特許異議申立
2025-700129
皮膚外用剤
- 審判番号
- 2025-700129
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2019-085189
- 登録番号
- 7523892
- 請求日
- 2025年01月29日
- 審決日
- 2026年03月06日
- 公報発行日
- 2026年06月26日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社ノエビア
- 【権利者代理人】三好 秀和
- 【異議申立人】松村 朋子
- 審判長/審判官
- 審判長 阪野 誠司
- 審判官 冨永 保
- 審判官 常見 優
- 分類
- P1651.113-YAA(A61K) / P1651.121-YAA(A61K) / P1651.537-YAA(A61K) / P1651.841-YAA(A61K) / P1651.851-YAA(A61K) / P1651.854-YAA(A61K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第126条第6項、特許法第126条第7項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7523892号発明「皮膚外用剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7523892号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〕について訂正することを認める。
特許第7523892号の請求項1に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7523892号の請求項1に係る特許(以下「本件特許」ということがある。)についての出願は、平成31年4月26日に出願され、令和6年7月19日にその特許権の設定登録がされ、同年7月29日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許について、令和7年1月29日に特許異議申立人 松村 朋子 (以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審合議体は、同年8月5日付けで取消理由を通知した。特許権者は、その指定期間内である同年10月9日に意見書の提出及び訂正請求を行い、当審合議体からの同年同月21日付けの訂正があった旨の通知に対して、申立人は、同年11月21日に意見書を提出した。
第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
本件訂正請求の「請求の趣旨」は、「特許第7523892号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1について訂正することを求める。」というものであり、その訂正の内容(以下「訂正事項」ともいう。)は、本件訂正請求書の記載及び本件訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の記載からみて、以下の訂正事項からなる(下線は、訂正による記載の変更箇所を示す。)。
<訂正事項>
特許請求の範囲の請求項1に、
「(A):窒化ホウ素、硫酸バリウム、球状シリカ、球状炭酸カルシウム、球状セルロース、球状スターチ、球状化工デンプン及び球状シルクから選択される1種又は2種以上
(B):平均粒子径が0.1~20μmである球状ガラスビーズ」
と記載されているのを、
「(A):球状硫酸バリウム、球状シリカ、球状炭酸カルシウム、球状セルロース、球状スターチ、球状化工デンプン及び球状シルクから選択される1種又は2種以上
(B):平均粒子径が0.1~20μmである球状中実ガラスビーズ」
に訂正する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1) 訂正の目的の適否について
訂正事項は、訂正前の請求項1に係る発明において、成分(A)のうち「窒化ホウ素」を削除し、成分(A)のうち「硫酸バリウム」を「球状硫酸バリウム」に特定し、成分(B)について「球状ガラスビーズ」を「球状中実ガラスビーズ」に特定するものであり、成分(A)及び成分(B)をそれぞれ減縮するものである。
よって、当該訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
(2) 新規事項の有無について
訂正事項における「窒化ホウ素」を削除する訂正は、成分(A)の選択肢の一つを削除するものであるから、新たな技術的事項が導入されるものではない。
また、本件特許の願書に添付した明細書の発明の詳細な説明には、成分(A)について、段落【0012】において、「硫酸バリウムは通常の皮膚外用剤に用いられるものであれば特に制限されずに使用することができる。硫酸バリウムの形状としては、板状の他、バタフライ状、アモルファス状、球状等のものを使用することができる。」と記載され、段落【0018】において、「球状シリカ、球状炭酸カルシウム、球状硫酸バリウム、球状セルロース、球状スターチ及び球状化工デンプンは球状粉体である。」と記載されている。それゆえ、訂正事項における成分(A)のうち「硫酸バリウム」を「球状硫酸バリウム」に特定する訂正は、上記記載から導き出せる事項である。
さらに、成分(B)について、段落【0028】には、「球状ガラスビーズは、中空ガラスビーズ及び中実ガラスビーズのいずれであってもよく、それらを併用して用いてもよいが、中実ガラスビーズを含むことが好ましい。」と記載されているから、訂正事項における成分(B)の「球状ガラスビーズ」を「球状中実ガラスビーズ」に特定する訂正は、上記記載から導き出せる事項である。
したがって、訂正事項に係る訂正は、本件特許の願書に添付した明細書、又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であって、新規事項に追加に該当しないから、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5項に適合するものである。
(3) 特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項は、上述のとおり、成分(A)及び成分(B)を減縮するものであり、カテゴリーや対象、目的を変更するものではない。
よって、訂正事項に係る訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項に適合するものである。
3 独立特許要件について
本件特許異議申立においては、訂正前の全ての請求項である請求項1について特許異議の申立てがされているので、訂正前の請求項1について、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項に規定する要件(いわゆる「独立特許要件」)は課されない。
4 小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1に係る発明(以下「本件発明」ともいう。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
(A)及び(B)を含有する皮膚外用剤(ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチルクロスポリマー及びナイロン-12から選択される1種又は2種以上の粉体を含有する皮膚外用剤を除く)。
(A):球状硫酸バリウム、球状シリカ、球状炭酸カルシウム、球状セルロース、球状スターチ、球状化工デンプン及び球状シルクから選択される1種又は2種以上
(B):平均粒子径が0.1~20μmである球状中実ガラスビーズ」
第4 特許異議申立理由及び取消理由の概要
1 特許異議申立理由の概要
申立人は、証拠方法として、特許異議申立書(以下「申立書」という。)に添付して下記(4)に示す甲第1~16号証(枝番含む。以下「甲1」等ということがある。)、及び令和7年11月21日に意見書に添付して参考資料1を提出し、本件訂正前の請求項1に係る特許を取り消すべき理由として、下記(1)~(3)に示す特許異議の申立ての理由(以下「申立理由」という。)を主張している。
申立理由の概要は、申立書の記載全体からみて、以下のとおりであると認められる。
(1) 申立理由1(新規性欠如)
訂正前の請求項1に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、下記の甲第1~4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、上記請求項に係る特許は、同法同条同項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(2) 申立理由2(進歩性欠如)
訂正前の請求項1に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、下記の甲第1~4号証に記載された発明及び甲第10~16号証の記載に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
(3) 申立理由3(サポート要件違反)
訂正前の請求項1に係る発明は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明に記載したものでないから、上記請求項に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たさない特許出願に対してされたものであり、同法第113条第4号に該当し、取り消されるべきものである。
(4)甲号証等一覧
甲第1号証:特開2018-70514号公報
甲第2号証:米国特許出願公開第2006/0115439号明細書
甲第3号証:米国特許出願公開第2011/0293543号明細書
甲第4号証:国際公開第2008/132042号
甲第5号証:国際公開第2009/113522号
甲第6号証:「SILISPHERE Spherical Silica」、[Online]、[令和7年1月17日検索]、インターネット、<URL:https://arganco.com/wp-content/uploads/2023/03/SILISPHERE.pdf_1680215991.pdf>
甲第7号証:「presperse 2024 PRODUCT CATALOG」、[Online]、[令和7年1月17日検索]、インターネット、<URL:https://www.letsmakebeauty.com/media/presperse/catalog/Presperse_2024_Catalog.pdf>
甲第8号証:「Cospheric PRECIS10N SPHERICAL PARTICLES GLOBALLY」、[online]、[令和7年1月24日検索]、インターネット、<URL:https://www.cospheric.com/P2000_solid_soda_lime_glass_spheres_beads.htm>
甲第9号証:「世界のウェブアーカイブ|国立国会図書館インターネット資料収集保存事業」、[online]、2013年10月21日、[令和7年1月24日検索]、インターネット、<URL:https://web.archive.org/web/20131021213111/https://www.cospheric.com/P2000_solid_soda_lime_glass_spheres_beads.htm>
甲第9号証の1:「世界のウェブアーカイブ|国立国会図書館インターネット資料収集保存事業」、[online]、2013年10月21日、[令和7年1月24日検索]、インターネット、<URL:https://web.archive.org/web/20131021213111/https://www.cospheric.com/P2000_solid_soda_lime_glass_spheres_beads.htm>
(補足:甲第9号証の1(以下「甲9の1」ともいう。)は甲第9号証を拡大印刷したものであり、甲第9号証と同一内容の証拠である。)
甲第10号証:「化粧品の恐ろしい真実その10「合成ポリマー」」、[Online]、[令和7年1月19日検索]、インターネット、<https://ameblo.jp/luvp/entry-12213439643.html>
甲第11号証:「誤解されやすい「合成ポリマー」メリット・デメリットは?」、[Online]、[令和7年1月19日検索]、インターネット、<https://sappho.jp/wp/kougi/kougi_554.html>
甲第12号証:「Technical Data Sheet Covabead Crystal」、[Online]、[令和7年1月17日検索]、インターネット、<URL:https://chemical-centre.com/f/covabead_crystal_tds.pdf>
甲第13号証:特開2004-315468号公報
甲第14号証:特開2010-270073号公報
甲第15号証:特開平4-74109号公報
甲第16号証:特開昭59-10508号公報
参考資料1:特開平6-321726号公報
2 取消理由の概要
訂正前の請求項1に係る特許に対して、当審合議体において、令和7年8月5日に特許権者に通知した取消理由の概要は、次のとおりである。
(1) 取消理由1(新規性欠如)
訂正前の請求項1に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、下記の甲第1~4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから、上記請求項に係る特許は、同法同条同項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(2)取消理由2(進歩性欠如)
