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特許異議申立

2025-700692

燃料電池セパレータ用樹脂組成物、燃料電池セパレータおよび燃料電池セパレータの製造方法

審判番号
2025-700692
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2024-100731
登録番号
7616467
請求日
2025年07月04日
審決日
2025年09月29日
公報発行日
2025年10月31日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】日清紡ケミカル株式会社
  • 【権利者代理人】弁理士法人英明国際特許事務所
  • 【異議申立人】松村 朋子
審判長/審判官
  • 審判長 井上 信一
  • 審判官 畑中 博幸
  • 審判官 多田 幸司
分類
P1651.121-Y (H01M) / P1651.537-Y (H01M)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号
データ出所
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特許第7616467号発明「燃料電池セパレータ用樹脂組成物、燃料電池セパレータおよび燃料電池セパレータの製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7616467号の請求項1ないし9に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7616467号の請求項1ないし9に係る特許についての出願は、令和6年6月21日に出願され、令和7年1月8日にその特許権が設定登録され、令和7年1月17日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和7年7月4日に特許異議申立人松村 朋子(以下、「異議申立人」という。)により、請求項1ないし9に係る特許に対する特許異議の申立てがされた。 第2 本件発明 特許第7616467号の請求項1ないし9の特許に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明9」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 黒鉛粉末、並びに主剤、硬化剤および硬化促進剤を含むエポキシ樹脂成分を含み、下式で求められる圧縮度が14.0~40.0%であり、かつ、沸点が100℃以下の揮発成分の含有量が1.00質量%未満であることを特徴とする燃料電池セパレータ用樹脂組成物。 圧縮度(%)=100×(樹脂組成物のかため嵩密度-樹脂組成物のゆるみ嵩密度)/樹脂組成物のかため嵩密度 【請求項2】 前記樹脂組成物のゆるみ嵩密度が、0.40~0.90g/ccである請求項1記載の燃料電池セパレータ用樹脂組成物。 【請求項3】 前記黒鉛粉末のゆるみ嵩密度が、0.35~0.70g/ccである請求項1記載の燃料電池セパレータ用樹脂組成物。 【請求項4】 前記主剤が、エポキシ当量194~215g/eqのオルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂およびエポキシ当量180~200g/eqのビフェニル型エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種である請求項1記載の燃料電池セパレータ用樹脂組成物。 【請求項5】 前記硬化剤が、水酸基当量103~106g/eqのフェノールノボラック樹脂である請求項1記載の燃料電池セパレータ用樹脂組成物。 【請求項6】 前記硬化促進剤が、2位にフェニル基を有するイミダゾール化合物である請求項1記載の燃料電池セパレータ用樹脂組成物。 【請求項7】 黒鉛粉末、並びに主剤、硬化剤および硬化促進剤を含むエポキシ樹脂成分を含み、下式で求められる圧縮度が14.0~40.0%であり、かつ、沸点100℃以下の揮発成分の含有量が1.00質量%未満である燃料電池セパレータ用樹脂組成物を成形してなり、厚さムラが50μm未満、且つ、接触抵抗が7.00mΩ・cm 2未満であることを特徴とする燃料電池セパレータ。 圧縮度(%)=100×(樹脂組成物のかため嵩密度-樹脂組成物のゆるみ嵩密度)/樹脂組成物のかため嵩密度 【請求項8】 表面の少なくとも一部にガス流路となる溝部を構成するための厚肉部および薄肉部を有する燃料電池セパレータの製造方法であって、 黒鉛粉末、並びに主剤、硬化剤および硬化促進剤を含むエポキシ樹脂成分を含み、下式で求められる圧縮度が14.0~40.0%であり、かつ、沸点100℃以下の揮発成分の含有量が1.00質量%未満である燃料電池セパレータ用樹脂組成物を、その投入質量が、前記燃料電池セパレータの前記厚肉部と薄肉部の体積比に近似する体積比となるように燃料電池セパレータ用金型に投入する工程を備えることを特徴とする燃料電池セパレータの製造方法。 圧縮度(%)=100×(樹脂組成物のかため嵩密度-樹脂組成物のゆるみ嵩密度)/樹脂組成物のかため嵩密度 【請求項9】 前記燃料電池セパレータ用樹脂組成物を、前記燃料電池セパレータの厚肉部と薄肉部の体積比に近似する凹凸が形成された充填容器に充填する工程と、 前記樹脂組成物が充填された充填容器を燃料電池セパレータ用金型の真上で上下反転させて前記樹脂組成物を前記金型に投入する工程と、 前記金型内に投入された前記樹脂組成物を圧縮成形する工程とを備える請求項8記載の燃料電池セパレータの製造方法。」 第3 申立理由の概要 1 異議申立人の申立理由の概要は、次のとおりである。 (1)申立理由1 特許法第29条第2項(進歩性) 請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証ないし甲第4号証に記載された技術に基づいて、請求項2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第5号証に記載された発明、及び、甲第2号証ないし甲第4号証に記載された技術に基づいて、請求項3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第6号証に記載された発明、及び、甲第2号証ないし甲第4号証に記載された技術に基づいて、請求項4ないし6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証に記載された発明、及び、甲第2号証ないし甲第4号証に記載された技術に基づいて、請求項7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第7号証に記載された発明、甲第8号証に記載された発明、及び、甲第2号証ないし甲第4号証に記載された技術に基づいて、請求項8、9に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第7号証に記載された発明、及び、甲第2号証ないし甲第4号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。 よって、請求項1ないし9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、取り消されるべきものである。 (2)申立理由2 特許法第36条第6項第2号(明確性要件) 請求項1ないし9に係る発明は、明確でない。 よって、請求項1ないし9に係る発明の特許は、特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、取り消されるべきものである。 2 提出された証拠 異議申立人が提出した証拠は次のとおりである。 甲第1号証:特開2001-325967号公報 甲第2号証:特開2023-47625号公報 甲第3号証:金澤孝文、近沢正敏、次田章、「粉体の付着カ(中)」、Gypsum & Lime、No.172、1981、p114-118 甲第4号証:「第十八改正日本薬局方」、参考情報G2.物性関連、粉体の流動性、厚生労働省、p2524-2526 甲第5号証:特開2007-283770号公報 甲第6号証:特開2005-116282号公報 甲第7号証:特開2006-244937号公報 甲第8号証:特開2002-60639号公報 第4 申立理由についての当審の判断 1 甲各号証の記載 (1)甲第1号証 ア 甲第1号証には、次の事項が記載されている(なお、下線は当審で付与した。)。 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、燃料電池セパレータの製造方法、燃料電池セパレータ及び固体高分子型燃料電池に関し、更に詳述すると、成形不良の発生率が低く、効率の良い燃料電池セパレータの製造方法、この方法により製造された高品質な燃料電池セパレータ、この燃料電池セパレータを一部又は全部に用いた高いガスシール性と優れた耐衝撃性を有し、特に自動車、小型船舶等の移動用電源として好適な固体高分子型燃料電池に関する。 ・・・(中略)・・・。 【0003】上記燃料電池セパレータ1は、図2に示したように、薄肉の板状体の左右両側面に複数個の凸部(リブ)1aを突設した特異な形状を有しており、このセパレータの凸部1aと電極3との間で水素、酸素等の燃料ガスの供給排出用流路(溝部)4を形成するため、燃料電池セパレータには高い弾性、優れた寸法精度及びガス不透過性を有することが要求されると共に、単位セル(燃料電池)には燃料ガスの漏れが生じない高いガスシール性を有すること、特に自動車等の移動用電源として用いる場合には優れた耐衝撃性を有することが強く望まれている。」 「【0009】しかしながら、従来のフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂と黒鉛とを主成分とする燃料電池セパレータは、通常、コンパウンドを所定形状のセパレータ成形金型内に投入し、150~160℃、10~50MPaで5~10分間熱圧成形する圧縮成形法により製造されているが、必要な導電性を付与するため黒鉛を多量に添加しているのでコンパウンドの流れ性が悪く、複雑な溝構造を有するセパレータ成形金型内にコンパウンドを均等に充填することは困難であり、大量の成形不良が生じていた。また、加熱加圧成形時に発生するガスにより、成形不良が生じるという問題がある。」 「【0013】そして、本発明者が、上記知見に基づき更に鋭意検討を進めた結果、導電材と結合剤と添加剤とを主成分とする燃料電池セパレータ用組成物を混合、造粒、乾燥してなる造粒物を金型内に充填して加熱加圧成形する燃料電池セパレータの製造方法であって、上記導電材に添加剤を添加混合した後、この混合物に結合剤を導電材100質量部に対して5~30質量部添加すると同時に、溶剤を20質量部以下の量添加し、湿式混合することにより、平均粒径が200~700μmであり、かつ下記粒度分布を有すると共に、残留揮発分が4質量%以下の造粒物を用いること、又はこの造粒物を更に整粒して500μm未満の粒径のものが大部分を占める微細な造粒物を用いることにより、流れ性及び充填性が大幅に改善し、極めて複雑な溝構造を有するセパレータ成形金型内に造粒物を空隙なく均等に充填できること、また、成形時のガス発生を大幅に減らすことができること、これらが相俟って、巣穴、欠け等の成形不良の発生率が極めて低く、寸法安定性の高い高品質な燃料電池セパレータを歩留まり高く製造できることを見出し、本発明をなすに至った。」 「【0018】上記(A)成分の導電材としては、カーボンブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、カーボンウイスカー、黒鉛、金属ファイバ、酸化チタン、酸化ルテニウム等の金属粉末などが挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、特に黒鉛が好ましい。 【0019】この場合、黒鉛は、天然に産出したもの(天然黒鉛)であっても、人工的に製造したもの(人造黒鉛)であってもよく、鱗片状、塊状、針状、球状などの如何なる形状の黒鉛であっても構わない。黒鉛の平均粒径は好ましくは10~80μm、より好ましくは20~60μmである。 【0020】上記(B)成分の結合剤としては、燃料電池セパレータに普通に用いられている熱硬化性樹脂を使用することができる。例えばレゾールタイプのフェノール樹脂、ノボラックタイプのフェノール樹脂に代表されるフェノール系樹脂、フルフリルアルコール樹脂、フルフリルアルコールフルフラール樹脂、フルフリルアルコールフェノール樹脂などのフラン系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカルボジイミド樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ピレン-フェナントレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、ユリア樹脂、ジアリルフタレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、メラミン樹脂などが挙げられ、これらの1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。中でも、フェノール系樹脂がコスト、耐久性の点から好ましい。 ・・・(中略)・・・。 【0023】上記(C)成分の添加剤としては、離型性、耐加水分解性等を向上させるため、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸等の滑剤、可塑剤、離型剤、安定剤、酸化防止剤、耐加水分解剤等を(A)成分の黒鉛100質量部に対して2質量部以下、好ましくは0.5~2質量部添加する。」 「【0033】次に、得られる造粒物を真空乾燥法、流動層乾燥法、ジェットドライヤー法又は加熱乾燥法で乾燥処理することにより、残留揮発分が4質量%以下であり、好ましくは1.5~4質量%の造粒物が得られる。ここで、造粒物の残留揮発分とは、130℃の赤外加熱炉で30分間乾燥させた場合の重量減少から求めた量である。残留揮発分が少なすぎると成形不良が増大し、特に巣穴ができやすくなる場合がある。一方、多すぎると成形時のガス発生が増大し、成形不良が増加する。」 「【0048】〔実施例1〕平均粒径30μmの鱗片状黒鉛100質量部にステアリン酸亜鉛1質量部を混合した。この混合物にレゾール型フェノール樹脂を10質量部とメタノール水溶液20質量部とを添加し、株式会社セイシン企業製造粒機 ニューグラマシン750型で30分間湿式混合、造粒して、平均粒径300μm、下記粒度分布を有する造粒物を得た。