特許異議申立
2024-700285
冷蔵庫
- 審判番号
- 2024-700285
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2018-170404
- 登録番号
- 7358039
- 請求日
- 2024年03月29日
- 審決日
- 2024年06月21日
- 公報発行日
- 2024年07月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】三菱電機株式会社
- 【権利者代理人】弁理士法人深見特許事務所
- 【異議申立人】中里 昭恵
- 審判長/審判官
- 審判長 鈴木 充
- 審判官 石黒 雄一
- 審判官 竹下 和志
- 分類
- P1651.121-Y (F25D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第113条第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7358039号発明「冷蔵庫」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7358039号の請求項1及び2に係る特許を維持する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7358039号の請求項1及び2の特許(以下、「本件特許」という。)に係る出願は、平成30年9月12日に特許出願され、令和5年9月29日にその特許権の設定登録がされ、令和5年10月10日に特許掲載公報が発行された。
その後、令和6年3月29日に特許異議申立人中里昭恵(以下、「特許異議申立人」という。)により、請求項1及び2に係る特許に対する特許異議の申立てがされたものである。
第2 本件発明
本件特許の請求項1及び2に係る発明(以下、「本件発明1」及び「本件発明2」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機から出力される冷媒を凝縮する凝縮器と、
前記凝縮器の下流に設けられる毛細管と、
前記毛細管から出力される冷媒を蒸発させることによって庫内を冷却する冷却器と、
前記冷却器から前記圧縮機へ戻される冷媒と前記毛細管を流れる冷媒との間で熱交換を行なうように構成された熱交換器と、
前記毛細管の上流に設けられ、前記凝縮器と前記毛細管との間の配管に設けられる膨張弁と、
前記凝縮器と前記膨張弁との間の配管に設けられるドライヤと、
前記膨張弁の開度を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、前記熱交換器を通過して前記圧縮機へ吸入される吸入冷媒の温度を、前記膨張弁の開度を絞ることによって低下させつつ、前記吸入冷媒の温度が外気の露点温度よりも高くなるように前記開度を制御する、冷蔵庫。
【請求項2】
前記圧縮機及び前記凝縮器が配設される機械室をさらに備え、
前記膨張弁及び前記ドライヤは、前記機械室に配設される、請求項1に記載の冷蔵庫。」
第3 申立理由の概要
本件発明1及び本件発明2に対して特許異議申立人が申立てた理由は、大略、次のとおりである。
本件発明1は、その出願前に日本国内または外国において頒布された下記の甲第1号証~甲第4号証に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、特許法第113条第2号の規定により、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
なお、特許異議申立書の3(1)「申立の理由の要約」の「理由の要点」には、「請求項1は、甲第1号証記載の発明及び甲第2号証の記載事項から容易想到である」こと、(5)「結び」には、「本件発明1は、甲第1号証記載の発明及び甲第2号証の記載事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたもの」であることが記載されているが、(4-3-1)「本件発明1について」において記載された具体的な理由には、甲第3号証及び甲第4号証が技術常識の例として示されていることからみて、本件発明1について申立てた理由は、実質的に上記のとおりのものであると認められる。
