特許異議申立
2024-700696
液式鉛蓄電池用セパレータおよび液式鉛蓄電池
- 審判番号
- 2024-700696
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-513179
- 登録番号
- 7424371
- 請求日
- 2024年07月23日
- 審決日
- 2025年04月15日
- 公報発行日
- 2025年07月25日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】株式会社GSユアサ
- 【権利者代理人】山田 威一郎
- 【権利者代理人】田中 順也
- 【権利者代理人】水谷 馨也
- 【異議申立人】中里 昭恵
- 審判長/審判官
- 審判長 土居 仁士
- 審判官 丸山 高政
- 審判官 衣鳩 文彦
- 分類
- P1651.536-YAA(H01M) / P1651.537-YAA(H01M) / P1651.121-YAA(H01M)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第36条、特許法第29条、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
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特許第7424371号発明「液式鉛蓄電池用セパレータおよび液式鉛蓄電池」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7424371号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕について訂正することを認める。
特許第7424371号の請求項1~6、8~10に係る特許を維持する。
特許第7424371号の請求項7に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7424371号(以下「本件特許」という。)の請求項1~10に係る特許についての出願は、2020年(令和2年)1月31日(優先権主張 平成31年4月8日)を国際出願日とする出願であって、令和6年1月22日にその特許権の設定登録がされ、同年1月30日に特許掲載公報が発行された。その後、その全請求項(請求項1~10)に係る特許に対し、特許異議申立人 中里 昭恵(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。
特許異議の申立てからの手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
令和 6年 7月23日 特許異議申立書
8月21日付け 手続補正指令書(方式)
9月10日 手続補正書(方式)
11月12日付け 取消理由通知書
令和 7年 1月14日 訂正請求書
意見書(特許権者)
2月 4日 手続補正書(特許権者)
3月19日 意見書(申立人)
令和6年9月10日の手続補正書(方式)は、特許異議申立書の誤記を補正するとともに甲第3号証の原文に相当する甲第6号証を提出するものであり、その要旨を変更しない。
上記手続補正書(方式)により補正された特許異議申立書を、以下では「申立書」という。
令和7年2月4日の特許権者による手続補正書は、訂正請求書に添付された特許請求の範囲及び明細書の誤記を補正するものであり、その要旨を変更しない。
上記手続補正書により補正された訂正請求書を、以下では単に「訂正請求書」といい、訂正請求書による訂正を、以下では「本件訂正」という。
以下では、令和7年1月14日に特許権者が提出した意見書を「特許権者意見書」といい、同年3月19日に申立人が提出した意見書を「申立人意見書」という。
第2 訂正の適否
本件訂正が適法なものであるかについて、以下、判断する。
1 訂正の内容
本件訂正の内容は、以下の訂正事項1~6からなる。そして、本件訂正前の特許請求の範囲の記載は、以下の(1)に示すとおりであり、本件訂正後の特許請求の範囲の記載は、以下の(2)に示すとおりである。また、本件訂正に係る明細書の本件訂正前後の記載は、それぞれ以下の(3)及び(4)に示すとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すために特許権者が付したものである。
〈訂正事項1〉
請求項1の
「前記一対の縁部の厚みTpが、前記主要部の厚みTmより大きく、
全細孔容積が、0.8cm3/g以上2.0cm3/g以下であり、
0.1μm以上10μm以下の孔径を有する第1細孔の細孔容積の前記全細孔容積に占める比率r1が50%以上である、液式鉛蓄電池用セパレータ。」
との記載を
「前記一対の縁部の厚みTpが、前記主要部の厚みTmより大きく、
前記縁部の厚みTpと前記主要部の厚みTmとの差は、0.05mm以上0.25mm以下であり、
前記主要部の厚みTmが、0.15mm以上0.25mm以下であり、
全細孔容積が、0.8cm3/g以上2.0cm3/g以下であり、
0.1μm以上10μm以下の孔径を有する第1細孔の細孔容積の前記全細孔容積に占める比率r1が50%以上であり、
ポリオレフィンを含む、液式鉛蓄電池用セパレータ。」
に訂正する。
(請求項1の記載を直接的又は間接的に引用する請求項2~6、8~10も同様に訂正する。)
〈訂正事項2〉
請求項4の
「前記縁部の厚みTpと前記主要部の厚みTmとの差は、0.05mm以上である、」
との記載を
「前記縁部の厚みTpと前記主要部の厚みTmとの差は、0.05mm以上0.22mm以下である、」
に訂正する。
(請求項4の記載を直接的又は間接的に引用する請求項5、6、8~10も同様に訂正する。)
〈訂正事項3〉
請求項5の
「前記主要部の厚みTmが、0.15mm以上0.25mm以下である、」
との記載を
「前記主要部の厚みTmが、0.15mm以上0.20mm以下である、」
に訂正する。
(請求項5の記載を直接的又は間接的に引用する請求項6、8~10も同様に訂正する。)
〈訂正事項4〉
請求項7を削除する。
〈訂正事項5〉
請求項8の
「正極板と、負極板と、請求項1~7のいずれか1項に記載のセパレータとを備える、」
との記載を
「正極板と、負極板と、請求項1~6のいずれか1項に記載のセパレータとを備える、」
に訂正する。
(請求項8の記載を直接的又は間接的に引用する請求項9、10も同様に訂正する。)
〈訂正事項6〉
以下の(i)~(iii)の記載を削除する。
(i)明細書【0120】及び【0130】の「およびr2」との記載
(ii)明細書【0131】の表1の「細孔比率r2」の列の全ての項目の記載
(iii)明細書【0135】の「また、比率r2が20%以上であることで、より多くのオイルが保持されやすくなったと考えられる。」との記載
(1)本件訂正前の特許請求の範囲
本件訂正前の特許請求の範囲の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】
主要部と、前記主要部の第1方向における両端に位置する一対の縁部とを有し、
前記一対の縁部の厚みTpが、前記主要部の厚みTmより大きく、
全細孔容積が、0.8cm3/g以上2.0cm3/g以下であり、
0.1μm以上10μm以下の孔径を有する第1細孔の細孔容積の前記全細孔容積に占める比率r1が50%以上である、液式鉛蓄電池用セパレータ。
【請求項2】
前記第1細孔の比率r1が、80%以下である、請求項1に記載の液式鉛蓄電池用セパレータ。
【請求項3】
前記全細孔容積が、1.8cm3/g以下である、請求項1または2に記載の液式鉛蓄電池用セパレータ。
【請求項4】
前記縁部の厚みTpと前記主要部の厚みTmとの差は、0.05mm以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載の液式鉛蓄電池用セパレータ。
【請求項5】
前記主要部の厚みTmが、0.15mm以上0.25mm以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の液式鉛蓄電池用セパレータ。
【請求項6】
前記セパレータは、オイルを含み、
前記セパレータ中の前記オイルの含有量は、10質量%以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載の液式鉛蓄電池用セパレータ。
【請求項7】
前記セパレータは、0.03μm以下の孔径を有する第2細孔を含み、
前記第2細孔の細孔容積の前記全細孔容積に占める比率r2は、20%以上である、請求項6に記載の液式鉛蓄電池用セパレータ。
【請求項8】
正極板と、負極板と、請求項1~7のいずれか1項に記載のセパレータとを備える、液式鉛蓄電池。
【請求項9】
前記正極板の幅および前記負極板の幅はいずれも、前記主要部の幅より大きい、請求項8に記載の液式鉛蓄電池。
【請求項10】
アイドリングストップ用または車両の始動用である、請求項8または9のいずれか1項に記載の液式鉛蓄電池。」
(2)本件訂正後の特許請求の範囲
本件訂正後の特許請求の範囲の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】
主要部と、前記主要部の第1方向における両端に位置する一対の縁部とを有し、
前記一対の縁部の厚みTpが、前記主要部の厚みTmより大きく、
前記縁部の厚みTpと前記主要部の厚みTmとの差は、0.05mm以上0.25mm以下であり、
前記主要部の厚みTmが、0.15mm以上0.25mm以下であり、
全細孔容積が、0.8cm3/g以上2.0cm3/g以下であり、
0.1μm以上10μm以下の孔径を有する第1細孔の細孔容積の前記全細孔容積に占める比率r1が50%以上であり、
ポリオレフィンを含む、液式鉛蓄電池用セパレータ。
【請求項2】
前記第1細孔の比率r1が、80%以下である、請求項1に記載の液式鉛蓄電池用セパレータ。
【請求項3】
前記全細孔容積が、1.8cm3/g以下である、請求項1または2に記載の液式鉛蓄電池用セパレータ。
【請求項4】
前記縁部の厚みTpと前記主要部の厚みTmとの差は、0.05mm以上0.22mm以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の液式鉛蓄電池用セパレータ。
【請求項5】
前記主要部の厚みTmが、0.15mm以上0.20mm以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の液式鉛蓄電池用セパレータ。
【請求項6】
前記セパレータは、オイルを含み、
前記セパレータ中の前記オイルの含有量は、10質量%以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載の液式鉛蓄電池用セパレータ。
【請求項7】
(削除)
【請求項8】
正極板と、負極板と、請求項1~6のいずれか1項に記載のセパレータとを備える、液式鉛蓄電池。
【請求項9】
前記正極板の幅および前記負極板の幅はいずれも、前記主要部の幅より大きい、請求項8に記載の液式鉛蓄電池。
【請求項10】
アイドリングストップ用または車両の始動用である、請求項8または9のいずれか1項に記載の液式鉛蓄電池。」
(3)本件訂正前の明細書
本件訂正に係る明細書の【0120】、【0130】、【0131】及び【0135】の本件訂正前の記載は、以下のとおりである。
「【0120】
(3)セパレータ
ポリエチレン100質量部と、シリカ粒子160質量部と、造孔剤としてのパラフィン系オイル80質量部と、2質量部の浸透剤を含む樹脂組成物をシート状に押出成形した後、造孔剤の一部を除去することにより、既述の手順で求められる細孔容積Pt、細孔比率r1およびr2が表1に示す値である微多孔膜を作製した。押出成形には、セパレータの縁部の厚みと主要部の厚みとの差(Tp-Tm)が表1に示す値となるとともに、図1に示すようにストライプ状の複数の主リブおよびミニリブが形成される形状の金型を用いた。次に、各シート状の微多孔膜を二つ折りにして袋を形成し、第1方向D1の両端部に溶着部を形成して、図1に示すような袋状セパレータを得た。縁部は、第1方向の両端側に形成されており、各縁部の幅Bは20mmであり、主要部の幅Aは75mmであり、セパレータの第1方向D1における幅Wは115mmであった。」
「【0130】
評価1~評価5の結果を表1に示す。評価2~評価5については、鉛蓄電池R1の結果を1としたときの比で示す。表1には、細孔容積Pt、細孔比率r1およびr2、ならびに(Tp-Tm)についても合わせて示す。」
「【0131】
【表1】
[図:0001424589000001.jpg]
」
「【0135】