なお、粒度分布はレーザー回折法で求めた。 粒径 割合 5μm以上100μm未満 :20% 100μm以上300μm未満 :25% 300μm以上500μm未満 :40% 500μm以上1000μm未満 :15% 【0049】得られた造粒物を真空乾燥法により乾燥した。これにより、残留揮発分が3質量%の造粒物を得た。この造粒物を金型に充填して150℃、19.6MPaで5分間熱圧成形して100mm×10mm×4mmの大きさの試験片を作成した。 【0051】次に、実施例1の造粒物を燃料流路を有する形状に成形できるセパレータ成形金型内に充填し、150℃、19.6MPaで5分間熱圧成形して長さ120mm、幅120mm、厚み2.3mmの図2に示したような左右両側に凸部を有する燃料電池セパレータを作成した。」 イ 甲第1号証の上記記載事項によれば、次のことがいえる。 段落【0048】、【0049】によれば、実施例1である造粒物として、鱗片状黒鉛にステアリン酸亜鉛を混合した混合物にレゾール型フェノール樹脂とメタノール水溶液とを添加し、混合、造粒し、乾燥して得られた、平均粒径300μm、下記粒度分布を有し、残留揮発分が3質量%の造粒物が記載されているといる。 粒径 割合 5μm以上100μm未満 :20% 100μm以上300μm未満 :25% 300μm以上500μm未満 :40% 500μm以上1000μm未満 :15% また、段落【0051】によれば、該造粒物を用いて燃料電池セパレータを作成することが記載されていることから、該造立物は、燃料電池セパレータ用であるといえる。 そして、段落【0018】、【0019】によれば、「鱗片状黒鉛」は「導電材」として、段落【0020】によれば、「レゾール型フェノール樹脂」は「結合剤」として、段落【0023】によれば、「ステアリン酸亜鉛」は「添加剤」として、それぞれ用いられている。 ウ よって、甲第1号証には、実施例1に基づく次の発明(以下、「甲1発明A」という。)が記載されている。 「導電材である鱗片状黒鉛に添加剤であるステアリン酸亜鉛を混合した混合物に、結合剤であるレゾール型フェノール樹脂と、メタノール水溶液とを添加し、混合、造粒し、乾燥して得られた、平均粒径300μm、下記粒度分布を有し、残留揮発分が3質量%である、 燃料電池セパレータ用の造粒物。 粒径 割合 5μm以上100μm未満 :20% 100μm以上300μm未満 :25% 300μm以上500μm未満 :40% 500μm以上1000μm未満 :15%」 エ また、上記ウ、及び、甲第1号証の段落【0051】の記載も踏まえれば、甲第1号証には、実施例1に基づく次の発明(以下、「甲1発明B」という。)も記載されている。 「導電材である鱗片状黒鉛に添加剤であるステアリン酸亜鉛を混合した混合物に、結合剤であるレゾール型フェノール樹脂と、メタノール水溶液とを添加し、混合、造粒し、乾燥して得られた、平均粒径300μm、下記粒度分布を有し、残留揮発分が3質量%である造粒物を、熱圧成形して作成された燃料電池セパレータ。 粒径 割合 5μm以上100μm未満 :20% 100μm以上300μm未満 :25% 300μm以上500μm未満 :40% 500μm以上1000μm未満 :15%」 オ さらに、甲第1号証の上記記載事項によれば、次のこともいえる。 (ア)段落【0001】によれば、甲第1号証には、燃料電池セパレータの製造方法が記載されている。 また、段落【0003】によれば、燃料電池セパレータ1の左右両側面に燃料ガスの流路(溝部)4が形成される。そして、図1、図2によれば、セパレータ1の表面に燃料ガスの流路である溝部4が見て取れ、さらに、溝部4は燃料電池セパレータ1の複数の凸部1aと各凸部1a間の凹部から構成されていることも見て取れる。 してみると、甲第1号証には、表面に燃料ガスの流路である溝部4を構成する複数の凸部1aと各凸部1a間の凹部を有する燃料電池セパレータの製造方法が記載されているといえる。 (イ)段落【0048】、【0049】によれば、実施例1の燃料電池セパレータの製造工程として、鱗片状黒鉛にステアリン酸亜鉛を混合した混合物にレゾール型フェノール樹脂とメタノール水溶液20質量部とを添加し、混合、造粒し、乾燥して得られた、平均粒径300μm、下記粒度分布を有し、残留揮発分が3質量%である造粒物を得る工程が記載されているといえる。 粒径 割合 5μm以上100μm未満 :20% 100μm以上300μm未満 :25% 300μm以上500μm未満 :40% 500μm以上1000μm未満 :15% また、上記イによれば、「鱗片状黒鉛」は「導電材」として、「レゾール型フェノール樹脂」は「結合剤」として、「ステアリン酸亜鉛」は「添加剤」として、それぞれ用いられている。 (ウ)段落【0051】によれば、実施例1の燃料電池セパレータの製造工程として、造粒物を燃料流路を有する形状に成形できるセパレータ成形金型内に充填する工程が記載されているといえる。 カ よって、甲第1号証には、実施例1に基づく次の発明(以下、「甲1発明C」という。)が記載されている。 「表面に燃料ガスの流路である溝部4を構成する複数の凸部1aと各凸部1a間の凹部を有する燃料電池セパレータの製造方法であって、 導電材である鱗片状黒鉛にステアリン酸亜鉛を混合した混合物に結合剤であるレゾール型フェノール樹脂と、メタノール水溶液とを添加し、混合、造粒し、乾燥して得られた、平均粒径300μm、下記粒度分布を有し、残留揮発分が3質量%である造粒物を得る工程と、 該造粒物を燃料流路を有する形状に成形できるセパレータ成形金型内に充填する工程とを備える、 燃料電池セパレータの製造方法。 粒径 割合 5μm以上100μm未満 :20% 100μm以上300μm未満 :25% 300μm以上500μm未満 :40% 500μm以上1000μm未満 :15%」 (2)甲第2号証 ア 甲第2号証には、次の事項が記載されている(なお、下線は当審で付与した。)。 「【請求項1】 黒鉛粉末、並びに主剤、硬化剤および硬化促進剤を含むエポキシ樹脂成分を含む組成物を成形してなり、 前記黒鉛粉末の平均粒径d50が、20~80μmであり、かつ、前記黒鉛粉末のレーザ顕微鏡で測定される平均高さが、前記平均粒径d50の30~70%であることを特徴とする燃料電池用セパレータ。 ・・・(中略)・・・。 【請求項4】 前記主剤が、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂およびビフェニル型エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種である請求項1~3のいずれか1項記載の燃料電池用セパレータ。 【請求項5】 前記硬化剤が、ノボラック型フェノール樹脂である請求項1~4のいずれか1項記載の燃料電池用セパレータ。」 「【0010】 以下、本発明についてさらに詳しく説明する。 本発明に係る燃料電池用セパレータは、黒鉛粉末、並びに主剤、硬化剤および硬化促進剤を含むエポキシ樹脂成分を含む組成物を成形してなり、黒鉛粉末の平均粒径d50が、20~80μmであり、かつ、黒鉛粉末のレーザ顕微鏡で測定される平均高さが、平均粒径d50の30~70%であることを特徴とする。」 