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特許異議申立

2025-700751

共重合体、組成物、ワニス、及びそれらの硬化体

審判番号
2025-700751
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2024-094624
登録番号
7627379
請求日
2025年07月22日
審決日
2025年10月23日
公報発行日
2025年11月28日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】デンカ株式会社
  • 【権利者代理人】アクシス国際弁理士法人
  • 【異議申立人】小黒 平二
審判長/審判官
  • 審判長 細井 龍史
  • 審判官 松本 直子
  • 審判官 越本 秀幸
分類
P1651.113-Y (C08F) / P1651.121-Y (C08F) / P1651.536-Y (C08F) / P1651.537-Y (C08F)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7627379号発明「共重合体、組成物、ワニス、及びそれらの硬化体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7627379号の請求項1~11に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7627379号(以下「本件特許」という。)に係る出願は、2023年(令和5年)1月17日(優先権主張:令和4年1月19日)を国際出願日とする出願(特願2023-557658号)の一部を、令和6年6月11日に新たな出願(特願2024-94624号)としたものであって、令和7年1月28日にその特許権の設定登録(請求項の数11)がされ、同年2月5日に特許掲載公報が発行されたものである。 そして、令和7年7月22日に小黒 平二(以下「申立人」という。)により、請求項1~11に係る特許に対して特許異議の申立てがされた。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~11に係る発明(以下「本件発明1」~「本件発明11」といい、これらをまとめて「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定される次のとおりのものである。また、本件特許の願書に添付された明細書を「本件明細書」という。 「【請求項1】 下記(1)~(4)の条件をすべて満たす、オレフィン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体であって、 (1)共重合体の数平均分子量が500以上10万未満である。 (2)芳香族ビニル化合物単量体が、炭素数8以上20以下の芳香族ビニル化合物であり、芳香族ビニル化合物単量体単位の含量が70質量%を超える。 (3)芳香族ポリエンが、分子内にビニル基及び/又はビニレン基を複数有する炭素数10以上20以下のポリエンから選ばれる一種以上であり、かつ芳香族ポリエン単位に由来するビニル基及び/又はビニレン基の含有量が数平均分子量あたり2個以上30個未満である。 (4)炭素数2以上20以下のオレフィン単量体単位から選ばれる単数又は複数が含まれ、芳香族ビニル化合物単量体単位と芳香族ポリエン単量体単位と前記オレフィン単量体単位との合計が100質量%であり、芳香族ビニル化合物単量体単位と芳香族ポリエン単量体単位とオレフィン単量体単位との合計100質量%に対して、オレフィン単量体単位の含有量が1質量%以上である。 【請求項2】 芳香族ビニル化合物単量体単位と芳香族ポリエン単量体単位とオレフィン単量体単位との合計100質量%に対して、オレフィン単量体単位の含有量が1質量%以上30質量%未満である、請求項1に記載のオレフィン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体。 【請求項3】 請求項1に記載のオレフィン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体と、以下の(a)~(d)から選ばれる単数又は複数とを含む組成物。 (a)硬化剤 (b)炭化水素系エラストマー、ポリフェニレンエーテル系樹脂、芳香族ポリエン系樹脂から選ばれる単数又は複数の樹脂 (c)単量体 (d)下記(i)~(iv)の条件をすべて満たす、別のオレフィン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体 (i)共重合体の数平均分子量が500以上10万未満である。 (ii)芳香族ビニル化合物単量体が、炭素数8以上20以下の芳香族ビニル化合物であり、芳香族ビニル化合物単量体単位の含量が70質量%以下である。 (iii)芳香族ポリエンが、分子内にビニル基及び/又はビニレン基を複数有する炭素数10以上20以下のポリエンから選ばれる一種以上であり、かつ芳香族ポリエン単位に由来するビニル基及び/又はビニレン基の含有量が数平均分子量あたり1.5個以上20個未満である。 (iv)オレフィンが炭素数2以上20以下のオレフィンから選ばれる単数又は複数であり、オレフィン単量体単位の含量が30質量%以上であり、前記オレフィン単量体単位と芳香族ビニル化合物単量体単位と芳香族ポリエン単量体単位の合計が100質量%である。 