また、セパレータ中のオイル含有量が、10質量%以上の場合には、10質量%未満の場合に比べて、優れた高温過充電寿命が得られている(E21とE1、E22およびE23との比較)。オイル含有量が13質量%以上の場合には、さらに高い高温過充電寿命が得られる(E1とE21~E23との比較、E4とE1~E3およびE5~E20との比較)。これは、セパレータの細孔内に比較的多くのオイルが保持されるとともに、細孔構造が最適化されることで、高温過充電耐久試験を行っても、オイルの流出が抑制され、セパレータの酸化劣化が抑制されたためと考えられる。また、比率r2が20%以上であることで、より多くのオイルが保持されやすくなったと考えられる。」
(4)本件訂正後の明細書
本件訂正に係る明細書の【0120】、【0130】、【0131】及び【0135】の本件訂正後の記載は、以下のとおりである。
「【0120】
(3)セパレータ
ポリエチレン100質量部と、シリカ粒子160質量部と、造孔剤としてのパラフィン系オイル80質量部と、2質量部の浸透剤を含む樹脂組成物をシート状に押出成形した後、造孔剤の一部を除去することにより、既述の手順で求められる細孔容積Pt、細孔比率r1が表1に示す値である微多孔膜を作製した。押出成形には、セパレータの縁部の厚みと主要部の厚みとの差(Tp-Tm)が表1に示す値となるとともに、図1に示すようにストライプ状の複数の主リブおよびミニリブが形成される形状の金型を用いた。次に、各シート状の微多孔膜を二つ折りにして袋を形成し、第1方向D1の両端部に溶着部を形成して、図1に示すような袋状セパレータを得た。縁部は、第1方向の両端側に形成されており、各縁部の幅Bは20mmであり、主要部の幅Aは75mmであり、セパレータの第1方向D1における幅Wは115mmであった。」
「【0130】
評価1~評価5の結果を表1に示す。評価2~評価5については、鉛蓄電池R1の結果を1としたときの比で示す。表1には、細孔容積Pt、細孔比率r1、ならびに(Tp-Tm)についても合わせて示す。」
「【0131】
【表1】
[図:0001424589000002.jpg]
」
「【0135】
また、セパレータ中のオイル含有量が、10質量%以上の場合には、10質量%未満の場合に比べて、優れた高温過充電寿命が得られている(E21とE1、E22およびE23との比較)。オイル含有量が13質量%以上の場合には、さらに高い高温過充電寿命が得られる(E1とE21~E23との比較、E4とE1~E3およびE5~E20との比較)。これは、セパレータの細孔内に比較的多くのオイルが保持されるとともに、細孔構造が最適化されることで、高温過充電耐久試験を行っても、オイルの流出が抑制され、セパレータの酸化劣化が抑制されたためと考えられる。」
2 一群の請求項について
本件訂正前の請求項2~10は、請求項1を直接的又は間接的に引用するものであるから、請求項1~10は特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項をなす。
そして、本件訂正は、前記一群の請求項についての訂正であるから、特許法120条の5第4項の規定に適合する。
3 独立特許要件について
本件の特許異議の申立ては、請求項1~10に対するものであるから、本件訂正のうち、特許異議の申立てがされていない請求項に対するものはない。
したがって、本件訂正には、特許法120条の5第9項で読み替えて準用する同法126条7項の規定は適用されない。
4 訂正事項1について
訂正事項1に係る訂正は、本件訂正前の請求項1に係る発明を特定する事項である「液式鉛蓄電池用セパレータ」について、「前記縁部の厚みTpと前記主要部の厚みTmとの差は、0.05mm以上0.25mm以下であ」ること(以下「限定事項1」という。)、「前記縁部の厚みTmが、0.15mm以上0.25mm以下であ」ること(以下「限定事項2」という。)、及び、「ポリオレフィンを含む」こと(以下「限定事項3」という。)を限定するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書き1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものと認められる。
限定事項1は、本件特許の明細書【0071】に記載された事項であり、限定事項2は、同【0069】に記載された事項であり、限定事項3は、同【0053】に記載された事項であるから、訂正事項1に係る訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項の規定に適合する。
また、訂正事項1に係る訂正は、前述のように特許請求の範囲の減縮を行うものであるから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項の規定に適合する。
請求項1を引用する請求項2~6及び8~10についても同様である。
5 訂正事項2について
訂正事項2に係る訂正は、本件訂正前の請求項4に係る発明を特定する事項である「前記縁部の厚みTpと前記主要部の厚みTmとの差は、0.05mm以上である」との事項を、「前記縁部の厚みTpと前記主要部の厚みTmとの差は、0.05mm以上0.22mm以下である」として、TpとTmとの差の上限を0.22mmに限定するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書き1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものと認められる。
そして、TpとTmとの差を0.05mm以上0.22mm以下とすることは、本件特許の明細書【0071】に記載された事項であるから、訂正事項2に係る訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項の規定に適合する。
また、訂正事項2に係る訂正は、前述のように特許請求の範囲の減縮を行うものであるから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項の規定に適合する。
請求項4を引用する請求項5、6及び8~10についても同様である。
6 訂正事項3について
訂正事項3に係る訂正は、本件訂正前の請求項5に係る発明を特定する事項である「前記主要部の厚みTmが、0.15mm以上0.25mm以下である」との事項を、「前記主要部の厚みTmが、0.15mm以上0.20mm以下である」として、Tmの上限が0.25mmだったものを、その上限を0.20mmに限定するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書き1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものと認められる。
そして、厚みTmを0.15mm以上0.20mm以下とすることは、本件特許の明細書【0069】に記載された事項であるから、訂正事項3に係る訂正は、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項の規定に適合する。
また、訂正事項3に係る訂正は、前述のように特許請求の範囲の減縮を行うものであるから、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項の規定に適合する。
請求項5を引用する請求項6及び8~10についても同様である。
7 訂正事項4について
訂正事項4に係る訂正は、本件訂正前の請求項7を削除するものであるから、特許法120条の5第2項ただし書き1号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものと認められる。
そして、訂正事項4に係る訂正が、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合することは、明らかである。
8 訂正事項5について
訂正事項5に係る訂正は、本件訂正前の請求項8において請求項1~7のいずれか1項を引用するものであったところ、訂正事項4に係る訂正によって請求項7が削除されたことに伴い、請求項7を引用するままとすると不明瞭な記載となるのを避ける目的で請求項7を引用から外したものと解されるから、特許法120条の5第2項ただし書き3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものと認められる。
訂正事項5に係る訂正が、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項及び6項の規定に適合することは、明らかである。
請求項8を引用する請求項9及び10についても同様である。
9 訂正事項6について
訂正事項6に係る訂正は、要するに、明細書【0120】、【0130】、【0131】及び【0135】の記載から、比率r2に関する記載を削除するものである。
(1)訂正事項6に係る訂正は、訂正事項4及び5に係る訂正によって、特許請求の範囲から比率r2が削除されることに整合させて、明細書【0120】、【0130】、【0131】及び【0135】の記載から、比率r2に関する記載を削除するものであるから、特許法120条の5第2項3号に掲げる「明瞭でない記載の釈明」を目的とするものと認められる。
(2)前記(1)のとおり、訂正事項6に係る訂正は、比率r2に係る発明を削除する訂正事項4及び5に係る訂正に整合するものであるから、本件訂正は、比率r2に関する記載を削除するという訂正を、一群の請求項の全てについて行うもの、つまり、訂正事項6に係る訂正に係る一群の請求項の全てについて行われたものと解されるから、特許法120条の5第9項で準用する同法126条4項の規定に適合する。
(3)訂正事項6に係る訂正は、明細書から比率r2に関する記載を削除したに過ぎず、特許法120条の5第9項で準用する同法126条5項の規定に適合する。
(4)訂正事項6に係る訂正は、比率r2に関する記載を削除するものであり、それに伴って比率r2に関する発明が特許請求の範囲から削除されているから、訂正事項6に係る訂正は、特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではなく、特許法120条の5第9項で準用する同法126条6項の規定に適合する。
10 本件訂正の適否
以上によれば、本件訂正は適法なものと認められる。
よって、本件特許の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~10〕について訂正することを認める。
第3 本件発明
本件の特許請求の範囲の請求項1~6及び8~10に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明6」及び「本件発明8」~「本件発明10」といい、これらを総称して「本件発明」という。)は、その請求項に記載されたとおりのもの(前記第2、1(2))と認める。
なお、後の参照の便宜のため、請求項1を以下のように分説し、「発明特定事項A」のようにして参照する。
【請求項1】
A 主要部と、前記主要部の第1方向における両端に位置する一対の縁部とを有し、
B 前記一対の縁部の厚みTpが、前記主要部の厚みTmより大きく、
C 前記縁部の厚みTpと前記主要部の厚みTmとの差は、0.05mm以上0.25mm以下であり、
D 前記主要部の厚みTmが、0.15mm以上0.25mm以下であり、
E 全細孔容積が、0.8cm3/g以上2.0cm3/g以下であり、
F 0.1μm以上10μm以下の孔径を有する第1細孔の細孔容積の前記全細孔容積に占める比率r1が50%以上であり、
G ポリオレフィンを含む、液式鉛蓄電池用セパレータ。
第4 証拠方法及び申立理由
申立人及び特許権者が提出した証拠方法を以下の1に示す。
申立人が主張する申立理由を以下の2に示す。
1 証拠方法
申立人は、令和6年7月23日の特許異議申立書に添付して甲第1号証~甲第5号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲5」という。)をいずれも写しとして提出し、同年9月10日の手続補正書(方式)に添付して甲第6号証(以下「甲6」という。)を写しとして提出し、申立人意見書に添付して甲第7号証(以下「甲7」という。)を写しとして提出した。
また、特許権者は、特許権者意見書に添付して乙第1号証~乙第6号証(以下、それぞれ「乙1」~「乙6」という。)を写しとして提出した。
甲1~7及び乙1~6の標目は、以下のとおりである。
甲1 特開2017-33660号公報
甲2 特表2016-519389号公報
甲3 特表2019-514173号公報
甲4 特公昭58-51389号公報
甲5 特開平5-129013号公報
甲6 国際公開第2017/177158号
甲7 株式会社東レリサーチセンターのパンフレット P00978材料物性第2研究室20130624-2“細孔・凹凸を捉える ~表面物性測定~”
乙1 日鉄テクノロジー株式会社のウェブサイト(https://www.nstec.nipponsteel.com/technology/physical-properties/powder-sinter/powder_02.html)
