特許異議申立
2025-700629
大型消防車両
- 審判番号
- 2025-700629
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-049606
- 登録番号
- 7606898
- 請求日
- 2025年06月13日
- 審決日
- 2025年10月01日
- 公報発行日
- 2025年11月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】帝国繊維株式会社
- 【権利者代理人】清流国際弁理士法人
- 【異議申立人】中里 昭恵
- 審判長/審判官
- 審判長 八木 誠
- 審判官 平野 貴也
- 審判官 西山 智宏
- 分類
- P1651.121-Y (A62C)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7606898号発明「大型消防車両」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7606898号の請求項1-4に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7606898号の請求項1-4に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、令和3年3月24日に出願され、令和6年12月18日に特許権の設定登録がされ、同年12月26日に特許掲載公報が発行された。その後、令和7年6月13日に特許異議申立人中里昭恵(以下「申立人」という。)は、本件特許に対して特許異議の申立てを行った。
第2 本件発明
本件特許の請求項1-4に係る発明(以下それぞれ「本件発明1」-「本件発明4」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1-4に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
泡消火薬剤タンク、高所泡消火薬剤放射手段および運転室を有する大型消防車両であって、
前記泡消火薬剤タンクの容量が5.8m3以上であり、
前記高所泡消火薬剤放射手段が、泡消火薬剤を放射する筒先、該筒先を地上から22m以上の高さに配置する塔または梯子、および放水ポンプを有し、
前記運転室内に、前記泡消火薬剤タンクおよび高所泡消火薬剤放射手段を操作する制御手段を有すると共に、
操向方向と逆方向に後輪を舵角する後輪操舵手段を有することを特徴とする大型消防車両。
【請求項2】
更に前記泡消火薬剤と水との混合手段を有する、請求項1に記載の大型消防車両。
【請求項3】
回転半径が最小になるように走行するとき、外側前輪が描く円の半径が11m以下、内側後輪が描く円の半径が7m以下である、請求項1または2に記載の大型消防車両。
【請求項4】
前記大型消防車両の走行に関係する通信信号、および前記泡消火薬剤タンクおよび高所泡消火薬剤放射手段の制御に関係する通信信をが、CAN-BUSシステムを介して接続されている、請求項1~3のいずれかに記載の大型消防車両。」
第3 申立理由の概要
申立人は、以下の甲第1号証-甲第11号証(以下それぞれ「甲1」-「甲11」という。)を提出し、本件発明1-4は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、本件発明1-4を取り消すべきである旨主張する。
甲1 :特開2006-345927号公報
甲2 :第3回「石油コンビナート災害対応への先進技術活用検討会」開催資料
甲3の1:空港用化学消防車 共通仕様書
甲3の2:空港用10000立級化学消防車(HRET型)の製造 特記仕様書
甲4 :特開平11-342861号公報
甲5 :特公平01-020107号公報
甲6 :実願平03-073218号(実開平05-026737号)のCD-ROM
甲7 :特開2013-054737号公報
甲8 :特開2020-200022号公報
甲9 :特表2015-510995号公報
甲10 :特表2015-510996号公報
甲11 :特表2015-513635号公報
第4 証拠の記載
1 甲1
(1)甲1の記載事項
甲1には、以下の事項が記載されている(下線は当審において付した。以下同様。)。
ア 「【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係る高所放水車30(消防自動車)の艤装図である。
【0024】
