特許異議申立
2024-700434
樹脂組成物
- 審判番号
- 2024-700434
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2020-066101
- 登録番号
- 7375658
- 請求日
- 2024年05月08日
- 審決日
- 2025年03月03日
- 公報発行日
- 2025年07月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】味の素株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人酒井国際特許事務所
- 【異議申立人】秋山 良文
- 審判長/審判官
- 審判長 細井 龍史
- 審判官 松本 直子
- 審判官 藤井 勲
- 分類
- P1651.113-YAA(C08F) / P1651.121-YAA(C08F) / P1651.536-YAA(C08F) / P1651.537-YAA(C08F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第9項、特許法第29条の2、特許法第41条第3項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第126条、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7375658号発明「樹脂組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7375658号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~12〕について訂正することを認める。
特許第7375658号の請求項1、3~12に係る特許を維持する。
特許第7375658号の請求項2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7375658号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~12に係る特許についての出願は、令和2年4月1日を出願日とする出願(特願2020-66101号)であって、令和5年10月30日に特許権の設定登録(請求項の数12)がされ、同年11月8日に特許掲載公報が発行されたものである。
その後、その特許に対し、令和6年5月8日に、特許異議申立人である秋山 良文(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1~12)がされた。
その後の本件特許異議申立事件の主な手続の経緯は、次のとおりである。
令和6年 7月29日付け 取消理由通知
同年 9月27日 訂正請求書及び意見書の提出(特許権者)
同年10月17日付け 訂正請求があった旨の通知(申立人宛て)
同年11月21日 意見書の提出(申立人)
第2 訂正の適否
1 請求の趣旨
特許第7375658号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~12について訂正することを求める、というものである。
2 訂正の内容
令和6年9月27日付け訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである(当審注:下線は、当審で付した。以下同様。)。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に、
「 (A)マレイミド化合物、(B)芳香環及びラジカル重合性不飽和基を含む樹脂、及び(D)無機充填材を含み、
(A)マレイミド化合物が、(A-1)トリメチルインダン骨格を含むマレイミド化合物を含み、
(A-1)成分の量が、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、10質量%以上50質量%以下であり、
(B)成分の量が、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、5質量%以上50質量%以下であり、
(D)無機充填材の量が、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、40質量%以上80質量%以下である、樹脂組成物(下記式(1)で表されるシアン酸エステル化合物A1及び下記式(2)で表されるシアン酸エステル化合物A2を含む樹脂組成物、並びに窒化ホウ素を含む樹脂組成物を除く)。
【化1】
[図:0001424578000001.jpg]
(式中、Rは、各々独立して、水素原子又はメチル基を表し、nは1以上の整数を表す。)
【化2】
[図:0001424578000002.jpg]
」とあるのを、
「 (A)マレイミド化合物、(B)芳香環及びラジカル重合性不飽和基を含む樹脂、(D)無機充填材、及び(E)熱可塑性樹脂を含み、
(A)マレイミド化合物が、(A-1)トリメチルインダン骨格を含むマレイミド化合物を含み、
(A-1)成分が、下記式(A4)で表される構造を含み、
(E)成分が、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂からなる群より選択される1以上の熱可塑性樹脂であり、
(A-1)成分の量が、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、10質量%以上50質量%以下であり、かつ、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、70質量%以下であり、
(B)成分の量が、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、5質量%以上50質量%以下であり、かつ、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、70質量%以下であり、
(D)無機充填材の量が、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、40質量%以上80質量%以下であり、
(E)成分の量が、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、2質量%以上10質量%以下である、樹脂組成物(下記式(1)で表されるシアン酸エステル化合物A1及び下記式(2)で表されるシアン酸エステル化合物A2を含む樹脂組成物、並びに窒化ホウ素を含む樹脂組成物を除く)。
【化1】
[図:0001424578000003.jpg]
(式(A4)において、
Ara1は、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基を表し;
Ra1は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルキルオキシ基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数6~10のアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、水酸基、又は、メルカプト基を表し;
Ra2は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルキルオキシ基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数6~10のアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、又は、メルカプト基を表し;
Ra3は、それぞれ独立に、2価の脂肪族炭化水素基を表し;
na1は、正の整数を表し;
na2は、それぞれ独立に、0~4の整数を表し;
na3は、それぞれ独立に、0~3の整数を表す。
Ra1のアルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、及びシクロアルキル基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。
Ra2のアルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、及びシクロアルキル基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。
na2が2~4の場合、Ra1は、同一環内で同じであってもよく異なっていてもよい。
na3が2~3の場合、Ra2は、同一環内で同じであってもよく異なっていてもよい。)
【化2】
[図:0001424578000004.jpg]
(式中、Rは、各々独立して、水素原子又はメチル基を表し、nは1以上の整数を表す。)
【化3】
[図:0001424578000005.jpg]
」に訂正する。
また、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項3~12も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3に、
「(A-1)成分の量が、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、10質量%以上70質量%以下である、請求項1又は2に記載の樹脂組成物。」とあるのを、
「(A-1)成分の量が、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、17質量%以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。」に訂正する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項4に、
「(A)成分の量が、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、10質量%以上80質量%以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の樹脂組成物。」とあるのを、
「(A)成分の量が、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、17質量%以上80質量%以下である、請求項1又は3に記載の樹脂組成物。」に訂正する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に
「(B)成分が、下記式(B1)で表される基を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【化4】
[図:0001424578000006.jpg]
(式(B1)において、RA1、RA2及びRA3は、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し;RA4は、それぞれ独立に、アルキル基を表し;ma1は、0又は1を表し;ma2は、0~4の整数を表し;*は、結合手を表す。)」とあるのを、
「(B)成分が、下記式(B1)で表される基を含む、請求項1、3~4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【化4】
[図:0001424578000007.jpg]
(式(B1)において、RA1、RA2及びRA3は、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し;RA4は、それぞれ独立に、アルキル基を表し;ma1は、0又は1を表し;ma2は、0~4の整数を表し;*は、結合手を表す。)」に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項6に、
「(B)成分の量が、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、10質量%以上80質量%以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。」とあるのを、
「(B)成分の量が、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、10質量%以上である、請求項1、3~5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。」に訂正する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項7に、
「さらに、(C)重合開始剤を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の樹脂組成物。」とあるのを、
「さらに、(C)重合開始剤を含む、請求項1、3~6のいずれか一項に記載の樹脂組成物。」に訂正する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項8に、
「絶縁層形成用である、請求項1~7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。」とあるのを、
「絶縁層形成用である、請求項1、3~7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。」に訂正する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項9に、
「請求項1~8のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物。」とあるのを、
「請求項1、3~8のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物。」に訂正する。
(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項10に、
「支持体と、該支持体上に請求項1~8のいずれか1項に記載の樹脂組成物で形成された樹脂組成物層と、を備える、樹脂シート。」とあるのを、
「支持体と、該支持体上に請求項1、3~8のいずれか1項に記載の樹脂組成物で形成された樹脂組成物層と、を備える、樹脂シート。」に訂正する。
(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項11に、
「請求項1~8のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物で形成された絶縁層を含む、プリント配線板。」とあるのを、
「請求項1、3~8のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物で形成された絶縁層を含む、プリント配線板。」に訂正する。
(12)一群の請求項について
訂正前の請求項1~12について、請求項2~12は、それぞれ請求項1を直接又は間接的に引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。
よって、訂正前の請求項1~12に対応する訂正後の請求項〔1~12〕は、特許法第120条の5第4項に規定される一群の請求項である。
3 本件訂正の適否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、
ア 訂正前の請求項1の「(A)マレイミド化合物、(B)芳香環及びラジカル重合性不飽和基を含む樹脂、及び(D)無機充填材を含み、」なる記載を、「(A)マレイミド化合物、(B)芳香環及びラジカル重合性不飽和基を含む樹脂、(D)無機充填材、及び(E)熱可塑性樹脂を含み、」に訂正し、
イ 訂正前の請求項1に、「(E)成分が、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂からなる群から選択される1以上の熱可塑性樹脂である」ことを追加し、
ウ 訂正前の請求項1に、「(A-1)成分が式(A4)で表される構造を含」む(当審注:「式(A4)」の化学式は省略する。以下同様。)ことを追加し、
エ 訂正前の請求項1に、「(A-1)成分の量」が、更に「樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、70質量%以下であ」ることを追加し、
オ 訂正前の請求項1に、「(B)成分の量」が、更に「樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、70質量%以下であ」ることを追加し、
カ 訂正前の請求項1に、「(E)成分の量が、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、2質量%以上10質量%以下である」ことを追加するものである。
(ア)訂正の目的
上記アは、「樹脂組成物」の構成成分として、「(E)熱可塑性樹脂」を更に追加して限定するものである。
上記イは、上記アに係る訂正に伴い、「(E)成分」の内訳を、「(E)成分が、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂からなる群より選択される1以上の熱可塑性樹脂であ」ると、詳述して限定するものである。
上記ウは、訂正前の請求項1における「(A-1)成分」に対して、「式(A4)で表される構造を含」むとして、具体的な構造を明らかにして限定するものである。
上記エは、訂正前の請求項1において「(A-1)成分の量」について、更に「樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、70質量%以下であ」ることを限定するものである。
上記オは、訂正前の請求項1において「(B)成分の量」について、「樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、70質量%以下であ」ることを限定するものである。
上記カは、上記アに係る訂正に伴い、「(E)成分の量」について、「樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、2質量%以上10質量%以下である」ことを限定するものである。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
(イ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無
上記ア、イ、カについて、本件明細書の段落【0187】に、樹脂組成物が更に(E)熱可塑性樹脂を含んで良いことが記載され、同【0188】に、該熱可塑性樹脂の具体例が記載され、同【0200】に、(E)熱可塑性樹脂の量が樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、2質量%以上であり、10質量%以下であることが記載されていることから、上記ア、イ、カは、これらの記載に基づく訂正である。
上記ウ、エについて、訂正前の請求項2、本件明細書の段落【0025】~【0027】に、(A-1)成分が、式(A4)で表される構造を含むことが記載され、訂正前の請求項3における数値範囲の上限、及び同【0045】に、(A-1)特定マレイミド化合物の量が樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、70質量%以下であることが記載されていることから、上記ウ、エは、これらの記載に基づく訂正である。
上記オについて、本件明細書の段落【0165】に、(B)ラジカル重合性芳香族樹脂の量が樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、70質量%以下であることが記載されていることから、上記オは、この記載に基づく訂正である。
してみると、上記ア~カに係る訂正は、本件明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
また、実質上の特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらない。
よって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5~6項に適合するものである。
(2)訂正事項2について
ア 訂正の目的
訂正事項2は、本件訂正前の請求項2を削除するものであるから、その訂正の目的は、特許法120条の5第2項ただし書1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」に該当する。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無
訂正事項2は、本件訂正前の請求項2を削除するものであるから、本件明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
また、実質上の特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらない。
よって、訂正事項2は、特許法120条の5第9項で準用する同法第126条第5~6項に適合する。
(3)訂正事項3について
ア 訂正の目的
訂正事項3は、上記「(1)訂正事項1について」にあげたエにより、(A-1)成分の量における数値範囲の上限(70質量%以下)が、本件訂正後の請求項1に特定されたことに伴い削除しつつ、該数値範囲の下限を、10質量%以上から、17質量%以上と特定して、数値範囲の下限を上げるものである。
さらに、訂正事項3は、本件訂正前の請求項3が、同請求項1又は2を引用していたところ、訂正事項2により本件訂正前の請求項2が削除されたことに伴い、本件訂正後の請求項3が引用する請求項を、請求項1に訂正するものである。
まず、上記数値範囲の上限を削除したことについては、本件訂正後の請求項3が、同請求項1を引用した際に、上記上限に係る記載が重複しないようにするためであって、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
そして、それ以外はいずれも特許請求の範囲を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無
訂正事項3は、(A-1)成分の量において、本件明細書の段落【0045】で、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは10質量%以上であり、70質量%以下であることが記載されており、上記樹脂成分の下限を10質量%から17質量%に訂正することは、もともと記載していた数値範囲の下限を上げるものである。してみると、いずれも、本件明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
さらに、訂正事項3は、訂正事項2により削除された本件訂正前の請求項2を引用する記載を訂正したものであるから、本件明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
また、実質上の特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらない。
よって、訂正事項3は、特許法120条の5第9項で準用する同法第126条第5~6項に適合する。
(4)訂正事項4について
ア 訂正の目的
