特許異議申立
2022-700448
即席油揚げ麺の製造方法
- 審判番号
- 2022-700448
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-065636
- 登録番号
- 6970316
- 請求日
- 2022年05月24日
- 審決日
- 2022年08月29日
- 公報発行日
- 2022年10月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】エースコック株式会社
- 【権利者代理人】福島 芳隆
- 【権利者代理人】幸 芳
- 【異議申立人】木村 嘉弘
- 審判長/審判官
- 審判長 ▲吉▼澤 英一
- 審判官 平塚 政宏
- 審判官 植前 充司
- 分類
- P1651.121-Y (A23L) / P1651.4 -Y (A23L) / P1651.537-Y (A23L) / P1651.536-Y (A23L)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第39条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第6970316号発明「即席油揚げ麺の製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第6970316号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6970316号(以下「本件特許」という。)の請求項1~7に係る特許についての出願は、令和 3年(2021年) 4月 8日に出願され、同年11月 1日にその特許権の設定の登録がされ、同年 同月24日に特許掲載公報が発行された。
その後、令和 4年 5月24日に,特許異議申立人 木村 嘉弘(以下「申立人」という。)により、本件特許の請求項1~7に係る特許に対して特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件発明
本件特許の請求項1~7に係る発明は、その特許請求の範囲に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
混合工程、製麺工程、α化工程、及びフライ乾燥工程を含む、即席油揚げ麺の製造方法であって、
前記混合工程が、小麦粉、前記小麦粉100質量部に対して0.22~0.68質量部のアルカリ剤、及び水を含む原料を、混合又は混練して麺生地を調製する工程であり、
前記製麺工程が、前記混合工程で得られた麺生地を、減圧下において押し出して小塊又は板状とした後に麺線化する工程であり、
かつ前記α化工程が、
(1)前記製麺工程後α化工程を行う前に、前記製麺工程で得られた麺線に水分を付与し、水分が付与された麺線を該α化工程中に蒸し処理して麺線を糊化させる工程、
(2)該α化工程中に、前記製麺工程で得られた麺線に水分を付与しつつ、麺線を蒸し処理して麺線を糊化させる工程、又は
(3)前記製麺工程後α化工程を行う前に、前記製麺工程で得られた麺線に水分を付与し、さらに、該α化工程中にも、水分を付与した麺線にさらに水分を付与しつつ、麺線を蒸し処理して麺線を糊化させる工程、のいずれかであり、
前記蒸し処理は、ボイラーで発生させた蒸気を減圧して蒸機内に噴射し、その蒸機の中を、麺線を通過させることによって行われ、
かつ、
前記即席油揚げ麺の密度が、1.005~1.041g/cm3である、
即席油揚げ麺の製造方法。
【請求項2】
前記α化工程が、(1)前記製麺工程後α化工程を行う前に、前記製麺工程で得られた麺線に水分を付与し、水分が付与された麺線を該α工程中に蒸し処理して麺線を糊化させる工程である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記α化工程が、(2)該α化工程中に、前記製麺工程で得られた麺線に水分を付与しつつ、麺線を蒸し処理して麺線を糊化させる工程である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記α化工程が、(3)前記製麺工程後α化工程を行う前に、前記製麺工程で得られた麺線に水分を付与し、さらに、該α化工程中にも、水分を付与した麺線にさらに水分を付与しつつ、麺線を蒸し処理して麺線を糊化させる工程である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項5】
前記α化工程後の麺の水分量が38%~48%の範囲である、請求項1~4の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記α化工程において、麺線への水分付与量は、前記製麺工程で得られた麺線100g当たり11ml~29mlである、請求項1~5の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
請求項1~6の何れか一項に記載の即席油揚げ麺の製造方法によって得られた即席油揚げ麺。」
第3 特許異議の申立ての理由の概要
申立人は、本件特許に対する異議理由として下記1~4を主張し、証拠方法として下記5の甲第1~13号証を提示した。
1 進歩性
本件特許の請求項1~7に係る発明は、甲第1~3号証に記載された発明及び甲第4~12号証に記載された事項に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件特許の請求項1~7に係る特許は、同法第113条第2号に該当する。
2 先願
本件特許の請求項1~4、6、7に係る発明は、甲第13号証の請求項1~6に記載された発明と同一であって、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができないから、本件特許の請求項1~4、6、7に係る特許は、同法第113条第2号に該当する。