この高所放水車30は、例えばコンビナート等に配備される特殊消防自動車であって、水と、予め貯留された消火剤とが混合され、両者の混合液としての消火液を放出することができるようになっている。この高所放水車30は、シャシー31と、シャシー31に架装されたボディ32と、シャシー31に取り付けられた放水塔支持装置33、図示されていない水ポンプ(消防ポンプ)及び消火剤ポンプ並びにジャッキ・アウトリガー装置34と、放水塔支持装置33に支持された放水塔35とを備えている。
【0025】
シャシー31は、メインフレーム36と、メインフレーム36に懸架された車輪37と、メインフレーム36の前端部に設けられたキャビン38と、図示されていないが、メインフレーム36に支持され、キャビン37の下方に配置されたエンジンとを備えている。メインフレーム36は、断面が略C字状に形成された一対の鋼材を有し、両者は、互いに対向配置されている。なお、メインフレーム36は、当該メインフレーム36を構成する鋼材同士を接続する複数のクロスメンバーを備えており、これにより、メインフレーム36全体の剛性が向上されている。前述のようにエンジンは、このメインフレーム36に支持されており、当該エンジンに車輪37を駆動するための動力伝達機構が連結されている。キャビン32は、この高所放水車30を走行運転するための運転室を構成している。
【0026】
ボディ32は、高所放水車30の外形を構成している。ボディ32は、フレーム及び外板からなる。フレームは、例えば鋼又はアルミニウム合金からなり、シャシー31のメインフレーム36に固定されている。フレームは、所要の骨組構造を有し、上記外板がこのフレームの外面に取り付けられている。この外板も鋼又はアルミニウム合金からなる。ボディ32の中央部にポンプ室39が形成されており、このポンプ室39の後方に消火剤タンク40が設けられている。この消火剤タンク40は、予め消火剤(典型的には、たん白泡消火薬剤、合成界面活性剤泡消火薬剤、水成膜泡消火薬剤)を貯留しておくことができる。このポンプ室39の内部に上記水ポンプ及び消火剤ポンプが収容されている。これらは、後に詳述される駆動装置によって駆動されるようになっており、これにより、水と消火剤とが混合され、消火液が放水塔35から放出されるようになっている。なお、ボディ32の後方にホースカー41が着脱自在に取り付けられている。」
イ 「【0030】
放水塔35は、断面形状が矩形に形成された複数の筒状部材46~49を備えている。本実施形態では、放水塔35は、4本の筒状部材46~49を備えており、各筒状部材46~49は、それぞれ、第1番塔46、第2番塔47、第3番塔48及び第4番塔49と称される。この第4番塔49の後端部が前述のように上記支持フレーム42に支持されている。第1番塔46の外形寸法が最も小さく、第2番塔47、第3番塔48、第4番塔49の順に外形寸法が大きくなっている。このため、第1番塔46が第2番塔47の内部に長手方向にスライド可能に挿入されており、第2番塔47が第3番塔48の内部に長手方向にスライド可能に挿入されている。第3番塔48も同様に第4番塔49の内部に挿入されている。したがって、第1番塔46~第3番塔48がそれぞれ隣り合う第2番塔47~第4番塔49に対してスライドすることにより、放水塔35は、全体として長手方向に伸縮することができる。なお、放水塔35の伸縮動作は、典型的には伸縮シリンダを含む所定の油圧装置によってなされる。
【0031】
放水塔35は、送水管50を備えている。この送水管50は、同図が示すように第4番塔49~第1番塔46に設けられており、放水塔35の伸縮に追従して長手方向に伸縮することができるようになっている。上記支持フレーム42にも送水管51が取り付けられている。この送水管51は、支持フレーム42及びボディ32の内部を通って上記ポンプ室39に連通されており、当該ポンプ室39内に配置された上記水ポンプに接続されている。送水管51は上記送水管50と連結されており、上記水ポンプから吐出された水は、送水管51、50を通って放水塔35の先端まで案内される。また、放水塔35の先端(第1番塔46の先端)に放水モニター52が設けられている。この放水モニター52の放水口に図示されていないノズルが取り付けられるようになっている。放水モニター52は、放水口の向きをさまざまに変化させることができるようになっており、したがって、実際の消火活動時において、上記ノズルは所望の方向に向けられる。
【0032】