乙2 株式会社島津製作所のウェブサイト(https://www.an.shimadzu.co.jp/service-support/technical-support/analysis-basics/powder/lecture/middle/m03/index.html)
乙3 「成形加工 第11巻 第9号 1999」759頁~764頁
乙4 「成形加工 第31巻 第12号 2019」438頁~441頁
乙5 「福井工業大学研究紀要 第37号 2007」265頁~272頁
乙6 特開2013-211115号公報
2 申立理由
申立理由の概要は、以下のとおりである。
〈申立理由A〉(申立書22~32葉)
本件発明は、当業者が甲1に記載された発明(以下「甲1発明」という。)並びに甲2及び4~6に示される周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本件発明に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。(同法113条1項2号)
〈申立理由B〉
本件の発明の詳細な説明は、以下のB-1~B-3の点で、本件発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものではないから、本件発明に係る特許は、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである。(同法113条1項4号)
B-1 「細孔容積Pt」及び「細孔容積P1」の測定は、セパレータ中に含まれる造孔剤(オイル)が残存した状態で測定するのか、造孔剤(オイル)を取り除いた状態で測定するのか、明確ではない。
セパレータ中に含まれる造孔剤(オイル)が残存した状態で測定する場合、圧力が加えられた水銀に押され、セパレータの細孔中に含まれる造孔剤(オイル)の少なくとも一部が細孔の外に漏れ出ることとなるため、得られる「細孔容積Pt」の値や「細孔容積P1」の値には大きな誤差が生じる。
そうすると、いかなる測定方法によれば、「全細孔容積が、0.8cm3/g以上2.0cm3/g以下である」という要件、及び、「0.1μm以上10μm以下の孔径を有する第1細孔の細孔容積の前記全細孔容積に占める比率r1が50%以上である」という要件を充足することができるのか、当業者は認識できるものではない。(申立書32~33葉)
B-2 本件の発明の詳細な説明には、「細孔容積Pt」を調節するための具体的な方法に係る記載がない。
本件の発明の詳細な説明の【表1】には、鉛蓄電池E1~E20に用いられているセパレータとして、オイル量が13%と同一であるものの、「細孔容積Pt」が0.8~1.9cm3/gと大きく変化しているセパレータが記載されている。
そうすると、ポリマー材料、造孔剤、浸透材、無機粒子の種類、粒子径及び量が同じであり、造孔剤の除去量も同じであるセパレータにおいて、いかなる調整方法によれば「細孔容積Pt」が0.8~1.9cm3/gと大きく変化しているセパレータとすることができるのか、当業者は理解できるものではない。
すなわち、「細孔容積Pt」について、いかなる調整方法によれば、「全細孔容積が、0.8cm3/g以上2.0cm3/g以下である」という要件、及び、「0.1μm以上10μm以下の孔径を有する第1細孔の細孔容積の前記全細孔容積に占める比率r1が50%以上である」という要件を充足することができるのか、当業者には理解することができず、その実施のためには多大な労力を伴った試行錯誤を必要とする。(申立書33~35葉)
B-3 本件の発明の詳細な説明の【表1】に開示される鉛蓄電池に用いられているセパレータの全てにおいて、「細孔容積Ptに対する、0.1μm以上10μm以下の孔径を有する第1細孔の細孔容積(P1)の比率r1」と「細孔容積Ptに対する、0.03μm以下の孔径を有する第2細孔の細孔容積(P2)の比率r2」との和が100%である。すなわち、セパレータの全てが、「孔径0.03μm超、0.1μm未満の細孔を含まないセパレータであるということになる。
特定範囲「0.03μm超、0.1μm未満」の孔径を有する細孔を含まないセパレータを、如何にして製造するかについて、発明の詳細な説明にはなく、当業者には理解することができない。(申立書36~38葉)
〈申立理由C〉
本件発明は、以下のC-1及びC-2の点で発明の詳細な説明に記載されたものではないから、本件発明に係る特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである。(同法113条1項4号)
C-1 発明の詳細な説明の【表1】について検討すると、「縁部の厚みTpが主要部の厚みTmより0.05mm大きくなった場合」にあって、「r1」を「80%」とすることによって、CCA性能をTp-Tm=0の場合と同程度とすることができるのは、「各縁部の幅Bは20mmであり、主要部の幅Aは75mm」であるセパレータの場合だからであって、Bが20mmより大きな値の場合にCCA性能をTp-Tm=0の場合と同程度とすることができると、当業者には認識できるものではない。
そうすると、主要部と縁部の範囲をどのように規定しても、「比率r1が50%以上」でありさえすれば、本件発明の課題が解決できると当業者は認識できるものではない。(申立書38~41葉)
C-2 「細孔容積Pt」及び「細孔容積P1」の測定は、セパレータ中に含まれる造孔剤(オイル)が残存した状態で測定するのか、造孔剤(オイル)を取り除いた状態で測定するのか、明確ではない。
セパレータ中に含まれる造孔剤(オイル)が残存した状態で測定する場合、圧力が加えられた水銀に押され、セパレータの細孔中に含まれる造孔剤(オイル)の少なくとも一部が細孔の外に漏れ出ることとなるため、得られる「細孔容積Pt」の値や「細孔容積P1」の値には大きな誤差が生じる。
そうすると、どのような測定方法によっても、全細孔容積が、0.8cm3/g以上2.0cm3/g以下であって、比率r1が50%以上でありさえすれば課題が解決できると当業者は認識できるものではない。(申立書41~42葉)
第5 申立ての一部却下
前記第2のとおり、本件訂正は認められたので、請求項7は削除された。これにより、請求項7についての特許に対する特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法120条の8第1項で準用する同法135条の規定により却下する。
第6 取消理由通知書で通知した取消理由
当審において取消理由通知書で通知した取消理由の概要は、以下のとおりである。
〈理由1〉
本件特許の発明の詳細な説明は、以下の1-1及び1-2の点で、本件発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されたものではないから、本件発明に係る特許は、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである。
1-1 「細孔容積Pt」及び「細孔容積P1」は、いずれも、孔の容積のうち造孔剤(オイル)が占める容積を加算しないことを前提としていると理解される。
水銀圧入法により測定された細孔容積Ptは、孔に残った造孔剤(オイル)が水銀により押し出されることにより、造孔剤(オイル)が占めていた容積をも加算した値となると予想されるため、水銀圧入法では造孔剤(オイル)が占める容積を加算しないことを前提とした細孔容積Pt(すなわち全細孔容積)を測定することができない。
また、造孔剤(オイル)が占める容積を加算しないことを前提とした全細孔容積を測定できる方法は、発明の詳細な説明に記載されていない。
「全細孔容積」及び「第1細孔の細孔容積」と同様のことが、「第2細孔の細孔容積」についてもいえる。(取消理由通知書「●理由1」1(1)(2)、2)
1-2 発明の詳細な説明の記載からは、「ベースポリマーと造孔剤および/または浸透剤との親和性」をどのように調節すると比率r1がどのように変化するのかを理解することができないし、「造孔剤の分散性」をどのように調節すると比率r1がどのように変化するのかを理解することもできないし、「無機粒子の種類および/または粒子径」をどのように選択すると比率r1がどのように変化するのかを理解することもできないし、「浸透剤の量」をどのように選択すると比率r1がどのように変化するのかを理解することもできないし、前記種々の選択を組み合わせた場合に比率r1がどのように変化するのかを理解することもできない。
そのため、実施例の各セパレータのように、比率r1を特定の数値とするには、過度の試行錯誤が必要になると予想される。
第2細孔の比率r2についても、比率r1と同様である。
そして、実施例のセパレータは、いずれも、比率r1とr2の和が100%であるため、第1細孔と第2細孔のみを有し、その他の孔径の細孔は有しないと解されるが、その他の孔径の細孔を一切造らずに第1細孔及び第2細孔のみを造ることができるとは認められない。(取消理由通知書「●理由1」1(3))
〈理由2〉
本件発明は、以下の2-1及び2-2の点で発明の詳細な説明に記載されたものではないから、本件発明に係る特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たしていない出願に対してされたものである。
2-1 理由1のとおり、本件発明及び実施例はその実施ができるとは認められないため、本件発明は課題を解決できると認識できるものではない。(取消理由通知書「●理由2」1)
2-2 本件の発明の詳細な説明において評価が行われたのは、鉛蓄電池E1~E23及びR1~R7であり、これらの鉛蓄電池に仕様されたセパレータは、いずれも、「ポリエチレン100質量部と、シリカ粒子160質量部と、造孔剤としてのパラフィン系オイル80質量部と、2質量部の浸透剤を含む樹脂組成物をシート状に押出成形した後、造孔剤の一部を除去することにより」作成されたものであり、「各縁部の幅Bは20mmであり、主要部の幅Aは75mmであり、セパレータの第1方向における幅Wは115mm」であり、「主リブおよびミニリブの突出高さはそれぞれ0.6mmおよび0.15mm」、「主リブのピッチは9.8mm、ミニリブのピッチは1mm」、「セパレータの総厚は0.8mm」であり、上記以外の材質及び構造を持つセパレータについての評価は行われていない。
発明の詳細な説明の【表1】は、上記の材質及び構造の元で、Pt≧0.8cm3/g、r1≧50%、Tp-Tm>0mmを満たすセパレータが課題を解決できることを示しているに過ぎず、それ以外の材質及び構造を持つセパレータであっても、Pt≧0.8cm3/g、r1≧50%、Tp-Tm>0mmを満たしさえすれば、課題を解決できることを示すものではない。(取消理由通知書「●理由2」2)
〈理由3〉
本件発明1~5は、当業者が甲1発明及び甲6に示される周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本件発明に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
本件発明6及び8~10は、当業者が甲1発明、甲2に記載された技術及び甲6に示される周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本件発明に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものである。
(取消理由通知書「●理由3」)
第7 理由1について
取消理由通知書で通知した理由1について判断する。
1 理由1、1-1について
本件発明における細孔容積の測定の実施可能性について、以下のように判断する。
(1)水銀圧入法は、固体表面に存在する細孔容積を測定する方法として周知のものであり、水銀の接触角が90°を超えることに起因して、細孔に接触する水銀が表面張力により細孔から押し出される方向に力が働くことを利用するものである。
水銀圧入法による測定は、試料の入った容器内を真空排気したのちに水銀を満たし、水銀にかける圧力を連続的に増加させながら、細孔への水銀侵入量を検出して、試料表面の細孔の大きさとその体積を測定するものである(乙2)。
そうすると、本件発明において水銀圧入法によりセパレータの細孔容量を測定する際は、セパレータの全周から均等に水銀による圧力が掛かるため、細孔内に存在する造孔剤(オイル)が水銀により押し出されることはないと解される。
(2)仮に、水銀圧入法による測定によって、細孔内に存在する造孔剤(オイル)の一部が水銀により押し出されることがあったとしても、それは誤差として扱うべきである。
そもそも、水銀圧入法自体が、正確な細孔容積を測定できるものではない。水銀圧入法は、細孔が円筒であることを仮定し、この仮定の下で水銀の圧力をP、細孔径をD、水銀の接触角をθ、水銀の表面張力をσとしたとき、
