特許異議申立
2023-701008
冷蔵庫
- 審判番号
- 2023-701008
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2017-206769
- 登録番号
- 7267673
- 請求日
- 2023年09月21日
- 審決日
- 2025年04月30日
- 公報発行日
- 2025年08月29日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】日立グローバルライフソリューションズ株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
- 【異議申立人】中里 昭恵
- 審判長/審判官
- 審判長 間中 耕治
- 審判官 槙原 進
- 審判官 水野 治彦
- 分類
- P1651.121-YAA(F25D)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第2項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第29条第2項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第4項、特許法第126条第4項、特許法第113条第2号、特許法第113条第2項、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7267673号発明「冷蔵庫」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7267673号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項[1ないし4,6ないし8]について訂正することを認める。
特許第7267673号の請求項1ないし請求項5、請求項7及び請求項8に係る特許を維持する。
特許第7267673号の請求項6に係る特許についての特許異議の申立を却下する。
理由
理 由
1.手続の経緯
特許第7267673号の請求項1ないし請求項8の特許に係る出願は、平成29年10月26日に特許出願され、令和5年4月24日にその特許権の設定登録がされ、令和5年5月2日に特許掲載公報が発行された。
その後、令和5年9月21日に特許異議申立人中里昭恵(以下、「特許異議申立人」という。)により、請求項1ないし8に係る特許に対して特許異議の申し立てがされ、令和6年2月5日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である令和6年4月8日に意見書の提出及び訂正の請求があり、当該訂正の請求に対して特許異議申立人から令和6年5月21日に意見書が提出された。その後、令和6年8月5日付けで取消理由(以下、「決定の予告」という。)が通知され、その指定期間内である令和6年10月7日付に意見書の提出及び訂正の請求があり、これに対し、令和6年11月1日付けで訂正拒絶理由が通知され、その指定期間内である令和6年12月10日に意見書及び手続補正書が提出され、当該手続補正書により補正された訂正の請求に対して特許異議申立人から令和7年3月5日に意見書が提出されたものである。
なお、令和6年4月8日に特許権者がした訂正の請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。
2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
令和6年12月10日の手続補正書により補正された令和6年10月7日の訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は、以下の訂正事項1ないし訂正事項8のとおりである。
ア 訂正事項1
請求項1に「温度を冷凍温度帯に固定した冷凍温度帯室の上方に第一冷蔵温度帯室,前記冷凍温度帯室の下方に,温度を冷蔵温度帯に固定した第二冷蔵温度帯室を備え,
前記第一冷蔵温度帯室の略背部に位置する第一蒸発器と,該第一蒸発器を収納する第一蒸発器収納室と,前記第一蒸発器と熱交換した空気を前記第一蒸発器収納室から前記第一冷蔵温度帯室に導く第一送風経路と,前記第一冷蔵温度帯室から前記第一蒸発器収納室に空気を導く第一戻り経路と,前記第一冷蔵温度帯室に循環気流を形成する第一送風機と,
冷媒を圧縮する圧縮機,及び,該圧縮機からの冷媒流れを制御する冷媒流制御手段と,を備え,
前記冷凍温度帯室の略背部に位置し,前記第一蒸発器よりも低温となる第二蒸発器と,該第二蒸発器を収納する第二蒸発器収納室と,前記第二蒸発器と熱交換した空気を前記第二蒸発器収納室から前記冷凍温度帯室に導く第二送風経路と,前記冷凍温度帯室から前記第二蒸発器収納室に空気を導く第二戻り経路と,前記冷凍温度帯室に循環気流を形成する第二送風機と,を有し,
前記冷媒流制御手段は,前記第一蒸発器への冷媒の第一流出口,及び,前記第二蒸発器への冷媒の第二流出口を備え,前記第一流出口を流れた冷媒は,前記第一蒸発器及び前記第二蒸発器のうち,前記第一蒸発器のみを冷却して前記圧縮機へ戻り,前記第二流出口を流れた冷媒は,前記第一蒸発器及び前記第二蒸発器のうち,前記第二蒸発器のみを冷却して前記圧縮機へ戻り,
前記第二蒸発器に流れる冷媒を減圧する第二減圧器と,
前記第一蒸発器に流れる冷媒を前記第二減圧器の減圧量よりも少なく減圧する第一減圧器と,を備え,
前記第二蒸発器収納室,前記第二送風経路,前記冷凍温度帯室または前記第二戻り経路の何れかと,前記第二冷蔵温度帯室とが,連通している
ことを特徴とする冷蔵庫。」とあるのを、「温度を冷凍温度帯に固定した冷凍温度帯室の上方に第一冷蔵温度帯室,前記冷凍温度帯室の下方に,温度を冷蔵温度帯に固定した第二冷蔵温度帯室を備え,
前記第一冷蔵温度帯室の略背部に位置する第一蒸発器と,該第一蒸発器を収納する第一蒸発器収納室と,前記第一蒸発器と熱交換した空気を前記第一蒸発器収納室から前記第一冷蔵温度帯室に導く第一送風経路と,前記第一冷蔵温度帯室から前記第一蒸発器収納室に空気を導く第一戻り経路と,前記第一冷蔵温度帯室に循環気流を形成する第一送風機と,
冷媒を圧縮する圧縮機,及び,該圧縮機からの冷媒流れを制御する冷媒流制御手段と,を備え,
前記冷凍温度帯室の略背部に位置し,前記第一蒸発器よりも低温となる第二蒸発器と,該第二蒸発器を収納する第二蒸発器収納室と,前記第二蒸発器と熱交換した空気を前記第二蒸発器収納室から前記冷凍温度帯室に導く第二送風経路と,前記冷凍温度帯室と前記第二冷蔵温度帯室とを隔てる断熱仕切壁も前記第二冷蔵温度帯室も通過せずに,前記冷凍温度帯室から前記冷凍温度帯室の略背部の前記第二蒸発器収納室に空気を導く第二戻り経路と,前記冷凍温度帯室に循環気流を形成する第二送風機と,を有し,
前記冷媒流制御手段は,前記第一蒸発器への冷媒の第一流出口,及び,前記第二蒸発器への冷媒の第二流出口を備え,前記第一流出口を流れた冷媒は,前記第一蒸発器及び前記第二蒸発器のうち,前記第一蒸発器のみを冷却して前記圧縮機へ戻り,前記第二流出口を流れた冷媒は,前記第一蒸発器及び前記第二蒸発器のうち,前記第二蒸発器のみを冷却して前記圧縮機へ戻り,
前記第二蒸発器に流れる冷媒を減圧する第二減圧器と,
前記第一蒸発器に流れる冷媒を前記第二減圧器の減圧量よりも少なく減圧する第一減圧器と,を備え,
前記第二蒸発器収納室,前記第二送風経路,前記冷凍温度帯室または前記第二戻り経路の何れかと,前記第二冷蔵温度帯室とが,断熱仕切壁を通過している風路で連通しており,
前記第二冷蔵温度帯室に供給される風量は,前記冷凍温度帯室に供給される風量より少なく,
前記第一送風機が形成する循環気流の循環経路と,前記第二送風機が形成する循環気流の循環経路とは,分離されていることを特徴とする冷蔵庫。」と訂正する。請求項1を引用する請求項2ないし請求項4、請求項7及び請求項8も同様に訂正する。
イ 訂正事項2
請求項2に、「前記冷凍温度帯室と前記第一冷蔵温度帯室を隔てる第一の断熱仕切壁と,前記冷凍温度帯室と前記第二冷蔵温度帯室を隔てる第二の断熱仕切壁を備え,
前記第二冷蔵温度帯室と連通する風路を,前記第二の断熱仕切壁を通過するように設けたことを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫。」とあるのを、「前記冷凍温度帯室と前記第一冷蔵温度帯室を隔てる第一の断熱仕切壁と,前記冷凍温度帯室と前記第二冷蔵温度帯室を隔てる第二の断熱仕切壁を備え,
前記第二冷蔵温度帯室と連通する前記風路を,前記第二の断熱仕切壁を通過するように設けたことを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫。」と訂正する。請求項2を引用する請求項3及び請求項4も同様に訂正する。
ウ 訂正事項3
請求項3に、「前記第二冷蔵温度帯室と連通する風路の出口開口の少なくとも一つを,前記第二の断熱仕切壁の下面に略一致するように設けたことを特徴とする請求項2に記載の冷蔵庫。」とあるのを、「前記第二冷蔵温度帯室と連通する前記風路の出口開口の少なくとも一つを,前記第二の断熱仕切壁の下面に略一致するように設けたことを特徴とする請求項2に記載の冷蔵庫。」と訂正する。請求項3を引用する請求項4も同様に訂正する。
エ 訂正事項4
請求項4に、「前記第二冷蔵温度帯室と連通する風路に,該風路を流れる気流の量を制御する送風量制御手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の冷蔵庫。」とあるのを、「前記第二冷蔵温度帯室と連通する前記風路に,該風路を流れる気流の量を制御する送風量制御手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の冷蔵庫。」と訂正する。
オ 訂正事項5
請求項6を削除する。
カ 訂正事項6
請求項7に、「請求項1,5,6の何れか一項に記載の冷蔵庫。」とあるのを、「請求項1又は5に記載の冷蔵庫。」と訂正する。
キ 訂正事項7
請求項8に、「請求項1,5,6の何れか一項に記載の冷蔵庫。」とあるのを、「請求項1又は5に記載の冷蔵庫。」と訂正する。
ク 訂正事項8
