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特許異議申立

2025-700551

ビールテイスト飲料

審判番号
2025-700551
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2022-517672
登録番号
7598367
請求日
2025年05月23日
審決日
2025年10月22日
公報発行日
2026年01月30日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】サントリーホールディングス株式会社
  • 【権利者代理人】小林 浩
  • 【権利者代理人】古橋 伸茂
  • 【権利者代理人】石原 俊秀
  • 【権利者代理人】末広 尚也
  • 【異議申立人】齊藤 恵美子
審判長/審判官
  • 審判長 柴田 昌弘
  • 審判官 宮久保 博幸
  • 審判官 加藤 友也
分類
P1651.113-YAA(C12C) / P1651.121-YAA(C12C)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条2項特許法113条2号特許法120条の8第1項特許法135条
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の8第1項
データ出所
審決公報(XML)

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特許第7598367号発明「ビールテイスト飲料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7598367号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1及び3ないし9〕について訂正することを認める。 特許第7598367号の請求項2ないし9に係る特許を維持する。 特許第7598367号の請求項1に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7598367号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし9に係る特許についての出願は、2021年(令和3年)4月21日(優先権主張 令和2年4月30日)を国際出願日とする出願であって、令和6年12月3日にその特許権の設定登録(請求項の数9)がされ、同年同月11日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、令和7年5月23日に特許異議申立人 齊藤 恵美子(以下、「特許異議申立人」という。)から特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし9)がされ、同年7月28日付けで取消理由が通知され、同年9月18日に特許権者 サントリーホールディングス株式会社から訂正請求がされるとともに意見書が提出されたものである。 なお、令和7年9月18日にされた訂正請求による訂正は、下記第2のとおり、訂正が実質的に一部の請求項(請求項1及び請求項1を直接又は間接的に引用する請求項3ないし9)の削除のみの訂正であって、訂正の請求の内容が実質的な判断に影響を与えるものではなく、特許異議申立人に意見を聴くまでもないことが明らかであると合議体は判断し、特許法第120条の5第5項ただし書に規定された特別の事情があるときといえるから、特許異議申立人に意見書の提出の機会を与えていない。 第2 本件訂正について 1 訂正の内容 令和7年9月18日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。下線は訂正箇所を示すものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1を削除する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項3に「マルトースを0.2~5.8(w/w)%含む、請求項1または2に記載のビールテイスト飲料。」と記載されているのを、「マルトースを0.2~5.8(w/w)%含む、請求項2に記載のビールテイスト飲料。」に訂正する。併せて請求項3の記載を直接又は間接的に引用する請求項4ないし9についても同様に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項4に「pHが2.7以上4.2以下である、請求項1~3のいずれかに記載のビールテイスト飲料。」と記載されているのを、「pHが2.7以上4.2以下である、請求項2又は3に記載のビールテイスト飲料。」に訂正する。併せて請求項4の記載を直接又は間接的に引用する請求項5ないし9についても同様に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項5に「麦由来成分を含む、請求項1~4のいずれかに記載のビールテイスト飲料。」と記載されているのを、「麦由来成分を含む、請求項2~4のいずれかに記載のビールテイスト飲料。」に訂正する。併せて請求項5の記載を直接又は間接的に引用する請求項6ないし9についても同様に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項6に「ホップ由来成分を含む、請求項1~5のいずれかに記載のビールテイスト飲料。」と記載されているのを、「ホップ由来成分を含む、請求項2~5のいずれかに記載のビールテイスト飲料。」に訂正する。併せて請求項6の記載を直接又は間接的に引用する請求項7ないし9についても同様に訂正する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項7に「蒸留酒を含有する、請求項1~6のいずれかに記載のビールテイスト飲料。」と記載されているのを、「蒸留酒を含有する、請求項2~6のいずれかに記載のビールテイスト飲料。」に訂正する。併せて請求項7の記載を直接又は間接的に引用する請求項8及び9についても同様に訂正する。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項8に「酸味付与物質を含有する、請求項1~7のいずれかに記載のビールテイスト飲料。」と記載されているのを、「酸味付与物質を含有する、請求項2~7のいずれかに記載のビールテイスト飲料。」に訂正する。併せて請求項8の記載を引用する請求項9についても同様に訂正する。 (8)訂正事項8 特許請求の範囲の請求項9に「糖液に酵母を添加して、アルコール発酵を行う工程、および pHを調整する工程、 を有する、請求項1~8のいずれかに記載の飲料を製造する方法であって、 マルトースを0.2(w/w)%以上残存する段階で酵母を取り除き発酵工程を終了する、ビールテイスト飲料の製造方法。」と記載されているのを、「糖液に酵母を添加して、アルコール発酵を行う工程、および pHを調整する工程、 を有する、請求項2~8のいずれかに記載の飲料を製造する方法であって、 マルトースを0.2(w/w)%以上残存する段階で酵母を取り除き発酵工程を終了する、ビールテイスト飲料の製造方法。」に訂正する。 2 訂正の目的、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)請求項1についての訂正について 訂正事項1による請求項1についての訂正は、請求項1を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項1による請求項1についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)請求項3についての訂正について 訂正事項2による請求項3についての訂正は、引用請求項から請求項1を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項2による請求項3についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)請求項4についての訂正について 訂正事項2による請求項4についての訂正は、請求項3についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正事項3による請求項4についての訂正は、引用請求項から請求項1を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項2及び3による請求項4についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4)請求項5についての訂正について 