【請求項4】 請求項1又は2に記載の共重合体、又は請求項3に記載の組成物と、(h)溶剤とを含むワニス。 【請求項5】 溶剤がMEK(メチルエチルケトン)である、請求項4に記載のワニス。 【請求項6】 請求項1又は2に記載のオレフィン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体の硬化体。 【請求項7】 請求項3に記載の組成物の硬化体。 【請求項8】 請求項4に記載のワニスの硬化体。 【請求項9】 電気絶縁材料である請求項6に記載の硬化体。 【請求項10】 請求項6に記載の硬化体を含む、CCL基板、FCCL基板、層間絶縁材、ボンディングシート、又はカバーレイ。 【請求項11】 請求項7に記載の硬化体を含む、CCL基板、FCCL基板、層間絶縁材、ボンディングシート、又はカバーレイ。」 第3 申立理由の概要 申立人は、証拠方法として甲第1~5号証(以下「甲第1号証」等を、「甲1」等という。)を提出し、特許異議申立書(以下「申立書」という。)において、概略、以下の申立理由を主張する。 1 申立理由1(新規性) 本件発明1~11は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、甲1に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 2 申立理由2(進歩性) 本件発明1~11は、その優先日前に日本国内又は外国において頒布された刊行物である又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、甲1に記載された発明及び甲2~5に記載された事項に基づいて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、これらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 3 申立理由3(サポート要件) 本件特許の請求項1~11に係る特許は、下記(ア)及び(イ)の点で特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 (ア)本件発明1~11について 本件発明1~11のオレフィン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体は、芳香族ビニル化合物単体、芳香族ポリエン、オレフィン単量体として広範なものを包含するが、実施例において具体的に確認できるのは、合成例P-1~P-4に示された「スチレン-ジビニルベンゼン-エチレン」の組合せのみであって、特にオレフィンとしては、「エチレン」が必須であり、1-ヘキセンを含有する例はなく、本件出願時の技術常識に照らしても、本件発明1~11の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。 (イ)本件発明3~5、7、8、11について 本件発明3において、(a)硬化剤、(c)単量体は広範なものを包含するが、実施例において具体的に確認できるのは、(a)硬化剤はパーブチルPのみ、(c)単量体は1,2-ポリブタジエンのみであり、本件出願時の技術常識に照らしても、本件発明3~5、7、8、11の範囲まで、発明の詳細な説明に開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。 4 申立理由4(実施可能要件) 本件特許の請求項1~11に係る特許は、下記(ア)及び(イ)の点で特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 (ア)本件発明1~11について 上記3(ア)と同様の理由により、本件発明1~11を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に発明の詳細な説明が記載されていない。 (イ)本件発明3~5、7、8、11について 上記3(イ)と同様の理由により、本件発明3~5、7、8、11を当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に発明の詳細な説明が記載されていない。 5 申立理由5(明確性要件) 請求項3~5、7、8、11に係る特許は、下記(ア)の点で特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し取り消すべきものである。 (ア)本件発明3~5、7、8、11について 本件発明3において、本件発明の課題を解決するために、共重合体に対し、(a)~(d)から選ばれる単数又は複数を、どの程度配合すればよいのか不明であるから、本件発明3~5、7、8、11は明確でない。 6 申立書に添付して提出された証拠方法 甲1:特開2018-39995号公報 甲2:特開2010-280771号公報 甲3:特開2009-161743号公報 甲4:特開2010-280860号公報 甲5:国際公開第2020/067336号 第4 当審における判断 以下に述べるとおり、上記申立理由1~5は、いずれもその理由がない。 1 申立理由1及び2(新規性及び進歩性)について (1)甲1に記載された発明 甲1には、耐熱性、相溶性、誘電特性、湿熱信頼性及び耐熱酸化劣化性が改善された、多官能ビニル芳香族共重合体について開示されており(特許請求の範囲、【0021】)、実施例のうち、実施例1の共重合体A(【0139】、【0140】)に着目すると、甲1には以下の発明が記載されているものと認める。 