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特許異議申立

2025-700685

プレキャストコンクリート製品を硬化させるためのシステムおよび方法

審判番号
2025-700685
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-534257外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
登録番号
7609871
請求日
2025年07月04日
審決日
2026年03月10日
公報発行日
2026年06月26日
結論
訂正認容
当事者
審判長/審判官
分類
P1652.113-YAA(B28B) / P1652.121-YAA(B28B) / P1652.851-YAA(B28B) / P1652.853-YAA(B28B) / P1652.856-YAA(B28B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第120条の5第2項、特許法第29条第1項、特許法第36条第6項第2号、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の8第1項、特許法第120条の5第4項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7609871号発明「プレキャストコンクリート製品を硬化させるためのシステムおよび方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7609871号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~15〕、〔16~20〕、〔21~30〕について訂正することを認める。 特許第7609871号の請求項1~4、8~12、15、16、19~21、23、25、28、29に係る特許を維持する。 特許第7609871号の請求項5~7、13、14、26、27、30に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7609871号(以下、「本件特許」という。)の請求項1~40に係る特許についての出願は、2020年(令和2年)12月10日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2019年12月10日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とするものであって、令和6年12月23日にその特許権の設定登録がされ、令和7年1月7日に特許掲載公報が発行され、その後、同年7月4日に、請求項1~16、19~21、23、25~30に係る特許について、特許異議申立人 森 貴子(以下、「申立人」という。)により、甲第1~8号証を証拠方法として特許異議の申立てがなされ、同年同月29日に申立人より特許異議申立書の手続補正書が提出され、同年8月26日付けで当審より取消理由が通知され、その指定期間内である同年11月26日に特許権者より意見書の提出及び訂正請求がされ(以下、「本件訂正請求」という。)、同年12月4日に特許権者より訂正請求書の手続補正書が提出され、令和8年1月8日に申立人より新たに甲第3~7号証を添付して意見書(以下、「申立人意見書」という。)が提出されたものである。 第2 本件訂正請求による訂正の適否 1 訂正の内容及び一群の請求項について 令和7年12月4日に提出された手続補正書により補正された訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」という。)は、請求の趣旨を、「特許第7609871号の特許請求の範囲を本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~30について訂正することを求める。」とするものであって、その訂正の内容は、以下のとおりである(当審注:下線は訂正箇所であり、当審が付与した。)。 (1) 訂正事項1 訂正前の特許請求の範囲の請求項1に 「コンクリート製品内にキャビティを有し、該キャビティへの開口部を有するコンクリート製品の壁が、圧力を保持するための容器として機能するコンクリート製品を硬化させる方法であって、 コンクリート製品をベース上に位置決めすること、 カバープレートを用いて開口部を密閉すること、 コンクリート製品の炭酸化を実行するために、二酸化炭素(CO2)ガスをキャビティに導入すること、および コンクリート製品が目標仕様に到達するのに応じて、開口部を密閉解除すること、 を含む方法。」と記載されていたのを、 「コンクリート製品内にキャビティを囲む壁を有し、該キャビティへの開口部を有するコンクリート製品の壁が、圧力を保持するための容器として機能するコンクリート製品を硬化させる方法であって、 コンクリート製品をキャスティングし、かつ、脱型すること、 コンクリート製品をベース上に位置決めすること、 カバープレートを用いて開口部を密閉すること、 コンクリート製品の炭酸化を実行するために、二酸化炭素(CO2)ガスをキャビティに導入すること、 ここで、該二酸化炭素(CO2)ガスをキャビティに導入することは、前記炭酸化中、二酸化炭素(CO2)ガスは、コンクリート製品の壁をキャビティから外側に向かって一方向に浸透し、かつ、前記炭酸化中、コンクリート製品の壁の内面が二酸化炭素(CO2)に曝露され、コンクリート製品の壁の外面が環境に曝露されるものである、 および コンクリート製品が目標仕様に到達するのに応じて、開口部を密閉解除すること、 を含む方法。」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~4、8~12及び15も同様に訂正する。)。 (2) 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項5を削除する。 (3) 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項6を削除する。 (4) 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項7を削除する。 (5) 訂正事項5 訂正前の請求項8に 「請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。」と記載されていたのを、 「請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。」に訂正する。 (6) 訂正事項6 訂正前の請求項9に 「請求項1から8のいずれか1項に記載の方法。」と記載されていたのを、 「請求項1から4、8のいずれか1項に記載の方法。」に訂正する。 (7) 訂正事項7 訂正前の請求項10に 「請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。」と記載されていたのを、 「請求項1から4、8から9までのいずれか1項に記載の方法。」に訂正する。 (8) 訂正事項8 訂正前の請求項12に 「請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。」と記載されていたのを、 「請求項1から4、8から11までのいずれか1項に記載の方法。」に訂正する。 (9) 訂正事項9 特許請求の範囲の請求項13を削除する。 (10) 訂正事項10 特許請求の範囲の請求項14を削除する。 (11) 訂正事項11 訂正前の請求項15に 「請求項1から14のいずれか1項に記載の方法。」と記載されていたのを、 「請求項1から4、8~12のいずれか1項に記載の方法。」に訂正する。 (12) 訂正事項12 訂正前の特許請求の範囲の請求項16に 「その中にキャビティを有するプレキャストコンクリート製品の壁が、圧力を保持するための容器として機能するプレキャストコンクリート製品を硬化させるためのシステムであって、該キャビティは、開放されている下端および上端を有し、該システムが、 プレキャストコンクリート製品をその上に受け、キャビティの下端を覆う大きさのベース、 プレキャストコンクリート製品の上に受けられ、キャビティの上端を覆う大きさのカバープレート、 二酸化炭素(CO2)ガス源、および CO2源に流体的に接続され、キャビティに流体的に接続するように構成されたCO2導管、 を備えるシステム。」と記載されていたのを、 「その中にキャビティを有するプレキャストコンクリート製品の壁が、圧力を保持するための容器として機能するプレキャストコンクリート製品を硬化させるためのシステムであって、該キャビティは、開放されている下端および上端を有し、該システムが、 プレキャストコンクリート製品をその上に受け、キャビティの下端を覆う大きさのベース、 プレキャストコンクリート製品の上に受けられ、キャビティの上端を覆う大きさのカバープレート、 二酸化炭素(CO2)ガス源、 ここで、該二酸化炭素(CO2)ガス源は、コンクリート製品をキャスティングし、かつ、脱型し、ついで、コンクリート製品の炭酸化を実行するために、前記炭酸化中、二酸化炭素(CO2)ガスは、コンクリート製品の壁をキャビティから外側に向かって一方向に浸透し、かつ、前記炭酸化中、コンクリート製品の壁が二酸化炭素(CO2)に曝露され、コンクリート製品の壁の外面が環境に曝露される、二酸化炭素(CO2)ガスをキャビティに導入するものであり、 および 該CO2源に流体的に接続され、キャビティに流体的に接続するように構成されたCO2導管、 を備えるシステム。」に訂正する(請求項16の記載を直接的又は間接的に引用する請求項17~20も同様に訂正する。)。 (13) 訂正事項13 訂正前の特許請求の範囲の請求項21に 「その中にキャビティを有するコンクリート製品であって、コンクリート製品の壁が、圧力を保持するための容器として機能するコンクリート製品を硬化させる方法であって、 キャビティを密閉すること、 密閉されたキャビティに二酸化炭素(CO2)ガスを導入することによってコンクリート製品の炭酸化を実行すること、および コンクリート製品が目標仕様に到達したことに応答して、キャビティの密閉を解除すること、 を含む方法。」と記載されていたのを、 「その中にキャビティを有するコンクリート製品であって、コンクリート製品の壁が、圧力を保持するための容器として機能するコンクリート製品を硬化させる方法であって、 コンクリート製品をキャスティングし、かつ、脱型すること、 キャビティを密閉すること、 密閉されたキャビティに二酸化炭素(CO2)ガスを導入することによってコンクリート製品の炭酸化を実行すること ここで、該二酸化炭素(CO2)ガスをキャビティに導入することは、前記炭酸化中、二酸化炭素(CO2)ガスは、コンクリート製品の壁をキャビティから外側に向かって一方向に浸透し、かつ、前記炭酸化中、コンクリート製品の壁の内面が二酸化炭素(CO2)に曝露され、コンクリート製品の壁の外面が環境に曝露されるものである、 および コンクリート製品が目標仕様に到達したことに応答して、キャビティの密閉を解除すること、 を含む方法。」に訂正する(請求項21の記載を直接的又は間接的に引用する請求項22~25、28及び29も同様に訂正する。)。 (14) 訂正事項14 特許請求の範囲の請求項26を削除する。 (15) 訂正事項15 特許請求の範囲の請求項27を削除する。 (16) 訂正事項16 特許請求の範囲の請求項28に 「請求項21から27のいずれか1項に記載の方法。」と記載されていたのを、 「請求項21から25のいずれか1項に記載の方法。」に訂正する。 (17) 訂正事項17 特許請求の範囲の請求項29に 「請求項21から28のいずれか1項に記載の方法。」と記載されていたのを、 「請求項21から25、28のいずれか1項に記載の方法。」に訂正する。 (18) 訂正事項18 特許請求の範囲の請求項30を削除する。 (19) 一群の請求項について 訂正前の請求項1は独立請求項であり、訂正前の請求項2~15はいずれも訂正前の請求項1を引用するものであるから、訂正前の請求項1~15は一群の請求項であるので、訂正事項1~11による特許請求の範囲の訂正は、一群の請求項1~15について請求されたものである。 訂正前の請求項16は独立請求項であり、訂正前の請求項17~20はいずれも訂正前の請求項16を引用するものであるから、訂正前の請求項16~20は一群の請求項であり、訂正事項12による特許請求の範囲の訂正は、一群の請求項16~20について請求されたものである。 訂正前の請求項21は独立請求項であり、訂正前の請求項22~30はいずれも訂正前の請求項21を引用するものであるから、訂正前の請求項21~30は一群の請求項であり、訂正事項13~18による特許請求の範囲の訂正は、一群の請求項21~30について請求されたものである。 そして、本件訂正は、特許法第120条の5第4項所定の規定に従い、一群の請求項ごとにされたものである。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否、独立特許要件について (1) 訂正事項1について 訂正事項1は、複数の訂正事項を含むものであるから、それぞれの訂正事項について検討する。 ア 訂正事項1のうち、「コンクリート製品内にキャビティを有し、」と記載されていたのを、「コンクリート製品内にキャビティを囲む壁を有し、」に訂正する訂正(以下、「訂正事項1-1」という。)は、「コンクリート製品内」の「キャビティ」を、当該「キャビティを囲む壁を有」するものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、本件特許明細書の段落【0005】及び【0012】には、 「【0005】 本明細書は、生コンクリートを二酸化炭素で硬化して強度を得るプレキャストコンクリート製品の製造方法に関するものである。脱型され、任意に前処理されたコンクリート製品の壁は、圧力を保持するための容器として機能する。特定の実施形態では、外部加圧容器も硬化室も、コンクリートを活性化するために利用されない。その代わりに、中空コンクリート製品の内部または外部空間がチャンバとして使用され、二酸化炭素がコンクリート壁を一定方向に貫通する。外部に気密性の高い筐体は、必要ない。この技術革新は、コンクリートパイプ、カルバートボックス、マンホール、箱桁および中空コアスラブを含むがこれらに限定されない、中空プレキャストコンクリート製品などのプレキャストコンクリート製品の生産に関するものである。」 「【0012】 いくつかの実施形態において、本方法は、コンクリート製品を位置決めする前にコンクリート製品を打設および脱型することを含み、コンクリート製品を位置決めするステップおよびCO2を導入するステップは、脱型するステップの後で、脱型するステップに時間的に近接して実行されることを特徴とする。」 と記載され、同段落【0064】~【0066】には、 「【0064】 (システム100) 図1を参照すると、プレキャストコンクリート製品(P)を硬化させるためのシステム100が示されている。システム100は、例えば床のようなベース102と、ベース102上に配置された下部シール104と、カバープレート108に係合した上部シール106とを含む。・・・ 【0065】 この実施形態では、シール104、106およびカバープレート108は、コンクリート製品(P)の対応する部分(複数可)に一致し、密閉するために環状であるが、例えばコンクリート製品(P)が異なる形状である場合などでは、他の形状およびシールが使用されてもよい。・・・ベース102、シール104、106、およびカバープレート108は、少なくとも1つのサイズのプレキャストコンクリート製品(P)内のキャビティ(C)を覆うようにサイズ設定される。いくつかの実施形態では、シール104、106およびカバープレート108は、以下に詳細に説明するように、多数の異なるサイズのプレキャストコンクリート製品(P)および/またはキャビティ(C)のうちの任意の1つを囲んで硬化できるように十分大きく作られている。 【0066】 システム100は、プレキャストコンクリート製品(P)内のキャビティ(C)内にCO2を供給するように動作可能な二酸化炭素(CO2)源110と、キャビティ(C)内のガス圧力を監視するためにカバープレート108を介して取り付けられた圧力計112とを更に含む。・・・」 と記載され、更に【図1】には、以下の記載がある。 「【図1】 [図:0001436197000001.jpg] 」 これらの記載からみれば、本件特許に係る発明における「コンクリート製品」の「キャビティ」は、当該「キャビティを囲む壁を有」することが理解できるから、訂正事項1-1による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正といえ、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 イ 訂正事項1のうち、「圧力を保持するための容器として機能するコンクリート製品を硬化させる方法であって、」の後に「コンクリート製品をキャスティングし、かつ、脱型すること、」を追記する訂正(以下、「訂正事項1-2」という。)は、「コンクリート製品を硬化させる方法」を、更に、「コンクリート製品をキャスティングし、かつ、脱型すること」を含むものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、本件特許明細書の段落【0012】の記載(前記ア)からみれば、本件特許に係る発明の「コンクリート製品を硬化させる方法」は、コンクリート製品を打設および脱型すること、すなわち、「コンクリート製品をキャスティングし、かつ、脱型すること」を含むものであることが理解できるから、訂正事項1-2による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正といえ、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 ウ 訂正事項1のうち、「コンクリート製品の炭酸化を実行するために、二酸化炭素(CO2)ガスをキャビティに導入すること、」の後に、「ここで、該二酸化炭素(CO2)ガスをキャビティに導入することは、前記炭酸化中、二酸化炭素(CO2)ガスは、コンクリート製品の壁をキャビティから外側に向かって一方向に浸透し、かつ、前記炭酸化中、コンクリート製品の壁の内面が二酸化炭素(CO2)に曝露され、コンクリート製品の壁の外面が環境に曝露されるものである、」を追記する訂正(以下、「訂正事項1-3」という。)