特許異議申立
2023-700993
X線透過部材
- 審判番号
- 2023-700993
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2022-562029
- 登録番号
- 7243940
- 請求日
- 2023年09月20日
- 審決日
- 2024年05月28日
- 公報発行日
- 2024年10月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】東レ株式会社
- 【異議申立人】松村 朋子
- 審判長/審判官
- 審判長 三崎 仁
- 審判官 樋口 宗彦
- 審判官 ▲高▼見 重雄
- 分類
- P1652.121-YAA(A61B) / P1652.537-YAA(A61B)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第126条第7項、特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第1号、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7243940号発明「X線透過部材」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7243940号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項11について訂正することを認める。
特許第7243940号の請求項11についての特許異議申立てを却下する。
特許第7243940号の請求項1~4、12~18に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1.手続の経緯
特許第7243940号の請求項1~18に係る特許についての出願の手続の経緯は概略、以下のとおりである。
令和4年(2022年)8月29日(優先権主張 令和3年9月1日): 本件特許の国際出願
令和5年3月13日: 特許権の設定登録
同年 3月22日: 特許掲載公報の発行
同年 9月20日: 特許異議の申立て(特許異議申立人:松村朋子;以下「申立人」という)
令和6年1月17日付け: 取消理由の通知
同年 3月11日: 訂正請求書・意見書の提出(特許権者)
なお、上記訂正請求書における訂正の内容が、下記第2の1で記載するとおり、請求項11の削除のみであるから、「審判便覧 第20版」67-05.4の2.「特別の事情について」の(3)(原文は丸数字である)に該当するものである。したがって、特許法第120条の5第5項ただし書の「特別の事情」に該当することから、申立人に意見書を提出する機会を与えないこととした。
第2.訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
上記訂正請求書によりなされた本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおり。
[訂正事項1]
特許請求の範囲の請求項11を削除する。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、訂正前の請求項11を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当する。
また、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面のすべてを総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではなく、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、さらに、訂正の前後で特許請求の範囲に記載された発明の拡張又は変更はないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。
3 独立特許要件の検討が不要なこと
訂正前の請求項11について本件特許異議の申立ての対象とされているので、特許法第120条の5第9項で読み替えて準用する特許法第126条第7項の独立特許要件は課されない。
4 小括
以上のとおりであるから、訂正事項1は訂正要件を満たすことから、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項11について訂正することを認める。
第3.訂正後の本件発明
本件訂正請求により訂正された請求項1~4、12~18に係る発明(以下請求項番号を用い、それぞれ「本件発明1」などという。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~4、12~18に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。ここで、請求項1・2については便宜上分説することとし、各構成単位冒頭の「A」等は当審にて付した分説番号である。以下、該分説番号を用い各構成単位を「構成A」などと呼ぶことがある(以下同様)。また、分説に伴い、文意を損ねない範囲で適宜改行位置の調整を行った。
「【請求項1】
A X線検査機器に用いられるX線透過部材であって、
B 多孔質体を含み、
C 芯材(I)と、芯材(I)の少なくとも片側に繊維強化樹脂からなる表皮材(II)を有し、
D 芯材(I)が前記多孔質体であり、
E 前記多孔質体の表面のJISB0601(2001)で定義される算術平均粗さRaが100μm以下である
F X線透過部材。
【請求項2】
2A X線検査機器に用いられるX線透過部材であって、
2B 芯材(I)と、芯材(I)の少なくとも片側に配置された表皮材(II)と、を有し、
2C 芯材(I)は、多孔質体であり、
2D 表皮材(II)は繊維強化樹脂からなり、
2E 芯材(I)の、表皮材(II)側の接合面が形成する断面曲線のJISB0601(2001)で定義される算術平均粗さRaが50μm以下である2F X線透過部材。
【請求項3】
前記断面曲線の算術平均粗さRaが20μm以下である、請求項2に記載のX線透過部材。
【請求項4】
前記多孔質体の密度が0.05g/cm3以上0.50g/cm3以下である、請求項1~3のいずれかに記載のX線透過部材。
【請求項12】
前記表皮材(II)の厚みの和tsと前記芯材(I)の厚みの和tcの比ts/tcが、0.10以上0.55以下である、請求項1~3のいずれかに記載のX線透過部材。
