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特許異議申立

2024-700941

石膏ボード中の起泡液化剤

審判番号
2024-700941
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-530877
登録番号
7462752
請求日
2024年09月30日
審決日
2025年09月03日
公報発行日
2025年12月26日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】クナウフ ギプス カーゲー
  • 【権利者代理人】弁理士法人葛和国際特許事務所
  • 【異議申立人】金澤 毅
審判長/審判官
  • 審判長 深草 祐一
  • 審判官 塩谷 領大
  • 審判官 宮澤 尚之
分類
P1651.113-YAA(B28B) / P1651.121-YAA(B28B) / P1651.537-YAA(B28B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第120条の5第3項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7462752号発明「石膏ボード中の起泡液化剤」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7462752号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~14〕、15について訂正することを認める。 特許第7462752号の請求項1~8、10~15に係る特許を維持する。 特許第7462752号の請求項9に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7462752号の請求項1~15に係る特許(以下、それぞれ「本件特許1」などといい、まとめて「本件特許」という。)についての出願は、2019年(令和1年)11月27日を国際出願日とする出願であって、令和6年3月28日にその特許権の設定登録がされ、同年4月5日に特許掲載公報が発行された。 その後、本件特許1~15に対して、令和6年9月30日に特許異議申立人金澤毅(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、同年12月24日付けで取消理由が通知され、令和7年4月4日に特許権者により意見書、上申書、及び訂正請求書の提出がされ、同年5月8日に特許権者により意見書に対する手続補正書(方式)の提出がされ、同年6月16日に申立人により意見書の提出がされた。 第2 訂正の適否について 1 訂正の内容 令和7年4月4日付けの訂正請求書における訂正の請求(以下、「本件訂正請求」といい、本件訂正請求による訂正を「本件訂正」という。)は、特許法第120条の5第3項及び第4項の規定に従い、一群の請求項を構成する請求項〔1~14〕、及び請求項15を、それぞれ訂正の単位として訂正することを求めるものであり、その内容(訂正事項)は、次のとおりである。なお、訂正箇所に下線を付した。 (1) 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に 「あって、前記石膏スラリー用の液化剤」と記載されているのを、 「あって、 リグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、メラミン樹脂、ポリカルボン酸塩、ポリカルボン酸エステル、およびそれらの混合物からなる群から選択される石膏スラリー用の液化剤」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~8、10~14についても同様に訂正する。)。 (2) 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に 「フォーム」と記載されているのを、 「起泡液化剤」に訂正する(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~8、10~14についても同様に訂正する。)。 (3) 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項2に 「非起泡液化剤の密度に対して30~80重量%、好ましくは40~65重量%の密度を有する」と記載されているのを、 「非起泡液化剤の密度に対して30~80重量%の密度を有する」に訂正する。 (4) 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項3に 「前記起泡液化剤が、水と混合する前にその固体構成成分に、または、それがミキサー内で形成された後に前記石膏/水混合物に、具体的には前記二次元基材に適用するための分注デバイスの前の供給ラインを介して添加すること」と記載されているのを、 「前記起泡液化剤が、水と混合する前に前記石膏/水混合物の固体構成成分に、または、前記石膏/水混合物がミキサー内で形成された後に前記石膏/水混合物に、添加すること」に訂正する。 (5) 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項4に 「前記水」と記載されているのを、 「水」に訂正する。 (6) 訂正事項6 特許請求の範囲の請求項5に 「前記液化剤の少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも80重量%がフォームとして」と記載されているのを、 「前記液化剤の少なくとも60重量%がフォームとして」に訂正する。 (7) 訂正事項7 特許請求の範囲の請求項8に 「前記混合物が適用される前記二次元基材が、ボール紙または不織布を含み、前記混合物が、前記二次元基材を形成する同じ材料、または、異なる材料から構成され得るさらなる基材で適用後に任意選択的に覆われる」と記載されているのを、 「前記混合物が適用される前記二次元基材が、ボール紙または不織布を含む」に訂正する。 (8) 訂正事項8 特許請求の範囲の請求項9を削除する。 (9) 訂正事項9 特許請求の範囲の請求項10に 「スタッコの重量に基づいて、0.1~2.5重量%、具体的には1~2重量%の割合で含まれる」と記載されているのを、 「スタッコの重量に基づいて、0.1~2.5重量%の割合で含まれる」に訂正する。 (10) 訂正事項10 特許請求の範囲の請求項10に 「請求項1~9のいずれか一項」と記載されているのを、 「請求項1~8のいずれか一項」に訂正する。 (11) 訂正事項11 特許請求の範囲の請求項11に 「繊維、好ましくはガラス繊維の形態の繊維」と記載されているのを、 「繊維」に訂正する。 (12) 訂正事項12 特許請求の範囲の請求項11に 「請求項1~10のいずれか一項」と記載されているのを、 「請求項1~8および10のいずれか一項」に訂正する。 (13) 訂正事項13 特許請求の範囲の請求項12に 「請求項1~11のいずれか一項」と記載されているのを、 「請求項1~8および10~11のいずれか一項」に訂正する。 (14) 訂正事項14 特許請求の範囲の請求項13に 「請求項1~12のいずれか一項」と記載されているのを、 「請求項1~8および10~12のいずれか一項」に訂正する。 (15) 訂正事項15 特許請求の範囲の請求項14に 「請求項1~12のいずれか一項」と記載されているのを、 「請求項1~8および10~12のいずれか一項」に訂正する。 (16) 訂正事項16 特許請求の範囲の請求項15に 「石膏/水混合物の所望の流動性を確立するために必要とされる液化剤」と記載されているのを、 「石膏/水混合物の所望の流動性を確立するために必要とされる、リグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、メラミン樹脂、ポリカルボン酸塩、ポリカルボン酸エステル、およびそれらの混合物からなる群から選択される液化剤」に訂正する。 (17) 訂正事項17 特許請求の範囲の請求項15に 「液化剤フォーム」と記載されているのを 「起泡液化剤」に訂正する。 2 訂正要件(訂正の目的の適否、新規事項の追加の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否について)の判断 (1) 訂正事項1について 訂正事項1は、訂正前の請求項1における「前記石膏スラリー用」の「前記」が示す記載が明瞭でないところ、「前記」を削除して明瞭にするものであり、また、願書に添付された明細書(以下、「本件特許明細書」といい、明細書、特許請求の範囲又は図面をまとめて「本件特許明細書等」という。)の【0012】の記載、及び「リグニンスルホン酸」が「リグノスルホン酸」の別名であるとの技術常識に基づき、訂正前の請求項1における「石膏スラリー用の液化剤」を「リグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、メラミン樹脂、ポリカルボン酸塩、ポリカルボン酸エステル、およびそれらの混合物からなる群から選択される石膏スラリー用の液化剤」に限定するものであるから、訂正事項1は、「明瞭でない記載の釈明」及び「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2) 訂正事項2について 訂正事項2は、訂正前の請求項1における、液化剤を起泡した「フォーム」と、請求項1の記載を引用する請求項3、4、7及び12における「前記起泡液化剤」との用語が整合しておらず、これらの記載が明瞭でないところ、「起泡液化剤」に統一して明瞭にするものであるから、訂正事項2は、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3) 訂正事項3について 訂正事項3は、訂正前の請求項2における「非起泡液化剤の密度に対して30~80重量%、好ましくは40~65重量%の密度を有する」との記載が多義的に解釈されて明瞭でないところ、「好ましくは40~65重量%」を削除して、当該記載を明瞭にするものであるから、訂正事項3は、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4) 訂正事項4について 訂正事項4は、訂正前の請求項3における「その」及び「それ」が何を示しているのかが明瞭でなく、また、「具体的には前記二次元基材に適用するための分注デバイスの前の供給ラインを介して」との記載により、添加方法が多義的に解釈されて明瞭でないところ、これらの記載を明瞭にするものであるから、訂正事項4は、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (5) 