は、「コンクリート製品を硬化させる方法」を、更に、「該二酸化炭素(CO2)ガスをキャビティに導入することは、前記炭酸化中、二酸化炭素(CO2)ガスは、コンクリート製品の壁をキャビティから外側に向かって一方向に浸透し、かつ、前記炭酸化中、コンクリート製品の壁の内面が二酸化炭素(CO2)に曝露され、コンクリート製品の壁の外面が環境に曝露されるものである」ものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、本件特許明細書の段落【0005】、【0064】~【0066】、【図1】の記載(前記ア)からみれば、本件特許に係る発明の「コンクリート製品を硬化させる方法」は、外部加圧容器も硬化室も、コンクリートを活性化するために利用されない代わりに、中空コンクリート製品の内部又は外部空間がチャンバとして使用され、二酸化炭素がコンクリート壁を一定方向に貫通するものであり、外部に気密性の高い筐体は必要ないものであり、プレキャストコンクリート製品(P)内のキャビティ(C)内にCO2を供給するものであるから、「該二酸化炭素(CO2)ガスをキャビティに導入することは、前記炭酸化中、二酸化炭素(CO2)ガスは、コンクリート製品の壁をキャビティから外側に向かって一方向に浸透し、かつ、前記炭酸化中、コンクリート製品の壁の内面が二酸化炭素(CO2)に曝露され、コンクリート製品の壁の外面が環境に曝露されるものである」ことが理解でき、訂正事項1-3による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正といえ、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 エ 前記ア~ウによれば、訂正事項1による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正といえ、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 (2) 訂正事項2~4、9、10、14、15、18について 訂正事項2~4、9、10、14、15及び18による訂正は、それぞれ、特許請求の範囲の請求項5~7、13、14、26、27及び30を削除するものであるから、いずれも、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正といえ、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 (3) 訂正事項5~8、11、16、17について 訂正事項5~8、11、16及び17による訂正は、それぞれ、訂正事項2~4、9、10、14及び15による請求項5~7、13、14、26及び27の削除に伴い、請求項8~10、12、15、28及び29における選択的引用請求項の一部を削除するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてされたものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4) 訂正事項12について 訂正事項12は、複数の訂正事項を含むものであるから、それぞれの訂正事項について検討する。 ア 訂正事項12のうち、「二酸化炭素(CO2)ガス源、」の後に、「ここで、該二酸化炭素(CO2)ガス源は、コンクリート製品をキャスティングし、かつ、脱型し、ついで、コンクリート製品の炭酸化を実行するために、前記炭酸化中、二酸化炭素(CO2)ガスは、コンクリート製品の壁をキャビティから外側に向かって一方向に浸透し、かつ、前記炭酸化中、コンクリート製品の壁が二酸化炭素(CO2)に曝露され、コンクリート製品の壁の外面が環境に曝露される、二酸化炭素(CO2)ガスをキャビティに導入するものであり、」を追記する訂正(以下、「訂正事項12-1」という。)は、「プレキャストコンクリート製品を硬化させるシステム」の「二酸化炭素(CO2)ガス源」を、更に、「コンクリート製品をキャスティングし、かつ、脱型し、ついで、コンクリート製品の炭酸化を実行するために、前記炭酸化中、二酸化炭素(CO2)ガスは、コンクリート製品の壁をキャビティから外側に向かって一方向に浸透し、かつ、前記炭酸化中、コンクリート製品の壁が二酸化炭素(CO2)に曝露され、コンクリート製品の壁の外面が環境に曝露される、二酸化炭素(CO2)ガスをキャビティに導入するものであ」るものに限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、前記(1)ウに記載したのと同様の理由により、本件特許に係る発明の「プレキャストコンクリート製品を硬化させるシステム」の「二酸化炭素(CO2)ガス源」は、「コンクリート製品をキャスティングし、かつ、脱型し、ついで、コンクリート製品の炭酸化を実行するために、前記炭酸化中、二酸化炭素(CO2)ガスは、コンクリート製品の壁をキャビティから外側に向かって一方向に浸透し、かつ、前記炭酸化中、コンクリート製品の壁が二酸化炭素(CO2)に曝露され、コンクリート製品の壁の外面が環境に曝露される、二酸化炭素(CO2)ガスをキャビティに導入するものであ」ることが理解できるから、訂正事項12-1による訂正は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正といえ、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 イ 訂正事項12のうち、「CO2源に流体的に接続され、」と記載されていたのを「該CO2源に流体的に接続され、」に訂正する訂正(以下、「訂正事項12-2」という。)は、「CO2源」がそれ以前に記載された「二酸化炭素(CO2)ガス源」であることを明確にするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正といえ、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 ウ 前記ア及びイによれば、訂正事項12による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる特許請求の範囲の減縮及び明瞭でない記載の釈明を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正といえ、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 (5) 訂正事項13について 訂正事項13は、複数の訂正事項を含むものであるから、それぞれの訂正事項について検討する。 ア 訂正事項13のうち、「圧力を保持するための容器として機能するコンクリート製品を硬化させる方法であって、」の後に「コンクリート製品をキャスティングし、かつ、脱型すること、」を追記する訂正は、前記(1)イの訂正と同様の訂正であるから、前記(1)イに記載したのと同様の理由により、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正といえ、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 イ 訂正事項13のうち、「密閉されたキャビティに二酸化炭素(CO2)ガスを導入することによってコンクリート製品の炭酸化を実行すること」の後に、「ここで、該二酸化炭素(CO2)ガスをキャビティに導入することは、前記炭酸化中、二酸化炭素(CO2)ガスは、コンクリート製品の壁をキャビティから外側に向かって一方向に浸透し、かつ、前記炭酸化中、コンクリート製品の壁の内面が二酸化炭素(CO2)に曝露され、コンクリート製品の壁の外面が環境に曝露されるものである、」を追記する訂正は、前記(1)ウの訂正と同様の訂正であるから、(1)ウに記載したのと同様の理由により、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正といえ、また、カテゴリーや対象、目的を変更するものではないから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 ウ 前記ア及びイによれば、訂正事項13による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正といえ、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものには該当しない。 (6) 独立特許要件について ア 本件特許異議の申立てにおいては、訂正前の請求項1~16、19~21、23及び25~30に係る発明の特許に対して特許異議の申立てがされているので、これらに対応する本件訂正後の請求項1~4、8~12、15、16、19~21、23、25、28及び29に係る発明については、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定(独立特許要件)は適用されない。 イ 本件特許異議の申立てにおいては、訂正前の請求項17、18、22及び24に係る発明の特許に対しては特許異議の申立てがされていない。 そして、訂正事項12の訂正により、請求項16が特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正をされたことにともなって、前記請求項16を引用する請求項17及び18も同様に訂正されたものであり、訂正事項13の訂正により、請求項21が特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とした訂正をされたことにともなって、前記請求項21を引用する請求項22及び24も同様に訂正されたから、前記訂正前の請求項17、18、22及び24に対応する本件訂正後の請求項17、18、22及び24に係る発明については、独立特許要件について判断する必要があるので、以下、検討する。 本件訂正後の請求項17及び18に係る発明は、いずれも、本件訂正後の請求項16に係る発明を直接的または間接的に引用して更に限定する構成を付加したものであり、本件訂正後の請求項22及び24に係る発明は、いずれも、本件訂正後の請求項21に係る発明を直接的または間接的に引用して更に限定する構成を付加したものである。 そして、本件訂正後の請求項16及び21に係る発明の特許は、後記第6の1(2)ア(オ)、同イ(オ)、同ウ(イ)のとおり、本件特許異議申立理由及び当審が通知した取消理由によっては取り消すことができないものであるから、前記請求項16を引用する本件訂正後の請求項17及び18に係る発明の特許及び前記請求項21を引用する本件訂正後の請求項22及び24に係る発明の特許も、取り消すべき理由を有しない。 したがって、本件訂正後の請求項17、18、22及び24に係る発明は、いずれも取り消すべき理由を有しないから、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項の規定に適合する。 3 小括 よって、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものに該当し、同法同条第9項において準用する同法第126条第5項~第7項の規定に適合するから、訂正後の請求項〔1~15〕、〔16~20〕、〔21~30〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 本件訂正が認められることは前記第2に記載したとおりであるから、本件特許異議申立の対象となり、かつ、削除されていない本件特許の請求項1~4、8~12、15、16、19~21、23、25、28及び29に係る発明は、それぞれ、本件訂正後の特許請求の範囲の請求項1~4、8~12、15、16、19~21、23、25、28及び29に記載された事項により特定される以下のとおりのものである(以下、「本件発明1」などといい、まとめて「本件発明」ということがある。)。 「【請求項1】 コンクリート製品内にキャビティを囲む壁を有し、該キャビティへの開口部を有するコンクリート製品の壁が、圧力を保持するための容器として機能するコンクリート製品を硬化させる方法であって、 コンクリート製品をキャスティングし、かつ、脱型すること、 コンクリート製品をベース上に位置決めすること、 カバープレートを用いて開口部を密閉すること、 コンクリート製品の炭酸化を実行するために、二酸化炭素(CO2)ガスをキャビティに導入すること、 ここで、該二酸化炭素(CO2)ガスをキャビティに導入することは、前記炭酸化中、二酸化炭素(CO2)ガスは、コンクリート製品の壁をキャビティから外側に向かって一方向に浸透し、かつ、前記炭酸化中、コンクリート製品の壁の内面が二酸化炭素(CO2)に曝露され、コンクリート製品の壁の外面が環境に曝露されるものである、 および コンクリート製品が目標仕様に到達するのに応じて、開口部を密閉解除すること、 を含む方法。 【請求項2】 CO2ガスをキャビティに導入することが、キャビティを第1の時間の間、第1の圧力に加圧し、その後、キャビティ内の圧力を第2の時間の間、第2の圧力に上昇させることを含む、請求項1に記載の方法。 【請求項3】 CO2ガスをカバープレートおよび/またはコンクリート製品を通して導入することをさらに含む、請求項1または2に記載の方法。 【請求項4】 開口部がコンクリート製品の開放された上端部および開放された下端部の一方であり、位置決めすることが、開放された上端部および開放された下端部の他方を密閉するようにベース上に開放された上端部および開放された下端部の他方を配置することをさらに含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。 【請求項5】 (削除) 【請求項6】 (削除) 【請求項7】 (削除) 【請求項8】 CO2を導入するステップの前に、コンクリート製品に対して、固化、水和、および前処理の少なくとも1つのステップを実行することをさらに含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。 【請求項9】 CO2ガスを導入するステップの完了後に、コンクリート製品を水和させることをさらに含む、請求項1から4、8のいずれか1項に記載の方法。 【請求項10】 CO2ガスの所定の圧力までキャビティを加圧することをさらに含む、請求項1から4、8から9までのいずれか1項に記載の方法。 【請求項11】 CO2ガスの所定の圧力を変化させることをさらに含む、請求項10に記載の方法。 【請求項12】 コンクリート製品の炭酸化中にCO2ガスの少なくとも一部がキャビティから逃げるように開口部を密閉することをさらに含む、請求項1から4、8から11までのいずれか1項に記載の方法。 【請求項13】 (削除) 【請求項14】 (削除) 【請求項15】 CO2ガスの導入が、5質量%以上99.5質量%以下のCO2濃度でCO2を含むガスを導入することにより実行される、請求項1から4、8~12のいずれか1項に記載の方法。 【請求項16】 その中にキャビティを有するプレキャストコンクリート製品の壁が、圧力を保持するための容器として機能するプレキャストコンクリート製品を硬化させるためのシステムであって、該キャビティは、開放されている下端および上端を有し、該システムが、 プレキャストコンクリート製品をその上に受け、キャビティの下端を覆う大きさのベース、 プレキャストコンクリート製品の上に受けられ、キャビティの上端を覆う大きさのカバープレート、 二酸化炭素(CO2)ガス源、 ここで、該二酸化炭素(CO2)ガス源は、コンクリート製品をキャスティングし、かつ、脱型し、ついで、コンクリート製品の炭酸化を実行するために、前記炭酸化中、二酸化炭素(CO2)ガスは、コンクリート製品の壁をキャビティから外側に向かって一方向に浸透し、かつ、前記炭酸化中、コンクリート製品の壁が二酸化炭素(CO2)に曝露され、コンクリート製品の壁の外面が環境に曝露される、二酸化炭素(CO2)ガスをキャビティに導入するものであり、 および 該CO2源に流体的に接続され、キャビティに流体的に接続するように構成されたCO2導管、 を備えるシステム。」 「【請求項19】 請求項16から18のいずれか1項に記載のシステムであって、 CO2導管が、カバープレート、プレキャストコンクリート製品の壁、およびベースのうちの1つ以上を介してキャビティに流体的に接続し、かつ CO2ガスの供給源は、キャビティを大気圧以上の少なくとも2つの異なる圧力に加圧するように構成される、システム。 【請求項20】 流量制御弁がCO2源と流体連通して配置され、流量制御弁は、キャビティ内へ供給されるCO2ガスの速度および/または圧力を制御するように構成される、請求項16から19までのいずれか1項に記載のシステム。 【請求項21】 その中にキャビティを有するコンクリート製品であって、コンクリート製品の壁が、圧力を保持するための容器として機能するコンクリート製品を硬化させる方法であって、 コンクリート製品をキャスティングし、かつ、脱型すること、 キャビティを密閉すること、 密閉されたキャビティに二酸化炭素(CO2)ガスを導入することによってコンクリート製品の炭酸化を実行すること ここで、該二酸化炭素(CO2)ガスをキャビティに導入することは、前記炭酸化中、二酸化炭素(CO2)ガスは、コンクリート製品の壁をキャビティから外側に向かって一方向に浸透し、かつ、前記炭酸化中、コンクリート製品の壁の内面が二酸化炭素(CO2)に曝露され、コンクリート製品の壁の外面が環境に曝露されるものである、 および コンクリート製品が目標仕様に到達したことに応答して、キャビティの密閉を解除すること、 を含む方法。」 「【請求項23】 CO2ガスをキャビティに導入することが、キャビティを第1の時間の間、第1の圧力に加圧し、その後、キャビティ内の圧力を第2の時間の間、第2の圧力に上昇させることを含む、請求項21または22に記載の方法。」 「【請求項25】 キャビティを密閉することが、カバープレートを用いることをさらに含み、該カバープレートが、CO2ガスの圧力に釣り合うように加重されること、コンクリート製品に近接して配置された部材にヒンジで固定されること、および該部材に対して誘導されることのうちの1つ以上である、請求項21から24のいずれか1項に記載の方法。 【請求項26】 (削除) 【請求項27】 (削除) 【請求項28】 CO2ガスを導入する前に、コンクリート製品に対して、固化、水和、および前処理の少なくとも1つのステップを実行することをさらに含む、請求項21から25のいずれか1項に記載の方法。 【請求項29】 CO2ガスを導入するステップの完了後に、コンクリート製品を水和させることをさらに含む、請求項21から25、28のいずれか1項に記載の方法。 