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特許異議申立

2025-701150

消火体

審判番号
2025-701150
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2023-069487
登録番号
7694602
請求日
2025年12月18日
審決日
2026年05月19日
公報発行日
2026年06月26日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】TOPPANホールディングス株式会社
  • 【権利者代理人】長谷川 芳樹
  • 【権利者代理人】鈴木 洋平
  • 【権利者代理人】上村 勇太
  • 【異議申立人】金山 愼一
審判長/審判官
  • 審判長 遠藤 秀明
  • 審判官 西山 智宏
  • 審判官 八木 誠
分類
P1651.121-Y (A62C)
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7694602号発明「消火体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7694602号の請求項1~5に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7694602号の請求項1~5に係る特許(以下「本件特許」という。)についての出願は、令和5年4月20日にした出願であって、令和7年6月10日に特許権の設定登録がされ、同年6月18日に特許掲載公報が発行された。その後、本件特許に対し同年12月17日付け(同年12月18日差出)で、特許異議申立人金山愼一(以下「申立人」という。)は、特許異議の申立てを行った。 第2 本件発明 本件特許の請求項1~5に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明5」といい、まとめて「本件発明」ともいう。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 互いに積層される基材層及び消火層を有するシート状の消火体であって、 前記消火体のループステフネス値が50mN以上であり、 前記基材層の厚さに対する前記消火層の厚さの割合が80%以上である、消火体。 【請求項2】 前記消火体のループステフネス値から、前記基材層のループステフネス値を引いた値が、125mN以下である、請求項1に記載の消火体。 【請求項3】 前記消火層が、消火剤及びバインダを含み、 前記バインダが、ウレタン樹脂を含む、請求項1又は2に記載の消火体。 【請求項4】 前記消火層が、消火剤及びバインダを含み、 前記バインダが、ポリビニルブチラール樹脂及びエポキシ樹脂を含む、請求項1又は2に記載の消火体。 【請求項5】 前記ポリビニルブチラール樹脂は、前記バインダの主成分であり、 前記エポキシ樹脂の含有量が、前記バインダの全量を基準として、5質量%以上45質量%以下である、請求項4に記載の消火体。」 第3 特許異議申立理由の概要 申立人は、以下の甲第1号証~甲第8号証(以下、それぞれ「甲1」~「甲8」ともいう。)を提出して、以下の特許異議申立理由(申立理由1)により請求項1~5に係る特許を取り消すべきである旨主張する。 1 証拠方法 甲1:特開2021-137445号公報 甲2:国際公開第2022/092159号 甲3:特開2022-7964号公報 甲4:特開2014-58620号公報 甲5:国際公開第03/051645号 甲6:特開2021-118847号公報 甲7:国際公開第2022/118735号 甲8:国際公開第2023/008537号 2 特許異議申立理由(以下「申立理由1」という。) 本件発明1~5は、甲1に記載された発明又は甲2に記載された発明及び甲3~8に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 当審の判断 1 甲号証の記載事項等 (1)甲1について ア 記載事項 甲1には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付与した。以下同様。)。 「【請求項1】 燃焼によってエアロゾルを発生する消火剤成分と、バインダー樹脂とを含む消火剤含有層と、 樹脂基材と、をこの順に備える、消火用積層体。」 「【0072】 【表1】 [図:0001436211000001.jpg] 」 イ 認定事項 表1の記載によれば、実施例1において、基材の厚さは100μmであり、消火剤含有層の厚さは220μmであると認められる。 ウ 甲1発明 上記ア及びイを総合すると、甲1には、実施例1として、次の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「消火剤含有層と樹脂基材とをこの順に備え、 基材の厚さは100μmであり、消火剤含有層の厚さは220μmである、消火用積層体。」 (2)甲2について ア 記載事項 甲2には、以下の事項が記載されている。 「[0041]<材料の準備> ・フィルム基材:LLDPE(三井化学東セロ社製、厚さ30μm、銘柄:MCS、実施例1で使用)・・・ [0042]<消火体の作製> (実施例1) 消火剤にバインダー樹脂を加えて塗液を調製し、それをフィルム基材(樹脂層)上に塗工して90℃で2分間の条件で乾燥させた。これにより、フィルム基材上に消火剤含有層が形成された消火体を得た。消火剤含有層の層厚は200μmであった。消火剤含有層の形成方法はそのサイズによらず同様とした。」 「【請求項1】 基材と、前記基材上に消火剤含有層と、を備え、 前記基材のヤング率が2MPa以上である、消火体。」 イ 甲2発明 上記アを総合すると、甲2には、実施例1として、次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。 