訂正事項5について 訂正事項5は、訂正前の請求項4における「前記水」の「前記」が示す記載が明瞭でないところ、「前記」を削除して明瞭にするものであるから、訂正事項5は、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (6) 訂正事項6について 訂正事項6は、訂正前の請求項5における「前記液化剤の少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも80重量%がフォームとして」との記載が多義的に解釈されて明瞭でないところ、「好ましくは少なくとも80重量%」を削除して、当該記載を明瞭にするものであるから、訂正事項6は、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (7) 訂正事項7について 訂正事項7は、訂正前の請求項8における「前記混合物が適用される前記二次元基材が、ボール紙または不織布を含み、前記混合物が、前記二次元基材を形成する同じ材料、または、異なる材料から構成され得るさらなる基材で適用後に任意選択的に覆われる」との記載は、任意選択的な記載により多義的に解釈されて明瞭でないところ、「前記混合物が、前記二次元基材を形成する同じ材料、または、異なる材料から構成され得るさらなる基材で適用後に任意選択的に覆われる」を削除して、当該記載を明瞭にするものであるから、訂正事項7は、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (8) 訂正事項8について 訂正事項8は、訂正前の請求項9を削除するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (9) 訂正事項9について 訂正事項9は、訂正前の請求項10における「スタッコの重量に基づいて、0.1~2.5重量%、具体的には1~2重量%の割合で含まれる」との記載が多義的に解釈されて明瞭でないところ、「具体的には1~2重量%」を削除して、当該記載を明瞭にするものであるから、訂正事項9は、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (10) 訂正事項10について 訂正事項10は、訂正前の請求項10における選択的引用請求項の一部を削除するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (11) 訂正事項11について 訂正事項11は、訂正前の請求項11における「繊維、好ましくはガラス繊維の形態の繊維」との記載が多義的に解釈されて明瞭でないところ、「好ましくはガラス繊維の形態の繊維」を削除して、当該記載を明瞭にするものであるから、訂正事項11は、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (12) 訂正事項12~15について 訂正事項12~15は、訂正前の請求項11~14における選択的引用請求項の一部を削除するものであるから、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (13) 訂正事項16について 訂正事項16は、本件特許明細書の【0012】の記載、及び前記(1)に示した技術常識に基づき、訂正前の請求項15における「液化剤」を「リグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、メラミン樹脂、ポリカルボン酸塩、ポリカルボン酸エステル、およびそれらの混合物からなる群から選択される液化剤」に限定するものであるから、訂正事項16は、「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (14) 訂正事項17について 訂正事項17は、訂正前の請求項15における「液化剤フォーム」と、「前記起泡液化剤」との用語が整合しておらず、これらの記載が明瞭でないところ、「起泡液化剤」に統一して明瞭にするものであるから、訂正事項17は、「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものであり、本件特許明細書等に記載した事項の範囲内においてされたものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 訂正の適否についてのまとめ 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、本件特許の特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~14〕、15について訂正することを認める。 第3 本件発明 前記第2のとおり、本件訂正請求は適法にされたものであるから、本件特許の請求項1~8、10~15に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」などといい、まとめて「本件発明」という。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1~8、10~15に記載された事項により特定される次のとおりのものである(下線部は、訂正箇所を示す。)。 「【請求項1】 石膏ボードを製造するための方法であって、 リグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、メラミン樹脂、ポリカルボン酸塩、ポリカルボン酸エステル、およびそれらの混合物からなる群から選択される石膏スラリー用の液化剤がガスで起泡して起泡液化剤を提供し、前記液化剤が85重量%未満の含水量を有し、次いで、石膏/水混合物に組み込まれ、そのようにして得られた前記混合物が二次元基材上に適用されることを特徴とする、前記方法。 【請求項2】 前記液化剤が、非起泡液化剤の密度に対して30~80重量%の密度を有するように、前記ガスで起泡する、請求項1に記載の方法。 【請求項3】 前記起泡液化剤が、水と混合する前に前記石膏/水混合物の固体構成成分に、または、前記石膏/水混合物がミキサー内で形成された後に前記石膏/水混合物に、添加することによって前記石膏/水混合物に組み込まれる、請求項1または2に記載の方法。 【請求項4】 前記起泡液化剤が水に添加されて、前記石膏/水混合物を調製する、請求項1または2に記載の方法。 【請求項5】 前記液化剤の少なくとも60重量%がフォームとして前記石膏/水混合物に組み込まれる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。 【請求項6】 さらなる石鹸ベースのフォームが前記石膏/水混合物に組み込まれる、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。 【請求項7】 前記石鹸ベースのフォームおよび前記起泡液化剤が互いに独立して生成される、請求項6に記載の方法。 【請求項8】 前記混合物が適用される前記二次元基材が、ボール紙または不織布を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。 【請求項9】 (削除) 【請求項10】 前記液化剤が、前記石膏/水混合物中に、スタッコの重量に基づいて、0.1~2.5重量%の割合で含まれる、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。 【請求項11】 促進剤、繊維、および添加剤のうちの1つ以上を、前記石膏/水混合物に組み込むことをさらに含む、請求項1~8および10のいずれか一項に記載の方法。 【請求項12】 前記液化剤がデバイス内で起泡し、前記デバイスが、前記起泡液化剤が前記石膏/水混合物に導入されるデバイスから空間的に分離されている、請求項1~8および10~11のいずれか一項に記載の方法。 【請求項13】 請求項1~8および10~12のいずれか一項に記載の方法に従って得ることができる、石膏ボード。 【請求項14】 請求項1~8および10~12のいずれか一項に記載の方法を実施するための石膏ボードを製造する装置であって、前記装置が、液化剤の起泡デバイスと、石膏/水混合物を生成するためのミキサーと、前記ミキサー内で調製された前記石膏/水混合物を二次元基材上に分注するための出力デバイスと、を備え、前記起泡デバイスが、前記ミキサーへの水の供給ラインに、形成される前記石膏ボードの固体構成成分の供給ラインに、または前記出力デバイスの前の前記ミキサーからの前記混合された材料の排出デバイスに流体連結されている、前記装置。 【請求項15】 石膏/水混合物の所望の流動性を確立するために必要とされる、リグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、メラミン樹脂、ポリカルボン酸塩、ポリカルボン酸エステル、およびそれらの混合物からなる群から選択される液化剤の量を最小限に抑えるための、85重量%未満の含水量を有する起泡液化剤の使用であって、 前記起泡液化剤が、前記混合物を調製するために使用される構成成分として前記石膏/水混合物に混合されるか、または前記混合物が形成された後に前記石膏/水混合物に混合されるかのいずれかである、前記使用。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 1 取消理由の概要 当審が特許権者に通知した、令和6年12月24日付けの取消理由は、概略、以下のとおりである。 (1) 取消理由1(明確性要件違反) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (2) 取消理由2(サポート要件違反) 本件特許は、特許請求の範囲の記載が不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 2 当審の判断 (1) 取消理由1(明確性要件違反)について ア 明確性要件の判断手法について 特許請求の範囲の記載が明確性要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載だけでなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 以下、この観点に立って検討する。 イ 取消理由1の指摘事項 取消理由1では、次の(ア)~(オ)の点で、設定登録時の特許請求の範囲の記載が明確でないことを指摘した。 (ア) 請求項1に記載の「石膏スラリー用の液化剤」、及び請求項15に記載の「液化剤」によって特定される範囲が明らかでないないため、請求項1の「石膏スラリー用の液化剤」との記載、及び請求項15の「液化剤」との記載が明確でない。 (イ) 請求項3、4、7、12、及び15の「前記起泡液化剤」との記載は、当該記載より前に対応する記載がないため、明確でない。 (ウ) 請求項1の「前記石膏スラリー用」との記載、及び請求項4の「前記水」との記載は、当該記載より前に対応する記載がないため、明確でない。 (エ) 請求項3の「前記起泡液化剤が、水と混合する前にその固体構成成分に、または、それがミキサー内で形成された後に前記石膏/水混合物に」との記載は、「その」及び「それ」が何を示しているのかが明らかでないため、明確でない。 (オ) 請求項2、5、及び11の「好ましくは」として記載した事項、請求項3、9、及び10の「具体的には」として記載した事項、並びに、請求項8の「任意選択的」として記載した事項は、任意付加的な記載事項であるため、明確でない。 ウ 明確性要件に対する判断 (ア) まず、前記イの指摘事項について検討する。 a 前記イ(ア)について 本件訂正により、請求項1の「石膏スラリー用の液化剤」との記載は、「リグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、メラミン樹脂、ポリカルボン酸塩、ポリカルボン酸エステル、およびそれらの混合物からなる群から選択される石膏スラリー用の液化剤」に訂正され、また、請求項15の「液化剤」との記載は、「リグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、メラミン樹脂、ポリカルボン酸塩、ポリカルボン酸エステル、およびそれらの混合物からなる群から選択される液化剤」に訂正され、これらの記載によって特定される範囲が明確になった。 b 前記イ(イ)について 本件訂正により、請求項1の「フォーム」との記載は「起泡液化剤」との記載に訂正され、また、請求項15の「液化剤フォーム」との記載は「起泡液化剤」との記載に訂正されたため、請求項3、4、7、12、及び15に記載の「前記起泡液化剤」に対応する記載が明確になった。 c 前記イ(ウ)について 本件訂正により、請求項1の「前記石膏スラリー用」との記載は「石膏スラリー用」に訂正され、また、請求項4の「前記水」との記載は「水」に訂正されたため、これらの記載は明確になった。 d 前記イ(エ)について 本件訂正により、請求項3の「前記起泡液化剤が、水と混合する前にその固体構成成分に、または、それがミキサー内で形成された後に前記石膏/水混合物に」との記載は、「前記起泡液化剤が、水と混合する前に前記石膏/水混合物の固体構成成分に、または、前記石膏/水混合物がミキサー内で形成された後に前記石膏/水混合物に」に訂正されたため、当該記載は明確になった。 e 前記イ(オ)について 本件訂正によって、請求項2、3、5、8、10、及び11の任意付加的な記載事項は削除されたため、当該請求項の記載は明確になった。 (イ) 請求項1~8、10~15のその余の記載をみても、第三者の利益が不当に害されるほどに不明確な記載は見当たらない。 (ウ) したがって、本件特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定された要件に適合する。 エ 取消理由1についての結論 以上のとおりであるから、取消理由1に理由はない。 (2) 取消理由2(サポート要件違反)について ア サポート要件の判断手法 特許請求の範囲の記載が明細書のサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載を対比し、特許請求の範囲で特定された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載又はその示唆により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきである。 以下、この観点に立って検討する。 イ 本件発明の詳細な説明の記載について (ア) 本件特許明細書の発明の詳細な説明(以下、「本件発明の詳細な説明」という。)には、本件発明の課題に関して、次の記載がある。 「【背景技術】 【0002】 石膏製品、具体的には石膏ボードを製造するための方法はよく知られている。通常は、このような方法は、カルシウム半水和物(「スタッコ」とも称される)、水、および必要に応じて他の添加剤を混合して、流動性混合物を提供し、次いで、それを、多くの場合、紙または不織布でできている基材に注ぎ、乾燥させることを含む。石膏混合物に、基材上に均一に広げることができ、均一で均質な表面を形成することができる必要な流動性を提供するために、多くの場合、液化剤または分散剤が石膏混合物に添加される。このような液化剤は、例えば、ナフタレンスルホン酸塩またはポリカルボン酸塩などの材料であり、後者は、「高可塑剤」としてセメントと一緒により一般的に使用される。 【0003】 石膏塊の流動性を改善することに加えて、液化剤の添加は、石膏ボードが乾燥しているときに、フォームの泡のサイズ分布およびこれらの泡によって生成される空隙にも影響を与えることが見出されている。さらに、液化剤は、石膏スラリーの硬化を遅らせる場合があるため、高い製造速度での石膏製品の製造を難しくする。例えば、より多くの液化剤を添加すると、硬化時間が長くなり得る。材料が製造機械のカッティングナイフを通過する際にウォールボードが十分に硬化していない場合、切断時に製品の形状を保持することができず、切断後のボードの処理によって損傷する可能性がある。したがって、材料の十分な硬化を可能にするために、製造ラインの速度を遅くする必要があり得る。 【0004】 さらに、液化剤はまた、製造プロセスのコスト要因でもある。しかしながら、石膏混合物により多くの水を添加して十分な流動性を提供する必要性があることによって、液化剤を使用する必要がないことによる節約は過剰に補償されるため、液化剤の省略は商業的に実現可能な選択ではない。これにより、製造されたボードを乾燥させるために、労力およびコストが増加することになる。したがって、石膏スラリーに十分な流動性を提供するための液化剤を含む石膏ボードの調製のための組成物を提供する一方で、そこから調製される石膏ボードの所望の物理的特性および乾燥特性をできるだけ高い製造速度で維持するために液化剤の量を低レベルに維持する、一般的目的が存在する。」 (イ) また、本件発明の詳細な説明には、課題解決手段に関して、次の記載がある。 「【0006】 本発明の基礎となる調査において、石膏スラリーへの起泡液化剤の導入は、同量の非起泡液化剤で調製されたスラリーと比較して、スラリーのより高い流動性を提供することが今や予想外に発見された。・・・」 「【0012】 本発明の実施における液化剤に関して、液化剤は、石膏/水混合物への組み込みおよび二次元基材上への混合物の適用を可能にするために、静置時に周囲条件下で安定したフォームを提供することができるべきであることを除いて、関連する制限はない。この目的に好適な液化剤は、例えば、特に、アルカリ金属イオンまたはアルカリ土類金属イオンを有するリグノスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、メラミン樹脂、ポリカルボン酸塩、ポリカルボン酸エステル、およびそれらの混合物を含む群から選択される液化剤である。特に好ましい液化剤は、ナフタレンスルホン酸塩である。 【0013】 技術グレードの液化剤が、通常は、本発明の目的には十分である。そのような液化剤は、しばしば水を含有するため、本発明の実施における液化剤は、含水量が85重量%未満であるという条件で、限られた量の水を含むことが許容される。80重量%以下および/または40重量%以上の含水量が好ましく、特に好ましい含水量は、約55~60重量%である。最も好ましくは、液化剤は、商業的に得られる液化剤に含有されるよりも多くの水を含有するべきではない。」 「【0016】 このように製造され、本発明のさらなる方法で使用されるフォームは、好ましくは、非起泡液化剤の密度に対して、30~80%、好ましくは40~65%の液化剤密度を有する。言い換えれば、フォームは、液化剤フォームの70~20体積%、好ましくは60~35体積%を占める量のガスを含む。・・・」 (ウ) さらに、本件発明の詳細な説明の実施例(【0044】~【0052】)には、課題解決手段の具体例として、ナフタレンスルホン酸塩(密度1.2kg/L)の液化剤(非起泡液化剤)からフォーム(起泡液化剤、密度610~720kg/L)を形成し、起泡液化剤又は非起泡液化剤を、スタッコ混合物又は水に添加してから、スタッコ、水及び液化剤を含むスタッコスラリーとすること、並びに、得られたスタッコスラリーのスランプフローの結果が記載されている。そして、液化剤の添加方法及び添加量が同じ場合には、起泡液化剤を使用することで、非起泡液化剤を使用した場合よりも流動性が改善すること(試料1~10)、及び、起泡液化剤の含有量を約10%減らしても、非起泡液化剤を使用した場合と同程度の流動性となること(試料7、8、11)が記載されている。 ウ 本件特許出願時の技術常識について (ア) 特許権者が令和7年4月4日付けの意見書に添付して提出した乙第1号証~乙第4号証には、次の記載がある(下線は当審が付した。)。 a 乙第1号証(米国出願公開第2014/0073711号明細書) (a) 「[0008] Dispersants are known for use with gypsum that help fluidize the mixture of water and calcium sulfate hemihydrate so that less water is needed to make a flowable slurry.」 (当審訳:[0008] 分散剤は、石膏と共に使用され、水及び硫酸カルシウム半水和物の混合物を流動化させるのに役立ち、流動性のあるスラリーを作るのに必要な水の量を少なくさせることで知られている。) (b) 「[0010] Melamine-sulfonate-formaldehyde-condensates are broadly used as flow improving agents in the processing of hydraulic binder containing compositions such as dry mortar mixtures, pourable mortars and other cement bonded construction materials and in the production of gypsum panels. Melamine is used in this connection as representative of s-triazine. They cause a strong liquefying effect of the construction chemicals mixture while minimizing undesired side effects occurring in the processing or in the functional properties of the hardened building material. As it is for the BNS technology, there is also broad prior art for MFS. MFS dispersants are revealed in DE 196 09 614 A1, DE 44 11 797 A1, EP 0 059 353 A1 and DE 195 38 821A1.」 (当審訳:[0010] メラミンスルホン酸塩-ホルムアルデヒド縮合物は、水硬性結合剤を含有する組成物、例えば乾燥モルタル混合物、注入可能なモルタル、及びその他のセメント結合構造材料などの加工における、並びに、石膏パネルの製造における流動性改善剤として広く使用されている。これに関連して、s-トリアジンの代表としてメラミンが使用されている。これらは、建設化学混合物の強い液化効果を引き起こし、硬化した建築材料の加工において、又は、機能特性において発生する望ましくない副作用を最小化する。BNS技術の場合と同様に、MFSにも広い先行技術が存在する。MFS分散剤は、DE 19609614 A1、DE 4411797 A1、EP 0059353 Al、及びDE 19538821 A1に明らかにされている。) (c) 「[0044] Formulations which contain a comb-branched polymer having polyether side chains as the dispersant component have been found to be effective. Examples of the dispersant component include a polycarboxylate ether, a polycarboxylate ester, an uncharged copolymer or a mixture thereof.」 (当審訳:[0044] 分散剤成分としてポリエーテル側鎖を有する櫛形分岐ポリマーを含有する配合物が有効であると見出されている。分散剤成分の例は、ポリカルボン酸エーテル、ポリカルボン酸エステル、非荷電共重合体、又はそれらの混合物を包含する。) b 乙第2号証(米国出願公開第2016/0375655号明細書) 「[0056] In addition, the board core and/or concentrated layer can be further formed from at least one dispersant to enhance fluidity in some embodiments. The dispersants may be included in a dry form with other dry ingredients and/or in a liquid form with other liquid ingredients in stucco slurry. Examples of dispersants include naphthalenesulfonates, such as polynaphthalenesulfonic acid and its salts (polynaphthalenesulfonates) and derivatives, which are condensation products of naphthalenesulfonic acids and formaldehyde; as well as polycarboxylate dispersants, such as polycarboxylic ethers, for example, PCE211, PCE111, 1641, 1641F, or PCE 2641-Type Dispersants, e.g., MELFLUX 2641F, MELFLUX 2651F, MELFLUX 1641F, MELFLUX 2500L dispersants (BASF), and COATEX Ethacryl M, available from Coatex, Inc.; and/or lignosulfonates or sulfonated lignin. Lignosulfonates are water-soluble anionic polyelectrolyte polymers, byproducts from the production of wood pulp using sulfite pulping. One example of a lignin useful in the practice of principles of embodiments of the present disclosure is Marasperse C-21 available from Reed Lignin Inc.」 (当審訳:[0056] 加えて、いくつかの態様において、流動性を増強するために、少なくとも1つの分散剤からボードコア及び/又は濃縮層をさらに形成することができる。分散剤は、他の乾燥成分とともに乾燥形態で、及び/又は、他の液体成分とともに液体形態で、スタッコスラリーに含めてもよい。分散剤の例は、ナフタレンスルホン酸塩、例えば、ポリナフタレンスルホン酸、その塩(ポリナフタレンスルホン酸塩)及び誘導体(ナフタレンスルホン酸及びホルムアルデヒドの縮合生成物);並びにポリカルボキシラート分散剤、例えば、ポリカルボン酸エーテル、例えば、PCE211、PCE111、1641、1641F、又は、PCE2641タイプ分散剤、例として、MELFLUX 2641F、MELFLUX 2651F、MELFLUX 1641F、MELFLUX 2500L分散剤(BASF)、及び、Coatex,Inc.から入手可能なCOATEX Ethacryl M、及び/又はリグノスルホン酸塩又はスルホン化リグニンを包含する。リグノスルホン酸塩は、水溶性のアニオン性高分子電解質ポリマーであり、亜硫酸パルプ化を使用する木材パルプの製造の副産物である。本開示の態様の原理の実施に有用なリグニンの一例は、Reed Lignin Inc.から入手可能なMarasperse C-21である。) c 乙第3号証(米国出願公開第2007/0048490号明細書) 「[0005] It is also necessary to use substantial amounts of water in gypsum slurries containing pregelatinized starch in order to ensure proper flowability of the slurry. Unfortunately, most of this water eventually must be driven off by drying, which is expensive due to the high cost of the fuels used in the drying process. This drying step is also time-consuming. It has been found that the use of naphthalenesulfonate dispersants can increase the fluidity of the slurries, thus overcoming the water demand problem. In addition, it has also been found that the naphthalenesulfonate dispersants, if the usage level is high enough, can cross-link to the pregelatinized starch to bind the gypsum crystals together after drying, thus increasing dry strength of the gypsum composite. Thus, the combination of the pregelatinized starch and the naphthalenesulfonate dispersant provide a glue-like effect in binding the set gypsum crystals together. Trimetaphosphate salts have not in the past been recognized to affect gypsum slurry water requirements. However, the present inventors have discovered that increasing the level of the trimetaphosphate salt to hitherto unknown levels in the presence of a specific dispersant makes it possible to achieve proper slurry flowability with unexpectedly reduced amounts of water, even in the presence of high starch levels. This, of course, is highly desirable because it in turn reduces fuel usage for drying as well as the process time associated with subsequent water removal process steps. Thus the present inventors have also discovered that the dry strength of gypsum board can be increased by using a naphthalenesulfonate dispersant in combination with pregelatinized starch in the slurry used to make the wallboard.」 (当審訳:[0005] また、スラリーの適切な流動性を確保するために、ゼラチン化デンプンを含有する石膏スラリーに大量の水を使用することも必要である。