なお、上記支持フレーム42に操作部45が設けられている。この操作部45は、上記ターンテーブルの回転、上記起伏シリンダ43及び伸縮シリンダの伸縮並びに放水モニター52の俯仰を操作することができる。また、この操作部45は、後に詳述される制御装置53を内蔵しており、この制御装置53は、上記消火剤ポンプの駆動その他当該高所放水車30の作動全般を総合的に制御する。
【0033】
図2~図4は上記ポンプ室39内のポンプ架装部のレイアウトを示す図であり、図2は側面図、図3は平面図及び図4は後面図である。なお、図2及び図3において右側、図4において上側が当該高所放水車30の前方である。
【0034】
これらの図が示すように、上記水ポンプ54、真空ポンプ55及び消火剤ポンプ56がポンプ室39内に配置されている。本実施形態では、これら水ポンプ54、真空ポンプ55及び消火剤ポンプ56は、サブフレーム57上に配置されており、このサブフレーム57が上記メインフレーム35に固定されている。ただし、このサブフレーム57が省略されてもよいことは勿論である。
【0035】
水ポンプ54は、インペラを備えた遠心ポンプであって、既知の構成である。この水ポンプ54は、3つの吸水口58~60と吐出口61とを備えており、吸水口58~60に供給された水がインペラにより遠心加速されて吐出口61から吐出されるようになっている。真空ポンプ55は、水ポンプ54に供給される水を当該水ポンプ54のケーシング内に引き込むためのものである。この真空ポンプ55も既知の構造を備えている。図2及び図3が示すように、水ポンプ54は、図示されていないPTOに連結された連接部材62によって駆動される。PTOは、シャシー31に搭載されたエンジンの動力を取り出すものであって、PTOによって取り出された動力により水ポンプ54が回転される。なお、PTOによって取り出された動力は、所定のクラッチ及び動力伝達装置を介して真空ポンプも駆動するようになっている。
【0036】
消火剤ポンプ56は、本実施形態ではダイヤフラムポンプが採用されている。この消火剤ポンプ56は、前述の消火剤を消火剤タンク40から引き出して上記水に供給するものである。これにより、水を消火剤とが混合される。この消火剤ポンプ56は、油圧モータ63(油圧アクチュエータ)により駆動されるようになっている。この油圧モータ63は、油圧ポンプ78が接続されている。ただし、この油圧ポンプ78と油圧モータ63との間に、同図では図示されていない流量調整弁(油圧調整弁)が配設されている。」
ウ 「【図1】
[図:0001429037000001.jpg]
【図2】
[図:0001429037000002.jpg]
【図3】
[図:0001429037000003.jpg]
【図4】
[図:0001429037000004.jpg]
」
(2)甲1の認定事項
ア 段落【0023】-【0026】、【0030】、【0031】の記載及び図1の図示内容によれば、高所放水車30は、消火剤タンク40、消火液を放出する手段およびキャビン38を有するものと認められる。
イ 段落【0026】、【0030】、【0031】、【0033】-【0036】の記載及び図1-4の図示内容によれば、消火液を放出する手段は、ノズル、放水塔35、および水ポンプ54を有するものと認められる。
ウ 段落【0032】の記載によれば、操作部45内に、消火剤ポンプ56の駆動その他当該高所放水車30の作動全般を総合的に制御する制御装置53を有するものと認められる。
(3)甲1発明
上記(1)、(2)を総合すると、甲1(特に、段落【0023】-【0026】、【0030】-【0036】、図1-4を参照。)には、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているものと認められる。
「消火剤タンク40、消火液を放出する手段およびキャビン38を有する高所放水車30であって、
前記消火液を放出する手段が、ノズル、放水塔35、および水ポンプ54を有し、
操作部45内に、消火剤ポンプ56の駆動その他当該高所放水車30の作動全般を総合的に制御する制御装置53を有する高所放水車30。」
2 甲2
甲2(特に、議事要旨の3ページ2-5行を参照。)には、「1つは、既存の3点セット(大型化学消防車、大型高所放水車、泡原液搬送車)を1つの車両にまとめてしまうというものである。こちらはすでに製品化されており、事業者責任として本製品活用の検証(メリット、デメリット)の段階に入っている。海外製品であるため、今後は、本製品を国内の特定事業所において有効活用できるかという検証を行っていきたい。」と記載されていることから、以下の事項が記載されているものと認められる。