「Mnは2500、Mwは24200、Mw/Mnは9.69であり、可溶性多官能ビニル芳香族共重合体の末端へのノルボルネン由来の末端基(c1)の導入量は2.6(個/分子)であり、ジビニルベンゼン由来の構造単位を49.8モル%(54.1wt%)、エチルビニルベンゼン由来の構造単位を合計20.3モル%(22.4wt%)、及び、ノルボルネンに由来する構造単位を29.9モル%(23.5wt%)含有しており(末端構造単位を含む)、残存ビニル基を持つジビニルベンゼン由来の構造単位の含有量は28.4モル%(30.8wt%)である共重合体A。」(以下「甲1発明」という。) (2)本件発明1について ア 本件発明1の技術的意義 本件明細書の【0006】には、「上記の公開特許文献に記載されているオレフィン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体は比較的軟質であり、かつトルエン、エチルベンゼン、リモネン等の溶媒には良好な溶解性を示すが、他の副原料に用いられる場合が多いメチルエチルケトン(MEK)等の溶剤への溶解性が不十分であり、これらの副原料を含むワニスを作成することが困難であるという課題を有している。」と記載されており、【0020】には、「本発明の実施形態に係る芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体、若しくはそれを含む組成物、又はそれからなる硬化体若しくはワニスにより、硬化体が硬質であり、かつ溶剤に対する溶解性が高い低誘電材料が得られる。」と記載されている(下線は当審において付した。以下同様。)。 すなわち、本件明細書の記載によれば、本件発明1のオレフィン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体は、これを用いて得られた硬化体が硬質であり、かつ溶剤(特にMEK(メチルエチルケトン))に対する溶解性が高い低誘電材料が得られるという技術的意義を有するものと認められる。 そして、本件明細書の実施例には、本件発明1に該当するスチレン含量が81又は86質量%である共重合体P-1及びP-2が、MEKに対する溶解性が「excellent」であると共に(【0099】【表1】)、当該共重合体を用いた硬化体(実施例1~6)は高い引張弾性率(210~3700MPa)並びに低い誘電率及び誘電正接を示すのに対し、スチレン含量が52質量%又は46質量%である共重合体P-3及びP-4は、MEKに対する溶解性が「NG」であり、また、共重合体P-3及びP-4単独の硬化体(比較例1及び2)は、実施例に比べて低い引張弾性率(8~10MPa)であったことが示されている(【0100】【表2】、【0106】)。 イ 対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 (ア)甲1発明の「共重合体A」は、「ノルボルネンに由来する構造単位」(23.5wt%)、「エチルビニルベンゼン由来の構造単位」(22.4wt%)、「ジビニルベンゼン由来の構造単位」(54.1wt%)とからなる(各構造単位の合計が100wt%である)ものであり、各構造単位は、順に、本件発明1の「オレフィン」、「芳香族ビニル化合物」、「芳香族ポリエン」に該当し、また、「共重合体A」のMnは2530である。 そうすると、甲1発明の「共重合体A」は、本件発明1の「オレフィン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体」に相当し、かつ、「(1)共重合体の数平均分子量が500以上10万未満である。」の条件を満たす。 (イ)甲1発明の「共重合体A」における「エチルビニルベンゼン由来の構造単位」(22.4wt%)は、本件発明1の「炭素数8以上20以下の芳香族ビニル化合物」に相当するから、本件発明1の「(2)芳香族ビニル化合物単量体が、炭素数8以上20以下の芳香族ビニル化合物であり、芳香族ビニル化合物単量体単位の含量が70質量%を超える。」の条件とは、「(2)芳香族ビニル化合物単量体が、炭素数8以上20以下の芳香族ビニル化合物である」限りにおいて一致する。 (ウ)甲1発明の「共重合体A」における「ジビニルベンゼン由来の構造単位」(54.1wt%)は、本件発明1の「分子内にビニル基及び/又はビニレン基を複数有する炭素数10以上20以下のポリエン」に相当する。 また、甲1発明は、「残存ビニル基を持つジビニルベンゼン由来の構造単位の含有量は28.4モル%(30.8wt%)」であるから、ジビニルベンゼン(分子量130)に由来する残存ビニル基の含有量は、Mn(2530)当たり、約6個(=2530×0.308÷130)となる。 そうすると、甲1発明の「共重合体A」は、「(3)芳香族ポリエンが、分子内にビニル基及び/又はビニレン基を複数有する炭素数10以上20以下のポリエンから選ばれる一種以上であり、かつ芳香族ポリエン単位に由来するビニル基及び/又はビニレン基の含有量が数平均分子量あたり2個以上30個未満である。」の条件を満たす。 (エ)甲1発明の「共重合体A」における「ノルボルネンに由来する構造単位」(23.5wt%)は、本件発明1の「炭素数2以上20以下のオレフィン単量体単位」に相当し、上記(ア)のとおり、3種の構造単位の合計が100wt%であり、この合計100wt%に対して、ノルボルネンに由来する構造単位の含有量は23.5wt%である。 