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特許異議申立

2023-700795

ビールテイスト飲料

審判番号
2023-700795
法域
特許
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
特願2021-213202
登録番号
7217334
請求日
2023年08月01日
審決日
2024年06月20日
公報発行日
2024年09月27日
結論
訂正認容
当事者
  • 【権利者】サントリーホールディングス株式会社
  • 【権利者代理人】小林 浩
  • 【権利者代理人】古橋 伸茂
  • 【権利者代理人】石原 俊秀
  • 【権利者代理人】末広 尚也
  • 【異議申立人】齊藤 恵美子
審判長/審判官
  • 審判長 磯貝 香苗
  • 審判官 加藤 友也
  • 審判官 松本 陶子
分類
P1651.113-YAA(C12C) / P1651.121-YAA(C12C)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法29条1項3号特許法29条2項特許法113条2号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第1項第3号、特許法第120条の5第2項、特許法第120条の5第5項、特許法第120条の5第9項、特許法第120条の5第4項、特許法第120条の5第7項、特許法第120条の5第3項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特許第7217334号発明「ビールテイスト飲料」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。

結論

結 論 特許第7217334号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし9〕、〔10及び11〕並びに12について訂正することを認める。 特許第7217334号の請求項1ないし12に係る特許を維持する。

理由

理 由 第1 手続の経緯 特許第7217334号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし12に係る特許についての出願は、令和3年12月27日の出願であって、令和5年1月25日にその特許権の設定登録(請求項の数12)がされ、同年2月2日に特許掲載公報が発行され、その後、その特許に対し、同年8月1日に特許異議申立人 齊藤 恵美子(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:請求項1ないし12)がされ、同年10月27日付けで取消理由が通知され、同年12月26日に特許権者 サントリーホールディングス株式会社(以下、「特許権者」という。)から訂正請求がされると共に意見書が提出され、令和6年1月11日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、同年2月5日に特許異議申立人から意見書が提出され、同年3月7日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年4月24日に特許権者から訂正請求がされると共に意見書が提出されたものである。 なお、令和5年12月26日にされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。 また、すでに特許異議申立人に意見書の提出の機会が与えられており、下記第2 1のとおり、令和6年4月24日にされた訂正請求によって特許請求の範囲が相当程度減縮され、下記第5ないし7のとおり、提出された全ての証拠や意見等を踏まえて更に審理を進めたとしても特許を維持すべきとの結論となると合議体は判断し、特許法第120条の5第5項ただし書に規定された特別の事情があるときといえるから、特許異議申立人に再度の意見書の提出の機会を与えていない。 第2 本件訂正について 1 訂正の内容 令和6年4月24日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「オリジナルエキス濃度が19.2質量%以上、および、アルコール度数が12.5(v/v)%以上であり、原料にホップを用いる、エールビールテイスト飲料(ただし、大麦を使用するスタウトビール、ならびに、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法で得られた発酵飲料を除く)。」と記載されているのを、「オリジナルエキス濃度が19.2質量%以上、苦味価が58.0BUs以下、および、アルコール度数が13.0(v/v)%以上であり、麦芽比率が95質量%以下であり、原料にホップを用いる、エールビールテイスト飲料(ただし、大麦を使用するスタウトビール、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法で得られた発酵飲料、ならびに、ハチミツ、チョコレートまたはデキストロースを使用する発酵ビールテイスト飲料を除く)。」に訂正する。 併せて、請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項4及び7ないし9も同様に訂正する。 (2)訂正事項2 特許請求の範囲の請求項2に「総ポリフェノール量が42mg/L以上である、請求項1に記載のビールテイスト飲料。」と記載されているのを、「オリジナルエキス濃度が19.2質量%以上、苦味価が58.0BUs以下、および、アルコール度数が14.0(v/v)%以上であり、総ポリフェノール量が42mg/L以上400mg/L以下であり、原料にホップを用いる、エールビールテイスト飲料(ただし、大麦を使用するスタウトビール、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法で得られた発酵飲料、ならびに、ハチミツ、チョコレートまたはデキストロースを使用する発酵ビールテイスト飲料を除く)。」に訂正する。 併せて、請求項2の記載を直接又は間接的に引用する請求項4及び7ないし9も同様に訂正する。 (3)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に「麦芽比率が40質量%以上である、請求項1または2に記載のビールテイスト飲料。」と記載されているのを、「オリジナルエキス濃度が19.2質量%以上、苦味価が24.0BUs以上58.0BUs以下、および、アルコール度数が12.5(v/v)%以上であり、麦芽比率が40質量%以上95質量%以下であり、原料にホップを用いる、エールビールテイスト飲料(ただし、大麦を使用するスタウトビール、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法で得られた発酵飲料、ならびに、ハチミツ、チョコレートまたはデキストロースを使用する発酵ビールテイスト飲料を除く)。」に訂正する。 併せて、請求項3の記載を直接又は間接的に引用する請求項7ないし9も同様に訂正する。 (4)訂正事項4 特許請求の範囲の請求項5に「麦芽比率が95質量%以下である、請求項1~4のいずれかに記載のビールテイスト飲料。」と記載されているのを、「オリジナルエキス濃度が19.2質量%以上31.5質量%以下、苦味価が58.0BUs以下、および、アルコール度数が14.0(v/v)%以上であり、麦芽比率が95質量%以下であり、原料にホップを用いる、エールビールテイスト飲料(ただし、大麦を使用するスタウトビール、ならびに、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法で得られた発酵飲料を除く)。」に訂正する。 併せて、請求項5の記載を直接又は間接的に引用する請求項7ないし9も同様に訂正する。 (5)訂正事項5 特許請求の範囲の請求項6に「前記ビールテイスト飲料が発酵ビールテイスト飲料である、請求項1~5のいずれかに記載のビールテイスト飲料。」と記載されているのを、「オリジナルエキス濃度が19.2質量%以上31.5質量%以下、苦味価が58.0BUs以下、および、アルコール度数が14.0(v/v)%以上であり、総ポリフェノール量が400mg/L以下であり、原料にホップを用いる、発酵エールビールテイスト飲料(ただし、大麦を使用するスタウトビール、ならびに、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法で得られた発酵飲料を除く)。」に訂正する。 併せて、請求項6の記載を直接又は間接的に引用する請求項7ないし9も同様に訂正する。 (6)訂正事項6 特許請求の範囲の請求項10に「アルコール度数が12.5(v/v)%以上となるように発酵させる発酵工程を有する、オリジナルエキス濃度が19.2質量%以上で、原料にホップを用いるエールビールテイスト飲料の製造方法(ただし、大麦を使用するスタウトビールの製造方法、ならびに、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法を除く)。」と記載されているのを、「アルコール度数が13.0(v/v)%以上となるように発酵させる発酵工程を有する、オリジナルエキス濃度が19.2質量%以上で、苦味価が58.0BUs以下であり、麦芽比率が95質量%以下であり、原料にホップを用いるエールビールテイスト飲料の製造方法(ただし、大麦を使用するスタウトビールの製造方法、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法、ならびに、ハチミツ、チョコレートまたはデキストロースを使用する発酵ビールテイスト飲料の製造方法を除く)。」に訂正する。 併せて、請求項10の記載を引用する請求項11も同様に訂正する。 (7)訂正事項7 特許請求の範囲の請求項12に「オリジナルエキス濃度が19.2質量%以上、および、アルコール度数が12.5(v/v)%以上となるように調整する工程を有し、原料にホップを用いる、エールビールテイスト飲料の香味改善方法(ただし、大麦を使用するスタウトビールの香味改善方法、ならびに、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の香味改善方法を除く)。」と記載されているのを、「オリジナルエキス濃度が19.2質量%以上、および、アルコール度数が13.0(v/v)%以上となるように調整する工程を有し、苦味価が58.0BUs以下であり、麦芽比率が95質量%以下であり、原料にホップを用いる、エールビールテイスト飲料の香味改善方法(ただし、大麦を使用するスタウトビールの香味改善方法、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の香味改善方法、ならびに、ハチミツ、チョコレートまたはデキストロースを使用する発酵ビールテイスト飲料の香味改善方法を除く)。」に訂正する。 2 訂正の目的、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内か否か及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)請求項1についての訂正について 訂正事項1による請求項1についての訂正は、「苦味価」及び「麦芽比率」に関する限定を追加し、「アルコール度数」の数値範囲を狭くし、「エールビールテイスト飲料」から除外する飲料を増やすものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項1による請求項1についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)請求項2についての訂正について 訂正事項2による請求項2についての訂正は、訂正前の請求項2が請求項1を引用していたのを、請求項1の記載を引用しない独立形式に書き下した上で、「苦味価」に関する限定を追加し、「アルコール度数」及び「総ポリフェノール量」の数値範囲を狭くし、さらに、「エールビールテイスト飲料」から除外する飲料を増やすものであるから、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすること及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項2による請求項2についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)請求項3についての訂正について 訂正事項3による請求項3についての訂正は、訂正前の請求項3が請求項1又は2を引用していたのを、請求項2を引用しないものとし、さらに、請求項1を引用するものについて、請求項1の記載を引用しない独立形式に書き下した上で、「苦味価」に関する限定を追加し、「アルコール度数」及び「総ポリフェノール量」の数値範囲を狭くし、さらに、「エールビールテイスト飲料」から除外する飲料を増やすものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 そして、訂正事項3による請求項3についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4)請求項4についての訂正について 訂正事項1及び2による請求項4についての訂正は、請求項1及び2についての訂正と同様に特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 そして、訂正事項1及び2による請求項4についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (5)請求項5についての訂正について 訂正事項4による請求項5についての訂正は、訂正前の請求項5が請求項1ないし4のいずれかを引用していたのを、請求項2ないし4を引用しないものとし、さらに、請求項1を引用するものについて、請求項1の記載を引用しない独立形式に書き下した上で、「オリジナルエキス濃度」及び「アルコール度数」の数値範囲を狭くし、「苦味価」に関する限定を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 そして、訂正事項4による請求項5についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (6)請求項6についての訂正について 訂正事項5による請求項6についての訂正は、訂正前の請求項6が請求項1ないし5のいずれかを引用していたのを、請求項2ないし5を引用しないものとし、さらに、請求項1の記載を引用しない独立形式に書き下した上で、「オリジナルエキス濃度」及び「アルコール度数」の数値範囲を狭くし、「苦味価」及び「総ポリフェノール量」に関する限定を追加するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 そして、訂正事項5による請求項6についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (7)請求項7ないし9についての訂正について 訂正事項1ないし5による請求項7ないし9についての訂正は、請求項1ないし6についての訂正と同様に特許請求の範囲の減縮及び他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものである。 そして、訂正事項1ないし5による請求項7ないし9についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (8)請求項10についての訂正について 訂正事項6による請求項10についての訂正は、「アルコール度数」の数値範囲を狭くし、「苦味価」及び「麦芽比率」に関する限定を追加した上で、「エールビールテイスト飲料の製造方法」から除外する飲料の製造方法を増やすものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項6による請求項10についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (9)請求項11についての訂正について 訂正事項6による請求項11についての訂正は、請求項10についての訂正と同様に特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項6による請求項11についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (10)請求項12についての訂正について 訂正事項7による請求項12についての訂正は、「アルコール度数」の数値範囲を狭くし、「苦味価」及び「麦芽比率」に関する限定を追加した上で、「エールビールテイスト飲料の香味改善方法」から除外する飲料の香味改善方法を増やすものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項7による請求項12についての訂正は、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内のものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 むすび 以上のとおり、訂正事項1ないし5による請求項1ないし9についての訂正は、いずれも、特許法120条の5第2項ただし書第1又は4号に掲げる事項を目的とするものである。 訂正事項6による請求項10及び11についての訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。 訂正事項7による請求項12についての訂正は、特許法120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものである。 そして、訂正事項1ないし7による請求項1ないし12についての訂正は、いずれも、特許法第120条の5第9項において準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合する。 なお、訂正前の請求項1ないし9は一群の請求項に該当するものであり、訂正事項1ないし5による請求項1ないし9についての訂正は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。 また、訂正前の請求項10及び11は一群の請求項に該当するものであり、訂正事項6による請求項10及び11についての訂正は、それらについてされたものであるから、一群の請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第4項の規定に適合する。 さらに、訂正事項7による請求項12についての訂正は、請求項ごとにされたものであり、特許法第120条の5第3項の規定に適合する。 そして、特許異議の申立ては、訂正前の請求項1ないし12に対してされているので、訂正を認める要件として、特許法第120条の5第9項において読み替えて準用する同法第126条第7項に規定する独立特許要件は課されない。 訂正後の請求項2、3、5及び6については、当該請求項についての訂正が認められる場合には、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することの求めがされているが、訂正後の請求項7ないし9は、訂正後の請求項1ないし6を直接又は間接的に引用するものであり、訂正後の請求項1ないし9は、依然として一群の請求項であるから、訂正後の請求項2、3、5及び6について、一群の請求項の他の請求項とは別途訂正することは認められない。 したがって、本件訂正は適法なものであり、結論のとおり、本件特許の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1ないし9〕、〔10及び11〕並びに12について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記第2のとおりであるから、本件特許の請求項1ないし12に係る発明(以下、順に「本件特許発明1」のようにいう。)は、それぞれ、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 オリジナルエキス濃度が19.2質量%以上、苦味価が58.0BUs以下、および、アルコール度数が13.0(v/v)%以上であり、麦芽比率が95質量%以下であり、原料にホップを用いる、エールビールテイスト飲料(ただし、大麦を使用するスタウトビール、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法で得られた発酵飲料、ならびに、ハチミツ、チョコレートまたはデキストロースを使用する発酵ビールテイスト飲料を除く)。 【請求項2】 オリジナルエキス濃度が19.2質量%以上、苦味価が58.0BUs以下、および、アルコール度数が14.0(v/v)%以上であり、総ポリフェノール量が42mg/L以上400mg/L以下であり、原料にホップを用いる、エールビールテイスト飲料(ただし、大麦を使用するスタウトビール、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法で得られた発酵飲料、ならびに、ハチミツ、チョコレートまたはデキストロースを使用する発酵ビールテイスト飲料を除く)。 【請求項3】 オリジナルエキス濃度が19.2質量%以上、苦味価が24.0BUs以上58.0BUs以下、および、アルコール度数が12.5(v/v)%以上であり、麦芽比率が40質量%以上95質量%以下であり、原料にホップを用いる、エールビールテイスト飲料(ただし、大麦を使用するスタウトビール、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法で得られた発酵飲料、ならびに、ハチミツ、チョコレートまたはデキストロースを使用する発酵ビールテイスト飲料を除く)。 【請求項4】 麦芽比率が50質量%以上である、請求項1または2に記載のビールテイスト飲料。 【請求項5】 オリジナルエキス濃度が19.2質量%以上31.5質量%以下、苦味価が58.0BUs以下、および、アルコール度数が14.0(v/v)%以上であり、麦芽比率が95質量%以下であり、原料にホップを用いる、エールビールテイスト飲料(ただし、大麦を使用するスタウトビール、ならびに、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法で得られた発酵飲料を除く)。 【請求項6】 オリジナルエキス濃度が19.2質量%以上31.5質量%以下、苦味価が58.0BUs以下、および、アルコール度数が14.0(v/v)%以上であり、総ポリフェノール量が400mg/L以下であり、原料にホップを用いる、発酵エールビールテイスト飲料(ただし、大麦を使用するスタウトビール、ならびに、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法で得られた発酵飲料を除く)。 