特許異議申立
2024-700414
即席油揚げ麺の製造方法及び即席油揚げ麺
- 審判番号
- 2024-700414
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2023-066463
- 登録番号
- 7373088
- 請求日
- 2024年05月01日
- 審決日
- 2024年11月18日
- 公報発行日
- 2025年02月28日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】エースコック株式会社
- 【権利者代理人】福島 芳隆
- 【権利者代理人】幸 芳
- 【異議申立人】木村 嘉弘
- 審判長/審判官
- 審判長 淺野 美奈
- 審判官 加藤 友也
- 審判官 天野 宏樹
- 分類
- P1651.113-YAA(A23L) / P1651.121-YAA(A23L) / P1651.537-YAA(A23L) / P1651.536-YAA(A23L)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法36条6項1号特許法113条4号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第1項第3号、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第9項、特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7373088号発明「即席油揚げ麺の製造方法及び即席油揚げ麺」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7373088号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし5〕について訂正することを認める。
特許第7373088号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7373088号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、令和5年4月14日に出願されたものであって、同年10月24日にその特許権の設定登録(請求項の数5)がされ、同年11月1日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和6年5月1日に特許異議申立人 木村 嘉弘(以下、「特許異議申立人」という。)から特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし5)がされ、同年6月20日付けで取消理由が通知され、同年8月21日に特許権者 エースコック株式会社から訂正請求がされるとともに意見書が提出され、同年同月26日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、同年9月30日に特許異議申立人から意見書が提出されたものである。
第2 本件訂正について
1 訂正の内容
令和6年8月21日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。下線は訂正箇所を示すものである。
・訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「混合工程、製麺工程、α化工程、水分付与工程、及びフライ乾燥工程を備える即席油揚げ麺の製造方法であって、
前記混合工程で用いる原材料は、小麦粉、でん粉、及び、植物性たんぱくからなる群より選ばれる少なくとも1種の原料粉を含み、
前記原料粉のたんぱく質含量の合計が、6.3~10.3質量%であり、
前記製麺工程が、前記混合工程で得られた麺生地を、減圧下において押し出して小塊又は板状とした後に麺線化する工程であり、
前記水分付与工程は、前記α化工程の後、かつ、前記フライ乾燥工程で麺線をカットする前までの間に、前記α化工程で得られた麺線に、水又は着味液を付与する工程であり、かつ、
前記水分付与工程で麺線に与える水分量が、前記製麺工程で得られた麺線100g当たり25~47mlである、
即席油揚げ麺の製造方法。」と記載されているのを、
「混合工程、製麺工程、α化工程、水分付与工程、及びフライ乾燥工程を備える即席油揚げ麺の製造方法であって、
前記混合工程で用いる原材料は、小麦粉、でん粉、及び、植物性たんぱくの3種の原料粉を含み、
前記原料粉のたんぱく質含量の合計が、6.3~10.3質量%であり、
前記製麺工程が、前記混合工程で得られた麺生地を、減圧下において押し出して小塊又は板状とした後に麺線化する工程であり、
前記水分付与工程は、前記α化工程の後、かつ、前記フライ乾燥工程で麺線をカットする前までの間に、前記α化工程で得られた麺線に、水又は着味液を付与する工程であり、かつ、
前記水分付与工程で麺線に与える水分量が、前記製麺工程で得られた麺線100g当たり25~47mlである、
即席油揚げ麺の製造方法。」に訂正する。併せて、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項2ないし5も同様に訂正する。
2 訂正の目的、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)請求項1についての訂正について
訂正事項1による請求項1についての訂正は、本件訂正前の「原材料」は「小麦粉、でん粉、及び、植物性たんぱくからなる群より選ばれる少なくとも1種の原料粉」を含むものであったのを、本件訂正後の「原材料」は「小麦粉、でん粉、及び、植物性たんぱくの3種の原料粉」を含むものとするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1による請求項1についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)請求項2ないし5についての訂正について
訂正事項1による請求項2ないし5についての訂正は、請求項1についての訂正と同様に特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、訂正事項1による請求項2ないし5についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
3 むすび
以上のとおり、訂正事項1による請求項1ないし5についての訂正は、いずれも、特許法120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。
また、訂正事項1による請求項1ないし5についての訂正は、いずれも、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。
なお、訂正前の請求項1ないし5は一群の請求項に該当するものである。
そして、訂正事項1による請求項1ないし5についての訂正は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。
また、特許異議申立人からの特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし5に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。
したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし5〕について訂正することを認める。
第3 本件特許発明
上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし5に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
混合工程、製麺工程、α化工程、水分付与工程、及びフライ乾燥工程を備える即席油揚げ麺の製造方法であって、
前記混合工程で用いる原材料は、小麦粉、でん粉、及び、植物性たんぱくの3種の原料粉を含み、
前記原料粉のたんぱく質含量の合計が、6.3~10.3質量%であり、
前記製麺工程が、前記混合工程で得られた麺生地を、減圧下において押し出して小塊又は板状とした後に麺線化する工程であり、
前記水分付与工程は、前記α化工程の後、かつ、前記フライ乾燥工程で麺線をカットする前までの間に、前記α化工程で得られた麺線に、水又は着味液を付与する工程であり、かつ、
前記水分付与工程で麺線に与える水分量が、前記製麺工程で得られた麺線100g当たり25~47mlである、
即席油揚げ麺の製造方法。
【請求項2】
前記水分付与工程で付与される水の温度が30~60℃である、請求項1に記載の即席油揚げ麺の製造方法。
【請求項3】
前記原材料が、さらに、粉末油脂を含む、請求項1に記載の即席油揚げ麺の製造方法。
【請求項4】
前記即席油揚げ麺の油脂含量が、14.5%未満である、請求項1に記載の即席油揚げ麺の製造方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の即席油揚げ麺の製造方法によって得られた即席油揚げ麺。」
第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要等
令和6年5月1日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要及び証拠方法は次のとおりである。
1 申立理由1(甲第1号証に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1、2、4及び5は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許発明1ないし5は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
2 申立理由2(甲第2号証に基づく進歩性)