そうすると、甲1発明の「共重合体A」は、「(4)炭素数2以上20以下のオレフィン単量体単位から選ばれる単数又は複数が含まれ、芳香族ビニル化合物単量体単位と芳香族ポリエン単量体単位と前記オレフィン単量体単位との合計が100質量%であり、芳香族ビニル化合物単量体単位と芳香族ポリエン単量体単位とオレフィン単量体単位との合計100質量%に対して、オレフィン単量体単位の含有量が1質量%以上である。」の条件を満たす。 以上のことから、本件発明1と甲1発明とは、 「下記(1)~(4)の条件をすべて満たす、オレフィン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体であって、 (1)共重合体の数平均分子量が500以上10万未満である。 (2)芳香族ビニル化合物単量体が、炭素数8以上20以下の芳香族ビニル化合物である。 (3)芳香族ポリエンが、分子内にビニル基及び/又はビニレン基を複数有する炭素数10以上20以下のポリエンから選ばれる一種以上であり、かつ芳香族ポリエン単位に由来するビニル基及び/又はビニレン基の含有量が数平均分子量あたり2個以上30個未満である。 (4)炭素数2以上20以下のオレフィン単量体単位から選ばれる単数又は複数が含まれ、芳香族ビニル化合物単量体単位と芳香族ポリエン単量体単位と前記オレフィン単量体単位との合計が100質量%であり、芳香族ビニル化合物単量体単位と芳香族ポリエン単量体単位とオレフィン単量体単位との合計100質量%に対して、オレフィン単量体単位の含有量が1質量%以上である。」の点で一致し、以下の点で相違する。 <相違点1> 「芳香族ビニル化合物単量体単位の含量」が、本件発明1では「70質量%を超える」のに対し、甲1発明では「22.4wt%」である点 ウ 新規性について 上記イのとおり、甲1発明の「エチルビニルベンゼン由来の構造単位」の含量は、22.4wt%であるから、相違点1は実質的な相違点である。 なお、甲1の実施例2~5の共重合体B~D及びG(【0141】~【0146】、【0151】)に着目して甲1発明を認定した場合であっても、モノビニル芳香族化合物に該当するエチルビニルベンゼン及びスチレン又はp-メチルスチレン由来の構造単位の合計含量が、それぞれ、33.7wt%、27.6wt%、31.8wt%、34.3wt%であるから、相違点1と同様の相違点を有することになる。 したがって、本件発明1は、甲1発明ではない。 エ 進歩性について (ア)相違点1について 甲1には、多官能ビニル芳香族共重合体の製造方法において、「ジビニル芳香族化合物とモノビニル芳香族化合物の合計100モル%に対し、ジビニル芳香族化合物2~98モル%、モノビニル芳香族化合物2~98モル%を使用し、かつ、シクロオレフィン化合物を3~300モル%使用」(請求項3)することが記載されており、また、多官能ビニル芳香族共重合体において、「モノビニル芳香族化合物に由来する構造単位(b)のモル分率は、好ましくは0.95~0.02であり、より好ましくは0.75~0.05であり、特に好ましくは0.60~0.10である。」(【0028】)ことが記載されている。 しかしながら、上記ウで説示したとおり、甲1発明(実施例1の共重合体A)だけでなく、甲1の実施例2~5の共重合体B~D及びGを踏まえても、甲1には、具体的に、モノビニル芳香族化合物に由来する構造単位が「70質量%を超える」ものは記載されていない。 そして、甲1には、「モノビニル芳香族化合物に由来する構造単位(b)は、硬化反応に関与するビニル基を有しないため、成形性等を与える」ことや、「構造単位(b)のモル分率が0.95を超えると耐熱性が低下し、0.02に満たないと成形加工性が低下する」(【0029】)ことが記載されており、「70質量%を超える」範囲を含み得る広範な数値範囲の示唆はあるものの、甲1の記載を踏まえても、芳香族ビニル化合物単量体単位の含量を「70質量%を超える」ものとすることにより、MEK(メチルエチルケトン)に対する溶解性を高めることは記載も示唆もされていないことから、甲1発明において、「エチルビニルベンゼン由来の構造単位」等のモノビニル芳香族化合物の含量を、あえて「70質量%を超える」量まで増加させる動機付けがあるとはいえない。 さらに、甲2~5の各記載をみても、芳香族ビニル化合物単量体単位の含量を「70質量%を超える」ものとすることにより、MEKに対する溶解性を高めることは記載も示唆もされていないから、甲1発明において、甲2~甲5の記載に基づいて、芳香族ビニル化合物単量体単位の含量を「70質量%を超える」ものとする動機付けがあるともいえない。 したがって、甲1発明において、甲1~甲5の記載を考慮しても、芳香族ビニル化合物単量体単位の含量を「70質量%を超える」ものとすることを当業者が容易に想到し得たものとはいえない。 (イ)本件発明の効果について 上記アでも説示したように、本件明細書(【0020】、【0006】)の記載によれば、本件発明1のオレフィン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体は、これを用いて得られた硬化体が硬質であり、かつ溶剤(特にMEK(メチルエチルケトン))に対する溶解性が高い低誘電材料が得られるという効果を奏すると認められる。 