訂正事項4は、(A)成分の量における数値範囲の下限を、10質量%以上から、17質量%以上と特定して、数値範囲の下限を上げるものである。
さらに、訂正事項4は、本件訂正前の請求項4が、同請求項1~3のいずれか一項を引用していたところ、訂正事項2により本件訂正前の請求項2が削除されたことに伴い、本件訂正後の請求項4が引用する請求項を、請求項1又は3に訂正するものである。
よって、いずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無
訂正事項4は、(A)成分の量において、本件明細書の段落【0099】で、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは10質量%以上、80質量%以下であることが記載されており、上記樹脂成分の下限を10質量%から17質量%に訂正することは、もともと記載していた数値範囲の下限を上げるものであるから、本件明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
さらに、訂正事項4は、訂正事項2により削除された本件訂正前の請求項2を引用する記載を訂正したものであるから、本件明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
また、実質上の特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらない。
よって、訂正事項4は、特許法120条の5第9項で準用する同法第126条第5~6項に適合する。
(5)訂正事項5、7~11について
ア 訂正の目的
訂正事項5、7~11は、本件訂正前の請求項5、7~11が、同請求項2を引用していたところ、訂正事項2により本件訂正前の請求項2が削除されたことに伴い、本件訂正後の請求項5、7~11が引用する請求項において、請求項2が含まれないように訂正するものである。
よって、いずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無
訂正事項5、7~11は、訂正事項2により削除された本件訂正前の請求項2を引用する記載を訂正したものであるから、本件明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
また、実質上の特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらない。
よって、訂正事項5、7~11は、特許法120条の5第9項で準用する同法第126条第5~6項に適合する。
(6)訂正事項6について
ア 訂正の目的
訂正事項6は、上記「(1)訂正事項1について」にあげたオに係る訂正により、(B)成分の量における数値範囲の上限が、本件訂正後の請求項1で特定されたことに伴って削除するものであり、その際に上限値を「80質量%以下」から「70質量%以下」へと、上限を下げるように訂正するものである。
さらに、訂正事項6は、本件訂正前の請求項6が、同請求項1~5のいずれか一項を引用していたところ、訂正事項2により本件訂正前の請求項2が削除されたことに伴い、本件訂正後の請求項6が引用する請求項を、請求項1、3~5のいずれか一項に訂正するものである。
まず、上記数値範囲の上限を削除したことについては、本件訂正後の請求項6が、同請求項1を引用した際に、上記上限に係る記載が重複しないようにするためであって、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に規定する「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものである。
そして、それ以外は特許請求の範囲を限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
イ 特許請求の範囲の拡張・変更の存否、新規事項の有無
訂正事項6は、(B)成分の量において、本件明細書の段落【0165】で、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは10質量%以上であり、80質量%以下であって、より好ましくは70質量%以下であることが記載されており、上記樹脂成分の下限を10質量%から17質量%に訂正することは、もともと記載していた数値範囲の下限を上げるものである。してみると、いずれも、本件明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
さらに、訂正事項6は、訂正事項2により削除された本件訂正前の請求項2を引用する記載を訂正したものであるから、本件明細書のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものではない。
また、実質上の特許請求の範囲の拡張又は変更に当たらない。
よって、訂正事項6は、特許法120条の5第9項で準用する同法第126条第5~6項に適合する。
4 独立特許要件
訂正前の請求項1~12の全てについて特許異議の申立てがなされているので、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する要件(いわゆる独立特許要件)は課されない。
5 本件訂正についてのまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1及び3号に掲げる事項を目的とするものであり、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するものであるから、本件訂正を認める。
第3 訂正後の特許請求の範囲の記載
本件訂正請求により訂正された請求項1~12に係る発明(以下、順に「本件発明1」等といい、まとめて「本件発明」ともいう。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~12に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
(A)マレイミド化合物、(B)芳香環及びラジカル重合性不飽和基を含む樹脂、(D)無機充填材、及び(E)熱可塑性樹脂を含み、
(A)マレイミド化合物が、(A-1)トリメチルインダン骨格を含むマレイミド化合物を含み、
(A-1)成分が、下記式(A4)で表される構造を含み、
(E)成分が、フェノキシ樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリエステル樹脂からなる群より選択される1以上の熱可塑性樹脂であり、
(A-1)成分の量が、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、10質量%以上50質量%以下であり、かつ、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、70質量%以下であり、
(B)成分の量が、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、5質量%以上50質量%以下であり、かつ、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、70質量%以下であり、
(D)無機充填材の量が、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、40質量%以上80質量%以下であり、
(E)成分の量が、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、2質量%以上10質量%以下である、樹脂組成物(下記式(1)で表されるシアン酸エステル化合物Al及び下記式(2)で表されるシアン酸エステル化合物A2を含む樹脂組成物、並びに窒化ホウ素を含む樹脂組成物を除く)。
【化1】
[図:0001424578000008.jpg]
(式(A4)において、
Ara1は、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基を表し;
Ra1は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルキルオキシ基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数6~10のアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、水酸基、又は、メルカプト基を表し;
Ra2は、それぞれ独立に、炭素原子数1~10のアルキル基、炭素原子数1~10のアルキルオキシ基、炭素原子数1~10のアルキルチオ基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数6~10のアリールオキシ基、炭素原子数6~10のアリールチオ基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、水酸基、又は、メルカプト基を表し;
Ra3は、それぞれ独立に、2価の脂肪族炭化水素基を表し;
na1は、正の整数を表し;
na2は、それぞれ独立に、0~4の整数を表し;
na3は、それぞれ独立に、0~3の整数を表す。
Ra1のアルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、及びシクロアルキル基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。
Ra2のアルキル基、アルキルオキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、及びシクロアルキル基の水素原子は、ハロゲン原子で置換されていてもよい。
na2が2~4の場合、Ra1は、同一環内で同じであってもよく異なっていてもよい。
na3が2~3の場合、Ra2は、同一環内で同じであってもよく異なっていてもよい。)
【化2】
[図:0001424578000009.jpg]
(式中、Rは、各々独立して、水素原子又はメチル基を表し、nは1以上の整数を表す。)
【化3】
[図:0001424578000010.jpg]
【請求項2】
(削除)
【請求項3】
(A-1)成分の量が、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、17質量%以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
(A)成分の量が、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、17質量%以上80質量%以下である、請求項1又は3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
(B)成分が、下記式(B1)で表される基を含む、請求項1、3~4のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【化4】
[図:0001424578000011.jpg]
(式(B1)において、RA1、RA2及びRA3は、それぞれ独立に、水素原子又はアルキル基を表し;RA4は、それぞれ独立に、アルキル基を表し;ma1は、0又は1を表し;ma2は、0~4の整数を表し;*は、結合手を表す。)
【請求項6】
(B)成分の量が、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、10質量%以上である、請求項1、3~5のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
さらに、(C)重合開始剤を含む、請求項1、3~6のいずれか一項に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
絶縁層形成用である、請求項1、3~7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1、3~8のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物。
【請求項10】
支持体と、該支持体上に請求項1、3~8のいずれか1項に記載の樹脂組成物で形成された樹脂組成物層と、を備える、樹脂シート。
【請求項11】
請求項1、3~8のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物で形成された絶縁層を含む、プリント配線板。
【請求項12】
請求項11に記載のプリント配線板を含む、半導体装置。」
第4 特許異議申立書の申立理由と当審が通知した取消理由
1 特許異議申立書(以下、「申立書」という。)の申立理由
(1)申立理由1(拡大先願) その1
本件特許の請求項1~12に係る発明は、本件特許の出願の出願日前の日本語特許出願であって、その出願後に国際公開がされた甲第1号証又は甲第3号証の日本語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の日本語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記日本語特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない(同法第184条の13参照)から、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(2)申立理由1(拡大先願) その2
本件特許の請求項1~12に係る発明は、本件特許の出願の出願日前の日本語特許出願であって、その出願後に特許法第41条第3項の規定により国際公開がされたものとみなされた甲第2号証の出願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(3)申立理由3(新規性)
本件特許の請求項1、3~5、7~9に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第4号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができるものではなく、上記請求項に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(4)申立理由4(進歩性)
本件特許の請求項1~12に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第4号証に記載された発明及び周知技術(甲第5号証~甲第8号証)に基づいて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
2 証拠方法
申立人が、申立書に添付した証拠は、以下のとおりである。
・甲第1号証:PCT/JP2020/06776号(特願2021-515830号、国際公開第2020/217675号)
・甲第2号証:特願2020-029909号(国際公開第2021/172316号)
・甲第3号証:PCT/JP2020/06795号(特願2021-515831号、国際公開第2020/217677号)
・甲第4号証:特開昭63-275562号公報
・甲第5号証:特開平5-247202号公報
・甲第6号証:国際公開第2019/131306号
・甲第7号証:特開2006-274169号公報
・甲第8号証:国際公開第2005/073264号
(以下、甲第1号証~甲第8号証をそれぞれ「甲1」~「甲8」という。)
3 当審が通知した令和6年7月29日付け取消理由通知
当審で通知した取消理由通知の概要は以下のとおりである。
(1)取消理由1(拡大先願) その1
本件特許の請求項1~12に係る発明は、本件特許の出願の出願日前の日本語特許出願であって、その出願後に国際公開がされた甲1の日本語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の日本語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記日本語特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない(同法第184条の13参照)から、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(2)取消理由1(拡大先願) その2
本件特許の請求項1~12に係る発明は、本件特許の出願の出願前の日本語特許出願であって、その出願後に特許法第41条第3項の規定により国際公開がされたものとみなされた甲2の出願の願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
(3)取消理由2(進歩性)
本件特許の請求項1、3~12に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲4に記載された発明及び周知技術(甲5~甲8)に基づいて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の上記請求項に係る特許は、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。
第5 当審の判断
以下に述べるように、当審が通知した取消理由通知の取消理由、及び、特許異議申立書の申立理由によっては、本件発明1、3~12に係る特許を取り消すことはできない。
本件発明2に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
1 取消理由1(拡大先願) その1及び申立理由1(拡大先願) その1のうち甲1に基づくもの
「取消理由1(拡大先願) その1」及び「申立理由1(拡大先願) その1」は、いずれも甲1に基づくものであるから、併せて検討する。
(1)甲1に記載された事項及び甲1に記載された発明
ア 甲1に係る出願の願書に最初に添付した明細書、請求の範囲又は図面(以下、「甲1先願明細書等」という。)に記載された事項及び甲1先願明細書等に記載された発明
(ア)甲1先願明細書等に記載された事項
甲1先願明細書等には、以下の事項が記載されている。
「[請求項1] インダン骨格を有するマレイミド(A)、及び、反応性二重結合を有するポリフェニレンエーテル化合物(B)を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。
[請求項2] 前記マレイミド(A)が、下記一般式(1)で示されることを特徴とする請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
[化1]
[図:0001424578000012.jpg]
(式(1)中、Raは、それぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基、アルキルオキシ基もしくはアルキルチオ基、炭素数6~10のアリール基、アリールオキシ基もしくはアリールチオ基、炭素数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、水酸基またはメルカプト基を表し、qは0~4の整数値を示す。qが2~4の場合、Raは同一環内で同じであってもよいし異なっていてもよい。Rbはそれぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基、アルキルオキシ基もしくはアルキルチオ基、炭素数6~10のアリール基、アリールオキシ基もしくはアリールチオ基、炭素数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、水酸基またはメルカプト基を表し、rは0~3の整数値を示す。rが2~3の場合、Rbは同一環内で同じであってもよいし異なっていてもよい。nは平均繰り返し単位数であり、0.5~20の数値を示す。)(当審注:以下、一般式(1)で示されるマレイミド(A)を「化1化合物」といい、一般式(1)を省略する。)
[請求項3] 請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物を硬化反応させてなることを特徴とする硬化物。
[請求項4] 補強基材、及び、前記補強基材に含浸した請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物の半硬化物を有することを特徴とするプリプレグ。
[請求項5] 請求項4に記載のプリプレグ、及び、銅箔を積層し、加熱圧着成型して得られることを特徴とする回路基板。
[請求項6] 請求項1~3のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物を含有することを特徴とするビルドアップフィルム。
[請求項7] 請求項1~3のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物を含有することを特徴とする半導体封止材。
[請求項8] 請求項7に記載の半導体封止材を加熱硬化した硬化物を含むことを特徴とする半導体装置。」
「[0010] そこで、本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意検討した結果、インダン骨格を有するマレイミド(A)、及び、反応性二重結合を有するポリフェニレンエーテル化合物(B)を含有する硬化性樹脂組成物が、その硬化物において、低誘電率、及び、低誘電正接を有しつつ、かつ、優れた耐熱性を兼備させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。」
「[0069] 前記反応性二重結合を有するポリフェニレンエーテル化合物(B)の重量平均分子量(Mw)としては、好ましくは、1000~5000であり、より好ましくは、1200~4000であり、更に好ましくは、1400~3000である。前記範囲内であれば、より確実に優れた誘電特性、及び、耐熱性のバランスの取れた硬化物を得ることができ、好ましい態様となる。なお、ここでの重量平均分子量(Mw)は、一般的な分子量測定方法で測定したものであればよく、具体的には、上述したGPCを用いて測定した値等が挙げられる。」
「[0080] <硬化性樹脂組成物の調製>
本発明の硬化性樹脂組成物は、インダン骨格を有するマレイミド(A)(以下、「(A)成分」という場合がある。)、及び、反応性二重結合を有するポリフェニレンエーテル化合物(B)(以下、「(B)成分」という場合がある。)を含有することを特徴とする。前記(B)成分は、前記(A)成分との反応により、三次元架橋を生じることができ、誘電特性、及び、耐熱性に優れた硬化物を得ることができ、好ましい態様となる。
[0081] 前記(A)成分、及び、前記(B)成分の配合比(質量部)としては、(A)成分:(B)成分が、90:10~10:90であることが好ましく、より好ましくは、80:20~20:80であり、更に好ましくは、65:35~35:65であり、特に好ましくは、55:45~45:55である。前記範囲に配合比を調製することにより、耐熱性、低誘電率、低誘電正接に優れ、また、可撓性を発現することができるため、好ましい。
・・・