訂正前の請求項1に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、下記の甲第1~4号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、上記請求項に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。
(3) 甲号証等一覧
甲第1号証:特開2018-70514号公報
甲第2号証:米国特許出願公開第2006/0115439号明細書
甲第3号証:米国特許出願公開第2011/0293543号明細書
甲第4号証:国際公開第2008/132042号
甲第5号証:国際公開第2009/113522号
甲第6号証:「SILISPHERE Spherical Silica」[Online]、[令和7年1月17日検索]、インターネット、<URL:https://arganco.com/wp-content/uploads/2023/03/SILISPHERE.pdf_1680215991.pdf>
甲第7号証:「presperse 2024 PRODUCT CATALOG」[Online]、[令和7年1月17日検索]、インターネット、<URL:https://www.letsmakebeauty.com/media/presperse/catalog/Presperse_2024_Catalog.pdf>
甲第8号証:「Cospheric PRECIS10N SPHERICAL PARTICLES GLOBALLY」[online]、[令和7年1月24日検索]、インターネット、<URL:https://www.cospheric.com/P2000_solid_soda_lime_glass_spheres_beads.htm>
甲第9号証の1:「世界のウェブアーカイブ|国立国会図書館インターネット資料収集保存事業」、[online]、2013年10月21日、[令和7年1月24日検索]、インターネット、<URL:https://web.archive.org/web/20131021213111/https://www.cospheric.com/P2000_solid_soda_lime_glass_spheres_beads.htm>
第5 当審合議体における判断
当審合議体は、本件訂正後の請求項1に係る特許は、上記申立理由及び取消理由によっては、取り消されるべきものではないと判断する。
その理由は次のとおりである。
1 甲号証等の記載事項
甲1~16及び参考資料1の記載事項を、上記申立理由及び取消理由の判断に必要な範囲で以下に摘記する(外国語で記載された文献については、申立人が提出した訳文を参考にした当審合議体による訳文にて摘記する。なお、下線は当審合議体が付したものであり、「・・・」は摘記の省略を示す。)。
(1) 甲1の記載事項
甲1には、次の事項が記載されている。
ア 甲1a
「【0001】
本発明は、皮膚等のケラチン物質に塗布される組成物、並びにそれらの使用に関する。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一目的は、ケラチン物質にケラチン物質上の欠陥の十分な被覆性を与える一方で、ケラチン物質に明るさ及び自然な仕上がりを与えることができる、皮膚等のケラチン物質のための組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的は、皮膚等のケラチン物質のための組成物であって、
(a)粒径が10μm以下、好ましくは5μm以下、より好ましくは3μm以下である少なくとも1種の板状フィラー、
(b)粒径が15μm以下、好ましくは12μm以下、より好ましくは10μm以下である少なくとも1種の真珠光沢顔料、及び
(c)少なくとも1種の中空又は多孔質粒子
を含み、
(a)板状フィラーが、屈折率が2.0以下、好ましくは1.9以下、より好ましくは1.8以下であり、
(b)真珠光沢顔料が、有色の反射光を有する、組成物により達成することができる。
・・・
【0011】
(a)板状フィラーは、窒化ホウ素、硫酸バリウム、オキシ塩化ビスマス、アルミナ、並びに、酸化チタンと、タルク、マイカ、硫酸バリウム、窒化ホウ素、オキシ塩化ビスマス、アルミナ、又はそれらの混合物を含む基材とをベースとする複合粉末からなる群から選択される少なくとも1種の無機材料を含むことができる。
・・・
【0018】
(c)中空又は多孔質粒子は、粒径が15μm以下、好ましくは12μm以下、より好ましくは10μm以下となり得る。
【0019】
(c)中空又は多孔質粒子は、マイカ、合成マイカ、タルク、セリサイト、窒化ホウ素、ガラス、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、ヒドロキシアパタイト、シリカ、シリケート、ホウケイ酸カルシウムナトリウム、酸化亜鉛、硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、トリケイ酸マグネシウム、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、リン酸カルシウム、酸化マグネシウム、オキシ塩化ビスマス、カオリン、ヒドロタルサイト、鉱物クレイ、合成クレイ、酸化鉄、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の無機材料を含むことができる。
・・・
【0028】
本発明による組成物は、着色顔料を用いる必要がないことから、強く着色されない可能性がある。よって、本発明による組成物は、スキンケア化粧料に好ましい。一方、本発明による組成物は、皮膚メイクアップ化粧料として用いることは好ましくない。したがって、一実施形態では、本発明による組成物は、スキンケア化粧用組成物となり得、皮膚メイクアップ化粧用組成物となり得ない。」
イ 甲1b
「【0031】
(板状フィラー)
本発明による組成物は、限定された粒径及び限定された屈折率を有する少なくとも1種の(a)板状フィラーを含む。単一のタイプの(a)板状フィラーを用いてもよく、又は2種以上の異なるタイプの(a)板状フィラーを組み合わせて用いてもよい。
・・・
【0035】
(a)板状フィラーは、その特徴的な屈折率のために、適切な被覆レベルを与えることによって皮膚等のケラチン物質の自然な明色化に寄与し得る。屈折率が2.0を超える従来の白色顔料、例えば二酸化チタンの使用は、強すぎて不自然な外観を引き起こし得る明るさを与え得ることを留意すべきである。粒径が10μmを超える従来の板状フィラーの使用は、ケラチン物質を十分に被覆することができず、十分な明るさを与えることができないことも留意すべきである。
・・・
【0040】
(a)板状フィラーは、窒化ホウ素、硫酸バリウム、オキシ塩化ビスマス、アルミナ、並びに、酸化チタンと、タルク、マイカ、硫酸バリウム、窒化ホウ素、オキシ塩化ビスマス、アルミナ、又はそれらの混合物を含む基材とをベースとする複合粉末からなる群から選択される少なくとも1種の無機材料を含むことがより好ましい。」
ウ 甲1c
「【0061】
(中空又は多孔質粒子)
本発明による組成物は、少なくとも1種の(c)中空又は多孔質粒子を含む。単一のタイプの(c)中空又は多孔質粒子を用いてもよく、又は2種以上の異なるタイプの(c)中空又は多孔質粒子を組み合わせて用いてもよい。
・・・
【0063】
(c)中空又は多孔質粒子は、ケラチン物質の色を均一にし、そのぼかし効果によってケラチン物質上の欠陥を見えにくくすることに寄与し得る。したがって、(c)中空又は多孔質粒子は、ケラチン物質の被覆性を向上させ、十分な明るさを与えることができる。
【0064】
粒径は、平均体積直径(D[0.5])として表される。
【0065】
(c)中空又は多孔質粒子は、粒径が15μm以下、好ましくは12μm以下、より好ましくは10μm以下であることが好ましいこともある。
【0066】
(c)中空又は多孔質粒子は、任意の形状となり得る。例えば、アスペクト比が少なくとも5である、好ましくは10を超える、より好ましくは20を超える、更により好ましくは50を超える板の形態の中空又は多孔質粒子を用いることが可能である。アスペクト比は、アスペクト比=長さ/厚さの式に従って、平均厚さ及び平均長さによって決定することができる。
・・・
【0068】
好ましい実施形態では、(c)中空又は多孔質粒子は、球状である。
【0069】
(c)中空又は多孔質粒子の材料は限定されない。(c)中空又は多孔質粒子の材料は、少なくとも1種の有機材料及び少なくとも1種の無機材料から選択することができる。
・・・
【0074】
(c)中空又は多孔質粒子は、少なくとも1種の無機材料を含むことが好ましい。
【0075】
(c)中空又は多孔質粒子は、マイカ、合成マイカ、タルク、セリサイト、窒化ホウ素、ガラス、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化チタン、ヒドロキシアパタイト、シリカ、シリケート、ホウケイ酸カルシウムナトリウム、酸化亜鉛、硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、トリケイ酸マグネシウム、酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、リン酸カルシウム、酸化マグネシウム、オキシ塩化ビスマス、カオリン、ヒドロタルサイト、鉱物クレイ、合成クレイ、酸化鉄、及びそれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の無機材料を含むことが好ましいこともある。
【0076】
特に、シリカ及びホウケイ酸カルシウムナトリウムがより好ましい。
・・・
【0079】
(c)中空又は多孔質粒子の例として、Potters Industries社により販売されているLuxsil Cosmetics Microspheres、AGCエスアイテック株式会社により販売されているSunspheres H-51、H-53、H-31、及びH-33、Dow Chemical社により販売されているSunspheres Powder、Sensient社により販売されているCovabead LH85、並びにDow Corning社により販売されているDow Corning VM-2270 Aerogel Fine particlesを挙げることができる。」
エ 甲1d
「【実施例】
【0237】
本発明を、例として更に詳しく記載する。しかしながら、これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものと解釈するべきではない。
【0238】
(実施例1~2及び比較例1~6)
[調製]
実施例1~2及び比較例1~6による組成物のそれぞれを、表1に示す成分を混合することによって調製した。成分の量の数値はすべて、活性原料の「質量%」に基づいている。
【0239】
【表1】
[図:0001436162000001.jpg]
【0240】
(反射光の色)
真珠光沢顔料1:青色
真珠光沢顔料2:青色
【0241】
(平均粒径)
窒化ホウ素1:約2μm
真珠光沢顔料1:約7μm
窒化ホウ素2:約11μm
真珠光沢顔料2:約20μm
【0242】
(屈折率)
窒化ホウ素1:1.74
窒化ホウ素2:1.74
二酸化チタン:約2.5
【0243】
[評価]
実施例1~2及び比較例1~6による組成物のそれぞれ0.2gを、6名の判定士の顔の半分に塗布して、塗布後の皮膚上の跡、明るさ、しみの隠蔽、毛穴及び起伏の隠蔽、並びに皮膚のてかりに関して、顔の塗布した半分と素肌との差を次の基準に基づいて評価した。
【0244】
弱い:ほとんど目立たない
中程度:いくらか目立つ
強い:目立つ
非常に強い:明らか
【0245】
結果を表2に示す。
【0246】
【表2】
[図:0001436162000002.jpg]
【0247】
表1及び表2に示す実施例1~2と比較例1~6との比較から、(a)粒径が10μm以下であり、屈折率が2.0以下である板状フィラー、(b)粒径が15μm以下であり、有色の反射光を有する真珠光沢顔料、及び、(c)中空又は多孔質粒子の組合せは、皮膚にぎらぎらした外観及び不自然な仕上がりを与えることなく、皮膚の色の欠点、例えばしみ並びに/又は皮膚上の微小起伏、例えば毛穴及び小じわの可視性を低下させて、皮膚に明るさを与えることができるということが認められる。
・・・
【0255】
(実施例3)
[調製]
実施例3による組成物(実施例3)を、表3に示す成分を混合することによって調製した。成分の量の数値はすべて、活性原料の「質量%」に基づいている。
【0256】
【表3】
[図:0001436162000003.jpg]
【0257】
実施例3による組成物は、皮膚の色の欠点、例えばしみの可視性を低下させ、更に毛穴及び小じわを隠蔽する一方で、自然な仕上がり及び組成物の半透明な外見を与えることができた。」
(2) 甲2の記載事項
甲2には、次の事項が記載されている。
ア 甲2a
「 発明の概要
[0005] 本発明は、少なくとも1種のシリコーン樹脂及びガラスビーズを含む組成物、好ましくは化粧品組成物、並びに、そのような組成物をケラチン物質に適用することにより、ケラチン物質を、処理、ケア及び/又はメイクアップする方法に関する。
・・・
[0007] 本発明はさらに本発明の組成物を皮膚の欠陥を覆う又は隠すのに十分な量でケラチン物質に塗布することにより、ケラチン物質(例えば、皮膚)に関連する皮膚の欠陥を覆う又は隠すことにも関する。
[0008] 本発明はまた、本発明の組成物をケラチン物質の外観を向上させるのに十分な量でケラチン物質に塗布することにより、ケラチン物質(例えば、皮膚)の外観を向上させる方法に関する。
[0009] 本発明はさらに、例えば、改善された持続性、耐移り性又は防水性などの改善された化粧品特性を有する組成物に関する。組成物は、柔軟性、耐摩耗性、乾燥時間、保持力、粘着性(低)、および経時的な移行(低)も改善される可能性がある。」
イ 甲2b
「 本発明の詳細な説明
[0010] ・・・
・・・