願書に添付した明細書の段落【0010】に、「上記課題を解決するために,例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが,その一例を挙げるならば,温度を冷凍温度帯に固定した冷凍温度帯室の上方に第一冷蔵温度帯室,前記冷凍温度帯室の下方に,温度を冷蔵温度帯に固定した第二冷蔵温度帯室を備え,前記第一冷蔵温度帯室の略背部に位置する第一蒸発器と,該第一蒸発器を収納する第一蒸発器収納室と,前記第一蒸発器と熱交換した空気を前記第一蒸発器収納室から前記第一冷蔵温度帯室に導く第一送風経路と,前記第一冷蔵温度帯室から前記第一蒸発器収納室に空気を導く第一戻り経路と,前記第一冷蔵温度帯室に循環気流を形成する第一送風機と,冷媒を圧縮する圧縮機,及び,該圧縮機からの冷媒流れを制御する冷媒流制御手段と,を備え,前記冷凍温度帯室の略背部に位置し,前記第一蒸発器よりも低温となる第二蒸発器と,該第二蒸発器を収納する第二蒸発器収納室と,前記第二蒸発器と熱交換した空気を前記第二蒸発器収納室から前記冷凍温度帯室に導く第二送風経路と,前記冷凍温度帯室から前記第二蒸発器収納室に空気を導く第二戻り経路と,前記冷凍温度帯室に循環気流を形成する第二送風機と,を有し,前記冷媒流制御手段は,前記第一蒸発器への冷媒の第一流出口,及び,前記第二蒸発器への冷媒の第二流出口を備え,前記第一流出口を流れた冷媒は,前記第一蒸発器及び前記第二蒸発器のうち,前記第一蒸発器のみを冷却して前記圧縮機へ戻り,前記第二流出口を流れた冷媒は,前記第一蒸発器及び前記第二蒸発器のうち,前記第二蒸発器のみを冷却して前記圧縮機へ戻り,前記第二蒸発器に流れる冷媒を減圧する第二減圧器と,前記第一蒸発器に流れる冷媒を前記第二減圧器の減圧量よりも少なく減圧する第一減圧器と,を備え,前記第二蒸発器収納室,前記第二送風経路,前記冷凍温度帯室または前記第二戻り経路の何れかと,前記第二冷蔵温度帯室とが,連通していることを特徴とする。その他の解決手段は発明を実施するための形態において後記する。」とあるのを、「上記課題を解決するために,例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。本願は上記課題を解決する手段を複数含んでいるが,その一例を挙げるならば,温度を冷凍温度帯に固定した冷凍温度帯室の上方に第一冷蔵温度帯室,前記冷凍温度帯室の下方に,温度を冷蔵温度帯に固定した第二冷蔵温度帯室を備え,前記第一冷蔵温度帯室の略背部に位置する第一蒸発器と,該第一蒸発器を収納する第一蒸発器収納室と,前記第一蒸発器と熱交換した空気を前記第一蒸発器収納室から前記第一冷蔵温度帯室に導く第一送風経路と,前記第一冷蔵温度帯室から前記第一蒸発器収納室に空気を導く第一戻り経路と,前記第一冷蔵温度帯室に循環気流を形成する第一送風機と,冷媒を圧縮する圧縮機,及び,該圧縮機からの冷媒流れを制御する冷媒流制御手段と,を備え,前記冷凍温度帯室の略背部に位置し,前記第一蒸発器よりも低温となる第二蒸発器と,該第二蒸発器を収納する第二蒸発器収納室と,前記第二蒸発器と熱交換した空気を前記第二蒸発器収納室から前記冷凍温度帯室に導く第二送風経路と,前記冷凍温度帯室と前記第二冷蔵温度帯室とを隔てる断熱仕切壁も前記第二冷蔵温度帯室も通過せずに,前記冷凍温度帯室から前記冷凍温度帯室の略背部の前記第二蒸発器収納室に空気を導く第二戻り経路と,前記冷凍温度帯室に循環気流を形成する第二送風機と,を有し,前記冷媒流制御手段は,前記第一蒸発器への冷媒の第一流出口,及び,前記第二蒸発器への冷媒の第二流出口を備え,前記第一流出口を流れた冷媒は,前記第一蒸発器及び前記第二蒸発器のうち,前記第一蒸発器のみを冷却して前記圧縮機へ戻り,前記第二流出口を流れた冷媒は,前記第一蒸発器及び前記第二蒸発器のうち,前記第二蒸発器のみを冷却して前記圧縮機へ戻り,前記第二蒸発器に流れる冷媒を減圧する第二減圧器と,前記第一蒸発器に流れる冷媒を前記第二減圧器の減圧量よりも少なく減圧する第一減圧器と,を備え,前記第二蒸発器収納室,前記第二送風経路,前記冷凍温度帯室または前記第二戻り経路の何れかと,前記第二冷蔵温度帯室とが,断熱仕切壁を通過している風路で連通しており,前記第二冷蔵温度帯室に供給される風量は,前記冷凍温度帯室に供給される風量よりも少なく,前記第一送風機が形成する循環気流の循環経路と,前記第二送風機が形成する循環気流の循環経路とは,分離されていることを特徴とする。その他の解決手段は発明を実施するための形態において後記する。」と訂正する。
(2)一群の請求項、訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
上記訂正事項1ないし訂正事項8について、一群の請求項、訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否を検討する。
ア 一群の請求項
訂正前の請求項1ないし請求項4、請求項7及び請求項8について、請求項2ないし請求項4、請求項7及び請求項8は、いずれも請求項1を直接又は間接的に引用した請求項であって、訂正事項1によって訂正される請求項1に連動して請求項2ないし請求項4、請求項7及び請求項8が訂正されるから、請求項1ないし請求項4、請求項7及び請求項8は、一群の請求項である。
また、訂正前の請求項6ないし請求項8について、請求項7及び請求項8は、請求項6を引用する請求項であって、訂正事項5によって訂正される請求項6に連動して請求項7及び請求項8が訂正されるから、請求項6ないし請求項8は、一群の請求項である。
そして、請求項1ないし請求項4、請求項7及び請求項8からなる一群の請求項と、請求項6ないし請求項8からなる一群の請求項とは、請求項7及び請求項8が共通するから、請求項1ないし請求項4及び請求項6ないし請求項8は、一群の請求項となる。
したがって、本件訂正請求は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項に対してなされたものである。
イ 訂正事項1
(ア)訂正の目的
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「冷蔵庫」の「前記冷凍温度帯室から前記第二蒸発器収納室に空気を導く第二戻り経路」について、「前記冷凍温度帯室と前記冷蔵温度帯室とを隔てる断熱仕切壁も前記第二冷蔵温度帯室も通過せず」に,前記冷凍温度帯室から「前記冷凍温度帯室の略背部」の前記第二蒸発器収納室に空気を導くとの限定を付加し、また、「冷蔵庫」の「前記第二蒸発器収納室,前記第二送風経路,前記冷凍温度帯室または前記第二戻り経路の何れかと,前記第二冷蔵温度帯室とが,風路で連通して」いることについて、「断熱仕切壁を通過している風路」で連通しているとの限定を付加し、そして、「冷蔵庫」の「第二冷蔵温度帯室」及び「冷凍温度帯室」について、「前記第二冷蔵温度帯室に供給される風量は,前記冷凍温度帯室に供給される風量より少な」いとの限定を付加し、さらに、「冷蔵庫」の「循環気流」について、「前記第一送風機が形成する循環気流の循環経路と,前記第二送風機が形成する循環気流の循環経路とは,分離されている」との限定を付加するものである。
そうすると、訂正事項1は、訂正前の請求項1に記載された「冷蔵庫」に係る事項を減縮するものといえる。
したがって、訂正事項1は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)新規事項の有無
訂正事項1で訂正された「前記冷凍温度帯室と前記冷蔵温度帯室とを隔てる断熱仕切壁も前記第二冷蔵温度帯室も通過せずに,前記冷凍温度帯室から前記冷凍温度帯室の略背部の前記第二蒸発器収納室に空気を導く第二戻り経路」は、願書に添付した明細書の段落【0022】、【0024】及び【0072】並びに図2及び図10に記載又は図示されているといえる事項である。また、訂正事項1で訂正された「前記第二蒸発器収納室,前記第二送風経路,前記冷凍温度帯室または前記第二戻り経路の何れかと,前記第二冷蔵温度帯室とが,断熱仕切壁を通過している風路で連通して」いることは、段落【0061】、【0062】、【0073】及び【0074】並びに図2及び図10に記載又は図示されているといえる事項である。そして、訂正事項1で訂正された「前記第二冷蔵温度帯室に供給される風量は,前記冷凍温度帯室に供給される風量より少な」いことは、段落【0025】に記載されているといえる事項である。さらに、訂正事項1で訂正された「前記第一送風機が形成する循環気流の循環経路と,前記第二送風機が形成する循環気流の循環経路とは,分離されている」ことは、段落【0056】に記載されているといえる事項である。
そうすると、訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。
(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項1は、訂正前の請求項1の「冷蔵庫」について、(ア)で述べたとおりの限定を直列的に付加することで、請求項1の「冷蔵庫」を限定するものである。
そうすると、訂正事項1は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当するものでなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。
ウ 訂正事項2ないし訂正事項4
(ア)訂正の目的
訂正事項2ないし訂正事項4は、訂正前の請求項2ないし請求項4のそれぞれに記載される「冷蔵庫」の「前記第二冷蔵温度帯室と連通する風路」について、「前記風路」との限定を直列的に付加するものである。当該限定の付加は、訂正事項1により、請求項1に「断熱仕切壁を通過している風路」で連通しているとの限定を付加することに連動して、当該「断熱仕切壁を通過している風路」が「前記第二冷蔵温度帯室と連通する」、「前記風路」であることを限定するものといえる。
そうすると、訂正事項2ないし訂正事項4は、訂正前の請求項2ないし請求項4のそれぞれに記載された「冷蔵庫」に係る事項を減縮するものといえる。
したがって、訂正事項2ないし訂正事項4は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)新規事項の有無
訂正事項2ないし訂正事項4で訂正された「前記第二冷蔵温度帯室と連通する前記風路」は、願書に添付した明細書の段落【0018】、【0061】、【0062】及び【0073】並びに図2、図3及び図10に記載又は図示されているといえる事項である。
そうすると、訂正事項2ないし訂正事項4は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。