「【0015】 一方、エポキシ樹脂成分を構成する主剤としては、エポキシ基を有するものであれば特に制限されるものではなく、例えば、o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられ、これらはそれぞれ単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、o-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂単独、ビフェニル型エポキシ樹脂単独、これらの混合物が好ましい。 本発明で用いるエポキシ樹脂のエポキシ当量は、特に限定されるものではないが、180~209g/eqが好ましい。 【0016】 また、硬化剤としては、フェノール樹脂が好ましい。その具体例としては、ノボラック型フェノール樹脂、クレゾールノボラック型フェノール樹脂、レゾール型フェノール樹脂、アラルキル変性フェノール樹脂、ビフェニルノボラック型フェノール樹脂、トリスフェノールメタン型フェノール樹脂等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、ノボラック型フェノール樹脂が好ましい。 本発明で用いるフェノール樹脂の水酸基当量は、特に限定されるものではないが、95~140g/eqが好ましく、100~115g/eqがより好ましい。」 イ 甲第2号証の上記記載事項によれば、次のことがいえる。 (ア)【請求項1】、段落【0010】によれば、甲第2号証には、黒鉛粉末、並びに主剤、硬化剤および硬化促進剤を含むエポキシ樹脂成分を含む組成物を成形してなる燃料電池用セパレータが記載されている。 (イ)【請求項4】、段落【0015】によれば、主剤は、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂およびビフェニル型エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種であり、【請求項5】、段落【0016】によれば、硬化剤は、ノボラック型フェノール樹脂であることが記載されている。 ウ よって、上記イによれば、甲第2号証には、次の技術(以下、「甲第2号証に記載された技術」という。)が記載されている。 「黒鉛粉末、並びに主剤、硬化剤および硬化促進剤を含むエポキシ樹脂成分を含む組成物を成形してなる燃料電池用セパレータにおいて、主剤をクレゾールノボラック型エポキシ樹脂およびビフェニル型エポキシ樹脂から選ばれる少なくとも1種とし、硬化剤をノボラック型フェノール樹脂としたこと。」 (3)甲第3号証 ア 甲第3号証には、次の事項が記載されている(なお、下線は当審で付与した。)。 [図:0001428031000001.jpg] (116頁左欄12ないし28行) イ よって、上記アによれば、甲第3号証には、次の技術(以下、「甲第3号証に記載された技術」という。)が記載されている。 「圧縮度はもっとも流動性に相関のある物性値であり、圧縮度15%以下の場合、粉体の付着性はなく流動性は良好であること。」 (4)甲第4号証 ア 甲第4号証には、次の事項が記載されている(なお、下線は当審で付与した。)。 「2.圧縮度及びHausner比測定法 最近、圧縮度(Compressibility lndex)とこれに密接に関係するHausner比の測定法が、粉体の流動特性を予測するための簡便で、迅速かつ一般的な方法となってきている。粉体のかさ密度、粒子径や粒子形状、表面積、含水率、付着性の全てが、測定した圧縮度に影響するので、圧縮度はこれらの粉体物性の総合的な尺度とされてきた。圧縮度及びHausner比は、粉体のかさ体積とタップ後のかさ体積を測定することによって求められる。 2.1 基本的測定法 ・・・(前略)・・・。 圧縮度(%)とHausner比は、疎充填時のかさ密度(ρbulk)とタップ密度(ρtapped)の測定値を用いて、次式により求めることもできる。 圧縮度=(ρtapped-ρbulk)/ρtapped×100 Hausner比=ρtapped/ρbulk これらの変法として、タップ中に生じるかさ体積変化に代わって,圧密率が測定されることもある。圧縮度(%)とHausner比を用いて、表2に示された流動性の尺度が一般的に認められている。 [図:0001428031000002.jpg] 2.2.測定に関して留意すべき点 圧縮度とHausner比は個々の粉体に固有な特性値ではない。すなわち、これらは用いた測定法に依存する。」 (2525頁右欄下から15行ないし2526頁左欄14行) イ よって、上記アによれば、甲第4号証には、次の技術(以下、「甲第4号証に記載された技術」という。)が記載されている。 「圧縮度(Compressibility lndex)の測定法が、粉体の流動特性を予測するための一般的な方法であり、流動性は圧縮率が10%以下であれば極めて良好であり、11~15%であれば良好であり、16~20%であればやや良好であることが流動性の尺度として一般的に認められていること。」 (5)甲第5号証 ア 甲第5号証には、次の事項が記載されている(なお、下線は当審で付与した。)。 「【0091】 以下、この発明による成形金型を用いて、この発明による製造方法により圧縮成形される燃料電池セパレータの成形プロセスについて具体的に説明する。但し、この発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。 【0092】 (1)セパレータ1の形状は、縦150mm、横100mm、厚さ2mm(または2.5mm)、ガス流路溝3は幅1mm、深さ0.5mm、ピッチは2mmで12列、表裏各面の中央に配置される。 【0093】 (2)粉末材料は灰分0.15%、平均粒子径φ30μmの球状天然黒鉛(または同様の人造黒鉛)80wt%、樹脂系バインダはレゾール型フェノール20wt%の混合物を使用した。嵩密度は0.65g/cm3である。」 イ 上記アによれば、甲第5号証には、次の技術(以下、「甲第5号証に記載された技術」という。)が記載されている。 「燃料電池セパレータの成形プロセスにおいて、粉末材料は灰分0.15%、平均粒子径φ30μmの球状天然黒鉛(または同様の人造黒鉛)80wt%、樹脂系バインダはレゾール型フェノール20wt%の混合物を使用し、嵩密度は0.65g/cm3であること。」 (6)甲第6号証 ア 甲第6号証には、次の事項が記載されている(なお、下線は当審で付与した。)。 「【0001】 本発明は、燃料電池(特に固体高分子型燃料電池、PEFCと称する)におけるセパレータなどの導電性プレートを調製するのに有用な導電性組成物及びその成形体に関する。」 「【0031】 造粒黒鉛粒子(A1)のかさ密度ρ1は、通常、0.5~0.8g/cm3、好ましくは0.55~0.75g/cm3、さらに好ましくは0.6~0.7g/cm3程度である。」 イ 上記アによれば、甲第6号証には、次の技術(以下、「甲第6号証に記載された技術」という。)が記載されている。 「燃料電池(特に固体高分子型燃料電池、PEFCと称する)におけるセパレータなどの導電性プレートを調製するのに有用な導電性組成物において、造粒黒鉛粒子(A1)のかさ密度ρ1は、通常、0.5~0.8g/cm3であること。」 (7)甲第7号証 ア 甲第7号証には、次の事項が記載されている(なお、下線は当審で付与した。)。 