また、本件発明2は、その出願前に日本国内または外国において頒布された下記の甲第1号証~甲第6号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、特許法第113条第2号の規定により、その発明に係る特許は取り消すべきものである。
なお、特許異議申立書の3(1)「申立の理由の要約」の「理由の要点」には、「請求項2は、甲第1号証記載の発明及び甲第2号証の記載事項に基づき、甲第5号証又は周知技術を適用することで容易想到である」こと、(5)「結び」には、「本件発明2は、甲第1号証記載の発明及び甲第2号証の記載事項に基づき、甲第5号証又は周知技術を適用することで当業者が容易に発明をすることができたもの」であることが記載されているが、(4-3-2)「本件発明2について」において記載された具体的な理由には、甲第6号証が周知技術の例として示されていることからみて、本件発明2について申立てた理由は、実質的に上記のとおりのものであると認められる。
<証拠一覧>
甲第1号証:特開平5-196321号公報
甲第2号証:特開平3-75475号公報
甲第3号証:特開2003-194446号公報
甲第4号証:特開2000-161830号公報
甲第5号証:特開2015-14373号公報
甲第6号証:特開2009-162425号公報
第4 当審の判断
1 各甲号証に記載の事項等
(1)甲第1号証
ア 甲第1号証には、次の記載事項、図示事項がある(下線は、当審が付した。以下同様。)。
(ア)「【0108】図45に第1実施例の冷凍サイクル装置500の構成図を示す。本冷凍サイクル装置500は、圧縮機(コンプレッサ)501、凝縮器(コンデンサ)503、受液器(レシーバ)505、膨張弁507、熱交換器509、固定開度の絞り弁511、および冷媒蒸発流路(エバポレータ)513を備えている。」
(イ)「【0109】この内、熱交換器509、固定開度の絞り弁511、および冷媒蒸発流路(エバポレータ)513の組合せは蒸発器として、第1発明の各実施例が使用できる。膨張弁507は、熱交換器509と圧縮機501との間に配置した感温筒507aを備え、その位置の過熱度を弁開度に反映させている。即ち、膨張弁507は、熱交換器509から出てきて圧縮機501へ向かう冷媒の過熱度が、常に所定過熱度に維持されるように、冷媒の流量をコントロールすることにより、室内温度の変動や圧縮機501の回転速度の変動に対応している。このことにより、冷媒蒸発流路513により冷却されて吹き出す空気の温度が所定温度に維持される。
【0110】上記所定過熱度は、圧縮機501に液体状の冷媒が到達しないように十分に高い値に設定してあるとともに、冷媒蒸発流路513から熱交換器509内へ導入された冷媒(出口冷媒)が熱交換器509内で、乾き度1未満の状態から、乾き度1以上である過熱蒸気に変化するように設定してある。
【0111】このような設定は、膨張弁507の調整機構や固定開度の絞り弁511の開度等の調整によりなされる。本実施例はこのように構成されていることにより、第1発明の図15,図22と同様な冷凍サイクルが実現される。
【0112】第1実施例の冷凍サイクル装置500によれば、熱交換器509および絞り弁511を設け、更に膨張弁507により熱交換器509内で、出口冷媒が乾き度1未満の状態から、乾き度1以上である過熱蒸気に変化するように設定したことにより、冷媒蒸発流路513において内面がドライアウトすることを防止でき、熱交換効率を高めることができる。この結果、冷媒蒸発流路513全域の冷媒と室内空気との熱交換効率を均一にすることができ、冷媒蒸発流路513から吹き出す室内空気の温度を均一かつ十分に低下させることができる。」