訂正事項2及び3による請求項5についての訂正は、請求項3及び4についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正事項4による請求項5についての訂正は、引用請求項から請求項1を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項2ないし4による請求項5についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (5)請求項6についての訂正について 訂正事項2ないし4による請求項6についての訂正は、請求項3ないし5についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正事項5による請求項6についての訂正は、引用請求項から請求項1を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項2ないし5による請求項6についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (6)請求項7についての訂正について 訂正事項2ないし5による請求項7についての訂正は、請求項3ないし6についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正事項6による請求項7についての訂正は、引用請求項から請求項1を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項2ないし6による請求項7についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (7)請求項8についての訂正について 訂正事項2ないし6による請求項8についての訂正は、請求項3ないし7についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正事項7による請求項8についての訂正は、引用請求項から請求項1を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項2ないし7による請求項8についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (8)請求項9についての訂正について 訂正事項2ないし7による請求項9についての訂正は、請求項3ないし8についての訂正と同様に、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 訂正事項8による請求項9についての訂正は、引用請求項を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項2ないし8による請求項9についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 むすび 以上のとおり、訂正事項1ないし8による請求項1及び3ないし9についての訂正は、いずれも、特許法120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。 また、訂正事項1ないし8による請求項1及び3ないし9についての訂正は、いずれも、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。 なお、訂正前の請求項1及び3ないし9は一群の請求項に該当するものである。 そして、訂正事項1ないし8による請求項1及び3ないし9についての訂正は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。 また、特許異議申立人からの特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし9に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。 したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1及び3ないし9〕について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし9に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】(削除) 【請求項2】 エタノールを0.50(v/v)%以上1.0(v/v)%未満、および、マルトースを5.8(w/w)%以下含み、リアルエキス濃度が8.3(w/w)%以下であり、 オリジナルエキス濃度が8.98(w/w)%以上であり、 pHが2.6以上4.3未満である、ビールテイスト飲料。 【請求項3】 マルトースを0.2~5.8(w/w)%含む、 請求項2に記載のビールテイスト飲料。 【請求項4】 pHが2.7以上4.2以下である、請求項2又は3に記載のビールテイスト飲料。 【請求項5】 麦由来成分を含む、請求項2~4のいずれかに記載のビールテイスト飲料。 【請求項6】 ホップ由来成分を含む、請求項2~5のいずれかに記載のビールテイスト飲料。 【請求項7】 蒸留酒を含有する、請求項2~6のいずれかに記載のビールテイスト飲料。 【請求項8】 酸味付与物質を含有する、請求項2~7のいずれかに記載のビールテイスト飲料。 【請求項9】 糖液に酵母を添加して、アルコール発酵を行う工程、および pHを調整する工程、 を有する、請求項2~8のいずれかに記載の飲料を製造する方法であって、 マルトースを0.2(w/w)%以上残存する段階で酵母を取り除き発酵工程を終了する、ビールテイスト飲料の製造方法。」 第4 特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由の概要等 令和7年5月23日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した特許異議申立ての理由の概要及び証拠方法は次のとおりである。 1 申立理由1(甲第1号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明1ないし9は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第1号証に記載された発明に基づいてその優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし9に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 2 申立理由2(甲第2号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明1ないし9は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第2号証に記載された発明に基づいてその優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし9に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 3 申立理由3(甲第3号証に基づく進歩性) 本件特許発明1ないし9は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明に基づいてその優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし9に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 4 申立理由4(甲第4号証に基づく進歩性) 本件特許発明1ないし9は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第4号証に記載された発明に基づいてその優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし9に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 5 証拠方法 甲第1号証:Meier-Dornberg, Tim et al., Alcohol-Free Wheat Beer with Maltose Negative Yeast Strain Saccharomycodes ludwigii, 2014年7月, DOI:10.13140/RG.2.2.26169.36968 甲第2号証:brau!magazin ホームページ,2018年, URL:https://web.archive.org/web/20201019162037/https://braumagazin.de/article/saccharomycodes-ludwigii/ 甲第3号証:Fermentation, 2018年, 4,66, DOI:10.3390/fermentation4030066 甲第4号証:国際公開第2014/135673号 甲第5号証:特開2012-239460号公報 甲第6号証:特開2014-124124号公報 甲第7号証:Journal of the institute of Brewing, 2012年, Volume l18, pp.335-345, DOl:10.1002/jib.49 証拠の表記は、特許異議申立書の記載におおむね従った。