3 サポート要件
本件特許の請求項1~7に係る発明について、特許請求の範囲の記載は、「即席油揚げ麺の密度が、1.005~1.041g/cm3である、即席油揚げ麺」を得るための手段が反映されておらず、発明が解決しようとする課題を解決するための手段が反映されていないため、発明の詳細に記載した範囲を超えるものであるから、本件特許の請求項1~7に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当する。
4 実施可能要件
本件特許の請求項1~7に係る発明について、発明の詳細な説明の記載は、上記各請求項で特定される工程以外に「即席油揚げ麺の密度が、1.005~1.041g/cm3である、即席油揚げ麺」を得るための条件や工程が記載されておらず、当業者に期待しうる程度を超える試行錯誤や複雑高度な実験等を行う必要があるため、上記各請求項に係る発明を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないから、本件特許の請求項1~7に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当する。
5 証拠方法
甲第1号証 特開2019-40号公報(以下「甲1」という。)
甲第2号証 特開平9-294553号公報(以下「甲2」という。)
甲第3号証 特開2017-158440号公報(以下「甲3」という。)
甲第4号証 特開2018-38270号公報(以下「甲4」という。)
甲第5号証 特開平11-276105号公報(以下「甲5」という。)
甲第6号証 特開2003-174853号公報(以下「甲6」という。)
甲第7号証 特開2011-130687号公報(以下「甲7」という。)
甲第8号証 特公昭57-8702号公報(以下「甲8」という。)
甲第9号証 特開2020-151377号公報(以下「甲9」という。)
甲第10号証 特公昭56-28504号公報(以下「甲10」という。)
甲第11号証 特公平6-57115号公報(以下「甲11」という。)
甲第12号証 実願昭60-34931号(実開昭61-151617号)のマイクロフィルム(以下「甲12」という。)
甲第13号証 特許第6970315号公報(以下「甲13」という。)
第4 当審の判断
当審は、上記第3の異議理由によっては、本件特許の請求項1~7に係る特許を取り消すことはできないと判断する。
1 進歩性について
(1)甲1に基づく進歩性についての検討
ア 甲1に記載された発明
甲1の記載(特に、段落【0027】[実施例1]の記載)よりみて、甲1には、次の発明が記載されていると認められる。
「小麦粉25000gと、加工デンプン(松谷化学工業株式会社製松谷さくら)14000gと、α化デンプン(松谷化学工業株式会社製パインソフトS)425gと、タンパク質(グリコ栄養食品株式会社製A-グルCC)1500gと、粉末油脂(理研ビタミン株式会社製スプレーファットPM)2100gと、食塩800gと、かんすい(オリエンタル酵母工業株式会社製粉末かんすい赤)120gと、タンパク加水分解物(味の素株式会社製A-1000)360gと、クチナシ色素(理研ビタミン株式会社製リケカラーYGL-81)15gと、酸化防止剤(理研ビタミン株式会社製理研E乳剤-20AR)15gと、水18800gとを14分間混ぜ、これらが混ざることにより生地が製造され、
生地が製造されると、押し出し成型機を用いて、その生地にその押し出し成型機の周りの大気圧よりも気圧が0.097MPa低い環境下で直径8mmの孔があいたダイスを通させ、これにより生地は断面円形の生地となり、
その生地を間欠的に切断し、これにより生地の小さな塊が形成され、
生地の小さな塊が形成されると、その生地を厚さ1.04mmとなるよう延ばし、延ばされた生地が麺帯であり、その麺帯を#18番丸の切刃で切ることにより麺を製造し、麺の厚さは1.30mm、麺の幅は1.67mmであり、
麺が製造されると、その麺をいったん摂氏100度の蒸気で2分30秒間蒸し、
蒸した麺150gをまず摂氏135度の油で30秒間揚げ、次いでその麺を摂氏155度の油で2分20秒間揚げる、
即席油揚げ麺の製造方法。」(以下「甲1発明」という。)
イ 請求項1に係る発明について
(ア)甲1発明の「小麦粉25000g」と「かんすい(オリエンタル酵母工業株式会社製粉末かんすい赤)120g」と「水18800g」を含む混合物が「混ざることにより生地が製造され」る工程は、かんすいはアルカリ剤に包含され(本件特許明細書の段落【0022】)、また、小麦粉に対するかんすいが120/25000×100=0.48重量部であることを勘案すると、請求項1に係る発明の「小麦粉」、前記小麦粉100質量部に対して0.22~0.68質量部の「アルカリ剤」、及び「水」を含む原料を、「混合又は混練して麺生地を調製する工程」に相当する。
(イ)甲1発明の「押し出し成型機を用いて、その生地にその押し出し成型機の周りの大気圧よりも気圧が0.097MPa低い環境下で直径8mmの孔があいたダイスを通させ」、「その生地を間欠的に切断し、これにより生地の小さな塊が形成され」、「その生地を厚さ1.04mmとなるよう延ばし、延ばされた生地が麺帯であり、その麺帯を#18番丸の切刃で切ることにより麺を製造」する工程は、請求項1に係る発明の「混合工程で得られた麺生地を、減圧下において押し出して」「小塊又は板状とした」「後に麺線化する工程」に相当する。
(ウ)甲1発明の「麺が製造されると、その麺をいったん摂氏100度の蒸気で2分30秒間蒸」す工程が、麺線を蒸し処理して麺線を糊化させる工程であることは明らかであって、請求項1に係る発明の「α化工程」に相当する。