(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項2ないし訂正事項4は、訂正前の請求項2ないし請求項4のそれぞれに記載される「冷蔵庫」の「前記第二冷蔵温度帯室と連通する風路」における「風路」について、「前記風路」との限定を付加することで、請求項2の「冷蔵庫」を限定するものである。
そうすると、訂正事項2ないし訂正事項4は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当するものでなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。
エ 訂正事項5
(ア)訂正の目的
訂正事項5は、訂正前の請求項6を削除する訂正である。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)新規事項の有無
訂正事項5は、訂正前の請求項6を削除するものである。
そうすると、訂正事項5は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。
(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項5は、訂正前の請求項6を削除するものである。
そうすると、訂正事項5は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当するものでなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。
オ 訂正事項6及び訂正事項7
(ア)訂正の目的
訂正事項6及び訂正事項7は、訂正前の請求項7及び請求項8のそれぞれに記載される「請求項1,5,6の何れか一項に記載の冷蔵庫。」の「「請求項1,5,6の何れか一項」について、訂正事項6において訂正前の請求項6が削除されたことを踏まえて、訂正前の請求項7及び請求項8が引用していた訂正前の請求項6を削除し、「請求項1又は5」とするものである。
したがって、訂正事項5は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
(イ)新規事項の有無
訂正事項6及び訂正事項7は、訂正事項6において訂正前の請求項6が削除されたことを踏まえて、訂正前の請求項7及び請求項8が引用していた訂正前の請求項6を削除するものである。
そうすると、訂正事項6及び訂正事項7は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。
(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項6及び訂正事項7は、訂正事項6において訂正前の請求項6が削除されたことを踏まえて、訂正前の請求項7及び請求項8が引用していた訂正前の請求項6を削除するものである。
そうすると、訂正事項6及び訂正事項7は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当するものでなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。
カ 訂正事項8
(ア)訂正の目的
訂正事項8は、願書に添付した明細書の段落【0010】の訂正前の記載について、訂正事項1により訂正される請求項1と整合する記載とするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第3号に掲げる明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
(イ)新規事項の有無
訂正事項8により訂正される訂正後の明細書の段落【0010】に記載される事項は、イ(イ)において述べたとおり、願書に添付した明細書に記載されている。そうすると、訂正事項8は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された事項の範囲内の訂正であり、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合する。
(ウ)特許請求の範囲の拡張・変更の存否
訂正事項8は、願書に添付した明細書の記載を、訂正事項1により訂正される請求項1の記載と整合するよう訂正するものであるから、訂正事項1と同様の理由により、訂正事項8は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当するものでなく、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合する。
(エ)明細書又は図面の訂正と関係する請求項
訂正事項8は、一群の請求項である請求項1ないし請求項4及び請求項6ないし請求項8の全てに関連する訂正である。そうすると、訂正事項8は、特許法第120条の5第9項で準用する特許法第126条第4項に規定するものである。
(3)小括
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書に掲げる事項を目的とするものであり、かつ同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項[1ないし4、6ないし8]について訂正を認める。
3.本件発明について
本件訂正請求により訂正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項8に係る発明(以下、「本件発明1」ないし「本件発明8」という。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1ないし請求項8に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
温度を冷凍温度帯に固定した冷凍温度帯室の上方に第一冷蔵温度帯室,前記冷凍温度帯室の下方に,温度を冷蔵温度帯に固定した第二冷蔵温度帯室を備え,
前記第一冷蔵温度帯室の略背部に位置する第一蒸発器と,該第一蒸発器を収納する第一蒸発器収納室と,前記第一蒸発器と熱交換した空気を前記第一蒸発器収納室から前記第一冷蔵温度帯室に導く第一送風経路と,前記第一冷蔵温度帯室から前記第一蒸発器収納室に空気を導く第一戻り経路と,前記第一冷蔵温度帯室に循環気流を形成する第一送風機と,
冷媒を圧縮する圧縮機,及び,該圧縮機からの冷媒流れを制御する冷媒流制御手段と,を備え,
前記冷凍温度帯室の略背部に位置し,前記第一蒸発器よりも低温となる第二蒸発器と,該第二蒸発器を収納する第二蒸発器収納室と,前記第二蒸発器と熱交換した空気を前記第二蒸発器収納室から前記冷凍温度帯室に導く第二送風経路と,前記冷凍温度帯室と前記第二冷蔵温度帯室とを隔てる断熱仕切壁も前記第二冷蔵温度帯室も通過せずに,前記冷凍温度帯室から前記冷凍温度帯室の略背部の前記第二蒸発器収納室に空気を導く第二戻り経路と,前記冷凍温度帯室に循環気流を形成する第二送風機と,を有し,
前記冷媒流制御手段は,前記第一蒸発器への冷媒の第一流出口,及び,前記第二蒸発器への冷媒の第二流出口を備え,前記第一流出口を流れた冷媒は,前記第一蒸発器及び前記第二蒸発器のうち,前記第一蒸発器のみを冷却して前記圧縮機へ戻り,前記第二流出口を流れた冷媒は,前記第一蒸発器及び前記第二蒸発器のうち,前記第二蒸発器のみを冷却して前記圧縮機へ戻り,
前記第二蒸発器に流れる冷媒を減圧する第二減圧器と,
前記第一蒸発器に流れる冷媒を前記第二減圧器の減圧量よりも少なく減圧する第一減圧器と,を備え,
前記第二蒸発器収納室,前記第二送風経路,前記冷凍温度帯室または前記第二戻り経路の何れかと,前記第二冷蔵温度帯室とが,断熱仕切壁を通過している風路で連通しており,
前記第二冷蔵温度帯室に供給される風量は,前記冷凍温度帯室に供給される風量より少なく,
前記第一送風機が形成する循環気流の循環経路と,前記第二送風機が形成する循環気流の循環経路とは,分離されていることを特徴とする冷蔵庫。
【請求項2】
前記冷凍温度帯室と前記第一冷蔵温度帯室を隔てる第一の断熱仕切壁と,前記冷凍温度帯室と前記第二冷蔵温度帯室を隔てる第二の断熱仕切壁を備え,
前記第二冷蔵温度帯室と連通する前記風路を,前記第二の断熱仕切壁を通過するように設けたことを特徴とする請求項1に記載の冷蔵庫。
【請求項3】
前記第二冷蔵温度帯室と連通する前記風路の出口開口の少なくとも一つを,前記第二の断熱仕切壁の下面に略一致するように設けたことを特徴とする請求項2に記載の冷蔵庫。
【請求項4】
前記第二冷蔵温度帯室と連通する前記風路に,該風路を流れる気流の量を制御する送風量制御手段を備えたことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の冷蔵庫。
【請求項5】
温度を冷凍温度帯に固定した冷凍温度帯室の上方に第一冷蔵温度帯室,前記冷凍温度帯室の下方に,温度を冷蔵温度帯に固定した第二冷蔵温度帯室を備え,
前記第一冷蔵温度帯室の略背部に位置する第一蒸発器と,該第一蒸発器を収納する第一蒸発器収納室と,前記第一蒸発器と熱交換した空気を前記第一蒸発器収納室から前記第一冷蔵温度帯室に導く第一送風経路と,前記第一冷蔵温度帯室から前記第一蒸発器収納室に空気を導く第一戻り経路と,前記第一冷蔵温度帯室に循環気流を形成する第一送風機と,
冷媒を圧縮する圧縮機,及び,該圧縮機からの冷媒流れを制御する冷媒流制御手段と,を備え,
前記冷凍温度帯室の略背部に位置する第二蒸発器と,該第二蒸発器を収納する第二蒸発器収納室と,前記第二蒸発器と熱交換した空気を前記第二蒸発器収納室から前記冷凍温度帯室に導く第二送風経路と,前記冷凍温度帯室から前記第二蒸発器収納室に空気を導く第二戻り経路と,
前記第二送風経路から前記第二冷蔵温度帯室に空気を導く第三送風経路と,前記第二冷蔵温度帯室から前記第二蒸発器収納室に空気を導く第三戻り経路と,
前記冷凍温度帯室及び前記第二冷蔵温度帯室に循環気流を形成する第二送風機と,
前記冷媒流制御手段は,前記第一蒸発器への冷媒の第一流出口,及び,前記第二蒸発器への冷媒の第二流出口を備え,前記第一流出口を流れた冷媒は,前記第一蒸発器及び前記第二蒸発器のうち,前記第一蒸発器のみを冷却して前記圧縮機へ戻り,前記第二流出口を流れた冷媒は,前記第一蒸発器及び前記第二蒸発器のうち,前記第二蒸発器のみを冷却して前記圧縮機へ戻り,
前記第二蒸発器に流れる冷媒を減圧する第二減圧器と,
前記第一蒸発器に流れる冷媒を前記第二減圧器の減圧量よりも少なく減圧する第一減圧器と,を備えることを特徴とする冷蔵庫。
