特許異議申立
2024-700928
軽量不織マット
- 審判番号
- 2024-700928
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 特願2021-575893
- 登録番号
- 7471327
- 請求日
- 2024年09月25日
- 審決日
- 2025年07月29日
- 公報発行日
- 2025年10月31日
- 結論
- 訂正認容
- 当事者
- 【権利者】ユニフラックス アイ エルエルシー
- 【権利者代理人】矢口 太郎
- 【異議申立人】中里 昭恵
- 審判長/審判官
- 審判長 八木 誠
- 審判官 金丸 治之
- 審判官 稲葉 大紀
- 分類
- P1651.121-YAA(D04H) / P1651.536-YAA(D04H) / P1651.537-YAA(D04H)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 特許法120条の8第1項特許法135条
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第36条第6項第1号、特許法第120条の5第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第29条第1項、特許法第29条第2項、特許法第36条第4項第1号、特許法第120条の8第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特許第7471327号発明「軽量不織マット」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。
結論
結 論
特許第7471327号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~14〕、〔15~18〕、〔19~22〕について訂正することを認める。
特許第7471327号の請求項1、2、4、6、9~19、22に係る特許を維持する。
特許第7471327号の請求項3、5、7、8、20、21に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第7471327号(以下「本件特許」という。)の請求項1~22に係る特許についての出願は、2020年(令和2年)6月18日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2019年6月20日、米国(US))を国際出願日とする出願であって、令和6年4月11日に特許権の設定登録がされ、令和6年4月19日に特許掲載公報が発行された。本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。
令和6年 9月25日 :特許異議申立人中里昭恵(以下「申立人」という。)による請求項1~22に係る特許に対する特許異議の申立て
令和7年 1月21日付け:取消理由通知書
令和7年 4月28日 :特許権者による意見書及び訂正請求書の提出
令和7年 5月16日 :特許権者による訂正請求書の手続補正書(方式)の提出
令和7年 6月24日 :申立人による意見書の提出
第2 訂正の適否
1 訂正の内容
令和7年5月16日の手続補正書(方式)により補正された訂正請求書による訂正の請求(以下、訂正自体を「本件訂正」という。)は、「特許第7471327号の明細書、及び特許請求の範囲を本件訂正請求書に添付した訂正明細書、及び特許請求の範囲のとおり請求項1~14、15~18、19~22をそれぞれ一群の請求項として訂正することを求める。」ものであり、本件訂正の内容は、次の訂正事項からなるものである。なお、下線は当審において訂正箇所に付したものである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「不織繊維マットであって、
B-ガラス繊維、耐火性セラミック繊維、または多結晶ウール繊維、および、
有機結合剤を有し、
前記B-ガラス繊維は、0.5ミクロン未満の平均直径および5.0~7.0m2/gの比表面積を有するB-ガラス繊維、0.6ミクロン未満の平均直径および3.8~5.8m2/gの比表面積を有するB-ガラス繊維、および、0.7ミクロン未満の平均直径および2.5~3.5m2/gの比表面積を有するB-ガラス繊維からなる群から選択されるものであり、
前記繊維マットは、10~700ミクロンの厚さと、1~70g/m2の坪量を有する、
不織繊維マット」とあるのを、
「不織繊維マットであって、
0.5ミクロン未満の平均繊維径及び5.0~7.0m2/gの比表面積を有すると共に2.8~5.0重量%のCaOを含むB-ガラス繊維と、
ナノフィブリル化セルロース、デンプン、または、ポリ酢酸ビニルからなる有機結合剤と、
前記B-ガラス繊維及び有機結合剤に選択的に追加される添加剤であって、アルコールアルコキシレートまたはポリアミドアミン樹脂からなるコンディショニング剤及び追加の種類のガラス繊維、から選択される1若しくは2以上の添加剤と、
からなり、
前記繊維マットは、10~700ミクロンの厚さと、1~70g/m2の坪量を有するものである、
不織繊維マット」に訂正する。
(請求項1の記載を引用する請求項2、4、6、9~14も同様に訂正する。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項3に
「前記B-ガラス繊維は、前記繊維マットの50~100重量パーセントの量で存在する」とあるのを、
「前記B-ガラス繊維は、前記繊維マットの50~99重量パーセントの量で存在する」に訂正する。
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項3を削除する。
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項5を削除する。
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項6に
「請求項5記載の不織繊維マットにおいて、」とあるのを、
「請求項1記載の不織繊維マットにおいて、」に訂正する。
(6)訂正事項6
特許請求の範囲の請求項7を削除する。
(7)訂正事項7
特許請求の範囲の請求項8を削除する。
(8)訂正事項8
特許請求の範囲の請求項9に
「請求項8記載の不織繊維マットにおいて、前記追加のガラス繊維タイプはC-ガラス繊維を有する、」とあるのを、
「請求項1記載の不織繊維マットにおいて、前記追加の種類のガラス繊維はC-ガラス繊維を有する、」に訂正する。
(9)訂正事項9
特許請求の範囲の請求項13に
「1~20重量%のナノフィブリル化セルロースとを有する、」とあるのを、
「有機結合剤として1~20重量%のナノフィブリル化セルロースとを有する、」に訂正する。
(10)訂正事項10
特許請求の範囲の請求項15に
「前記セパレータはB-ガラス繊維および有機結合剤を有し、および、10~700ミクロンの厚さと、1~70g/m2の坪量を有し、
前記B-ガラス繊維は、0.5ミクロン未満の平均直径および5.0~7.0m2/gの比表面積を有するB-ガラス繊維、0.6ミクロン未満の平均直径および3.8~5.8m2/gの比表面積を有するB-ガラス繊維、および、0.7ミクロン未満の平均直径および2.5~3.5m2/gの比表面積を有するB-ガラス繊維からなる群から選択されるものである、」とあるのを、
「前記セパレータは、10~700ミクロンの厚さと、1~70g/m2の坪量を有し、
及び、
0.5ミクロン未満の平均繊維径及び5.0~7.0m2/gの比表面積を有すると共に2.8~5.0重量%のCaOを含むB-ガラス繊維と、
ナノフィブリル化セルロース、デンプン、または、ポリ酢酸ビニルからなる有機結合剤と、
からなるものである、」に訂正する。
(請求項15の記載を引用する請求項16~18も同様に訂正する。)
(11)訂正事項11
特許請求の範囲の請求項19に
「B-ガラス繊維および有機結合剤を有する懸濁液を形成する工程であって、前記B-ガラス繊維は、0.5ミクロン未満の平均直径および5.0~7.0m2/gの比表面積を有するB-ガラス繊維、0.6ミクロン未満の平均直径および3.8~5.8m2/gの比表面積を有するB-ガラス繊維、および、0.7ミクロン未満の平均直径および2.5~3.5m2/gの比表面積を有するB-ガラス繊維からなる群から選択されるものである、懸濁液を形成する工程と、」とあるのを、
「懸濁液を形成する工程であって、前記懸濁液は、
0.5ミクロン未満の平均繊維径及び5.0~7.0m2/gの比表面積を有すると共に2.8~5.0重量%のCaOを含むB-ガラス繊維と、