(エ)甲1発明の「蒸した麺150gをまず摂氏135度の油で30秒間揚げ、次いでその麺を摂氏155度の油で2分20秒間揚げる、」工程は、請求項1に係る発明の「フライ乾燥工程」に相当する。
(オ)よって、請求項1に係る発明と、甲1発明とは,
「即席油揚げ麺の製造方法であって、
混合工程、製麺工程、α化工程、及びフライ乾燥工程を含み、
前記混合工程が、小麦粉、前記小麦粉100質量部に対して0.22~0.68質量部のアルカリ剤、及び水を含む原料を、混合又は混練して麺生地を調製する工程であり、
前記製麺工程が、前記混合工程で得られた麺生地を、減圧下において押し出して小塊又は板状とした後に麺線化する工程であり、
前記α化工程が、麺線を蒸し処理して麺線を糊化させる工程である、
即席油揚げ麺の製造方法。」
である点で一致し、次の3点で相違する。
(相違点1-1)α化工程が、請求項1に係る発明では、
「(1)前記製麺工程後α化工程を行う前に、前記製麺工程で得られた麺線に水分を付与し、水分が付与された麺線を該α化工程中に蒸し処理して麺線を糊化させる工程、
(2)該α化工程中に、前記製麺工程で得られた麺線に水分を付与しつつ、麺線を蒸し処理して麺線を糊化させる工程、又は、
(3)前記製麺工程後α化工程を行う前に、前記製麺工程で得られた麺線に水分を付与し、さらに、該α化工程中にも、水分を付与した麺線にさらに水分を付与しつつ、麺線を蒸し処理して麺線を糊化させる工程、のいずれか」であるのに対し、甲1発明では、α化工程を行う前及び/又はα化工程中における麺線への水分付与が明らかでない点。
(相違点1-2)α化工程における蒸し処理が、請求項1に係る発明では、「ボイラーで発生させた蒸気を減圧して蒸機内に噴射し、その蒸機の中を、麺線を通過させることによって行われ」るのに対し、甲1発明では、蒸機の構成が明らかでない点。
(相違点1-3)請求項1に係る発明では、「即席油揚げ麺の密度が、1.005~1.041g/cm3である」のに対し、麺の密度が明らかでない点。
(カ)事案に鑑み、上記相違点1-3について検討する。
a 甲1は、硬さが抑えられている即席油揚げ麺の製造方法を提供することを課題として、生地の生成にあたり、麺原料が加工デンプンとα化デンプンとを含み、その加工デンプンと水とが所定の要件を満たしている場合、硬さが抑えられた即席油揚げ麺が得られる(甲1段落【0005】、【0006】)というものであって、麺の密度を特定することについては、何ら示されていない。
b(a)甲2は、油揚げ処理を実施する即席麺において生麺同様の食感を有しながら、油揚げ後の膨化が少なく、しかも油分含有量を減少させるという課題を解決するため、混捏工程でドウを作成したあとに、該ドウについて脱気下で圧力を加え小塊を作成する工程を整形工程の前に設ける(甲2段落【0007】)ことが記載されるに止まる。
また、甲3は、通常のフライ麺よりも膨化が抑えられ、密度感のある食感を有し、透明感が高い即席フライ麺の製造方法を提供することを目的として、主原料粉1kgに対して20~60mlの液体状の食用油脂を添加して混捏した麺生地から麺帯を作製し、前記麺帯を3回以内に所定の麺厚に圧延した後、圧延した麺帯を切刃により麺線とし、蒸煮後、フライ乾燥する(甲3段落【0005】、【0006】)ことが記載されるに止まるものである。
(c)さらに、甲4~甲12をみても、麺の密度を特定することについて、各甲号証には何ら記載も示唆もされていない。
(d)申立人は、本件特許の請求項1に係る発明も甲1発明も、従来公知のα化工程を適用するものであり、「即席油揚げ麺の密度が、1.005~1.041g/cm3」である蓋然性が高い旨を主張する(特許異議申立書第30頁)。しかしながら、本件特許の請求項1に係る発明と甲1発明とが、従来公知のα化工程を適用するものであるかどうかは判然とせず、したがって、「前記即席油揚げ麺の密度が、1.005~1.041g/cm3である」蓋然性が高いかどうかも明らかでない。よって、申立人の上記主張は採用できない。
c(a)上記各甲号証の記載に対し、本件特許の請求項1に係る発明は、「前記即席油揚げ麺の密度が、1.005~1.041g/cm3である」ことにより、麺の密度が水の密度(1g/cm3)より大きく、調理時に湯の中に麺塊全体を沈ませることができるという作用効果を見いだしたものであり、当該作用効果は、各甲号証のいずれにも記載ないし示唆されていない格別なものである。
(b)申立人は、甲2及び甲3には「麺の膨化を抑えて、密度を高める」点が記載されており、密度が高い麺は湯戻しの際に浮きにくくなるのは明らかであるため、本件特許の請求項1に係る発明は格別な作用効果を奏するものとはいえない旨を主張する(特許異議申立書第34頁)。しかしながら、甲2には「油揚げ後の麺の膨化が少なく」なること(段落【0005】、【0010】、【0030】)、甲3には「通常のフライ麺よりも膨化が抑えられ」ること(段落【0005】、【0010】、【0052】)が示されるに止まり、密度を高めることは記載されておらず、まして「調理時に湯の中に麺塊全体を沈ませる」ことまでは何ら記載も示唆もされていない。よって、申立人の主張は採用できない。
(キ)よって、その余の相違点について検討するまでもなく、請求項1に係る発明は、甲1発明及び甲2~甲12の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
ウ 請求項2~6に係る発明について
請求項2~6に係る発明は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定したものである。よって、甲1発明は、少なくとも上記イ(オ)の相違点1-3において、請求項2~6に係る発明と相違する。
そして、相違点1-3についての判断は上記イ(カ)のとおりであるから、同様の理由により、請求項2~6に係る発明は、甲1発明及び甲2~甲12の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