「大型高所放水車、大型化学消防車、泡原液搬送車を1つの車両にまとめる。」
3 甲3の1、甲3の2
(1)甲3の1、甲3の2の記載事項
甲3の1(特に、21ページの1-6、13、14行、45ページの1-3行を参照。)には、以下の事項が記載されている。
「(14)操作装置
運転室内には、運行及び消火活動に必要な操作装置を設けること。
なお、操作装置には、操作を簡単確実に行うために必要な記号及び色彩等の識別記号表示を行うとともに、配列及び配置等については誤操作のないように十分配慮して定めること。また、運行及び消火にそれぞれ共通する操作装置にあっては、運転者席及び消火装置操作員席より容易に操作が行える位置に配置すること。
・・・
2)消火関係 タレットノズル遠隔操作、3.8.2項(5)号に規定する操作スイッチ、その他消火関係に必要な操作スイッチ及びレバー等。
・・・
(5)消火装置及び機器単体の操作又は作動確認のため、下記の操作スイッチ及び表示灯を運転室操作盤に設け、スイッチの操作により水放射及び水成膜形成泡放射に係る単独操作が行えること。」
甲3の2(特に、4ページ5-7行を参照。)には、以下の事項が記載されている。
「3.4.5.2 主タレットノズル
(1)主タレットノズルは、HRET消防車の伸縮ブーム先端部に設け、運転室内から遠隔操作ができること。」
(2)周知技術A
上記(1)を総合すると、甲3の1(特に、21ページの1-6、13、14行、45ページの1-3行を参照。)及び甲3の2(特に、4ページ5-7行を参照。)には、以下の周知技術(以下「周知技術A」という。)が記載されているものと認められる。
「水、泡を放射する消防車において、運転室内に、運行及び消火活動に必要な操作装置を設ける。」
4 甲4-6
(1)甲4-6の記載事項
甲4には、以下の事項が記載されている。
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として伸縮梯子付き消防車などのいわゆる高所作業車や、大型のクレーン車などに採用されつつある、四輪操舵型車両のタイヤ切れ角を検出して、運転席に見やすく表示するための装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
四輪操舵車両は、一般の車両と同様の前二輪による二輪操向に加えて、前後輪の逆相ステアによる四輪操向や、同相ステアによるいわゆる蟹操向が可能であって、これら三種類の操向モードを自在に選択し組合わせることにより、幅寄せや狭く入り組んだ路地への進入を容易にして、緊急時こそ重要な安全走行による現場への迅速確実な到着という要請に適確に応えるものである。
・・・
【0014】
次に、消防車の操向モードの切換とタイヤ切れ角の変化について説明する。図1の画面1の状態は四輪操向(逆相ステア)モードを表し、前後輪のタイヤ切れ角が左向きと右向きに等角度で30度になっている。この状態からハンドルを左に切っていくと前後輪のタイヤ切れ角が次第に増大し、より小さな回転半径での車両の左旋回が可能になる。またハンドルを右に切っていくと前後輪のタイヤ切れ角が次第に減少していく。この時のタイヤ7a,7bの図表示と切れ角のデジタル表示は、前述のナックルアーム近傍に配設した距離センサからの信号に基づいて、実際のタイヤの切れ角に対応して表示される。
・・・
【図1】
[図:0001429037000005.jpg]
」
甲5(特に、第2欄27行-第3欄25行を参照。)には、以下の事項が記載されている。
「この発明は、重トラツク、不整地トラツクなどの後二軸型車両に使用されるステアリング系統に関する。
一般に、重トラツクや不整地トラツクは、後車軸をタンデム・アクスル、すなわち、後前車軸および最後車軸よりなる二軸になし、そのトラツクの軸重を軽減してきている。また、その後二軸型のトラツクは、一軸駆動および二軸駆動の何れかが採用されているが、しかし、それら二軸は何れも操舵されず、固定状態に置かれている。
そのような後二軸型トラツクにおいては、走行安定性は、向上されるが、旋回の際、最後車軸の後車輪軸に取り付けられた後輪が横滑りし、その後輪のタイヤが著しく摩耗され、また、その後二軸型トラツクは、通常のトラツクに比して、最小旋回半径が比較的大きくなる傾向にあつた。
また、そのような後二軸型トラツクにおいて、最後車軸の後車輪軸に取り付けられた後輪が操舵可能にされるならば、そのトラツクの最小旋回半径が小さくでき、その後輪のタイヤの著しい摩耗が防止される反面、高速走行時の走行安定性が損われる。すなわち、最前車軸の前車輪軸に取り付けられた前輪が、フロント・ステアリングによつて、操舵されると、そのフロント・ステアリングに関連して、その最後車軸の後輪が旋回半径を小さくする方向に操舵された。」