ナノフィブリル化セルロース、デンプン、または、ポリ酢酸ビニルからなる有機結合剤と、
前記B-ガラス繊維及び有機結合剤に選択的に追加される添加剤であって、アルコールアルコキシレートまたはポリアミドアミン樹脂からなるコンディショニング剤及び追加の種類のガラス繊維、から選択される1若しくは2以上の添加剤と、
からなる、懸濁液を形成する工程と、」に訂正する。
(12)訂正事項12
特許請求の範囲の請求項20を削除する。
(13)訂正事項13
特許請求の範囲の請求項21を削除する。
(14)訂正事項14
明細書の【0016】に
「いくつかの実施形態では、電池セパレータは、ガラス繊維(例えば、前述のBX9繊維)、デンプン、NFC、ラテックス水性アクリル共重合体エマルジョン結合剤、および、湿潤剤、界面活性剤、乾燥強度添加剤などのコンディショニング剤、および、例えば、アルコールアルコキシレート、アクリルアミドとアクリル酸の共重合体、ポリアクリルアミド樹脂、カチオン性グリオキシル化樹脂、ポリアミドアミン樹脂、およびポリアミン-エピクロロヒドリン樹脂などの湿潤強度添加剤を混合することによって形成される。」とあるのを、
「いくつかの実施形態では、電池セパレータは、ガラス繊維(例えば、前述のBX9繊維)、デンプン、NFC、ラテックス水性アクリル共重合体エマルジョン結合剤、並びに、湿潤剤、界面活性剤、乾燥強度添加剤、および、湿潤強度添加剤などのコンディショニング剤を混合することによって形成され、湿潤強度添加剤としては、例えば、アルコールアルコキシレート、アクリルアミドとアクリル酸の共重合体、ポリアクリルアミド樹脂、カチオン性グリオキシル化樹脂、ポリアミドアミン樹脂、およびポリアミン-エピクロロヒドリン樹脂などが挙げられる。」に訂正する。
(15)一群の請求項について
訂正前の請求項1~14は、請求項2~14が、訂正請求の対象である請求項1の記載を引用する関係にあり、訂正前の請求項15~18は、請求項16~18が、訂正請求の対象である請求項15の記載を引用する関係にあり、訂正前の請求項19~22は、請求項20~22が、訂正請求の対象である請求項19の記載を引用する関係にあるから、本件訂正は、一群の請求項〔1~14〕、〔15~18〕、〔19~22〕について請求されたものである。
また、明細書に係る訂正は、一群の請求項〔1~14〕、〔19~22〕について請求されたものである。
2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1
訂正事項1は、訂正前の請求項1の記載において、(1-1)訂正前の請求項1に記載の不織布マットが含有する繊維について、「B-ガラス繊維、耐火性セラミック繊維、または多結晶ウール繊維」及び「前記B-ガラス繊維は、0.5ミクロン未満の平均直径および5.0~7.0m2/gの比表面積を有するB-ガラス繊維、0.6ミクロン未満の平均直径および3.8~5.8m2/gの比表面積を有するB-ガラス繊維、および、0.7ミクロン未満の平均直径および2.5~3.5m2/gの比表面積を有するB-ガラス繊維からなる群から選択されるもの」とあるものを「0.5ミクロン未満の平均繊維径及び5.0~7.0m2/gの比表面積を有する」「B-ガラス繊維」として択一的記載の要素を削除すると共に、さらに「2.8~5.0重量%のCaOを含む」ものと特定するものであり、(1-2)有機結合剤を「ナノフィブリル化セルロース、デンプン、または、ポリ酢酸ビニルからなる」ことを特定するものであり、(1-3)「アルコールアルコキシレートまたはポリアミドアミン樹脂からなるコンディショニング剤及び追加の種類のガラス繊維、から選択される1若しくは2以上の添加剤」が「選択的に追加される」ことを特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、上記(1-1)は明細書の【0010】、【0009】【表1】の記載に基づくものであり、上記(1-2)は明細書の【0013】の記載に基づくものであり、上記(1-3)のうちコンディショニング剤については明細書の【0016】の記載に基づくものであり、追加の種類のガラス繊維については明細書の【0011】、【0028】の記載に基づくものであるから、新規事項の追加に該当しない。
また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しない。
(2)訂正事項2
訂正事項2は、訂正前の請求項2に記載のB-ガラス繊維の存在量の数値範囲を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的するものであり、明細書の【0026】の記載に基づくものであるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しない。
(3)訂正事項3、4、6、7、12、13
訂正事項3、4、6、7、12、13は、請求項3、5、7、8、20、21を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的するものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
(4)訂正事項5、8
訂正事項5、8は、請求項5、8が削除されたことに伴い引用する請求項を変更することにより、削除された請求項を引用しているという不明瞭な状態を解消させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的するものであり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
(5)訂正事項9
訂正事項9は、訂正前の請求項13に記載のナノフィブリル化セルロースの役割を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的するものであり、明細書の【0013】の記載に基づくものであるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しない。
(6)訂正事項10
訂正事項10は、訂正前の請求項15の記載において、(6-1)セパレータが含有する繊維が「0.5ミクロン未満の平均繊維径及び5.0~7.0m2/gの比表面積を有すると共に2.8~5.0重量%のCaOを含むB-ガラス繊維」であると特定するものであり、(6-2)有機結合剤を「ナノフィブリル化セルロース、デンプン、または、ポリ酢酸ビニルからなる」ことを特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、上記(6-1)は明細書の【0010】、【0009】【表1】の記載に基づくものであり、上記(6-2)は明細書の【0013】の記載に基づくものであるから、新規事項の追加に該当しない。
また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しない。
(7)訂正事項11
訂正事項19は、訂正前の請求項19の記載において、(7-1)懸濁液が含有する繊維が「0.5ミクロン未満の平均繊維径及び5.0~7.0m2/gの比表面積を有すると共に2.8~5.0重量%のCaOを含むB-ガラス繊維」であると特定するものであり、(7-2)有機結合剤を「ナノフィブリル化セルロース、デンプン、または、ポリ酢酸ビニルからなる」ことを特定するものであり、(7-3)「アルコールアルコキシレートまたはポリアミドアミン樹脂からなるコンディショニング剤及び追加の種類のガラス繊維、から選択される1若しくは2以上の添加剤」が選択的に追加されることを特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、上記(7-1)は明細書の【0010】、【0009】【表1】の記載に基づくものであり、上記(7-2)は明細書の【0013】の記載に基づくものであり、上記(7-3)のうちコンディショニング剤については明細書の【0016】の記載に基づくものであり、追加の種類のガラス繊維については明細書の【0011】、【0028】の記載に基づくものであるから、新規事項の追加に該当しない。
また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものにも該当しない。
(8)訂正事項14
訂正事項14は、訂正前の明細書の【0016】の記載を、原文明細書に記載されているとおり、湿潤強度添加剤がコンディショニング剤の一例であると訂正するものであるから、誤訳の訂正を目的とするものであり、原文明細書の[00047]の記載に基づくものであるから新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものに該当しない。