エ 請求項7に係る発明について
請求項7に係る発明は、請求項1を直接又は間接的に引用して、即席油揚げ麺に係る発明を特定したものである。よって、請求項7に係る発明と、甲1発明により製造された麺に係る発明(以下「甲1麺発明」という。)との対比は、実質的に上記イと同様であって、両者は、請求項7に係る発明では、「即席油揚げ麺の密度が、1.005~1.041g/cm3である」のに対し、甲1麺発明では、麺の密度が明らかでない点(以下「相違点1-4」という。)で少なくとも相違する。
そして、上記相違点1-4は、上記イ(オ)の相違点1-3と実質的に同様である。そして、相違点1-3についての判断は上記イ(カ)のとおりであるから、同様の理由により、請求項7に係る発明は、甲1麺発明及び甲2~甲12の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
オ 甲1に基づく進歩性についての小括
以上のとおり、請求項1~7に係る発明は、甲1に記載された発明及び甲2~甲12の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
(2)甲2に基づく進歩性についての検討
ア 甲2に記載された発明
甲2の記載(特に、段落【0016】実施例1、【0017】実施例2の記載)よりみて、甲2には、次の発明が記載されていると認められる。
「小麦粉800g又は700g、タピオカ加工澱粉200g又は300g、かんすい4.5g、食塩10g、クチナシ色素1.5g、増粘多糖類2g、レシチン15gを水350ml又は360mlに溶かし、横型ミキサーで10分間混捏し、ドウとし、
このドウを押出し成型機を用いて真空度760mmHgの脱気下で直径20mmのダイスを通し円筒状のドウ(生地)として圧送されたものを圧出時に間欠的に切断し、直径20mm、長さ20mmのチップ状の小塊とし、
作成した小塊を、複合機(整形ロールおよび複合ロール)により厚さ10mmの麺帯とし、圧延ロールを通し、切刃#18(角)又は#22(角)にて、厚さ1.4mm又は1.2mmの麺線とし、
この麺線を蒸し機(蒸気圧1,500mmAq)で2分間蒸煮しα化し、次いで、250mmの長さにカットし、必要により既知の調味液等を溶かした水を20~30ml前後塗布した110~120g相当量又は80~90g相当量を1食とし、
油揚げ用のバスケットに投入し油槽温度120~160℃で水分を2~5%前後まで蒸発させる、中華麺の製造方法。」(以下「甲2発明」という。)
イ 請求項1に係る発明について
(ア)甲2発明の「小麦粉800g又は700g」と「かんすい(4.5g」を「水350ml又は360mlに溶かし」、「横型ミキサーで10分間混捏し、ドウとし」ている工程は、かんすいはアルカリ剤に包含され(本件特許明細書の段落【0022】)、また、小麦粉に対するかんすいが4.5/(800又は700)×100=0.56重量部又は0.64重量部であることを勘案すると、請求項1に係る発明の「小麦粉」、前記小麦粉100質量部に対して0.22~0.68質量部の「アルカリ剤」、及び「水」を含む原料を、「混合又は混練して麺生地を調製する工程」に相当する。
(イ)甲2発明の「押出し成型機を用いて真空度760mmHgの脱気下で直径20mmのダイスを通し円筒状のドウ(生地)として圧送されたものを圧出時に間欠的に切断し、直径20mm、長さ20mmのチップ状の小塊とし」、「作成した小塊を、複合機(整形ロールおよび複合ロール)により厚さ10mmの麺帯とし」、「圧延ロールを通し、切刃#18(角)又は#22(角)にて、厚さ1.4mm又は1.2mmの麺線とし」ている工程は、請求項1に係る発明の「混合工程で得られた麺生地を、減圧下において押し出して」「小塊又は板状とした」「後に麺線化する工程」に相当する。
(ウ)甲2発明の「この麺線を蒸し機(蒸気圧1,500mmAq)で2分間蒸煮しα化し」ている工程は、請求項1に係る発明の「α化工程」に相当する。
(エ)甲2発明の「油揚げ用のバスケットに投入し油槽温度120~160℃で水分を2~5%前後まで蒸発させる」工程は、請求項1に係る発明の「フライ乾燥工程」に相当する。
(オ)よって、請求項1に係る発明と、甲2発明とは,
「即席油揚げ麺の製造方法であって、
混合工程、製麺工程、α化工程、及びフライ乾燥工程を含み、
前記混合工程が、小麦粉、前記小麦粉100質量部に対して0.22~0.68質量部のアルカリ剤、及び水を含む原料を、混合又は混練して麺生地を調製する工程であり、
前記製麺工程が、前記混合工程で得られた麺生地を、減圧下において押し出して小塊又は板状とした後に麺線化する工程であり、
前記α化工程が、麺線を蒸し処理して麺線を糊化させる工程である、
即席油揚げ麺の製造方法。」
である点で一致し、次の3点で相違する。
(相違点2-1)α化工程が、請求項1に係る発明では、
「(1)前記製麺工程後α化工程を行う前に、前記製麺工程で得られた麺線に水分を付与し、水分が付与された麺線を該α化工程中に蒸し処理して麺線を糊化させる工程、
(2)該α化工程中に、前記製麺工程で得られた麺線に水分を付与しつつ、麺線を蒸し処理して麺線を糊化させる工程、又は、
(3)前記製麺工程後α化工程を行う前に、前記製麺工程で得られた麺線に水分を付与し、さらに、該α化工程中にも、水分を付与した麺線にさらに水分を付与しつつ、麺線を蒸し処理して麺線を糊化させる工程、のいずれか」であるのに対し、甲2発明では、α化工程を行う前及び/又はα化工程中における麺線への水分付与が明らかでない点。
(相違点2-2)α化工程における蒸し処理が、請求項1に係る発明では、「ボイラーで発生させた蒸気を減圧して蒸機内に噴射し、その蒸機の中を、麺線を通過させることによって行われ」るのに対し、甲2発明では、蒸機の構成が明らかでない点。