PD=-4σcosθ (Washburn式)
なる式により、水銀を細孔に押し込む力(PD)と、細孔から水銀を押し出す力(-4σcosθ)とが釣り合うとして、圧力Pの下で孔径が-4σcosθ/P以上の孔に水銀が侵入するものとみなし、細孔容積分布を測定するものである。しかしながら、現実の細孔は円筒ではないため、測定結果には細孔の形状の違いによる誤差が当然に含まれ、この誤差は、水銀圧入法において避けられないものである。
そして、前記(1)のとおり、セパレータの全周から均等に圧力を受けている状態においては、仮に、水銀により細孔内の造孔剤(オイル)が押し出されて誤差が生じるとしても、押し出される造孔剤(オイル)の量は微量であり、それに起因する誤差は、細孔を円筒であると仮定したことにより生じる誤差よりも小さくなると予想される。
(3)本件発明は、「水銀圧入法により測定され」た細孔容積Pt及びP1(【0022】)に基づいて、本件発明を特定し、その効果を評価しているのであるから、水銀圧入法による細孔容積の測定の際に前記(2)のような測定誤差があったとしても、その誤差込みで、本件発明は実施可能であるというべきである。
(4)これに関し、申立人は、以下の主張1-1-1及び1-1-2を主張するところ、これら主張についての判断は、以下のア及びイのとおりである。
主張1-1-1 乙1や乙2の水銀圧入法の測定方法の説明は、測定対象として、乾燥している備長炭などの細孔中に気体(空気)のみが存在する試料に対しては当てはまるかもしれないが、本件発明のように細孔中に造孔剤(オイル)が残存している試料としてのセパレータについては、あてはまらない。
圧力をかけて細孔中に水銀を押し込むことによって、細孔中に気体(空気)のみが存在する試料では気体(空気)のみが圧力に応じて押し出されることになるが、造孔剤(オイル)が残存しているセパレータでは、圧力に応じて造孔剤(オイル)が押し出されることになる。(申立人意見書2頁)
主張1-1-2 細孔中に造孔剤(オイル)が残存している状態のセパレータの細孔容積(細孔径分布)の測定に水銀圧入法を適用することには問題がある。この点、甲7には、細孔径分布測定における手法が水銀圧入法の場合の「制約」の項に、「絶乾」と記載されている。これは、水銀圧入法の測定原理において、水銀の接触角と表面張力が関係するが、この接触角と表面張力は、試料表面と水銀の間に働く力とその方向に関するものであるので、試料表面が濡れていた場合などには、その接触角や表面張力の適切な値を設定することができず、測定値に誤差が生ずることとなるからである。すなわち、細孔中に造孔剤(オイル)が残存している状態のセパレータを対象とした細孔径分布の測定に対して水銀圧入法を適用することは、これらの測定原理について理解不足であるということを示すものである。そして、このような誤差を含んだ不確かな測定値に基づく全細孔容積の数値を限定する発明特定事項を有する本件発明を、当業者は実施することができない。(申立人意見書2~3頁)
ア 申立人の主張1-1-1について、水銀圧入法による測定は、試料の入った容器内を真空排気したのちに水銀を満たす(乙2)ものであるから、測定時には気体(空気)はなく、この点において申立人の主張は前提において失当である。
それはおくとしても、細孔が一方にしか開口していない場合には、細孔内部の造孔剤(オイル)は水銀によって押し込まれるに過ぎず、押し出されることはないと予想される。また、細孔が貫通孔である場合でも、圧力が均等に掛かっているため、やはり、細孔内部の造孔剤(オイル)が押し出されることはないと予想される。
よって、申立人の主張1-1-1は採用できない。
イ 申立人の主張1-1-2について、甲7の「絶乾」との記載は、水分がないことを条件としているに過ぎず、オイルの有無についての条件とは解されないため、失当である。
それはおくとして、仮に、申立人が主張するような接触角や表面張力に対する影響があったとしても、本件の発明の詳細な説明中で評価されたセパレータのオイル量は9~13%に過ぎない(【0131】【表1】)ことから、オイルによる接触角や表面張力に対する影響に起因する誤差は、細孔を円筒であると仮定したことにより生じる誤差よりも小さくなると予想されるし、本件発明は、そのような誤差込みで特定かつ評価されたものであるから、該誤差は本件発明の実施可能性を左右しない。
よって、申立人の主張1-1-2は採用できない。
(5)以上のとおりであるから、理由1、1-1には理由がない。
2 理由1、1-2について
本件発明におけるセパレータの生産の実施可能性について、以下のように判断する。
(1)本件の発明の詳細な説明には、ベースポリマー及び造孔剤等の物性がどのように細孔の比率に影響するかについての詳細な説明はない。
しかしながら、甲6に示されるように(以下の第9、5(8))、細孔の総累積体積が約1.152cm3/gであり、総累積体積に対する孔径0.1~10μmの細孔容積の比率が50%以上であるセパレータが存在していたことに鑑み、加えて、乙3~乙6に示されるように多孔質のセパレータを製造する技術が多種存在することに鑑みると、本件発明に属するような細孔径分布を有するセパレータを生産することは、可能であったと認められる。
(2)0.03μm以下の孔径を有する第2細孔の比率r2に関する発明は、本件訂正により削除されたので、比率r2に関する実施可能要件違反はない。
(3)これに関し、申立人は、発明の詳細な説明の【0085】、【0086】及び【0090】に比率r2に関する記載があることを根拠として、本件発明の発明者らは、本件発明のセパレータに、比率r1及び比率r2の合計が100%であるセパレータが含まれていると認識していたものと認められ、そのように認識していたのであるのならば、不合理性は解消するものではない、と主張する。(申立人意見書4~5頁)
しかしながら、特許権者が細孔比率r2の数値が誤記である旨を主張し(特許権者意見書11頁)、本件の特許請求の範囲及び【0120】、【0130】、【0131】及び【0135】から比率r2についての記載を削除する本件訂正を行ったことから、本件訂正後の本件発明は、比率r2を発明特定事項とするものを含まないと解されるので、申立人の主張は採用できない。
(4)以上のとおりであるから、理由1、1-2には理由がない。
3 理由1についての小括
以上によれば、理由1には理由がなく、他に本件の発明の詳細な説明が本件発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載されていないとする理由もないので、本件発明に係る特許は、特許法36条4項1号に規定する要件を満たした特許出願に対してされたものと認められる。
第8 理由2について
取消理由通知書で通知した理由2について判断する。
1 理由2、2-1について
理由2、2-1は、理由1と軌を一にするものであるから、前記第7と同様に、理由2、2-1には理由がない。
2 理由2、2-2について
特許請求の範囲の記載がいわゆるサポート要件に適合するか否かは、特許請求の範囲と発明の詳細な説明の記載とを対比し、特許請求の範囲に記載された発明が、発明の詳細な説明に記載された発明で、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否か、また、その記載や示唆がなくとも当業者が出願時の技術常識に照らし当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものであるか否かを検討して判断すべきものである。
(1)本件発明の課題は、発明の詳細な説明の「特許文献1のように、セパレータの側端部に厚肉部を設けると、厚肉部の突き刺し強度を高めることができる。しかし、セパレータの抵抗が上昇し、CCA(コールドクランキング電流)性能が低下することが明らかとなった。」(【0007】)との記載に鑑みれば、側端部における突き刺し強度の向上と、CCA性能の低下の抑止との両立にあると認められる。
(2)発明の詳細な説明の「セパレータの側端部に厚肉部を設けると、厚肉部の突き刺し強度を高めることができる。」(【0007】)との記載によれば、側端部における突き刺し強度の向上は、側端部の厚みを厚くすることにより達成されると解される。このことは、一般に厚みを厚くするほど突き刺し強度が増すという社会通念とも整合する。
(3)他方、発明の詳細な説明の「主要部に比べて縁部の厚みを大きくしても、充放電反応への影響はほとんどないと考えられていた。」(【0012】)との記載、及び、「ところが、本発明者らは、セパレータの縁部の厚みを主要部の厚みよりも大きくしても、セパレータの抵抗が大きくなり、CCA性能が低下する場合があることを見出した。」(【0013】)との記載によれば、縁部(側端部)の厚みを厚くすることにより、CCA性能が低下することを本件発明の発明者は発見したと解される。
そして、発明の詳細な説明の「細孔容積Ptが0.8cm3/g未満では、縁部の厚みTpを主要部の厚みTmよりも大きくし、第1細孔の比率r1を50体積%以上としても、CCA性能の低下を抑制する効果はほとんど得られない。つまり、細孔容積Ptが0.8cm3/g未満の場合と0.8cm3/g以上の場合とでは、TpをTmより大きくすることおよび第1細孔の比率r1を制御することがセパレータの性能に及ぼす挙動は大きく異なる。上記のようなCCA性能の低下抑制効果は、細孔容積Ptを0.8cm3/g以上とすることにより初めて得られる効果である。」(【0018】)との記載、及び、「比率r1が50体積%未満の場合には、TpをTmより大きくし、細孔容積Ptを0.8cm3/g以上としても、CCA性能の低下を抑制することは困難である。」(【0082】)との記載によれば、CCA性能の低下の抑制は、Pt≧0.8cm3/gかつr1≧50%とすることにより達成されると解される。
(4)前記(2)及び(3)によれば、本件発明の課題の解決は、縁部の厚みを厚くするとともに、Pt≧0.8cm3/gかつr1≧50%とすることにより達成されると解される。
そして、実施例では、縁部の厚みが主要部よりも厚く(Tp-Tm>0mm)、Pt≧0.8cm3/gかつr1≧50%のもの(鉛蓄電池E1~E20のセパレータ)は、そのCCA性能が1.2~1.7であり、突き刺し強度が1.3~2.4となっているため、実際に本件発明の課題が解決されたことが示されている。
(5)本件発明は、「前記一対の縁部の厚みTpが、前記主要部の厚みTmより大きく」(発明特定事項B)、「全細孔容積が、0.8cm3/g以上2.0cm3/g以下であり」(発明特定事項C)、「比率r1が50%以上であ」る(発明特定事項F)との特定がされていることから、課題を解決するための手段、すなわち、縁部の厚みを厚くするとともに、Pt≧0.8cm3/gかつr1≧50%(前記(4))を満たしていると解される。
ここで、CCA性能は、セパレータの材質にも一定程度影響されると予想されるところ、本件発明は、「ポリオレフィンを含む」(発明特定事項G)ことが特定されており、実施例で評価されたセパレータの材質(【0120】)に準じた特定がなされている。
したがって、本件発明は、課題を解決できると認識できる範囲のものであると認められる。
(6)これに関し、申立人は、本件発明は、縁部の幅について規定されていないことを指摘した上で、Tp-Tm≧0.05mmで、r1を80%とすることによって、CCA性能をTp-Tm=0の場合と同程度とすることができるのは、鉛蓄電池R6のセパレータのように、各縁部の幅Bは20mmであり、主要部の幅Aは75mmであるセパレータの場合だからであって、例えば、縁部の幅Bが30mmであり、主要部の幅Aが55mmの場合では、単にr1を80%とすることによって、CCA性能をTp-Tm=0の場合と同程度とすることができるのか、当業者には認識できるものではなく、そうすると、主要部と縁部の幅をどのように規定しても、ポリオレフィンを含み(発明特定事項G)、Tp-Tmが0.05~0.25mmであり(発明特定事項C)、Tmが0.15~0.25mmであり(発明特定事項D)、Ptが0.8~2.0cm3/gであり(発明特定事項E)、r1≧50%(発明特定事項F)でありさえすれば、本件発明の課題が解決できると当業者は認識できるものではない、と主張する。(申立人意見書6~7頁)
しかしながら、主要部及び縁部の幅は、CCA性能に有為の影響を与えるとは認められず、申立人の主張は採用できない。以下に詳述する。
発明の詳細な説明の「セパレータの抵抗が上昇し、CCA(コールドクランキング電流)性能が低下することが明らかとなった。」(【0007】)との記載によれば、CCA性能の低下はセパレータの抵抗の上昇に起因すると解される。