【請求項30】 (削除)」 第4 特許異議申立理由の概要 1 はじめに 本件訂正により、請求項5~7、13、14、26、27及び30は削除されたから、これらの請求項に係る特許に対する特許異議の申立ては対象となる請求項が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項が準用する同法第135条の規定により却下されるものとなった。 このため、前記請求項5~7、13、14、26、27及び30に係る発明の特許に対する特許異議申立理由は、検討の対象としない。 2 特許法第29条第1項、第2項所定の規定違反(新規性、進歩性欠如)について (1) 甲第1号証を主引用例とした場合について ア 設定登録時の特許請求の範囲の請求項1、4、8~10、12、15、21、25、28及び29に係る発明は、甲第1号証に記載された発明である。 イ 設定登録時の特許請求の範囲の請求項2、3、11、16、19、20及び23に係る発明は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~4、6号証に記載された事項に基づいて、又は、甲第1号証に記載された発明、甲第2~4号証に記載された事項及び本件特許の優先日当時の周知技術(甲第6~8号証を引用)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2) 甲第2号証を主引用例とした場合について ア 設定登録時の特許請求の範囲の請求項21、23、28及び29に係る発明は、甲第2号証に記載された発明である。 イ 設定登録時の特許請求の範囲の請求項1~3、8~12、15、16、19、20、23及び25に係る発明は、甲第2号証に記載された発明及び甲第3~6号証に記載された事項に基づいて、又は、甲第2号証に記載された発明、甲第3~5号証に記載された事項及び本件特許の優先日当時の周知技術(甲第6~8号証を引用)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3) 甲第5号証を主引用例とした場合について 設定登録時の特許請求の範囲の請求項21、28及び29に係る発明は、甲第5号証に記載された発明である。 3 証拠方法 甲第1号証:中国特許出願公開第104420580号明細書 甲第2号証:中国特許出願公開第102922598号明細書 甲第3号証:特開2011-256566号公報 甲第4号証:特開2009-149456号公報 甲第5号証:中国特許出願公開第101806118号明細書 甲第6号証:特開2010-100454号公報 甲第7号証:特開2015-54806号公報 甲第8号証:特開2017-114710号公報 第5 取消理由の概要 1 特許法第29条第1項、第2項所定の規定違反(新規性、進歩性欠如)について (1) 甲第1号証を主引用例とした場合について 設定登録時の特許請求の範囲の請求項1、4、8~10、12、15、21、25、28及び29に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるか、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2) 甲第2号証を主引用例とした場合について 設定登録時の特許請求の範囲の請求項1~16、19~21、23及び25~29に係る発明は、甲第2号証に記載された発明であるか、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 2 特許法第36条第6項第2号所定の規定違反(明確性要件違反)について (1) 設定登録時の特許請求の範囲の請求項5に係る発明について 設定登録時の特許請求の範囲の請求項5に係る発明の「第1および第2の圧力が存在する間、カバープレートが開口部を密封し続けるように、第1および第2の圧力をカバープレートで均衡させる」、との発明特定事項は、「第1および第2の圧力をカバープレートで均衡させる」とは「カバープレート」によるどのような操作をいうのかが明らかでないから、意味が不明確であるので、前記請求項5に係る発明は明確でない。 (2) 設定登録時の特許請求の範囲の請求項6、26に係る発明について 設定登録時の特許請求の範囲の請求項6に係る発明の「脱型するステップに時間的に近接して実行される」、との発明特定事項は、「時間的に近接」とはどの程度の時間を意味するのかが明らかでないから、意味が不明確であるので、前記請求項6に係る発明は明確でない。 更に、同様の発明特定事項がある設定登録時の特許請求の範囲の請求項26に係る発明について検討しても事情は同じである。 (3) 設定登録時の特許請求の範囲の請求項7、27に係る発明について 設定登録時の特許請求の範囲の請求項7に係る発明の「脱型のステップの直後に実行される」、との発明特定事項は、「直後」とはどの程度の時間を意味するのかが明らかでないから、意味が不明確であるので、前記請求項7に係る発明は明確でない。 更に、同様の発明特定事項がある設定登録時の特許請求の範囲の請求項27に係る発明について検討しても事情は同じである。 (4) 設定登録時の特許請求の範囲の請求項30に係る発明について 設定登録時の特許請求の範囲の請求項30に係る発明の「キャビティの体積の10%から98%を占めるように少なくとも1つの容器をサイズ調整することをさらに含む」、との発明特定事項は、ここでいう「少なくとも1つの容器」が何を意味するのかが明らかでなく、更に、「少なくとも1つの容器をサイズ調整する」ことが、「容器」のどのような操作をいうのかが明らかでないから、意味が不明確であるので、前記請求項30に係る発明は明確でない。 第6 特許異議申立理由及び取消理由についての当審の判断 事案に鑑み、前記第4の特許異議申立理由及び第5の取消理由についてまとめて判断する。 1 特許法第29条第1項、第2項所定の規定違反(新規性、進歩性欠如)について (1) 甲各号証の記載事項等 ア 甲第1号証の記載事項及び甲第1号証に記載された発明 (ア) 甲第1号証には、以下のa~cの記載がある(当審注:下線は当審が付与した。以下、同様である。)。 a 「 [図:0001436197000002.jpg] 」(特許請求の範囲) (当審訳:4.プレキャスト中空コンクリート部材の製造方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする方法: aコンクリート製造工程:コンクリート骨材、セメント及び水を所定割合で混合してコンクリートを形成する。 b柱状基材製造工程:円形鋼管の外側に角鋼管を挿入し、角鋼管と円形鋼管との間に鉄筋を溶接する。 cコンクリート充填工程:角鋼管と円形鋼管との間の空洞にコンクリートを部分的に注入し、残りのコンクリートを遠心回転により円形鋼管内に注入して、円形鋼管の内壁に付着した柱状の空洞を形成する。 d蒸気養生工程:コンクリートを充填した柱状基材を常圧蒸気養生プールに引き上げ、1~2時間静置した後、90~100℃まで徐々に加熱し、常圧で4~8時間養生する。その後、オートクレーブに入れ、180~200℃、飽和蒸気圧1.0MPa、8~12時間の高温蒸気養生を行う。 e中空コンクリート部材の成形:蒸気養生後、マトリックスの柱状の空洞にドライアイスを充填し、2枚のエンドプレートで柱状の空洞を密閉する。ドライアイスが昇華した後に発生する二酸化炭素がコンクリートと反応する。) b 「 [図:0001436197000003.jpg] 」 (当審訳:具体的な実施方法 [0018] 図1に示すように、プレキャスト中空コンクリート部材は、コンクリート骨材、セメント及び水を所定の割合で混合して形成されたコンクリート1と、コンクリートを収容する柱状基材とを備える。柱状基材は、角鋼管2と円形鋼管3とから構成され、角鋼管2は円形鋼管3の外側にスリーブ状に嵌合され、角鋼管2と円形鋼管3との間には鉄筋4が溶接されている。コンクリートは、角鋼管と円形鋼管との間の空洞に部分的に注入され、残りのコンクリートは円形鋼管内に注入され、遠心回転させることにより、円形鋼管の内壁に接合された柱状の空洞5が形成される。この柱状の空洞は、2枚のエンドプレートで密閉され、ドライアイスが柱状の空洞内に充填される。ドライアイスが昇華した後に発生する二酸化炭素は、コンクリートと反応する。 [0019] プレキャスト中空コンクリート部材の製造方法は、以下の工程を含む。 [0020] aコンクリートの準備:コンクリート骨材、セメント及び水を所定の割合で混合してコンクリートを形成する。 [0021] b柱状基材の準備:円形鋼管の外側に角鋼管を挿入し、角鋼管と円形鋼管の間に鉄筋を溶接する。 [0022] cコンクリートの充填:角鋼管と円形鋼管の間の空洞にコンクリートを部分的に注入し、残りのコンクリートを円形鋼管に注入して柱状の空洞を形成し、遠心回転により円形鋼管の内壁に接着する。 [0023] d蒸気処理:コンクリートを充填した柱状基材を常圧蒸気養生プールに引き上げ、1~2時間放置した後、90~100℃まで徐々に加熱し、常圧で4~8時間養生する。その後、オートクレーブに入れ、180~200℃、飽和蒸気圧1.0MPa、8~12時間の高温蒸気養生を行う。 [0024] e中空コンクリート部材の形成:蒸気養生後、マトリックスの柱状の空洞にドライアイスを充填し、2枚のエンドプレートで柱状の空洞を密閉する。ドライアイスが昇華した後に発生する二酸化炭素がコンクリートと反応する。) c 「 [図:0001436197000004.jpg] 」 (イ) 前記(ア)aの記載によれば、甲第1号証には、プレキャスト中空コンクリート部材の製造方法であって、以下の工程を含む方法:aコンクリート製造工程:コンクリート骨材、セメント及び水を所定割合で混合してコンクリートを形成する。b柱状基材製造工程:円形鋼管の外側に角鋼管を挿入し、角鋼管と円形鋼管との間に鉄筋を溶接する。cコンクリート充填工程:角鋼管と円形鋼管との間の空洞にコンクリートを部分的に注入し、残りのコンクリートを遠心回転により円形鋼管内に注入して、円形鋼管の内壁に付着した柱状の空洞を形成する。d蒸気養生工程:コンクリートを充填した柱状基材を常圧蒸気養生プールに引き上げ、1~2時間静置した後、90~100℃まで徐々に加熱し、常圧で4~8時間養生する。その後、オートクレーブに入れ、180~200℃、飽和蒸気圧1.0MPa、8~12時間の高温蒸気養生を行う。e中空コンクリート部材の成形:蒸気養生後、マトリックスの柱状の空洞にドライアイスを充填し、2枚のエンドプレートで柱状の空洞を密閉する。ドライアイスが昇華した後に発生する二酸化炭素がコンクリートと反応する。が記載されている。 具体的には、前記(ア)b、cの記載によれば、プレキャスト中空コンクリート部材は、コンクリート骨材、セメント及び水を所定の割合で混合して形成されたコンクリート1と、コンクリートを収容する柱状基材とを備え、柱状基材は、角鋼管2と円形鋼管3とから構成され、角鋼管2は円形鋼管3の外側にスリーブ状に嵌合され、角鋼管2と円形鋼管3との間には鉄筋4が溶接されており、コンクリートは、角鋼管と円形鋼管との間の空洞に部分的に注入され、残りのコンクリートは円形鋼管内に注入され、遠心回転させることにより、円形鋼管の内壁に接合された柱状の空洞5が形成され、この柱状の空洞は、2枚のエンドプレートで密閉され、ドライアイスが柱状の空洞内に充填され、ドライアイスが昇華した後に発生する二酸化炭素は、コンクリートと反応するものである。 そして、プレキャスト中空コンクリート部材の製造方法は、以下の工程を含むものである。aコンクリートの準備:コンクリート骨材、セメント及び水を所定の割合で混合してコンクリートを形成する。b柱状基材の準備:円形鋼管の外側に角鋼管を挿入し、角鋼管と円形鋼管の間に鉄筋を溶接する。cコンクリートの充填:角鋼管と円形鋼管の間の空洞にコンクリートを部分的に注入し、残りのコンクリートを円形鋼管に注入して柱状の空洞を形成し、遠心回転により円形鋼管の内壁に接着する。d蒸気処理:コンクリートを充填した柱状基材を常圧蒸気養生プールに引き上げ、1~2時間放置した後、90~100℃まで徐々に加熱し、常圧で4~8時間養生する。その後、オートクレーブに入れ、180~200℃、飽和蒸気圧1.0MPa、8~12時間の高温蒸気養生を行う。e中空コンクリート部材の形成:蒸気養生後、マトリックスの柱状の空洞にドライアイスを充填し、2枚のエンドプレートで柱状の空洞を密閉する。ドライアイスが昇華した後に発生する二酸化炭素がコンクリートと反応する。 (ウ) 前記(イ)によれば、甲第1号証には、以下の発明が記載されているといえる。 「プレキャスト中空コンクリート部材の製造方法であって、以下の工程を含む方法: aコンクリート製造工程:コンクリート骨材、セメント及び水を所定割合で混合してコンクリートを形成する。 b柱状基材製造工程:円形鋼管の外側に角鋼管を挿入し、角鋼管と円形鋼管との間に鉄筋を溶接する。 cコンクリート充填工程:角鋼管と円形鋼管との間の空洞にコンクリートを部分的に注入し、残りのコンクリートを遠心回転により円形鋼管内に注入して、円形鋼管の内壁に付着した柱状の空洞を形成する。 d蒸気養生工程:コンクリートを充填した柱状基材を常圧蒸気養生プールに引き上げ、1~2時間静置した後、90~100℃まで徐々に加熱し、常圧で4~8時間養生する。その後、オートクレーブに入れ、180~200℃、飽和蒸気圧1.0MPa、8~12時間の高温蒸気養生を行う。 e中空コンクリート部材の成形:蒸気養生後、マトリックスの柱状の空洞にドライアイスを充填し、2枚のエンドプレートで柱状の空洞を密閉する。ドライアイスが昇華した後に発生する二酸化炭素がコンクリートと反応する。 であり、プレキャスト中空コンクリート部材は、コンクリート骨材、セメント及び水を所定の割合で混合して形成されたコンクリートと、コンクリートを収容する柱状基材とを備え、柱状基材は、角鋼管と円形鋼管とから構成され、角鋼管は円形鋼管の外側にスリーブ状に嵌合され、角鋼管と円形鋼管との間には鉄筋が溶接されており、コンクリートは、角鋼管と円形鋼管との間の空洞に部分的に注入され、残りのコンクリートは円形鋼管内に注入され、遠心回転させることにより、円形鋼管の内壁に接合された柱状の空洞が形成され、この柱状の空洞は、2枚のエンドプレートで密閉され、ドライアイスが柱状の空洞内に充填され、ドライアイスが昇華した後に発生する二酸化炭素は、コンクリートと反応するものであり、 プレキャスト中空コンクリート部材の製造方法は、以下の工程を含むものである、プレキャスト中空コンクリート部材の製造方法。 aコンクリートの準備:コンクリート骨材、セメント及び水を所定の割合で混合してコンクリートを形成する。 b柱状基材の準備:円形鋼管の外側に角鋼管を挿入し、角鋼管と円形鋼管の間に鉄筋を溶接する。 cコンクリートの充填:角鋼管と円形鋼管の間の空洞にコンクリートを部分的に注入し、残りのコンクリートを円形鋼管に注入して柱状の空洞を形成し、遠心回転により円形鋼管の内壁に接着する。 d蒸気処理:コンクリートを充填した柱状基材を常圧蒸気養生プールに引き上げ、1~2時間放置した後、90~100℃まで徐々に加熱し、常圧で4~8時間養生する。その後、オートクレーブに入れ、180~200℃、飽和蒸気圧1.0MPa、8~12時間の高温蒸気養生を行う。 e中空コンクリート部材の形成:蒸気養生後、マトリックスの柱状の空洞にドライアイスを充填し、2枚のエンドプレートで柱状の空洞を密閉する。ドライアイスが昇華した後に発生する二酸化炭素がコンクリートと反応する。」(以下、「甲1-1発明」という。) (エ) また、甲第1号証には、プレキャスト中空コンクリート部材の製造方法のためのシステムとして、以下の発明が記載されているといえる。 「プレキャスト中空コンクリート部材の製造方法のためのシステムであって、以下の工程を含む方法のためのシステム: aコンクリート製造工程:コンクリート骨材、セメント及び水を所定割合で混合してコンクリートを形成する。 b柱状基材製造工程:円形鋼管の外側に角鋼管を挿入し、角鋼管と円形鋼管との間に鉄筋を溶接する。 cコンクリート充填工程:角鋼管と円形鋼管との間の空洞にコンクリートを部分的に注入し、残りのコンクリートを遠心回転により円形鋼管内に注入して、円形鋼管の内壁に付着した柱状の空洞を形成する。 d蒸気養生工程:コンクリートを充填した柱状基材を常圧蒸気養生プールに引き上げ、1~2時間静置した後、90~100℃まで徐々に加熱し、常圧で4~8時間養生する。その後、オートクレーブに入れ、180~200℃、飽和蒸気圧1.0MPa、8~12時間の高温蒸気養生を行う。 e中空コンクリート部材の成形:蒸気養生後、マトリックスの柱状の空洞にドライアイスを充填し、2枚のエンドプレートで柱状の空洞を密閉する。ドライアイスが昇華した後に発生する二酸化炭素がコンクリートと反応する。 であり、プレキャスト中空コンクリート部材は、コンクリート骨材、セメント及び水を所定の割合で混合して形成されたコンクリートと、コンクリートを収容する柱状基材とを備え、柱状基材は、角鋼管と円形鋼管とから構成され、角鋼管は円形鋼管の外側にスリーブ状に嵌合され、角鋼管と円形鋼管との間には鉄筋が溶接されており、コンクリートは、角鋼管と円形鋼管との間の空洞に部分的に注入され、残りのコンクリートは円形鋼管内に注入され、遠心回転させることにより、円形鋼管の内壁に接合された柱状の空洞が形成され、この柱状の空洞は、2枚のエンドプレートで密閉され、ドライアイスが柱状の空洞内に充填され、ドライアイスが昇華した後に発生する二酸化炭素は、コンクリートと反応するものであり、 プレキャスト中空コンクリート部材の製造方法は、以下の工程を含むものである、プレキャスト中空コンクリート部材の製造方法のためのシステム。 aコンクリートの準備:コンクリート骨材、セメント及び水を所定の割合で混合してコンクリートを形成する。 b柱状基材の準備:円形鋼管の外側に角鋼管を挿入し、角鋼管と円形鋼管の間に鉄筋を溶接する。 cコンクリートの充填:角鋼管と円形鋼管の間の空洞にコンクリートを部分的に注入し、残りのコンクリートを円形鋼管に注入して柱状の空洞を形成し、遠心回転により円形鋼管の内壁に接着する。 d蒸気処理:コンクリートを充填した柱状基材を常圧蒸気養生プールに引き上げ、1~2時間放置した後、90~100℃まで徐々に加熱し、常圧で4~8時間養生する。その後、オートクレーブに入れ、180~200℃、飽和蒸気圧1.0MPa、8~12時間の高温蒸気養生を行う。 e中空コンクリート部材の形成:蒸気養生後、マトリックスの柱状の空洞にドライアイスを充填し、2枚のエンドプレートで柱状の空洞を密閉する。ドライアイスが昇華した後に発生する二酸化炭素がコンクリートと反応する。」