特許異議申立
2026-700136
球状チタン酸カルシウム粉末及びそれを用いた樹脂組成物
- 審判番号
- 2026-700136
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2024-512229
- 登録番号
- 7730415
- 請求日
- 2026年02月16日
- 審決日
- 2026年06月05日
- 公報発行日
- 2026年07月31日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】デンカ株式会社
- 【権利者代理人】園田・小林弁理士法人
- 【異議申立人】内田 浩昭
- 審判長/審判官
- 審判長 富永 泰規
- 審判官 石川 雄太郎
- 審判官 佐藤 陽一
- 分類
- P1651.161-Y (C01G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第184条の13、特許法第29条の2
- データ出所
- 審決公報(XML)
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特許第7730415号発明「球状チタン酸カルシウム粉末及びそれを用いた樹脂組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7730415号の請求項1~6に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7730415号(以下「本件特許」という。)の請求項1~6に係る特許についての出願は、2023年(令和 5年) 3月22日(優先権主張 令和 4年 3月30日)を国際出願日とする出願(特願2024-512229号。以下「本願」という。)であって、令和 7年 8月19日にその特許権の設定登録がなされ、同年 8月27日にその特許掲載公報が発行されたものである。
その後、令和 8年 2月16日(受付日)に、請求項1~6(全請求項)に係る特許に対し、特許異議申立人である内田 浩昭(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされた。
本件特許異議の申立てにおける手続の経緯は、以下のとおりである。
令和 8年 2月16日 :特許異議の申立ての受付
3月11日 :手続補正書(方式)の受付
第2 本件発明
本件特許の請求項1~6に係る発明は、本願の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定される、次のとおりのものである(以下、請求項1~6に係る発明を、それぞれ「本件発明1」~「本件発明6」という。また、本願の願書に添付した明細書を「本件明細書」という。)。
「【請求項1】
平均円形度が0.80以上の球状チタン酸カルシウム粉末であって、
下記条件で測定した剪断粘度が3,000Pa・s以下であり、
比表面積が0.1~1.5m2/gである、球状チタン酸カルシウム粉末。
<剪断粘度の測定条件>
ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(エポキシ当量:184~194)60体積%と、球状チタン酸カルシウム粉末40体積%からなる樹脂組成物を、レオメーターを用いて剪断速度:0.11/s、プレート形状:円形平板:10mmφ、試料厚み:1mm、温度:25±1℃で粘度を測定する。
【請求項2】
平均粒子径(D50)が1~100μmである、請求項1に記載の球状チタン酸カルシウム粉末。
【請求項3】
2θが32°~34°のX線回折ピークの半値幅(FWHM)が、0.150°~0.175°である、請求項1または2に記載の球状チタン酸カルシウム粉末。
【請求項4】
前記剪断粘度が1,500Pa・s以下である、請求項1または2に記載の球状チタン酸カルシウム粉末。
【請求項5】
樹脂充填用である、請求項1または2に記載の球状チタン酸カルシウム粉末。
【請求項6】
請求項1または2に記載の球状チタン酸カルシウム粉末と、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂から選択される少なくとも1つの樹脂とを含む、樹脂組成物。」
第3 特許異議の申立ての理由の概要
令和 8年 3月11日受付の手続補正書(方式)により補正された特許異議申立書において、申立人は、証拠方法として、後記する甲第1号証を提出し、以下の申立理由1により、本件特許の請求項1~6に係る特許は取り消されるべきものである旨主張している。
1 申立理由1(拡大先願)
本件発明1~6は、本願の優先日前の日本語特許出願であって、その優先日後に国際公開がされた甲第1号証に係る日本語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であり、しかも、本件発明1~6の発明者が甲第1号証に係る日本語特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、また本願の出願の時において、その出願人が上記日本語特許出願の出願人と同一でもないので(特許法第184条の13参照。)、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができないものであるから、同発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
2 証拠方法
・甲第1号証:国際公開第2022/124396号
第4 当合議体の判断
以下に述べるように、特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。
1 申立理由1(拡大先願)について
(1)甲第1号証に係る日本語国際出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明
本願の優先日前の日本語特許出願であって、その優先日後に国際公開がされた甲第1号証に係る日本語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面には、「成形用樹脂組成物及び電子部品装置」(発明の名称)に関する記載があり、その段落[0147]に記載の実施例17~19に使用される無機充填材7に着目すると、次の発明(以下「先願発明」という。)が記載されているものと認められる。