[0084] 本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、無機質充填材を配合することができる。前記無機質充填材として、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミ等が挙げられる。・・・その充填率は難燃性を考慮して、高い方が好ましく、硬化性樹脂組成物の全体量に対して20質量%以上が特に好ましい。また、前記硬化性樹脂組成物を以下に詳述する導電ペーストなどの用途に使用する場合は、銀粉や銅粉等の導電性充填剤を用いることができる。
[0085] 本発明の硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、硬化促進剤、シランカップリング剤、離型剤、顔料、乳化剤等の種々の配合剤を添加することができる。」
「[0087] 前記硬化(熱硬化)反応としては、無触媒下でも容易に行われるが、さらに速く反応させたい場合には、有機過酸化物、アゾ化合物のような重合開始剤やホスフィン系化合物、三級アミンの様な塩基性触媒の添加が効果的である。例えば、ベンゾイルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、アゾビスイソブチロニトリル、トリフェニルホスフィン、トリエチルアミン、イミダゾール類等があり、配合量としては、硬化性樹脂組成物全体の0.05~5質量%が好ましい。」
「[0096] <半導体封止材>
本発明において、半導体封止材としては、前記硬化性樹脂組成物を含有することが好ましい。具体的には、本発明の硬化性樹脂組成物から半導体封止材を得る方法としては、前記硬化性樹脂組成物に、更に任意成分である硬化促進剤、および無機充填剤等の配合剤とを必要に応じて押出機、ニ-ダ、ロ-ル等を用いて均一になるまで充分に溶融混合する方法が挙げられる。その際、無機充填剤としては、通常、溶融シリカが用いられるが、パワートランジスタ、パワーIC用高熱伝導半導体封止材として用いる場合は、溶融シリカよりも熱伝導率の高い結晶シリカ,アルミナ,窒化ケイ素などの高充填化、または溶融シリカ、結晶性シリカ、アルミナ、窒化ケイ素などを用いるとよい。その充填率は、硬化性樹脂組成物100質量部当たり、無機充填剤を30~95質量部の範囲で用いることが好ましく、中でも、難燃性や耐湿性や耐ハンダクラック性の向上、線膨張係数の低下を図るためには、70質量部以上がより好ましく、80質量部以上であることがさらに好ましい。」
「実施例
[0108] 次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、以下において「部」及び「%」は特に断わりのない限り質量基準である。
・・・
[0113] 〔合成例1〕マレイミド化合物A-1の合成
・・・
[図:0001424578000013.jpg]
[0115] 〔合成例2〕マレイミド化合物A-2の合成
・・・
[図:0001424578000014.jpg]
[0117] 〔合成例3〕マレイミド化合物A-3の合成
・・・
[図:0001424578000015.jpg]
[0119] 〔合成例4〕マレイミド化合物A-4の合成
・・・
[図:0001424578000016.jpg]
[0121] 〔合成例5〕マレイミド化合物A-5の合成
・・・
[図:0001424578000017.jpg]
[0123] 〔合成例6〕マレイミド化合物A-8の合成
・・・
[図:0001424578000018.jpg]
[0125] 〔合成例7〕マレイミド化合物A-9の合成
・・・
[図:0001424578000019.jpg]
[0126] 〔合成例8〕マレイミド化合物A-10の合成
・・・
[図:0001424578000020.jpg]
[0127] 〔合成例9〕マレイミド化合物A-11の合成
・・・
[図:0001424578000021.jpg]
[0128] 〔実施例1~9、及び、比較例1〕
<マレイミドの溶剤溶解性>
合成例1~9で得られたマレイミド(A-1)~(A-5)、(A-8)~(A-11)、及び、比較用の市販のマレイミド(A-6)(4,4'-ジフェニルメタンビスマレイミド、「BMI-1000」大和化成工業株式会社製)のトルエン、メチルエチルケトン(MEK)に対する溶解性の評価を行い、評価結果を表1に示した。
溶剤溶解性の評価方法としては、上記合成例及び比較例で得られた各マレイミドを用いて、不揮発分が10、20、30、40、50、60、及び、70質量%になるようにトルエン溶液、及び、メチルエチルケトン(MEK)溶液を調製した。
具体的には、上記合成例及び比較例で得られた各マレイミドを入れたバイアルを室温(25℃)で60日間放置し、各不揮発分組成における各溶液中において、均一に溶解した場合(不溶物なし)を〇、溶解しなかった場合(不溶物あり)を×と評価(目視)した。なお、不揮発分が20質量%以上の場合に、溶剤に溶解することができれば、実用上、好ましい。
[0129] 〔実施例10~18、及び、比較例2〕
<硬化性樹脂組成物の調製>
合成例1~9で得られたマレイミド(A-1)~(A-5)、(A-8)~(A-11)、比較用マレイミド(A-6)(4,4'-ジフェニルメタンビスマレイミド、「BMI-1000」大和化成工業株式会社製)、反応性二重結合を有するポリフェニレンエーテル化合物(B-1)(「SA-9000」、SABIC社製、Mw:1700)を表2に示す割合で配合し、硬化性樹脂組成物を調製した。
[0130] <硬化物(成型物)の調製>
上記硬化性樹脂組成物を以下の条件に付すことで硬化物(成型物)を作製した。
硬化条件:200℃で2時間加熱後、更に、250℃で2時間加熱硬化させた。
成型後の硬化物(成型物)の板厚:2.4mm 得られた硬化物について、下記の方法で種々の物性・特性の評価を行った。評価結果を表3に示した。
[0131] 〔実施例19~24、及び、比較例3~4〕
<硬化性樹脂組成物の調製>
合成例1、合成例6~9で得られたマレイミド(A-1)、(A-8)~(A-11)、比較用マレイミド(A-7)(3,3'-ジメチル-5,5'-ジエチル-4,4'-ジフェニルメタンビスマレイミド、「BMI-5100」大和化成工業株式会社製)、反応性二重結合を有するポリフェニレンエーテル化合物(B-1)(「SA-9000」、SABIC社製、Mw:1700)、ビニルベンジル化ポリフェニレンエーテル化合物(B-2)、メチルエチルケトン(MEK)を表4に示す割合で配合し、硬化性樹脂組成物を調製した。
なお、前記化合物(B-2)については、特許第6147538号公報の実施例1に準拠して合成した。
[0132] <ワニス溶解性、及び、フィルム外観の均一性>
実施例19~24、及び、比較例3~4の各硬化性樹脂組成物においては、均一に溶解しているか目視にて確認した(ワニス溶解性の確認)。均一に溶解している場合を〇、均一に溶解していない、又は、全く溶解していない場合を×(例えば、不溶物が存在する場合など)と評価した。
また、各硬化性樹脂組成物5gを離型PETフィルム状に塗布(乾燥後の厚み:295μm)し、80℃で1時間乾燥(加熱)後、更に、120℃で1時間乾燥(加熱)することにより、フィルム成形物を作製し、得られたフィルム成形物の外観を目視にて、確認した。フィルム外観が均一の場合を〇、フィルム外観が不均一な場合を×(例えば、濁りや不溶物などが確認できる場合)と評価した。評価結果を表4に示した。
[0133] <ガラス転移温度(Tg)>
厚さ2.4mmの硬化物を幅5mm、長さ54mmのサイズに切り出し、これを試験片とした。この試験片を粘弾性測定装置(DMA:日立ハイテクサイエンス社製固体粘弾性測定装置「DMS6100」、変形モード:両持ち曲げ、測定モード:正弦波振動、周波数1Hz、昇温速度3℃/分)を用いて、弾性率変化が最大となる(tanδ変化率が最も大きい)温度をガラス転移温度Tg(℃)として評価した。なお、耐熱性の観点から、ガラス転移温度Tgとしては、250℃以上(高Tg化)が好ましく、より好ましくは、260℃以上である。
[0134] <耐熱分解性>
厚さ2.4mmの硬化物を細かく裁断し、熱重量分析装置(METTLER TOREDO社製熱重量測定装置「TGA/DSC1」)を用いて、昇温速度を5℃/分として窒素雰囲気下で測定を行い、5%重量減少する温度を耐熱分解温度(Td5)(℃)として評価した。
[0135] <熱膨張性>
厚さ2.4mmの硬化物を幅5mm、長さ5mmのサイズに切り出し、これを試験片とした。この試験片を熱分析装置(SIIナノテクノロジー社製「TMA/SS6100」、昇温速度3℃/分)を用いて40~60℃の範囲の熱膨張係数CTE(ppm)を測定した。なお、耐熱性や反りの防止等の観点から、熱膨張係数としては、60ppm以下が好ましく、より好ましくは、55ppm以下である。
[0136] <誘電特性>
JIS-C-6481に準拠し、アジレント・テクノロジー株式会社製ネットワークアナライザ「E8362C」を用い空洞共振法にて、絶乾後23℃、湿度50%の室内に24時間保管した後の試験片の1GHzでの誘電率及び誘電正接を測定した。なお、誘電率及び誘電正接としては、電子材料としての伝送損失低減の観点から、誘電率は、2.60以下が好ましく、2.55以下がより好ましい。また、誘電正接は、0.0020以下が好ましく、0.0015以下がより好ましい。
[0137]
[図:0001424578000022.jpg]
[0138]
[図:0001424578000023.jpg]
[0139] [表3]
[図:0001424578000024.jpg]
[0140]
[図:0001424578000025.jpg]
[0141] 上記表1の評価結果より、実施例1~9においては、インダン骨格を有するマレイミドを使用したため、トルエン溶液を調製した際には、不揮発分が20質量%であっても溶解することができ、MEK溶液を調製した際には、不揮発分が50質量%であっても溶解することができ、溶剤溶解性に優れることが確認できた。一方、比較例1で使用した市販のマレイミドは、インダン骨格を構造中に有さず、溶剤溶解性に劣ることが確認された。
[0142] 上記表3の評価結果より、実施例10~18においては、インダン骨格を有するマレイミドに加えて、誘電特性にも寄与するポリフェニレンエーテルを構造中に含む反応性二重結合を有するポリフェニレンエーテル化合物(B)を使用したことで、ガラス転移温度や耐熱分解温度が高く、熱膨張係数が小さく抑えられていることから、耐熱性や耐熱分解性に優れることが確認できた。更に、誘電率及び誘電正接も低く抑えられ、誘電特性に優れることも確認できた。一方、比較例2においては、実施例に対して、ガラス転移温度や耐熱分解温度が低く、熱膨張係数が高いことから、耐熱性や耐熱分解性に劣ることが確認され、誘電率及び誘電正接も実施例に対して、低く抑えることができず、誘電特性についても劣ることが確認された。
[0143] 上記表4の評価結果より、実施例19~24では、インダン骨格を有するマレイミドを含有する硬化性樹脂組成物溶液(ワニス)は均一に溶解していることが確認され、更に前記硬化性樹脂組成物溶液(ワニス)を塗布・乾燥して得られるフィルムは、外観が均一であり、特に得られるフィルムの外観均一性が要求されるビルドアップフィルムをはじめ、回路基板(銅張積層板等)等の用途にも使用できることが確認できた。一方、比較例3~4では、市販品で、インダン骨格を有さないマレイミドを使用したため、フィルムの外観は不均一であり、ビルドアップフィルムや回路基板(銅張積層板等)等の用途に使用することが難しいことが確認された。
[0144] 本発明の硬化性樹脂組成物は、その硬化物が耐熱性、及び、誘電特性に優れることから、耐熱部材や電子部材に好適に使用可能であり、特に、半導体封止材、回路基板、ビルドアップフィルム、ビルドアップ基板等や、接着剤やレジスト材料に好適に使用可能である。また、繊維強化樹脂のマトリクス樹脂にも好適に使用可能であり、高耐熱性のプリプレグとして適している。」
(イ)甲1先願明細書等に記載された発明
甲1先願明細書等の請求項1を引用する請求項2に着目すると、甲1先願明細書等には次の発明が記載されていると認める。
「インダン骨格を有するマレイミド(A)、及び、反応性二重結合を有するポリフェニレンエーテル化合物(B)を含有し、
前記マレイミド(A)が、化1化合物である硬化性樹脂組成物。」(以下、「甲1発明」という。)
イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明とを対比する。
a 甲1発明の「インダン骨格を有するマレイミド(A)」は、「化1化合物」であるから、本件発明1の「(A)マレイミド化合物」であって、「(A-1)トリメチルインダン骨格を含むマレイミド化合物」であり、「式(A4)で表される構造を含」むことに相当する。
b 甲1発明の「反応性二重結合を有するポリフェニレンエーテル化合物(B)」は、本件発明1の「(B)芳香環及びラジカル重合性不飽和基を含む樹脂」に相当する。
c 甲1発明の「硬化性樹脂組成物」は、本件発明1の「樹脂組成物」に相当する。
d 甲1発明の「硬化性樹脂組成物」は、「下記式(1)で表されるシアン酸エステル化合物A1及び下記式(2)で表されるシアン酸エステル化合物A2を含む樹脂組成物、並びに窒化ホウ素を含む樹脂組成物
【化2】
[図:0001424578000026.jpg]
(式中、Rは、各々独立して、水素原子又はメチル基を表し、nは1以上の整数を表す。)
【化3】
[図:0001424578000027.jpg]
(当審注:以下、「式(1)で表されるシアン酸エステル化合物A1」及び「式(2)で表されるシアン酸エステル化合物A2」の化学式は省略する。)に該当しない。
以上から、本件発明1と甲1発明とは、
「(A)マレイミド化合物、(B)芳香環及びラジカル重合性不飽和基を含む樹脂を含み、
(A)マレイミド化合物が、(A-1)トリメチルインダン骨格を含むマレイミド化合物を含み、
(A-1)成分が、下記式(A4)で表される構造を含む樹脂組成物(下記式(1)で表されるシアン酸エステル化合物A1及び下記式(2)で表されるシアン酸エステル化合物A2を含む樹脂組成物、並びに窒化ホウ素を含む樹脂組成物を除く)。」
で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1>
(A-1)成分の量に関し、本件発明1は、「樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、10質量%以上50質量%以下であり、かつ、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、70質量%以下であ」るのに対し、甲1発明は、特定されていない点
<相違点2>
(B)成分の量に関し、本件発明1は、「樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対する、5質量%以上50質量%以下であり、かつ、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、70質量%以下であ」るのに対し、甲1発明は、特定されていない点
<相違点3>
本件発明1は、「樹脂組成物」に「(D)無機充填材」を含み、「(D)無機充填材の量」が「樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、その配合量が40質量%以上80質量%以下であ」るのに対し、甲1発明は、無機充填材を含むことは特定されていない点
<相違点4>
本件発明1は、「樹脂組成物」に「(E)熱可塑性樹脂」を含み、「(E)成分が、フェノキシ樹脂、・・・、ポリエステル樹脂からなる群より選択される1以上の熱可塑性樹脂であ」り、「(E)成分の量が、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、2質量%以上10質量%以下である」のに対し、甲1発明は、熱可塑性樹脂を含むことは特定されていない点
(イ)判断
事案に鑑みて、相違点4から検討する。
甲1発明は、熱可塑性樹脂に係る発明特定事項を有さないし、甲1先願明細書等において、熱可塑性樹脂に関する記載も示唆もない。
そして、本件明細書には、「樹脂組成物中の(E)熱可塑性樹脂の量は、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、・・・、さらに好ましくは2質量%以上であり、・・・、さらに好ましくは10質量%以下である。(E)熱可塑性樹脂の量が前記範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。」こと(【0200】)が記載されている。
そうすると、樹脂組成物に熱可塑性樹脂を適量適用することで、本件発明の効果を顕著に得ることができるものであるから、相違点4に係る構成は、課題解決のための具体化手段における微差であるとはいえず、実質同一ではない。
してみると、相違点4は実質的な相違点である。
よって、本件発明1は甲1発明と同一ないし実質同一でない。
(ウ)小括
したがって、本件発明1は、相違点1~3を検討するまでもなく、甲1発明と同一ないし実質同一でない。
ウ 本件発明3~12について
本件発明3~12は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、上記イと同様の理由により、本件発明3~12は甲1発明と同一ないし実質同一でない。
エ 小括
以上から、本件特許の請求項1、3~12に係る発明は、甲1先願明細書等に記載された発明と同一ないし実質同一でない。
したがって、「取消理由1 その1」及び「申立理由1 その1のうち甲1に基づくもの」によっては、取り消すことができない。
2 取消理由1(拡大先願) その2及び申立理由1(拡大先願) その2
「取消理由1(拡大先願) その2」及び「申立理由1(拡大先願) その2」は、いずれも甲2に基づくものであるから、併せて検討する。
(1)甲2に記載された事項及び甲2に記載された発明
甲2は、優先権主張に係る2つの基礎出願があるところ、そのうちの特願2020-029909号は、出願日が令和2年2月25日であり、特許法第41条第3項の規定により、これを優先権の基礎とすることを主張して、これの出願日から1年以内である令和3年2月24日に国際出願し、国際公開された令和3年9月2日が甲2の公開日とみなされるものである。
これに対し、本件特許の拡大先願の判断の基準日は、令和2年4月1日であり、両者において、発明者、出願人は同一でない。
したがって、特願2020-029909号に記載された事項のうち、甲2においても記載された以下の事項は、本件特許の拡大先願の判断の基準日前に出願され、本件特許の出願後に出願公開がされたとみなされるものである。
ア 甲2に係る出願の願書に最初に添付した明細書又は特許請求の範囲(以下、「甲2先願明細書等」という。)に記載された事項及び甲2先願明細書等に記載された発明
(ア)甲2先願明細書等に記載された事項
甲2先願明細書等には、以下の事項が記載されている。
「[請求項1] 式(M1)で表される化合物(A)と炭素-炭素不飽和二重結合を2以上含む化合物(B)とを含む樹脂組成物。
式(M1)
[図:0001424578000028.jpg]
(式(M1)中、RM1、RM2、RM3、およびRM4は、それぞれ独立に、水素原子または有機基を表す。RM5およびRM6はそれぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表す。ArMは2価の芳香族基を表す。Aは、4~6員環の脂環基である。RM7およびRM8は、それぞれ独立に、アルキル基である。mxは1または2であり、lxは0または1である。RM9およびRM10はそれぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表す。RM11、RM12、RM13、およびRM14は、それぞれ独立に、水素原子または有機基を表す。nxは1以上20以下の整数を表す。)(当審注:以下、式(M1)は省略する。)
[請求項2] 前記樹脂組成物中の樹脂固形分を100質量部としたとき、前記式(M1)で表される化合物(A)の含有量が1~90質量部である、請求項1に記載の樹脂組成物。
[請求項3] 前記樹脂組成物中の樹脂固形分を100質量部としたとき、前記炭素-炭素不飽和二重結合を2以上含む化合物(B)の含有量が1~90質量部である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
・・・
[請求項5] さらに、充填材(D)を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
[請求項6] 前記樹脂組成物における、前記充填材(D)の含有量が、樹脂固形分100質量部に対し、50~1600質量部である、請求項5に記載の樹脂組成物。
[請求項7] 前記炭素-炭素不飽和二重結合を2以上含む化合物(B)が、炭素-炭素不飽和二重結合を2以上含むポリフェニレンエーテル化合物を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
[請求項8] 前記炭素-炭素不飽和二重結合を2以上含む化合物(B)が、式(1)で表される化合物を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
[図:0001424578000029.jpg]
(式(1)中、Xは芳香族基を表し、-(Y-О)n2-はポリフェニレンエーテル構造を表し、R1、R2、および、R3は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基またはアルキニル基を表し、n1は1~6の整数を表し、n2は1~100の整数を表し、n3は1~4の整数を表す。)
[請求項9] プリント配線板用である、請求項1~8のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
[請求項10] 請求項1~9のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物。
[請求項11] 基材と、請求項1~9のいずれか1項に記載の樹脂組成物から形成されたプリプレグ。
[請求項12] 少なくとも1枚の請求項11に記載のプリプレグと、前記プリプレグの片面または両面に配置された金属箔とを含む、金属箔張積層板。
[請求項13] 支持体と、前記支持体の表面に配置された請求項1~9のいずれか1項に記載の樹脂組成物から形成された層を含む樹脂シート。
[請求項14] 絶縁層と、前記絶縁層の表面に配置された導体層とを含むプリント配線板であって、
前記絶縁層が、請求項1~9のいずれか1項に記載の樹脂組成物から形成された層および請求項11に記載のプリプレグから形成された層の少なくとも一方を含むプリント配線板。」
「[0002] 近年、通信機器、通信機、パーソナルコンピューター等に用いられる半導体の高集積化、微細化が進んでおり、これに伴い、これらに用いられるプリント配線板(例えば、金属箔張積層板等)に求められる諸特性はますます厳しいものとなっている。求められる主な特性としては、例えば、金属箔ピール強度、低吸水性、耐デスミア性、耐燃性、低誘電率、低誘電正接性、低熱膨張率、耐熱性等が挙げられる。」
「[0010] 本明細書において、樹脂固形分とは、充填材および溶媒を除く成分をいい、式(M1)で表される化合物(A)、および、炭素-炭素不飽和二重結合を2以上含む化合物(B)、ならびに、必要に応じ配合される他の樹脂成分(C)、エラストマー、シランカップリング剤、およびその他の成分(難燃剤等の添加剤等)を含む趣旨である。」