ここで、技術常識によれば、セパレータの抵抗は、セパレータの材質が同じであれば、面積に反比例し、厚さに比例する。当該技術常識に鑑みれば、セパレータの抵抗の上昇を抑制するためには、セパレータの厚みを薄くすることや、セパレータの面積を大きくすることに思い至るが、発明の詳細な説明の「CCA性能の低下が抑制されるのは、セパレータの細孔容積Ptおよび第1細孔の比率r1を制御することで、セパレータの細孔構造が最適化されて、セパレータの抵抗の増加が抑制されたためと考えられる。」(【0017】)との記載によれば、本件発明の課題におけるCCA性能の低下の抑制は、セパレータの物性(細孔構造)を制御することによるセパレータの抵抗の増加を抑制すること、換言すれば、セパレータの抵抗率の上昇を抑制することにあると解される。このことは、発明の詳細な説明における実施例のセパレータが、全て同じ寸法であり、その面積及び厚さを変化させずにCCA性能が細孔容積に依存することを明らかにしようとしていることとも整合する。
CCA性能の低下を抑制することが、セパレータの抵抗率の上昇を抑制することに基づくとの上記解釈に基づけば、セパレータの主要部や縁部の幅はセパレータの抵抗率に何ら影響するものではないから、これらが課題解決手段であると認めることはできない。
よって、本件発明は、主要部及び縁部の幅によらず、課題を解決できると認識できる範囲のものであり、申立人の主張は採用できない。
(7)以上のとおりであるから、理由2、2-2には理由がない。
3 理由2についての小括
以上によれば、理由2には理由がなく、他に本件発明が発明の詳細な説明に記載したものではないとする理由もないので、本件発明に係る特許は、特許法36条6項1号に規定する要件を満たした特許出願に対してされたものと認められる。
第9 理由3について
取消理由通知書で通知した理由3について判断する。
1 甲1の記載
甲1には、以下の記載がある。なお、下線は、甲1発明の認定に使用する部分を示すために、当審で付した。
(1)「【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、浸透短絡を抑制することを目的とする。」
(2)「【0018】
<実施形態1>
本発明の実施形態1を図1ないし図12によって説明する。
1.鉛蓄電池10の構造
鉛蓄電池10は、自動車などの車両用、具体的にはアイドリングストップ車用であり、例えば、車両のエンジンルーム内やラゲッジスペース内に設置され、車両に電力を供給する。鉛蓄電池10は、図1から図5に示すように、電槽20と、極板群30と、一対の端子部60P、60Nを有する蓋部材50を備える。尚、以下の説明において、端子部60P、60Nの並び方向をX方向とし、端子部60P、60Nの並び方向に対して直交する方向(電槽20の前後方向)をZ方向とする。そして、Z方向における端子部60P、60Nが設けられた側を「前側」、その反対側を「後側」とする。また、電槽20の高さ方向(上下方向)をY方向とする。
【0019】
電槽20は合成樹脂製である。電槽20は4枚の外壁21A~21Dと底壁22を有し、上面が開放した箱型をなす。電槽20の内部は、図3に示すように隔壁23により複数のセル室25に仕切られている。セル室25は、電槽20の横幅方向(図3のX方向)に6室設けられており、各セル室25には、流動可能な電解液と共に極板群30が配置されている。
【0020】
極板群30は、図4に示すように、正極板30Pと、負極板30Nと、両極板30P、30Nを仕切るセパレータ40とから構成されており、セル室25の並び方向(X方向)に沿って配列されている。各極板30P、30Nは、格子体に活物質が充填されて構成される。尚、正極板30Pの活物質の主成分は二酸化鉛、負極板30Nの活物質の主成分は鉛である。」
(3)「【0030】
2.セパレータ40のリブ構造と浸透短絡の抑制
セパレータ40は、ポリオレフィン製(本実施形態では、ポリエチレン製)であり、かつ微孔性のシートであり、ベース部42と、正極リブ43と、負極リブ45と、側端部47を備えている。ベース部42の厚さは、概ね0.2mm程度である。ベース部42は、扁平な板形状をしている。ベース部42は、極板30P、30Nと相対する部位であり、側端部47はベース部42のZ方向両側に位置する部分である。
【0031】
セパレータ40は、図6、図7に示す中心線Mで、2つ折りした後、Z方向の両側の側端部47を圧着(メカニカルシール)することで、袋状に加工して使用される。具体的には、図5に示すように、セパレータ40は、袋の内部に負極板30Nを収容しつつ、正極板30Pと交互に配列して使用される。そして、負極板30Nの両端は、X方向(負極板30Nの厚さ方向)から見て、セパレータ42の側端部47の幅内に位置している。尚、図6はセパレータ40の展開図(外面側)、図7はセパレータ40の展開図(内面側を示す)である。」
(4)「【0037】
3.セパレータの端部構造と浸透短絡の抑制
また、セパレータ40は、ベース部(図11に示す境界線Lの右側の部位)42と側端部(図11に示す境界線Lの左側の部位)47の厚さが異なっており、側端部47をベース部42よりも厚くしている。すなわち、側端部47の全体が本発明の「厚肉部」となっている。具体的には、図11に示すように、ベース部42の板厚t1は「一例として、約0.2mm」であるのに対して、側端部47の板厚t2は「一例として、約0.3mm」である。また、側端部47は、ベース部42よりも袋の外側(正極板30P側)に向かって厚い形状となっている。すなわち、ベース部42と側端部47の内面42B、47Bは連続した平面であり、ベース部42と側端部47の外面42A、47Aは段差を有している。側端部47をベース部42よりも厚くすることで、負極板30Nの両端で浸透短絡が発生することを抑制することが出来る。」
(5)図11
[図:0001424589000003.jpg]
2 甲1発明の認定
前記1の記載によれば、甲1には、以下の甲1発明が記載されていると認められる。なお、後の参照の便宜のため、甲1発明を以下のように分説し、「構成a」のようにして参照する。
〈甲1発明〉
a 電槽20と、極板群30とを備えるアイドリングストップ車用の鉛蓄電池10であって、(【0018】)
b 電槽20の内部は、複数のセル室25に仕切られ、各セル室25には、流動可能な電解液と共に極板群30が配置され、(【0019】)
c 極板群30は、正極板30Pと、負極板30Nと、セパレータ40とから構成され、(【0020】)
d セパレータ40は、ポリオレフィン製であり、かつ微孔性のシートであり、ベース部42と、側端部47を備え、(【0030】)
e ベース部42の厚さは、0.2mm程度であり、(【0030】)
f セパレータ40は、Z方向の両側の側端部47を圧着し、(【0031】)
g 側端部47をベース部42よりも厚くし、ベース部42の板厚t1は約0.2mmであるのに対して、側端部47の板厚t2は約0.3mmである、(【0037】)
h 鉛蓄電池10。
3 甲2の記載
甲2には、以下の記載がある。
(1)「【0004】
近年、始動停止車両アプリケーションやマイクロハイブリット車両アプリケーションにおける高サイクル要求に対応できるように強化型充填式バッテリー(EFB)が開発された。…(略)…」
(2)「【0007】
このように、EFBアプリケーションに使用される鉛酸蓄電池のサイクル寿命を通じて永続的な湿潤性を発揮する、低コストで微小抵抗性を備えたシリカ充填ポリエチレンセパレータの必要性が継続して存在している。」
(3)「【0021】
そのため、界面活性剤を簡単に除去したり洗い流したりすることができないように、セパレータウェブのポリマーマトリクスに「結合した」界面活性剤を選択することが好ましい。これにより、セパレータウェブの湿潤性が維持される。最終的に、細孔の数及び細孔に占められる体積(すなわち、気孔率)と、セパレータウェブの孔径分布とを制御することにより、電気(イオン)抵抗率の更なる低減が実現される。」
(4)「【実施例1】
【0026】
以下の材料をバッチミキサに入れて混合した。
44kgのUHMWPE(U090、KPIC)
120kgの沈殿シリカ(1165MP製粉、Rhodia)
75kgの再生ペレット(65%オイル+25%シリカ+10%UHMWPE)
3.23kgの着色剤(50%Cブラック+50%HDPE)
0.58kgの抗酸化物質(ヒンダードフェノール)
0.58kgの潤滑油(Ca/Znステアリン酸塩)。
【0027】
次に、混合された上記材料に、69.6ガロン(263.4リットル)のNytex820オイルを撹拌して散布し、…(略)…追加のオイルをこの押出機で制御して加え、最終的な含油率をおよそ66wt%とした。…(略)…続いて、油入シートをトリクロロエチレン(TCE)で抽出した後乾燥させ、最終的なセパレータを形成した。乾燥過程の間、カーボン層回復システムに向かって流れるTCE蒸気の量を最小化するために溶媒の大部分を濃縮して液体にすることができるように、スチームが乾燥機のTCEを蒸発させるために使用された。」
(5)「【実施例4】
【0031】
5.3kgのドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(Rhodacal(登録商標)DS-10、Rhodia社製)を配合組成に加えた点を除いて、実施例1で概説した配合組成及び処理条件に従いセパレータを製造した。
【実施例5】
【0032】
乾燥機にスチームを送ることなくTCEをシートから蒸発させることを許容した点を除いて、実施例4で概説した配合組成及び処理条件に従いセパレータを製造した。」
(6)「【0042】
対照的に、図3に示すように、水銀圧入法(AutoPore IV 9500、Micromeritics社製)は、最終的なセパレータの気孔率及び孔径分布に対する乾燥過程の影響を鮮明に明示する。気孔率はそれぞれのセパレータサンプルの分布曲線における統合領域によって表されており、孔径分布は横座標に示されている。スチームが乾燥機に導入された状態で製造されたサンプルの場合、2つの曲線は殆ど重複しており、このことは、DS-10界面活性剤の存在に依存することなく(実施例1及び実施例4)、気孔率の程度と孔径分布とが類似したものであることを示している。乾燥過程でスチームを使用しない場合(実施例5)、気孔率の程度が増大し、また孔径分布の平均値がより大きなものとなる。図3において、スチームを導入して製造されたセパレータサンプルの水銀圧入曲線は、直径が0.1μmから5μmまでの間の比較的大きな細孔が、DS-10界面活性剤を入れて製造されたサンプルの総気孔率の35%、及びそれを入れずに製造されたサンプルの総気孔率の32%をそれぞれ占めていることを明示している。対して、スチームを導入せずに製造されたセパレータサンプルでは、同じ直径範囲の比較的大きな細孔のサンプルの総気孔率は54%である。…(略)…
【0043】
図3に示す上述の鉛酸バッテリーセパレータの電気抵抗の値は、Battery Council International(BCI)試験方法(BCI-03B)に従い、Palico測定システム(Caltronics社製)を用いて測定された。…(略)…その後、これらの値を個々のサンプルのバックウェブ厚み(センチメートル(cm)で表す)で除して、図4に示す電気抵抗率(オームセンチメートル(ohm-cm))を得た。このデータは、単にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの界面活性剤を加える配合組成(実施例4)によって電気抵抗率が低下することを明示しているが、これと同じ界面活性剤と「スチーム無し」乾燥(実施例5)とを組み合わせた場合により大きな低下が達成される。…(略)…」
(7)図3
[図:0001424589000004.jpg]
(8)図4
[図:0001424589000005.jpg]
4 甲2技術の認定
甲2の【0042】及び【0043】は、実施例1、実施例4(実施例1にDS-10界面活性剤を配合したもの)及び実施例5(スチーム無しである以外は実施例4と同様のもの)を比較することにより、比較的大きな細孔の気孔率が総気孔率の30%台の実施例1及び4よりも、総気孔率の54%である実施例5が、電気抵抗のより大きな低下が達成されることを説明している。これは、「細孔の数及び細孔に占められる体積(すなわち、気孔率)と、セパレータウェブの孔径分布とを制御することにより、電気(イオン)抵抗率の更なる低減が実現される」(【0021】)ことの具体例であると解される。
そうすると、前記3の記載から、甲2には、実施例5として次の技術(以下「甲2技術」という。)が記載されていると認められる。
〈甲2技術〉
始動停止車両アプリケーションのための強化型充填式バッテリー(EFB)に使用される鉛酸蓄電池のシリカ充填ポリエチレンセパレータであって、(【0004】、【0007】)
低コストで微小抵抗性を備えたシリカ充填ポリエチレンセパレータを実現するために、細孔の数及び細孔に占められる体積(すなわち、気孔率)と、セパレータウェブの孔径分布とを制御することにより、抵抗率の更なる低減が実現し、(【0007】、【0021】)
界面活性剤と「スチーム無し」乾燥とを組み合わせた場合に、電気抵抗率のより大きな低下が達成され、(【0043】)
