工程」に相当し、かつ「前記乾燥工程は、130℃以上180℃以下の温度で、かつ、風速12m/秒以上120m/秒以下の熱風を用いて行われ、」と「前記乾燥工程は、熱風を用いて行われ」る限りにおいて一致する。さらに、甲1A発明における「即席麺の製造方法」は、麺を揚げる工程を含まないから、本件発明1における「即席ノンフライ麺の製造方法」に相当する。
そうすると、両者は、
「混合工程、製麺工程、α化工程、及び乾燥工程をこの順に行う即席ノンフライ麺の製造方法であって、
前記混合工程は、原料粉を含む原材料を混合する工程であり、
前記原料粉は、小麦粉及びでん粉を含み、かつ、
前記混合工程が、減圧下において行われ、
前記乾燥工程は、熱風を用いて行われる、
即席ノンフライ麺の製造方法。」
の点で一致し、
相違点甲1A-1:本件発明1は、乾燥工程における熱風を「130℃以上180℃以下の温度で、かつ、風速12m/秒以上120m/秒以下の熱風」と特定するのに対し、甲1A発明は「100℃以上の熱風」と特定する点
相違点甲1A-2:本件発明1は「前記乾燥工程後に得られたノンフライ麺の水分量が、4~14.5%であり、」と特定するのに対し、甲1A発明はそのように特定されない点
相違点甲1A-3:本件発明1は「前記乾燥工程後に得られたノンフライ麺の復元5分間における麺線の膨潤度は0.8倍以上1.4倍以下である、」と特定するのに対し、甲1A発明はそのように特定されない点
で相違する。
そこで、事案に鑑み、相違点甲1A-3について検討する。
イ 相違点甲1A-3について
甲1Aには、即席麺の「復元5分間における麺線の膨潤度」の測定値は記載されていない。また、甲1Aの第2頁左上欄(摘記1A-2)には、甲1A発明が「ひぶくれ、発泡等の肌荒れを招くことなく、外観性、食感を改良した即席麺の製造方法を提供」することを課題とするものであることが記載されており、第4頁左上欄~右上欄の第2表(摘記1A-7)には、「乾燥麺を調理鍋の沸騰水に入れ、4分間煮て供食した。かかる供食に際し、麺線の外観(透明性、光沢性及び発泡状態;麺線の剥離状態の有無等)と、麺の伸びと、麺の粉臭と、滑らかさ及び弾力性とを調べた。」こと、及びその結果が記載されているが、これらの記載から相違点甲1A-3に係る「膨潤度」の値を推測することはできない。さらに、甲1A発明の課題のうち、復元後の麺の性質に関係するのは供食時の外観性及び食感であるが、甲1Aにはこれらの性質を「膨潤度」と結びつける記載はないから、甲1A発明において「膨潤度」の範囲を特定する動機は生じない。加えて、他の全ての証拠の記載を参酌しても、甲1A発明において「膨潤度」に着目し、「0.8倍以上1.4倍以下」に調整する動機があったとはいえない。よって、相違点甲1A-3に係る本件発明1の発明特定事項は、甲1A発明及び全ての証拠の記載に基づいても当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
ウ 申立人Aの主張について
(ア)熱風乾燥の条件について
申立人Aは特許異議申立書の32~36頁において、本件明細書には、[0028]に「温度が110℃以上で、かつ、風速が12m/秒以上の熱風を用いて乾燥させることで、麺線を急速に脱水乾燥することができる。これにより、得られた麺線は発泡して膨化することから、麺線を復元した際の膨潤度が1.4倍以下と低くなり、麺線の表面の光沢が向上した即席ノンフライ麺を得ることができる。」と記載されている以外には「膨潤度を0.8倍以上1.4倍以下」にするための条件は記載されていないこと及び実施例の記載等から、「温度が110℃以上で、かつ、風速が12m/秒以上」の条件で熱風乾燥して製造されたノンフライ麺は、膨潤度が0.8倍以上1.4以下になると考えられること、並びに、甲1A発明において甲2A~甲5Aに記載された事項に基づき、「乾燥工程における熱風の風速を12m/秒以上120m/秒以下」とすることは当業者であれば容易に想到できることであり、その結果得られるノンフライ麺は、復元5分間における麺線の膨潤度が0.8倍以上1.4倍以下である蓋然性が高い、と主張している。
しかし、本件明細書の[0028]の記載を参酌すると、熱風乾燥時に「麺線を急速に脱水乾燥する」こと及び麺線が「発泡して膨化する」ことにより膨潤度が調整されると理解できるから、「膨潤度を0.8倍以上1.4倍以下」にするためには、「温度が110℃以上で、かつ、風速が12m/秒以上の熱風」を用いることに加え、麺線の脱水乾燥速度及び発泡膨化の程度を調整することが必要と解される。甲1A及び甲2A~甲5Aのいずれにも、麺線の「膨潤度」に着目する記載はなく、また、麺線の脱水乾燥速度及び発泡膨化の程度を「膨潤度」が「0.8倍以上1.4倍以下」になるよう調整する動機となる記載もないから、仮に、当業者が甲1A発明において甲2A~甲5Aに記載された熱風乾燥条件を組み合わせることができたとしても、相違点甲1A-3に係る麺線の「膨潤度」を「0.8倍以上1.4倍以下」に調整することができたとはいえない。
よって、申立人Aの主張を採用することはできない。
(イ)膨化度について
申立人Aは特許異議申立書の37~38頁において、従来、麺線の膨化状態を示す値として「膨化度」が用いられており(甲5A)、「膨化度」が乾燥前の麺の断面に対する乾燥後の麺の断面を評価したものであり、「膨潤度」が復元前の麺の断面から復元後の麺の断面を評価したものであるから、いずれも乾燥後の麺の断面がどのような状態であるかを評価しているにすぎず、それらを調整することは乾燥後の麺の状態を調整するという点で同義であること、及び、甲5Aには膨化度が1.23~1.44の範囲の乾燥麺は、麺の復元状態も良好で麺表面が滑らかで艶のある外観を呈することが記載されているから、「麺線の膨潤度を0.8倍以上1.4倍以下にする」ことは当業者の技術常識の範囲内であり、熱風乾燥条件を調整して適宜なし得る設計変更にすぎないと主張している。
しかし、本件明細書の[0028]の記載を参酌すると、熱風乾燥時に「麺線を急速に脱水乾燥する」こと及び麺線が「発泡して膨化する」ことにより膨潤度が調整されると理解できるところ、熱風乾燥前後の麺の断面積の変化(膨化度)には、麺線の脱水乾燥速度及び発泡膨化の程度が反映されているとはいえないから、「膨化度」と相違点甲1A-3に係る「膨潤度」とが同義とはいえず、したがって、甲5Aの記載を参酌しても、当業者が「麺線の膨潤度を0.8倍以上1.4倍以下にする」ことの動機があったとはいえない。
よって、申立人Aの主張を採用することはできない。
エ 本件発明1についてのまとめ
以上のことから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲1A発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件発明2~8について
本件発明2~8は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものである。そうすると、上記(3)で検討した本件発明1と同様の理由により、本件発明2~8はいずれも甲1A発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)理由1A(甲1Aに基づく進歩性欠如)についてのまとめ
以上まとめると、本件発明1~8は、いずれも甲1Aに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。
よって、理由1A(甲1Aに基づく進歩性欠如)により本件発明1~8についての特許を取り消すことはできない。
2.理由1B(甲1Bに基づく新規性欠如)及び理由2B-1(甲1Bに基づく進歩性欠如)について
(1)甲1Bに記載された事項
甲1Bには以下の事項が記載されている。
(1B-1)「[請求項1] 常法により製麺された生麺線を60~100℃の湯に浸漬、シャワー及び/又は噴霧する湯処理をすることにより、湯処理をした麺線の吸収湯量を生麺100g当たり9~71重量%に調整し、
これを蒸煮した後に蒸煮麺の品温を0~40℃に水で冷却処理をし、
この冷却処理した蒸煮麺を、空気、不活性ガス又はこれらの混合ガスからなる温度60~150℃及び風速0.1~90m/secの熱風で乾燥することにより、最終乾燥麺の水分含有量を4~15%に調整することを特徴とする湯処理する即席麺の製造方法。」
(1B-2)「[0011]
[発明が解決しようとする課題]本発明は、油揚げ処理乾燥方法ではなく、熱風等で乾燥する従来の即席麺類の有する前記欠点を解消し、復元性がよく生麺的粘弾性、歯ごたえ、食味のある即席麺類の製造方法を提供する事を目的とする。」
(1B-3)「[0016]
[発明の実施の形態]まず、本発明がその対象とする即席麺は、小麦粉、澱粉、小麦蛋白、食塩、調味料及び着色料等の製麺原料を用いて、常法により混捏、複合、圧延、切出して生麺線とし、これを蒸煮した後で乾燥する即席中華麺、即席和風麺、即席欧風麺、スナック麺及び大麦粉や米粉などの穀類粉を主原料にした即席麺等の即席麺類に適用する事が出来る。