(以下、「甲1-2発明」という。) イ 甲第2号証の記載事項及び甲第2号証に記載された発明 (ア) 甲第2号証には、以下のa~cの記載がある。 a 「 [図:0001436197000005.jpg] 」(特許請求の範囲) (当審訳:1.塩性土壌地域用プレキャストコンクリート杭の製造方法であって、以下の工程を含むことを特徴とする方法: (1)軽焼成酸化マグネシウム粉末、又は軽焼成酸化マグネシウム粉末と生石灰との混合物、混和剤、骨材、及び水である原料を混合・撹拌する工程;(2)混合物を成形し、成形工程中に引張補強材を添加する工程;(3)予備養生する工程;(4)CO2炭化養生により完成品を形成する工程。) (当審注:(1)~(4)は○に1~○に4である。) b 「 [図:0001436197000006.jpg] [図:0001436197000007.jpg] [図:0001436197000008.jpg] [図:0001436197000009.jpg] 」 (当審訳:[0034] 本発明に記載の塩性土壌地域用プレキャストコンクリート杭の製造方法は、主に以下の工程を含む:(1)原料の混合・撹拌;(2)混合物の成形:引張補強材としてチョップドファイバーストランドを用いる場合は、各種原料と均一に混合・撹拌した後、直接成形する;引張補強材として連続繊維ストランド又は方向性を有するプレファブリケーションファイバーシートを用いる場合は、混合物の成形工程中に、設計位置に層状に敷き詰める;引張補強材として鉄筋を用いる場合は、成形前にプレファブリケーションされた鉄筋骨組を金型内に設置し、金型に固定する;(3)ブランクを予備養生する;(4)炭化養生して完成品を形成する。工程(1)における原料の混合・撹拌には、既存の公知の原料混合・撹拌設備及びプロセスを採用することができる;工程(2)における混合物の成形には、既存の公知の成形プロセス及び成形設備を採用することができる。工程(3)で説明したブランクの予備養生の目的は、MgOとCaOを水和させてMg(OH)2とCa(OH)2を生成し、初期に一定の強度を持たせることである。ブランクの予備養生時間は、ブランクの原料比率と養生条件によって決まる。ブランクは、MgOとCaOが完全に水和するまで予備養生される。ブランクの予備養生は、MgOとCaOの水和を促進するために、通常の養生(温度20~40℃、相対湿度60~100%)、又は大気圧蒸気養生(常圧、蒸気温度100℃以上)又は高圧蒸気養生(蒸気温度176℃以上、圧力0.8~1.5MPa)を採用することができる。養生に用いる密閉容器は、養生窯、蒸気養生釜、オートクレーブ等の既知の養生設備を採用することができる。工程(4)で説明する炭化養生は、杭体が予備養生及び脱型を経て一定の強度を得た後に行う後続の養生工程である。軽焼酸化マグネシウム粉末の水和により生成されたMg(OH)2は、炭化反応(CO2との反応)後に炭酸マグネシウム(Mg(OH)2+CO2+2H2O==MgCO3・3H2O)を生成することができる。MgCO3・3H2Oはハイドロマグネサイトとも呼ばれる。試験によると、その強度はセメントの水和反応により生成される水和ケイ酸カルシウム(C-S-H)の強度に達するか、それを超えることさえある。Ca(OH)2もMg(OH)2と同様の性質を有し、炭化後に硬質石灰石(CaCO3)を形成する。MgCO3・3H2O及びCaCO3は、塩性土壌中の各種塩類に腐食されないため、塩性土壌における耐久性が良好である。炭化養生は、普通養生(温度20~40℃、相対湿度60~100%)、常圧蒸気養生(常圧、蒸気温度100℃以上)、高圧蒸気養生(蒸気温度176℃以上、圧力0.8~1.5MPa)のいずれかで行うことができる。炭化養生工程では、一定量のCO2ガスを養生用の密閉容器(養生窯、蒸気養生釜、オートクレーブなど)に導入することで炭化養生を実現する。導入するCO2ガス量は、CO2と空気の混合物の容積の10%~90%に制御する必要がある。 [0035] 前記炭化養生方法においては、既成杭体を養生するための密閉容器内の空気圧が均一であるため、CO2ガスは比較的ゆっくりと杭体内に浸透・拡散し、杭体材料中のMg(OH)2及びCa(OH)2を炭化させる。杭体内外のCO2含有ガス間に圧力差が生じると、CO2含有ガスの杭体材料への浸透・拡散速度が加速され、Mg(OH)2及びCa(OH)2の炭化反応速度が加速される。したがって、既成杭ブランクの炭化養生は、杭体1の杭孔5をホース3で接続し、複数の杭体1を連結し(図1参照)、ホース3と杭孔5との間にシーリング層4を設けてシーリングする方法によっても実施可能である。図1(a)に示す直列接続方式は、杭孔が連続して接続される場合に適している。この際、最後に接続された杭体1の杭孔5(又はホース3が接続されていない杭体1の杭孔5)の端部は、孔栓7で塞がれ、ホース3の端部はエアポンプ又は真空ポンプ2に接続される。図1(b)は、杭孔が並列に連続接続されたプレキャスト杭の模式図であり、ホース3の複数の区間がエアポンプ又は真空ポンプ2と杭孔5間に接続されている。この際、杭孔5は連続して接続され、杭孔5の他端は孔栓7で塞がれている。また、ホース3と真空ポンプ2の間には接続装置6が設けられており、複数のホース3をまとめてエアポンプ又は真空ポンプ2に接続することができる。図1(c)は、杭孔5が貫通していない場合に採用される並列接続モードの概略図である。複数の杭孔5はホース3に接続され、ホース3は接続装置6を介してエアポンプ又は真空機2に接続される。杭体1の両端の非貫通杭孔5に並列機構のセットを接続することで、杭体1の炭化と酸化防止を実現できる。接続された杭体1は養生窯内に置かれる。養生窯の温度は15~30℃、相対湿度は60~100%である。養生プロセス中に、CO2ガスが養生窯内に導入され、炭化養生を実現する。導入されるCO2ガスの量は、CO2と空気の混合ガスの体積の10%~90%を占めるように制御する必要がある。エアポンプ2を作動させ、養生窯内のCO2と水蒸気を加圧し、杭体1に送り込む。導入するCO2と水蒸気の圧力は、大気圧の1.01~2倍に制御する必要がある。炭化養生プロセス中に導入するCO2は、市販のCO2ガス製品、又は工業生産企業(ビール醸造所、酸化マグネシウム工場、セメント工場など)から排出されるリサイクルCO2を使用できる。 [0036] 実施例1: [0037] 本発明のコンクリートプレキャスト杭の製造方法を用いて、杭長6m、外径50cm、壁厚10cmのコンクリートプレキャスト杭を製造する。セメント系コンクリートは、以下の原材料の重量比で調製する。 [0038] 軽焼酸化マグネシウム粉末:150部 [0039] 鉱物混和剤(精選赤泥尾鉱粉末):50部 [0040] 粗骨材:200部 [0041] 細骨材:200部 [0042] 水:120部 [0043] 製造工程は以下のとおりである。 [0044] (1)原材料の混合・撹拌:各原材料を所定の比率で計量し、混合・撹拌する。 [0045] (2)混合物の成形:組み立てた鋼製型枠に炭素繊維強化プラスチック補強骨材を入れ、型枠内で結束した後、遠心成形により混合物を成形する。 [0046] (3)予備養生:コンクリート材料を成形後、養生窯に投入して予備養生を行う。養生温度は25℃、相対湿度は95%とし、4日間養生した後、型枠を撤去する。 [0047] (4)炭化養生:炭化養生は気圧差法で行う。図1(a)に示すように、杭体を直列に連結し、エアポンプ2に接続した後、養生窯に投入する。養生窯の温度は25℃、相対湿度は80%、養生窯に導入するCO2ガス濃度は90%とする。エアポンプで加圧するCO2と水蒸気の圧力は、初期圧力を大気圧の1.1倍に制御し、養生時間の経過に伴い、圧力を大気圧の0.1倍/日の割合で徐々に増加させる。7日間の養生期間を経たあと、生の素地は養生窯から取り出され、完成品は工場から出荷される。) c 「 [図:0001436197000010.jpg] 」 (イ) 前記(ア)aの記載によれば、甲第2号証には、塩性土壌地域用プレキャストコンクリート杭の製造方法であって、以下の工程を含む方法:(1)軽焼成酸化マグネシウム粉末、又は軽焼成酸化マグネシウム粉末と生石灰との混合物、混和剤、骨材、及び水である原料を混合・撹拌する工程;(2)混合物を成形し、成形工程中に引張補強材を添加する工程;(3)予備養生する工程;(4)CO2炭化養生により完成品を形成する工程。が記載されている。 具体的には、前記(ア)b、cの記載によれば、前記塩性土壌地域用プレキャストコンクリート杭の製造方法は、主に以下の工程を含むものである:(1)原料の混合・撹拌;(2)混合物の成形:引張補強材としてチョップドファイバーストランドを用いる場合は、各種原料と均一に混合・撹拌した後、直接成形する;引張補強材として連続繊維ストランド又は方向性を有するプレファブリケーションファイバーシートを用いる場合は、混合物の成形工程中に、設計位置に層状に敷き詰める;引張補強材として鉄筋を用いる場合は、成形前にプレファブリケーションされた鉄筋骨組を金型内に設置し、金型に固定する;(3)ブランクを予備養生する;(4)炭化養生して完成品を形成する。 そして、工程(1)における原料の混合・撹拌には、既存の公知の原料混合・撹拌設備及びプロセスを採用することができ、工程(2)における混合物の成形には、既存の公知の成形プロセス及び成形設備を採用することができ、工程(3)で説明したブランクの予備養生の目的は、MgOとCaOを水和させてMg(OH)2とCa(OH)2を生成し、初期に一定の強度を持たせることであり、工程(4)で説明する炭化養生は、杭体が予備養生及び脱型を経て一定の強度を得た後に行う後続の養生工程であり、炭化養生工程では、一定量のCO2ガスを養生用の密閉容器(養生窯、蒸気養生釜、オートクレーブなど)に導入することで炭化養生を実現するものである。 すなわち、前記炭化養生方法においては、既成杭体を養生するための密閉容器内の空気圧が均一であるため、CO2ガスは比較的ゆっくりと杭体内に浸透・拡散し、杭体材料中のMg(OH)2及びCa(OH)2を炭化させるものであり、杭体内外のCO2含有ガス間に圧力差が生じると、CO2含有ガスの杭体材料への浸透・拡散速度が加速され、Mg(OH)2及びCa(OH)2の炭化反応速度が加速されるものであり、したがって、既成杭ブランクの炭化養生は、杭体1の杭孔5をホース3で接続し、複数の杭体1を連結し、ホース3と杭孔5との間にシーリング層4を設けてシーリングする方法によっても実施可能であり、直列接続方式は、杭孔が連続して接続される場合に適しており、この際、最後に接続された杭体1の杭孔5(又はホース3が接続されていない杭体1の杭孔5)の端部は、孔栓7で塞がれ、ホース3の端部はエアポンプ又は真空ポンプ2に接続されるものであり、接続された杭体1は養生窯内に置かれ、養生窯の温度は15~30℃、相対湿度は60~100%であり、養生プロセス中に、CO2ガスが養生窯内に導入され、炭化養生を実現するものであり、導入されるCO2ガスの量は、CO2と空気の混合ガスの体積の10%~90%を占めるように制御する必要があるものであり、エアポンプ2を作動させ、養生窯内のCO2と水蒸気を加圧し、杭体1に送り込むものであり、導入するCO2と水蒸気の圧力は、大気圧の1.01~2倍に制御する必要があるものであり、炭化養生プロセス中に導入するCO2は、市販のCO2ガス製品、又は工業生産企業(ビール醸造所、酸化マグネシウム工場、セメント工場など)から排出されるリサイクルCO2を使用できるものである。 そして、前記コンクリートプレキャスト杭の製造方法を用いて、杭長6m、外径50cm、壁厚10cmのコンクリートプレキャスト杭を製造する場合、セメント系コンクリートは、以下の原材料の重量比で調製するものであり、 軽焼酸化マグネシウム粉末:150部 鉱物混和剤(精選赤泥尾鉱粉末):50部 粗骨材:200部 細骨材:200部 水:120部 その製造工程は以下のとおりのものである。 (1)原材料の混合・撹拌:各原材料を所定の比率で計量し、混合・撹拌する。 (2)混合物の成形:組み立てた鋼製型枠に炭素繊維強化プラスチック補強骨材を入れ、型枠内で結束した後、遠心成形により混合物を成形する。 (3)予備養生:コンクリート材料を成形後、養生窯に投入して予備養生を行う。養生温度は25℃、相対湿度は95%とし、4日間養生した後、型枠を撤去する。 (4)炭化養生:炭化養生は気圧差法で行う。杭体を直列に連結し、エアポンプ2に接続した後、養生窯に投入する。養生窯の温度は25℃、相対湿度は80%、養生窯に導入するCO2ガス濃度は90%とする。エアポンプで加圧するCO2と水蒸気の圧力は、初期圧力を大気圧の1.1倍に制御し、養生時間の経過に伴い、圧力を大気圧の0.1倍/日の割合で徐々に増加させる。7日間の養生期間を経たあと、生の素地は養生窯から取り出され、完成品は工場から出荷される。 (ウ) 前記(イ)によれば、甲第2号証には、以下の発明が記載されているといえる。 「塩性土壌地域用プレキャストコンクリート杭の製造方法であって、以下の工程を含む方法: (1)軽焼成酸化マグネシウム粉末、又は軽焼成酸化マグネシウム粉末と生石灰との混合物、混和剤、骨材、及び水である原料を混合・撹拌する工程; (2)混合物を成形し、成形工程中に引張補強材を添加する工程; (3)予備養生する工程; (4)CO2炭化養生により完成品を形成する工程。 であり、 前記塩性土壌地域用プレキャストコンクリート杭の製造方法は、主に以下の工程を含むものであり、 (1)原料の混合・撹拌; (2)混合物の成形:引張補強材としてチョップドファイバーストランドを用いる場合は、各種原料と均一に混合・撹拌した後、直接成形する;引張補強材として連続繊維ストランド又は方向性を有するプレファブリケーションファイバーシートを用いる場合は、混合物の成形工程中に、設計位置に層状に敷き詰める;引張補強材として鉄筋を用いる場合は、成形前にプレファブリケーションされた鉄筋骨組を金型内に設置し、金型に固定する; (3)ブランクを予備養生する; (4)炭化養生して完成品を形成する。 工程(1)における原料の混合・撹拌には、既存の公知の原料混合・撹拌設備及びプロセスを採用することができ、工程(2)における混合物の成形には、既存の公知の成形プロセス及び成形設備を採用することができ、工程(3)で説明したブランクの予備養生の目的は、MgOとCaOを水和させてMg(OH)2とCa(OH)2を生成し、初期に一定の強度を持たせることであり、工程(4)で説明する炭化養生は、杭体が予備養生及び脱型を経て一定の強度を得た後に行う後続の養生工程であり、炭化養生工程では、一定量のCO2ガスを養生用の密閉容器(養生窯、蒸気養生釜、オートクレーブなど)に導入することで炭化養生を実現するものであり、 前記炭化養生方法においては、既成杭体を養生するための密閉容器内の空気圧が均一であるため、CO2ガスは比較的ゆっくりと杭体内に浸透・拡散し、杭体材料中のMg(OH)2及びCa(OH)2を炭化させるものであり、杭体内外のCO2含有ガス間に圧力差が生じると、CO2含有ガスの杭体材料への浸透・拡散速度が加速され、Mg(OH)2及びCa(OH)2の炭化反応速度が加速されるものであり、したがって、既成杭ブランクの炭化養生は、杭体の杭孔をホースで接続し、複数の杭体を連結し、ホースと杭孔との間にシーリング層を設けてシーリングする方法によっても実施可能であり、直列接続方式は、杭孔が連続して接続される場合に適しており、この際、最後に接続された杭体の杭孔(又はホースが接続されていない杭体の杭孔)の端部は、孔栓で塞がれ、ホースの端部はエアポンプ又は真空ポンプに接続されるものであり、接続された杭体は養生窯内に置かれ、養生窯の温度は15~30℃、相対湿度は60~100%であり、養生プロセス中に、CO2ガスが養生窯内に導入され、炭化養生を実現するものであり、導入されるCO2ガスの量は、CO2と空気の混合ガスの体積の10%~90%を占めるように制御する必要があるものであり、 エアポンプを作動させ、養生窯内のCO2と水蒸気を加圧し、杭体に送り込むものであり、導入するCO2と水蒸気の圧力は、大気圧の1.01~2倍に制御する必要があるものであり、炭化養生プロセス中に導入するCO2は、市販のCO2ガス製品、又は工業生産企業(ビール醸造所、酸化マグネシウム工場、セメント工場など)から排出されるリサイクルCO2を使用できるものであり、 前記コンクリートプレキャスト杭の製造方法を用いて、杭長6m、外径50cm、壁厚10cmのコンクリートプレキャスト杭を製造する場合、セメント系コンクリートは、以下の原材料の重量比で調製するものであり、 軽焼酸化マグネシウム粉末:150部 鉱物混和剤(精選赤泥尾鉱粉末):50部 粗骨材:200部 細骨材:200部 水:120部 その製造工程は以下のとおりのものである、塩性土壌地域用プレキャストコンクリート杭の製造方法。 (1)原材料の混合・撹拌:各原材料を所定の比率で計量し、混合・撹拌する。 (2)混合物の成形:組み立てた鋼製型枠に炭素繊維強化プラスチック補強骨材を入れ、型枠内で結束した後、遠心成形により混合物を成形する。 (3)予備養生:コンクリート材料を成形後、養生窯に投入して予備養生を行う。養生温度は25℃、相対湿度は95%とし、4日間養生した後、型枠を撤去する。 (4)炭化養生:炭化養生は気圧差法で行う。杭体を直列に連結し、エアポンプ2に接続した後、養生窯に投入する。養生窯の温度は25℃、相対湿度は80%、養生窯に導入するCO2ガス濃度は90%とする。エアポンプで加圧するCO2と水蒸気の圧力は、初期圧力を大気圧の1.1倍に制御し、養生時間の経過に伴い、圧力を大気圧の0.1倍/日の割合で徐々に増加させる。7日間の養生期間を経たあと、生の素地は養生窯から取り出され、完成品は工場から出荷される。」(以下、「甲2-1発明」という。) (エ) また、甲第2号証には、塩性土壌地域用プレキャストコンクリート杭の製造方法のためのシステムとして、以下の発明が記載されているといえる。 「塩性土壌地域用プレキャストコンクリート杭の製造方法のためのシステムであって、以下の工程を含む方法のためのシステム: (1)軽焼成酸化マグネシウム粉末、又は軽焼成酸化マグネシウム粉末と生石灰との混合物、混和剤、骨材、及び水である原料を混合・撹拌する工程; (2)混合物を成形し、成形工程中に引張補強材を添加する工程; (3)予備養生する工程; (4)CO2炭化養生により完成品を形成する工程。 であり、 前記塩性土壌地域用プレキャストコンクリート杭の製造方法は、主に以下の工程を含むものであり、 (1)原料の混合・撹拌; (2)混合物の成形:引張補強材としてチョップドファイバーストランドを用いる場合は、各種原料と均一に混合・撹拌した後、直接成形する;引張補強材として連続繊維ストランド又は方向性を有するプレファブリケーションファイバーシートを用いる場合は、混合物の成形工程中に、設計位置に層状に敷き詰める;引張補強材として鉄筋を用いる場合は、成形前にプレファブリケーションされた鉄筋骨組を金型内に設置し、金型に固定する; (3)ブランクを予備養生する; (4)炭化養生して完成品を形成する。 