残念ながら、この水のほとんどは最終的には乾燥によって取り除かれなければならないが、乾燥プロセスで使用される燃料のコストが高いため、高くつく。この乾燥ステップはまた、時間もかかる。ナフタレンスルホン酸塩分散剤の使用は、スラリーの流動性を向上させ、水需要の問題を克服できることが見出されている。加えて、ナフタレンスルホン酸塩分散剤は、使用レベルが十分に高い場合、乾燥後にゼラチン化デンプンと架橋して石膏結晶を結合し、石膏複合物の乾燥強度を増大できることも見出されている。よって、ゼラチン化デンプン及びナフタレンスルホン酸塩分散剤の組合せは、硬化した石膏結晶を結合する際に接着剤のような効果を提供する。トリメタリン酸塩は、過去に、石膏スラリー水の要件に影響を与えると認識されていなかった。しかしながら、本発明者らは、特定の分散剤の存在下でトリメタリン酸塩のレベルをこれまで知られていないレベルまで増大させることにより、高デンプンレベルの存在下であっても、予想外に少ない量の水で適切なスラリー流動性を達成できることを発見した。当然ながら、これは非常に望ましいことであり、なぜなら、乾燥のための燃料使用、並びに、その後の水除去プロセスステップに関連するプロセス時間も低減するからである。よって、本発明者らは、壁ボードを作るために使用されるスラリーにおいて、ゼラチン化デンプンと組み合わせたナフタレンスルホン酸塩分散剤を使用することによって、石膏ボードの乾燥強度を増大できることも発見した。) d 乙第4号証(米国出願公開第2017/0334778号明細書) (a)「[0001] This invention relates to a method and composition for preparing set gypsum-containing products, e.g., gypsum boards, reinforced gypsum composite boards, plasters, machinable materials, joint treatment materials, and acoustical tiles, and methods and compositions for producing them. More particularly, the invention concerns such set gypsum-containing products made employing one or more linear polycarboxylates as dispersant. This is also suitable to improve dispersions of high clay stucco sources.」 (当審訳:[0001] 本発明は、硬化石膏含有製品、例として、石膏ボード、強化石膏複合ボード、プラスター、機械加工可能な材料、目地処理材、吸音タイルを調製するための方法及び組成物、並びにそれらを製造するための方法及び組成物に関する。より具体的には、本発明は、分散剤として1以上の線状ポリカルボン酸塩を採用して作られる硬化石膏含有製品に関する。これはまた、高粘土スタッコ源の分散を改善するのにも好適である。) (b) 「1. A slurry comprising: a mixture of water; a hydraulic component comprising at least 50% calcium sulfate hem ihydrate by weight based on the dry weight of the hydraulic component; and a linear polycarboxylate anionic dispersant comprising a first monomeric repeating unit A and a second monomeric repeating unit B, and an absence of polyvinyl acetate monomeric units; wherein the first repeating unit A is at least one carboxylic acid functional group containing olefinic moiety of formula I: [図:0001429998000001.jpg] wherein R is selected from the group consisting of -CH3, and -CH2-C(O)-OH, or a Na, K, or NH4+ salt thereof; and wherein the second monomeric repeating unit B is at least one vinyl sulfonate according to formula II: [図:0001429998000002.jpg] wherein X is NH or O; R1 is H or -CH3; R2 is a linear or branched alkylene group having the formula -(CnH2n)-, wherein n=2 to 6; M=H, Na, K, or NH4+; wherein the molar ratio of the first repeating unit A to the second repeating unit B is A is between 1:9 and 9:1; wherein the weight average molecular weight of the linear polycarboxylate anionic dispersant is 3000 to 100000 Daltons; wherein the slurry has a water to calcium sulfate hemihydrate weight ratio of 0.1-1.5:1.」(特許請求の範囲) (当審訳:1.以下を含むスラリーであって: 水; 水硬性成分の乾燥重量に基づき少なくとも50%の硫酸カルシウム半水和物を含む水硬性成分;及び、 第1のモノマー繰り返し単位A、及び第2のモノマー繰り返し単位Bを含み、ポリ酢酸ビニルモノマー単位を含まない、線状ポリカルボン酸塩アニオン性分散剤; の混合物、 ここで、第1の繰り返し単位Aは、式Iのオレフィン部分を含有する少なくとも1つのカルボン酸官能基であり; [図:0001429998000003.jpg] ここで、Rは、-CH3、及び-CH2-C(O)-OH、又はそのNa、K、又はNH4+塩からなる群から選択され; ここで、第2のモノマー繰り返し単位Bは、式IIに従う少なくとも1つのスルホン酸ビニルであり; [図:0001429998000004.jpg] ここで、Xは、NH又はOであり;R1は、H又は-CH3であり;R2は式-(CnH2n)-を有する直鎖又は分岐鎖のアルキレン基(n=2~6)であり;M=H、Na、K、又はNH4+; ここで、第1の繰り返し単位Aと第2の繰り返し単位Bとのモル比は、1:9~9:1であり; ここで、線状ポリカルボン酸塩アニオン性分散剤の重量平均分子量は、3000~100000ダルトンであり; ここで、スラリーは、0.1~1.5:1の硫酸カルシウム半水和物に対する水の重量比を有する、前記スラリー。) (イ) 前記(ア)によれば、石膏スラリーの流動性を高め、必要な水の量を低減させるための分散剤として、メラミンスルホン酸塩-ホルムアルデヒド縮合物(前記(ア)a(b)参照)、ポリカルボン酸エステル(前記(ア)a(c)参照)、ナフタレンスルホン酸塩(前記(ア)b、c参照)、リグノスルホン酸塩(前記(ア)b参照)、線状ポリカルボン酸塩アニオン性分散剤(前記(ア)d(a)、(b)参照)が記載されており、リグノスルホン酸塩(前記第2の2(1)に示した技術常識によれば、「リグニンスルホン酸塩」ということもできる。)、ナフタレンスルホン酸塩、メラミン樹脂、ポリカルボン酸塩、ポリカルボン酸エステルは、石膏スラリーの流動性を高め、必要な水の量を低減させるための分散剤として共通の性質を有する化合物群であることが、当該技術分野における技術常識であるといえる。 エ サポート要件に対する判断 (ア) 本件発明の課題について 前記イ(ア)によれば、本件発明の課題は、「石膏スラリーに十分な流動性を提供するための液化剤を含む石膏ボードの調製のための組成物を提供する一方で、そこから調製される石膏ボードの所望の物理的特性および乾燥特性をできるだけ高い製造速度で維持するために液化剤の量を低レベルに維持する」ことといえる。 (イ) 発明の詳細な説明に記載された課題解決手段について a 本件発明の詳細な説明の実施例の記載(前記イ(ウ)参照)によれば、ナフタレンスルホン酸塩の液化剤をガスで起泡して起泡液化剤を提供し、起泡液化剤を石膏/水混合物に組み込んで石膏スラリーとすることで、同程度の流動性を得るための液化剤の量を低減できることを理解できるから、当業者において、実施例に記載された方法は、本件発明の課題を解決できると認識できる。 b さらに、本件発明の詳細な説明には、前記イ(イ)によれば、石膏スラリーへの起泡液化剤の導入は、同量の非起泡液化剤で調製されたスラリーと比較して、スラリーのより高い流動性を提供すること(【0006】)、液化剤は、静置時に周囲条件下で安定したフォームを提供することを除いて、制限がないこと(【0012】)、液化剤フォームは、非起泡液化剤の密度に対して、30~80%の液化剤密度を有し、70~20体積%を占める量のガスを含むこと(【0016】)が記載されている。 これらの記載を踏まえると、当業者であれば、前記(ア)で検討した実施例から、本件発明の課題を解決するために、液化剤を起泡させることが重要であり、液化剤にガスが組み込まれ、液化剤の密度が低減し、さらに、液化剤が組み込まれる石膏スラリーの密度が低減することで、石膏スラリーの流動性を高めていることを理解できる。 また、前記イ(イ)【0013】によれば、液化剤の含水量は85重量%未満であれば許容でき、液化剤の起泡に影響がないことも理解できる。 c 加えて、本件発明の詳細な説明には、前記イ(イ)【0012】によれば、液化剤として、リグノスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、メラミン樹脂、ポリカルボン酸塩、ポリカルボン酸エステル、及び、これらの混合物が例示されており、前記ウの技術常識を踏まえると、これらの化合物は、石膏スラリーの流動性を高め、必要な水の量を低減させるための分散剤として共通の性質を有する化合物群であることも理解できる。 