「[0016] 式(M1)で表される化合物は、下記の式(M2)で表される化合物であることが好ましい。
[図:0001424578000030.jpg]
(式(M2)中、RM21、RM22、RM23、およびRM24は、それぞれ独立に、水素原子または有機基を表す。RM25およびRM26はそれぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表す。RM27、RM28、RM29、およびRM30は、それぞれ独立に、水素原子または有機基を表す。RM31およびRM32はそれぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表す。RM33、RM34、RM35、およびRM36は、それぞれ独立に、水素原子または有機基を表す。RM37、RM38、RM39はそれぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表す。nxは1以上20以下の整数を表す。)
・・・
[0018] 式(M2)で表される化合物は、下記式(M3)の化合物であることが好ましい。
[図:0001424578000031.jpg]
(式(M3)中、nxは1以上20以下の整数を表す。)
nxは10以下の整数であってもよい。」
「[0022] 本実施形態の樹脂組成物は、樹脂組成物中の樹脂固形分を100質量部としたとき、前記式(M1)で表される化合物(A)の含有量が1~90質量部であることが好ましい。」
「[0027] 炭素-炭素不飽和二重結合を2以上含む化合物(B)は、GPC法によるポリスチレン換算の数平均分子量が、500以上であることが好ましく、1000以上であることがより好ましく、1200以上であることがさらに好ましく、1500以上であることが一層好ましく、1800以上であってもよい。前記下限値以上とすることにより、得られる硬化物の低誘電性がより向上する傾向にある。また、炭素-炭素不飽和二重結合を2以上含む化合物(B)の数平均分子量は、7000以下であることが好ましく、5000以下であることがより好ましく、3500以下であることがさらに好ましく、3000以下であることが一層好ましく、2300以下であることがより一層好ましい。前記上限値以下とすることにより、得られる硬化物の耐熱性がより向上する傾向にある。」
「[0034] 変性ポリフェニレンエーテル化合物(g)に含まれるエチレン性不飽和基は、エテニル基、アリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基およびオクテニル基等のアルケニル基、シクロペンテニル基およびシクロヘキセニル基等の環状アルケニル基、ビニルベンジル基およびビニルナフチル基等のアルケニルアリール基が挙げられ、ビニルベンジル基が好ましい。」
「[0046] 本実施形態の樹脂組成物は、樹脂組成物中の樹脂固形分を100質量部としたとき、前記炭素-炭素不飽和二重結合を2以上含む化合物(B)の含有量が1~90質量部であることが好ましい。」
「[0081]<(D)充填材>
本実施形態の樹脂組成物は、充填材(D)を含むことが好ましい。充填材(D)を配合することにより、樹脂組成物の低誘電率性、低誘電正接性、耐燃性、および低熱膨張性をより向上させることができる。
・・・
[0082] 本実施形態で使用される充填材(D)としては、その種類は特に限定されず、当業界において一般に使用されているものを好適に用いることができる。具体的には、天然シリカ、溶融シリカ、合成シリカ、アモルファスシリカ、アエロジル、中空シリカ等のシリカ類、・・・などが挙げられる。
これらの中でも、シリカ類、水酸化アルミニウム、ベーマイト、酸化マグネシウムおよび水酸化マグネシウムからなる群から選択される1種または2種以上が好適である。これらの充填材を使用することで、樹脂組成物の熱膨張特性、寸法安定性、難燃性などの特性が向上する。
[0083] 本実施形態の樹脂組成物における充填材(D)の含有量は、所望する特性に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、50質量部以上が好ましく、より好ましくは75質量部以上である。また、樹脂組成物中の樹脂固形分100質量部に対し、1600質量部以下が好ましく、より好ましくは1200質量部以下であり、さらに好ましくは1000質量部以下であり、一層好ましくは750質量部以下であり、より一層好ましくは500質量部以下であり、さらに一層好ましくは300質量部以下であり、250質量部以下、200質量部以下であってよい。
本実施形態の樹脂組成物において、好ましい実施形態の一例として、充填材(D)の含有量が溶剤を除く成分の30質量%~80質量%である態様が例示される。
本実施形態における樹脂組成物は、充填材(D)を1種のみ含んでいてもよいし、2種以上含んでいてもよい。2種以上含む場合、合計量が上記範囲となることが好ましい。」
「[0088] <硬化促進剤>
本実施形態の樹脂組成物は、硬化促進剤をさらに含んでもよい。硬化促進剤としては、特に限定されないが、例えば、トリフェニルイミダゾール等のイミダゾール類;過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、パラクロロベンゾイルパーオキサイド、ジ-tert-ブチル-ジ-パーフタレートなどの有機過酸化物;アゾビスニトリルなどのアゾ化合物;・・・などが挙げられる。
好ましい硬化促進剤は、イミダゾール類および有機金属塩であり、イミダゾール類および有機金属塩の両方を組み合わせて用いることがより好ましい。」
「実施例
[0106] 以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
実施例で用いた測定機器等が廃番等により入手困難な場合、他の同等の性能を有する機器を用いて測定することができる。
[0107]<合成例1 変性ポリフェニレンエーテル化合物の合成>
<<2官能フェニレンエーテルオリゴマーの合成>>
撹拌装置、温度計、空気導入管、および、じゃま板のついた12Lの縦長反応器にCuBr29.36g(42.1mmol)、N,N’-ジ-t-ブチルエチレンジアミン1.81g(10.5mmol)、n-ブチルジメチルアミン67.77g(671.0mmol)、トルエン2,600gを仕込み、反応温度40℃にて撹拌を行い、予め2,300gのメタノールに溶解させた2,2’,3,3’,5,5’-ヘキサメチル-(1,1’-ビフェノール)-4,4’-ジオール129.32g(0.48mol)、2,6-ジメチルフェノール878.4g(7.2mol)、N,N’-ジ-t-ブチルエチレンジアミン1.22g(7.2mmol)、n-ブチルジメチルアミン26.35g(260.9mmol)の混合溶液を、窒素と空気とを混合して酸素濃度8体積%に調整した混合ガスを5.2L/分の流速でバブリングを行いながら230分かけて滴下し、撹拌を行った。滴下終了後、エチレンジアミン四酢酸四ナトリウム48.06g(126.4mmol)を溶解した水1,500gを加え、反応を停止した。水層と有機層を分液し、有機層を1Nの塩酸水溶液、次いで純水で洗浄した。得られた溶液をエバポレーターで50質量%に濃縮し、2官能性フェニレンエーテルオリゴマー体(樹脂「A」)のトルエン溶液を1981g得た。樹脂「A」のGPC法によるポリスチレン換算の数平均分子量は1975、GPC法によるポリスチレン換算の重量平均分子量は3514、水酸基当量は990であった。
[0108]<<変性ポリフェニレンエーテル化合物の合成>>
撹拌装置、温度計、および還流管を備えた反応器に樹脂「A」のトルエン溶液833.4g、ビニルベンジルクロライド(セイミケミカル社製、「CMS-P」)76.7g、塩化メチレン1,600g、ベンジルジメチルアミン6.2g、純水199.5g、30.5質量%のNaOH水溶液83.6gを仕込み、反応温度40℃で撹拌を行った。24時間撹拌を行った後、有機層を1Nの塩酸水溶液、次いで純水で洗浄した。得られた溶液をエバポレーターで濃縮し、メタノール中へ滴下して固形化を行い、濾過により固体を回収、真空乾燥して変性ポリフェニレンエーテル化合物450.1gを得た。変性ポリフェニレンエーテル化合物のGPC法によるポリスチレン換算の数平均分子量は2250、GPC法によるポリスチレン換算の重量平均分子量は3920、ビニル基当量は1189g/ビニル基であった。
[0109]実施例1
式(M1)で表される化合物(A)(「X9-450」、DIC社製、式(M1)で表される化合物)77質量部、合成例1で得られた変性ポリフェニレンエーテル20質量部、ナフタレン骨格変性したノボラック型のエポキシ樹脂(「HP-9900」、DIC社製)3質量部、溶融シリカ150質量部(「SC2050-MNU」、平均粒子径0.5μm(アドマテックス社製))、TPIZ(2,4,5-トリフェニルイミダゾール、触媒)0.5質量部をメチルエチルケトンで溶解させて混合し、ワニスを得た。なお、上述の各添加量は、固形分量を示す。このワニスをメチルエチルケトンでさらに希釈し、厚さ0.069mmのNEガラス織布(東紡績株式会社製、品番:N3313)に含浸塗工し、150℃で5分間加熱乾燥して、樹脂組成物量(充填材を含む。)60質量%、ガラスクロス量40質量%、厚さ100μmのプリプレグを得た。得られたプリプレグを用いて金属箔張積層板を作製し、各種物性の測定を行った。」
「産業上の利用可能性
[0121] 以上説明した通り、本発明の樹脂組成物は、電気・電子材料、工作機械材料、航空材料等の各種用途において、例えば、電気絶縁材料、半導体プラスチックパッケージ、封止材料、接着剤、積層材料、レジスト、ビルドアップ積層板材料等として、広くかつ有効に利用可能であり、とりわけ、近年の情報端末機器や通信機器などの高集積・高密度化対応のプリント配線板材料として有効に利用可能である。また、本発明の金属箔張積層板等は、特に、低吸水性、耐薬品性、耐デスミア性、および耐熱性を有するので、その工業的な実用性は極めて高いものとなる。」
(イ)甲2先願明細書等に記載された発明
甲2先願明細書等の請求項1~3を引用する請求項5を引用する請求項6を、さらに引用する請求項7に着目すると、甲2先願明細書等には次の発明が記載されていると認める。
「式(M1)で表される化合物(A)と炭素-炭素不飽和二重結合を2以上含む化合物(B)とを含む樹脂組成物であって、
式(M1)(省略)
(式(M1)中、RM1、RM2、RM3、およびRM4は、それぞれ独立に、水素原子または有機基を表す。RM5およびRM6はそれぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表す。ArMは2価の芳香族基を表す。Aは、4~6員環の脂環基である。RM7およびRM8は、それぞれ独立に、アルキル基である。mxは1または2であり、lxは0または1である。RM9およびRM10はそれぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表す。RM11、RM12、RM13、およびRM14は、それぞれ独立に、水素原子または有機基を表す。nxは1以上20以下の整数を表す。)
前記樹脂組成物中の樹脂固形分を100質量部としたとき、前記式(M1)で表される化合物(A)の含有量が1~90質量部であり、
前記樹脂組成物中の樹脂固形分を100質量部としたとき、前記炭素-炭素不飽和二重結合を2以上含む化合物(B)の含有量が1~90質量部であり、
さらに、充填材(D)を含み、
前記樹脂組成物における、前記充填材(D)の含有量が、樹脂固形分100質量部に対し、50~1600質量部であり、
前記炭素-炭素不飽和二重結合を2以上含む化合物(B)が、炭素-炭素不飽和二重結合を2以上含むポリフェニレンエーテル化合物を含む、樹脂組成物。」(以下、「甲2発明」という。)
イ 本件発明1について
本件発明1と甲2発明とを対比する。
(ア)甲2発明の「式(M1)で表される化合物(A)」について、甲2先願明細書等の段落[0016]、[0018]に、その具体的な化学式が記載されており、トリメチルインダン骨格を含むことが理解できるから、上記「式(M1)で表される化合物(A)」は、本件発明1の「(A)マレイミド化合物」であって、「(A-1)トリメチルインダン骨格を含むマレイミド化合物」であり、「式(A4)で表される構造を含」むことに相当する。
(イ)甲2発明の「炭素-炭素不飽和二重結合を2以上含む化合物(B)」であって、「炭素-炭素不飽和二重結合を2以上含むポリフェニレンエーテル化合物」であることは、本件発明1の「(B)芳香環及びラジカル重合性不飽和基を含む樹脂」に相当する。
(ウ)甲2発明の「樹脂固形分」について、甲2先願明細書等には、充填材及び溶媒を除く成分をいい、式(M1)で表される化合物(A)、及び、炭素不飽和二重結合を2以上含む化合物(B)、並びに、必要に応じ配合される他の樹脂成分(C)、エラストマー、シランカップリング剤、及びその他の成分(難燃剤等の添加剤等)を含むこと([0010])が記載されていることから、甲2発明の「樹脂固形分」は充填材(D)及び溶剤を含まないものである。
ここで、「樹脂組成物」中の「不揮発成分」は、「樹脂固形分」と「充填材」であるから、甲2発明でいえば、「不揮発成分」の総量は、「樹脂固形分」である「式(M1)で表される化合物(A)」と「炭素-炭素不飽和二重結合を2以上含む化合物(B)」の各成分量の和100質量部、及び「充填材(D)」の成分量である50~1600質量部との和であるといえる。
また、甲2発明の「充填材(D)」は、シリカ類などである([0082])から、本件発明1の「(D)無機充填材」に相当する。
そうすると、「樹脂組成物」中の「樹脂固形分」100質量部としたとき、「式(M1)で表される化合物(A)」の含有量が1~90質量部であるから、「式(M1)で表される化合物(A)」の量は、「樹脂組成物」中の「不揮発成分」100質量%に対して、約5.58×10-2~60質量%(=(1~90)×100/((50~1600)+100))となり、本件発明1の「(A-1)成分の量が、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、10質量%以上50質量%以下であ」ることに重複一致する。
同様に、「式(M1)で表される化合物(A)」の量は、「樹脂組成物」中の「樹脂成分」100質量%に対して、1~90質量%(=(1~90)×100/100)となり、本件発明1の「(A-1)成分の量が、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して70質量%以下であ」ることに重複一致する。
そして、「樹脂組成物」中の「樹脂固形分」100質量部としたとき、「炭素-炭素不飽和二重結合を2以上含む化合物(B)」の含有量が1~90質量部であるから、上記と同じ計算により、「樹脂組成物」中の「不揮発成分」100質量%に対して、約5.58×10-2~60質量%となり、本件発明1の「(B)成分の量が、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、5質量%以上50質量%以下であ」ることに重複一致する。
同様に、「炭素-炭素不飽和二重結合を2以上含む化合物(B)」の含有量が1~90質量部であるから、上記と同じ計算により、「樹脂組成物」中の「樹脂成分」100質量%に対して、1~90質量%となり、本件発明1の「(B)成分の量が、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、70質量%以下であ」ることに重複一致する。
さらに、「樹脂組成物」中の「樹脂固形分」100質量部としたとき、「充填材(D)」の含有量が50~1600質量部であるから、「充填材(D)」の量は、「樹脂組成物」中の「不揮発成分」100質量%に対して、約2.94~94.12質量%(=(50~1600)×100/((50~1600)+100))となり、本件発明1の「(D)無機充填材の量が、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、40質量%以上80質量%以下である」ことに重複一致する。
(エ)甲2発明の「樹脂組成物」は、「下記式(1)で表されるシアン酸エステル化合物A1及び下記式(2)で表されるシアン酸エステル化合物A2を含む樹脂組成物、並びに窒化ホウ素を含む樹脂組成物」に該当しない。
以上から、本件発明1と甲2発明とは、
「(A)マレイミド化合物、(B)芳香環及びラジカル重合性不飽和基を含む樹脂、及び(D)無機充填材を含み、
(A)マレイミド化合物が、(A-1)トリメチルインダン骨格を含むマレイミド化合物を含み、
(A-1)成分が、下記式(A4)で表される構造を含み、
(A-1)成分の量が、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、10質量%以上50質量%以下であり、かつ、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、70質量%以下であり、
(B)成分の量が、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、5質量%以上50質量%以下であり、かつ、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、70質量%以下であり、
(D)無機充填材の量が、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、40質量%以上80質量%以下である、樹脂組成物(下記式(1)で表されるシアン酸エステル化合物A1及び下記式(2)で表されるシアン酸エステル化合物A2を含む樹脂組成物、並びに窒化ホウ素を含む樹脂組成物を除く)。」
で一致し、以下の点で相違する。
<相違点4’>
本件発明1は、「樹脂組成物」に「(E)熱可塑性樹脂」を含み、「(E)成分が、フェノキシ樹脂、・・・、ポリエステル樹脂からなる群より選択される1以上の熱可塑性樹脂であ」り、「(E)成分の量が、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、2質量%以上10質量%以下である」のに対し、甲2発明は、熱可塑性樹脂を含むことは特定されていない点
(イ)判断
上記相違点4’について検討する。
甲2発明は、熱可塑性樹脂に係る発明特定事項を有さないし、甲2先願明細書等において、熱可塑性樹脂に関する記載も示唆もない。
そして、本件明細書には、「樹脂組成物中の(E)熱可塑性樹脂の量は、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、・・・、さらに好ましくは2質量%以上であり、・・・、さらに好ましくは10質量%以下である。(E)熱可塑性樹脂の量が前記範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。」こと(【0200】)が記載されている。
そうすると、樹脂組成物に熱可塑性樹脂を適量適用することで、本件発明の効果を顕著に得ることができるものであるから、相違点4’に係る構成は、課題解決のための具体化手段における微差であるとはいえず、実質同一ではない。
してみると、相違点4’は実質的な相違点である。
よって、本件発明1は甲2発明と同一ないし実質同一でない。
(ウ)小括
したがって、本件発明1は、甲2発明と同一ないし実質同一でない。
ウ 本件発明3~12について
本件発明3~12は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、上記イと同様の理由により、本件発明3~12は甲2発明と同一ないし実質同一でない。
エ 小括
以上から、本件特許の請求項1、3~12に係る発明は、甲2先願明細書等に記載された発明と同一ないし実質同一でない。
したがって、「取消理由1 その2」及び「申立理由1 その2」によっては、取り消すことができない。
3 取消理由2(進歩性)について
「取消理由2(進歩性)」及び「申立理由4(進歩性)」は、甲4を主引例とするものであるところ、「申立理由3(新規性)」も甲4に基づくものであるから、これらを併せて検討する。
(1)甲4に記載された事項及び甲4に記載された発明
ア 甲4に記載された事項
甲4には、以下の事項が記載されている。
「2.一般式〔I〕が、次式
[図:0001424578000032.jpg]
で表わされることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の付加反応型エーテルイミド系化合物
・・・
7.一般式〔I〕:
[図:0001424578000033.jpg]
〔式中、D1、D2はエチレン性不飽和二重結合を有する2価の有機基であり、お互いに同じであつても異なつていてもよい。〕で表わされる骨格を有する化合物と、一般式
[図:0001424578000034.jpg]
〔式中、Aはなし、-CH2-、
[図:0001424578000035.jpg]
[図:0001424578000036.jpg]
-O-、-CO-、-S-、-SO2-の中のいずれかである。〕で表わされる骨格を有する化合物とを、必須成分として含むことを特徴とする付加反応型エーテルイミド系組成物。」(特許請求の範囲)
「〔産業上の利用分野〕
本発明は、ポリマの中間体として有用なエーテルイミド系化合物、その製造法、及び該エーテルイミド系化合物を含む組成物に関する。
・・・
〔発明が解決しようとする問題点〕
従来、耐熱ポリマの原料としては、無水マレイン酸と、ジアミン化合物とより得られるN,N’-置換ビスマレイミドや、無水マレイン酸とアニリン樹脂の反応生成物が知られている。しかし、これら従来のイミド系化合物は、耐熱性は良好であるが、可撓性を付与することがむずかしいこと、アセトン、トルエンなどの溶媒に対する溶解性が悪いと云う欠点を有している。
本発明の目的は耐熱可撓性にすぐれたポリマの原料として有用なエーテルイミド系化合物を提供することにある。」(第3頁右上欄第6行~同左下欄第9行)
「また、本発明において、
一般式〔1〕
[図:0001424578000037.jpg]
〔式中、D1、D2はエチレン性不飽和二重結合を有する2価の有機基であり、お互いに同じであっても異なっていてもよい。〕で表わされるエーテルイミド系化合物は、一般式
[図:0001424578000038.jpg]
で表わされるエーテルジアミン系化合物と、一般式〔IV〕、および一般式〔V〕で表わされるエチレン性不飽和二重結合を有するジカルボン酸無水物とを付加反応された後、脱水縮合反応させることによって得られる。
一般式〔IV〕および一般式〔V〕は次の
一般式〔IV〕
[図:0001424578000039.jpg]
および
一般式〔V〕
[図:0001424578000040.jpg]
で表わされる。
また、前記一般式〔IV〕および一般式〔V〕で示される不飽和ジカルボン酸無水物としては例えば無水マレイン酸、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸、・・・などがあり、これらの少なくとも1種が用いられる。」(第6頁右上欄第2行~右下欄第8行)
「また、ビニル、アリルあるいはアクリル系化合物のような重合可能なCH2=C<基を有する単量体の少なくとも1種を添加することにより、低温、速硬化性で、耐熱性の硬化物を与える組成物を得ることができる。・・・