【請求項7】 原材料にエタノールまたはエタノール含有組成物が含まれない、請求項1~6のいずれかに記載のビールテイスト飲料。 【請求項8】 前記ビールテイスト飲料がビールである、請求項1~7のいずれかに記載のビールテイスト飲料。 【請求項9】 下記式(1)を満たす、請求項1~8のいずれかに記載のビールテイスト飲料。 式(1):X×Y≧240 [上記式(1)中、Xは前記ビールテイスト飲料のオリジナルエキス濃度(単位:質量%)を示し、Yは前記ビールテイスト飲料のアルコール度数(単位:(v/v)%)を示す。] 【請求項10】 アルコール度数が13.0(v/v)%以上となるように発酵させる発酵工程を有する、オリジナルエキス濃度が19.2質量%以上で、苦味価が58.0BUs以下であり、麦芽比率が95質量%以下であり、原料にホップを用いるエールビールテイスト飲料の製造方法(ただし、大麦を使用するスタウトビールの製造方法、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法、ならびに、ハチミツ、チョコレートまたはデキストロースを使用する発酵ビールテイスト飲料の製造方法を除く)。 【請求項11】 エタノールの添加工程およびエタノール含有組成物添加工程を有さない、請求項10に記載の製造方法。 【請求項12】 オリジナルエキス濃度が19.2質量%以上、および、アルコール度数が13.0(v/v)%以上となるように調整する工程を有し、苦味価が58.0BUs以下であり、麦芽比率が95質量%以下であり、原料にホップを用いる、エールビールテイスト飲料の香味改善方法(ただし、大麦を使用するスタウトビールの香味改善方法、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の香味改善方法、ならびに、ハチミツ、チョコレートまたはデキストロースを使用する発酵ビールテイスト飲料の香味改善方法を除く)。」 第4 特許異議申立書に記載した申立ての理由の概要等 令和5年8月1日に特許異議申立人が提出した特許異議申立書(以下、「特許異議申立書」という。)に記載した申立ての理由の概要及び証拠方法は次のとおりである。 1 申立理由1(甲第1号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明1ないし12は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第1号証に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 2 申立理由2(甲第2号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明1ないし4及び6ないし12は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第2号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許発明1ないし12は、甲第2号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 3 申立理由3(甲第3号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明1ないし12は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第3号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第3号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 4 申立理由4(甲第4号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明1ないし12は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第4号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 5 申立理由5(甲第5号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明1ないし12は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第5号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第5号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 6 申立理由6(甲第6号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明1ないし12は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第6号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第6号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 7 申立理由7(甲第7号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明1ないし4及び6ないし12は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第7号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、本件特許発明1ないし12は、甲第7号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 8 申立理由8(甲第8号証に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明1ないし12は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第8号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲第8号証に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 9 証拠方法 甲第1号証:THE BREW-MASTER’S BIBLE,Stephen Snyder著,HarperCo11ins発行,1997年,pp.196-197. 甲第2号証:J.Brew.Soc.Japan.,Vol.98,No.5,pp.376-385,2003年 甲第3号証:Brewer's Friend ホームページ,2016年12月23日,印刷日2023年6月27日,URL:https://www.brewersfriend.com/homebrew/recipe/view/409914/smoked-braggot 甲第4号証:Brewer's Friend ホームページ,2020年6月21日,印刷日2023年6月27日,URL:https://www.brewersfriend.com/homebrew/recipe/view/1011668/pb-imp-porter 甲第5号証:American Homebrewers Association ホームページ,web archive 2021年7月26日,印刷日2023年6月2日,URL:https://web.archive.org/web/20210726131141/https://www.homebrewersassociation.org/homebrew-recipe/dogfish-head-120-minute-ipa/ 甲第6号証:米国特許出願公開第2020/0255914号明細書 甲第7号証:BrewingScience,2019年,Vol.72,pp.89-93 甲第8号証:Nordeast Brewers Alliance ホームページ,web archive 2020年11月12日,印刷日2023年7月7日,URL:https://web.archive.org/web/20201112003127/https://www.nordeastbrewersalliance.org/education/education/nicks-tips-for-brewing-high-gravity-beers/ 甲第9号証:Journal of The Institute of Brewing,2000年,vol.106,No.3,pp.135-138 甲第10号証:J.Near Infrared Spectrosc.6,A363-A366,1998年 甲第11号証:Foods,26 July 2021,10,1726 甲第12号証:J.Microbiol.Biotechnol.,2019年,29(6),pp.877-886 甲第13号証:CRAFT BEER&Brewing ホームページ,2015年12月15日,印刷日2023年7月16日,URL:https://beerandbrewing.com/over-the-top-brewing-high-gravity-beers/ 甲第14号証:MoreBeer! ホームページ,2013年3月14日,印刷日2023年7月16日,URL:https://www.morebeer.com/articles/brewing_strong_beer 甲第15号証:ビール醸造技術,株式会社食品産業新聞社発行,1999年,pp.276-279 甲第16号証:Science & Technology Development,Vol.14,No.K4,2011年 甲第17号証:特許第6604849号公報 甲第18号証:J.Am.Soc.Brew.Chem.73(3) :275-279, 2015年 甲第19号証:特許第6698197号公報 甲第20号証:LALLEMAND BREWING ホームページ,web archive 2021年10月27日,印刷日2023年7月16日,URL:https://web.archive.org/web/20211027095323/https:/www.lallemandbrewing.com/en/united-states/product-details/belle-saison-beer-yeast/ 甲第21号証:LALLEMAND BREWING ホームページ,web archive 2021年9月20日,印刷日2023年7月16日,URL:https://web.archive.org/web/20210920022910/https:/www.lallemandbrewing.com/en/united-states/product-details/munich-classic-wheat-beer-yeast/ 甲第22号証:LALLEMAND BREWING ホームページ,web archive 2019年2月9日,印刷日2023年7月16日,URL:https://web.archive.org/web/20190209233331/http:/www.lallemandbrewing.com/en/united-states/product-details/munich-wheat-beer-yeast/ 甲第23号証:TRIPEL SMALL BATCH, BREWDOG ホームページ,2017年1月,印刷日2023年7月16日,URL:https://brewdogrecipes.com/recipes/tripel-small-batch 甲第24号証:DOG B, BREWDOG ホームページ,2013年5月,印刷日2023年7月16日,URL:https://brewdogrecipes.com/recipes/dog-b 甲第25号証:DOG C, BREWDOG ホームページ,2014年5月,印刷日2023年7月16日,URL:https://brewdogrecipes.com/recipes/dog-c 甲第26号証:AB:02, BREWDOG ホームページ,2010年5月,印刷日2023年7月16日,URL:https://brewdogrecipes.com/recipes/ab02 甲第27号証:ANARCHIST ALCHEMIST, BREWDOG ホームページ,2012年3月,印刷日2023年7月16日,URL:https://brewdogrecipes.com/recipes/anarchist-alchemist 甲第28号証:DOG A, BREWDOG ホームページ,2012年5月,印刷日2023年7月16日,URL:https://brewdogrecipes.com/recipes/dog-a 甲第29号証:WYEAST LABORATORIES ホームページ,web archive 2021年5月7日,印刷日2023年7月16日,URL:https://web.archive.org/web/20210507114215/https:/www.wyeastlab.com/yeast-strain/belgian-abbey-style-ale 甲第30号証:WYEAST LABORATORIES ホームページ,web archive 2021年12月7日,印刷日2023年7月16日,URL:https://web.archive.org/web/20211207190806/https:/wyeast1ab.com/yeast-strain/be1gian-strong-a1e 甲第31号証:WYEAST LABORATORIES ホームページ,webarchive 2021年9月20日,印刷日2023年7月16日,URL:https://web.archive.org/web/20210920115506/https:/wyeast1ab.com/yeast-strain/6elgian-abbey-style-ale-ii 甲第32号証:WYEAST LABORATORIES ホームページ,web archive 2021年12月7日,印刷日2023年7月16日,URL:https://web.archive.org/web/20211207181055/https:/wyeast1ab.com/yeast-strain/be1gian-high-gravity 甲第33号証:WHITE LABS ホームページ,web archive 2021年10月12日,印刷日2023年7月20日,URL:https://web.archive.org/web/20211012154050/https://www.whitelabs.com/yeast-single?id=144&type=YEAST&style_type=l 甲第34号証:J.Inst.Brew.,2009年,115(4),pp.318-327 甲第35号証:Brewer's Friendホームページ、2021年11月24日、印刷日2024年1月7日、URL:https://www.brewersfriend.com/homebrew/recipe/view/1222371/takamisan 甲第36号証:BeerSmith LLCホームページ、2015年9月19日、印刷日2024年1月18日、URL: https://beersmithrecipes.com/viewrecipe/900087/barley-holrits 甲第36号証の2:BeerSmith LLCホームページ、印刷日2024年1月18日,URL : https://beersmithrecipes.com/viewuser/50105/holrits 甲第37号証:BeerSmith LLCホームページ,2015年2月14日,印刷日2023年12月7日,URL:https://beersmithrecipes.com/viewrecipe/693561/carolus-clone 甲第37号証の2:BeerSmith LLCホームページ,印刷日2023年12月7日、URL:https://beersmithrecipes.com/viewuser/861/ditlev 甲第38号証:Brewer's Friendホームページ、2021年11月16日、印刷日2024年1月7日、URL:https://www.brewersfriend.com/homebrew/recipe/view/1219457/fred-and-josh-s-tripel 甲第35ないし38号証は、令和6年2月5日に特許異議申立人から提出された意見書に添付されたものである。また、証拠の表記は、特許異議申立書及び上記意見書の記載におおむね従った。以下、順に「甲1」のようにいう。 第5 取消理由(決定の予告)の概要 令和6年3月7日付けで通知した取消理由(決定の予告)(以下、「取消理由(決定の予告)」という。)の概要は次のとおりである。 1 取消理由6(甲35に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明1ないし12は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲35に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲35に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 2 取消理由7(甲36に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明1ないし7及び9ないし12は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲36に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲36に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1ないし7及び9ないし12に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 3 取消理由8(甲37に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明1、3、4及び7ないし12は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲37に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲37に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3、4及び7ないし12に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 4 取消理由9(甲38に基づく新規性・進歩性) 本件特許発明1、3、4及び7ないし12は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲38に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるか、甲38に記載された発明に基づいて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本件特許の請求項1、3、4及び7ないし12に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し取り消すべきものである。 第6 取消理由(決定の予告)についての当審の判断 1 取消理由6(甲35に基づく新規性・進歩性)について (1)甲35に記載された事項等 ア 甲35に記載された事項 甲35には、「takamisan」と名付けられたビールのレシピに関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「オリジナルエキス(比重):1.117 外観エキス(比重):1.005 アルコール度数:14.65v/v% 苦味価(IBU):59.39 色度(SRM):11.27 もろみpH:0 [図:0001414175000001.jpg] 」(第1ページ第7ないし22行) ・「このレシピは、下記アドレスにて、オンラインで発行された https://www.brewersfriend.com/homebrew/recipe/view/1222371/takamisan Brewer's Friendにより生成された-https://www.brewersfriend.com/ 日付:2024-01-07 07:19 UTC レシピの最終アップデート日:2021-11-24 09:03 UTC」(第2ページ下から5行ないし最終行) イ 甲35に記載された発明 甲35に記載された事項を整理すると、甲35には次の発明(以下、順に「甲35発明」、「甲35製法発明」及び「甲35方法発明」という。)が記載されていると認める。 <甲35発明> 「甲35に記載されたレシピで製造されたオリジナルエキス(比重)が1.117、アルコール度数が14.65v/v%のビール。」(当審注:「甲35に記載されたレシピ」については、上記アを参照。) <甲35製法発明> 「甲35発明の製造方法。」 <甲35方法発明> 「甲35発明となるように調整する方法。」 (2)本件特許発明1について 本件特許発明1と甲35発明を対比する。 エキスの比重と質量%(°P)は換算が可能であり、例えば、当業者に汎用されている自動変換ツール(例えば、https://beerandbrewing.com/tools/sg-platoconverter/)を使用して変換すると、甲35発明におけるオリジナルエキス濃度(比重)1.117は、27.4267質量% (°P)である。 本件特許発明1における「麦芽比率」に関して、「麦芽比率とは平成30年4月1日が施工日の酒税法および酒類行政関係法令等解釈通達に従って計算された値を意味する。」(本件特許の発明の詳細な説明の【0023】)ところ、当該「麦芽比率」は、水及びホップ以外の原料に占める麦芽の割合であるので、甲35発明における「麦芽比率」は次のとおり57.4質量%と算出される。 麦芽重量:ミュンヘンタイプI(2.2kg)+カラレッド(0.5kg)=2.7kg 水及びホップ以外の原料の重量:麦芽重量(2.7kg)+ベルジャンキャンディシュガー-クリア/ブロンド(2kg)=4.7kg 麦芽比率=(麦芽重量/水及びホップ以外の原料の重量)×100=(2.7kg/4.7kg)×l00=57. 4質量% 甲35発明における「苦味価(IBU)」は59.39である。 すなわち、甲35発明は、「オリジナルエキス濃度」が27.4267質量%、「アルコール度数」が14.65v/v%、「麦芽比率」が57.4質量%、「苦味価(IBU)」が59.39のビールである。 