そして、本件明細書の実施例には、本件発明1に該当するスチレン含量が81又は86質量%である共重合体P-1及びP-2が、MEKに対する溶解性が「excellent」であると共に(【0099】【表1】)、当該共重合体を用いた硬化体(実施例1~6)は高い引張弾性率(210~3700MPa)並びに低い誘電率及び誘電正接を示すのに対し、スチレン含量が52質量%又は46質量%である共重合体P-3及びP-4は、MEKに対する溶解性が「NG」であり、また、共重合体P-3及びP-4単独の硬化体(比較例1及び2)は、実施例に比べて低い引張弾性率(8~10MPa)であったことが示されており(【0100】【表2】、【0106】)、本件発明1の上記効果が具体的に確認されている。 一方、甲1及び甲2~甲5の記載を参照しても、芳香族ビニル化合物単量体単位の含量が70質量%を超える共重合体を用いたことによる上記効果は、当業者が予測することができるものではない。 オ 小括 したがって、本件発明1は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明及び甲1~5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 (3)本件発明2~11について 本件発明2~11は、本件発明1を直接又は間接的に引用しており、本件発明1の発明特定事項を全て含むものであるから、本件発明2~11と甲1発明とは、少なくとも相違点1において相違する。 そうすると、上記(2)ウ及びエで説示したのと同様の理由により、本件発明2~11は、甲1に記載された発明ではなく、また、甲1に記載された発明及び甲1~5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。 (4)申立人の主張について 申立人は、本件発明1について、甲1の[請求項3]によれば、モノビニル芳香族化合物を2~98モル%使用すること等を根拠として、甲1発明の多官能ビニル芳香族共重合体は、本件請求項1で規定された下記(1)~(4)の条件をすべて満たすオレフィン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体に該当する旨を主張し、また、甲1の[実施例1~5]を参照しても、得られた共重合体A~D、Gは本件発明の共重合体に該当する旨を主張する(申立書6頁1行~7頁20行)。 しかしながら、上記(1)及び(2)で説示したとおり、甲1には、具体的に、芳香族ビニル化合物単量体単位の含量が「70質量%を超える」共重合体が記載されているとはいえないから、相違点1は実質的な相違点であり、本件発明1は、甲1に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものでもない。 したがって、申立人の主張は採用できない。 (5)申立理由1及び2についてのまとめ よって、本件発明1~11は、甲1に記載された発明ではなく、また、本件発明1~11は、甲1に記載された発明及び甲1~5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえないから、申立理由1及び2によっては本件発明1~11に係る特許を取り消すことはできない。 3 申立理由3(サポート要件)について (1)サポート要件の判断基準 特許請求の範囲の記載が、サポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。 そこで、検討する。 (2)本件発明が解決しようとする課題 本件明細書の発明の詳細な説明(以下、単に「発明の詳細な説明」という。)の記載によれば、本件発明の課題は、得られる硬化体がより硬質な硬化体を与えることができ、かつ溶剤(特にMEK(メチルエチルケトン))に対する溶解性が高い芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体を提供すること(【0006】、【0007】)であると認められる。 (3)本件発明1について ア 発明の詳細な説明には、本件発明1に係る共重合体における(1)~(4)の条件について、以下の記載がある。 「【0024】ここで含まれても良いオレフィン単量体とは、炭素数2以上20以下のαオレフィン及び炭素数5以上20以下の環状オレフィンから選ばれる一種以上であり、実質的に酸素や窒素、ハロゲンを含まず、炭素と水素から構成される化合物である。炭素数2以上20以下のα-オレフィンとしては、例えばエチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デカン、1-ドデカン、4-メチル-1-ペンテン、3,5,5-トリメチル-1-ヘキセン等が例示できる。炭素数5以上20以下の環状オレフィンとしては、ノルボルネン、シクロペンテン等が例示できる。オレフィンとして好ましく使用できるのは、エチレンとエチレン以外のα-オレフィンや環状オレフィンとの組み合わせか、又はエチレン単独である。 【0025】芳香族ビニル化合物単量体は、炭素数8以上20以下の芳香族ビニル化合物であり、例えばスチレン、パラメチルスチレン、エチルスチレン(エチルビニルベンゼン)、パライソブチルスチレン、各種ビニルナフタレン、各種ビニルアントラセン等が例示できる。 【0026】芳香族ポリエン単量体としては、その分子内にビニル基及び/又はビニレン基を複数有する炭素数5以上20以下のポリエンであり、好ましくはその分子内にビニル基を複数有する炭素数5以上20以下のポリエンであり、さらに好ましくは、オルト、メタ、パラの各種ジビニルベンゼン又はこれらの混合物、ジビニルナフタレン、ジビニルアントラセン、p-2-プロペニルスチレン、p-3-ブテニルスチレン等の芳香族ビニル構造を有し、実質的に酸素や窒素、ハロゲンを含まず、炭素と水素から構成される化合物である。