甲6には、以下の事項が記載されている。
「【0002】
【従来の技術】
クレーン車として、トラックベースへのクレーン架装から発展したトラッククレーン車が知られている。このトラッククレーン車は、一般走行のキャブ(キャリヤハウス)とクレーン作業用のクレーンハウスとを独立に備えるものが多く、一般のトラックと同等の走行性能を有し、長距離の移動も可能である。また、クレーン架装の制約が少ないためトン数の割りには大きな吊下げ能力を具備させることができる。反面、トラッククレーン車は、車両の寸法が大きいこと、ステアリングシステムに制約が有ること等の理由で、狭い路地への進入が困難である、不整地での移動能力が劣る、アプローチアングル乃至はデパーチャアングルを大きくとることができない等、現場での機動性に劣るという問題がある。
【0003】
一方、現場での機動性を重視したラフテレンクレーン車が知られている。このラフテレンクレーン車は、走行時の車両運転操作及びクレーン作業時のクレーン操作が同じクレーンハウスで行なわれ、更に全輪駆動機能(4WD)、及び全輪操舵機能(4WS)を備えており、特に、全輪操舵機能は、前輪の舵角に応じて、且つ前輪に同期させて後輪に前輪と同相又は逆相のステアリング角を付与して最小回転半径をより小さくするものであることから、狭い路地への進入、或いは狭い場所での旋回等が頻繁に行なわれる作業に対して極めて有効である。」
(2)周知技術B
上記(1)を総合すると、甲4(特に、段落【0001】、【0002】、【0014】、図1を参照。)、甲5(特に、第2欄27行-第3欄25行を参照。)及び甲6(特に、段落【0002】、【0003】を参照。)には、以下の周知技術(以下「周知技術B」という。)が記載されているものと認められる。
「大型車両において、後輪操舵手段を有することで、回転半径を小さくすることができる。」
5 甲7-11
(1)甲7-11の記載事項
甲7には、以下の事項が記載されている。
「【0075】
図6には、操作者の周囲環境内にある物体についての乗り物の操作者の視覚的入力を決定するための、本発明によるシステム600の実施態様が略図的に図解されている。システム600は、2つの入力602および603を包含するコントロール・ユニットによって形成されるコントロール手段601を包含する。第1の入力602は、操作者の周囲環境内にある少なくとも1つの物体の位置データ、すなわち外部センサ・システム104によって提供される位置データを示す物体位置信号を受信するべく構成されている。第2の入力603は、乗り物の操作者の目、顔、頭、および身体の動きのうちの少なくとも1つに関係する情報を包含する生理学的データを示す操作者移動入力信号を受信するべく構成され、それにおいて生理学的データは、乗り物の操作者を監視する内部センサ・システム204によって提供される。コントロール手段601のコントロール・ユニットは、さらに、CAN-BUSシステムまたはそれに類似した乗り物内通信ネットワーク605と機能的に接続されている。通信ネットワーク605を介して、コントロール・ユニットは、運転者警告システムまたは運転者補助システム等といったほかの乗り物内システム606および人間機械インターフェース・デバイス等のインターフェース・デバイス607と通信し、それに対して情報を提供し、そこからデータを受信することができる。代替実施態様によれば、コントロール・ユニットが通信ネットワーク605を介して外部および内部のセンサ・システム104および204と機能的に接続される。」
甲8には、以下の事項が記載されている。
「【0032】
図1に例として示されているように、データ交換するために、制御システム8は、センサ装置4、圧力発生装置6および圧力変換装置7に、例えばイーサネット(登録商標)若しくはCAN-BUSシステム等の有線式の接続を介して、または例えばWIFI、ブルートゥース(登録商標)等の無線式の接続を介して接続されている。特に、センサ装置4および圧力発生装置6、特に電動機60は第1の制御装置81に接続されていて、圧力変換装置7、特に圧力変換装置7の電気モータ70は、第2の制御装置82に接続されている。さらにこの場合、好適な形式で第1および第2の制御装置81,82は互いに、無線式のまたは有線式のデータ接続によって接続されている。」
甲9には、以下の事項が記載されている。
「【0007】