スチームを導入せずに製造されたセパレータサンプルでは、直径が0.1μmから5μmまでの間の比較的大きな細孔が、総気孔率の54%である、(【0042】)
シリカ充填ポリエチレンセパレータ。
5 甲6の記載
甲6には、以下の記載がある。なお、当審訳は、甲6の日本語ファミリである甲3を参考にして当審で作成したものであり、下線は、後述の甲6技術の認定に使用する部分を示すために、当審で付した。
(1)「[0002] …(略)… In addition, disclosed herein are methods, systems, and battery separators for enhancing battery life, reducing water loss, reducing internal resistance, increasing wettability, reducing acid stratification, improving acid diffusion, improving cold cranking amps, improving uniformity, or any combination thereof in at least enhanced flooded batteries. …(略)…」
(当審訳:
[0002] …(略)…更に、本明細書に開示されるのは、少なくとも強化型液式電池において、電池寿命を延長し、水損失を低減し、内部抵抗を低減し、湿潤性を増大し、酸層化を低減し、酸拡散を改善し、CCAを改善し、均一性を改善し、又はそれらの組み合わせを提供するための方法、システム、及び電池セパレータである。…(略)…)
(2)「[0005] An EFB battery with increased discharge rate and cold cranking amperes or amps ("CCA") would be able to displace AGM batteries. It is known that cold cranking amps are correlated with the internal resistance of the battery. It is therefore expected that lowering internal resistance of an enhanced flooded battery will increase the cold cranking amps rating. As such, there is a need for new battery separator and/or battery technology to meet and overcome the challenges arising from current lead acid battery systems, especially to lower internal resistance and increase cold cranking amps in enhanced flooded batteries.」
(当審訳:
[0005] 放電率及びコールド・クランキング・アンペア又はアンプ(CCA)を増大させたEFB電池は、AGM電池に取って代わることができるであろう。CCAは電池の内部抵抗に相関することが知られている。従って、強化型液式電池の内部抵抗を低下させるとCCA定格が増大することが予想される。このため、現在の鉛蓄電池システムで発生する問題に対処し克服する、特に、強化型液式電池において内部抵抗を低減させると共にCCAを増大させる、新しい電池セパレータ及び/又は電池技術が必要とされている。)
(3)「[0007] …(略)… In accordance with at least certain embodiments, the present disclosure or invention is directed to novel or improved battery separators, flooded lead acid battery separators, or enhanced flooded battery separators for automobile applications, for idle start stop ("ISS") batteries, for batteries with high power requirements, such as uninterrupted power supply ("UPS") or valve regulated lead acid ("VRLA"), and/or for batteries with high CCA requirements, and/or improved methods of making and/or using such improved separators, cells, batteries, systems, and/or the like. …(略)…」
(当審訳:
[0007] …(略)…少なくともいくつかの実施形態によれば、本開示又は発明は、自動車用途のための、アイドルスタートストップ(「ISS」)電池のための、無中断電源(「UPS」)又は制御弁式鉛蓄電池(「VRLA」)のような高出力要求の電池のための、及び/又は、高CCA要求の電池のための、新規の又は改良された電池セパレータ、液式鉛蓄電池セパレータ、又は強化型液式電池セパレータ、及び/又は、そのような改良されたセパレータ、セル、電池、システム等を作製及び/又は使用する改良された方法を対象とする。…(略)…)
(4)「[0009] In accordance with at least certain selected embodiments, a microporous separator with increased porosity, or a separator with a different pore structure whose porosity is not significantly different from a known separator, and/or decreased thickness is provided. …(略)…」
(当審訳:
[0009] 少なくともいくつかの選択された実施形態によれば、多孔率が増大した微孔性セパレータ、又は、既知のセパレータと多孔率に大きな差がない異なる孔構造を有する及び/又は低減した厚さを有するセパレータが提供される。…(略)…)
(5)「[0016] In addition, the present disclosure provides improved enhanced flooded lead acid batteries comprising one or more improved battery separators for an enhanced flooded battery, which separator combines for the battery the desirable features of decreased acid stratification, lowered voltage drop (or an increase in voltage drop durability), and increased CCA, in some instances, more than 8%, or more than 9%, or in some embodiments, more than 10%, or more than 15%), increased CCA. Such an improved separator may result in an enhanced flooded battery whose performance matches or even exceeds the performance of an AGM battery. Such low electrical resistance separator may also be treated so as to result in an enhanced flooded lead acid battery having reduced water loss.」
(当審訳:
[0016] 更に、本開示は、強化型液式電池のための1つ以上の改良された電池セパレータを含む改良された強化型液式鉛蓄電池を提供する。このセパレータは、電池のため、酸層化の低減、電圧降下の低減(又は電圧降下耐久性の増大)、CCAの増大という望ましい特徴を組み合わせる。いくつかの例においてCCA増大は、8%超、又は9%超、又はいくつかの実施形態では10%超、又は15%超である。このような改良されたセパレータによって、性能がAGM電池の性能に匹敵するか又はそれよりも優れている強化型液式電池が得られる。このような低電気抵抗セパレータは、水損失の低減した強化型液式鉛蓄電池を得るように処理することも可能である。)
(6)「Composition
[0055] The inventive separator is preferably a porous membrane made of natural or synthetic materials, such as polyolefin, polyethylene, polypropylene, phenolic resin, PVC, rubber, synthetic wood pulp (SWP), glass fibers, synthetic fibers, cellulosic fibers, or combinations thereof, more preferably a microporous membrane made from one or more thermoplastic polymers. …(略)…」
(当審訳:
組成
[0055] 本発明のセパレータは、好ましくは、ポリオレフィン、ポリエチレン、ポリプロピレン、フェノール樹脂、PVC、ゴム、合成木材パルプ(SWP)、ガラス繊維、合成繊維、セルロース繊維、又はそれらの組み合わせ等の天然材料の又は合成材料で作製された多孔性膜であり、更に好ましくは、1つ以上の熱可塑性ポリマーで作製された微孔性膜である。…(略)…)
(7)「[00113] FIG. 30 depicts the pore diameter distribution of an inventive embodiment separator. …(略)…」
(当審訳:
[00113] 図30は、本発明の実施形態のセパレータの孔径分布を示す。…(略)…)
(8)FIG.30
[図:0001424589000006.jpg]
(当審訳:
[図:0001424589000007.jpg]
)
FIG.30によれば、細孔の総累積体積は1152.043mm3/g≒1.152cm3/gであり、孔径10μmよりも大きな細孔の体積はほぼ0であり、孔径0.1μm以上の細孔の累積体積は、600mm3/g=0.6cm3/gよりも確実に大きいと解される。
そうすると、細孔の総累積体積に占める孔径0.1~10μmの細孔の累積体積の割合は、50%よりも大きいと解される。
6 甲6技術の認定
以下では、甲6に記載された技術(以下「甲6技術」という。)を認定するとともに、甲6技術の周知性について検討する。
(1)甲6技術
前記5の記載によれば、甲6技術は、次のとおりと認められる。
〈甲6技術〉
アイドルスタートストップ(ISS)電池のための強化型液式鉛蓄電池セパレータであって、([0007]、[0016」)
セパレータは、ポリオレフィンで作製された多孔性膜であり、微孔性膜であり、([0055])
細孔の総累積体積は1.152cm3/gであり、細孔の総累積体積に占める孔径0.1~10μmの細孔の累積体積の割合は、50%よりも大きい、(FIG.30)
セパレータ。
(2)甲6技術の周知性
以下のア及びイのとおり、当審では、甲6技術が周知技術であるとは認めない。
ア ポリオレフィンで作成された多孔性膜のセパレータであって、細孔の総累積体積が0.8~2.0cm3/gであり、細孔の総累積体積に占める孔径0.1~10μmの細孔の累積体積の割合が50%以上のものは、甲6以外に示されていない。
甲2は、細孔の総累積体積に占める直径が0.1~5μmの細孔の累積体積の割合が54%のポリエチレンセパレータである甲2技術を開示するが、甲2には、細孔の総累積体積が開示されてない。甲2は水銀圧入曲線として図3を開示するものの、図3には総累積体積は明示されておらず、かつ、図3から総累積体積を正確に読み取ることはできない。
その他の証拠にも、細孔の総累積体積が0.8~2.0cm3/gであり、細孔の総累積体積に占める孔径0.1~10μmの細孔の累積体積の割合が50%以上のセパレータは開示されておらず、そのようなセパレータが技術常識であるとも認められない。