[0017]本発明における生麺線とは、常法に従って小麦粉、そば粉、米粉等の穀物粉を主原料とし、水と必要に応じて馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、加工澱粉、食塩、かんすい、増粘多糖類、調味料及び着色料等の原料を配合し、公知の製麺機械を用いて常圧又は減圧下で混捏し麺生地とする。これを複合、圧延して麺帯とし、切り刃等を用いて切出して生麺線を得る。生麺線の形状、太さ等は中華麺、うどん、そば、パスタ等製品の種類と調理復元に要する時間との関係から適宜選定できる。又、押し出し方法等によって麺帯や生麺線を形成することもでき特に限定するものではない。
[0018]次いで、この生麺線を湯処理する。これは本発明の復元性をよくし生麺的品質を発現する最も重要な点である。切出した生麺線を湯の温度60~100℃の湯に1~60秒間浸漬する。この時の生麺線の吸収湯量は生麺線の重量100g当たり9~71gであって、生麺線の澱粉を糊化膨潤して発明のレベルにするための必要量である。60℃未満では生麺線の水の吸収量が少なく、又温度が低いことから、澱粉の糊化膨潤がなく良好な品質が得られない。100℃を超える場合は設備が複雑になることや過剰の蒸気の処理が必要となって経済的でない。又、麺線の澱粉が過度に糊化膨潤し良好な麺が得られない。より好ましい湯の温度は80~98℃である。80℃以上では澱粉の糊化膨潤が使用原料粉の種類による影響が少なくより均一で安定した状態を得る事が出来る。98℃は100℃と比較して作業性が良いためである。」
(1B-4)「[0024]次ぎに、冷却した麺を常法によって水切り、型詰め、整形する。これを公知の方法で乾燥する。例えば、熱風の温度60~150℃、風速0.1~90m/secで熱風乾燥する事が出来る。より好ましくは70~115℃、風速40~80m/sec、乾燥時間3~30分間熱風乾燥すると水分含有率4~15%に乾燥する事が出来る。
[0025]このようにして得られた即席麺類は、熱湯又は直火で3~5分間調理することによって喫食可能な状態に復元し生麺的な食感食味を味わう事が出来る。
[0026]次ぎに乾燥方法として、上記熱風乾燥の他、遠赤外線加熱乾燥、高周波加熱乾燥、真空加熱乾燥等の方法を単独又は併用することが出来る。
[0027]又熱風乾燥する際のより好ましい方法として、別に設けた高圧室より温度制御された空気、不活性ガス、又はこれらの混合ガスからなる温度60~150℃の熱風を搬送用ネットコンベアーの上下に複数配設した噴射ノズルチューブより熱風の風速が0.1~90m/secで噴射して乾燥する方法がある。この乾燥方法を使った場合を詳しく説明する。」
(1B-5)「[0030]熱風の温度は60~150℃の範囲が好ましく、60℃未満では乾燥時間が長くなり効率的でない、又150℃を超えると乾燥むらを生じる。
[0031]より好ましくは70~115℃の範囲がよい。又この時の熱風の風速は0.1~90m/secの範囲が効果的である。風速が0.1m/sec以下では乾燥に要する時間が長くなり経済的でなく、乾燥後の麺のほぐれが悪い物が出来る。風速が90m/secを超えると設備が複雑になり経済的でない。より好ましくは40~80m/secの範囲である。
[0032]乾燥時間は最終乾燥麺の水分含有量が4~15%の範囲において適宜選定することにより達成できる。熱風が筒長およそ125mm位の噴射ノズルチューブより高速に、しかも垂直に麺かいに噴射されるため、麺かい表面より麺かい裏面にまで急速に通過する。又、逆に麺かい裏面からも噴射ノズルチューブより熱風を噴射することにより、麺かい表裏を同時に乾燥することができる。その結果、麺かい内部に至るまで短時間で均一に乾燥することができる。加熱する熱風に不活性ガス(N2,He,CO2等)を単独又は空気と混合して用いると、麺の含有成分である色素、油脂、ビタミン類の酸化を防止して、麺固有の風味と色調を維持し合わせてビタミン類等の栄養成分の損失を少なくすることができる。」
(1B-6)「[0034]
[実施例1](即席中華麺)常法により小麦粉95重量部、でん粉5重量部、かん水0.5重量部、黄色色素0.1重量部、食塩2重量部、水35重量部を配合し、混捏、複合、圧延して麺厚1.1mmの麺帯とし、これを#18丸刃で切出し生麺線とし、これを98℃の湯中に5秒間浸漬した(吸収湯量31重量%)後で蒸煮圧0.1kg/cm2で90秒間蒸煮し、この蒸煮麺を冷水に45秒間浸漬して冷却麺温度を7℃にする。冷却した麺を水切りし140g計り取りネット状のバケットに型詰めし、これに空気からなる温度105℃、風速70m/secの熱風で10分間乾燥せしめ最終水分12%の所望の即席中華麺を得た。」
(1B-7)「[0041]
[実施例11~14]、
[比較例7~8](即席中華麺:熱風の温度と風速を変えた場合)実施例1において麺を乾燥する熱風の温度と風速の組み合わせを60℃と0.1m/secにして水分12%の乾燥麺を、70℃と40m/secにして水分12%の乾燥麺を、115℃と80m/secにして水分12%の乾燥麺を、150℃と90m/secにして水分11~12%である実施例11~14の即席中華麺を得た。又、55℃と0.08m/sec、160℃と90m/secにして各々乾燥麺の水分が11~12%である比較例7と比較例8の即席中華麺を得た。」
(1B-8)「[0060]
[表1]
[図:0001430038000002.jpg]
注1、 麺の復元評価:熱湯を用いて4分間復元したときの喫食可能な状態を表す。
注2、官能検査評価:熱湯を用いて4分間調理しパネラー10人で官能検査評価をしその得点の平均点を表した。
5点:大変良い
4点:良い
3点:普通
2点:悪い
1点:非常に悪い
・・・
[0062]
[発明の効果]以上の結果より、本発明は、生麺線を温度60~100℃の湯処理をするため蒸煮麺のでん粉を高いレベルに糊化膨潤することができて麺全体のα化を充分促進できる。又蒸煮麺を水で冷却するのでめんのほぐれ、整形が容易になり均一な乾燥や調理時のほぐれをよくする効果がある。又、α化が充分であることから麺の復元性がよく、調理時間を短くすることや麺線の太いものをつくることができる。
[0063]しかも、復元した麺は、茹でたての生麺の様に表面が滑らかで、透明感があり、粘弾性、歯ごたえ、食味のある即席麺類を得ることができるのである。」
(2)甲1Bに記載された発明
甲1Bの請求項1(摘記1B-1)には、「常法により製麺された生麺線を60~100℃の湯に浸漬、シャワー及び/又は噴霧する湯処理をすることにより、湯処理をした麺線の吸収湯量を生麺100g当たり9~71重量%に調整し、これを蒸煮した後に蒸煮麺の品温を0~40℃に水で冷却処理をし、この冷却処理した蒸煮麺を、空気、不活性ガス又はこれらの混合ガスからなる温度60~150℃及び風速0.1~90m/secの熱風で乾燥することにより、最終乾燥麺の水分含有量を4~15%に調整することを特徴とする湯処理する即席麺の製造方法。」が記載されており、[0017](摘記1B-3)には、「本発明における生麺線とは、常法に従って小麦粉、そば粉、米粉等の穀物粉を主原料とし、水と必要に応じて馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、加工澱粉、食塩、かんすい、増粘多糖類、調味料及び着色料等の原料を配合し、公知の製麺機械を用いて常圧又は減圧下で混捏し麺生地とする。」ことが記載され、[0024](摘記1B-4)には、「例えば、熱風の温度60~150℃、風速0.1~90m/secで熱風乾燥する事が出来る」ことが記載されている。また、[0041](摘記1B-7)及び[0060]の[表1](摘記1B-8)には、実施例14として、実施例1([0034]、摘記1B-6)において麺を乾燥する熱風の温度と風速の組み合わせを150℃と90m/s、3分間の乾燥にして、水分が11~12%である即席中華麺を得たことが記載されている。
そうすると、甲1Bには実施例14等の記載に基づいて以下の発明が記載されている。
「常法により小麦粉95重量部、でん粉5重量部、かん水0.5重量部、黄色色素0.1重量部、食塩2重量部、水35重量部を配合し、混捏、複合、圧延して麺厚1.1mmの麺帯とし、これを#18丸刃で切出し生麺線とし、これを98℃の湯中に5秒間浸漬した(吸収湯量31重量%)後で蒸煮圧0.1kg/cm2で90秒間蒸煮し、この蒸煮麺を冷水に45秒間浸漬して冷却麺温度を7℃にし、冷却した麺を水切りし140g計り取りネット状のバケットに型詰めし、これに空気からなる温度150℃、風速80m/secの熱風で3分間乾燥せしめ、最終水分11~12%とする、即席中華麺の製造方法。」(以下、「甲1B発明」という。)
(3)本件発明1について
ア 本件発明1と甲1B発明との対比
本件発明1と甲1B発明とを対比すると、甲1B発明における「小麦粉95重量部、でん粉5重量部、かん水0.5重量部、黄色色素0.1重量部、食塩2重量部、」は、本件発明1における「原料粉を含む原材料」に相当し、かつ「原料粉は、小麦粉及びでん粉を含み」を満たしており、甲1B発明における「水35重量部を配合し、混捏、」は、本件発明1における「混合工程」に相当し、かつ「前記混合工程は、原料粉を含む原材料を混合する工程であり、」に相当し、甲1B発明における「複合、圧延して麺厚1.1mmの麺帯とし、これを#18丸刃で切出し生麺線とし、」及び「これを98℃の湯中に5秒間浸漬した(吸収湯量31重量%)後で蒸煮圧0.1kg/cm2で90秒間蒸煮し、」は、それぞれ本件発明1における「製麺工程、」及び「α化工程、」に相当する。また、甲1B発明における「これに空気からなる温度150℃、風速80m/secの熱風で3分間乾燥せしめ、」は、本件発明1における「乾燥工程」に相当し、かつ「前記乾燥工程は、130℃以上180℃以下の温度で、かつ、風速12m/秒以上120m/秒以下の熱風を用いて行われ、」を満たしている。さらに、甲1B発明における「即席中華麺の製造方法」は、麺を揚げる工程を含まないから、本件発明1における「即席ノンフライ麺の製造方法」に相当し、甲1B発明における「最終水分11~12%とする、」は、本件発明1における「前記乾燥工程後に得られたノンフライ麺の水分量が、4~14.5%であり、」を満たしている。