3 小括
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号、第2号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項で準用する同法第126条第4項、第5項及び第6項に適合する。
したがって、特許請求の範囲及び明細書を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲及び明細書のとおり、訂正後の請求項〔1~14〕、〔15~18〕、〔19~22〕について訂正することを認める。
第3 訂正後の本件発明
上記のとおり、本件訂正は認められるから、本件訂正後の請求項1、2、4、6、9~19、22に係る発明(以下「本件発明1」等といい、まとめて「本件発明」ともいう。)は、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1、2、4、6、9~19、22に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
不織繊維マットであって、
0.5ミクロン未満の平均繊維径及び5.0~7.0m2/gの比表面積を有すると共に2.8~5.0重量%のCaOを含むB-ガラス繊維と、
ナノフィブリル化セルロース、デンプン、または、ポリ酢酸ビニルからなる有機結合剤と、
前記B-ガラス繊維及び有機結合剤に選択的に追加される添加剤であって、アルコールアルコキシレートまたはポリアミドアミン樹脂からなるコンディショニング剤及び追加の種類のガラス繊維、から選択される1若しくは2以上の添加剤と、
からなり、
前記繊維マットは、10~700ミクロンの厚さと、1~70g/m2の坪量を有するものである、
不織繊維マット。
【請求項2】
請求項1記載の不織繊維マットにおいて、前記B-ガラス繊維は、前記繊維マットの50~99重量パーセントの量で存在する、不織繊維マット。」
「【請求項4】
請求項1記載の不織繊維マットにおいて、前記有機結合剤は前記繊維マットの最大20重量%の量で存在する、不織繊維マット。」
「【請求項6】
請求項1記載の不織繊維マットにおいて、前記コンディショニング剤は前記繊維マットの1~20重量%の量で存在する、不織繊維マット。」
「【請求項9】
請求項1記載の不織繊維マットにおいて、前記追加の種類のガラス繊維はC-ガラス繊維を有する、不織繊維マット。
【請求項10】
請求項1記載の不織繊維マットであって、650℃までの熱安定性を有する、不織繊維マット。
【請求項11】
請求項1記載の不織繊維マットにおいて、前記繊維マットは、10~100ミクロンの厚さと、1~25g/m2の坪量を有する、不織繊維マット。
【請求項12】
請求項1記載の不織繊維マットにおいて、前記繊維マットは、200~700ミクロンの厚さと、30~70g/m2の坪量を有する、不織繊維マット。
【請求項13】
請求項1記載の不織繊維マットであって、80~99重量%のBガラス繊維と、有機結合剤として1~20重量%のナノフィブリル化セルロースとを有する、不織繊維マット。
【請求項14】
請求項1記載の不織繊維マットを有する、電池。
【請求項15】
負極と、
正極と、
電解質溶液と、および、
前記負極と前記正極との間に配置されたセパレータと
を有する電池であって、
前記セパレータは、10~700ミクロンの厚さと、1~70g/m2の坪量を有し、
及び、
0.5ミクロン未満の平均繊維径及び5.0~7.0m2/gの比表面積を有すると共に2.8~5.0重量%のCaOを含むB-ガラス繊維と、
ナノフィブリル化セルロース、デンプン、または、ポリ酢酸ビニルからなる有機結合剤と、
からなるものである、
電池。
【請求項16】
請求項15記載の電池において、前記セパレータは、10~100ミクロンの厚さと、1~25g/m2の坪量を有する、電池。
【請求項17】
請求項15記載の電池において、前記セパレータは、200~700ミクロンの厚さと、30~70g/m2の坪量を有する、電池。
【請求項18】
請求項15記載の電池において、前記セパレータは650℃までの熱安定性を有する、電池。
【請求項19】
不織繊維マットを製造する方法であって、前記方法は、
懸濁液を形成する工程であって、前記懸濁液は、
0.5ミクロン未満の平均繊維径及び5.0~7.0m2/gの比表面積を有すると共に2.8~5.0重量%のCaOを含むB-ガラス繊維と、
ナノフィブリル化セルロース、デンプン、または、ポリ酢酸ビニルからなる有機結合剤と、
前記B-ガラス繊維及び有機結合剤に選択的に追加される添加剤であって、アルコールアルコキシレートまたはポリアミドアミン樹脂からなるコンディショニング剤及び追加の種類のガラス繊維、から選択される1若しくは2以上の添加剤と、
からなる、懸濁液を形成する工程と、
前記懸濁液を2.8~3.5のpHに酸性化してスラリーを形成する工程と、
スクリーン上に前記スラリーを散布する工程と、
10~700ミクロンの厚さと、1~70g/m2の坪量を有する不織繊維マットを提供するために、前記スラリーから液体を除去する工程と
を有する、方法。」
「【請求項22】
請求項19記載の方法において、前記スラリーから液体を除去する工程は、前記スラリーに真空を適用する工程を有する、方法。」
第4 取消理由通知について
1 取消理由の概要
当審において特許権者に通知した取消理由の概要は以下のとおりである。
取消理由1(サポート要件)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
本件特許の請求項1~14に係る発明には、不織繊維マットの繊維として、「B-ガラス繊維」のほか、「耐火性セラミック繊維」又は「多結晶ウール繊維」を用いたものも含まれるところ、本件明細書において本件課題が解決できることが示されているのはB-ガラス繊維を用いた場合のみであるから、B-ガラス繊維以外を用いた場合において本件課題を解決できることを当業者は認識できない。
したがって、本件特許の請求項1~14に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。
取消理由2(明確性要件)
本件特許は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
(1)請求項1、15、19には、B-ガラス繊維について「平均直径」との記載があるが、本件明細書には、その定義、算出方法、測定方法について何ら記載されていない。
そして、甲7~甲10によれば、ガラス繊維の平均繊維径には、「質量平均繊維径」と「数平均繊維径」の少なくとも2種類が一般的に使用されているところ、本件特許の請求項1、15、19の「平均直径」が、上記2種類のいずれであるか、あるいはそれ以外のものであるかが不明である。したがって、本件発明1~22は、明確でない。
(2)請求項1には「B-ガラス繊維、耐火性セラミック繊維、または多結晶ウール繊維、および、有機結合剤を有し、」との記載があり、請求項1を引用する請求項2には「前記B-ガラス繊維は、前記繊維マットの50~100重量パーセントの量で存在する」との記載があるところ、請求項2においてB-ガラス繊維が100重量パーセントの量で存在する場合には、請求項1の「有機結合剤を有し」との記載と整合しないこととなる。したがって、本件発明2は、明確でない。
取消理由3(新規性)
本件特許の請求項1、3、11、14~16に係る発明は、甲第3号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1、3、11、14~16に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。
取消理由4(進歩性)
本件特許の請求項1~22に係る発明は、甲第1号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、また、本件特許の請求項1、3、5~8、11、12、14~17、19~22に係る発明は、甲第3号証に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~22に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
2 引用文献等について
(1)請求項及び引用文献等の関係
(以下、申立人が提出した甲第○号証を「甲○」という。)
・甲1主引例
請求項1~7、10、11、13~22 :甲1、甲4、甲6
請求項8、9 :甲1、甲4、甲6、引用文献1
請求項12 :甲1、甲4、甲6、引用文献2
・甲3主引例
請求項1~3、5~7、11、14~16、19~22:甲3
請求項8 :甲3、引用文献1
請求項12、17 :甲3、引用文献2
