特許異議申立
2023-700038
即席油揚げ麺の製造方法
- 審判番号
- 2023-700038
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-009630
- 登録番号
- 7104864
- 請求日
- 2023年01月16日
- 審決日
- 2023年04月25日
- 公報発行日
- 2023年06月30日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】エースコック株式会社
- 【権利者代理人】福島 芳隆
- 【権利者代理人】幸 芳
- 【異議申立人】木村 嘉弘
- 審判長/審判官
- 審判長 平塚 政宏
- 審判官 磯貝 香苗
- 審判官 植前 充司
- 分類
- P1651.121-Y (A23L) / P1651.536-Y (A23L) / P1651.537-Y (A23L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第4項第1号、特許法第29条第2項、特許法第2条第3項第3号、特許法第2条第3項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
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特許第7104864号発明「即席油揚げ麺の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7104864号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7104864号(以下、「本件特許」という。)についての出願は、令和4年1月25日を出願日とする特許出願であって、同年7月12日にその特許権の設定登録(請求項の数7)がされ、同年同月21日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和5年1月16日に特許異議申立人 木村 嘉弘(以下、「特許異議申立人」という。)より特許異議の申立て(対象となる請求項:請求項1ないし7)がされたものである。
第2 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし7に係る発明(以下、これらの発明を順に「本件特許発明1」、「本件特許発明2」などという場合があり、また、これらをまとめて「本件特許発明」という場合がある。)は、願書に添付された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
混合工程、製麺工程、α化工程、水分付与工程、及びフライ乾燥工程をこの順に行う即席油揚げ麺の製造方法であって、
前記製麺工程が、前記混合工程で得られた麺生地を、減圧下において押し出して小塊又は板状とした後に麺線化する工程であり、
前記水分付与工程は、前記α化工程で得られた麺線に45~70℃の水を付与する工程であり、
前記水分付与工程で麺線に与える水分量が、前記製麺工程で得られた麺線100g当たり26.8~33mlであり、
前記水分付与工程後の麺線の水分値が48.4~51質量%であり、
前記即席油揚げ麺を湯戻し調理して1分後に、即席油揚げ麺の破断試験を、くさび型プランジャーを取り付けたレオメータを用いて、20~25℃において0.5mm/秒の測定速度で行ったときの最大微分値が0.5~0.9N/%であり、かつ、当該湯戻し1分後の最大微分値に対する湯戻し3分後の最大微分値の低下率が50%未満である、
即席油揚げ麺の製造方法。
【請求項2】
前記製麺工程により得られた麺線の水分値が33~37質量%である、請求項1に記載の即席油揚げ麺の製造方法。
【請求項3】
前記水分付与工程で付与される水の温度が50~60℃である、請求項1又は2に記載の即席油揚げ麺の製造方法。
【請求項4】
前記即席油揚げ麺の湯戻し1分後の最大微分値に対する湯戻し3分後の最大微分値の低下率が37.5%未満である、請求項1~3のいずれか一項に記載の即席油揚げ麺の製造方法。
【請求項5】
前記即席油揚げ麺の湯戻し1分後の最大微分値が0.64~0.71N/%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の即席油揚げ麺の製造方法。
【請求項6】
前記即席油揚げ麺の湯戻し1分後の破断歪率が、93~96%である、請求項1~5のいずれか一項に記載の即席油揚げ麺の製造方法。
【請求項7】
混合工程、製麺工程、α化工程、水分付与工程、及びフライ乾燥工程をこの順に行って得られた即席油揚げ麺であって、
前記製麺工程が、前記混合工程で得られた麺生地を、減圧下において押し出して小塊又は板状とした後に麺線化する工程であり、
前記水分付与工程は、前記α化工程で得られた麺線に45~70℃の水を付与する工程であり、
前記水分付与工程で麺線に与える水分量が、前記製麺工程で得られた麺線100g当たり26.8~33mlであり、
前記水分付与工程後の麺線の水分値が48.4~51質量%であり、
前記即席油揚げ麺を湯戻し調理して1分後に、即席油揚げ麺の破断試験を、くさび型プランジャーを取り付けたレオメータを用いて、20~25℃において0.5mm/秒の測定速度で行ったときの最大微分値が0.5~0.9N/%であり、かつ、当該湯戻し1分後の最大微分値に対する湯戻し3分後の最大微分値の低下率が50%未満である、