本件特許発明1ないし5は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
3 申立理由3(実施可能要件)
本件特許の請求項3に係る特許は、下記の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
甲第5号証及び甲第6号証に記載されているように、原料に粉末油脂を添加すると麺線に空隙(細孔)が形成され、甲第7号証及び甲第8号証に記載されているように、麺線の密度や空隙の数・状態によって、油脂含量が変化することは、本件出願時において公知の技術である。
しかしながら、本件請求項3では、粉末油脂の添加量について何ら特定されておらず、本件特許の明細書にも好適な範囲の記載はあるが、粉末油脂の添加による作用効果や、麺線の密度や空隙率への影響等について、何ら記載されていない。
このため、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識を考慮すると、原料に粉末油脂を含み、余分な添加物を添加することなく、油脂含量を低減することができる即席油揚げ麺を得ることは、当業者に期待しうる程度を超える試行錯誤や複雑高度な実験等を必要とするものである。
従って、発明の詳細な説明は、本件特許発明3を当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。
4 申立理由4(明確性要件)
本件特許の請求項5に係る特許は、下記の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。
本件特許発明5は、製造方法の発明を引用する物の発明であり、物の発明をその物の製造方法で特定する所謂「プロダクト・バイ・プロセス・クレーム」である。
そして、本件特許権者は、即席麺について構造や特性を特定した発明を多数出願していることから、本件特許発明5には、出願時においてその物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情は存在しない。
従って、本件特許発明5は不明確である。
5 証拠方法
甲第1号証:特許第7104864号公報
甲第2号証:特開平9-294553号公報
甲第3号証:社団法人日本セルフ・サービス協会編、食品知識ミニブックスシリーズ「新・即席めん入門」、新版、p.53~55、60、66
甲第4号証:特開2019-40号公報
甲第5号証:特開昭59-63152号公報
甲第6号証:特開2010-207107号公報
甲第7号証:特開2017-51157号公報
甲第8号証:特開2017-148036号公報
甲第9号証:国際公開第2018/150479号
甲第10号証:特開2022-161089号公報
参考資料1:グリコ栄養食品株式会社、「粉末状小麦たん白」、<URL:https:www.glico.com/nutrition/product/ingredient/wprotein/>
参考資料2:特開2022-173924号公報
参考資料3:特開2020-202771号公報
参考資料4:岡田久美子,他2名、「手打ちうどんの物性と食味に及ぼす澱粉・活性グルテン添加の影響」、日本調理科学会誌、日本、2008年、Vol.41、No.5、p.45-54
参考資料5:一般社団法人日本即席食品工業協会、「ようこそ!インスタントラーメン工場へ!」、<URL:https://www.instantramen.or.jp/factory/>
参考資料6:社団法人日本セルフ・サービス協会、食品知識ミニブックスシリーズ「新・即席めん入門」、新版、株式会社日本食糧新聞社、平成10年3月30日、p.69
参考資料1ないし6は令和6年9月30日に特許異議申立人から提出された意見書に添付されたものである。証拠の表記は、特許異議申立書及び上記意見書の記載におおむね従った。以下、甲号証については順に「甲1」のようにいう。
第5 取消理由の概要
令和6年6月20日付けで通知された取消理由(以下、「取消理由」という。)の概要は次のとおりである。
1 取消理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)
本件特許発明1、2、4及び5は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許発明1ないし5は、甲1に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。なお、該取消理由1は申立理由1とおおむね同旨である。
2 取消理由2(甲2に基づく進歩性)
本件特許発明1ないし5は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。なお、該取消理由2は申立理由2とおおむね同旨である。
第6 取消理由についての当審の判断
1 主な証拠に記載された事項等
(1)甲1に記載された事項等
ア 甲1に記載された事項
甲1は、「即席油揚げ麺の製造方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。下線は予め付されたものと当審で付したものである。他の証拠についても同様。
・「【請求項1】
混合工程、製麺工程、α化工程、水分付与工程、及びフライ乾燥工程をこの順に行う即席油揚げ麺の製造方法であって、
前記製麺工程が、前記混合工程で得られた麺生地を、減圧下において押し出して小塊又は板状とした後に麺線化する工程であり、
前記水分付与工程は、前記α化工程で得られた麺線に45~70℃の水を付与する工程であり、
前記水分付与工程で麺線に与える水分量が、前記製麺工程で得られた麺線100g当たり26.8~33mlであり、
前記水分付与工程後の麺線の水分値が48.4~51質量%であり、
前記即席油揚げ麺を湯戻し調理して1分後に、即席油揚げ麺の破断試験を、くさび型プランジャーを取り付けたレオメータを用いて、20~25℃において0.5mm/秒の測定速度で行ったときの最大微分値が0.5~0.9N/%であり、かつ、当該湯戻し1分後の最大微分値に対する湯戻し3分後の最大微分値の低下率が50%未満である、
即席油揚げ麺の製造方法。
・・・(略)・・・
【請求項3】
前記水分付与工程で付与される水の温度が50~60℃である、請求項1又は2に記載の即席油揚げ麺の製造方法。
・・・(略)・・・
【請求項7】
混合工程、製麺工程、α化工程、水分付与工程、及びフライ乾燥工程をこの順に行って得られた即席油揚げ麺であって、
前記製麺工程が、前記混合工程で得られた麺生地を、減圧下において押し出して小塊又は板状とした後に麺線化する工程であり、
前記水分付与工程は、前記α化工程で得られた麺線に45~70℃の水を付与する工程であり、
前記水分付与工程で麺線に与える水分量が、前記製麺工程で得られた麺線100g当たり26.8~33mlであり、
前記水分付与工程後の麺線の水分値が48.4~51質量%であり、
前記即席油揚げ麺を湯戻し調理して1分後に、即席油揚げ麺の破断試験を、くさび型プランジャーを取り付けたレオメータを用いて、20~25℃において0.5mm/秒の測定速度で行ったときの最大微分値が0.5~0.9N/%であり、かつ、当該湯戻し1分後の最大微分値に対する湯戻し3分後の最大微分値の低下率が50%未満である、
即席油揚げ麺。」
・「【0001】
本発明は、即席油揚げ麺の製造方法に関する。」
・「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、余分な添加物を添加することなく、湯戻し後の経時的な湯伸びを効果的に防止することができる即席油揚げ麺の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが、湯戻し後の経時的な湯伸びを効果的に防止することができる即席油揚げ麺の製造方法を開発すべく鋭意検討した結果、製麺工程において麺生地を減圧下において押し出しして麺線化し、α化工程とフライ乾燥工程との間に特定の条件で麺線に水を付与することによって、上記目的が達成できることを見出した。本発明はこのような知見に基づき完成されたものである。
【0008】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
項1.
混合工程、製麺工程、α化工程、水分付与工程、及びフライ乾燥工程をこの順に行う即席油揚げ麺の製造方法であって、
前記製麺工程が、前記混合工程で得られた麺生地を、減圧下において押し出して小塊又は板状とした後に麺線化する工程であり、
前記水分付与工程は、前記α化工程で得られた麺線に40~70℃の水を付与する工程であり、
前記水分付与工程で麺線に与える水分量が、前記製麺工程で得られた麺線100g当たり26~33mlであり、
前記水分付与工程後の麺線の水分値が48~51質量%であり、
前記即席油揚げ麺を湯戻し調理して1分後に、即席油揚げ麺の破断試験を、くさび型プランジャーを取り付けたレオメータを用いて、20~25℃において0.5mm/秒の測定速度で行ったときの最大微分値が0.5~0.9N/%であり、かつ、当該湯戻し1分後の最大微分値に対する湯戻し3分後の最大微分値の低下率が50%未満である、
即席油揚げ麺の製造方法。
・・・(略)・・・
項3.
前記水分付与工程で付与される水の温度が40~60℃である、項1又は2に記載の即席油揚げ麺の製造方法。
・・・(略)・・・
項7.
混合工程、製麺工程、α化工程、水分付与工程、及びフライ乾燥工程をこの順に行って得られた即席油揚げ麺であって、
前記製麺工程が、前記混合工程で得られた麺生地を、減圧下において押し出して小塊又は板状とした後に麺線化する工程であり、
前記水分付与工程は、前記α化工程で得られた麺線に40~70℃の水を付与する工程であり、
前記水分付与工程で麺線に与える水分量が、前記製麺工程で得られた麺線100g当たり26~33mlであり、
前記水分付与工程後の麺線の水分値が48~51質量%であり、