甲35発明は、上記(1)アのとおり、原料に「ホップ」を用いている。 甲35発明は、上記(1)アのとおり、酵母としてエール酵母を用いており、「エールビール」である。 甲35発明は、本件特許発明1から、ただし書きで除かれる対象ではない。 そうすると、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「オリジナルエキス濃度が19.2質量%以上、および、アルコール度数が13.0(v/v)%以上であり、麦芽比率が95質量%以下であり、原料にホップを用いる、エールビールテイスト飲料(ただし、大麦を使用するスタウトビール、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法で得られた発酵飲料、ならびに、ハチミツ、チョコレートまたはデキストロースを使用する発酵ビールテイスト飲料を除く)。 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点35-1> 本件特許発明1においては「苦味価が58.0BUs以下」と特定されているのに対し、甲35発明においては「苦味価(IBU)」が「59.39」と特定されている点。 したがって、両者の間には相違点35-1があることから、本件特許発明1は甲35発明であるとはいえない。 また、甲35及び他の証拠には、甲35発明において、相違点35-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。 そして、本件特許発明1の奏する「アルコール由来の刺激感を感じながら、さらに麦の味わいを有するビールテイスト飲料を提供する」(本件特許の発明の詳細な説明の【0006】)という効果は、甲35発明並びに甲35及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 よって、本件特許発明1は甲35発明並びに甲35及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (3)本件特許発明2について 本件特許発明2と甲35発明を対比する。 甲35発明については、上記(2)と同様のことがいえる。 甲35発明において、「総ポリフェノール量」は特定されていないが、令和5年12月26日に特許権者が提出した意見書の第21ページの表によれば、オリジナルエキス濃度28質量%、かつオールモルトでホップを使用する場合の総ポリフェノール量は最大で495.6質量ppmである。また、同意見書20ページの表によれば、ホップ不使用時(すべて麦芽に由来)のオリジナルエキス濃度28質量%のとき、総ポリフェノール量が346.6質量ppmであるから、この時ホップ由来のポリフェノール量は、149質量ppm(=495.6質量ppm-346.6質量ppm)である。ここで、ホップを除く原料組成について、甲35発明においては、穀物以外の副原料(ベルジャンキャンディシュガー)が42.6質量%であり、総ポリフェノール量に当該副原料は寄与しないことから、ホップを除く原料由来の総ポリフェノールは198.9質量ppm(=346.6質量ppm×57.4質量%)である。ここにホップ由来の149質量ppmを足し合わせることで、甲35発明における「総ポリフェノール量」は最大で347.9質量ppmと推定され、42mg/L以上400mg/L以下の範囲内である。 そうすると、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「オリジナルエキス濃度が19.2質量%以上、および、アルコール度数が14.0(v/v)%以上であり、総ポリフェノール量が42mg/L以上400mg/L以下であり、原料にホップを用いる、エールビールテイスト飲料(ただし、大麦を使用するスタウトビール、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法で得られた発酵飲料、ならびに、ハチミツ、チョコレートまたはデキストロースを使用する発酵ビールテイスト飲料を除く)。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点35-2> 本件特許発明2においては「苦味価が58.0BUs以下」と特定されているのに対し、甲35発明においては「苦味価(IBU)」が「59.39」と特定されている点。 したがって、両者の間には相違点35-2があることから、本件特許発明2は甲35発明であるとはいえない。 また、甲35及び他の証拠には、甲35発明において、相違点35-2に係る本件特許発明2の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。 そして、本件特許発明2の奏する「アルコール由来の刺激感を感じながら、さらに麦の味わいを有するビールテイスト飲料を提供する」という効果は、甲35発明並びに甲35及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明2の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 よって、本件特許発明2は甲35発明並びに甲35及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (4)本件特許発明3について 本件特許発明3と甲35発明を対比する。 甲35発明については、上記(2)と同様のことがいえる。 そうすると、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「オリジナルエキス濃度が19.2質量%以上、および、アルコール度数が12.5(v/v)%以上であり、麦芽比率が40質量%以上95質量%以下であり、原料にホップを用いる、エールビールテイスト飲料(ただし、大麦を使用するスタウトビール、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法で得られた発酵飲料、ならびに、ハチミツ、チョコレートまたはデキストロースを使用する発酵ビールテイスト飲料を除く)。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点35-3> 本件特許発明3においては「苦味価が24.0BUs以上58.0BUs以下」と特定されているのに対し、甲35発明においては「苦味価(IBU)」が「59.39」と特定されている点。 したがって、両者の間には相違点35-3があることから、本件特許発明3は甲35発明であるとはいえない。 また、甲35及び他の証拠には、甲35発明において、相違点35-3に係る本件特許発明3の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。 そして、本件特許発明3の奏する「アルコール由来の刺激感を感じながら、さらに麦の味わいを有するビールテイスト飲料を提供する」という効果は、甲35発明並びに甲35及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明3の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 よって、本件特許発明3は甲35発明並びに甲35及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (5)本件特許発4について 本件特許発明4は請求項1又は2を引用して特定するものであり、本件特許発明1又は2の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1又は2と同様に判断される。 すなわち、本件特許発明4は甲35発明であるとはいえないし、甲35発明並びに甲35及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (6)本件特許発明5について 本件特許発明5と甲35発明を対比する。 甲35発明については、上記(2)と同様のことがいえる。 そうすると、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「オリジナルエキス濃度が19.2質量%以上31.5質量%以下、および、アルコール度数が14.0(v/v)%以上であり、麦芽比率が95質量%以下であり、原料にホップを用いる、エールビールテイスト飲料(ただし、大麦を使用するスタウトビール、ならびに、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法で得られた発酵飲料を除く)。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点35-5> 本件特許発明5においては「苦味価が58.0BUs以下」と特定されているのに対し、甲35発明においては「苦味価(IBU)」が「59.39」と特定されている点。 したがって、両者の間には相違点35-5があることから、本件特許発明5は甲35発明であるとはいえない。 また、甲35及び他の証拠には、甲35発明において、相違点35-5に係る本件特許発明5の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。 そして、本件特許発明5の奏する「アルコール由来の刺激感を感じながら、さらに麦の味わいを有するビールテイスト飲料を提供する」という効果は、甲35発明並びに甲35及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明5の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 よって、本件特許発明5は甲35発明並びに甲35及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (7)本件特許発明6について 本件特許発明6と甲35発明を対比する。 甲35発明については、上記(2)と同様のことがいえる。 そうすると、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「オリジナルエキス濃度が19.2質量%以上31.5質量%以下、および、アルコール度数が14.0(v/v)%以上であり、総ポリフェノール量が400mg/L以下であり、原料にホップを用いる、発酵エールビールテイスト飲料(ただし、大麦を使用するスタウトビール、ならびに、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法で得られた発酵飲料を除く)。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点35-6> 本件特許発明6においては「苦味価が58.0BUs以下」と特定されているのに対し、甲35発明においては「苦味価(IBU)」が「59.39」と特定されている点。 したがって、両者の間には相違点35-6があることから、本件特許発明6は甲35発明であるとはいえない。 また、甲35及び他の証拠には、甲35発明において、相違点35-6に係る本件特許発明6の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。 そして、本件特許発明6の奏する「アルコール由来の刺激感を感じながら、さらに麦の味わいを有するビールテイスト飲料を提供する」という効果は、甲35発明並びに甲35及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明6の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 よって、本件特許発明6は甲35発明並びに甲35及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (8)本件特許発明7ないし9について 本件特許発明7ないし9は請求項1ないし6のいずれかを直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1ないし6のいずれかの発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1ないし6と同様に判断される。 すなわち、本件特許発明7ないし9は甲35発明であるとはいえないし、甲35発明並びに甲35及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (9)本件特許発明10について 本件特許発明10と甲35製法発明を対比する。 甲35製法発明については、上記(2)と同様のことがいえる。 そうすると、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「アルコール度数が13.0(v/v)%以上となるように発酵させる発酵工程を有する、オリジナルエキス濃度が19.2質量%以上で、麦芽比率が95質量%以下であり、原料にホップを用いるエールビールテイスト飲料の製造方法(ただし、大麦を使用するスタウトビールの製造方法、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法、ならびに、ハチミツ、チョコレートまたはデキストロースを使用する発酵ビールテイスト飲料の製造方法を除く)。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点35-10> 本件特許発明10においては「苦味価が58.0BUs以下であり」と特定されているのに対し、甲35製法発明においては「苦味価(IBU)」が「59.39」と特定されている点。 したがって、両者の間には相違点35-10があることから、本件特許発明10は甲35製法発明であるとはいえない。 また、甲35及び他の証拠には、甲35製法発明において、相違点35-10に係る本件特許発明10の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。 そして、本件特許発明10の奏する「アルコール由来の刺激感を感じながら、さらに麦の味わいを有するビールテイスト飲料を提供する」という効果は、甲35製法発明並びに甲35及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明10の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 よって、本件特許発明10は甲35製法発明並びに甲35及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (10)本件特許発明11について 本件特許発明11は請求項10を引用して特定するものであり、本件特許発明10の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明10と同様に判断される。 すなわち、本件特許発明11は甲35製法発明であるとはいえないし、甲35製法発明並びに甲35及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (11)本件特許発明12について 本件特許発明12と甲35方法発明を対比する。 甲35方法発明については、上記(2)と同様のことがいえる。 そうすると、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「オリジナルエキス濃度が19.2質量%以上、および、アルコール度数が13.0(v/v)%以上となるように調整する工程を有し、麦芽比率が95質量%以下であり、原料にホップを用いる、エールビールテイスト飲料の香味改善方法(ただし、大麦を使用するスタウトビールの香味改善方法、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の香味改善方法、ならびに、ハチミツ、チョコレートまたはデキストロースを使用する発酵ビールテイスト飲料の香味改善方法を除く)。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点35-12> 本件特許発明12においては「苦味価が58.0BUs以下であり」と特定されているのに対し、甲35方法発明においては「苦味価(IBU)」が「59.39」と特定されている点。 したがって、両者の間には相違点35-12があることから、本件特許発明12は甲35方法明であるとはいえない。 また、甲35及び他の証拠には、甲35方法発明において、相違点35-12に係る本件特許発明12の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。 そして、本件特許発明12の奏する「アルコール由来の刺激感を感じながら、さらに麦の味わいを有するビールテイスト飲料を提供する」という効果は、甲35方法発明並びに甲35及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明12の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 よって、本件特許発明12は甲35方法発明並びに甲35及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (12)取消理由6についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし12は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであるとはいえないので、同法第113条第2号に該当せず、取消理由6によっては取り消すことはできない。 2 取消理由7(甲36に基づく新規性・進歩性)について (1)甲36に記載された事項等 ア 甲36に記載された事項 甲36には、「BARLEY holrits」と名付けられたビールのレシピに関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「ブリューワー:Holrits バッチサイズ:6.08ガロン 煮沸サイズ:7.40ガロン 色度:15.8SRM 苦味価:74.5IBU オリジナルエキス:1.120(28.2質量%) 外観エキス:1.007(1.7質量%) アルコール度数:15.3v/v%」(第1ページ左欄第1ないし8行)」 ・「 原料 [図:0001414175000002.jpg] 」(第1ページ表) イ 甲36に記載された発明 甲36に記載された事項を整理すると、甲36には次の発明(以下、順に「甲36発明」、「甲36製法発明」及び「甲36方法発明」という。)が記載されていると認める。 <甲36発明> 「甲36に記載されたレシピで製造されたオリジナルエキス濃度が28.2質量%、アルコール度数が15.3v/v%のビール。」(当審注:「甲36に記載されたレシピ」については、上記アを参照。) <甲36製法発明> 「甲36発明の製造方法。」 <甲36方法発明> 「甲36発明となるように調整する方法。」 (2)本件特許発明1について 本件特許発明1と甲36発明を対比する。 甲36発明における「麦芽比率」は次のとおり68.7質量%と算出される。 麦芽重量:ペールモルト,マリスオッター(11ポンド2.80オンス)+ミュンヘンモルト-10L(1ポンド13.77オンス)+カラミュンヘンモルト(1ポンド4.04オンス)+カラレッド(1ポンド1.25オンス)+カラメル/クリスタルモルト-20L(7.05オンス)+ピルスナー(2ロウ)ベル(4ポンド11.27オンス)=2 0ポンド8.18オンス=20.51125ポンド 水及びホップ以外の原料の重量:麦芽重量(20ポンド8.18オンス)+焙煎大麦(1.06オンス)+キャンディーシュガー,クリア(5ポンド8.19オンス)+シラップ(700.00g=24.6918オンス)+キャンディーシュガー,クリア(2ポンド3.27オンス)=29ポンド13.3918オンス=29.8369875ポンド 麦芽比率=(麦芽重量/水及びホップ以外の原料の重量)×100=(20.51125ポンド/29.8369875ポンド)×l00=68.7質量% 甲36発明における「苦味価」は「74.5IBU」である。 すなわち、甲36発明は、「オリジナルエキス濃度」が28.2質量%、「アルコール度数」が15.3v/v%、「麦芽比率」が68.7質量%、「苦味価」が74.5IBUのビールである。 甲36発明は、上記(1)アのとおり、原料に「ホップ」を用いている。 甲36発明は、上記(1)アのとおり、酵母としてエール酵母を用いており、「エールビール」である。 甲36発明は、本件特許発明1から、ただし書きで除かれる対象ではない。 そうすると、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「オリジナルエキス濃度が19.2質量%以上、および、アルコール度数が13.0(v/v)%以上であり、麦芽比率が95質量%以下であり、原料にホップを用いる、エールビールテイスト飲料(ただし、大麦を使用するスタウトビール、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法で得られた発酵飲料、ならびに、ハチミツ、チョコレートまたはデキストロースを使用する発酵ビールテイスト飲料を除く)。 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点36-1> 本件特許発明1においては「苦味価が58.0BUs以下」と特定されているのに対し、甲36発明においては「苦味価」が「74.5IBU」と特定されている点。 したがって、両者の間には相違点36-1があることから、本件特許発明1は甲36発明であるとはいえない。 また、甲36及び他の証拠には、甲36発明において、相違点36-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。 そして、本件特許発明1の奏する「アルコール由来の刺激感を感じながら、さらに麦の味わいを有するビールテイスト飲料を提供する」という効果は、甲36発明並びに甲36及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 よって、本件特許発明1は甲36発明並びに甲36及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (3)本件特許発明2について 本件特許発明2と甲36発明を対比する。 甲36発明については、上記(2)と同様のことがいえる。 甲36発明において、「総ポリフェノール量」は特定されていないが、甲35発明と同様の計算をすると、甲36発明における「総ポリフェノール量」は最大で388.2質量ppmと推定され、42mg/L以上400mg/L以下の範囲内である。 