また、公知の不飽和ポリエステルを加えることにより、硬化前に変性可能である。ここで、不飽和ポリエステルとは、不飽和二塩基酸、飽和二塩基酸およびその無水物またはこれらの低級アルキルエステル誘導体等とジオールまたはアルキレンモノオキサイドおよびその誘導体等から、触媒の存在または不存在下にエステル化、エステル交換等の反応を利用して縮合または付加重合することによって合成された不飽和基を含有するポリエステル樹脂母体と、例えばビニル基、アリル基等を有する重合性化合物、ならびに過酸化物触媒との混合物からなるものである。その他に、ビスフェノールA型ならびにノボラック型等のエポキシ化合物とメタアクリル酸またはアクリル酸と反応して得られるビニルエステル系樹脂も有用である。ここで、前記不飽和二塩基酸、飽和二塩基酸の代表的なものとしてはマレイン酸、無水マレイン酸、フマール酸、・・・、フタール酸、無水フタール酸、イソフタール酸、テレフタール酸、・・・等が使用され、・・・」(第8頁右下欄第20行~第9頁左下欄第2行)
「上記の樹脂組成物には、短時間の加熱によってその硬化を完了させる目的で、重合開始剤を添加することが望ましい。そのような重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキシド、p-クロロベンゾイルパーオキシド、・・・などの有機過酸化物が有用であり、その1種または2種以上を用いることができる。」(第14頁左下欄第20行~同右下欄第16行)
「〔実施例〕
実施例1
1-〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕-1,3,3-トリメチル-6-(3-アミノフェノキシ)インダン45.5重量部をアセトンとジメチルアセトアミド等量混液500mlに溶解し、これにエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸25.6重量部を添加し、5℃以下で撹拌反応した後、窒素ガス置換ふん囲気中で、無水酢酸50重量部と酢酸カリウム0.1重量部を加え、60~80℃で、約3時間反応させた。その後、濾過、洗浄、乾燥を行なって、エーテルイミド系化合物(a)を得た。
赤外線吸収スペクトル(IRスペクトル)を測定した結果、1230~1240cm-1にエーテル結合の特性吸収、1712cm-1と1778cm-1にイミド結合に由来する特性吸収が認められた。
実施例2
1-〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕-1,3,3-トリメチル-6-(3-アミノフェノキシ)インダン45.5重量部を、メチルエチルケトンとN-メチル-2ピロリドンとの等量混合液500mlに溶解し、これに無水マレイン酸19.6重量部を5℃以下で2時間、窒素気流中で撹拌反応した後、無水酢酸30重量部と、酢酸リチウム0.05重量部、トリエチルアミン5mlを加え、60~80℃で、3時間反応させた。その後、上記反応物を、約3060mlの蒸留水中に滴下し、沈澱を生成させた。これを濾過、洗浄、乾燥を行なって、エーテルイミド系化合物(b)を得た。
このエーテルイミド系化合物(b)のIRスペクトルには、1235cm-1にエーテル結合、1715cm-1と1780cm-1にイミド結合に由来する特性吸収が認められた。
応用例1~11
実施例1と実施例2で得られたエーテルイミド系化合物(a)および(b)と、不飽和ポリエステル(日立化成社製:PS-518)、2,2-ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕プロパンおよびエポキシ化合物(ノボラック型;エポキシ当量225)を、第1表に示す割合(重量部)でそれぞれ別個に配合し11種類の配合物を作成した。これらに、さらに、それぞれ、第1表に示す充填剤および添加剤を添加したのち、混練機で均一に混合し、かつ、150~170℃で1~5分間加熱成形して、各種硬化物(試片)を作成した。第1表に各種硬化物の特性を示す。
[図:0001424578000041.jpg]
実施例3
1-〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕-1,3,3-トリメチル-6-(3-アミノフェノキシ)インダン45.5重量部を、アセトン-トルエン混合液500mlに溶解し、これに、アセトンに溶解した、エンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸12.8重量部と無水マレイン酸9.8重量部添加し、5℃以下で2時間、窒素気流中で撹拌した後、無水酢酸150重量部と、酢酸ナトリウム0.1重量部、トリエチルアミン10mlを加え、60~80℃で約3時間反応させた。その後、この反応物を、5000mlの蒸留水中に加え、沈澱を生成させた。その後、濾過、洗浄、乾燥を行って、エーテルイミド系化合物(c)を得た。
このエーテルイミド系化合物(c)のIRスペクトルには1235~1240cm-1のエーテル結合、1710cm-1と1780cm-1にイミド結合に由来する特性吸収が認められた。
実施例4
1-〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕-1,3,3-トリメチル-6-(3-アミノフェノキシ)インダン45.5重量部をアセトンと、N-メチル-2-ピロリドン等量混液500mlに溶解し、これにアセトンに溶解した、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物12.8重量部、テトラヒドロ無水フタル酸11.6重量部を、5℃以下、窒素気流中で、約2時間反応させた後、無水酢酸200重量部と酢酸カリウム1重量部、トリエチルアミン5mlを加え、60~80℃、3時間反応させた。その後、上記反応物を、5000mlのブチルアルコールに加え、沈澱を生成させた後、濾過、洗浄、乾燥を行なって、エーテルイミド系化合物(d)を得た。
このエーテルイミド系化合物(d)のIRスペクトルには1230~1240cm-1にエーテル結合、1710cm-1と1782cm-1にイミド結合に由来する特性吸収が認められた。
応用例12~19
実施例3および4で得たエーテルイミド系化合物(c)および(d)に、第2表に示す各種添加物を加えて混合し、さらに、前記応用例と同様にして試験片を作成し、その諸特性を測定した。その結果を第2表に示す。配合割合は重量部である。
[図:0001424578000042.jpg]
実施例5
1-〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕-1,3,3-トリメチル-6-(3-アミノフェノキシ)インダン45.5重量部を、アセトン500mlに溶解し、これにメチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸28.6重量部を添加し、5℃以下で撹拌反応した後、窒素ガス置換雰囲気中で、無水酢酸50重量部と、酢酸リチウム0.2重量部、トリエチルアミン3重量部を加え、60~80℃で3時間反応させた。その後、濾過、洗浄、乾燥を行なって、エーテルイミド系化合物(e)を得た。
このエーテルイミド系化合物(e)のIRスペクトルには、1238cm-1にエーテル結合、1712cm-1と1778cm-1にイミド結合に由来する特性吸収が認められた。
実施例6
1-〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕-1,3,3-トリメチル-6-(3-アミノフェノキシ)インダン45.5重量部を、アセトン500mlに溶解し、これにジクロロエンドメチレンテトラヒドロ無水フタル酸16重量部と、無水マレイン酸10重量部を添加し、窒素雰囲気中で室温以下で5時間撹拌反応した後、ポリリン酸100重量部と、酢酸カリウム0.3重量部、トリエチルアミン4重量部を加え、60~80℃、3時間反応させた。その後、濾過、洗浄、乾燥を行なって、エーテルイミド系化合物(f)を得た。
このエーテルイミド系化合物(f)のIRスペクトルには、1235cm-1にエーテル結合、1710cm-1と、1780cm-1にイミド結合に由来する特性吸収が認められた。
応用例20~31
前記実施例1、実施例2、実施例5および実施例6で得られたエーテルイミド系化合物(a)、(b)、(e)、(f)を、第3表に示す各種素材と、それぞれ別個に配合し12種類の配合物を作成した。第3表中のカツプリング剤はテトラ(2,2-ジアリルオキシメチル-1-ブチル)ビス(ジ-トリデシル)フォスファイトチタネートである。また各素材の配合割合は重量部である。得られた配合物を応用例1と同様の条件で混練し、各種の特性試験用の試片を作成した。第3表に各種硬化物の特性。
[図:0001424578000043.jpg]
〔発明の効果〕
本発明によれば、ケトン類などの一般的な溶剤に溶解しうる付加反応型エーテルイミド系化合物とその製造法及びその組成物が得られるので、耐熱性及び可撓性に優れた硬化物重合体を容易に得ることができる。」
イ 甲4に記載された発明
甲4の実施例の応用例7に記載された配合物を、混練機で均一に混合して得た樹脂組成物として整理すると、甲4には次の発明が記載されていると認める。
「下記エーテルイミド系化合物(b)100重量部、不飽和ポリエステル50重量部、ジクミルパーオキサイド3重量部、炭酸カルシウム粉200重量部、シリカ粉250重量部、シランカップリング剤2重量部、ステアリン酸2重量部、カーボンブラック1重量部を含有する樹脂組成物。
ここで、エーテルイミド系化合物(b)は、1-〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕-1,3,3-トリメチル-6-(3-アミノフェノキシ)インダン45.5重量部を、メチルエチルケトンとN-メチル-2ピロリドンとの等量混合液500mlに溶解し、これに無水マレイン酸19.6重量部を5℃以下で2時間、窒素気流中で撹拌反応した後、無水酢酸30重量部と、酢酸リチウム0.05重量部、トリエチルアミン5mlを加え、60~80℃で、3時間反応させて、蒸留水中に滴下、沈澱させ、これを濾過、洗浄、乾燥を行なって得たものである。」(以下、「甲4発明」という。)
(2)甲5に記載された事項
甲5には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】一般式(1):
【化1】
[図:0001424578000044.jpg]
(式中、Pは、それぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基、アルキロキシ基またはアルキルチオ基、炭素数6~10のアリール基、アリーロキシ基またはアリールチオ基、炭素数5~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、水酸基あるいはメルカプト基を表し、jは0以上4以下の整数値を示す。jが2以上4以下の場合、Pは同一環内で同じであってもよいし異なっていてもよい。Qはそれぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基、アルキロキシ基またはアルキルチオ基、炭素数6~10のアリール基、アリーロキシ基またはアリールチオ基、ハロゲン原子、水酸基あるいはメルカプト基を表し、kは0以上3以下の整数値を示す。kが2以上3以下の場合、Qは同一環内で同じであってもよいし異なっていてもよい。Xは一般式(2):
【化2】
[図:0001424578000045.jpg]
(式中、Qおよびkは前記と同様のものを示し、nは平均繰り返し単位数であり、0.5以上20以下の数値を示す。)で表される構造を主たる構造として有する。)で表されるポリマレイミド化合物(A)及び該ポリマレイミド化合物と反応して三次元架橋を生ずる反応成分(B)とからなる熱硬化性樹脂組成物。
・・・
【請求項4】請求項1、2または3記載の熱硬化性樹脂組成物を有機溶剤に溶解せしめ基材に含浸、乾燥して得られるプリプレグと銅箔とを重ね合わせ加熱積層成形してなる銅張り積層板。」
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、熱硬化性樹脂組成物およびそれを用いる銅張り積層板に関するものであって、更に詳しくは、低誘電率でありかつ耐熱性に優れる熱硬化性樹脂組成物及びそれを用いる銅張り積層板に関する。
【0002】
【従来の技術】熱硬化性樹脂はプリント配線板用マトリックス樹脂として広く使用されているが、近年高速コンピュータ用高多層プリント配線板において半導体素子の高速演算化に伴うプリント基板上の回路の高速応答性が要求されつつある。プリント基板回路上の信号伝播速度は回路を保持している絶縁材料の誘電率に依存し、誘電率が低い材料ほど伝播速度が大きい。このような用途には、これまでポリイミド樹脂や耐熱性エポキシ樹脂が用いられてきた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところが従来のポリイミド樹脂や耐熱性エポキシ樹脂は耐熱性に優れるものの、樹脂単独の誘電率が3.4~3.9と高いため、E-ガラスクロスと組み合わせた積層板としての誘電率はさらに高く4.5~5.0となる。積層板としての誘電率を4.0以下にするためにポリブタジエン等で変性する方法も提案されたが耐熱性が低下する欠点があり実用化に至っていない。そこで耐熱性を損なわずに積層板としての誘電率が4.0以下であるような樹脂組成物が切望されていた。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために本発明者が鋭意検討を重ねた結果、特定のポリマレイミド化合物を必須成分とする樹脂組成物が上記目的にかなうことを見いだし本発明を完成するに至った。」
「【0031】本発明の熱硬化性樹脂組成物は前記一般式(1)のポリマレイミド化合物(A)及び反応成分(B)からなる。該反応成分(B)としてはポリマレイミド化合物の不飽和結合との反応により三次元架橋を生じる成分を用いる。そのような反応成分(B)として、好ましくはトリアリルイソシアヌレートまたは芳香族ジアミンを用いることができる。」
「【0036】本発明の樹脂組成物の熱硬化反応は無触媒下でも容易に行われるが、さらに速く反応させたい場合には有機過酸化物、アゾ化合物のような重合開始剤やホスフィン系化合物、三級アミンの様な塩基性触媒の添加が効果的である。例示するとベンゾイルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、アゾビスイソブチロニトリル、トリフェニルホスフィン、トリエチルアミン、イミダゾール類等があり、添加量は樹脂組成物全体の0.05~5重量%が好ましい。」
「【0039】
【実施例】以下本発明を実施例によってさらに詳細に説明するが本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
【0040】合成例1
(1)o-トルイジンオリゴマー(中間体ポリアミノオリゴマー)の合成:水分分離用にディーンスターク管を付した還流冷却器、温度計、撹拌器及び窒素導入装置を付した2000mlの反応器にm-ジ(α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン271g(1.4mol)、o-トルイジン37.5g(0.35mol)、キシレン308.5gおよび酸性白土65.3gを仕込み、撹拌しながら内温120℃になるまで昇温する。さらに留出水をディーンスターク管で取り除きながら内温が210℃になるまで昇温し、7時間保温する。
【0041】この時、留出水総量は57.0gであった。ついで、内温が140℃になるまで冷却し、o-トルイジン75g(0.7mol)を加えた後、内温を210℃に昇温してその温度で12時間保持した。反応終了後、内温が100℃以下になるまで冷却してからトルエン313.1gで希釈して、ろ過により酸性白土を除く。減圧下で溶媒及び未反応物などの低分子量物を留去することにより、目的物のo-トルイジンオリゴマー254.8gを得た。アミン当量は393g/eqであり、軟化点は64.8℃であった。前記一般式(2)の平均繰り返し単位数n値(数平均)を液体クロマトグラフィーで求めたところ2.6であった。
【0042】(2)o-トルイジンオリゴマーポリマレイミド化物の合成:o-トルイジンオリゴマーと無水マレイン酸との反応による本発明にて用いられるポリマレイミド化合物の製法を説明する。還流冷却器、温度計、撹拌器及び窒素導入装置を付した2000mlの反応器に、合成例2で得たo-トルイジンオリゴマー100g(0.254mol当量、アミノ基当量393g/eq)、無水マレイン酸29.9g(0.305mol)およびアセトン303.3gを仕込み、室温下で撹拌溶解させた。溶解後、40℃に昇温してその温度で9時間保持した。ついで無水酢酸33.8g(0.331mol)、酢酸ニッケル4水和物0.28g(1.1mol)およびトリエチルアミン1.92g(19.0mol)を加え、60℃に昇温してその温度で8時間保持した。反応終了後室温まで冷却し、トルエン303.0gまで希釈した。希炭酸水素ナトリウム水溶液、ついで水で洗浄し、共沸脱水した後、無機塩をろ過で取り除いた。減圧下で溶媒を除くことにより、目的とするポリマレイミド化合物101.9gを得た。軟化点は、110℃であった。生成物の赤外吸収スペクトル測定の結果、インダン構造由来の吸収(2960、1490、1460、1430、765cm-1)と、マレイミド構造由来の吸収(1715、1805cm-1)が認められた。
【0043】合成例2
(1)2,6-キシリジンオリゴマー(中間体ポリアミノオリゴマー)の合成:水分分離用にディーンスターク管を付した還流冷却器、温度計、撹拌器および窒素導入装置を付した5000mlの反応器にm-ジ(α-ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン972g(6.15mol)、2,6-キシリジン303g(2.50mol)、キシレン1275gおよび酸性白土334gを仕込み、撹拌しながら内温120℃になるまで昇温する。さらに留出水をディーンスターク管で取り除きながら内温が210℃になるまで昇温し、3時間保温する。
【0044】この時、留出水総量は214.4gであった。ついで、内温が140℃になるまで冷却し、2,6-キシリジン1052g(8.69mol)を仕込んだ後、内温が220℃になるまで昇温してその温度で3時間保持した。反応終了後、内温が100℃以下になるまで冷却してからトルエン1500gで希釈して、ろ過により酸性白土を除く。減圧下で溶媒及び未反応物等の低分子量物を留去することにより、目的物の2,6-キシリジンオリゴマー1310gを得た。アミン当量は292g/eqであり、軟化点は60.6℃であった。
【0045】本法により得られた生成物の赤外吸収スペクトルを測定した結果、前記一般式(2)のインダン骨格に特徴的な2960,1490,1461,1440,755cm-1の吸収がみられた。生成物のFD-MSスペクトル測定の結果、前記一般式(1)(但し、Xは、前記一般式(2)の構造)に対するm/e=400(n’=0),558(n’=1),716(n’=2),874(n’=3)がメインピークとして検出された。但し、ここでn’はXの繰返し単位数を表す。前記一般式(2)の平均繰返し単位数n値(数平均)を質量分析結果をもとにした検量線を用いて、液体クロマトグラフィーで求めたところ0.92であった。
【0046】(2)2,6-キシリジンオリゴマーポリマレイミド化物の合成:2,6-キシリジンオリゴマーと無水マレイン酸との反応による本発明にて用いられるポリマレイミド化合物の製法を説明する。還流冷却器、温度計、撹拌器および窒素導入装置を付した5000mlの反応器に、合成例1で得た2,6-キシリジンオリゴマー308g(1.05当量、アミノ基当量292g/eq)、無水マレイン酸113.8g(1.16mol)およびメチルイソブチルケトン984.2gを仕込み、室温下で撹拌溶解させた。溶解後、40℃に昇温してその温度で6時間保持した。ついで無水酢酸151.8g(1.05mol)、酢酸ニッケル4水和物1.10g(3.78mmol)およびトリエチルアミン7.94g(78.6mmol)を加え、60℃に昇温してその温度で8時間保持した。反応終了後室温まで冷却し、メチルイソブチルケトン703gで希釈した。希炭酸水素ナトリウム水溶液、ついで水で洗浄し、共沸脱水した後無機塩をろ過で取り除いた。減圧下で溶媒を除くことにより、目的とするポリマレイミド化合物305.8gを得た。軟化点は98.1℃であった。生成物の赤外吸収スペクトル測定の結果、インダン構造由来の吸収(2960,1485,1460,1440,760cm-1)と、マレイミド構造由来の吸収(1715,1805cm-1)が認められた。
【0047】実施例1~2
合成例1及び2で得られたポリマレイミド化合物とトリアリルイソシアヌレートをトルエンに溶解し均一な樹脂ワニスを得た。該ワニスをガラスクロス(鐘紡(株)製商品名:KS-1600,E-ガラス)に含浸させ、180℃熱風乾燥器中で10~20分熱処理してプリプレグとした。このプリプレグ6枚と銅箔(古河電工(株)製TTAI処理品、35μm厚)を重ね200℃、50kg/cm2 の圧力で2時間プレス成形し、更に250℃で5時間硬化させて厚さ1mmの銅張り積層板を得た。
【0048】この積層板のガラス転移温度、銅箔引き剥し強さ、半田耐熱性、煮沸吸水率、誘電率を測定した。ガラス転移温度の測定は東洋精機(株)製動的粘弾性測定装置レオログラフソリッドを用い、損失弾性率が最大となる温度を採用した。誘電率の値は横河ヒューレットパッカード(株)製Multi-FrequencyLCR meter 4275Aにより求めた室温、1MHzでの試料の静電容量から算出した。その他の積層板物性はJIS-C-6481に準じて測定した。表1に測定結果を示す。
【0049】実施例3
合成例2で得られたポリマレイミド化合物と4,4’-ジアミノジフェニルメタン(商品名スミキュアーM,住友化学工業(株)製)とをトルエンに溶解し、得られた樹脂ワニスを実施例1~2と同様の方法で銅張り積層板とした。この積層板の物性を実施例1~2と同様の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0050】比較例1
N,N’-(4,4’-ジアミノジフェニルメタン)ビスマレイミド(商品名ベストレックスBH-180, 住友化学工業(株)製)と4,4’-ジアミノジフェニルメタン(商品名スミキュアーM, 住友化学工業(株)製)とをN,N-ジメチルホルムアミドに溶解し、得られた樹脂ワニスを実施例1~2と後硬化条件を200℃で3時間行う以外は同様の方法で銅張り積層板とした。この積層板の物性を実施例1~2と同様の方法で測定した。結果を表1に示す。
【0051】
【表1】
[図:0001424578000046.jpg]
【0052】実施例4~8
合成例2で得られたポリマレイミド化合物と各種芳香族ジアミン化合物を表2で示す割合で配合し加熱溶融混合して均一な樹脂混合物を得た。該樹脂混合物をプレス成形機にて200℃で2時間成形後、250℃で5時間後硬化して樹脂硬化物を得た。この樹脂硬化物のガラス転移温度および誘電率を測定した。ガラス転移温度は島津製作所(株)製熱分析装置DT-30により求め、誘電率の値は横河ヒューレットパッカード(株)製Multi-Frequency LCRmeter 4275Aにより求めた室温、1MHzでの試料の静電容量から算出した。表2に測定結果を示す。