「複数グループトランスミッション」とは、特に、1段、2段又は多段の個別トランスミッションの組合せから構成されているトランスミッションと解釈すべきである。「メイングループ」とは、特に、少なくとも1つの前進トランスミッションギヤ及び少なくとも1つの後進トランスミッションギヤの提供及び/又は調節のために設けられており、かつ/又は、互いに逆を向き、従って符号が異なっている少なくとも2つの調節可能な変速比を有する、個別トランスミッションと解釈すべきである。「後段接続グループ」とは、特に、ギヤ数を増加させるために少なくとも2つの異なる変速比を提供し、かつ/又はメイングループによって提供された高速及び低速トランスミッションギヤを提供するために設けられている、メイングループに後段接続されている個別トランスミッションと解釈すべきである。「前段接続グループ」とは、特に、ギヤ数を増加させるために少なくとも2つの異なる変速比を提供する、メイングループに前段接続されている個別トランスミッションと解釈すべきである。変速比は、好ましくは1であってもよい。「前段接続される」及び「後段接続される」とは、特に、動力伝達に関するものと解釈すべきであり、この動力伝達は、駆動装置によって駆動された駆動輪において、及び/又は、アクティブな駆動装置すなわち、好ましくは、複数グループトランスミッションに駆動技術的に連結され、駆動トルクを提供する駆動装置において、存在する。「制御及び/又は調整ユニット」とは、特に、少なくとも1つの制御装置を備える特定のユニットと解釈すべきである。「制御装置」とは、特に、プロセッサユニット、記憶ユニット、及び記憶ユニットに記憶されるオペレーションプログラムを備える、特定のユニットと解釈すべきである。原則的に、制御及び/又は調整ユニットは、好ましくは、特にCAN-BusシステムのようなBusシステムを介して互いに連絡するよう設けられている、互いに連結された複数の制御装置を有していてよい。「トランスミッションギヤチェンジ工程」とは、特に、現在入れられているトランスミッションギヤ、すなわち、好ましくは現状ギヤから始まり、走行する間に目標ギヤに切替えられる工程と解釈すべきであり、その際この工程は、有利には、自動車ドライブトレイン装置を有する自動車の運転手により及び/又は制御及び/又は調整ユニットにより発動される切替命令により、引き起こされる。「目標ギヤに入れる」とは、特に、メイングループ内での相応する目標ギヤに割り当てられた変速比を調節すること、及び/又は相応する目標ギヤのために設けられた、メイングループの全ての連結ユニット間に回転トルク伝達接続を確立すること、と解釈すべきである。好ましくは、目標ギヤに入れることは、メイングループによって行なわれる。「目標ギヤの切替」とは、特に、目標ギヤが入れられた場合の、自動車の駆動装置と駆動輪との間の回転トルク伝達接続を調節すること、と解釈すべきである。好ましくは、目標ギヤが切替えられる工程は、目標ギヤが入れられる工程を含む。目標ギヤの切替は、好ましくは現状ギヤを外すこと、相応する目標ギヤに入れること、及び引き続き駆動装置と駆動輪との間の回転トルク伝達接続を確立するためにスターティングクラッチを閉じることを含む。」
甲10には、以下の事項が記載されている。
「【0009】
「制御及び/又は調整ユニット」とは、特に、少なくとも1つの制御装置を備えるユニットと解釈すべきである。「制御装置」とは、特に、プロセッサユニット及び記憶ユニットを備えるとともに、記憶ユニットにおいて記憶されるオペレーションプログラムを備えるユニットと解釈すべきである。原則的に、制御及び/又は調整ユニットは、好ましくは、特にCAN-BusシステムのようなBusシステムを介して互いに通信するよう設けられている、互いに連結された複数の制御装置を有していてよい。「同期機能」とは、特に、トランスミッションギヤチェンジ工程において、従って現在の進行方向とは逆向きのトランスミッションギヤに入れるために、メイングループを同期するよう設けられている機能と解釈すべきである。「メイングループの同期」とは、特に、メインシャフトと他のトランスミッションシャフト、好ましくはカウンタシャフトとの間の回転数差の同化と解釈すべきである。「後段接続グループを切替える」とは、特に、後段接続グループの作動及び/又は後段接続グループの切替ポジションの変更及び/又は後段接続グループの変速比の変更と解釈すべきである。有利には、同期機能は、メイングループを同期するために、トランスミッションギヤチェンジ工程の間に後段接続グループ内で変速比を変更する。