即席油揚げ麺。」
第3 特許異議申立理由の概要
特許異議申立人が申し立てた請求項1ないし7に係る特許に対する特許異議申立理由の要旨は、次のとおりである。
1 申立理由1(甲第1号証を主たる証拠とする進歩性)
本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
2 申立理由2(サポート要件)
本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
特許異議申立人は、検討にあたり、本件特許発明1ないし7の特定事項に次のように符号を付した上で論じている。(以下、他の申立理由についても同様である。)
「【請求項1】
[A]混合工程、製麺工程、α化工程、水分付与工程、及びフライ乾燥工程をこの順に行う即席油揚げ麺の製造方法であって、
[B]前記製麺工程が、前記混合工程で得られた麺生地を、減圧下において押し出して小塊又は板状とした後に麺線化する工程であり、
[C]前記水分付与工程は、前記α化工程で得られた麺線に45~70℃の水を付与する工程であり、
[D]前記水分付与工程で麺線に与える水分量が、前記製麺工程で得られた麺線100g当たり26.8~33mlであり、
[E]前記水分付与工程後の麺線の水分値が48.4~51質量%であり、
[F]前記即席油揚げ麺を湯戻し調理して1分後に、即席油揚げ麺の破断試験を、くさび型プランジャーを取り付けたレオメータを用いて、20~25℃において0.5mm/秒の測定速度で行ったときの最大微分値が0.5~0.9N/%であり、かつ、当該湯戻し1分後の最大微分値に対する湯戻し3分後の最大微分値の低下率が50%未満である、
[G]即席油揚げ麺の製造方法。
【請求項2】
[H]前記製麺工程により得られた麺線の水分値が33~37質量%である、請求項1に記載の即席油揚げ麺の製造方法。
【請求項3】
[I]前記水分付与工程で付与される水の温度が50~60℃である、請求項1又は2に記載の即席油揚げ麺の製造方法。
【請求項4】
[F1]前記即席油揚げ麺の湯戻し1分後の最大微分値に対する湯戻し3分後の最大微分値の低下率が37.5%未満である、請求項1~3のいずれか一項に記載の即席油揚げ麺の製造方法。
【請求項5】
[F2]前記即席油揚げ麺の湯戻し1分後の最大微分値が0.64~0.71N/%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の即席油揚げ麺の製造方法。
【請求項6】
[J]前記即席油揚げ麺の湯戻し1分後の破断歪率が、93~96%である、請求項1~5のいずれか一項に記載の即席油揚げ麺の製造方法。
【請求項7】
[K]混合工程、製麺工程、α化工程、水分付与工程、及びフライ乾燥工程をこの順に行って得られた即席油揚げ麺であって、
[L]前記製麺工程が、前記混合工程で得られた麺生地を、減圧下において押し出して小塊又は板状とした後に麺線化する工程であり、
[M]前記水分付与工程は、前記α化工程で得られた麺線に45~70℃の水を付与する工程であり、
[N]前記水分付与工程で麺線に与える水分量が、前記製麺工程で得られた麺線100g当たり26.8~33mlであり、
[O]前記水分付与工程後の麺線の水分値が48.4~51質量%であり、
[P]前記即席油揚げ麺を湯戻し調理して1分後に、即席油揚げ麺の破断試験を、くさび型プランジャーを取り付けたレオメータを用いて、20~25℃において0.5mm/秒の測定速度で行ったときの最大微分値が0.5~0.9N/%であり、かつ、当該湯戻し1分後の最大微分値に対する湯戻し3分後の最大微分値の低下率が50%未満である、
[Q]即席油揚げ麺。」
そして、申立理由2の具体的理由は次のとおりである。
本件特許発明1、4、5及び7では、「即席油揚げ麺の破断試験を、くさび型プランジャーを取り付けたレオメータを用いて、20~25℃において0.5mm/秒の測定速度で行ったときの最大微分値」及び「当該湯戻し1分後の最大微分値に対する湯戻し3分後の最大微分値の低下率」という、当業者において慣用されていない所謂「特殊パラメータ」により発明が特定されている。
しかしながら、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、構成A~E及び構成K~Oに規定される各工程以外に即席油揚げ麺の湯戻し後の最大微分値及びその低下率を、本件特許発明1、4、5及び7の構成F、F1、F2及びPで規定される範囲にするための方法は説明されておらず、更に、即席油揚げ麺における湯戻し調理後の最大微分値及びその低下率の値のみ特許特許発明1、4、5及び7の範囲から外れる比較例(従来例)も示されていないから、湯戻し1分後の最大微分値及びその低下率の範囲を特定することによって得られる作用効果の技術的意味も不明である。
このため、本件特許の出願時の技術常識に照らしても、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載からは、当該特殊パラメータを特定の範囲にすれば「余分な添加物を添加することなく、湯戻し後の経時的な湯伸びを効果的に防止することができる」という本件特許発明の課題を解決できることを当業者が理解できるとはいえない。