【0053】比較例2
比較例1と同一組成の樹脂配合物を溶剤を使わずに加熱溶融混合して実施例4~8と後硬化条件を200℃で3時間行う以外は同様の方法で樹脂硬化物とした。ガラス転移温度、および誘電率を実施例4~8と同様に測定した結果を表2に示す。
【0054】
【表2】
[図:0001424578000047.jpg]
【0055】
【発明の効果】かくして得られた本発明の熱硬化性樹脂組成物およびその銅張り積層板は耐熱性に優れかつ低誘電率であるため多層プリント基板用として有用である。」
(3)甲6に記載された事項
甲6には、以下の事項が記載されている。
「[請求項1] 下記式(1)で表されるマレイミド化合物と、
炭素-炭素不飽和二重結合を有する置換基により末端変性された変性ポリフェニレンエーテル化合物と、
アリル化合物を含む架橋剤とを含有する樹脂組成物。
[図:0001424578000048.jpg]
(式(1)中、sは、1~5を示し、RA、RB、RC、及びRDは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、又はフェニル基を示す。)
・・・
[請求項8] 請求項1~7のいずれか1項に記載の樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物と、繊維質基材とを備えるプリプレグ。
[請求項9] 請求項1~7のいずれか1項に記載の樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物を含む樹脂層と、支持フィルムとを備える樹脂付きフィルム。
[請求項10] 請求項1~7のいずれか1項に記載の樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物を含む樹脂層と、金属箔とを備える樹脂付き金属箔。
[請求項11] 請求項1~7のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物又は請求項8に記載のプリプレグの硬化物を含む絶縁層と、金属箔とを備える金属張積層板。
[請求項12] 請求項1~7のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物又は請求項8に記載のプリプレグの硬化物を含む絶縁層と、配線とを備える配線板。」
「[0002] 各種電子機器は、情報処理量の増大に伴い、搭載される半導体デバイスの高集積化、配線の高密度化、及び多層化等の実装技術が進展している。また、各種電子機器に用いられる配線板としては、例えば、車載用途におけるミリ波レーダ基板等の、高周波対応の配線板であることが求められる。各種電子機器において用いられる配線板の基材を構成するための基材材料には、信号の伝送速度を高め、信号伝送時の損失を低減させるために、誘電率及び誘電正接が低いことが求められる。」
(4)甲7に記載された事項
甲7には、以下の事項が記載されている。
「【請求項1】
(A)成分:ジビニル芳香族化合物(a)及びエチルビニル芳香族化合物(b)からなる単量体由来の構造単位を有する多官能ビニル芳香族共重合体中に、ジビニル芳香族化合物(a)に由来する繰り返し単位を20モル%以上含有し、かつ、下記式(a1)及び(a2)
【化1】
[図:0001424578000049.jpg]
(式中、R5、R6は炭素数6~30の芳香族炭化水素基を示す。)で表されるジビニル芳香族化合物(a)由来のビニル基を含有する構造単位のモル分率が下記式(2)(a1)/[(a1)+(a2)]≧0.5 (2)を満足し、かつ、数平均分子量が、300~100000である溶剤可溶性多官能ビニル芳香族共重合体と、(B)成分:エポキシ基、シアネート基、ビニル基、エチニル基、イソシアネート基及び水酸基からなる群から選ばれる一つ以上の官能基を含み、かつMnが150~100000である熱硬化性樹脂を、必須成分とする硬化性樹脂組成物であって、(A)成分と(B)成分の合計に対する(A)成分の配合量が1~99wt%であり、(B)成分の配合量が1~99wt%であることを特徴とする硬化性樹脂組成物。
・・・
【請求項11】
請求項1~4、6、7及び9のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物を硬化したことを特徴とする硬化物。
・・・
【請求項15】
請求項1~4、6、7及び9のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物の膜が金属箔の片面に形成されたことを特徴とする樹脂付き金属箔。」
「【0003】
電子機器の小型・高機能化に伴い、印刷配線板では薄型・軽量でかつ高密度配線が可能な基板材料が求められるようになった。更に近年では、大量のデータを高速で処理するためコンピュータや情報機器端末などでは信号の高周波化が進んでいるが、周波数が高くなる程電気信号の伝送損失が大きくなるという問題があり、高周波化に対応したプリント配線基板の開発が強く求められている。高周波回路での伝送損失は、配線周りの絶縁層(誘電体)の誘電特性で決まる誘電体損の影響が大きく、印刷配線板用基板(特に絶縁樹脂)の低誘電率及び低誘電正接(tanδ)化が必要となる。例えば移動体通信関連の機器では、信号の高周波化に伴い準マイクロ波帯(1~3GHz)での伝送損失を少なくするため誘電正接の低い基板が強く望まれるようになっている。
【0004】
更にコンピュータなどの電子情報機器では、動作周波数が1GHzを越える高速マイクロプロセッサが搭載されるようになり、印刷配線板での高速パルス信号の遅延が問題になってきた。信号の遅延時間が印刷配線板では配線まわりの絶縁物の比誘電率εrの平方根に比例して長くなるため、高速コンピュータなどでは誘電率の低いプリント配線基板が求められている。」
「【0010】
本発明は、1)特定の分子量の溶剤可溶性多官能ビニル芳香族共重合体とエポキシ基、シアネート基、ビニル基、エチニル基、イソシアネート基及び水酸基からなる群から選ばれる一つ以上の官能基を含む特定の分子量の熱硬化性樹脂との間で相乗的に、狭ピッチ構造体への樹脂の充填性を高め、あるいは、2)特定の分子量の溶剤可溶性多官能ビニル芳香族共重合体とビニル基及びエチニル基からなる群から選ばれる一つ以上の官能基を含む特定の分子量の熱硬化性樹脂との間で、相乗的に保存安定性を改善し、耐熱性、耐熱分解性及び加工性が改善された溶剤可溶性多官能ビニル芳香族共重合体を含む硬化性樹脂組成物、難燃剤と硬化性樹脂組成物からなる難燃性硬化性樹脂組成物、及びこれらの樹脂組成物からなるフィルム、硬化体、硬化性複合材料、硬化性複合材料の硬化体、積層体及び樹脂付き銅箔を提供する。他の目的は、硬化後において優れた耐薬品性、誘電特性、耐熱性を示し、電子産業、宇宙・航空機産業等の分野において誘電材料、絶縁材料、耐熱材料に用いることができる硬化性樹脂組成物を提供することにある。」
(5)甲8に記載された事項
甲8には、以下の事項が記載されている。
「[1] (A)成分:数平均分子量Mnが700~4,000の両末端にビニル基を有する式(1)
[化1]
[図:0001424578000050.jpg]
(ここで、Zは炭素数1以上の有機基であり、酸素原子を含むこともある。Tはビニル基である。a及びbは少なくともいずれか一方が0でない0~20の整数を示す。i及びjはそれぞれ独立に0又は1の整数を示す。-(O-X-O)-は式(2)で表され、-(Y-O)-は式(3)で表される1種類以上の構造を示す。)
[化2]
[図:0001424578000051.jpg]
(ここで、Aは、単結合、炭素数20以下の直鎖状、分岐状又は環状の炭化水素基である。R1、R2、R7、R8、R9、R10は、独立にハロゲン原子又は炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基を示す。R3、R4、R5、R6、R11、R12は、独立に、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数6以下のアルキル基又はフェニル基を示す。)
で表されるポリフェニレンエーテルオリゴマーと、
(B)成分:ジビニル芳香族化合物(a)及びエチルビニル芳香族化合物(b)からなる単量体由来の構造単位を有する多官能ビニル芳香族共重合体であって、ジビニル芳香族化合物(a)に由来する繰り返し単位を20モル%以上含有し、かつ、下記式(a1)及び(a2)
[化3]
[図:0001424578000052.jpg]
(式中、R13は炭素数6~30の芳香族炭化水素基を示し、R14は6~30の芳香族炭化水素基を示す。)で表されるジビニル芳香族化合物(a)由来のビニル基を含有する構造単位のモル分率が、(a1)/[(a1)+(a2)]≧0.5を満足し、かつゲル浸透クロナトグラフィー(GPC)で測定されるポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が600~30,000であり、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が20.0以下である溶剤可溶性の多官能ビニル芳香族共重合体とからなる硬化性樹脂組成物であり、(A)成分及び(B)成分の合計に対する(A)成分の配合量が20~98wt%、(B)成分の配合量が2~80wt%であることを特徴とする硬化性樹脂組成物。
・・・
[14] 請求項1~13のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物をフィルム状に成形してなるフィルム。」(請求の範囲)
「[0012] 本発明は、硬化後において優れた耐薬品性、誘電特性、耐熱性を示し、電子産業、宇宙航空機産業等の分野において誘電材料、絶縁材料、耐熱材料に用いることができる樹脂組成物、硬化物又はこれを含む材料を提供することを目的とする。他の目的は、これらに加えて難燃性に優れる樹脂組成物、硬化物又はこれを含む材料を 提供することにある。」
「[0067] 本発明の硬化性樹脂組成物は、(D)成分として、熱硬化性樹脂を配合することができる。(D)成分を配合する場合の(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の合計に対する(D)成分の配合量は2~40wt%、好ましくは5~85wt%である。(D)成分配合量が2wt%未満であると充填剤を添加したことによる接着性や耐薬品性の向上の 程度不十分であり、40wt%を越える場合は、組成物の機械的物性が著しく低下する。
[0068] 本発明の硬化性樹脂組成物には、その効果を損なわない範囲で、(B)成分以外のその他の架橋成分を添加することができる。架橋成分としては、多官能性エポキシ化合物、ジァリルフタレート、多官能性アタリロイル化合物、多官能性メタクリロイル化合物、多官能性マレイミド、多官能性シアン酸エステル、多官能性イソシアネート、不飽和ポリエステルからなる化合物及びこれらのそのプレポリマーが挙げられる。これらは1種又は2種以上が用いられる。
・・・
[0075] 多官能性マレイミドとしては、次の式で表されるものがある。
[化10]
[図:0001424578000053.jpg]
(式中、nは2~10の整数であり、R23、R24は水素、ハロゲン又は低級アルキル基を表し、R25は2~10価の芳香族又は脂肪族有機基を示す)」
「[0151] 本発明のフィルムとは、本発明の硬化性樹脂組成物をフィルム状に成形したものである。その厚みは特に限定されないが、0.5~200μm、より好ましくは5~105μmの範囲である。
本発明のフィルムを製造する方法としては特に限定されることはなく、例えば硬化性樹脂組成物と必要に応じて他の成分を芳香族系、ケトン系等の溶媒若しくはその混合溶媒中に均一に溶解又は分散させ、PETフィルムなどの樹脂フィルムに塗布した後乾燥する方法などが挙げられる。塗布は必要に応じて複数回繰り返すことも可能であり、またこの際組成や濃度の異なる複数の溶液を用いて塗布を繰り返し、最終的に希望とする樹脂組成及び樹脂量に調整することも可能である。」
(6)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲4発明とを対比する。
(ア)甲4発明の「エーテルイミド系化合物(b)」は、「1-〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕-1,3,3-トリメチル-6-(3-アミノフェノキシ)インダン」のアミノ基を無水マレイン酸で変性してマレイミド化合物としたものである。そうすると、甲4発明の「エーテルイミド系化合物(b)」は、本件発明1の「(A)マレイミド化合物」であって、「(A-1)トリメチルインダン骨格を含むマレイミド化合物」に相当する。
(イ)甲4発明の「樹脂組成物中の不揮発成分」は、「エーテルイミド系化合物(b)100重量部」、「不飽和ポリエステル50重量部」、「ジクミルパーオキサイド3重量部」、「炭酸カルシウム粉200重量部」、「シリカ粉250重量部」、「シランカップリング剤2重量部」、「ステアリン酸2重量部」、「カーボンブラック1重量部」であり、その総計は608重量部(=100+50+3+200+250+2+2+1)である。
ここで、甲4発明の「樹脂組成物中の不揮発成分」608重量部に対して、「エーテルイミド系化合物(b)」を100重量部含有するものであるから、「樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して」、「エーテルイミド系化合物(b)」を約16.4質量%(≒100×100/608)含有するものである。
同様に、甲4発明の「樹脂組成物中の樹脂成分」は、「エーテルイミド系化合物(b)100重量部」、「不飽和ポリエステル50重量部」であるから、「樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して」、「エーテルイミド系化合物(b)」を約66.7質量%(≒100×100/(100+50))含有するものである。
してみると、「エーテルイミド系化合物(b)の量」が、「樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して」、約16.4質量%含むこと、かつ、「樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して」、約66.7質量%含むことは、本件発明1の「(A-1)成分の量が、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、10質量%以上50質量%以下であり、かつ、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、70質量%以下であ」ることに相当する。
(ウ)甲4発明の「不飽和ポリエステル」は、通常無水マレイン酸とエチレングリコールとを反応させて得られるものであるから、芳香環を有さずに、ラジカル重合性不飽和基を含む樹脂である。
そうすると、甲4発明の「不飽和ポリエステル」と本件発明1の「(B)芳香環及びラジカル重合性不飽和基を含む樹脂」とは、「(B’)ラジカル重合性不飽和基を含む樹脂」である限りにおいて一致する。
そして、甲4発明の「樹脂組成物中の不揮発成分」608重量部に対して、「不飽和ポリエステル」を50重量部含有するものであるから、「樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して」、「不飽和ポリエステル」を約8.2質量%(=50×100/608)含有するものである。
同様に、甲4発明の「樹脂組成物中の樹脂成分」は、「エーテルイミド系化合物(b)100重量部」、「不飽和ポリエステル50重量部」であるから、「樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して」、「不飽和ポリエステル」を約33.3質量%(≒50×100/(100+50))含有するものである。
してみると、「不飽和ポリエステルの量」が、「樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して」、約8.2質量%含むこと、かつ、「樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して」、約33.3質量%含むことと、本件発明1の「(A-1)成分の量が、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、5質量%以上50質量%以下であり、かつ、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、70質量%以下であ」ることとは、「(B’)ラジカル重合性不飽和基を含む樹脂の量」が、「樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、5質量%以上50質量%以下であり、かつ、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、70質量%以下であ」る限りにおいて一致する。
(エ)甲4発明の「炭酸カルシウム粉」、「シリカ粉」、「カーボンブラック」は、本件発明1の「(D)無機充填材」に相当する。
そして、甲4発明の「樹脂組成物中の不揮発成分」608重量部に対して、「炭酸カルシウム粉200重量部」、「シリカ粉250重量部」、「カーボンブラック1重量部」を含有するものであるから、「樹脂組成物中の不揮発成分」100質量%に対して、「炭酸カルシウム粉」、「シリカ粉」、「カーボンブラック」を約74.2質量%(=(200+250+1)×100/608)含有するものである。
してみると、「炭酸カルシウム粉」、「シリカ粉」、「カーボンブラック」の量が、「樹脂組成物中の不揮発成分」100質量%に対して、約74.2質量%含むことは、本件発明1の「(D)無機充填材の量が、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、40質量%以上80質量%以下であ」ることに相当する。
(オ)甲4発明の「樹脂組成物」は、「下記式(1)で表されるシアン酸エステル化合物A1及び下記式(2)で表されるシアン酸エステル化合物A2を含む樹脂組成物、並びに窒化ホウ素を含む樹脂組成物」に該当しない。
以上から、本件発明1と甲4発明とは、
「(A)マレイミド化合物、(B’)ラジカル重合性不飽和基を含む樹脂、及び(D)無機充填材を含み、
(A)マレイミド化合物が、(A-1)トリメチルインダン骨格を含むマレイミド化合物を含み、
(A-1)成分の量が、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、10質量%以上50質量%以下であり、かつ、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、70質量%以下であり、
(B’)ラジカル重合性不飽和基を含む樹脂の量が、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、5質量%以上50質量%以下であり、かつ、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、70質量%以下であり、
(D)無機充填材の量が、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、40質量%以上80質量%以下である、樹脂組成物(下記式(1)で表されるシアン酸エステル化合物A1及び下記式(2)で表されるシアン酸エステル化合物A2を含む樹脂組成物、並びに窒化ホウ素を含む樹脂組成物を除く)。」
で一致し、以下の点で相違する。
<相違点5>
(A-1)成分に関し、本件発明1は、「式(A4)で表される構造を含」むマレイミド化合物であるのに対し、甲4発明は、エーテルイミド系化合物である点
<相違点6>
(B’)ラジカル重合性不飽和基を含む樹脂に関し、本件発明1は、「(B)芳香環及びラジカル重合性不飽和基を含む樹脂」であるのに対し、甲4発明は、「不飽和ポリエステル」である点
イ 判断
相違点5について検討する。
甲4発明では、エーテルイミド系化合物をマレイミド化合物として用いるものであるところ、該エーテルイミド系化合物は、本件発明1の「式(A4)で表される構造を含」むものではない。
してみると、相違点5は実質的な相違点である。
したがって、本件発明1は、甲4発明でない。
次に、進歩性について、特に甲4発明に甲5に記載された事項を適用できるか否かについて、検討する。
甲4には、「産業上の利用分野」において、ポリマの中間体として有用なエーテルイミド系化合物、その製造方法、及び該エーテルイミド系化合物を含む組成物に関すること、「発明が解決しようとする問題点」において、従来のイミド系化合物が耐熱性が良好であるものの、可撓性を付与することが難しいこと、アセトン、トルエンなどの溶媒に対する溶解性が悪いという欠点を有していることから、耐熱可撓性にすぐれたポリマの原料として有用なエーテルイミド系化合物を提供することを課題とすること、「発明の効果」において、ケトン類などの一般的な溶剤に溶解しうる付加反応型エーテルイミド系化合物とその製造方法及びその組成物が得られるので、耐熱性及び可撓性に優れた硬化物重合体を容易に得ることができることが記載されている。
他方、甲5には、一般式(1)で表されるポリイミド化合物(A)(当審注:本件発明1の「式(A4)で表される構造」を含むマレイミド化合物に該当する。)及び該ポリマレイミド化合物と反応して三次元架橋を生ずる反応成分(B)とからなる熱硬化性樹脂組成物であること(請求項1)、低誘電率でありかつ耐熱性に優れる熱硬化性樹脂組成物及びそれを用いる銅張り積層板に関すること(【0001】)、プリント配線板用マトリックス樹脂として用いる熱硬化性樹脂であって、耐熱性を損なわずに積層板としての誘電率が低い樹脂組成物が切望されているところ、特定のポリマレイミド化合物を必須成分とする樹脂組成物とすることで低誘電率が達成しうること(【0002】~【0004】)、反応成分(B)がトリアリルイソシアネート又は芳香族ジアミンを用いること(【0031】)が記載されている。
そして、甲5の実施例では、一般式(1)で表される化合物(A)とトリアリルイソシアネート又は4,4’-ジアミノジフェニルメタンからなる反応成分(B)とを含む熱硬化性樹脂組成物を用いて、積層板の銅箔引き剥し強さに優れ、低誘電率(表1では1MHzで3.8~4.0)であることを示している。
まず、甲4には、誘電率や誘電正接などの誘電特性や導体層との密着性について言及されていないし、甲4発明である樹脂組成物を、どのような用途に適用するかについては記載も示唆もされていないから、甲5において意図している用途、すなわち低誘電率である熱硬化性樹脂組成物及びそれを用いる銅張り積層板とは、解決しようとする課題や用途において共通しない。
そして、甲4発明におけるエーテルイミド系化合物(A)は、甲4に記載される課題(可撓性及び耐熱性)を解決するために必須の構成であるところ、甲5に記載された一般式(1)で表されるポリマレイミド化合物(A)が、甲4発明のエーテルイミド系化合物に比べて耐熱性等に優れるという知見がないことを踏まえると、該エーテルイミド系化合物を他の構造の化合物に置換する動機付けがないといえる。