「【0059】 測定ポイントは、成形された燃料電池セパレータの予め決められたポイントであり、実施例1,2及び比較例1,2,3の全て同じ個所で、各20個所でマイクロメータにより測定した。厚みムラは、各測定ポイントの厚さが異なるので、各測定ポイントにおける標準厚さを0とし、標準より厚いか薄いかで表示し、最大と最小の差を求め、厚みムラ(面精度)とした。成形の状態は、超音波映像装置の画面を観察して疎密のムラの有無を判断した。 【0060】 実施例1,2ではともに厚みムラ(面精度)が0.04mmとなり、比較例1の0.2mm、比較例2の0.15mmと比べて非常に高精度になった。また、成形の状態では、比較例1,2では疎密のムラができたが、実施例1,2では良好であった。」 イ 上記アによれば、甲第7号証には、次の技術(以下、「甲第7号証に記載された技術」という。)が記載されている。 「燃料電池セパレータにおいて、マイクロメータにより測定した厚みムラ(面精度)が0.04mmであること。」 (8)甲第8号証 ア 甲第8号証には、次の事項が記載されている(なお、下線は当審で付与した。)。 「【0066】本発明の導電性硬化体としては、以下に述べる特性を有するものが好ましい。すなわち、体積固有抵抗は2×10-2Ωcm以下が好ましく、より好ましくは8×10-3Ωcm以下であり、特に燃料電池用セパレーター用途には5×10-3Ωcm以下が好適に用いられる。接触抵抗は2×10-2Ωcm2以下が好ましく、より好ましくは1×10-2Ωcm2以下であり、とりわけ7×10-3Ωcm2以下が好適である。熱伝導率は1.0W/m・K以上が好ましく、より好ましくは4.0W/m・K以上であり、とりわけ10W/m・K以上が好適である。また、燃料電池用セパレーターとして重要な特性値である通気率は1×10-6cm2/sec以下が好ましく、より好ましくは1×10-8cm2/sec以下であり、とりわけ1×10-9cm2/sec以下が好適である。」 イ 上記アによれば、甲第8号証には、次の技術(以下、「甲第8号証に記載された技術」という。)が記載されている。 「燃料電池用セパレーター用途の導電性硬化体において、接触抵抗は2×10-2Ωcm2以下が好ましく、より好ましくは1×10-2Ωcm2以下であり、とりわけ7×10-3Ωcm2以下が好適であること。」 2 申立理由1(進歩性)について (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と甲1発明Aとを対比する。 (ア)甲1発明Aの「導電材である鱗片状黒鉛」は本件発明1の「黒鉛粉末」に相当する。 (イ)甲1発明Aの「結合剤であるレゾール型フェノール樹脂」は、「結合剤」の主な材料といえるから、甲1発明Aと本件発明1とは、「主剤を含む樹脂成分」を含むものである点で共通する。 ただし、樹脂成分に関し、本件発明1は「硬化剤および硬化促進剤」を含む「エポキシ」樹脂成分であるのに対し、甲1発明Aは「レゾール型フェノール樹脂」である点で相違する。 (ウ)本件発明1は、「圧縮度(%)=100×(樹脂組成物のかため嵩密度-樹脂組成物のゆるみ嵩密度)/樹脂組成物のかため嵩密度」の式で求められる「圧縮度が14.0~40.0%」であるのに対し、甲1発明Aは「圧縮度」について特定されていない点で相違する。 (エ)本件発明1は、「沸点が100℃以下の揮発成分の含有量が1.00質量%未満」であるのに対し、甲1発明Aは「残留揮発分が3質量%」である点で相違する。 (オ)甲1発明Aにおいて、「結合剤であるレゾール型フェノール樹脂」を含む「燃料電池セパレータ用の造粒物」は、本件発明1の「燃料電池セパレータ用樹脂組成物」に相当する。 (カ)上記(ア)ないし(オ)より、本件発明1と甲1発明Aとは、 「黒鉛粉末、並びに主剤を含む樹脂成分を含む、燃料電池セパレータ用樹脂組成物。」である点で一致し、次の点で相違する。 (相違点1) 樹脂成分に関し、本件発明1は「硬化剤および硬化促進剤」を含む「エポキシ」樹脂成分であるのに対し、甲1発明Aは「レゾール型フェノール樹脂」である点。 (相違点2) 本件発明1は、「圧縮度(%)=100×(樹脂組成物のかため嵩密度-樹脂組成物のゆるみ嵩密度)/樹脂組成物のかため嵩密度」の式で求められる「圧縮度が14.0~40.0%」であるのに対し、甲1発明Aは「圧縮度」について特定されていない点。 (相違点3) 本件発明1は、「沸点が100℃以下の揮発成分の含有量が1.00質量%未満」であるのに対し、甲1発明Aは「残留揮発分が3質量%」である点。 イ 相違点に対する判断 事案に鑑み、まず相違点2から判断し、続けて相違点3について判断する。 (ア)相違点2について a 上記1(3)、(4)で述べたように、甲第3号証には、「圧縮度はもっとも流動性に相関のある物性値であり、圧縮度15%以下の場合、粉体の付着性はなく流動性は良好であること」の技術(「甲第3号証に記載された技術」)が記載され、甲第4号証には、「圧縮度(Compressibility lndex)の測定法が、粉体の流動特性を予測するための一般的な方法であり、流動性は圧縮率が10%以下であれば極めて良好であり、11~15%であれば良好であり、16~20%であればやや良好であることが流動性の尺度として一般的に認められていること」の技術(「甲第4号証に記載された技術」)が記載されている。 しかし、甲第3号証および甲第4号証には、「粉体」の流動性に関連する「圧縮度」について記載されているに過ぎず、「黒鉛粉末、並びに主剤、硬化剤および硬化促進剤を含むエポキシ樹脂成分を含」む「燃料電池セパレータ用樹脂組成物」に係る記載や示唆は見当たらない。 b そして、甲第1号証の段落【0009】、【0013】によれば、従来のフェノール樹脂等の熱硬化性樹脂と黒鉛とを主成分とする燃料電池セパレータは、必要な導電性を付与するため黒鉛を多量に添加しているのでコンパウンドの流れ性が悪いという問題があるところ、平均粒径が200~700μmであり、かつ所定の粒度分布を有すると共に、残留揮発分が4質量%以下の造粒物を用いることにより、流れ性が大幅に改善することが記載されており、平均粒径300μm、かつ5μm以上1000μm未満の幅広い粒度分布を有する甲1発明Aにおいて、あえて「圧縮度」を調整する理由も見当たらない。 c さらに、仮に、甲1発明Aにおける「造粒物」の圧縮度を、甲第3号証および甲第4号証に「粉体」の流動性が良好であると記載された「15%」、又は、甲第4号証に「粉体」の流動性がやや良好であると記載された「16~20%」に調整したとしても、甲1発明Aにおける「造粒物」の流れ性が向上することを裏付ける証拠は何等提出されていない。 d してみると、甲1発明Aに甲第3号証および甲第4号証に記載された技術を適用して「圧縮度」を調整すべき動機はなく、当業者が、甲1発明Aににおいて相違点2に係る構成を導き出すことはできないといえる。 e また、甲第2号証には、上記1(2)で述べた「甲第2号証に記載された技術」が記載されているものの、「樹脂組成物のかため嵩密度」及び「樹脂組成物のゆるみ嵩密度」に基づく「圧縮度」について何等記載されていないことから、甲1発明Aに甲第2号証に記載された技術を適用したとしても、相違点2に係る構成を導き出すことはできない。 f よって、相違点2に係る構成は、甲1発明A、及び、甲第2号証ないし甲第4号証に記載された技術に基づいて当業者が容易になし得たこととはいえない。 (イ)相違点3について 甲第1号証の段落【0033】の「次に、得られる造粒物を真空乾燥法、流動層乾燥法、ジェットドライヤー法又は加熱乾燥法で乾燥処理することにより、残留揮発分が4質量%以下であり、好ましくは1.5~4質量%の造粒物が得られる。ここで、造粒物の残留揮発分とは、130℃の赤外加熱炉で30分間乾燥させた場合の重量減少から求めた量である。残留揮発分が少なすぎると成形不良が増大し、特に巣穴ができやすくなる場合がある。」(下線は、当審が付与。)との記載によれば、甲1発明Aにおいても「残留揮発分」には下限値(1.5質量%)が存在し、該下限値より少ない「1質量%未満」に調整すべき動機はなく、むしろ阻害要因があるといえる。 してみれば、相違点3に係る構成は、甲1発明A、及び、甲第2号証ないし甲第4号証に記載された各技術に基づいて当業者が容易になし得たこととはいえない。 ウ 異議申立人の主張について (ア)異議申立人は、異議申立書において、甲第1号証、甲第3号証および甲第4号証を挙げて、概略次のように主張する。 a 「揮発成分」について 甲1発明における「造粒物の残留揮発分が4質量%以下」は、本件特許発明における「沸点が100℃以下の揮発成分の含有量が1.00質量%未満」に相当する。(18頁6ないし8行) b 「圧縮度」について 甲第1号証の段落[0013]に記載されているように、本件特許の出願時において、粉体の流動性が成形品の特性や寸法精度を左右することが知られていた。 ここで、甲第4号証の表2に記載されているように、粉体の圧縮度(%)は、粉体の流動性を予測するための簡便なパラメータとしてしばしば利用され、甲第3号証に記載されているように、“圧縮度”は、もっとも流動性に相関のある物性値である。 そうだとすれば、成形品の特性や寸法精度を改善するという既知の課題を解決するべく、Carrの流動性指数表を参照し、燃料電池セパレータ用樹脂組成物の圧縮度を「14.0~40.0%」に調整することは、単なる設計的事項にすぎない。(18頁17行ないし19頁6行) (イ)異議申立人の上記主張について検討する。 a 主張aについて 上記イ(イ)で述べたように、甲1発明Aにおける「残留揮発分」を「1質量%未満」に調整することにはむしろ阻害要因があるといえる。 したがって、異議申立人の主張aは採用できない。 b 主張bについて 上記イ(ア)で述べたように、そもそも甲第1号証、甲第3号証および甲第4号証には、「燃料電池セパレータ用樹脂組成物」の圧縮度を調整することは何等記載されておらず、また、甲第1号証に記載されていない「圧縮度」を甲1発明Aにおいてあえて調整する理由も見当たらないことから、甲1発明Aに甲第3号証および甲第4号証に記載された技術を適用して「圧縮度」を調整すべき動機はないといえる。 よって、異議申立人の主張bは採用できない。 エ 小括 以上から、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明、及び、甲第2号証ないし甲第4号証に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 (2)本件発明2について 請求項2は、請求項1を引用する請求項であり、本件発明2は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものである。 ここで、上記1(5)で述べたように、甲第5号証には、「甲第5号証に記載された技術」が記載されているものの、「樹脂組成物のかため嵩密度」及び「樹脂組成物のゆるみ嵩密度」に基づく「圧縮度」について何等記載されていない。 してみると、甲1発明Aに甲第5号証に記載された技術を適用したとしても、上記(1)アで述べた相違点2に係る構成を導き出すことはできない。 よって、上記(1)イで述べた本件発明1に対する判断も踏まえれば、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証ないし甲第5号証に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3)本件発明3について 請求項3は、請求項1を引用する請求項であり、本件発明3は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものである。 ここで、上記1(6)で述べたように、甲第6号証には、「甲第6号証に記載された技術」が記載されているものの、「樹脂組成物のかため嵩密度」及び「樹脂組成物のゆるみ嵩密度」に基づく「圧縮度」について何等記載されていない。 してみると、甲1発明Aに甲第6号証に記載された技術を適用したとしても、上記(1)アで述べた相違点2に係る構成を導き出すことはできない。 よって、上記(1)イで述べた本件発明1に対する判断も踏まえれば、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証ないし甲第4号証に記載された技術、及び、甲第6号証に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (4)本件発明4ないし6について 請求項4ないし6は、請求項1を引用する請求項であり、本件発明4ないし6は、本件発明1の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、本件発明4ないし6は、甲第1号証に記載された発明、及び、甲第2号証ないし甲第4号証に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 (5)本件発明7について ア 対比 本件発明7と甲1発明Bとを対比する。 (ア)甲1発明Bの「導電材である鱗片状黒鉛」は本件発明7の「黒鉛粉末」に相当する。また、甲1発明Bの「結合剤であるレゾール型フェノール樹脂」は、「結合剤」の主な材料といえるから、甲1発明Bと本件発明7とは、「主剤を含む樹脂成分」を含むものである点で共通する。 ただし、樹脂成分に関し、本件発明7は「硬化剤および硬化促進剤」を含む「エポキシ」樹脂成分であるのに対し、甲1発明Bは「レゾール型フェノール樹脂」である点で相違する。 そして、甲1発明Bの「結合剤であるレゾール型フェノール樹脂」を含む「造粒物」は、「燃料電池セパレータ」に用いられるから、本件発明7の「燃料電池セパレータ用樹脂組成物」に相当するところ、本件発明7の「燃料電池セパレータ用樹脂組成物」は、「圧縮度(%)=100×(樹脂組成物のかため嵩密度-樹脂組成物のゆるみ嵩密度)/樹脂組成物のかため嵩密度」の式で求められる「圧縮度が14.0~40.0%」であり、「沸点が100℃以下の揮発成分の含有量が1.00質量%未満」であるのに対し、甲1発明Bの「造粒物」は、「圧縮度」について特定されておらず、「残留揮発分が3質量%」である点で相違する。 してみると、甲1発明の「造粒物」と本件発明7の「燃料電池セパレータ用樹脂組成物」とは、「黒鉛粉末、並びに主剤を含む樹脂成分を含む燃料電池セパレータ用樹脂組成物」である点で共通する。 ただし、燃料電池セパレータ用樹脂組成物に関し、本件発明7は、「硬化剤および硬化促進剤」を含む「エポキシ」樹脂成分を含み、「圧縮度(%)=100×(樹脂組成物のかため嵩密度-樹脂組成物のゆるみ嵩密度)/樹脂組成物のかため嵩密度」の式で求められる「圧縮度が14.0~40.0%」であり、「沸点が100℃以下の揮発成分の含有量が1.00質量%未満」であるのに対し、甲7発明は、「レゾール型フェノール樹脂」を含み、「圧縮度」について特定されておらず、「残留揮発分が3質量%」である点で相違する。 (イ)本件発明7は「厚さムラが50μm未満、且つ、接触抵抗が7.00mΩ・cm 2未満」であるのに対し、甲1発明Bは「厚さムラ」及び「接触抵抗」について特定されていない点で相違する。 (ウ)甲1発明Bの「燃料電池セパレータ」は、本件発明7の「燃料電池セパレータ」に相当する (エ)上記(ア)ないし(ウ)より、本件発明7と甲1発明Bとは、 「黒鉛粉末、並びに主剤を含む樹脂成分を含み、燃料電池セパレータ用樹脂組成物を成形してなる燃料電池セパレータ。」である点で一致し、次の点で相違する。 (相違点4) 燃料電池セパレータ用樹脂組成物に関し、本件発明7は、「硬化剤および硬化促進剤」を含む「エポキシ」樹脂成分を含み、「圧縮度(%)=100×(樹脂組成物のかため嵩密度-樹脂組成物のゆるみ嵩密度)/樹脂組成物のかため嵩密度」の式で求められる「圧縮度が14.0~40.0%」であり、「沸点が100℃以下の揮発成分の含有量が1.00質量%未満」であるのに対し、甲1発明Bは、「レゾール型フェノール樹脂」を含み、「圧縮度」について特定されておらず、「残留揮発分が3質量%」である点。 (相違点5) 本件発明7は「厚さムラが50μm未満、且つ、接触抵抗が7.00mΩ・cm 2未満」であるのに対し、甲1発明Bは「厚さムラ」及び「接触抵抗」について特定されていない点。 イ 相違点に対する判断 (ア)相違点4における「燃料電池セパレータ用樹脂組成物」の「圧縮度が14.0~40.0%」である点、及び、「沸点が100℃以下の揮発成分の含有量が1.00質量%未満」である点は、上記相違点2及び相違点3に係る構成と同じである。 してみれば、上記(1)イで述べた本件発明1に対する判断と同様に、相違点4に係る構成は、甲1発明B、及び、甲第2号証ないし甲第4号証に記載された技術に基づいて当業者が容易になし得たこととはいえない。 (イ)また、上記1(7)、(8)で述べたように、甲7号証には「甲第7号証に記載された技術」が記載され、甲第8号証には「甲第8号証に記載された技術」が記載されているものの、甲第7号証及び甲第8号証には、「燃料電池セパレータ用樹脂組成物」の「圧縮度」に係る記載や示唆はない。 してみると、甲1発明Bに、甲第7号証に記載された技術及び甲第8号証に記載された技術を適用したとしても、相違点4に係る構成を導き出すことはできない。 ウ 小括 以上から、他の相違点を検討するまでもなく、本件発明7は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証ないし甲第4号証に記載された技術、甲第7号証に記載された技術、及び、甲第8号証に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 (6)本件発明8について ア 対比 本件発明8と甲1発明Cとを対比する。 (ア)甲1発明Cの「表面に燃料ガスの流路である溝部4」は、本件発明8の「表面の少なくとも一部にガス流路となる溝部」に相当する。 また、甲1発明Cの「凸部1a」における厚み厚く、「凹部」における厚みは薄いことは明らかであるから、該「凸部1a」及び「凹部」は、本件発明8の「厚肉部」および「薄肉部」にそれぞれ相当する。 してみれば、甲1発明Cにおける「表面に燃料ガスの流路である溝部4を構成する複数の凸部1aと各凸部1a間の凹部を有する燃料電池セパレータの製造方法」は、本件発明8の「表面の少なくとも一部にガス流路となる溝部を構成するための厚肉部および薄肉部を有する燃料電池セパレータの製造方法」に相当する。 (イ)甲1発明Cの「導電材である鱗片状黒鉛」は本件発明8の「黒鉛粉末」に相当する。また、甲1発明Cの「結合剤であるレゾール型フェノール樹脂」は、「結合剤」の主な材料といえるから、甲1発明Cと本件発明8とは、「主剤を含む樹脂成分」を含むものである点で共通する。 ただし、樹脂成分に関し、本件発明8は「硬化剤および硬化促進剤」を含む「エポキシ」樹脂成分であるのに対し、甲1発明Cは「レゾール型フェノール樹脂」である点で相違する。 そして、甲1発明Cの「結合剤であるレゾール型フェノール樹脂」を含む「造粒物」は、「燃料電池セパレータ」に用いられるから、本件発明8の「燃料電池セパレータ用樹脂組成物」に相当するところ、本件発明8の「燃料電池溶セパレータ用樹脂組成物」は、「圧縮度(%)=100×(樹脂組成物のかため嵩密度-樹脂組成物のゆるみ嵩密度)/樹脂組成物のかため嵩密度」の式で求められる「圧縮度が14.0~40.0%」であり、「沸点が100℃以下の揮発成分の含有量が1.00質量%未満」であるのに対し、甲1発明Cの「造立物」は、「圧縮度」について特定されておらず、「残留揮発分が3質量%」である点で相違する。 さらに、甲1発明Cは「該造粒物を燃料流路を有する形状に成形できるセパレータ成形金型内に充填する工程」を備えるものであるから、甲1発明Cと本件発明8とは、「燃料電池セパレータ用樹脂組成物を、燃料電池セパレータ用金型に投入する工程」を備えるものである点で共通する。 ただし、燃料電池セパレータ用金型に投入する工程に関し、本件発明8は、「投入質量が、前記燃料電池セパレータの前記厚肉部と薄肉部の体積比に近似する体積比となるように」金型に投入するのに対し、甲1発明Cは「投入質量」について特定されていない点で相違する。 してみると、甲1発明Cと本件発明8とは、「黒鉛粉末、並びに主剤を含む樹脂成分を含む燃料電池セパレータ用樹脂組成物を、燃料電池セパレータ用金型に投入する工程」を備えるものである点で共通する。 ただし、燃料電池セパレータ用金型に投入する工程に関し、本件発明8は、「硬化剤および硬化促進剤」を含む「エポキシ」樹脂成分を含み、「圧縮度(%)=100×(樹脂組成物のかため嵩密度-樹脂組成物のゆるみ嵩密度)/樹脂組成物のかため嵩密度」の式で求められる「圧縮度が14.0~40.0%」であり、「沸点が100℃以下の揮発成分の含有量が1.00質量%未満」である燃料電池セパレータ用樹脂組成物を、「投入質量が、前記燃料電池セパレータの前記厚肉部と薄肉部の体積比に近似する体積比となるように」燃料電池セパレータ用金型に投入するのに対し、甲1発明Cは「レゾール型フェノール樹脂」を含み、「圧縮度」や「投入質量」について特定されておらず、「残留揮発分が3質量%である造粒物」を「燃料流路を有する形状に成形できるセパレータ成形金型内に充填する」点で相違する。 (ウ)上記(ア)、(イ)により、本件発明8と甲1発明Cとは、 「表面の少なくとも一部にガス流路となる溝部を構成するための厚肉部および薄肉部を有する燃料電池セパレータの製造方法であって、 黒鉛粉末、並びに主剤を含む樹脂成分を含む燃料電池セパレータ用樹脂組成物を、燃料電池セパレータ用金型に投入する工程を備える燃料電池セパレータの製造方法。」である点で一致し、次の点で相違する。 (相違点6) 燃料電池セパレータ用金型に投入する工程に関し、本件発明8は、「硬化剤および硬化促進剤」を含む「エポキシ」樹脂成分を含み、「圧縮度(%)=100×(樹脂組成物のかため嵩密度-樹脂組成物のゆるみ嵩密度)/樹脂組成物のかため嵩密度」の式で求められる「圧縮度が14.0~40.0%」であり、「沸点が100℃以下の揮発成分の含有量が1.00質量%未満」である燃料電池セパレータ用樹脂組成物を、「投入質量が、前記燃料電池セパレータの前記厚肉部と薄肉部の体積比に近似する体積比となるように」燃料電池セパレータ用金型に投入するのに対し、甲1発明Cは「レゾール型フェノール樹脂」を含み、「圧縮度」や「投入質量」について特定されておらず、「残留揮発分が3質量%である造粒物」を「燃料流路を有する形状に成形できるセパレータ成形金型内に充填する」点。 