【請求項13】
表皮材(II)が連続の強化繊維を含む、請求項1~3のいずれかに記載のX線透過部材。
【請求項14】
芯材(I)の多孔質体および/または表皮材(II)の前記強化繊維として炭素繊維を含む、請求項1~3のいずれかに記載のX線透過部材。
【請求項15】
表皮材(II)の繊維強化樹脂のマトリックス樹脂が熱硬化性樹脂である、請求項1~3のいずれかに記載のX線透過部材。
【請求項16】
芯材(I)と表皮材(II)との間に緩衝層(III)を含む、請求項1~3のいずれかに記載のX線透過部材。
【請求項17】
前記X線検査機器が、人体のX線画像を取得する医療機器である、請求項1~3のいずれかに記載のX線透過部材。
【請求項18】
請求項1~3のいずれかに記載のX線透過部材を、X線が透過する領域を構成する構造部材として用いてなるX線検査機器。」
第4.取消理由通知に記載した取消理由について
1 取消理由の概要
訂正前の請求項1~4・11~18に係る特許に対して、当審が令和6年1月17日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。
取消理由1:(進歩性)
本件特許出願の請求項1~4・12~18に係る発明は、本件特許出願(優先日)前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物(甲1~5)に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、本件特許出願(優先日)前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~4・12~18に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法113条第2号に該当し、取り消されるべきである。
甲第1号証(甲1):特開2019-6037号公報
甲第2号証(甲2):国際公開第2019/182076号
甲第3号証(甲3):特開2006-35671号公報
甲第4号証(甲4):特開2008-247号公報
甲第5号証(甲5):「硬質アクリル発泡体 セキスイ フォーマックS/HR」カタログ、積水化成品工業株式会社、2016年2月発行(申立人主張)
具体的には、請求項1・3・4・12~18に係る発明は、甲1に記載された発明に甲2~5に記載された事項(周知技術)を組み合わせて、当業者が容易になし得たことであると主張し、請求項2に係る発明については、さらに以下の甲6を参酌して当業者が容易になし得たことである主張している。
甲第6号証(甲6):甲1の実施例1の申立人による追試実験によって得られた断面画像、実験実施・断面画像作成日:2023年8月8日~同8月10日
取消理由2:(サポート要件)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法113条第4号に該当し、取り消されるべきである。
取消理由3:(実施可能要件)
本件特許は、発明の詳細な説明の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法113条第4号に該当し、取り消されるべきである。
第4-1. 取消理由1(進歩性)について
1 甲号証等
(1)甲号証について
本件特許異議申立人が提出した甲号証等(甲第1~第6号証)は、令和5年9月20日に申立人が提出した特許異議申立書の「5 証拠方法」欄に記載された上記第3.1で記載したとおりのものであり、甲1~4は何れも、上記第3.1に付記したとおり、本件特許の優先日である令和3年(西暦2021年)9月1日より前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となることにより公知となったものである(甲5については後述する。)。
(2)補足資料
申立人は甲5の発行年月の立証に関連して下記補足資料1・2を提出した。
・補足資料1:「甲第5号証の発行年月について」
・補足資料2:「英文社名の変更ならびに丙社ホームページURL変更のお知らせ」、[online]、2020年6月24日、積水化成品工業株式会社、インターネット、<URL:https://www.sekisuikasei.com/jp/news/detail.php?id=138>
(3)甲1の記載事項
甲1には次の記載がある。下線は甲1発明の認定の主たる根拠とした部分について当審にて付したものである。
「【請求項1】
発泡樹脂を含有する芯部と、
炭素繊維を含有する熱硬化性樹脂を有し、前記芯部の表面に密着される表層部と、
を備え、
前記芯部と前記表層部とが密着していない状態における前記芯部の発泡樹脂は、算術平均粗さRaが59μm以下であり、かつ、表面のセルの最大径が0.6mm以下である、
繊維強化複合材料積層体。
・・・
【背景技術】
【0002】
表皮材と発泡樹脂からなる繊維強化複合材料積層体は、一般的に軽量性、剛性、断熱性に優れている。そのため、従来より、フロアパネル、ルーフパネル、ドアパネル等の車両用外板パネルに使用されている。このような積層体としては、例えば、内部が中空に形成されたパネル本体に発泡樹脂を充填した複合パネルや、表皮と発泡樹脂を個別に成形し、接合する複合パネルが知られている。
・・・
【0011】
本実施形態に係る繊維強化複合材料積層体10は、発泡樹脂を含有する芯部1と、炭素繊維を含有する熱硬化性樹脂を有し、さらに芯部1の表面に密着される表層部2とを備えている。図1に示すように、表層部2は芯部1の上面及び下面に接合されており、2枚の表層部2で芯部1を挟み込むように積層されている。
・・・
【0013】
芯部1を構成する発泡樹脂は、複数のセル(気泡)を有する多孔質体であれば特に限定されない。発泡樹脂は、例えば、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、ユリア樹脂、アクリル樹脂、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、ポリアセタール、ポリアミド、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、フッ素樹脂、液晶ポリマーからなる群より選ばれる少なくとも一つの樹脂からなる発泡体を用いることができる。
【0014】