[0030] 本発明の一態様によれば、シリコーン樹脂を含む組成物はさらにガラスビーズを含み、ガラスビーズはすべてが1種類のガラスビーズであってもよく、ガラスビーズの混合物であってもよい。使用されるガラスビーズは、化粧品用途に使用可能であり、例えば、ホウケイ酸カルシウム、ホウケイ酸カルシウムアルミニウム、及び/又は、ホウケイ酸ナトリウムなどのホウケイ酸塩から作られたガラスビーズである。・・・。許容されるガラスビーズは、中実又は中空、無色又は着色、コーティングされた又はコーティングされていないものであり得る。さらにガラスビーズはどんな形状でも構わない。好ましくは、ガラスビーズは実質的に球形又は卵形の形状を有し、これにより、組成物に適用時に柔らかい感触を与えることができ、また、組成物全体にわたって粒子をより完全に分散させることができる。
[0031] 一実施形態によれば、ガラスビーズ(又は微小球)は、本質的に均質であり、真球度が本質的に均―である。
[0032] 好ましくは、ガラスビーズは、約0.5μm~約300μm、より好ましくは約lμm~約200μrm、最も好ましくは約5μm~約50μmの範囲の平均サイズを有する。一般的に言えば、ビーズのサイズが小さいほど、ビーズの保持力が高くなり、したがつて組成物の耐移り性が高くなる。
・・・
[0034] 本発明による化粧用ガラス微小球の例は、Preserse社によりLUXSIL(登録商標)の商標で販売されている、ホウケイ酸カルシウムアルミニウムの非晶質中空微小球が挙げられる。これは、高滑り性、化学的に不活性、非吸収性、非多孔性、自由流動性の白色粉末であり、本質的に均一な球形をしており、平均粒子サイズは9~13μmである。
[0035] 典型的な粒子サイズ分布は以下のとおりである:
[図:0001436162000004.jpg]
」
ウ 甲2c
「[0038] 本発明による他の適切なガラス微小球には、中空、中実、またはその他の形状を問わず、PQ CorporationがQ-CEL 570という商標で販売している、粒度が20μm程度のホウケイ酸ナトリウム粒子が含まれる。また、3M社がES 22およびlKの商標で販売している、粒度が最大70μmのホウケイ酸カルシウム/ナトリウム中空マイクロスフィア、および3M社のスコッチライトK20製品である、平均粒子サイズがl0μm程度のホウケイ酸カルシウム/ナトリウムマイクロスフィアも適している。本発明で使用できるガラスビーズ(またはマイクロスフィア)のさらなる例としては、国際公開第03/045345号に記載されているものが挙げられ、その関連内容は参照により本明細書に組み込まれる。」
エ 甲2d
「 実施例
[0084] 以下の実施例は、本発明の範囲内の実施形態をさらに説明し実証する。本実施例は、説明の目的のみで示されており、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく多くの変形が可能であることから、本発明を制限するものとして解釈されるべきではない。別途指定がない限り、例示された量はすべて組成物全体の重量基準の濃度である。
[図:0001436162000005.jpg]
手順:
1.相Aの材料を混合し、氷水浴中で6000~7000rpmで30~40分間、Silversonにより粉砕する。
2.相B1の成分を一度に加え、Silversonにより6000rpmでよく混合する。
3.ブチルパラベン及びBenton 38Vを加え、Silversonにより6000rpmで混合して良好な分散状態になるまで撹拌し、次に、炭酸プロピレンを加え6000~7000rpmで10~15分間混合する。
4.メインビーカーをSilversonからホモジナイザーに移し、内容物を25~30℃ に温める。
5.別のビーカーで、相Cを40~45℃に加熱する。均一化後、内容物を25~30℃まで冷却する。
6.25~30℃で相Cをメインビーカーにゆっくりと加えて、エマルジョンを形成する。30%で5分間ホモジナイズする。」
(3) 甲3の記載事項
甲3には、次の事項が記載されている。
ア 甲3a
「 分野
[0001] 本発明は、ジベンゾイルメタン及び着色顔料を含む化粧品組成物などの着色化粧品組成物に関する。
・・・
発明の概要
[0005] 本発明は、無水着色化粧品組成物に関するものであり、(1)ワックス成分、油成分及びワックス成分並びに油成分に溶解した有機UVフィルター成分を含む化粧品として許容される疎水性ビヒクルであって、有機UVフィルター成分はジベンゾイルメタン化合物を含み、着色化粧品組成物の少なくとも約15%の重量濃度で存在するもの、及び、(2)疎水性ビヒクル中に分散され、実質的に不溶性の粉末成分であって、粉末成分は着色化粧品組成物の少なくとも約0.1%の重量濃度で存在する着色顔料及び油吸収性粉末を含むもの、を含む。
発明の詳細な説明
[0006] ・・・。特に断りのない限り、パーセンテージは、本発明の着色化粧品組成物の重量パーセンテージ(すなわち、%(w/w))を指す。
・・・
[0010] 本発明の組成物は、皮膚、特に、唇、瞼、アイライン、を含む、顔、及び、着色化粧品が通常使用されるその他の体表面、への塗布に有用である。特定の好ましい実施形態では、本組成物は、いわゆる「ファンデーション」として使用され、これは、一般に顔全体に(例えば、ブラシ、パッド、スポンジ、又は、同様の多孔質アプリケーターを介して)塗布される着色化粧品であり、その上に必要に応じて追加の化粧品を塗布してもよい。別の好ましい実施形態では、本組成物は「コンシーラー」として使用され、典型的にはファンデーションの塗布の前に、例えば、年齢やニキビ痕や傷痕を隠すために使用される。さらに別の実施形態では、本組成物は唇の治療薬として使用される。さらに別の実施形態では、本組成物は、ファンデーション及び/又はコンシーラーの下の皮膚に直接塗布する「プライマー」として使用される。プライマーは、ファンデーション(又はその他の着色化粧品組成物)を肌に塗りやすくし、肌の色を均一にし、プライマーの上に塗布された着色化粧品組成物の持続性を向上させる。プライマーは、国の周りなどの細かいしわを滑らかにするためにも使用できる。日紅の下に使用するリッププライマーは、唇の色を維持し、口紅の滲みを防止する。」
イ 甲3b
「粉末成分
[0030] 本発明の組成物には、疎水性媒体中に分散され、実質的に不溶性の粉末成分が含まれる。・・・
・・・
[0036] 粉末成分は、さらに油吸収性粉末を含む。・・・
[0037] 粉末成分には、不透明性やその他の機能性を提供する充填顔料が含まれていても含まれていなくてもよい。適切な充填顔料としては、二酸化チタン、タルク、雲母、シリカ、窒化ホウ素などが挙げられる。充填顔料の平均粒子サイズは、約0.5μm~約20μmの範囲であり得る。・・・。適切な充填顔料の具体例としては、・・・、平均粒子サイズが約6μmのシリカ(ニュージャージー州サマーセットのPresperse社からSpheron EP-MMSとして入手可能)、・・・、及び、平均粒子サイズが9~13μmのホウケイ酸アルミウムカルシウム(ニュージャージー州サマーセットのPrespers社からLuxsilとして入手可能)などが挙げられる。
[0038] 油吸収性粉末には、高油吸収性粉末が含まれてもよい。・・・。例としては、カリフォルニア州ノースリッジのArgan 0il Productsから入手可能なSILSPHERE LS-8Hなどのシリカ、・・・が挙げられる。・・・
[0039] 粉末成分には、滑りや肌触りのその他の発現などの機能性を提供できる非油吸収性粉末が含まれ得る。「非油吸収性粉末」とは、鉱物油吸収量がサンプル100g当たり約20ml未満の粉末をいう。非油吸収性粉末の例には、カルシウムアルミニウムホウケイ酸塩及び他のガラス粒子(ニュージャージー州サマセットのプレスパース社から入手可能なLUXSILなど)が含まれる。非油吸収性粉末は、組成物の重量の約1%~約10%、例えば約1%~約6%の濃度で存在し得る。」
ウ 甲3c
「 例II
実施例及び実施例の組成物におけるUVフィルターの化学的安定性
[0054] 本発明の実施例、例9は、本発明の実施例、例1~8についての上記した方法と同様の方法で調製した。各成分の以下の目標濃度は、以下の表3に列挙されている。
[図:0001436162000006.jpg]
」
(4) 甲4の記載事項
甲4には、次の事項が記載されている。
ア 甲4a
「 粉末状の化粧品組成物
本発明の主題は、高含有量の顔料を含み、粉末の形態である、皮膚をメイクアップするための化粧品組成物である。本発明の別の主題は、前記組成物を皮膚に塗布することを含む皮膚をメイクアップする方法である。」
(1頁、表題、1~6行)
イ 甲4b
「したがって、本発明の目的は、着色材料を含み、着色材料のみの着色効果と比較して著しく軟化されない着色効果を示す粉末形態のメイクアップ組成物を提供することである。
本発明者らは、このような組成物は、特定の固体粒子を層状の充填剤と組み合わせて使用することによって得られることを発見した。
得られた組成物は、皮膚に塗布されたときに良好な柔軟性特性をさらに示す。
第一の態様によれば、本発明の主題は、少なくとも1つの粉末相と油脂系結合剤とを含む粉末形態の無水化粧品組成物であり、前記粉末相は、
i) 屈折率が1.6以下である少なくとも1つの第1の球状中実粒子、
ii) 窒化ホウ素粒子、及び
iii) 組成物の全重量に対し10~90重量%の少なくとも1つの層状粒子を含む。
本発明の別の主題は、第2の態様によれば、顔及び/又は体の皮膚をメイクアップする方法であり、上記で定義した組成物を前記皮膚に塗布する。」
(2頁12行~3頁1行)
ウ 甲4c
「第1の球状中実粒子
本発明による組成物は、屈折率が1.6以下(特に1.3~1.6の範囲)である第1の球状中実粒子を含む。特に、第1の球状中実粒子は、変形不能な粒子である。
・・・
第1の球状中実粒子はガラス粒子であってもよい。好ましくは、粒子は球状の中実ガラス粒子(マイクロビーズ)である。
このようなガラス粒子(マイクロビーズ)は、特に、Prizmaliteによって「P2015SL」、「P2015SL」、「P2043SL」、「P2415BT」、「P2453BT」 及び「P2453BTA」という名称で、Sigmund Lindnerによって「Silibeads(登録商標)」という名称で、 MoSciCorporationによって「Duraspheres」及び 「Identispheres」という称で、Potters lndustriesによって「Luxsil(登録商標)」という名称で、販売されている。
有利には、第1の粒子は、1μm~150μm、好ましくは3μm~100μm、より好ましくは3μm~60μmの範囲の数平均サイズを有する。」
(3頁21~27行、4頁37行~5頁13行)
エ 甲4d
「窒化ホウ素粒子
本発明による組成物はまた、窒化ホウ素粒子を含む。
有利には、窒化ホウ素粒子の数平均粒径はlμm~20μm、好ましくは3μm~15μm、より好ましくは3μm~10μmの範囲である。
・・・
好ましくは、窒化ホウ素粒子は層状である。」
(5頁22~36行)
オ 甲4e
「実施例1~3
以下の組成を有する、ルースフィニッシングパウダー(実施例1)、ブラッシャー(実施例2)及び顔色を明るくするパウダー(実施例3)を調製した。
[図:0001436162000007.jpg]
相A1のすべての成分をレーディゲミキサーで(空にせずに)15分間混合する。
相A2の成分を攪拌しながらAlに加え、15分間混合する。
その後、得られた混合物を、ピンミルで1800回転/分の速度で粉砕する。」
(21頁20行~22頁10行)
(5) 甲5の記載事項
甲5には、次の事項が記載されている。
ア 甲5a
「[0007] 国際公開第W02004/096280号パンフレット(特許文献9)には、超難水溶性薬物と多孔体とを含有する組成物を、二酸化炭素の超臨界液体又は亜臨界液体で処理して得られる薬物含有組成物が開示されている。この文献には、ケイ酸又はその塩として「サイリシア」(富士シリシア(株)製)とともに真球状多孔性シリカ「サンスフェアH-51」(旭硝子(株)製)を用いた例も記載され、組成物からの薬物の溶出性が向上することが記載されている。」
(6) 甲6の記載事項
甲6には、次の事項が記載されている。
ア 甲6a
「シリカは化学的に安定な無機合成物質である。肌に刺激がないため、古くから化粧品に使われてきた。この天然由来の物質は屈折率が約1.45であり、肌の上で本質的に透明で無色になる。
ARGAN社のSilisphere球状シリ力粉末は、多孔質シリカマイクロビーズで構成されている。この滑らかで絹状の物質は非常に用途が広く、スキンケア、トリートメント、メイクアップ、フレグランス用途に最適である。価格も妥当であり、大量販売市場及び高級製品の両方に適している。」
イ 甲6b
「Silisphereは多孔質であるため、油の吸収性に優れており、様々なパーソナルケア製品に使用できる。
[図:0001436162000008.jpg]
・油分/皮脂のコントロールを提供
・製品の油っぽさを軽減する
・処方に安定性及び質感を持たせる
・有効成分及び芳香の制御された放出
・使用時間及び伸びやすさを改善する」
ウ 甲6c
「利用可能なグレード
[図:0001436162000009.jpg]
」
(7) 甲7の記載事項
甲7には、次の事項が記載されている。
ア 甲7a
「粉末
球状シリカのコレクション
[図:0001436162000010.jpg]
・・・
[図:0001436162000011.jpg]
」
(42頁)
(8) 甲8の記載事項
甲8は、Yahoo! Japanの日付検索(2019年4月25日以前の条件)により「P2015SL」を検索してヒットした1件目の文献であり、次の事項が記載されている。
ア 甲8a
「中実ソーダ石灰ガラスマイクロ球体2.5g/cc ・・・
2011/1/15 - P201lSL:メジアン径(D50)3~6μm、最大サイズは20μm。P2015SL:メジアン径(D50) 8~12μm、最大サイズは・・・」
イ 甲8b
「粒子サイズと密度を選択:
[図:0001436162000012.jpg]
・・・
[図:0001436162000013.jpg]
」
(9) 甲9の1の記載事項
甲9の1には、次の事項が記載されている。
ア 甲9の1a
「
[図:0001436162000014.jpg]
・・・
[図:0001436162000015.jpg]
」
(10) 甲10の記載事項
甲10は、投稿された日付が2016年10月26日であるブログの記事であり、次の事項が記載されている。
ア 甲10a
「 肌への影響は・・・?