【請求項6】
(削除)
【請求項7】
前記第二冷蔵温度帯室に供給される風量は,前記冷凍温度帯室に供給される風量より少ないことを特徴とする請求項1又は5に記載の冷蔵庫。
【請求項8】
前記第二冷蔵温度帯室は,前記冷凍温度帯室と前記第二冷蔵温度帯室を隔てる第二の断熱仕切壁を介して前記冷凍温度帯室の前記第二蒸発器と熱交換した空気により冷却されると共に,前記第二冷蔵温度帯室の冷却の過不足に応じて前記第二蒸発器と熱交換した空気が送風されることを特徴とする請求項1又は5に記載の冷蔵庫。」
4.決定の予告の概要
本件訂正請求前の請求項1ないし請求項4及び請求項6ないし請求項8に係る特許に対する決定の予告の概要は、以下のとおりである。
(進歩性)本件特許の請求項1ないし請求項4及び請求項6ないし請求項8に係る発明は、本件特許出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証ないし甲第8号証に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1ないし請求項4及び請求項6ないし請求項8に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、その発明に係る特許は特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきである。
甲第1号証:特開2004-69218号公報
甲第2号証:特開2001-91130号公報
甲第3号証:特開2005-265267号公報
甲第4号証:特開2000-28257号公報
甲第5号証:特開2005-98605号公報
甲第6号証:特開2001-133128号公報
甲第7号証:特開2000-329447号公報
甲第8号証:特開2016-44866号公報
5.甲第1号証ないし甲第8号証の記載
(1)甲第1号証
甲第1号証には、「冷蔵庫」に関し、次の記載事項、図示事項及び認定事項がある(下線は、当審で付与した。以下同様。)。
ア 「【0018】
本発明による冷蔵庫は、図で示すように、背面下部に機械室1を備えた外箱2と、内箱3との間に断熱材4を充填してなる断熱箱体5の内部を、前記内箱3に接続された複数の断熱仕切体6により上下に区画して冷蔵室7、野菜室8および冷凍室9を設けた構成になっている。(当審注:「野菜室9および冷凍室8を設けた構成になっている。」の誤記と認める。)
【0019】
前記機械室1には圧縮機1aが設けられており、また、同機械室1からはアース端子24および電源コード25が夫々導出された構成になっている。
【0020】
前記冷蔵室7、前記冷凍室8および前記野菜室9の前部には、背面の周縁部に前記断熱箱体5の前端部に吸着するマグネットガスケット10を備えた開閉扉11が設けられている。
【0021】
前記冷蔵室7の開閉扉11は、一側上下部に設けられたヒンジ部aにより回動自在に軸支されることによって、前記冷蔵室7の前部を開閉できるようになっている。
【0022】
前記冷凍室8および前記野菜室9の開閉扉11は、これら冷凍室8および野菜室9の前部を、図1で示すガイドレール部bにより前後動する食品ケース13および野菜ケース14といっしょに前後動して開閉できるようになっている。」
イ 「【0026】
また、前記冷蔵室7および前記冷凍室8の後部には冷却器16が設けられ、同冷却器16の前方には、冷気供給口17を有する前面カバー18を設けて前記冷却器16を備えた冷気生成室19を形成している。
【0027】
前記冷気供給口17を臨ませた所定位置には冷気循環用の送風ファン20が設けられる一方、前記前面カバー18に形成された冷気吸込口21から、庫内の冷気を前記冷気生成室19に戻すための冷気戻しダクト22が設けられている。」
ウ 「【0034】
以上の構成により、次にその動作について説明する。
前記負イオン発生ユニット23が、前記冷気生成室19から前記冷気戻しダクト22に到る冷気循環経路の所定位置に設けられたことにより、同負イオン発生ユニット23で発生させた負イオンが、例えば図3で示すように、前記冷蔵室7および前記冷凍室8の冷気供給口17から前記冷却器16で生成された冷気といっしょに送出される。」
エ 「【0038】
なお、前記冷蔵室7または前記冷凍室8に送出された前記負イオンおよび前記冷気は、前記野菜室9にも循環することによって上記と同様の作用効果を奏することになる。」
オ 「【図3】
[図:0001425709000001.jpg]
」
カ アの記載事項及びオの図示事項、並びに、一般に野菜室は、温度が冷蔵温度帯に固定され、冷凍庫は温度が冷凍温度帯に固定されているとの技術常識を踏まえると、冷蔵庫は、温度が冷凍温度帯に固定された冷凍庫8の上方に冷蔵室7を備え、冷凍室8の下方に温度が冷蔵温度帯に固定された野菜室9を備えるといえる。
キ イの記載事項及びオの図示事項から、冷蔵庫は、冷蔵室7の後部に設けられた冷却器16の下方に、冷凍室8の後部に設けられた冷却器16を備えるといえる。
ク イ、ウの記載事項及びオの図示事項から、冷蔵庫は、冷蔵室7の後部に設けられた冷却器16の前方に形成された、冷気供給口17を有する冷気生成室19を備え、加えて、冷却器16と熱交換した冷気を冷気生成室19から冷蔵室7に導く送風経路を備えるといえる。
ケ イの記載事項及びオの図示事項から、冷蔵庫は、冷蔵室7から冷気生成室19に庫内の冷気を戻す冷気戻しダクト22を備えるといえる。
コ ク及びケの認定事項から、冷蔵室7における冷気は、冷気生成室19の冷気供給口17から冷蔵室7に導かれ、冷気戻しダクト22により冷蔵室7から冷気生成室19に戻される循環気流を形成するといえる。そして、イの記載事項及びオの図示事項から、冷蔵室7の冷気供給口17に設けられた送風ファン20は、冷蔵室7に循環気流を形成する送風ファン20といえる。
サ イ、ウの記載事項及びオの図示事項から、冷蔵庫は、冷凍室8の後部に設けられた冷却器16の前方に形成された、冷気供給口17を有する冷気生成室19を備え、加えて、冷却器16と熱交換した冷気を冷気生成室19から冷凍室8に導く送風経路を備えるといえる。
シ ウの記載事項における「同負イオン発生ユニット23で発生させた負イオンが、例えば図3で示すように、前記冷蔵室7および前記冷凍室8の冷気供給口17から前記冷却器16で生成された冷気といっしょに送出される。」との記載及びエの記載事項における「前記冷蔵室7または前記冷凍室8に送出された前記負イオンおよび前記冷気は、前記野菜室9にも循環する」との記載から、冷却器16で生成され、冷凍室8の冷気供給口17から送出された冷気は、野菜室9に導かれるのであるから、冷凍庫8から野菜室9に冷気を導くための通路を備えるといえる。
ス アの記載事項及びオの図示事項から、冷蔵庫は、前記冷凍室8と前記冷蔵室7とを区画する断熱仕切体6と、前記冷凍室8と前記野菜室9とを区画する断熱仕切体6を備えるといえる。
セ イの記載事項、オの図示事項、シの認定事項及びスの認定事項から、冷蔵庫は、冷凍室8から送出され、野菜室9に循環した冷気を冷気生成室19に戻す、冷凍室8と野菜室9とを区画する断熱仕切体6に設けられた冷気戻しダクト22を備えるといえる。
ソ サないしセの認定事項から、冷凍室8の後部に設けられた冷気生成室19の冷気供給口17から冷凍室8に導かれた冷気は、野菜室9に循環し、冷気戻しダクト22により野菜室9から冷気生成室19に戻される循環気流を形成するといえる。そして、イの記載事項及びオの図示事項から、冷凍室8の冷気供給口17に設けられた送風ファン20は、冷凍室8及び野菜室9に循環気流を形成する送風ファン20といえる。
上記記載事項、図示事項及び認定事項を総合し、整理すると、甲第1号証には 、以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されている。
[甲1発明]
「温度を冷凍温度帯に固定した冷凍室8の上方に冷蔵室7、前記冷凍室8の下方に温度を冷蔵温度帯に固定した野菜室9とを備え、
前記冷蔵室7の後部に設けられた冷却器16と、該冷却器16を備えた冷気生成室19と、前記冷却器16と熱交換した冷気を前記冷気生成室19から前記冷蔵室7に導く送風経路と、前記冷蔵室7から前記冷気生成室19に冷気を戻す冷気戻しダクト22と、前記冷蔵室7に循環気流を形成する送風ファン20と、
圧縮機1aを備え、
前記冷凍室8の後部に設けられた冷却器16と、該冷却器16を備えた冷気生成室19と、前記冷却器16と熱交換した冷気を前記冷気生成室19から前記冷凍室8に導く送風経路と、前記冷凍室8から前記野菜室9に冷気を導く通路と、前記野菜室9から前記冷気生成室19に冷気を戻す冷気戻しダクト22と、前記冷凍室8及び前記野菜室9に循環気流を形成する送風ファン20と、を有し、
前記冷凍室8と前記野菜室9とを区画する断熱仕切体6に、前記冷気戻しダクト22が設けられ、
前記冷蔵室7または前記冷凍室8に送出された前記冷気は、前記野菜室9にも循環する冷蔵庫。」
(2)甲第2号証
甲第2号証には、「冷蔵庫」に関し、次の記載事項及び図示事項がある。
ア 「【0017】冷蔵庫本体1の背部の下部には機械室23が形成されており、この機械室23に、図1の冷凍サイクルを構成する圧縮機24及び凝縮器25等(図2には凝縮器25は示されていない)が配設されている。図1において、圧縮機24の冷媒吐出口24aは、凝縮器25を介して、流路切替手段を構成する三方型の切替弁26の入口に接続されている。切替弁26の一方の出口は、冷凍キャピラリ27を介して上記冷凍室用蒸発器20の入口に接続されている。この冷凍室用蒸発器20の出口は、アキュームレータ28を介して逆止弁29の入口に接続されていて、その逆止弁29の出口が、上記圧縮機24の冷媒流入口24bに接続されている。また、上記切替弁26の他方の出口は、冷蔵キャピラリ30を介して上記冷蔵室用蒸発器15の入口に接続されており、この冷蔵室用蒸発器15の出口は、上記逆止弁20の出口と接続されている。
【0018】従ってこの場合、圧縮機24に対して、冷蔵室用蒸発器15と冷凍室用蒸発器20とは並列に接続され、また、冷凍室用蒸発器20の出口は逆止弁20を介して冷蔵室用蒸発器15の出口と接続されている。
【0019】さて、上記構成において、圧縮機24が駆動された状態で、切替弁26により、圧縮機24から吐出される冷媒が冷蔵室用蒸発器15側に流れるように冷媒流路を切り替えた状態(図1の破線矢印A参照)では、圧縮機24において圧縮された冷媒は、高温高圧のガスとなって凝縮器25に送られ、ここで放熱して液化されるようになる。液化された冷媒は、切替弁26を上記矢印A方向に流れ、冷蔵キャピラリ30を通って冷蔵室用蒸発器15に送られ、ここで蒸発することに伴い周囲の熱を奪い、この結果周囲の空気を冷却する。ガス化した冷媒は、再び圧縮機24において圧縮されるようになる。