そうすると、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「オリジナルエキス濃度が19.2質量%以上、および、アルコール度数が14.0(v/v)%以上であり、総ポリフェノール量が42mg/L以上400mg/L以下であり、原料にホップを用いる、エールビールテイスト飲料(ただし、大麦を使用するスタウトビール、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法で得られた発酵飲料、ならびに、ハチミツ、チョコレートまたはデキストロースを使用する発酵ビールテイスト飲料を除く)。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点36-2> 本件特許発明2においては「苦味価が58.0BUs以下」と特定されているのに対し、甲36発明においては「苦味価」が「74.5IBU」と特定されている点。 したがって、両者の間には相違点36-2があることから、本件特許発明2は甲36発明であるとはいえない。 また、甲36及び他の証拠には、甲36発明において、相違点36-2に係る本件特許発明2の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。 そして、本件特許発明2の奏する「アルコール由来の刺激感を感じながら、さらに麦の味わいを有するビールテイスト飲料を提供する」という効果は、甲36発明並びに甲36及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明2の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 よって、本件特許発明2は甲36発明並びに甲36及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (4)本件特許発明3について 本件特許発明3と甲36発明を対比する。 甲36発明については、上記(2)と同様のことがいえる。 そうすると、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「オリジナルエキス濃度が19.2質量%以上、および、アルコール度数が12.5(v/v)%以上であり、麦芽比率が40質量%以上95質量%以下であり、原料にホップを用いる、エールビールテイスト飲料(ただし、大麦を使用するスタウトビール、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法で得られた発酵飲料、ならびに、ハチミツ、チョコレートまたはデキストロースを使用する発酵ビールテイスト飲料を除く)。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点36-3> 本件特許発明3においては「苦味価が24.0BUs以上58.0BUs以下」と特定されているのに対し、甲36発明においては「苦味価」が「74.5IBU」と特定されている点。 したがって、両者の間には相違点36-3があることから、本件特許発明3は甲36発明であるとはいえない。 また、甲36及び他の証拠には、甲36発明において、相違点36-3に係る本件特許発明3の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。 そして、本件特許発明3の奏する「アルコール由来の刺激感を感じながら、さらに麦の味わいを有するビールテイスト飲料を提供する」という効果は、甲36発明並びに甲36及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明3の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 よって、本件特許発明3は甲36発明並びに甲36及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (5)本件特許発4について 本件特許発明4は請求項1又は2を引用して特定するものであり、本件特許発明1又は2の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1又は2と同様に判断される。 すなわち、本件特許発明4は甲36発明であるとはいえないし、甲36発明並びに甲36及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (6)本件特許発明5について 本件特許発明5と甲36発明を対比する。 甲36発明については、上記(2)と同様のことがいえる。 そうすると、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「オリジナルエキス濃度が19.2質量%以上31.5質量%以下、および、アルコール度数が14.0(v/v)%以上であり、麦芽比率が95質量%以下であり、原料にホップを用いる、エールビールテイスト飲料(ただし、大麦を使用するスタウトビール、ならびに、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法で得られた発酵飲料を除く)。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点36-5> 本件特許発明5においては「苦味価が58.0BUs以下」と特定されているのに対し、甲36発明においては「苦味価」が「74.5IBU」と特定されている点。 したがって、両者の間には相違点36-5があることから、本件特許発明5は甲36発明であるとはいえない。 また、甲36及び他の証拠には、甲36発明において、相違点36-5に係る本件特許発明5の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。 そして、本件特許発明5の奏する「アルコール由来の刺激感を感じながら、さらに麦の味わいを有するビールテイスト飲料を提供する」という効果は、甲36発明並びに甲36及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明5の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 よって、本件特許発明5は甲36発明並びに甲36及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (7)本件特許発明6について 本件特許発明6と甲36発明を対比する。 甲36発明については、上記(2)と同様のことがいえる。 そうすると、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「オリジナルエキス濃度が19.2質量%以上31.5質量%以下、および、アルコール度数が14.0(v/v)%以上であり、総ポリフェノール量が400mg/L以下であり、原料にホップを用いる、発酵エールビールテイスト飲料(ただし、大麦を使用するスタウトビール、ならびに、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法で得られた発酵飲料を除く)。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点36-6> 本件特許発明6においては「苦味価が58.0BUs以下」と特定されているのに対し、甲36発明においては「苦味価」が「74.5IBU」と特定されている点。 したがって、両者の間には相違点36-6があることから、本件特許発明6は甲36発明であるとはいえない。 また、甲36及び他の証拠には、甲36発明において、相違点36-6に係る本件特許発明6の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。 そして、本件特許発明6の奏する「アルコール由来の刺激感を感じながら、さらに麦の味わいを有するビールテイスト飲料を提供する」という効果は、甲36発明並びに甲36及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明6の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 よって、本件特許発明6は甲36発明並びに甲36及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (8)本件特許発明7及び9について 本件特許発明7及び9は請求項1ないし6のいずれかを直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1ないし6のいずれかの発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1ないし6と同様に判断される。 すなわち、本件特許発明7及び9は甲36発明であるとはいえないし、甲36発明並びに甲36及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (9)本件特許発明10について 本件特許発明10と甲36製法発明を対比する。 甲36製法発明については、上記(2)と同様のことがいえる。 そうすると、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「アルコール度数が13.0(v/v)%以上となるように発酵させる発酵工程を有する、オリジナルエキス濃度が19.2質量%以上で、麦芽比率が95質量%以下であり、原料にホップを用いるエールビールテイスト飲料の製造方法(ただし、大麦を使用するスタウトビールの製造方法、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法、ならびに、ハチミツ、チョコレートまたはデキストロースを使用する発酵ビールテイスト飲料の製造方法を除く)。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点36-10> 本件特許発明10においては「苦味価が58.0BUs以下であり」と特定されているのに対し、甲36製法発明においては「苦味価」が「74.5IBU」と特定されている点。 したがって、両者の間には相違点36-10があることから、本件特許発明10は甲36製法発明であるとはいえない。 また、甲36及び他の証拠には、甲36製法発明において、相違点36-10に係る本件特許発明10の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。 そして、本件特許発明10の奏する「アルコール由来の刺激感を感じながら、さらに麦の味わいを有するビールテイスト飲料を提供する」という効果は、甲36製法発明並びに甲36及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明10の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 よって、本件特許発明10は甲36製法発明並びに甲36及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (10)本件特許発明11について 本件特許発明11は請求項10を引用して特定するものであり、本件特許発明10の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明10と同様に判断される。 すなわち、本件特許発明11は甲36製法発明であるとはいえないし、甲36製法発明並びに甲36及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (11)本件特許発明12について 本件特許発明12と甲36方法発明を対比する。 甲36方法発明については、上記(2)と同様のことがいえる。 そうすると、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「オリジナルエキス濃度が19.2質量%以上、および、アルコール度数が13.0(v/v)%以上となるように調整する工程を有し、麦芽比率が95質量%以下であり、原料にホップを用いる、エールビールテイスト飲料の香味改善方法(ただし、大麦を使用するスタウトビールの香味改善方法、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の香味改善方法、ならびに、ハチミツ、チョコレートまたはデキストロースを使用する発酵ビールテイスト飲料の香味改善方法を除く)。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点36-12> 本件特許発明12においては「苦味価が58.0BUs以下であり」と特定されているのに対し、甲36方法発明においては「苦味価」が「74.5IBU」と特定されている点。 したがって、両者の間には相違点36-12があることから、本件特許発明12は甲36方法明であるとはいえない。 また、甲36及び他の証拠には、甲36方法発明において、相違点36-12に係る本件特許発明12の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。 そして、本件特許発明12の奏する「アルコール由来の刺激感を感じながら、さらに麦の味わいを有するビールテイスト飲料を提供する」という効果は、甲36方法発明並びに甲36及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明12の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 よって、本件特許発明12は甲36方法発明並びに甲36及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (12)取消理由7についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし7及び9ないし12は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし7及び9ないし12に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであるとはいえないので、同法第113条第2号に該当せず、取消理由7によっては取り消すことはできない。 3 取消理由8(甲37に基づく新規性・進歩性)について (1)甲37に記載された事項等 ア 甲37に記載された事項 甲37には、「Carolus clone」と名付けられたビールのレシピに関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「バッチサイズ:5.42ガロン 煮沸サイズ:6.82ガロン 色度:18.2SRM 苦味価:23.3IBU オリジナルエキス:1.097(23.1質量%) 外観エキス:1.003(0.7質量%) アルコール度数:12.6v/v%」(第1ページ左欄第1ないし7行)」 ・「 原料 [図:0001414175000003.jpg] 」(第1ページ表) イ 甲37に記載された発明 甲37に記載された事項を整理すると、甲37には次の発明(以下、順に「甲37発明」、「甲37製法発明」及び「甲37方法発明」という。)が記載されていると認める。 <甲37発明> 「甲37に記載されたレシピで製造されたオリジナルエキス濃度が23.1質量%、アルコール度数が12.6v/v%のビール。」(当審注:「甲37に記載されたレシピ」については、上記アを参照。) <甲37製法発明> 「甲37発明の製造方法。」 <甲37方法発明> 「甲37発明となるように調整する方法。」 (2)本件特許発明1について 本件特許発明1と甲37発明を対比する。 甲37発明における「麦芽比率」は次のとおり69.7質量%と算出される。 麦芽重量:ピルスナー(Weyermann)(9ポンド14.73オンス)+カラムニッヒII(Weyermann)(1ポンド1.64オンス)+カラレッド(Weyermann)(1ポンド1.64オンス)+カラファI(Weyermann)(3.53オンス)=12ポンド5.54オンス 水及びホップ以外の原料の重量:麦芽重量(12ポンド5.54オンス)+粉砕小麦(14.11オンス)+レーズン入り自家製ゴールデンシロップ(2ポンド10.33オンス)+テーブルシュガー(スクロース)(1ポンド1.64オンス)+ブラウンシュガー,ダーク(11.29オンス)+コリアンダーシード(7g=約0.25オンス)+ナツメグ(7g=約0.25オンス)=17ポンド11.41オンス 麦芽比率=(麦芽重量/水及びホップ以外の原料の重量)×100=(12ポンド5.54オンス/17ポンド11.41オンス)×100=(12.34625ポンド/17.713125ポンド)×l00=69.7質量% 甲37発明における「苦味価」は「23.3IBU」である。 すなわち、甲37発明は、「オリジナルエキス濃度」が23.1質量%、「アルコール度数」が12.6v/v%、「麦芽比率」が69.7質量%、「苦味価」が23.3IBUのビールである。 甲37発明は、上記(1)アのとおり、原料に「ホップ」を用いている。 甲37発明は、上記(1)アのとおり、酵母としてエール酵母を用いており、「エールビール」である。 甲37発明は、本件特許発明1から、ただし書きで除かれる対象ではない。 そうすると、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「オリジナルエキス濃度が19.2質量%以上、苦味価が58.0BUs以下、および、麦芽比率が95質量%以下であり、原料にホップを用いる、エールビールテイスト飲料(ただし、大麦を使用するスタウトビール、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法で得られた発酵飲料、ならびに、ハチミツ、チョコレートまたはデキストロースを使用する発酵ビールテイスト飲料を除く)。 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点37-1> 本件特許発明1においては「アルコール度数が13.0(v/v)%以上であり」と特定されているのに対し、甲37発明においては「アルコール度数」が「12.6v/v%」と特定されている点。 したがって、両者の間には相違点37-1があることから、本件特許発明1は甲37発明であるとはいえない。 また、甲37及び他の証拠には、甲37発明において、相違点37-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。 そして、本件特許発明1の奏する「アルコール由来の刺激感を感じながら、さらに麦の味わいを有するビールテイスト飲料を提供する」という効果は、甲37発明並びに甲37及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 よって、本件特許発明1は甲37発明並びに甲37及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (3)本件特許発明3について 本件特許発明3と甲37発明を対比する。 甲37発明については、上記(2)と同様のことがいえる。 そうすると、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「オリジナルエキス濃度が19.2質量%以上、および、アルコール度数が12.5(v/v)%以上であり、麦芽比率が40質量%以上95質量%以下であり、原料にホップを用いる、エールビールテイスト飲料(ただし、大麦を使用するスタウトビール、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法で得られた発酵飲料、ならびに、ハチミツ、チョコレートまたはデキストロースを使用する発酵ビールテイスト飲料を除く)。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点37-3> 本件特許発明3においては「苦味価が24.0BUs以上58.0BUs以下」と特定されているのに対し、甲37発明においては「苦味価」が「23.3IBU」と特定されている点。 したがって、両者の間には相違点37-3があることから、本件特許発明3は甲37発明であるとはいえない。 また、甲37及び他の証拠には、甲37発明において、相違点37-3に係る本件特許発明3の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。 そして、本件特許発明3の奏する「アルコール由来の刺激感を感じながら、さらに麦の味わいを有するビールテイスト飲料を提供する」という効果は、甲37発明並びに甲37及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明3の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 よって、本件特許発明3は甲37発明並びに甲37及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (4)本件特許発明4について 本件特許発明4は請求項1を引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に判断される。 すなわち、本件特許発明4は甲37発明であるとはいえないし、甲37発明並びに甲37及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (5)本件特許発明7ないし9について 本件特許発明7ないし9は請求項1又は3を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1又は3の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1又は3と同様に判断される。 すなわち、本件特許発明7ないし9は甲37発明であるとはいえないし、甲37発明並びに甲37及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (6)本件特許発明10について 本件特許発明10と甲37製法発明を対比する。 甲37製法発明については、上記(2)と同様のことがいえる。 そうすると、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「発酵工程を有する、オリジナルエキス濃度が19.2質量%以上で、苦味価が58.0BUs以下であり、麦芽比率が95質量%以下であり、原料にホップを用いるエールビールテイスト飲料の製造方法(ただし、大麦を使用するスタウトビールの製造方法、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法、ならびに、ハチミツ、チョコレートまたはデキストロースを使用する発酵ビールテイスト飲料の製造方法を除く)。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点37-10> 本件特許発明10においては「アルコール度数が13.0(v/v)%以上となるように発酵させる」と特定されているのに対し、甲37製法発明においては「アルコール度数」が「12.6v/v%」と特定されている点。 