そうすると、両者は、
「混合工程、製麺工程、α化工程、及び乾燥工程をこの順に行う即席ノンフライ麺の製造方法であって、
前記混合工程は、原料粉を含む原材料を混合する工程であり、
前記原料粉は、小麦粉及びでん粉を含み、かつ、
前記乾燥工程は、130℃以上180℃以下の温度で、かつ、風速12m/秒以上120m/秒以下の熱風を用いて行われ、
前記乾燥工程後に得られたノンフライ麺の水分量が、4~14.5%である、
即席ノンフライ麺の製造方法。」
の点で一致し、
相違点甲1B-1:本件発明1は「前記混合工程が、減圧下において行われ、」と特定するのに対し、甲1B発明はそのように特定されない点
相違点甲1B-2:本件発明1は「前記乾燥工程後に得られたノンフライ麺の復元5分間における麺線の膨潤度は0.8倍以上1.4倍以下である、」と特定するのに対し、甲1B発明はそのように特定されない点
で相違する。
そこで、事案に鑑み、相違点甲1B-2について検討する。
イ 相違点甲1B-2について
甲1Bには、即席中華麺の「復元5分間における麺線の膨潤度」の測定値は記載されていない。また、甲1Bの[0011](摘記1B-2)には、甲1B発明が「復元性がよく生麺的粘弾性、歯ごたえ、食味のある即席麺類の製造方法を提供する」ことを課題とするものであることが記載されており、[0060]の[表1](摘記1B-8)には、熱湯を用いて4分間復元したときの麺の復元状態の評価が「むら有り」であり、官能検査評価がいずれの項目も5点(大変良い)~3点(普通)の範囲内であったことが記載されているが、これらの記載から相違点甲1B-2に係る「膨潤度」の値を推測することはできない。よって、相違点甲1B-2は実質的な相違点である。
さらに、甲1Bの[0018](摘記1B-3)には、発明の課題解決手段に関し、「この生麺線を湯処理する。これは本発明の復元性をよくし生麺的品質を発現する最も重要な点である。切出した生麺線を湯の温度60~100℃の湯に1~60秒間浸漬する。この時の生麺線の吸収湯量は生麺線の重量100g当たり9~71gであって、生麺線の澱粉を糊化膨潤して発明のレベルにするための必要量である。」と記載されているが、湯処理は「膨潤度」と直接結びつくものではないから、甲1B発明において「膨潤度」の範囲を特定する動機があるとはいえない。さらに、他の全ての証拠の記載を参酌しても、甲1B発明において「膨潤度」に着目し、「0.8倍以上1.4倍以下」に調整する動機があったとはいえない。よって、相違点甲1B-2に係る本件発明1の発明特定事項は、甲1B発明及び全ての証拠の記載に基づいても当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
ウ 申立人Bの主張について
(ア)熱風乾燥の条件について
申立人Aは特許異議申立書の48~49頁において、膨潤度の復元5分という条件は、通常の即席麺における一般的な調理時間に相当し、本件明細書の[0028]にも、膨潤度が1.4倍以下となることの技術的本質や制御因子は具体的に開示されていないから、110℃以上、かつ風速12m/秒以上の熱風により乾燥させれば、膨潤度0.8~1.4の麺と、麺線の表面の光沢が向上した即席ノンフライ麺を得ることができ、したがって、甲1Bの実施例14で製造されるノンフライ麺においても、復元後の膨潤度が0.8倍以上1.4倍以下となる蓋然性が高い、及び、本件発明1に記載された乾燥条件は甲1B、甲3B及び甲4Bに記載されている周知技術であり、当業者がそのように構成することは技術常識の範囲であり容易に想到し得る、と主張している。
しかし、上記1.(3)ウ(ア)で検討したとおり、本件明細書の[0028]の記載を参酌すると、熱風乾燥時に「麺線を急速に脱水乾燥する」こと及び麺線が「発泡して膨化する」ことにより膨潤度が調整されると理解できるから、「膨潤度を0.8倍以上1.4倍以下」にするためには、「温度が110℃以上で、かつ、風速が12m/秒以上の熱風」を用いることに加え、麺線の脱水乾燥速度及び発泡膨化の程度を調整することが必要と解される。甲1B、甲3B及び甲4Bのいずれにも、麺線の「膨潤度」に着目する記載はなく、また、麺線の脱水乾燥速度及び発泡膨化の程度を「膨潤度」が「0.8倍以上1.4倍以下」になるよう調整する動機となる記載もないから、仮に、当業者が甲1B発明において甲1B、甲3B及び甲4Bに記載された熱風乾燥条件を組み合わせることができたとしても、相違点甲1B-2に係る麺線の「膨潤度」を「0.8倍以上1.4倍以下」に調整することができたとはいえない。
よって、申立人Bの主張を採用することはできない。
(イ)膨化度について
申立人Bは特許異議申立書の49頁において、甲5Bには「膨化度」が1.23未満の麺は復元性に劣り1.44を超えると戻りすぎて満足な食感が得られないことが記載されており、膨化度を調整することは当業者が当たり前のように行っている事項である、及び、麺線の「膨潤度」を調整することは麺線の「膨化度」を調整することの言い換えに過ぎず、麺線の膨潤度を調整することも当業者にとっては設計事項である、と主張している。
しかし、上記1.(3)ウ(イ)で検討したとおり、本件明細書の[0028]の記載を参酌すると、熱風乾燥時に「麺線を急速に脱水乾燥する」こと及び麺線が「発泡して膨化する」ことにより膨潤度が調整されると理解できるところ、熱風乾燥前後の麺の断面積の変化(膨化度)には、麺線の脱水乾燥速度及び発泡膨化の程度が反映されているとはいえないから、「膨化度」と相違点甲1B-2に係る「膨潤度」とが同義とはいえず、したがって、甲5Bの記載を参酌しても、当業者が「麺線の膨潤度を0.8倍以上1.4倍以下にする」ことの動機があったとはいえない。
よって、申立人Bの主張を採用することはできない。
エ 本件発明1についてのまとめ
以上のことから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲1B発明ではなく、かつ、甲1B発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件発明2~8について
本件発明2~8は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものである。そうすると、上記(3)で検討した本件発明1と同様の理由により、本件発明2~4及び8はいずれも甲1B発明ではなく、かつ、本件発明2~8はいずれも甲1B発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)理由1B(甲1Bに基づく新規性欠如)及び理由2B-1(甲1Bに基づく進歩性欠如)についてのまとめ
以上まとめると、本件発明1~4及び8は、いずれも甲1Bに記載された発明ではないから特許法第29条第1項第3号には該当せず、また、本件発明1~8は、いずれも甲1Bに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。
よって、理由1B(甲1Bに基づく新規性欠如)及び理由2B-1(甲1Bに基づく進歩性欠如)により本件発明1~8についての特許を取り消すことはできない。
3.理由2B-2(甲3Bに基づく進歩性欠如)について
(1)甲3Bに記載された事項
甲3Bには以下の事項が記載されている。
(3B-1)「発明が解決しようとする課題
[0007] 本発明は、上述の状況に鑑みて、フライ麺的な連食性のある風味及び食感を有しながらも、低カロリーである高温熱風乾燥即席麺を製造する方法を提供することを課題とする。特に、本発明では、熱風乾燥でありながらも麺塊の乾燥時間の大幅な短縮化と均一な乾燥を実現し、その一方で、フライ麺的な風味及び食感を有するとともに、迅速かつ均一な復元性を有する低カロリーの高温熱風乾燥即席麺を製造する方法を提供することを課題とする。
課題を解決するための手段
[0008] 本発明者らは、前記課題を解決するために乾燥即席麺の製造技術について鋭意検討を行った。最初に、常法によって得た生麺線の表面に食用油を付着させた後、これを蒸煮して蒸煮麺を製造し、次いでリテーナーに型詰し、リテーナーの上下方向から所定の高温高風速の熱風を当て、麺塊を乾燥膨化する方法について検討した。その結果、麺塊の膨化乾燥によって、ノンフライ麺でありながらもフライ麺的な食感を得ることができたが、満足できる程度ではなかった。また、得られた乾燥麺は、従来のフライ麺の場合と比べると、油の風味及びロースト感が不足していた。
・・・