【0020】このとき、冷蔵室用蒸発器15により冷却された冷気は、冷気循環ファン16の送風作用により冷蔵室9及び野菜室10に供給され、それら冷蔵室9及び野菜室10が冷却される。この場合、冷蔵室9の冷却温度は例えば+2℃であるため、冷蔵室用蒸発器15による冷却温度が約-5℃となるように、圧縮機24の運転周波数が設定される。また、このときの冷蔵室用蒸発器15の圧力は、例えば約0.24MPaである。このように切替弁26により、圧縮機24から吐出される冷媒が冷蔵室用蒸発器15側に流れるように冷媒流路を切り替えて、冷蔵室9及び野菜室10を冷却する状態を冷蔵室冷却モード(以下、Rモードと称する)という。
【0021】また、圧縮機24が駆動された状態で、切替弁26により、圧縮機24から吐出される冷媒が冷凍室用蒸発器20側に流れるように冷媒流路を切り替えた状態(図1の実線矢印B参照)では、凝縮器25において液化された冷媒は、切替弁26を上記矢印B方向に流れ、冷凍キャピラリ27を通って冷凍室用蒸発器20に入り、ここで蒸発することに伴い周囲の熱を奪い、この結果周囲の空気を冷却する。ガス化した冷媒は、アキュームレータ28及び逆止弁20を通り、再び圧縮機24において圧縮されるようになる。
【0022】このとき、冷凍室用蒸発器20により冷却された冷気は、冷気循環ファン21の送風作用により第1及び第2冷凍室12,13に供給され、それら第1及び第2冷凍室12,13が冷却される。この場合、第1及び第2冷凍室12,13の冷却温度は例えば-18℃であるため、冷凍室用蒸発器20による冷却温度が約-28℃となるように、圧縮機24の運転周波数が設定される。また、このときの冷凍室用蒸発器20の圧力は、例えば約0.09MPaである。このように切替弁26により、圧縮機24から吐出される冷媒が冷凍室用蒸発器20側に流れるように冷媒流路を切り替えて、第1及び第2冷凍室12,13を冷却する状態を冷凍室冷却モード(以下、Fモードと称する)という。」
イ 「【図1】
[図:0001425709000002.jpg]
」
(3)甲第3号証
甲第3号証には、「冷蔵庫」に関し、次の記載事項及び図示事項がある。
ア 「【0003】
図7は、従来の冷蔵庫および冷却サイクルの概略図を示したものである。
【0004】
図において、1は圧縮機、2は凝縮器、3は機械室11内に配設された切替弁であり、5は冷蔵室9内に配設された冷蔵室用蒸発器であり、7は冷凍室10内に配設された冷凍室用蒸発器である。4は冷蔵室冷却用である冷蔵室用蒸発器5の上流側に配設された第一のキャピラリであり、6は冷凍室冷却用である冷凍室用蒸発器7の上流側に配設された第二のキャピラリであり、8は冷凍室用蒸発器7の下流側に設けた逆止弁である。
【0005】
以上のように構成された従来の冷蔵庫について、その動作を説明する。
【0006】
圧縮機1が駆動された状態で、切替弁3により、圧縮機1から吐出される冷媒が冷蔵室用蒸発器5側に流れるように冷媒流路を切り替えた状態では、圧縮機1において圧縮された冷媒は、高温高圧ガスとなって凝縮器2に送られ、ここで放熱して液化されるようになる。液化された冷媒は、切替弁3により第一のキャピラリ4を通って冷蔵室用蒸発器5に送られ、ここで蒸発することに伴い周囲の熱を奪い、この結果周囲の空気を冷却する。ガス化した冷媒は再び圧縮機1において圧縮されるようになる。
【0007】
このとき、冷蔵室用蒸発器5により冷却された冷気は冷蔵室用ファン11の送風作用により冷蔵室9に供給され庫内が冷却される。この場合、冷蔵室9の温度は例えば+2℃であるために、冷蔵室用蒸発器5による冷却温度が約-5℃となるように、圧縮機1の運転周波数が設定される。また、この時の冷蔵室用蒸発器5の圧力は例えば約0.24MPaである。このような冷却状態を冷蔵室冷却モードという。
【0008】
また、圧縮機1が駆動された状態で、切替弁3により、圧縮機1から吐出される冷媒が冷凍室用蒸発器7側に流れるように冷媒流路を切り替えた状態では、圧縮機1において圧縮された冷媒は、高温高圧ガスとなって凝縮器2に送られ液化された冷媒は、切替弁3により第二のキャピラリ6を通って冷凍室用蒸発器7に送られ、ここで蒸発することに伴い周囲の熱を奪い、この結果周囲の空気を冷却する。ガス化した冷媒は逆止弁8を通り、再び圧縮機1において圧縮されるようになる。
【0009】
このとき、冷凍室用蒸発器7により冷却された冷気は冷凍室用ファン12の送風作用により冷凍室10に供給され庫内が冷却される。この場合、冷凍室10の温度は例えば-18℃であるために、冷凍室用蒸発器7による冷却温度が約-28℃となるように、圧縮機1の運転周波数が設定される。また、この時の冷凍室用蒸発器7の圧力は例えば約0.09MPaである。このような冷却状態を冷凍室冷却モードという。」
イ 「【図7】
[図:0001425709000003.jpg]
」
(4)甲第4号証
甲第4号証には、「冷蔵庫」に関し、次の記載事項及び図示事項がある。
ア 「【0035】図4は冷凍サイクルを示しており、27は冷却パイプ、29は蒸発器を示しており、圧縮機31から吐出された冷媒は、実線で示す如く凝縮器33、三方弁35を通った後、キャピラリチューブ37で減圧されて、蒸発器29に入り、冷媒タンク39を介して、再び、圧縮機31に戻る第1冷凍サイクルが構成される。また、圧縮機31から吐出された冷媒は、点線で示す如く凝縮器33を通り、三方弁35によって冷媒流路が切替えられ、点線で示す如く、キャピラリチューブ41で減圧されて、冷却パイプ27(蒸発器)に入り、冷媒タンク43を介して、再び圧縮機31に戻る第2冷凍サイクルが構成される。冷媒は、冷却パイプ27又は蒸発器29を通過する時の蒸発潜熱によって図1に示す如く冷却パイプ27にあっては内箱3の壁面を冷却する。」
イ 「【0061】図9は、冷却パイプの一部から構成される蒸発器75を冷蔵室内に設けた第5の実施形態を示したものである。
【0062】即ち、断熱箱体9を構成する内箱3と外箱5の間に、内箱3の壁面に接する冷却パイプ27を配置する一方、庫内側内箱3の後壁に沿って冷気ダクト49を配置する。
【0063】冷気ダクト49は、下方が冷気の取入口77となっていて前面に向って、庫内へ冷気を送り出すスリット状の複数の冷気供給口79が設けられている。
【0064】冷気ダクト49の下方には、冷却ファン83と蒸発器75が配置されている。この蒸発器75は、図10に示す如く、冷却パイプ27の一部から構成され、冷却フィン81を有するフインチューブ式の構造となっている。
【0065】なお、他の構成要素は第1の実施形態と同一のため同一符号を付して詳細な説明を省略する。
【0066】したがって、この第5の実施形態によれば、蒸発器75は冷却パイプ27の一部から構成されており、これらの蒸発温度は同じであるが、蒸発器75の温度は冷却パイプから熱伝導を受ける冷却壁面よりも低くなる。そのため、庫内で最も温度が低い場所は蒸発器75となり、この蒸発器75で結露が主に発生し、開扉時に、容易に見える内箱3の壁面に結露させないようにできる。
ウ 「【図10】
[図:0001425709000004.jpg]
」
(5)甲第5号証
甲第5号証には、「冷蔵庫」に関し、次の記載事項及び図示事項がある。
ア 「【0015】
図1において7は冷媒を圧縮し吐出する圧縮機で、高段圧縮部8、低段圧縮部9からなり、冷媒回路を形成する凝縮器4、流路切換手段6である三方弁であり外部からの電気信号により少なくとも一方の流路を連通することができるものである、冷凍用膨張手段31、冷凍用冷却器30、冷蔵用膨張手段31a、冷蔵用冷却器30aが順次接続されている。
【0016】
次に動作について説明する。冷凍室200および冷蔵室100に設けられた温度センサ75、71の各検出温度が各設定温度よりも大きい場合は、流路切換手段6は冷凍用膨張機構31と冷蔵用膨張機構31aへの両方への流路を開放連通し、圧縮機7を運転し、冷凍室と冷蔵室を同時に冷却する動作を行う。
【0017】
冷凍室と冷蔵室を同時に冷却する場合の冷凍サイクルの動作について、図1および図3を用いて説明する。図3は冷凍室と冷蔵室を同時に冷却する場合のP-h線図であり、図中の記号は図1の記号の位置と同じ場所を示す。図3は冷媒の特性を示し横軸はエンタルピ、縦軸は圧力である。圧縮機1の高段圧縮部8を吐出した高温高圧の蒸気冷媒(A)は凝縮器4で放熱し凝縮液化する(B)。凝縮器4を通過した冷媒は流路切換手段6にて分流され、一方は冷蔵用膨張機構31aへ流れ込む。冷蔵用膨張機構31aにて冷媒は中温中圧の気液二相冷媒へ減圧・膨張する(C)。冷蔵用冷却器30aでは冷蔵室内の空気から熱を奪って蒸発気化し、冷蔵室を冷却する(D)。その後、中圧蒸気冷媒は圧縮機7の低段圧縮部9と高段圧縮部8を接続する配管に接続された吸入配管10を介して圧縮機7に流れ込む(E)。
【0018】
凝縮器4を通過した冷媒の内流路切換手段6にて分流された残りの一方は冷凍用膨張機構31へ流れ込む。冷凍用膨張機構31で冷媒は低温低圧の気液二相冷媒へ減圧・膨張する(F)。冷凍用冷却器30では冷凍室内の空気から熱を奪って蒸発気化し、冷凍室内を冷却する(G)。その後、低圧蒸気冷媒は圧縮機7の低段圧縮部9へ接続された吸入配管11を介して圧縮機7の低段圧縮部9へ流れ込む(H)。」
イ 「【図1】
[図:0001425709000005.jpg]
」
ウ 「【図3】
[図:0001425709000006.jpg]
」
(6)甲第6号証
甲第6号証には、「冷蔵庫」に関し、次の記載事項及び図示事項がある。
ア 「【0086】図1,図2に示すように、18は圧縮機、19は凝縮器、20は冷媒の流路を切り替える切替弁、21は低蒸発温度用の減圧量が大きい低蒸発温度用減圧機構、22は高蒸発温度用の減圧量が小さい高蒸発温度用減圧機構、23は冷蔵用の高蒸発温度である冷蔵室用冷却器、24は冷凍用の低蒸発温度である冷凍室用冷却器、25は圧縮機18や冷蔵室用冷却器23から冷凍室用冷却器24への冷媒の逆流を防止する逆止弁である。」
イ 「【0088】以上のように構成された冷蔵庫について、以下にその動作を説明する。