なお、甲第1号証についてウムラウト記号の摘記は省略した。以下、順に「甲1」のようにいう。 第5 取消理由の概要 令和7年7月28日付けで通知された取消理由(以下、「取消理由」という。)の概要は次のとおりである。 1 取消理由1(甲1に基づく進歩性) 本件特許発明1及び3ないし9は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲1に記載された発明に基づいてその優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1及び3ないし9に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。なお、該取消理由1は申立理由1のうちの請求項1及び請求項1を直接又は間接的に引用する請求項3ないし9に対する進歩性の理由と同旨である。 2 取消理由2(甲2に基づく進歩性) 本件特許発明1、3ないし6、8及び9は、本件特許の優先日前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲2に記載された発明に基づいてその優先日前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3ないし6、8及び9に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。なお、該取消理由2は申立理由2のうちの請求項1及び請求項1を直接又は間接的に引用する請求項3ないし6、8及び9に対する進歩性の理由と同旨である。 第6 取消理由についての当審の判断 本件訂正により、訂正前の請求項1及び請求項1を直接又は間接的に引用する請求項3ないし9は削除され、取消理由1及び2はその対象がなくなった。 第7 取消理由として採用しなかった特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由について 取消理由として採用しなかった特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由は次のとおりである。 ・申立理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)のうちの請求項1及び請求項1を直接又は間接的に引用する請求項3ないし9に対する新規性並びに請求項2及び請求項2を直接又は間接的に引用する請求項3ないし9に対する新規性・進歩性 ・申立理由2(甲2に基づく新規性・進歩性)のうちの請求項1及び請求項1を直接又は間接的に引用する請求項3ないし9に対する新規性、請求項1を直接又は間接的に引用する請求項7に対する進歩性並びに請求項2及び請求項2を直接又は間接的に引用する請求項3ないし9に対する新規性・進歩性 ・申立理由3(甲3に基づく進歩性) ・申立理由4(甲4に基づく進歩性) なお、申立理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)のうちの請求項1及び請求項1を直接又は間接的に引用する請求項3ないし9に対する新規性は本件訂正によりその対象がなくなった。また、申立理由2(甲2に基づく新規性・進歩性)のうちの請求項1及び請求項1を直接又は間接的に引用する請求項3ないし9に対する新規性並びに請求項1を直接又は間接的に引用する請求項7に対する進歩性も本件訂正によりその対象がなくなった。さらに、申立理由3及び4のうちの請求項1に対する進歩性も本件訂正によりその対象がなくなった。 以下、残りの理由について、順に検討する。 1 申立理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)のうちの請求項2及び請求項2を直接又は間接的に引用する請求項3ないし9に対する新規性・進歩性について (1)甲1に記載された事項等 ア 甲1に記載された事項 甲1は「Alcohol-Free Wheat Beer with Maltose Negative Yeast Strain Saccharomycodes ludwigii」(当審訳:麦芽糖陰性酵母株であるSaccharomycodes ludwigiiを使用したノンアルコール小麦ビール)というタイトルの文献であり、おおむね次の事項が記載されている。なお、甲1は外国語の文献のため、訳文のみを摘記した。他の外国語の証拠についても同様。下線は当審で付したものである。 ・「Saccharomycodes ludwigii(TUM SL 17)によるアルコールフリービールの製造 +低コスト +少ない労力 +新しい技術の導入が不要 -麦汁中の細菌増殖のリスクが高い -野生酵母の交差汚染の可能性 -短時間の加熱処理またはパスチャライゼーションが絶対に必要」(Production of・・・で始まる囲み内) ・「この研究の目的: ・オリジナルエキス濃度(比重)7°P及び12°Pでの糖発酵を2つの異なる温度で調査 ・糖代謝に対するpH値の影響の調査 ・市販のノンアルコール小麦ビールとの風味形成の比較」(Aim of・・・で始まる囲み内) ・「前培養及び発酵: [図:0001431152000001.jpg] [図:0001431152000002.jpg] 」(Propagation・・・で始まる囲み内) ・「 [図:0001431152000003.jpg] 」(Fermentable・・・で始まる囲み内のグラフ) イ 甲1に記載された発明 甲1に記載された事項を、特にビール3及び4に関して整理すると、甲1には次の発明(以下、「甲1物発明」という。)が記載されていると認める。 <甲1物発明> 「Saccharomycodes ludwigii(TUM SL 17)を用いて麦汁を発酵させた、エタノールを0.62(v/v)%又は0.50(v/v)%含み、オリジナルエキス濃度(比重)7°Pである、アルコールフリービール。」 (2)本件特許発明2について ア 対比 本件特許発明2と甲1物発明を対比する。 甲1物発明における「エタノールを0.62(v/v)%又は0.50(v/v)%含み」は本件特許発明2における「エタノールを0.50(v/v)%以上1.0(v/v)%未満」「含み」に相当する。 甲1物発明における「アルコールフリービール」は本件特許発明2における「ビールテイスト飲料」に相当する。 そうすると、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「エタノールを0.50(v/v)%以上1.0(v/v)%未満含む、ビールテイスト飲料。」 そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。 <相違点1-2a> 本件特許発明2においては「マルトースを5.8(w/w)%以下含み」と特定されているのに対し、甲1物発明においてはそのようには特定されていない点。 <相違点1-2b> 本件特許発明2においては「リアルエキス濃度が8.3(w/w)%以下であり」と特定されているのに対し、甲1物発明においてはそのようには特定されていない点。 <相違点1-2c> 本件特許発明2においては「オリジナルエキス濃度が8.98(w/w)%以上であり」と特定されているのに対がし、甲1物発明においては「オリジナルエキス濃度(比重)7°Pである」と特定されている点。 <相違点1-2d> 本件特許発明2においては「pHが2.6以上4.3未満である」と特定されているのに対し、甲1物発明においてはそのようには特定されていない点。 イ 判断 事案に鑑み、相違点1-2cについて検討する。 甲1には、甲1発明における「オリジナルエキス濃度(比重)」(「オリジナルエキス濃度」に相当する。)の「7°P」(「7(w/w)%」に相当する。)を「8.98(w/w)%以上」に変更する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。 したがって、甲1発明において、相違点1-2cに係る本件特許発明2の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明2の奏する「アルコール度数が低く、ビールテイスト飲料らしい発酵感および後味のすっきりさが優れた飲料となり得る。」