工程(1)における原料の混合・撹拌には、既存の公知の原料混合・撹拌設備及びプロセスを採用することができ、工程(2)における混合物の成形には、既存の公知の成形プロセス及び成形設備を採用することができ、工程(3)で説明したブランクの予備養生の目的は、MgOとCaOを水和させてMg(OH)2とCa(OH)2を生成し、初期に一定の強度を持たせることであり、工程(4)で説明する炭化養生は、杭体が予備養生及び脱型を経て一定の強度を得た後に行う後続の養生工程であり、炭化養生工程では、一定量のCO2ガスを養生用の密閉容器(養生窯、蒸気養生釜、オートクレーブなど)に導入することで炭化養生を実現するものであり、 前記炭化養生方法においては、既成杭体を養生するための密閉容器内の空気圧が均一であるため、CO2ガスは比較的ゆっくりと杭体内に浸透・拡散し、杭体材料中のMg(OH)2及びCa(OH)2を炭化させるものであり、杭体内外のCO2含有ガス間に圧力差が生じると、CO2含有ガスの杭体材料への浸透・拡散速度が加速され、Mg(OH)2及びCa(OH)2の炭化反応速度が加速されるものであり、したがって、既成杭ブランクの炭化養生は、杭体の杭孔をホースで接続し、複数の杭体を連結し、ホースと杭孔との間にシーリング層を設けてシーリングする方法によっても実施可能であり、直列接続方式は、杭孔が連続して接続される場合に適しており、この際、最後に接続された杭体の杭孔(又はホースが接続されていない杭体の杭孔)の端部は、孔栓で塞がれ、ホースの端部はエアポンプ又は真空ポンプに接続されるものであり、接続された杭体は養生窯内に置かれ、養生窯の温度は15~30℃、相対湿度は60~100%であり、養生プロセス中に、CO2ガスが養生窯内に導入され、炭化養生を実現するものであり、導入されるCO2ガスの量は、CO2と空気の混合ガスの体積の10%~90%を占めるように制御する必要があるものであり、 エアポンプを作動させ、養生窯内のCO2と水蒸気を加圧し、杭体に送り込むものであり、導入するCO2と水蒸気の圧力は、大気圧の1.01~2倍に制御する必要があるものであり、炭化養生プロセス中に導入するCO2は、市販のCO2ガス製品、又は工業生産企業(ビール醸造所、酸化マグネシウム工場、セメント工場など)から排出されるリサイクルCO2を使用できるものであり、 前記コンクリートプレキャスト杭の製造方法を用いて、杭長6m、外径50cm、壁厚10cmのコンクリートプレキャスト杭を製造する場合、セメント系コンクリートは、以下の原材料の重量比で調製するものであり、 軽焼酸化マグネシウム粉末:150部 鉱物混和剤(精選赤泥尾鉱粉末):50部 粗骨材:200部 細骨材:200部 水:120部 その製造工程は以下のとおりのものである、塩性土壌地域用プレキャストコンクリート杭の製造方法のためのシステム。 (1)原材料の混合・撹拌:各原材料を所定の比率で計量し、混合・撹拌する。 (2)混合物の成形:組み立てた鋼製型枠に炭素繊維強化プラスチック補強骨材を入れ、型枠内で結束した後、遠心成形により混合物を成形する。 (3)予備養生:コンクリート材料を成形後、養生窯に投入して予備養生を行う。養生温度は25℃、相対湿度は95%とし、4日間養生した後、型枠を撤去する。 (4)炭化養生:炭化養生は気圧差法で行う。杭体を直列に連結し、エアポンプ2に接続した後、養生窯に投入する。養生窯の温度は25℃、相対湿度は80%、養生窯に導入するCO2ガス濃度は90%とする。エアポンプで加圧するCO2と水蒸気の圧力は、初期圧力を大気圧の1.1倍に制御し、養生時間の経過に伴い、圧力を大気圧の0.1倍/日の割合で徐々に増加させる。7日間の養生期間を経たあと、生の素地は養生窯から取り出され、完成品は工場から出荷される。」(以下、「甲2-2発明」という。) ウ 甲第5号証の記載事項及び甲第5号証に記載された発明 (ア) 甲第5号証には、以下のa~cの記載がある。 a 「 [図:0001436197000011.jpg] 」(特許請求の範囲) (当審訳:6.以下の工程を含む、中空海砂コンクリート部材の製造方法: 海砂コンクリートを準備する工程:コンクリート骨材として海砂をセメント及び水と所定割合で混合して海砂コンクリートを形成する工程; 海砂コンクリートを柱状の空洞に成形する工程:海砂コンクリートを柱状基部に注入して、柱状基部の内壁に接合する柱状の空洞を形成する工程; 中空海砂コンクリート部材を形成する工程:海砂コンクリートを二酸化炭素ガスと完全に反応させる工程。) b 「 [図:0001436197000012.jpg] [図:0001436197000013.jpg] 」 (当審訳:[0021] 図1に示すように、本発明の具体的な実施形態は、セメント、水及び海砂を含む中空海砂コンクリート部材を構築することであり、海砂をコンクリート骨材として用い、セメント及び水と所定割合で混合して海砂コンクリート2を形成し、更に、海砂コンクリート2を収容する柱状マトリックス1を備え、柱状マトリックス1内に海砂コンクリート2を注入して柱状マトリックス1の内壁に付着する柱状の空洞3を形成し、柱状マトリックス1内に海砂コンクリート2を形成した後に、海砂コンクリート2を二酸化炭素ガスと反応させて中空海砂コンクリート部材を形成する。本発明では、柱状マトリックス1内に海砂コンクリート2を形成した後に、海砂コンクリート2を二酸化炭素ガスと十分に反応させて中空海砂コンクリート部材を形成する。海砂コンクリート2は多量の水酸化カルシウム(化学式:Ca(OH)2)を含有しているため、炭酸ガスと十分に反応し、水酸化カルシウムと二酸化炭素が反応して炭酸カルシウムを生成する(Ca(OH)2+CO2=CaCO3+H2O)。炭酸カルシウムが海砂コンクリート2に配合されているため、海砂とセメントスラリーとの接触界面を改善し、海砂コンクリート2の強度を高め、海砂コンクリート2の気孔率を低減し、海砂コンクリート2の耐久性を向上させることができる。これにより、この海砂コンクリートを用いて製造された中空海砂コンクリート部材の性能と品質が大幅に向上する。 [0022] 本発明の具体的な実施形態では、柱状の空洞3に二酸化炭素ガスが導入され、この二酸化炭素ガスは柱状の空洞3の壁面を通して海砂コンクリート2に浸透し、海砂コンクリート2中の多量の水酸化カルシウムと十分に反応する。本発明では、特定の方法により中空海砂コンクリート部材に二酸化炭素ガスが導入され、大気中への二酸化炭素ガスの排出が低減され、環境が改善される。本発明の具体的な実施形態では、柱状マトリックス1はFRPパイプである。柱状の空洞を形成する際には、柱状マトリックスに充填する海砂コンクリート2の量は、柱状の空洞3のサイズの具体的な要件に応じて決定する必要がある。海砂コンクリート2を充填した柱状マトリックス1を遠心分離機にかけ、一定量回転させると、柱状マトリックス1内の海砂コンクリート2は柱状マトリックス1の内壁に近接し、海砂コンクリートの中心が柱状の空洞3を形成する。 [0023] 図1に示すように、本発明の好ましい実施形態は、海砂コンクリート2が二酸化炭素ガスと反応する際に、柱状の空洞3を密閉することで、海砂コンクリート2が二酸化炭素ガスと十分に反応し、二酸化炭素ガスを無駄に消費しないようにするものである。本発明の具体的な実施形態は、柱状の空洞3内にドライアイスを配置し、ドライアイスが昇華して高圧二酸化炭素ガスを発生させ、この高圧二酸化炭素ガスによって二酸化炭素がより十分に浸透し、二酸化炭素と海砂コンクリート2がより十分に反応できるようにするものである。) c 「 [図:0001436197000014.jpg] 」 (イ) 前記(ア)aの記載によれば、甲第5号証には、以下の工程を含む、中空海砂コンクリート部材の製造方法:海砂コンクリートを準備する工程:コンクリート骨材として海砂をセメント及び水と所定割合で混合して海砂コンクリートを形成する工程;海砂コンクリートを柱状の空洞に成形する工程:海砂コンクリートを柱状基部に注入して、柱状基部の内壁に接合する柱状の空洞を形成する工程;中空海砂コンクリート部材を形成する工程:海砂コンクリートを二酸化炭素ガスと完全に反応させる工程。が記載されている。 具体的には、前記(ア)b、cの記載によれば、前記中空海砂コンクリート部材の製造方法は、セメント、水及び海砂を含む中空海砂コンクリート部材を構築するものであり、海砂をコンクリート骨材として用い、セメント及び水と所定割合で混合して海砂コンクリート2を形成し、更に、海砂コンクリート2を収容する柱状マトリックス1を備え、柱状マトリックス1内に海砂コンクリート2を注入して柱状マトリックス1の内壁に付着する柱状の空洞3を形成し、柱状マトリックス1内に海砂コンクリート2を形成した後に、海砂コンクリート2を二酸化炭素ガスと反応させて中空海砂コンクリート部材を形成するものであり、柱状マトリックス1内に海砂コンクリート2を形成した後に、海砂コンクリート2を二酸化炭素ガスと十分に反応させて中空海砂コンクリート部材を形成するものであり、海砂コンクリート2は多量の水酸化カルシウム(化学式:Ca(OH)2)を含有しているため、炭酸ガスと十分に反応し、水酸化カルシウムと二酸化炭素が反応して炭酸カルシウムを生成し(Ca(OH)2+CO2=CaCO3+H2O)、炭酸カルシウムが海砂コンクリート2に配合されているため、海砂とセメントスラリーとの接触界面を改善し、海砂コンクリート2の強度を高め、海砂コンクリート2の気孔率を低減し、海砂コンクリート2の耐久性を向上させることができるものであり、これにより、この海砂コンクリートを用いて製造された中空海砂コンクリート部材の性能と品質が大幅に向上するものである。 そして、柱状の空洞3に二酸化炭素ガスが導入され、この二酸化炭素ガスは柱状の空洞3の壁面を通して海砂コンクリート2に浸透し、海砂コンクリート2中の多量の水酸化カルシウムと十分に反応するものであり、前記中空海砂コンクリート部材の製造方法では、特定の方法により中空海砂コンクリート部材に二酸化炭素ガスが導入され、大気中への二酸化炭素ガスの排出が低減され、環境が改善されるものであり、柱状マトリックス1はFRPパイプであり、柱状の空洞を形成する際には、柱状マトリックスに充填する海砂コンクリート2の量は、柱状の空洞3のサイズの具体的な要件に応じて決定する必要があり、海砂コンクリート2を充填した柱状マトリックス1を遠心分離機にかけ、一定量回転させると、柱状マトリックス1内の海砂コンクリート2は柱状マトリックス1の内壁に近接し、海砂コンクリートの中心が柱状の空洞3を形成するものであり、海砂コンクリート2が二酸化炭素ガスと反応する際に、柱状の空洞3を密閉することで、海砂コンクリート2が二酸化炭素ガスと十分に反応し、二酸化炭素ガスを無駄に消費しないようにするものであり、柱状の空洞3内にドライアイスを配置し、ドライアイスが昇華して高圧二酸化炭素ガスを発生させ、この高圧二酸化炭素ガスによって二酸化炭素がより十分に浸透し、二酸化炭素と海砂コンクリート2がより十分に反応できるようにするものである。 (ウ) 前記(イ)によれば、甲第5号証には、以下の発明が記載されているといえる。 「以下の工程を含む、中空海砂コンクリート部材の製造方法: 海砂コンクリートを準備する工程: コンクリート骨材として海砂をセメント及び水と所定割合で混合して海砂コンクリートを形成する工程; 海砂コンクリートを柱状の空洞に成形する工程: 海砂コンクリートを柱状基部に注入して、柱状基部の内壁に接合する柱状の空洞を形成する工程; 中空海砂コンクリート部材を形成する工程:海砂コンクリートを二酸化炭素ガスと完全に反応させる工程。 であって、前記中空海砂コンクリート部材の製造方法は、セメント、水及び海砂を含む中空海砂コンクリート部材を構築するものであり、海砂はコンクリート骨材として使用され、セメント及び水と一定の割合で混合されて海砂コンクリートを形成し、また、海砂コンクリートを収容する柱状マトリックスを含み、柱状マトリックスに海砂コンクリートを注入して、柱状マトリックスの内壁に取り付けられた中空柱を形成し、柱状マトリックス内で海砂コンクリートを形成した後に、海砂コンクリートを二酸化炭素ガスと反応させて中空海砂コンクリート部材を形成するものであり、 柱状マトリックス内に海砂コンクリートを形成した後に、海砂コンクリートを二酸化炭素ガスと十分に反応させて中空海砂コンクリート部材を形成するものであり、海砂コンクリートは多量の水酸化カルシウム(化学式:Ca(OH)2)を含有しているため、炭酸ガスと十分に反応し、水酸化カルシウムと二酸化炭素が反応して炭酸カルシウムを生成し(Ca(OH)2+CO2=CaCO3+H2O)、炭酸カルシウムが海砂コンクリートに配合されているため、海砂とセメントスラリーとの接触界面を改善し、海砂コンクリートの強度を高め、海砂コンクリートの気孔率を低減し、海砂コンクリートの耐久性を向上させることができるものであり、これにより、この海砂コンクリートを用いて製造された中空海砂コンクリート部材の性能と品質が大幅に向上するものであり、 柱状の空洞に二酸化炭素ガスが導入され、この二酸化炭素ガスは柱状の空洞の壁面を通して海砂コンクリートに浸透し、海砂コンクリート中の多量の水酸化カルシウムと十分に反応するものであり、前記中空海砂コンクリート部材の製造方法では、特定の方法により中空海砂コンクリート部材に二酸化炭素ガスが導入され、大気中への二酸化炭素ガスの排出が低減され、環境が改善されるものであり、柱状マトリックスはFRPパイプであり、柱状の空洞を形成する際には、柱状マトリックスに充填する海砂コンクリートの量は、柱状の空洞のサイズの具体的な要件に応じて決定する必要があり、海砂コンクリートを充填した柱状マトリックスを遠心分離機にかけ、一定量回転させると、柱状マトリックス内の海砂コンクリートは柱状マトリックスの内壁に近接し、海砂コンクリートの中心が柱状の空洞を形成するものであり、海砂コンクリートが二酸化炭素ガスと反応する際に、柱状の空洞を密閉することで、海砂コンクリートが二酸化炭素ガスと十分に反応し、二酸化炭素ガスを無駄に消費しないようにするものであり、柱状の空洞内にドライアイスを配置し、ドライアイスが昇華して高圧二酸化炭素ガスを発生させ、この高圧二酸化炭素ガスによって二酸化炭素がより十分に浸透し、二酸化炭素と海砂コンクリートがより十分に反応できるようにするものである、中空海砂コンクリート部材の製造方法。」(以下、「甲5発明」という。) なお、そのほかの甲号証の記載の摘記は省略する。 (2) 特許法第29条第1項、第2項所定の規定違反(新規性、進歩性欠如)の判断 ア 甲第1号証を主引用例とした場合について (ア)本件発明1~4、8~12、15について a 本件発明1と甲1-1発明とを対比すると、甲1-1発明における「プレキャスト中空コンクリート部材」は、本件発明1における「コンクリート製品」に相当し、甲1-1発明における「柱状の空洞」は、本件発明1における「コンクリート製品内」の「キャビティ」に相当し、甲1-1発明における「円形鋼管の内壁に接着」した「コンクリート」は、本件発明1における「キャビティを囲む壁」であって、「該キャビティへの開口部を有するコンクリート製品の壁」に相当する。 そして、甲1-1発明が、「蒸気養生後、マトリックスの柱状の空洞にドライアイスを充填し、2枚のエンドプレートで柱状の空洞を密閉」し、「ドライアイスが昇華した後に発生する二酸化炭素がコンクリートと反応する」ものであることと、「密閉」された「柱状の空洞」内で「ドライアイスが昇華した後に発生」した「二酸化炭素」は、「圧力」が「保持」されるものといえることからみれば、甲1-1発明における「プレキャスト中空コンクリート部材」は、「コンクリート」が、「圧力を保持するための容器として機能」しているといえるから、甲1-1発明における「プレキャスト中空コンクリート部材」は、本件発明1における「該キャビティへの開口部を有するコンクリート製品の壁が、圧力を保持するための容器として機能するコンクリート製品」に相当し、甲1-1発明における「プレキャスト中空コンクリート部材の製造方法」は、「ドライアイスが昇華した後に発生する二酸化炭素がコンクリートと反応する」ものであって、これにより「コンクリート」を「硬化」させるものといえるから、本件発明1における「コンクリート製品を硬化させる方法」に相当する。 また、甲1-1発明において、「cコンクリートの充填:角鋼管と円形鋼管の間の空洞にコンクリートを部分的に注入し、残りのコンクリートを円形鋼管に注入して柱状の空洞を形成し、遠心回転により円形鋼管の内壁に接着する。d蒸気処理:コンクリートを充填した柱状基材を常圧蒸気養生プールに引き上げ、1~2時間放置した後、90~100℃まで徐々に加熱し、常圧で4~8時間養生する。その後、オートクレーブに入れ、180~200℃、飽和蒸気圧1.0MPa、8~12時間の高温蒸気養生を行う。」ことは、本件発明1において、「コンクリート製品をキャスティング」することに相当し、甲1-1発明における「2枚のエンドプレート」は、それぞれ、本件発明1における「ベース」及び「カバープレート」に相当し、甲1-1発明において、「2枚のエンドプレートで柱状の空洞を密閉する」ことは、本件発明1において、「コンクリート製品をベース上に位置決めすること」及び「カバープレートを用いて開口部を密閉する」ことに相当する。 更に、甲1-1発明において、「蒸気養生後、マトリックスの柱状の空洞にドライアイスを充填し、2枚のエンドプレートで柱状の空洞を密閉」し、「ドライアイスが昇華した後に発生する二酸化炭素がコンクリートと反応する」ことは、本件発明1において、「コンクリート製品の炭酸化を実行するために、二酸化炭素(CO2)ガスをキャビティに導入すること」であって、「ここで、該二酸化炭素(CO2)ガスをキャビティに導入することは」、「前記炭酸化中、コンクリート製品の壁の内面が二酸化炭素(CO2)に曝露され」ることに相当し、技術常識からみて、甲1-1発明に係る方法により製造された「プレキャスト中空コンクリート部材」は、「コンクリート製品が目標仕様に到達」し、「開口部」が「密閉解除」されたものといえるから、甲1-1発明に係る方法は、本件発明1の「コンクリート製品が目標仕様に到達したことに応じて、開口部を密閉解除する」、との発明特定事項を満たすものといえる。 ここで、本件発明1の「コンクリート製品の壁の外面が環境に曝露される」、との発明特定事項における「環境」の意味について検討すると、本件特許明細書の段落【0005】、【0064】~【0066】、【図1】の記載(前記第2の2(1)ア)によれば、本件発明においては、生コンクリートを二酸化炭素で硬化して強度を得るプレキャストコンクリート製品の製造方法において、脱型され、任意に前処理されたコンクリート製品の壁は、圧力を保持するための容器として機能するものであって、外部加圧容器も硬化室も、コンクリートを活性化するために利用されないのであり、外部に気密性の高い筐体は必要ないものである。 