合成ポリマーは汗も油も通さないので、皮膚の常在菌にも良くないと言われています。
合成ポリマー入りの化粧品を使い続けると
肌本来の潤いの貯蔵庫であるセラミドが減り、
自力で潤いを保てない弱肌になってしまう恐れがあります。
また、繰り返しになりますが、合成ポリマーは、
肌への密着性が高く落ちにくい性質を持っています。
そのため、強力なクレンジング剤でないと落とすことが困難です。
化粧品に入ったポリマーは、お肌や頭皮の上に広がり、
紙オムツの中身とラップの中間のような役割をします。
水分を吸着しながら、お肌をラップのようにキレイにコーティングする訳です。
このポリマーの水分が飛ぶと、コーティングがお肌をピタッと覆います。
そして、ビニールコーティングされた状態のまま長時間過ごすと、
自ら皮脂を出す機能が働かなくなります。
よって、徐々に皮脂の分泌が減ってしまいます。
これが乾燥肌に繋がります。
さらに、皮脂を餌にしていたお肌の上の常在菌(善玉菌)が
どんどん減って行ってしまい、雑菌が繁殖しやすくなると言われています。
雑菌の繁殖で炎症が起き、肌トラブルが起きます。
そして、皮脂の分泌が減ってしまっているため、
角質内の保水力が極端に落ち、自分でもわからない内に
肌内部の乾燥が進んでいきます。
これをインナードライといいます。
こうして、常在菌と皮脂膜というお肌の最前線の防衛ラインを
失ってしまったお肌は、「敏感肌」「乾燥肌」「インナードライ肌」へと
徐々に傾いていきます。」
(11) 甲11の記載事項
甲11は、更新された日付が「2015年12月15日」であるウェブサイト「サッポー美肌塾」の記事であり、次の事項が記載されている。
ア 甲11a
「シリコン油とシリコンポリマー
上記は、いずれもシリコン油の有意義な機能であり、肌の健康や美しさにとっても大切な役割を果たしているのですが、ここに落とし穴があります。シリコン油が肌の耐水機能を高めるために調合されている場合、本来の有意義な機能以外に、マイナス面の働きもある事実を知らない人が多いことです。
・・・
話が長くなりましたが、これらのシリコン油は単体でも配合され機能を発揮しますが、シリコン油を組み合わせたポリマー(重合体)としても使用されることも多く、「(○○コン/△△コン)クロスポリマー」などと表示されるものです。このポリマーは、上のシリコン油そのものです。デメリットを知らずに常用していたら、乾燥肌、敏感肌が進行してしまいます。
これは明確な理由のある(シリコン)ポリマーの悪さです。でもシリコン油にも、ポリマーにも罪はありません。適切な目的に使用せず、使い方を間違えていた人の責任です。もしかしたら、こんな失敗から、ポリマーの名が付いていたら、とにかく良くない…という決めつけが一人歩きし始めるのかもしれません。」
(12) 甲12の記載事項
甲12は、更新された日付が「2017年3月8日」である、Sensient Cosmetic Technologies社の商品「Covabead Crystal」に関するTechnical Data Sheetであり、次の事項が記載されている。
ア 甲12a
「Covabead Crystal
1. 商品説明
球状ガラスビーズ
2. 法規制
INCI [PCPC採用名]
ホウケイ酸カルシウムナトリウム
3. 検証済み化学的及び物理的データ
外観 粉末
・・・
粒度分布 50% 9-13μm
・・・
4. 化粧品としての特性
・化学的に不活性なビーズが「ボールベアリング」効果をもたらし、化粧品用途において、なめらかさと伸びの良さを向上させます。」
(13) 甲13の記載事項
甲13には、次の事項が記載されている。
ア 甲13a
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、皮膚への付着性が良好で、塗布後の付着性の向上による化粧もちが良好な皮膚外用剤に関する。
・・・
【0044】
体質顔料は着色よりも製品の形状維持や伸展性や付着性、更には光沢や色調の調整(希釈剤)に用いられ、具体的には雲母(マイカ)、白雲母、合成雲母、金雲母、紅雲母、黒雲母、リチア雲母等の雲母系顔料、バーミキュライト、ハイジライト、セリサイト、タルク、カオリン、モンモリロナイト、ゼオライト等の粘土鉱物系顔料、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、ケイ酸、無水ケイ酸、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、含硫ケイ酸アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸ストロンチウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、タングステン酸金属塩、ヒドロキシアパタイト、第二リン酸カルシウム、アルミナ、水酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ボロン等の天然系あるいは合成系の無機系粉体等があげられる。」
(14) 甲14の記載事項
甲14には、次の事項が記載されている。
ア 甲14a
「【技術分野】
【0001】
本発明は化粧料組成物に関し、特にその匂いの改善に関する。
・・・
【0024】
(B)無機または有機の親水性粉末
本発明で用いられる(B)無機または有機の親水性粉末は特に限定されない。かかる粉末としては、例えば、シリカ、酸化亜鉛、酸化チタン、無水ケイ酸、マイカ、タルク、粘土鉱物等の無機粉末;セルロース、変性セルロース、デンプン、変性デンプン等の有機粉末が挙げられる。親水性粉末以外の粉末のみを用いた場合は、使用感触向上のための効果が十分に得られない欠点がある。(B)成分を用いることで、使用感触を向上させることができると共に、紫外線防止効果もさらに高められる。
【0025】
(B)無機または有機の親水性粉末は、球状粉末であることが使用感触向上の点でさらに好ましい。また(B)の粒子径は特には限定されないが、使用性の観点から、平均粒子径が0.01~100μmのものが好ましく、特に平均粒子径が1~30μmのものが好ましい。
【0026】
前述(B)の親水性粉末は分散性や化粧持ちの観点から、吸水性・水分保持力のある、シリカ、セルロース、変性セルロース、デンプン、変性デンプンからなる群より選択される一種又は二種以上であることが好ましい。このような粉末としては、球状シリカとして、サンスフェア L-51(旭硝子社製)、微粒子シリカとしてアエロジル200(日本アエロジル社製)、セルロース粉末として、セルロフロー C-25(チッソ社製)、でんぷん粉末として、STスターチC(日澱化学社製)などが挙げられる。」
(15) 甲15の記載事項
甲15には、次の事項が記載されている。
ア 甲15a
「〔従来の技術及び発明が解決しようとする課題〕
従来、粉末化粧料はタルク、マイカ、セリサイト、酸化チタン、カオリン、ナイロンパウダー、コーンスターチ等の各種化粧料用粉体を均一に混合したものであり、必要に応じて、結合剤として流動パラフィン、油脂、ペースト、ワックス等の油性成分を配合したものである。一方、粉末化粧料としての良好なる実用特性(ソフトな使用感、塗膜の透明感、皮膚との親和性、吸水性、吸油性等)を得るために種々の特性をもつ粉体原料がさまざまな角度から検討されてきた。例えば、ソフトな使用感、塗膜の透明性、均一性を向上させるためにはタルクやナイロンパウダーの配合量を多くしたり、表面を油剤処理した粉体原料を配合したりした。また、吸水性、吸油性を高めるためには、重質炭酸マグネシウム、カオリン、コーンスターチ等を配合したり増量していた。」
(1頁左下欄最下行~同頁右下欄16行)
(16) 甲16の記載事項
甲16には、次の事項が記載されている。
ア 甲16a
「3. 発明の詳細な説明
本発明は絹繊維の脱脂処理した後に、これを粉砕機にかけて、微粉末として得られた、絹フイブロイン蛋白を主体とした、いわゆるシルクパウダーにアルミニウム金属とグアノシンとを反応させて得られた、シルク光沢粉末を化粧料に用いることを特徴とする新規なものである。
絹繊維を脱脂処理し、これを微粉砕して得られたものは、絹蛋白質:絹フイブロイン末、あるいは、化粧品分野においては、シルクパウダーと呼ばれているものであるが、化粧料中には、シルクパウダーは吸水性に優れ、肌に対する保湿剤として用いられると共に、シルクパウダー特有の肌ざわり感が良いことから、最近ではその利用が急速に高まっている。」
(1頁左下欄17~同頁右下欄11行)
(17) 参考資料1の記載事項
参考資料1には、次の事項が記載されている。
ア 参考1a
「【0020】
(比較例-9)上記実施例-1の処方中<5>(当審注:「<5>」は丸に数字の5を表す。)を平均粒径35μのガラス球に置き換え、同一工程にてフェイス・パウダーを製造した。本製品を皮膚に塗布して評価した結果、軽い滑りのある良好な感触が得られたが、ガラス球の粒径が増したことにより、皮膚への密着力に欠け、化粧崩れが起こり易くなり、化粧もちの点で欠点となった。実施例-1及び比較例-9の結果より、ガラス球の平均粒径は30μ以下が良好との結論を得た。」
2 取消理由についての判断
(1) 甲1に基づく取消理由1(新規性欠如)及び取消理由2(進歩性欠如)について
ア 甲1に記載された発明
甲1には、皮膚等のケラチン物質に、その欠陥の十分な被覆性を与える一方で明るさと自然な仕上がりを与える、皮膚等のケラチン物質のための組成物が記載されており(摘記甲1a)、その具体例として、実施例1及び3の組成物が記載されている(摘記甲1d)。
そうすると、甲1には、実施例1及び3として次の発明(以下、それぞれ「甲1発明A」及び「甲1発明B」という。)が記載されていると認められる。
<<甲1発明A>>
「以下の成分を含有する、皮膚等のケラチン物質のための組成物。
(質量%)
ステアリン酸グリセリル(及び)ステアリン酸PEG-100 1.60
ポリソルベート60 0.70
セチルアルコール 1.00
ステアリン酸 0.50
水添ポリイソブテン 1.00
オクチルドデカノール 1.00
シクロヘキサシロキサン 11.00
水 100まで
の残量
グリセリン 5.00
EDTA2ナトリウム 0.20
カプリリルグリコール 0.20
ジプロピレングリコール 15.00
フェノキシエタノール 0.40
キサンタンガム 0.20
ポリアクリロイルジメチルタウリンアンモニウム 2.00
エタノール 5.00
窒化ホウ素1(平均粒径:約2μm、屈折率:1.74) 0.75
真珠光沢顔料1(二酸化チタン(及び)マイカ(及び)酸化スズ) 0.75
ホウケイ酸カルシウムナトリウム 1.00」
<<甲1発明B>>
「以下の成分を含有する、皮膚等のケラチン物質のための組成物。
(質量%)
水 100まで
の残量
フェノキシエタノール 0.7
グリセリン 5.0
ブチレングリコール 3.0
EDTA2ナトリウム 0.1
クロルフェネシン 0.2
ポリアクリロイルジメチルタウリンアンモニウム 0.2
アクリレーツ/アクリル酸(C10~30)クロスポリマー 0.4
キサンタンガム 0.2
ヒアルロン酸ナトリウム 0.1
オクチルドデカノール 1.5
PPG-5セテス-20 3.0
ジメチコン(及び)ジメチコン/ビニルジメチコンクロスポリマー 6.0
ジメチコン 6.0
窒化ホウ素 0.6
二酸化チタン(及び)マイカ(及び)酸化スズ 1.2
ホウケイ酸カルシウムナトリウム 1.0
香料 0.1 」
イ 対比
本件発明と甲1発明A及びBとを対比する。
甲1発明A及びBの「皮膚等のケラチン物質のための組成物」は、本件発明の「皮膚外用剤」に相当する。
また、甲1発明A及びBは、本件発明で「除く」とされている、「ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチルクロスポリマー及びナイロン-12から選択される1種又は2種以上の粉体を含有する皮膚外用剤」に該当するものではなく、本件発明の皮膚外用剤は、成分(A)及び(B)以外の成分を含有することを排除していない。
そうすると、本件発明と甲1発明A及びBとの間には、次の一致点及び相違点があるものと認められる。
<一致点>
「皮膚外用剤(ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチルクロスポリマー及びナイロン-12から選択される1種又は2種以上の粉体を含有する皮膚外用剤を除く)。」
<相違点1-1>
本件発明は、「(A):球状硫酸バリウム、球状シリカ、球状炭酸カルシウム、球状セルロース、球状スターチ、球状化工デンプン及び球状シルクから選択される1種又は2種以上」を含有するのに対し、甲1発明A及びBは、それらを含有していない点。
<相違点1-2>
本件発明は、「(B):平均粒子径が0.1~20μmである球状中実ガラスビーズ」を含有するのに対し、甲1発明A及びBは、「ホウケイ酸カルシウムナトリウム」を含有する点。
ウ 取消理由1(新規性欠如)について
まず、上記相違点1-1について、甲1発明A及びBは、それぞれ、「窒化ホウ素1(平均粒径:約2μm、屈折率:1.74)」及び「窒化ホウ素」やその他の成分を含有するが、これらは、いずれも本件発明における「(A):球状硫酸バリウム、球状シリカ、球状炭酸カルシウム、球状セルロース、球状スターチ、球状化工デンプン及び球状シルクから選択される1種又は2種以上」ではないから、本件発明と甲1発明A及びBとは、この点で実質的に相違することは明らかである。
また、上記相違点1-2について、甲1発明A及びBにおける「ホウケイ酸カルシウムナトリウム」は、甲1において「(c)中空又は多孔質粒子」として位置付けられた成分の好ましい選択肢の一つであるから(摘記甲1cの【0075】及び【0076】)、「(c)中空又は多孔質粒子」であると認められ、「中実」の粒子であるとはいえない。それゆえ、甲1発明A及びBにおける「ホウケイ酸カルシウムナトリウム」は、この点において、本件発明の「(B):平均粒子径が0.1~20μmである球状中実ガラスビーズ」と実質的に相違することは明らかである。