(本件特許の発明の詳細な説明の【0006】)という効果は、本件特許発明2の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 なお、特許異議申立人は、この点に関して、特許異議申立書においておおむね次のとおり主張する(なお、特許異議申立人の主張の摘記に際し、空白行は省略した。以下、同様。)。 「相違点1-7(当審注:「相違点1-2c」のことである。)について、甲1では、オリジナルエキス濃度7(w/w)%及び12(w/w)%で検討がなされており(摘記(甲1-2)参照)、7~12(w/w)%の範囲内でオリジナルエキス濃度を調整することは、甲1で想定されていることに過ぎない。よって、オリジナルエキス濃度が8.98(w/w)%以上として、相違点1-7に係る構成に到ることは、甲1から極めて容易である。 なお、甲1物発明においては、麦汁中のグルコース、スクロース及びフルクトースは、発酵により資化されているので(摘記(甲1-4)参照)、これに伴いエキス濃度が減少することになり、相違点1-7の構成を採用したとしてもリアルエキス濃度が8.3(w/w)%以下との構成を満たすことに変わりはない。また、オリジナルエキス濃度が8.98(w/w)%以上と調整したとしても、上述のとおり甲1物発明は完全な発酵サイクルを経ることによる発酵感を有し、「クリーン」なビール、すなわち後味のすっきりさに優れているといえる。よつて、本件発明2による効果は、甲1の有する効果と区別ができない。 以上のとおり、本件発明2は、甲1に記載された発明と同一であるか、または甲1に記載された発明から当業者が容易に発明し得たものである。」(特許異議申立書第30及び31ページ) そこで、該主張について検討する。 甲1において、「オリジナルエキス濃度7(w/w)%及び12(w/w)%で検討がなされている」としても、「エタノール」の濃度が本件特許発明2の「0.50(v/v)%以上1.0(v/v)%未満」という発明特定事項の範囲内であるという観点から「オリジナルエキス濃度(比重)7°P」を選択して認定した甲1発明において、「オリジナルエキス濃度」を「7°P」(7(w/w)%)から「8.98(w/w)%以上」に変更する動機付けがあるとはいえないし、仮に「オリジナルエキス濃度」を「7°P」(7(w/w)%)から「8.98(w/w)%以上」に変更することを想到し得たとしても、「麦汁中のグルコース、スクロース及びフルクトースは、発酵により資化され」、「リアルエキス濃度」は「8.98(w/w)%」よりも小さな値になるといえるかもしれないが、「8.3(w/w)%以下」になるとは当業者といえども予測できないし、「エタノール」の濃度が本件特許発明2の「0.50(v/v)%以上1.0(v/v)%未満」という発明特定事項の範囲内になるかも当業者といえども予測できない。 したがって、「オリジナルエキス濃度が8.98(w/w)%以上として、相違点1-7に係る構成に到ることは、甲1から極めて容易である。」ということはできない。 よって、特許異議申立人の上記主張は採用することはできない。 ウ まとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明2は、甲1物発明であるとはいえないし、甲1物発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (3)本件特許発明3ないし8について 本件特許発明3ないし8はいずれも、請求項2の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明2の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明2と同様に、甲1物発明であるとはいえないし、甲1物発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (4)本件特許発明9について 本件特許発明9における「請求項2~8のいずれかに記載の飲料」は本件特許発明2ないし8のいずれかのことであり、それらについての判断は上記(2)及び(3)のとおりである。 したがって、本件特許発明9における「請求項2~8のいずれかに記載の飲料」という発明特定事項が甲1物発明であるとも、甲1物発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない以上、本件特許発明9は甲1に記載された発明であるとはいえないし、甲1に記載された発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (5)申立理由1のうちの請求項2及び請求項2を直接又は間接的に引用する請求項3ないし9に対する新規性・進歩性についてのむすび したがって、本件特許発明2ないし9は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項2ないし9に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであるとはいえず、同法第113条第2号に該当しないので、申立理由1のうちの請求項2及び請求項2を直接又は間接的に引用する請求項3ないし9に対する新規性・進歩性によっては取り消すことはできない。 2 申立理由2(甲2に基づく新規性・進歩性)のうちの請求項2及び請求項2を直接又は間接的に引用する請求項3ないし9に対する新規性・進歩性について (1)甲2に記載された事項等 ア 甲2に記載された事項 甲2は「Brauen mit Ludwigs Leichtbierhefe」(当審訳:ライトビール酵母ルートヴィヒでの醸造)というタイトルの文献であり、おおむね次の事項が記載されている。 ・「ライトビール酵母ルートヴィヒでの醸造」(第1ページ第1行) ・「長い間、ホビーブリュワーにとってアルコールフリービールの製造はほぼ不可能と考えられていました。脱アルコール化のための技術的な手間が非常に大きかったためです。しかし、ここ数年でホビーブリュワーにも実用的な方法が登場し、発酵中にアルコールが0.5%volの限界を超えないようにすることが可能になりました。 19世紀末にワインで発見された酵母株Saccharomycodes ludwigiiは、数年前にホビーブリュワーの間で再発見され、ホビーブリュワーフォーラムなどで多く議論されました。現在、この酵母は公式にWeihenstephan酵母バンクで常時入手可能で、まとめて注文することができます(最低注文数は10スターター)。そこで、この酵母株を用いた醸造に関する知見をまとめる時が来ました。」(第1ページ第3ないし10行) ・「特殊酵母による発酵 この方法では、麦汁の糖スペクトルの一部しか発酵できない酵母を使用します。ここで取り上げたSaccharomycodes ludwigiiのほか、Zysosaccharomyces rouxiiなども含まれます。」(第2ページ第28ないし31行) ・「上面発酵酵母と下面発酵酵母 上面発酵酵母はさらに多くの糖を発酵させることができ、見かけ上の発酵度がほぼ100%に達することがありますが、下面発酵酵母は大きな糖分子を分解するための酵素を持っていません。Saccharomycodes ludwigii(ちなみにその名前はバイエルンの童話王ルートヴィヒ2世とは関係なく、発見者の名前のラテン語属格です)は、グルコース、フルクトース、スクロースのみを発酵させます。上記の表によると、これらの糖は総糖の8.5~16.5%を占めており、これは彼らの発酵度(12~15%)とほぼ一致します。 発酵停止法でもこの低い発酵度を達成することは可能ですが、発酵を強制的に停止させた酵母は、その後副産物を再び分解することができません。一方、Ludwigiiは完全な発酵サイクルを経て、発酵を強制的に停止させた同僚とは異なり、比較的「クリーン」なビールを残します。」(第3ページ第13ないし21行) ・「麦汁はしっかりと風味を 初期比重が低く、完成したビールには発酵されない高分子糖からの強い甘味が残るため、他の手段で風味を補う必要があります。 麦芽の選択では、カラメル麦芽を大量に使用しない方が良いでしょう。カラメル麦芽は残る甘味をさらに増やしてしまうからです。暗色のベース麦芽の代わりに、明るい麦芽を使用し、必要に応じて少量のロースト麦芽で色を調整します。ロースト麦芽は残留エキスに対抗する役割を果たします。 ホップは惜しまずに使用しましょう。残糖には対抗する要素が必要です。バランスの取れたビールのために苦味単位が初期比重の約2倍であるべきという一般的なルールは、ここでは無視して構いません。具体的な量は好みによりますが、初期比重(Stw)と苦味単位(IBU)の比率を1/4から始め、そこから自分の好みに合わせて調整していくと良いでしょう。 