そうすると、甲4発明及び甲5に記載された事項に基づいて、相違点5に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことでない。
また、本件発明1は、特定構造のマレイミド化合物と芳香環及びラジカル重合性不飽和基を含む樹脂を含み、さらに無機充填材及び熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物とすることで、誘電正接が低く且つ導体層との密着性に優れる絶縁層を得ることができるという、優れた効果を奏するものである。
ウ 小括
したがって、相違点6を検討するまでもなく、本件発明1は、甲4発明でないし、また、甲4発明、すなわち甲4に記載された発明及び甲5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明し得たものでない。
(7)本件発明3~12について
本件発明3~12は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、上記(6)と同様の理由により、本件発明3~5、7~9は甲4発明ではないし、本件発明3~12は甲4発明、すなわち甲4に記載された発明及び甲5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明し得たものでない。
(8)小括
以上から、本件特許の請求項1、3~5、7~9は甲4発明ではないし、本件発明1、3~12は甲4発明、すなわち甲4に記載された発明及び甲5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に発明し得たものでない。
したがって、「取消理由2」及び「申立理由3」並びに「申立理由4」によっては、取り消すことができない。
4 取消理由通知に記載しなかった申立理由について
(1)申立理由1(拡大先願) その1(甲3に基づくもの)
当該「申立理由1(拡大先願) その1(甲3に基づくもの)」は、甲3に基づく申立理由である。
(2)甲3に記載された事項及び甲3に記載された発明
ア 甲3に係る出願の願書に最初に添付した明細書、請求の範囲又は図面(以下、「甲3先願明細書等」という。)に記載された事項及び甲3先願明細書等に記載された発明
(ア)甲3先願明細書等に記載された事項
甲3先願明細書等には、以下の事項が記載されている。
「[請求項1] インダン骨格を有するマレイミド(A)、不飽和結合含有置換基を有する化合物(B)、及び、エポキシ樹脂(C)を含有することを特徴とする硬化性樹脂組成物。
[請求項2] 前記マレイミド(A)が、下記一般式(1)で示されることを特徴とする請求項1に記載の硬化性樹脂組成物。
[化1]
[図:0001424578000054.jpg]
(式(1)中、Raは、それぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基、アルキルオキシ基もしくはアルキルチオ基、炭素数6~10のアリール基、アリールオキシ基もしくはアリールチオ基、炭素数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、水酸基またはメルカプト基を表し、qは0~4の整数値を示す。qが2~4の場合、Raは同一環内で同じであってもよいし異なっていてもよい。Rbはそれぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基、アルキルオキシ基もしくはアルキルチオ基、炭素数6~10のアリール基、アリールオキシ基もしくはアリールチオ基、炭素数3~10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、水酸基またはメルカプト基を表し、rは0~3の整数値を示す。rが2~3の場合、Rbは同一環内で同じであってもよいし異なっていてもよい。nは平均繰り返し単位数であり、0.5~20の数値を示す。)(当審注:以下、「化1’化合物」という。)
[請求項3] 請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物を硬化反応させてなることを特徴とする硬化物。
[請求項4] 補強基材、及び、前記補強基材に含浸した請求項1又は2に記載の硬化性樹脂組成物の半硬化物を有することを特徴とするプリプレグ。
[請求項5] 請求項4に記載のプリプレグ、及び、銅箔を積層し、加熱圧着成型して得られることを特徴とする回路基板。
[請求項6] 請求項1~3のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物を含有することを特徴とするビルドアップフィルム。
[請求項7] 請求項1~3のいずれかに記載の硬化性樹脂組成物を含有することを特徴とする半導体封止材。
[請求項8] 請求項7に記載の半導体封止材を加熱硬化した硬化物を含むことを特徴とする半導体装置。」
「[0009] 従って、本発明が解決しようとする課題は、その硬化物において優れた耐熱性、及び、誘電特性を兼備した硬化性樹脂組成物及びその硬化物、これらの性能を兼備したプリプレグ、回路基板、ビルドアップフィルム、半導体封止材、並びに、半導体装置を提供することにある。」
「[0053] <不飽和結合含有置換基を有する化合物(B)>
本発明の硬化性樹脂組成物は、不飽和結合含有置換基を有する化合物(B)(以下、「(B)成分」という場合がある。)を含有することを特徴とする。前記不飽和結合含有置換基を有する化合物(B)は、不飽和結合含有置換基(例えば、アリル基)がマレイミド基と反応することにより高い架橋密度を発現するとともに、極性が低くなりうる硬化物を得ることができるため、前記不飽和結合含有置換基を有する化合物(B)を含有する硬化性樹脂組成物を用いることで、電子材料用の成形材料として利用でき、有用である。また、前記インダン骨格を有するマレイミド(A)との反応により、硬化剤として作用し、三次元架橋を生じることができ、耐熱性にも優れた硬化物を得ることができ、好ましい態様となる。更に、下記に詳述するエポキシ樹脂(C)との関係においても、硬化剤として作用し、銅への密着性が向上し、例えば、銅箔を使用する回路基板など製造において、有用となる。
[0054] 前記不飽和結合含有置換基を有する化合物(B)としては、分子中に2個以上の不飽和結合含有置換基を有する化合物であれば特に限定されないが、前記不飽和結合含有置換基としては、アリル基、イソプロペニル基、1-プロぺニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、スチリル基、スチリルメチル基などが挙げられる。これらの中でも、アリル基、1-プロぺニル基、スチリル基、スチリルメチル基などは、マレイミド基と良好な反応性を示し、高い架橋密度で耐熱性に優れる硬化物を与える点で好ましい。」
「[0063] 前記不飽和結合含有置換基を有する化合物(B)以外の硬化剤としては、例えば、アミン系化合物、アミド系化合物、酸無水物系化合物、フェノ-ル系化合物、ポリフェニレンエーテル系化合物、シアネートエステル化合物、ジエン系ポリマーなどが挙げられる。これらの硬化剤は、単独でも2種類以上の併用でも構わない。
・・・
[0068] 前記ポリフェニレンエーテル系化合物としては、例えば、下記一般式(10)または(11)で表される構造を有する。
[化11]
[図:0001424578000055.jpg]
[0069] 上記一般式(10)及び(11)中のRdは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のアルケニル基、炭素数3~5のシクロアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基、炭素数1~5のチオエーテル基、炭素数2~5のアルキルカルボニル基、炭素数2~5のアルキルオキシカルボニル基、炭素数2~5のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数1~5のアルキルスルホニル基等が挙げられる。上記一般式(10)及び(11)の構造の末端構造としては、水酸基もしくは反応性二重結合含有基を有するもの等が挙げられる。また、sは1~30の整数値であり、tおよびuも1~30の整数値である。」
「[0088] 前記(A)成分と、前記(B)成分及び前記(C)成分とのの配合比(質量部)としては、(A)成分:((B)成分+(C)成分)が、90:10~10:90であることが好ましく、より好ましくは、80:20~20:80であり、更に好ましくは、65:35~35:65であり、特に好ましくは、55:45~45:55である。前記範囲に配合比を調製することにより、耐熱性、低誘電率、低誘電正接にすることができ、好ましい。
[0089] 本発明の硬化性樹脂組成物において、不飽和結合含有置換基を有する化合物(B)と、エポキシ樹脂(C)との配合比(質量部)としては、特に制限されるものではないが、得られる硬化物特性が良好である点から、(B)成分:(C)成分が、90:10~10:90であることが好ましく、より好ましくは、80:20~20:80であり、更に好ましくは、65:35~35:65である。前記範囲に配合比を調製することにより、耐熱性、低誘電率、低誘電正接にすることができ、好ましい。
[0090] 本発明の硬化性樹脂組成物には、目的を損なわない範囲で、アルケニル基含有化合物、例えば、前記マレイミド(A)以外のビスマレイミド類、トリアリルシアヌレート、アルケニルフェノール系化合物、ビニル基含有ポリオレフィン化合物等を添加することもできる。また、その他の熱硬化性樹脂、例えば、熱硬化性ポリイミド樹脂、ポリフェニレンエーテル、フェノール樹脂、活性エステル樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、シアネート樹脂等も目的に応じて適宜配合することも可能である。
・・・
[0092] 本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、無機質充填材を配合することができる。前記無機質充填材として、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミ等が挙げられる。前記無機充填材の配合量を特に大きくする場合は溶融シリカを用いることが好ましい。前記溶融シリカは破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高め且つ成形材料の溶融粘度の上昇を抑制するためには、球状のものを主に用いる方が好ましい。更に球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布を適当に調整することが好ましい。その充填率は難燃性を考慮して、高い方が好ましく、硬化性樹脂組成物の全体量に対して20質量%以上が特に好ましい。また、前記硬化性樹脂組成物を以下に詳述する導電ペーストなどの用途に使用する場合は、銀粉や銅粉等の導電性充填剤を用いることができる。
・・・
[0094] <硬化物>
本発明の硬化物は、前記硬化性樹脂組成物を硬化反応させてなることが好ましい。前記硬化性樹脂組成物は、上述した各成分を均一に混合することにより得られ、従来知られている方法と同様の方法で容易に硬化物とすることができる。前記硬化物としては、積層物、注型物、接着層、塗膜、フィルム等の成形硬化物が挙げられる。
[0095] 前記硬化(熱硬化)反応としては、無触媒下でも容易に行われるが、さらに速く反応させたい場合には、有機過酸化物、アゾ化合物のような重合開始剤やホスフィン系化合物、第3級アミンの様な塩基性触媒の添加が効果的である。例えば、ベンゾイルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、アゾビスイソブチロニトリル、トリフェニルホスフィン、トリエチルアミン、イミダゾール類等があり、配合量としては、硬化性樹脂組成物全体の0.05~5質量%が好ましい。」
「実施例
[0116] 次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、以下において「部」及び「%」は特に断わりのない限り質量基準である。なお、軟化点、アミン当量、GPC、及び、FD-MSスペクトルは、以下の条件にて測定し、評価を行った。
・・・
[0121] 〔合成例1〕マレイミド化合物A-1の合成
・・・
[化13]
[図:0001424578000056.jpg]
[0123] 〔合成例2〕マレイミド化合物A-2の合成
・・・
[化15]
[図:0001424578000057.jpg]
[0125] 〔合成例3〕 マレイミド化合物A-3の合成
・・・
[化17]
[図:0001424578000058.jpg]
[0127] 〔合成例4〕マレイミド化合物A-4の合成
・・・
[化19]
[図:0001424578000059.jpg]
[0129] 〔合成例5〕マレイミド化合物A-5の合成
・・・
[化21]
[図:0001424578000060.jpg]
[0131] 〔合成例6〕マレイミド化合物A-9の合成
・・・
[化23]
[図:0001424578000061.jpg]
[0133] 〔合成例7〕マレイミド化合物A-10の合成
・・・
[化24]
[図:0001424578000062.jpg]
[0134] 〔合成例8〕マレイミド化合物A-11の合成
・・・
[化25]
[図:0001424578000063.jpg]
[0135] 〔合成例9〕マレイミド化合物A-12の合成
・・・
[化26]
[図:0001424578000064.jpg]
[0136] 〔実施例1~9、及び、比較例1〕
<マレイミドの溶剤溶解性>
合成例1~9で得られたマレイミド(A-1)~(A-5)、(A-9)~(A-12)、及び、比較用の市販のマレイミド(A-6)(4,4'-ジフェニルメタンビスマレイミド、「BMI-1000」大和化成工業株式会社製)のトルエン、メチルエチルケトン(MEK)に対する溶解性の評価を行い、評価結果を表1に示した。
溶剤溶解性の評価方法としては、上記合成例及び比較例で得られた各マレイミドを用いて、不揮発分が10、20、30、40、50、60、及び、70質量%になるようにトルエン溶液、及び、メチルエチルケトン(MEK)溶液を調製した。
具体的には、上記合成例及び比較例で得られた各マレイミドを入れたバイアルを室温(25℃)で60日間放置し、各不揮発分組成における各溶液中において、均一に溶解した場合(不溶物なし)を〇、溶解しなかった場合(不溶物あり)を×と評価(目視)した。なお、不揮発分が20質量%以上の場合に、溶剤に溶解することができれば、実用上、好ましい。
[0137] 〔実施例10~14、及び、比較例2~4〕
<硬化性樹脂組成物の調製>
合成例1、合成例6~9で得られたマレイミド(A-1)、(A-9)~(A-12)、比較用マレイミド(A-6)(4,4'-ジフェニルメタンビスマレイミド、「BMI-1000」、大和化成工業株式会社製)、比較用マレイミド(A-7)(ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド、「BMI-4000」大和化成工業株式会社製)、比較用マレイミド(A-8)(3,3'-ジメチル-5,5'-ジエチル-4,4'-ジフェニルメタンビスマレイミド、「BMI-5100」大和化成工業株式会社製)、不飽和結合含有置換基を有する化合物(B-1)(「DABPA」、ジアリルビスフェノールA、大和化成工業株式会社製、アリル基当量:154g/eq)、エポキシ樹脂(C-1)(BPA型エポキシ樹脂「850-S」、当量:188g/eq、DIC株式会社製)、及び、硬化促進剤(D-1)(トリフェニルホスフィン、東京化成工業株式会社製)、及び、メチルエチルケトン(MEK)を表2に示す割合で配合し、硬化性樹脂組成物を調製した。
[0138] <ワニス溶解性、及び、フィルム外観の均一性>
実施例10~14、及び、比較例2~4の各硬化性樹脂組成物においては、均一に溶解しているか目視にて確認した(ワニス溶解性の確認)。均一に溶解しチエル場合を〇、均一に溶解していない、又は、全く溶解していない場合を×(例えば、不溶物が存在する場合など)と評価した。
また、各硬化性樹脂組成物5gを離型PETフィルム状に塗布(乾燥後の厚み:295μm)し、80℃で1時間乾燥(加熱)後、更に、120℃で1時間乾燥(加熱)することにより、フィルム成形物を作製し、得られたフィルム成形物の外観を目視にて、確認した。フィルム外観が均一の場合を〇、フィルム外観が不均一な場合を×(例えば、濁りや不溶物などが確認できる場合)と評価した。評価結果を表3に示した。
[0139] <硬化物(成型物)の調製>
上記硬化性樹脂組成物を以下の条件に付すことで硬化物(成型物)を作製した。
硬化条件:200℃で2時間加熱後、更に、250℃で2時間加熱硬化させた。
成型後の硬化物(成型物)の板厚:2.4mm
得られた硬化物について、下記の方法で種々の物性・特性の評価を行った。評価結果を表3に示した。
・・・
[0141] <誘電特性>
JIS-C-6481に準拠し、アジレント・テクノロジー株式会社製ネットワークアナライザ「E8362C」を用い空洞共振法にて、絶乾後23℃、湿度50%の室内に24時間保管した後の試験片の1GHzでの誘電率及び誘電正接を測定した。なお、誘電率及び誘電正接としては、電子材料としての伝送損失低減の観点から、誘電率は、2.90以下が好ましく、2.80以下がより好ましい。また、誘電正接は、0.019以下が好ましく、0.015以下がより好ましい。
[0142][表1]
[図:0001424578000065.jpg]
[0143][表2]
[図:0001424578000066.jpg]
[0144][表3]
[図:0001424578000067.jpg]
[0145] 上記表1の評価結果より、実施例1~9においては、インダン骨格を有するマレイミドを使用したため、トルエン溶液を調製した際には、不揮発分が20質量%であっても溶解することができ、MEK溶液を調製した際には、不揮発分が50質量%であっても溶解することができ、溶剤溶解性に優れることが確認できた。一方、比較例1で使用した市販のマレイミドは、インダン骨格を構造中に有さず、溶剤溶解性に劣ることが確認された。
[0146] 上記表2の評価結果より、実施例10~14では、インダン骨格を有するマレイミドを含有する硬化性樹脂組成物溶液(ワニス)は均一に溶解していることが確認され、更に前記硬化性樹脂組成物溶液(ワニス)を塗布・乾燥して得られるフィルムは、外観が均一であり、特に得られるフィルムの外観均一性が要求されるビルドアップフィルムをはじめ、回路基板(銅張積層板等)等の用途にも使用できることが確認できた。一方、比較例2~4では、市販品で、インダン骨格を有さないマレイミドを使用したため、フィルムの外観は不均一であり、ビルドアップフィルムや回路基板(銅張積層板等)等の用途に使用することが難しいことが確認された。
[0147] 上記表3の評価結果より、実施例10~14においては、インダン骨格を有するマレイミドに加えて、エポキシ樹脂を加え、硬化剤として不飽和結合含有置換基を有する化合物(B)を使用したことで、ガラス転移温度が高く、耐熱性に優れることが確認できた。また、誘電率及び誘電正接も低く抑えられ、誘電特性に優れることも確認できた。一方、比較例2~4においては、実施例6に対して、ガラス転移温度が低く、誘電率及び誘電正接は高く、耐熱性及び誘電特性について劣ることが確認された。特に比較例4においては、ガラス転移温度が、大幅に下がり、耐熱性に問題があることが確認された。
[0148] 本発明の硬化性樹脂組成物は、その硬化物が耐熱性、及び、誘電特性に優れることから、耐熱部材や電子部材に好適に使用可能であり、特に、半導体封止材、回路基板、ビルドアップフィルム、ビルドアップ基板等や、接着剤やレジスト材料に好適に使用可能である。また、繊維強化樹脂のマトリクス樹脂にも好適に使用可能であり、高耐熱性のプリプレグとして適している。」
(イ)甲3先願明細書等に記載された発明
甲3先願明細書等の請求項1を引用する請求項2に着目すると、甲3先願明細書等には次の発明が記載されていると認める。
「インダン骨格を有するマレイミド(A)、不飽和結合含有置換基を有する化合物(B)、及び、エポキシ樹脂(C)を含有し、
前記マレイミド(A)が、化1’化合物である硬化性樹脂組成物。」(以下、「甲3発明」という。)
イ 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲3発明と対比する。
a 甲3発明の「インダン骨格を有するマレイミド(A)」は、「化1’化合物」であるから、本件発明1の「(A)マレイミド化合物」であって、「(A-1)トリメチルインダン骨格を含むマレイミド化合物」であり、「式(A4)で表される構造を含」むこと(当審注:式(A4)は省略する。)に相当する。
b 甲3先願明細書等には、不飽和結合含有置換基(例えば、アリル基)がマレイミド基と反応することにより高い架橋密度を発現するとともに、極性が低くなりうる硬化物を得ることができること([0053])、硬化(熱硬化)反応として、反応を速く反応させたい場合には、有機過酸化物、アゾ化合物のような重合開始剤の添加が効果的であること([0095])が記載されていることから、甲3発明の「不飽和結合含有置換基を有する化合物(B)」の「不飽和結合含有置換基」は、「ラジカル重合性不飽和基」であるといえる。
さらに、「樹脂」は「高分子化合物」である。
そうすると、甲3発明の「不飽和結合含有置換基を有する化合物(B)」と、本件発明1の「(B)芳香環及びラジカル重合性不飽和基を含む樹脂」とは、「(B’)ラジカル重合性不飽和基を有する化合物」である限りにおいて一致する。
c 甲3発明の「硬化性樹脂組成物」は、本件発明1の「樹脂組成物」に相当する。
d 甲3発明の「硬化性樹脂組成物」は、「下記式(1)で表されるシアン酸エステル化合物A1及び下記式(2)で表されるシアン酸エステル化合物A2を含む樹脂組成物、並びに窒化ホウ素を含む樹脂組成物」に該当しない。
以上から、本件発明1と甲3発明とは、
「(A)マレイミド化合物、(B’)ラジカル重合性不飽和基を含む化合物を含み、
(A)マレイミド化合物が、(A-1)トリメチルインダン骨格を含むマレイミド化合物を含み、
(A-1)成分が、下記式(A4)で表される構造を含む樹脂組成物(下記式(1)で表されるシアン酸エステル化合物A1及び下記式(2)で表されるシアン酸エステル化合物A2を含む樹脂組成物、並びに窒化ホウ素を含む樹脂組成物を除く)。」
で一致し、以下の点で相違する。
<相違点1’>
(A-1)成分の量に関し、本件発明1は、「樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、10質量%以上50質量%以下であり、かつ、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、70質量%以下であ」るのに対し、甲3発明は、特定されていない点
<相違点2’-1>
(B’)ラジカル重合性不飽和基を含む化合物に関し、本件発明1は、「芳香環及びラジカル重合性不飽和基を含む樹脂」であるのに対し、甲3発明は、「不飽和結合含有置換基を有する化合物(B)」である点
<相違点2’-2>