このことからみれば、前記「環境」とは、「脱型」された「コンクリート製品」が、外部加圧容器や硬化室といった気密性の高い筐体に囲まれない「環境」を意味しているといえ、本件発明1は、「炭酸化中」、「脱型」された「コンクリート製品の壁の外面」が、外部加圧容器や硬化室といった気密性の高い筐体に囲まれない「環境に曝露され」るものといえる。 これに対して、甲1-1発明は、そもそも、「プレキャスト中空コンクリート部材」を「角鋼管」や「円形鋼管」から「脱型」するものではないし、このため、「コンクリート」の「外面」が、外部加圧容器や硬化室といった気密性の高い筐体に囲まれない「環境に曝露され」るものともいえないので、本件発明1の「コンクリート製品」を「脱型する」、との発明特定事項、及び、「コンクリート製品の壁の外面が環境に曝露される」、との発明特定事項を満たさない。 更に、甲1-1発明における「角鋼管」や「円形鋼管」は「二酸化炭素(CO2)ガス」を透過しないことが推認されるから、甲1-1発明において、「二酸化炭素」が「コンクリート」を「柱状の空洞」から「外側に向かって一方向に浸透」するか否かは明らかでない。 b 前記aによれば、本件発明1と甲1-1発明とは、 「コンクリート製品内にキャビティを囲む壁を有し、該キャビティへの開口部を有するコンクリート製品の壁が、圧力を保持するための容器として機能するコンクリート製品を硬化させる方法であって、 コンクリート製品をキャスティングし、 コンクリート製品をベース上に位置決めすること、 カバープレートを用いて開口部を密閉すること、 コンクリート製品の炭酸化を実行するために、二酸化炭素(CO2)ガスをキャビティに導入すること、 ここで、該二酸化炭素(CO2)ガスをキャビティに導入することは、前記炭酸化中、コンクリート製品の壁の内面が二酸化炭素(CO2)に曝露されるものである、 および コンクリート製品が目標仕様に到達するのに応じて、開口部を密閉解除すること、 を含む方法。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点1:「コンクリート製品を硬化させる方法」が、本件発明1は、「コンクリート製品」を「脱型すること」「を含」むのに対して、甲1-1発明は、「プレキャスト中空コンクリート部材」を「角鋼管」や「円形鋼管」から「脱型」するものではない点。 ・相違点2:「コンクリート製品を硬化させる方法」が、本件発明1は、「ここで、該二酸化炭素(CO2)ガスをキャビティに導入することは、前記炭酸化中、二酸化炭素(CO2)ガスは、コンクリート製品の壁をキャビティから外側に向かって一方向に浸透」するものであるのに対して、甲1-1発明は、「二酸化炭素」が「コンクリート」を「柱状の空洞」から「外側に向かって一方向に浸透」するか否かは明らかでない点。 ・相違点3:「コンクリート製品を硬化させる方法」が、本件発明1は、「前記炭酸化中」、「コンクリート製品の壁の外面が環境に曝露されるものである」のに対して、甲1-1発明は、「コンクリート」の「外面が環境に曝露される」ものであるとはいえない点。 c 始めに、前記bの相違点1から検討すると、前記aに記載したとおり、本件発明1と甲1-1発明とは前記相違点1の点で実質的に相違するから、前記bのそのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明1が甲1-1発明であるとはいえない。 更に、本件発明1の発明特定事項を全て有する本件発明4、8~10、12及び15について検討しても事情は同じである。 d 次に、前記相違点1の容易想到性について検討すると、甲1-1発明は、「プレキャスト中空コンクリート部材」が、「コンクリート骨材、セメント及び水を所定の割合で混合して形成されたコンクリートと、コンクリートを収容する柱状基材とを備え、柱状基材は、角鋼管と円形鋼管とから構成され、角鋼管は円形鋼管の外側にスリーブ状に嵌合され、角鋼管と円形鋼管との間には鉄筋が溶接されて」いるものである。 すなわち、甲1-1発明は、「角鋼管と円形鋼管との間」に「鉄筋が溶接」されて固定された「柱状基材」に「プレキャスト中空コンクリート部材」が「収容」されて、これらを不可分のものとして一体化し、最終品とすることを発明の前提としたものといえる。 そして、「プレキャスト中空コンクリート部材」を前記「柱状基材」から「脱型」することは、前記発明の前提を破却することとなるので、もとより想定されるものではない。 してみれば、そのほかの甲各号証に記載された事項や本件特許の優先日当時の周知技術にかかわらず、甲1-1発明を、前記相違点1に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得ることではない。 e したがって、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1-1発明に基づいて、又は、甲1-1発明及び甲第2~4、6号証に記載された事項に基づいて、又は、甲1-1発明、甲第2~4号証に記載された事項及び本件特許の出願日当時の周知技術(甲第6~8号証を引用)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 更に、本件発明1の発明特定事項を全て有する本件発明2~4、8~12及び15について検討しても事情は同じである。 (イ) 本件発明16、19、20について a 前記(ア)aと同様にして本件発明16と甲1-2発明とを対比すると、甲1-2発明における「プレキャスト中空コンクリート部材」は、本件発明16における「プレキャストコンクリート製品」に相当し、甲1-2発明における「プレキャスト中空コンクリート部材」の「柱状の空洞」は、本件発明16における「キャビティ」に相当し、甲1-2発明における「円形鋼管の内壁に接着」した「コンクリート」は、本件発明16における「プレキャストコンクリート製品の壁」に相当し、甲1-2発明における「プレキャスト中空コンクリート部材の製造方法のためのシステム」は、本件発明16における「その中にキャビティを有するプレキャストコンクリート製品の壁が、圧力を保持するための容器として機能するプレキャストコンクリート製品を硬化させるためのシステム」に相当する。 また、甲第1号証の図1の記載(前記(1)ア(ア)c)によれば、甲1-2発明における「プレキャスト中空コンクリート部材」の「柱状の空洞」は、「開放されている下端および上端を有」することが看取されるから、本件発明16において、「該キャビティは、開放されている下端および上端を有」することを満たし、甲1-2発明における「2枚のエンドプレート」は、それぞれ、本件発明16における「プレキャストコンクリート製品をその上に受け、キャビティの下端を覆う大きさのベース」及び「プレキャストコンクリート製品の上に設けられ、キャビティの上端を覆う大きさのカバープレート」に相当する。 更に、甲1-2発明における「ドライアイス」は、本件発明16における「二酸化炭素(CO2)ガス源」に相当し、甲1-2発明において、「cコンクリートの充填:角鋼管と円形鋼管の間の空洞にコンクリートを部分的に注入し、残りのコンクリートを円形鋼管に注入して柱状の空洞を形成し、遠心回転により円形鋼管の内壁に接着する。d蒸気処理:コンクリートを充填した柱状基材を常圧蒸気養生プールに引き上げ、1~2時間放置した後、90~100℃まで徐々に加熱し、常圧で4~8時間養生する。その後、オートクレーブに入れ、180~200℃、飽和蒸気圧1.0MPa、8~12時間の高温蒸気養生を行う。e中空コンクリート部材の形成:蒸気養生後、マトリックスの柱状の空洞にドライアイスを充填し、2枚のエンドプレートで柱状の空洞を密閉」し、「ドライアイスが昇華した後に発生する二酸化炭素がコンクリートと反応する」ことは、本件発明16において、「ここで、該二酸化炭素(CO2)ガス源は、コンクリート製品をキャスティングし」、「ついで、コンクリート製品の炭酸化を実行するために」、「前記炭酸化中、コンクリート製品の壁の内面が二酸化炭素(CO2)に曝露される、二酸化炭素(CO2)ガスをキャビティに導入する」ことに相当する。 ここで、前記(ア)aに記載したのと同様の理由により、甲1-2発明は、本件発明16における「コンクリート製品」を「脱型」する、との発明特定事項、及び、「前記炭酸化中」、「コンクリート製品の壁の外面が環境に曝露される」、との発明特定事項を満たさないし、甲1-2発明において、「二酸化炭素」が「コンクリート」を「柱状の空洞」から「外側に向かって一方向に浸透」するか否かは明らかでない。 b 前記aによれば、本件発明16と甲1-2発明とは、 「その中にキャビティを有するプレキャストコンクリート製品の壁が、圧力を保持するための容器として機能するプレキャストコンクリート製品を硬化させるためのシステムであって、該キャビティは、開放されている下端および上端を有し、該システムが、 プレキャストコンクリート製品をその上に受け、キャビティの下端を覆う大きさのベース、 プレキャストコンクリート製品の上に受けられ、キャビティの上端を覆う大きさのカバープレート、 二酸化炭素(CO2)ガス源、 ここで、該二酸化炭素(CO2)ガス源は、コンクリート製品をキャスティングし、ついで、コンクリート製品の炭酸化を実行するために、前記炭酸化中、コンクリート製品の壁の内面が二酸化炭素(CO2)に曝露される、二酸化炭素(CO2)ガスをキャビティに導入するものである、 を備えるシステム。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点4:「システム」が、本件発明16は、「コンクリート製品」を「脱型」するものであるのに対して、甲1-2発明は、「プレキャスト中空コンクリート部材」を「角鋼管」や「円形鋼管」から「脱型」するものではない点。 ・相違点5:「システム」が、本件発明16は、「コンクリート製品の炭酸化を実行するために、前記炭酸化中、二酸化炭素(CO2)ガスは、コンクリート製品の壁をキャビティから外側に向かって一方向に進行」するものであるのに対して、甲1-2発明は、「二酸化炭素」が「コンクリート」を「柱状の空洞」から「外側に向かって一方向に浸透」するか否かは明らかでない点。 ・相違点6:「システム」が、本件発明16は、「前記炭酸化中」、「コンクリート製品の壁の外面が環境に曝露される」ものであるのに対して、甲1-2発明は、「コンクリート」の「外面が環境に曝露される」ものであるとはいえない点。 ・相違点7:「システム」が、本件発明16は、「二酸化炭素(CO2)ガス源、およびCO2源に流体的に接続され、キャビティに流体的に接続するように構成されたCO2導管」「を備える」のに対して、甲1-2発明は、「蒸気養生後、マトリックスの柱状の空洞にドライアイスを充填」するものである点。 c 始めに、前記bの相違点4の容易想到性について検討すると、前記相違点4は、「コンクリート製品」を「脱型」することに関する相違点である点で、前記相違点1と共通するから、前記(ア)dに記載したのと同様の理由により、そのほかの甲各号証に記載された事項や本件特許の優先日当時の周知技術にかかわらず、甲1-2発明を、前記相違点4に係る本件発明16の発明特定事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得ることではない。 d したがって、前記bのそのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明16は、甲1-2発明に基づいて、又は、甲1-2発明及び甲第2~4、6号証に記載された事項に基づいて、又は、甲1-2発明、甲第2~4号証に記載された事項及び本件特許の出願日当時の周知技術(甲第6~8号証を引用)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 更に、本件発明1の発明特定事項を全て有する本件発明19及び20について検討しても事情は同じである。 (ウ) 本件発明21、23、25、28、29について a 本件発明21と甲1-1発明とを対比すると、前記(ア)aに記載したのと同様の理由により、本件発明21と甲1-1発明とは、 「その中にキャビティを有するコンクリート製品であって、コンクリート製品の壁が、圧力を保持するための容器として機能するコンクリート製品を硬化させる方法であって、 コンクリート製品をキャスティングすること、 キャビティを密閉すること、 密閉されたキャビティに二酸化炭素(CO2)ガスを導入することによってコンクリート製品の炭酸化を実行すること ここで、該二酸化炭素(CO2)ガスをキャビティに導入することは、前記炭酸化中、コンクリート製品の壁の内面が二酸化炭素(CO2)に曝露され、 および コンクリート製品が目標仕様に到達したことに応答して、キャビティの密閉を解除すること、 を含む方法。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点1’:「コンクリート製品を硬化させる方法」が、本件発明21は、「コンクリート製品」を「脱型」するものであるのに対して、甲1-1発明は、「プレキャスト中空コンクリート部材」を「角鋼管」や「円形鋼管」から「脱型」するものではない点。 ・相違点2’:「コンクリート製品を硬化させる方法」が、本件発明21は、「ここで、該二酸化炭素(CO2)ガスをキャビティに導入することは、前記炭酸化中、二酸化炭素(CO2)ガスは、コンクリート製品の壁をキャビティから外側に向かって一方向に浸透」するものであるのに対して、甲1-1発明は、「二酸化炭素」が「コンクリート」を「柱状の空洞」から「外側に向かって一方向に浸透」するか否かは明らかでない点。 ・相違点3’:「コンクリート製品を硬化させる方法」が、本件発明21は、「前記炭酸化中」、「コンクリート製品の壁の外面が環境に曝露されるものである」のに対して、甲1-1発明は、「コンクリート」の「外面が環境に曝露される」ものであるとはいえない点。 b 始めに、前記aの相違点1’から検討すると、前記相違点1’は前記相違点1と同じものであるから、前記(ア)cに記載したのと同様の理由により、本件発明21と甲1-1発明とは前記相違点1’の点で実質的に相違するので、前記aのそのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明21が甲1-1発明であるとはいえない。 更に、本件発明21の発明特定事項を全て有する本件発明25、28及び29について検討しても事情は同じである。 c 次に、前記相違点1’の容易想到性について検討すると、前記(ア)dに記載したのと同様の理由により、そのほかの甲各号証に記載された事項や本件特許の優先日における周知技術に関わらず、甲1-1発明を、前記相違点1’に係る本件発明21の発明特定事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得ることではない。 d したがって、そのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明21は、甲1-1発明に基づいて、又は、甲1-1発明及び甲第2~4、6号証に記載された事項や、本件特許の優先日における周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 更に、本件発明21の発明特定事項を全て有する本件発明23、25、28及び29について検討しても事情は同じである。 (エ) 申立人の主張について a 申立人意見書における、甲第1号証を主引用例とした場合についての主張の概要は、以下のとおりである。 なお、申立人意見書に新たに添付された甲第3~7号証を、特許異議申立書における証拠方法である甲第3~7号証と区別するため、以下、意甲第3~7号証という。 意甲第3号証:特開平10-278023号公報 意甲第4号証:特開平7-96514号公報 意甲第5号証:特開2003-39419号公報 意甲第6号証:特開2010-100454号公報 意甲第7号証:特開2011-256566号公報 (a) 本件発明1と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、本件発明1の「コンクリート製品」は「キャスティングし、かつ、脱型すること」により形成されているのに対して、甲第1号証に記載された発明は、角鋼管2と円形鋼管3との間の空洞と円形鋼管3内にコンクリートが注入されることによって形成されるものである点で相違し、更に、甲第1号証に記載された発明は、「ここで、該二酸化炭素(CO2)ガスをキャビティに導入することは、前記炭酸化中、二酸化炭素(CO2)ガスは、コンクリート製品の壁をキャビティから外側に向かって一方向に浸透し、かつ、前記炭酸化中、コンクリート製品の壁の内面が二酸化炭素(CO2)に曝露され、コンクリート製品の壁の外面が環境に曝露されるものである」ことを備えていない点で、本件発明1と相違する。 ところが、空洞を有する「コンクリート製品」の形成方法として、甲第1号証に記載された発明のように角鋼管2や円形鋼管3を用いることなく、「キャスティングし、かつ、脱型すること」によって形成することは、意甲第3~5号証に記載されるとおり、本件特許の優先日当時の周知技術であるから、甲第1号証に記載された発明において、「コンクリート製品」を「キャスティングし、かつ、脱型すること」は、当業者であれば本件特許の優先日当時の周知技術に基づいて容易になし得ることであるし、その場合、炭酸化のときには「二酸化炭素(CO2)ガスは、コンクリート製品の壁をキャビティから外側に向かって一方向に浸透し、かつ、前記炭酸化中、コンクリート製品の壁の内面が二酸化炭素(CO2)に曝露され、コンクリート製品の壁の外面が環境に曝露され」る状態となるから、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明及び本件特許の優先日当時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである(3ページ16行~4ページ下から6行)。 (b) 本件発明16と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、本件発明16は「二酸化炭素(CO2)ガス源」及び「CO2導管」を備えるのに対して、甲第1号証に記載された発明は、円柱状空洞5内にドライアイスが直接入れられている点で相違し、甲第1号証に記載された発明は、「ここで、該二酸化炭素(CO2)ガス源は、コンクリート製品をキャスティングし、かつ、脱型し、ついで、コンクリート製品の炭酸化を実行するために、前記炭酸化中、二酸化炭素(CO2)ガスは、コンクリート製品の壁をキャビティから外側に向かって一方向に浸透し、かつ、前記炭酸化中、コンクリート製品の壁が二酸化炭素(CO2)に曝露され、コンクリート製品の壁の外面が環境に曝露される、二酸化炭素(CO2)ガスをキャビティに導入する」ものではない点で、本件発明16と相違する。 ところが、二酸化炭素を「コンクリート製品」のキャビティ内に導入して硬化させるシステムにおいてホースを用いることは意甲第7号証に記載されており、意甲第7号証は、甲第1号証に記載された発明と技術分野が共通するから、甲第1号証に記載された発明に意甲第7号証を適用する動機付けは存在するので、甲第1号証に記載された発明において「二酸化炭素(CO2)ガス源」及び「CO2導管」を備えることは、当業者が容易になし得ることである。 また、前記(a)に記載したのと同様の理由により、甲第1号証に記載された発明において、「コンクリート製品」を「キャスティングし、かつ、脱型すること」は、当業者であれば本件特許の優先日当時の周知技術に基づいて容易になし得ることであるし、その場合、炭酸化のときには「二酸化炭素(CO2)ガスは、コンクリート製品の壁をキャビティから外側に向かって一方向に浸透し、かつ、前記炭酸化中、コンクリート製品の壁の内面が二酸化炭素(CO2)に曝露され、コンクリート製品の壁の外面が環境に曝露され」る状態となるから、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明、意甲第7号証に記載された事項及び本件特許の優先日当時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである(5ページ最終行~7ページ下から4行)。 (c) 本件発明21と甲第1号証に記載された発明とを対比すると、本件発明21の「コンクリート製品」は「キャスティングし、かつ、脱型すること」により形成されているのに対して、甲第1号証に記載された発明は、角鋼管2と円形鋼管3との間の空洞と円形鋼管3内にコンクリートが注入されることによって形成されるものである点で相違し、更に、甲第1号証に記載された発明は、「ここで、該二酸化炭素(CO2)ガスをキャビティに導入することは、前記炭酸化中、二酸化炭素(CO2)ガスは、コンクリート製品の壁をキャビティから外側に向かって一方向に浸透し、かつ、前記炭酸化中、コンクリート製品の壁の内面が二酸化炭素(CO2)に曝露され、コンクリート製品の壁の外面が環境に曝露されるものである」ことを備えていない点で、本件発明21と相違する。 ところが、前記(a)に記載したのと同様の理由により、甲第1号証に記載された発明において、「コンクリート製品」を「キャスティングし、かつ、脱型すること」は、当業者であれば本件特許の優先日当時の周知技術に基づいて容易になし得ることであるし、その場合、炭酸化のときには「二酸化炭素(CO2)ガスは、コンクリート製品の壁をキャビティから外側に向かって一方向に浸透し、かつ、前記炭酸化中、コンクリート製品の壁の内面が二酸化炭素(CO2)に曝露され、コンクリート製品の壁の外面が環境に曝露され」る状態となるから、本件発明21は、甲第1号証に記載された発明及び本件特許の優先日当時の周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである(8ページ最終行~10ページ6行)。 b 以下、前記aの主張について検討すると、前記主張は、総じて、「コンクリート製品」を「角鋼管」や「円形鋼管」を用いることなく「キャスティングし、かつ、脱型すること」によって形成することは本件特許の優先日当時の周知技術であるから、甲第1号証に記載された発明において、「コンクリート製品」を「キャスティングし、かつ、脱型すること」は、当業者であれば本件特許の優先日当時の周知技術に基づいて容易になし得ることをいうものといえる。 ところが、甲1-1発明は、「角鋼管と円形鋼管との間」に「鉄筋が溶接」されて固定された「柱状基材」に「プレキャスト中空コンクリート部材」が「収容」されて、これらを不可分のものとして一体化し、最終品とすることを発明の前提としたものといえ、「プレキャスト中空コンクリート部材」を前記「柱状基材」から「脱型」することは、前記発明の前提を破却することとなるので、もとより想定されるものではないことは、前記(ア)dに記載したとおりである。 更に、「角鋼管」や「円形鋼管」を用いることなく「キャスティング」「すること」もまた、同様に、甲第1号証に記載された発明の前提を破却することとなるから、もとより想定されないので、仮に、「コンクリート製品」を「角鋼管」や「円形鋼管」を用いることなく「キャスティングし、かつ、脱型すること」によって形成することが本件特許の優先日当時の周知技術であるとしても、甲第1号証に記載された発明を、「角鋼管」や「円形鋼管」を用いることなく「キャスティングし、かつ、脱型する」ものとすることは、当業者が容易になし得ることではない。 したがって、前記aの主張はいずれも採用できない。 (オ) 小括 よって、本件発明1、4、8~10、12、15、21、25、28及び29は、甲第1号証に記載された発明であるとはいえないし、本件発明1~4、8~12、15、16、19~21、23、25、28及び29は、甲第1号証に記載された発明に基づいて、又は、甲第1号証に記載された発明及び甲第2~4、6号証に記載された事項に基づいて、又は、甲第1号証に記載された発明、甲第2~4号証に記載された事項及び本件特許の優先日当時の周知技術(甲第6~8号証を引用)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、前記第4の2(1)の特許異議申立理由及び前記第5の1(1)の取消理由はいずれも理由がない。 イ 甲第2号証を主引用例とした場合について (ア)本件発明1~4、8~12、15について a 本件発明1と甲2-1発明とを対比すると、甲2-1発明における「塩性土壌地域用プレキャストコンクリート杭」は、本件発明1における「コンクリート製品」に相当し、甲2-1発明における「杭孔」は、本件発明1における「コンクリート製品内」の「キャビティ」に相当し、甲2-1発明における「杭体」は、本件発明1における「キャビティを囲む壁」であって、「該キャビティへの開口部を有するコンクリート製品の壁」に相当する。 そして、甲2-1発明が、「エアポンプを作動させ、養生窯内のCO2と水蒸気を加圧し、杭体に送り込む」際に「導入するCO2と水蒸気の圧力」を「大気圧の1.01~2倍に制御する」ものであることからみれば、甲2-1発明における「塩性土壌地域用プレキャストコンクリート杭」は、本件発明1における「該キャビティへの開口部を有するコンクリート製品の壁が、圧力を保持するための容器として機能するコンクリート製品」に相当し、甲2-1発明における「塩性土壌地域用プレキャストコンクリート杭の製造方法」は、「杭体」に「強度」を持たせるものであるから、本件発明1における「コンクリート製品を硬化させる方法」に相当する。 また、甲2-1発明において、「杭体」を「成形」し、「予備養生及び脱型」することは、本件発明1において、「コンクリート製品をキャスティングし、かつ、脱型すること」に相当し、甲2-1発明における「孔栓」は、本件発明1における「ベース」に相当し、甲2-1発明における「シーリング層」は、本件発明1における「カバープレート」に相当し、甲2-1発明において、「最後に接続された杭体の杭孔(又はホースが接続されていない杭体の杭孔)の端部」を「孔栓で塞」ぐことは、本件発明1において、「コンクリート製品をベース上に位置決めする」ことに相当し、甲2-1発明において、「ホースと杭孔との間にシーリング層を設けてシーリングする」ことは、本件発明1において「カバープレートを用いて開口部を密閉する」ことに相当する。 更に、甲2-1発明において、「エアポンプを作動させ、養生窯内のCO2と水蒸気を加圧し、杭体に送り込む」ことは、「炭化養生を実現する」ものであるから、本件発明1において、「コンクリート製品の炭酸化を実行するために、二酸化炭素(CO2)ガスをキャビティに導入すること」に相当する。 また、甲2-1発明において、「前記炭化養生方法においては、既成杭体を養生するための密閉容器内の空気圧が均一であるため、CO2ガスは比較的ゆっくりと杭体内に浸透・拡散し、杭体材料中のMg(OH)2及びCa(OH)2を炭化させるものであり、杭体内外のCO2含有ガス間に圧力差が生じると、CO2含有ガスの杭体材料への浸透・拡散速度が加速され、Mg(OH)2及びCa(OH)2の炭化反応速度が加速される」ことからみれば、「養生窯内」の「CO2ガス」は、「エアポンプ」により「杭体に送り込」まれ、「コンクリート製品の壁をキャビティから外側に向かって一方向に浸透」するともに、「コンクリート製品の壁の内面が二酸化炭素(CO2)に曝露され」るものといえるから、前記「炭化養生工程」は、本件発明1において、「ここで、該二酸化炭素(CO2)ガスをキャビティに導入することは、前記炭酸化中、二酸化炭素(CO2)ガスは、コンクリート製品の壁をキャビティから外側に向かって一方向に浸透し、かつ、前記炭酸化中、コンクリート製品の壁の内面が二酸化炭素(CO2)に曝露され」ることを満たす。 そして、技術常識からみて、甲2-1発明に係る方法により製造された、「完成品」として「工場から出荷」される「塩性土壌地域用プレキャストコンクリート杭」は、「コンクリート製品が目標仕様に到達」し、「開口部」が「密閉解除」されたものといえるから、甲2-1発明に係る方法は、本件発明1の「コンクリート製品が目標仕様に到達するのに応じて、開口部を密閉解除する」、との発明特定事項を満たすものといえる。 ここで、本件発明1の「コンクリート製品の壁の外面が環境に曝露される」、との発明特定事項における「環境」が、「脱型」された「コンクリート製品」が、外部加圧容器や硬化室といった気密性の高い筐体に囲まれない「環境」を意味しているといえ、本件発明1は、「炭酸化中」、「脱型」された「コンクリート製品の壁の外面」が、外部加圧容器や硬化室といった気密性の高い筐体に囲まれない「環境に曝露され」るものといえることは、前記ア(ア)aに記載したとおりである。 これに対して、甲2-1発明は、「炭化養生工程」において、「一定量のCO2ガスを養生用の密閉容器(養生窯、蒸気養生釜、オートクレーブなど)に導入することで炭化養生を実現する」ものであって、「養生用の密閉容器(養生窯、蒸気養生釜、オートクレーブなど)」は気密性の高い筐体といえるから、「炭化養生工程」を気密性の高い筐体の中で行うことを発明の前提としたものといえるので、「炭酸化中」、「杭体」の「外面」が、外部加圧容器や硬化室といった気密性の高い筐体に囲まれない「環境に曝露され」るものとはいえない。 してみれば、甲2-1発明は、本件発明1の「前記炭酸化中」、「コンクリート製品の壁の外面が環境に曝露される」、との発明特定事項を満たさない。 b 前記aによれば、本件発明1と甲2-1発明とは、 「コンクリート製品内にキャビティを囲む壁を有し、該キャビティへの開口部を有するコンクリート製品の壁が、圧力を保持するための容器として機能するコンクリート製品を硬化させる方法であって、 コンクリート製品をキャスティングし、かつ、脱型すること、 コンクリート製品をベース上に位置決めすること、 カバープレートを用いて開口部を密閉すること、 コンクリート製品の炭酸化を実行するために、二酸化炭素(CO2)ガスをキャビティに導入すること、 ここで、該二酸化炭素(CO2)ガスをキャビティに導入することは、前記炭酸化中、二酸化炭素(CO2)ガスは、コンクリート製品の壁をキャビティから外側に向かって一方向に浸透し、かつ、前記炭酸化中、コンクリート製品の壁の内面が二酸化炭素(CO2)に曝露されるものである、 および コンクリート製品が目標仕様に到達するのに応じて、開口部を密閉解除すること、 を含む方法。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点8:「コンクリート製品を硬化させる方法」が、本件発明1は、「前記炭酸化中」、「コンクリート製品の壁の外面が環境に曝露され」るのに対して、甲2-1発明は、「杭体」の「外面が環境に曝露され」るものとはいえない点。 c 以下、前記bの相違点8について検討すると、前記aに記載したとおり、本件発明1と甲2-1発明とは前記相違点8の点で実質的に相違するから、本件発明1が甲2-1発明であるとはいえない。 更に、本件発明1の発明特定事項を全て有する本件発明2~4、8~12及び15について検討しても事情は同じである。 d 次に、前記相違点8の容易想到性について検討すると、甲2-1発明は、「炭化養生工程」を気密性の高い筐体の中で行うことを発明の前提としたものといえることは、前記aに記載したとおりである。 また、甲2-1発明は、「炭化養生工程」において、「一定量のCO2ガスを養生用の密閉容器(養生窯、蒸気養生釜、オートクレーブなど)に導入することで炭化養生を実現する」ことで、「既成杭体を養生するための密閉容器内の空気圧が均一であるため、CO2ガスは比較的ゆっくりと杭体内に浸透・拡散し、杭体材料中のMg(OH)2及びCa(OH)2を炭化させるものであり、杭体内外のCO2含有ガス間に圧力差が生じると、CO2含有ガスの杭体材料への浸透・拡散速度が加速され、Mg(OH)2及びCa(OH)2の炭化反応速度が加速される」、という特長を有するものである。 そして、そのような甲2-1発明の「炭化養生工程」を、「杭体」の「外面」が、外部加圧容器や硬化室といった気密性の高い筐体に囲まれない「環境に曝露され」るものとすることは、前記発明の前提を破却して、前記特長を損なうこととなるから、そもそも想定されないので、そのほかの甲各号証に記載された事項や本件特許の優先日当時の周知技術にかかわらず、甲2-1発明を、前記相違点8に係る本件発明1の発明特定事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得ることではない。 e したがって、本件発明1は、甲2-1発明に基づいて、又は、甲2-1発明及び甲第3~6号証に記載された事項に基づいて、又は、甲2-1発明、甲第3~5号証に記載された事項及び本件特許の出願日当時の周知技術(甲第6~8号証を引用)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 更に、本件発明1の発明特定事項を全て有する本件発明2~4、8~12及び15について検討しても事情は同じである。 (イ) 本件発明16、19、20について a 前記(ア)aと同様にして本件発明16と甲2-2発明とを対比すると、甲2-2発明における「塩性土壌地域用プレキャストコンクリート杭」は、本件発明16における「プレキャストコンクリート製品」に相当し、甲2-2発明における「杭孔」は、本件発明16における「プレキャストコンクリート製品」の「中」の「キャビティ」に相当し、甲2-2発明における「杭体」は、本件発明16における「その中にキャビティを有するプレキャストコンクリート製品の壁」に相当し、甲2-2発明における「塩性土壌地域用プレキャストコンクリート杭の製造方法のためのシステム」は、本件発明16における「その中にキャビティを有するプレキャストコンクリート製品の壁が、圧力を保持するための容器として機能するプレキャストコンクリート製品を硬化させるためのシステム」に相当する。 また、甲第2号証の図1(a)の記載(前記(1)イ(ア)c)によれば、甲2-2発明における「杭孔」は、「開放されている下端および上端を有」することが看取されるから、本件発明16において、「該キャビティは、開放されている下端および上端を有」することを満たし、甲2-2発明における「孔栓」は、本件発明16における「プレキャストコンクリート製品をその上に受け、キャビティの下端を覆う大きさのベース」に相当し、甲2-2発明における「シーリング層」は、本件発明16における「プレキャストコンクリート製品の上に設けられ、キャビティの上端を覆う大きさのカバープレート」に相当する。 更に、甲2-2発明における「エアポンプ」は、「CO2と水蒸気を加圧する」ものであるから、本件発明16における「二酸化炭素(CO2)ガス源」に相当し、甲2-2発明における「炭化養生工程」は、前記(ア)aに記載したのと同様の理由により、本件発明16において、「ここで、該二酸化炭素(CO2)ガス源は、コンクリート製品をキャスティングし、かつ、脱型し、ついで、コンクリート製品の炭酸化を実行するために、前記炭酸化中、二酸化炭素(CO2)は、コンクリート製品の壁をキャビティから外側に向かって一方向に浸透し、かつ、コンクリート製品の壁の内面が二酸化炭素(CO2)に曝露される」、「二酸化炭素(CO2)ガスをキャビティに導入する」ることを満たす。 そして、甲2-2発明において、「杭体の杭孔」を「接続」すると共に、その「端部」が「エアポンプ」に「接続」される「ホース」は、本件発明16における「CO2源に流体的に接続され、キャビティに流体的に接続されるように構成されたCO2導管」に相当する。 ここで、前記(ア)aに記載したのと同様の理由により、甲2-2発明は、本件発明16の「前記炭酸化中」、「コンクリート製品の壁の外面が環境に曝露される」、との発明特定事項を満たさない。 b 前記aによれば、本件発明16と甲2-2発明とは、 「その中にキャビティを有するプレキャストコンクリート製品の壁が、圧力を保持するための容器として機能するプレキャストコンクリート製品を硬化させるためのシステムであって、該キャビティは、開放されている下端および上端を有し、該システムが、 プレキャストコンクリート製品をその上に受け、キャビティの下端を覆う大きさのベース、 プレキャストコンクリート製品の上に受けられ、キャビティの上端を覆う大きさのカバープレート、 二酸化炭素(CO2)ガス源、 ここで、該二酸化炭素(CO2)ガス源は、コンクリート製品をキャスティングし、かつ、脱型し、ついで、コンクリート製品の炭酸化を実行するために、前記炭酸化中、二酸化炭素(CO2)ガスは、コンクリート製品の壁をキャビティから外側に向かって一方向に浸透し、かつ、前記炭酸化中、コンクリート製品の壁の内面が二酸化炭素(CO2)に曝露される、二酸化炭素(CO2)ガスをキャビティに導入するものであり、 および 該CO2源に流体的に接続され、キャビティに流体的に接続されるように構成されたCO2導管、 を備えるシステム。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点9:「システム」が、本件発明16は、「前記炭酸化中」、「コンクリート製品の壁の外面が環境に曝露され」るのに対して、甲2-2発明は、「杭体」の「外面が環境に曝露され」るものとはいえない点。 