[0010] そこで、本発明者らは、さらに検討を続けた結果、高温高風速の熱風による乾燥に先立ち、単に生麺線に食用油を付着させる方法だけでなく、原料粉に食用油を添加する方法を併用することによって、麺線を前記熱風により膨化乾燥させた際に、麺線表面からの膨化の促進と麺線内部からの膨化の促進による相乗効果で、所期の目的を達成できることを見出した。また、乾燥即席麺のカロリーをさらに低下させるための検討において、難消化性澱粉がカロリーの低減効果のみならず、乾燥効率を著しく向上させるという予期せぬ効果が得られることを見出した。本発明はこのような知見に基づくものであり、以下に記載する事項に関する。」
(3B-2)「[0024]工程(a):
1.原料配合
本発明において、麺生地材料は、通常、即席麺の原料として使用される材料から構成することができる。すなわち、麺生地材料は、原料粉を主成分とし、その他、食塩等の各種成分を含む。原料粉としては、小麦粉、そば粉、及び米粉等の穀粉、並びに馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、コーンスターチ等の各種澱粉を単独で使用しても、又は混合して使用してもよい。前記澱粉として、生澱粉、α化澱粉、エーテル化澱粉等の化工澱粉等を使用することもできる。」
(3B-3)「[0033]工程(b):
3.油脂付着
次に、先に説明した工程(a)で得た生麺線に食用油を均一に付着させる。付着は、食用油を生麺線に噴霧又はシャワーする等の方法によって実施することができる。前記噴霧又はシャワーは、例えば、ハンドスプレー、スプレー管を使用することによって実施することができる。前記付着時に使用する食用油の量は、原料粉1kgに対して、好ましくは10~90mlの範囲、より好ましくは10~54mlの範囲である。すなわち、前記食用油の付着量は、原料粉の全重量を基準として、1~8重量%の範囲、より好ましくは1~5重量%の範囲である。
[0034] 前記食用油の付着量を10ml以上とすることで、麺に良好なフライ麺的風味を付与することが容易となる。一方、付着量を90ml以下にした場合、油っぽくならずに、良好な風味及び食感を容易に実現しやすくなる。付着量が多くなり過ぎると、油っぽく感じるようになり、風味及び食感が低下する傾向がある。また、過剰の油により、麺線表面がベタつき、熱風の通りが悪くなるため、麺の膨化が不均一となり、乾燥ムラが発生しやすくなる傾向がある。麺線に付着させる食用油の種類は、麺生地材料に添加する食用油と同様であってよく、食用として使用できる油脂全般を使用することができる。付着時の食用油の温度は、油の流動性や機械適性を考慮すると40~70℃の範囲が好ましいが、油の種類に応じて均一な付着を実施することを優先して考慮すべきである。」
(3B-4)「[0040]工程(d):
7.乾燥
本発明において、麺塊の乾燥は、高温及び高風速の熱風を使用して実施する。熱風の温度及び風速が不十分であると、乾燥効率が低下し、麺塊を望ましい膨化状態に乾燥させることが困難になる傾向がある。一方、熱風の温度及び風速が過度になると、乾燥ムラ及び焦げ等の不具合が生じやすくなる。このような観点から、本発明において乾燥工程は、前記リテーナーの上方及び下方から、風速30m/s~70m/s、温度120℃~160℃の熱風を当てることによって実施することを特徴とする。前記乾燥工程は、得られる乾燥即席麺の水分含量が6%以下となるまで実施することが望ましい。」
(3B-5)「[0047](予備実験1)
麺に食用油を添加する方法として、即席麺を製造する常法によって切り出した生麺線に食用油を噴霧し、麺の風味及び食感に与える影響について検討した。具体的には以下のようにして検討を行った。
[0048](1)乾燥麺の製造
原料粉として小麦粉900gにタピオカ澱粉100gを粉体混合した。この原料粉に食塩15g、かんすい2g、カロチン色素0.2gを溶解した練り水330mlを加え、常圧ミキサーで15分間混練することによって麺生地(ドウ)を得た。この麺生地を圧延機で圧延し、次いで角刃20番で切り出して、麺厚0.77mmの麺線を得た。
[0049] 次に、この麺線の表面に、下記表1に記載した量(原料粉の全重量に対して0~11重量%となる量)の食用油を、ハンドスプレーを用いて均一に噴霧することにより、麺線全体に付着させた。これを直ちに2分30秒間にわたって蒸煮処理し、蒸煮麺を得た。次いで、1L当り食塩80g及びMSG5gを溶解し、さらに60℃に加温した着味液に、前記蒸煮麺を約3秒間浸漬させた。
[0050] 次に、前記着味工程を経た蒸煮麺を、1食分あたり20~25cm(重量80g/食)にカットし、これをコンベアー上のリテーナー(乾燥用型枠:上径73mm、下径87mmのリング状リテーナー)に投入した。リテーナー中の麺重量は80gであり、水分含量は45%であった。
[0051] 次に、熱風噴射乾燥機(荒川製作所製、垂直衝突流式JETZONEシステム)を用いて、リテーナーの上下方向から、風速65~70m/s、温度142℃の熱風を9分間噴射し、麺を乾燥及び膨化させて、下記表1に示す各々の乾燥麺塊を得た(水分含量6%)。
・・・
[0054] 表1に示した結果から明らかなように、食用油の噴霧によって、麺にフライ麺的な風味を付与できることが分かった。特に、食用油を5~7%噴霧した場合には、ノンフライ麺でありながら、フライ麺的な美味しさが得られることが分かった。しかしながら、本来のフライ麺と比べると、油の風味及びロースト感が劣り、フライ麺的な食感も劣り、総合的に見て、十分に満足できるとは言い難い結果であった。また、食用油を9~11%噴霧した場合は、油っぽさを強く感じる結果となった。」
(3B-6)「請求の範囲
[請求項1] 以下の工程を含むことを特徴とする高温熱風乾燥即席麺の製造方法。
(a)原料粉を含む麺生地材料に食用油を添加して得られる麺生地から麺帯を製造し、次いで前記麺帯を製麺して生麺線を製造する工程。
(b)前記生麺線に食用油を付着させ、次いで前記生麺線を蒸煮して蒸煮麺を製造する工程。
(c)前記蒸煮麺をリテーナーに定量充填することによって麺塊を形成する工程。
(d)前記リテーナーの上方および下方から、風速30m/s~70m/s、温度120℃~160℃の熱風を、3~15分間にわたって当てて、前記麺塊を膨化乾燥する工程。」
(2)甲3Bに記載された発明
甲3Bの請求項1(摘記3B-6)には、「以下の工程を含むことを特徴とする高温熱風乾燥即席麺の製造方法。(a)原料粉を含む麺生地材料に食用油を添加して得られる麺生地から麺帯を製造し、次いで前記麺帯を製麺して生麺線を製造する工程。(b)前記生麺線に食用油を付着させ、次いで前記生麺線を蒸煮して蒸煮麺を製造する工程。(c)前記蒸煮麺をリテーナーに定量充填することによって麺塊を形成する工程。(d)前記リテーナーの上方および下方から、風速30m/s~70m/s、温度120℃~160℃の熱風を、3~15分間にわたって当てて、前記麺塊を膨化乾燥する工程。」が記載されており、[0007](摘記3B-1)には、発明が解決しようとする課題が、「フライ麺的な連食性のある風味及び食感を有しながらも、低カロリーである高温熱風乾燥即席麺を製造する方法を提供すること」にあることが記載され、[0008](摘記3B-1)には、「常法によって得た生麺線の表面に食用油を付着させた後、これを蒸煮して蒸煮麺を製造し、次いでリテーナーに型詰し、リテーナーの上下方向から所定の高温高風速の熱風を当て、麺塊を乾燥膨化する方法について検討した。その結果、麺塊の膨化乾燥によって、ノンフライ麺でありながらもフライ麺的な食感を得ることができたが、満足できる程度ではなかった。」ことが記載されている。また、[0024](摘記3B-2)には、「麺生地材料は、原料粉を主成分とし、その他、食塩等の各種成分を含む。原料粉としては、小麦粉、そば粉、及び米粉等の穀粉、並びに馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、コーンスターチ等の各種澱粉を単独で使用しても、又は混合して使用してもよい。」ことが記載され、[0040](摘記3B-4)には、「本発明において乾燥工程は、前記リテーナーの上方及び下方から、風速30m/s~70m/s、温度120℃~160℃の熱風を当てることによって実施することを特徴とする。前記乾燥工程は、得られる乾燥即席麺の水分含量が6%以下となるまで実施することが望ましい。」ことが記載され、[0047]~[0054](摘記3B-5)には、上記[0007]に記載された「生麺線に食用油を噴霧」する工程を備えた「予備実験1」が記載されている。
そうすると、甲3Bには、予備実験1等の記載に基づいて以下の発明が記載されている。
「原料粉として小麦粉900gにタピオカ澱粉100gを粉体混合し、この原料粉に食塩15g、かんすい2g、カロチン色素0.2gを溶解した練り水330mlを加え、常圧ミキサーで15分間混練することによって麺生地(ドウ)を得、この麺生地を圧延機で圧延し、次いで角刃20番で切り出して、麺厚0.77mmの麺線を得て、
次に、この麺線の表面に、原料粉の全重量に対して0~11重量%となる量の食用油を、ハンドスプレーを用いて均一に噴霧することにより、麺線全体に付着させ、これを直ちに2分30秒間にわたって蒸煮処理し、蒸煮麺を得て、次いで、1L当り食塩80g及びMSG5gを溶解し、さらに60℃に加温した着味液に、前記蒸煮麺を約3秒間浸漬させ、
次に、前記着味工程を経た蒸煮麺を、1食分あたり20~25cm(重量80g/食)にカットし、これをコンベアー上のリテーナー(乾燥用型枠:上径73mm、下径87mmのリング状リテーナー)に投入し、リテーナー中の麺重量は80gであり、水分含量は45%であり、