前記即席油揚げ麺を湯戻し調理して1分後に、即席油揚げ麺の破断試験を、くさび型プランジャーを取り付けたレオメータを用いて、20~25℃において0.5mm/秒の測定速度で行ったときの最大微分値が0.5~0.9N/%であり、かつ、当該湯戻し1分後の最大微分値に対する湯戻し3分後の最大微分値の低下率が50%未満である、
即席油揚げ麺。」
・「【0016】
原料
本発明において、即席油揚げ麺の原料は、特に限定されない。すなわち、従来、即席油揚げ麺の製造に使用されている原料を、特に限定なく使用することができる。
【0017】
原料粉は、主原料として小麦粉を含む。原料粉には、小麦粉に加えて、さらに小麦粉以外の穀粉、デンプン、タンパク質等を含んでもよい。小麦粉以外の穀粉として、例えば、そば粉、米粉等が挙げられる。デンプンとして、馬鈴薯デンプン、タピオカデンプン、コーンスターチ等のデンプン等が挙げられる。前記デンプンとして、生デンプン、α化デンプン、エーテル化デンプン等の加工デンプン等を使用することもできる。タンパク質として、例えば、グルテン等が挙げられる。これらは1種単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。」
・「【0020】
製麺工程
得られた麺生地を、減圧下において押し出して小塊又は板状とした後に麺線化する。麺生地を減圧下で押し出すことで、麺生地に含まれる空気を抜くことができる。
具体的には、エクストルーダー又は押出成型機を用いて、麺生地を減圧下においてダイスより押し出すことにより、小塊又は板状とする。」
・「【0021】
α化工程
α化工程において、麺線に含まれるデンプンがα化(糊化)する。麺線をα化させる方法として、蒸気を使った蒸し処理を行う。蒸し処理は、蒸気を使用した蒸機を使用して行うことが好ましい。」
・「【0022】
水分付与工程
水分付与工程において、前記α化工程によって得られたα化させた麺線に水分を付与する。該水分付与工程は、前記α化工程の後、かつ、後述するフライ乾燥工程の前に行われる。
水分の付与(補給)方法は、特に制限はなく、水、食塩又は乳化剤を含む水溶液を、前記製麺工程で得られた麺線に、雨だれ式、スプレー式に散布(噴霧)する方法、前記製麺工程で得られた麺線を前記水等に浸漬する方法等が挙げられ、浸漬する方法が好ましい。
【0023】
水又は水溶液の温度は、40℃以上70℃以下であり、40℃以上60℃以下が好ましく、45℃以上55℃以下がより好ましい。前記水分付与工程で麺線に付与される水分量(麺線への水分付与量、水の添加量)は、フライ乾燥工程前の麺線の水分量が48質量%~51質量%になるように調節すればよい。具体的には、前記水分付与工程後の麺線の水分値(麺線への水分付与量、水の添加量)は、前記製麺工程で得られた麺線100g当たり26ml~33ml程度であり、26ml~30ml程度がより好ましく、27ml~29mlがさらに好ましい。例えば、前記製麺工程で得られた麺線約71gを1食分とした場合、18ml~24ml程度であり、18ml~21ml程度がより好ましく、19ml~21ml程度がさらに好ましい。」
・「【0025】
フライ乾燥(油揚げ)工程
次いで、麺線を1食分(20~50cm)にカットする。カットした麺線を、フライ乾燥用器具に投入し、フライ乾燥を行う。」
・「【0036】
実施例1
小麦粉700g及び加工デンプン(酢酸デンプン)(松谷化学工業株式会社製、松谷さくら(商品名))300gに、食塩(ダイヤソルト株式会社製、並塩)10g、かんすい(オリエンタル酵母工業株式会社製、粉末かんすい 赤(商品名))4.5g、クチナシ色素(理研ビタミン株式会社製、リケカラーYGL-81)1.5g、及び増粘剤(三菱商事ライフサイエンス株式会社製、オルノー・G2(商品名))2gを水360gに溶解した練り水を加え(加水率36質量%)、横型のピンミキサーで10分間混合又は混練した。
真空押出機(株式会社武蔵商会製、MV-8型)を用い、得られた麺生地を、減圧した装置内(真空圧(ゲージ圧)-0.090MPa~-0.098MPa)を通して直径9mmのダイスから押し出し、小塊状に成形した。得られた小塊状の生地を、ロールに通して麺帯にし、それを2枚合わせた状態で再度ロールを通して一体化させ、さらに4対のロールに通して圧延した後、#22番角の切刃を通して、厚み1.20mmの麺線を得た。なお、この時点における麺線の水分量をOHAUS社製ハロゲン水分計MB45により測定したところ、34.6質量%であった。
得られた麺線を、ボイラーで発生させた蒸気を減圧させた後に噴射している蒸機の中を2分間通過させてα化させた。得られたα化工程後の麺線を、50℃の水に2秒間浸漬させた。この浸漬による麺線への水分付与量は1食分の麺線(約71g)につき19.0ml(製麺工程で得られた麺線100g当たり26.8ml)であり、水分付与後の麺線の水分量をOHAUS社製ハロゲン水分計MB45により測定したところ、48.4質量%であった。
その後、麺線を20cm程度の長さにカットし、1食当たり20mlのほぐし液を付与し、1食ずつ円錐台形状のフライ枠(天面内径87mm×底面内径72mm×高さ62mm、底面に直径3.2mmの丸孔を複数形成)に充填した。直径3.2mmの丸孔が複数形成された上蓋で蓋をして、約135℃のパーム油に30秒間、その後約160℃のパーム油に90秒間浸漬して、麺塊を乾燥させた。フライ乾燥の後、上蓋を外し、フライ枠から麺塊を取り出し、冷却することにより、即席油揚げ麺(1食分は約58g)が得られた。なお、約58gは、58±1g(57~59g)である(以下、同様)。」
・「【0042】
実施例2
α化工程後に麺線を浸漬する水の温度を60℃にした以外は、実施例1と同様にして即席油揚げ麺を製造した。この浸漬による麺線への水分付与量は1食分の麺線(約71g)につき19.8ml(製麺工程で得られた麺線100g当たり27.9ml)であり、実施例1と同じ装置で測定した水分付与後の麺線の水分量は48.9質量%であった。」
・「【0043】
実施例3
α化工程後に麺線を浸漬する水の温度を70℃にした以外は、実施例1と同様にして即席油揚げ麺を製造した。この浸漬による麺線への水分付与量は1食分の麺線(約71g)につき19.5ml(製麺工程で得られた麺線100g当たり27.5ml)であり、実施例1と同じ装置で測定した水分付与後の麺線の水分量は48.7質量%であった。」
・「【0044】
実施例4
α化工程後に麺線を浸漬する水の温度を40℃にし、浸漬時間を5秒間にした以外は、実施例1と同様にして即席油揚げ麺を製造した。この浸漬による麺線への水分付与量は1食分の麺線(約71g)につき19.2ml(製麺工程で得られた麺線100g当たり27.0ml)であり、実施例1と同じ装置で測定した水分付与後の麺線の水分量は48.5質量%であった。」
・「【0045】
実施例5
α化工程後に麺線を浸漬する水の温度を50℃にし、浸漬時間を5秒間にした以外は、実施例1と同様にして即席油揚げ麺を製造した。この浸漬による麺線への水分付与量は1食分の麺線(約71g)につき20.9ml(製麺工程で得られた麺線100g当たり29.4ml)であり、実施例1と同じ装置で測定した水分付与後の麺線の水分量は49.5質量%であった。」
・「【0046】
実施例6
α化工程後に麺線を浸漬する水の温度を60℃にし、浸漬時間を5秒間にした以外は、実施例1と同様にして即席油揚げ麺を製造した。この浸漬による麺線への水分付与量は1食分の麺線(約71g)につき23.0ml(製麺工程で得られた麺線100g当たり32.4ml)であり、実施例1と同じ装置で測定した水分付与後の麺線の水分量は50.6質量%であった。」
イ 甲1に記載された発明
甲1に記載された事項を、特に実施例1ないし6に関して整理すると、甲1には次の発明(以下、順に「甲1実施例1製法発明」、「甲1実施例2製法発明」、「甲1実施例3製法発明」、「甲1実施例4製法発明」、「甲1実施例5製法発明」、「甲1実施例6製法発明」及び「甲1麺発明」という。)が記載されていると認める。
<甲1実施例1製法発明>
「小麦粉700g及び加工デンプン(酢酸デンプン)(松谷化学工業株式会社製、松谷さくら(商品名))300gに、食塩(ダイヤソルト株式会社製、並塩)10g、かんすい(オリエンタル酵母工業株式会社製、粉末かんすい 赤(商品名))4.5g、クチナシ色素(理研ビタミン株式会社製、リケカラーYGL-81)1.5g、及び増粘剤(三菱商事ライフサイエンス株式会社製、オルノー・G2(商品名))2gを水360gに溶解した練り水を加え(加水率36質量%)、横型のピンミキサーで10分間混合又は混練し、真空押出機(株式会社武蔵商会製、MV-8型)を用い、得られた麺生地を、減圧した装置内(真空圧(ゲージ圧)-0.090MPa~-0.098MPa)を通して直径9mmのダイスから押し出し、小塊状に成形し、得られた小塊状の生地を、ロールに通して麺帯にし、それを2枚合わせた状態で再度ロールを通して一体化させ、さらに4対のロールに通して圧延した後、#22番角の切刃を通して、厚み1.20mmの麺線を得、得られた麺線を、ボイラーで発生させた蒸気を減圧させた後に噴射している蒸機の中を2分間通過させてα化させ、得られたα化工程後の麺線を、50℃の水に2秒間浸漬させ、この浸漬による麺線への水分付与量は1食分の麺線(約71g)につき19.0ml(製麺工程で得られた麺線100g当たり26.8ml)であり、その後、麺線を20cm程度の長さにカットし、1食当たり20mlのほぐし液を付与し、1食ずつ円錐台形状のフライ枠(天面内径87mm×底面内径72mm×高さ62mm、底面に直径3.2mmの丸孔を複数形成)に充填し、直径3.2mmの丸孔が複数形成された上蓋で蓋をして、約135℃のパーム油に30秒間、その後約160℃のパーム油に90秒間浸漬して、麺塊を乾燥させ、フライ乾燥の後、上蓋を外し、フライ枠から麺塊を取り出し、冷却することにより、即席油揚げ麺(1食分は約58g)を得る方法。」
<甲1実施例2製法発明>
「α化工程後に麺線を浸漬する水の温度を60℃にし、麺線への水分付与量は1食分の麺線(約71g)につき19.8ml(製麺工程で得られた麺線100g当たり27.9ml)にした以外は、甲1実施例1製法発明と同様の方法。」