強いアロマホップは、ビールのスタイルに応じて、ビールの風味を向上させることができます。例えば、IPAに典型的なホップを使用することで、高い残糖を持つエクストラライトなペールエールに適した風味を与えることができます。 また、酸味も高い残糖に対する味の対抗要素となります。そのため、完成したビールの微生物学的安定性のためだけでなく、味のバランスを取るためにも、pH値を4.8~4.4、場合によっては4.0まで調整することをお勧めします。 必要な初期比重は簡単に計算できます。アルコールの目標値が最大0.5%volであり、発酵可能なエキスからアルコールとCO2が同等に生成されると仮定すると、最大1%のエキスが発酵されることになります。酵母の(見かけ上の)発酵度が最大15%であるため、投入麦汁の初期比重は最大で1/15*100=6.7%となります。」(第4ページ第1ないし17行) ・「まとめ 以下に、上記の段落から得られたLudwigii酵母に関する知見を簡潔にまとめます: ●スターター -9~10%のDME(乾燥麦芽エキス)+2~3%のグルコースまたはスクロース -撹拌し、毎日10倍に増やす -投入量は麦汁の1/10 ●麦汁 -アルコール含有量0.5%volに対して約6.7°Pの初期比重 -明るいベース麦芽、必要に応じてロースト麦芽、カラメル麦芽は少量 -強めの苦味付け -フレーバーホップを使った豊富なアロマ添加 ●発酵 -推奨発酵温度は14~15℃、12~18℃でも可能 -発酵期間は5~7日 ●炭酸化 -初めから圧力下で発酵させるか、発酵終了後に強制炭酸化する ●パスチャライゼーション -推奨されるが、非常に清潔な作業を行えば必ずしも必要ではない -樽または瓶の圧力計での管理が推奨される このまとめを参考にして、Ludwigii酵母を使用したアルコールフリービールの醸造を行ってください。」(第5ページ第10ないし29行) (イ)甲2に記載された発明 甲2に記載された事項を、特に第4ページ第1ないし17行及び第5ページ第10ないし29行に記載された事項に関して整理すると、甲2には次の発明(以下、「甲2物発明」という。)が記載されていると認める。 <甲2物発明> 「酵母株Saccharomycodes ludwigiiを使用して麦汁を発酵させて醸造したビールであって、アルコールの目標値が最大0.5%volであり、麦汁の初期比重が約6.7°Pである、ビール。」 (2)本件特許発明2について ア 対比 本件特許発明2と甲2物発明を対比する。 甲2物発明における「アルコールの目標値が最大0.5%volであり」は本件特許発明1における「エタノールを0.50(v/v)%以上1.0(v/v)%未満」「含み」に相当する。 甲2物発明における「ビール」は本件特許発明2における「ビールテイスト飲料」に相当する。 そうすると、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「エタノールを0.50(v/v)%以上1.0(v/v)%未満含む、ビールテイスト飲料。」 そして、両者は次の点で相違又は一応相違する。 <相違点2-2a> 本件特許発明2においては「マルトースを5.8(w/w)%以下含み」と特定されているのに対し、甲2物発明においてはそのようには特定されていない点。 <相違点2-2b> 本件特許発明2においては「リアルエキス濃度が8.3(w/w)%以下であり」と特定されているのに対し、甲2物発明においてはそのようには特定されていない点。 <相違点2-2c> 本件特許発明2においては「オリジナルエキス濃度が8.98(w/w)%以上であり」と特定されているのに対し、甲2物発明においては「麦汁の初期比重が約6.7°Pである」と特定されている点。 <相違点2-2d> 本件特許発明2においては「pHが2.6以上4.3未満である」と特定されているのに対し、甲2物発明においてはそのようには特定されていない点。 イ 判断 事案に鑑み、相違点2-2cについて検討する。 甲2には、甲2物発明における「麦汁の初期比重」(「オリジナルエキス濃度」に相当する。)の「約6.7°P」(「約6.7(w/w)%」に相当する。)を「8.98(w/w)%以上」に変更する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。 したがって、甲2物発明において、相違点2-2cに係る本件特許発明2の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明2の奏する「アルコール度数が低く、ビールテイスト飲料らしい発酵感および後味のすっきりさが優れた飲料となり得る。」という効果は、本件特許発明2の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 なお、特許異議申立人は、この点に関して、特許異議申立書においておおむね次のとおり主張する。 「相違点2-5(当審注:「相違点2-2c」のことである。)について、甲1を参照すると、Saccharomycodes ludwigiiを使用した発酵では、オリジナルエキス濃度7~12(w/w)%の範囲内で最終製品のエタノール含有量が1(v/v)%未満となり、ノンアルコールビールの醸造が可能であることが理解できる。そうすると、甲2物発明において、ノンアルコールビールの範囲内で風味を調整するために7~12(w/w)%の範囲内でオリジナルエキス濃度を調整することは、当業者が適宜なし得たことに過ぎない。よつて、オリジナルエキス濃度が8.98(w/w)%以上として、相違点2-5に係る構成に到ることは、甲2から容易である。 なお、甲2物発明においては、麦汁中のグルコース、スクロース及びフルクトースは、発酵により資化されているので(摘記(甲2-5)参照)、これに伴いエキス濃度が減少することになり、相違点2-5の構成を採用したとしてもリアルエキス濃度が8.3(w/w)%以下との構成を満たすことに変わりはない。 また、オリジナルエキス濃度が8.98(w/w)%以上と調整したとしても、上述のとおり甲2物発明は完全な発酵サイクルを経ることによる発酵感を有し、「クリーン」なビール、すなわち後味のすっきりさに優れているといえる。よって、本件発明2による効果は、甲2から当業者が予測できたものに過ぎない。 以上のとおり、本件発明2は、甲2に記載された発明と同一であるか、または甲2に記載された発明から当業者が容易に発明し得たものである。」(特許異議申立書第42ページ) そこで、該主張について検討する。 甲1において、「オリジナルエキス濃度7(w/w)%及び12(w/w)%で検討がなされている」としても、甲1とは関係のない文献に記載された発明である甲2発明において、「麦汁の初期比重」(「オリジナルエキス濃度」に相当する。)の「約6.7°P」(「約6.7(w/w)%」に相当する。)を「8.98(w/w)%以上」に変更する動機付けがあるとはいえないし、仮に「オリジナルエキス濃度」を「約6.7°P」(約6.7(w/w)%)から「8.98(w/w)%以上」に変更した場合、「麦汁中のグルコース、スクロース及びフルクトースは、発酵により資化され」、「リアルエキス濃度」は「8.98(w/w)%」よりも小さな値になるといえるかもしれないが、「8.3(w/w)%以下」になるとは当業者といえども予測できない。 また、甲2発明において、「オリジナルエキス濃度」を「約6.7°P」(約6.7(w/w)%)から「8.98(w/w)%以上」に変更した場合、「麦汁中のグルコース、スクロース及びフルクトースは、発酵により資化され」た結果、甲2発明における「アルコール」の濃度は「目標値」である「最大0.5%vol」を超えることになりかねず、「オリジナルエキス濃度」を「約6.7°P」(約6.7(w/w)%)から「8.98(w/w)%以上」に変更することには、いわゆる阻害要因があるともいえる。 したがって、「オリジナルエキス濃度が8.98(w/w)%以上として、相違点2-5に係る構成に到ることは、甲2から容易である。」ということはできない。 よって、特許異議申立人の上記主張は採用することはできない。 ウ まとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明2は甲2物発明であるとはいえないし、甲2物発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (3)本件特許発明3ないし8について 本件特許発明3ないし8はいずれも、請求項2の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明2の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明2と同様に、甲2物発明であるとはいえないし、甲2物発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (4)本件特許発明9について 本件特許発明9における「請求項2~8のいずれかに記載の飲料」は本件特許発明2ないし8のいずれかのことであり、それらについての判断は上記(2)及び(3)のとおりである。 