(B)成分の量に関し、本件発明1は、「樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対する、5質量%以上50質量%以下であり、かつ、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、70質量%以下であ」るのに対し、甲3発明は、特定されていない点
<相違点3’>
本件発明1は、「樹脂組成物」に「(D)無機充填材」を含み、「(D)無機充填材の量」が「樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、その配合量が40質量%以上80質量%以下であ」るのに対し、甲3発明は、無機充填材を含むことは特定されていない点
<相違点4”>
本件発明1は、「樹脂組成物」に「(E)熱可塑性樹脂」を含み、「(E)成分が、フェノキシ樹脂、・・・、ポリエステル樹脂からなる群より選択される1以上の熱可塑性樹脂であ」り、「(E)成分の量が、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、2質量%以上10質量%以下である」のに対し、甲3発明は、熱可塑性樹脂を含むことは特定されていない点
(イ)判断
事案に鑑みて、相違点4”から検討する。
甲3発明は、熱可塑性樹脂に係る発明特定事項を有さないし、甲3先願明細書等において、熱可塑性樹脂に関する記載も示唆もない。
そして、本件明細書には、「樹脂組成物中の(E)熱可塑性樹脂の量は、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、・・・、さらに好ましくは2質量%以上であり、・・・、さらに好ましくは10質量%以下である。(E)熱可塑性樹脂の量が前記範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得ることができる。」こと(【0200】)が記載されている。
そうすると、樹脂組成物に熱可塑性樹脂を適量適用することで、本件発明の効果を顕著に得ることができるものであるから、相違点4”に係る構成は、課題解決のための具体化手段における微差であるとはいえず、実質同一ではない。
してみると、相違点4”は実質的な相違点である。
よって、本件発明1は甲3発明と同一ないし実質同一でない。
(ウ)小括
したがって、相違点1’~3’を検討するまでもなく、本件発明1は、甲3発明と同一ないし実質同一でない。
ウ 本件発明3~12について
本件発明3~12は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、上記イと同様の理由により、本件発明3~12は甲3発明と同一ないし実質同一でない。
エ 小括
以上から、本件特許の請求項1、3~12に係る発明は、甲3先願明細書等に記載された発明と同一ないし実質同一でない。
したがって、「申立理由1 その1のうち甲3に基づくもの」によっては、取り消すことができない。
5 令和6年11月21日提出の意見書について
(1)申立人の意見
申立人は、令和6年11月21日提出の意見書において、以下の主張をしている。
ア 甲7を主引例とする進歩性
本件発明1と甲7に記載された発明(当審注:以下、「甲7発明」という。)とは、<相違点1>において相違する以外は、一致し、該相違点1は、甲7発明に甲5に記載された事項を適用することにより、当業者が容易に想到し得たことである。
本件発明3~12についても、甲7発明及び周知の技術事項とから、当業者が容易に想到し得たことである。
<相違点1>
本件発明1は、(A)マレイミド化合物が、(A-1)トリメチルインダン骨格を含むマレイミド化合物を含み、(A-1)成分が、式(A4)で表される構造を含み、(A-1)成分の量が、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、10質量%以上50質量%以下であり、かつ、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、70質量%以下であるのに対し、甲7発明は、(B)成分:多官能性マレイミドが、 トリメチルインダン骨格を含むマレイミド化合物を含むことは特定されていない点
イ 甲8を主引例とする進歩性
本件発明1と甲8に記載された発明(当審注:以下、「甲8発明」という。)とは、<相違点2>において相違する以外は、一致し、該相違点2は、甲8発明に甲5に記載された事項を適用することにより、当業者が容易に想到し得たことである。
本件発明3~12についても、甲8発及び周知の技術事項とから、当業者が容易に想到し得たことである。
<相違点2>
本件発明1は、(A)マレイミド化合物が、(A-1)トリメチルインダン骨格を含むマレイミド化合物を含み、(A-1)成分が、式(A4)で表される構造を含み、(A-1)成分の量が、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、10質量%以上50質最%以下であり、かつ、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、70質量%以下であるのに対し、甲8発明は、(D)成分:多官能性マレイミドが、トリメチルインダン骨格を含むマレイミド化合物を含むことは特定されていない点
ウ 実施可能要件違反及びサポート要件違反(その1)
(ア)式(A4)で表される構造について、本件発明1の範囲に見合うだけの実施例がないため、式(A4)が特定の構造のものである場合以外であっても実施可能であるか不明であるし、式(A4)の構造全体まで拡張、一般化できず、本件発明の課題を解決できると認識できない。
(イ)(E)成分について、本件発明1には多数列挙されているところ、実施例1~5ではエステル型フェノキシ樹脂のみが使用されており、(E)成分の範囲に見合うだけの実施例がないため、フェノキシ樹脂以外の場合であっても実施可能であるか不明であるし、本件発明の課題を解決できると認識できない。
(ウ)また、エステル型フェノキシ樹脂について、本件明細書の段落0278では「YL7891BH30」と記載され、同段落0298の表1では「YL7891T30」と記載されており、いずれが正しいか不明である。
エ サポート要件違反(その2)及び明確性要件違反
(ア)実施例における各成分の量の数値範囲に比べて、本件発明1における各成分の量の数値範囲が広すぎるため、数値範囲の隅々まで裏付けられていない。
(イ)樹脂成分100質量%に対する(A-1)成分又は(B)成分の量の下限値が特定されていないため不明確である。
(2)検討
順に検討する。
・アについて
申立人があげた相違点1について検討する。
甲7発明が、(A)成分:溶剤可溶性多官能ビニル芳香族共重合体と(B)成分:熱硬化性樹脂を必須成分とする熱硬化性樹脂組成物を用いるものであり、甲7には、低誘電率及び低誘電正接であるプリント配線板が必要とされていること(【0003】)、(B)成分として、ビニル基を含む熱硬化性樹脂として、【化4】(当審注:【化4】は省略する。)で表される多官能性マレイミドが挙げられることが記載されている(【0040】、【0046】、【0051】)。
一方、甲5には、一般式(1)で表されるポリイミド化合物(A)(当審注:本件発明1の「式(A4)で表される構造」を含むマレイミド化合物に該当する。)及び該ポリマレイミド化合物と反応して三次元架橋を生ずる反応成分(B)とからなる熱硬化性樹脂組成物であること(請求項1)、プリント配線板用マトリックス樹脂として用いる熱硬化性樹脂であって、積層板としての誘電率が低いことが要請されているところ、特定のポリマレイミド化合物を必須成分とする樹脂組成物とすることで低誘電率が達成しうること(【0002】~【0004】)、反応成分(B)がトリアリルイソシアネート又は芳香族ジアミンを用いること(【0031】)が記載され、甲5の実施例では、一般式(1)で表される化合物(A)とトリアリルイソシアネート又は4,4’-ジアミノジフェニルメタンからなる反応成分(B)とを含む熱硬化性樹脂組成物を用いて、積層板の銅箔引き剥し強さに優れ、低誘電率(表1では1MHzで3.8~4.0)であることを示している。
ここで、甲7の実施例では、周波数100MHz~1GHzで測定した誘電率が、2.53(実施例8)~2.72(実施例4)であるところ、これらよりも劣った誘電率しか示さない甲5に記載されたポリマレイミド化合物(A)を採用する動機付けはないといえる。
してみると、相違点1に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことでない。
また、本件発明1は、特定構造のマレイミド化合物と芳香環及びラジカル重合性不飽和基を含む樹脂を含み、さらに無機充填材及び熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物とすることで、誘電正接が低く且つ導体層との密着性に優れる絶縁層を得ることができるという、優れた効果を奏するものである。
したがって、本件発明1は、甲7発明と甲5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たことではない。
本件発明3~12は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、本件発明3~12についても同様である。
よって、当該意見は採用できない。
・イについて
申立人があげた相違点2について検討する。
甲8発明が、(A)成分:両末端にビニル基を有するポリフェニレンエーテルオリゴマーと(B)成分:溶剤可溶性の多官能性ビニル芳香族共重合体とからなる熱硬化性樹脂組成物を用いるものであり、甲8には、耐薬品性、誘電特性、耐熱性を示す電子産業等の分野における誘電材料、絶縁材料に用いる樹脂組成物であること([0012])、さらに(D)成分:熱硬化性樹脂として、(B)成分以外のその他の架橋成分である多官能性マレイミドなどを含んでよく、多官能性マレイミドとして[化10](当審注:[化10]は省略する。)で表されるものが記載されている([0067]、[0068]、[0075])。
そして、甲5については、上記「アについて」に示したとおりである。
ここで、甲8の実施例では、誘電率(1GHz)が、約2.50近辺であるところ、これらよりも劣った誘電率しか示さない甲5に記載されたポリマレイミド化合物(A)を採用する動機付けはないといえる。
してみると、相違点2に係る構成とすることは、当業者が容易になし得たことでない。
また、本件発明1は、特定構造のマレイミド化合物と芳香環及びラジカル重合性不飽和基を含む樹脂を含み、さらに無機充填材及び熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物とすることで、誘電正接が低く且つ導体層との密着性に優れる絶縁層を得ることができるという、優れた効果を奏するものである。
したがって、本件発明1は、甲8発明と甲5に記載された事項に基づいて、当業者が容易に想到し得たことではない。
本件発明3~12は、本件発明1を直接又は間接的に引用するものであるから、本件発明3~12についても同様である。
よって、当該意見は採用できない。
・ウについて
申立人があげた(ア)~(ウ)について検討する。
(ア)式(A4)で表される構造について、本件発明1の範囲に見合うだけの実施例が無い旨意見する。
しかしながら、本件明細書には、(A)マレイミド化合物、及び、(B)芳香環及びラジカル重合性不飽和基を含む樹脂を含み、且つ、(A)マレイミド化合物が、(A-1)トリメチルインダン骨格を含むマレイミド化合物を含む樹脂組成物が、本件発明の課題を解決できることが記載されている(【0006】)。
そして、実施例において、(A)マレイミド化合物として、式(A4)で表される構造を有するマレイミド化合物と芳香環及びラジカル重合性不飽和基を含む樹脂を用いた樹脂組成物がDk(誘電率)、Df(誘電正接)、メッキピール強度の全てにおいて優れていることが示されている。
これらの記載によると、トリメチルインダン骨格を有するマレイミド化合物と芳香環及びラジカル重合性不飽和基を含む樹脂を用いた樹脂組成物とすることで、本件発明の課題を解決することが理解できる。
そして、上記トリメチルインダン骨格を有するマレイミド化合物は、様々な置換基や連結基を更に有する場合がありえるが、そのような場合であっても、トリメチルインダン骨格を有するマレイミド化合物であることにかわりがないから、本件発明の課題を解決するものと解される。
また、本件発明は、実施例において、(A-1)成分として特定の式(A4)で表される構造を持つマレイミド化合物が本件発明の課題を解決することを示しているところ、式(A4)で表される構造が様々な置換基や連結基を更に有したときに、Dk(誘電率)、Df(誘電正接)、メッキピール強度が変動して、本件発明の課題を解決できないことを示すような本件出願時の技術常識は見当たらない。
さらに、申立人は、実施例以外の式(A4)で表される構造を含むマレイミド化合物を用いたときに、本件発明の課題を解決できることが不明であると主張するのみであり、その具体的な証拠を何ら示していない。
したがって、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるから、本件発明1の範囲に見合うだけの実施例が無いということはできない。
そして、本件明細書の段落【0049】には、発明協会公開技報公技番号2020-500211号に記載された方法でトリメチルインダン骨格を有するマレイミド化合物を製造できること、実施例で、上記公開技報に記載された方法で、トリメチルインダン骨格を有するマレイミド化合物を合成したことが記載されている。
してみると、上記公開技報に記載された方法にしたがえば、本件明細書の実施例以外のマレイミド化合物を作ることができるものといえる。
したがって、当業者は実施例及び発明の詳細な説明の記載を考慮して本件発明1、3~12の物を製造し、使用することができるものと認められる。
よって、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が、その実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。
(イ)(E)成分について、本件発明1の範囲に見合うだけの実施例が無い旨意見する。
本件明細書には、樹脂組成物に、更に(E)成分を含むこと(【0187】)、(E)成分として具体例が例示されていること(【0188】)、樹脂組成物中の(E)成分の量が、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して2質量%以上、10質量%以下であり、この範囲内にあると、本発明の効果を顕著に得ることが記載されている(【0200】)。
そして、実施例1~5では、(A-1)トリメチレンインダン骨格を有するマレイミド化合物、(B)芳香環及びラジカル重合性不飽和基を含む樹脂を含み、さらに(D)無機充填材及び(E)熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物から製造した試験片を測定すると、Dk(誘電率)、Df(誘電正接)、メッキピール強度の全てにおいて優れている一方で、実施例6では、上記(E)熱可塑性樹脂に代えて(F)エラストマーを用いる樹脂組成物から製造した試験片を測定しても、上記実施例1~5と同様に全てにおいて優れている。
そうすると、上記(ア)に示したように、(A-1)トリメチルインダン骨格を有するマレイミド化合物と(B)芳香環及びラジカル重合性不飽和基を含む樹脂を用いた樹脂組成物とすることで、本件発明の課題を解決するものであるところ、実施例1~5と実施例6におけるそれぞれの測定結果を鑑みるに、(E)熱可塑性樹脂は本件発明の課題を解決するための必須成分であるとはいえないものである。
してみると、(E)成分が、本件発明1の範囲に見合うだけの実施例がないという、サポート要件に係る主張は妥当でない。
また、申立人は、実施例以外の熱可塑性樹脂を含む組成物である場合に、本件発明の課題を解決できることが不明であると主張するが、上述のとおりであるから、サポート要件違反に係る主張は妥当でない。
そして、本件明細書の実施例では、熱可塑性樹脂としてフェノキシ樹脂を用いて樹脂ワニス及び樹脂シートを作成しているところ、フェノキシ樹脂以外の熱可塑性樹脂を用いて、実施例と同じ手順・操作を行うことで実施できるといえる。
よって、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が、その実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものである。
(ウ)エステル型フェノキシ樹脂について、本件明細書の段落【0278】では「YL7891BH30」と記載され、同段落【0298】の表1では「YL7891T30」と記載されているが、同段落【0190】には、「YL7891BH30」と記載されており、表1の記載に誤りがあるものといえる。
してみると、表1は誤記であることは当業者にとって明らかであり、このような誤記があることにより、実施可能要件又はサポート要件を満たさないとはいえない。
・エについて
申立人があげた(ア)、(イ)について検討する。
(ア)実施例における各成分の量の数値範囲に比べて、本件発明1における各成分の量の数値範囲が広すぎる旨意見する。
上記ウに示したように、トリメチルインダン骨格を有するマレイミド化合物と芳香環及びラジカル重合性不飽和基を含む樹脂を用いた樹脂組成物とすることで、本件発明の課題を解決することが理解できる、
さらに、本件明細書には、(A-1)特定マレイミド化合物の量が、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、特に好ましくは10質量%以上であり、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、特に好ましくは50質量%以下であること、この範囲内にある場合、本発明の効果を顕著に得られること(【0044】)、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、特に好ましくは30質量%以上であり、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、特に好ましく50質量%以下であること、この範囲内にある場合、本発明の効果を顕著に得られること(【0045】)が記載されている。
同様に、(B)ラジカル重合性芳香族樹脂の量が、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは5質量%以上、より好ましくは8質量%以上、特に好ましくは10質量%以上であり、好ましくは70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、特に好ましくは50質量%以下であること、この範囲内にある場合、本発明の効果を顕著に得られること(【0164】)、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、特に好ましくは30質量%以上であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、特に好ましく60質量%以下であること、この範囲内にある場合、本発明の効果を顕著に得られること(【0165】)が記載されている。
同様に、(D)無機充填材の量が、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上、特に好ましくは50質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは70質量%以下であること、この範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得られること(【0183】)が記載されている。
同様に、(E)熱可塑性樹脂の量が、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは2質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは10質量%以下であること、この範囲にある場合、本発明の効果を顕著に得られること(【0200】)が記載されている。
そして、実施例1~5では、トリメチルインダン骨格を有する(A)マレイミド化合物、(B)芳香環及びラジカル重合性不飽和基を含む樹脂、(D)無機充填材、及び(E)熱可塑性樹脂を含み、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対する、及び/又は樹脂成分100質量%に対する、(A-1)成分、(B)成分、(D)成分、(E)成分の各々の量が、本件発明1に特定された範囲内とすることで、Dk(誘電率)、Df(誘電正接)、メッキピール強度の全てにおいて優れることが示されている。
これらの記載によると、本件発明1は、トリメチルインダン骨格を有するマレイミド化合物と芳香環及びラジカル重合性不飽和基を含む樹脂を用いた樹脂組成物であって、さらに(A)マレイミド化合物、(B)芳香環及びラジカル重合性不飽和基を含む樹脂、(D)無機充填材、及び(E)熱可塑性樹脂を特定量含むことで、本件発明の課題を解決することを理解できる。
そして、本件発明は、実施例において、(A-1)成分~(E)成分の量を特定量とすることで、本件発明の課題を解決することを示しているところ、これら成分の量を変動させた場合に、Dk(誘電率)、Df(誘電正接)、メッキピール強度が変動して、本件発明の課題を解決できないことを示すような本件出願時の技術常識は見当たらない。
また、申立人は、実施例以外の(A-1)成分~(E)成分の量である場合に、本件発明の課題を解決できることが不明であると主張するのみであり、その具体的な証拠を何ら示していない。
したがって、本件発明1は、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるから、実施例における各成分の量の数値範囲に比べて、本件発明1における各成分の量の数値範囲が広すぎるということはできない。
(イ)そして、(A-1)成分、(B)成分において、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対する下限が特定されていないことから、明確でない旨意見する。
しかしながら、(A-1)成分、(B)成分は、本件発明において、樹脂組成物中の不揮発成分100質量%に対して、各々の成分の量について下限が記載されていることに基づけば、樹脂組成物中の樹脂成分100質量%に対して、各々の成分の量についても下限の程度が理解できる。
してみると、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
よって、本件発明は明確である。
以上から、申立人の意見は、いずれも採用できない。
第6 むすび
以上のとおり、本件特許に対する訂正は適法であるから、これを認める。
そして、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した申立理由によっては、本件特許の請求項1、3~12に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1、3~12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-700434