また、特開2004-087639号公報に記載されている二官能性芳香族ビニル化合物、例えば1,2-ビス(ビニルフェニル)エタン(略称:BVPE)を用いることもできる。この中で好ましくは、オルト、メタ、パラの各種ジビニルベンゼン、又はこれらの混合物が用いられ、最も好ましくはメタジビニルベンゼン及びパラジビニルベンゼンの混合物が用いられる。本明細書ではこれらジビニルベンゼンをジビニルベンゼン類と記す。芳香族ポリエンとしてジビニルベンゼン類を用いた場合、硬化処理を行う際に硬化効率が高く、硬化が容易であるため好ましい。」 「【0029】共重合体の数平均分子量(Mn)は500以上10万未満である。本発明において数平均分子量が500以上10万未満であるということは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー;ゲル浸透クロマトグラフィー)法により得られる、標準ポリスチレン換算の分子量がその範囲に入る値であるということである。」 「【0031】芳香族ビニル化合物単量体単位と、芳香族ポリエン単量体単位と、必要に応じて存在するオレフィン単量体単位との合計を100質量%としたときに、本共重合体に含まれる芳香族ビニル化合物単量体単位の含量は70質量%を超え、好ましくは71質量%以上であり、さらに好ましくは80質量%以上である。芳香族ビニル化合物単量体単位の含量が70質量%を超えることで、最終的に得られる本芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体単独の硬化体の25℃における引張弾性率が1000MPa以上とすることが可能で、本芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体を主体とする組成物の硬化体の25℃における引張弾性率が100MPa以上とすることが容易となる。さらに本芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体はメチルエチルケトン(MEK)等の溶剤に対する溶解性が高くなり、例えばメチルエチルケトンを溶媒とするワニスを製造することが容易になる。」 「【0033】本共重合体において、芳香族ポリエン単位に由来するビニル基及び/又はビニレン基の含有量、好ましくビニル基の含有量は数平均分子量あたり2個以上30個未満であり、好ましくは3個以上30個未満である。当該ビニル基及び/又はビニレン基の含有量が2個未満では架橋効率が低く、十分な架橋密度の硬化体を得ることが難しくなる。共重合体中の数平均分子量あたりの芳香族ポリエン単位(ジビニルベンゼン単位)に由来するビニル基含有量は、当業者に公知のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法により求める標準ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)と、1H-NMR測定により得られる芳香族ポリエン単位に由来するビニル基含有量とを比較することで得ることができる。・・・」 「【0034】本共重合体において、好ましいオレフィン単量体単位の含量は0質量%以上若しくは1質量%以上であってよく、より好ましくは0質量%以上30質量%未満若しくは1質量%以上30質量%未満、さらに好ましくは1質量%以上20質量%以下であってよい。前記オレフィン単量体単位と芳香族ビニル化合物単量体単位と芳香族ポリエン単量体単位の合計は100質量%である。オレフィン単量体単位の含量が1質量%以上であると、最終的に得られる硬化体の靱性(伸び)や耐衝撃性が向上し、硬化途中での割れや、硬化体のヒートサイクル試験中での割れが発生しづらくなる。特に硬化体の靱性(伸び)や耐衝撃性の一層の向上の観点からは、オレフィン単量体単位の含量は5質量%より多く30質量%未満であることが好ましい。別の実施形態では、本共重合体がオレフィン単量体単位を含まなくてもよい。」 イ 上記アによれば、発明の詳細な説明には、芳香族ビニル化合物単量体単位の含量が70質量%を超えることで、最終的に得られる本芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体単独の硬化体の25℃における引張弾性率が1000MPa以上とすることが可能で、本芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体を主体とする組成物の硬化体の25℃における引張弾性率が100MPa以上とすることが容易となり、また、メチルエチルケトン(MEK)等の溶剤に対する溶解性が高くなり、例えばメチルエチルケトンを溶媒とするワニスを製造することが容易になること(【0031】)が記載されており、また、芳香族ポリエン単位に由来するビニル基及び/又はビニレン基の含有量、好ましくビニル基の含有量が、数平均分子量あたり2個以上30個未満であることにより、架橋密度が高くなり、十分な架橋密度の硬化体が得られること(【0033】)が記載されている。 そうすると、発明の詳細な説明の記載から、当業者は、上記芳香族ビニル化合物単量体単位及び上記芳香族ポリエン単位を有する共重合体であることにより、特に「芳香族ビニル化合物単量体単位の含量が70質量%を超える」ことにより、得られる硬化体がより硬質な硬化体を与えることができ、かつ溶剤(特にMEK(メチルエチルケトン))に対する溶解性が高いという上記(2)の課題が解決できるものと認識することができる。 