したがって、本件特許発明9における「請求項2~8のいずれかに記載の飲料」という発明特定事項が甲2物発明であるとも、甲2物発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない以上、本件特許発明9は甲2に記載された発明であるとはいえないし、甲2に記載された発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (5)申立理由2のうちの請求項2及び請求項2を直接又は間接的に引用する請求項3ないし9に対する新規性・進歩性についてのむすび したがって、本件特許発明2ないし9は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項2ないし9に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであるとはいえず、同法第113条第2号に該当しないので、申立理由2のうちの請求項2及び請求項2を直接又は間接的に引用する請求項3ないし9に対する新規性・進歩性によっては取り消すことはできない。 3 申立理由3(甲3に基づく進歩性)について (1)甲3に記載された事項等 ア 甲3に記載された事項 甲3は「Application of Non-Saccharomyces Yeasts lsolated from Kombucha in the Production of Alcohol-Free Beer」というタイトルの文献であり、おおむね次の事項が記載されている。 ・「要約:アルコールフリービール(AFB)は、もはやビール市場のニッチ製品ではありません。醸造者にとって、この製品カテゴリーは成長する市場としばしば低い税負担という経済的利益を提供し、製品ポートフォリオを拡大し、責任ある飲酒を促進することができます。非サッカロマイセス酵母は食品発酵における風味向上特性で知られており、マルトースやマルトトリオースを発酵できないことが自然な発酵限界を設定し、AFB(0.5%v/v以下)の製造に有望なアプローチを提供します。コンブチャから分離された5つの株、Hanseniaspora valbyensis、Hanseniaspora vineae、Torulaspora delbrueckii、Zygosaccharomyces bailil、およびZygosaccharomyceskOmbuchaensisを、商業的に使用されているAFB株Saccharomycodes ludwigiiおよびSaccharomyces cerevisiae醸造酵母と比較しました。これらの株は、糖の利用、フェノール系オフフレーバー、ホップ感受性、および凝集性について特徴付けられました。試験発酵では、エキスの減少、エタノール生成、pHの低下が分析され、最終ビールではアミノ酸の利用および発酵副産物が分析されました。非サッカロマイセス株と商業的AFB株の発酵および発酵副産物の生成における性能は比較可能でした。経験豊富な官能評価パネルは、非サッカロマイセスAFBと商業的AFB株で製造されたものを区別できなかったため、これらの株がAFB醸造に適していることを示しています。」(第1ページ第1ないし16行) ・「2.8.麦汁の製造 発酵試験用の麦汁は、60Lのパイロットスケールの醸造設備で製造されました。この設備は、煮沸釜、ロイタータン、ワールプールタンクを備えています。Weyermann(登録商標)ピルスナーモルトは、ローラー間のギャップサイズが0.8mmの二ローラーミルで粉砕されました。7kgのモルトを40リットルの醸造水でマッシュインしました。以下のマッシングレジームが採用されました:50℃で40分、62℃で20分、72℃で20分、78℃で5分のマッシングオフ。温度体止間の加熱速度は1℃/分でした。マッシュはロイタータンにポンプで送られ、ロイタリングは5リットルずつの3回のスパージングステップで行われました。収集された麦汁は45分間沸騰させました。沸騰開始時に25gのマグナムホップペレット(10.5%イソα酸)を追加し、計算されたIBU含有量は10.4でした。熱トルーブ沈殿物とホップ残澄は、20分間の休止を伴うワールプールによって除去されました。麦汁は煮沸釜に戻され、醸造水を追加して6.6°Pの比重に修正され、100℃に加熱されてから、無菌の5リットル容器に充填されました。これらの容器は短期間の保存のために2℃で保管されました。」(第5ページ第11ないし13行) ・「表2.BioLog YTプレートテストによる基質利用プロファイル、フェノール系オフフレーバー(POF)性能、および調査対象酵母の凝集性能。行内の値に異なる上付き文字が付いている場合、統計的に有意な差があることを示します(p<0.05)。 [図:0001431152000004.jpg] 」(第6ページTable2) ・「表3.発酵麦汁の組成 [図:0001431152000005.jpg] 」(第8ページTable3) ・「発酵の最初の24時間で、pH値はKBI 5.4で0.7、KBI 22.2で1.0の範囲で低下し、その後はわずかな変化しか見られませんでした(データは表示されていません)。麦汁の初期pHが5.7と高いため、WLP001を除くビールは、ビールを腐敗させる細菌に対する微生物的障壁の一つとして望まれるpH4.5以下には達しませんでした[37]。しかし、麦汁の初期pHを調整することで、より低いpH値に達することができます。例えば、乳酸、サワーモルトの使用、または生物学的酸性化によって調整できます。完成したビールの視覚的評価は、表2の凝集挙動の分析結果と一致しました。KBI 22.1とKBI 22.2は最も高い濁りと懸濁液中の細胞を示し、一方でTUM SL 17とWLP001は底に凝集した酵母の層があり、最も澄んだビールでした。」(第9ページ第8ないし16行) ・「表4.調査対象酵母による発酵後の最終ビールの分析 [図:0001431152000006.jpg] 行内の値に異なる上付き文字が付いている場合、統計的に有意な差があることを示します(p<0.05)。」(第10ページTable4) イ 甲3に記載された発明 甲3に記載された事項を、特にTUM SL 17酵母又はKBI 22.2酵母を使用したビールに関して整理すると、甲3には次の発明(以下、「甲3物発明」という。)が記載されていると認める。 <甲3物発明> 「TUM SL 17酵母又はKBI 22.2酵母を使用してエキス濃度が6.63±0.01°P、マルトース濃度が26.60±0.25g/Lの麦汁を発酵させて醸造したビールであって、エタノールを0.50±0.01(v/v)%含み、pHが4.76±0.04又は4.69±0.02であり、真性エキスが5.67±0.06°P又は5.61±0.09°Pである、ビール。」 (2)本件特許発明2について ア 対比 本件特許発明2と甲3物発明を対比する。 甲3物発明における「エタノールを0.50±0.01(v/v)%含み」は本件特許発明2における「エタノールを0.50(v/v)%以上1.0(v/v)%未満」「含み」に相当する。 甲3物発明における「真性エキスが5.67±0.06°P又は5.61±0.09°Pである」は本件特許発明2における「リアルエキス濃度が8.3(w/w)%以下であり」に相当する。 甲3物発明における「ビール」は本件特許発明2における「ビールテイスト飲料」に相当する。 そうすると、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「エタノールを0.50(v/v)%以上1.0(v/v)%未満含み、リアルエキス濃度が8.3(w/w)%以下である、ビールテイスト飲料。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点3-2a> 本件特許発明2においては「マルトースを5.8(w/w)%以下含み」と特定されているのに対し、甲3物発明においてはそのようには特定されていない点。 <相違点3-2b> 本件特許発明2においては「オリジナルエキス濃度が8.98(w/w)%以上であり」と特定されているのに対し、甲3物発明においては「エキス濃度が6.63±0.01°P」「の麦汁を発酵させて醸造した」と特定されている点。 <相違点3-2c> 本件特許発明2においては「pHが2.6以上4.3未満である」と特定されているのに対し、甲3物発明においては「pHが4.76±0.04又は4.69±0.02であり」と特定されている点。 イ 判断 事案に鑑み、相違点3-2cについて検討する。 