(2)引用文献等一覧
甲1:特許第4095670号公報
甲3:国際公開第2013/180073号
甲4:国際公開第98/32184号
甲6:ラウシャ ファイバー インターナショナル社カタログ、「Glass Microfiber」、2014年(平成26年)6月1日改訂(周知事実を示す文献)
甲7:特開2018-95976号公報
甲8:特開2017-78109号公報
甲9:特開2017-33864号公報
甲10:特開2017-82028号公報
引用文献1:特開2011-233473号公報(当審において職権により提示する文献)
引用文献2:再公表特許第2016/031693号(当審において職権により提示する文献)
3 当審における判断
当審合議体は以下のとおり、上記取消理由で通知した取消理由1~4によっては、本件発明は取り消されるべきものではないと判断する。
(1)引用文献の記載、発明
ア 甲1
甲1には以下の記載がある(なお下線は当審において付したものであり、「・・・」は記載の省略を示す。以下同様)。
(ア)「【請求項1】
湿式抄紙法により製造された非水電解液電池セパレーター用不織布において、平均繊維径が3μm以下の無機繊維を含み、該無機繊維の不織布への配合量が20~80重量%であり、下記で規定される抄紙方向の膜厚むら指数Rpyが1000mV未満であることを特徴とする非水電解液電池セパレーター用不織布。
・・・
【請求項3】
無機繊維がマイクロガラス繊維、アルミナ繊維、アルミナシリカ繊維、ロックウールから選ばれる1種以上の無機繊維であることを特徴とする請求項1または2記載の非水電解液電池セパレーター用不織布。
・・・
【請求項7】
有機繊維を含むことを特徴とする請求項1または2記載の非水電解液電池セパレーター用不織布。
【請求項8】
少なくとも有機繊維の一部が繊維径1μm以下にフィブリル化されていることを特徴とする請求項7記載の非水電解液電池セパレーター用不織布。」
(イ)「[技術分野]
本発明は、電極との密着性が良好で、かつ電極との巻回性などの電池加工性に優れ、また電極が外部短絡して発熱しても、不織布の収縮や燃焼によって引き起こされる電極間の接触による内部短絡が発生せず、電池の発火を防止することができ、電池保存特性も優れている非水電解液電池セパレーター用不織布およびこれを用いた非水電解液電池に関するものである」(2ページ35~40行。なお、行数はページ右側に付された数字による。以下同様。)
(ウ)「マイクロガラス繊維の平均繊維径については、好ましくは、平均繊維径3μm以下である。より細い平均繊維径のマイクロガラス繊維を用いることにより、ピンホールと呼ばれる直径数十~数百μm程度の穴も生じることもなく、均一性の高い不織布を作製することができる。」(5ページ43~46行)
(エ)「本発明の非水電解液電池セパレーター用不織布におけるマイクロガラス繊維の中でも、マイクロガラス繊維が酸化ナトリウム(Na2Oに換算して)を1重量%以下含有するEガラスからなるものがより好ましい。一般に用いられるボロシリケートガラスは、アルカリ金属のナトリウムを含有しているため、ナトリウムが負極活物質であるリチウムと化学反応を起こし、電池特性を劣化させることから好ましくない。」(6ページ1~5行)
(オ)「正極活物質としてコバルト酸リチウム、負極として軟黒鉛化炭素を用いて、実施例および比較例で作製した非水電解液電池セパレーター用不織布を非水電解液電池セパレーターとして用い、これを各電極に接するように配置し、全体を渦巻状構造の電極とした。次いで、プロピレンカーボネート:1,2-ジメトキシエタン=1:1の混合溶媒に0.5lとなるようにLiClO4を溶解させて電解液を調製した。これらの電極と電解液を用いて18650型(直径18mm、長さ65mm)円筒形リチウム電池を作製した。」(10ページ19~24行)
(カ)「例3(実施例)
平均繊維径が1.0μmのマイクロガラス繊維(SCHULLER社製、#108A)40%とポリプロピレン繊維(大和紡績製PZ、0.7d×5mm)30%とポリオレフィン系熱融着繊維(大和紡績製NBF-H、0.7d×5mm)30%を水中に分散させたスラリーを調製し、円網抄紙機を用いて湿式抄紙し、坪量25g/m2、厚み90μmの非水電解液電池セパレーター用不織布を作製した。作製した非水電解液電池セパレーター用不織布を用いて温度140℃の条件で熱カレンダー処理を用いて加圧熱処理を施し厚みを50μmとした。
本例に用いたガラス繊維の成分は次の通りである。
<ガラス繊維の成分>
SiO2 58.55%
B2O3 10.5%
Na2O 10.1%
Al2O3 5.8%
BaO 5.0%
ZnO 4.0%
K2O 3.2%
CaO 1.9%
F2 0.6%
MgO 0.3%
Fe2O3 0.04%
TiO2 0.01%」(11ページ42行~12ページ13行)
(キ)「例4(実施例)
平均繊維径が0.65μmで、二酸化珪素99.8%からなるマイクロガラス繊維(SCHULLER社製、Q-FIBER#106Q)40%とポリプロピレン繊維(大和紡績製PZ、0.7d×5mm)30%とポリオレフィン系熱融着繊維(大和紡績製NBF-H、0.7d×5mm)30%を水中に分散させたスラリーを調製し、円網抄紙機を用いて湿式抄紙し、坪量25g/m2、厚み90μmの非水電解液電池セパレーター用不織布を作製した後、140℃で熱カレンダー処理を施し、厚みを50μmに調整した。」(12ページ14行~20行)
(ク)「例18(実施例)
例3に用いたマイクロガラス繊維80%と繊維状バインダーとしてポリプロピレンとポリエチレンからなる芯鞘複合繊維(大和紡績社製、NBF-H、繊度2デニール、繊維長10mm)20%を水中に混合分散させたスラリーを調製し、円網抄紙機を用いて湿式抄紙し、坪量20g/m2、厚み70μmの非水電解液電池セパレーター用不織布を作製した後、130℃で熱カレンダー処理して厚みを30μmに調整した。」(15ページ14~19行)
(ケ)「表3
[図:0001427960000001.jpg]
評価:
例17~20および例27の非水電解液電池セパレーター用不織布は、電極との巻回性などの電池加工性が良好で、電池特性が良好な非水電解液電池を作製することができた。マイクロガラス繊維を含有するため、耐熱性に優れており、外部短絡により電池温度が上昇しても繊維の溶融による該不織布の収縮や燃焼が起らず、電池の発火を防止することができた。また、マイクロガラスには、電池反応の障害となる酸化ナトリウムが含まれるため、電池保存特性がやや不良であった。」(16ページ19行~17ページ2行)
(コ)「例57(参考例)
例48に用いたのと同様の組成を持つ平均繊維径が0.5μmのマイクロガラス繊維(SCHLLER社製、E-FIBER、104E)85%と繊維状バインダーとしてNBF-H(大和紡績社製、繊度0.7デニール、繊維長5mm)15%を水中に分散させたスラリーを調製し、円網抄紙機を用いて湿式抄紙し、坪量20g/m2、厚み70μmの非水電解液電池セパレーター用不織布を作製した後、該不織布を140℃で熱カレンダー処理して厚みを40μmに調整した。」(23ページ31~37行)
(サ)「例65(参考例)
平均繊維径が0.65μmのマイクロガラス繊維(SCHULLER社 #106)85%と繊維状バインダーとしてNBF-H(大和紡績社製、繊度0.7デニール、繊維長5mm)15%を水中に分散させたスラリーを調製し、円網抄紙機を用いて湿式抄紙し、坪量20g/m2、厚み70μmの非水電解液電池セパレーター用不織布を作製した。
本例に用いたマイクロガラス繊維の成分は次の通りである。
SiO2 65.21
Na2O 15.73
CaO 5.92
B2O3 5.20
Al2O3 3.56
MgO 2.69
F2 0.83
K2O 0.81
SO3 0.19
Fe2O3 0.059」(24ページ35行~最下行)
(シ)上記(ア)~(サ)の記載を参照し、特に例18(実施例)に着目すると、甲1には以下の3つの発明(以下それぞれを「甲1発明A」、「甲1発明B」、「甲1発明C」という。)が記載されている。
[甲1発明A(不織布)]
「下記の成分を有する平均繊維径が1.0μmのマイクロガラス繊維(SCHULLER社製、#108A)80重量%と繊維状バインダーとしてポリプロピレンとポリエチレンからなる芯鞘複合繊維(大和紡績社製、NBF-H、繊度2デニール、繊維長10mm)20重量%を水中に混合分散させたスラリーを調製し、円網抄紙機を用いて湿式抄紙し、坪量20g/m2、厚み70μmの不織布を作製した後、130℃で熱カレンダー処理して厚みを30μmに調整してなる、非水電解液電池セパレーター用不織布。
<ガラス繊維の成分>
SiO2 58.55%
B2O3 10.5%
Na2O 10.1%
Al2O3 5.8%
BaO 5.0%