d 前記a~cを併せ考えると、本件発明の詳細な説明の記載や技術常識から、リグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、メラミン樹脂、ポリカルボン酸塩、ポリカルボン酸エステル、及びそれらの混合物からなる群から選択される石膏スラリー用の液化剤をガスで起泡して起泡液化剤を提供し、前記液化剤が85重量%未満の含水量を有し、次いで、前記起泡液化剤を石膏/水混合物に組み込んで石膏スラリーとすることで、同程度の流動性を得るための液化剤の量を低減できること、すなわち、本件発明の課題を解決できることを認識できる。 (ウ) 本件特許請求の範囲の記載と本件発明の詳細な説明の記載の対比 本件特許請求の範囲の記載は、前記第3のとおりであって、本件発明1は、前記(イ)dで検討した手段を含む石膏ボードを製造するための方法といえるから、前記(イ)で検討したとおり、本件発明の詳細な説明の記載、及び出願時の技術常識から、本件発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるといえる。 本件発明2~8、10~15についても同様である。 (エ) したがって、本件特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定された要件に適合する。 オ 申立人の主張について (ア) 主張の内容 本件特許明細書の記載から、少なくとも「液化剤」として「ナフタレンスルホン酸塩」を用い、一定量以上の液化剤を石膏スラリーに用い、かつ一定程度以上に起泡した場合に、本件発明の課題を解決できることは実施例から推認されるものの、当該実施例の記載から、「ナフタレンスルホン酸塩」以外の液化剤を用いた場合や、液化剤の添加量が少量の場合、起泡の程度が十分ではない場合において、本件発明の課題を解決できるのかを当業者といえども認識することはできない。 本件発明の液化剤は、課題解決のために、十分に起泡して石膏スラリーに添加することが要求されると考えられるところ、本件発明1は含水量の下限値を規定していないため、起泡が不十分となる含水量の低い場合をも包含しており、このような場合についても、本件発明の課題を解決できないものと解される。 したがって、液化剤として「ナフタレンスルホン酸塩」以外の列挙された化合物を用いる場合や、液化剤の添加量が少ない場合、起泡の程度が十分ではない場合、液化剤の含水量が小さい場合をも包含する本件発明はサポート要件を充足しない(令和7年6月16日提出の意見書の3.(1)参照)。 (イ) 前記主張に対する判断 本件発明の液化剤として「ナフタレンスルホン酸塩」以外の列挙された化合物を用いる場合にも本件発明の課題を解決できることは、前記エで検討したとおりである。 また、本件発明は、石膏スラリーに組み込む液化剤を起泡液化剤とすることで、非起泡液化剤と比べて、同程度の流動性を得るための液化剤の量を低減できるとの効果を奏するものであるところ、このような効果は、起泡液化剤の添加量や起泡の程度に関係なく、起泡液化剤を使用することで奏するものといえるから、起泡液化剤の添加量や起泡量が少ない場合であっても、非起泡液化剤と比べて、液化剤量を低減できるといえる。 そして、本件発明は、起泡液化剤の使用を前提とするものであるから、液化剤を起泡できないような含水量の液化剤を使用することを含まないことは明らかである。 したがって、前記(ア)の申立人の主張は採用できない。 カ 取消理由2についての結論 以上のとおりであるから、取消理由2に理由はない。 第5 取消理由において採用しなかった特許異議の申立ての理由について 1 標記申立ての理由の概要 申立人が主張する特許異議の申立ての理由のうち、標記申立ての理由は、概略、以下のとおりである。 (1) 申立理由1(甲第1号証を主たる証拠とした新規性・進歩性欠如) 設定登録時の請求項1~5、8~15に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、また、設定登録時の請求項1~15に係る発明は、甲第1号証に記載された発明、及び周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許1~15は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものである。 (2) 申立理由2(甲第4号証を主たる証拠とした新規性・進歩性欠如) 設定登録時の請求項15に係る発明は、甲第4号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当し、また、設定登録時の請求項1~15に係る発明は、甲第4号証に記載された発明、及び周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許1~15は、特許法第29条第1項又は第2項の規定に違反してされたものである。 (3) 証拠方法 甲第1号証 特表2008-546620号公報 甲第2号証 米国特許第5643510号明細書 甲第3号証 国際公開第2017/138498号 甲第4号証 米国出願公開第2006/0278132号明細書 甲第5号証 米国特許第6632550号明細書 2 甲各号証の記載について (1) 甲第1号証の記載について 甲第1号証には、「フォームを含有するウォールボード中での分散剤の効果的な使用」(発明の名称)に関して、次の記載がある(下線は当審が付した。以下同様である。)。 ア 「【請求項11】 石膏ウォールボードコア中で分散剤を効果的に利用する方法であって、 漆喰と、第1の分散剤と、第1の分量の水とをミックスして、石膏スラリーを形成するステップと、 石鹸と、第2の分散剤と、第2の分量の水とをブレンドしてフォームを作製するステップと、 前記フォームを前記スラリーと混合するステップと、 前記スラリーを表面材料に注入するステップと、 前記スラリーをパネルに成形するステップと、 石膏スラリーを硬化させて、前記ウォールボードコアを形成するステップと、 を含む方法。 ・・・ 【請求項13】 前記第1の分散剤がポリカルボン酸エーテル分散剤であり、前記第2の分散剤がナフタレンスルホネート分散剤である、請求項11に記載の方法。」 イ 「【0004】 [発明の背景] 本発明は、ウォールボードを作製するときのコアの特性を制御する方法に関するものである。さらに詳細には、本発明は、制御されたサイズの空隙を生成することによってコア強度を制御することに関する。」 ウ 「【0015】 さらに詳細には、フォームを含有するウォールボード中で分散剤を効果的に利用する方法において、漆喰は石膏スラリーを形成するために第1の分散剤および第1の分量の水とミックスされる。石鹸はフォームを作製するために、第2の分散剤および第2の分量の水とブレンドされる。次に、フォームはスラリーとミックスされる。異なる第1および第2の分散剤ならびにその相対量の選択は、スラリー中のフォーム気泡および石膏コア中の生じた空隙のサイズ分布の制御を可能にする。ミキサおよびフォーム水の両方での同じ分散剤の使用は、分散剤の有効性の向上をもたらす。」 エ 「【0022】 本発明の一実施形態において、第1の分散剤は、小さい気泡を生成する種類の1つ、たとえば2641型またはPCE211型分散剤の1つである。分散剤の種類は、下でさらに詳細に説明される。第2の分散剤は、フォームを不安定化させて、大きな気泡を生成する分散剤、たとえば1641型分散剤またはナフタレンスルホネート分散剤である。たとえばPCE211型ポリマーは、ウォールボード製造においてミキサ内での使用にとって好ましい。このポリカルボン酸エーテルは、高い有効性および短い硬化時間遅延を示すが、このポリカルボン酸エーテルは極小空隙を有するコアを生成する。PCE211型分散剤の10重量%が除去されて、ナフタレンスルホネート分散剤のほぼ同じ重量がフォーム水に添加される場合、好ましい気泡サイズの分布が得られる。」 (2) 甲第4号証の記載について 甲第4号証には、「Method of improving dispersant efficacy in making gypsum products」(発明の名称)(当審訳:石膏製品の作製における分散剤効果の改善方法)に関して、次の記載がある。 ア 「15. A method of making gypsum wallboard, comprising the steps of: (a) mixing a gypsum-containing slurry comprising water, stucco, sodium trimetaphosphate, and a naphthalenesulfonate dispersant, wherein the sodium trimetaphosphate is present in an amount of at least about 0.12% by weight based on the weight of stucco; (b) depositing the gypsum-containing slurry on a first cover sheet; (c) placing a second cover sheet over the deposited slurry to form a gypsum wallboard; (d) cutting the gypsum wallboard after the gypsum-containing slurry has hardened sufficiently for cutting; and (e) drying the gypsum wallboard.」(特許請求の範囲) (当審訳:15.