表層部2は、炭素繊維を含有する熱硬化性樹脂を備える平板からなる。具体的には、表層部2は、炭素繊維の束により構成される繊維層と、繊維層に含まれ、熱硬化性樹脂よりなるマトリックス樹脂とを有する炭素繊維強化プラスチックからなる。
【0015】
表層部2を構成する炭素繊維は特に限定されず、例えば、PAN系炭素繊維、ピッチ系炭素繊維及びレーヨン系炭素繊維からなる群より選ばれる少なくとも一種を用いることができる。また、マトリックス樹脂である熱硬化性樹脂も特に限定されず、例えば、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン、シリコーン樹脂、マレイミド樹脂、ビニルエステル樹脂、シアン酸エステル樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種を用いることができる。
【0016】
炭素繊維の束により構成される繊維層の形態は特に限定されず、織物や一方向シートなどを採用することが可能である。また、表層部2では、繊維層を複数積層してもよい。この際、炭素繊維の繊維方向が同じである一方向積層であってもよく、炭素繊維の繊維方向が異なるクロスプライ積層であってもよい。繊維層を複数積層することにより、繊維層に保持されるマトリックス樹脂を増加させることが可能となる。
・・・
【0019】
この際、表面1aのセル1bの深さが大きい場合、表層部前駆体2Aからセル1bに多量の熱硬化性樹脂前駆体3が浸入してしまい、表層部前駆体2Aのセル1bに対向する部位2aにおいて、熱硬化性樹脂前駆体3の含有量が過少となってしまう。この状態で熱硬化性樹脂前駆体3を加熱して硬化させた場合、表層部前駆体2Aの部位2aは他の部位と比較して熱硬化性樹脂が欠損しているため、表層部2の表面2bに斑点状の模様が発生し、樹脂枯れと呼ばれる外観不良を引き起こしてしまう。また、表層部2において樹脂枯れが発生した部位は、マトリックス樹脂である熱硬化性樹脂が欠損しているため強度が低下し、当該部位を起点として繊維強化複合材料積層体の破損が発生する可能性がある。
【0020】
そのため、本実施形態の繊維強化複合材料積層体10において、芯部1と表層部2とが密着していない状態における芯部1の発泡樹脂は、算術平均粗さRaが59μm以下であることが好ましい。芯部1の表面1aの算術平均粗さRaが59μm以下であることにより、表面1aの表面に存在するセル1bの深さが減少する。そのため、表層部前駆体2Aの内部に保持されている熱硬化性樹脂前駆体3は、セル1bの内部に浸入し難くなることから、熱硬化性樹脂前駆体3の含有量が過少となる部位2aを少なくすることができる。その結果、表層部2の表面2bにおける樹脂枯れを抑制し、繊維強化複合材料積層体10の外観を良好にすることが可能となる。なお、本明細書において、芯部1の算術平均粗さRaは、日本工業規格JISB0601-2013(製品の幾何特性仕様(GPS)-表面性状:輪郭曲線方式-用語,定義及び表面性状パラメータ)に基づき測定することができる。
・・・
【0024】
芯部1と表層部2とが密着していない状態における、芯部1の発泡樹脂の算術平均粗さRaの下限は特に限定されないが、当該発泡樹脂の算術平均粗さRaは4μm以上であることが好ましい。芯部1の発泡樹脂の算術平均粗さRaが4μm以上であることにより、芯部1の表面1aにおいて、熱硬化性樹脂前駆体3が浸入するセルが減少するため、表層部前駆体2Aの樹脂枯れを抑制することができる。ただ、芯部1のセル1bに熱硬化性樹脂前駆体3が浸入した状態で硬化した場合、熱硬化性樹脂がセル1bの内面に係合する。このような熱硬化性樹脂によるアンカー効果により、芯部1と表層部2は強固に接合することから、芯部1の表面1aには適度なセル1bが存在することが好ましい。そのため、芯部1の算術平均粗さRaは4μm以上であることが好ましい。
・・・
【0027】
芯部1の発泡樹脂が結晶性高分子からなる場合、芯部1の発泡樹脂の融点Tmが、芯部1と表層部2とを密着させるための成形温度よりも65度以上高いことが好ましい。芯部1の発泡樹脂の融点Tmが成形温度よりも65度以上高いことにより、成形温度で発泡樹脂が溶融することを抑制できるため、外観が良好な繊維強化複合材料積層体10を得ることが可能となる。
【0028】
繊維強化複合材料積層体10は、図1に示すように、芯部1と表層部2とが直接接触して密着している。しかしながら、芯部1と表層部2は直接接触している必要はなく、芯部1と表層部2との間に他の層が介在してもよい。具体的には、図4に示すように、繊維強化複合材料積層体100は、芯部1と表層部2との間に存在する浸透防止層4をさらに備えていてもよい。
・・・
【0029】
上述のように、繊維強化複合材料積層体10の製造段階において、表層部前駆体2Aと芯部1の表面1aとを接触させて加圧した場合、表層部前駆体2Aの熱硬化性樹脂前駆体3は、表層部前駆体2Aから移動してセル1bの内部に浸入してしまう。そのため、熱硬化性樹脂前駆体3が表層部前駆体2Aからセル1bの内部に浸入することを抑制するために、芯部1と表層部前駆体2Aとの間に浸透防止層4を介在させてもよい。芯部1と表層部前駆体2Aとの間に浸透防止層4を介在させた状態で加圧しながら加熱することにより、浸透防止層4によって熱硬化性樹脂前駆体3がセル1bの内部に浸入することを抑制しつつ、熱硬化性樹脂前駆体3を硬化させることができる。その結果、表層部前駆体2Aの厚みを薄くして熱硬化性樹脂前駆体3の含有量を低下させた場合でも、得られる表層部2の樹脂枯れを防止し、表層部2の表面性状を良好に保つことが可能となる。
【0030】
浸透防止層4の形状は、板状又はフィルム状であることが好ましい。また、浸透防止層4の材料は熱硬化性樹脂及び熱可塑性樹脂の少なくとも一方を用いることができる。浸透防止層4を構成する樹脂が熱硬化性樹脂からなる場合、熱硬化性樹脂は上述の表層部2を構成する熱硬化性樹脂と同様のものを用いることができる。浸透防止層4を構成する樹脂が熱可塑性樹脂からなる場合、熱可塑性樹脂は特に限定されず、例えばポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、エラストマー系(スチレン系、オレフィン系、ポリ塩化ビニル(PVC)系、ウレタン系、エステル系、アミド系)樹脂、ポリエステル系樹脂、エンジニアリングプラスチック、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、アクリル樹脂、エチレンアクリレート樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリエステルエラストマー、ポリアミドエラストマー、液晶ポリマー、ポリブチレンテレフタレートからなる群より選ばれる少なくとも一種を用いることができる。この中でも、浸透防止層4を構成する樹脂としては、エポキシ樹脂及びポリエチレンテレフタレート(PET)の少なくとも一方を用いることが好ましく、エポキシ樹脂を用いることがより好ましい。