したがって、両者の間には相違点37-10があることから、本件特許発明10は甲37製法発明であるとはいえない。 また、甲37及び他の証拠には、甲37製法発明において、相違点37-10に係る本件特許発明10の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。 そして、本件特許発明10の奏する「アルコール由来の刺激感を感じながら、さらに麦の味わいを有するビールテイスト飲料を提供する」という効果は、甲37製法発明並びに甲37及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明10の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 よって、本件特許発明10は甲37製法発明並びに甲37及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (7)本件特許発明11について 本件特許発明11は請求項10を引用して特定するものであり、本件特許発明10の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明10と同様に判断される。 すなわち、本件特許発明11は甲37製法発明であるとはいえないし、甲37製法発明並びに甲37及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (8)本件特許発明12について 本件特許発明12と甲37方法発明を対比する。 甲37方法発明については、上記(2)と同様のことがいえる。 そうすると、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「オリジナルエキス濃度が19.2質量%以上となるように調整する工程を有し、苦味価が58.0BUs以下であり、麦芽比率が95質量%以下であり、原料にホップを用いる、エールビールテイスト飲料の香味改善方法(ただし、大麦を使用するスタウトビールの香味改善方法、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の香味改善方法、ならびに、ハチミツ、チョコレートまたはデキストロースを使用する発酵ビールテイスト飲料の香味改善方法を除く)。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点37-12> 本件特許発明12においては「アルコール度数が13.0(v/v)%以上となるように調整する」と特定されているのに対し、甲37方法発明においては「アルコール度数」が「12.6」と特定されている点。 したがって、両者の間には相違点37-12があることから、本件特許発明12は甲37方法発明であるとはいえない。 また、甲37及び他の証拠には、甲37方法発明において、相違点37-12に係る本件特許発明12の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。 そして、本件特許発明12の奏する「アルコール由来の刺激感を感じながら、さらに麦の味わいを有するビールテイスト飲料を提供する」という効果は、甲37方法発明並びに甲37及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明12の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 よって、本件特許発明12は甲37方法発明並びに甲37及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (9)取消理由8についてのむすび したがって、本件特許発明1、3、4及び7ないし12は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1、3、4及び7ないし12に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであるとはいえないので、同法第113条第2号に該当せず、取消理由8によっては取り消すことはできない。 4 取消理由9(甲38に基づく新規性・進歩性)について (1)甲38に記載された事項等 ア 甲38に記載された事項 甲38には、「Fred and Josh’s Tripel」と名付けられたビールのレシピに関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「オリジナルエキス(比重):1.103 外観エキス(比重):1.008 アルコール度数:12.48v/v% 苦味価(IBU):23.66 色度(SRM):10.88 もろみpH:0 [図:0001414175000004.jpg] [図:0001414175000005.jpg] 」(第1ページ第7ないし28行) ・「このレシピは、下記アドレスにて、オンラインで発行された https://www.brewersfriend.com/homebrew/recipe/view/1219457/fred-and-josh-stripel Brewer's Friendにより生成された-https://www.brewersfriend.com/ 日付:2024-01-07 07:23 UTC レシピの最終アップデート日:2021-11-16 00:38 UTC」(第2頁下から第5行ないし最下行) イ 甲38に記載された発明 甲38に記載された事項を整理すると、甲38には次の発明(以下、順に「甲38発明」、「甲38製法発明」及び「甲38方法発明」という。)が記載されていると認める。 <甲38発明> 「甲38に記載されたレシピで製造されたオリジナルエキス(比重):1.103、アルコール度数が12.48v/v%のビール。」(当審注:「甲38に記載されたレシピ」については、上記アを参照。) <甲38製法発明> 「甲38発明の製造方法。」 <甲38方法発明> 「甲38発明となるように調整する方法。」 (2)本件特許発明1について 本件特許発明1と甲38発明を対比する。 甲35発明と同様に、当業者に汎用されている自動変換ツールを使用して変換すると、甲38発明におけるオリジナルエキス濃度(比重)1.103は、24.4219質量%(°P)である。 甲38発明における「麦芽比率」は次のとおり86.0質量%と算出される。 麦芽重量:ベルジャンピルスナーモルト(25ポンド)+ペール2ーロウ(10ポンド)+アロマティックモルト(1ポンド)+カラビルス(1ポンド)=37ポンド 水及びホップ以外の原料の重量:麦芽重量(37ポンド)+ベルジャンキャンディシュガー-アンバー/ブラウン(2ポンド)+ベルジャンキャンディシュガー-クリア/ブロンド(2ポンド)+甘庶糖(2ポンド)=43ポンド 麦芽比率=(麦芽重量/水及びホップ以外の原料の重量)×100=(37ポンド/43ポンド)×l00=86.0質量% 甲38発明における「苦味価(IBU)」は「23.66」である。 すなわち、甲38発明は、「オリジナルエキス濃度」が24.4219質量%、「アルコール度数」が12.48v/v%、「麦芽比率」が86.0質量%、「苦味価(IBU)」が23.66のビールである。 甲38発明は、上記(1)アのとおり、原料に「ホップ」を用いている。 甲38発明は、上記(1)アのとおり、酵母としてエール酵母を用いており、「エールビール」である。 甲38発明は、本件特許発明1から、ただし書きで除かれる対象ではない。 そうすると、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「オリジナルエキス濃度が19.2質量%以上、苦味価が58.0BUs以下、および、麦芽比率が95質量%以下であり、原料にホップを用いる、エールビールテイスト飲料(ただし、大麦を使用するスタウトビール、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法で得られた発酵飲料、ならびに、ハチミツ、チョコレートまたはデキストロースを使用する発酵ビールテイスト飲料を除く)。 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点38-1> 本件特許発明1においては「アルコール度数が13.0(v/v)%以上であり」と特定されているのに対し、甲38発明においては「アルコール度数」が「12.48v/v%」と特定されている点。 したがって、両者の間には相違点38-1があることから、本件特許発明1は甲38発明であるとはいえない。 また、甲38及び他の証拠には、甲38発明において、相違点38-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。 そして、本件特許発明1の奏する「アルコール由来の刺激感を感じながら、さらに麦の味わいを有するビールテイスト飲料を提供する」という効果は、甲38発明並びに甲38及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 よって、本件特許発明1は甲38発明並びに甲38及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (3)本件特許発明3について 本件特許発明3と甲38発明を対比する。 甲38発明については、上記(2)と同様のことがいえる。 そうすると、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「オリジナルエキス濃度が19.2質量%以上、および、麦芽比率が40質量%以上95質量%以下であり、原料にホップを用いる、エールビールテイスト飲料(ただし、大麦を使用するスタウトビール、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法で得られた発酵飲料、ならびに、ハチミツ、チョコレートまたはデキストロースを使用する発酵ビールテイスト飲料を除く)。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点38-3a> 本件特許発明3においては「アルコール度数が12.5(v/v)%以上であり」と特定されているのに対し、甲38発明においては「アルコール度数」が「12.48v/v%」と特定されている点。 <相違点38-3b> 本件特許発明3においては「苦味価が24.0BUs以上58.0BUs以下」と特定されているのに対し、甲38発明においては「苦味価(IBU)」が「23.66」と特定されている点。 したがって、両者の間には相違点38-3a及び38-3bがあることから、本件特許発明3は甲38発明であるとはいえない。 また、甲38及び他の証拠には、甲38発明において、相違点38-3a及び38-3bに係る本件特許発明3の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。 そして、本件特許発明3の奏する「アルコール由来の刺激感を感じながら、さらに麦の味わいを有するビールテイスト飲料を提供する」という効果は、甲38発明並びに甲38及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明3の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 よって、本件特許発明3は甲38発明並びに甲38及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (4)本件特許発明4について 本件特許発明4は請求項1を引用して特定するものであり、本件特許発明1の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1と同様に判断される。 すなわち、本件特許発明4は甲38発明であるとはいえないし、甲38発明並びに甲38及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (5)本件特許発明7ないし9について 本件特許発明7ないし9は請求項1又は3を直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1又は3の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1又は3と同様に判断される。 すなわち、本件特許発明7ないし9は甲38発明であるとはいえないし、甲38発明並びに甲38及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (6)本件特許発明10について 本件特許発明10と甲38製法発明を対比する。 甲38製法発明については、上記(2)と同様のことがいえる。 そうすると、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「発酵工程を有する、オリジナルエキス濃度が19.2質量%以上で、苦味価が58.0BUs以下であり、麦芽比率が95質量%以下であり、原料にホップを用いるエールビールテイスト飲料の製造方法(ただし、大麦を使用するスタウトビールの製造方法、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の製造方法、ならびに、ハチミツ、チョコレートまたはデキストロースを使用する発酵ビールテイスト飲料の製造方法を除く)。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点38-10> 本件特許発明10においては「アルコール度数が13.0(v/v)%以上となるように発酵させる」と特定されているのに対し、甲38製法発明においては「アルコール度数」が「12.48v/v%」と特定されている点。 したがって、両者の間には相違点38-10があることから、本件特許発明10は甲38製法発明であるとはいえない。 また、甲38及び他の証拠には、甲38製法発明において、相違点38-10に係る本件特許発明10の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。 そして、本件特許発明10の奏する「アルコール由来の刺激感を感じながら、さらに麦の味わいを有するビールテイスト飲料を提供する」という効果は、甲38製法発明並びに甲38及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明10の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 よって、本件特許発明10は甲38製法発明並びに甲38及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (7)本件特許発明11について 本件特許発明11は請求項10を引用して特定するものであり、本件特許発明10の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明10と同様に判断される。 すなわち、本件特許発明11は甲38製法発明であるとはいえないし、甲38製法発明並びに甲38及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (8)本件特許発明12について 本件特許発明12と甲38方法発明を対比する。 甲38方法発明については、上記(2)と同様のことがいえる。 そうすると、両者は次の点で一致する。 <一致点> 「オリジナルエキス濃度が19.2質量%以上となるように調整する工程を有し、苦味価が58.0BUs以下であり、麦芽比率が95質量%以下であり、原料にホップを用いる、エールビールテイスト飲料の香味改善方法(ただし、大麦を使用するスタウトビールの香味改善方法、原麦汁エキス濃度が25~32重量%の麦汁にビール酵母を添加する工程;及び、ビール酵母を添加した麦汁に24時間以上通気を行いながら、該麦汁を発酵させる工程;を包含する、発酵飲料の香味改善方法、ならびに、ハチミツ、チョコレートまたはデキストロースを使用する発酵ビールテイスト飲料の香味改善方法を除く)。」 そして、両者は次の点で相違する。 <相違点38-12> 本件特許発明12においては「アルコール度数が13.0(v/v)%以上となるように調整する」と特定されているのに対し、甲38方法発明においては「アルコール度数」が「12.48」と特定されている点。 したがって、両者の間には相違点38-12があることから、本件特許発明12は甲38方法発明であるとはいえない。 また、甲38及び他の証拠には、甲38方法発明において、相違点38-12に係る本件特許発明12の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。 そして、本件特許発明12の奏する「アルコール由来の刺激感を感じながら、さらに麦の味わいを有するビールテイスト飲料を提供する」という効果は、甲38方法発明並びに甲38及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明12の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 よって、本件特許発明12は甲38方法発明並びに甲38及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (9)取消理由9についてのむすび したがって、本件特許発明1、3、4及び7ないし12は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1、3、4及び7ないし12に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであるとはいえないので、同法第113条第2号に該当せず、取消理由9によっては取り消すことはできない。 第7 取消理由(決定の予告)に採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由及び令和6年2月5日に特許異議申立人から提出された意見書に記載した理由についての当審の判断 取消理由(決定の予告)に採用しなかった特許異議申立書に記載した申立ての理由は次のとおりである。 ・申立理由1(甲1に基づく新規性・進歩性) ・申立理由2(甲2に基づく新規性・進歩性) ・申立理由3(甲3に基づく新規性・進歩性) ・申立理由4(甲4に基づく新規性・進歩性) ・申立理由5(甲5に基づく新規性・進歩性) ・申立理由6(甲6に基づく新規性・進歩性) ・申立理由7(甲7に基づく新規性・進歩性) ・申立理由8(甲8に基づく新規性・進歩性) また、取消理由(決定の予告)に採用しなかった令和6年2月5日に特許異議申立人から提出された意見書に記載した理由は次のとおりである。 ・申立理由9(請求項1、3ないし5及び7ないし12に対する甲24に基づく新規性・進歩性) 以下、順に検討する。 1 申立理由1(甲1に基づく新規性・進歩性)について (1)甲1に記載された事項等 ア 甲1に記載された事項 甲1には、ビールのレシピに関して、おおむね次の事項が記載されている。なお、甲1を含め外国語文献については、訳文のみを摘記した。また、他の文献を含め、下線は当審で付したものである。 ・「BRUTUS ANDREW TVEEKREM,ビールマイスター GREAT LAKES BREWING Co. クリーブランド、オハイオ州 “これは、真冬に消費するための偉大なるバーレイワインである。半年で美味しくなり、1年で驚くほど美味しくなる。” オリジナルエキス濃度(比重):1.136-42 外観エキス濃度(比重):1.030-40 アルコール度数:13.3-13.8v/v% 原料(10ガロン用) 40ポンド イングリッシュペールモルト 36ポンド(3ガロン) アザミ蜂蜜 ホップ:“この怪物に対して充分にホップできないかもしれない。最初にたくさんのガレナを使用しろ。次にノーザンブルワー及びカスケードだ。もし正しくホップできていれば、約4ガロンのトループが煮沸釜に残るだろう。” 1クォートの酵母(Wyeast 1028 London Ale)のスラリー 1.5カップ コーンシュガー(プライミング用) 醸造方法 1.154-156°Fで1時間、ときどき攪拌しながら、モルトをすりつぶす。 2.ろ過して12ガロンの麦汁を回収し、煮沸する。1時間煮沸した後、蜂蜜を加えて、再び1時間煮沸する―このような偉大なビールに正しいフレーバーを付けるための2時間煮沸である。 3.煮沸開始時にガレナホップペレットを添加する。 4.煮沸終了の30分前にノーザンブルワーホップペレットを添加する。煮沸終了の15分前にカスケードホップペレットを添加する。 5.ぐるぐるかき混ぜ、冷却し、65°Fで発酵させる。必ず、麦汁に勢いよく通気し、たくさんの酵母を添加する。 6.一次発酵は、通常1週間かかるが、ときどき2週間かかる。 7.少なくとも1ヶ月間二次発酵を行う。」(第196ページ右欄下から8行ないし第197ページ左欄第17行及び第197ページ右欄第1ないし18行) イ 甲1に記載された発明 甲1に記載された事項を整理すると、甲1には次の発明(以下、順に「甲1発明」、「甲1製法発明」及び「甲1方法発明」という。)が記載されていると認める。 <甲1発明> 「オリジナルエキス濃度(比重):1.136-42、アルコール度数:13.3-13.8v/v%であり、ホップ(ガレナ、ノーザンブルワー及びカスケード)を使用し、酵母(Wyeast 1028 London Ale)を使用して酸造したビール。」 <甲1製法発明> 「甲1発明の製造方法。」 <甲1方法発明> 「甲1発明となるように調整する方法。」 (2)本件特許発明1について 本件特許発明1と甲1発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点1-1> 本件特許発明1においてはハチミツを使用する発酵ビールテイスト飲料が除かれているのに対し、甲1発明においては原料としてアザミ蜂蜜、すなわちハチミツを使用する発酵ビールテイスト飲料である点。 両者の間には相違点1-1があるから、本件特許発明1は甲1発明であるとはいえない。 また、甲1及び他の証拠には、甲1発明において、相違点1-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。 そして、本件特許発明1の奏する「アルコール由来の刺激感を感じながら、さらに麦の味わいを有するビールテイスト飲料を提供する」という効果は、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 したがって、本件特許発明1は甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 なお、特許異議申立人は、令和6年2月5日に提出された意見書において、甲1発明において、アザミ蜂蜜に代えて、甲8に記載されるような糖類を採用することは当業者の通常の創作能力の発揮に過ぎない旨主張する(上記意見書第3ページ)が、甲1発明において、アザミ蜂蜜に代えて、他の糖類を採用した場合、全く異なるビールとなってしまうし、アルコール度数も変わると考えられることから、そのようなことが当業者の通常の創作能力の発揮であるとは考えられず、上記主張は採用できない。 (3)本件特許発明2ないし4について 本件特許発明2ないし4においては、本件特許発明1と同様に、ハチミツを使用する発酵ビールテイスト飲料が除かれている。 したがって、本件特許発明2ないし4は、本件特許発明1と同様に、甲1発明であるとはいえないし、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (4)本件特許発明5について 本件特許発明5と甲1発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点1-5> 本件特許発明5においては「アルコール度数が14.0(v/v)%以上」と特定されているのに対し、甲1発明においては「アルコール度数:13.3-13.8v/v%」と特定されている点。 両者の間には相違点1-5があるから、本件特許発明5は甲1発明であるとはいえない。 また、甲1及び他の証拠には、甲1発明において、相違点1-5に係る本件特許発明5の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。 そして、本件特許発明5の奏する「アルコール由来の刺激感を感じながら、さらに麦の味わいを有するビールテイスト飲料を提供する」という効果は、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明5の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 したがって、本件特許発明5は甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (5)本件特許発明6について 本件特許発明6と甲1発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点1-6> 本件特許発明6においては「アルコール度数が14.0(v/v)%以上」と特定されているのに対し、甲1発明においては「アルコール度数:13.3-13.8v/v%」と特定されている点。 両者の間には相違点1-6があるから、本件特許発明6は甲1発明であるとはいえない。 また、甲1及び他の証拠には、甲1発明において、相違点1-6に係る本件特許発明6の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。 そして、本件特許発明6の奏する「アルコール由来の刺激感を感じながら、さらに麦の味わいを有するビールテイスト飲料を提供する」という効果は、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明6の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 したがって、本件特許発明6は甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (6)本件特許発明7ないし9について 本件特許発明7ないし9は請求項1ないし6のいずれかを直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1ないし6のいずれかの発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1ないし6と同様に判断される。 すなわち、本件特許発明7ないし9は甲1発明であるとはいえないし、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (7)本件特許発明10について 本件特許発明10と甲1製法発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点1-10> 本件特許発明10においてはハチミツを使用する発酵ビールテイスト飲料の製造方法が除かれているのに対し、甲1製法発明においては原料としてアザミ蜂蜜、すなわちハチミツを使用する発酵ビールテイスト飲料の製造方法である点。 両者の間には相違点1-10があるから、本件特許発明10は甲1製法発明であるとはいえない。 また、甲1及び他の証拠には、甲1製法発明において、相違点1-10に係る本件特許発明10の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。 そして、本件特許発明10の奏する「アルコール由来の刺激感を感じながら、さらに麦の味わいを有するビールテイスト飲料を提供する」という効果は、甲1発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明10の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 したがって、本件特許発明10は甲1製法発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (8)本件特許発明11について 本件特許発明11は請求項10を引用して特定するものであり、本件特許発明10の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明10と同様に判断される。 すなわち、本件特許発明11は甲1製法発明であるとはいえないし、甲1製法発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (9)本件特許発明12について 本件特許発明12と甲1方法発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点1-12> 本件特許発明12においてはハチミツを使用する発酵ビールテイスト飲料の香味改善方法が除かれているのに対し、甲1方法発明においては原料としてアザミ蜂蜜、すなわちハチミツを使用する発酵ビールテイスト飲料の香味改善方法である点。 両者の間には相違点1-12があるから、本件特許発明12は甲1方法発明であるとはいえない。 また、甲1及び他の証拠には、甲1方法発明において、相違点1-12に係る本件特許発明12の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。 そして、本件特許発明12の奏する「アルコール由来の刺激感を感じながら、さらに麦の味わいを有するビールテイスト飲料を提供する」という効果は、甲1方法発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明12の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 したがって、本件特許発明12は甲1方法発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (10)申立理由1についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし12は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであるとはいえないので、同法第113条第2号に該当せず、申立理由1によっては取り消すことはできない。 2 申立理由2(甲2に基づく新規性・進歩性)について (1)甲2に記載された発明 甲2に記載された事項を整理すると、甲2には、次の発明(以下、順に「甲2発明」及び「甲2製法発明」という。)が記載されていると認める。 <甲2発明> 「原麦汁25%Platoの麦汁にα-グルコシダーゼ400mg/l及び酵母を添加して試験管発酵させた高濃度麦汁。」 <甲2製法発明> 「甲2発明の製造方法。」 (2)本件特許発明1ないし9について 甲2発明は、「試験管発酵させた高濃度麦汁」の発明であって、「飲料」の発明ではない。 したがって、「飲料」の発明である本件特許発明1ないし4及び6ないし9は甲2発明であるとはいえないし、本件特許発明1ないし9は甲2発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (3)本件特許発明10及び11について 甲2製法発明は、「試験管発酵させた高濃度麦汁」の「製造方法」の発明であって、「飲料の製造方法」の発明ではない。 したがって、「飲料の製造方法」の発明である本件特許発明10及び11は甲2製法発明であるとはいえないし、甲2製法発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (4)本件特許発明12について 甲2からは、本件特許発明12と対比可能な「飲料の香味改善方法」の発明を認定することはできない。 したがって、「飲料の香味改善方法」の発明である本件特許発明12は甲2に記載された発明であるとはいえないし、甲2に記載された発明並びに甲2及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (5)申立理由2についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし4及び6ないし12は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、本件特許発明1ないし12は同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、同法第113条第2号に該当せず、申立理由2によっては取り消すことはできない。 3 申立理由3(甲3に基づく新規性・進歩性)について (1)甲3に記載された事項等 ア 甲3に記載された事項 甲3には、ビールの高濃度醸造に関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「オリジナルエキス:34.0質量%(°P) 外観エキス:6.3質量%(°P) アルコール度数:16.3v/v% 苦味価(IBU):46.85 色度(SRM):18.62 もろみ pH: [図:0001414175000006.jpg] 」(第1ページ) ・「このレシピは、下記アドレスにて、オンラインで発行された https://www.brewersfriend.com/homebrew/recipe/view/409914/smoked-braggot Brewer's Friendにより生成された-https://www.brewersfriend.com/ 日付:2023-06-27 06:32 UTC レシピの最終アップデート日:2016-12-23 13:03 UTC」(第2ページ第3ないし7行) イ 甲3に記載された発明 甲3に記載された事項を整理すると、甲3には次の発明(以下、順に「甲3発明」、「甲3製法発明」及び「甲3方法発明」という。)が記載されていると認める。 <甲3発明> 「甲3に記載されたレシピで製造されたオリジナルエキスが34.0質量%(°P)、アルコール度数が16.3v/v%のビール。」(当審注:「甲3に記載されたレシピ」については、上記アを参照。) <甲3製法発明> 「甲3発明の製造方法。」 <甲3方法発明> 「甲3発明となるように調整する方法。」 (2)本件特許発明1について 本件特許発明1と甲3発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点3-1> 本件特許発明1においてはハチミツを使用する発酵ビールテイスト飲料が除かれているのに対し、甲3発明においては原料としてハチミツを使用する発酵ビールテイスト飲料である点。 両者の間には相違点3-1があるから、本件特許発明1は甲3発明であるとはいえない。 また、甲3及び他の証拠には、甲3発明において、相違点3-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。 そして、本件特許発明1の奏する「アルコール由来の刺激感を感じながら、さらに麦の味わいを有するビールテイスト飲料を提供する」という効果は、甲3発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 したがって、本件特許発明1は甲3発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 なお、特許異議申立人は、令和6年2月5日に提出された意見書において、甲3発明において、ハチミツに代えて、甲8に記載されるような糖類を採用することは当業者の通常の創作能力の発揮に過ぎない旨主張する(上記意見書第4及び5ページ)が、甲3発明において、ハチミツに代えて、他の糖類を採用した場合、全く異なるビールとなってしまうし、アルコール度数も変わると考えられることから、そのようなことが当業者の通常の創作能力の発揮であるとは考えられず、上記主張は採用できない。 (3)本件特許発明2ないし4について 本件特許発明2ないし4においては、本件特許発明1と同様に、ハチミツを使用する発酵ビールテイスト飲料が除かれている。 したがって、本件特許発明2ないし4は、本件特許発明1と同様に、甲3発明であるとはいえないし、甲3発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (4)本件特許発明5について 本件特許発明5と甲3発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点3-5> 本件特許発明5においては「オリジナルエキス濃度が19.2質量%以上31.5質量%以下」と特定されているのに対し、甲3発明においては「オリジナルエキスが34.0質量%(°P)」と特定されている点。 両者の間には相違点3-5があるから、本件特許発明5は甲3発明であるとはいえない。 また、甲3及び他の証拠には、甲3発明において、相違点3-5に係る本件特許発明5の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。 そして、本件特許発明5の奏する「アルコール由来の刺激感を感じながら、さらに麦の味わいを有するビールテイスト飲料を提供する」という効果は、甲3発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明5の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 したがって、本件特許発明5は甲3発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (5)本件特許発明6について 本件特許発明6と甲3発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点3-6> 本件特許発明6においては「オリジナルエキス濃度が19.2質量%以上31.5質量%以下」と特定されているのに対し、甲3発明においては「オリジナルエキスが34.0質量%(°P)」と特定されている点。 両者の間には相違点3-6があるから、本件特許発明6は甲3発明であるとはいえない。 また、甲3及び他の証拠には、甲3発明において、相違点3-6に係る本件特許発明6の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。 そして、本件特許発明6の奏する「アルコール由来の刺激感を感じながら、さらに麦の味わいを有するビールテイスト飲料を提供する」という効果は、甲3発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明6の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 したがって、本件特許発明6は甲3発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (6)本件特許発明7ないし9について 本件特許発明7ないし9は請求項1ないし6のいずれかを直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1ないし6のいずれかの発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1ないし6と同様に判断される。 すなわち、本件特許発明7ないし9は甲3発明であるとはいえないし、甲3発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (7)本件特許発明10について 本件特許発明10と甲3製法発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点3-10> 本件特許発明10においてはハチミツを使用する発酵ビールテイスト飲料の製造方法が除かれているのに対し、甲3製法発明においては、原料としてハチミツを使用する発酵ビールテイスト飲料の製造方法である点。 両者の間には相違点3-10があるから本件特許発明10は甲3製法発明であるとはいえない。 また、甲3及び他の証拠には、甲3製法発明において、相違点3-10に係る本件特許発明10の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。 そして、本件特許発明10の奏する「アルコール由来の刺激感を感じながら、さらに麦の味わいを有するビールテイスト飲料を提供する」という効果は、甲3製法発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明10の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 したがって、本件特許発明10は甲3製法発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (8)本件特許発明11について 本件特許発明11は請求項10を引用して特定するものであり、本件特許発明10の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明10と同様に判断される。 すなわち、本件特許発明11は甲3製法発明であるとはいえないし、甲3製法発明並びに甲1及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (9)本件特許発明12について 本件特許発明12と甲3方法発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点3-12> 本件特許発明12においてはハチミツを使用する発酵ビールテイスト飲料の香味改善方法が除かれているのに対し、甲3方法発明においては原料としてハチミツを使用する発酵ビールテイスト飲料の香味改善方法である点。 両者の間には相違点3-12があるから、本件特許発明12は甲3方法発明であるとはいえない。 また、甲3及び他の証拠には、甲3方法発明において、相違点3-12に係る本件特許発明12の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。 そして、本件特許発明12の奏する「アルコール由来の刺激感を感じながら、さらに麦の味わいを有するビールテイスト飲料を提供する」という効果は、甲3方法発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明12の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 したがって、本件特許発明12は甲3方法発明並びに甲3及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (10)申立理由3についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし12は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであるとはいえないので、同法第113条第2号に該当せず、申立理由3によっては取り消すことはできない。 4 申立理由4(甲4に基づく新規性・進歩性)について (1)甲4に記載された事項等 ア 甲4に記載された事項 甲4には、「PB IMP Porter」と名付けられたビールのレシピに関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「オリジナルエキス:29.2質量%(°P) 外観エキス:5.2質量%(°P) アルコール度数:13.8v/v% 苦味価(IBU):42.76 色度(SRM):46.97 もろみ pH:5.7 [図:0001414175000007.jpg] [図:0001414175000008.jpg] 」(第1ページ) ・「このレシピは、下記アドレスにて、オンラインで発行された https://www.brewersfriend.com/homebrew/recipe/view/1011668/pb-imp-porter Brewer's Friendにより生成された-https://www.brewersfriend.com/ 日付:2023-06-27 06:40 UTC レシピの最終アップデート日:2020-06-21 11:27 UTC」(第2ページ下から5行ないし最終行) イ 甲4に記載された発明 甲4に記載された事項を整理すると、甲4には次の発明(以下、順に「甲4発明」、「甲4製法発明」及び「甲4方法発明」という。)が記載されていると認める。 <甲4発明> 「甲4に記載されたレシピで製造されたオリジナルエキスが29.2質量%(°P)、アルコール度数が13.8v/v%のビール。」(当審注:「甲4に記載されたレシピ」については、上記アを参照。)」 <甲4製法発明> 「甲4発明の製造方法。」 <甲4方法発明> 「甲4発明となるように調整する方法。」 (2)本件特許発明1について 本件特許発明1と甲4発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点4-1> 本件特許発明1においてはチョコレートを使用する発酵ビールテイスト飲料が除かれているのに対し、甲4発明においては原料としてチョコレートを使用する発酵ビールテイスト飲料である点。 両者の間には相違点4-1があるから、本件特許発明1は甲4発明であるとはいえない。 また、甲4及び他の証拠には、甲4発明において、相違点4-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。 