(ウ)「【0127】図53に第6実施例の冷凍サイクル装置560の構成図を示す。本冷凍サイクル装置560は、第5実施例の熱交換器553の代わりに螺旋状キャピラリ563aを入口冷媒の流路とした熱交換器563を備えている。この螺旋状キャピラリ563aは第5実施例の入口冷媒流路553aと同様に作用する。」
(エ)「【0129】図54に第7実施例の冷凍サイクル装置570の構成図を示す。本冷凍サイクル装置570は、第6実施例のキャピラリ551の代わりに、熱交換器563と圧縮機501との間に感温筒571aを有する膨張弁571を備えている。またアキュムレータ555は存在しない。この構成は、第2発明の積層型蒸発器を適用した場合に該当する。
【0130】このため、膨張弁571の設定、圧縮機501の能力、キャピラリ551の流動抵抗、熱交換器553の入口冷媒の螺旋状キャピラリ563aの流動抵抗、あるいはその他の構成の適宜なされる設定により、前述の図52と同様な冷凍サイクルが実現される。またアキュムレータ555がない代わりに、膨張弁571が熱交換器563から圧縮機501へ向かう冷媒の過熱度を適切に調節できるので、液体状の冷媒が圧縮機501へ到達するのを十分防止できる。」
(オ)「【0145】以上各発明の実施例について説明したが、各発明はこのような実施例に何ら限定されるものではなく、各発明の要旨を変更しない範囲において、当業者が想到し得る全ての実施例を含む。勿論、各発明の各実施例も自動車用空気調和装置分野に限らず、冷蔵庫、建築物用空気調和装置等の分野にも適用できる。」
(カ)図54「
[図:0001412316000001.jpg]
」
イ 冷凍サイクル装置において、「圧縮機」は、冷媒を圧縮するものであることが技術常識であるから、上記ア(ア)、(エ)及び(カ)の「圧縮機501」は、冷媒を圧縮するものであると認められる。
ウ 上記ア(ア)及び(カ)の「凝縮器503」が冷媒を凝縮するものであることは自明であるし、「凝縮器503」は、圧縮機501の下流に設けられているから、「凝縮器503」は、圧縮機501から出力される冷媒を凝縮する凝縮器503であると認められる。
エ 上記ア(カ)から、「螺旋状キャピラリ563a」は、凝縮器503の下流に設けられていると認められる。
オ 上記ア(ア)及び(カ)の「冷媒蒸発流路513」が冷媒を蒸発させるものであることは自明であるし、「冷媒蒸発流路513」は、螺旋状キャピラリ563aの下流に設けられているから、螺旋状キャピラリ563aから出力される冷媒を蒸発させるものであると認められる。
カ 上記ア(カ)からみて「熱交換器563」は、冷媒蒸発流路513から圧縮機501へ向かう冷媒と螺旋状キャピラリ563aを流れる冷媒との間で熱交換を行なうように構成されていると認められる。
キ 上記ア(カ)からみて「膨張弁571」は、螺旋状キャピラリ563aの上流に設けられ、凝縮器503と螺旋状キャピラリ563aとの間の配管に設けられていると認められる。
ク 上記ア(イ)の「膨張弁507は、熱交換器509と圧縮機501との間に配置した感温筒507aを備え、その位置の過熱度を弁開度に反映させている。即ち、膨張弁507は、熱交換器509から出てきて圧縮機501へ向かう冷媒の過熱度が、常に所定過熱度に維持されるように、冷媒の流量をコントロールすることにより、室内温度の変動や圧縮機501の回転速度の変動に対応している。このことにより、冷媒蒸発流路513により冷却されて吹き出す空気の温度が所定温度に維持される。」、「上記所定過熱度は、圧縮機501に液体状の冷媒が到達しないように十分に高い値に設定してあるとともに、冷媒蒸発流路513から熱交換器509内へ導入された冷媒(出口冷媒)が熱交換器509内で、乾き度1未満の状態から、乾き度1以上である過熱蒸気に変化するように設定してある。」なる記載、上記ア(エ)の「本冷凍サイクル装置570は、第6実施例のキャピラリ551の代わりに、熱交換器563と圧縮機501との間に感温筒571aを有する膨張弁571を備えている。」、「膨張弁571が熱交換器563から圧縮機501へ向かう冷媒の過熱度を適切に調節できるので、液体状の冷媒が圧縮機501へ到達するのを十分防止できる。」なる記載から、上記ア(エ)及び(カ)の「感温筒571a」は、熱交換器563から出てきて圧縮機501へ向かう冷媒の過熱度を膨張弁571の弁開度に反映させるものであると認められる。