甲3には、甲3物発明における「pH」を「4.76±0.04又は4.69±0.02」から「2.6以上4.3未満」に変更する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。 したがって、甲3物発明において、相違点3-2cに係る本件特許発明2の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明2の奏する「アルコール度数が低く、ビールテイスト飲料らしい発酵感および後味のすっきりさが優れた飲料となり得る。」という効果は、本件特許発明2の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 なお、特許異議申立人は、この点に関して、特許異議申立書においておおむね次のとおり主張する。 「相違点3-2(当審注:「相違点3-2c」のことである。)について、甲3には、「麦汁の初期pHが5.7と高いため、WLP001を除くビールは、ビールを腐敗させる細菌に対する微生物的障壁の一つとして望まれるpH4.5以下には達しませんでした[87]」(摘記(甲3-5)参照)と記載されており、ビールを腐敗させる細菌に対する微生物的障壁とするためにpHを調整する動機付けがある。また、甲2にも記載されるとおり、麦汁の糖スペクトルの一部しか発酵できない酵母(甲3で使用されている酵母等)では、残糖による強い甘味に対抗して風味を改善するために、例えば、完成したビールの微生物学的安定性のためだけでなく、味のバランスを取るためにも、pH値を4.8~4.4、場合によっては4.0まで調整することが公知である。 そして、甲5~甲7に記載されるとおり、アルコール濃度が4容量%よりも高い通常のビール類と比べて遜色のないバランスの良い味感、風味を有する低アルコール発酵麦芽飲料とし、かつ微生物増殖を抑えて保存安定性に優れたものとするためにpHを3.8乃至4.0程度に調整すること(甲5参照)、微生物耐久性の観点からビール類のpHが4.0前後に調製されること(甲6参照)、ビールをほとんどの微生物による感染から保護するために低pH(約3.9~4.4)にすること、更には市販されているビールの50%はpH3,9~4.2の範囲内に入ること(甲7参照)は当業者によく知られていることである。 よって、甲3に記載の課題に対して甲3物発明のpHを4.0程度に調整することは、当業者が極めて容易になし得たことに過ぎない。」(特許異議申立書第51及び52ページ) そこで、該主張について検討する。 甲3物発明は、「pH」が「4.76±0.04又は4.69±0.02」となるように発酵条件を調整し、その結果として、「エタノールを0.50±0.01(v/v)%含み、pHが4.76±0.04又は4.69±0.02であり、真性エキスが5.67±0.06°P又は5.61±0.09°Pであるビールテイスト飲料」が得られたものである。そうすると、「pH」を「2.6以上4.3未満」に変更し、そうなるように発酵条件を調整した場合、「エタノール」の濃度や「真性エキス」の濃度がどうなるかは当業者といえども予測できないから、「pH」を「2.6以上4.3未満」に変更することは、当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 したがって、「甲3に記載の課題に対して甲3物発明のpHを4.0程度に調整することは、当業者が極めて容易になし得たことに過ぎない。」ということはできない。 よって、特許異議申立人の上記主張は採用することはできない。 ウ まとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明2は、甲3物発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件特許発明3ないし8について 本件特許発明3ないし8はいずれも、請求項2の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明2の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明2と同様に、甲3物発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)本件特許発明9について 本件特許発明9における「請求項2~8のいずれかに記載の飲料」は本件特許発明2ないし8のいずれかのことであり、それらについての判断は上記(2)及び(3)のとおりである。 したがって、本件特許発明9における「請求項2~8のいずれかに記載の飲料」という発明特定事項が甲3物発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない以上、本件特許発明9は甲3に記載された発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (5)申立理由3についてのむすび したがって、本件特許発明2ないし9は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項2ないし9に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであるとはいえず、同法第113条第2号に該当しないので、申立理由3によっては取り消すことはできない。 4 申立理由4(甲4に基づく進歩性)について (1)甲4に記載された事項等 ア 甲4に記載された事項 甲4には、「PRODUCTION OF LOW-ALCOHOL OR ALCOHOL-FREE BEER WITH PICHIA KLUYVERI YEAST STRAINS」(当審訳:Pichia kluyveri酵母株を用いた低アルコール又はアルコールフリービールの製造方法)に関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「発明の概要 本発明は、Pichia kluyveri酵母株がビール麦汁中のグルコースのみを発酵させる能力を持ち、わずかなエタノール生成で高濃度の望ましい風味化合物を生成できるという発明者の驚くべき発見に基づいています。」(第2ページ第16ないし20行) ・「表1.麦汁の典型的な糖スペクトル(Stewart,2010) [図:0001431152000007.jpg] 」(第3ページ表1) ・「実施例1 材料と方法 発酵のセットアップ 低アルコールビールとアルコールフリービールの両方が、2つの異なるPichia kluyveri株(株Aと株B)を使用して製造されました。合計で2つの試験が行われました: 1)Pichia kluyveri株Aと株Bを比較したアルコールフリービール。 2)Pichia kluyveri株Aを使用した低アルコールビール。 醸造レシピは、ホップの追加を除いて、両方の試験で最初は同じでした。アルコールフリービールは1500リットル規模で製造されました。Pichia kluyveri株Aと株Bを使用した低アルコールビールは1000リットル規模で製造されました。すべてのビールの基礎は、4種類の異なる麦芽の混合物でした:ピルスナーモルト20%、小麦モルト38%、ミュンヘンモルト38%、およびカラ50モルト4%。初期糖濃度はAnton Paar Beer Alcolyzerで測定し、8.3°Platoでした。」(第9ページ第3ないし16行) ・「低アルコールビールの場合、苦味のためにホップエキスが使用され、麦汁の煮沸の終わりにテトナングとアマリロホップがアロマホップとして使用されました。発酵は21℃ で行われました。発酵は3週間行われ、発酵の中間でテトナングとアマリロホップがドライホッピングのためにホップベルとして追加されました。ドライホッピングの過程で発酵温度は4℃に下げられました。 発酵後、すべてのビールは数日間4℃に冷却され、ろ過およびパスチャライゼーションが行われました。その後、ビールは瓶に詰められました。 最初の試験では初期グルコース濃度は1%以上でしたが、最後の2つの試験では約0.5%であり、発酵中にグルコース濃度は非常にゆっくりと減少しました。発酵の終わりには、ほぼすべてのグルコースが酵母によって消費され、エタノールに変換されました。」(第9ページ第21ないし30行) ・「Pichia kluyveriを使用して製造された低アルコールビール このビールは1500リットルの麦汁から醸造され、発酵温度は21℃でした(醸造プロセスの詳細は図1を参照)。この試験はPichia kluyverittAを使用して行われました。発酵の終わりにはすべてのグルコースが消費され、最終的なエタノール濃度は0.7%でした。発酵期間は3週間でした。」(第18ページ第2ないし6行) ・「ラボスケールの発酵試験は、500mlの麦汁で行われました。