従って、本件特許発明1、4、5及び7の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえず、請求項1を引用する本件特許発明2、3及び6についても同様であるから、本件特許発明1ないし7は、発明の詳細な発明に記載した範囲を超えるものである。
3 申立理由3(明確性要件)
本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
なお、申立理由3の具体的理由はおおむね次のとおりである。
前述したように、本件特許発明1ないし7は「特殊パラメータ」を含む発明であり、請求項が達成すべき結果による物の特定を含むものであるが、本件特許の明細書には、構成A~E及び構成K~Oで規定されている各工程を経て製造される場合以外に、達成すべき結果が得られる(湯戻し1分後の最大微分値及びその低下率が構成F、F1、F2及びPで規定される値になる)具体的な手段が記載されておらず、また、同一又は類似の効果を有する公知の物との比較、類似の特性を有する公知の物や類似の製法により製造される公知の物との比較も示されていない。
従って、本件特許発明1ないし7は不明確である。
4 申立理由4(実施可能要件)
本件特許の請求項1ないし7に係る特許は、下記の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
なお、申立理由4の具体的理由はおおむね次のとおりである。
(1)本件特許発明1ないし7では、α化処理後の麺線に特定温度の水を付与する点及び水分付与後の麺線の水分値を特定の範囲にする点が特定されているが、本件特許の明細書の発明の詳細な説明に記載されている実施例及び比較例は、いずれも水付与工程後に更に水付与工程とほぼ同量のほぐし液を麺線に付与しており、水付与工程のみ行って即席揚げ麺を製造した例は記載されていない。
甲第1号証の段落0024に記載されているように、α化処理後の麺線にほぐし液などの水分を付与すると、麺線の水分醤が増加して得られるフライ麺の特性に影響することは本件特許の出願時の技術常識であるから、「本件特許発明1ないし7で特定されている麺線の水分値はほぐし液の付与も含むものなのか」及び「ほぐし液を付与する前の麺線の水分値が48.4~51質量%であれば、その後にほぐし液を付与して麺線の水分値が上昇しても効果に影響しないのか」について、当業者であっても理解できない。
(2)更に、本件特許発明1ないし7に含まれる「特殊パラメータ」について、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、如何にすれば「即席油揚げ麺を湯戻し調理して1分後に、即席油揚げ麺の破断試験を、くさび型プランジャーを取り付けたレオメータを用いて、20~25℃において0.5mm/秒の測定速度で行ったときの最大微分値が0.5~0.9N/%であり、かつ、当該湯戻し1分後の最大微分値に対する湯戻し3分後の最大微分値の低下率が50%末満」になるかについて何ら記載されていない。本件請求項4で規定される「即席油揚げ麺の湯戻し1分後の最大微分値に対する湯戻し3分後の最大微分値の低下率が37.5%未満」、本件請求項5で規定される「即席油揚げ麺の湯戻し1分後の最大微分値が0.64~0.71N/%」及び本件請求項6で規定される「即席油揚げ麺の湯戻し1分後の破断歪率が、93~96%」についても同様である。
従って、本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者が本件特許発明1ないし7の実施ができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない。
5 証拠方法
・甲第1号証:国際公開第2008/081931号
・甲第2号証:特開平9-294553号公報
・甲第3号証:特許第6970315号公報
・甲第4号証:国際公開第2010/055860号
・甲第5号証:特開2011-55789号公報
・甲第6号証:特開2012-60998号公報
・甲第7号証:特開2015-65963号公報
第4 当審の判断
以下のとおり、当審は、何れの特許異議申立理由も、その理由がないものと判断する。
1 申立理由1(甲第1号証を主たる証拠とする進歩性)
(1) 主な証拠の記載事項等
ア 甲第1号証の記載事項
甲第1号証には、「即席油揚げ麺類およびその製造方法」に関し、次の記載がある。
「[0001] 本発明は、即席油揚げ麺類およびその製造方法、特に油脂含量が低減された、かん水焼けの無い即席油揚げ麺類とその製造方法に関する。」
「[0005] 本発明は従来の方法とは異なる方法で油脂含量を低減させる油揚げ麺類の製造方法を提供する。本発明は、即席油揚げ麺類、特に即席油揚げ中華麺において、特段の装置等を必要とせず、ごく簡単な方法によって製品中の油脂含量が低減され、かん水焼けせず、かつ、食味食感の良い即席油揚げ麺を製造する方法を提供することを課題とする。」
「[0006] 本発明者らは、上記本発明の課題とは別に、「即席油揚げ中華麺におけるかん水による麺の褐変化(かん水焼け)に対する影響」を検討中に、偶然、本発明に至った。すなわち、即席油揚げ麺は150℃程度という高い温度で油揚げ処理するが、このように高い温度で加熱するために麺線pHをあまり高くすることができない。これは、麺線pHを強いアルカリ性にすると、油揚げ時の高温によってかん水焼けと呼ばれる現象が起きて、麺線が褐色に変色し(褐変)、不快な焦げ臭とえぐみを生じるためである。