ケ 上記ア(オ)の「各発明の各実施例も自動車用空気調和装置分野に限らず、冷蔵庫、建築物用空気調和装置等の分野にも適用できる。」なる記載から、甲第1号証には、上記ア(エ)及び(カ)の第7実施例の冷凍サイクル装置570を適用した冷蔵庫が記載されていると認められる。
コ 上記ア~ケから、甲第1号証には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。
[甲1発明]
「冷媒を圧縮する圧縮機501と、
前記圧縮機501から出力される冷媒を凝縮する凝縮器503と、
前記凝縮器503の下流に設けられる螺旋状キャピラリ563aと、
前記螺旋状キャピラリ563aから出力される冷媒を蒸発させる冷媒蒸発流路513と、
前記冷媒蒸発流路513から前記圧縮機501へ向かう冷媒と前記螺旋状キャピラリ563aを流れる冷媒との間で熱交換を行なうように構成された熱交換器563と、
前記螺旋状キャピラリ563aの上流に設けられ、前記凝縮器503と前記螺旋状キャピラリ563aとの間の配管に設けられる膨張弁571と、
熱交換器563から出てきて圧縮機501へ向かう冷媒の過熱度を前記膨張弁571の弁開度に反映させる感温筒571aとを備える、
冷蔵庫。」
(2)甲第2号証
ア 甲第2号証には、次の記載事項及び図示事項がある。
(ア)「なお温度式自動膨張弁(4)は蒸発器(5)の出口側の冷媒温度を検出することにより、当該蒸発器(5)の出口(9)での冷媒のスーパーヒートを制御している。」(第2頁右下欄第5~8行)
(イ)「上記構成において圧縮機(1)から吐出された高温高圧のガス冷媒は凝縮器(2)に入り、そこで放熱して液冷媒となる。そしてこの凝縮器(2)を出た液冷媒はドライヤー(3)を通り、キャピラリーチューブ(6)に入り、そこで第1次減圧を行ない、温度式自動膨張弁(4)内で第2次減圧を行なった後、気液2相冷媒となって蒸発器(5)に入り、ここで2相冷媒が蒸発することにより冷蔵庫温度を低温に保っている。また上記温度式自動膨張弁(4)のコントロールにより、蒸発器(5)の出口(9)での冷媒のスーパーヒートを常に最適になるように制御し、蒸発器(5)のポテンシアルを完全に利用する運転を行なっている。そして蒸発器(5)で蒸発したガス冷媒は液溜め容器(7)を通って圧縮機(1)に再び戻されるという以上の運転が繰り返されることになる。」(第2頁右下欄第9行~第3頁左上欄第4行)
(ウ)「上記冷凍サイクルにおいて、この発明のものではキャピラリーチューブ(6)と吸入配管の途中部(11)とで熱交換器(10)を構成しているため、第2図のモリエル線図で示すごとく、蒸発器(5)の入口(8)、出口(9)のエンタルピ差が従来の場合に比べ増加し(E2>E1)、冷凍能力が向上することになり、これにより冷蔵庫の運転率が減少し、消費電力の低減が図れる。また上記の熱交換器(10)の作用により、圧縮機(1)の吸入口での冷媒温度が従来の場合に比べ高くなるため、圧縮機(1)への冷媒の吸入配管に対する露付きも防止できることになる。」(第3頁左上欄第5~16行)
(エ)第1図「
[図:0001412316000002.jpg]
」
イ 上記アから、甲第2号証には、以下の事項(以下、「甲2記載事項」という。)が記載されている。
[甲2記載事項]
「凝縮器(2)を出た液冷媒がドライヤー(3)を通り、キャピラリーチューブ(6)に入り、そこで第1次減圧を行ない、温度式自動膨張弁(4)内で第2次減圧を行なった後、気液2相冷媒となって蒸発器(5)に入り、蒸発器(5)で蒸発したガス冷媒は液溜め容器(7)を通って圧縮機(1)に再び戻される、冷蔵庫の冷凍サイクルにおいて、キャピラリーチューブ(6)と吸入配管の途中部(11)とで構成された熱交換器(10)の作用により、圧縮機(1)の吸入口での冷媒温度が従来の場合に比べ高くなるため、圧縮機(1)への冷媒の吸入配管に対する露付きも防止できること。」