次に、熱風噴射乾燥機(荒川製作所製、垂直衝突流式JETZONEシステム)を用いて、リテーナーの上下方向から、風速65~70m/s、温度142℃の熱風を9分間噴射し、麺を乾燥及び膨化させ、水分含量6%とする、乾燥麺塊の製造方法。」(以下、「甲3B発明」という。)
(3)本件発明1について
ア 本件発明1と甲3B発明との対比
本件発明1と甲3B発明とを対比すると、甲3B発明における「原料粉として小麦粉900gにタピオカ澱粉100g」は、本件発明1における「原料粉」に相当し、かつ「原料粉は、小麦粉及びでん粉を含み」を満たしており、甲3B発明における「この原料粉に食塩15g、かんすい2g、カロチン色素0.2gを溶解した練り水330mlを加え、常圧ミキサーで15分間混練することによって麺生地(ドウ)を得、」は、本件発明1における「混合工程」に相当し、かつ「前記混合工程は、原料粉を含む原材料を混合する工程であり、」に相当し、甲3B発明における「この麺生地を圧延機で圧延し、次いで角刃20番で切り出して、麺厚0.77mmの麺線を得て、」及び「これを直ちに2分30秒間にわたって蒸煮処理し、蒸煮麺を得て、」は、それぞれ本件発明1における「製麺工程、」及び「α化工程、」に相当する。また、甲3B発明における「熱風噴射乾燥機(荒川製作所製、垂直衝突流式JETZONEシステム)を用いて、リテーナーの上下方向から、風速65~70m/s、温度142℃の熱風を9分間噴射し、麺を乾燥及び膨化させ、」は、本件発明1における「乾燥工程」に相当し、かつ「前記乾燥工程は、130℃以上180℃以下の温度で、かつ、風速12m/秒以上120m/秒以下の熱風を用いて行われ、」を満たしている。さらに、甲3B発明における「乾燥麺塊の製造方法」は、麺を揚げる工程を含まないから、本件発明1における「即席ノンフライ麺の製造方法」に相当し、甲3B発明における「水分含量6%とする、」は、本件発明1における「前記乾燥工程後に得られたノンフライ麺の水分量が、4~14.5%であり、」を満たしている。
そうすると、両者は、
「混合工程、製麺工程、α化工程、及び乾燥工程をこの順に行う即席ノンフライ麺の製造方法であって、
前記混合工程は、原料粉を含む原材料を混合する工程であり、
前記原料粉は、小麦粉及びでん粉を含み、かつ、
前記乾燥工程は、130℃以上180℃以下の温度で、かつ、風速12m/秒以上120m/秒以下の熱風を用いて行われ、
前記乾燥工程後に得られたノンフライ麺の水分量が、4~14.5%である、
即席ノンフライ麺の製造方法。」
の点で一致し、
相違点甲3B-1:本件発明1は「前記混合工程が、減圧下において行われ、」と特定するのに対し、甲3B発明はそのように特定されない点
相違点甲3B-2:本件発明1は「前記乾燥工程後に得られたノンフライ麺の復元5分間における麺線の膨潤度は0.8倍以上1.4倍以下である、」と特定するのに対し、甲3B発明はそのように特定されない点
で相違する。
そこで、事案に鑑み、相違点甲3B-2について検討する。
イ 相違点甲3B-2について
甲3Bには、乾燥麺塊の「復元5分間における麺線の膨潤度」の測定値は記載されていない。また、甲3Bの[0007](摘記3B-1)には、甲3Bの請求項1に係る発明の解決しようとする課題が「フライ麺的な連食性のある風味及び食感を有しながらも、低カロリーである高温熱風乾燥即席麺を製造する方法を提供すること」にあることが記載されており、[0054](摘記3B-5)には、予備実験1(甲3B発明)が「食用油の噴霧によって、麺にフライ麺的な風味を付与できることが分かった。・・・しかしながら、本来のフライ麺と比べると、油の風味及びロースト感が劣り、フライ麺的な食感も劣り、総合的に見て、十分に満足できるとは言い難い結果であった」と評価されるものであったことが記載されているが、これらの記載から相違点甲3B-2に係る「膨潤度」の値を推測することはできない。さらに、麺の乾燥に関し、甲3Bの[0033](摘記3B-3)には、「付着量が多くなり過ぎると、油っぽく感じるようになり、風味及び食感が低下する傾向がある。また、過剰の油により、麺線表面がベタつき、熱風の通りが悪くなるため、麺の膨化が不均一となり、乾燥ムラが発生しやすくなる傾向がある」ことが記載され、[0040](摘記3B-4)には、「熱風の温度及び風速が不十分であると、乾燥効率が低下し、麺塊を望ましい膨化状態に乾燥させることが困難になる傾向がある」ことが記載されているが、乾燥時の膨化状態は麺を湯戻しするときの「膨潤度」の観点とは異なるから、甲3B発明において「膨潤度」の範囲を特定する動機があるとはいえない。さらに、他の全ての証拠の記載を参酌しても、甲3B発明において「膨潤度」に着目し、「0.8倍以上1.4倍以下」に調整する動機があったとはいえない。よって、相違点甲3B-2に係る本件発明1の発明特定事項は、甲3B発明及び全ての証拠の記載に基づいても当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
ウ 申立人Bの主張について
申立人Bは、特許異議申立書の62~63頁において相違点甲3B-2について主張しているが、その内容は甲1B発明における上記2.(3)ウ(ア)及び(イ)の主張と実質的に同じである。そして、甲3B発明についても甲1B発明の場合と同様のことがいえるから、申立人Bの主張を採用することはできない。
エ 本件発明1についてのまとめ
以上のことから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲3B発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件発明2~8について
本件発明2~8は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものである。そうすると、上記(3)で検討した本件発明1と同様の理由により、本件発明2~8はいずれも甲3B発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)理由2B-2(甲3Bに基づく進歩性欠如)についてのまとめ
以上まとめると、本件発明1~8は、いずれも甲3Bに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。
よって、理由2B-2(甲3Bに基づく進歩性欠如)により本件発明1~8についての特許を取り消すことはできない。
4.理由2B-3(甲4Bに基づく進歩性欠如)について
(1)甲4Bに記載された事項
甲4Bには以下の事項が記載されている。
(4B-1)「特許請求の範囲
1 常法により製造した生麺線を約120~250℃の高温気流で約5~90秒間処理することを特徴とする高温気流乾燥麺の製造法。
2 特許請求の範囲第1項記載の製造法において予め、生麺線の水分含量を約8~25%に水分調整しておくこと。
3 特許請求の範囲第1項記載の製造法において、予め生麺線を蒸煮しておくこと。
4 特許請求の範囲第1項記載の製造法において予め、生麺線を蒸煮しかつ約8~25%に水分調整しておくこと。」(第1頁左欄13~24行 特許請求の範囲)
(4B-2)「本発明は、上述の特に特公昭48-5027号公報にかかる発明における問題点に鑑み、通常、数分~約20分間を要していた熱風乾燥処理時間を大幅に短縮し、かつ次の送風冷却による乾燥凝固工程を削除することを可能とし単に高温気流処理に付することによってほとんど瞬間的に脱水乾燥でき、しかも艶のある外観を呈し復元が容易でかつ喫食するに際して麺本来の「生の食感」を再現できる高温気流乾燥麺類の製造法を提供することを目的とする。
即ち、本発明の構成の骨子とするところを述べると常法により製造した麺線の水分に約120℃~250℃、約3~15m/秒の高温気流を約5秒~90秒接触させて均質多孔性の乾燥麺を製造することを特徴とする高温気流乾燥麺の製造法である。」(第2頁左欄13~28行)
(4B-3)「次に水分調整した生麺線あるいは蒸煮麺線を高温気流処理工程に付する。この気流処理工程においては、切り出し麺をただちに高温気流処理する場合気流温度が約120℃以下では数分間以上の比較的長時間を要し、処理麺の多孔質化も十分に進まず、麺表面の色沢もなく、復元性や食感も満足すべきものが得られない。また250℃以上になると麺表面がこげたり麺線の乾燥が不均一となつて好ましくない。したがつて、本発明において使用出来る高温気流温度は120~250℃であるが、生産性および品質からみれば140~180℃であることが望ましい。又、高温気流処理時間は5~90秒ぐらいの範囲であればよく、処理温度との相関関係から言えば、一般に温度が高い程、短時間でよく、温度が低い程長時を要するが、処理時間が5秒以下の短時間になると麺が均一に多孔質化せず、復元時間も長くなり、食感も悪化し、逆に処理時間が90秒以上の長時間になると、麺には光沢がなくなり、褐変し、焦げを生じ復元時間も長くなり、食感も歯切れがわるく、なめらかさに欠ける。またうどん、中華麺などの切出麺あるいはスパゲティ、マカロニなどの押出麺等麺の種類により麺線の形状や太さ密度が異るのでその麺に適した条件を設定する必要がある。