麦汁は小麦麦芽エキス(Brewferm)を使用して調製されました。麦芽エキスは水と混合され、Anton Paar Beer Alcolyzerで測定した初期糖含量が10°P(プラトー)に達するようにしました。」(第10ページ第11ないし13行) ・「 [図:0001431152000008.jpg] 」(図1の右側) イ 甲4に記載された発明 甲4に記載された事項を、特に下線部及び図1の右側の「ラガータンク」の右横の記載に関して整理すると、甲4には次の発明(以下、「甲4物発明」という。)が記載されていると認める。 <甲4物発明> 「Pichia kluyveri酵母株を使用して麦汁を発酵させて醸造された低アルコールビールであって、最終的なエタノール濃度は0.7%であり、麦汁の初期糖濃度は8.3°Platoであり、pHが5.0~4.0であるビール。」 (2)本件特許発明2について ア 対比 本件特許発明2と甲4物発明を対比する。 甲4物発明における「最終的なエタノール濃度は0.7%であり」は本件特許発明2における「エタノールを0.50(v/v)%以上1.0(v/v)%未満」「含み」に相当する。 甲4物発明における「ビール」は本件特許発明2における「ビールテイスト飲料」に相当する。 そうすると、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「エタノールを0.50(v/v)%以上1.0(v/v)%未満含む、ビールテイスト飲料。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点4-2a> 本件特許発明2においては「マルトースを5.8(w/w)%以下含み」と特定されているのに対し、甲4物発明においてはそのようには特定されていない点。 <相違点4-2b> 本件特許発明2においては「リアルエキス濃度が8.3(w/w)%以下であり」と特定されているのに対し、甲4物発明においてはそのようには特定されていない点。 <相違点4-2c> 本件特許発明2においては「オリジナルエキス濃度が8.98(w/w)%以上であり」と特定されているのに対し、甲4物発明においては「麦汁の初期糖濃度は8.3°Platoであり」と特定されている点。 <相違点4-2d> 本件特許発明2においては「pHが2.6以上4.3未満である」と特定されているのに対し、甲4物発明においては「pHが5.0~4.0である」と特定されている点。 イ 判断 事案に鑑み、相違点4-2cについて検討する。 甲4には、甲4発明における「麦汁の初期糖濃度」(「オリジナルエキス濃度」に相当する。)である「8.3°Plato」(「8.3(w/w)%」に相当する。)を「8.98(w/w)%以上」に変更する動機付けとなる記載はないし、他の証拠にもない。 したがって、甲4発明において、相違点4-2cに係る本件特許発明2の発明特定事項を採用することは当業者が容易に想到し得たことであるとはいえない。 そして、本件特許発明2の奏する「アルコール度数が低く、ビールテイスト飲料らしい発酵感および後味のすっきりさが優れた飲料となり得る。」という効果は、本件特許発明2の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 なお、特許異議申立人は、この点に関して、特許異議申立書においておおむね次のとおり主張する。 「相違点4-7(当審注:「相違点4-2c」のことである。)について、甲4では、オリジナルエキス濃度10(w/w)%での検討もなされており(摘記(甲4-7)参照)、8.3~10(w/w)%の範囲内でオリジナルエキス濃度を調整することは、甲4で想定されていることに過ぎない。よって、オリジナルエキス濃度が8.98(w/w)%以上として、相違点4-7に係る構成に到ることは、甲1(当審注:「甲4」の誤記と認める。)から極めて容易である。 なお、甲4物発明においては、麦汁中のグルコースは、発酵により資化されているので(摘記(甲4-1)参照)、これに伴いエキス濃度が減少することになり、相違点4-7の構成を採用したとしてもリアルエキス濃度が8.3(w/w)%以下との構成を満たすことに変わりはない。 また、オリジナルエキス濃度が8.98(w/w)%以上と調整したとしても、上述のとおり甲4がスタンダードビールと遜色ない香味を有することに変わりはなく、高い残糖に対する味のバランスを取るためにpH値を4.0まで調整すれば、後味のすっきりさが向上することは自明である。よつて、甲4物発明をpHを4.0程度に調整させた場合に奏される効果は、甲1の有する効果と区別ができない。 以上のとおり、本件発明2は、甲4に記載された発明から当業者が容易に発明し得たものである。」(特許異議申立書第67及び68ページ) そこで、該主張について検討する。 甲4において、「オリジナルエキス濃度10(w/w)%での検討もなされている」としても、甲4発明において、「麦汁の初期糖濃度」(オリジナルエキス濃度)の「8.3°Plato」(8.3(w/w)%)を「8.98(w/w)%以上」に変更する動機付けがあるとはいえないし、仮に「麦汁の初期糖濃度」を「8.3°Plato」(8.3(w/w)%)から「8.98(w/w)%以上」に変更した場合、「麦汁中のグルコースは、発酵により資化され」、「リアルエキス濃度」は「8.98(w/w)%」よりも小さな値になるといえるかもしれないが、「8.3(w/w)%以下」になるとは当業者といえども予測できない。 したがって、「オリジナルエキス濃度が8.98(w/w)%以上として、相違点4-7に係る構成に到ることは、甲1から極めて容易である。」ということはできない。 よって、特許異議申立人の上記主張は採用することはできない。 ウ まとめ したがって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明2は、甲4物発明並びに甲4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (3)本件特許発明3ないし8について 本件特許発明3ないし8はいずれも、請求項2の記載を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明2の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明2と同様に、甲4物発明並びに甲4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (4)本件特許発明9について 本件特許発明9における「請求項2~8のいずれかに記載の飲料」は本件特許発明2ないし8のいずれかのことであり、それらについての判断は上記(2)及び(3)のとおりである。 したがって、本件特許発明9における「請求項2~8のいずれかに記載の飲料」という発明特定事項が甲4物発明並びに甲4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえない以上、本件特許発明9は甲4に記載された発明並びに甲4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (5)申立理由4についてのむすび したがって、本件特許発明2ないし9は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえないから、本件特許の請求項2ないし9に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであるとはいえず、同法第113条第2号に該当しないので、申立理由4によっては取り消すことはできない。 第8 結語 上記第6及び7のとおり、本件特許の請求項2ないし9に係る特許は、取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立ての理由によっては取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項2ないし9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 さらに、本件特許の請求項1に係る特許は、訂正により削除されたため、特許異議申立人による請求項1に係る特許についての特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなったので、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下する。 よって、結論のとおり決定する。

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2025-700551

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