加えて、甲1には、「(c)中空又は多孔質粒子」の市販品の例として、Potters Industries社により販売されている「Luxsil Cosmetics Microspheres」が挙げられており(摘記甲1cの【0079】)、一方、甲2には、商品名の一部に上記「Luxsil Cosmetics Microspheres」と同じ表記を有する「LUXSIL(登録商標)」について、ガラスビーズである「ホウケイ酸カルシウムアルミニウム」の非晶質中空微小球であり、本質的に均一な球形をしており、平均粒子サイズは9~13μmであることが記載されている(摘記甲2b)。しかしながら、甲1発明A及びBにおける「ホウケイ酸カルシウムナトリウム」は、上記「LUXSIL(登録商標)」である「ホウケイ酸カルシウムアルミニウム」と異なる化合物からなるものであるから、上記「LUXSIL(登録商標)」と同一のガラスビーズであるとはいえない。それゆえ、甲1発明A及びBにおける「ホウケイ酸カルシウムナトリウム」が、上記「LUXSIL(登録商標)」のガラスビーズが有する平均粒子サイズである9~13μmを有しているとまではいえないから、この平均粒子径の点においても、本件発明と甲1発明A及びBとは実質的に相違するものである。
よって、本件発明は甲1に記載された発明ではない。
エ 取消理由2(進歩性欠如)について
まず、上記相違点1-1に検討する。
甲1発明Aにおける「窒化ホウ素1(平均粒径:約2μm、屈折率:1.74)」及び甲1発明Bにおける「窒化ホウ素」は、甲1において、「(a)板状フィラー」として位置付けられた成分の選択肢の一つであって、「窒化ホウ素」と並列して「硫酸バリウム」も、「(a)板状フィラー」の選択肢として挙げられていることから(摘記甲1a~1b)、「球状」ではない。そうしてみれば、甲1発明A及びBにおいて、同等の効果を期待して、「(a)板状フィラー」である甲1発明Aにおける「窒化ホウ素1(平均粒径:約2μm、屈折率:1.74)」及び甲1発明Bにおける「窒化ホウ素」に代えて、「板状」の「硫酸バリウム」を用いることは、当業者が容易になし得たことといえたとしても、「球状」の「硫酸バリウム」を用いてみようとする動機付けを見いだすことはできない。
また、甲1には、本件発明の「(A):球状硫酸バリウム、球状シリカ、球状炭酸カルシウム、球状セルロース、球状スターチ、球状化工デンプン及び球状シルクから選択される1種又は2種以上」を用い得ることを示唆する記載はなく、これらの成分が公知であったとしても、甲1発明A及びBにおいて、これらの成分をさらに配合してみようとする動機付けを見いだすことはできない。
次に、上記相違点1-2について検討すると、甲1発明A及びBにおける「ホウケイ酸カルシウムナトリウム」は、上記ウで述べたとおり、甲1において、「(c)中空又は多孔質粒子」として位置付けられた成分であるから(摘記甲1c)、当該「(c)中空又は多孔質粒子」である「ホウケイ酸カルシウムナトリウム」を、あえて「中実」のガラスビーズとすることの動機付けを見いだすことはできない。
また、甲1には、本件発明の「(B):平均粒子径が0.1~20μmである球状中実ガラスビーズ」を用い得ることを示唆する記載はなく、当該成分が公知であったとしても、「ホウケイ酸カルシウムナトリウム」を含有する甲1発明A及びBにおいて、「(B):平均粒子径が0.1~20μmである球状中実ガラスビーズ」をさらに配合してみようとする動機付けを見いだすことはできない。
そして、本件発明は、本件発明の(A)及び(B)を含有することにより、「球状粉体の有するなめらかな使用感はそのままに、保湿効果が持続する」という効果を奏するものであるところ(本件明細書の【0006】)、本件発明の上記効果は、甲1の記載をみても当業者は予測し得ない。
よって、本件発明は甲1に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
オ 申立人の主張について
申立人は、令和7年11月21日提出の意見書において、上記相違点1-2に関し、(ア)甲8及び9の1、並びに上記意見書と共に提出した参考資料1を提示した上で、皮膚外用剤の技術分野において、平均粒子径が0.1~20μmである球状中実ガラスビーズを配合することは、本件特許の出願前から慣用されていた技術であること、また、(イ)本件特許の明細書における段落【0006】の記載を参照した上で、球状粉体は、なめらかな使用感を有することは自明であり、ガラスビーズが中実であるか中空であるかによって保湿効果が異なるものではなく、さらに、上記参考資料1の記載から、平均粒径が30μ以下であるガラス球を用いると、化粧持ち(すなわち保湿効果)が向上することは、本件特許の出願時において公知の事項であるといえるため、平均粒子径が0.1~20μmである球状中実ガラスビーズを皮膚外用剤に配合すると、球状粉体の有するなめらかな使用感はそのままに、保湿効果が持続するという効果を発揮することは、本件特許の出願時において公知の効果であることを主張している。
また、上記意見書において、上記相違点1-1に関し、(ウ)甲14~甲16を参照すると、皮膚外用剤の技術分野において、本件発明の成分(A)を皮膚外用剤に配合することは、本件特許の出願時において周知の事項であること、また、(エ)本件特許の明細書において、実施例1(窒化ホウ素)及び実施例2(板状硫酸バリウム)は、実施例5(球状シリカ)、実施例6(球状炭酸カルシウム)、実施例7(硫酸バリウム)、実施例8(球状セルロース)、実施例9(球状化工デンプン)、実施例10(球状セルロース)、及び実施例11(球状シルク)と同様に、評価項目「乾燥感」及び「化粧持ち」において、「○」であり、本件特許の明細書において、窒化ホウ素などの成分(A)の形状が板状などの非球状であるか球状であるかによって、保湿効果が異なるという記載はなく、したがって、成分(A)の形状が球状であるからといって、皮膚外用剤の保湿効果において、非球状であるものに対して、顕著な効果を奏するものではないことを主張している。
そこで、まず、上記主張(ア)及び(イ)について検討すると、上記(1)エで述べたとおり、「(B):平均粒子径が0.1~20μmである球状中実ガラスビーズ」が、本件特許の出願前において、公知であったとしても、既に「(c)中空又は多孔質粒子」の「ホウケイ酸カルシウムナトリウム」を含有する甲1発明A及びBにおいて、さらに「(B):平均粒子径が0.1~20μmである球状中実ガラスビーズ」を配合してみようとする動機付けが存在するとはいえない。そして、上述のとおり、甲1発明A及びBにおいて、更に「(B):平均粒子径が0.1~20μmである球状中実ガラスビーズ」を配合する動機付けが存在しないから、上記主張(イ)で述べる効果を検討するまでもなく、上記相違点1-2の構成とすることが、当業者にとって容易に想到し得たこととはいえない。
また、上記主張(ウ)及び(エ)について検討すると、甲14~甲16に記載されているように、皮膚外用剤の技術分野において、シリカ、炭酸カルシウム、セルロース、スターチ、化工デンプン及びシルクの成分が知られていたとしても、それらを球状の形状で、甲1発明A及びBにさらに配合する動機付けがあるとはいえない。また、「(A):球状硫酸バリウム、球状シリカ、球状炭酸カルシウム、球状セルロース、球状スターチ、球状化工デンプン及び球状シルク」の成分が公知であったとしても、上記(1)エで述べたとおり、甲1発明A及びBにおいて、あえて上記成分を追加的に配合してみようとする動機付けが存在するとはいえない。そして、上述のとおり、甲1発明A及びBにおいて、更に上記成分を配合する動機付けが存在しない以上、上記主張(エ)で述べる効果を検討するまでもなく、上記相違点1-1の構成とすることが、当業者にとって容易に想到し得たこととはいえない。
よって、上記主張を採用することはできない。
カ 小括
本件発明は、甲1に基づく取消理由1(新規性欠如)及び取消理由2(進歩性欠如)によって取り消すべきものではない。
(2) 甲2に基づく取消理由1(新規性欠如)及び取消理由2(進歩性欠如)について
ア 甲2に記載された発明
甲2には、少なくとも1種のシリコーン樹脂及びガラスビーズを含む、皮膚の欠陥を覆う又は隠すための化粧品組成物が記載され(摘記甲2a)、その具体例として、実施例の組成物が記載されている(摘記甲2d)。
そうすると、甲2には、実施例として次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。
<<甲2発明>>
「以下の成分を含有する、皮膚の欠陥を覆う又は隠すための化粧品組成物。
[図:0001436162000016.jpg]
イ 対比
本件発明と甲2発明とを対比する。
甲2発明の「皮膚の欠陥を覆う又は隠すための化粧品組成物」は、本件発明の「皮膚外用剤」に相当する。
甲2発明における「SUNSPHERE H 51(シリカ)」は、本件発明における「(A):窒化ホウ素、硫酸バリウム、球状シリカ、球状炭酸カルシウム、球状セルロース、球状スターチ、球状化工デンプン及び球状シルクから選択される1種又は2種以上」のうちの「球状シリカ」とは、「シリカ」である点で共通する。
甲2発明は、本件発明で「除く」とされている、「ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチルクロスポリマー及びナイロン-12から選択される1種又は2種以上の粉体を含有する皮膚外用剤」に該当するものではなく、本件発明の皮膚外用剤は、成分(A)及び(B)以外の成分を含有することを排除していない。
そうすると、本件発明と甲2発明との間には、次の一致点及び相違点があるものと認められる。
<一致点>
「(A)を含有する皮膚外用剤(ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチルクロスポリマー及びナイロン-12から選択される1種又は2種以上の粉体を含有する皮膚外用剤を除く)。
(A):シリカ」
<相違点2-1>
シリカについて、本件発明では、「(A):球状硫酸バリウム、球状シリカ、球状炭酸カルシウム、球状セルロース、球状スターチ、球状化工デンプン及び球状シルクから選択される1種又は2種以上」の選択肢であり、「球状」であることが特定されているのに対し、甲2発明では、「球状」であるか否かが明らかでない点。
<相違点2-2>
本件発明は、「(B):平均粒子径が0.1~20μmである球状中実ガラスビーズ」を含有するのに対し、甲2発明は、「LUXSIL(ホウケイ酸カルシウムナトリウム)」を含有する点。
ウ 取消理由1(新規性欠如)について
まず、上記相違点2-1については、甲5に「真球状多孔性シリカ「サンスフェアH-51」(旭硝子(株)製)」と記載されていることを参照すると(摘記甲5a)、甲2発明における「SUNSPHERE H 51(シリカ)」は、「球状」であるといえるから、上記相違点2-1は実質的な相違点ではない。
次に、上記相違点2-2について検討すると、甲2には、甲2発明における「LUXSIL(ホウケイ酸カルシウムナトリウム)」と同じ商品名を有する「LUXSIL(登録商標)」は、ガラスビーズである「ホウケイ酸カルシウムアルミニウム」の非晶質中空微小球であり、本質的に均一な球形をしており、平均粒子サイズは9~13μmであることが記載されている(摘記甲2b)。しかしながら、甲2発明における「LUXSIL(ホウケイ酸カルシウムナトリウム)」は、上記「LUXSIL(登録商標)」である「ホウケイ酸カルシウムアルミニウム」と異なる化合物からなるものであるから、上記「LUXSIL(登録商標)」と同一のガラスビーズであるとはいえない。それゆえ、甲2発明における「LUXSIL(ホウケイ酸カルシウムナトリウム)」が、上記「LUXSIL(登録商標)」のガラスビーズが有する平均粒子サイズである9~13μmを有しているとまではいえない。また、甲2発明における「LUXSIL(ホウケイ酸カルシウムナトリウム)」が中実のガラスビーズであることは何ら特定されておらず、中実であることを推認することもできない。よって、本件発明と甲2発明とは、上記相違点2-2について実質的に相違するものである。
したがって、本件発明は甲2に記載された発明ではない。
エ 取消理由2(進歩性欠如)について
上記相違点2-2について検討すると、甲2には、許容されるガラスビーズについて、「中実又は中空、無色又は着色、コーティングされた又はコーティングされていないものであり得る。さらにガラスビーズはどんな形状でも構わない。好ましくは、ガラスビーズは実質的に球形又は卵形の形状を有し、これにより、組成物に適用時に柔らかい感触を与えることができ、また、組成物全体にわたって粒子をより完全に分散させることができる。」(摘記甲2b)との記載はあるものの、具体的に「(B):平均粒子径が0.1~20μmである球状中実ガラスビーズ」を用い得ることを示唆する記載はないから、甲2発明において、「LUXSIL(ホウケイ酸カルシウムナトリウム)」を、平均粒子径が0.1~20μmであり、しかも「球状中実」のガラスビーズとしてみようとする動機付けがない。また、当該ガラスビーズが、本件特許の出願前において公知であったとしても、「LUXSIL(ホウケイ酸カルシウムナトリウム)」を含有する甲2発明において、「(B):平均粒子径が0.1~20μmである球状中実ガラスビーズ」をさらに配合してみようとする動機付けを見いだすことはできない。
そして、本件発明は、本件発明の(A)及び(B)を含有することにより、「球状粉体の有するなめらかな使用感はそのままに、保湿効果が持続する」という効果を奏するものであるところ(本件明細書の【0006】)、本件発明の上記効果は、甲2の記載をみても当業者は予測し得ない。
よって、本件発明は甲2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
オ 申立人の主張について
申立人は、令和7年11月21日提出の意見書において、上記相違点2-2に関し、(ア)甲2は、中空のガラス微小球である「LUXSIL」以外のガラス微小球を排除しておらず、むしろ、「LUXSIL」に代えて、中実のガラス微小球を採用しても適切であることを記載しており(摘記甲2c)、また、(イ)上記(1)オの主張と同様に、皮膚外用剤の技術分野において、平均粒子径が0.1~20μmである球状中実ガラスビーズを配合することは、本件特許の出願前から慣用されていた技術であること、また、(ウ)平均粒子径が0.1~20μmである球状中実ガラスビーズを皮膚外用剤に配合すると、球状粉体の有するなめらかな使用感はそのままに、保湿効果が持続するという効果を発揮することは、本件特許の出願時において、公知の効果であることを主張している。