・・・
【0039】
このように、本実施形態に係る繊維強化複合材料積層体10,100は、発泡樹脂を含有する芯部1と、炭素繊維を含有する熱硬化性樹脂を有し、芯部1の表面1aに密着される表層部2とを備える。そして、芯部1と表層部2とが密着していない状態における芯部1の発泡樹脂は、算術平均粗さRaが59μm以下であり、かつ、表面1aのセル1bの最大径が0.6mm以下である。芯部1の表面1aの算術平均粗さRaが59μm以下であり、かつ、表面1aに存在する複数のセル1bの最大径が0.6mm以下であることにより、表層部前駆体2Aの内部に保持されている熱硬化性樹脂前駆体3は、セル1bの内部に浸入し難くなる。そのため、表層部前駆体2Aにおいて熱硬化性樹脂前駆体3の含有量が過少となる部位2aを少なくすることができる。その結果、表層部2の表面2bにおける樹脂枯れを抑制し、繊維強化複合材料積層体10,100の表面性状を良好にすることが可能となる。また、表層部2の樹脂枯れを抑制することで、繊維強化複合材料積層体10,100の破損が発生し難くなることから、繊維強化複合材料積層体10,100の強度を高めることが可能となる。
・・・
【0045】
[実施例1]
まず、芯部を構成する発泡樹脂として、次のものを準備した。なお、発泡樹脂の算術平均粗さRaは、測定装置として株式会社ミツトヨ製コントレーサ(登録商標)CV-3200を用い、表1に示す条件で測定した。
・変性ポリフェニレンエーテル樹脂発泡体、サンフォース(登録商標)(旭化成ケミカルズ株式会社製)、算術平均粗さRa:3.9μm
・ポリエチレンテレフタレート樹脂発泡体、セルペット(登録商標)(積水化成品工業株式会社製)、算術平均粗さRa:18.5μm
・ポリメタクリルイミド硬質発泡体、ROHACELL(登録商標)71SL(ダイセル・エボニック株式会社製)、算術平均粗さRa:57.2μm
・硬質アクリル発泡体、フォーマック(登録商標)#1000(積水化成品工業株式会社製)、算術平均粗さRa:59.0μm
・ポリメタクリルイミド硬質発泡体、ROHACELL 51IG(ダイセル・エボニック株式会社製)、算術平均粗さRa:73.6μm
【0046】
【表1】
[図:0001415279000001.jpg]
【0047】
次に、表層部前駆体として、炭素繊維の束を平織してなる繊維層を三層重ねた積層体に、エポキシ樹脂の前駆体を含浸して半硬化状態にしたプリプレグを準備した。なお、表層部前駆体は、樹脂量Wresinが120g/m2、240g/m2、360g/m2の三種類を準備した。エポキシ樹脂の前駆体としては、三菱レイヨン株式会社製TR3110を用いた。
【0048】
そして、上記発泡樹脂と表層部前駆体とを直接接触させた状態で、成形温度140℃、圧力5MPaで押圧することにより、本例の繊維強化複合材料積層体を得た。なお、本例では、発泡樹脂及び表層部前駆体の組み合わせを変えて、複数種の繊維強化複合材料積層体を作製した。図5では、繊維強化複合材料積層体を成形する前における、芯部を構成する発泡樹脂の算術平均粗さRaと表層部前駆体の樹脂量Wresinとの関係を示している。また、図5は、得られた繊維強化複合材料積層体における表層部を目視で観察した際の樹脂枯れ部位の有無も合わせて示している。
・・・
【0052】
[実施例2]
まず、芯部を構成する発泡樹脂として、次のものを準備した。なお、発泡樹脂の算術平均粗さRaは、実施例1と同様に測定した。
・ポリエチレンテレフタレート樹脂発泡体、セルペット(積水化成品工業株式会社製)、算術平均粗さRa:18.5μm
・ポリメタクリルイミド硬質発泡体、ROHACELL 71SL(ダイセル・エボニック株式会社製)、算術平均粗さRa:57.2μm
・硬質アクリル発泡体、フォーマック#1000(積水化成品工業株式会社製)、算術平均粗さRa:59.0μm
・・・
【0057】
[実施例3]
まず、芯部を構成する発泡樹脂として、次のものを準備した。なお、発泡樹脂の算術平均粗さRaは、実施例1と同様に測定した。さらに、発泡樹脂の表面に存在するセルの最大径を、光学顕微鏡を用いて測定した。
・ポリメタクリルイミド硬質発泡体、ROHACELL 71SL(ダイセル・エボニック株式会社製)、算術平均粗さRa:57.2μm、セル最大径:0.6mm
・硬質アクリル発泡体、フォーマック#1000(積水化成品工業株式会社製)、算術平均粗さRa:59.0μm、セル最大径1.5mmの欠陥が見られるもの
【0058】
次に、表層部前駆体として、炭素繊維の束を平織してなる繊維層を三層重ねた積層体に、実施例1と同じエポキシ樹脂の前駆体を含浸して半硬化状態にしたプリプレグを準備した。なお、表層部前駆体の樹脂量Wresinは、360g/m2とした。
・・・
【0062】
[実施例4]
まず、芯部を構成する発泡樹脂として次のものを準備し、縦30cm横30cmの板状に切断した。なお、発泡樹脂の算術平均粗さRaは、実施例1と同様に測定した。
・硬質アクリル発泡体、フォーマック#1000(積水化成品工業株式会社製)、算術平均粗さRa:59.0μm」
(4)甲1に記載された発明
上記(3)の記載事項に基づき、甲1には次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認める。ここで、各構成単位末尾の括弧内には主たる認定根拠とした記載箇所を示す。
「a フロアパネル・ルーフパネル・ドアパネル等の車両用外板パネルに使用されている、軽量性、剛性、断熱性に優れる繊維強化複合材積層体であって、(【0002】)
b 発泡樹脂を含有する芯部と、(【0011】)
c 芯部の上面及び下面に接合され芯部を挟み込むように積層され、炭素繊維を含有する熱硬化性樹脂を備える平板からなる平板である、芯部の表面に密着される表層部とを有し、(【0011】)・【0014】)
e1 芯部と表層部とが密着していない状態における芯部の発泡樹脂は、JIS B0601-2013に定める条件で測定した算術平均粗さRaが4μm以上59μm以下であり、(【0020】・【0024】・【0045】・【0046】・【表1】)