(相違点2-3)請求項1に係る発明では、「即席油揚げ麺の密度が、1.005~1.041g/cm3である」のに対し、甲2発明では、麺の密度が明らかでない点。
(エ)そして、上記相違点2-1~2-3は、上記(1)イ(オ)の相違点1-1~1-3と実質的に同様である。そして、相違点1-3についての判断は上記(1)イ(カ)のとおりであるから、同様の理由により、請求項1に係る発明は、甲2発明及び甲1、甲3~甲12の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
(オ)よって、その余の相違点について検討するまでもなく、請求項1に係る発明は、甲2発明及び甲1、甲3~甲12の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
ウ 請求項2~6に係る発明について
請求項2~6に係る発明は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定したものである。よって、甲2発明は、少なくとも上記イ(オ)の相違点2-3において、請求項2~6に係る発明と相違する。
そして、相違点2-3は上記(1)イ(オ)の相違点1-3と実質的に同様であるところ、相違点1-3についての判断は上記(1)イ(カ)のとおりであるから、同様の理由により、請求項2~6に係る発明は、甲2発明及び甲1、甲3~甲12の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
エ 請求項7に係る発明について
請求項7に係る発明は、請求項1の記載事項とほぼ同様の記載によって、即席油揚げ麺に係る発明を特定したものである。よって、請求項7に係る発明と、甲2発明により製造された麺に係る発明(以下「甲2麺発明」という。)との対比は、実質的に上記イと同様であって、両者は、請求項7に係る発明では、「即席油揚げ麺の密度が、1.005~1.041g/cm3である」のに対し、甲2麺発明では、麺の密度が明らかでない点(以下「相違点1-4」という。)で少なくとも相違する。
そして、上記相違点2-4は、上記イ(オ)の相違点2-3と実質的に同様であり、相違点2-3は上記(1)イ(オ)の相違点1-3と実質的に同様であるところ、相違点1-3についての判断は、上記イ(カ)が援用する上記(1)イ(カ)のとおりであるから、同様の理由により、請求項7に係る発明は、甲2麺発明及び甲1、甲3~甲12の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
オ 甲2に基づく進歩性についての小括
以上のとおり、請求項1~7に係る発明は、甲2に記載された発明及び甲1、甲3~甲12の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
(3)甲3に基づく進歩性についての検討
ア 甲3に記載された発明
甲3の記載(特に、段落【0029】~【0034】実施例1の記載)よりみて、甲3には、次の発明が記載されていると認められる。
「主原料粉として中力粉900g、澱粉100gを粉体混合した主原料粉1kgに、食塩15g、かん水2g、リン酸塩1g、重合リン酸塩2g、色素0.4gを溶解した練り水350mlを加え、常圧ミキサーで3分混捏し、20mlのパームオレイン油を添加してさらに12分混捏し、そぼろ状のドウを作製し、
作製したドウを通常の整形ロールを用いて、粗麺帯を作製し、粗麺帯2枚を再び整形ロールを用いて複合し、麺帯を作製し、このときの麺帯厚は、18mmであり、
作製した麺帯を圧延ロールにて2回で所定の1.6mm厚まで圧延し(18mm-2.2mm-1.6mm)、圧延した麺帯を16番丸の切刃ロールを用いて麺線とし、
切り出された麺線は直ちにわたって飽和水蒸気を240kg/hとなるように供給した蒸気庫内で30秒間蒸煮した後、60℃の温水に20秒間浸漬し、再び、飽和水蒸気を240kg/hとなるように供給した蒸気庫内で30秒間蒸煮し、
蒸煮した麺線を1L当り食塩60g、グルタミン酸ナトリウム5gを溶解した着味液に5秒浸漬した後、引き延ばして30cmとなるように麺線をカットし、
カットした麺線をフライ用リテーナに入れ、150℃に加温したフライヤーに浸漬して2分30秒間フライ乾燥する、フライ麺サンプルの製造方法。」(以下「甲3発明」という。)
イ 請求項1に係る発明について
(ア)甲3発明の「中力粉900g」、「かん水2g」に「練り水350mlを加え」、「常圧ミキサーで3分混捏し」、「さらに12分混捏し、そぼろ状のドウを作製し」た工程は、かん水はアルカリ剤に包含され(本件特許明細書の段落【0022】)、また、中力粉(小麦粉であることは明らかである。)に対するかんすいが2/900×100=0.22重量部であることを勘案すると、請求項1に係る発明の「小麦粉」、前記小麦粉100質量部に対して0.22~0.68質量部の「アルカリ剤」、及び「水」を含む原料を、「混合又は混練して麺生地を調製する工程」に相当する。
(イ)甲3発明の「作製したドウを通常の整形ロールを用いて、粗麺帯を作製し、粗麺帯2枚を再び整形ロールを用いて複合し、麺帯を作製し」、「作製した麺帯を圧延ロールにて2回で所定の1.6mm厚まで圧延し(18mm-2.2mm-1.6mm)、圧延した麺帯を16番丸の切刃ロールを用いて麺線とし」ている工程は、請求項1に係る発明の「混合工程で得られた麺生地を、減圧下において押し出して小塊又は板状とした」「後に麺線化する工程」に相当する。
(ウ)甲3発明の「切り出された麺線は直ちにわたって飽和水蒸気を240kg/hとなるように供給した蒸気庫内で30秒間蒸煮した後、60℃の温水に20秒間浸漬し、再び、飽和水蒸気を240kg/hとなるように供給した蒸気庫内で30秒間蒸煮し」ている工程が、蒸煮処理して麺線を糊化させていることは明らかであって、請求項1に係る発明の「α化工程」に相当する。