ZnO 4.0%
K2O 3.2%
CaO 1.9%
F2 0.6%
MgO 0.3%
Fe2O3 0.04%
TiO2 0.01%」
[甲1発明B(電池)]
「下記の成分を有する平均繊維径が1.0μmのマイクロガラス繊維(SCHULLER社製、#108A)80重量%と繊維状バインダーとしてポリプロピレンとポリエチレンからなる芯鞘複合繊維(大和紡績社製、NBF-H、繊度2デニール、繊維長10mm)20重量%を水中に混合分散させたスラリーを調製し、円網抄紙機を用いて湿式抄紙し、坪量20g/m2、厚み70μmの不織布を作製した後、130℃で熱カレンダー処理して厚みを30μmに調整してなる、セパレーター用不織布を用いたセパレーターを、正極と負極に接するように配置し、これらのセパレーターと各電極と電解液を用いて作製した、円筒形リチウム電池。
<ガラス繊維の成分>
SiO2 58.55%
B2O3 10.5%
Na2O 10.1%
Al2O3 5.8%
BaO 5.0%
ZnO 4.0%
K2O 3.2%
CaO 1.9%
F2 0.6%
MgO 0.3%
Fe2O3 0.04%
TiO2 0.01%」
[甲1発明C(方法)]
「非水電解液電池セパレーター用不織布の作製方法であって、
下記の成分を有する平均繊維径が1.0μmのマイクロガラス繊維(SCHULLER社製、#108A)80重量%と繊維状バインダーとしてポリプロピレンとポリエチレンからなる芯鞘複合繊維(大和紡績社製、NBF-H、繊度2デニール、繊維長10mm)20重量%を水中に混合分散させたスラリーを調製する工程と、
円網抄紙機を用いて湿式抄紙し、坪量20g/m2、厚み70μmの不織布を作製した後、130℃で熱カレンダー処理して厚みを30μmに調整する工程とを有する方法。
<ガラス繊維の成分>
SiO2 58.55%
B2O3 10.5%
Na2O 10.1%
Al2O3 5.8%
BaO 5.0%
ZnO 4.0%
K2O 3.2%
CaO 1.9%
F2 0.6%
MgO 0.3%
Fe2O3 0.04%
TiO2 0.01%」
また、上記(ウ)、(キ)、(コ)、(サ)を参照すると、甲1には以下の事項(以下「甲1記載事項」という。)が記載されている。
[甲1記載事項]
「平均繊維径が3μm以下であり、より細い平均繊維径、例えば0.5~0.65μmのマイクロガラス繊維と繊維状バインダーを用いて抄紙することで、ピンホールの少ない非水電解液電池セパレータ用不織布を作製すること。」
イ 甲3
甲3には以下の記載がある。
「[0002] 本発明は、非水系電池の構成材料として有用な電池用セパレータ及びこれを具備する非水系電池に関する。・・・」
「[0032] (セルロース系繊維)
本発明の繊維シートを、セルロース系繊維を加えて形成してもよい。セルロース繊維としては、セルロースをアミノキサイドなどの有機溶剤に溶解して紡糸して得られる有機溶剤系のセルロース繊維、再生セルロース繊維、各種の木材パルプやコットンリンターなどの天然セルロース繊維、それらのマーセル化物、叩解物などをあげることができる。とくに、有機溶剤系のセルロース繊維の叩解物、天然セルロースの叩解物が、フィブリル化した繊維の存在により網状構造を有する繊維シートを形成することができるので望ましい。
本発明においては、繊維A、さらには繊維Bが加えられた繊維に、上記のセルロース繊維が加えられることにより、繊維シート中にフィブリル化による繊維の絡み合いが導入されるので、柔軟性があり、遮蔽性のあるシートを得ることができる。
従来、セルロース系繊維のみにより形成された紙が電池セパレータとして用いられているが、所定の強度的性質を得るように、緻密なシートを形成すると通気性が低くなるという問題を有していた。これに対して、本発明では、セパレータを構成する繊維の主体を特定のポリビニルアルコール系繊維とすることにより、機械的性質、厚さ、通気性・抵抗等のバランスを取りながら、さらに、セルロース系繊維を加えることにより、シートに柔軟性と遮蔽性を与えて、より優れたセパレータを形成することができる。繊維シートに加えるセルロース系繊維としては、繊維シート中に70質量%未満、より好ましくは、60質量%、さらに好ましくは50質量%未満含まれるのが好ましい。また、用いられるセルロース系繊維は、繊度が0.5dtex~2.0dtex、繊維長が1mm~5mmの範囲にあるのが好ましく、叩解度は、100ml以下、より好ましくは50ml以下であるのが好ましい。
[0033] (繊維シート形成)
本発明のセパレータは、上記の繊維Aを用いて、好ましくは、繊維B、さらには、ガラス繊維またはセルロース系繊維を加えて、例えば湿式不織布とすることにより形成することができるが、その湿式不織布の製造方法は特に限定されない。・・・」
「[0036] (非水系電池)
本発明のセパレータを用いた非水系電池は、正極、負極、非水電解液と上記のセパレータを備える。・・・」
「[0068] (実施例5)
熱水溶解温度95℃、繊度0.3dtex、繊維長2mmのポリビニルアルコール(PVA)繊維(未FA化繊維)(株式会社クラレ製、商品名「VN20200」)(構成繊維1)と、熱水溶解温度72℃、繊度1.1dtex、繊維長3mmのポリビニルアルコール系繊維(株式会社クラレ製、商品名「VPB105-1」)(構成繊維2)と、ガラス繊維(製品名「B-00-F」(平均繊維径0.33μm)、製造メーカー名:ラウシャファイバーインターナショナルコーポレーション、粉砕方法:アトライターMA1SC型(三井三池製作所製)にφ5mmのセラミックボール充填してガラス繊維1wt%スラリーを2時間処理し最大繊維径6μmとしたものを使用)(構成繊維3)を、構成繊維1を40%、構成繊維2を20%、構成繊維3を40%の配合率(質量%)で混合してスラリーを調整し、丸網抄紙機を用いて抄紙し、抄紙後ドライヤー(ドライヤー温度130℃)で乾燥し、ついで熱プレス機で処理温度200℃、線圧100kgf/cmで処理して、目付10.3g/m2、厚さ15μm、密度0.69g/m3のシートを作製した。」
「[請求項1」 熱水溶解温度が100℃よりも低く、85℃よりも高いポリビニルアルコール系繊維(繊維A)を30質量%以上(繊維シート100質量%に対して)配合して形成された繊維シートからなる非水系電池用セパレータ。
・・・
[請求項3] 前記繊維Aまたは前記繊維Aと繊維Bに、ガラス繊維が加えられて形成された繊維シートからなる、請求項1または請求項2に記載の非水系電池用セパレータ。
・・・
[請求項8] 前記繊維Aまたは前記繊維Aと繊維Bに、セルロース繊維が加えられて形成された繊維シートからなる、請求項1または請求項2に記載の非水系電池用セパレータ。」
上記記載を総合し、特に実施例5に着目すると、甲3には以下の3つの発明(以下それぞれを「甲3発明A」、「甲3発明B」、「甲3発明C」という。)が記載されている。
[甲3発明A(不織布)]
「熱水溶解温度95℃、繊度0.3dtex、繊維長2mmのポリビニルアルコール(PVA)繊維(未FA化繊維)(株式会社クラレ製、商品名「VN20200」)(構成繊維1)と、熱水溶解温度72℃、繊度1.1dtex、繊維長3mmのポリビニルアルコール系繊維(株式会社クラレ製、商品名「VPB105-1」)(構成繊維2)と、ガラス繊維(製品名「B-00-F」(平均繊維径0.33μm)、製造メーカー名:ラウシャファイバーインターナショナルコーポレーション)(構成繊維3)を、構成繊維1を40%、構成繊維2を20%、構成繊維3を40%の配合率(質量%)で混合してスラリーを調整し、丸網抄紙機を用いて抄紙し、抄紙後ドライヤー(ドライヤー温度130℃)で乾燥し、ついで熱プレス機で処理温度200℃、線圧100kgf/cmで処理して作製した、目付10.3g/m2、厚さ15μm、密度0.69g/m3のシートからなる非水系電池用セパレータに用いられる湿式不織布。」
[甲3発明B(電池)]
「熱水溶解温度95℃、繊度0.3dtex、繊維長2mmのポリビニルアルコール(PVA)繊維(未FA化繊維)(株式会社クラレ製、商品名「VN20200」)(構成繊維1)と、熱水溶解温度72℃、繊度1.1dtex、繊維長3mmのポリビニルアルコール系繊維(株式会社クラレ製、商品名「VPB105-1」)(構成繊維2)と、ガラス繊維(製品名「B-00-F」(平均繊維径0.33μm)、製造メーカー名:ラウシャファイバーインターナショナルコーポレーション)(構成繊維3)を、構成繊維1を40%、構成繊維2を20%、構成繊維3を40%の配合率(質量%)で混合してスラリーを調整し、丸網抄紙機を用いて抄紙し、抄紙後ドライヤー(ドライヤー温度130℃)で乾燥し、ついで熱プレス機で処理温度200℃、線圧100kgf/cmで処理して作製した、目付10.3g/m2、厚さ15μm、密度0.69g/m3の不織布からなる非水系電池用セパレータと、