高温気流処理する麺線の形態は波形麺線体、鳥の巣状麺線体、直線状麺線体等のいづれでもよい。
上記のように短時間で高温気流処理された麺線は通常の乾燥麺に比し麺線の表面に光沢を生じ、かつ麺線内部は微細な均一多孔質体の組織となつている。特に蒸煮麺を高温気流処理した場合α化度及びグルテン変成の促進により麺線の外観は非常に艶々した様相を呈し麺線がより強靱になるとともにα化乾燥麺特有の粉臭さが全くなくなる。これは均一に水分調整された麺線が120℃~250℃に加熱された気流に急激に接触すると、麺線内部の水分が瞬間的に加熱され、外部へ放出される際に麺表面のでん粉が糊化し、ただちに麺線表面において乾燥されるためにオブラート状の非常に薄いつやのある皮膜を形成する。一方麺線内部にはグルテンの急激な変性をともなつた均一微細な多孔質体からなる麺線組織を形成するものと考えられる。このため調理した場合熱湯の麺線内部への浸透が非常にすみやかに行われるが、一定量以上の吸水と成分溶出が抑制され、湯のびがしにくく、しかも麺本来の活性化されたいわゆる「生の食感」が得られるものである。」(第2頁右欄4行~第3頁左欄5行)
(2)甲4Bに記載された発明
甲4Bの特許請求の範囲(摘記4B-1)には、「1 常法により製造した生麺線を約120~250℃の高温気流で約5~90秒間処理することを特徴とする高温気流乾燥麺の製造法。」及び「3 特許請求の範囲第1項記載の製造法において、予め生麺線を蒸煮しておくこと。」が記載されており、第2頁左欄23~28行(摘記4B-2)には、「常法により製造した麺線の水分に約120℃~250℃、約3~15m/秒の高温気流を約5秒~90秒接触させて均質多孔性の乾燥麺を製造する」ことが記載されている。
そうすると、甲4Bには、特許請求の範囲等の記載に基づいて以下の発明が記載されている。
「常法により製造した生麺線を、予め蒸煮し、約120℃~250℃、約3~15m/秒の高温気流を約5秒~90秒接触させて処理する工程を備える、乾燥麺の製造方法。」(以下、「甲4B発明」という。)
(3)本件発明1について
ア 本件発明1と甲4B発明との対比
本件発明1と甲4B発明とを対比すると、甲4B発明における「生麺線を、予め蒸煮し、」は、本件発明1における「α化工程、」に相当し、甲4B発明における「約120℃~250℃、約3~15m/秒の高温気流を約5秒~90秒接触させて処理する工程」は、本件発明1における「乾燥工程」に相当する。また、甲4B発明における「乾燥麺の製造方法」は、麺を揚げる工程を含まないから、本件発明1における「即席ノンフライ麺の製造方法」に相当する。
そうすると、両者は、
「α化工程、及び乾燥工程をこの順に行う即席ノンフライ麺の製造方法。」
の点で一致し、
相違点甲4B-1:本件発明1は「混合工程、製麺工程、」を含み、「前記混合工程は、原料粉を含む原材料を混合する工程であり、前記原料粉は、小麦粉及びでん粉を含み、かつ、前記混合工程が、減圧下において行われ、」と特定するのに対し、甲4B発明はそのように特定されない点
相違点甲4B-2:本件発明1は「前記乾燥工程は、130℃以上180℃以下の温度で、かつ、風速12m/秒以上120m/秒以下の熱風を用いて行われ、」と特定するのに対し、甲4B発明は「約120℃~250℃、約3~15m/秒の高温気流を約5秒~90秒接触させて」と特定する点
相違点甲4B-3:本件発明1は「前記乾燥工程後に得られたノンフライ麺の水分量が、4~14.5%であり、」と特定するのに対し、甲4B発明はそのように特定されない点
相違点甲4B-4:本件発明1は「前記乾燥工程後に得られたノンフライ麺の復元5分間における麺線の膨潤度は0.8倍以上1.4倍以下である、」と特定するのに対し、甲4B発明はそのように特定されない点
で相違する。
そこで、事案に鑑み、相違点甲4B-4について検討する。
イ 相違点甲4B-4について
甲4Bには、乾燥麺の「復元5分間における麺線の膨潤度」の測定値は記載されていない。また、甲4Bの第2頁右欄30行~第3頁左欄5行(摘記4B-3)には、「短時間で高温気流処理された麺線は通常の乾燥麺に比し麺線の表面に光沢を生じ、かつ麺線内部は微細な均一多孔質体の組織となつている」こと、「麺線内部の水分が瞬間的に加熱され、外部へ放出される際に麺表面のでん粉が糊化し、ただちに麺線表面において乾燥されるためにオブラート状の非常に薄いつやのある皮膜を形成する」こと、「一方麺線内部にはグルテンの急激な変性をともなつた均一微細な多孔質体からなる麺線組織を形成するものと考えられる」こと、及び「このため調理した場合熱湯の麺線内部への浸透が非常にすみやかに行われるが、一定量以上の吸水と成分溶出が抑制され、湯のびがしにくく、しかも麺本来の活性化されたいわゆる「生の食感」が得られるものである」ことが記載されているが、上記の「均一微細な多孔質体からなる麺線組織」等の記載から相違点甲3B-2に係る「膨潤度」の値を推測することはできない。さらに、上記「一定量以上の吸水と成分溶出が抑制され、湯のびがしにくく、」との記載も、復元前後の麺の断面積の比率(膨潤度)について記載したものとはいえないから、甲4B発明において「膨潤度」の範囲を特定する動機があるとはいえない。さらに、他の全ての証拠の記載を参酌しても、甲4B発明において「膨潤度」に着目し、「0.8倍以上1.4倍以下」に調整する動機があったとはいえない。よって、相違点甲4B-4に係る本件発明1の発明特定事項は、甲4B発明及び全ての証拠の記載に基づいても当業者が容易に想到し得たこととはいえない。
ウ 申立人Bの主張について
申立人Bは、特許異議申立書の73~74頁において相違点甲4B-4について主張しているが、その内容は甲1B発明における上記2.(3)ウ(ア)及び(イ)の主張と実質的に同じである。そして、甲4B発明についても甲1B発明の場合と同様のことがいえるから、申立人Bの主張を採用することはできない。
エ 本件発明1についてのまとめ
以上のことから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は甲4B発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(4)本件発明2~8について
本件発明2~8は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用し、本件発明1の発明特定事項を全て備えるものである。そうすると、上記(3)で検討した本件発明1と同様の理由により、本件発明2~8はいずれも甲4B発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)理由2B-3(甲4Bに基づく進歩性欠如)についてのまとめ
以上まとめると、本件発明1~8は、いずれも甲4Bに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではない。
よって、理由2B-3(甲4Bに基づく進歩性欠如)により本件発明1~8についての特許を取り消すことはできない。
5.理由3A及び理由5B(サポート要件違反)について
(1)サポート要件の判断手法
特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
(2)本件発明の課題について
本件明細書の[0007]等の記載からみて、本件発明1~7の課題は「大規模装置を用いず、連続生産が可能な方法により、乾燥後の麺の表面に光沢を有する即席ノンフライ麺を製造する方法」を提供することにあり、本件発明8の課題は「その製造方法によって得られた即席ノンフライ麺を提供すること」にあるものと認められる。
(3)本件明細書の記載事項
本件明細書の[0002]~[0005]には、先行技術に関し、特許文献1に記載の方法は「加湿処理及び再乾燥工程に時間がかかると共に、その作業を行うために広いスペースが必要となるという問題」があり、特許文献2に記載の方法は「麺線をオートクレーブで減圧しながら乾燥するため、即席麺のように大量の麺を連続で生産することは難しいという問題」があり、特許文献3に記載の方法は「乾燥機とは別に、遠赤外線を照射する設備が必要となり、製造工程が煩雑となるという問題」があったことが記載されているところ、[0028]には、本件発明が「温度が110℃以上、風速が12m/秒以上の熱風によって乾燥させる方法を用いることにより、大規模装置を用いず、連続生産が可能な方法により、乾燥後の麺の表面に光沢を有する即席ノンフライ麺を製造することが可能」となったものであることが記載されている。また、[0011]~[0024]、[0025]、[0026]、[0028]にはそれぞれ混合工程、製麺工程、α化工程及び乾燥工程について、原料の種類、配合割合、減圧度、α化条件、乾燥温度、風速及び膨潤度の好ましい例示を伴って記載されており、[0019]には、「原料粉がでん粉を前記の配合割合で含む場合には、麺生地の加水量が増え、α化の割合が高まることで生地の伸展性が増し、乾燥後の麺の表面に光沢が出やすくなる」こと、[0023]には「減圧下において行うことが好ましい」こと、[0026]には「α化工程において、麺線に含まれるでん粉がα化(糊化)する」こと、[0028]には「温度が110℃以上で、かつ、風速が12m/秒以上の熱風を用いて乾燥させることで、麺線を急速に脱水乾燥することができる。