好ましくは同期機能は、現在の進行方向とは逆向きのトランスミッションギヤに入れる前に、従って目標ギヤに入れる前に、後段接続グループを切替える。「トランスミッションギヤに入れる」とは、特に、メイングループ内で相応するトランスミッションギヤに割り当てられる変速比に入れること及び/又は相応するトランスミッションギヤのために設けられた、メイングループの全ての連結ユニット間に回転トルク伝達連結を確立することと解釈すべきである。好ましくは、トランスミッションギヤに入れることは、メイングループによって行われる。後段接続グループは、有利には、入れられたメイングループのトランスミッションギヤを変速するために設けられている。特に、「トランスミッションギヤの切替」とは、特に、入れられた目標ギヤにおける自動車の駆動装置と駆動輪との間の回転トルク伝達連結の調節と解釈すべきである。好ましくは、トランスミッションギヤが切替えられる工程は、トランスミッションギヤが入れられる工程を含む。トランスミッションギヤの切替は、好ましくは現状ギヤを外すこと、相応する目標ギヤ、特に現在の進行方向とは逆向きのトランスミッションギヤに入れること、及び引き続き駆動装置と駆動輪との間の回転トルク伝達連結を確立するためにスターティングクラッチを閉じることを含む。「設けられている」とは、特に、特別にプログラムされ、設計され、装備され、構成されかつ/又は配置されていることと解釈すべきである。」
甲11には、以下の事項が記載されている。
「【0006】
更に、自動車バルブトレイン調整装置が、少なくとも1つの休止-作動状態で、ゼロリフトを有する少なくとも1つのカムエレメント及びより小さな出力に割り当てられているバルブリフトのうちの1つを有する少なくとも1つの他のカムエレメントを作動するために設けられている制御-及び/又は調節ユニットを備えることが提案される。このことにより、自動車バルブトレイン調整装置は、気筒休止の間に殊に有利に作動することができる。「制御-及び/又は調節ユニット」とは、殊に、少なくとも1つの制御装置を備えるユニットと解釈すべきである。「制御装置」とは、殊に、プロセッサユニットを備えかつ記憶ユニットを備える、並びに記憶ユニットにおいて記憶されるオペレーションプログラムを備えるユニットと解釈すべきである。原則的に、制御-及び/又は調節ユニットは、特に、殊にCAN-BusシステムのようなBusシステムを介して互いに通信するよう設けられている、相互接続された複数の制御装置を備えうる。「設けられている」とは、殊に、特別にプログラムされ、設計され、及び/又は装備されていることと解釈すべきである。「休止-作動状態」とは、殊に、少なくとも1つの気筒が休止されている作動状態と解釈すべきである。その際、「ゼロリフトを有するカムエレメントを作動する」とは、殊に、ゼロリフトを有するゲートパスを備えるカムエレメントが対応するバルブと噛合っていることと解釈すべきである。」
(2)周知技術
上記(1)を総合すると、甲7(特に、段落【0075】を参照。)、甲8(特に、段落【0032】を参照。)、甲9(特に、段落【0007】を参照。)、甲10(特に、段落【0009】を参照。)及び甲11(特に、段落【0006】を参照。)には、以下の周知技術が記載されているものと認められる。
「車両における通信にCAN-BUSシステムを用いる。」
第5 当審の判断
1 本件発明1について
(1)対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、以下のとおりとなる。
ア 甲1発明の「消火剤タンク40」は、甲1の段落【0026】には「消火剤タンク40は、予め消火剤(典型的には、たん白泡消火薬剤、合成界面活性剤泡消火薬剤、水成膜泡消火薬剤)を貯留しておくことができる。」と泡消火薬剤を貯留することが記載されていることから、本件発明1の「泡消火薬剤タンク」に相当する。以下同様に、「キャビン38」は「運転室」に、「高所放水車30」は「大型消防車両」に、それぞれ相当する。
イ 甲1発明の「ノズル」は、本件発明1の「泡消火薬剤を放射する筒先」に相当する。以下同様に、「放水塔35」は「塔または梯子」に、「水ポンプ54」は「放水ポンプ」に、それぞれ相当する。そして、甲1発明の「消火液を放出する手段」は、これらの共通する構成を含むことから、本件発明1の「高所泡消火薬剤放射手段」に相当する。
ウ 上記ア、イを踏まえると、甲1発明の「消火剤ポンプ56の駆動その他当該高所放水車30の作動全般を総合的に制御する制御装置53」は、本件発明1の「前記泡消火薬剤タンクおよび高所泡消火薬剤放射手段を操作する制御手段」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