イ 相違点に対する判断 (ア)相違点6における「燃料電池セパレータ用樹脂組成物」の「圧縮度が14.0~40.0%」である点、及び、「沸点が100℃以下の揮発成分の含有量が1.00質量%未満」である点は、上記相違点2及び相違点3に係る構成と同じである。 してみれば、上記(1)イで述べた本件発明1に対する判断と同様に、相違点6に係る構成は、甲1発明C、及び、甲第2号証ないし甲第4号証に記載された技術に基づいて当業者が容易になし得たこととはいえない。 (イ)そして、上記1(7)で述べたように、甲第7号証には「甲第7号証に記載された技術」が記載されているものの、甲第7号証には、「燃料電池セパレータ用樹脂組成物」の「圧縮度」に係る記載や示唆はない。 してみると、甲1発明Cに、甲第7号証に記載された技術を適用したとしても、相違点6に係る構成を導き出すことはできない。 ウ 小括 以上から、本件発明8は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証ないし甲第4号証に記載された技術、及び、甲第7号証に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 (7)本件発明9について 請求項9は、請求項8を引用する請求項であり、本件発明9は、本件発明8の発明特定事項をすべて含みさらに他の発明特定事項を追加して限定したものであるから、上記本件発明8についての判断と同様の理由により、本件発明9は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証ないし甲第4号証に記載された技術、及び、甲第7号証に記載された技術に基づいて当業者が容易に発明できたものではない。 (8)まとめ 以上から、請求項1に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証ないし甲第4号証に記載された技術に基づいて、請求項2に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証ないし甲第5号証に記載された技術に基づいて、請求項3に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証ないし甲第4号証に記載された技術、及び、甲第6号証に記載された技術に基づいて、請求項4ないし6に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証ないし甲第4号証に記載された技術に基づいて、請求項7に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証ないし甲第4号証に記載された技術、甲第7号証に記載された技術、及び、甲第8号証に記載された技術に基づいて、請求項8、9に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、甲第2号証ないし甲第4号証に記載された技術、及び、甲第7号証に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではないから、請求項1ないし9に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものではない。 3 申立理由2(明確性)について (1)異議申立人の主張 異議申立人は特許異議申立書において、概略次のように主張する。 本件特許発明1は、「下式で求められる圧縮度が14.0~40.0%であり」の要件を具備する。本件特許の明細書の段落【0014】には「なお、本発明において、上記圧縮度の算出に用いる樹脂組成物のゆるみ嵩密度(g/cc)およびかため嵩密度(g/cc)は、ホソカワミクロン(株)製パウダーテスターPT-Sによる測定値であり、ゆるみ嵩密度は振動時間30秒の条件での測定値であり、かため嵩密度はタッピング回数180回の条件での測定値である。」と記載されている。 甲4には、圧縮度が粉体に固有な特性値ではなく、用いた測定法に依存することが示されている。本件特許の明細書に記載されたホソカワミクロン(株)製パウダーテスタPT-Sにおいて、タップの高さ(タップストローク)は任意に変更可能であり、タップの高さに応じて測定値が変化する。本件特許の明細書には、「かため嵩密度」を測定する際のタップの高さが明らかにされていないため、「圧縮度が14.0~40.0%」の要件によって規定される権利範囲が曖昧である。(25頁13ないし26行) (2)当審の判断 ア ホソカワミクロン製の「パウダーテスタPT-S」におけるタッピングのストローク長が標準の仕様で「18mm」であることも普通に知られており(ホソカワミクロン株式会社 粉体システムカンパニー、「新製品紹介 粉体特性評価測定装置 パウダテスタPT-S」、N047、2003年、90頁右下欄、[2025年9月22日検索]、インターネット<URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/micromeritics/47/0/47_2003015/_pdf/-char/ja>)、また、ホソカワミクロン製の「パウダーテスタ」を用いて、かため嵩密度を測定する場合、タッピング回数180回、タップの高さを18mmの条件で測定することは慣用的に行われている(例えば、特開2023-138477号公報の段落【0164】、特開2021-85433号公報の段落【0021】、特開2018-104644号公報の段落【0030】、特開2011-231007号公報の段落【0061】を参照。) してみると、本件特許明細書の段落【0014】に記載された「ホソカワミクロン(株)製パウダーテスタPT-S」による「かため嵩密度」の測定の際、タップの高さは18mm程度に設定されるものと解される。 イ また、本件発明1の「圧縮度」である「14.0~40.0%」の数値範囲自体明確である。 ウ よって、本件特許明細書に「かため嵩密度」を測定する際の「タップの高さ」が明らかにされていないとしても、「圧縮度が14.0~40.0%」によって規定される権利範囲が曖昧であるとはいえない。 エ 以上から、特許異議申立人の上記主張は採用することはできず、また、本件特許明細書の記載を考慮し、また、出願当時の技術常識に照らして、本件発明1ないし9が、第三者に不測の不利益を与えるほどに不明確であるとまではいえないから、本件請求項1ないし9に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。 第5 むすび 以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし9に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1ないし9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700692

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