e2 芯部の発泡樹脂としては例えばフォーマック(登録商標)#1000(積水化成品工業株式会社製;算術平均粗さ59μm)や、ポリエチレンテレフタレート樹脂発泡体「セルペット」(登録商標)(積水化成品工業株式会社製;算術平均粗さRa:18.5μm)が用いられ、(【0045】)
e3 芯部の発泡樹脂と積層前の表層部材料(前駆体)である炭素繊維を含有する熱硬化性樹脂とは、それらを直接接触させた状態で、例えば成形温度140℃、圧力5MPaで押圧することにより、積層されるものである、(【0048】)
f 前記繊維強化複合材積層体であって、(【0002】)
g1 表層部には炭素繊維の一方向シートを採用でき、(【0016】)
g2 また、表層部は炭素繊維の繊維方向が同じである繊維層を複数積層した一方向積層であってよく、(【0016】)
h また、表層部は、炭素繊維の束により構成される繊維層と、繊維層に含まれ、熱硬化性樹脂よりなるマトリックス樹脂とを有する炭素繊維強化プラスチックからなってよく、(【0014】)
i1 また、芯部と表層部との間に他の層として浸透防止層をさらに備えてもよく、(【0028】)
i2 外観を良好とするため、
i21 芯部1の発泡樹脂は、該発泡樹脂が結晶性高分子からなる場合、芯部1の発泡樹脂の融点Tmが、芯部1と表層部2とを密着させるための成形温度よりも65度以上高いことが好ましく、(【0027】)
i22 また、表層部表面に斑点状の模様を発生させ外観不良を引き起こす表層部の表面における樹脂枯れを抑制するために、芯部表面は上記算術平均粗さRa59μm以下であることに加え、表面に存在する複数のセルの最大径が0.6mm以下であるようにしてなる、(【0019】・【0039】)
j 繊維強化複合材積層体。(【0002】)」
(5)甲2の記載事項
甲2には次の記載がある。下線は事項以下において引用・参照した箇所や注目すべき箇所について当審にて付した。以下、他の甲号証についても同様である。
「[請求項1]
X線画像撮影装置に片持ち梁の状態で支持される撮影台であって、
前記撮影台は、装置と接続する面に開口部を有した面状体と、装置と接続する連結部を含み、
前記面状体における少なくともX線照射面は、一方向に引揃えられた炭素繊維とマトリックス樹脂とを含む一方向炭素繊維複合材料を含み、
前記一方向炭素繊維複合材料で形成された領域に、前記連結部が接合されている、撮影台。
・・・
[請求項3]
マンモグラフィ装置本体に片持ち梁の状態で支持される、面状体により形成されたマンモグラフィ装置用撮影台であって、
前記面状体における少なくともX線照射面は、連続繊維とマトリックス樹脂とを含む炭素繊維複合材料を有する表皮材と、前記表皮材より内層側に配された樹脂シートとにより形成された、マンモグラフィ装置用撮影台。
・・・
[請求項5]
前記面状体における少なくとも前記X線照射面は、前記炭素繊維複合材料を有する前記表皮材が、前記樹脂シートを含むコア材の両面に配されたサンドイッチ構造により形成される、請求項3または4に記載のマンモグラフィ装置用撮影台。
[請求項6]
前記樹脂シートがフォーム材である、請求項3か5のいずれか一項に記載のマンモグラフィ装置用撮影台。
・・・
[0016]
・・・また、軽量な樹脂シートを有するためX線透過性が向上して被験者の被曝量が低減され、また炭素繊維複合材料からなる表皮材を有するため、高い剛性を発現して撮影時の荷重負荷によるたわみが抑制されて撮影画像の質が向上することができるマンモグラフィ装置用撮影台を提供できる。
・・・
[0020]
本発明の実施形態に係るマンモグラフィ装置用撮影台は、少なくともX線照射面に一方向炭素繊維複合材料を用いることで、従来の炭素繊維織物複合材料対比、高剛性となるため、たわみ量に影響を与える特性である曲げ剛性を設計指標としたときに、炭素繊維織物複合材料に比べて板厚を薄くすることができる。そのため、マンモグラフィ装置用撮影台を透過して内部のX線検出器に到達するまでのX線強度の減衰が低減される、すなわちX線透過性が向上するため、被験者の被曝量を低減することができる。ここでの板厚とは、X線透過性に寄与するX線照射面の板厚であり、好ましくは、0.5mm以上5.0mm以下である。より好ましくは、0.8mm以上3.5mm以下である。上記の上限と下限のいずれを組み合わせた範囲であってもよい。前記板厚が、0.5mmよりも薄い場合は、撮影台としての剛性を担保できずに撮影時に容易に変形してしまうおそれがある。前記板厚が、5.0mmより厚い場合は、X線透過性が劣るためにX線照射強度を上げる必要があり、1回の撮影における被験者の被曝量が増えるおそれがある。
・・・
[0024]
前記炭素繊維複合材料は、連続繊維の炭素繊維とマトリックス樹脂を含み、連続繊維の形態としては、連続繊維で織組織を形成した織物形態、連続繊維を一方向に引揃えた形態が例示できる。連続繊維の形態としては、これらを単独又は積層したもの、前記2種類を積層したものでも構わない。・・・。
・・・
[0028]
・・・マトリックス樹脂としては、特に限定されないが、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれでも用いることができる。
・・・
[0035]
好ましくは、本発明の実施形態に係る樹脂シートがフォーム材であるのが良い。空隙を含むフォーム材を用いることで、厚さ方向の重量が低減され、X線透過性が向上する。・・・。
・・・
[0074](実施例11)
樹脂シートとして、酸変性ポリプロピレン樹脂(“アドマー(登録商標)”QB510、三井化学(株)製)を押出機にて厚さ1.2mmの樹脂シートを得た。図4に示す片面型9に前記樹脂シート25と炭素繊維織物プリプレグ24を積層した。前記片面型9は、X線照射面を含む天面を形成するA面10とマンモグラフィ装置用撮影台1Aの側面の立ち壁面を形成する3つの面(B面11)とマンモグラフィ装置用撮影台1Aの底面を形成するC面12とを有する。片面型9に炭素繊維織物プリプレグ24と樹脂シート25を賦形する工程は、一枚一枚、片面型9に積層する方法で実施した。
・・・
[0078](実施例12)
樹脂シートとして、酸変性ポリプロピレン樹脂(“アドマー(登録商標)”QB510、三井化学(株)製)を押出機にて厚さ1.2mmの樹脂シートを得た。炭素繊維織物プリプレグを2枚積層したものを2組準備し、前記樹脂シートの両面にそれぞれ積層して積層体を得た。前記積層体を、図10に示す雌型20及び雄型21の一対の両面型内に配して、油圧プレス機を用いて130℃90分間、面圧1.0MPaで加熱加圧して、成型品を得た。なお、面圧は成型前の積層体の面積(積層方向から見た投影面積)から算出した。