<甲1実施例3製法発明>
「α化工程後に麺線を浸漬する水の温度を70℃にし、麺線への水分付与量は1食分の麺線(約71g)につき19.5ml(製麺工程で得られた麺線100g当たり27.5ml)にした以外は、甲1実施例1製法発明と同様の方法。」
<甲1実施例4製法発明>
「α化工程後に麺線を浸漬する水の温度を40℃にし、浸漬時間を5秒間にし、麺線への水分付与量は1食分の麺線(約71g)につき19.2ml(製麺工程で得られた麺線100g当たり27.0ml)にした以外は、甲1実施例1製法発明と同様の方法。」
<甲1実施例5製法発明>
「α化工程後に麺線を浸漬する水の温度を50℃にし、浸漬時間を5秒間にし、麺線への水分付与量は1食分の麺線(約71g)につき20.9ml(製麺工程で得られた麺線100g当たり29.4ml)にした以外は、甲1実施例1製法発明と同様の方法。」
<甲1実施例6製法発明>
「α化工程後に麺線を浸漬する水の温度を60℃にし、浸漬時間を5秒間にし、麺線への水分付与量は1食分の麺線(約71g)につき23.0ml(製麺工程で得られた麺線100g当たり32.4ml)にした以外は、甲1実施例1製法発明と同様の方法。」
<甲1麺発明>
「甲1実施例1製法発明ないし甲1実施例6製法発明のいずれかによって得られた即席油揚げ麺。」
(2)甲2に記載された事項等
ア 甲2に記載された事項
甲2は、「即席油揚げ麺の製造方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「【請求項1】 常法による製麺工程において、原料として小麦粉、澱粉または加工澱粉を用い、必要によりかんすい、食塩、増粘多糖類、乳化油脂、レシチン等を添加し、混捏工程でドウを作成したあとに、該ドウについて脱気下で圧力を加え小塊を作成する工程を整形工程の前に設けることを特徴とする即席油揚げ麺の製造方法。」
・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱湯を注ぐか、鍋等で茹でることによって喫食する即席油揚げ麺の製造方法に関し、特に麺帯作成工程を改良した製造方法に関する。」
・「【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明においては、従来の技術について、工程上での工夫を加え、油揚げ処理を実施する即席麺において生麺同様の食感を有しながら、油揚げ後の麺の膨化が少なく、しかも油分含有量が従来の約20~23%であるのに比較し約15~17%にまで減少させた即席油揚げ麺であって、湯戻し後の粘弾性にすぐれるとともに、生麺にみられるような特有の透明感を有する麺を作成する目的のため鋭意研究を重ねた。
【0006】本発明は、前記目的を達成することによって、既知の即席油揚げ麺とは外観および食感の点で一線を画する優れた利点を有するものであって、生麺に近付きそれと共通する特徴を備えた即席油揚げ麺の製造方法を確立することにある。ここでいう即席油揚げ麺とは、即席中華麺、即席和風麺、スナック麺をさす。」
・「【0008】
【発明の実施の形態】本発明の製造方法は、常法、すなわち一般に知られている従来法の製麺工程である、加水調整-混捏-整形(整形ロール)-複合(複合ロール)-圧延(圧延ロール)-切出しの各工程において、新たに前記混捏工程の後であって、整形工程の前に、脱気下で圧力を加え、緻密で強固な性質と粘りを具備した後述する小塊を作成し、それを複合し麺帯とする工程を加えること、また、前記混捏工程を経たドウの一部について、脱気下で圧力を加え小塊を作成する工程を経て、後続の整形工程で該小塊と残部のドウとを混合し複合して麺帯とする工程を加えることにある。更に具体的に本発明における小塊の作成手段を説明すると、ミキサーで混捏(ミキサー中に小麦粉、各種澱粉を入れ、加水調整液を添加しこねる作業)した後、エクストルーダーまたは押出し成型機装置内を真空度400~760mmHgの脱気下で圧力を加え、直径5~50mmのダイスを通して円筒状のドウ(生地)として圧送されたものを圧出時に間欠的に切断し長さ5~50mmの小塊とする。前記小塊の緻密さと性質および大きさは、油揚げ処理後の麺の膨化等に影響を及ぼす。」
・「【0010】このようにして作成した小塊を複合機(整形ロールおよび複合ロール)に投入し、麺帯とした後に切出し、蒸し工程後に油揚げ処理を行ない即席油揚げ麺が製造されるものである。・・・(略)・・・本発明の製造方法に従って得た麺の特徴は、従来の麺と同じく多孔質ではあるが、それぞれの孔が小さく、その分布も層状になっており、明らかに異なっている。その結果、麺全体としては(1)油揚げ後の麺の膨化が少なくなる。(2)前記膨化度の低下によって、油分含有量が従来の約20~23%に比較し約15~17%にまで少なくすることができた。」
・「【0012】以下に本発明の最も好ましい具体的な条件について詳しく説明する。小塊とする前の生地の調製は、小麦粉、澱粉および加工澱粉を主成分とする原材料に、必要に応じてかんすい、食塩、増粘多糖類、乳化油脂、レシチン等を加えて2~20分間混捏しドウとする。」
・「【0013】次にこのドウを、エクストルーダーまたは押出し成型機等を用い圧力をかけ、その出口で直径5~50mmのダイスを通し円筒状としたものを長さ5~50mmに切断して小塊とする。その際に、前記エクストルーダーまたは押出し成型機装置内を、真空度400~760mmHgの脱気下で圧力を加え、直径5~50mmのダイスを通し円筒状のドウ(生地)として圧送されたものを圧出時に間欠的に切断し、長さ5~50mmの小塊とすることもできる。」
・「【0015】こうして、作成した小塊は従来どおりの製麺方法によって製麺される。すなわち、前記小塊を複合機(整形ロールおよび複合ロール)に投入することになる。この複合機は従来より一般的に使用されている即席油揚げ麺用の複合機に何らの改良変更を要せずに、そのまま使用可能である。従って、整形ロールを経て小塊を麺帯とし、該麺帯の厚さが10mm前後となるよう複合ロールにより複合して圧延ロールへ移行する。この際、複合せずに一枚のまま麺帯としても問題はない。圧延ロールを通した後は、切刃によって所定の幅および厚みを持たせた麺線とする。この麺線を、蒸気圧200~5,000mmAqの蒸気圧中で30~300秒通過させる。蒸し上がった麺線は冷却し、表面の水分が乾きはじめる程度とすることがよい。実際上の知見によると、前記冷却が不十分だと、前述の火ぶくれ現象が多くなる傾向にあった。さらに、該麺線を回転式のカッター等で所定の長さに切断し、水あるいは調味液、調味油を塗布し、所定の重量に調整し、油揚げ用のバスケットに投入し油槽中を通過させる。」
・「【0016】
【実施例】次に本発明について実施例を挙げて具体的に説明する。
実施例1
小麦粉800g、タピオカ加工澱粉200g、かんすい4.5g、食塩10g、クチナシ色素1.5g、増粘多糖類2g、レシチン15gを水350mlに溶かし、横型ミキサーで10分間混捏し、ドウとした。このドウを押出し成型機を用いて真空度760mmHgの脱気下で直径20mmのダイスを通し円筒状のドウ(生地)として圧送されたものを圧出時に間欠的に切断し、直径20mm、長さ20mmのチップ状の小塊とした。作成した小塊を、複合機(整形ロールおよび複合ロール)により厚さ10mmの麺帯とし、圧延ロールを通し、切刃#18(角)にて、厚さ1.4mmの麺線とした。この麺線を蒸し機(蒸気圧1,500mmAq)で2分間蒸煮しα化した。次いで、250mmの長さにカットし、必要により既知の調味液等を溶かした水を20~30ml前後塗布した110~120g相当量を1食とし、油揚げ用のバスケットに投入し油槽温度120~160℃で水分を2~5%前後まで蒸発させ、本発明の即席中華麺(袋麺)を得た。
【0017】実施例2
小麦粉700g、タピオカ加工澱粉300g、かんすい4.5g、食塩10g、クチナシ色素1.5g、増粘多糖類2g、レシチン15gを水360mlに溶かし、横型ミキサーで10分間混捏し、ドウとした。このドウを押出し成型機を用いて真空度760mmHgの脱気下で直径20mmのダイスを通し円筒状のドウ(生地)として圧送されたものを圧出時に間欠的に切断し、直径20mm、長さ20mmのチップ状の小塊とした。作成した小塊を、複合機(整形ロールおよび複合ロール)により厚さ10mmの麺帯とし、さらに圧延ロールを通し、切刃#22(角)にて厚さ1.2mmの麺線とした。この麺線を蒸し機(蒸気圧1,500mmAq)で2分間蒸煮しα化した。次いで、250mmの長さにカットし、必要により既知の調味液等を溶かした水を20~30ml前後塗布した80~90g相当量を1食とし、油揚げ用のバスケットに投入し、油槽温度120~160℃で水分を2~5%前後まで蒸発させ、本発明のスナック麺(カップ中華麺)を得た。
【0018】実施例3
小麦粉600g、タピオカ油脂加工澱粉400g、重合リン酸塩4.5g、食塩10g、増粘多糖類2g、レシチン15gを水380mlに溶かし、横型ミキサーで10分間混捏し、ドウとした。このドウを押出し成型機を用いて真空度760mmHgの脱気下で直径20mmのダイスを通し円筒状のドウ(生地)として圧送されたものを圧出時に間欠的に切断し、直径20mm、長さ10mmのチップ状の小塊とした。作成した小塊を、複合機(整形ロールおよび複合ロール)により厚さ10mmの麺帯とし、さらに圧延ロールを通し、切刃#12(角)にて厚さ1.0mmの麺線とした。この麺線を蒸し機(蒸気圧2,000mmAq)で2分間蒸煮しα化した。次いで、250mmの長さにカットし、必要により既知の調味液等を溶かした水を20~30ml前後塗布した80~90g相当量を1食とし、油揚げ用のバスケットに投入し、油槽温度120~160℃で水分を2~5%前後まで蒸発させ、本発明のスナック麺(カップ和風麺)を得た。
【0019】実施例4