「基材と、前記基材上に消火剤含有層とを備え、 基材の厚さは30μmであり、消火剤含有層の厚さは200μmである、消火体。」 (3)甲3について ア 記載事項 甲3には、以下の事項が記載されている。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、積層体、レトルト用またはボイル用パウチに関する。」 「【0045】 積層体の一方向におけるループスティフネスは、30mN以上でもよく、50mN以上でもよく、70mN以上でもよい。積層体の一方向におけるループスティフネスは、200mN以下でもよく、150mN以下でもよく、120mN以下でもよい。積層体の一方向は、縦方向(MD方向)でもよい。 積層体の上記一方向に直行する方向におけるループスティフネスは、30mN以上でもよく、50mN以上でもよく、70mN以上でもよい。積層体の上記一方向に直行する方向におけるループスティフネスは、200mN以下でもよく、150mN以下でもよく、130mN以下でもよい。上記一方向に直行する方向は、積層体の横方向(TD方向)でもよい。 【0046】 ループスティフネスとは、積層体のこしの強さを表すパラメータである。以下、図8~図14を参照して、ループスティフネスの測定方法を説明する。 【0047】 図8は、試験片20およびループスティフネス測定器25を示す平面図であり、図9は、図8の試験片20およびループスティフネス測定器25の線V-Vに沿った断面図である。試験片20は、長辺および短辺を有する矩形状の積層体である。本明細書においては、試験片20の長辺の長さX1を150mmとし、短辺の長さX2を15mmとした。ループスティフネス測定器25としては、例えば、東洋精機社製のNo.581ループステフネステスタ(登録商標)LOOP STIFFNESS TESTER DA型を用いることができる。なお、試験片20の長辺の長さX1は、後述する一対のチャック部26によって試験片20を把持できる限りにおいて、調整可能である。」 イ 甲3技術事項 上記アを総合すると、甲3には、次の事項(以下「甲3技術事項」という。)が記載されていると認められる。 「レトルト用又はボイル用パウチに用いられる積層体の一方向及び該一方向に直行する方向におけるループスティフネス(幅15mmで測定)は、50mN以上であること。」 (4)甲4について ア 記載事項 甲4には、以下の事項が記載されている。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、タブレット端末向けCOF用基板に関し、特に、キーボード等がなく、タッチパネル等の表示/入力部を持った携帯可能なタブレット端末(パーソナルコンピューターや携帯電話など)に用いられ、ポリイミドフィルムの幅方向にファインピッチに配線されるCOF(Chip on Film)用に好適なタブレット端末向けCOF用基板銅張積層体に関するものである。」 「【0036】 更に、得られたポリイミドフィルムのループスティフネスの値は、好ましくは、フィルムの機械搬送(MD)方向で15~45mN/cm、フィルムの幅(TD)方向で25~55mN/cm、より好ましくはMD向で16~43mN/cm、フィルムの幅(TD)方向で26~54mN/cmである。この場合のループスティフネスの値は、東洋精機製作所製ループスティフネステスタDAを使用し、10mm幅×120mmのフィルムを用い、ループ長50mm、圧縮距離10mm、圧縮時間3秒、ロードセルのレンジ×10(試験荷重の最大値100mN)で測定した値である。」 イ 甲4技術事項 上記アを総合すると、甲4には、次の事項(以下「甲4技術事項」という。)が記載されていると認められる。 「タブレット端末向けCOF用基板銅張積層体に用いられるポリイミドフィルムのループスティフネスの値(幅1cm(10mm)で測定)は、MD方向で16~45mN/cm、TD方向で25~55mN/cmであること。」 (5)甲5について ア 記載事項 甲5には、以下の事項が記載されている。 (ア)11ページ7~23行 「本発明の第三の発明の多色画像形成方法は、ロール状の熱転写シートと受像層面が外側に巻回されたロール状の受像シートを繰り出し、所定の長さにカットした後、画像形成層を有する面と受像層を有する面を対面するように熱転写シートと受像シートを重ね合わせて記録ドラムに保持し、画像情報に応じたレーザー光を照射して熱転写シートにてレーザー光を吸収し熱に変換し、変換した熱により受像シートに画像を転写形成する多色画像形成方法において、前記受像シー卜の縦方向スティフネス(Msr)と横方向スティフネス(Tsr)が共に、40~90gであり、Msr/Tsrが0.75~1.20であり、かつ前記記録ドラムと受像層表面の表面凹凸がRz値で0.01~12μmであって、 前記記録ドラムの直径が250mm以上であることを特徴とし、 特に受像シートのスティフネス、記録ドラムと受像層表面のRz値及び記録ドラムの直径を特定したことを特徴とする。 本発明において、 受像シートのスティフネス、即ち、Msr及びTsrは、(株)東洋精機製作所製ループスティフネステスターにより、測定を行った。サンプルの幅は2cm、長さは、測定機にかかる十分な長さとした。 又、測定は膜面を上側にして測定した。 又、縦方向とはロールの長手方向、横方向とはロールの幅方向を示す。」 イ 認定事項 上記(ア)の記載において、スティフネスの単位のgは、正確にはgfであると解されるところ、1kgf=9.8Nであり、1gf=9.8mNであるという技術常識を勘案すると、上記「40~90g」は、392~882mNであると認められる。 ウ 甲5技術事項 上記ア及びイを総合すると、甲5には、次の事項(以下「甲5技術事項」という。)が記載されていると認められる。 