【0089】冷蔵室3を冷却する場合は、冷蔵室3がある設定温度以上になると図示していない温度検知手段により圧縮機18が作動し、冷凍サイクル内の図示しない可燃性冷媒の循環が開始され、可燃性冷媒は凝縮器19で外気との熱交換により凝縮され、切替弁20により高蒸発温度用減圧機構22を経て冷蔵室用冷却器23へ流通し、圧縮機18に吸い込まれるという経路の冷蔵室冷却用冷凍サイクルとなる。」
ウ 「【0093】また、冷凍室2を冷却する場合は、冷凍室2がある設定温度以上になると圧縮機18が作動し、冷凍サイクル内の可燃性冷媒の循環が開始され、可燃性冷媒は凝縮器19で外気との熱交換により凝縮され、切替弁20により低蒸発温度用減圧機構21を経て冷凍室用冷却器24へ流通し、圧縮機18に吸い込まれるという経路の冷凍室冷却用冷凍サイクルとなる。」
エ 「【図1】
[図:0001425709000007.jpg]
」
(7)甲第7号証
甲第7号証には、「冷蔵庫および除霜用ヒータ」に関し、次の記載事項及び図示事項がある。
ア 「【0251】図28,図29に示すように、36は冷蔵用の高蒸発温度である冷蔵室用冷却器、37は高蒸発温度用の減圧量が小さい高蒸発温度用減圧機構、38は冷凍用の低蒸発温度である冷凍室用冷却器、39は低蒸発温度用の減圧量が大きい低蒸発温度用減圧機構、40は冷媒の流路を切り替える切替弁、41は圧縮機19や冷蔵室用冷却器36から冷凍室用冷却器38へ冷媒が逆流するのを防止する逆止弁である。
【0252】42は冷蔵室3の空気を冷蔵室用冷却器36に通風させて熱交換させ冷却風を循環させるための冷蔵室用ファン、43は冷凍室2の空気を冷凍室用冷却器38に通風させて熱交換させ冷却風を循環させるための冷凍室用ファン、44は冷蔵室用冷却器36から冷蔵室3への熱移動を防止すると共に冷蔵室用冷却器36の通風を円滑に行うためのダクトでもある冷蔵室用冷却器仕切壁、45は冷蔵室用ファン42の作動により冷蔵室用冷却器36と熱交換した冷気が冷蔵室3へ吐出する冷蔵室吐出口、46は冷凍室用冷却器38の通風を円滑に行うためのダクトを構成する冷凍室用冷却器仕切壁、47は冷凍室用ファン43の作動により冷凍室用冷却器38と熱交換した冷気が冷凍室2へ吐出する冷凍室吐出口、48は冷凍室用冷却器38を除霜した時に発生する除霜水を貯留して自動蒸発させるための蒸発皿である。
【0253】以上のように構成された冷蔵庫について、以下にその動作を説明する。
【0254】冷蔵室3を冷却する場合は、冷蔵室3がある設定温度以上になると圧縮機19が作動し、冷凍サイクル内の図示しない可燃性冷媒の循環が開始され、可燃性冷媒は凝縮器20で外気との熱交換により凝縮され、切替弁40により高蒸発温度用減圧機構37を経て冷蔵室用冷却器36へ流通し、圧縮機19に吸い込まれるという経路の冷蔵室冷却用冷凍サイクルとなる。」
イ 「【0257】冷凍室2を冷却する場合は、冷凍室2がある設定温度以上になると圧縮機19が作動し、冷凍サイクル内の可燃性冷媒の循環が開始され、可燃性冷媒は凝縮器20で外気との熱交換により凝縮され、切替弁40により低蒸発温度用減圧機構39を経て冷凍室用冷却器38へ流通し、圧縮機19に吸い込まれるという経路の冷凍室冷却用冷凍サイクルとなる。」
ウ 「【図28】
[図:0001425709000008.jpg]
」
(8)甲第8号証
甲第8号証には、「冷蔵庫」に関し、次の記載事項及び図示事項がある。
ア 「【0022】
また、冷蔵庫100は、冷却器収容室R62から製氷室R2(図1参照)、上段冷凍室R3、及び下段冷凍室R4に冷気を供給するための冷凍室送風ダクトD2と、この冷凍室送風ダクトD2を介した冷気の供給/遮断を切り替える冷凍室ダンパP2と、を備えている。冷凍室送風ダクトD2には、製氷室R2(図1参照)、上段冷凍室R3、及び下段冷凍室R4に臨む吹出孔h2が設けられ、この吹出孔h2を介して各室に冷気が送り込まれる。
【0023】
また、冷蔵庫100は、冷却器収容室R62から野菜室R5に冷気を供給するための冷気供給流路h5と、この冷気供給流路h5を介した冷気の供給/遮断を切り替える野菜室ダンパP5(開閉装置)と、を備えている。冷気供給流路h5は、図2ではその一部を示しており、実際は送風機7の下流(図2では送風機7の上側であって、冷蔵室ダンパP1と並列位置、下流位置又は上流位置のいずれか)に連結している。より詳しくは、送風機7によって昇圧された冷気が、冷却器収容室R62から送風機7下流に流れて、その後に冷気供給流路h5及び野菜室ダンパP5を介して野菜室R5に至る。
【0024】
なお、野菜室R5に冷気を供給する冷気供給流路h5は、この構成に限らず、冷蔵室R1に供給された後の冷気が冷気供給流路h5に導かれて、野菜室R5に供給される構成であってもよい。
【0025】
冷気供給流路h5の一部は、野菜室R5と冷却器収容室R62とを隔てる断熱仕切部10bに形成され、その下流端付近に野菜室ダンパP5が設置されている。
【0026】
野菜室ダンパP5は、後記する制御装置8からの指令に従って開閉し、開状態において野菜室R5と冷却器収容室R62を連通させ、閉状態において野菜室R5と冷却器収容室R62とを遮断するようになっている。」
イ 「【0043】
図5は、制御装置8が実行する処理のフローチャートである。なお、図5に示す「START」時において、野菜室ダンパP5は閉じているものとする。また、送風機7(図2参照)は継続的に駆動しているものとする。
【0044】
ステップS101において制御装置8は、冷気供給条件が成立しているか否かを判定する。ここで「冷気供給条件」とは、野菜室R5への冷気の供給によって野菜室R5を所定の温度範囲(例えば、3~5℃)で保つための条件であり、予め設定されている。」
ウ 「【0050】
ステップS101で冷気供給条件が成立している場合(S101→Yes)、制御装置8の処理はステップS102に進む。一方、冷気供給条件が成立していない場合(S101→No)、制御装置8はステップS101の処理を繰り返す。」
エ 「【0069】
ステップS103において制御装置8は、野菜室ダンパP5を開く。野菜室ダンパP5が継続的に開かれることで野菜室温度センサS5の検出値は徐々に低下し(図7(d):時刻t2~t3を参照)、各容器52,53内の野菜等が適温まで冷やされる。
【0070】
ステップS104において制御装置8は、前記した冷気供給条件が成立しているか否かを判定する。例えば、制御装置8は、野菜室温度センサS5の検出値が所定閾値TClose(<TOpen)まで低下したか否かを判定する。
【0071】
冷気供給条件が成立している場合(S104→Yes)、制御装置8の処理はステップS103に戻る。一方、冷気供給条件が成立していない場合(S104→No)、制御装置8の処理はステップS105に進む。
【0072】
なお、ステップS101で冷気供給条件が成立した後(S101→Yes)、ステップS104で冷気供給条件が不成立となるまで(S104→No)、冷気供給条件は継続的に成立しているものとする(図7(a)の時刻t1~t3を参照)。
【0073】
ステップS105において制御装置8は、野菜室ダンパP5を閉じる。野菜室ダンパP5が閉じられることで、野菜室温度センサS5の検出値は徐々に上昇する(図7(d)の時刻t3~t4を参照)。
【0074】
ステップS105の処理を行った後、制御装置8の処理は「START」に戻る(RETURN)。つまり、制御装置8は、次回の冷気供給条件が成立するまで(例えば、野菜室温度センサS5の検出値が所定閾値TOpenよりも高くなるまで)、野菜室ダンパP5を継続的に閉じる。」
オ 「【図2】
[図:0001425709000009.jpg]
」
カ 「【図5】
[図:0001425709000010.jpg]
」
6.当審の判断
(1)決定の予告に記載した取消理由について
ア 本件発明1
(ア)対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、後者の「冷凍室8」は、その機能、構成又は技術的意義からみて前者の「冷凍温度帯室」に相当し、同様に、「冷蔵室7」は「第一冷蔵温度帯室」に、「野菜室9」は「第二冷蔵温度帯室」にそれぞれ相当する。
そうすると、後者の「温度を冷凍温度帯に固定した冷凍室8の上方に冷蔵室7、前記冷凍室8の下方に温度を冷蔵温度帯に固定した野菜室9とを備え」ることは、前者の「温度を冷凍温度帯に固定した冷凍温度帯室の上方に第一冷蔵温度帯室,前記冷凍温度帯室の下方に,温度を冷蔵温度帯に固定した第二冷蔵温度帯室を備え」ることに相当する。
後者の「後部」は、その機能、構成又は技術的意義からみて前者の「略背部」に相当する。同様に「設けられた」は「位置する」に、「備えた」は「収納する」に、「冷気」は「空気」に、「戻す」は「導く」にそれぞれ相当する。
そうすると、後者の「前記冷蔵室7の後部に設けられた冷却器16と、該冷却器16を備えた冷気生成室19と、前記冷却器16と熱交換した冷気を前記冷気生成室19から前記冷蔵室7に導く送風経路と、前記冷蔵室7から前記冷気生成室19に冷気を戻す冷気戻しダクト22と、前記冷蔵室7に循環気流を形成する送風ファン20」は、前者の「前記第一冷蔵温度帯室の略背部に位置する第一蒸発器と,該第一蒸発器を収納する第一蒸発器収納室と,前記第一蒸発器と熱交換した空気を前記第一蒸発器収納室から前記第一冷蔵温度帯室に導く第一送風経路と,前記第一冷蔵温度帯室から前記第一蒸発器収納室に空気を導く第一戻り経路と,前記第一冷蔵温度帯室に循環気流を形成する第一送風機」に相当する。
後者の「圧縮機1a」は、その機能、構成又は技術的意義からみて前者の「冷媒を圧縮する圧縮機」に相当する。
後者の「前記冷凍室8の後部に設けられた、冷却器16」と前者の「前記冷凍温度帯室の略背部に位置し,前記第一蒸発器よりも低温となる第二蒸発器」とは、「前記冷凍温度帯室の略背部に位置する,第二蒸発器」という限りで一致する。そして、後者の「該冷却器16を備えた冷気生成室19」は、前記冷凍室8の後部に設けられた冷却器16を収納する冷気生成室19であるから、前者の「該第二蒸発器を収納する第二蒸発器収納室」及び「前記冷凍温度帯室の略背部の前記第二蒸発器収納室」に相当する。
また、後者の「前記冷却器16と熱交換した冷気を前記冷気生成室19から前記冷凍室8に導く送風経路」は、前者の「前記第二蒸発器と熱交換した空気を前記第二蒸発器収納室から前記冷凍温度帯室に導く第二送風経路」に相当する。
さらに、後者の「前記野菜室9から前記冷気生成室19に冷気を戻す冷気戻しダクト22」は、冷凍室8から送出され、野菜室9を循環した冷気を冷気生成室19に戻す冷気戻しダクト22であるから、前者の「前記冷凍温度帯室から前記冷凍温度帯室の略背部の前記第二蒸発器収納室に空気を導く第二戻り経路」に相当する。