小麦粉800g、馬鈴薯澱粉200g、かんすい4.5g、食塩10g、増粘多糖類2g、レシチン15gを水350mlに溶かし、横型ミキサーで10分間混捏し、ドウとした。このドウの一部を750mmHgの脱気下で直径20mmのダイスを通し円筒状のドウ(生地)として圧送されたものを圧出時に間欠的に切断し、直径20mm、長さ20mmのチップ状の小塊とした。作成した小塊と残部のドウを重量比1:1で混合し、複合機(整形ロールおよび複合ロール)により厚さ10mmの麺帯とし、さらに圧延ロールを通し、切刃#18(角)にて厚さ1.4mmの麺線とした。この麺線を蒸し機(蒸気圧1,500mmAq)で2分間蒸煮しα化した。次いで、250mmの長さにカットし、必要により既知の調味液等を溶かした水を20~30ml前後塗布した110~120g相当量を1食とし、油揚げ用のバスケットに投入し、油槽温度120~160℃で水分を2~5%前後まで蒸発させ、本発明の即席中華麺(袋麺)を得た。」
イ 甲2に記載された発明
甲2に記載された事項を、特に実施例1ないし4に関して整理すると、甲2には次の発明(以下、順に「甲2実施例1製法発明」、「甲2実施例2製法発明」、「甲2実施例3製法発明」、「甲2実施例4製法発明」及び「甲2麺発明」という。)が記載されていると認める。
<甲2実施例1製法発明>
「小麦粉800g、タピオカ加工澱粉200g、かんすい4.5g、食塩10g、クチナシ色素1.5g、増粘多糖類2g、レシチン15gを水350mlに溶かし、横型ミキサーで10分間混捏し、ドウとし、このドウを押出し成型機を用いて真空度760mmHgの脱気下で直径20mmのダイスを通し円筒状のドウ(生地)として圧送されたものを圧出時に間欠的に切断し、直径20mm、長さ20mmのチップ状の小塊とし、作成した小塊を、複合機(整形ロールおよび複合ロール)により厚さ10mmの麺帯とし、圧延ロールを通し、切刃#18(角)にて、厚さ1.4mmの麺線とし、この麺線を蒸し機(蒸気圧1,500mmAq)で2分間蒸煮しα化し、次いで、250mmの長さにカットし、必要により既知の調味液等を溶かした水を20~30ml前後塗布した110~120g相当量を1食とし、油揚げ用のバスケットに投入し油槽温度120~160℃で水分を2~5%前後まで蒸発させ、即席油揚げ麺を得る方法。」
<甲2実施例2製法発明>
「小麦粉700g、タピオカ加工澱粉300g、かんすい4.5g、食塩10g、クチナシ色素1.5g、増粘多糖類2g、レシチン15gを水360mlに溶かし、横型ミキサーで10分間混捏し、ドウとし、このドウを押出し成型機を用いて真空度760mmHgの脱気下で直径20mmのダイスを通し円筒状のドウ(生地)として圧送されたものを圧出時に間欠的に切断し、直径20mm、長さ20mmのチップ状の小塊とし、作成した小塊を、複合機(整形ロールおよび複合ロール)により厚さ10mmの麺帯とし、さらに圧延ロールを通し、切刃#22(角)にて厚さ1.2mmの麺線とし、この麺線を蒸し機(蒸気圧1,500mmAq)で2分間蒸煮しα化し、次いで、250mmの長さにカットし、必要により既知の調味液等を溶かした水を20~30ml前後塗布した80~90g相当量を1食とし、油揚げ用のバスケットに投入し、油槽温度120~160℃で水分を2~5%前後まで蒸発させ、即席油揚げ麺を得る方法。」
<甲2実施例3製法発明>
「小麦粉600g、タピオカ油脂加工澱粉400g、重合リン酸塩4.5g、食塩10g、増粘多糖類2g、レシチン15gを水380mlに溶かし、横型ミキサーで10分間混捏し、ドウとし、このドウを押出し成型機を用いて真空度760mmHgの脱気下で直径20mmのダイスを通し円筒状のドウ(生地)として圧送されたものを圧出時に間欠的に切断し、直径20mm、長さ10mmのチップ状の小塊とし、作成した小塊を、複合機(整形ロールおよび複合ロール)により厚さ10mmの麺帯とし、さらに圧延ロールを通し、切刃#12(角)にて厚さ1.0mmの麺線とし、この麺線を蒸し機(蒸気圧2,000mmAq)で2分間蒸煮しα化し、次いで、250mmの長さにカットし、必要により既知の調味液等を溶かした水を20~30ml前後塗布した80~90g相当量を1食とし、油揚げ用のバスケットに投入し、油槽温度120~160℃で水分を2~5%前後まで蒸発させ、即席油揚げ麺を得る方法。」
<甲2実施例4製法発明>
「小麦粉800g、馬鈴薯澱粉200g、かんすい4.5g、食塩10g、増粘多糖類2g、レシチン15gを水350mlに溶かし、横型ミキサーで10分間混捏し、ドウとし、このドウの一部を750mmHgの脱気下で直径20mmのダイスを通し円筒状のドウ(生地)として圧送されたものを圧出時に間欠的に切断し、直径20mm、長さ20mmのチップ状の小塊とし、作成した小塊と残部のドウを重量比1:1で混合し、複合機(整形ロールおよび複合ロール)により厚さ10mmの麺帯とし、さらに圧延ロールを通し、切刃#18(角)にて厚さ1.4mmの麺線とし、この麺線を蒸し機(蒸気圧1,500mmAq)で2分間蒸煮しα化し、次いで、250mmの長さにカットし、必要により既知の調味液等を溶かした水を20~30ml前後塗布した110~120g相当量を1食とし、油揚げ用のバスケットに投入し、油槽温度120~160℃で水分を2~5%前後まで蒸発させ、即席油揚げ麺を得る方法。」
<甲2麺発明>
「甲2実施例1製法発明ないし甲2実施例4製法発明のいずれかによって得られた即席油揚げ麺。」
2 取消理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)について
(1)本件特許発明1について
ア 甲1実施例1製法発明との対比・判断
(ア)対比
本件特許発明1と甲1実施例1製法発明を対比する。
甲1実施例1製法発明における「小麦粉700g及び加工デンプン(酢酸デンプン)(松谷化学工業株式会社製、松谷さくら(商品名))300gに、食塩(ダイヤソルト株式会社製、並塩)10g、かんすい(オリエンタル酵母工業株式会社製、粉末かんすい 赤(商品名))4.5g、クチナシ色素(理研ビタミン株式会社製、リケカラーYGL-81)1.5g、及び増粘剤(三菱商事ライフサイエンス株式会社製、オルノー・G2(商品名))2gを水360gに溶解した練り水を加え(加水率36質量%)、横型のピンミキサーで10分間混合又は混練」する工程は本件特許発明1における「混合工程」に相当する。
甲1実施例1製法発明における「真空押出機(株式会社武蔵商会製、MV-8型)を用い、得られた麺生地を、減圧した装置内(真空圧(ゲージ圧)-0.090MPa~-0.098MPa)を通して直径9mmのダイスから押し出し、小塊状に成形し、得られた小塊状の生地を、ロールに通して麺帯にし、それを2枚合わせた状態で再度ロールを通して一体化させ、さらに4対のロールに通して圧延した後、#22番角の切刃を通して、厚み1.20mmの麺線を得」る工程は本件特許発明1における「前記混合工程で得られた麺生地を、減圧下において押し出して小塊又は板状とした後に麺線化する工程」である「製麺工程」に相当する。
甲1実施例1製法発明における「得られた麺線を、ボイラーで発生させた蒸気を減圧させた後に噴射している蒸機の中を2分間通過させてα化させ」る工程は本件特許発明1における「α化工程」に相当する。
甲1実施例1製法発明における「得られたα化工程後の麺線を、50℃の水に2秒間浸漬させ、この浸漬による麺線への水分付与量は1食分の麺線(約71g)につき19.0ml(製麺工程で得られた麺線100g当たり26.8ml)であ」る工程は本件特許発明1における「前記α化工程の後、かつ、前記フライ乾燥工程で麺線をカットする前までの間、前記α化工程で得られた麺線に、水又は着味液を付与」するものであって、「麺線に与える水分量が、前記製麺工程で得られた麺線100g当たり25~47ml」である「水分付与工程」に相当する。
甲1実施例1製法発明における「その後、麺線を20cm程度の長さにカットし、1食当たり20mlのほぐし液を付与し、1食ずつ円錐台形状のフライ枠(天面内径87mm×底面内径72mm×高さ62mm、底面に直径3.2mmの丸孔を複数形成)に充填し、直径3.2mmの丸孔が複数形成された上蓋で蓋をして、約135℃のパーム油に30秒間、その後約160℃のパーム油に90秒間浸漬して、麺塊を乾燥させ」る工程は本件特許発明1における「フライ乾燥工程」に相当する。
そうすると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「混合工程、製麺工程、α化工程、水分付与工程、及びフライ乾燥工程を備える即席油揚げ麺の製造方法であって、
前記製麺工程が、前記混合工程で得られた麺生地を、減圧下において押し出して小塊又は板状とした後に麺線化する工程であり、
前記水分付与工程は、前記α化工程の後、かつ、前記フライ乾燥工程で麺線をカットする前までの間に、前記α化工程で得られた麺線に、水又は着味液を付与する工程であり、かつ、
前記水分付与工程で麺線に与える水分量が、前記製麺工程で得られた麺線100g当たり25~47mlである、
即席油揚げ麺の製造方法。」
そして、両者は次の点で一応相違する。
<相違点1-1a>
本件特許発明1においては、「前記混合工程で用いる原材料は、小麦粉、でん粉、及び、植物性たんぱくの3種の原料粉を含み」と特定されているのに対し、甲1実施例1製法発明においては、「小麦粉700g」と「加工デンプン(酢酸デンプン)(松谷化学工業株式会社製、松谷さくら(商品名))300g」を用いる、即ち「小麦粉」及び「でん粉」を用いるものであるものの、本件特許発明1のように「植物性たんぱく」を用いることは特定されていない点。
<相違点1-1b>
本件特許発明1においては、「前記原料粉のたんぱく質含量の合計が、6.3~10.3質量%であり」と特定されているのに対し、甲1実施例1製法発明においては、そのようには特定されていない点。
(イ)判断
そこで、相違点1-1aについて検討する。
甲1実施例1製法発明は「植物性たんぱく」を含むものではないので、相違点1-1aは実質的な相違点である。