(3)甲第3号証
ア 甲第3号証には、次の記載事項及び図示事項がある。
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、冷蔵庫に係り、特に共通の蒸発器で複数の異なる温度帯の貯蔵室を冷却する冷蔵庫に好適なものである。」
(イ)「【0015】図1の冷凍サイクルは、圧縮機1、吐出配管22、凝縮器2、キャピラリチューブ3、電動式膨張弁4、蒸発器5及び吸込配管6を順次接続して構成される。キャピラリチューブ3と電動式膨張弁4は減圧装置を構成するものである。」
(ウ)「【0058】また、圧縮機1の吸込配管6に取り付けた温度センサ8による検知温度が所定温度以下の場合、電動式膨張弁4の開度を開方向に動作させることにより、吸込配管6の温度を上昇させ結露を防止する。逆に、冷媒不足や圧縮機の高速運転などにより吸込配管6の温度が所定温度以上の場合、電動式膨張弁4の開度を閉方向に動作させることにより、低温冷媒を圧縮機1に戻して圧縮機1の温度上昇を防止する。」
(エ)図1「
[図:0001412316000003.jpg]
」
イ 上記アから、甲第3号証には、以下の事項(以下、「甲3記載事項」という。)が記載されている。
[甲3記載事項]
「圧縮機1、吐出配管22、凝縮器2、キャピラリチューブ3、電動式膨張弁4、蒸発器5及び吸込配管6を順次接続して構成される冷蔵庫の冷凍サイクルにおいて、圧縮機1の吸込配管6に取り付けた温度センサ8による検知温度が所定温度以下の場合、電動式膨張弁4の開度を開方向に動作させることにより、吸込配管6の温度を上昇させ結露を防止し、逆に、冷媒不足や圧縮機の高速運転などにより吸込配管6の温度が所定温度以上の場合、電動式膨張弁4の開度を閉方向に動作させることにより、低温冷媒を圧縮機1に戻して圧縮機1の温度上昇を防止すること。」
(4)甲第4号証
ア 甲第4号証には、次の記載事項及び図示事項がある。
(ア)「【0086】第1実施形態の冷蔵庫R1は、冷媒を圧縮するための圧縮機(コンプレッサ)1と、冷媒を凝縮するための凝縮器(コンデンサ)2と、冷媒を蒸発させるための蒸発器(エバポレータ)4と、液化された冷媒の減圧を行うための抵抗器5Aを含み配管の結露を防止するための熱回収器5と、冷蔵庫の庫内温度T6 を検出する庫内温度センサ6と、圧縮機1の吸入側の冷媒温度である吸入温度T7 を検出する吸入温度センサ7と、吸入温度T7 及び後述する室内温度T10に基づいて圧縮機1のオン/オフ制御及び後述の電動流量制御弁12の開度制御を行う制御回路8と、冷蔵庫R1の設置場所の周辺の温度である室内温度T10を検出する室内温度センサ10と、その開度を調整することにより冷媒の流量を制御するための電動流量制御弁12と、を備えて構成されている。」
(イ)「【0091】図3に第1実施形態の冷蔵庫の処理フローチャートを示す。冷蔵庫R1の吸入温度センサ7は、圧縮機1の吸入側の冷媒温度である吸入温度T7を検出する(ステップS1)。一方、室内温度センサ10は、冷蔵庫R1の設置場所の周辺の温度である室内温度T10を検出する(ステップS2)。次に制御回路8の露点温度演算部8Aは、室内温度T10に基づいて予め定めた湿度(例えば、湿度80[%])における露点温度TR1を算出する(ステップS3)。
【0092】そして、電動流量制御弁弁開度制御部8Cは、比較対象露点温度TR (=露点温度TR1)及び吸入温度T7 のうちいずれが高いかを判別、すなわち、
T7 >TR =TR1
あるいは、
T7 <TR =TR1
のいずれであるかを判別する(ステップS4)。
【0093】ステップS4の判別において、
T7 >TR =TR1
である場合には、電動流量制御弁弁開度制御部8Cは、電動流量制御弁12を開方向に駆動し、電動流量制御弁12の開度を大きくし、