[0007] そのため即席油揚げ麺においては、市販の商品の場合、焼けた色調やロースト臭を出すことを商品の特徴とするような一部の商品(長崎皿うどん等)を除いて、小麦粉等原料粉1kgに対して、かん水を2~4g(炭酸ナトリウムと炭酸カリウムの合計量としては1.5~2.5g)程度の添加に抑えているのが現状である。これに対して、いわゆるラーメン店の中華麺の場合には、通常、原料小麦粉1kg当りかん水を10g(この場合に用いるかん水は、そのほとんどが炭酸ナトリウムと炭酸カリウムからなる)程度混合し、麺線pHを10前後に調整している。この差異が、即席油揚げ中華麺において、中華麺らしい風味が得られない一因であると考えられる。
[0008] そこで、本発明者らは、麺原料に通常の即席油揚げ麺では用いられない過剰量のかん水を添加し、このような麺をそのまま油揚げしたのではかん水焼けしてしまうので、これを防止するために、さらに酸性物質を添加してpHを抑制する実験を行っていた。このように酸性物質を添加することによって、ある程度かん水焼けを防止できる効果があることが判明したが、同時に、かん水として、炭酸ナトリウム及び/又は炭酸カリウムを原料粉に対して合計で0.3重量%以上用いた場合において、意外にも製品中の油脂含量が低減されていた。さらに、このようにして製造した即席油揚げ麺は、従来の即席油揚げ麺よりもコシがあり、密度感の高い麺であった。本発明はこのような知見に基づいて完成されたものであり、以下のような製造方法によって製造される。
[0009] すなわち、本発明は、即席油揚げ麺類の製造方法であって、下記工程、すなわち、
A:麺原料粉と、炭酸ナトリウム及び/又は炭酸カリウムを麺原料粉100重量部に対して合計で0.3~0.6重量部と、食品に使用可能な酸性物質とを混練して、pHが7.5~8.5のドウを調製する工程、
B:前記ドウを押し出すか、又はドウを圧延した後に切出して生麺線を得る工程、
C:前記生麺線を蒸煮してα化処理する工程、
D:前記α化処理後の麺線に着味液又は水を吸着させる工程、および
E:前記着味液又は水を吸着させた麺線を130~160℃で油揚げする工程、
を含む即席油揚げ麺類の製造方法である。
[0010] 上記製造法によれば、即席油揚げ麺の麺線中の油脂含量が低減され、しかもかん水焼けを起こさないか又は、かん水焼けの程度を充分に抑えることができる。さらに上記製造法によれば、従来の即席油揚げ麺よりもコシがあり、密度感が高く、湯伸びも遅い麺となる。さらに、油脂含量が下がることにより、他の固形分の比率が高まり、麺塊密度が高まって輸送中の麺塊の壊れの低減も期待できる。また、即席カップ麺(カップ入り即席麺)の場合においては、従来品に比べて熱湯注加時に麺塊がスープ中に沈む傾向が見られ、麺及び添付具材(かやく)の復元性の向上にも資する。」
「[0014] 本発明の即席油揚げ麺類の製造方法によれば、麺原料の配合を変えるだけで、製品麺線中の油脂含量が低減され、かん水焼けせず、さらにコシがあって密度感が高く、即席カップ麺の場合においては、従来品に比べて麺塊がスープ中に沈んだ麺が製造できる。油脂含量の低減量は、従来品(炭酸ナトリウムを原料粉に対して0.15~0.2重量%添加して製造したもの)に比べて、実測値で油脂含量を約1割から2割程度低減できる。」
「[0015] 以下、本発明を製造工程に従って具体的に説明する。
・・・
[0024] このように麺線とした後、蒸し機を通して麺線をα化処理し、次いで着味液に浸漬又は着味液を麺線に噴霧する等によって、着味液を麺線に吸収させる着液処理を行う。この着液処理を行う理由は、麺に味付けを行うためだけでなく、麺線に柔軟性を付与してフライリテーナに充填可能な状態にするため、あるいは、麺線の水分含量を上げてフライによって形成される多孔質の麺線をより多孔質にして、喫食時に熱湯注加だけで充分に湯戻り可能とするため等の理由によるものである。従って、このような理由から、即席油揚げ麺がカップ入り即席麺の場合には、通常、当該着液処理を行う。着液処理を行う時の麺線に吸着させる着味液としては、一般に食塩だけ、又はこれに若干の調味料等を水に溶解させたものが多く使用されるが、その他の物質も添加可能であり、また前記着液処理において、麺に味付けする必要がない場合には、着液工程において水(温湯、熱湯を含む。以下同じ)だけを吸着させても良い。従って、本発明でいう着液処理には水への浸漬、水の麺線への噴霧等を含む。通常、蒸しによって麺線をα化した場合は、麺線の水分含量はあまり上がらず30~40%程度であるが、着液処理を行うことによって、着液処理後の水分含量は約40~60%となる。
[0025] このように、麺線に着味液又は水を吸着させた後、麺線一食分ずつを型枠に投入し、これを油揚げ処理する。油揚げ処理は高温すぎるとかん水焼けして麺が褐変し、麺線の荒れもひどくなり、一方低温では生揚げが生じ、特に麺塊中心部の乾燥が不十分になり、保存性を付与できない状態が生じる。従って、130~160℃、通常では140~150℃程度の比較的狭い温度範囲で油揚げ処理される。本発明者らの実験では、油揚げ処理によって起こるかん水焼けの程度については、温度が高い方が起こりやすいが、一方、油脂含量については、水分含量が適切な製品状態になるように油揚げ処理した場合には、フライ温度を下限の130℃まで下げた場合においてわずかに下がる程度で、当該範囲(130~160℃)では、フライ温度の違いによる油脂含量の違いはあまり見られなかった。」