そこで、まず、上記主張(ア)について検討すると、甲2には、ガラス微小球の形状について、「中空、中実、またはその他の形状を問わず」と記載されるに止まり(摘記甲2c)、具体的に、「平均粒子径が0.1~20μmである球状中実ガラスビーズ」の記載や当該ガラスビーズを用いることを示唆する記載はないから、上記(2)エで述べたとおり、甲2発明において、「LUXSIL(ホウケイ酸カルシウムナトリウム)」を、平均粒子径が0.1~20μmであり、しかも「球状中実」のガラスビーズとしてみようとする動機付けがない。また、上記主張(イ)について検討すると、上記(2)エで述べたとおり、「(B):平均粒子径が0.1~20μmである球状中実ガラスビーズ」が、本件特許の出願前において公知であったとしても、「LUXSIL(ホウケイ酸カルシウムナトリウム)」を含有する甲2発明において、さらに「(B):平均粒子径が0.1~20μmである球状中実ガラスビーズ」を配合してみようとする動機付けが存在するとはいえない。そして、当該「(B):平均粒子径が0.1~20μmである球状中実ガラスビーズ」を配合する動機付けが存在しない以上、それによる効果を検討するまでもなく、すなわち上記主張(ウ)を検討するまでもなく、甲2発明において、上記相違点2-2の構成とすることが、当業者にとって容易に想到し得たこととはいえない。
よって、上記主張を採用することはできない。
カ 小括
本件発明は、甲2に基づく取消理由1(新規性欠如)及び取消理由2(進歩性欠如)によって取り消すべきものではない。
(3) 甲3に基づく取消理由1(新規性欠如)及び取消理由2(進歩性欠如)について
ア 甲3に記載された発明
甲3には、皮膚への塗布に有用な着色化粧品組成物が記載され(摘記甲3a)、その具体例として、例9の組成物が記載されている(摘記甲3c)。
そうすると、甲3には、例9として次の発明(以下「甲3発明」という。)が記載されていると認められる。
<<甲3発明>>
「以下の成分を含有する、皮膚への塗布に有用な着色化粧品組成物。
[図:0001436162000017.jpg]
イ 対比
本件発明と甲3発明とを対比する。
甲3発明の「皮膚への塗布に有用な着色化粧品組成物」は、本件発明の「皮膚外用剤」に相当する。
甲3発明における「Silisphere LS-8H(シリカ)」及び「Spheron EP-MMS(シリカ)」は、本件発明における「(A):球状硫酸バリウム、球状シリカ、球状炭酸カルシウム、球状セルロース、球状スターチ、球状化工デンプン及び球状シルクから選択される1種又は2種以上」のうちの「球状シリカ」とは、「シリカ」である点で共通する。
甲3発明は、本件発明で「除く」とされている、「ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチルクロスポリマー及びナイロン-12から選択される1種又は2種以上の粉体を含有する皮膚外用剤」に該当するものではなく、本件発明の皮膚外用剤は、成分(A)及び(B)以外の成分を含有することを排除していない。
そうすると、本件発明と甲3発明との間には、次の一致点及び相違点があるものと認められる。
<一致点>
「(A)を含有する皮膚外用剤(ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチルクロスポリマー及びナイロン-12から選択される1種又は2種以上の粉体を含有する皮膚外用剤を除く)。
(A):シリカ」
<相違点3-1>
シリカについて、本件発明では、「(A):球状硫酸バリウム、球状シリカ、球状炭酸カルシウム、球状セルロース、球状スターチ、球状化工デンプン及び球状シルクから選択される1種又は2種以上」の選択肢であり、「球状」であることが特定されているのに対し、甲3発明では、「球状」であるか否かが明らかでない点。
<相違点3-2>
本件発明は、「(B):平均粒子径が0.1~20μmである球状中実ガラスビーズ」を含有するのに対し、甲3発明は、「Luxsil(ホウケイ酸カルシウムアルミニウム)」を含有する点。
ウ 取消理由1(新規性欠如)について
まず、上記相違点3-1について検討すると、甲6には、「ARGAN社のSilisphere球状シリ力粉末」という製品について記載されており(摘記甲6a)、当該「Silisphere」は、その画像からみて球状であることが明らかであり(摘記甲6b)、利用可能なグレードの一つとして「LS-8H」のデータも記載されている(摘記甲6c)。また、甲7には、「球状シリカ」のコレクションとして、「Spheron EP-MMS」という製品が「シリカマイクロ球体」であることが記載されている。これら甲6及び甲7の記載を参照すると、甲3発明における「Silisphere LS-8H(シリカ)」及び「Spheron EP-MMS(シリカ)」は、いずれも「球状」であるといえる。よって、上記相違点3-1は実質的な相違点ではない。
次に、上記相違点3-2について検討すると、甲3には、甲3発明における「Luxsil(ホウケイ酸カルシウムアルミニウム)」と同じ商品名を有する「Luxsil」は、平均粒子サイズが9~13μmのホウケイ酸アルミウムカルシウムであることが記載され(摘記甲3b)、甲2においても、「LUXSIL(登録商標)」は、ガラスビーズである「ホウケイ酸カルシウムアルミニウム」の非晶質中空微小球であり、本質的に均一な球形をしており、平均粒子サイズは9~13μmであることが記載されていることに鑑みると(摘記甲2b)、甲3発明における「Luxsil(ホウケイ酸カルシウムアルミニウム)」は、平均粒子サイズが9~13μmである「球形」の「非晶質中空微小球」であると認められるものの、「中実」のガラスビーズであるとはいえない。よって、甲3発明における「Luxsil(ホウケイ酸カルシウムアルミニウム)」は、この点において、本件発明の「(B):平均粒子径が0.1~20μmである球状中実ガラスビーズ」と実質的に相違することは明らかである。
よって、本件発明は甲3に記載された発明ではない。
エ 取消理由2(進歩性欠如)について
上記相違点3-2について検討すると、甲3発明における「Luxsil(ホウケイ酸カルシウムアルミニウム)」は、皮膚への塗布に有用な着色化粧品組成物において、疎水性媒体中に分散され、実質的に不溶性の粉末成分の一種であるが(摘記甲3b)、甲3には、粉末成分として、具体的に「(B):平均粒子径が0.1~20μmである球状中実ガラスビーズ」を用い得ることを示唆する記載はないから、甲3発明において、「非晶質中空微小球」である「Luxsil(ホウケイ酸カルシウムアルミニウム)」に代えて、「(B):平均粒子径が0.1~20μmである球状中実ガラスビーズ」を用いようとする動機付けがない。また、「(B):平均粒子径が0.1~20μmである球状中実ガラスビーズ」が、本件特許の出願前において公知であったとしても、「Luxsil(ホウケイ酸カルシウムアルミニウム)」を含有する甲3発明において、「(B):平均粒子径が0.1~20μmである球状中実ガラスビーズ」をさらに配合してみようとする動機付けを見いだすことはできない。
そして、本件発明は、本件発明の(A)及び(B)を含有することにより、「球状粉体の有するなめらかな使用感はそのままに、保湿効果が持続する」という効果を奏するものであるところ(本件明細書の【0006】)、本件発明の上記効果は、甲3の記載をみても当業者は予測し得ない。
よって、本件発明は甲3に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
オ 申立人の主張について
申立人は、令和7年11月21日提出の意見書において、上記相違点3-1に関し、(ア)甲3は、「Luxsil」以外のガラス微小球を排除しておらず、他のガラス微粒子を適用してもよいことが記載され(摘記甲3b)、また、(イ)上記(1)オの主張と同様に、皮膚外用剤の技術分野において、平均粒子径が0.1~20μmである球状中実ガラスビーズを配合することは、本件特許の出願前から慣用されていた技術であること、また、(ウ)平均粒子径が0.1~20μmである球状中実ガラスビーズを皮膚外用剤に配合すると、球状粉体の有するなめらかな使用感はそのままに、保湿効果が持続するという効果を発揮することは、本件特許の出願時において、公知の効果であることを主張している。
そこで、上記主張(ア)~(ウ)について検討すると、甲3には、上記(3)エで述べたとおり、具体的に、「平均粒子径が0.1~20μmである球状中実ガラスビーズ」の記載や当該ガラスビーズを用いることを示唆する記載はないから、甲3発明において、「非晶質中空微小球」である「Luxsil(ホウケイ酸カルシウムアルミニウム)」に代えて、「(B):平均粒子径が0.1~20μmである球状中実ガラスビーズ」を用いようとする動機付けがない。また、「(B):平均粒子径が0.1~20μmである球状中実ガラスビーズ」が、本件特許の出願前において公知であったとしても、上記(3)エで述べたとおり、「非晶質中空微小球」である「Luxsil(ホウケイ酸カルシウムアルミニウム)」を含有する甲3発明において、さらに「(B):平均粒子径が0.1~20μmである球状中実ガラスビーズ」を配合してみようとする動機付けが存在するとはいえない。そして、「(B):平均粒子径が0.1~20μmである球状中実ガラスビーズ」を配合する動機付けが存在しない以上、それによる効果を検討するまでもなく、甲3発明において、上記相違点3-2の構成とすることが、当業者にとって容易に想到し得たこととはいえない。
よって、上記主張を採用することはできない。
カ 小括
本件発明は、甲3に基づく取消理由1(新規性欠如)及び取消理由2(進歩性欠如)によって取り消すべきものではない。
(4) 甲4に基づく取消理由1(新規性欠如)及び取消理由2(進歩性欠如)について
ア 甲4に記載された発明
甲4には、皮膚をメイクアップするための化粧品組成物が記載され(摘記甲4a~甲4b)、その具体例として、実施例1~3の組成物が記載されている(摘記甲4e)。
そうすると、甲4には、実施例1~3として次の発明(以下、「甲4発明A」~「甲4発明C」という。)が記載されていると認められる。
<<甲4発明A>>
「以下の成分を含有するルースフィニッシングパウダー。
(重量%)
黄酸化鉄 1.2
二酸化チタン 1.00
オキシ塩化ビスマス 1.00
雲母 35.00
セリサイト 39.74
窒化ホウ素 8.00
カルナバワックス 1.00
ガラスマイクロビーズ 10.00
イソノナン酸イソノニル 3.00
有効成分/ビタミン 適量」
<<甲4発明B>>
「以下の成分を含有するブラッシャー。
(重量%)
黄酸化鉄 2.61
二酸化チタン 5.00
ウルトラマリンブルー 1.95
ヘリンドンピンク 0.35
オキシ塩化ビスマス 7.00
雲母 35.00
セリサイト 16.09
真珠光沢剤 10.00
窒化ホウ素 8.00
カルナバワックス 1.00
ガラスマイクロビーズ 10.00
イソノナン酸イソノニル 3.00
有効成分/ビタミン 適量」
<<甲4発明C>>
「以下の成分を含有する顔色を明るくするパウダー。
(重量%)
黄酸化鉄 3.33
二酸化チタン 5.00
ウルトラマリンブルー 0.20
カーマインレッドレーキ 0.14
オキシ塩化ビスマス 7.00
雲母 35.00
セリサイト 4.07
真珠光沢剤 23.20
窒化ホウ素 8.00
カルナバワックス 1.00
ガラスマイクロビーズ 10.00
イソノナン酸イソノニル 3.00
有効成分/ビタミン 適量」
イ 対比
本件発明と甲4発明A~Cとを対比する。
甲4発明Aの「ルースフィニッシングパウダー」、甲4発明Bの「ブラッシャー」、及び甲4発明Cの「顔色を明るくするパウダー」は、いずれも「皮膚をメイクアップするための化粧品組成物」の具体例であるから、本件発明の「皮膚外用剤」に相当する。
甲4発明A~Cにおける「ガラスマイクロビーズ」は、本件発明の「(B):平均粒子径が0.1~20μmである球状ガラスビーズ」と、「ガラスビーズ」である点で共通する。
甲4発明A~Cは、本件発明で「除く」とされている、「ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチルクロスポリマー及びナイロン-12から選択される1種又は2種以上の粉体を含有する皮膚外用剤」に該当するものではなく、本件発明の皮膚外用剤は、成分(A)及び(B)以外の成分を含有することを排除していない。
そうすると、本件発明と甲4発明A~Cとの間には、次の一致点及び相違点があるものと認められる。
<一致点>
「(B)を含有する皮膚外用剤(ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチルクロスポリマー及びナイロン-12から選択される1種又は2種以上の粉体を含有する皮膚外用剤を除く)。
(B):ガラスビーズ」
<相違点4-1>
本件発明は、「(A):球状硫酸バリウム、球状シリカ、球状炭酸カルシウム、球状セルロース、球状スターチ、球状化工デンプン及び球状シルクから選択される1種又は2種以上」を含有するのに対し、甲4発明A~Cは、それらを含有しない点。
<相違点4-2>
本件発明は、「(B):平均粒子径が0.1~20μmである球状ガラスビーズ」を含有するのに対し、甲4発明A~Cは、「ガラスマイクロビーズ」を含有する点。
ウ 取消理由1(新規性欠如)について
まず、上記相違点4-1について検討すると、甲4発明A~Cは、それぞれ、「窒化ホウ素」やその他の成分を含有するが、これらは、いずれも本件発明における「(A):球状硫酸バリウム、球状シリカ、球状炭酸カルシウム、球状セルロース、球状スターチ、球状化工デンプン及び球状シルクから選択される1種又は2種以上」ではないから、本件発明と甲4発明A~Cとは、この点で実質的に相違することは明らかである。