T7 =TR1
となるように制御する(ステップS5)。また、ステップS4の判別において、
T7 <TR =TR1
である場合には、電動流量制御弁弁開度制御部8Cは、電動流量制御弁12を閉方向に駆動し、電動流量制御弁12の開度を小さくして、
T7 =TR1
となるように制御する(ステップS6)。
【0094】[1.4] 第1実施形態の効果
以上の説明のように、本第1実施形態によれば、吸入温度T7 及び露点温度TR1に基づいて、電動流量制御弁12の開度を制御し、吸入温度T7 =露点温度TR1となるように制御するので、吸入配管が結露することが無くなる。従って、特別に防露処理、排水処理を施す必要が無くなる。この結果、熱回収器5を含めた冷媒系の制御を行うこととなるため、システム効率が向上し、省エネルギーを図ることができる。さらに圧縮機における液バックの発生を確実に抑制することができ、圧縮機の信頼性を向上させることができる。」
(ウ)図1「
[図:0001412316000004.jpg]
」
(エ)図3「
[図:0001412316000005.jpg]
」
イ 上記アから、甲第4号証には、以下の事項(以下、「甲4記載事項」という。)が記載されている。
[甲4記載事項]
「冷媒を圧縮するための圧縮機1、冷媒を凝縮するための凝縮器2、液化された冷媒の減圧を行うための抵抗器5A、その開度を調整することにより冷媒の流量を制御するための電動流量制御弁12、冷媒を蒸発させるための蒸発器4が順次接続されて構成される冷蔵庫において、圧縮機1の吸入側の冷媒温度である吸入温度T7 及び露点温度TR1に基づいて、T7 >TR =TR1である場合には、電動流量制御弁12を開方向に駆動し、電動流量制御弁12の開度を大きくし、T7 =TR1となるように制御し、T7 <TR =TR1である場合には、電動流量制御弁12を閉方向に駆動し、電動流量制御弁12の開度を小さくして、T7 =TR1となるように制御することで、吸入配管が結露することが無くなること。」
2 対比及び判断
(1)本件発明1について
ア 対比
本件発明1と甲1発明とを対比すると、後者の「圧縮機501」、「凝縮器503」、「螺旋状キャピラリ563a」、「熱交換器563」、「膨張弁571」は、それぞれ、その機能、構成又は技術的意義からみて前者の「圧縮機」、「凝縮器」、「毛細管」、「熱交換器」、「膨張弁」に相当する。
また、甲第1号証の段落【0108】の「冷媒蒸発流路(エバポレータ)513」なる記載(上記1(1)ア(ア)参照。)、同段落【0112】の「冷媒蒸発流路513全域の冷媒と室内空気との熱交換効率を均一にすることができ、冷媒蒸発流路513から吹き出す室内空気の温度を均一かつ十分に低下させることができる。」なる記載(上記1(1)ア(イ)参照。)から、「冷媒蒸発流路513」は、冷凍サイクル装置においてエバポレータの機能を奏しており、冷却対象の室内空気を冷却するためのものであると理解できるし、冷蔵庫の冷凍サイクルにおけるエバポレータは、冷却対象の庫内を冷却する冷却器として使用されることが技術常識であるから、後者の「冷媒を蒸発させる冷媒蒸発流路513」は、前者の「冷媒を蒸発させることによって庫内を冷却する冷却器」に相当する。
さらに、後者の「感温筒571a」は、熱交換器563から出てきて圧縮機501へ向かう冷媒の過熱度を膨張弁571の弁開度に反映させるもの、すなわち、上記過熱度に応じて膨張弁571の弁開度を制御するものであるから、前者の「前記膨張弁の開度を制御する制御装置」に相当する。
以上より、本件発明1と甲1発明とは、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。
[一致点]
「冷媒を圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機から出力される冷媒を凝縮する凝縮器と、
前記凝縮器の下流に設けられる毛細管と、