前記成型品の外周をNCルーターでトリムして炭素繊維複合材料からなる表皮材と樹脂シートからなるコア材を有する第1の部材22Hを得た(図18a及び図18b)。・・・。
・・・
[0080](実施例13)
樹脂シートとしてアクリルフォーム(“フォーマック(登録商標)”S#1000、積水化学工業(株)製)を切り出して、厚さ1.5mmの樹脂シートを得た。この樹脂シートと一方向炭素繊維プリプレグを[0/90/樹脂シート/90/0]で積層し、積層体を得た。・・・。
・・・。
[0082](実施例14)
樹脂シートとしてポリメタクリルイミドフォーム(“ROHACELL(登録商標)”110HP、ダイセル・エボニック(株)製)を切り出して、厚さ1.5mmの樹脂シートを得た。この樹脂シートと一方向炭素繊維プリプレグを[0/90/樹脂シート/90/0]で積層し、積層体を得た。」
(6)甲3の記載事項
甲3には次の記載がある。
「【請求項1】
次の構成要素[A]、[B]、[C]を含み、構成要素[B]の片側に厚みが5~300μmの構成要素[C]、もう一方の側に構成要素[A]となる積層構成を有し、かつFRP構造体の中立面が[A]の内部にあることを特徴とするFRP構造体。
[A]熱可塑性樹脂発泡体層
[B]連続炭素繊維を強化繊維とするFRP層
[C] シート状樹脂層
・・・
【請求項13】
全体の厚みが、0.8~5.0mmである請求項1~12のいずれかに記載のFRP構造体。
・・・
【請求項16】
X線透過性が必要な医療機器部品として使用される請求項1~15のいずれかに記載のFRP構造体。
・・・
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、熱可塑性樹脂発泡体層、連続炭素繊維を強化繊維とするFRP層、およびシート状樹脂層が順に配された積層構造を含み、FRP構造体の中立面が熱可塑性樹脂発泡体層の内部に配置されていて、シート状樹脂層の厚みが5~200μmの範囲内であることから、高剛性、軽量かつX線透過性が高く、制振性に優れたFRP構造体を得ることができる。」
(7)甲4の記載事項
甲4には次の記載がある。
「【請求項1】
芯材に2層以上のFRP層を積層してなるX線撮影装置用天板であって、上面はFRP層がシート状樹脂を挟まずに積層されており、底面はFRP層の間にシート状樹脂を挟んで積層されていることを特徴とするX線撮影装置用天板。
・・・
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれかに記載のX線撮影装置用天板において、前記芯材が樹脂発泡体であることを特徴とするX線撮影装置用天板。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、医療機器用天板においては、昨今のスキャン範囲の拡大や、体重の重い患者への対応の必要性により、高い強度が求められるようになってきた。上記従来技術1の医療機器用天板のような芯材にFRP層だけを積層しているものの場合は、所望の強度を得るためにFRP層の積層数を増やすことにより厚さを増やすことが考えられるが、高コストとなる問題点がある。また、上記従来技術2のFRP層とシート状樹脂の積層体で芯材を覆った天板の構造については、前記積層体の厚さが厚くなり、強度を高めることが可能であると考えられ、また、所望の強度を得るために必要なFRP層の数が少なくて済み、高コストになることを抑えることができると考えられる。ところが、X線吸収が増加してしまう問題点がある。そこで、本発明の目的は、強度を高めると共にX線吸収の増加を抑制したX線撮影装置用天板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1の観点では、本発明は、芯材に2層以上のFRP層を積層してなるX線撮影装置用天板であって、上面はFRP層がシート状樹脂を挟まずに積層されており、底面はFRP層の間にシート状樹脂を挟んで積層されていることを特徴とするX線撮影装置用天板を提供する。
上記第1の観点によるX線撮影装置用天板では、被検体および天板自身の荷重を支える底面については、FRP層に比べて安価なシート状樹脂層をFRP層の間に挟むため、所望の剛性(厚さ)を得るために必要なFRP層の数が少なくて済み、コストを低減できる。さらに、上面はFRP層の間にシート状樹脂を挟まないため、上面のFRP層の間にもシート状樹脂を挟む構造に比べてX線吸収の増加を抑制することが出来る。
・・・
【0026】
実施例1に係るクレードル10によれば、被検体Kおよびクレードル10の荷重を支える底面については、CFRP層12に比べて安価な樹脂フィルム13をCFRP層12の間に挟むため、所望の剛性(厚さ)を得るために必要なCFRP層12の数が少なくて済み、高コストとなることを抑えながら、強度の高い天板を得ることができる。さらに、上面はCFRP層12の間に樹脂フィルム13を挟まないため、上面のCFRP層12の間にも樹脂フィルム13を挟む構造に比べてX線吸収の増加を抑制することが出来る。」
(8)甲5の記載事項
ア 記載5-1
[図:0001415279000002.jpg]
イ 記載5-2
[図:0001415279000003.jpg]
ウ 記載5-3
[図:0001415279000004.jpg]
エ 記載5-4
[図:0001415279000005.jpg]
オ 記載5-5
[図:0001415279000006.jpg]
(9)甲5の発行年月について
甲5カタログには発行年月を明確に示す記載がないから、甲5のみからはその発行年月を知ることができない。このことについて以下に検討する。
ア 甲5カタログの第4葉左下部には、発行者である「積水化成品工業株式会社」なる社名と、その下に該社HPのものと推察されるURL
「http://www.sekisuiplastics.co.jp」
が記載されている。
イ 一方、補足資料2によれば、甲5の発行者である積水化成品工業株式会社は2020年6月24日に英文社名が変更され、それに伴い該社HPのURLが
「http://www.sekisuiplastics.co.jp」から「http://www.sekisuikasei.com」
に変更されている。
ウ 甲5に記載された発行者のURL(上記ア)は前記変更前のものであるから、このことと上記イで認定された事実を合わせみれば、甲5は前記英文社名(URL)変更前、すなわち2020年6月24日よりも前に発行されたものであると推認される。