(一致点)
「泡消火薬剤タンク、高所泡消火薬剤放射手段および運転室を有する大型消防車両であって、
前記高所泡消火薬剤放射手段が、泡消火薬剤を放射する筒先、塔または梯子、および放水ポンプを有し、
前記泡消火薬剤タンクおよび高所泡消火薬剤放射手段を操作する制御手段を有する大型消防車両。」
(相違点1)
本件発明1は、「前記泡消火薬剤タンクの容量が5.8m3以上であ」るのに対して、甲1発明は、泡消火薬剤タンク(消火剤タンク40)の容量について特定されていない点。
(相違点2)
「塔または梯子」について、本件発明1は、「該筒先を地上から22m以上の高さに配置する」のに対して、甲1発明は、筒先の地上からの高さについて特定されていない点。
(相違点3)
「前記泡消火薬剤タンクおよび高所泡消火薬剤放射手段を操作する制御手段」について、本件発明1は、「前記運転室内に」有するのに対して、甲1発明は、操作部45内に有する点。
(相違点4)
本件発明1は、「操向方向と逆方向に後輪を舵角する後輪操舵手段を有する」のに対して、甲1発明は、そのような特定がない点。
(2)判断
ア 相違点1について
甲3-1(24ページの表を参照。)には、薬液槽の積液容量を950L(0.95m3)以上とすることが記載されているものと認められる。
また、大型化学高所放水車において、薬液槽の容量を1,800L(1.8m3)とすることは公知の数値範囲であると認められる(株式会社モリタ、“大型化学高所放水車 MQB22C”、2011年6月27日、インターネット<URL:https://www.morita119.jp/fire_engine/work/005.html>を参照。)。
しかしながら、いずれの証拠にも消防車両において泡消火薬剤タンクの容量を5.8m3以上とすることについて記載も示唆もされていない。
そして、ほかに、(通常、大きさにある程度制約がある)消防車両において、泡消火薬剤タンクの容量を5.8m3程度とすることについて、技術常識や周知技術であることを認めるに足る証拠もない。
そうすると、甲1発明において、泡消火薬剤タンクの容量を5.8m3以上とすることは、当業者が適宜なし得た設計的事項であるとはいえない。
したがって、相違点1に係る本件発明1の構成は、当業者が容易に想到し得たものであるとはいえない。
イ 相違点2について
甲3の2(特に、3ページ36行を参照。)には、最高ノズル到達点を地上から15m以上とすることが記載されているものと認められる。
また、大型化学高所放水車において、最大地上高を約22.0mとすることは公知の数値範囲であると認められる(株式会社モリタ、“大型化学高所放水車 MQB22C”、2011年6月27日、インターネット<URL:https://www.morita119.jp/fire_engine/work/005.html>を参照。)。
そうすると、甲1発明において、筒先の地上からの高さを22m以上とすることは、当業者が適宜なし得た設計的事項である。
ウ 相違点3について
甲1発明において、周知技術Aに照らして、制御手段(制御装置53)を操作部45内に代えて運転室内に設けることに、格別の技術的困難性はない。
エ 相違点4について
甲4(特に、段落【0001】を参照。)には、周知技術Bは伸縮梯子付き消防車にも適用されることが示唆されており、甲1発明において、周知技術Bに照らして、後輪操舵手段を設けることに、格別の技術的困難性はない。
(3)まとめ
したがって、本件発明1は甲1発明及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
2 本件発明2-4について
本件発明2-4は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、更なる限定を付加したものであるから、本件発明1について前述したのと同様の理由により、甲1発明及び他の証拠に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第6 むすび
以上によれば、特許異議の申立理由及び証拠によっては、本件発明1-4を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1-4を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2025-700629