前記毛細管から出力される冷媒を蒸発させることによって庫内を冷却する冷却器と、
前記冷却器から前記圧縮機へ戻される冷媒と前記毛細管を流れる冷媒との間で熱交換を行なうように構成された熱交換器と、
前記毛細管の上流に設けられ、前記凝縮器と前記毛細管との間の配管に設けられる膨張弁と、
前記膨張弁の開度を制御する制御装置とを備える、
冷蔵庫。」
[相違点1]
前者は、「前記凝縮器と前記膨張弁との間の配管に設けられるドライヤ」を備えるのに対し、後者は、ドライヤを備えない点。
[相違点2]
前者は、「前記制御装置は、前記熱交換器を通過して前記圧縮機へ吸入される吸入冷媒の温度を、前記膨張弁の開度を絞ることによって低下させつつ、前記吸入冷媒の温度が外気の露点温度よりも高くなるように前記開度を制御する」のに対し、後者は、当該事項を備えない点。
イ 検討
事情に鑑み、上記相違点2について検討する。
甲2記載事項は、圧縮機(1)への冷媒の吸入配管に対する露付きを防止することが含まれているものの、当該露付き防止の効果は、キャピラリーチューブ(6)と吸入配管の途中部(11)とで構成された熱交換器(10)の作用によるものである。
また、甲第2号証には、温度式自動膨張弁(4)のコントロールにより、蒸発器(5)の出口(9)での冷媒のスーパーヒートを常に最適になるように制御し、蒸発器(5)のポテンシアルを完全に利用する運転を行なっていることが記載されている(上記1(2)ア(ア)及び(イ)参照。)ものの、甲第2号証には、本件発明1の「前記制御装置は、前記熱交換器を通過して前記圧縮機へ吸入される吸入冷媒の温度を、前記膨張弁の開度を絞ることによって低下させつつ、前記吸入冷媒の温度が外気の露点温度よりも高くなるように前記開度を制御する」ことに相当する事項は、記載も示唆もされていない。
甲3記載事項は、圧縮機1の吸込配管6に取り付けた温度センサ8による検知温度が所定温度以下の場合、電動式膨張弁4の開度を開方向に動作させることにより、吸込配管6の温度を上昇させ結露を防止すること、及び、冷媒不足や圧縮機の高速運転などにより吸込配管6の温度が所定温度以上の場合、電動式膨張弁4の開度を閉方向に動作させることにより、低温冷媒を圧縮機1に戻して圧縮機1の温度上昇を防止することが含まれているものの、甲第3号証には、「前記制御装置は、前記熱交換器を通過して前記圧縮機へ吸入される吸入冷媒の温度を、前記膨張弁の開度を絞ることによって低下させつつ、前記吸入冷媒の温度が外気の露点温度よりも高くなるように前記開度を制御する」ことに相当する事項は、記載も示唆もされていない。
甲4記載事項は、吸入温度T7が露点温度TR1よりも低い場合には、電動流量制御弁12を閉方向に駆動し、電動流量制御弁12の開度を小さくし、T7 =TR1となるように制御する、すなわち、吸入温度T7が露点温度TR1よりも低い場合は電動流量制御弁12の開度を小さくして吸入温度T7を上げる方向に制御することが含まれており、「前記圧縮機へ吸入される吸入冷媒の温度を、前記膨張弁の開度を絞ることによって低下させ」ることとは、逆の制御態様となっている。
してみると、甲4記載事項は、圧縮機1の吸入側の冷媒温度である吸入温度T7 及び露点温度TR1に基づいて電動流量制御弁12の開度を制御することで、吸入配管が結露することが無くなることが含まれているものの、甲第4号証には、「前記制御装置は、前記熱交換器を通過して前記圧縮機へ吸入される吸入冷媒の温度を、前記膨張弁の開度を絞ることによって低下させつつ、前記吸入冷媒の温度が外気の露点温度よりも高くなるように前記開度を制御する」ことに相当する事項は、記載も示唆もされていない。
また、本特許異議の申立てにおいて提出された甲第5号証及び甲第6号証にも、「前記制御装置は、前記熱交換器を通過して前記圧縮機へ吸入される吸入冷媒の温度を、前記膨張弁の開度を絞ることによって低下させつつ、前記吸入冷媒の温度が外気の露点温度よりも高くなるように前記開度を制御する」ことに相当する事項は、記載も示唆もされていない。