エ 一方、甲5の第4葉右下部には、
「1801SD291.5-500
1602SD291.2(改)-1000
1212SD291.1-1000」
なる記載がある。
補足資料1において申立人も主張するとおり、商品カタログ類の末尾に、発行(印刷)年月や部数を示すコードを付記することが慣用的に行われているという商慣行上の常識に照らせば、前記記載は前記コードに該当し、前記記載の最下行から順に、甲5カタログの初版が2012年12月に1000部印刷(発行)されたこと、2016年2月に第2版かつ第2刷としての改訂版が1000部印刷(発行)されたこと、2018年1月に第5刷として(前記改訂版が)500部増刷されたこと、を示すものとも推定され得るが、何れの推定発行年月も2020年6月24日より前のものであるから、この推定と上記ウにおける推認事項とは矛盾しない。
オ 以上から、甲5の発行年月は2020年6月24日よりも前であり、例えば2018年1月又は2016年2月であり得ること、すなわち、甲5は本件特許出願の優先日前に公知となった文献であることが推認される。
2 対比・検討
2-1 本件発明1について
(1)対比
ア(ア)発泡樹脂が多孔質の物質であることは技術常識であるから、構成bの「発泡樹脂」は構成B・Dの「多孔質体」に相当し、よって、構成bにおいて「芯部」が「発泡樹脂を含有する」ことは、構成Dの「芯材(I)が前記多孔質体であ」ることに相当し、構成bの「芯部」は構成C・Dの「芯部(I)」に相当する。
(イ)構成cの「炭素繊維を含有する熱硬化性樹脂」は構成Cの「繊維強化樹脂」に相当し、よって、構成cの「芯部の上面及び下面に接合され芯部を挟み込むように積層される、炭素繊維を含有する熱硬化性樹脂を有し、さらに芯部1の表面に密着される表層部」は、構成Cの「芯材(I)の少なくとも片側に繊維強化樹脂からなる表皮材(II)」に相当する。
(ウ)上記(ア)・(イ)から、甲1発明は構成B~Dに相当する構成を備える。
イ 構成Eの「JIS B0601(2001)」すなわちJIS B0601の2001年改正版と、構成e1の「JIS B0601-2013」すなわちJIS B0601の2013年改正版との間で、算術平均粗さRaについての条件に変更はない。よって、構成e1の「芯部と表層部とが密着していない状態における芯部の発泡樹脂は、JIS B0601-2013に定める条件で測定した算術平均粗さRaが4μm以上59μm以下」という条件は、構成Eの「前記多孔質体の表面のJIS B0601(2001)で定義される算術平均粗さRaが100μm以下」なる条件に含まれる。
したがって、本件発明1と甲1発明とは、構成Eに係る「前記多孔質体の表面のJIS B0601(2001)で定義される算術平均粗さRaが100μm以下」である点で一致する。
ウ 甲1発明の「フロアパネル・ルーフパネル・ドアパネル等の車両用外板パネルに使用されている、軽量性、剛性、断熱性に優れる繊維強化複合材積層体」と、本件発明1の「X線検査機器に用いられるX線透過部材」とは、「部材」という限りにおいて共通するものである。
(2)一致点・相違点
本件発明1と甲1発明とは下記アの点で一致し、下記イの点で相違する。
ア 一致点
「B 多孔質体を含み、
C 芯材(I)と、芯材(I)の少なくとも片側に繊維強化樹脂からなる表皮材(II)を有し、
D 芯材(I)が前記多孔質体であり、
E 前記多孔質体の表面のJIS B0601(2001)で定義される算術平均粗さRaが100μm以下である
F’ 部材。」
イ 相違点1-1(構成A・F)
部材(の用途)が、本件発明1では、「X線検査機器に用いられるX線透過部材」であるのに対し、甲1発明では構成aで特定されるように「軽量性、剛性、断熱性に優れる繊維強化複合材積層体」であり、主として「フロアパネル・ルーフパネル・ドアパネル等の車両用外板パネル」としての用途を想定している点。
(3)相違点1-1について
ア 甲1発明と同様の、発泡樹脂など多孔質体の両面を一方向炭素繊維プリプレグで挟んだ積層体からなる部材を、部材の高い強度に期待してX線画像撮影装置の撮影台や天板など高いX線透過性を要する用途に用いることは、甲2(【請求項1】・【請求項5】・【請求項6】・【0052】・【0053】・【0080】;多孔質体として、構成e2と同じ「フォーマック(登録商標)#1000(積水化学工業株式会社製)」使用)、甲3(【請求項1】・【請求項16】)、甲4(【請求項1】・【0004】・【0019】~【0020】)にも記載されるとおり、周知技術である。
そして、甲1発明の「繊維強化複合材積層体」と同様に、上記甲2には、芯材の多孔質体として構成e2と同じ「フォーマック(登録商標)#1000」なる製品(甲2では積水化学工業株式会社製と記載されているが、甲1の同名製品の製造社である積水化成品工業株式会社は前記甲2の製造社である積水化学工業株式会社の関連会社であることから、両甲号証における該同名製品が共通の製品であることは明らかである。以下、甲1・甲2の前記同名製品については、共通の製品であるものとして説示する。)を使用し、その両面に熱硬化性樹脂と炭素繊維とからなる表皮材を接合した積層体部材が、X線画像撮影装置の撮影台用途としてX線透過を要する箇所に使用されることが記載されている。
イ(ア)ここで、甲1発明において芯材に用いられる「フォーマック#1000」なる名称の製品は「積水化学工業株式会社」製であり、甲5に掲載された「フォーマックS#1000」又は「フォーマックHR#1000」は「積水化成品工業株式会社」であり、製造社も製品名も一致しないので別の製品と考えられるが、両製造社が同一企業グループに属することと、製品名の類似性から、実質的に同一の製品であるとも推察され得る。
(イ)しかし、該各製品のカタログである甲5には、製品の特長や物性、機械特性としてX線透過性は記載されていない。
(ウ)また、該製品の用途として「CT検査装置などの寝台部分の芯材」(記載5-3)が写真と共に記載されるものの、該「CT検査装置」がX線CT装置であるかは甲5の記載上不明である。
(エ)仮に、前記甲5記載の「CT検査装置」がX線CTであるか、X線CTを含む概念であると解されるとしても、前記(ウ)で挙げた写真に示されるようなガントリを有するCT装置における「寝台」とは、必ずしもX線が照射されるガントリ内に患者と共に挿通され、X線透過性を要する天板部分を指すとは限らず、むしろ、寝台の上にガントリ内へ進退可能な天板を別部材として可動に設けた構造(寝台は天板の固定台座部分を指し、ガントリ内に進退しない)が一般的である。