次に、上記相違点4-2について検討すると、甲4発明A~Cにおける「ガラスマイクロビーズ」は、甲4において、「第1の球状中実粒子」として位置付けられた成分の一つであるから(摘記甲4b~c)、「球状中実」の「ガラスマイクロビーズ」であると認められるものの、平均粒子径は不明である。甲4には、上記「第1の球状中実粒子」の数平均サイズについて、1μm~150μm、好ましくは3μm~100μm、より好ましくは3μm~60μmであるとの記載はあるが(摘記甲4c)、甲4発明A~Cにおける「ガラスマイクロビーズ」が、本件発明における「(B):平均粒子径が0.1~20μmである球状ガラスビーズ」の平均粒子径の範囲を満たすとまではいえない。
また、甲4には、「第1の球状中実粒子」の一例である「ガラス粒子(マイクロビーズ)」の具体例として、Prizmalite社から「P2015SL」等の名称で、Potters lndustries社から「Luxsil(登録商標)」の名称で、販売されているものが挙げられている。そして、甲2において、「LUXSIL(登録商標)」がガラスビーズであるホウケイ酸カルシウムアルミニウムの非晶質中空微小球であり、本質的に均一な球形をしており、平均粒子サイズは9μm~13μmであることが記載されていること(摘記甲2b)、また、甲8において、「P2015SL」が「メジアン径(D50) 8~12μm」である「中実ソーダ石灰ガラスマイクロ球体」として記載されていること(摘記8a~b)、甲9の1においても、「P2015SL」が「D50=8.5~12μm」である「中実ソーダ石灰ガラスマイクロ球体」として記載されていることを参酌すると(摘記9の1a)、甲4に記載された上記「P2015SL」及び「Luxsil(登録商標)」の「ガラス粒子(マイクロビーズ)」は、本件発明における「(B):平均粒子径が0.1~20μmである球状ガラスビーズ」の平均粒子径の範囲を満たすといえる。しかしながら、上記「P2015SL」及び「Luxsil(登録商標)」の「ガラス粒子(マイクロビーズ)」が、甲4発明A~Cにおける「ガラスマイクロビーズ」と同一のものであるとはいえないから、上記記載を参酌しても、甲4発明A~Cにおける「ガラスマイクロビーズ」が、本件発明における「(B):平均粒子径が0.1~20μmである球状ガラスビーズ」の平均粒子径の範囲を満たすとまではいえない。よって、本件発明と甲4発明A~Cとは、上記相違点4-2について実質的に相違するものである。
したがって、本件発明は甲4に記載された発明ではない。
エ 取消理由2(進歩性欠如)について
まず、上記相違点4-1に検討すると、甲4には、本件発明の「(A):球状硫酸バリウム、球状シリカ、球状炭酸カルシウム、球状セルロース、球状スターチ、球状化工デンプン及び球状シルクから選択される1種又は2種以上」を用い得ることを示唆する記載はなく、これらの成分が公知であったとしても、甲4発明A~Cおいて、さらにこれらの成分を配合してみようとする動機付けを見いだすことはできない。
次に、上記相違点4-2について検討すると、甲4には、上記「第1の球状中実粒子」の数平均サイズについて、1μm~150μm、好ましくは3μm~100μm、より好ましくは3μm~60μmであるとの記載はあるものの、本件発明の球状中実ガラスビーズの「平均粒子径が0.1~20μm」の範囲を満たすものを用いることの具体的な記載はなく、甲4発明A~Cにおける「ガラスマイクロビーズ」について、「平均粒子径が0.1~20μm」の範囲のものを用いてみようとする動機があるとはいえない。また、「(B):平均粒子径が0.1~20μmである球状ガラスビーズ」が公知であったとしても、甲4発明A~Cにおいて、さらに当該成分を配合してみようとする動機付けを見いだすことはできない。
そして、本件発明は、本件発明の(A)及び(B)を含有することにより、「球状粉体の有するなめらかな使用感はそのままに、保湿効果が持続する」という効果を奏するものであるところ(本件明細書の【0006】)、本件発明の上記効果は、甲4の記載をみても当業者は予測し得ない。
よって、本件発明は、甲4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
オ 申立人の主張について
申立人は、令和7年11月21日提出の意見書において、上記相違点4-1に関し、上記(1)オにおける主張と同様に、(ア)皮膚外用剤の技術分野において、本件発明1の成分(A)を皮膚外用剤に配合することは、甲14~甲16を参照すると、本件特許の出願時において、周知の事項であること、また、(イ)本件発明1の成分(A)が保湿性を有することは、甲14~甲16を参照すると、本件特許の出願時において、周知の事項であること、そして、(ウ)本件特許の明細書において、窒化ホウ素などの成分(A)の形状が板状などの非球状であるか球状であるかによって、保湿効果が異なるという記載はなく、したがって、成分(A)の形状が球状であるからといって、皮膚外用剤の保湿効果において、非球状であるものに対して、顕著な効果を奏するものではないことを主張している。
そこで、上記主張(ア)~(ウ)について検討すると、甲14~甲16に記載されているように、皮膚外用剤の技術分野において、シリカ、炭酸カルシウム、セルロース、スターチ、化工デンプン及びシルクの成分が知られていたとしても、上記成分を球状の形状で、甲4発明A~Cにさらに配合してみようとする動機付けがあるとはいえない。また、「(A):球状硫酸バリウム、球状シリカ、球状炭酸カルシウム、球状セルロース、球状スターチ、球状化工デンプン及び球状シルク」の成分が公知であったとしても、上記(4)エで述べたとおり、甲4発明A~Cにおいて、上記成分をあえて配合してみようとする動機付けが存在するとはいえない。そして、上述のとおり、甲4発明A~Cにおいて、さらに上記成分を配合する動機付けが存在しない以上、上記成分を配合することによる効果を検討するまでもなく、上記相違点4-1の構成とすることが、当業者にとって容易に想到し得たこととはいえない。
よって、上記主張を採用することはできない。
カ 小括
本件発明は、甲4に基づく取消理由1(新規性欠如)及び取消理由2(進歩性欠如)によって取り消すべきものではない。
3 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
以下では、取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について述べる。
(1) 申立理由3(サポート要件違反)
申立人は、特許異議申立書において、以下の理由から、訂正前の請求項1に係る発明は、本件特許の明細書の発明の詳細な説明に記載したものではないから、特許法第36条第6項第1号の規定により特許を受けることができないものであり、同法第113条第4号の規定により取消しを受けるべきであると述べている。
ア 申立理由3の具体的内容
訂正前の請求項1に係る発明は、「(B):平均粒子径が0.1~20μmである球状ガラスビーズ」を含有することを規定しており、当該規定等を具備することで、化粧持ちが良好で、保湿効果が持続する皮膚外用剤を提供するという課題を解決しようとするものである。しかしながら、本件特許の明細書における実施例を参照すると、具体的に用いられている「ガラスビーズ」は、「化粧品表示名称ホウケイ酸(Ca/Na)である商品名「COVABEAD CRYSTAL」(SENSIENT COSMETIC TECHNOLOGIES社製;平均粒子径11μm)」のみであり、当該「COVABEAD CRYSTAL」以外の材料及び平均粒子径からなるガラスビーズを用いた場合に、本件特許の上記課題を解決できるかどうかは示されていない。また、本件特許の明細書における発明の詳細な説明の他の記載を参酌しても、平均粒子径が0.1~20μmである球状ガラスビーズを含有することが読み取れるだけで、実施例で用いられているホウケイ酸(Ca/Na)からなるガラスビーズ又は平均粒子径が11μmである球状ガラスビーズ以外の球状のガラスビーズを用いた場合であっても、本件特許発明の上記課題が解決できることについて、具体的な説明がなされていない。したがって、訂正前の請求項1に係る発明の「(B):平均粒子径が0.1~20μmである球状ガラスビーズ」の範囲にまで、発明の詳細な説明において開示された内容を拡張ないし一般化できるとはいえない。
(2) 当審合議体の判断
訂正後の請求項1に係る発明である本件発明が、本件特許明細書の発明の詳細な説明において、発明の課題が解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものであるか否かを検討する。
本件特許明細書の発明の詳細な説明には、以下の記載がある。
ア 本件特許明細書の発明の詳細な説明の記載
(ア) 発明が解決しようとする課題
「【0002】
従来、化粧料に毛穴ぼかし効果、素肌感・透明感だけでなく塗布時の感触やすべり性を向上させる目的で、架橋シリコーン粉体(特許文献1参照)、ナイロン粉体(特許文献2参照)、アクリル粉体(特許文献3参照)等の球状ポリマー粉体を配合することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1-165509号公報
【特許文献2】特開平7-300410号公報
【特許文献3】特表平10-502389号公報
【特許文献4】特許第3998519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これらの球状ポリマー粉体を皮膚外用剤に配合する場合、経時で皮脂を吸着して肌が乾燥すること等の問題があった。
そこで本発明は、化粧持ちが良好で、保湿効果が持続する皮膚外用剤を提供することを課題とする。」
(イ) 課題を解決するための手段及び発明の効果
「【0005】
本発明者らは、かかる課題について鋭意検討した結果、本発明を完成するにいたった。すなわち本発明は、
(A)及び(B)を含有する皮膚外用剤を提供する。
(A):窒化ホウ素、硫酸バリウム、アシルアミノ酸粉体、光輝性粉体、球状シリカ、球状炭酸カルシウム、球状セルロース、球状スターチ、球状化工デンプン及び球状シルクから選択される1種又は2種以上
(B):平均粒子径が0.1~20μmである球状ガラスビーズ
【発明の効果】
【0006】
本発明の皮膚外用剤は、球状粉体の有するなめらかな使用感はそのままに、保湿効果が持続するという効果を発揮する。」
(ウ) 成分(A)について
「【0008】
窒化ホウ素は通常の皮膚外用剤に用いられるものであれば特に制限されずに使用することができる。窒化ホウ素の形態としては、六方晶、ウルツ鉱型構造、立方晶、菱面体晶、乱層構造等のいずれでも良く、使用性の点から、六方晶のものが好ましい。
【0009】
窒化ホウ素は、肌に塗布した際の付きの良さの点から、平均粒子径が3~40μmのものが好ましく、5~30μmのものがより好ましく、12~20μmのものがより好ましい。形状は、板状であることが好ましい。
【0010】
市販の窒化ホウ素としては、SHP-3、SHP-4、SHP-5、SHP-6、SHP-7(以上、水島合金鉄社製)、BORON NITRADE POWDER SA08(NATIONAL NITRADE TECH社製)、Boroneige SF-3Boroneige SF-9、Boroneige SF-12(以上メルク社製)等が挙げられる。
【0011】
窒化ホウ素を配合する場合の含有量は、肌に塗布した際の付きの良さ、伸びの良さ、塗り広げやすさ、塗布後のべたつきを抑制する点から、皮膚外用剤全量に対し、0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましく、35質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。
【0012】
硫酸バリウムは通常の皮膚外用剤に用いられるものであれば特に制限されずに使用することができる。硫酸バリウムの形状としては、板状の他、バタフライ状、アモルファス状、球状等のものを使用することができる。また硫酸バリウムをシリコーン処理、アルキル処理、アルキルシラン処理、金属石鹸処理、水溶性高分子処理、アミノ酸処理、N-アシルアミノ酸処理、レシチン処理、有機チタネート処理、ポリオール処理、アクリル樹脂処理、メタクリル樹脂処理、ウレタン樹脂処理等で表面処理したものを用いることもできる。なお、球状硫酸バリウムについては、別途記載する。板状硫酸バリウムの市販品としては、板状硫酸バリウム H、板状硫酸バリウム HG、板状硫酸バリウム HL(以上堺化学社製)等を用いることができる。
【0013】
硫酸バリウムを配合する場合の含有量は、皮膚外用剤全量に対し、0.1質量%以上が好ましく、0.2質量%以上がより好ましく、0.5質量%以上がさらに好ましく、35質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。
【0014】
アシルアミノ酸粉体は通常の皮膚外用剤に用いられるものであれば特に制限されずに使用することができる。アシルアミノ酸粉体として具体的には、ラウロイルリジン、パルミトイルリジン、カプロイルリジン等のアシルリジン;ステアロイルオルニチン等のアシルオルニチン;ラウロイルアルギニン等のアシルアルギニン;ココイルヒスチジン等のアシルヒスチジン等のアシル塩基性アミノ酸等が挙げられる。市販品としては、ラウロイルリジンであるアミホープLL(味の素社製)等を用いることができる。
【0015】
アシルアミノ酸粉体を配合する場合の含有量は、皮膚外用剤全量に対し、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.3質量%以上がさらに好ましく、15質量%以下が好ましく、12質量%以下がより好ましく、10質量%以下がさらに好ましい。
【0016】