そして、甲1には、甲1実施例1製法発明において、「小麦粉」と「加工デンプン(酢酸デンプン)(松谷化学工業株式会社製、松谷さくら(商品名))」に加えて、「植物性たんぱく」の3種を組み合わせて、原料粉として用いる動機付けとなる記載はなく、他の証拠にもそのような動機付けとなる記載はない。
したがって、甲1実施例1製法発明において、相違点1-1aに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は「余分な添加物を添加することなく、油脂含量を低減することができる」(本件特許の発明の詳細な説明の【0012】)という甲1実施例1製法発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。
よって、他の相違点について判断するまでもなく、本件特許発明1は甲1実施例1製法発明であるとはいえないし、甲1実施例1製法発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(ウ)特許異議申立人の主張について
a 特許異議申立人は、令和6年9月30日に提出された意見書において、「しかしながら、本件特許明細書の段落0021にも記載されているように、小麦粉にはたんぱく質が含まれており、小麦粉中のたんぱく質は「植物性たんぱく」に相当するから、加工でん粉の配合量を減らし、小麦粉の配合量を増やせば、当然に原料粉に含まれるたんぱく質の量は多くなり、粉末グルテン等の植物性たんぱくを別途添加することと実質的に同じである。・・・(略)・・・
更に、本件特許明細書には小麦粉に含まれるたんぱく質(グルテン)と、小麦粉とは別に添加された植物性たんぱく(グルテン)とで、作用効果に違いがあることを示す記載はないから、甲1実施例1製法発明も訂正発明1と同様の作用効果を奏すると考えられる。・・・(略)・・・
従って、「原料粉が植物性たんぱくを含むか否か」は実質的な差違ではなく、また、甲1実施例1製法発明も原料粉のたんぱく質含量の合計は6.3~10.3質量%の範囲内にあるから、訂正発明1は、甲1実施例1製法発明と同一であり、依然として新規性を有しない。」(上記意見書第2及び3ページ)と主張するが、上記(イ)のとおり、甲1実施例1製法発明が「植物性たんぱく」を含むものではない以上、相違点1-1aは実質的な相違点であり、本件特許発明1は甲1実施例1製法発明であるとはいえないから、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
b 特許異議申立人は、令和6年9月30日に提出された意見書において、「甲第1号証の段落0017には、・・・(略)・・・甲第1号証には、即席油揚げ麺の原料粉として、小麦粉、でん粉及び植物性たんぱくの3種を用いることが示唆されており、甲1実施例1製法発明において原料粉に「植物性たんぱく」を配合することに動機付けがある。」(上記意見書第4ページ)と主張するが、甲1の【0017】には、小麦粉、でん粉及び植物性たんぱくという特定の組み合わせを採用することが記載されている訳ではないかから、「小麦粉、でん粉及び植物性たんぱくの3種を用いることが示唆されており、甲1実施例1製法発明において原料粉に「植物性たんぱく」を配合することに動機付けがある。」とはいえず、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
c 特許異議申立人は、令和6年9月30日に提出された意見書において、「「原料粉として、小麦粉、でん粉及び植物性たんぱくの3種を用いること」は、当業者であれば当然に行う技術常識である。」(上記意見書第6ページ)と主張するが、甲1実施例1製法発明が「小麦粉、でん粉及び植物性たんぱくの3種を用いる」ものでない以上、「当業者であれば当然に行う技術常識である」とはいえず、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
なお、仮に、「小麦粉、でん粉及び植物性たんぱくの3種を用いる」ことが「技術常識である」としても、甲1実施例1製法発明において、「当然に行う」とまではいえない。
d 特許異議申立人は、令和6年9月30日に提出された意見書において、「本件特許明細書には、小麦粉に含まれるたんぱく質(グルテン)と、小麦粉とは別に添加された植物性たんぱく(グルテン)とで、作用効果に違いがあることを示す記載はなく、また、植物性たんぱく(グルテン)を用いることの優位性を示す記載もない。」(上記意見書第6ページ)、「いずれの植物性たんぱくを用いても、小麦粉とでん粉と併用していれば、必ず、即席油揚げ麺の油脂含量を低減する効果が得られることを理解できない。」(同意見書第7ページ)、「微量でも植物性たんぱくを添加すれば、・・・低減するということになるが、本件特許明細書及び令和6年8月21日付意見書には、この主張を裏付ける説明やデータは記載されていない。」(同意見書第7ページ)と主張するが、仮に、そうだとしても、甲1実施例1製法発明において、「植物性たんぱく」を原料粉として用いる動機付けがない以上、甲1実施例1製法発明において、相違点1-1aに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
イ 甲1実施例2製法発明ないし甲1実施例6製法発明いずれかとの対比・判断
本件特許発明1と甲1実施例2製法発明ないし甲1実施例6製法発明いずれかとの対比・判断についても、本件特許発明1と甲1実施例1製法発明との対比・判断と同様のことがいえる。
すなわち、本件特許発明1は甲1実施例2製法発明ないし甲1実施例6製法発明のいずれかであるとはいえないし、甲1実施例2製法発明ないし甲1実施例6製法発明のいずれか並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
以下、甲1実施例1製法発明ないし甲1実施例6製法発明を、総称して「甲1実施例製法発明」という。
(2)本件特許発明2及び4について
本件特許発明2及び4は、請求項1の記載を引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1実施例製法発明であるとはいえないし、甲1実施例製法発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)本件特許発明3について
本件特許発明3は、請求項1の記載を引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲1実施例製法発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)本件特許発明5について
本件特許発明5は本件特許発明1ないし4のいずれかにより得られた麺の発明であり、甲1麺発明は甲1実施例製法発明により得られた麺の発明であるから、本件特許発明1、2及び4が甲1実施例製法発明であるとはいえず、また、本件特許発明1ないし4が甲1実施例製法発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない以上、本件特許発明5は甲1麺発明であるとはいえないし、また、甲1麺発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(5)取消理由1についてのむすび
したがって、本件特許発明1、2、4及び5は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、本件特許発明1ないし5は同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであるとはいえず、同法第113条第2号に該当せず、取消理由1によっては取り消すことはできない。
3 取消理由2(甲2に基づく進歩性)について
(1)本件特許発明1について
ア 甲2実施例1製法発明との対比・判断
(ア)対比
本件特許発明1と甲2実施例1製法発明を対比する。
甲2実施例1製法発明における「小麦粉800g、タピオカ加工澱粉200g、かんすい4.5g、食塩10g、クチナシ色素1.5g、増粘多糖類2g、レシチン15gを水350mlに溶かし、横型ミキサーで10分間混捏し、ドウと」する工程は本件特許発明1における「混合工程」に相当する。
甲2実施例1製法発明における「このドウを押出し成型機を用いて真空度760mmHgの脱気下で直径20mmのダイスを通し円筒状のドウ(生地)として圧送されたものを圧出時に間欠的に切断し、直径20mm、長さ20mmのチップ状の小塊とし、作成した小塊を、複合機(整形ロールおよび複合ロール)により厚さ10mmの麺帯とし、圧延ロールを通し、切刃#18(角)にて、厚さ1.4mmの麺線と」する工程は本件特許発明1における「前記混合工程で得られた麺生地を、減圧下において押し出して小塊又は板状とした後に麺線化する工程」である「製麺工程」に相当する。
甲2実施例1製法発明における「この麺線を蒸し機(蒸気圧1,500mmAq)で2分間蒸煮しα化」する工程は本件特許発明1における「α化工程」に相当する。
甲2実施例1製法発明における「油揚げ用のバスケットに投入し油槽温度120~160℃で水分を2~5%前後まで蒸発させ」る工程は本件特許発明1における「フライ乾燥工程」に相当する。
そうすると、両者は次の点で一致する。
<一致点>
「混合工程、製麺工程、α化工程、及びフライ乾燥工程を備える即席油揚げ麺の製造方法であって、
前記製麺工程が、前記混合工程で得られた麺生地を、減圧下において押し出して小塊又は板状とした後に麺線化する工程であり、
前記水分付与工程は、前記α化工程の後に、前記α化工程で得られた麺線に、水又は着味液を付与する工程であり、かつ、
前記水分付与工程で麺線に与える水分量が、前記製麺工程で得られた麺線100g当たり25~47mlである、
即席油揚げ麺の製造方法。」
そして、両者は次の点で相違する。
<相違点2-1a>