甲5において寝台がガントリ内に進退しない可能性については、記載5-3の写真に重畳された、製品使用部分である寝台を示すと推察される赤い破線が、ガントリ内腔よりも幅広の装置部分に対して示されていると看取されることによっても裏付けられる。
(オ)以上(イ)~(エ)から、仮に甲1発明の「フォーマック#1000」と甲5に掲載された「フォーマックS#1000」又は「フォーマックHR#1000」のいずれかとが同一の製品であるとしても、甲5の記載事項から、甲1発明の芯材である「フォーマック#1000」についてX線検査装置におけるX線透過部材としての使用に耐えるX線透過性を備えるものであるとは認められない。
ウ さらに、甲2~甲4の上記摘記箇所随所にも記載されるとおり、X線撮影用の天板や撮影台等の用途のためには、芯材のみならず、上記積層体全体としてのX線透過性が必要となり、X線透過性向上のためには積層体の厚さを薄くする必要が生じる一方、積層体の強度を向上させるためには、その厚みを増す必要が生じること、すなわち、剛性とX線透過性能とについて、積層体の厚さは作用が背反する関係にあることが技術常識であるといえる。
しかし、甲1には、積層体のX線透過性についての言及や示唆が全く記載されていないのに対し、剛性を高めることについては、構成aとして認定したとおりの記載がある。そして、甲1発明として認定した記載箇所を含め、甲1には積層体全体の厚さの好適範囲については何らの具体的言及もない。
エ また、甲1には、構成i2~i22として認定したとおり、車両用外板パネルという用途から、積層体の外観を良好とするための製法上の工程や製品の構造上の特徴に対する要求事項について言及されている。こうした要求事項は、甲2~甲4に記載されたX線透過用途の積層体にはみられないものである。
オ 以上、総合すると、甲1発明の積層体は、X線透過部材用途として必須のX線透過性についてはその性能が未知数であるし、全体の厚さについての特定がなく、車両用外板としての外観を良好とするための製法上の工程や製品の構造上の特徴を追加的に備えてもいることから、構造や素材(芯材や表皮材)から甲2~甲4の記載との類似性をもとにそのX線透過性能を推察することもできない。
よって、当業者が甲1発明の「フロアパネル・ルーフパネル・ドアパネル等の車両用外板パネル」を「X線透過部材」に転用することは、その動機付けを欠き、直ちに想到し得るとはいえない。
カ 以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1に記載された発明、甲2~甲4の記載事項により裏付けられる周知技術、及び甲5の記載事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。
なお、甲6は、上記第4の1で記載したように、甲1の実施例1の申立人による追試実験によって得られた断面画像を示すものであり、上記ア~オの判断に何ら影響を及ぼすものではない。
2-2 本件発明2について
(1)対比
ア 本件発明2及びこれを引用する本件発明3の構成2A~2Dにおける特定事項は、表現ぶりが異なるものの、本件発明1の構成A~Dにおける特定事項とその内容が共通する。
よって、本件発明2・3と甲1発明とは、構成2Fに関し、上記相違点1-1と同様の点(便宜上「相違点2F」という。)で相違する。
イ さらに、本件発明2と甲1発明とは、次の点でも相違する。
相違点2-1(構成2E)
本件発明2では、「芯材(I)の、表皮材(II)側の接合面が形成する断面曲線のJIS B0601(2001)で定義される算術平均粗さRaが50μm以下」であるのに対し、甲1発明では、(接合前の)芯材表面の算術平均粗さRaについての数値範囲が特定されるのみで、「芯材(I)の、表皮材(II)側の接合面が形成する断面曲線の」前記算術平均粗さRaの数値範囲については不明である点。
(2)相違点2Fについて
上記(1)アで説示したとおり、相違点2Fは上記相違点1-1と同様の、甲1発明の用途変更(転用)に関するものである。
よって、上記2-1(3)で説示したことと同様の理由により、甲1発明において相違点2Fに係る転用を経て本件発明2に想到することは、当業者が容易になし得たこととはいえない。
(3)小括
したがって、本件発明2は、相違点2F以外の相違点について検討するまでもなく、甲1に記載された発明、甲2~甲4の記載事項に裏付けられる周知技術、及び甲5の記載事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。
2-3 本件発明3・4・12~18について
本件発明3・4・12~18は何れも、本件発明1又は本件発明2をさらに減縮した発明であり、甲1発明との間に、相違点1-1又は相違点2Fを共通に有する。
そして、甲1発明において、相違点1-1(2F)の構成とすることの非容易想到性については上記1-1(3)、2-2(2)において説示したとおりである。
したがって、本件発明3・4・12~18は、甲1に記載された発明、甲2~甲4の記載事項により裏付けられる周知技術、及び甲5の記載事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものではない。
第4-2.取消理由2(サポート要件)・取消理由3(実施可能要件)について
取消理由2・3は本件訂正前の請求項11に記載された「前記多孔質体の目付の変動係数が5%以下である」との特定事項に関連して通知したものである。
しかし、本件訂正により請求項11は削除された。
また、本件訂正により、前記特定事項は他の何れの請求項にも付加されていない。
よって、取消理由2・取消理由3は、理由のないものとなった。
第5.むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件請求項1~4及び12~18に係る特許を取り消すことはできない。
そして、他に本件請求項1~4及び12~18に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
また、本件請求項11に係る特許は、訂正により削除された。これにより、申立人による特許異議の申立てについて、請求項11に係る申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-700993