「請求の範囲
[1] 即席油揚げ麺類の製造方法であって、下記工程、すなわち、
A:麺原料粉と、炭酸ナトリウム及び/又は炭酸カリウムを前記麺原料粉100重量部に対して合計で0.3~0.6重量部と、食品に使用可能な酸性物質とを混練して、pHが7.5~8.5のドウを調製する工程、
B:前記ドウを押し出すか、又はドウを圧延した後に切出して生麺線を得る工程、
C:前記生麺線を蒸煮してα化処理する工程、
D:前記α化処理後の麺線に着味液又は水を吸着させる工程、および
E:前記着味液又は水を吸着させた麺線を130~160℃で油揚げする工程、
を含む即席油揚げ麺類の製造方法。」
イ 甲第1号証に記載された発明
上記アの記載、特に、請求の範囲第1項の記載を中心に整理すると、甲第1号証には次の発明が記載されているものと認める。
「即席油揚げ麺類の製造方法であって、下記工程、すなわち、
A:麺原料粉と、炭酸ナトリウム及び/又は炭酸カリウムを前記麺原料粉100重量部に対して合計で0.3~0.6重量部と、食品に使用可能な酸性物質とを混練して、pHが7.5~8.5のドウを調製する工程、
B:前記ドウを押し出すか、又はドウを圧延した後に切出して生麺線を得る工程、
C:前記生麺線を蒸煮してα化処理する工程、
D:前記α化処理後の麺線に着味液又は水を吸着させる工程、および
E:前記着味液又は水を吸着させた麺線を130~160℃で油揚げする工程、
を含む即席油揚げ麺類の製造方法。」(以下、「甲1製法発明」という。)
「即席油揚げ麺類であって、下記工程、すなわち、
A:麺原料粉と、炭酸ナトリウム及び/又は炭酸カリウムを前記麺原料粉100重量部に対して合計で0.3~0.6重量部と、食品に使用可能な酸性物質とを混練して、pHが7.5~8.5のドウを調製する工程、
B:前記ドウを押し出すか、又はドウを圧延した後に切出して生麺線を得る工程、
C:前記生麺線を蒸煮してα化処理する工程、
D:前記α化処理後の麺線に着味液又は水を吸着させる工程、および
E:前記着味液又は水を吸着させた麺線を130~160℃で油揚げする工程、
を含む製造方法により製造された即席油揚げ麺類。」(以下、「甲1揚げ麺類発明」という。)
なお、製麺工程においてどのような機器を用いるか、着液工程においてどのような性状の液体を用いるか、着液工程後の麺線の水分量がどの程度かについては、甲第1号証の明細書の発明の詳細な説明([0023]、[0024]など)に選択的に例示が記載されているにとどまるものであるから、甲第1号証の記載から、特許異議申立人が特許異議申立書の第17頁において主張するような「甲1発明1」及び「甲1発明2」を認定することはできない。
(2) 対比・判断
ア 本件特許発明1について
本件特許発明1と甲1製法発明とを対比する。
甲1製法発明の「麺原料粉と、炭酸ナトリウム及び/又は炭酸カリウムを前記麺原料粉100重量部に対して合計で0.3~0.6重量部と、食品に使用可能な酸性物質とを混練して、pHが7.5~8.5のドウを調製する工程」、「前記ドウを押し出すか、又はドウを圧延した後に切出して生麺線を得る工程」、「前記生麺線を蒸煮してα化処理する工程」、「前記α化処理後の麺線に着味液又は水を吸着させる工程」、及び「前記着味液又は水を吸着させた麺線を130~160℃で油揚げする工程」はそれぞれ、本件特許発明1の「混合工程」、「製麺工程」、「α化工程」、「水分付与工程」、及び「フライ乾燥工程」に相当する。
そして、甲1製法発明は、上記の各工程をその記載順のとおりに行うものであるから、甲1製法発明の即席油揚げ麺類の製造方法は、本件特許発明1の「混合工程、製麺工程、α化工程、水分付与工程、及びフライ乾燥工程をこの順に行う即席油揚げ麺の製造方法」との特定事項を満たすものであることは明らかである。
してみると、両者は、
「混合工程、製麺工程、α化工程、水分付与工程、及びフライ乾燥工程をこの順に行う即席油揚げ麺の製造方法。」で一致し、次の点で相違する。
・相違点1-1
製麺工程について、本件特許発明1は「前記混合工程で得られた麺生地を、減圧下において押し出して小塊又は板状とした後に麺線化する工程」と特定するのに対し、甲1製法発明にはそのような特定がない点。
・相違点1-2
水分付与工程における水の温度について、本件特許発明1は「45~70℃」と特定するのに対して、甲1製法発明にはそのような特定がない点。
・相違点1-3
水分付与工程に関して、本件特許発明1は「前記水分付与工程で麺線に与える水分量が、前記製麺工程で得られた麺線100g当たり26.8~33mlであり、前記水分付与工程後の麺線の水分値が48.4~51質量%」と特定されるのに対して、甲1製法発明にはそのような特定がない点。
・相違点1-4
即席油揚げ麺について、本件特許発明1は「前記即席油揚げ麺を湯戻し調理して1分後に、即席油揚げ麺の破断試験を、くさび型プランジャーを取り付けたレオメータを用いて、20~25℃において0.5mm/秒の測定速度で行ったときの最大微分値が0.5~0.9N/%であり、かつ、当該湯戻し1分後の最大微分値に対する湯戻し3分後の最大微分値の低下率が50%未満である」と特定されるのに対して、甲1製法発明にはそのような特定がない点。