本件特許発明1においては、「前記混合工程で用いる原材料は、小麦粉、でん粉、及び、植物性たんぱくの3種の原料粉を含み」と特定されているのに対し、甲2実施例1製法発明においては、「小麦粉800g」及び「タピオカ加工澱粉200g」を用いる、即ち「小麦粉」及び「でん粉」を用いるものであるものの、本件特許発明1のように「植物性たんぱく」を用いることは特定されていない点。
<相違点2-1b>
本件特許発明1においては、「前記原料粉のたんぱく質含量の合計が、6.3~10.3質量%であり、」と特定されているのに対し、甲2実施例1製法発明においては、そのようには特定されていない点。
<相違点2-1c>
本件特許発明1においては、「水分付与工程」「を備える」と特定された上で「前記水分付与工程は、前記α化工程の後に、前記α化工程で得られた麺線に、水又は着味液を付与する工程であり、かつ、
前記水分付与工程で麺線に与える水分量が、前記製麺工程で得られた麺線100g当たり25~47mlである」と特定されているのに対し、甲2実施例1製法発明においては、そのようには特定されていない点。
(イ)判断
そこで、相違点2-1aについて検討する。
甲2には、甲2実施例1製法発明において、「小麦粉」と「タピオカ油脂加工澱粉」に加え、「植物性たんぱく」を原料粉として用いる動機付けとなる記載はなく、他の証拠にもそのような動機付けとなる記載はない。
したがって、甲2実施例1製法発明において、相違点2-1aに係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は「余分な添加物を添加することなく、油脂含量を低減することができる」という甲2実施例1製法発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することのできた範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。
よって、他の相違点について判断するまでもなく、本件特許発明1は甲2実施例1製法発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(ウ)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、令和6年9月30日に提出された意見書において、相違点2-1aについて、「前述したように、小麦粉にはたんぱく質が含まれており、小麦粉中のたんぱく質は「植物性たんぱく」に相当するから、加工でん粉の配合量を減らし、小麦粉の配合量を増やせば、当然に原料粉に含まれるたんぱく質の量は多くなり、粉末グルテン等の植物性たんぱくを別途添加することと実質的に同じである。
・・・(略)・・・「原料粉として、小麦粉、でん粉及び植物性たんぱくの3種を用いること」は、当業者であれば当然に行う技術常識である。」(上記意見書第8及び9ページ)と主張するが、甲2実施例1製法発明が「小麦粉、でん粉及び植物性たんぱくの3種を用いる」ものでない以上、「当業者であれば当然に行う技術常識である」とはいえず、特許異議申立人の上記主張は採用できない。
なお、仮に、「小麦粉、でん粉及び植物性たんぱくの3種を用いる」ことが「技術常識である」としても、甲2実施例1製法発明において、「当然に行う」とまではいえない。
イ 甲2実施例2製法発明ないし甲2実施例4製法発明いずれかとの対比・判断
本件特許発明1と甲2実施例2製法発明ないし甲2実施例4製法発明いずれかとの対比・判断についても、本件特許発明1と甲2実施例1製法発明との対比・判断と同様のことがいえる。
すなわち、本件特許発明1は甲2実施例2製法発明ないし甲2実施例4製法発明のいずれか並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
以下、甲2実施例1製法発明ないし甲2実施例4製法発明を、総称して「甲2実施例製法発明」という。
(2)本件特許発明2ないし4について
本件特許発明2ないし4は、請求項1の記載を引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に、甲2実施例製法発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3)本件特許発明5について
本件特許発明5は本件特許発明1ないし4のいずれかにより得られた麺の発明であり、甲2麺発明は甲2実施例製法発明により得られた麺の発明であるから、本件特許発明1が甲2実施例製法発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない以上、本件特許発明5は甲2麺発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(4)取消理由2についてのむすび
したがって、本件特許発明1ないし5は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであるとはいえず、同法第113条第2号に該当せず、取消理由2によっては取り消すことができない。
第7 取消理由として採用しなかった特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由について
取消理由として採用しなかった特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由は申立理由3(実施可能要件)及び申立理由4(明確性要件)である。
以下、順に検討する。
1 申立理由3(実施可能要件)について
(1)実施可能要件の判断基準
上記第3のとおり、本件特許発明3は物を生産する方法の発明であるところ、物を生産する方法の発明について実施可能要件を充足するためには、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産する方法の使用をし、その方法により生産した物の使用をすることができる程度の記載があることを要する。
そこで、検討する。
(2)実施可能要件の判断
本件特許の発明の詳細な説明(以下、「発明の詳細な説明」という。)には本件特許発明3の各発明特定事項について具体的に記載されており、実施例についても具体的に記載されている。
したがって、発明の詳細な説明に、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本件特許発明3の使用をし、本件特許発明3により生産した物の使用をすることができる程度の記載があるといえる。
よって、本件特許発明3に関して、発明の詳細な説明の記載は実施可能要件を充足する。
(3)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人の上記第4 3における主張について検討する。
発明の詳細な説明の【0024】には粉末油脂の配合量について具体的に記載されており、同【0054】ないし【0059】及び【0063】ないし【0075】には粉末油脂を配合した実施例について具体的に記載されている。
そうすると、本件特許の請求項3において、粉末油脂の添加量について何ら特定されておらず、発明の詳細な説明に粉末油脂の添加による作用効果や、麺線の密度や空隙率への影響等について、何ら記載されていないとしても、本件特許発明3を実施するのに当業者に期待しうる程度を超える試行錯誤を必要とするものとはいえない。
したがって、特許異議申立人の上記第4 3における主張は採用できない。
(4)申立理由3についてのむすび
したがって、本件特許の請求項3に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえず、同法第113条第4号に該当せず、申立理由3によっては取り消すことはできない。
2 申立理由4(明確性要件)について
(1)明確性要件の判断基準
特許を受けようとする発明が明確であるかは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。
また、物の発明に係る特許請求の範囲にその物の製造方法が記載されている場合において、当該特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号にいう「発明が明確であること」という要件に適合するといえるのは、出願時において当該物をその構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でないという事情(以下「不可能・非実際的事情」という)が存在するときに限られると解するのが相当である(最高裁第二小法廷平成27年6月5日 平成24年(受)第1204号、平成24年(受)第2658号)。
そこで、検討する。
(2)明確性要件の判断
本件特許発明5は物の発明であるところ、本件特許の請求項5にはその物の製造方法が記載されているといえ、この場合に明確性要件に適合するには、本件特許発明5に不可能・非実際的事情が存在することが必要となるが、発明の詳細な説明の【0011】には、不可能・非実際的事情が存在することを説明する記載があるから、本件特許発明5に不可能・非実際的事情が存在するといえる。
また、本件特許の請求項5の記載は、他に不明確な記載はなく、また、発明の詳細な説明の記載とも整合している。
したがって、本件特許発明5に関して、不可能・非実際的事情が存在するといえ、また、特許請求の範囲の記載は、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願時における技術常識を基礎として第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるとはいえない。
(3)特許異議申立人の主張について
特許異議申立人の上記第4 4における主張について検討する。
上記(2)のとおり、発明の詳細な説明に不可能・非実際的事情が存在することを説明する記載がある。
また、本件特許権者が即席麺について構造や特性を特定した発明を多数出願していることは、それらの出願に係る発明に不可能・非実際的事情が存在しないことを示すものではあるが、本件特許発明5に不可能・非実際的事情が存在しないことの理由にはならない。