<先願発明>
体積平均粒径が8.9μm、形状が球形、不定形の未焼成チタン酸カルシウム粒子に対し1200℃で2時間球形化処理を行った、チタン酸カルシウム粒子。
(2)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と先願発明とを対比する。
(ア)本件明細書の段落【0011】の記載によれば、本件発明1の「球状チタン酸カルシウム粉末」は、「複数の粒子の集合体」であると認められる。一方、先願発明の「チタン酸カルシウム粒子」は、粒径が「体積平均粒径」(複数の粒子の平均値)で表されることから、「複数の粒子の集合体」であると認められる。
そうすると、先願発明における「チタン酸カルシウム粒子」は、本件発明1における「チタン酸カルシウム粉末」に相当する。
(イ)先願発明は、「1200℃で2時間球形化処理」を行うものであるが、「球形化処理」により、先願発明の「チタン酸カルシウム粒子」の形状が球形(球状)になるものと認められる(甲第1号証の図1参照。)。
そうすると、上記(ア)を踏まえると、先願発明における「チタン酸カルシウム粒子」は、本件発明1における「球状チタン酸カルシウム粉末」に相当する。
(ウ)以上から、本件発明1と先願発明とは、「球状チタン酸カルシウム粉末。」である点で一致するとともに、以下の点で相違する。
<相違点1>
本件発明1の「球状チタン酸カルシウム粉末」では、「平均円形度が0.80以上」であるのに対し、先願発明の「チタン酸カルシウム粒子」では、その平均円形度が不明である点。
<相違点2>
本件発明1の「球状チタン酸カルシウム粉末」では、「ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂(エポキシ当量:184~194)60体積%と、球状チタン酸カルシウム粉末40体積%からなる樹脂組成物を、レオメーターを用いて剪断速度:0.11/s、プレート形状:円形平板:10mmφ、試料厚み:1mm、温度:25±1℃で粘度を測定する。」との「条件で測定した剪断粘度が3,000Pa・s以下」であるのに対し、先願発明の「チタン酸カルシウム粒子」では、その剪断粘度が不明である点。
<相違点3>
本件発明1の「球状チタン酸カルシウム粉末」では、「比表面積が0.1~1.5m2/g」であるのに対し、先願発明の「チタン酸カルシウム粒子」では、その比表面積が不明である点。
イ 判断
(ア)事案に鑑み相違点3を検討する。
甲第1号証に係る日本語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面には、チタン酸カルシウム粒子の比表面積の具体的な値が記載されていないから、先願発明のチタン酸カルシウム粒子の「比表面積」の値は不明である。また、先願発明の球形化処理条件や技術常識を考慮しても、先願発明のチタン酸カルシウム粒子の「比表面積が0.1~1.5m2/g」であるかは不明である。
以上によれば、相違点3は、実質的な相違点である。
また、本件明細書の【0019】の記載を参照すれば、上記相違点3に係る発明特定事項が課題解決のための具体的手段における微差であるともいえない。
よって、相違点1、2について検討するまでもなく、本件発明1は、先願発明と実質同一であるとはいえない。
ウ 申立人の主張について
申立人は、特許異議申立書の第9ページ第10~21行において、物体の比表面積は物体の表面積S、体積V及び密度ρより、S/(V×ρ)により求めることができ、球体の半径をrとすると、表面積Sは4πr2で、体積Vは4πr3/3であるから、球体の直径dとすると、3/(d/2×ρ)となるところ、本件発明1の平均粒子径は1~100μmであるのに対して、甲第1号証の体積平均粒径は0.2μm~80μmであるから、本件発明1と甲第1号証の比表面積は平均粒子径が1~80μmの範囲において同一である旨を主張する。
しかしながら、上記主張は、本件発明1の「球状チタン酸カルシウム粉末」と、先願発明の「チタン酸カルシウム粒子」とが、真球であり、表面粗さや密度の影響がないことを前提とするものであるが、比表面積は、粒子の外形のみならず、表面粗さ、多孔性等に依存する物性値であり、粒径及び密度のみから一義的に定まるものではない。例えば、本件明細書の段落【0053】の表1をみると、本件発明1の具体例と認められる実施例1~4のチタン酸カルシウム粉末は真球(平均円形度=1)であるとはいえず、図2をみても、表面が平滑であるとはいえない。また、技術常識に照らして、先願発明の「チタン酸カルシウム粒子」も同様に、真球であるとはいえず、表面が平滑であるともいえないから、申立人の上記主張は前提を欠くものであり採用できない。
エ まとめ
以上のとおり、本件発明1は、甲第1号証に係る日本語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であるとはいえない。
(3)本件発明2~6について
本件発明2~6は、本件特許の請求項1の記載を直接又は間接的に引用するものであるが、上記(2)で述べたとおり、本件発明1が、甲第1号証に係る日本語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であるとはいえない以上、本件発明2~6についても同様に、甲第1号証に係る日本語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であるとはいえない。
(4)申立理由(拡大先願)のまとめ
したがって、本件発明1~6は、甲第1号証に係る日本語特許出願の国際出願日における国際出願の明細書、請求の範囲又は図面に記載された発明と同一であるとはいえないから、申立理由1(拡大先願)によっては、本件特許の請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。
第5 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立書に記載した申立ての理由によっては、本件特許の請求項1~6に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許の請求項1~6に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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