そして、本件特許発明1の奏する「アルコール由来の刺激感を感じながら、さらに麦の味わいを有するビールテイスト飲料を提供する」という効果は、甲4発明並びに甲4及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 したがって、本件特許発明1は甲4発明並びに甲4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 なお、特許異議申立人は、令和6年2月5日に提出された意見書において、本件特許発明1において、除かれているのはチョコレートを使用する発酵ビールテイスト飲料であり、甲4発明においては、チョコレートモルトを使用するものであるから、本件特許発明1から甲4発明は除かれていない旨主張する(上記意見書第6ページ)が、本件特許発明1における「チョコレート」は「チョコレートモルト」を意味すると当業者は理解するから、本件特許発明1から甲4発明は除かれており、上記主張は採用できない。 (3)本件特許発明2ないし4について 本件特許発明2ないし4においては、本件特許発明1と同様に、チョコレートを使用する発酵ビールテイスト飲料が除かれている。 したがって、本件特許発明2ないし4は、本件特許発明1と同様に、甲4発明であるとはいえないし、甲4発明並びに甲4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (4)本件特許発明5について 本件特許発明5と甲4発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点4-5> 本件特許発明5においては「アルコール度数が14.0(v/v)%以上であり」と特定されているのに対し、甲4発明においては「アルコール度数が13.8v/v%」と特定されている点。 両者の間には相違点4-5があるから、本件特許発明5は甲4発明であるとはいえない。 また、甲4及び他の証拠には、甲4発明において、相違点4-5に係る本件特許発明5の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。 そして、本件特許発明5の奏する「アルコール由来の刺激感を感じながら、さらに麦の味わいを有するビールテイスト飲料を提供する」という効果は、甲4発明並びに甲4及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明5の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 したがって、本件特許発明5は甲4発明並びに甲4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (5)本件特許発明6について 本件特許発明6と甲4発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点4-6> 本件特許発明6においては「アルコール度数が14.0(v/v)%以上であり」と特定されているのに対し、甲4発明においては「アルコール度数が13.8v/v%」と特定されている点。 両者の間には相違点4-6があるから、本件特許発明6は甲4発明であるとはいえない。 また、甲4及び他の証拠には、甲4発明において、相違点4-6に係る本件特許発明6の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。 そして、本件特許発明6の奏する「アルコール由来の刺激感を感じながら、さらに麦の味わいを有するビールテイスト飲料を提供する」という効果は、甲4発明並びに甲4及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明6の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 したがって、本件特許発明6は甲4発明並びに甲4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (6)本件特許発明7ないし9について 本件特許発明7ないし9は請求項1ないし6のいずれかを直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1ないし6のいずれかの発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1ないし6と同様に判断される。 すなわち、本件特許発明7ないし9は甲4発明であるとはいえないし、甲4発明並びに甲4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (7)本件特許発明10について 本件特許発明10と甲4製法発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点4-10> 本件特許発明10においてはチョコレートを使用する発酵ビールテイスト飲料の製造方法が除かれているのに対し、甲4製法発明においては原料としてチョコレートを使用する発酵ビールテイスト飲料の製造方法である点。 両者の間には相違点4-10があるから、本件特許発明10は甲4製法発明であるとはいえない。 また、甲4及び他の証拠には、甲4製法発明において、相違点4-10に係る本件特許発明10の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。 そして、本件特許発明10の奏する「アルコール由来の刺激感を感じながら、さらに麦の味わいを有するビールテイスト飲料を提供する」という効果は、甲4製法発明並びに甲4及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明10の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 したがって、本件特許発明10は甲4製法発明並びに甲4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (8)本件特許発明11について 本件特許発明11は請求項10を引用して特定するものであり、本件特許発明10の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明10と同様に判断される。 すなわち、本件特許発明11は甲4製法発明であるとはいえないし、甲4製法発明並びに甲4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (9)本件特許発明12について 本件特許発明12と甲4方法発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点4-12> 本件特許発明12においてはチョコレートを使用する発酵ビールテイスト飲料の香味改善方法が除かれているのに対し、甲4方法発明においては原料としてチョコレートを使用する発酵ビールテイスト飲料の香味改善方法である点。 両者の間には相違点4-12があるから、本件特許発明12は甲4方法発明であるとはいえない。 また、甲4及び他の証拠には、甲4方法発明において、相違点4-12に係る本件特許発明12の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。 そして、本件特許発明12の奏する「アルコール由来の刺激感を感じながら、さらに麦の味わいを有するビールテイスト飲料を提供する」という効果は、甲4方法発明並びに甲4及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明12の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 したがって、本件特許発明12は甲4方法発明並びに甲4及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (10)申立理由4についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし12は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであるとはいえないので、同法第113条第2号に該当せず、申立理由4によっては取り消すことはできない。 5 申立理由5(甲5に基づく新規性・進歩性)について (1)甲5に記載された事項等 ア 甲5に記載された事項 甲5には、「Dogfish Head 120 Minute IPA」と名付けられたビールのレシピに関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「21%のアルコール度数及び120の苦味価、これは今まで醸造されたIPAで最大のものである。」(第1ページのSAVE RECIPEの欄の第3及び4行) ・「 [図:0001414175000009.jpg] 以下のホップを容器中で混合し、煮沸時に混合物約0.1オンス(3g)を3分毎に添加する。 1.38オンス(39g)アマリロ ホップペレット,10%a.a. 1.38オンス(39g)シムコー ホップペレット,13%a.a. 1.38オンス(39g)ウォーリア- ホップペレット,16%a.a. 以下のホップを容器中で混合し、発酵容器に混合物約0.2オンス(6g)を毎日添加する。 1オンス(28g)アマリロ ホップペレット,10%a.a. 1オンス(28g)シムコー ホップペレット,13%a.a. 1オンス(28g)ウォーリアー ホップペレット,16%a.a.」(第1ページのIngredients及びSpecificationsの欄) イ 甲5に記載された発明 甲5に記載された事項を整理すると、甲5には次の発明(以下、順に「甲5発明」、「甲5製法発明」及び「甲5方法発明」という。)が記載されていると認める。 <甲5発明> 「甲5に記載されたレシピで製造されたオリジナルエキス濃度(比重)が1.192、アルコール度数が21v/v%のビール。」(当審注:「甲5に記載されたレシピ」については、上記アを参照。) <甲5製法発明> 「甲5発明の製造方法。」 <甲5方法発明> 「甲5発明となるように調整する方法。」 (2)本件特許発明1について 本件特許発明1と甲5発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点5-1> 本件特許発明1においてはデキストリンを使用する発酵ビールテイスト飲料が除かれているのに対し、甲5発明においては原料としてデキストリンを使用する発酵ビールテイスト飲料である点。 両者の間には相違点5-1があるから、本件特許発明1は甲5発明であるとはいえない。 また、甲5及び他の証拠には、甲5発明において、相違点5-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。 そして、本件特許発明1の奏する「アルコール由来の刺激感を感じながら、さらに麦の味わいを有するビールテイスト飲料を提供する」という効果は、甲5発明並びに甲5及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 したがって、本件特許発明1は甲5発明並びに甲5及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 なお、特許異議申立人は、令和6年2月5日に提出された意見書において、甲5発明において、デキストロースに代えて、甲8に記載されるような糖類を採用することは当業者の通常の創作能力の発揮に過ぎない旨主張する(上記意見書第7ページ)が、甲5発明において、デキストロースに代えて、他の糖類を採用した場合、全く異なるビールとなってしまうし、アルコール度数も変わると考えられることから、そのようなことが当業者の通常の創作能力の発揮であるとは考えられず、上記主張は採用できない。 (3)本件特許発明2ないし4について 本件特許発明2ないし4においては、本件特許発明1と同様に、デキストリンを使用する発酵ビールテイスト飲料が除かれている。 したがって、本件特許発明2ないし4は、本件特許発明1と同様に、甲5発明であるとはいえないし、甲5発明並びに甲5及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (4)本件特許発明5について 本件特許発明5と甲5発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点5-5> 本件特許発明5においては、「オリジナルエキス濃度が19.2質量%以上31.5質量%以下」と特定されているのに対し、甲5発明においては、「オリジナルエキス濃度(比重)が1.192」(「比重1.192」は「42.4141質量%」と計算される。)と特定されている点。 両者の間には相違点5-5があるから、本件特許発明5は甲5発明であるとはいえない。 また、甲5及び他の証拠には、甲5発明において、相違点5-5に係る本件特許発明5の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。 そして、本件特許発明5の奏する「アルコール由来の刺激感を感じながら、さらに麦の味わいを有するビールテイスト飲料を提供する」という効果は、甲5発明並びに甲5及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明5の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 よって、本件特許発明5は甲5発明並びに甲5及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (5)本件特許発明6について 本件特許発明6と甲5発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点5-6> 本件特許発明6においては「オリジナルエキス濃度が19.2質量%以上31.5質量%以下」と特定されているのに対し、甲5発明においては「オリジナルエキス濃度(比重)が1.192」(「比重1.192」は「42.4141質量%」と計算される。)と特定されている点。 両者の間には相違点5-6があるから、本件特許発明6は甲5発明であるとはいえない。 また、甲5及び他の証拠には、甲5発明において、相違点5-6に係る本件特許発明6の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。 そして、本件特許発明6の奏する「アルコール由来の刺激感を感じながら、さらに麦の味わいを有するビールテイスト飲料を提供する」という効果は、甲5発明並びに甲5及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明6の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 よって、本件特許発明6は甲5発明並びに甲5及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (6)本件特許発明7ないし9について 本件特許発明7ないし9は請求項1ないし6のいずれかを直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1ないし6のいずれかの発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1ないし6と同様に判断される。 すなわち、本件特許発明7ないし9は甲5発明であるとはいえないし、甲5発明並びに甲5及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (7)本件特許発明10について 本件特許発明10と甲5製法発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点5-10> 本件特許発明10においてはデキストリンを使用する発酵ビールテイスト飲料の製造方法が除かれているのに対し、甲5製法発明においてはデキストリンを使用する発酵ビールテイスト飲料の製造方法である点。 両者の間には相違点5-10があるから、本件特許発明10は甲5製法発明であるとはいえない。 また、甲5及び他の証拠には、甲5製法発明において、相違点5-10に係る本件特許発明10の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。 そして、本件特許発明10の奏する「アルコール由来の刺激感を感じながら、さらに麦の味わいを有するビールテイスト飲料を提供する」という効果は、甲5製法発明並びに甲5及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明10の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 したがって、本件特許発明10は甲5製法発明並びに甲5及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (8)本件特許発明11について 本件特許発明11は請求項10を引用して特定するものであり、本件特許発明10の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明10と同様に判断される。 すなわち、本件特許発明11は甲5製法発明であるとはいえないし、甲5製法発明並びに甲5及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (9)本件特許発明12について 本件特許発明12と甲5方法発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点5-12> 本件特許発明12においてはデキストリンを使用する発酵ビールテイスト飲料の香味改善方法が除かれているのに対し、甲5方法発明においてはデキストリンを使用する発酵ビールテイスト飲料の香味改善方法である点。 両者の間には相違点5-12があるから、本件特許発明12は甲5方法発明であるとはいえない。 また、甲5及び他の証拠には、甲5方法発明において、相違点5-12に係る本件特許発明12の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。 そして、本件特許発明12の奏する「アルコール由来の刺激感を感じながら、さらに麦の味わいを有するビールテイスト飲料を提供する」という効果は、甲5方法発明並びに甲5及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明12の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 したがって、本件特許発明12は甲5方法発明並びに甲5及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (10)申立理由5についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし12は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであるとはいえないので、同法第113条第2号に該当せず、申立理由5によっては取り消すことはできない。 6 申立理由6(甲6に基づく新規性・進歩性)について (1)甲6に記載された発明 甲6に記載された事項を整理すると、甲6には次の発明(以下、順に「甲6発明」及び「甲6製法発明」という。)が記載されていると認める。 <甲6発明> 「麦芽製造プロセス、麦汁製造プロセス、発酵プロセスを含む一連のプロセスから構成される方法により製造されたアルコール濃度が2-15.0w/w%程度のビールを含む発酵飲料。」 <甲6製法発明> 「甲6発明の製造方法。」 (2)本件特許発明1について 本件特許発明1と甲6発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点6-1> 本件特許発明1においては、「オリジナルエキス濃度が19.2質量%以上」と特定されているのに対し、甲6発明においては、そのようには特定されていない点。 両者の間には相違点6-1があるから、本件特許発明1は甲6発明であるとはいえない。 また、甲6及び他の証拠には、甲6発明において、相違点6-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。 そして、本件特許発明1の奏する「アルコール由来の刺激感を感じながら、さらに麦の味わいを有するビールテイスト飲料を提供する」という効果は、甲6発明並びに甲6及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 したがって、本件特許発明1は甲6発明並びに甲6及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (3)本件特許発明2ないし9について 本件特許発明2ないし9と甲6発明を対比するに、両者は少なくとも相違点6-1と同じ点で相違する。 そして、それについての判断は、本件特許発明1と同じである。 すなわち、本件特許発明2ないし9は甲6発明であるとはいえない。 また、本件特許発明2ないし9は甲6発明並びに甲6及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (4)本件特許発明10について 本件特許発明10と甲6製法発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点6-10> 本件特許発明10においては、「オリジナルエキス濃度が19.2質量%以上」と特定されているのに対し、甲6製法発明においては、そのようには特定されていない点。 両者の間には相違点6-10があるから、本件特許発明10は甲6製法発明であるとはいえない。 また、甲6及び他の証拠には、甲6製法発明において、相違点6-10に係る本件特許発明10の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。 そして、本件特許発明10の奏する「アルコール由来の刺激感を感じながら、さらに麦の味わいを有するビールテイスト飲料を提供する」という効果は、甲6製法発明並びに甲6及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明10の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 したがって、本件特許発明10は甲6製法発明並びに甲6及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (5)本件特許発明11について 本件特許発明11は請求項10を引用して特定するものであり、本件特許発明10の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明10と同様に判断される。 