事案に鑑み、相違点1-3について検討する。
甲第1号証及び他の全ての証拠の記載をみても、甲1製法発明において、製麺工程で得られた麺線に対して「麺線100g当たり26.8~33ml」で水分を付与し、「水分付与工程後の麺線の水分値が48.4~51質量%」とすることについて、何ら記載も示唆もされていない。
そして、本件特許発明1は、相違点1-3に係る本件特許発明1の特定事項を満たすことにより、余分な添加物を添加することなく、湯戻し後の経時的な湯伸びを効果的に防止することができる即席油揚げ麺の製造方法を提供するとの、格別の効果を奏するものである。
したがって、甲1製法発明において、相違点1-3に係る本件特許発明1の特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たものではない。
この点について、特許異議申立人は甲第2号証や甲第4号証における着液処理の量や、甲第1号証の[0024]の記載を根拠に、甲1製法発明において相違点1-3に係る本件特許発明1の特定事項を満たすものとすることは容易である旨主張する(特許異議申立書第24頁ないし第26頁)。
しかしながら、甲第2号証や甲第4号証の着液処理における水分量は、その実施例があるというにとどまるものであって、着液処理がもたらす効果は明らかではないし、また、甲第1号証の[0024]の「着液処理を行うことによって、着液処理後の水分含量は約40~60%となる」との記載についても、そのことがもたらす効果は明らかではない。
そして、これらの記載があるとしても、上記検討のとおり、甲1製法発明において、相違点1-3に係る本件特許発明1の特定事項を満たすものに調整する動機付けがあるとはいえないし、ましてや、当該特定事項がもたらす効果について、当業者が予測できるものであるともいえないから、特許異議申立人の当該主張は採用できない。
よって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲1製法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件特許発明2ないし6について
本件特許発明2ないし6は、本件特許発明1の全ての特定事項を有するものである。
そして、本件特許発明1は、上記アの検討のとおり、甲1製法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明2ないし6も、甲1製法発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件特許発明7について
本件特許発明7と甲1揚げ麺類発明とを対比すると、上記アと同様の相当関係がとれるから、両者は、
「混合工程、製麺工程、α化工程、水分付与工程、及びフライ乾燥工程をこの順に行って得られた即席油揚げ麺。」
で一致し、次の点で相違する。
・相違点7-1
製麺工程について、本件特許発明7は「前記混合工程で得られた麺生地を、減圧下において押し出して小塊又は板状とした後に麺線化する工程」と特定するのに対し、甲1揚げ麺類発明にはそのような特定がない点。
・相違点7-2
水分付与工程における水の温度について、本件特許発明7は「45~70℃」と特定するのに対して、甲1揚げ麺類発明にはそのような特定がない点。
・相違点7-3
水分付与工程に関して、本件特許発明7は「前記水分付与工程で麺線に与える水分量が、前記製麺工程で得られた麺線100g当たり26.8~33mlであり、前記水分付与工程後の麺線の水分値が48.4~51質量%」と特定されるのに対して、甲1揚げ麺類発明にはそのような特定がない点。
・相違点7-4
即席油揚げ麺について、本件特許発明7は「前記即席油揚げ麺を湯戻し調理して1分後に、即席油揚げ麺の破断試験を、くさび型プランジャーを取り付けたレオメータを用いて、20~25℃において0.5mm/秒の測定速度で行ったときの最大微分値が0.5~0.9N/%であり、かつ、当該湯戻し1分後の最大微分値に対する湯戻し3分後の最大微分値の低下率が50%未満である」と特定されるのに対して、甲1揚げ麺類発明にはそのような特定がない点。
事案に鑑み、相違点7-3について検討するに、相違点7-3は相違点1-3と同旨であり、上記アと同様に判断される。
したがって、他の相違点については検討するまでもなく、本件特許発明7は、甲1揚げ麺類発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(3) 申立理由1についてのまとめ
上記(2)のとおりであるから、申立理由1は、その理由がない。
2 申立理由2(サポート要件)について
(1) サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
(2) サポート要件についての判断
本件特許発明の課題(以下、「発明の課題」という。)は、「余分な添加物を添加することなく、湯戻し後の経時的な湯伸びを効果的に防止することができる即席油揚げ麺の製造方法を提供すること」(【0006】)である。