(エ)甲3発明の「カットした麺線をフライ用リテーナに入れ、150℃に加温したフライヤーに浸漬して2分30秒間フライ乾燥する」工程は、請求項1に係る発明の「フライ乾燥工程」に相当する。
(オ)よって、請求項1に係る発明と、甲3発明とは,
「即席油揚げ麺の製造方法であって、
混合工程、製麺工程、α化工程、及びフライ乾燥工程を含み、
前記混合工程が、小麦粉、前記小麦粉100質量部に対して0.22~0.68質量部のアルカリ剤、及び水を含む原料を、混合又は混練して麺生地を調製する工程であり、
前記製麺工程が、前記混合工程で得られた麺生地を、減圧下において押し出して小塊又は板状とした後に麺線化する工程であり、
前記α化工程が、麺線を蒸し処理して麺線を糊化させる工程である、
即席油揚げ麺の製造方法。」
である点で一致し、次の3点で相違する。
(相違点3-1)α化工程が、請求項1に係る発明では、
「(1)前記製麺工程後α化工程を行う前に、前記製麺工程で得られた麺線に水分を付与し、水分が付与された麺線を該α化工程中に蒸し処理して麺線を糊化させる工程、
(2)該α化工程中に、前記製麺工程で得られた麺線に水分を付与しつつ、麺線を蒸し処理して麺線を糊化させる工程、又は、
(3)前記製麺工程後α化工程を行う前に、前記製麺工程で得られた麺線に水分を付与し、さらに、該α化工程中にも、水分を付与した麺線にさらに水分を付与しつつ、麺線を蒸し処理して麺線を糊化させる工程、のいずれか」であるのに対し、甲3発明では、α化工程を行う前及び/又はα化工程中における麺線への水分付与が明らかでない点。
(相違点3-2)α化工程における蒸し処理が、請求項1に係る発明では、「ボイラーで発生させた蒸気を減圧して蒸機内に噴射し、その蒸機の中を、麺線を通過させることによって行われ」るのに対し、甲3発明では、蒸機の構成が明らかでない点。
(相違点3-3)請求項1に係る発明では、「即席油揚げ麺の密度が、1.005~1.041g/cm3である」のに対し、甲3発明では、湯戻し後の麺の総エネルギー及び最大微分値が明らかでない点。
(エ)そして、上記相違点3-1~3-3は、上記(1)イ(オ)の相違点1-1~1-3と実質的に同様である。そして、相違点1-3についての判断は上記(1)イ(カ)のとおりであるから、同様の理由により、請求項1に係る発明は、甲3発明及び甲1、甲2、甲4~甲12の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
(オ)よって、その余の相違点について検討するまでもなく、請求項1に係る発明は、甲3発明及び甲1、甲2、甲4~甲12の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
ウ 請求項2~6に係る発明について
請求項2~6に係る発明は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定したものである。よって、甲3発明は、少なくとも上記イ(オ)の相違点3-3において、請求項2~6に係る発明と相違する。
そして、相違点3-3は上記(1)イ(オ)の相違点1-3と実質的に同様であるところ、相違点1-3についての判断は上記(1)イ(カ)のとおりであるから、同様の理由により、請求項2~6に係る発明は、甲3発明及び甲1、甲2、甲4~甲12の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
エ 請求項7に係る発明についての検討
請求項7に係る発明は、請求項1の記載事項とほぼ同様の記載によって、即席油揚げ麺に係る発明を特定したものである。よって、請求項7に係る発明と、甲3発明により製造された麺に係る発明(以下「甲3麺発明」という。)との対比は、実質的に上記イと同様であって、両者は、請求項7に係る発明では、「即席油揚げ麺の密度が、1.005~1.041g/cm3である」のに対し、甲3麺発明では、湯戻し後の麺の総エネルギー及び最大微分値が明らかでない点(以下「相違点1-4」という。)で少なくとも相違する。
そして、上記相違点3-4は、上記イ(オ)の相違点3-3と実質的に同様であり、相違点3-3は上記(1)イ(オ)の相違点1-3と実質的に同様であるところ、相違点1-3についての判断は、上記イ(カ)が援用する上記(1)イ(カ)のとおりであるから、同様の理由により、請求項7に係る発明は、甲3麺発明及び甲1、甲2、甲4~甲12の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
オ 甲3に基づく進歩性についての小括
以上のとおり、請求項1~7に係る発明は、甲3に記載された発明及び甲1、甲2、甲4~甲12の記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでない。
(4)進歩性についてのまとめ
以上のとおり、請求項1~7に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものではなく、同法第113条第2号に該当するということはできず、この理由によって本件特許を取り消すことはできない。
2 先願について
(1)甲13の特許請求の範囲に記載された発明
甲13の請求項1~6には、次の発明が記載されている。
「【請求項1】
即席油揚げ麺の製造方法であって、
混合工程、製麺工程、α化工程、及びフライ乾燥工程を含み、
前記混合工程が、小麦粉、前記小麦粉100質量部に対して0.20~0.69質量部のアルカリ剤、及び水を含む原料を、混合又は混練して麺生地を調製する工程であり、
前記製麺工程が、前記混合工程で得られた麺生地を、減圧下において押し出して小塊又は板状とした後に麺線化する工程であり、