これにより、得られた麺線は発泡して膨化することから、麺線を復元した際の膨潤度が1.4倍以下と低くなり、麺線の表面の光沢が向上した即席ノンフライ麺を得ることができる」ことが記載されている。さらに、[0030]~[0033]には膨潤度の定義及び「本発明は、この膨潤度が1倍に近いほうがよい」ことが記載され、[0034]には光沢について「 本発明では、温度が110℃以上で、かつ、風速が12m/秒以上の熱風を用いて麺線を急速に脱水乾燥させることで、麺線の表面が引き延ばされながらα化されるとともに、急激に膨化した結果、光沢のある麺が得られる」こと、及び「上記のような高温熱風乾燥を行うことで、光沢のある麺が得られるが、高温熱風乾燥に加えて、上述した一連の工程及び実施条件が加わることでより強い光沢が得られると推察される。詳細なメカニズムについては明らかではないが、現時点では以下のように考えている。まず小麦粉を主原料とし、でん粉を含む生地を減圧下において多加水で混合することで、生地が強く結合した状態となる。その後麺線にしたのち、生地内のでん粉をα化することで生地に伸展性が生まれる。そこで高温熱風乾燥により急激に脱水することで、麺線の表面が引き延ばされながらα化されるとともに、急激に膨化する。その結果、光沢のある麺となる。」と記載されている。加えて、[0040]~[0063]には実施例が記載されており、[0062]の[表1]を参照すると、原料粉が小麦粉及びでん粉を含み、乾燥温度160℃又は120℃、熱風の風速18~22m/sの条件で乾燥された実施例1~5、7及び8は、「復元5分間における麺線の膨潤率」の評価が○(値が1.4以下)であり、「乾燥後のノンフライ麺塊における光沢度」の評価が◎(平均点が3.0以上、「4:全体的に強めの光沢があり、麺表面がなめらかで艶やかである」~「3:全体的に光沢があるか、その程度は、上記4に比べると弱い」)又は○(平均点が2を超えて3未満、「2:全体的に弱めの光沢である」)であったのに対し、原料粉が小麦粉及びでん粉を含み、乾燥温度90℃、熱風の風速18~22m/sの条件で乾燥された比較例1、及び原料粉が小麦粉及びでん粉を含み、乾燥温度160℃、熱風の風速10.7~11.2又は9.0~9.6m/sの条件で乾燥された比較例2及び3は、いずれも「復元5分間における麺線の膨潤率」の評価が×(値が1.4を超える)であり、「乾燥後のノンフライ麺塊における光沢度」の評価が×(平均点が2以下、「1:弱い光沢はあるが、局所的であり均一ではない」~「0:光沢無し」)であったことが記載されている。
(4)サポート要件についての判断
本件明細書の一般記載から、当業者は原料粉が小麦粉及びでん粉を含むことで、「麺線に含まれるでん粉がα化(糊化)する」こと([0026])、「温度が110℃以上で、かつ、風速が12m/秒以上の熱風を用いて乾燥させることで、麺線を急速に脱水乾燥することができる。これにより、得られた麺線は発泡して膨化することから、麺線を復元した際の膨潤度が1.4倍以下と低くなり、麺線の表面の光沢が向上した即席ノンフライ麺を得ることができる」こと([0028])、「温度が110℃以上で、かつ、風速が12m/秒以上の熱風を用いて麺線を急速に脱水乾燥させることで、麺線の表面が引き延ばされながらα化されるとともに、急激に膨化した結果、光沢のある麺が得られる」メカニズムは、「まず小麦粉を主原料とし、でん粉を含む生地を減圧下において多加水で混合することで、生地が強く結合した状態となる。その後麺線にしたのち、生地内のでん粉をα化することで生地に伸展性が生まれる。そこで高温熱風乾燥により急激に脱水することで、麺線の表面が引き延ばされながらα化されるとともに、急激に膨化する。その結果、光沢のある麺となる。」というものであること([0034])を理解することができる。また、熱風乾燥による方法を採用することで、先行技術文献に記載されている「広いスペース」、「オートクレーブ」、「遠赤外線を照射する設備」などの大規模装置を用いず、連続生産が可能となることを理解することができる。さらに、実施例及び比較例の評価結果を参照することにより、小麦粉及びでん粉を含む原料粉を用い、一般記載において好ましいとされている温度及び風速の熱風で乾燥を行うことにより、1.4以下の膨潤度を有し、光沢のある即席ノンフライ麺を製造することができることも確認できる。
そうすると、当業者は、
「混合工程、製麺工程、α化工程、及び乾燥工程をこの順に行う即席ノンフライ麺の製造方法であって、
前記混合工程は、原料粉を含む原材料を混合する工程であり、
前記原料粉は、小麦粉及びでん粉を含み、かつ、
前記乾燥工程は、130℃以上180℃以下の温度で、かつ、風速12m/秒以上120m/秒以下の熱風を用いて行われ、
前記乾燥工程後に得られたノンフライ麺の復元5分間における麺線の膨潤度は0.8倍以上1.4倍以下である、即席ノンフライ麺の製造方法。」
の範囲で本件発明の課題が解決されるものと理解することができる。そして、本件発明1は、上記課題を解決し得る発明の発明特定事項を全て含み、さらに限定するものであるから、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により、又は出願時の技術常識に照らして、当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
請求項1を直接又は間接的に引用する本件発明2~8も、本件発明1と同様の理由により、発明の詳細な説明に記載された発明であり、発明の詳細な説明の記載により、又は出願時の技術常識に照らして、当業者が本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。
(5)申立人A及びBの主張について
ア 申立人Aの主張について
申立人Aは特許異議申立書の46~47頁において上記第3 1.(3)のように主張している。
しかし、本件明細書の[0028]には、光沢のある麺が得られる機序について「温度が110℃以上で、かつ、風速が12m/秒以上の熱風を用いて乾燥させることで、麺線を急速に脱水乾燥することができる。これにより、得られた麺線は発泡して膨化することから、麺線を復元した際の膨潤度が1.4倍以下と低くなり、麺線の表面の光沢が向上した即席ノンフライ麺を得ることができる。」と記載されており、実施例の評価結果と、乾燥温度が低い比較例1の結果及び風速が小さい比較例2及び3の結果とを合わせて参酌することにより、当業者は乾燥温度160℃、風速18~22m/sを代表的な数値として含む、[0028]に記載された好ましい乾燥温度及び風速を用いることにより、発明の課題を解決し得ると認識することができる。
よって、申立人Aの主張を採用することはできない。
イ 申立人Bの主張について
申立人Bは特許異議申立書の81~82頁において上記第3 2.(7)ア及びイのように主張している。しかし、以下のとおり、申立人Bの主張はいずれも採用することができない。
(ア)乾燥工程後に得られたノンフライ麺の水分量について
当業者は、本件明細書の[0019]、[0028]及び[0034]等の記載に基づいて、原料粉がでん粉を含むこと、混合工程が減圧下で行われること及び特定の熱風乾燥条件を採用することによって、「麺線を復元した際の膨潤度が1.4倍以下と低くなり、麺線の表面の光沢が向上した即席ノンフライ麺を得ることができ」、発明の課題を解決することができると理解することができる。よって、水分量について明細書中に詳細な記載がないとしても、そのことによって本件発明1がサポート要件を具備しないとはいえない。本件発明2~8についても同様である。
(イ)麺線の太さと乾燥条件について
当業者は、本件明細書の[0019]、[0028]及び[0034]等の記載に基づいて、原料粉がでん粉を含むこと、混合工程が減圧下で行われること及び特定の熱風乾燥条件を採用することによって、「麺線を急速に脱水乾燥させることができる。これにより、得られた麺線は発泡して膨化することから、麺線を復元した際の膨潤度が1.4倍以下と低くなり、麺線の表面の光沢が向上した即席ノンフライ麺を得ることができ」、発明の課題を解決することができると理解することができる。そして、当該機序は、実施例に記載された厚み1.42mmの麺線と乾燥条件の組合せ以外においても、当該機序が成り立つ限りにおいて、発明の課題を解決できると認識することができるから、本件発明1がサポート要件を具備しないとはいえない。本件発明2~8についても同様である。
(6)理由3A及び理由5B(サポート要件違反)についてについてのまとめ
以上のことから、本件発明1~8は、いずれも発明の詳細な説明に記載したものであるといえるから、特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第1号に適合するものであり、それらの発明についての特許は同項に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものである。
よって、理由3A及び理由5B(サポート要件違反)により本件発明1~8についての特許を取り消すことはできない。
6.理由2A及び理由4B(実施可能要件違反)について
(1)実施可能要件の判断手法