石膏ウォールボードを作製する方法であって、 (a)水、漆喰、トリメタリン酸ナトリウム及びナフタレンスルホネート分散剤を含む石膏含有スラリーを混合するステップであって、 前記スラリーにおいて、前記トリメタリン酸ナトリウムが、漆喰の重量に対して少なくとも約0.12重量%の量で存在するステップと、 (b)前記石膏含有スラリーを第1のカバーシート上に堆積させるステップと、 (c)堆積したスラリーの上に第2のカバーシートを配置することによって、石膏ウォールボードを形成するステップと、 (d)前記石膏含有スラリーが切断に十分な程度に硬化した後、前記石膏ウォールボードを切断するステップと、 (e)前記石膏ウォールボードを乾燥させるステップと、を含む、方法。) イ 「[0011] The naphthalenesulfonate dispersants used in the present invention include polynaphthalenesulfonic acid and its salts (polynaphthalenesulfonates) and derivatives, which are condensation products of naphthalenesulfonic acids and formaldehyde. Particularly desirable polynaphthalenesulfonates include sodium and calcium naphthalenesulfonate. ・・・ The naphthalenesulfonates are preferably used as aqueous solutions in the range 35-55% by weight solids content, for example. It is most preferred to use the naphthalenesulfonates in the form of an aqueous solution, for example, in the range of about 40-45% by weight solids content. Alternatively, where appropriate, the naphthalenesulfonates can be used in dry solid or powder form.」 (当審訳:[0011]本発明に用いられるナフタレンスルホネート分散剤としては、ポリナフタレンスルホン酸及びその塩(ポリナフタレンスルホネート)、並びにナフタレンスルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合生成物である誘導体が挙げられる。特に、望ましいポリナフタレンスルホネートとしては、ナフタレンスルホン酸ナトリウム及びナフタレンスルホン酸カルシウムが挙げられる。・・・ナフタレンスルホネートは、例えば、35~55重量%の固体含有量の範囲で、水溶液として用いることが好ましい。ナフタレンスルホネートは、例えば、40~45重量%の固体含有量の範囲で、水溶液の形態で用いることが最も好ましい。或いは、必要に応じて、ナフタレンスルホネートは、乾燥固体又は粉末形態で用いることができる。) 3 当審の判断 (1) 申立理由1(甲第1号証を主たる証拠とした新規性・進歩性欠如)について ア 甲第1号証に記載された発明 甲第1号証には、前記2(1)イによれば、ウォールボードを作製するときのコアの特性を制御する方法が記載されているといえ、前記2(1)アによれば、漆喰と、ポリカルボン酸エーテル分散剤である第1の分散剤と、第1の分量の水とをミックスして、石膏スラリーを形成するステップと、石鹸と、ナフタレンスルホネート分散剤である第2の分散剤と、第2の分量の水とをブレンドしてフォームを作製するステップと、前記フォームを前記スラリーと混合するステップと、前記スラリーを表面材料に注入するステップと、前記スラリーをパネルに成形するステップと、石膏スラリーを硬化させて、前記ウォールボードコアを形成するステップとを含むことが記載されている。 これらの記載を「ウォールボードを作製する方法」、及び「分散剤の利用方法」に注目して整理すると、次の「ウォールボードを作製する方法」に係る発明(以下、「甲1発明1」という。)、及び「分散剤の利用方法」に係る発明(以下、「甲1発明2」という。)が記載されているといえる。 (甲1発明1) 「漆喰と、ポリカルボン酸エーテル分散剤である第1の分散剤と、第1の分量の水とをミックスして、石膏スラリーを形成するステップと、 石鹸と、ナフタレンスルホネート分散剤である第2の分散剤と、第2の分量の水とをブレンドしてフォームを作製するステップと、 前記フォームを前記スラリーと混合するステップと、 前記スラリーを表面材料に注入するステップと、 前記スラリーをパネルに成形するステップと、 石膏スラリーを硬化させて、前記ウォールボードコアを形成するステップと、 を含むウォールボードを作製する方法。」 (甲1発明2) 「石鹸と、ナフタレンスルホネート分散剤である第2の分散剤と、第2の分量の水とをブレンドして作製したフォームを、漆喰と、ポリカルボン酸エーテル分散剤である第1の分散剤と、第1の分量の水とをミックスして形成した石膏スラリーに混合する、分散剤の利用方法。」 イ 本件発明1について (ア) 対比 a 本件発明1と甲1発明1とを対比すると、両者の対応関係は、次のとおりに解することができる。 (a) 甲1発明1の「ナフタレンスルホネート分散剤である第2の分散剤」は、本件発明1の「リグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、メラミン樹脂、ポリカルボン酸塩、ポリカルボン酸エステル、およびそれらの混合物からなる群から選択される石膏スラリー用の液化剤」に相当する。 (b) 甲1発明1の「石膏スラリー」は、「漆喰と、ポリカルボン酸エーテル分散剤である第1の分散剤と、第1の分量の水とをミックス」して「形成」されたものであるから、本件発明1の「石膏/水混合物」に相当する。 (c) 甲1発明1の「前記フォームを前記スラリーと混合するステップ」は、「フォーム」に「ナフタレンスルホネート分散剤である第2の分散剤」を含んでいるから、本件発明1の「液化剤」を「石膏/水混合物に組み込まれ」ることに相当する。 (d) 甲1発明1の「前記スラリーを表面材料に注入するステップ」は、本件発明1の「そのようにして得られた前記混合物が二次元基材上に適用されること」に相当する。 (e) 甲1発明1の「ウォールボードを作製する方法」は、本件発明1の「石膏ボードを製造するための方法」に相当する。 b 前記aの対応関係を踏まえると、本件発明1と甲1発明1とは、 「石膏ボードを製造するための方法であって、 リグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、メラミン樹脂、ポリカルボン酸塩、ポリカルボン酸エステル、およびそれらの混合物からなる群から選択される石膏スラリー用の液化剤を提供し、次いで、石膏/水混合物に組み込まれ、そのようにして得られた前記混合物が二次元基材上に適用されることを特徴とする、前記方法。」 の点で一致し、次の点で相違しているといえる。 (相違点1) 本件発明1は、「液化剤がガスで起泡して起泡液化剤」として提供されているのに対して、甲1発明1は、「石鹸と、ナフタレンスルホネート分散剤である第2の分散剤と、第2の分量の水とをブレンドしてフォームを作製」している点。 (相違点2) 本件発明1は、「液化剤が85重量%未満の含水量を有し」ているのに対して、甲1発明1は、「ナフタレンスルホネート分散剤である第2の分散剤」の含水量が明らかでない点。 (イ) 判断 まず相違点1を検討する。 甲第1号証の「石鹸はフォームを作製するために、第2の分散剤および第2の分量の水とブレンドされる。・・・異なる第1および第2の分散剤ならびにその相対量の選択は、スラリー中のフォーム気泡および石膏コア中の生じた空隙のサイズ分布の制御を可能にする。」との記載(前記2(1)ウ参照)、及び「第2の分散剤は、フォームを不安定化させて、大きな気泡を生成する分散剤、たとえば1641型分散剤またはナフタレンスルホネート分散剤である。」との記載(前記2(1)エ参照)によれば、甲1発明1の「石鹸と、ナフタレンスルホネート分散剤である第2の分散剤と、第2の分量の水とをブレンドしてフォームを作製するステップ」における「第2の分散剤」は、石鹸で作製したフォームを不安定化させて、大きな気泡とするために加えられている。 そうすると、甲1発明1の「石鹸と、ナフタレンスルホネート分散剤である第2の分散剤と、第2の分量の水とをブレンドしてフォームを作製するステップ」において、「ナフタレンスルホネート分散剤である第2の分散剤」は起泡しているといえないから、相違点1は実質的な相違点である。 また、ナフタレンスルホネート分散剤をガスで起泡することは、甲第2号証~甲第5号証のいずれにも記載されておらず、周知慣用技術であるといえないから、甲1発明1において、「ナフタレンスルホネート分散剤である第2の分散剤」をガスで起泡すること、すなわち、相違点1に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることであるといえない。 したがって、相違点2について検討するまでもなく、本件発明1は、甲第1号証に記載された発明であるといえないし、また、甲第1号証に記載された発明、及び周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。 ウ 本件発明2~8、10~14について 本件発明2~8、10~14は、本件発明1の特定事項を全て含むものであるから、前記イで検討したのと同様の理由により、甲第1号証に記載された発明であるといえないし、また、甲第1号証に記載された発明、及び周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。 エ 本件発明15について (ア) 対比 a 本件発明15と甲1発明2とを対比すると、両者の対応関係は、次のとおりに解することができる。 (a) 甲1発明2の「ナフタレンスルホネート分散剤である第2の分散剤」は、本件発明15の「リグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、メラミン樹脂、ポリカルボン酸塩、ポリカルボン酸エステル、およびそれらの混合物からなる群から選択される液化剤」に相当する。 (b) 甲1発明2の「漆喰と、ポリカルボン酸エーテル分散剤である第1の分散剤と、第1の分量の水とをミックスして形成した石膏スラリー」は、本件発明15の「前記混合物を調製するために使用される構成成分として前記石膏/水混合物」に相当する。 (c) 甲1発明2の「フォームを」「石膏スラリーに混合する」ことは、「フォーム」に「ナフタレンスルホネート分散剤である第2の分散剤」を含んでいるから、本件発明15の「液化剤が、前記混合物を調製するために使用される構成成分として前記石膏/水混合物に混合されるか、または前記混合物が形成された後に前記石膏/水混合物に混合されるかのいずれかである」ことに相当する。 (d) 甲1発明2の「分散剤の利用方法」は、本件発明15の「液化剤の使用」に相当する。 b 前記aの対応関係を踏まえると、本件発明15と甲1発明2とは、 「リグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、メラミン樹脂、ポリカルボン酸塩、ポリカルボン酸エステル、およびそれらの混合物からなる群から選択される液化剤の使用であって、 前記液化剤が、前記混合物を調製するために使用される構成成分として前記石膏/水混合物に混合されるか、または前記混合物が形成された後に前記石膏/水混合物に混合されるかのいずれかである、前記使用。」 の点で一致し、次の点で相違しているといえる。 (相違点3) 本件発明15は、「石膏/水混合物の所望の流動性を確立するために必要とされる」、「液化剤の量を最小限に抑えるための、85重量%未満の含水量を有する起泡液化剤の使用」であるのに対して、甲1発明2は、「石鹸と、ナフタレンスルホネート分散剤である第2の分散剤と、第2の分量の水とをブレンドして作製したフォーム」として、「第2の分散剤」が利用されている点。 (イ) 判断 前記イ(イ)での検討と同様に、甲1発明2の「石鹸と、ナフタレンスルホネート分散剤である第2の分散剤と、第2の分量の水とをブレンドして作製したフォーム」における「ナフタレンスルホネート分散剤である第2の分散剤」は起泡しているといえないから、相違点3は実質的な相違点である。 また、ナフタレンスルホネート分散剤をガスで起泡すること、さらに、起泡液化剤の含水量を85重量%未満とすることは、甲第2号証~甲第5号証のいずれにも記載されておらず、周知慣用技術であるといえないから、甲1発明2において、「ナフタレンスルホネート分散剤である第2の分散剤」を「85重量%未満の含水量を有する起泡液化剤」として使用すること、すなわち、相違点3に係る本件発明15の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることであるといえない。 したがって、本件発明15は、甲第1号証に記載された発明であるといえないし、また、甲第1号証に記載された発明、及び周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。 オ 申立理由1についての結論 以上の検討のとおり、申立理由1に理由はない。 (2) 申立理由2(甲第4号証を主たる証拠とした新規性・進歩性欠如)について ア 甲第4号証に記載された発明 甲第4号証には、前記2(2)アによれば、「ナフタレンスルホン酸分散剤」を用いた「石膏ウォールボードを作製する方法」に関する事項が記載され、さらに、前記2(2)イによれば、「ナフタレンスルホン酸分散剤」が、35~55重量%の固体含有量のナフタレンスルホネート水溶液であることが記載されている。 これらの記載を「石膏ウォールボードを作製する方法」、及び「ナフタレンスルホン酸分散剤の使用方法」に注目して整理すると、次の「石膏ウォールボードを作製する方法」に係る発明(以下、「甲4発明1」という。)、及び「ナフタレンスルホン酸分散剤の使用方法」に係る発明(以下、「甲4発明2」という。)が記載されているといえる。 (甲4発明1) 「石膏ウォールボードを作製する方法であって、 (a)水、漆喰、トリメタリン酸ナトリウム及びナフタレンスルホネート分散剤を含む石膏含有スラリーを混合するステップであって、 前記スラリーにおいて、前記トリメタリン酸ナトリウムが、漆喰の重量に対して少なくとも約0.12重量%の量で存在するステップと、 (b)前記石膏含有スラリーを第1のカバーシート上に堆積させるステップと、 (c)堆積したスラリーの上に第2のカバーシートを配置することによって、石膏ウォールボードを形成するステップと、 (d)前記石膏含有スラリーが切断に十分な程度に硬化した後、前記石膏ウォールボードを切断するステップと、 (e)前記石膏ウォールボードを乾燥させるステップと、 を含み、 前記ナフタレンスルホネート分散剤が、35~55重量%の固体含有量のナフタレンスルホネート水溶液である方法。」 (甲4発明2) 「ナフタレンスルホネート分散剤の使用方法であって、 水、漆喰、トリメタリン酸ナトリウム及びナフタレンスルホネート分散剤を含む石膏含有スラリーを混合するステップを有し、 前記ナフタレンスルホネート分散剤が、35~55重量%の固体含有量のナフタレンスルホネート水溶液である方法。」 イ 本件発明1について (ア) 対比 a 本件発明1と甲4発明1とを対比すると、両者の対応関係は、次のとおりに解することができる。 (a) 甲4発明1の「ナフタレンスルホネート分散剤」は、本件発明1の「リグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、メラミン樹脂、ポリカルボン酸塩、ポリカルボン酸エステル、およびそれらの混合物からなる群から選択される石膏スラリー用の液化剤」に相当する。 (b) 甲4発明1の「前記ナフタレンスルホネート分散剤が、35~55重量%の固体含有量のナフタレンスルホネート水溶液である」ことは、ナフタレンスルホネート分散剤の含水量が45~65重量%であるといえるから、本件発明1の「液化剤が85重量%未満の含水量を有し」ていることに相当する。 (c) 甲4発明1の「(a)水、漆喰、トリメタリン酸ナトリウム及びナフタレンスルホネート分散剤を含む石膏含有スラリーを混合するステップ」は、本件発明1の「液化剤」を「石膏/水混合物に組み込まれ」ることに相当する。 (d) 甲4発明1の「(b)前記石膏含有スラリーを第1のカバーシート上に堆積させるステップ」は、本件発明1の「そのようにして得られた前記混合物が二次元基材上に適用されること」に相当する。 (e) 甲4発明1の「石膏ウォールボードを作製する方法」は、本件発明1の「石膏ボードを製造するための方法」に相当する。 b 前記aの対応関係を踏まえると、本件発明1と甲4発明1とは、 「石膏ボードを製造するための方法であって、 リグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、メラミン樹脂、ポリカルボン酸塩、ポリカルボン酸エステル、およびそれらの混合物からなる群から選択される石膏スラリー用の液化剤を提供し、前記液化剤が85重量%未満の含水量を有し、次いで、石膏/水混合物に組み込まれ、そのようにして得られた前記混合物が二次元基材上に適用されることを特徴とする、前記方法。」 の点で一致し、次の点で相違しているといえる。 (相違点4) 本件発明1は、「液化剤がガスで起泡して起泡液化剤」として提供されているのに対して、甲4発明1では、その点が明らかでない点。 (イ) 判断 ナフタレンスルホネート分散剤をガスで起泡することは、甲第1号証~甲第3号証、甲第5号証のいずれにも記載されておらず、周知慣用技術であるといえないから、甲4発明1において、「ナフタレンスルホネート分散剤」をガスで起泡すること、すなわち、相違点4に係る本件発明1の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることであるといえない。 したがって、本件発明1は、甲第4号証に記載された発明、及び周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。 ウ 本件発明2~8、10~14について 本件発明2~8、10~14は、本件発明1の特定事項を全て含むものであるから、前記イで検討したのと同様の理由により、甲第4号証に記載された発明、及び周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。 エ 本件発明15について (ア) 対比 a 本件発明15と甲4発明2とを対比すると、両者の対応関係は、次のとおりに解することができる。 (a) 甲4発明2の「ナフタレンスルホネート分散剤」は、本件発明15の「リグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、メラミン樹脂、ポリカルボン酸塩、ポリカルボン酸エステル、およびそれらの混合物からなる群から選択される液化剤」に相当する。 (b) 甲4発明2の「水、漆喰、トリメタリン酸ナトリウム及びナフタレンスルホネート分散剤を含む石膏含有スラリーを混合するステップ」は、本件発明15の「液化剤が、前記混合物を調製するために使用される構成成分として前記石膏/水混合物に混合されるか、または前記混合物が形成された後に前記石膏/水混合物に混合されるかのいずれかである」ことに相当する。 (c) 甲4発明2の「ナフタレンスルホネート分散剤の使用方法」は、本件発明15の「液化剤の使用」に相当する。 b 前記aの対応関係を踏まえると、本件発明15と甲4発明2とは、 「リグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、メラミン樹脂、ポリカルボン酸塩、ポリカルボン酸エステル、およびそれらの混合物からなる群から選択される液化剤の使用であって、 前記液化剤が、前記混合物を調製するために使用される構成成分として前記石膏/水混合物に混合されるか、または前記混合物が形成された後に前記石膏/水混合物に混合されるかのいずれかである、前記使用。」 の点で一致し、次の点で相違しているといえる。 (相違点5) 本件発明15は、「石膏/水混合物の所望の流動性を確立するために必要とされる」、「液化剤の量を最小限に抑えるための、85重量%未満の含水量を有する起泡液化剤の使用」であるのに対して、甲4発明2は、「35~55重量%の固体含有量のナフタレンスルホネート水溶液である」「ナフタレンスルホネート分散剤の使用方法」である点。 (イ) 判断 甲第4号証には、「ナフタレンスルホネート分散剤」を起泡することについて、記載も示唆もされていないから、相違点5は実質的な相違点である。 また、ナフタレンスルホネート分散剤をガスで起泡すること、さらに、起泡液化剤の含水量を85重量%未満とすることは、甲第1号証~甲第3号証、甲第5号証のいずれにも記載されておらず、周知慣用技術であるといえないから、甲4発明2において、「ナフタレンスルホネート分散剤」を「85重量%未満の含水量を有する起泡液化剤」として使用すること、すなわち、相違点5に係る本件発明15の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることであるといえない。 したがって、本件発明15は、甲第4号証に記載された発明であるといえないし、また、甲第4号証に記載された発明、及び周知慣用技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない。 オ 申立理由2についての結論 以上の検討のとおり、申立理由2に理由はない。 第6 むすび 以上のとおり、取消理由通知書に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件特許1~8、10~15を取り消すことはできない。また、他に本件特許1~8、10~15を取り消すべき理由を発見しない。 さらに、請求項9は、前記第2のとおり、訂正により削除された。これにより、この請求項に係る本件特許9に対する特許異議の申立てについては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2024-700941

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