一方、オレフィン単量体単位については、炭素数2以上20以下のαオレフィン及び炭素数5以上20以下の環状オレフィンから選ばれる一種以上であることが記載され、エチレンが好ましいこと(【0024】)、含量が1質量%以上である場合に、最終的に得られる硬化体の靱性(伸び)や耐衝撃性が向上し、硬化途中での割れや、硬化体のヒートサイクル試験中での割れが発生しづらくなるという、より好ましい効果が得られることは示されているものの(【0034】)、「エチレン」を含むオレフィン単量体単位が、上記(2)の課題の解決に不可欠であるとまではいえない。 ウ そして、実施例・比較例(【0076】~【0107】)において、オレフィンとして「エチレン」、芳香族ビニル化合物として「スチレン」、芳香族ポリエンとして「ジビニルベンゼン」を用いた、スチレン含量が81又は86質量%である共重合体P-1及びP-2は、MEKに対する溶解性が「excellent」であると共に(【0099】【表1】)、当該共重合体を用いた硬化体(実施例1~6)は、スチレン含量が52質量%又は46質量%である共重合体P-3及びP-4を単独で用いた硬化体(比較例1及び2)に比べて、高い引張弾性率(210~3700MPa)並びに低い誘電率及び誘電正接を示す(【0100】【表2】、【0106】)ことが確認されており、上記(2)の課題が解決できることが示されている。 エ 上記イ、ウを踏まえると、発明の詳細な説明の記載に基づけば、当業者は、上記芳香族ビニル化合物単量体単位及び上記芳香族ポリエン単位を有する共重合体であり、特に「芳香族ビニル化合物単量体単位の含量が70質量%を超える」ことにより、上記(2)の課題が解決できるものと理解できる。一方、オレフィン単量体単位は、硬化体の靱性(伸び)や耐衝撃性の点でより好ましい効果をもたらす成分ではあるものの、上記(2)の課題の解決に不可欠であるとまではいえず、また、オレフィン単位としては、「エチレン」が好ましいとされているものの、それ以外にも、「炭素数2以上20以下のαオレフィン及び炭素数5以上20以下の環状オレフィンから選ばれる一種以上」も使用できることが認識できる。 そうすると、実施例で用いられているオレフィンが「エチレン」のみであるとしても、(1)~(4)の条件を満たす本件発明1について、上記(2)の課題が解決できることを、当業者であれば認識できるといえる。 したがって、本件発明1は、発明の詳細な説明の記載により、当業者が上記(2)の課題を解決できると認識できる範囲のものである。 (4)本件発明3について 本件発明3は、本件発明1をさらに特定したものであり、発明の詳細な説明(【0045】)によれば、本件発明3において特定される(a)~(d)は、さらに含むことができる任意成分に過ぎず、上記(2)の課題の解決に不可欠であるとはいえない。 そうすると、実施例で用いられている(a)硬化剤が、パーブチルPのみであり、(c)単量体が、1,2-ポリブタジエンのみであるとしても、上記(2)で述べた本件発明1についての理由と同様に、本件発明3は、発明の詳細な説明の記載により、当業者が上記(2)の課題を解決できると認識できる範囲のものといえる。 (5)本件発明2、4~11について 本件発明2、4~11は、本件発明1及び/又は本件発明3をさらに特定したものであるから、上記(3)及び(4)で述べた本件発明1及び本件発明3についての理由と同様に、発明の詳細な説明の記載により、当業者が上記(2)の課題を解決できると認識できる範囲のものである。 (6)申立人の主張について 申立人は、上記第3の3の(ア)及び(イ)の点を主張する。 しかしながら、申立人は、実施例において具体的に確認できるオレフィンが「エチレン」が必須であることを主張するのみで、申立人の主張する技術常識がどのようなものであるのか不明であるし、また、「1-ヘキセン」等のエチレン以外のオレフィンを使用した場合に、上記(2)の本件発明の課題が解決できないことを具体的理由を示して主張するものではない。 本件発明3の(a)硬化剤及び(c)単量体についても同様である。 したがって、申立人の上記主張は採用できない。 (7)申立理由3についてのまとめ よって、本件発明1~11は、発明の詳細な説明に記載したものであり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件に適合するから、申立理由3によっては本件発明1~11に係る特許を取り消すことはできない。 4 申立理由4(実施可能要件)について (1)実施可能要件の判断基準 本件発明1~11は物の発明であるところ、発明の詳細な説明の記載が実施可能要件に適合するというためには、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、その物を生産し、使用することができる程度の記載があることを要する。 そこで、検討する。 (2)本件発明1について 発明の詳細な説明には、「オレフィン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体」について、数平均分子量、並びに、使用可能なオレフィン、芳香族ビニル化合物及び芳香族ポリエンが具体的に記載されており(【0024】~【0034】)、当該共重合体の製造方法についても具体的に記載されている(【0035】、【0036】)。 