そして、後者の「前記冷凍室8及び前記野菜室9に循環気流を形成する送風ファン20」は、前者の「前記冷凍温度帯室に循環気流を形成する第二送風機」に相当する。
そうすると、後者の「前記冷凍室8の後部に設けられた冷却器16と、該冷却器16を備えた冷気生成室19と、前記冷却器16と熱交換した冷気を前記冷気生成室19から前記冷凍室8に導く送風経路」及び「前記野菜室9から前記冷気生成室19に冷気を戻す冷気戻しダクト22と、前記冷凍室8及び前記野菜室9に循環気流を形成する送風ファン20」と前者の「前記冷凍温度帯室の略背部に位置し,前記第一蒸発器よりも低温となる第二蒸発器と,該第二蒸発器を収納する第二蒸発器収納室と,前記第二蒸発器と熱交換した空気を前記第二蒸発器収納室から前記冷凍温度帯室に導く第二送風経路と,前記冷凍温度帯室と前記第二冷蔵温度帯室とを隔てる断熱仕切壁も前記第二冷蔵温度帯室も通過せずに,前記冷凍温度帯室から前記冷凍温度帯室の略背部の前記第二蒸発器収納室に空気を導く第二戻り経路と,前記冷凍温度帯室に循環気流を形成する第二送風機」とは、「前記冷凍温帯室の略背部に位置する、第二蒸発器と,該第二蒸発器を収納する第二蒸発器収納室と,前記第二蒸発器と熱交換した空気を前記第二蒸発器収納室から前記冷凍温度帯室に導く第二送風経路と,前記冷凍温度帯室から前記冷凍温度帯室の略背部の前記第二蒸発器収納室に空気を導く第二戻り経路と,前記冷凍温度帯室に循環気流を形成する第二送風機」という限りで一致する。
後者の「前記冷凍室8から前記野菜室9に冷気を導く通路」は、冷凍室8と野菜室9とが冷気を導く通路により連通しているといえる。同様に、後者の「冷凍室8と前記野菜室9とを区画する断熱仕切体6に、前記冷気戻しダクト22が設けられた」ことは、冷気生成室19に冷気を戻す冷気戻しダクト22を、冷凍室8と野菜室9とを区画する断熱仕切体6に設けるものであるから、冷気生成室19と野菜室9とは断熱仕切体6と通過する冷気戻しダクト22により連通しているといえる。
そうすると、後者の「前記冷凍室8から前記野菜室9に冷気を導く通路」を備えることは、前者の「前記第二蒸発器収納室,前記第二送風経路,前記冷凍温度帯室または前記第二戻り経路の何れかと,前記第二冷蔵温度帯室とが,断熱仕切壁を通過している風路で連通して」いることにおける、「前記冷凍温度帯室」と「前記第二冷蔵温度帯室」とが「連通して」いることとの事項を満たす。
そして、後者の「前記冷凍室8と前記野菜室9とを区画する断熱仕切体6に、前記冷気戻しダクト22が設けられた」ことは、前者の「前記第二蒸発器収納室,前記第二送風経路,前記冷凍温度帯室または前記第二戻り経路の何れかと,前記第二冷蔵温度帯室とが,断熱仕切壁を通過している風路で連通して」いることにおける、「前記第二蒸発器収納室」と「前記第二冷蔵温度帯室」が「断熱仕切壁を通過している風路で連通して」いることとの事項を満たす。
そうすると、後者の「前記冷凍室8から前記野菜室9に冷気を導く通路」を備えること及び「前記冷凍室8と前記野菜室9とを区画する断熱仕切体6に、前記冷気戻しダクト22が設けられた」ことは、前者の「前記第二蒸発器収納室,前記第二送風経路,前記冷凍温度帯室または前記第二戻り経路の何れかと,前記第二冷蔵温度帯室とが,断熱仕切壁を通過している風路で連通して」いることに相当する。
そうすると、両者は、
「 温度を冷凍温度帯に固定した冷凍温度帯室の上方に第一冷蔵温度帯室,前記冷凍温度帯室の下方に,温度を冷蔵温度帯に固定した第二冷蔵温度帯室を備え,
前記第一冷蔵温度帯室の略背部に位置する,第一蒸発器と,該第一蒸発器を収納する第一蒸発器収納室と,前記第一蒸発器と熱交換した空気を前記第一蒸発器収納室から前記第一冷蔵温度帯室に導く第一送風経路と,前記第一冷蔵温度帯室から前記第一蒸発器収納室に空気を導く第一戻り経路と,前記第一冷蔵温度帯室に循環気流を形成する第一送風機と,
冷媒を圧縮する圧縮機,を備え,
前記冷凍温度帯室の略背部に位置する,第二蒸発器と,該第二蒸発器を収納する第二蒸発器収納室と,前記第二蒸発器と熱交換した空気を前記第二蒸発器収納室から前記冷凍温度帯室に導く第二送風経路と,前記冷凍温度帯室から前記冷凍温度帯室の略背部の前記第二蒸発器収納室に空気を導く第二戻り経路と,前記冷凍温度帯室に循環気流を形成する第二送風機と,を有し,
前記第二蒸発器収納室,前記第二送風経路,前記冷凍温度帯室または前記第二戻り経路の何れかと,前記第二冷蔵温度帯室とが,断熱仕切壁を通過している風路で連通している冷蔵庫。」
である点で一致し、以下の5点で相違する。
[相違点1]
第二蒸発器に関して、前者は、「前記第一蒸発器よりも低温となる第二蒸発器」であるのに対し、後者は、冷却器16がかかる事項を備えるか不明な点。
[相違点2]
前者は、「該圧縮機からの冷媒流れを制御する冷媒流制御手段」を備え、「前記冷媒流制御手段は,前記第一蒸発器への冷媒の第一流出口,及び,前記第二蒸発器への冷媒の第二流出口を備え,前記第一流出口を流れた冷媒は,前記第一蒸発器及び前記第二蒸発器のうち,前記第一蒸発器のみを冷却して前記圧縮機へ戻り,前記第二流出口を流れた冷媒は,前記第一蒸発器及び前記第二蒸発器のうち,前記第二蒸発器のみを冷却して前記圧縮機へ戻」るのに対し、後者は、かかる事項を備えるか不明な点。
[相違点3]
前者は、「前記第二蒸発器に流れる冷媒を減圧する第二減圧器」と「前記第一蒸発器に流れる冷媒を前記第二減圧器の減圧量よりも少なく減圧する第一減圧器」を備えるのに対し、後者は、かかる事項を備えるか不明な点。
[相違点4]
前者は、「前記第一送風機が形成する循環気流の循環経路と,前記第二送風機が形成する循環気流の循環経路とは,分離されて」いるのに対し、後者は、「前記冷蔵室7または前記冷凍室8に送出された前記冷気は、前記野菜室9にも循環」する点。
[相違点5]
第二戻り経路に関して、前者は、「前記冷凍温度帯室と前記第二冷蔵温度帯室とを隔てる断熱仕切壁も前記第二冷蔵温度帯室も通過せずに,前記冷凍温度帯室から前記冷凍温度帯室の略背部の前記第二蒸発器収納室に空気を導く第二戻り経路」を備え、「前記第二冷蔵温度帯室に供給される風量は,前記冷凍温度帯室に供給される風量より少な」いのに対し、後者は、「前記野菜室9から前記冷気生成室19に冷気を戻す冷気戻しダクト22」を備える点。
(イ)判断
事案に鑑み、はじめに相違点5について検討する。
相違点5に係る本件発明1の発明特定事項は、甲第2号証ないし甲第8号証には記載されておらず、示唆もない。そうすると、甲1発明に対し甲第2号証ないし甲第8号証に記載又は示唆されたものを適用しても、相違点5に係る本件発明1の発明特定事項とはならない。
そして、相違点5に係る本件発明1の発明特定事項によって、本件発明1は、省エネルギー性能が発揮でき、更にスペース効率も高い冷蔵庫を提供することができる。」という格別な効果を奏する。
したがって、相違点1ないし4について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲第2号証ないし甲第8号証に記載された技術事項から当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明2ないし本件発明4、本件発明7及び本件発明8
本件発明2ないし本件発明4、本件発明7及び本件発明8は、本件発明1を請求項2ないし請求項4、請求項7及び請求項8に記載される発明特定事項により特定したものである。そうすると、本件発明2ないし本件発明4、本件発明7及び本件発明8も、本件発明1の上記相違点5を有する。
したがって、本件発明2ないし本件発明4、本件発明7及び本件発明8は、本件発明1と同様の理由により、甲1発明及び甲第2号証ないし甲第8号証に記載された技術事項から当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 特許異議申立人の意見について
特許異議申立人は、本件発明1の「前記冷凍温度帯室と前記第二冷蔵温度帯室とを隔てる断熱仕切壁も前記第二冷蔵温度帯室も通過せずに,前記冷凍温度帯室から前記冷凍温度帯室の略背部の前記第二蒸発器収納室に空気を導く第二戻り経路」との事項について、当該事項は、周知技術(以下、「周知技術1」という。)にすぎない旨主張する。
また、特許異議申立人は、本件発明1の「前記第二冷蔵温度帯室に供給される風量は,前記冷凍温度帯室に供給される風量より少な」いことについてもまた周知技術(以下「周知技術2」という。)にすぎない旨主張する。そして、周知技術を示すものとして参考文献2ないし参考文献6を提示している。
しかしながら、ア(イ)で述べたとおり、本件発明1は、相違点5に係る本件発明1の発明特定事項、すなわち、「前記冷凍温度帯室と前記第二冷蔵温度帯室とを隔てる断熱仕切壁も前記第二冷蔵温度帯室も通過せずに,前記冷凍温度帯室から前記冷凍温度帯室の略背部の前記第二蒸発器収納室に空気を導く第二戻り経路」及び「前記第二冷蔵温度帯室に供給される風量は,前記冷凍温度帯室に供給される風量より少な」いことを兼ね備えることで、特有の効果を奏するものといえる。
そうすると、特許異議申立人が主張する周知技術1及び周知技術2が、それぞれ存在するとしても、甲1発明において、周知技術1及び周知技術2を適用して相違点5に係る本件発明1の発明特定事項に想到するといえるためには、はじめに甲1発明に周知技術1を適用した後、更に周知技術2を適用することとなる。しかしながら、このような適用は、いわゆる2段階容易に該当し、採用することはできない。
また、特許異議申立人が提示した参考文献2ないし参考文献6をみても、第一冷蔵温度帯室を冷却する第一送風機が形成する循環気流の循環経路と、冷凍温度帯室及び第二冷蔵温度帯室を冷却する第二送風機が形成する循環気流の循環経路とが、互いに分離されている冷蔵庫において、「前記冷凍温度帯室と前記第二冷蔵温度帯室とを隔てる断熱仕切壁も前記第二冷蔵温度帯室も通過せずに,前記冷凍温度帯室から前記冷凍温度帯室の略背部の前記第二蒸発器収納室に空気を導く第二戻り経路」及び「前記第二冷蔵温度帯室に供給される風量は,前記冷凍温度帯室に供給される風量より少な」いことを備えることが周知技術であるとはいえない。
したがって、特許異議申立人のかかる主張は、採用できない。
エ まとめ
以上のとおり、本件発明1ないし本件発明4、本件発明7及び本件発明8は、甲1発明及び甲第2号証ないし甲第8号証に記載された技術事項から当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)決定の予告において採用しなかった特許異議申立理由について