そして、本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、「本発明者らが、湯戻し後の経時的な湯伸びを効果的に防止することができる即席油揚げ麺の製造方法を開発すべく鋭意検討した結果、製麺工程において麺生地を減圧下において押し出しして麺線化し、α化工程とフライ乾燥工程との間に特定の条件で麺線に水を付与することによって、上記目的が達成できることを見出した」(【0007】)こと、「本発明の製造方法によれば、余分な添加物を添加することなく、湯戻し後の湯伸び防止効果が高い即席油揚げ麺を製造することができる」(【0010】)こと、「本発明の即席油揚げ麺の製造方法は、混合工程、製麺工程、α化工程、水分付与工程、及びフライ乾燥工程を含む」(【0013】)こと、「即席麺を製造する常法に従って、前記即席麺の原料と水とを混合する(混練する)ことによって麺生地を製造する」(【0015】)こと、「本発明において、即席油揚げ麺の原料は、特に限定されない」(【0016】)こと、「得られた麺生地を、減圧下において押し出して小塊又は板状とした後に麺線化する。麺生地を減圧下で押し出すことで、麺生地に含まれる空気を抜くことができる」(【0020】)こと、「α化工程において、麺線に含まれるデンプンがα化(糊化)する。麺線をα化させる方法として、蒸気を使った蒸し処理を行う」(【0021】)こと、「水分付与工程において、前記α化工程によって得られたα化させた麺線に水分を付与する。該水分付与工程は、前記α化工程の後、かつ、後述するフライ乾燥工程の前に行われる」(【0022】)こと、水分付与工程における「水又は水溶液の温度は、40℃以上70℃以下」(【0022】)であり、「水分付与工程で麺線に付与される水分量(麺線への水分付与量、水の添加量)は、フライ乾燥工程前の麺線の水分量が48質量%~51質量%になるように調節すればよい。具体的には、前記水分付与工程後の麺線の水分値(麺線への水分付与量、水の添加量)は、前記製麺工程で得られた麺線100g当たり26ml~33ml程」(【0022】)であることが記載されるとともに、「上述した製造方法で得られた即席油揚げ麺は、湯戻し1分後の微分最大値が0.5~0.9N/%であり、かつ、微分最大値低下率、すなわち、当該湯戻し1分後の微分最大値に対する湯戻し3分後の微分最大値の低下率が50%未満であ」り、「本発明の製造方法によれば、余分な添加物を添加することなく、湯戻し後の経時的な湯伸びを効果的に防止することができる即席油揚げ麺を得ることができる」(【0031】)こと、が記載され、これらのことを裏付ける具体的な実施例の記載もある。
してみると、当業者であれば、「混合工程、製麺工程、α化工程、水分付与工程、及びフライ乾燥工程を含む」即席油揚げ麺の製造方法によるものであって、水分付与工程における「水又は水溶液の温度は、40℃以上70℃以下」であり、水分付与工程後の麺線の水分値(麺線への水分付与量、水の添加量)が、「製麺工程で得られた麺線100g当たり26ml~33ml程」であって、水分付与工程で麺線に付与される水分量(麺線への水分付与量、水の添加量)を、「フライ乾燥工程前の麺線の水分量が48質量%~51質量%になるように調節」する、との事項を満たすことにより、発明の課題を解決できるものと認識できる。
そして、本件特許発明1ないし7はいずれも、上記の発明の課題を解決できると認識できる特定事項を全て有し、さらに限定するものであるから、当然、発明の課題を解決できると認識できる。
よって、本件特許発明1ないし7はいずれも、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合する。
(3) 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、「本件特許の出願時の技術常識に照らしても、本件特許の明細書の発明の詳細な説明の記載からは、当該特殊パラメータを特定の範囲にすれば「余分な添加物を添加することなく、湯戻し後の経時的な湯伸びを効果的に防止することができる」という本件特許発明の課題を解決できることを当業者が理解できるとはいえない」旨主張する。
しかしながら、上記(2)における検討のとおり、本件特許発明は、「混合工程、製麺工程、α化工程、水分付与工程、及びフライ乾燥工程を含む」即席油揚げ麺の製造方法によるものであって、水分付与工程における水又は水溶液の温度、水分付与工程後の麺線の水分値及び水分付与工程で麺線に付与される水分量(麺線への水分付与量、水の添加量)の各特定事項を満たすことにより、湯戻し調理後の最大微分値及びその低下率に関する条件を満たす即席油揚げ麺が得られる、すなわち、発明の課題を解決できるものであるといえるから、湯戻し調理後の最大微分値及びその低下率に関する事項のみを抽出して主張する特許異議申立人の上記主張は採用できない。
(4) 申立理由2についてのまとめ
上記(2)及び(3)のとおりであるから、申立理由2は、その理由がない。
3 申立理由3(明確性要件)について
(1) 明確性要件の判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
(2) 明確性要件についての判断
本件特許の請求項1には、
「混合工程、製麺工程、α化工程、水分付与工程、及びフライ乾燥工程をこの順に行う即席油揚げ麺の製造方法であって、