物を生産する方法の発明における実施とは、その物を生産する方法の使用をする行為のほか、その方法により生産した物の使用等をする行為をいうから(特許法第2条第3項第3号)、例えば、明細書等にその物を生産する方法を使用することができること及びその方法により生産した物の使用等をすることができることの具体的な記載があるか、そのような記載がなくても、出願時の技術常識に基づいて当業者がその物を生産する方法を使用することができ、かつその方法により生産した物の使用等をすることができるのであれば、実施可能要件を満たすということができる。
また、物の発明における実施とは、物の生産、使用等の行為をいうから(特許法第2条第3項第1号)、物の発明について、実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、その物を生産し、かつ、その物を使用できる程度の記載があれば、実施可能要件を満たすということができる。
(2)本件明細書の記載について
本件明細書には、上記5.(3)に記載した事項が記載されている。
(3)実施可能要件についての判断
当業者は、本件明細書の[0015]~[0022]における原料の種類及び配合割合の好ましい範囲の記載、[0023]~[0025]における混合工程についての記載、[0026]~[0027]におけるα化工程についての記載、[0028]における乾燥温度、風速、乾燥時間等の乾燥条件の好ましい範囲及び「麺線を急速に脱水乾燥」し、「これにより、得られた麺線は発泡して膨化することから、・・・膨潤度が1.4倍以下と低くなり、麺線の表面の光沢が向上」するとの記載、[0034]における光沢のある麺が得られるメカニズムについての記載、並びに、原料、混合工程、α化工程、及び乾燥工程について具体的に開示されている実施例の記載を参照することにより、本件発明1の「混合工程、製麺工程、α化工程、及び乾燥工程をこの順に行う即席ノンフライ麺の製造方法であって、前記混合工程は、原料粉を含む原材料を混合する工程であり、前記原料粉は、小麦粉及びでん粉を含み、かつ、前記混合工程が、減圧下において行われ、前記乾燥工程は、130℃以上180℃以下の温度で、かつ、風速12m/秒以上120m/秒以下の熱風を用いて行われ、前記乾燥工程後に得られたノンフライ麺の水分量が、4~14.5%であり、前記乾燥工程後に得られたノンフライ麺の復元5分間における麺線の膨潤度は0.8倍以上1.4倍以下である、即席ノンフライ麺の製造方法。」を使用して、即席ノンフライ麺を製造することができ、また、製造されたものを、乾燥後の麺の表面に光沢を有する即席ノンフライ麺として飲食に使用することができることを理解することができる。
そうすると、本件明細書には本件発明1の発明特定事項に対応した説明の記載や実施例の記載があり、当業者が本件発明1の製造方法を使用することができ、かつ、その方法により生産した物を使用することができる程度に具体的な記載があるといえる。請求項1の記載を直接又は間接的に引用して特定する本件発明2~7についても同様の記載があるといえる。また、本件発明1~7の製造方法によって得られる本件発明8の即席ノンフライ麺も、その物を生産し、かつ、その物を使用できる程度に具体的な記載があるといえる。
(4)申立人A及びBの主張について
ア 申立人Aの主張について
申立人Aは特許異議申立書の49頁において上記第3 1.(2)のように主張している。
しかし、甲2Aの記載を参酌しても、風速が90m/sを超え120m/s以下の熱風を物理的に実現できなかったとはいえず、また、風速90m/sを超えたときに90m/s以下の場合の知見が全く役に立たなくなるものともいえないから、乾燥工程を実施する上で当業者に期待し得る程度を超える複雑高度な実験を必要とするとまではいえない。そして、当業者は、本件発明が熱風で乾燥させる方法を採用したことで、本件明細書の[0003]に記載された「加湿処理及び再乾燥」を行う先行技術の方法よりも作業スペースを要さず、[0004]に記載されたオートクレーブで減圧しながら加熱する先行技術の方法とは異なり連続での生産が可能になると理解することができるから、本件発明を「大規模装置を用いず、連続生産が可能」な即席ノンフライ麺の製法方法として使用することができると理解することができ、かつその方法により生産した物を即席ノンフライ麺として使用することができると理解することができる。
よって、申立人Aの主張を採用することはできない。
イ 申立人Bの主張について
申立人Bは特許異議申立書の79~81頁において上記第3 2.(6)のように主張している。
しかし、本件明細書の[0028]には、膨潤度が1.4倍以下と低くなり、麺線の光沢が向上する作用機序について、「温度が110℃以上で、かつ、風速が12m/秒以上の熱風を用いて乾燥させることで、麺線を急速に脱水乾燥することができる。これにより、得られた麺線は発泡して膨化する」ことから、所望の膨潤度及び光沢が得られることが記載されている。そして、当業者であれば、一般的な太さの麺線に対して、当該作用機序の記載及び実施例の記載等を参考にして、脱水乾燥速度等に着目して熱風の温度及び風速を調整することにより、本件発明1に特定される0.8倍以上1.4倍以下の膨潤度を有する即席ノンフライ麺を製造することができると理解することができる。よって、当業者は本件発明1の製法方法を使用することができ、かつその方法により生産した物を即席ノンフライ麺として使用することができると理解することができる。
よって、申立人Bの主張を採用することはできない。
(5)理由2A及び理由4B(実施可能要件違反)についてのまとめ
以上のことから、本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件発明1~8を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるといえるから、特許法第36条第4項第1号に適合するものであり、それらの発明についての特許は同号に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものである。
よって、理由2A及び理由4B(実施可能要件違反)により本件発明1~8についての特許を取り消すことはできない。
7.理由4A及び3B(明確性要件違反)について
(1)明確性要件の判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載のみならず、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、 特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
(2)本件発明4及び8について
まず、本件発明4は請求項1の記載を引用して記載されているところ、本件特許の特許請求の範囲の請求項1の記載は上記第2のとおりであり、請求項1の記載それ自体は明確といえる。また、本件明細書における技術用語の定義又は説明によって、請求項1の記載が不明確になることもない。
そして、請求項4の記載は上記第2のとおりであり、記載が明確な請求項1の記載を引用し、請求項1の発明特定事項を全て含み、さらに限定する発明であると理解できるから、請求項4の記載も明確であるといえる。よって、本件発明4については、特許請求の範囲の記載だけでなく、願書に添付した明細書の記載を考慮し、また、本件特許に係る出願の出願時における当業者の技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。請求項4を引用する場合の請求項8の記載についても、同様である。
(3)申立人A及びBの主張について
申立人Aは特許異議申立書の49頁において上記第3 1.(4)のように主張し、また、申立人Bは特許異議申立書の79頁において上記第3 2.(5)のように主張しており、いずれも、本件発明4がでん粉の配合割合が0質量%である場合、すなわち、でん粉を含まない場合を含んでいるため、本件発明1の範囲を超える範囲が記載されており、不明確である旨を主張している。
しかし、上記(2)に記載したとおり、当業者は請求項1の記載を引用して特定されている本件発明4は、請求項1の発明特定事項を全て含み、さらに限定する発明であると理解することができ、したがって、でん粉の配合割合が0質量%である場合は含まないものと理解することができるから、特許請求の範囲の記載だけでなく、願書に添付した明細書の記載を考慮し、また、本件特許に係る出願の出願時における当業者の技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
よって、申立人A及びBの主張を採用することはできない。
(4)理由4A及び3B(明確性要件違反)についてのまとめ
以上のことから、本件発明4及び8は、特許請求の範囲の記載が第三者に不測の不利益を及ぼすほど不明確であるとはいえないから、特許請求の範囲の記載は特許法第36条第6項第2号に適合するものであり、その発明についての特許は同項に規定する要件を満たしている特許出願に対してされたものである。
よって、理由4A及び3B(明確性要件違反)により本件発明4及び8についての特許を取り消すことはできない。
第5 むすび
以上のとおり、本件発明1~8についての特許は、上記のいずれの特許異議申立理由によっても取り消すことはできない。
また、他に、これらの特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700799