すなわち、本件特許発明11は甲6製法発明であるとはいえないし、甲6製法発明並びに甲6及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (6)本件特許発明12について 甲6からは、「オリジナルエキス濃度が19.2質量%以上」と特定された発酵飲料の香味改善方法の発明である本件特許発明12と対比可能な「発酵飲料の香味改善方法」の発明を認定することはできないから、本件特許発明12は甲6に記載された発明であるとはいえないし、甲6に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (7)申立理由6についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし12は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであるとはいえないので、同法第113条第2号に該当せず、申立理由6によっては取り消すことはできない。 7 申立理由7(甲7に基づく新規性・進歩性)について (1)甲7に記載された事項等 ア 甲7に記載された事項 甲7には、超高濃度醸造における酵母株の特性に関して、おおむね次の事項が記載されている。 ・「高談度醸造(高比重醸造)(HGB)は、濃縮麦汁を発酵させてより強いビールを製造するプロセスを指す。正式な定義はないが、一般にオリジナルエキス濃度(比重)(OG)が15-20°Pの麦汁を指し、これは発酵によりアルコール度数6v/v%を超えるビールになる。HGBは、生産能力を向上させ、コストを最小限に抑えるために、大規模な醸造所で使用されている。HGBによって生産された強いビールは発酵後に水で希釈され、各醸造からより大量の完成ビールを生産できるようになる。最近では、薄めずに強いビールを製造するために、クラフトビール醸造所の間でHGBが人気になっている。超高濃度醸造(超高比重醸造)(VHGB)はオリジナルエキス濃度20°Pを超える発酵を指す。バーレーワイン(OG19-28°P)やウィーヘビー(OG17-30°P)など、比重範囲の限界を押し上げる市販されているスタイルがあり、これらの限界を押し上げるオリジナルエキス濃度30°Pを超える市販ビールの例もある。」(第89ページ左欄第2ないし15行) ・「HGBでは副原料の添加が一般的であり、マルトースレベルが高いほど、細胞数が多く、発酵性が高く、風味プロファイルが優れていると関連付けられている。我々は、高い栄養レベルを維持しながらより高いマルトースレベルを達成するために、100%ドライモルトエキス(副原料なし)を使用して非常に高濃度(高比重)の麦汁を調製した。」(第89ページ右欄下から7行ないし下から2行) ・「表1.オリジナルエキス濃度18-36°Pの麦汁を調製するためのモルトレシピ [図:0001414175000010.jpg] 」(第90ページ左欄表1) ・「表2.超高濃度麦汁(18-36°P)への接種に使用した酵母株の説明 [図:0001414175000011.jpg] 選択された酵母株は、Lallemand社製である。」(第90ページ左欄表2) ・「麦汁は、表1に記載されている量を使用して1Lガラス瓶に調製され、初期密度とpHを測定した。必要に応じて、DME又は水を追加して密度を調整したが、pH調整は行わなかった。各麦汁サンプルについて、3つのレプリケートで、振盪フラスコに150mLの麦汁を入れた。」(第90ページ右欄下から17行ないし下から11行) ・「150mLの麦汁を含む各振盪フラスコにlg/Lのピッチ率(1mL当たり>500万生細胞)で1.5m1の再水和酵母を接種した。接種した振盪フラスコを25℃、150rpmでインキュベートした。オリジナルエキス濃度(比重)と外観エキス濃度(比重)は、Anton Paar DMA35密度計を使用して直接測定した。」(第91ページ左欄第7ないし14行) ・「 エタノール [図:0001414175000012.jpg] 図5. 超高濃度麦汁(18-36°P)を9種の異なる酵母株で発酵させたビール中のエタノールレベル。各データ点は、同じ麦汁から振盪フラスコ中で発酵させた3つのレプリケートの平均値である。エラーバーは、95%信頼区間を示す。」(第92ページ左欄図5) ・「すべての場合において、エタノールレベルはマルトトリオース及びマルトースの代謝効率と関連している(図5)。Abbaye、Belle Saison、Munich、Classic、Diamond及びBRY-97では、28-34°Pの麦汁で最大エタノール濃度11-15v/v%に達する。オリジナルエキス濃度(OG)が増加してこの最大エタノールレベルを超えると、これらの酵母株は過酷な高濃度発酵のストレスに屈し始める。これは、エタノールの毒性と栄養素と酸素の欠乏の組み合わせである可能性がある。Munich、London ESB及びWindsorでは、エタノール濃度がプラトーに達しているが、少なくともオリジナルエキス濃度36°Pまで、この最大エタノールレベルからは低下しない。これらの酵母株では、マルトトリオースとマルトースの代謝が阻害される。Nottinghamは、オリジナルエキス濃度(OG)の増加に伴うエタノールレベルの線形傾向を維持する点で注目に値する。これは、この酵母株がオリジナルエキス濃度34-36°Pでもマルトース代謝を維持するという事実と一致している。Nottingham、Windsor、London ESB及びMunichについては、最大エタノール生産レベルを決定するために、オリジナルエキス濃度(OG)36°P超でのさらなる研究が必要である。」(第92ページ右欄第6ないし29行) イ 甲7に記載された発明 甲7に記載された事項を、特に図5の酵母株としてAbbaye、Belle Saison、Nottingham又はBRY-97を用いたアルコール濃度(v/v%)が12.5(v/v%)以上のビールに関して整理すると、甲7には次の発明(以下、順に「甲7発明」、「甲7製法発明」及び「甲7方法発明」という。)が記載されていると認める。 <甲7発明> 「100%ドライモルトエキス(副原料なし)を使用して調製したオリジナルエキス濃度20-36°Pの超高濃度麦汁をAbbaye、Belle Saison、Nottingham又はBRY-97の酵母株で発酵させて得た、アルコール濃度(v/v%)が12.5(v/v%)以上のビール。」 <甲7製法発明> 「甲7発明の製造方法。」 <甲7方法発明> 「甲7発明となるように調整する方法。」 (2)本件特許発明1について 本件特許発明1と甲7発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点7-1> 本件特許発明1においては「麦芽比率が95質量%以下であり」と特定されているのに対し、甲7発明においては「100%ドライモルトエキス(副原料なし)を使用して調製した」と特定されている点。 両者の間には相違点7-1があるから、本件特許発明1は甲7発明であるとはいえない。 また、甲7及び他の証拠には、甲7発明において、相違点7-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。 そして、本件特許発明1の奏する「アルコール由来の刺激感を感じながら、さらに麦の味わいを有するビールテイスト飲料を提供する」という効果は、甲7発明並びに甲7及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明1の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 したがって、本件特許発明1は甲7発明並びに甲7及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 なお、特許異議申立人は、令和6年2月5日に提出された意見書において、甲7発明において、副原料を用いることの阻害要因など一切なく、副原料を用いることは、設計的事項に過ぎない旨主張する(上記意見書第9及び10ページ)が、甲7発明において、副原料を用いる動機付けとなる記載はなく、また、副原料を用いた場合に、オリジナルエキス濃度やアルコール濃度も変わると考えられることから、そのようなことが設計的事項に過ぎないとはいえず、上記主張は採用できない。 (3)本件特許発明2について 本件特許発明2と甲7発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点7-2> 本件特許発明2においては「総ポリフェノール量が42mg/L以上400mg/L以下」と特定されているのに対し、甲7発明においてはそのようには特定されていない点。 両者の間には相違点7-2があるから、本件特許発明2は甲7発明であるとはいえない。 また、甲7及び他の証拠には、甲7発明において、相違点7-2に係る本件特許発明2の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。 そして、本件特許発明2の奏する「アルコール由来の刺激感を感じながら、さらに麦の味わいを有するビールテイスト飲料を提供する」という効果は、甲7発明並びに甲7及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明2の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 したがって、本件特許発明2は甲7発明並びに甲7及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (4)本件特許発明3について 本件特許発明3と甲7発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点7-3> 本件特許発明3においては「麦芽比率が40質量%以上95質量%以下であり」と特定されているのに対し、甲7発明においては「100%ドライモルトエキス(副原料なし)を使用して調製した」と特定されている点。 両者の間には相違点7-3があるから、本件特許発明3は甲7発明であるとはいえない。 また、甲7及び他の証拠には、甲7発明において、相違点7-3に係る本件特許発明3の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。 そして、本件特許発明3の奏する「アルコール由来の刺激感を感じながら、さらに麦の味わいを有するビールテイスト飲料を提供する」という効果は、甲7発明並びに甲7及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明3の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 したがって、本件特許発明3は甲7発明並びに甲7及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (5)本件特許発明4について 本件特許発明4は請求項1又は2を引用して特定するものであり、本件特許発明1又は2の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1又は2と同様に判断される。 すなわち、本件特許発明4は甲7発明であるとはいえないし、甲7発明並びに甲7及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (6)本件特許発明5について 本件特許発明5と甲7発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点7-5> 本件特許発明5においては「麦芽比率が95質量%以下であり」と特定されているのに対し、甲7発明においては「100%ドライモルトエキス(副原料なし)を使用して調製した」と特定されている点。 相違点7-5について検討する。 甲7及び他の証拠には、甲7発明において、相違点7-5に係る本件特許発明5の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。 そして、本件特許発明5の奏する「アルコール由来の刺激感を感じながら、さらに麦の味わいを有するビールテイスト飲料を提供する」という効果は、甲7発明並びに甲7及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明5の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 したがって、本件特許発明5は甲7発明並びに甲7及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。 (7)本件特許発明6について 本件特許発明6と甲7発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点7-6> 本件特許発明6においては「総ポリフェノール量が400mg/L以下」と特定されているのに対し、甲7発明においてはそのようには特定されていない点。 両者の間には相違点7-6があるから、本件特許発明6は甲7発明であるとはいえない。 また、甲7及び他の証拠には、甲7発明において、相違点7-6に係る本件特許発明6の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。 そして、本件特許発明6の奏する「アルコール由来の刺激感を感じながら、さらに麦の味わいを有するビールテイスト飲料を提供する」という効果は、甲7発明並びに甲7及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明6の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 したがって、本件特許発明6は甲7発明並びに甲7及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (8)本件特許発明7ないし9について 本件特許発明7ないし9は請求項1ないし6のいずれかを直接又は間接的に引用して特定するものであり、本件特許発明1ないし6のいずれかの発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明1ないし6と同様に判断される。 すなわち、本件特許発明7ないし9は甲7発明であるとはいえないし、甲7発明並びに甲7及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (9)本件特許発明10について 本件特許発明10と甲7製法発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点7-10> 本件特許発明10においては「麦芽比率が95質量%以下であり」と特定されているのに対し、甲7製法発明においては「100%ドライモルトエキス(副原料なし)を使用して調製した」と特定されている点。 両者の間には相違点7-10があるから、本件特許発明10は甲7製法発明であるとはいえない。 また、甲7及び他の証拠には、甲7製法発明において、相違点7-10に係る本件特許発明10の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。 そして、本件特許発明10の奏する「アルコール由来の刺激感を感じながら、さらに麦の味わいを有するビールテイスト飲料を提供する」という効果は、甲7製法発明並びに甲7及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明10の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 したがって、本件特許発明10は甲7製法発明並びに甲7及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (10)本件特許発明11について 本件特許発明11は請求項10を引用して特定するものであり、本件特許発明10の発明特定事項を全て有するものであるから、本件特許発明10と同様に判断される。 すなわち、本件特許発明11は甲7製法発明であるとはいえないし、甲7製法発明並びに甲7及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (11)本件特許発明12について 本件特許発明12と甲7方法発明を対比するに、両者は少なくとも次の点で相違する。 <相違点7-12> 本件特許発明12においては「麦芽比率が95質量%以下であり」と特定されているのに対し、甲7方法発明においては「100%ドライモルトエキス(副原料なし)を使用して調製した」と特定されている点。 両者の間には相違点7-12があるから、本件特許発明12は甲7方法発明であるとはいえない。 また、甲7及び他の証拠には、甲7方法発明において、相違点7-12に係る本件特許発明10の発明特定事項を採用する動機付けとなる記載はない。 そして、本件特許発明12の奏する「アルコール由来の刺激感を感じながら、さらに麦の味わいを有するビールテイスト飲料を提供する」という効果は、甲7方法発明並びに甲7及び他の証拠に記載された事項からみて、本件特許発明12の構成から当業者が予測することができた範囲の効果を超える顕著なものである。 したがって、本件特許発明12は甲7方法発明並びに甲7及び他の証拠に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (12)申立理由7についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし4及び6ないし12は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、本件特許発明1ないし12は同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであるとはいえないので、同法第113条第2号に該当せず、申立理由7によっては取り消すことはできない。 8 申立理由8(甲8に基づく新規性・進歩性)について (1)甲8に記載された発明 甲8に記載された事項を整理すると、甲8は、焙煎大麦を原料としたビール及びその製造方法の発明が記載されているといえる。 (2)本件特許発明1ないし9について 本件特許発明1ないし9は、大麦を使用するスタウトビール、即ち大麦を焙煎したビールが除かれた飲料の発明であるから、甲8に記載された発明であるとはいえないし、甲8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (3)本件特許発明10及び11について 本件特許発明10及び11は、大麦を使用したスタウトビールの製造方法が除かれた飲料の製造方法の発明であるから、甲8に記載された発明であるとはいえないし、甲8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (4)本件特許発明12について 甲8からは、大麦を使用したスタウトビールの香味改善方法が除かれた飲料の香味改善方法の発明である本件特許発明12と対比可能な「飲料の香味改善方法」の発明を認定することはできないから、本件特許発明12は甲8に記載された発明であるとはいえないし、甲8に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (5)申立理由8についてのむすび したがって、本件特許発明1ないし12は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであるとはいえないので、同法第113条第2号に該当せず、申立理由8によっては取り消すことはできない。 9 申立理由9(請求項1、3ないし5及び7ないし12に対する甲24に基づく新規性・進歩性)について (1)甲24に記載された発明 甲24に記載された事項を整理すると、甲24には、麦芽として、エクストラペールを8.00kg、ウィートを0.50kg、粉砕オーツ麦を1.38kg、ダーククリスタルを0.88kg、カラファスペシャルタイプ1を0.63kg、カラファスペシャルタイプ3を0.63kg使用し、ホップとして、チヌークを50.0g(開始時)、カスケードを25.0g(開始時)、ファッグルを25.0g(開始時)、ファッグルを12.5g(終了時)使用したオリジナルエキス濃度(比重)が1.1200、アルコール度数が15.0v/v%のビール及びその製造方法の発明が記載されているといえる。 (2)本件特許発明1、3ないし5及び7ないし9について 本件特許発明1、3ないし5及び7ないし9は、麦芽比率が95質量%以下のエールビールテイスト飲料の発明であるから、麦芽比率が100質量%である甲24に記載された発明であるとはいえないし、甲24に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 なお、特許異議申立人は、令和6年2月5日に提出された意見書において、甲24に記載された発明の麦芽比率を88.5質量%と計算し、本件特許発明1と甲24に記載された発明は同一である旨主張する(上記意見書第13ないし19ページ)が、甲24の第4ページの「麦芽」の欄に記載された「粉砕オーツ麦」を麦芽として計算しておらず、また、「粉砕オーツ麦」を「麦芽」として計算しない理由も明らかにしていないことから、上記主張は採用できない。 (3)本件特許発明10及び11について 本件特許発明10及び11は、麦芽比率が95質量%以下のエールビールテイスト飲料の製造方法の発明であるから、麦芽比率が100質量%である甲24に記載された発明であるとはいえないし、甲24に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (4)本件特許発明12について 甲24からは、麦芽比率が95質量%以下のエールビールテイスト飲料の香味改善方法の発明である本件特許発明12と対比可能な「飲料の香味改善方法」の発明を認定することはできないから、本件特許発明12は甲24に記載された発明であるとはいえないし、甲24に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるともいえない。 (5)申立理由9についてのむすび したがって、本件特許発明1、3ないし5及び7ないし12は特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるとはいえないし、同法同条第2項の規定により特許を受けることができないものであるともいえないから、本件特許の請求項1、3ないし5及び7ないし12に係る特許は、同法同条の規定に違反してされたものであるとはいえないので、同法第113条第2号に該当せず、申立理由9によっては取り消すことはできない。 第8 結語 以上のとおり、本件特許の請求項1ないし12に係る特許は、取消理由(決定の予告)、特許異議申立書に記載した申立ての理由及び令和6年2月5日に特許異議申立人から提出された意見書に記載した理由によっては取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1ないし12に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。

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2023-700795

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