「熱転写シートと重ね合わせられて記録ドラムに保持される受像シートの縦方向スティフネスと横方向スティフネス(幅2cm(20mm)で測定)がともに392~882mNであること。」 2 申立理由1について (1) 甲1を主引用文献とする場合 ア 本件発明1について (ア)対比 a 本件発明1と甲1発明とを対比すると、後者の「消火剤含有層」は、その機能や構造等からみて、前者の「消火層」に相当し、以下同様に、「樹脂基材」は「基材層」に、「備え」ることは「有する」ことに、「消火用積層体」は「シート状の消火体」に、それぞれ相当する。 b 上記aを踏まえると、後者の「消火剤含有層と樹脂基材とをこの順に備え」ることは、前者の「互いに積層される基材層及び消火層を有する」ことに相当し、後者の「基材の厚さは100μmであり、消火剤含有層の厚さは220μmである」ことは、前者の「前記基材層の厚さに対する前記消火層の厚さの割合が80%以上である」ことに相当する。 そうすると、本件発明1と甲1発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点1> 「互いに積層される基材層及び消火層を有するシート状の消火体であって、 前記基材層の厚さに対する前記消火層の厚さの割合が80%以上である、消火体。」 <相違点1> 本件発明1では、「前記消火体のループステフネス値が50mN以上である」のに対し、甲1発明では、そのような特定がない点。 (イ)相違点についての判断 上記1(3)~(5)で示したように、相違点1に関連する事項として、甲3には、レトルト用又はボイル用パウチに用いられる積層体の一方向及び該一方向に直行する方向におけるループスティフネス(幅15mmで測定)は、50mN以上であること(甲3技術事項)が記載され、甲4には、タブレット端末向けCOF用基板銅張積層体に用いられるポリイミドフィルムのループスティフネスの値(幅1cm(10mm)で測定)は、MD方向で16~45mN/cm、TD方向で25~55mN/cmであること(甲4技術事項)が記載され、甲5には、熱転写シートと重ね合わせられて記録ドラムに保持される受像シートの縦方向スティフネスと横方向スティフネス(幅2cm(20mm)で測定)がともに392~882mNであること(甲5技術事項)が記載されている。ここで、甲3技術事項の「ループスティフネス」、甲4技術事項の「ループスティフネスの値」、及び、甲5技術事項の「縦方向スティフネス」、「横方向スティフネス」は、本件発明1の「ループステフネス値」に相当する(なお、本件特許の明細書の【0064】を参照すると、該「ループステフネス値」は幅15mmで測定したものと認められる。)。 甲1発明は消火に関する技術分野に属するものであるところ、甲3~5技術事項は、上記下線部で示されるように、消火に関する技術分野に属するものではなく、該技術分野に関連する技術分野に属するものでもないから、甲1発明において、消火体のループステフネス値を設定する場合に、甲3~5技術事項は参考にならない。 また、相違点1に係る本願発明の発明特定事項について、甲2、6~8には、記載も示唆も見いだせない。 したがって、本件発明1は、甲1発明及び甲2~8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 イ 本件発明2~5について 本件発明2~5は、本件発明1の全ての発明特定事項を含み、更なる限定を付加したものであるから、上記ア(イ)で説示したのと同様の理由により、甲1発明及び甲2~8に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (2)甲2を主引用文献とする場合 ア 本件発明1について (ア)対比 a 本件発明1と甲2発明と対比すると、後者の「基材」は前者の「基材層」に相当し、以下同様に、「消火剤含有層」は「消火層」に、「備え」ることは「有する」ことに、「消火体」は「シート状の消火体」に、それぞれ相当する。 b 上記aを踏まえると、後者の「基材と、前記基材上に消火剤含有層とを備え」ることは、前者の「互いに積層される基材層及び消火層を有する」ことに相当し、後者の「基材の厚さは30μmであり、消火剤含有層の厚さは200μmである」ことは、前者の「前記基材層の厚さに対する前記消火層の厚さの割合が80%以上である」ことに相当する。 そうすると、本件発明1と甲2発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 <一致点2> 「互いに積層される基材層及び消火層を有するシート状の消火体であって、 前記基材層の厚さに対する前記消火層の厚さの割合が80%以上である、消火体。」 <相違点2> 本件発明1では、「前記消火体のループステフネス値が50mN以上である」のに対し、甲2発明では、そのような特定がない点。 (イ)相違点についての判断 相違点2は相違点1と実質的に同じであるから、上記(1)ア(イ)で説示したのと同様の理由により、本件発明1は、甲2発明及び甲1、3~8に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 イ 本件発明2~5について 本件発明2~5は、本件発明1の全ての発明特定事項を含み、更なる限定を付加したものであるから、上記ア(イ)で説示したのと同様の理由により、甲2発明及び甲1、3~8に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)小括 以上によれば、申立理由1は成り立たない。 第5 むすび 以上によれば、特許異議の申立理由及び証拠によっては、請求項1~5に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1~5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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