したがって、特許異議申立人の上記第4 4における主張は採用できない。
(4)申立理由4についてのむすび
したがって、本件特許の請求項5に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえず、同法第113条第4号に該当せず、申立理由4によっては取り消すことはできない。
第8 特許異議申立人が主張する新たな理由について
1 特許異議申立人が主張する新たな理由
特許異議申立人は、令和6年9月30日に提出された意見書において、付言として、本件特許の請求項1ないし5を取り消すべき理由として、次の新たな理由を主張している(上記意見書第16ページ)。
(1)新たな理由1(参考資料2に基づく請求項1に対する新規性・進歩性)
(2)新たな理由2(請求項1ないし5に対するサポート要件)
そこで、順に検討する。
2 新たな理由1(参考資料2に基づく請求項1に対する新規性・進歩性)について
(1)参考資料2に記載された事項等
ア 参考資料2に記載された事項
参考資料2には、「即席フライ麺及びその製造方法」に関して、おおむね次の事項が記載されている。
・「【実施例】
【0063】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0064】
粉末原料として使用した成分を表1に示す。
【0065】
【表1】
[図:0001419356000001.jpg]
【0066】
こね水に混合した成分を表2に示す。
【0067】
【表2】
[図:0001419356000002.jpg]
【0068】
即席フライ麺を以下の手順で製造した。
【0069】
表2に記載の成分を320mLの水に溶解してこね水を調製した。増粘多糖類として、アルギン酸エステルとグアーガムを質量比4:1で使用した。こね水中の各成分の質量%を表3~7に示す。
【0070】
表1に記載の成分を混合して得られた1kgの主原料に320mLの上記こね水を添加して、ミキサーで10分間混合してドウを得た。主原料中の各成分の質量%を表3~7に示す。
【0071】
直径20mmの円形の孔を有するダイスを取り付けた押出成形機のバレルにドウを入れ、バレル内部の圧力を100kPaに減圧し、脱気しながらドウを押し出して押出物を得た。得られた押出物を25mmの長さの円筒状に切断して小塊を得た。
【0072】
小塊を複合圧延機に投入し、複合及び圧延して麺帯を形成した。得られた麺帯を16番丸切刃で麺線厚が1.20mmとなるように切り出して麺線を得た。得られた麺線の断面積は1.70~2.98mm2であった。
【0073】
麺線に水を噴霧した後、温度100℃の水蒸気を用いて蒸煮装置内で3分間蒸煮した。
【0074】
蒸煮した麺線に塩水を噴霧した後、長さ30cmに切断した麺線を直径120mmの乾燥用バスケットに成形充填して70gの麺塊の形状とし、150℃のパーム油で2分間油揚げすることにより麺線を乾燥して、即席フライ麺を得た。」
・「【0084】
【表3】
[図:0001419356000003.jpg]
」
・「【0087】
【表4】
[図:0001419356000004.jpg]
」
・「【0089】
【表5】
[図:0001419356000005.jpg]
」
イ 参考資料2に記載された発明
参考資料2に記載された事項を、特に実施例3、9及び10に関して整理すると、参考資料2には次の発明(以下、「参考2製法発明」という。)が記載されていると認める。
<参考2製法発明>
「実施例3、9又は10の麺の製造方法。」(当審注:実施例3、9又は10については上記ア参照。)
(2)本件特許発明1について
ア 対比
本件特許発明1と参考2製法発明を対比するに、両者は次の点で一応相違し、それ以外は一致する。
<相違点(参考2)>
本件特許発明1においては、「前記水分付与工程で麺線に与える水分量が、前記製麺工程で得られた麺線100g当たり25~47mlである」と特定されているのに対し、参考2製法発明においては、そのようには特定されていない点。
イ 判断
相違点(参考2)について検討する。
参考資料2には、「水分付与工程で麺線に与える水分」に相当する「塩水」の量について何ら記載されていないから、相違点(参考2)は実質的な相違点である。
また、他の証拠にも、参考2製法発明における「塩水」の量をどの程度にするかについて記載も示唆もされていない。
したがって、参考2製法発明において、参考資料2及び他の証拠に記載された事項を考慮しても、相違点(参考2)に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本件特許発明1は「余分な添加物を添加することなく、油脂含量を低減することができる」という参考2製法発明並びに参考資料2及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することのできる範囲の効果を超える顕著な効果を奏するものである。
よって、本件特許発明1は、参考2製法発明であるとはいえないし、参考2製法発明並びに参考資料2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。
(3)新たな理由1についてのむすび
したがって、本件特許発明1は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであるとはいえず、同法第113条第2号に該当せず、新たな理由1によっては取り消すことはできない。
3 新たな理由2(請求項1ないし5に対するサポート要件)について
(1)サポート要件の判断基準
特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
そこで、検討する。
(2)サポート要件の判断
ア 特許請求の範囲の記載
本件特許の特許請求の範囲の記載は上記第3のとおりである。
イ 判断
発明の詳細な説明の【0008】によると、本件特許発明1ないし4の解決しようとする課題は「余分な添加物を添加することなく、油脂含量を低減することができる即席油揚げ麺の製造方法」を提供することであり、本件特許発明5の解決しようとする課題は「その製造方法によって得られた即席油揚げ麺」を提供することである(以下、総称して「発明の課題」という。)。
発明の詳細な説明の【0009】には「本発明者らが、油脂含量を低減できる即席油揚げ麺の製造方法を開発すべく鋭意検討した結果、原材料に、小麦粉、でん粉、及び、植物性たんぱくからなる群より選ばれる少なくとも1種を、それらのたんぱく質含量が、6.3~10.3質量%となるように使用し、製麺工程において麺生地を減圧下において押し出しして麺線化することによって、上記目的が達成できることを見出した。」と記載されている。
発明の詳細な説明の【0010】には本件特許発明1ないし5に対応する記載がある。
発明の詳細な説明の【0021】には「前記原料粉のたんぱく質含量の合計は、通常6.3~10.3質量%であり」及び「原料粉は、小麦粉、でん粉、及び植物性たんぱくの3種を含むことが好ましい。」と記載されている。
発明の詳細な説明の【0029】には「得られた麺生地を、減圧下において押し出して小塊又は板状とした後に麺線化する。麺生地を減圧下で押し出すことで、麺生地に含まれる空気を抜くことができる」と記載されている。
発明の詳細な説明の【0038】ないし【0082】には、「混合工程、製麺工程、α化工程、水分付与工程、及びフライ乾燥工程を備える即席油揚げ麺の製造方法であって、
前記混合工程で用いる原材料は、小麦粉、でん粉、及び、植物性たんぱくの3種の原料粉を含み、
前記原料粉のたんぱく質含量の合計が、6.3~10.3質量%であり、
前記製麺工程が、前記混合工程で得られた麺生地を、減圧下において押し出して小塊又は板状とした後に麺線化する工程である即席油揚げ麺の製造方法」及び「その製造方法によって得られた即席油揚げ麺」の条件を満たす実施例が、該条件を満たさない比較例よりも、油脂含量が低減されていることを確認する記載がある。
そうすると、発明の詳細な説明の上記記載から、当業者は「混合工程、製麺工程、α化工程、水分付与工程、及びフライ乾燥工程を備える即席油揚げ麺の製造方法であって、
前記混合工程で用いる原材料は、小麦粉、でん粉、及び、植物性たんぱくの3種の原料粉を含み、
前記原料粉のたんぱく質含量の合計が、6.3~10.3質量%であり、
前記製麺工程が、前記混合工程で得られた麺生地を、減圧下において押し出して小塊又は板状とした後に麺線化する工程である即席油揚げ麺の製造方法」及び「その製造方法によって得られた即席油揚げ麺」は発明の課題を解決できると認識できる。
そして、本件特許発明1ないし4は当業者が発明の課題を解決できると認識できる上記「即席油揚げ麺の製造方法」をさらに限定したものであり、本件特許発明5は当業者が発明の課題を解決できると認識できる上記「即席油揚げ麺」をさらに限定したものである。
したがって、本件特許発明1ないし5は発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により、当業者が発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえ、本件特許発明1ないし5に関して、特許請求の範囲の記載はサポート要件に適合する。
(3)新たな理由2についてのむすび
したがって、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるとはいえず、同法第113条第4号に該当せず、新たな理由2によっては取り消すことはできない。
第9 結語
上記第6ないし8のとおり、本件特許の請求項1ないし5に係る特許は、取消理由、特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由及び令和6年8月21日に提出された意見書において特許異議申立人が主張する新たな理由によっては取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700414