そして、実施例には、本件発明1の(1)~(4)の条件を満たす共重合体P-1及びP-2を製造し(【0087】~【0090】)、当該共重合体のMEKに対する溶解性が「excellent」であることや(【0094】、【0099】【表1】)、当該共重合体を用いて、ワニス状の組成物、未硬化シート及び硬化シートを製造し(実施例1~6)、硬化シートが高い引張弾性率(210~3700MPa)並びに低い誘電率及び誘電正接を示す(【0100】【表2】~【0106】)ことが具体的に記載されている。 さらに、上記【0035】、【0036】の共重合体の製造方法の記載及び実施例に基づけば、「エチレン」の代わりに、「1-ヘキセン」等のオレフィンを用いて共重合体を製造することは、当業者であれば過度の試行錯誤を要するものではない。 したがって、発明の詳細な説明には、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び本件出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明1について、その物を生産でき、かつ、使用できる程度の記載があるといえる。 (3)本件発明3について 発明の詳細な説明には、上記(2)の記載に加え、本件発明3において特定される(a)~(d)をさらに含むことができることが記載され、使用可能な(a)硬化剤、(b)炭化水素系エラストマー、ポリフェニレンエーテル系樹脂、芳香族ポリエン系樹脂から選ばれる単数又は複数の樹脂、(c)単量体及び(d)別のオレフィン-芳香族ビニル化合物-芳香族ポリエン共重合体が具体的に例示されている(【0045】~【0057】)。 そして、実施例には、共重合体P-1及びP-2に、上記(a)~(d)を配合し、ワニス状の組成物、未硬化シート及び硬化シートを製造したことが具体的に記載されている(【0095】~【0098】、【0100】【表2】~【0106】)。 したがって、発明の詳細な説明には、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び本件出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明3について、その物を生産でき、かつ、使用できる程度の記載があるといえる。 (4)本件発明2、4~11について 本件発明2、4~11は、本件発明1及び/又は本件発明3をさらに特定したものであり、上記(2)及び(3)で述べた本件発明1及び本件発明3についての理由と同様に、発明の詳細な説明には、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び本件出願時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明2、4~11について、その物を生産でき、かつ、使用できる程度の記載があるといえる。 (5)申立人の主張について 申立人は、上記第3の4の(ア)及び(イ)の点を主張する。 しかしながら、上記3(6)で述べたのと同様に、申立人は、「1-ヘキセン」等のエチレン以外のオレフィンを使用した場合に、本件発明1~11を当業者が実施をすることができる程度に明確かつ十分に発明の詳細な説明が記載されていない具体的理由を示して主張するものではない。 本件発明3の(a)硬化剤及び(c)単量体についても同様である。 したがって、申立人の上記主張は採用できない。 (6)申立理由4についてのまとめ よって、発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1~11について、その実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであり、特許法第36条第4項第1号に規定する要件に適合するから、申立理由4によっては本件発明1~11に係る特許を取り消すことはできない。 5 申立理由5(明確性)について (1)申立人は、上記第3の5の(ア)の点、すなわち、本件発明3において、本件発明の課題を解決するために、共重合体に対し、(a)~(d)から選ばれる単数又は複数を、どの程度配合すればよいのか不明であるから、本件発明3~5、7、8、11は明確でない旨を主張する。 しかしながら、(a)~(d)の配合量は、実施例やその他の発明の詳細な説明の記載を参照しつつ、当業者が適宜設定し得る事項にすぎず、それらの配合量が請求項に記載されていないからといって、本件発明3~5、7、8、11が第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。 (2)そして、本件発明3~5、7、8、11においては、含まれる成分が明確に特定されており、特段不明確な点は見いだせない。 (3)申立理由5についてのまとめ よって、本件発明3~5、7、8、11は明確であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件に適合するから、申立理由5によっては本件発明3~5、7、8、11に係る特許を取り消すことはできない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、請求項1~11に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1~11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700751

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