前記α化工程が、麺線を蒸し処理して麺線を糊化させる工程であって、
前記α化工程が、
(1)前記製麺工程後α化工程を行う前に、前記製麺工程で得られた麺線に水分を付与し 、水分が付与された麺線を該α化工程中に蒸し処理して麺線を糊化させる工程、
(2)該α化工程中に、前記製麺工程で得られた麺線に水分を付与しつつ、麺線を蒸し処 理して麺線を糊化させる工程、又は、
(3)前記製麺工程後α化工程を行う前に、前記製麺工程で得られた麺線に水分を付与し 、さらに、該α化工程中にも、水分を付与した麺線にさらに水分を付与しつつ、麺線を蒸 し処理して麺線を糊化させる工程、のいずれかであり、
前記蒸し処理は、ボイラーで発生させた蒸気を減圧して蒸機内に噴射し、その蒸機の中 を、麺線を通過させることによって行われ、
前記即席油揚げ麺を湯戻し調理した後に、即席油揚げ麺の破断試験を、くさび型プランジャーを取り付けたレオメータを用いて、20~25℃において0.5mm/秒の測定速度 で行ったときの総エネルギーが175~350kJ/m3、かつ最大微分値が0.45~ 1N/%である、
即席油揚げ麺の製造方法。
(以下「甲13-1発明」という。)
【請求項2】
前記α化工程が、(1)前記製麺工程後α化工程を行う前に、前記製麺工程で得られた 麺線に水分を付与し、水分が付与された麺線を該α化工程中に蒸し処理して麺線を糊化さ せる工程である、請求項1に記載の即席油揚げ麺の製造方法。
【請求項3】
前記α化工程が、(2)該α化工程中に、前記製麺工程で得られた麺線に水分を付与しつつ、麺線を蒸し処理して麺線を糊化させる工程である、請求項1に記載の即席油揚げ麺の製造方法。
【請求項4】
前記α化工程が、(3)前記製麺工程後α化工程を行う前に、前記製麺工程で得られた麺線に水分を付与し、さらに、該α化工程中にも、水分を付与した麺線にさらに水分を付与しつつ、麺線を蒸し処理して麺線を糊化させる工程である、請求項1に記載の即席油揚げ麺の製造方法。
【請求項5】
前記α化工程において、麺線への水分付与量は、前記製麺工程で得られた麺線100g当たり11ml~29mlである、請求項1~4の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
混合工程、製麺工程、α化工程、及びフライ乾燥工程を経て得られた即席油揚げ麺であって、
前記混合工程が、小麦粉、前記小麦粉100質量部に対して0.20~0.69質量部のアルカリ剤、及び水を含む原料を、混合又は混練して麺生地を調製する工程であり、
前記製麺工程が、前記混合工程で得られた麺生地を、減圧下において押し出して小塊又は板状とした後に麺線化する工程であり、
前記α化工程が、麺線を蒸し処理して麺線を糊化させる工程であって、
前記α化工程が、
(1)前記製麺工程後α化工程を行う前に、前記製麺工程で得られた麺線に水分を付与し、水分が付与された麺線を該α化工程中に蒸し処理して麺線を糊化させる工程、
(2)該α化工程中に、前記製麺工程で得られた麺線に水分を付与しつつ、麺線を蒸し処理して麺線を糊化させる工程、又は、
(3)前記製麺工程後α化工程を行う前に、前記製麺工程で得られた麺線に水分を付与し、さらに、該α化工程中にも、水分を付与した麺線にさらに水分を付与しつつ、麺線を蒸し処理して麺線を糊化させる工程、のいずれかであり、
前記蒸し処理は、ボイラーで発生させた蒸気を減圧して蒸機内に噴射し、その蒸機の中を、麺線を通過させることによって行われ、
前記即席油揚げ麺を湯戻し調理した後に、即席油揚げ麺の破断試験を、くさび型プランジャーを取り付けたレオメータを用いて、20~25℃において0.5mm/秒の測定速度で行ったときの総エネルギーが175~350kJ/m3、かつ最大微分値が0.45~ 1N/%である、
即席油揚げ麺。」
(2)検討
ア 請求項1に係る発明について
請求項1に係る発明と、甲13-1発明とを対比すると、請求項1に係る発明では、「即席油揚げ麺の密度が、1.005~1.041g/cm3である」と特定するのに対し、甲13-1発明は、「即席油揚げ麺を湯戻し調理した後に、即席油揚げ麺の破断試験を、くさび型プランジャーを取り付けたレオメータを用いて、20~25℃において0.5mm/秒の測定速度で行ったときの総エネルギーが175~350kJ/m3、かつ最大微分値が0.45~1N/%である」と特定する点(以下「相違点13-1」という。)で相違する。
上記相違点13-1について検討すると、請求項1に係る発明の「即席油揚げ麺の密度」を満たすことが、必ず甲13-1発明の「総エネルギー」及び「最大微分値」を満たすとは限らないし、逆もまた同様であるから、相違点13-1は実質的な相違点である。
よって、請求項1に係る発明は、甲13-1発明と同一ではない。
イ 請求項2~4、6、7に係る発明について
請求項2~4、6に係る発明は、請求項1を直接又は間接的に引用して特定したものである。また、請求項7に係る発明は、請求項1を直接又は間接的に引用して、即席油揚げ麺に係る発明を特定したものである。これに対し、甲13の請求項2~5に記載された発明はいずれも、甲13の請求項1を直接又は間接的に引用して特定したものであり、甲13の請求項2に係る発明は、甲13の請求項1の記載事項とほぼ同様の記載によって、即席油揚げ麺に係る発明を特定したものである。よって、請求項2~4、6、7に係る発明と、甲13の請求項2~6に記載された発明とは、上記アの相違点13-1と同様の相違点を有する。
そして、相違点13-1についての判断は上記アのとおりであるから、同様の理由により、請求項2~4、6、7に係る発明は、甲13の請求項2~6に記載された発明と同一ではない。
ウ 申立人の主張について