光輝性粉体は、通常の皮膚外用剤に用いられるものであれば特に限定されず、例えば、マイカ、セリサイト、合成マイカ、合成セリサイト、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、劈開タルク、板状無水ケイ酸、板状酸化アルミニウム、板状カオリン、板状窒化硼素、板状酸化チタン、板状セルロース等の体質粉体、雲母チタン、オキシ塩化ビスマス、有機顔料処理雲母チタン、二酸化チタン被覆雲母、二酸化チタン被覆合成金雲母、二酸化チタン被覆オキシ塩化ビスマス、酸化鉄雲母チタン、紺青処理雲母チタン、カルミン処理雲母チタン、魚鱗箔、二酸化チタン被覆ガラス末、ポリエチレンテレフタレート・アルミニウム・エポキシ積層末、ポリエチレンテレフタレート・ポリオレフィン積層フィルム末、ポリエチレンテレフタレート・ポリメチルメタクリレート積層フィルム末等の樹脂積層末等の光輝性粉体等が挙げられ、これらの1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、マイカ、合成マイカ、ガラス末を母体とする光輝性粉体が光沢が良く好ましい。なお、これらの光輝性粉体は、フッ素系化合物、シリコーン系化合物、金属石鹸、レシチン、水素添加レシチン、コラーゲン、炭化水素、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル、ワックス、ロウ、界面活性剤、アミノ酸及びその誘導体、多価アルコール等の1種又は2種以上を用いて表面処理を施してあっても良い。
【0017】
光輝性粉体を配合する場合の含有量は、皮膚外用剤全量に対し、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、0.3質量以上がさらに好ましく、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましい。
【0018】
球状シリカ、球状炭酸カルシウム、球状硫酸バリウム、球状セルロース、球状スターチ及び球状化工デンプンは球状粉体である。球状とは、真球状のほか、楕円状や球状表面の一部又は全体に凹凸を有する略球状のものも用いることができる。また、球状であれば、全体が単一の成分で構成されるもの、コア-シェル型のように内核と外殻が異なる成分で構成されるもの、内部に異なる成分が分散しているもの、内部に空洞を有する中空粉体等であっても特に制限されずに用いることができる。
【0019】
球状粉体を皮膚外用剤に配合する場合、皮膚外用剤全組成中に0.1~40質量%、特に0.5~30質量%の球状粉体を含有することが好ましい。0.1質量%未満の配合では、伸びを軽くする効果が感じられない場合がある。40質量%を超えて配合しても、さらなる伸びの改善効果が認められない場合があり、非経済的である。
【0020】
球状シリカは、無水ケイ酸、二酸化ケイ素とも呼ばれ、平均粒子径が1~50μmであることが好ましい。球状シリカは多孔質、中空、無孔質のいずれを用いてもよい。かかる球状シリカの市販品として、ゴッドボールE-6C、E-16C、D-11C、D-25C、D11-796C、E2-824C、ゴッドボールE-90C、STパウダーG-MG、STパウダーG-MY(以上鈴木油脂工業社製)、サンスフェアNP-30、H-31、H-51、H-32、H-52、H-121、H-201(AGCエスアイテック社製)、シリカマイクロビードP-500、P-4000(以上日揮触媒化成社製)、シリカビーズSB-150、SB-300、SB-700、SBNP-810(以上、三好化成社製)等があげられる。
【0021】
球状炭酸カルシウムは、平均粒子径が1~50μmであることが好ましい。本発明で用いる球状炭酸カルシウムは市販品でもよく、例えば、「かるまる SCS-M5(堺化学工業社製)」があげられる。
【0022】
球状硫酸バリウムは、平均粒子径が1~50μmであることが好ましい。本発明で用いる球状硫酸バリウムは市販品でもよく、例えば、「ばりまる(堺化学工業社製)」があげられる。
【0023】
球状セルロースは、平均粒子径が1~50μmであることが好ましい。球状セルロースは、結晶セルロースそのものでもよく、またカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等セルロース誘導体であってもよい「CELLULOBEADS D-10(大東化成社製)」、「CELLULOBEADS USF(大東化成社製)」等があげられる。
【0024】
球状スターチは、平均粒子径が1~50μmであることが好ましい。スターチの由来としては特に限定されないが、トウモロコシ、タピオカ、コメ、アマランサス、小麦、馬鈴薯等が例示される。スターチは、疎水化処理を施したものを用いることが好ましい。
【0025】
球状化工デンプンは、デンプンを物理的・化学的あるいは酵素的処理を加えることによって、天然デンプンの特性を改良したデンプンの総称であり、例えばヒドロキシプロピルデンプン、ヒドロキシプロピルリン酸架橋デンプン、リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプン、リン酸架橋デンプン、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、オクテニルコハク酸デンプンアルミニウム、オクテニルコハク酸デンプンカルシウム等が挙げられるが、オクテニルコハク酸澱粉アルミニウムを用いることが好ましい。球状化工デンプンは、疎水化処理を施したものを用いることが好ましい。
【0026】
球状シルクは、シルクを球状に加工したものであり、平均粒子径が1~50μmであることが好ましい。球状シルクは、疎水化処理を施したものを用いることが好ましい。」
(エ) 成分(B)について
「【0028】
本発明の皮膚外用剤は、(B)平均粒子径が0.1~20μmである球状ガラスビーズ(以下単にガラスビーズと称する場合がある。)を含有する。球状ガラスビーズの平均粒子径は、0.1μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましく、5μm以上がさらに好ましく、7μm以上が一層好ましい。また、球状ガラスビーズの平均粒子径は、20μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましく、13μm以下がさらに好ましい。さらに、球状ガラスビーズの平均粒子径は、滑らかさと化粧持ちの観点から、好ましくは1~20μmであり、より好ましくは5~15μmであり、さらに好ましくは7~13μmである。なお、球状ガラスビーズの平均粒子径は、粉体粒子の形状に合わせ、顕微鏡法の原理により個数平均の平均粒子径として測定することができる。
球状ガラスビーズは、中空ガラスビーズ及び中実ガラスビーズのいずれであってもよく、それらを併用して用いてもよいが、中実ガラスビーズを含むことが好ましい。中空ガラスビーズを用いる場合には、製造工程において混合、粉砕、乳化等の工程中でガラスビーズが破損することがあり、皮膚外用剤に中空ガラスビーズとともに破片が混入する可能性がある。
球状ガラスビーズは、化粧品表示名称(INCI名称)としては、ホウケイ酸(Ca/Na;CALCIUM SODIUM BOROSILICATE)、ホウケイ酸(Ca/Al;CALCIUM ALUMINUM BOROSILICATE)等と表示されるが、本発明においてはいずれの表示名称のガラスを用いてもよく、ホウケイ酸(Ca/Na)を用いることがより好ましい。
【0029】
球状ガラスビーズの配合量は特に限定されないが、皮膚外用剤全量に対し、1~30質量%、好ましくは1~20質量%配合することができる。例えば、水媒体又は油媒体の剤型の皮膚外用剤では、球状ガラスビーズは、皮膚外用剤全量に対し1~10質量%がさらに好ましい。また、粉末状又は固形状の剤型の皮膚外用剤では、球状ガラスビーズは、皮膚外用剤全量に対し5~20質量%がさらに好ましい。
球状ガラスビーズはガラスビーズをそのまま用いてもよいし、親水化処理、又は疎水化処理を施したものを用いてもよい。」
(オ) 実施例(評価方法)
「【実施例】
【0031】
・・・
【0033】
実施例の評価方法について述べる。
[乾燥感]
前腕内側部をあらかじめ決められた石鹸を用いて洗浄し、前腕の水分をふき取る。左右前腕に4箇所ずつ3.0cm×3.0cmの領域を記し、実施例若しくは比較例をパフを用いて適量塗布し、塗布直後及び塗布後4時間後の角質水分量を測定した。塗布直後と4時間後の水分量の変化率を算出し、下記の基準で判定した。なお、n数は5で、また、角質水分量はIBS社製SKICON-200EXを用いて測定した。
「○」:実施例のほうが、水分量の増加率が高い、または水分量の減少率が低い。
「△」:実施例、比較例が同等である。
「×」:比較例のほうが、水分量の増加率が高い、または水分量の減少率が低い。
[化粧持ち]
4時間後の前腕内側部に残存している実施例又は比較例を目視で観察し、比較評価した。
「○」:実施例のほうが、残存量が多い。
「△」:実施例、比較例が同等である。
「×」:比較例のほうが、残存量が多い。」
(カ) 実施例(具体例)
「【0034】
ガラスビーズとしては、化粧品表示名称ホウケイ酸(Ca/Na)である商品名「COVABEAD CRYSTAL」(SENSIENT COSMETIC TECHNOLOGIES社製;平均粒子径11μm)を使用した。
【0035】
【表1】
[図:0001436162000018.jpg]
【0036】
【表2】
[図:0001436162000019.jpg]
【0037】
【表3】
[図:0001436162000020.jpg]
【0038】
【表4】
[図:0001436162000021.jpg]
【0039】
【表5】
[図:0001436162000022.jpg]
【0040】
【表6】
[図:0001436162000023.jpg]
【0041】
【表7】
[図:0001436162000024.jpg]
【0042】
【表8】
[図:0001436162000025.jpg]
【0043】
【表9】
[図:0001436162000026.jpg]
【0044】
【表10】
[図:0001436162000027.jpg]
【0045】
【表11】
[図:0001436162000028.jpg]
・・・
【0050】
【表16】
[図:0001436162000029.jpg]
【0051】
【表17】
[図:0001436162000030.jpg]
【0052】
【表18】
[図:0001436162000031.jpg]
【0053】
【表19】
[図:0001436162000032.jpg]
【0054】
【表20】
[図:0001436162000033.jpg]
【0055】
【表21】
[図:0001436162000034.jpg]
【0056】
【表22】
[図:0001436162000035.jpg]
【0057】
【表23】
[図:0001436162000036.jpg]
【0058】
【表24】
[図:0001436162000037.jpg]
【0059】
【表25】
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【0060】
【表26】
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」
イ 当審合議体の判断の内容
上記(ア)の記載から、本件発明の課題は、架橋シリコーン粉体、ナイロン粉体、アクリル粉体等の従来の球状ポリマー粉体を皮膚外用剤に配合する場合に生じる、経時で皮脂を吸着して肌が乾燥すること等の問題を解決できる「化粧持ちが良好で、保湿効果が持続する皮膚外用剤を提供すること」であると認められる。
本件特許明細書の発明の詳細な説明には、上記(イ)のとおり、「(A):窒化ホウ素、硫酸バリウム、アシルアミノ酸粉体、光輝性粉体、球状シリカ、球状炭酸カルシウム、球状セルロース、球状スターチ、球状化工デンプン及び球状シルクから選択される1種又は2種以上」及び「(B):平均粒子径が0.1~20μmである球状ガラスビーズ」を含有する皮膚外用剤は、「球状粉体の有するなめらかな使用感はそのままに、保湿効果が持続するという効果を発揮する」ことが記載され、上記(ウ)~(エ)のとおり、成分(A)及び成分(B)について、使用される具体的な形態及び種類、並びに含有量の好ましい範囲が記載されている。特に、成分(B)の球状ガラスビーズについて、上記(エ)において、本件発明の課題と密接な関係を有する滑らかさと化粧持ちの観点から、球状ガラスビーズの平均粒子径を、1~20μm等の範囲とすることが好ましいことが記載されている。
そして、上記(オ)のとおり、実施例として、保湿効果に関する「乾燥感」の測定方法、及び化粧持ちの測定方法が具体的に記載され、上記(カ)のとおり、球状硫酸バリウム、球状シリカ、球状炭酸カルシウム、球状セルロース、球状スターチ、球状化工デンプン、又は球状シルク等の成分と共に、平均粒子径11μmであるホウケイ酸(Ca/Na)の球状ガラスビーズを含有する皮膚外用剤は、当該球状ガラスビーズの代わりにナイロン粉体、アクリル粉体等の従来の球状ポリマー粉体を含有する皮膚外用剤に比して、上述の乾燥感及び化粧持ちがいずれも良好であったことが示されている。
これらの記載に接した当業者であれば、使用する球状ガラスビーズの種類によって特性が多少変化するとしても、皮膚外用剤において、本件発明で特定されている成分(A)と平均粒子径が1~20μmの範囲である球状ガラスビーズの成分(B)とを含有することで、従来の球状ポリマー粉体を含有する皮膚外用剤よりも、良好な保湿性や化粧持ちといった特性を一定程度発揮できることを理解できるといえる。
してみると、本件発明で特定される構成により、上記課題を解決できることを当業者は十分に把握できるといえるから、当業者は、本件発明は上記課題を解決できると認識できるといえる。したがって、本件発明は発明の詳細な説明に記載したものである。
(3) 小括
よって、上記申立理由3によっても、本件特許を取り消すことはできない。
第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、ほかに本件請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700129