正極、負極、非水電解液を備える、非水系電池。」
[甲3発明C(方法)]
「非水系電池用セパレータに用いられる湿式不織布を作製する方法であって、
熱水溶解温度95℃、繊度0.3dtex、繊維長2mmのポリビニルアルコール(PVA)繊維(未FA化繊維)(株式会社クラレ製、商品名「VN20200」)(構成繊維1)と、熱水溶解温度72℃、繊度1.1dtex、繊維長3mmのポリビニルアルコール系繊維(株式会社クラレ製、商品名「VPB105-1」)(構成繊維2)と、ガラス繊維(製品名「B-00-F」(平均繊維径0.33μm)、製造メーカー名:ラウシャファイバーインターナショナルコーポレーション)(構成繊維3)を、構成繊維1を40%、構成繊維2を20%、構成繊維3を40%の配合率(質量%)で混合してスラリーを調整する工程と、
丸網抄紙機を用いて抄紙する工程と、
抄紙後ドライヤー(ドライヤー温度130℃)で乾燥し、ついで熱プレス機で処理温度200℃、線圧100kgf/cmで処理して、目付10.3g/m2、厚さ15μm、密度0.69g/m3のシートに調整する工程と、
を有する方法。」
また、甲3の請求項1、3、8、[0032]~[0033]の記載を参酌すると、甲3には以下の技術的事項(以下「甲3記載事項」という。)が記載されている。
[甲3記載事項]
「ポリビニルアルコール系繊維を30質量%以上配合して形成された繊維シートからなる非水系電池用セパレータにおいて、ガラス繊維、又は、繊度が0.5dtex~2.0dtex、繊維長が1mm~5mm、叩解度が100ml以下のセルロース繊維を加えること。」
ウ 甲4
甲4の36ページの3~24行には以下の事項(以下「甲4記載事項」という。)が記載されている。
[甲4記載事項]
「実施例8
・・・ボロシリケ一卜ガラスからなるマイクロガラス繊維40%、ポリプロピレン繊維60%からなる坪量25g/m2、厚み112mの不織布に本実施例で作製したメチルトリメトキシシラン溶液を含浸させ、加熱硬化して有機珪素化合物をマイクロガラス繊維の重量に対して1.1%付着させた不織布を作製し、非水電解液電池用セパレ一ターとした。
本実施例におけるマイクロガラス繊維の成分は、次の通りである。
<マイクロガラス繊維の成分>
SiO2 58.55%
B2O3 10.5%
Na2O 10.1%
Al2O 5.8%
BaO 5.0%
ΖnO 4.0%
K2O 3.2%
CaO 1.9%
F2 0.6%
MgO 0.3%
Fe2O3 0.04%
TiO2 0.01%」
エ 甲6
甲6には以下の記載がある。なお、枠線は当審において付した。
「
[図:0001427960000002.jpg]
」
「
[図:0001427960000003.jpg]
」
以上の記載を踏まえると以下の事項は、本件特許の優先日前における周知の事実(以下「周知事実」という。)であるといえる。
[周知事実]
「Bガラスマイクロ繊維として、B-X9-Fa(公称繊維径0.26μm、公称比表面積6.20m2/g、CaO含有率2.8~5.0質量%)が入手可能であったこと。」
オ 引用文献1
引用文献1の請求項1、3、【0001】、【0013】~【0015】の記載を参照すると、引用文献1には以下の事項(以下「引用文献1記載事項」という。)が記載されている。
[引用文献1記載事項]
「ガラス繊維からなる不織布を主体に構成された非水系二次電池用セパレータにおいて、前記不織布を少なくとも2種類以上の平均繊維径のガラス繊維を主体とすること。」
カ 引用文献2
引用文献2の請求項1、5、7、【0038】、【0057】を参照すると、引用文献2には以下の事項(以下「引用文献2記載事項」という。)が記載されている。
[引用文献2記載事項]
「不織布電池セパレータにおいて、不織布の厚さを0.12~0.35mm、坪量を20~200g/m2とすること。」
(2)取消理由1(サポート要件)について
本件訂正により、本件発明1、2、4、6、9~14は、不織繊維マットの繊維として、「B-ガラス繊維」を用いたものに限定されたから、上記取消理由1は解消した。
そして、特許請求の範囲に記載された発明は、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
そして、本件発明1、2、4、6、9~14は、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
(3)取消理由2(明確性要件)について
「平均繊維径」という用語は一般的に「質量平均繊維径」又は「数平均繊維径」の意味で用いられるところ、「数平均繊維径」は、細い繊維の割合が高い場合や、繊維の存在数(本数)自体が特性に重要な場合に用いられ、「質量平均繊維径」は、太い繊維が製品の物性を支配する場合に用いるのが技術常識である。
そうすると、本件発明のようなごく細い繊維においては、平均繊維径として「数平均繊維径」を用いることで実際の繊維径分布を正確に表現できることは、技術常識を参酌することにより当業者が理解できる。
そうすると、技術常識を参酌すれば、本件発明における「平均繊維径」が「数平均繊維径」を意味することは明確である。
そして、本件発明1、2、4、6、9~14の特許請求の範囲の記載は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるとはいえない。
(4)甲1を主引例とする取消理由4(進歩性)について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲1発明Aを、その機能、構造又は技術的意義を考慮し対比する。
<有機結合剤>
甲1発明Aの「繊維状バインダーとしてポリプロピレンとポリエチレンからなる芯鞘複合繊維(大和紡績社製、NBF-H、繊度2デニール、繊維長10mm)」と、本件発明1の「ナノフィブリル化セルロース、デンプン、または、ポリ酢酸ビニルからなる有機結合剤」は、「有機結合剤」の限りにおいて一致する。
<ガラス繊維>
甲1発明Aの「下記の成分を有する平均繊維径が1.0μmのマイクロガラス繊維(SCHULLER社製、#108A)80重量%」と、本件発明1の「0.5ミクロン未満の平均繊維径及び5.0~7.0m2/gの比表面積を有すると共に2.8~5.0重量%のCaOを含むB-ガラス繊維」は、「ガラス繊維」である限りにおいて一致する。
<不織布マット>
甲1発明Aの「坪量20g/m2、厚み70μmの非水電解液電池セパレーター用不織布を作製した後、130℃で熱カレンダー処理して厚みを30μmに調整してなる、非水電解液電池セパレーター用不織布」は、その坪量と厚みが本件発明1の数値範囲に含まれるから、本件発明1の「10~700ミクロンの厚さと、1~70g/m2の坪量を有するものである、不織繊維マット」に相当する。
以上を総合すると、本件発明1と甲1発明Aの一致点と相違点は以下のとおりである。
[一致点1-1]
「不織繊維マットであって、
ガラス繊維と、
有機結合剤と、
からなり、
前記繊維マットは、10~700ミクロンの厚さと、1~70g/m2の坪量を有するものである、
不織繊維マット。」
[相違点1-1]
ガラス繊維について、本件発明1では、「0.5ミクロン未満の平均繊維径及び5.0~7.0m2/gの比表面積を有すると共に2.8~5.0重量%のCaOを含むB-ガラス繊維」であるのに対し、甲1発明Aでは、「下記の成分を有する平均繊維径が1.0μmのマイクロガラス繊維(SCHULLER社製、#108A)」「
<ガラス繊維の成分>
SiO2 58.55%
B2O3 10.5%
Na2O 10.1%
Al2O3 5.8%
BaO 5.0%
ZnO 4.0%
K2O 3.2%
CaO 1.9%
F2 0.6%
MgO 0.3%
Fe2O3 0.04%
TiO2 0.01%」である点。
[相違点1-2]
有機結合剤について、本件発明1では、「ナノフィブリル化セルロース、デンプン、または、ポリ酢酸ビニルからなる」ものであるのに対し、
甲1発明Aでは、「繊維状バインダーとしてポリプロピレンとポリエチレンからなる芯鞘複合繊維(大和紡績社製、NBF-H、繊度2デニール、繊維長10mm)」である点。
[相違点1-3]
本件発明1は、「前記B-ガラス繊維及び有機結合剤に選択的に追加される添加剤であって、アルコールアルコキシレートまたはポリアミドアミン樹脂からなるコンディショニング剤及び追加の種類のガラス繊維、から選択される1若しくは2以上の添加剤」を含むのに対し、
甲1発明Aは、添加剤を含まない点。
(イ)判断
a 相違点1-1について
まず、B-ガラス繊維について検討するに、甲1発明Aの「マイクロガラス繊維(SCHULLER社製、#108A)」は、その成分と甲4記載事項のマイクロガラス繊維の成分との同一性からみて、ボロシリケートガラスからなるマイクロガラス繊維、すなわち「B-ガラス繊維」であるといえるから、相違点1-1のうち「B-ガラス繊維」の点は実質的な相違点ではない。