上記の相違点13-1について、申立人は、即席油揚げ麺を得るための工程が同一であるから、結果として得られる麺も同一であると考えられ、また、その作用効果(「湯戻し時に湯の表面から麺塊が浮くのを抑制する」と「調理時に湯の中に麺塊全体を沈ませる」)も同じであるから、本件特許の請求項1~4、6、7に係る発明と、甲13の請求項1~6に係る発明とは同一発明である旨主張する(特許異議申立書第37頁)。
しかしながら、本件特許の請求項1に係る発明の「即席油揚げ麺の密度」を満たすことが、必ず甲13-1発明の「総エネルギー」及び「最大微分値」を満たすとは限らないし、逆もまた同様であることは、上記アに示したとおりである、よって、申立人の主張は採用できない。
(3)先願についてのまとめ
以上のとおり、請求項1~4、6、7に係る特許は特許法第39条第2項の規定に違反して特許されたものではなく、同法第113条第2号に該当するということはできず、この理由によって本件特許を取り消すことはできない。
3 サポート要件について
(1)当審の判断
本件特許の発明の詳細な説明には、発明が解決しようとする課題として、調理時に湯の中に麺塊全体を沈ませるため、麺の密度が水の密度(1g/cm3)より大きい即席油揚げ麺の製造方法を提供すること(段落【0005】)が記載されるとともに、課題を解決するための手段として、原料粉にかんすいを特定量添加した原料を用い、減圧下で押し出して麺線を製造し、α化工程の前又は工程中に水分を付与しながら麺線を蒸煮してα化させることによって上記目的が達成できること(段落【0006】)が記載され、また、発明の効果として麺の密度が水の密度(1g/cm3)より大きい即席油揚げ麺を製造することができる(段落【0009】)と記載されている。
そして、上記の課題を解決する手段について、発明の詳細な説明には、原料にアルカリ剤を特定量添加し、麺生地を減圧下において押し出して麺線を製造し、α化工程の前及び/又はα化工程中に水分を付与して麺線をα化させることが特徴であり、「この製造方法によれば、麺の密度が水の密度(1g/cm3)より大きい即席油揚げ麺を製造することができる」(段落【0031】)こと、具体的な説明である実施例1~10及び比較例1~5(段落【0034】~【0055】)が示されるとともに、「実施例1~10の製造方法により、密度が1g/cm3より大きい即席油揚げ麺が得られることがわかった。」(段落【0056】)ことも説明されている。
よって、本件特許の請求項1~7に係る発明について、発明の詳細な説明には、発明が解決しようとする課題と当該課題を解決するための手段が十分に記載されているといえる。
(2)申立人の主張について
申立人は、甲13との関係において、即席油揚げ麺を得るための製造工程が同じであるにもかかわらず得られる麺が相違する場合は、本件特許の特許請求の範囲の記載は、「即席油揚げ麺の密度が、1.005~1.041g/cm3である」事項を得るための手段が反映されておらず、発明が解決しようとする課題を解決するための手段が反映されていないため、発明の詳細に記載した範囲を超えるものである旨主張する(特許異議申立書第37~38頁)。
しかしながら、本件特許の発明の詳細な説明において、上記事項を満足することにより、上記課題を解決するための手段が反映されていることは、上記(1)に示したとおりである。よって、申立人の主張は採用できない。
(3)サポート要件についてのまとめ
以上のとおり、請求項1~7に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではなく、同法第113条第4号に該当するということはできず、この理由によって本件特許を取り消すことはできない。
4 実施可能要件について
(1)当審の判断
上記3(1)に示したとおり、本件特許の発明の詳細な説明には、「麺の密度が水の密度(1g/cm3)より大きい即席油揚げ麺を製造することができる」(段落【0031】)こと、具体的な説明である実施例1~10及び比較例1~5(段落【0034】~【0055】)が示されるとともに、「実施例1~10の製造方法により、密度が1g/cm3より大きい即席油揚げ麺が得られることがわかった。」(段落【0056】)ことも説明されている。
よって、本件特許の発明の詳細な説明は、当業者が本件特許の請求項1~7に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているといえる。
(2)申立人の主張について
申立人は、本件特許の発明の詳細な説明には、「即席油揚げ麺の密度が、1.005~1.041g/cm3である」事項を満足するための条件や工程が記載されておらず、総エネルギー及び最大微分値を満足する即席油揚げ麺を製造するためには、当業者に期待しうる程度を超える試行錯誤や複雑高度な実験を行う必要がある旨主張する(特許異議申立書第38頁)。
しかしながら、本件特許の発明の詳細な説明において、上記事項を満足する即席油揚げ麺を製造できることは、上記(1)に示したとおりである。よって、申立人の主張は採用できない。
(3)実施可能要件についてのまとめ
以上のとおり、請求項1~7に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではなく、同法第113条第4号に該当するということはできず、この理由によって本件特許を取り消すことはできない。
5 むすび
上記のとおり、特許異議申立人の主張する特許異議の申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~7に係る特許を取り消すことはできない。
また、ほかに、本件特許の請求項1~7に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、上記のとおり決定する。
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2022-700448