特許異議申立人は、訂正前の特許請求の範囲の請求項5に関し、特許異議申立書において、請求項5にかかる発明は甲第1号証、甲第8号証及び周知技術から容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定に違反するから特許法第113条第2項の規定により特許を受けることができないと主張している。
そこで、以下、特許異議申立人の主張を検討する。
ア 甲第1号証ないし甲第8号証の記載
甲第1号証ないし甲8号証の記載事項、図示事項及び認定事項及び甲1発明は、5.で述べたとおりである。
イ 対比
本件発明5と甲1発明とを対比すると、
後者の「冷凍室8」は、その機能、構成又は技術的意義からみて前者の「冷凍温度帯室」に相当し、同様に、「冷蔵室7」は「第一冷蔵温度帯室」に、「野菜室9」は「第二冷蔵温度帯室」にそれぞれ相当する。
そうすると、後者の「温度を冷凍温度帯に固定した冷凍室8の上方に冷蔵室7、前記冷凍室8の下方に温度を冷蔵温度帯に固定した野菜室9とを備え」ることは、前者の「温度を冷凍温度帯に固定した冷凍温度帯室の上方に第一冷蔵温度帯室,前記冷凍温度帯室の下方に,温度を冷蔵温度帯に固定した第二冷蔵温度帯室を備え」ることに相当する。
後者の「後部」は、その機能、構成又は技術的意義からみて前者の「略背部」に相当する。同様に「設けられた」は「位置する」に、「備えた」は「収納する」に、「冷気」は「空気」に、「戻す」は「導く」にそれぞれ相当する。
そうすると、後者の「前記冷蔵室7の後部に設けられた冷却器16と、該冷却器16を備えた冷気生成室19と、前記冷却器16と熱交換した冷気を前記冷気生成室19から前記冷蔵室7に導く送風経路と、前記冷蔵室7から前記冷気生成室19に冷気を戻す冷気戻しダクト22と、前記冷蔵室7に循環気流を形成する送風ファン20」は、前者の「前記第一冷蔵温度帯室の略背部に位置する第一蒸発器と,該第一蒸発器を収納する第一蒸発器収納室と,前記第一蒸発器と熱交換した空気を前記第一蒸発器収納室から前記第一冷蔵温度帯室に導く第一送風経路と,前記第一冷蔵温度帯室から前記第一蒸発器収納室に空気を導く第一戻り経路と,前記第一冷蔵温度帯室に循環気流を形成する第一送風機」に相当する。
後者の「圧縮機1a」は、その機能、構成又は技術的意義からみて前者の「冷媒を圧縮する圧縮機」に相当する。
後者の「前記冷凍室8の後部に設けられた、冷却器16」は、前者の「前記冷凍温度帯室の略背部に位置する第二蒸発器」に相当する。同様に、後者の「該冷却器16を備えた冷気生成室19」は、前記冷凍室8の後部に設けられた冷却器16を収納する冷気生成室19であるから、前者の「該第二蒸発器を収納する第二蒸発器収納室」に相当する。
また、後者の「前記冷却器16と熱交換した冷気を前記冷気生成室19から前記冷凍室8に導く送風経路」は、前者の「前記第二蒸発器と熱交換した空気を前記第二蒸発器収納室から前記冷凍温度帯室に導く第二送風経路」に相当する。
さらに、後者の「前記野菜室9から前記冷気生成室19に冷気を戻す冷気戻しダクト22」は、冷気生成室19から前記冷凍室8に導かれ、その後に前記冷凍室8から送出され、野菜室9を循環した冷気を冷気生成室19に戻す冷気戻しダクト22であるから、前者の「前記第二送風経路から前記第二冷蔵温度帯室に空気を導く第三送風経路と、前記第二冷蔵温度帯室から前記第二蒸発器収納室に空気を導く第三戻り経路」に相当する。
そうすると、後者の「前記冷凍室8の後部に設けられた冷却器16と、該冷却器16を備えた冷気生成室17と、前記冷却器16と熱交換した冷気を前記冷気生成室19から前記冷凍室8に導く送風経路」及び「前記野菜室9から前記冷気生成室19に冷気を戻す冷気戻しダクト22」と前者の「前記冷凍温度帯室の略背部に位置する第二蒸発器と、該第二蒸発器を収納する第二蒸発器収納室と、前記第二蒸発器と熱交換した空気を前記第二蒸発器収納室から前記冷凍温度帯室に導く第二送風経路と、前記冷凍温度帯室から前記第二蒸発器収納室に空気を導く第二戻り経路と、
前記第二送風経路から前記第二冷蔵温度帯室に空気を導く第三送風経路と、前記第二冷蔵温度帯室から前記第二蒸発器収納室に空気を導く第三戻り経路」とは、「前記冷凍温度帯室の略背部に位置する第二蒸発器と、該第二蒸発器を収納する第二蒸発器収納室と、前記第二蒸発器と熱交換した空気を前記第二蒸発器収納室から前記冷凍温度帯室に導く第二送風経路と、
前記第二送風経路から前記第二冷蔵温度帯室に空気を導く第三送風経路と、前記第二冷蔵温度帯室から前記第二蒸発器収納室に空気を導く第三戻り経路」という限りで一致する。
後者の「前記冷凍室8及び前記野菜室9に循環気流を形成する送風ファン20」は、前者の「前記冷凍温度帯室及び前記野菜室に循環気流を形成する第二送風機」に相当する。
そうすると、両者は、
「温度を冷凍温度帯体に固定した冷凍温度帯室の上方に第一冷蔵温度帯室,前記冷凍温度帯室の下方に冷蔵温度帯に固定された野菜室を備え,
前記第一冷蔵温度帯室の略背部に位置する第一蒸発器と,該第一蒸発器を収納する第一蒸発器収納室と,前記第一蒸発器と熱交換した空気を前記第一蒸発器収納室から前記第一冷蔵温度帯室に導く第一送風経路と,前記第一冷蔵温度帯室から前記第一蒸発器収納室に空気を導く第一戻り経路と,前記第一冷蔵温度帯室に循環気流を形成する第一送風機と,
冷媒を圧縮する圧縮機,を備え、
前記冷凍温度帯室の略背部に位置する第二蒸発器と,該第二蒸発器を収納する第二蒸発器収納室と,前記第二蒸発器と熱交換した空気を前記第二蒸発器収納室から前記冷凍温度帯室に導く第二送風経路と,
前記第二送風経路から前記第二冷蔵温度帯室に空気を導く第三送風経路と,前記第二冷蔵温度帯室から前記第二蒸発器収納室に空気を導く第三戻り経路と,
前記冷凍温度帯室及び前記野菜室に循環気流を形成する第二送風機と,を備える冷蔵庫。」
である点で一致し、以下の3点で相違する。
[相違点1]
前者は、「該圧縮機からの冷媒流れを制御する冷媒流制御手段」を備え、「前記冷媒流制御手段は,前記第一蒸発器への冷媒の第一流出口,及び,前記第二蒸発器への冷媒の第二流出口を備え,前記第一流出口を流れた冷媒は,前記第一蒸発器及び前記第二蒸発器のうち,前記第一蒸発器のみを冷却して前記圧縮機へ戻り,前記第二流出口を流れた冷媒は,前記第一蒸発器及び前記第二蒸発器のうち,前記第二蒸発器のみを冷却して前記圧縮機へ戻」るのに対し、後者は、かかる事項を備えるか不明な点。
[相違点2]
前者は、「前記第二蒸発器に流れる冷媒を減圧する第二減圧器」と「前記第一蒸発器に流れる冷媒を前記第二減圧器の減圧量よりも少なく減圧する第一減圧器」を備えるのに対し、後者は、かかる事項を備えるか不明な点。
[相違点3]
第二蒸発器と熱交換した空気の経路に関して、前者は、「前記第二蒸発器と熱交換した空気を前記第二蒸発器収納室から前記冷凍温度帯室に導く第二送風経路と、前記冷凍温度帯室から前記第二蒸発器収納室に空気を導く第二戻り経路」と「前記第二送風経路から前記第二冷蔵温度帯室に空気を導く第三送風経路と、前記第二冷蔵温度帯室から前記第二蒸発器収納室に空気を導く第三戻り経路」を備えるのに対し、後者は、「前記冷却器16と熱交換した冷気を前記冷気生成室19から前記冷蔵室7に導く送風経路と、前記冷蔵室7から前記冷気生成室19に冷気を戻す冷気戻しダクト22」を備え、「前記冷蔵室7または前記冷凍室8に送出された前記冷気は、前記野菜室9にも循環」するものである点。
ウ 判断
事案に鑑み、上記相違点3について検討する。
甲第8号証の記載事項及び図示事項から、甲第8号証には、次の技術事項(以下、「甲8記載の技術事項」という。)を開示していると理解できる。
[甲8記載の技術事項]
「冷蔵庫100は、冷却器収容室R62から製氷室R2、上段冷凍室R3、及び下段冷凍室R4に冷気を供給するための、吹出孔h2が設けられた冷凍室送風ダクトD2と、冷却器収容室R62から野菜室R5に冷気を供給するための冷気供給流路h5を備えていること。」
甲8記載の技術事項において、野菜室R5への冷気の供給は、冷凍室送風ダクトD2とは異なる構成である冷却器収納室R62から冷気供給流路h5によりなされているのであるから、仮に甲1発明に甲8記載の技術事項を適用する動機があるとしても、該適用したものは、相違点3に係る本件発明5の発明特定事項である「前記第二蒸発器と熱交換した空気を前記第二蒸発器収納室から前記冷凍温度帯室に導く第二送風経路と、前記冷凍温度帯室から前記第二蒸発器収納室に空気を導く第二戻り経路」と「前記第二送風経路から前記第二冷蔵温度帯室に空気を導く第三送風経路と、前記第二冷蔵温度帯室から前記第二蒸発器収納室に空気を導く第三戻り経路」を構成することとはならない。
また、相違点3に係る本件発明5の発明特定事項は、甲第2号証ないし甲第7号証に記載されておらず、示唆もない。
そして、相違点3に係る本件発明5の発明特定事項により、本件発明5は「高い省エネルギー性能を発揮でき、更にスペース効率も高い冷蔵庫を提供する」等の格別顕著な効果を奏する。
エ まとめ
以上のとおりであるから、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明5は、甲1発明、甲8記載の技術事項、甲第2号証の記載事項ないし甲第7号証の記載事項から当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、本件発明5は、甲第1号証ないし甲第8号証に基いて当業者が容易に発明をすることができたといえないから、特許異議申立書における特許異議申立人の主張には理由がない。
4.むすび
以上のとおり、決定の予告に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、訂正後の請求項1ないし請求項5、請求項7及び請求項8に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に訂正後の請求項1ないし請求項5、請求項7及び請求項8に係る特許を取り消すべき理由は発見しない。
また、請求項6は、上記のとおり訂正により削除された。これにより、請求項6に係る特許異議の申立は、申立の対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
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2023-701008