したがって、甲6技術は周知であったと認めることはできない。
イ これに関し、申立人は、次のように主張する。すなわち、甲6の出願人は、セパレータを製造販売する国際的に有名なダラミック社であり、この分野の当業者は、特に、国際的に有名なダラミック社が出願した発明については、発明を確認することが当然であるから、当業者であれば甲6技術について当然のように知っているはずであり、周知技術に相当する旨(申立人意見書9頁)、主張する。
しかしながら、出願人又は発明者の著名性と、技術の周知性は無関係である。出願が公開された事実は公知性を示すにとどまり、その出願人が著名だからといって、公開された当該発明が直ちに周知であるということはできない。
特許・実用新案 審査基準、第III部第2章第2節「2.進歩性の判断に係る基本的な考え方」の注1には、「ここで、「周知技術」とは、その技術分野において一般的に知られている技術であって、例えば、以下のようなものをいう。
(i) その技術に関し、相当多数の刊行物…(略)が存在しているもの
(ii) 業界に知れ渡っているもの
(iii) その技術分野において、例示する必要がない程よく知られているもの」との指針が示されており、申立人の主張は、甲6技術が該指針の(ii)に該当する旨を主張するものと解されるが、鉛蓄電池の当業者のほとんどがダラミック社の全ての出願内容を公開後直ちに知悉するに至っていることは立証されていないのだから、ダラミック社の出願が公開されたことをもってその内容が業界に「知れ渡っている」とまでいうことはできない。
したがって、申立人の主張は採用できない。
7 本件発明1と甲1発明との対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、以下のとおりである。
(1) 発明特定事項Gについて
事案に鑑み、先に発明特定事項Gについて対比する。
発明特定事項Gは、「ポリオレフィンを含む、液式鉛蓄電池用セパレータ。」というものである。
甲1発明の「鉛蓄電池10」が備える「電槽20」(構成a)の「各セル室25には、流動可能な電解液」が配置されている(構成b)から、甲1発明の「鉛蓄電池10」は、本件発明1の「液式鉛蓄電池」に相当する。
甲1発明の「セパレータ40」は、「極板群30」を構成するものであり(構成c)、「極板群30」は「鉛蓄電池10」に備わる(構成a)から、本件発明1の「液式鉛蓄電池用セパレータ」に相当する。
甲1発明の「セパレータ40」は、「ポリオレフィン製であ」る(構成d)から、ポリオレフィンを含む。
そうすると、本件発明1と甲1発明の「セパレータ40」(以下、単に「甲1発明」と略すことがある。)とは、「ポリオレフィンを含む、液式鉛蓄電池用セパレータ」である点で一致する。
(2)発明特定事項Aについて
発明特定事項Aは、「主要部と、前記主要部の第1方向における両端に位置する一対の縁部とを有し、」というものである。
甲1発明の「ベース部42」及び「側端部47」(構成g)は、それぞれ本件発明1の「主要部」及び「縁部」に相当し、甲1発明の「Z方向」(構成f)は、本件発明1の「第1方向」に相当する。
甲1発明の「セパレータ40」は、「ベース部42と、側端部47を備え」(構成d)、「側端部47」は「Z方向の両側」にある(構成f)ので、甲1発明の「側端部47」は、本件発明1の「前記主要部の第1方向における両端に位置する一対の縁部」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、「主要部と、前記主要部の第1方向における両端に位置する一対の縁部とを有」する点で一致する。
(3)発明特定事項Bについて
発明特定事項Bは、「前記一対の縁部の厚みTpが、前記主要部の厚みTmより大きく、」というものである。
甲1発明は、「側端部47をベース部42よりも厚くし」ている(構成g)から、本件発明1と甲1発明とは、「前記一対の縁部の厚みTpが、前記主要部の厚みTmより大き」い点で一致する。
(4)発明特定事項Cについて
発明特定事項Cは、「前記縁部の厚みTpと前記主要部の厚みTmとの差は、0.05mm以上0.25mm以下であり、」というものである。
甲1発明の「ベース部42の板厚t1」及び「側端部47の板厚t2」(構成g)は、それぞれ本件発明1の「前記主要部の厚みTm」及び「前記一対の縁部の厚みTp」に相当する。
甲1発明において、t1は約0.2mmであり、t2は約0.3mmである(構成g)から、t2とt1との差は、約0.1mmである。
そうすると、本件発明1と甲1発明とは、「前記縁部の厚みTpと前記主要部の厚みTmとの差は、0.05mm以上0.25mm以下であ」る点で一致する。
(5)発明特定事項Dについて
発明特定事項Dは、「前記主要部の厚みTmが、0.15mm以上0.25mm以下であり、」というものである。
甲1発明において、t1は約0.2mmである(構成g)から、本件発明1と甲1発明とは、「前記主要部の厚みTmが、0.15mm以上0.25mm以下であ」る点で一致する。
(6)発明特定事項Eについて
本件発明は、「全細孔容積が、0.8cm3/g以上2.0cm3/g以下であり、」(発明特定事項E)と特定されるのに対し、甲1発明の全細孔容積は不明である点で相違する。
(7)発明特定事項Fについて
本件発明は、「0.1μm以上10μm以下の孔径を有する第1細孔の細孔容積の前記全細孔容積に占める比率r1が50%以上であり、」(発明特定事項F)と特定されるのに対し、甲1発明の比率r1は不明である点で相違する。
(8)一致点・相違点
前記(1)~(7)によれば、本件発明1と甲1発明との相違点は、発明特定事項E及びFにある。
ここで、本件明細書の「細孔容積Ptが0.8cm3/g未満では、縁部の厚みTpを主要部の厚みTmよりも大きくし、第1細孔の比率r1を50体積%以上としても、CCA性能の低下を抑制する効果はほとんど得られない。…(略)…また、第1細孔容積の比率r1が50体積%未満の場合には、TpをTmより大きくし、細孔容積Ptを0.8cm3/g以上としても、CCA性能の低下を抑制することは困難である。」(【0018】)との記載によれば、全細孔容積(細孔容積Pt)と、第1細孔の比率r1と、Tp-Tmの値とに関する3つの条件は、それぞれが独立して奏功するものではなく、3つの条件が一体となって課題を解決するものと解される。
そうすると、発明特定事項E及びFに係る相違点は、一体の相違点として論ずるべきであり、これらを別々の相違点として論ずるのは不適切である。
そうすると、本件発明1と甲1発明の「セパレータ40」との一致点及び相違点は、以下のとおりである。
〈一致点〉
「主要部と、前記主要部の第1方向における両端に位置する一対の縁部とを有し、
前記一対の縁部の厚みTpが、前記主要部の厚みTmより大きく、
前記縁部の厚みTpと前記主要部の厚みTmとの差は、0.05mm以上0.25mm以下であり、
前記主要部の厚みTmが、0.15mm以上0.25mm以下であり、
ポリオレフィンを含む、液式鉛蓄電池用セパレータ。」である点。
〈相違点〉
本件発明1では、「全細孔容積が、0.8cm3/g以上2.0cm3/g以下であ」る(発明特定事項E)とともに、「0.1μm以上10μm以下の孔径を有する第1細孔の細孔容積の前記全細孔容積に占める比率r1が50%以上であ」る(発明特定事項F)のに対し、甲1発明の「セパレータ40」は、細孔の径毎の容積分布が不明であるため、全細孔容積も、比率r1も不明である点。
上記相違点に関し、申立人は、発明特定事項Eに係る相違点を相違点1とし、発明特定事項Fに係る相違点を相違点2としていること(申立書23葉)から、両者を別個の相違点とすることを主張すると解されるが、前述のとおり、これらの相違点は一体のものとして扱われるべきであるから、申立人が主張する相違点は採用できない。
8 相違点についての判断
前記7(8)に示した相違点の容易想到性について判断する。
(1)甲6技術は、上記相違点に係る構成を備える強化型液式鉛蓄電池セパレータである。
そして、甲6には、「強化型液式電池において内部抵抗を低減させると共にCCAを増大させる、新しい電池セパレータ及び/又は電池技術が必要とされている。」([0005])との課題が示されている。
他方、甲6には、「少なくともいくつかの選択された実施形態によれば、多孔率が増大した微孔性セパレータ、又は、既知のセパレータと多孔率に大きな差がない異なる孔構造を有する及び/又は低減した厚さを有するセパレータが提供される。」([0009]、下線は強調のために付した。)との記載があり、多孔率は上記課題を解決する上で必要なものとは位置付けられていない。
そうすると、CCAの増大は蓄電池一般における内在課題であるとしても、甲6に開示される一実施形態に過ぎない甲6技術は、CCAの増大に寄与するものとは認められないから、これを甲1発明のセパレータに適用する動機付けがあるとはいえない。
(2)甲2技術は、要するに、直径が0.1~5μmの細孔の比率が総気孔率の54%あるシリカ充填ポリエチレンセパレータであり、このような構成を界面活性剤と「スチーム無し」乾燥とを組み合わせることによって実現し、電気抵抗率の大きな低下を達成したものと解される。
そして、セパレータの電気抵抗率の低下は、蓄電池一般における内在課題であるといえる。
しかしながら、甲2技術における「総気孔率」(本件発明1における「全細孔容量」と同義と認める。)は明らかではなく、甲1発明に甲2技術を適用したとしても、全細孔容量が0.8~2.0cm3/gの範囲となるとはいえない。
したがって、甲1発明に甲2技術を適用したとしても、相違点に係る構成には到達しない。
(3)その他の証拠にも、甲1発明のセパレータの構成を相違点に係るものとすることについて、開示も示唆もなく、また、相違点に係る構成は技術常識でもないから、相違点に係る構成は、当業者といえども容易に想到し得たものではない。
(4)これに関し、申立人は、以下の主張3-1~3-3を主張するところ、これらの主張についての判断は、以下のア~ウのとおりである。
主張3-1 甲6技術のセパレータの孔径分布は「ポリオレフィン微孔性膜を含む鉛蓄電池のためのセパレータ」の孔径分布を示すものであり、特許権者の主張によれば「0.1~10μmの孔径を有する第1細孔の細孔容積の全細孔容積に占める比率r1が50%以上のものを入手することが可能である」のだから、本件発明1は甲1発明に甲6技術を組み合わせることによって、容易に想到できるものである。(申立人意見書8~9頁)
主張3-2 車載用にも用いられる鉛蓄電池において、「電池の内部抵抗の低減」や「CCAの増大」は、常に、内在する課題であり、また、甲6には、「本明細書に開示されるのは、少なくとも強化型液式電池において、電池寿命を延長し、…(略)…内部抵抗を低減し、…(略)…CCAを改善し、又はそれらの組み合わせを提供するための方法、システム、及び電池セパレータである。」([0002])との記載がある。
ここで、甲1発明の課題である「浸透短絡の発生を抑制する」ことは、「電池寿命の延長」のためであり、甲1発明の課題と甲6技術の課題とは共通するものである。
したがって、甲1発明に甲6技術を適用する動機付けは、当業者には存在する。(申立人意見書9~10頁)
主張3-3 甲1発明は、本件訂正によって追加された本件発明1の発明特定事項C、D及びGを全て備え、本件発明1の要件は、細孔容積の分布を除き甲1に開示されている。
また、特許権者は「第1細孔の比率r1の調節」は当業者であれば容易であり、「0.1μm以上10μm以下の孔径を有する第1細孔の細孔容積の全細孔容積に占める比率r1が50%以上のものを入手することが可能である。」と主張する。
そうであるのなら、本件発明1は、セパレータを製造する材料メーカーから入手したセパレータを解析して、特定の特性を選択し、都合の良い特性の範囲を選択しただけの発見であり、本件発明1の課題は単に後付けの課題であるように、強く推認されるものである。(申立人意見書10~11頁)
ア 申立人の主張3-1について、甲6技術のようなセパレータが入手可能であるとしても、甲1発明に甲6技術を適用することが容易であるとはいえない。
鉛蓄電池のセパレータは種々生産され販売されていると推認されるが、それらの中から、甲6技術のようなセパレータを選んで用いるという選択することは、そのための動機付けがない限り、当業者にとっても容易とはいえない。
そして、甲1発明に甲6技術を適用することに動機付けがないことは、前記(1)のとおりである。
よって、申立人の主張は採用できない。
イ 申立人の主張3-2について、甲6に記載された「電池寿命を延長」すること、「内部抵抗を低減」すること、「CCAを改善」することは、いずれも軌を一にする課題であると解される。すなわち、CCAの改善は、内部抵抗(セパレータの抵抗)の低減により実現されるし、内部抵抗の低減又はCCAの改善がなされれば、電池寿命は延長される。