そして、上記(1)エで示したとおり、「Bガラスマイクロ繊維として、B-X9-Fa(公称繊維径0.26μm、公称比表面積6.20m2/g、CaO含有率2.8~5.0質量%)が入手可能であったこと。」は本件特許の優先日前における周知の事実である。
しかしながら、上記(1)ア(エ)及び(ケ)を参照すると、甲1には、ボロシリケートガラス(Bガラス)は酸化ナトリウムの含有量が多いから好ましくないことが記載又は示唆されているから、甲1発明Aにおけるマイクロガラス繊維に代えて、あえてBガラス繊維の周知事実に係る「B-X9-Fa(公称繊維径0.26μm、公称比表面積6.20m2/g、CaO含有率2.8~5.0質量%)」を採用する動機付けはなく、むしろ阻害要因があるともいえる。
b 相違点1-2について
甲1には、甲1発明Aの「繊維状バインダーとしてポリプロピレンとポリエチレンからなる芯鞘複合繊維(大和紡績社製、NBF-H、繊度2デニール、繊維長10mm)」に代えて、又は加えて、「ナノフィブリル化セルロース、デンプン、または、ポリ酢酸ビニルからなる」を配合することは記載も示唆もされていない。
そして、甲3には、甲3記載事項として「ポリビニルアルコール系繊維を30質量%以上配合して形成された繊維シートからなる非水系電池用セパレータにおいて、ガラス繊維、又は、繊度が0.5dtex~2.0dtex、繊維長が1mm~5mm、叩解度が100ml以下のセルロース繊維を加えること。」が記載されている。
しかしながら、甲3記載事項は、電池用セパレータに用いられる繊維シートにガラス繊維又はセルロース繊維を加えるものであるところ、甲1発明Aはガラス繊維を含有するセパレータ用不織布であるから、甲3記載事項を適用し得たとしても、ガラス繊維に加えて、さらにセルロース繊維も加える構成には至らない。
(ウ)小括
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲1発明Aを主引例として、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明2、4、6、9~14について
本件発明2、4、6、9~14は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加える発明であるから、上記アと同様の理由により、甲1発明Aを主引例として、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明15について
本件発明15と甲1発明Bを、その機能、構造又は技術的意義を考慮し対比すると、両者は、上記アで説示した相違点1-1及び相違点1-2において相違する。
そして、当該相違点についての判断は、上記アで説示したとおりである。
したがって、本件発明15は、甲1発明Bを主引例として、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 本件発明16~18について
本件発明16~18は、本件発明15の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加える発明であるから、上記ウと同様の理由により、甲1発明Bに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
オ 本件発明19について
本件発明19と甲1発明Cを、その機能、構造又は技術的意義を考慮し対比すると、両者は、上記アで説示した相違点1-1、相違点1-2及び相違点1-3において相違する。
そして、当該相違点についての判断は、上記アで説示したとおりである。
したがって、本件発明19は、甲1発明Cを主引例として、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
カ 本件発明22について
本件発明22は、本件発明19の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加える発明であるから、上記オと同様の理由により、甲1発明Cを主引例として、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
(5)甲3を主引例とする取消理由3(新規性)及び取消理由4(進歩性)について
ア 本件発明1について
(ア)対比
本件発明1と甲3発明Aを、その機能、構造又は技術的意義を考慮し対比する。
<有機結合剤>
甲3発明Aの「熱水溶解温度95℃、繊度0.3dtex、繊維長2mmのポリビニルアルコール(PVA)繊維(未FA化繊維)(株式会社クラレ製、商品名「VN20200」)(構成繊維1)と、熱水溶解温度72℃、繊度1.1dtex、繊維長3mmのポリビニルアルコール系繊維(株式会社クラレ製、商品名「VPB105-1」)(構成繊維2)」と、本件発明1の「ナノフィブリル化セルロース、デンプン、または、ポリ酢酸ビニルからなる有機結合剤」は、「有機結合剤」である限りにおいて一致する。
<ガラス繊維>
甲3発明Aの「ガラス繊維(製品名「B-00-F」(平均繊維径0.33μm)、製造メーカー名:ラウシャファイバーインターナショナルコーポレーション)(構成繊維3)」と、本件発明1の「 0.5ミクロン未満の平均繊維径及び5.0~7.0m2/gの比表面積を有すると共に2.8~5.0重量%のCaOを含むB-ガラス繊維」は、「B-ガラス繊維」である限りにおいて一致する。
<不織布マット>
甲3発明Aの「、目付10.3g/m2、厚さ15μm、密度0.69g/m3のシートからなる非水系電池用セパレータに用いられる湿式不織布」は、その坪量と厚みが本件発明1の数値範囲に含まれるから、本件発明1の「前記繊維マットは、10~700ミクロンの厚さと、1~70g/m2の坪量を有するものである、不織繊維マット」に相当する。
以上を総合すると、本件発明1と甲3発明Aの一致点及び相違点は以下のとおりである。
[一致点3-1]
「不織繊維マットであって、
B-ガラス繊維と、
有機結合剤と、
からなり、
前記繊維マットは、10~700ミクロンの厚さと、1~70g/m2の坪量を有するものである、
不織繊維マット。」
[相違点3-1]
B-ガラス繊維について、
本件発明1は、「0.5ミクロン未満の平均繊維径及び5.0~7.0m2/gの比表面積を有すると共に2.8~5.0重量%のCaOを含む」ものであるのに対し、
甲3発明Aは、「ガラス繊維(製品名「B-00-F」(平均繊維径0.33μm)、製造メーカー名:ラウシャファイバーインターナショナルコーポレーション」である点。
[相違点3-2]
有機結合剤について、本件発明1では、「ナノフィブリル化セルロース、デンプン、または、ポリ酢酸ビニルからなる」ものであるのに対し、
甲3発明Aでは、「熱水溶解温度95℃、繊度0.3dtex、繊維長2mmのポリビニルアルコール(PVA)繊維(未FA化繊維)(株式会社クラレ製、商品名「VN20200」)(構成繊維1)と、熱水溶解温度72℃、繊度1.1dtex、繊維長3mmのポリビニルアルコール系繊維(株式会社クラレ製、商品名「VPB105-1」)(構成繊維2)」である点。
[相違点3-3]
本件発明1は、「前記B-ガラス繊維及び有機結合剤に選択的に追加される添加剤であって、アルコールアルコキシレートまたはポリアミドアミン樹脂からなるコンディショニング剤及び追加の種類のガラス繊維、から選択される1若しくは2以上の添加剤」を含むのに対し、
甲3発明Aは、添加剤を含まない点。
(イ)判断
事案に鑑み相違点3-2について検討する。
まず、相違点3-2は実質的なものである。
そして、甲3には、甲3記載事項として「ポリビニルアルコール系繊維を30質量%以上配合して形成された繊維シートからなる非水系電池用セパレータにおいて、ガラス繊維、又は、繊度が0.5dtex~2.0dtex、繊維長が1mm~5mm、叩解度が100ml以下のセルロース繊維を加えること。」が記載されている。
しかしながら、甲3記載事項は、電池用セパレータに用いられる繊維シートにガラス繊維とセルロース繊維の何れかを加えるものであるところ、甲3発明Aはガラス繊維を含有するセパレータに用いられる湿式不織布であるから、甲3記載事項を適用し得たとしても、ガラス繊維に加えてセルロース繊維を加える動機付けはない。
(ウ)小括
したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件発明1は、甲3発明Aではなく、甲3発明Aを主引例として、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