c 以下、前記bの相違点9について検討すると、前記aに記載したとおり、本件発明16と甲2-2発明とは前記相違点9の点で実質的に相違するから、本件発明16が甲2-2発明であるとはいえない。 更に、本件発明16の発明特定事項を全て有する本件発明19及び20について検討しても事情は同じである。 d 次に、前記相違点9の容易想到性について検討すると、前記相違点9は、「前記炭酸化中」、「コンクリート製品の壁の外面が環境に曝露され」るか否かに関する相違点である点で前記相違点8と共通するから、前記(ア)dに記載したのと同様の理由により、そのほかの甲各号証に記載された事項や本件特許の優先日当時の周知技術にかかわらず、甲2-2発明を前記相違点9に係る本件発明16の発明特定事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得ることではない。 e したがって、本件発明16は、甲2-2発明に基づいて、又は、甲2-2発明及び甲第3~6号証に記載された事項に基づいて、又は、甲2-2発明、甲第3~5号証に記載された事項及び本件特許の出願日当時の周知技術(甲第6~8号証を引用)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 更に、本件発明16の発明特定事項を全て有する本件発明19及び20について検討しても事情は同じである。 (ウ) 本件発明21、23、25、28、29について a 本件発明21と甲2-1発明とを対比すると、前記(ア)aに記載したのと同様の理由により、本件発明21と甲2-1発明とは、 「その中にキャビティを有するコンクリート製品であって、コンクリート製品の壁が、圧力を保持するための容器として機能するコンクリート製品を硬化させる方法であって、 コンクリート製品をキャスティングし、かつ、脱型すること、 キャビティを密閉すること、 密閉されたキャビティに二酸化炭素(CO2)ガスを導入することによってコンクリート製品の炭酸化を実行すること ここで、該二酸化炭素(CO2)ガスをキャビティに導入することは、前記炭酸化中、二酸化炭素(CO2)ガスは、コンクリート製品の壁をキャビティから外側に向かって一方向に浸透し、かつ、前記炭酸化中、コンクリート製品の壁の内面が二酸化炭素(CO2)に曝露され、 および コンクリート製品が目標仕様に到達したことに応答して、キャビティの密閉を解除すること、 を含む方法。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点8’:「コンクリート製品を硬化させる方法」が、本件発明21は、「前記炭酸化中」、「コンクリート製品の壁の外面が環境に曝露され」るのに対して、甲2-1発明は、「杭体」の「外面が環境に曝露され」るものとはいえない点。 b 以下、前記bの相違点8’について検討すると、前記相違点8’は前記相違点8と同じものであるから、前記(ア)cに記載したのと同様の理由により、本件発明21と甲2-1発明とは前記相違点8’の点で実質的に相違するので、本件発明21が甲2-1発明であるとはいえない。 更に、本件発明21の発明特定事項を全て有する本件発明23、25、28及び29について検討しても事情は同じである。 c 次に、前記相違点8’の容易想到性について検討すると、前記(ア)dに記載したのと同様の理由により、そのほかの甲各号証に記載された事項や本件特許の優先日における周知技術に関わらず、甲2-1発明を、前記相違点8’に係る本件発明21の発明特定事項を有するものとすることは、当業者が容易になし得ることではない。 d したがって、本件発明21は、甲2-1発明に基づいて、又は、甲2-1発明及び甲第3~6号証に記載された事項に基づいて、又は、甲2-1発明、甲第3~5号証に記載された事項及び本件特許の出願日当時の周知技術(甲第6~8号証を引用)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 更に、本件発明21の発明特定事項を全て有する本件発明23、25、28及び29について検討しても事情は同じである。 (エ) 申立人の主張について a 申立人意見書における、甲第2号証を主引用例とした場合についての主張の概要は、以下のとおりである。 (a) 本件発明1と甲第2号証に記載された発明とを対比すると、甲第2号証に記載された発明は、「ここで、該二酸化炭素(CO2)ガスをキャビティに導入することは、前記炭酸化中、二酸化炭素(CO2)ガスは、コンクリート製品の壁をキャビティから外側に向かって一方向に浸透し、かつ、前記炭酸化中、コンクリート製品の壁の内面が二酸化炭素(CO2)に曝露され、コンクリート製品の壁の外面が環境に曝露されるものである」ことを備えていない点で、本件発明1と相違する。 ところが、「脱型」された「コンクリート製品」を「炭酸化」する際に、「コンクリート製品の壁の内面が二酸化炭素(CO2)に曝露され、コンクリート製品の壁の外面が環境に曝露される」ようにすることは、意甲第6号証に開示されており、また、「コンクリート製品」の「炭酸化」を養生用の密閉容器を用いることなく外気中で行うことは、甲第1号証に開示されている。 そして、甲第2号証に記載された発明と甲第1号証及び意甲第6号証は同一の技術分野に属するから、甲第2号証に記載された発明において、「コンクリート製品」の「炭酸化」を、養生用の密閉容器を用いることなく、「コンクリート製品の壁の外面が環境に曝露」された状態で行うことは、当業者が容易になし得ることであるので、本件発明1は、甲第2号証に記載された発明及び甲第1号証又は意甲第6号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである(4ページ下から5行~5ページ下から2行)。 (b) 本件発明16と甲第2号証に記載された発明とを対比すると、甲第2号証に記載された発明は、「ここで、該二酸化炭素(CO2)ガス源は、コンクリート製品をキャスティングし、かつ、脱型し、ついで、コンクリート製品の炭酸化を実行するために、前記炭酸化中、二酸化炭素(CO2)ガスは、コンクリート製品の壁をキャビティから外側に向かって一方向に浸透し、かつ、前記炭酸化中、コンクリート製品の壁が二酸化炭素(CO2)に曝露され、コンクリート製品の壁の外面が環境に曝露される、二酸化炭素(CO2)ガスをキャビティに導入する」ことを備えていない点で、本件発明16と相違する。 ところが、前記(a)に記載したのと同様の理由により、甲第2号証に記載された発明において、「コンクリート製品」の「炭酸化」を、養生用の密閉容器を用いることなく、「コンクリート製品の壁の外面が環境に曝露」された状態で行うことは、当業者が容易になし得ることであるから、本件発明16は、甲第2号証に記載された発明及び甲第1号証又は意甲第6号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである(7ページ下から3行~8ページ下から2行)。 (c) 本件発明21と甲第2号証に記載された発明とを対比すると、甲第2号証に記載された発明は、「ここで、該二酸化炭素(CO2)ガスをキャビティに導入することは、前記炭酸化中、二酸化炭素(CO2)ガスは、コンクリート製品の壁をキャビティから外側に向かって一方向に浸透し、かつ、前記炭酸化中、コンクリート製品の壁の内面が二酸化炭素(CO2)に曝露され、コンクリート製品の壁の外面が環境に曝露される」ことを備えていない点で、本件発明21と相違する。 ところが、前記(a)に記載したのと同様の理由により、甲第2号証に記載された発明において、「コンクリート製品」の「炭酸化」を、養生用の密閉容器を用いることなく、「コンクリート製品の壁の外面が環境に曝露」された状態で行うことは、当業者が容易になし得ることであるから、本件発明21は、甲第2号証に記載された発明及び甲第1号証又は意甲第6号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである(10ページ7行~11ページ8行)。 b 以下、前記aの主張について検討すると、前記主張は、総じて、甲第2号証に記載された発明において、「脱型」された「コンクリート製品」を「炭酸化」する際に、「コンクリート製品の壁の内面が二酸化炭素(CO2)に曝露され、コンクリート製品の壁の外面が環境に曝露される」ようにすることは、当業者であれば甲第1号証に記載された事項又は意甲第6号証に記載された事項に基づいて容易になし得ることをいうものといえる。 ところが、前記(ア)dに記載したのと同様の理由により、甲第2号証に記載された発明において、「脱型」された「コンクリート製品」を「炭酸化」する際に、「コンクリート製品の壁の内面が二酸化炭素(CO2)に曝露され、コンクリート製品の壁の外面が環境に曝露される」ようにすることは、甲第2号証に記載された発明の前提を破却して、甲第2号証に記載された発明の特長を損なうこととなるから、もとより想定されないので、甲第1号証や意甲第6号証に記載された事項に関わらず、甲第2号証に記載された発明を、「脱型」された「コンクリート製品」を「炭酸化」する際に、「コンクリート製品の壁の内面が二酸化炭素(CO2)に曝露され、コンクリート製品の壁の外面が環境に曝露される」ようにすることは、当業者が容易になし得ることではない。 したがって、前記aの主張はいずれも採用できない。 (オ) 小括 よって、本件発明1~4、8~12、15、16、19~21、23、25、28及び29は、甲第2号証に記載された発明であるとはいえないし、本件発明1~4、8~12、15、16、19~21、23、25、28及び29は、甲第2号証に記載された発明に基づいて、又は、甲第2号証に記載された発明及び甲第3~6号証に記載された事項に基づいて、又は、甲第2号証に記載された発明、甲第2~5号証に記載された事項及び本件特許の優先日当時の周知技術(甲第6~8号証を引用)に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、前記第4の2(2)の特許異議申立理由及び前記第5の1(2)の取消理由はいずれも理由がない。 ウ 甲第5号証を主引用例とした場合について (ア)本件発明21、28、29について a 本件発明21と甲5発明とを対比すると、甲5発明における「中空海砂コンクリート部材」は、本件発明21における「コンクリート製品」に相当し、甲5発明における「柱状の空洞」は、本件発明21における「コンクリート製品」の中の「キャビティ」に相当し、甲5発明が、「柱状の空洞内にドライアイスを配置し、ドライアイスが昇華して高圧二酸化炭素ガスを発生させ、この高圧二酸化炭素ガスによって二酸化炭素がより十分に浸透し、二酸化炭素と海砂コンクリートがより十分に反応できるようにする」ものであることからみれば、甲5発明における「中空海砂コンクリート部材」は、「コンクリート製品の壁が、圧力を保持するための容器として機能」しているといえるから、本件発明21における「コンクリート製品の壁が、圧力を保持するための容器として機能するコンクリート製品」に相当し、甲5発明における「中空海砂コンクリート部材の製造方法」は、「海砂コンクリートの強度を高め」るものであるから、本件発明21における「コンクリート製品を硬化させる方法」に相当する。 また、甲5発明において、「柱状マトリックスに海砂コンクリートを注入して、柱状マトリックスの内壁に取り付けられた中空柱を形成し、柱状マトリックス内で海砂コンクリートを形成」することは、「柱状マトリックスはFRPパイプであり、柱状の空洞を形成する際には」、「海砂コンクリートを充填した柱状マトリックスを遠心分離機にかけ、一定量回転させると、柱状マトリックス内の海砂コンクリートは柱状マトリックスの内壁に近接し、海砂コンクリートの中心が柱状の空洞を形成する」ものであるから、本件発明21において、「コンクリート製品をキャスティング」することに相当し、甲5発明において、「海砂コンクリートが二酸化炭素ガスと反応する際に、柱状の空洞を密閉する」ことは、本件発明21において、「キャビティを密閉する」ことに相当する。 更に、甲5発明において、「柱状の空洞に二酸化炭素ガスが導入され」ることは、そうすることで「水酸化カルシウムと二酸化炭素が反応して炭酸カルシウムを生成」するものであるから、本件発明21において「密閉されたキャビティに二酸化炭素(CO2)ガスを導入することによってコンクリート製品の炭酸化を実行すること」であって、「ここで、該二酸化炭素(CO2)ガスをキャビティに導入することは」、「前記炭酸化中、コンクリート製品の壁の内面が二酸化炭素(CO2)に曝露され」ることに相当し、甲5発明において、「海砂コンクリートを二酸化炭素ガスと完全に反応させる」ことは、そのような完全な反応により「中空海砂コンクリート部材」が「目標仕様に到達し」ていることは明らかであるし、技術常識からみて、反応後、「キャビティの密閉」は「解除」されるから、甲5発明は、本件発明21において、「コンクリート製品が目標仕様に到達したことに応答して、キャビティの密閉を解除する」ことを満たす。 ここで、本件発明1の「コンクリート製品の壁の外面が環境に曝露される」、との発明特定事項における「環境」が、「脱型」された「コンクリート製品」が、外部加圧容器や硬化室といった気密性の高い筐体に囲まれない「環境」を意味しているといえ、本件発明1は、「炭酸化中」、「脱型」された「コンクリート製品の壁の外面」が、外部加圧容器や硬化室といった気密性の高い筐体に囲まれない「環境に曝露され」るものといえることは、前記ア(ア)aに記載したとおりであり、本件発明21の「コンクリート製品の壁の外面が環境に曝露される」、との発明特定事項について検討しても事情は同じである。 これに対して、甲5発明は、「柱状マトリックスに海砂コンクリートを注入して、柱状マトリックスの内壁に取り付けられた中空柱を形成」するものであるから、そもそも、「中空海砂コンクリート部材」を「柱状マトリックス」から「脱型」するものではないので、本件発明21の「コンクリート製品」を「脱型する」、との発明特定事項を満たさない。 更に、甲5発明における「柱状マトリックス」が「FRPパイプ」であることからみれば、甲5発明は、「中空海砂コンクリート部材」の「壁の外面」が「環境に曝露され」るものともいえないから、本件発明21の「コンクリート製品の壁の外面が環境に曝露される」、との発明特定事項を満たさないし、前記「FRPパイプ」は「二酸化炭素(CO2)ガス」を透過しないことが推認されるから、甲5発明において、「二酸化炭素」が「中空海砂コンクリート部材」の「壁」を「柱状の空洞」から「外側に向かって一方向に浸透」するか否かも明らかでない。 b 前記aによれば、本件発明21と甲5発明とは、 「その中にキャビティを有するコンクリート製品であって、コンクリート製品の壁が、圧力を保持するための容器として機能するコンクリート製品を硬化させる方法であって、 コンクリート製品をキャスティングすること、 キャビティを密閉すること、 密閉されたキャビティに二酸化炭素(CO2)ガスを導入することによってコンクリート製品の炭酸化を実行すること ここで、該二酸化炭素(CO2)ガスをキャビティに導入することは、前記炭酸化中、コンクリート製品の壁の内面が二酸化炭素(CO2)に曝露されるものである、 および コンクリート製品が目標仕様に到達したことに応答して、キャビティの密閉を解除すること、 を含む方法。」 の点で一致し、以下の点で相違する。 ・相違点10:「コンクリート製品を硬化させる方法」が、本件発明21は、「コンクリート製品」を「脱型」するものであるのに対して、甲5発明は、「中空海砂コンクリート部材」を「柱状マトリックス」から「脱型」するものではない点。 ・相違点11:「コンクリート製品を硬化させる方法」が、本件発明21は、「ここで、該二酸化炭素(CO2)ガスをキャビティに導入することは、前記炭酸化中、二酸化炭素(CO2)ガスは、コンクリート製品の壁をキャビティから外側に向かって一方向に浸透」するものであるのに対して、甲5発明は、「二酸化炭素」が「中空海砂コンクリート部材」の「壁」を「柱状の空洞」から「外側に向かって一方向に浸透」するか否かは明らかでない点。 ・相違点12:「コンクリート製品を硬化させる方法」が、本件発明21は、「前記炭酸化中」、「コンクリート製品の壁の外面が環境に曝露されるものである」のに対して、甲5発明は、「中空海砂コンクリート部材」の「壁の外面」が「環境に曝露される」ものであるとはいえない点。 c 始めに、前記bの相違点10から検討すると、前記aに記載したとおり、本件発明21と甲5発明とは前記相違点10の点で実質的に相違するから、前記bのそのほかの相違点について検討するまでもなく、本件発明21が甲5発明であるとはいえない。 更に、本件発明21の発明特定事項を全て有する本件発明28及び29について検討しても事情は同じである。 (イ) 小括 したがって、本件発明21、28及び29は、甲第5号証に記載された発明であるとはいえないから、前記第4の2(3)の特許異議申立理由は理由がない。 2 特許法第36条第6項第2号所定の規定違反(明確性要件違反)について 特許法第36条第6項第2号所定の規定違反(明確性要件違反)についての前記第5の2の取消理由は、設定登録時の特許請求の範囲の請求項5~7、26、27及び30に係るものである。 そして、本件訂正により、これら請求項5~7、26、27及び30はいずれも削除されたから、前記第5の2の取消理由はいずれも理由がない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、申立人の特許異議申立書に記載した特許異議申立理由及び当審の取消理由によっては、本件発明1~4、8~12、15、16、19~21、23、25、28及び29に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1~4、8~12、15、16、19~21、23、25、28及び29に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 そして、請求項5~7、13、14、26、27及び30は、本件訂正により削除されたため、請求項5~7、13、14、26、27及び30に係る特許に対する特許異議申立てについては、対象となる請求項が存在しないものとなったから、特許法第120条の8第1項が準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700685

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