それに対して、甲1発明の課題である「浸透短絡の発生を抑制する」ことは、甲1の「発明者らは、負極リブを設けたことで、浸透短絡に至るデンドライトの経路が、負極板の正極リブ近傍部ではなく負極板の端になることを突き止めたからこそ、本発明を着想するに至った。」(【0011】)との記載から明らかなように、負極板の端に発生するデンドライトによる短絡を抑制することである。デンドライトによる短絡を抑制することができれば電池寿命が延長されることは確かではあるが、甲1発明による電池寿命の延長と、甲6に開示される電池寿命の延長とは、その機序が異なるため、これらを同一視して両者の課題が共通するということはできない。
したがって、申立人の主張は採用できない。
ウ 申立人の主張3-3については、前記アと同様であり、甲6技術のようなセパレータが入手可能であるからといって、甲1発明に甲6技術を適用することが容易とはいえない。
申立人のいう「セパレータを製造する材料メーカーから入手したセパレータを解析して、特定の特性を選択し、都合の良い特性の範囲を選択しただけの発見」は、本件の発明の詳細な説明に「本発明者らは、セパレータの縁部の厚みを主要部の厚みよりも大きくしても、セパレータの抵抗が大きくなり、CCA性能が低下する場合があることを見出した。」(【0013】)と記載された発見を不可欠とするものである。従来の当業者、すなわち、縁部の厚みを大きくしてもCCA性能の低下はないと認識する当業者には、申立人のいう「都合の良い特性の範囲」を選択することは不可能である。
したがって、申立人の主張は採用できない。
9 本件発明1の進歩性の有無についての小括
前記7及び8のとおりであるから、本件発明1は、当業者が甲1発明及び甲各号証に開示された技術に基づいて、容易に発明をすることができたものとは認められない。
10 本件発明2~6及び8~10の進歩性の有無について
本件発明2~6及び8~10は、本件発明1の発明特定事項を全て備え、さらに別の発明特定事項を備えるものであるから、本件発明2~6及び8~10と甲1発明とを対比すると、少なくとも前記7(8)に示した相違点が存在する。
そして、前記8のとおり、上記相違点に係る構成は当業者が容易に想到し得たものではないから、本件発明1と同様に、本件発明2~6及び8~10は、当業者が甲1発明及び甲各号証に開示された技術に基づいて、容易に発明をすることができたものとは認められない。
11 理由3についての小括
以上によれば、理由3には理由がなく、他に本件発明が容易に発明をすることができたと認める理由はないので、本件発明に係る特許は、特許法29条2項の規定に違反してされたものとは認められない。
第10 申立理由Aについて
前記第9のとおり、本件発明は、いずれも、当業者が甲1発明及び甲各号証に開示された技術に基づいて、容易に発明をすることができたものとは認められないので、甲1発明に対する進歩性欠如を理由とする申立理由Aについても、理由がない。
第11 申立理由Bについて
申立理由Bについて検討する。
1 申立理由B、B-1について
申立理由Bは、前記第4、2に示したB-1とB-2に分けられ、そのうちB-1を再掲すると、次のとおりである。
B-1 「細孔容積Pt」及び「細孔容積P1」の測定は、セパレータ中に含まれる造孔剤(オイル)が残存した状態で測定するのか、造孔剤(オイル)を取り除いた状態で測定するのか、明確ではない。
セパレータ中に含まれる造孔剤(オイル)が残存した状態で測定する場合、圧力が加えられた水銀に押され、セパレータの細孔中に含まれる造孔剤(オイル)の少なくとも一部が細孔の外に漏れ出ることとなるため、得られる「細孔容積Pt」の値や「細孔容積P1」の値には大きな誤差が生じる。
そうすると、いかなる測定方法によれば、「全細孔容積が、0.8cm3/g以上2.0cm3/g以下である」という要件、及び、「0.1μm以上10μm以下の孔径を有する第1細孔の細孔容積の前記全細孔容積に占める比率r1が50%以上である」という要件を充足することができるのか、当業者は認識できるものではない。(申立書32~33葉)
(1)申立人は、「細孔容積Pt」及び「細孔容積P1」の測定は、セパレータ中に含まれる造孔剤(オイル)が残存した状態で測定するのか、造孔剤(オイル)を取り除いた状態で測定するのか、明確ではない旨、主張する。
しかしながら、本件の発明の詳細な説明には、「細孔容積Pt」(本件発明の「全細孔容積」に対応)について、「一般に、残存する造孔剤の量によってセパレータの細孔容積Ptは変化する。セパレータ中に残存する造孔剤が少ないと、セパレータの細孔数は多くなり、…(略)…一方、セパレータ中に残存する造孔剤が多いと、セパレータの細孔数は少なくなり、」(【0081】)との記載があるため、残存する造孔剤の量が少ないと「細孔容積Pt」」は大きくなり、残存する造孔剤の量が多いと「細孔容積Pt」は小さくなると解される。
よって、「細孔容積Pt」は、セパレータ中に造孔剤(オイル)が残存した状態で測定されるものと明確に理解できるため、前記主張は採用できない。
(2)申立理由B、B-1のその余の主張は、取消理由通知書で通知した理由1、1-1(前記第6)と同旨であるため、前記第7、1と同様に、理由がない。
(3)以上によれば、申立理由B、B-1には理由がない。
2 申立理由B、B-2について
申立理由B、B-2は、取消理由通知書で通知した理由1、1-2(前記第6)と同旨であるため、前記第7、2と同様に理由がない。
3 申立理由B、B-3について
申立理由B、B-3は、全細孔容積(Pt)に対する、0.03μm以下の孔径を有する第2細孔の細孔容積(P2)の比率r2に関するものである。
比率r2を発明特定事項とするのは、本件訂正前の請求項7に係る発明のみであったが、前記第5のとおり、請求項7についての特許に対する特許異議の申立ては却下された。
4 申立理由Bについての小括
以上によれば、申立理由Bには、理由がない。
第12 申立理由Cについて
申立理由C、C-1(前記第4、2)は、取消理由通知書で通知した理由2、2-2(前記第6)と同旨であるため、前記第8、2と同様に、理由がない。
申立理由C、C-2は、取消理由通知書で通知した理由2、2-1(前記第6)と同旨であるため、前記第8、1と同様に、理由がない。
したがって、申立理由Cには、理由がない。
第13 申立人のその他の主張について
特許権者は、細孔比率r2及び本件訂正について、次のように主張する。すなわち、「細孔比率r2」の数値は、実際には、第2細孔(0.03μm以下の孔径を有する細孔)の比率ではなく、第1細孔(0.1μm以上10μm以下の孔径を有する細孔)以外の全ての細孔の比率を誤って記載したものであったので、明細書【0120】及び【0130】の「およびr2」との記載、【0131】の表1の「細孔比率r2」の列の全ての項目の記載、及び、【0135】の「また、比率r2が20%以上であることで、より多くのオイルが保持されやすくなったと考えられる。」との記載を削除する訂正をした。(特許権者意見書11頁15行~12頁8行)
1 申立人の主張
申立人は、上記特許権者の主張に関連し、以下を主張する。
〈申立人の主張A〉(申立人意見書5頁19行~6頁5行)
「誤記」とするのであれば、訂正すべきは表1の「細孔比率r2」の列における個々の項目の数値であって、表1の「細孔比率r2」の列そのものではないだろうし、「また、比率r2が20%以上であることで、より多くのオイルが保持されやすくなったと考えられる。」(【0135】)との記載が示しているように、実際に測定しているのであれば、表1の「細孔比率r2」の列における個々の項目の数値があるはずである。
特許権者が主張するように、表1の「細孔比率r2」の数値が、第1細孔以外の全ての細孔の比率を誤って記載したものであるならば、明細書中の全ての「細孔比率r2」を「第1細孔(0.1μm以上10μm以下の孔径を有する細孔)以外の全ての細孔の比率」と訂正すべきである。
〈申立人の主張B〉(申立人意見書14頁6行~15頁8行)
特許権者が主張するように、表1の「細孔比率r2」の数値が、第1細孔以外の全ての細孔の比率を誤って記載したものというのであれば、0.03μm以下の範囲を指定して、その範囲内の細孔容積P2の数値を出力させることもなく、比率r2を求めることもなかったと強く推認される。
そうであるのならば、比率r2に関する記載(【0085】、【0086】、【0090】及び特許権者が削除した【0135】の記載)は、P2(比率r2)の数値を取得(算出)することのないままに記載したもの、と強く推認される。
したがって、本件特許発明は発明が未完成のまま出願に至ったのではないかと、強く推認されるものである。
また、申立人の主張Bの発明が未完成であるとの主張に関連するものとして、以下の申立人の主張Cがある。
〈申立人の主張C〉(申立人意見書11頁21行~12頁10行)
そもそも、「本件訂正発明1は、鉛蓄電池業界の当業者が全く認識していなかった「セパレータの縁部の厚みを主要部の厚みよりも大きくしても、セパレータの抵抗が大きくなり、CCA性能が低下する場合がある」(【0013】)という新たな課題を見出したことによって、はじめてなし得た発明である。」(特許権者意見書17頁)というであれば、「セパレータの縁部の厚みを主要部の厚みよりも大きくしても、セパレータの抵抗が大きくならず、CCA性能が低下しない場合」もあるということを本件特許の発明者らは認識していたことになる。
そうであるのなら、「セパレータの縁部の厚みを主要部の厚みよりも大きくしても、セパレータの抵抗が大きくならず、CCA性能が低下しない場合」との対比において、「セパレータの縁部の厚みを主要部の厚みよりも大きくしても、セパレータの抵抗が大きくなり、CCA性能が低下する」という課題を解決する方法を発明したのでなければ、その効果が得られる範囲が不明確であり、発明の完成とはいえない。
2 申立人の主張についての判断
申立人の主張A~Cについて判断する。
(1)申立人の主張Aの趣旨は判然としないが、特許請求の範囲及び明細書の記載をどのように訂正するかは、特許権者が定めるべきことである。表1の「細孔比率r2」の列の数値に誤記があったとして、その列及び関連する記載を削除すると特許権者が意思決定したことは、特許権者の権利として容認されることである。
そして、本件訂正は適法なものである(前記第2)から、申立人の主張Aは採用できない。
(2)申立人の主張Bの趣旨も判然としないが、細孔比率r2を発明特定事項とする発明が未完成である旨の主張と解される。
しかしながら、本件訂正により細孔比率r2を発明特定事項とする発明は削除されているから、申立人の主張Bは、結論を左右しない。
(3)申立人の主張Cの趣旨も判然としない。
本件発明者らが「セパレータの縁部の厚みを主要部の厚みよりも大きくしても、セパレータの抵抗が大きくならず、CCA性能が低下しない場合」もあることを認識していた点については、本件明細書の「ほとんどの充放電反応は、電極板の、セパレータの主要部(換言すれば、縁部より内側の部分)と対向する領域で起こる。そのため、主要部に比べて縁部の厚みを大きくしても、充放電反応への影響はほとんどないと考えられていた。」(【0012】との記載から明らかなように、正に本件発明者らも従来より認識していた事項である。
しかしながら、本件発明者らは、従来の認識とは異なる場合が存在することを突き止めたからこそ、本件発明に至ったのである。
そうすると、本件発明者らが従来の認識を持っていることを根拠として本件発明を未完成とする主張は、不合理な主張である。
他方、セパレータの厚みを主要部の厚みよりも大きくしても、セパレータの抵抗が大きくならず、CCA性能が低下しないという効果が得られる範囲に関しては、本件明細書に「細孔容積Ptが0.8cm3/g未満の場合と0.8cm3/g以上の場合とでは、TpをTmより大きくすることおよび第1細孔の比率r1を制御することがセパレータの性能に及ぼす挙動は大きく異なる。上記のようなCCA性能の低下抑制効果は、細孔容積Ptを0.8cm3/g以上とすることにより初めて得られる効果である。」(【0018】)と記載されているように、臨界的数値を見出した上で、発明特定事項Eの下限値として特定している。その他の数値範囲については、本件発明の対象と解されない。(その後の改良発明にて明らかにされるべきことと思われる。)
以上によれば、申立人の主張Cは採用できない。
(4)前記(1)~(3)のとおりであるから、申立人の主張A~Cを検討しても、本件特許異議の申立てについての結論は左右されない。
第14 むすび
前記第2のとおり、本件訂正を認める。
前記第5のとおり、請求項7についての特許に対する特許異議の申立てを却下する。
そして、前記第7~第13によれば、取消理由通知書に記載した取消理由及び申立書に記載された申立理由によっては、本件発明に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
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2024-700696