イ 本件発明2、4、6、9~14について
本件発明2、4、6、9~14は、本件発明1の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加える発明であるから、上記アと同様の理由により、甲3発明Aではなく、甲3発明Aを主引例として、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
ウ 本件発明15について
本件発明15と甲3発明Bを、その機能、構造又は技術的意義を考慮し対比すると、両者は、上記アで説示した相違点3-1及び相違点3-2において相違する。
そして、当該相違点についての判断は、上記アで説示したとおりである。
したがって、本件発明15は、甲3発明Bではなく、甲3発明Bを主引例として、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
エ 本件発明16~18について
本件発明16~18は、本件発明15の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加える発明であるから、上記ウと同様の理由により、甲3発明Bではなく、甲3発明Bを主引例として、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
オ 本件発明19について
本件発明19と甲3発明Cを、その機能、構造又は技術的意義を考慮し対比すると、両者は、上記アで説示した相違点3-1、相違点3-2及び相違点3-3において相違する。
そして、当該相違点についての判断は、上記アで説示したとおりである。
したがって、本件発明19は、甲3発明Cを主引例として、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
カ 本件発明22について
本件発明22は、本件発明19の発明特定事項を全て含み、さらに限定を加える発明であるから、上記オと同様の理由により、甲3発明Cを主引例として、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
1 申立人の主張の概要
申立人は以下のとおり、本件特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件(実施可能要件)及び特許法第36条第6項第1号に規定する要件(サポート要件)を満たしていない特許出願に対してされたものである旨主張する。
(1)B-ガラス繊維を有しない不織繊維マットについて
本件特許の請求項1には、「B-ガラス繊維、耐火性セラミック繊維、または多結晶ウール繊維、および、有機結合剤を有し、」と記載されている。しかしながら、本件明細書の各実施例には、B-ガラス繊維を用いた不織繊維マットのみが記載されており、耐火性セラミック繊維又は多結晶ウール繊維を用いた実施例が記載されていない。
したがって、発明の詳細な説明は、本件特許の請求項1~14に係る発明について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。
(2)X9繊維以外のB-ガラス繊維を有する不織繊維マットについて
本件特許の請求項1、15、19には、「前記B-ガラス繊維は、0.5ミクロン未満の平均直径および5.0~7.0m2/gの比表面積を有するB-ガラス繊維、0.6ミクロン未満の平均直径および3.8~5.8m2/gの比表面積を有するB-ガラス繊維、および、0.7ミクロン未満の平均直径および2.5~3.5m2/gの比表面積を有するB-ガラス繊維からなる群から選択されるものであ」ると記載されている。しかしながら、本件明細書の各実施例には、B-ガラス繊維のうち、BX9繊維(請求項1の「0.5ミクロン未満の平均直径および5.0~7.0m2/gの比表面積を有するB-ガラス繊維」に相当)を用いた不織繊維マットのみが記載されており、BX9繊維以外を用いた実施例が記載されていない。
したがって、発明の詳細な説明は、本件特許の請求項1~22に係る発明について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。また、本件特許の請求項1~22に係る発明は、発明の詳細な説明において発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものである。
(3)B-ガラス繊維の平均直径の下限値について
本件特許の請求項1、15、19には、「前記B-ガラス繊維は、0.5ミクロン未満の平均直径および5.0~7.0m2/gの比表面積を有するB-ガラス繊維、0.6ミクロン未満の平均直径および3.8~5.8m2/gの比表面積を有するB-ガラス繊維、および、0.7ミクロン未満の平均直径および2.5~3.5m2/gの比表面積を有するB-ガラス繊維からなる群から選択されるものであ」ると記載されており、ガラス繊維の平均直径の下限値が特定されていないところ、ガラス繊維の平均繊維径が0.1μm未満であると繊維シート作成時の歩留まりが悪くなる(甲3の[0030])ことを踏まえると、本件明細書には、平均繊維径が0.1μm未満のガラス繊維を用いた不織繊維マットをどのようにして実施するかについて記載されていない。
したがって、発明の詳細な説明は、本件特許の請求項1~22に係る発明について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。
(4)有機結合剤を有しない不織繊維マットについて
本件特許の請求項2には、「請求項1記載の不織繊維マットにおいて、前記B-ガラス繊維は 、前記繊維マットの50~100重量パーセントの量で存在する、不織繊維マット。」と記載されているところ、本件明細書には、B-ガラス繊維が100重量パーセントの量で存在するもの、「有機結合剤」を含有しない態様の実施例が記載されていない。
したがって、発明の詳細な説明は、本件特許の請求項2に係る発明について、当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されていない。また、本件特許の請求項2に係る発明は、発明の詳細な説明において発明の課題を解決できることを当業者が認識できるように記載された範囲を超えるものである。
2 当審における判断
(1)上記1(1)について
本件訂正により、本件発明1はB-ガラス繊維を用いることが限定されたことに伴い、上記1(1)に係る申立理由は解消したから、当該申立理由には理由がない。
そして、本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明を実施することができる程度の記載があるといえる。
(2)上記1(2)及び上記1(4)について
本件訂正により、本件発明1、15、19のB-ガラス繊維はBX9繊維(【0010】等)に限定され、また、本件発明2のB-ガラス繊維の存在量が「50~99重量パーセント」に限定されたことに伴い、上記1(2)及び上記1(4)に係る申立理由は解消したから、当該申立理由には理由がない。
そして、本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明を実施することができる程度の記載があるといえる。また、本件発明は、発明の詳細な説明に記載された発明であって、発明の詳細な説明の記載により当業者が当該発明の課題を解決できると認識できる範囲のものである。
(3)上記1(3)について
本件発明は平均繊維径が「0.5ミクロン未満」とすることを構成とするものであり、0.1ミクロン未満とすることを必須とするものではないから、ガラス繊維の平均繊維径が0.1μm未満であると繊維シート作成時の歩留まりが悪くなるということが技術常識であったとしても、請求項の記載において平均繊維径の下限値を特定することは要しない。したがって、上記1(3)に係る申立理由には理由がない。
そして、本件明細書の発明の詳細な説明は、当業者が、発明の詳細な説明の記載及び出願当時の技術常識に基づいて、過度の試行錯誤を要することなく、本件発明を実施することができる程度の記載があるといえる。
第6 むすび
以上のとおり、請求項1、2、4、6、9~19、22に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に請求項1、2、4、6、9~19、22に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
そして、請求項3、5、7、8、20、21に係る特許についての特許異議の申立ては、本件訂正により申立ての対象が存在しないものとなったため、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2024-700928