そして、相違点2に係る本件発明1の発明特定事項により、本件発明1は、「低温の吸入冷媒が流れる配管86cに露が付着しないように、熱交換器70によって吸入冷媒の温度T1を上昇させ、露点温度T3よりも高い温度T1を確保している。一方で、上述のように、LEV40の開度を絞ることで吸入冷媒の温度T1を低下させることによって、圧縮機10の入力を低減することができる。そこで、この実施の形態に従う冷蔵庫1では、外気の露点温度T3よりも高い範囲で吸入冷媒の温度T1を下げるように、LEV40の開度が制御される。これにより、LEV40を設けることによる効果を得つつ、吸入冷媒が流れる配管86cに露が付着するのを防止することができる。」(明細書段落【0057】)等の格別顕著な効果を奏する。
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2~6記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1の発明特定事項をすべて含むから、本件発明1についての検討で述べたとおり、甲1発明及び甲2~6記載事項から、当業者が容易に想到できたものではない。
3 特許異議申立人の主張について
特許異議申立人は、異議申立書において、次の主張をしている。
「構成要件1Jにおける「前記制御装置は、前記熱交換器を通過して前記圧縮機へ吸入される吸入冷媒の温度を、前記膨張弁の開度を絞ることによって低下させる」のは、上記の引用段落[0033]~[0037]に記載のとおり、「キャピラリチューブ50の上流にLEV40を設ける」ことで得られるものであり、甲第1号証記載の発明についても、「キャピラリチューブ50の上流にLEV40を設ける」構成に変わりはないことから、甲第1号証記載の発明においても、膨張弁の開度を絞ることによって圧縮機へ吸入される吸入冷媒の温度が低下するものであり、構成要件1Jにおける「前記制御装置は、前記熱交換器を通過して前記圧縮機へ吸入される吸入冷媒の温度を、前記膨張弁の開度を絞ることによって低下させる」ものである。」(第11頁第21行~第12頁第1行)
「甲第1号証に記載の発明においても構成要件1Eを備えていることから、熱交換器70によって吸入冷媒の温度T1を上昇させ、露点温度T3よりも高い温度T1を確保することができる。更には、構成要件1Eについては、甲第2号証にも記載されている。
すなわち、構成要件1Jにおける「前記吸入冷媒の温度が外気の露点温度よりも高くなるように前記開度を制御する」のは「外気の露点温度T3よりも高い危囲で吸入冷媒の温度T1を下げる」ということに過ぎず、吸入冷媒の温度T1が、露点温度T3以下にならないようにしているに過ぎない。
これに対して、甲第1号証における膨張弁571の開度調整について、吸入冷媒の温度T1が露点温度T3以下にならないようにすることについては記載されていない。
しかし、圧縮機の吸入配管への露付き防止が必要であることは甲第2号証、甲第3号証、及び甲第4号証にも記載されているように、当業者が既に認識していた課題であり、吸入冷媒の温度T1を露点温度T3以下にならないようにすれば露付きが防止できることは当業者の技術常識である。」。」(第12頁第22行~第13頁第8行)
しかしながら、上記相違点2における検討のとおり、甲第1号証~甲第6号証には、「前記制御装置は、前記熱交換器を通過して前記圧縮機へ吸入される吸入冷媒の温度を、前記膨張弁の開度を絞ることによって低下させつつ、前記吸入冷媒の温度が外気の露点温度よりも高くなるように前記開度を制御する」ことに対応する制御態様は、記載も示唆もされていない。
したがって、特許異議申立人の係る主張は、採用できない。
第5 むすび
以上のとおり、特許異議申立書に記載した特許異議の申立ての理由によって、本件発明1及び本件発明2を取り消すことはできない。
また、他に、本件発明1及び本件発明2を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2024-700285