前記製麺工程が、前記混合工程で得られた麺生地を、減圧下において押し出して小塊又は板状とした後に麺線化する工程であり、
前記水分付与工程は、前記α化工程で得られた麺線に45~70℃の水を付与する工程であり、
前記水分付与工程で麺線に与える水分量が、前記製麺工程で得られた麺線100g当たり26.8~33mlであり、
前記水分付与工程後の麺線の水分値が48.4~51質量%であり、
前記即席油揚げ麺を湯戻し調理して1分後に、即席油揚げ麺の破断試験を、くさび型プランジャーを取り付けたレオメータを用いて、20~25℃において0.5mm/秒の測定速度で行ったときの最大微分値が0.5~0.9N/%であり、かつ、当該湯戻し1分後の最大微分値に対する湯戻し3分後の最大微分値の低下率が50%未満である、
即席油揚げ麺の製造方法。」
と記載されており、当該記載からは、「混合工程、製麺工程、α化工程、水分付与工程、及びフライ乾燥工程をこの順に行う即席油揚げ麺の製造方法」であって、製麺工程、水分付与工程における事項が特定された上で、得られた即席油揚げ麺の性状も記載されており、各特定事項について明確に理解できる。
よって、本件特許発明1に関する請求項1の記載は明確であって、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
本件特許発明2ないし7に関する請求項2ないし7の記載について検討しても、その記載は明確であって、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
したがって、本件特許発明1ないし7に関する請求項1ないし7の記載は、特許法第36条第6項第2号の規定に適合する。
(3) 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、上記「第3 3」のように主張するが、上記(2)の判断には影響しない。
なお、具体的な手段の記載については、上記2(2)において検討したとおり、記載があるものといえるので、この点からも、上記特許異議申立人の主張は採用しない。
(4) 申立理由3についてのまとめ
上記(2)及び(3)のとおりであるから、申立理由3は、その理由がない。
4 申立理由4(実施可能要件)について
(1) 実施可能要件の判断基準
本件特許発明1ないし6は、上記第2のとおり、「物を生産する方法」の発明であるところ、物を生産する方法の発明における実施とは、そのものを生産する方法の使用をする行為のほか、その方法により生産した物の使用等をする行為をいうから(特許法第2条第3項第3号)、例えば、明細書等にその物を生産する方法を使用することができることの具体的な記載があるか、そのような記載がなくても、出願時の技術常識に基づいて当業者がその物を生産する方法を使用することができるのであれば、実施可能要件を満たすということができる。
また、本件特許発明7は、上記第2のとおり、「物」の発明であるところ、物の発明における実施とは、その物の生産、使用等をする行為をいうから(特許法第2条第3項第1号)、例えば、明細書等にその物を生産することができる具体的な記載があるか、そのような記載がなくても、出願時の技術常識に基づいて当業者がその物を生産することができるのであれば、実施可能要件を満たすということができる。
(2) 実施可能要件についての判断
本件特許の明細書の発明の詳細な説明には、「本発明者らが、湯戻し後の経時的な湯伸びを効果的に防止することができる即席油揚げ麺の製造方法を開発すべく鋭意検討した結果、製麺工程において麺生地を減圧下において押し出しして麺線化し、α化工程とフライ乾燥工程との間に特定の条件で麺線に水を付与することによって、上記目的が達成できることを見出した」(【0007】)ことが記載され、混合工程(【0015】)、原料(【0016】ないし【0019】)、製麺工程(【0020】)、α化工程(【0021】)、水分付与工程(【0022】ないし【0024】)、フライ乾燥工程(【0025】)、破断試験(【0027】ないし【0032】)の記載があり、さらに、具体的な実施例の記載もある。
これらの記載によれば、本件特許発明1ないし7に関し、明細書の発明の詳細な説明には過度の試行錯誤を要することなく当業者が実施できる程度に記載されているものといえる。
よって、本件特許発明1ないし7に関する明細書の発明の詳細な説明に記載は、特許法第36条第4項第1号の規定に適合する。
(3) 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、概ね、ほぐし液による水分付与と効果の関係、破断試験に関する特定事項をどのようにすれば導くことができるのかの点をあげつつ、本件特許発明1ないし7は実施可能要件を満たしていない旨主張するが、実施可能要件については、上記(1)の判断基準にしたがって判断されるものであって、特許異議申立人の主張は何れも上記(2)の判断に影響しない。
(4) 申立理由4についてのまとめ
上記(2)及び(3)のとおりであるから、申立理由4は、その理由がない。
第5 結語
以上のとおりであるから、特許異議申立人が提出した特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1ないし7に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700038